説明

物品の搬送装置及び搬送方法

【課題】第一回転円盤と第二回転円盤との同期機構や吸引切換え機構が不要で構成簡素であり、各回転円盤を連続回転させても物品の移替えを安定確実に行うことができ、搬送能力を大幅に向上させ得る物品の搬送装置と搬送方法を提供する。
【解決手段】物品Wを外周部に吸着保持して回転する第一回転円盤1及び第二回転円盤2を備え、各外周部の一部同士を近接させた物品受渡し部Tで第一回転円盤1の外周部に吸着保持された物品Wを第二回転円盤2の外周部へ移し替えて搬送する物品の搬送装置10において、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部に全周に亘って吸引隙間11、21を形成し、各吸引隙間11、21を通して外気を常時吸引して物品Wを吸着保持可能に構成し、第二回転円盤2の吸着力を第一回転円盤1の吸着力よりも大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送装置及び搬送方法に関し、より詳しくは、例えばダイオード、リードスイッチ等の部品として用いられる円筒状の微小ガラス管や、チップコンデンサ等の直方体形状の電子部品などの物品を一つずつ連続搬送し得る物品の搬送装置と搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ型電子部品を一つずつ搬送する搬送装置として、下記の特許文献1、2に記載のものが知られている。これらの装置は、チップ型電子部品を外周面に吸着保持して回転する第一回転円盤及び第二回転円盤を備え、各外周部の一部同士を近接させた物品受渡し部において、第一回転円盤に吸着保持されたチップ型電子部品を第二回転円盤へ移し替えて搬送するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−29386号公報
【特許文献2】特開2002−19957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来の搬送装置は、各回転円盤の外周面に多数の吸着孔を等間隔に形成し、各吸着孔に物品を吸着保持していたため、物品受渡し部において、第一回転円盤と第二回転円盤との回転位置を同期させなければならず、装置構成がその分複雑化する問題があった。
【0005】
また、これら従来の搬送装置は、物品受渡し部において、第一回転円盤の吸着孔の吸引を停止するとともに第二回転円盤の吸着孔の吸引を開始することによって物品の移替えを行っていたため、各吸着孔の吸引切換え機構が不可欠であり、装置構成が複雑化し、さらに、物品の移替えを安定確実に行うために各回転円盤を間欠回転させる必要があり、搬送能力向上の要請に十分に応えることができない問題があった。
【0006】
本発明は、従来の物品の搬送装置に上記のような問題があったことに鑑みて為されたもので、各回転円盤の同期機構や吸引切換え機構が不要で構成簡素であり、回転円盤を連続回転させても物品の移替えを安定確実に行うことができ、搬送能力を大幅に向上させ得る物品の搬送装置と搬送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、物品を外周部に吸着保持して回転する第一回転円盤及び第二回転円盤を備え、各外周部の一部同士を近接させた物品受渡し部において、前記第一回転円盤の外周部に吸着保持された物品を前記第二回転円盤の外周部へ移し替えて搬送する物品の搬送装置であって、
前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤はそれぞれ、前記外周部に全周に亘って吸引隙間が形成され、該吸引隙間を通して外気を常時吸引して前記物品を吸着保持可能に構成されており、前記第二回転円盤の吸着力が前記第一回転円盤の吸着力よりも大きくされていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤がそれぞれ、連続回転することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記物品受渡し部において、前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤の各外周部が同一速度で同一方向へ移動することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、搬送すべき物品を前記第一回転円盤の外周部に供給する物品供給手段を備え、前記物品供給手段が、前記物品を搬送するリニアフィーダと、該リニアフィーダの搬送下流端に接続され、該物品をベルト搬送して前記第一回転円盤の外周部に供給するベルトコンベヤとを有し、前記ベルトコンベヤの搬送速度が前記リニアフィーダの搬送速度よりも大きくされていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記第二回転円盤の外周部に吸着保持された物品を該第二回転円盤から除去する物品除去手段を備え、前記物品除去手段が、先端部を前記第二回転円盤の吸着隙間に差し入れたスクレーパから成ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、物品を外周部に吸着保持して回転する第一回転円盤及び第二回転円盤を用い、各外周部の一部同士を近接させた物品受渡し部において、前記第一回転円盤の外周部に吸着保持された物品を前記第二回転円盤の外周部へ移し替えて搬送する物品の搬送方法であって、
