説明

物品収納部の開閉構造

【課題】車両内装部材の構成部分および物品収納部の構成部分によりダンパー効果を発現し得る構成とすることで、開閉動作に伴う操作感向上および質感向上を実現する。
【解決手段】グローブボックス20の物品収納本体22に、該グローブボックス20が閉成位置から開放位置へ変位する過程で第1位置から第2位置へ移動する当接部50を設ける。インストルメントパネル10を構成する箱状部材30に、第1位置から第2位置へ移動する当接部50が当接することで弾性変形する弾性摺接部60を設ける。弾性摺接部60は、当接部50として形成された突片部52の移動方向に沿って延在し、かつ第2位置に臨む端部側で箱状部材30に接合された舌片部62である。舌片部62は、突片部52が第1位置から第2位置に接近するに従い、変形量が徐々に増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品収納部の開閉構造に関し、更に詳細には、車両内装部材に画成した格納部に回動可能に取付けられ、前記格納部内へ格納した閉成位置および該格納部から手前側へ傾倒させた開放位置の間で姿勢変位する物品収納部の開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、種々の自動車における乗員室内において、運転席および助手席の前方には、車両内装部材としてのインストルメントパネルが配設されている。そして図8に示すように、インストルメントパネル10の助手席側には、車検証等の書類や身辺の所持品等を収納可能な物品収納部としてのグローブボックス20が配設されている。
【0003】
グローブボックス20は、図9または図10に示すように、上方に開口したバケット形状の物品収納本体22を主体とし、パネル基材12の前側下部に画成された格納部14において、該パネル基材12に対してヒンジ機構を介して開閉可能に設置されている。従ってグローブボックス20は、物品収納本体22を格納部14内へ格納した閉成位置と、該格納部14から手前側へ傾倒させて物品収納本体22をインストルメントパネル10の前側に臨ませた開放位置との間で姿勢変位するようになっている。なお、物品収納本体22の前側に前面パネル24が組付けられており、該物品収納本体22が閉成位置に保持された状態では、前面パネル24が格納部14の開口領域に整合して、インストルメントパネル10の前側意匠面を構成するようになっている(図8)。このようなグローブボックスに関連する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−90718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年では、前述したグローブボックス20のような開閉する形態の物品収納部に対し、開閉動作に伴う操作感向上および質感向上が求められている。すなわちグローブボックス20は、特に物品収納本体22内に多くの物品を収納してある状態で開放させると自体の重さによって一気に開放するので、開放位置に臨んで回動規制がかかる際に異音が発生し、操作感や質感が低くなってしまう。従って、操作感および質感の向上を図る対策として、例えば図9および図10に示すように、エアダンパーまたはオイルダンパー等のダンパー装置26を装備し、該ダンパー装置26の減衰力を利用してグローブボックス20のゆっくりかつ滑らかな開閉動作が発現されるようにした構成が提案されている。例えば図9は、ダンパー装置26のロッド26Aと前面パネル24をワイヤー28で連結した構成であり、また図10は、ダンパー装置26のロッド26Aを前面パネル24に直接連結した構成となっている。
【0005】
しかし、図9および図10に示した開閉構造では、ダンパー装置26を装備することになるため、部品代が嵩んでコストアップを招来する課題があった。また、インストルメントパネル10の内部に空間的な余裕がない場合は、物品収納本体22のサイズを小さくしてダンパー装置26の配設スペースを確保することになり、グローブボックス20の物品収納容積が減少してしまう不都合もあった。更には、ダンパー装置26の配設位置が制限されるので、グローブボックス20のスムーズな開閉が得られない場合もあり得る。
【0006】
本発明は、車両内装部材の構成部分および物品収納部の構成部分によりダンパー効果を発現し得る構成とすることで、開閉動作に伴う操作感向上および質感向上を実現した物品収納部の開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両内装部材に画成した格納部に回動可能に取付けられ、前記格納部内へ格納した閉成位置および該格納部から手前側へ傾倒させた開放位置の間で姿勢変位する物品収納部の開閉構造において、
