説明

物体検知センサ及び開閉体挟み込み検知装置

【課題】接触センサとしての機能と、非接触センサである静電容量センサとしての機能を併せ持ち、かつ簡素な構成の物体検知センサ、或いはこれを用いた簡素で信頼性や応答性の高い開閉体挟み込み検知装置を提供する。
【解決手段】接触センサとしての基本構成を有するセンサ本体(ピエゾケーブル11をセンサヘッドとするもの)と、接触センサの検出回路(接触検出回路30)と、センサ本体の導電体(シールド網線18)を検出電極として利用する静電容量センサの検出回路(接近検出回路40)とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のスライドドアなどの開閉体の挟み込みを検知するのに好適な物体検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の電動スライドドアや建物の自動ドアなどの開閉体の制御システムにおいては、人体などの挟み込みを防止するため、自動閉動作(ユーザが操作を止めても全閉位置まで開閉体が自動的に動く動作)などの際には、このような挟み込みの発生或いは発生の恐れを検知して少なくとも開閉体の閉動作を停止し、或いはさらに反転動作(開動作)させる挟み込み防止機能が設けられる。なお、ワンボックスタイプの自動車のドアシステムとしては、左右側面に取付けられるスライドドアや後部開閉ドア(テールゲート)が増加している。このようなスライドドアや後部開閉ドアは、形状も大きく重いため、その開閉には大きな力が必要である。そこで近年では、ドア開閉を電動で行なう電動スライドドアなどの自動開閉システムが普及している。しかし、自動化に伴い、手や指などのドア端部への鋏み込み、ドアに押されて転倒するなどの可能性があり、これを効果的に防止する挟み込み防止機能が要望されている。
【0003】
そして従来、このような挟み込み防止のための挟み込み検知を行う検知装置の方式としては、間接検知と直接検知がある。間接検知は、開閉体の駆動モータの動作情報(回転位置や回転速度など)や駆動電流に基づいて、間接的に挟み込みを検知するもので、直接検知は、開閉体の開閉端部に接近又は接触する対象物(人体など)を検出するセンサを用いるものである。このうち、間接検知は、挟み込みをなるべく低い荷重で早めに、かつ確実に検知することが比較的困難であるという不利がある。
【0004】
一方、直接検知は、対象物を直接検知するので比較的信頼性が高いという長所があるが、従来のこの種のセンサとしては感圧スイッチなどの接触センサが用いられていたため、挟み込みをなるべく低い荷重で早めに検知することができなかった。というのは、例えば感圧スイッチは、図9(a)に示す如く、絶縁性のある中空状のゴムチューブ1の内面に、心線に導電性樹脂を被覆してなる線状電極2,3を螺旋状に取付けて構成したケーブル状のもので、図9(b),(c)に示すような対象物の接触荷重によるゴムチューブ1の変形によって、内部の線状電極2,3が相互に接触して導通することによって作動するものである。このため感圧スイッチは、対象物がある程度の圧力で接触してはじめて作動し、その時点でやっと挟み込み防止機能が働くことになるからである。
また感圧スイッチは、指や手などの小さい物が狭い範囲で接触する場合には信頼性の高い検知が可能となるが、例えば柔かい服を着た子供や老人等が体全体で広い接触面積で接触した場合(面積当たりの接触荷重が少ない場合)には、動作が不安定となり、場合によってはドアに押されて転倒する可能性がある。
【0005】
ところで、一般に物体の接近を非接触で検出するセンサとしては、光学式のもの、電波式のもの、静電容量式のものがある。このうち、光学式は、車両のドアなどの開閉体の湾曲した開閉端部に沿うように検出エリアを配置することができない(即ち、不感帯ができる)、また電波式は、指向性を開閉端部に接近する方向だけに制限することが困難で、誤動作の可能性が高いという問題がある。一方、静電容量式のものは、湾曲した開閉端部に沿うようにして容易に取り付けられる、不感帯がない、指向性が制御容易であるといった点で有望である。
そこで発明者らは、車両の電動スライドドアなどにおける挟み込み検知装置として、静電容量センサを適用することを検討している。
なお、静電容量センサを車両の電動スライドドアにおける挟み込み検知装置として適用した従来例は見当たらないが、特許文献1には、電車のドアの開閉状態(挟み込み含む)を静電容量センサを用いて検知する扉開閉検知装置が記載されている。また、特許文献2には、シャッターにおける人の挟み込み検知に静電容量センサを用いる技術が開示されている。また、静電容量(キャパシタンス)を構成する電極を複数組設けて、各静電容量に応じた信号の差分に基づいて対象物を高感度に検出する高性能な静電容量センサとしては、特許文献3に開示されたパチンコ玉通過検出器がある。また、特許文献4には、静電容量センサなどを用いたエレベータのドアの安全装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−96368号公報
【特許文献2】特開2001−264448号公報
【特許文献3】特開2001−318162号公報
【特許文献4】国際公開第98/18710号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した静電容量センサを車両のドアなどの開閉体に適用しようとすると、次のような問題がある。
(イ)即ち、乾燥した段ボールやガラス機器、或いは発泡スチロールなどの誘電率の低い物体は検出できない場合があり、例えばこのような物体よりなる荷物や、その荷物を持ったユーザの挟み込みを信頼性高く検知できない恐れがある。