前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤の各外周部に全周に亘り形成された吸引隙間を通して外気を常時吸引することによって前記各外周部に前記物品を吸着保持し、
前記第二回転円盤の吸着力を前記第一回転円盤の吸着力よりも大きくすることによって前記物品受渡し部で前記物品を移し替えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る物品の搬送装置及び搬送方法によれば、第一回転円盤及び第二回転円盤の各外周部の全周に亘って吸引隙間が形成され、この吸引隙間を通して外気が常時吸引されるので、第一回転円盤及び第二回転円盤の回転位置が同期していなくても、物品受渡し部において、第一回転円盤の外周部に吸着保持された物品を第二回転円盤の外周部へ移し替えることができる。したがって、第一回転円盤及び第二回転円盤の同期機構を必要とせず、装置構成を簡素化することができる。また、物品同士の間隔を小さくできるため、搬送能力を向上させることができる。
【0014】
しかも、第二回転円盤は、その物品吸着力を第一回転円盤よりも大きくした状態で常時外気を吸引しているので、物品受渡し部において、物品を素早く確実に第二回転円盤に移し替えることができる。したがって、第一回転円盤及び第二回転円盤を連続回転させても、物品を確実に移し替えることができ、搬送能力を大幅に向上させることができる。そして、第一回転円盤及び第二回転円盤の吸引切換え機構が不要なので、装置構成を頗る簡素化することができる。
【0015】
また、第一回転円盤の外周部に物品を供給する物品供給手段を、リニアフィーダとこのリニアフィーダの搬送下流端に接続されたベルトコンベヤとから構成し、ベルトコンベヤの搬送速度をリニアフィーダの搬送速度より大きくすれば、たとえリニアフィーダの搬送路上における物品同士の隙間がなくても、ベルトコンベヤの搬送路上において物品同士に所定の隙間をあけた状態で各物品を搬送し、第一回転円盤に供給することができる。したがって、搬送経路の途中で物品の検査を行う場合であっても、個々の物品を確実に検査することができる。
【0016】
また、第二回転円盤の外周部から物品を除去する物品除去手段を、先端部を第二回転円盤の吸着隙間に差し入れたスクレーパから構成すれば、第二回転円盤の物品吸着力を部分的に弱めることができ、除去時に物品に加わる衝撃等を抑制して物品を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の物品の搬送装置の全体斜視図である。
【図2】本実施形態の物品の搬送装置の第一回転円盤の部分断面図である。
【図3】本実施形態の物品の搬送装置の物品除去手段の概略側面図である。
【図4】本実施形態の物品の搬送装置の第一回転円盤の搬送経路に臨んで配設された検査手段の概略部分断面図であり、(a)は第一回転円盤の搬送上流側に配設された検査手段を搬送下流側からみたときの断面図であり、(b)は第一回転円盤の搬送下流側に配設された検査手段を搬送下流側からみたときの断面図である。
【図5】本実施形態の物品の搬送装置の第二回転円盤の搬送経路に臨んで配設された検査手段の概略部分断面図であり、(a)は第二回転円盤の搬送上流側に配設された検査手段を搬送上流側からみたときの断面図であり、(b)は第二回転円盤の搬送下流側に配設された検査手段を搬送上流側からみたときの断面図である。
【図6】本発明に係る物品の搬送装置の他の実施形態の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態の物品の搬送装置について説明する。ここでは、搬送対象の物品として、ダイオードの部品に用いられる円筒状の微小ガラス管(外径2.0mm、内径1.5mm、長さ5.0mm)を例にとって説明する。