説明

物品捕捉システム

【課題】 国や地域により通信環境が異なる場合でも、適切な通信方法を確保し搬送対象の物品の捕捉が良好に行えるようにする。
【解決手段】 物品1に貼付されたタグ2から情報を収集して物品流通を管理する物品捕捉システムにおいて、搬送手段10に、タグ2からタグ情報を取得するタグ情報受信手段11a〜11cと、そのタグ情報受信手段11a〜11cが取得したタグ情報を受信し無線通信手段22を介して管理サーバ8に送信する情報処理装置13を搭載し、この情報処理装置13は、自局位置を測位する位置測位手段14と、異なる通信方式の無線通信手段22,24に対応した通信手段17と、地域ごとの適切な通信方法が記録されている記録手段16と、通信方法を切り替える通信方法切替手段15から構成され、この通信方法切替手段15は、現在地が含まれる地域に対応する適切な通信方法を選択し、その適切な通信方法に従って無線通信を行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無線ICタグが装着された原材料や製品等、物品の搬送過程を捕捉する物品捕捉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、微小な無線チップにより非接触でデータ・キャリヤを認識し、人や物を識別・管理する個体識別技術(RFID;Radio Frequency IDentification)が実用化されている。従来の技術(特にバーコード)と比べ、情報の更新や追加が可能であり、また複数個体の一括識別が可能である、透過性がある等の特徴を備えている。固体識別技術は流通業界でバーコードに代わる商品識別・管理技術として研究が進められてきたが、それに留まらず社会のIT化・自動化を推進する上での基盤技術として注目が高まっている。
【0003】
ここで、従来システムの一例を、図15を参照して説明する。図15は、無線通信機能(トランスポンダ)を備えるICタグ(いわゆる「無線ICタグ」。)が同梱された搬送対象物(物品)の位置を捕捉する電子トラッキングシステムを、工場、倉庫又は大型店舗等の屋内施設に適用した例である。屋内施設200には、タグリーダ機能を備えた複数のトランシーバ203a,203b,203cが所定位置に設置され、搬送対象物201に貼付された無線ICタグ202から無線で送られる情報を受信できるようになっている。無線ICタグ202から収集した情報は、LAN204を経由して位置を特定するロケーションサーバ205に送信される。206はインターネット等の広域通信網を表す。
【0004】
例えば、フォーク・リフト210などの搬送手段により、無線ICタグ202が同梱された搬送対象物201を、トランシーバ203bの受信可能エリア内のある場所からトランシーバ203aの受信可能エリア内の目的の場所へ運ぶ作業を行う。このとき、無線ICタグ202の移動をトランシーバ203b,203aのアンテナでそれぞれ受信して、LAN204を介してその情報をロケーションサーバ205に転送する。ロケーションサーバ205は、トランシーバ203b,203aより送られた情報から、搬送対象物201の移動を認識するとともに移動先の位置を特定することができる。
【0005】
ロケーションサーバ205は上記位置情報を、ピックアップ・リスト、在庫移動指図、ショップ・パケット、作業のディスパッチ等に反映し、リアルタイムにディスプレイに表示することができる。そして、ディスプレイに表示された現在の最新状況に基づいて、対応を決定・実行することができる。また、無線ICタグを用いることで、バーコードとは異なり読み取り作業を省略することができる。
【0006】
しかし、一般に、無線ICタグは出力が高くないため測定可能範囲が狭く、施設内設置トランシーバの測定可能範囲を超えると測位できなくなってしまう。また、搬送対象物が上述のトランシーバ設置場所、すなわち屋内施設から出てしまった場合も、そのトラッキング(捕捉)機能を失ってしまう。そのため、例えば物流において、原材料調達地−トランシーバ設置場所(工場等)間、及びトランシーバ設置場所(工場等)−消費者間で、物品の捕捉ができず、原材料調達地から消費者までの完全なトレーサビリティが確保できない。そのため、エンタープライズ・ソリューションとして管理できない欠落部が存在してしまう。
【0007】
そこで、全地球測位システムGPS(GPS:Global Positioning System)を利用したシステムが考えられた。GPSと無線電話網等の通信網を組み合わせることによって、無線ICタグの屋外での捕捉が実現可能となる。これにより、原材料調達地から消費者間の物品の捕捉や、車両管理などが行えるようになった。