前記物品収納部に一体的に形成され、該物品収納部が前記閉成位置から開放位置へ変位する過程で第1位置から第2位置へ移動する当接部と、
前記車両内装部材に一体的に形成され、前記第1位置から第2位置へ移動する前記当接部が当接することで弾性変形する弾性摺接部とを有することを要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、物品収納部に設けた当接部が、車両内装部材に設けた弾性摺接部に当接することで、該弾性摺接部の弾性変形により発生する復帰弾力によってダンパー効果が発現され、物品収納部の開閉動作に伴う操作感向上および質感向上が図られる。しかも、ダンパー効果を発揮する当接部および弾性摺接部が、物品収納部および車両内装部材に設けられて部品点数が増加しないので、コストアップを抑え得ると共に構成が簡素化される。特に、ダンパー装置等を別途装備する必要がないから、部品点数の増加に伴うコストアップが抑えられると共に、物品収納部の物品収納容積が減少しない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記弾性摺接部は、前記車両内装部材の構成部材に形成され、前記当接部の移動方向に沿って延在し、かつ前記第2位置に臨む端部側で該構成部材に接合された舌片部であることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、弾性摺接部の舌片部が当接部の当接により弾性変形し、該舌片部の弾性変形により発生する復帰弾力によりダンパー効果が好適に発現される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記弾性摺接部は、前記車両内装部材の構成部材に形成され、前記当接部の移動方向に沿って延在し、かつ前記第2位置側が前記第1位置側より該当接部に近接するよう斜めに延在する撓曲部であることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、弾性摺接部の撓曲部が当接部の当接により弾性変形し、該撓曲部の弾性変形により発生する復帰弾力によりダンパー効果が好適に発現される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、前記弾性摺接部は、前記当接部が前記第1位置から第2位置に接近するに従い、変形量が徐々に増大するよう構成されていることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、姿勢変位する物品収納部が開放位置に近づくに従ってダンパー効果が徐々に増大し、該物品収納部が開放位置へゆっくりと臨むようになる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、前記弾性摺接部に、前記当接部が係合可能な中間係合部を設けたことを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、閉成位置と開放位置との間を姿勢変位する物品収納部を、中間係合部に当接部が係合した位置で停止保持させ得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る物品収納部の開閉構造によれば、車両内装部材の構成部分および物品収納部の構成部分によりダンパー効果が発現されるので、コストアップや物品収納容積に影響を及ぼすことなく、開閉動作に伴う操作感向上および質感向上を実現し得る等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る物品収納部の開閉構造につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら、以下に説明する。なお実施例では、物品収納部として、車両内装部材であるインストルメントパネルに配設したグローブボックスを例示する。従って、従来技術の説明のために引用した図8〜図10に既出の部材、部位と同一の部材、部位に関しては、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0015】
(第1実施例)