また、本実施形態の物品の搬送装置は、その搬送経路の途中に、物品の検査手段及び排除手段が設けられており、各物品を搬送しながら、検査手段によって、微小ガラス管から成る物品の欠け、クラック、傷、泡、異物、汚れ等の外観や、外径、長さ等の寸法の欠点を検査し、その検査結果に基づいて、排除手段により不良品を搬送経路から排除するように構成されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の物品の搬送装置10は、物品Wを外周部に吸着保持して回転する第一回転円盤1及び第二回転円盤2を備え、搬送すべき物品Wを第一回転円盤1の外周部に供給するための物品供給部Fと、第一回転円盤1の外周部に吸着保持された物品Wを第二回転円盤2の外周部に移し替えるための物品受渡し部Tと、第二回転円盤2の外周部に吸着保持された物品Wを第二回転円盤2から除去するための物品除去部Rとを有している。そして、第一回転円盤1及び第二回転円盤2による物品Wの搬送経路に臨んで複数の検査手段(5A〜5D)及び排除手段(6A〜6D)が配設されている。
【0020】
第一回転円盤1は、外周部に全周に亘って吸引隙間11が形成されており、この吸引隙間11を通して外気を吸引することにより物品Wを外周部に吸着保持する。本実施形態の第一回転円盤1は、図2に示すように、一対の皿状の円盤部材12・13を、互いに向い合わせてスペーサ14を介して所定間隔をあけた状態で固定して構成されている。これら円盤部材12・13の外周部の対向部間に所定間隔の吸引隙間11が形成され、円盤部材12・13の中程部の対向部間に内部空間15が形成されている。吸引隙間11の間隔は、搬送すべき物品Wの最大外径よりも小さく形成されており、搬送すべき物品Wのサイズに応じて適宜設定することができる。本実施形態では、吸引隙間11の間隔を0.6mmとしている。
【0021】
また、第一回転円盤1の中心部には、上記スペーサ14を介して回転軸16が挿通固定されており、この回転軸16は、軸受部17により軸受けされ、モータ18の出力軸に連結されている。このモータ18を制御作動させることによって、第一回転円盤1を所定速度で連続回転させることができる。本実施形態では、第一回転円盤1の回転軸心A1を水平にしている。
【0022】
また、スペーサ14、回転軸16、及び軸受部17には、内部空間15と連通する吸気路141、161、171がそれぞれ形成されており、配管172を介して、吸引ブロワから成る不図示の吸気装置が接続されている。この吸気装置を作動させることによって、配管172、吸気路(171、161、141)、内部空間15、及び吸引隙間11を通して外気を常時吸引し、第一回転円盤1の外周部に物品Wを吸着保持することができる。こうして第一回転円盤1は、物品Wを外周部に吸着保持しながら回転することによって、物品Wをその外周部に沿って搬送する。
【0023】
第二回転円盤2は、上記第一回転円盤1と同様に構成されている。図1に示すように、外周部に全周に亘って形成された吸引隙間21を通して外気を常時吸引することができ、物品Wを外周部に吸着保持しながら回転することによって、物品Wを外周部に沿って搬送する。本実施形態では、第二回転円盤2の回転軸心A2を水平にしている。
【0024】
第二回転円盤2は、吸引隙間21における物品Wの吸着力が、第一回転円盤1の吸引隙間11における物品Wの吸着力よりも大きくされている。これら第一回転円盤1及び第二回転円盤2の物品吸着力は、不図示の各吸気装置の吸気量を調節することによって、適宜独立して設定することができる。本実施形態では、第二回転円盤2の吸着力を第一回転円盤1の吸着力の約1.3倍としている。
【0025】
第一回転円盤1及び第二回転円盤2の吸着力は、搬送すべき物品Wの形状、重量、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の回転速度(搬送速度)等を考慮して適宜設定することができるが、第二回転円盤2の吸着力は、第一回転円盤1の吸着力の1.1倍〜5倍の範囲であることが好ましい。第二回転円盤2の吸着力が第一回転円盤1の吸着力の1.1倍よりも小さいと、後述する第一回転円盤1から第二回転円盤2への物品Wの移替えを安定に行うことができなくなる一方、5倍よりも大きいと、移替え時に物品Wに加わる衝撃が大きくなり過ぎ、特に微小ガラス管から成る物品Wについて、欠け、クラック、傷付き等を招くおそれがある。
【0026】
物品供給部Fは、図1に示すように、第一回転円盤1の下部に、物品供給手段3を近接配置して構成されている。本実施形態の物品供給手段3は、物品Wを振動搬送するリニアフィーダ31と、リニアフィーダ31の搬送下流端に接続され、物品Wをベルト搬送するベルトコンベヤ32とから成り、このベルトコンベヤ32の搬送下流側において、V溝付き搬送ベルト321の上面と第一回転円盤1の下部とが所定間隔をあけて近接している。これらリニアフィーダ31及びベルトコンベヤ32を作動させることによって、複数の物品Wを一つずつ第一回転円盤1の外周部へ供給することができる。なお、リニアフィーダ31として、ベルトコンベヤを採用してもよい。
【0027】