(ロ)また、誘電率が高い水(雨などによる水滴)が付着することによって、センサがオンしてしまう誤動作が発生する可能性がある。特に、豪雨などによりセンサが取付けられた開閉端部に大量の水が流れると、対象物が存在していないのに検知信号を出力して、開閉体を閉める方向の動作が止まってしまったり、反転動作によりユーザの意思に反して開く方向に動作してしまったりする不具合が生じる恐れがある。
(ハ)また、開閉体が全閉位置近傍に接近する全閉直前状態では、開閉体の開閉端部が全閉位置において接合又は対向するフレーム部分(例えば、車両のスライドドアが全閉時に接合するBピラーなどの車体部分)の接近によって、センサがオンしてしまう誤動作が発生する可能性がある。
【0008】
なお、前述した感圧スイッチなどの接触センサは、対象物の誘電率に無関係に検出を行なうため、上記(イ)〜(ロ)のような問題は生じない。そこで発明者らは、感圧スイッチなどの接触センサと静電容量センサを併用して、互いの短所を補完することを検討しているが、単純に二つのセンサを設ける構成では、構造が複雑になり相当なコスト増や生産性の低下を招くという問題がある。
このため本発明は、接触センサとしての機能と、非接触センサである静電容量センサとしての機能を併せ持ち、かつ簡素な構成の物体検知センサ、或いはこれを用いた簡素で信頼性や応答性の高い開閉体挟み込み検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の物体検知センサは、物体の接触により変形して内部の対を成す導電体間の抵抗又は電圧が変化するセンサヘッドを有するセンサ本体と、
前記導電体間の抵抗又は電圧の変化に基づいて、前記センサ本体への物体の接触を検出して接触検出信号を出力する接触検出回路と、
前記センサヘッドの前記導電体を検出電極とし、この検出電極により構成される浮遊容量の変化に基づいて、前記センサ本体への物体の接近を検出して接近検出信号を出力する接近検出回路とを備えるものである。
【0010】
本発明の物体検知センサでは、誘電率の高い人体等の物体がセンサ本体に接近すると、前記検出電極により構成される浮遊容量が変化するため、この物体の接近が接近検出回路により検出されて接近検出信号が出力される。また、誘電率の低い物体であっても、センサ本体に接触してセンサヘッドが変形すると、センサヘッドの導電体間の抵抗又は電圧が変化するため、この物体の接触が接触検出回路によって検出されて接触検出信号が出力される。即ち、本発明の物体検知センサは、接触センサとしての機能と、非接触センサである静電容量センサとしての機能を併せ持つ。
このため、各センサ方式の短所を互いに補完することによって、信頼性が高く可能な限り応答性の高い物体検知が可能となる。例えば、降雨状態や前述の全閉直前状態などの悪条件の場合には、接近検出回路の機能(即ち、静電容量センサの機能)を無効にするか、或いは接近検出回路の感度を相対的に低く設定することによって、水などによる静電容量センサの誤動作を防止し、しかも一方で、接触センサの機能によって物体を確実に検知して信頼性を維持する。また、降雨状態などの悪条件でない場合には、接近検出回路の機能(即ち、静電容量センサの機能)を高感度に設定して、誘電率の高い人体等の物体を非接触で応答性高く検知できる。また、誘電率の低い物体であっても、少なくとも接触センサの機能により信頼性高く検知することができる。
【0011】
そして本発明の物体検知センサは、上述したように信頼性が高く可能な限り応答性の高い物体検知を可能としながら、接触センサを構成する導電体を静電容量センサの検出電極として兼用する簡素な構成であるため、単純に接触センサと静電容量センサを別個に設ける場合に比較して部品点数が少なくてすみ、コスト面や生産性の面、及び設置スペースの面で格段に有利となる。
【0012】
なお、接触センサを構成する前記センサヘッドや接触検出回路は、感圧スイッチ式のものであってもよい。即ち、前記センサヘッドは、変形可能な導電体の対を自然状態で相互に離れるように配設してなり、前記接触検出回路は、前記導電体が相互に接触して前記導電体間の抵抗が低下することに基づいて、前記センサ本体への物体の接触を検出して接触検出信号を出力するものであってもよい。
但し、前記センサヘッドは、例えば次のようなケーブル状のものであることが望ましい。即ち、感圧スイッチ式の場合、前記センサヘッドは、絶縁性のチューブの内面に複数の線状電極を互いに離れた状態で螺旋状に取付けてなり、前記線状電極が前記導電体として機能するケーブル状のものであり、前記接近検出回路は、前記線状電極を前記検出電極とする態様が好ましい。このようにセンサヘッドがケーブル状であると、センサ本体全体をケーブル状のものとして、開閉体の開閉端部に沿って取付けることが容易に可能となり、開閉体の挟み込み検知装置としてより好適なものとなる。
【0013】
また本発明の別の好ましい態様は、前記センサ本体が、前記センサヘッドの裏側(物体の接近や接触を検出する側と反対側)に配設された差分補正用検出電極を備え、前記接近検出回路が、前記検出電極により構成される浮遊容量に応じた値と、前記差分補正用検出電極により構成される浮遊容量に応じた値との差分値を演算し、この差分値の変化に基づいて、前記センサ本体への物体の接近を検出して接近検出信号を出力するものである。この態様であると、水滴の付着状況などの環境変化や温度ドリフトの悪影響などが抑制され、高感度な非接触検知が可能となる。