図1は、第1実施例の開閉構造が採用されたグローブボックス20が配設されたインストルメントパネル10を、該グローブボックス20が配設された格納部14の部分で縦断した部分側断面図であり、同図の右側がインストルメントパネル10の前側となっている。インストルメントパネル10は、合成樹脂製のパネル基材12を主体としており、基本的には図8に示した従来のインストルメントパネル10と同一構成となっているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0016】
パネル基材12の前側下部には、インストルメントパネル10の前方に開口した格納部14が画成されている。この格納部14は、図2に概略的に示すように、上壁部32および左右の各側壁部34,34を有したインストルメントパネル10の構成部材である箱状部材30を、パネル基材12に対して裏側から取付けることで、パネル基材12から前方へ開口した凹部として構成されている。箱状部材30は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂を材質とするインジェクション成形部材であって、適度の柔軟性を有している。
【0017】
グローブボックス20は、パネル基材12における前側下部に設けた格納部14に対して収容可能なサイズに形成されており、バケット状の物品収納本体22と、この物品収納本体22と別体に成形されて該物品収納本体22の前側に組付けられる前面パネル24とから構成されている。物品収納本体22は、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂を材質とする一体成形部材であり、内部に所要容積の物品収納空間が画成されていると共に、各種物品の出し入れを許容する物品出入口22Aが上部に形成されている。また前面パネル24は、同じくポリプロピレン(PP)等の合成樹脂を材質とする一体成形部材であり、格納部14の開口領域に合致するサイズ・形状とされて、パネル基材12の一部として構成されるようになっている。
【0018】
前面パネル24の中央上部には、グローブボックス20の開閉操作を行なうための開閉操作レバー36が、支持軸38を介して該前面パネル24に回動可能に配設されている。この開閉操作レバー36は、前面パネル24の前側から外方へ露出して指先を掛け得るようになっている操作部36Aと、この操作部36Aの背面から後方側に一体的に形成され、物品収納本体22に形成した開口部を介して上方へ延出する係止部36Bからなっている。そして、開閉操作レバー36の係止部36Bは、グローブボックス20が閉成位置に臨んだ際に、格納部14の上方に垂設したストライカ16に係脱可能に係止されるようになっている。
【0019】
前述したグローブボックス20は、物品収納本体22の左右側壁部における下端部に配設した突ピン40,40を、箱状部材30の側壁部34,34における下端部に形成した支持孔42,42に夫々突入嵌合させることで、パネル基材12に対して回動可能に取付けられる。従ってグローブボックス20は、物品収納本体22を格納部14内へ格納すると共に前面パネル24をパネル基材12に整合させた閉成位置(図1の実線状態)と、パネル基材12の前方へ傾動して物品収納本体22を外方へ臨ませた開放位置(図1の2点鎖線状態)との間で、回動しながら姿勢変位し得るようになっている。なお、グローブボックス20の重心位置は、突ピン40を通る垂直基準線より前上方に位置しており、開閉操作レバー36を操作して係止部36Bとストライカ16との係止が解除された際には、自重で開放位置側へ姿勢変位するようになっている。
【0020】
また、物品収納本体22の左右の側壁部22B,22Bにおける中央上部に、箱状部材30の側壁部34,34に形成されたガイドレール46に突入するガイドピン44が突設されている。このガイドピン44は、グローブボックス20が閉成位置に臨んだ際にはガイドレール46の後端46Aに当接し、該グローブボックス20が開放位置に臨んだ際には該ガイドレール46の前端46Bに当接するようになっており、所謂ストッパーとして機能して該グローブボックス20の回動領域を規定するようになっている。
【0021】
そして、第1実施例の開閉構造では、図1および図2に示すように、グローブボックス20の物品収納本体22に設けた当接部50と、インストルメントパネル10を構成する箱状部材30に設けた弾性摺接部60とを更に有している。すなわち、第1実施例の開閉構造では、後述するように、グローブボックス20が自重により閉成位置から開放位置へ姿勢変位するに際し、当接部50が弾性摺接部60に当接して該弾性摺接部60を弾性変形させ、該弾性摺接部60の復帰弾力を利用してダンパー効果を発現するよう構成されている。