本実施形態では、リニアフィーダ31の搬送速度V1よりもベルトコンベヤ32の搬送速度V2を大きくすることによって、リニアフィーダ31の搬送路上における物品W同士の間隔よりも、ベルトコンベヤ32の搬送路上における物品W同士の間隔を大きくしている。このことで、たとえリニアフィーダ31の搬送路上における物品W同士の隙間がなくても、ベルトコンベヤ32の搬送路上において物品W同士に所定の隙間をあけた状態で各物品Wを搬送し、第一回転円盤1に供給することができる。
【0028】
また、本実施形態では、物品供給部Fにおいて、ベルトコンベヤ32の搬送ベルト321と第一回転円盤1の外周部とを同一速度で同一方向へ移動させるようにしている。このことで、ベルトコンベヤ32の搬送ベルト321上に載置された物品Wを第一回転円盤1の外周部に円滑確実に吸着保持させることができ、また、特に微小ガラス管から成る物品Wの擦れによる傷付き等を防ぐことができる。
【0029】
物品受渡し部Tは、図1に示すように、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部の一部同士を近接させて構成されている。本実施形態では、第一回転円盤1の回転軸心A1と第二回転円盤2の回転軸心A2とを水平面内で直交(交差角度α;90°)させ、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部の側部同士を直角に近接させている。
【0030】
上述したように、第二回転円盤2の物品吸着力は、第一回転円盤1の物品吸着力よりも大きくされているため、物品受渡し部Tにおいて、第一回転円盤1の外周部に吸着保持された物品Wは、第二回転円盤2の吸着力によって、第一回転円盤1の吸着力に抗して第二回転円盤2に吸引され、第二回転円盤2の外周部に吸着保持されて移し替えられる。
【0031】
本実施形態では、物品受渡し部Tにおいて、第一回転円盤1の外周部と第二回転円盤2の外周部とを同一速度で同一方向(鉛直下向き)へ移動させるようにしている。このことで、物品Wを第一回転円盤1から第二回転円盤2へ円滑確実に移し替えることができ、また、特に微小ガラス管から成る物品Wの擦れによる傷付き等を防ぐことができる。
【0032】
物品除去部Rは、図1に示すように、第二回転円盤2の上部に、物品除去手段4を近接配置して構成されている。本実施形態の物品除去手段4は、不図示のステーに固定されたスクレーパ41から成り、スクレーパ41の先端部411は、第二回転円盤2の吸着隙間21に差し入れられている。また、スクレーパ41における第二回転円盤2の回転上手側の側面には傾斜面42が形成されている。このことで、図3に示すように、第二回転円盤2の外周部に沿って物品除去部Rにまで搬送されてきた物品Wは、固定されたスクレーパ41の傾斜面42によって、第二回転円盤2の吸着力に抗して外周部から除去されるとともに、第二回転円盤2の片側(搬送下流側へ向かって左側)へ案内され、回収ダクト43を通じて回収される。
【0033】
なお、物品除去部Rにおける物品除去手段として、第二回転円盤2に吸着保持された物品Wに対し側方から気体を噴射して物品Wを第二回転円盤2から吹き飛ばす噴気ノズルを採用してもよい。物品Wの形状、重量、第二回転円盤2の回転速度(搬送速度)等を考慮して種々の設計変更が可能である。
【0034】
検査手段(5A〜5D)は、図1に示すように、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部に吸着保持された物品Wに対し光を照射する照明器(51A〜51D)と、物品Wを間に挟んで照明器(51A〜51D)の反対側に対向配置され、物品Wの透過光を撮像する撮像器(52A〜52D)とから構成されている。本実施形態では、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の搬送経路に臨んで計四つの検査手段(5A〜5D)が配設されており、物品Wを順に四方向から検査する。
【0035】
即ち、第一回転円盤1の外周部の搬送上流側には、照明器51Aと撮像器52Aとが対向配置されており、図4(a)に示すように、照明器51Aにより第一回転円盤1の裏面側から物品Wに対して略水平方向に光が照射され、第一回転円盤1の表面側に配置された撮像器52Aによって、主として物品Wの第二領域P2(クロスハッチング部分)の検査が行われる。
【0036】
ここで物品Wの「第二領域P2」とは、微小ガラス管から成る物品Wを、その管軸線を含む仮想分割面で四等分したときに得られる計四つの区分領域のうちの一つをいい、図4(a)に示すように、第一回転円盤1の外周部に直接吸着された領域を「第一領域P1」とし、他の三つの領域を、搬送下流側からみた物品Wの横断面において「第一領域P1」から時計回りに順に、「第二領域P2」、「第三領域P3」及び「第四領域P4」としている。
【0037】