なお、前記センサヘッドがケーブル状のものである場合には、上記差分補正用検出電極もケーブル状のものとし、前記センサヘッドの裏側に沿うように配設する態様が望ましい。このようにすると、差分補正用検出電極を備えた高性能なセンサ本体が、全体としてケーブル状となり、開閉体の開閉端部に沿って取付け易くなる利点がある。
また、前記センサ本体における前記センサヘッドと前記差分補正用検出電極との間には、弾性体が介装されている態様が好ましい。この態様であると、前記差分補正用検出電極が前記センサヘッドとともに変形困難な場合でも、前記センサヘッドだけが十分に変形できるようになり、接触センサとしての信頼性が向上する。
【0014】
また、本発明の別の好ましい態様は、前記センサ本体に、このセンサ本体の裏側(物体の接近や接触を検出する側と反対側)を少なくとも含む非検知範囲を覆うように、シールド用のシールド電極が配設されている態様である。この場合、シールド電極のシールド作用によって、検出側の指向性を特に高めることができ、所望の検知エリアでない側面などに誘電体が接近したときの誤動作の可能性を基本的に低減できる。
【0015】
次に、本発明の開閉体挟み込み検知装置は、本発明の物体検知センサを備え、この物体検知センサの前記センサ本体を開閉体の開閉端部に取り付け、開閉体に挟み込まれる恐れのある位置範囲にある物体を検知するものである。
ここで、「開閉体」とは、車両のドア(テールゲート含む)でもよいし、車両のトランクの蓋やサンルーフの窓、建物のドアや窓、エレベータのドア、或いは金庫の蓋などであってもよい。また、「開閉端部」とは、開閉体が開いたときに、その開口の一方の縁部(可動側の縁部)を形成する開閉体の端縁部であり、開閉体が閉じたときには、その開口の他方の縁部(固定側の縁部)に接合又は対向する部分である。
【0016】
本発明の開閉体挟み込み検知装置によれば、本発明の物体検知センサを使用しているので、簡素な構成でありながら、信頼性が高く可能な限り応答性の高い挟み込み検知が可能となる。例えば、降雨状態や前述の全閉直前状態などの悪条件の場合には、接近検出回路の機能(即ち、静電容量センサの機能)を無効にするか、或いは接近検出回路の感度を相対的に低く設定することによって、水などによる誤動作(挟み込みが生じていないのに閉動作を停止したり反転動作してしまう不具合)を防止し、しかも一方で、接触センサの機能によって挟み込みを確実に検知して信頼性を維持する。また、降雨状態などの悪条件でない場合には、接近検出回路の機能(即ち、静電容量センサの機能)を高感度に設定して、誘電率の高い人体等の物体を非接触で応答性高く検知でき、この結果、例えば子供などがスライドドアに押されて転倒するなどの不具合の発生可能性を格段に低減できる。また、誘電率の低い物体(例えば、乾燥した段ボールなどの荷物)であっても、少なくとも接触センサの機能により信頼性高く検知して、その挟み込みを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接触センサとしての機能と、非接触センサである静電容量センサとしての機能を併せ持ち、かつ簡素な構成の物体検知センサ、或いはこれを用いた簡素で信頼性や応答性の高い開閉体挟み込み検知装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1形態例)
まず、第1形態例を説明する。
本例は、四輪自動車において、スライドドア(開閉体)に挟み込まれる恐れのある位置範囲に接近した人体等(物体)を物体検知センサによって検知する挟み込み検知装置である。
図1は、本例の物体検知センサのセンサ本体10の構成を示す断面図であり、図2は、本例の物体検知センサの検出回路を示す図である。また図3(a)は、上記検出回路の動作を説明するタイミングチャートであり、図3(b)は、物体の接触によるセンサ本体10の変形状態を示す図である。また図8は、センサ本体10の取り付け状態を説明する図であり、センサ本体10が取付けられたスライドドア5をその端面側から見た図である。
【0019】
センサ本体10は、図1に示すように、センサヘッドに相当するピエゾケーブル11の裏側にケーブル状電極12を平行に配設するとともに、シールド電極13をケーブル状電極12の裏側と側面(主に裏側)を覆うように配設し、さらに表面全体を絶縁性樹脂よりなる保護外皮14で覆ってなるケーブル状のもの(断面が一様な長尺状のもの)であり、スライドドア5の端面の全長と略同等の長さに製作されたものである。
なお、ピエゾケーブル11とケーブル状電極12の間には、この場合ゴムよりなる弾性体15が介装されている。このような弾性体15が設けられていると、例えば図3(b)に示すように、物体の接触荷重によってピエゾケーブル11が局部的に撓むように十分変形し易くなる。このようなピエゾケーブル11は、圧縮よりも曲げ方向の変形に対してより敏感であるため、図3(b)に示すように変形できると、より小さな接触荷重を検出できるようになって感度が高まる。
また、このセンサ本体10の表面は、物体の接近や接触を検出する検出側(図1における上側)がピエゾケーブル11の円形状外周に沿った円弧状の形状となっており、検出側と反対の裏面(図1における下面)が、平面状の取付面14aとなっている。そしてこのセンサ本体10は、上記平面状の取付面14aでの接着等によって、例えば図8に示すように、自動車のスライドドア5の端面に、その長手方向(上下方向)に沿って略全長に渡って取付けられる。
また保護外皮14は、例えば自動車のウエザーストリップ等に使用されている発泡ゴムにより形成できる。
【0020】