【0022】
当接部50は、図1および図2に示すように、物品収納本体22における後壁部22Cの上端縁中央から上方へ突出した突片部52により構成され、該物品収納本体22に一体的に形成されている。この突片部52は、グローブボックス20が閉成位置に臨んだ場合には、格納部14の上部後方となる第1位置に臨むと共に(図1に実線表示)、該グローブボックス20が開放位置に臨んだ場合には、格納部14の上部前方となる第2位置に臨むようになっている(図1に2点鎖線表示)。なお第1位置は、図1に示すように、物品収納本体22の回動中心となる突ピン40の略真上に位置しており、また第2位置は、第1位置より前方でかつ下方に位置している。従って、グローブボックス20が閉成位置から開放位置へ姿勢変位する過程において、第1位置から第2位置に移動する突片部52の頂縁部54の移動軌跡は、図1に示すように、突ピン40を中心とした上方へ突出する円弧状となり、箱状部材30の上壁部32より上方へ突出するようになっている。
【0023】
弾性摺接部60は、図1および図2に示すように、合成樹脂製の箱状部材30における上壁部32の左右中央に横長コ字形のスリットを形成することで、該箱状部材30に一体的に形成された舌片部62により構成される。すなわち舌片部62は、第1位置と第2位置との間を移動する突片部52の移動方向に沿って延在し、かつ第2位置に臨む前側の端部(基端62A)側で箱状部材30の上壁部32に連設されている。従って舌片部62は、突片部52の頂縁部54が下方から当接した際に、第1位置に臨む後側の端部(自由端62B)側が上方へ移動するよう撓曲的に弾性変形し、この弾性変形に伴って復帰弾力が発現するよう構成されている。なお図2に示すように、舌片部62が弾性変形することで上壁部32に形成される開口部64の幅寸法は、突片部52の幅寸法より大きく設定され、該舌片部62が開口部64内に延出しながら移動し得るようになっている。
【0024】
前述した第1実施例のグローブボックス20は、該グローブボックス20が閉成位置に停止して格納部14内に格納され、当接部50が第1位置に臨んでいる場合は、図1に示すように、突片部52が舌片部62の自由端62Bに非接触状態で近接し、該弾性摺接部60が変形しないようになっている。なお、物品収納本体22内に物品がある場合は勿論、該物品収納本体22内に物品が全く入っていない場合でも、グローブボックス20の重心は、突ピン40より前上方に位置している。
【0025】
グローブボックス20が閉成位置から開放位置へ姿勢変位する際には、図3(a)および図3(b)に示すように、第1位置から第2位置に向けて円弧状に移動する突片部52が、開口部64に臨んで舌片部62に下方から当接するようになる。そして突片部52は、第1位置から該第1位置と第2位置との略中間位置まで移動する際は、徐々に上方へ移動して上壁部32から徐々に突出するので、舌片部62の変形量を徐々に増大させる。また突片部52は、前述した略中間位置から第2位置へ移動する際は、徐々に下方へ移動するようになるが、舌片部62の基端62Aに近接するため、該舌片部62の変形量は更に増大するようになる。すなわち、第1実施例の開閉構造では、突片部52が第1位置から第2位置に移動するに従って舌片部62の変形量が徐々に増大し、これに伴って該舌片部62の復帰弾力が徐々に増大するよう構成されている。
【0026】
従って、第1実施例の開閉構造を採用したグローブボックス20は、閉成位置から開放位置へ自重により姿勢変位するに際し、突片部52の当接によって舌片部62が撓曲的に弾性変形し、該舌片部62に発生する復帰弾力によって発現されるダンパー効果により、開放位置に向けてゆっくりと回動するようになる。しかも、グローブボックス20が閉成位置から回動し始めた姿勢変位の初期段階では、舌片部62の変形量が小さいので該グローブボックス20の回動速度が速く、グローブボックス20が開放位置に近づくに従って該舌片部62の変形量が徐々に増大するので、該グローブボックス20の回動速度は徐々に小さくなっていく。すなわち、グローブボックス20が開放位置に臨む際には、ガイドピン44がガイドレール46の前端46Bにゆっくりと当接するようになり、該クローブボックス20が開放位置まで一気に開放したり、衝撃を伴いながら開放位置で停止することがない。
【0027】