【0008】
例えば、従来文献1に、無線ICタグを貼付した荷物を搬送するトラックに、広域無線通信機能及びGPS機能を持つリーダ/ライタを搭載し、トラック位置及び荷物情報を、輸送中にリアルタイムで管理する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2002−358591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、搬送対象物が停滞する税関施設、海外拠点、自社管理外地域などにおいては、自社のインフラストラクチャー(以下、「インフラ」という。)を整備できない、あるいは仮施設のため投資に対する効果が期待できないといった理由から設備が未整備となるために、搬送対象物を捕捉することができないことがある。
【0010】
また、国や地域によって通信環境が異なるという問題がある。第1に、その地域の通信環境が未整備の場合である。この場合、一つの通信手段だけでは、通信不能地域でその通信手段が使用できない状況が生じる。また、さまざまな通信手段が存在しても、通信コスト・通信可能地域が異なるので適切な通信方法を選択する必要がある。第2に、各国によって使用できる周波数帯が異なる場合である。各国の電波法により、利用可能な周波数帯が違う。そのため、同じ周波数を利用したトランスポンダを使用することができない。
【0011】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、国や地域により通信環境が異なる場合でも、適切な通信方法を確保し搬送対象の物品の捕捉が良好に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し目的を達成するため、本発明は、無線通信機能を備えたタグを搬送対象の物品に貼付し、このタグから情報を収集し物品の搬送過程を管理する物品捕捉システムにおいて、タグと無線通信してタグ情報を取得するタグ情報受信手段と、このタグ情報受信手段が取得したタグ情報を受信し無線通信手段を介して管理サーバに送信する情報処理装置を、上記物品を搬送する搬送手段に搭載し、この情報処理装置は、自局の位置を測位する位置測位手段と、異なる通信方式の無線通信手段に対応した通信手段と、地域ごとの適切な通信方法が記録されている記録手段と、通信方法を切り替える通信方法切替手段から構成され、この通信方法切替手段が、位置測位手段により測位された現在地に基づいて、その現在地が含まれた地域に適した通信方法を選択し、情報処理装置は選択された通信方法に従って無線通信を行う構成とする。
【0013】
斯かる構成によれば、タグが貼付された物品を搬送する搬送手段に搭載した情報処理装置が自身の位置を把握し、その地域に対応した適切な通信方法を選択するようにしたので、地域を問わずタグと管理サーバ間の適切な通信環境を確保することができる。
【0014】
また、上述の発明において、上記タグ情報受信手段に上記タグへの書き込み機能を設けるとともに、上記情報処理装置はタグへの書き込みを制御する書き込み制御手段を有し、この書き込み制御手段は、予め設定された所定の規則に従ってタグ情報受信手段に対しタグへの書き込み指令を出し、タグ情報受信手段は、その書き込み指令に従い少なくとも上記位置測位手段が測位した現在地の位置情報及び時刻をタグに書き込む構成とした。
【0015】
斯かる構成によれば、タグ情報受信手段にタグへの書き込み機能を設け、搬送手段での輸送中において、予め設定された所定の規則に従って書き込み制御部を介し位置測位手段とタグ情報受信手段を連動させるようにしたので、測位した位置と時刻を自動的にタグに記録することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タグが貼付された物品を搬送する搬送手段に搭載した情報処理装置が自身の位置を把握し、その地域に対応した適切な通信方法を選択するように構成したので、地域を問わずタグと管理サーバ間の適切な通信環境を確保することができる。したがって、国や地域を問わず、物品に貼り付けたタグと管理サーバ間の良好なデータの送受信が実現可能となった。これにより、屋内外を問わず、原材料・製品等、物品の物流捕捉が実現可能になり、企業間、国際間を横断する物品の物流捕捉を、簡便かつ確実に行うことができるという効果がある。