ピエゾケーブル11は、一般の同軸ケーブルと同様の構造において、心線とシールド網線間の絶縁物をピエゾポリマに代えたものである。即ち、図1に示すように、導電体(例えば、銅)よりなる心線16と、この心線16の外周を覆うように設けられたピエゾポリマ17と、このピエゾポリマ17の外周を覆うように設けられた導電体よりなるシールド網線18と、このシールド網線18の外周を覆うように設けられた絶縁性の保護外皮19とよりなる。このピエゾケーブル11は、外圧による変形(圧縮や曲げなど)に伴って、ピエゾポリマ17の圧電効果によって、心線16とシールド網線18の間に変形量に応じた電圧を発生する。なお、このピエゾケーブル11のシールド網線18は、後述するように、静電容量センサの検出電極(A電極)として利用される。
また、ケーブル状電極12は、導電体よりなる心線20と、この心線20の外周を覆うように設けられた絶縁性の保護外皮21とよりなる。このケーブル状電極12の心線20は、後述するように、静電容量センサの差分補正用検出電極(B電極)として利用される。
また、シールド電極13(S電極)は、例えばアルミ箔により形成され、検出面の側が開口した断面コ字状のものであり、センサ本体10の裏側(この場合、ケーブル状電極12の裏側)を含む非検知範囲を覆うように配設されている。
【0021】
このような構成のセンサ本体10は、十分小型にすることが可能であるとともに、十分な柔軟性を有し、長手方向において湾曲させることが容易であり、スライドドア5の端部の形状に沿ってコンパクトに配置することが十分可能である。また、シールド電極13のシールド作用により、検出面側(即ち、主にスライドドア5の端部に対向し、スライドドア5に挟まれる可能性のある位置範囲の側)だけを高い感度とし、他の面を基本的に不感面とすることが可能となる。
【0022】
次に、検出回路について説明する。図2において、一点鎖線よりも上側が接触センサを構成する接触検出回路30であり、一点鎖線よりも下側が非接触センサである静電容量センサを構成する接近検出回路40である。
接触検出回路30は、三つのOPアンプ(オペレーショナルアンプ)A1〜A3で構成される増幅回路によって、ピエゾケーブル11の心線16とシールド網線18の間に生じる電圧を増幅し、この増幅後の信号をピエゾセンサ出力(接触検出信号)としてスライドドア5のコントローラ(図示省略)に出力するものである。なお、上記コントローラでは、この接触検出回路30の出力(ピエゾセンサ出力)が例えば規定のしきい値を超えるレベルになると、接触が検知されたと判定する。
また、上記増幅回路は入力インピーダンスを高くする必要があり、またOPアンプA1,A2は静電容量センサ側の回路(接近検出回路40)にも接続されるため、上記OPアンプA1,A2としては、入力端子とグランド間の容量の小さいものを使用すべきである。また、図2に示す抵抗R1は、ピエゾケーブル11に生じた電圧の減衰特性を調整するためのものである。
【0023】
またOPアンプA3は、差動増幅器を構成しており、OPアンプA1の出力(心線16の電位に応じた電圧値)とOPアンプA2の出力(シールド網線18の電位に応じた電圧値)の差を増幅し、これを上記ピエゾセンサ出力とするものである。この場合、ピエゾケーブル11のシールド網線18が検出電極(A電極)として接近検出回路40に接続されているため、ピエゾケーブル11の心線16とグランド間で構成される浮遊容量も、後述する浮遊容量Ca,Cbと同様に充放電を繰り返される(周期的に電荷転送を受ける)。しかし、上記OPアンプA3(差動増幅器)の働きで、この充放電の影響は打ち消され、あくまで心線16とシールド網線18との間に電位差が生じたときだけ(即ち、ピエゾケーブル11を変形させる物体の接触があったときだけ)、しきい値を超える出力(ピエゾセンサ出力)がこの接触検出回路30から出力される。
【0024】
一方、接近検出回路40は、図2に示すように、図示省略した駆動回路によって周期的に動作するアナログスイッチS1〜S13と、OPアンプA4〜A7などにより構成される。
なお、図2において符号Caで示すコンデンサの記号は、グランド電位である大地又は車体や検知対象である人体などと、A電極(前述のシールド網線18)との間に構成される静電容量(いわゆる浮遊容量)を示している。また同様に、符合Cbで示すコンデンサの記号は、車体や人体などと、B電極(前述の心線20)との間に構成される静電容量を示している。また符合Csは、車体や人体などと、S電極(前述のシールド電極13)との間に構成される静電容量を示している。さらに、符合CasとCbsは、S電極とA電極間と、S電極とB電極間の静電容量をそれぞれ示している。但し本例の場合には、A電極とB電極とS電極を基本的に同電位に制御するため、見かけ上、上記静電容量CasとCbsは生じない。
【0025】
アナログスイッチS1,S2は、A電極のパルス駆動回路を構成するもので、図示省略した駆動回路によって駆動されて、A電極の接続を所定周期で切り替える。このうちスイッチS1は、A電極とグランド間を接続するラインを開閉し、スイッチS2は検出電極AとOPアンプA4の反転入力間を接続するラインを開閉する。
アナログスイッチS3,S4は、B電極のパルス駆動回路を構成するもので、B電極の接続を所定周期で切り替える。このうちスイッチS3は、B電極とグランド間を接続するラインを開閉し、スイッチS4はB電極とOPアンプA5の反転入力間を接続するラインを開閉する。
アナログスイッチS5,S6は、S電極のパルス駆動回路を構成するもので、S電極の接続を所定周期で切り替える。このうちスイッチS6は、S電極とグランド間を接続するラインを開閉し、スイッチS5はS電極と基準電圧ラインを接続するラインを開閉する。
【0026】