また、図1に示すように、第一回転円盤1の外周部の搬送下流側には、照明器51Bと撮像器52Bとが対向配置されており、図4(b)に示すように、照明器51Bにより第一回転円盤1の表面側から物品Wに対して略水平方向に光が照射され、第一回転円盤1の裏面側に配置された撮像器52Bによって、主として物品Wの第四領域P4(クロスハッチング部分)の検査が行われる。
【0038】
また、図1に示すように、第二回転円盤2の外周部の搬送上流側には、照明器51Cと撮像器52Cとが対向配置されており、図5(a)に示すように、照明器51Cにより第二回転円盤2の裏面側から物品Wに対して略水平方向に光が照射され、第二回転円盤2の表面側に配置された撮像器52Cによって、主として物品Wの第三領域P3(クロスハッチング部分)の検査が行われる。なお、第二回転円盤2の外周部において、物品Wはその第四領域P4で吸着保持されて検査される。
【0039】
そして、図1に示すように、第二回転円盤2の外周部の搬送下流側には、照明器51Dと撮像器52Dとが対向配置されており、図5(b)に示すように、照明器51Dにより第二回転円盤2の表面側から物品Wに対して略水平方向に光が照射され、第二回転円盤2の裏面側に配置された撮像器52Dによって、主として物品Wの第一領域P1(クロスハッチング部分)の検査が行われる。
【0040】
こうして本実施形態の物品の搬送装置10は、微小ガラス管から成る物品Wを搬送しながら計四つの検査手段(5A〜5D)によって、物品Wの欠け、クラック、傷、泡、異物、汚れ等の外観や、外径、長さ等の寸法の欠点を検査する。なお、本実施形態では、微小ガラス管から成る物品Wの透過光を撮像器(52A〜52D)で撮像して検査しているが、物品Wの反射光を撮像して検査するようにしてもよい。
【0041】
排除手段(6A〜6D)は、図1に示すように、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部に吸着保持された物品Wに対し側方から気体を噴射して物品Wを第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部から吹き飛ばす噴気ノズル(61A〜61D)から構成されている。本実施形態では、上述した四つの検査手段(5A〜5D)の搬送下流側にそれぞれ、排除手段(6A〜6D)が配設されており、各検査手段(5A〜5D)の検査結果ごとに不良の物品Wを搬送経路から排除する。
【0042】
各排除手段(6A〜6D)により搬送経路から排除された物品Wは、搬送経路を間に挟んで各噴気ノズル(61A〜61D)の反対側に対向配置された不図示の回収ダクトを通じて回収される。
【0043】
以下、図1を参照しながら、本実施形態の物品の搬送装置10による物品Wの搬送工程について説明する。
【0044】
物品Wを搬送するにあたり、予め、物品受渡し部Tにおいて第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部が鉛直下向きに同一速度で移動するように第一回転円盤1及び第二回転円盤2をそれぞれ連続回転させておくとともに、吸引隙間11及び吸引隙間21を通して外気をそれぞれ常時吸引させて第二回転円盤2の物品吸着力を第一回転円盤1の物品吸着力よりも大きくしておく。
【0045】
まず、物品供給手段3によって、物品Wが一つずつ第一回転円盤1の物品供給部Fに供給される。物品供給部Fに供給された物品Wは、第一回転円盤1の吸引隙間11の吸引によって外周部に吸着保持される。吸引隙間11は、第一回転円盤1の外周部の全周に亘って形成され、この吸引隙間11を通して外気が常時吸引されるので、物品Wを第一回転円盤1の外周部の任意の位置に吸着保持することができる。したがって、第一回転円盤1の回転位置に関わらず、また、物品Wの供給間隔にばらつきがあっても、物品供給部Fに供給された物品Wを確実に外周部に吸着保持することができる。
【0046】
第一回転円盤1の外周部に吸着保持された物品Wは、その後、第一回転円盤1の回転により外周部に沿って搬送され、その搬送途中で検査手段(5A、5B)により検査される。そして、各検査手段(5A、5B)の検査結果に基づいて不良と判断された物品Wは、排除手段(6A、6B)により外周部から排除され、良品と判断された物品Wは、第一回転円盤1の外周部に沿って物品受渡し部Tまで搬送される。
【0047】
物品受渡し部Tまで搬送された物品Wは、第一回転円盤1の外周部から第二回転円盤2の外周部へ移し替えられる。吸引隙間21は、第二回転円盤2の全周に亘って形成され、この吸引隙間21を通して外気が常時吸引されるので、物品Wを第二回転円盤2の外周部の任意の位置に吸着保持することができる。したがって、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の回転位置が同期していなくても、また、第一回転円盤1による物品Wの搬送間隔にばらつきがあっても、物品受渡し部Tに搬送された物品Wを確実に第二回転円盤2の外周部に吸着保持することができる。そして、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の同期機構を必ずしも必要としないので、装置構成を簡素化することができる。