【0017】
また、タグ情報受信手段にさらにタグへの書き込み機能を設け、搬送手段での輸送中において、予め設定された所定の規則に従って書き込み制御部を介し位置測位手段とタグ情報受信手段を連動させるようにしたので、測位した位置と時刻を自動的にタグに記録することができる。したがって、タグ自体に製造情報に加え、配送途中の位置と時刻も記録されるので、管理サーバへの照会なしに商品の経路履歴を把握できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本例によるシステムの概念を示したものである。図1のおよそ左半分は従来同様のインフラ良好地域(屋内)、右半分はインフラ良好地域外の例えば国外や野外におけるシステムとなっている。
【0020】
図1において、1は搬送対象となる自動車等の製品(流通物品)、2は製品1に関する情報が記録された無線ICタグを示す。屋内における一般的な電子トラッキングシステムは、これら無線ICタグ2、アンテナを有しその無線ICタグ2から送られる情報を受信するトランシーバ(タグ情報受信手段)3a〜3c、Ethernet等で構築されたLAN4、トランシーバ3a〜3cから情報を収集し自動車の位置を特定するロケーションサーバ5,6から構成される。そして、ロケーションサーバ5,6が収集した情報は、LAN7を介してインターネット等の広域通信網(WAN:Wide Area Network)と接続した物流管理センター等の管理サーバ8に供給され、この管理サーバ8にて後述するHI−GPS13からの情報も含め全ての無線ICタグの情報が管理される。
【0021】
一方、図1においては、破線部10は、トラックやタンカー、飛行機など製品1を搬送する搬送手段を表し、この搬送手段10内において、製品1に貼付された無線ICタグ2の情報を収集する電子トラッキングシステム20を設けた例である。すなわち、電子トラッキングシステム20ごと搬送手段10と一緒に移動する。電子トラッキングシステム20は、無線ICタグ2と無線通信し情報を収集するトランシーバ11a〜11c、Ethernet等で構築されたLAN12、トランシーバ11a〜11cから無線ICタグ2の情報を取得、GPSを利用して自局の位置を測位、及びインターネットや通信衛星等を利用して管理サーバ8と通信する情報処理装置(以下、「HI−GPS」という。)13から構成される。なお、トランシーバの設置数は、搬送手段10の積載空間の大きさ、トランシーバと無線ICタグ間の送受信電波の強度等により決定する。
【0022】
このHI−GPS13は、GPSを利用して位置情報を入手する位置測位手段14と種々のシステム制御・データ制御等を行う制御手段15から構成される。制御手段15が入手したデータや演算結果などはHI−GPS13に設けられたメモリカード16等の記憶手段に保存される。また、HI−GPS13とインターネットや通信衛星等との通信は、HI−GPS13に装着された通信カード17等の通信手段により行われる。後述するが、この通信カードは複数用意され、適宜切り替えて複数の通信方式に対応できるようにしてある。
【0023】
このように、本例では、搬送手段10とともに移動する電子トラッキングシステム20のHI−GPS13に、GPS機能、複数の通信手段、システム制御及びデータ制御等を行う制御手段を備えた。そして、このような構成により、HI−GPS13は、所定のプログラムに従い無線ICタグ2からの情報を収集し、無線通信基地局22との通信を行い、WAN23を経由して管理サーバ8にデータを送信する。また、必要に応じて通信衛星24などと通信を行い、パラボラ・アンテナ25を介して管理サーバ8にデータを送信する。
【0024】
ここで、HI−GPS13についてさらに詳細に説明する。
図2は、HI−GPSの外観図を示すものである。この例では、HI−GPS13の正面に、電源スイッチ31、電源の入/切を確認するための電源ランプ31a、4つのカスタマイズ・ボタン32と各カスタマイズ・ボタンに対応したエラー判定用の4つのLED(Light Emitting Diode)32aからなるスイッチ・ボックスを設けてある。利用者が記録したいイベント(状態)時に所望のカスタマイズ・ボタンを押すことにより、データが収集される。記録対象はイベントの種類(ボタン番号)、位置、時間などである。
【0025】
カスタマイズ・ボタンの割り当ての一例としては、次のようなものが考えられる。
ボタン(1)…搬送時ログをとらない
ボタン(2)…記録開始
ボタン(3)…記録終了