なお、アナログスイッチS1,S3は、図3(a)の上から4段目に示すように、周期的にオンする。また、アナログスイッチS2,S4も、同様に周期的にオンするが、図3(a)の上から3段目に示すように、アナログスイッチS1,S3がオフであるタイミングでオンする。
また、アナログスイッチS5は、図3(a)の上から2段目に示すように、アナログスイッチS1,S3がオフになった後、アナログスイッチS2,S4がオンする前のタイミングでオンとなり、アナログスイッチS2,S4がオフとなった後、アナログスイッチS1,S3がオンする前のタイミングでオフとなる。また、アナログスイッチS6は、図3(a)の上から1段目に示すように、アナログスイッチS5と全く逆のタイミングでオンオフする。
【0027】
OPアンプA4は、A電極の電荷積分回路を構成するもので、このOPアンプA4の出力と反転入力間には、コンデンサCc1とアナログスイッチS7が並列に接続されている。また、OPアンプA4の非反転入力は、基準電圧ラインに接続され、基準電圧が印加されている。なお、アナログスイッチS7は、コンデンサCc1の両端子間(即ち、OPアンプA4の出力と反転入力間)を開閉するスイッチであり、図3(a)の上から5段目に示すように、スイッチS1,S3と同時にオンし、スイッチS1,S3がオフした直後のタイミングでオフする。
また、OPアンプA5は、B電極の電荷積分回路を構成するもので、このOPアンプA5の出力と反転入力間には、コンデンサCc2とアナログスイッチS8が並列に接続されている。また、OPアンプA5の非反転入力は、基準電圧ラインに接続され、基準電圧が印加されている。なお、アナログスイッチS8は、コンデンサCc2の両端子間(即ち、OPアンプA5の出力と反転入力間)を開閉するスイッチであり、アナログスイッチS7と全く同じように動作する。
【0028】
次に、OPアンプA6は、OPアンプA4の出力(以下、出力VAという)とOPアンプA5の出力(以下、出力VBという)の差分を増幅して出力する差分回路を構成するものである。
また、アナログスイッチS10,S13とOPアンプA7は、同期検波回路を構成するものである。この同期検波回路は、OPアンプA6(差分回路)の出力(以下、差分出力V0という)から静電容量センサ出力V1(接近検出信号)を出力する回路である。この場合、差分出力V0は、例えば図3(a)の上から6段目(最下段)に示すように変化するが、この差分出力V0の波形における高電圧部分(即ち、スイッチS7,S8がオフとなり、スイッチS2,S4がオンとなってから差分出力V0が安定した時の電圧)が静電容量センサ出力V1として、スライドドア5のコントローラ(図示省略)に出力される。
なお、アナログスイッチS10はアナログスイッチS6と、アナログスイッチS13はアナログスイッチS5と同じ動作をする(図3(a)参照)。
また、上記コントローラでは、この接近検出回路40の出力V1が例えば規定のしきい値を超えるレベルになると、物体の接近が検知されたと判定する。
【0029】
以上のように構成された接近検出回路40では、アナログスイッチS1,S3,S6がオンしている時には、各浮遊容量Ca,Cb,Csは短絡されてその端子間電圧はゼロである。またこの時、アナログスイッチS7,S8もオンしているため、コンデンサCc1,Cc2も同様に端子間電圧がゼロとなり、出力VAと出力VBは、何れも基準電圧となる。したがってこの時、差分出力V0はゼロとなる。
ところがその後、アナログスイッチS1,S3、アナログスイッチS7,S8、及びアナログスイッチS6が順にオフし、アナログスイッチS5、及びアナログスイッチS2,S4が順にオンした時には、コンデンサCc1,Cc2の短絡が解除されて、各電極(A電極、B電極、及びS電極)には基準電圧が印加される。このため、コンデンサCc1と浮遊容量Caの容量比に応じた電圧が出力VAとして出力され、コンデンサCc2と浮遊容量Cbの容量比に応じた電圧が出力VBとして出力される。したがってこの結果、差分出力V0としては、浮遊容量Caと浮遊容量Cbの容量差(差分値)に応じた電圧が出力され、この電圧の安定値が、前述した同期検波回路によって静電容量センサ出力V1(接近検出信号)として出力される。
なおこの場合、人体などの接近によって、コンデンサCc1に対して浮遊容量Caが大きくなると、出力VAが減少する。
【0030】
以上説明した本例の物体検知センサによれば、まず人体などの誘電率の高い物体がセンサ本体10の検出側に接近した時には、前述した接近検出回路40による静電容量センサとしての検出機能によって、これが応答性高くかつ信頼性高く検知される。即ち、人体などの誘電率の高い物体が検出側へ接近すると、静電容量センサ出力V1が敏感に変化するので、この信号電圧を所定のしきい値と比較することによって、高感度な検知が可能となる。特に本例では、二つの検出電極(A電極及びB電極)に応じた信号の差分をとっている差分式であるので、温度ドリフトなどの悪影響を受け難く、基本的に信頼性及び応答性の高い検知が可能となる。
また、本例の物体検知センサでは、誘電率の低い物体であっても、センサ本体10に接触してセンサヘッドであるピエゾケーブル11が変形すると、前記心線16とシールド網線18との間に電位差が発生するため、この物体の接触が接触検出回路30によって検出されて規定のしきい値を超えるピエゾセンサ出力(接触検出信号)が出力される。
【0031】
即ち、本例の物体検知センサは、接触センサとしての機能と、高性能な非接触センサ(静電容量センサ)としての機能を併せ持つ。