前述した第1実施例の開放構造によれば、グローブボックス20の物品収納本体22に設けた当接部50の突片部52が、格納部14を画成する箱状部材30に設けた弾性摺接部60の舌片部62に当接することで、該舌片部62の弾性変形により発生する復帰弾力によってダンパー効果が発現されるようになり、グローブボックス20の開閉動作に伴う操作感向上および質感向上が図られる。また、ダンパー装置等を別途装備する必要がないから、部品点数の増加に伴うコストアップを抑え得ると共に、物品収納本体22のサイズを小さく変更する必要がないのでグローブボックス20の物品収納容積が減少する不都合も生じない。すなわち、ダンパー効果を発現する当接部50および弾性摺接部60が、グローブボックス20の物品収納本体22およびインストルメントパネル10の箱状部材30に夫々一体的に形成されるため、部品点数が増加しないと共に構成が簡素化される。更に、グローブボックス20が開放位置に近づくに従ってダンパー効果が増大するので、該グローブボックス20が開放位置へゆっくりと臨むようになり、衝撃を伴いながら開放位置で停止することがないので、開放位置への停止時に異音が発生することがない。
【0028】
(第2実施例)
図4は、第2実施例の開閉構造を採用したグローブボックス20が配設されたインストルメントパネル10を、該グローブボックス20が配設された格納部14の部分で縦断した部分側断面図である。なお、インストルメントパネル10、グローブボックス20の基本構成は第1実施例と同じので、同一部材、部位には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0029】
第2実施例の開閉構造では、図4および図5に示すように、該グローブボックス20の物品収納本体22に設けた当接部50と、インストルメントパネル10を構成する箱状部材30に設けた弾性摺接部60とを更に有している。当接部50は、前述した第1実施例の当接部50と基本的に同一で、物品収納本体22における後壁部22Cの上端縁中央から上方へ突出した突片部52であり、該物品収納本体22に一体的に形成されている。
【0030】
弾性摺接部60は、図4および5に示すように、合成樹脂製の箱状部材30における上壁部32に、前後方向に延在する第1開口部66と、該第1開口部66の左右両側において前後方向に延在する第2開口部68,68とを形成することで、当接部50の移動方向に沿って延在し、かつ第2位置側が第1位置側より該当接部50に近接するよう斜めに延在する2本の撓曲部70,70により構成されている。各撓曲部70,70は、図6(a)に示すように、短手方向において上壁部32の面方向に沿った方向の厚みTが、長手方向において均一であって、例えば1〜2mm程度に設定されている。従って各撓曲部70,70は、第1開口部66の側から側方へ押圧すると、第2開口部68の側へ撓曲的に弾性変形して復帰弾力が発生し、また押圧を解除すると元の形状に復帰するようになっている。
【0031】
また、各撓曲部70,70の左右方向の間隔は、図6(a)に示すように、各撓曲部70,70が第2位置側に向かうに従って相互に近接するように延在しているので、第1位置に臨む部位での間隔L1が突片部52の幅Wより大きく設定されており、第2位置に臨む部位での間隔L2が該当接部50の幅Wより小さく設定されている。すなわち、第1開口部66に延出する突片部52は、第1位置に臨んでいる際には各撓曲部70,70に接触せず、第1位置から第2位置に向けて適宜移動した位置(図6(b)に2点鎖線で表示)まで移動すると、該突片部52の各側縁部56,56が対応の撓曲部70,70に当接するようになっている。そして、突片部52が第2位置に近づくに従って各撓曲部70,70の変形量が徐々に増大し、これに伴って該舌片部62の復帰弾力が徐々に増大するよう構成されている。
【0032】
従って、第2実施例の開閉構造を採用したグローブボックス20は、閉成位置から開放位置へ自重により姿勢変位するに際し、突片部52の当接によって各撓曲部70,70が撓曲的に弾性変形し、該撓曲部70,70に発生する復帰弾力によって発現されるダンパー効果により、開放位置に向けてゆっくりと回動するようになる。しかも、グローブボックス20が閉成位置から回動し始めた姿勢変位の初期段階では、各撓曲部70,70の変形量が小さいので該グローブボックス20の回動速度が速く、グローブボックス20が開放位置に近づくに従って該撓曲部70,70の変形量が徐々に増大するので、該グローブボックス20の回動速度が徐々に小さくなっていく。すなわち、グローブボックス20が開放位置に臨む際には、ガイドピン44がガイドレール46の前端46Bにゆっくりと当接するようになり、該クローブボックス20が開放位置まで一気に開放したり、衝撃を伴いながら開放位置で停止することがない。
【0033】