ボタン(4)…その他予備
例えば、ボタン(2)を押下すると、一定時間毎に記録するなど、所定のプログラムに従って位置・時刻が自動的に記録される。自動記録を終了するにはボタン(3)を押す。また、ボタン(4)は利用者のルールにより用いることができ、例えば税関施設や海外での荷卸時等に、ボタン(4)を押下して手動でデータを収集するように設定することもできる。4つのLED32aでは、そのランプの点き方で各カスタマイズ・ボタンに割り当てた機能のプログラム・チェックを行い、エラー判定を行う。
【0026】
また他の例として、例えばHI−GPS13をゴミ清掃車に搭載した場合、ボタンを次のように割り当てることもできる。
ボタン(1)…回送時ログをとらない
ボタン(2)…記録開始
ボタン(3)…記録終了
ボタン(4)…危険物が発見された場合
この場合、例えばゴミ集積場所に危険物が捨てられていた場合、ボタン(4)を押すとその位置と時刻が記録される。なお、HI−GPS13の外観、スイッチの個数、配置、機能割り当て等はこれらの例に限るものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。
【0027】
図3は、HI−GPS13の背面図を示すものである。本例では、図3に示すように、HI−GPS筐体の背面に、電源端子33、外部アンテナを接続するGPSアンテナ端子34、外部機器と接続しシリアル通信を行うRS232C用コネクタ35、ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)入力用コネクタ36、有線LAN用コネクタ37、フロントパネルに配置されている本体ボタン及びLEDと同機能のスイッチ・ボックスを外付け接続するスイッチ・ボックス用コネクタ38、メモリカード(記憶手段)用のスロット41、通信カード(通信手段)用のスロット42を設けてある。メモリカード及び通信カードは、例えばCF(コンパクトフラッシュ:登録商標)規格等のPCカードが用いられる。
【0028】
図3の例では、PCカード装着用スロットは、スロット41,42の2つとなっているが、この例に限るものではない。例えば異なる仕様の通信カードを装着するスロットを複数設けた場合、必要に応じて通信カードを選択して通信方法を使い分けることができる。
【0029】
図4は、HI−GPS13の上面図を示し、メモリカード用スロット41にメモリカード16が装着されている例を表している。
【0030】
次に、HI−GPS13のブロック構成について、図5を参照して説明する。HI−GPS13は、図5に示すように、GPS及びPCカードを動作させるGPS・PCカードI/Fボード50と、所定のプログラムに従いHI−GPS13全体の制御を司るCPUボード60の大きく2つに分けられる。
【0031】
GPS・PCカードI/Fボード50は、例えばトラックのカーバッテリやシガーソケットなど搬送手段10からの電源が供給されるとともに、CPUボード60へ電源を供給する電源部51を備える。また、電源部51にて変圧処理がなされた電力を充電するバッテリ52、GPSアンテナ14aが接続され位置測位手段として機能するGPSモジュール54、PCカードI/F53、PCカード・データCOM55から構成される。
【0032】
上記PCカード・データCOM55は、通信カード用スロット42に装着される所定のPCカード規格の通信カードを介してやり取りされるデータを取り扱うデータ処理機能を備え、HI−GPS13に装着される通信カードの数、通信方式に対応させて用意する。また、PCカードI/F53は、PCカード・データCOM55とHI−GPS13のプログラム間でデータをやり取りするための手順や形式を規定するものである。
【0033】
CPUボード60は、制御手段を構成するCPU61、RAM62、記憶手段として機能するフラッシュメモリ63、LAN64、ADC・GPIO(General Purpose IO:汎用I/O)65、PCカードATA(AT Attachment)66から構成される。図5においては、GPS・PCカードI/Fボード50の電源部51から、CPUボード60の各部へ電源が供給されるように構成されている。
【0034】
CPUボード60上のCPU61は、フラッシュメモリ63に記録された所定のプログラムに従い、RAM62を作業領域としてHI−GPS13全体の制御及び演算処理を行うとともに、NTP(Network Time Protocol)により世界標準時間と接続し時刻合わせをする機能を持つ。
【0035】