このため、各センサ方式の短所を互いに補完することによって、信頼性が高く可能な限り応答性の高い物体検知が可能となる。例えば、降雨状態や前述の全閉直前状態などの悪条件の場合には、接近検出回路30の機能(即ち、静電容量センサの機能)を無効にするか、或いは接近検出回路30の感度を相対的に低く設定すること(コントローラ側でのしきい値調整によるものでもよい)によって、水などによる静電容量センサの誤動作を防止し、しかも一方で、接触センサの機能によって物体を確実に検知して信頼性を維持する。また、降雨状態などの悪条件でない場合には、静電容量センサの機能を高感度に設定して、誘電率の高い人体等の物体を非接触で応答性高く検知できる。また、誘電率の低い物体であっても、少なくとも接触センサの機能により信頼性高く検知することができる。
【0032】
そして本例の物体検知センサは、上述したように信頼性が高く可能な限り応答性の高い物体検知を可能としながら、接触センサを構成する導電体(この場合、前述のシールド網線18)を静電容量センサの検出電極(A電極)として兼用する簡素な構成であるため、単純に接触センサと静電容量センサを別個に設ける場合に比較して部品点数が少なくてすみ、コスト面や生産性の面、及び設置スペースの面で格段に有利となる。
特に本例の場合には、主に二本のケーブル状部材(ピエゾケーブル11とケーブル状電極12)を重ねただけの単純な構成であるので、生産性が高い。また、従来のケーブル状部材が1本だけの構成(ケーブル状感圧スイッチのみの構成)に対して、基本的にケーブル状部材(ケーブル状電極12)が1本増えただけの本体構成であるため、センサ本体の外形寸法増も比較的少ない。なお、差分型の静電容量センサである必要がない場合には、ケーブル状電極12は不要であり、センサ本体は従来と同等の外形寸法に収まる。
【0033】
また、本例の開閉体挟み込み検知装置(自動車のスライドドアの挟み込み検知装置)によれば、前述の物体検知センサを使用しているので、簡素な構成でありながら、信頼性が高く可能な限り応答性の高い挟み込み検知が可能となる。例えば、降雨状態や前述の全閉直前状態などの悪条件の場合には、静電容量センサの機能を無効にするか、その感度を相対的に低く設定することによって、水などによる誤動作(挟み込みが生じていないのにスライドドアの閉動作を停止したり反転動作してしまう不具合)を防止し、しかも一方で、接触センサの機能によって挟み込みを確実に検知して信頼性(スライドドアの挟み込み防止機能の信頼性)を維持する。また、降雨状態などの悪条件でない場合には、静電容量センサの機能を高感度に設定して、誘電率の高い人体等の物体を非接触で応答性高く検知でき、この結果、例えば子供などがスライドドアに押されて転倒するなどの不具合の発生可能性を格段に低減できる。また、誘電率の低い物体(例えば、乾燥した段ボールなどの荷物)であっても、少なくとも接触センサの機能により信頼性高く検知して、その挟み込みを確実に防止することができる。
【0034】
(第2形態例)
次に、第2形態例を説明する。
本例は、第1形態例におけるピエゾケーブル11の代わりに、ケーブル状感圧スイッチ51を有するセンサ本体50を備えた物体検知センサによって、スライドドア5(開閉体)に挟み込まれる恐れのある位置範囲に接近した人体等(物体)を検知する挟み込み検知装置である。
図4は、本例のセンサ本体50の構成を示す断面図であり、図5は、本例の物体検知センサの検出回路を示す図である。また図6は、上記検出回路の動作を説明するタイミングチャートである。
なお、第1形態例と同様の構成要素には同符号を使用して重複する説明を省略する。
【0035】
ケーブル状感圧スイッチ51は、図9により説明した感圧スイッチ1と同様の構成である。即ち、図4に示すように、絶縁性のチューブ52の内面に、4本の線状電極53〜56を互いに離れた状態で螺旋状に取付けてなるケーブル状のものである。ここで、線状電極53〜56は、心線に導電性ゴムを被覆したもので、十分な柔軟性を持っている。このため、物体の接触によるチューブ52の変形に伴い、線状電極間が導通する。
なお本例では、4本の線状電極53〜56のうち、例えば線状電極53,55がケーブル状感圧スイッチ51の一方の電極(導電体)を構成しており、残りの線状電極54,56がケーブル状感圧スイッチ51の他方の電極(導電体)を構成している。またこの場合、線状電極53,55が、前述のアナログスイッチS2を介して接近検出回路40のOPアンプA4の反転入力に接続され、線状電極54,56が、前述のアナログスイッチS2と後述のアナログスイッチS11とを介してやはりOPアンプA4の反転入力に接続されている(図5参照)。このため、全ての線状電極53〜56が、静電容量センサのA電極として機能可能な構成となっており、このA電極の電極面積が可能な限り広く確保されている。
【0036】
次に、本例の検出回路を説明する。
まず、接近検出回路40は、上述したようにケーブル状感圧スイッチ51の線状電極がA電極となっている点以外は、第1形態例と同様の構成である。但し、アナログスイッチS1,S3は、この場合図6に示すように、後述する接触検出時期においてもオン状態に制御される。
一方、接触検出回路60は、図5に示すように、ケーブル状感圧スイッチ51の電源電圧ラインVccと線状電極54,56との間に順次直列に接続されたアナログスイッチS12及び抵抗R2と、この抵抗R2の下流側端子が非反転入力に接続されたOPアンプA1と、抵抗R2の上流側端子が非反転入力に接続されたOPアンプA2と、OPアンプA1の出力とOPアンプA2の出力の差分を増幅するOPアンプA3と、OPアンプA3の出力を一方の入力とするAND回路AD1と、AND回路AD1の他方の入力と電源電圧ラインVccとの間を開閉するアナログスイッチS14と、線状電極53,55と線状電極54,56とを短絡させるラインを開閉するアナログスイッチS11とを備える。そして、AND回路AD1の出力を感圧スイッチ出力(接触検出信号)として、スライドドア5のコントローラに対して入力するものである。