【0048】
しかも、第二回転円盤2は、その物品吸着力を第一回転円盤1よりも大きくした状態で常時外気を吸引しているので、物品受渡し部Tにおいて、物品Wを素早く確実に第二回転円盤2に移し替えることができる。したがって、第一回転円盤1及び第二回転円盤2を連続回転させても、物品Wを確実に移し替えることができ、搬送能力を大幅に向上させることができる。そして、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の吸引切換え機構が不要なので、装置構成を簡素化することができる。
【0049】
第二回転円盤2に移し替えられた物品Wは、その後、第二回転円盤2の回転により外周部に沿って搬送され、その搬送途中で検査手段(5C、5D)により検査される。そして、各検査手段(5C、5D)の検査結果に基づいて不良と判断された物品Wは、排除手段(6C、6D)により外周部から排除され、良品と判断された物品Wは、第二回転円盤2の外周部に沿って物品除去部Rまで搬送される。
【0050】
本実施形態では、物品Wが円筒形状を成しているので、物品Wの軸方向を吸引隙間11及び吸引隙間21の隙間方向(外周部の接線方向)に揃えて安定に吸着保持することができる。したがって、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部における物品Wの搬送姿勢が安定し、検査手段(5A〜5D)による検査を確実に行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、第一回転円盤1の回転軸心A1と第二回転円盤2の回転軸心A2とを水平面内で直交させ、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部の側部同士を直角に近接させているので、物品受渡し部Tにおいて、第一回転円盤1の外周部により吸着される物品Wの領域(第一領域P1)と角度にして90°異なる領域(第四領域P4)を、第二回転円盤2の外周部により吸着することができる。したがって、検査手段(5A〜5D)により物品Wの全領域を効率的に網羅して検査することができる。
【0052】
物品除去部Rまで搬送された物品Wは、除去手段4により第二回転円盤2の外周部から除去される。そして、除去された物品Wは、回収ダクト43を通じて回収される。除去手段4のスクレーパ41の先端部411が第二回転円盤2の吸引隙間21に差し込まれているので、第二回転円盤2の物品吸着力を部分的に弱めることができ、除去時に物品Wに加わる衝撃等を抑制し、特に微小ガラス管から成る物品Wの欠け、クラック、傷付き等を防ぐことができる。
【0053】
以上、本実施形態の物品の搬送装置及び搬送方法について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0054】
例えば、上記実施形態では、第一回転円盤1の回転軸心A1と第二回転円盤2の回転軸心A2とを水平面内で直交させ、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部の側部同士を直角に近接させることによって、物品受渡し部Tを形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示す物品の搬送装置20のように、第一回転円盤1の水平な回転軸心A1と第二回転円盤5の垂直な回転軸心A5とを垂直面内で直交(交差角度α;90°)させ、第一回転円盤1の外周部の上部と第二回転円盤5の外周部の側部とを直角に近接させることによって、物品受渡し部Tを形成してもよい。物品供給手段3による物品Wの搬入方向、搬入位置、及び物品除去手段4による物品Wの搬出方向、搬出位置等を考慮して種々の設計変更が可能である。これら回転軸心A1及び/又は回転軸心A2は、垂直にしてもよく、水平面に対し斜めにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、第一回転円盤1の回転軸心A1と第二回転円盤2の回転軸心A2とを直交させているが、回転軸心A1と回転軸心A2とを、その交差角度αを鋭角又は鈍角にして斜交させてもよい。また、回転軸心A1と回転軸心A2とは必ずしも交わっていなくてもよく、回転軸心A1と回転軸心A2とが平行な位置関係にあってもよく、ねじれの位置関係にあってもよい。