前述した第2実施例の開放構造によれば、グローブボックス20の物品収納本体22に設けた当接部50の突片部52が、格納部14を画成する箱状部材30に設けた弾性摺接部60の撓曲部70,70に当接することで、該撓曲部70,70の弾性変形により発生する復帰弾力によってダンパー効果が発現されるようになり、グローブボックス20の開閉動作に伴う操作感向上および質感向上が図られる。また、ダンパー装置等を別途装備する必要がないから、部品点数の増加に伴うコストアップを抑え得ると共に、物品収納本体22のサイズを小さく変更する必要がないのでグローブボックス20の物品収納容積が減少する不都合も生じない。すなわち、ダンパー効果を発現する当接部50および弾性摺接部60が、グローブボックス20の物品収納本体22およびインストルメントパネル10の箱状部材30に夫々一体的に形成されるため、部品点数が増加しないと共に構成が簡素化される。更に、グローブボックス20が開放位置に近づくに従ってダンパー効果が増大するので、該グローブボックス20が開放位置へゆっくりと臨むようになり、衝撃を伴いながら開放位置で停止することがないので、開放位置への停止時に異音が発生することがない。
【0034】
(第2実施例の変更例)
図7(a)および図7(b)は、第2実施例の変更例に係る開閉構造を示した説明図である。この変更例に係る開閉構造では、弾性摺接部60の各撓曲部70,70において、当接部50の突片部52が当接する側端面に、該撓曲部70,70の長手方向へ所要間隔毎に合計2個の中間係合部72を設けたものである。このように各撓曲部70,70に適宜数の中間係合部72を設けた場合は、グローブボックス20の姿勢変位に伴って突片部52が、第1位置と第2位置との間を移動する際に各中間係合部72に整合すると該中間係合部72に弾力的に係合するので、閉成位置と開放位置との間を姿勢変位するグローブボックス20を、中間係合部72に突片部52が係合した位置で停止保持させ得る。すなわち、図7に示した開閉構造の場合は、開放位置と中間位置との間における2箇所の位置で、グローブボックス20を停止保持させることが可能である。なお、中間係合部72の配設数は2個に限定されるものではなく、1個または3個以上でもよい。
【0035】
また、図示省略するが、前述した第1実施例に示した舌片部62に、中間係合部72を設けることも可能である。すなわち、弾性摺接部60の舌片部62において、当接部50の突片部52が当接する下面に、該舌片部62の長手方向へ所要間隔毎に適宜数の中間係合部72を設ければ、グローブボックス20の姿勢変位に伴って突片部52が、第1位置と第2位置との間を移動する際に各中間係合部72に整合すると該中間係合部72に弾力的に係合するので、閉成位置と開放位置との間を姿勢変位するグローブボックス20を、中間係合部72に突片部52が係合した位置で停止保持させ得る。
【0036】
なお、当接部50および弾性摺接部60により構成される開閉構造は、前述した第1実施例および第2実施例に例示した態様のものに限定されるものではなく、例えば次のように変更することが可能である。
(1)グローブボックス20の物品収納本体22における側壁部22B,22Bの一方または両方に、前述した各実施例に示した突片部52の如き当接部50を設けると共に、箱状部材30における側壁部34,34の一方または両方に、前述した各実施例に示した舌片部62または撓曲部70の如く弾性摺接部60を設けても、別途のダンパー装置を装備することなくダンパー効果を発現させることができる。
(2)第1実施例における弾性摺接部60の舌片部62は、第1位置に臨む後側の端部で上壁部32に連設し、第2位置に臨む前側の端部側を自由端とするように構成してもよい。
(3)第1実施例における弾性摺接部60の舌片部62は、該舌片部62の配設位置や、当接部50の突片部52が当接する下面形状を様々に変更することで、第1位置から第2位置に移動する該突片部52との当接タイミングや当接度合を変更することで、ダンパー効果のチューニングを容易に行なうことができる。
(4)第2実施例における弾性摺接部60の撓曲部70を左右の何れか1本として、当接部50の突片部52の一方の側縁部56に当接するように形成してもよい。
(5)第2実施例における弾性摺接部60の撓曲部70は、第1位置に臨む後側の端部だけを箱状部材30の上壁部32に連設させ、第2位置に臨む前側の端部を該上壁部32から分離させた片持ち形態としてもよい。