なおこの場合、OPアンプA2の出力は、抵抗R3,R4によって分圧されてOPアンプA3に入力されている。
【0037】
ここで、アナログスイッチS11は、図6に示すように、ケーブル状感圧スイッチ51の検出を行う接触検出時期にオフ状態になり、その他の時期にはオン状態となるように駆動される。また、アナログスイッチS12,S14は、アナログスイッチS11とは逆に、接触検出時期にオン状態となり、その他の時期にはオフ状態となるように駆動される。なおこの場合、接触検出時期は、接近検出回路40のアナログスイッチS10がオフからオンになってから、アナログスイッチS7,S8がオフからオンになるまでの期間であり、接近検出回路40による検出動作が行われる接近検出時期(即ち、アナログスイッチS10がオフ状態の時期)の直後のタイミングである。
【0038】
以上のように構成された検出回路によれば、静電容量センサとしての接近検出時期には、アナログスイッチS11がオンとなっており、アナログスイッチS12がオフとなっているので、全ての線状電極53〜56が、電源電圧ラインVccから切り離され、接近検出回路40に接続されたA電極として機能する。したがって、接近検出回路40の動作による静電容量センサとしての優れた機能は、第1形態例と同様に発揮される。
【0039】
そして、感圧式の接触センサとしての接触検出時期には、逆にアナログスイッチS11がオフとなっており、アナログスイッチS12,S14がオンとなっているので、次のような原理で物体の接触が検出される。
即ち、物体の接触が無くて、一方の線状電極53,55と他方の線状電極54,56との間に導通が無い場合には、抵抗R2に電流が流れないために、抵抗R2の上流側端子と下流側端子は同電位(何れも電源電圧Vcc)となり、OPアンプA1の出力とOPアンプA2の出力の差分はゼロになり、この結果OPアンプA3の出力もゼロになって、AND回路AD1の出力(接触検出信号)もオフ状態となる。
しかし、物体の接触が有って、線状電極53,55と線状電極54,56との間に十分な導通が有る場合(接触抵抗が所定のしきい値以下になった場合)には、抵抗R2の上流側端子がアナログスイッチS12により電源電圧ラインVccに接続された状態において、抵抗R2の下流側端子がケーブル状感圧スイッチ51(即ち、線状電極53,55と線状電極54,56)とアナログスイッチS1とを介してグランドに接続され、OPアンプA1の非反転入力は略グランドレベルとなる。このため、この瞬間に抵抗R2に十分な電流が流れるとともに、抵抗R2の上流側端子と下流側端子との間には抵抗R2の電圧降下分の電圧が発生し、この結果OPアンプA3の出力がオン状態となって、AND回路AD1の出力もオン状態となり、物体の接触が検出される。
【0040】
なお、上記検出動作において、抵抗R3,R4は、ケーブル状感圧スイッチ51の接触抵抗(即ち、線状電極53,55と線状電極54,56との接触抵抗)がどの程度下がると、OPアンプA3の出力がオン状態となって接触が検出されるかを決定する前述のしきい値を調整するためのものである。
また、AND回路AD1は、接触検出時期でないときに、この接触検出回路60から誤った接触検出信号が出ないようにする。即ち、接触検出時期でないときには、アナログスイッチS14がオフになって、AND回路AD1の一方の入力がオフ状態となるので、OPアンプA3の出力に無関係に、AND回路AD1の出力がオフ状態に保持される。
【0041】
なお、本例のような電荷転送型の静電容量センサの場合、各アナログスイッチがオンオフする周波数は、通常数KHz以上の高速に設定することになる。このため、1回の接触検出時期におけるAND回路AD1の出力で検知判定を行う場合、判定時間が相当短く制限される。そこで、実際のコントローラでの検知判定は、例えばAND回路AD1の出力が接触検出時期においてオンとなる状態が所定回数以上連続したとき(即ち、所定時間以上、例えば数msec以上、ケーブル状感圧スイッチ51がオンしている状態に相当するとき)に、物体の接触があったと判定するようにしてもよい。このことは、接近検知の判定や第1形態例の接触検知の判定についても同様である。
【0042】
以上説明した第2形態例によれば、感圧スイッチを接触センサとして使用した本発明の物体検知センサ及び挟み込み検知装置が実現され、第1形態例と同様の効果に加えて、次のような固有の利点が得られる。即ち、従来品と同様のケーブル状感圧スイッチに対して、基本的に単純なケーブル状部材(ケーブル状電極12)が1本増えただけの本体構成であるため、従来品の有効利用が図られ、設計や部品調達などの負担が少なくるとともに、より低コストで製造できるといった利点がある。なお、差分型の静電容量センサである必要がない場合には、ケーブル状電極12は不要であり、センサ本体は、従来と同等の外形寸法に収まるとともに、従来品と基本的に略同様の構成でよい。
【0043】
なお、本発明は上述した形態例に限られず、各種の変形や応用があり得る。
例えば、センサヘッド(ピエゾケーブル11やケーブル状感圧スイッチ51)や差分補正用電極(ケーブル状電極12)は、必ずしも断面が円形のケーブル状のものでなくてもよい。一例として、テープ状金属を対向させ、その間にピエゾポリマを介装させたテープ状のセンサヘッドや、テープ状の差分補正用電極としてもよい。
また、上記第2形態例では、ケーブル状感圧スイッチ51として、線状電極を4本有するものを例示したが、静電容量センサの検出電極としての電極面積が十分である場合には、図9に示したように、2本の線状電極を有するタイプであってもよい。