第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部の一部のみが互いに近接して物品受渡し部Tが形成されていれば足りる。第一回転円盤1と第二回転円盤2とは径が異なっていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、物品受渡し部Tにおいて第一回転円盤1及び第二回転円盤2の各外周部が鉛直下向きに同一速度で移動するように第一回転円盤1及び第二回転円盤2をそれぞれ連続回転させているが、第一回転円盤1及び第二回転円盤2を必ずしも同一速度で回転させなくてもよく、また、間欠回転させるようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、第一回転円盤1及び第二回転円盤2の計二つの回転円盤を用いているが、例えば第一回転円盤1と第二回転円盤2との間に、第一回転円盤1と同様に構成された一つまたは複数の第三回転円盤を配置して三つ以上の回転円盤を用いて物品Wを搬送するようにしてもよい。この場合、各円盤同士の物品受渡し部において、搬送下流側の回転円盤の吸着力を搬送上流側の回転円盤の吸着力よりも大きくする。
【0058】
また、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得る。同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10、20 物品の搬送装置
1 第一回転円盤
11 吸引隙間
2、5 第二回転円盤
21、51 吸引隙間
3 物品供給手段
31 リニアフィーダ
32 ベルトコンベヤ
4 物品除去手段
41 スクレーパ
411 先端部
W 物品
T 物品受渡し部
V1 リニアフィーダの搬送速度
V2 ベルトコンベヤの搬送速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を外周部に吸着保持して回転する第一回転円盤及び第二回転円盤を備え、各外周部の一部同士を近接させた物品受渡し部において、前記第一回転円盤の外周部に吸着保持された物品を前記第二回転円盤の外周部へ移し替えて搬送する物品の搬送装置であって、
前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤はそれぞれ、前記外周部に全周に亘って吸引隙間が形成され、該吸引隙間を通して外気を常時吸引して前記物品を吸着保持可能に構成されており、前記第二回転円盤の吸着力が前記第一回転円盤の吸着力よりも大きくされていることを特徴とした物品の搬送装置。
【請求項2】
前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤がそれぞれ、連続回転することを特徴とした請求項1に記載の物品の搬送装置。
【請求項3】
前記物品受渡し部において、前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤の各外周部が同一速度で同一方向へ移動することを特徴とした請求項2に記載の物品の搬送装置。
【請求項4】
搬送すべき物品を前記第一回転円盤の外周部に供給する物品供給手段を備え、
前記物品供給手段が、前記物品を搬送するリニアフィーダと、該リニアフィーダの搬送下流端に接続され、該物品をベルト搬送して前記第一回転円盤の外周部に供給するベルトコンベヤとを有し、
前記ベルトコンベヤの搬送速度が前記リニアフィーダの搬送速度よりも大きくされている請求項1〜請求項3の何れかに記載の物品の搬送装置。
【請求項5】
前記第二回転円盤の外周部に吸着保持された物品を該第二回転円盤から除去する物品除去手段を備え、
前記物品除去手段が、先端部を前記第二回転円盤の吸着隙間に差し入れたスクレーパから成る請求項1〜請求項4の何れかに記載の物品の搬送装置。
【請求項6】
物品を外周部に吸着保持して回転する第一回転円盤及び第二回転円盤を用い、各外周部の一部同士を近接させた物品受渡し部において、前記第一回転円盤の外周部に吸着保持された物品を前記第二回転円盤の外周部へ移し替えて搬送する物品の搬送方法であって、
前記第一回転円盤及び前記第二回転円盤の各外周部に全周に亘り形成された吸引隙間を通して外気を常時吸引することによって前記各外周部に前記物品を吸着保持し、
前記第二回転円盤の吸着力を前記第一回転円盤の吸着力よりも大きくすることによって前記物品受渡し部で前記物品を移し替えることを特徴とした物品の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49523(P2013−49523A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188496(P2011−188496)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】