(6)第2実施例における弾性摺接部60の撓曲部70は、該撓曲部70の配設位置や、当接部50の突片部52が当接する側面形状を様々に変更することで、第1位置から第2位置に移動する該突片部52との当接タイミングや当接度合を変更することで、ダンパー効果のチューニングを容易に行なうことができる。
(7)本願が対象とする物品収納部は、インストルメントパネル10に取付けられるグローブボックス20に限定されず、例えばドアパネルに設けたドアポケットやフロアコンソールに設けた収納ボックス等、開閉タイプとして構成される物品収納部の全てが対象とされる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施例の開閉構造が採用されたグローブボックスが配設されたインストルメントパネルを、該グローブボックスが配設された格納部の部分で縦断した部分側断面図である。
【図2】グローブボックスの物品収納本体に設けた当接部の突片部と、格納部を画成する箱状部材に設けた弾性摺接部の舌片部とを示した概略斜視図である。
【図3】グローブボックスが閉成位置から開放位置へ姿勢変位する際の突片部と舌片部との関係を示した説明図であって、(a)は、グローブボックスが閉成位置から姿勢変位を開始した直後の状態で示し、(b)は、グローブボックスが開放位置に近づいた状態で示している。
【図4】第2実施例の開閉構造が採用されたグローブボックスが配設されたインストルメントパネルを、該グローブボックスが配設された格納部の部分で縦断した部分側断面図である。
【図5】グローブボックスの物品収納本体に設けた当接部の突片部と、格納部を画成する箱状部材に設けた弾性摺接部の撓曲部とを示した概略斜視図である。
【図6】グローブボックスが閉成位置から開放位置へ姿勢変位する際の突片部と撓曲部との関係を示した説明図であって、(a)は、グローブボックスが閉成位置から姿勢変位を開始した直後の状態で示し、(b)は、グローブボックスが開放位置に近づいた状態で示している。
【図7】第2実施例の変更例に係る開閉構造を示した説明図であって、(a)は、撓曲部に設けた中間係合部を示し、(b)は、各中間係合部に突片部が係合する位置毎に、グローブボックスを停止保持させ得る状態を示している。
【図8】グローブボックスを配設したインストルメントパネルの部分斜視図である。
【図9】ダンパー装置を装備したグローブボックスの一例を示した概略斜視図である。
【図10】ダンパー装置を装備したグローブボックスの別例を示した概略斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10 インストルメントパネル(車両内装部材),14 格納部
20 グローブボックス(物品収納部),30 箱状部材(構成部材),50 当接部
52 突片部,54 頂縁部,56 側縁部,60 弾性摺接部,62 舌片部,70 撓曲部
72 中間係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材に画成した格納部に回動可能に取付けられ、前記格納部内へ格納した閉成位置および該格納部から手前側へ傾倒させた開放位置の間で姿勢変位する物品収納部の開閉構造において、
前記物品収納部に一体的に形成され、該物品収納部が前記閉成位置から開放位置へ変位する過程で第1位置から第2位置へ移動する当接部と、
前記車両内装部材に一体的に形成され、前記第1位置から第2位置へ移動する前記当接部が当接することで弾性変形する弾性摺接部とを有する
ことを特徴とする物品収納部の開閉構造。
【請求項2】
前記弾性摺接部は、前記車両内装部材の構成部材に形成され、前記当接部の移動方向に沿って延在し、かつ前記第2位置に臨む端部側で該構成部材に接合された舌片部である請求項1記載の物品収納部の開閉構造。
【請求項3】
前記弾性摺接部は、前記車両内装部材の構成部材に形成され、前記当接部の移動方向に沿って延在し、かつ前記第2位置側が前記第1位置側より該当接部に近接するよう斜めに延在する撓曲部である請求項1記載の物品収納部の開閉構造。
【請求項4】
前記弾性摺接部は、前記当接部が前記第1位置から第2位置に接近するに従い、変形量が徐々に増大するよう構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の物品収納部の開閉構造。
【請求項5】
前記弾性摺接部に、前記当接部が係合可能な中間係合部を設けた請求項1〜4の何れか一項に記載の物品収納部の開閉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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