また、検出回路の構成も上記形態例に限定されない。本発明の基本思想は、例えば図7に示すように、基本的に接触センサとしての構成を有するセンサ本体(例えば、ピエゾケーブル11)と、接触センサの検出回路(例えば、接触検出回路30)と、前記センサ本体の導電体(例えば、シールド網線18)を検出電極として利用する静電容量センサの検出回路(例えば、接近検出回路40)とを備えた構成であればよく、各検出回路の詳細構成等は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】物体検知センサのセンサ本体の構造を示す断面図である。
【図2】物体検知センサの検出回路を示す図である。
【図3】物体検知センサの動作を説明する図である。
【図4】物体検知センサ(第2形態例)のセンサ本体の構造を示す断面図である。
【図5】物体検知センサ(第2形態例)の検出回路を示す図である。
【図6】物体検知センサ(第2形態例)の動作を説明する図である。
【図7】本発明の基本構成を説明する図である。
【図8】センサ本体の取り付け状態を説明する図である。
【図9】従来の感圧スイッチを示す図である。
【符号の説明】
【0045】
5 スライドドア(開閉体)
10,50 センサ本体
11 ピエゾケーブル(センサヘッド)
12 ケーブル状電極
13 シールド電極
15 弾性体
16 心線(導電体)
17 ピエゾポリマ
18 シールド網線(導電体、検出電極)
19 保護外皮
20 心線(差分補正用検出電極)
30,60 接触検出回路
40 接近検出回路
51 ケーブル状感圧スイッチ(センサヘッド)
52 チューブ
53〜56 線状電極(導電体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の接触により変形して内部の対を成す導電体間の抵抗又は電圧が変化するセンサヘッドを有するセンサ本体と、
前記導電体間の抵抗又は電圧の変化に基づいて、前記センサ本体への物体の接触を検出して接触検出信号を出力する接触検出回路と、
前記センサヘッドの前記導電体を検出電極とし、この検出電極により構成される浮遊容量の変化に基づいて、前記センサ本体への物体の接近を検出して接近検出信号を出力する接近検出回路と
を備えることを特徴とする物体検知センサ。
【請求項2】
前記センサヘッドは、変形可能な導電体の対を自然状態で相互に離れるように配設してなり、
前記接触検出回路は、前記導電体が相互に接触して前記導電体間の抵抗が低下することに基づいて、前記センサ本体への物体の接触を検出して接触検出信号を出力するものであることを特徴とする請求項1記載の物体検知センサ。
【請求項3】
前記センサヘッドは、絶縁性のチューブの内面に複数の線状電極を互いに離れた状態で螺旋状に取付けてなり、前記線状電極が前記導電体として機能するケーブル状のものであり、
前記接近検出回路は、前記線状電極を前記検出電極とするものであることを特徴とする請求項2に記載の物体検知センサ。
【請求項4】
前記センサ本体は、前記センサヘッドの裏側に配設された差分補正用検出電極を備え、
前記接近検出回路は、前記検出電極により構成される浮遊容量に応じた値と、前記差分補正用検出電極により構成される浮遊容量に応じた値との差分値を演算し、この差分値の変化に基づいて、前記センサ本体への物体の接近を検出して接近検出信号を出力するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の物体検知センサ。
【請求項5】
前記センサ本体は、前記センサヘッドの裏側に沿うように配設されたケーブル状の差分補正用検出電極を備え、
前記接近検出回路は、前記検出電極により構成される浮遊容量に応じた値と、前記差分補正用検出電極により構成される浮遊容量に応じた値との差分値を演算し、この差分値に基づいて、前記センサ本体への物体の接近を検出して接近検出信号を出力するものであることを特徴とする請求項3に記載の物体検知センサ。
【請求項6】
前記センサ本体における前記センサヘッドと前記差分補正用検出電極との間には、弾性体が介装されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の物体検知センサ。
【請求項7】
前記センサ本体には、このセンサ本体の裏側を少なくとも含む非検知範囲を覆うように、シールド用のシールド電極が配設されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の物体検知センサ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載された物体検知センサを備え、この物体検知センサの前記センサ本体を開閉体の開閉端部に取り付け、開閉体に挟み込まれる恐れのある位置範囲にある物体を検知することを特徴とする開閉体挟み込み検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−85961(P2009−85961A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288908(P2008−288908)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【分割の表示】特願2003−47081(P2003−47081)の分割
【原出願日】平成15年2月25日(2003.2.25)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】