また、LAN64は、例えばIEEE802.11b規格に準拠し、LAN用コネクタ37からLANケーブルを介し外部機器と通信する。ADC・GPIO65は、ADC入力用コネクタ36を介してLED/KEYを備えたスイッチ・ボックスなどと接続し、汎用I/Oでアナログ信号を受け取りデジタル信号に変換する。PCカードATA66は、メモリカード用スロット41に装着されるリムーバブルメディアとの接続をサポートしたインターフェースである。
【0036】
本体LED/KEY67は、図2の前面パネルに設けられた各カスタマイズ・ボタン及びLEDであり、利用者によるキー入力信号はADC・GPIO65に入力される。また、外付けLED/KEY68は、オプションでの設置が可能な構成としてある。例えばHI−GPS13本体はトラックの荷台へ積み込み、外付けLED/KEY68は運転席近傍に設置するなどの利用方法が考えられる。
【0037】
上述したHI−GPS13は、野外での搬送及び通信に耐えられるよう、耐熱温度の強化、さらには電源ノイズ、静電気、サージ等に対する対策を施し、特殊車両のバッテリでも安定して動作するようにするなど、種々の対策が講じられている。なお、HI−GPS13の電源として、搬送手段から供給するようにしたが、二次電池等の自己電源を設けるようにしてもよく、あるいはそれらの併用であってもよい。
【0038】
次に、HI−GPS13を用いた無線通信システムの例を、図6を用いて説明する。
図6は、HI−GPS13が、LAN12を介してトランシーバ機能を備えたリーダ/ライタ11と接続され、搬送手段のトラック81,82又はフォーク・リフト83に搭載されている例である。HI−GPS13は、カーバッテリから電源が供給され、またTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)のパケット通信とシリアル・ポートをサポートしている。
【0039】
HI−GPS13は、通信カード17を使用して最も受信感度の良い無線通信基地局22aと接続する。無線通信基地局22aは、屋内の無線LANの他、PHS(Personal Handyphone System)、DoPa(登録商標)、GPRS(General Packet Radio Service)等の基地局であり、インターネット23aに接続している。また、無線通信基地局22aはキャリアネットワーク23bを経由して無線通信基地局22bと通信可能である。
【0040】
HI−GPS13は、電源投入後に自動的に無線通信のリンクを確立し、例えば自身のIP(Internet Protocol)アドレスやホスト・ネーム等、ネットワーク上で特定できる情報をインターネット23a等を介して管理サーバ8に通知する。管理サーバ8は固定IPアドレスやDNS(Domain Name System)を用いて個々のHI−GPS13を管理し、監視員は端末85,86から管理サーバ8にアクセスして、IDとパスワードでセキュリティの担保された状態で、インターネット上の管理サーバ8経由でデータの管理、後述する個々のセンサの制御やシステムログの確認等が行える。さらに、例えば自動車を購入した契約者が、自宅のPC(パーソナル・コンピュータ)等の端末87からインターネットを経由して、IDとパスワードが担保された状態で管理サーバ8にアクセスし、上記自動車の配達経過を確認できる、などの利用が実現できる。
【0041】
続いて、HI−GPSのルータ・リピータ機能について、図7を参照して説明する。図7において、18はHI−GPS13と有線LANで接続された無線LANブリッジ、19は無線LAN通信機能付きのセンサ(又は端末)を示し、HI−GPS13、無線LANブリッジ18、センサ19が、無線ICタグ2が貼付された搬送対象物84を移動するフォーク・リフト83に搭載されている例である。センサ19には、例えば、温度センサ、扉開閉センサ、デジタル式タコグラフなど、製品の搬送状態が確認できる種々のセンサが適用される。
【0042】
センサ19からの無線信号を無線LANブリッジ18が中継してHI−GPS13に送信する。HI−GPS13はその信号を受信すると、通信カード17を利用して無線通信基地局22cへ送信する。無線通信基地局22cはインターネット等広域通信網と接続している。したがって、インターネットと接続された管理サーバ(図7では図示略)が、センサ19の情報を収集することができる。このように、HI−GPS13は、無線LAN等通信機能付きの様々なセンサやデバイス等のルータ・リピータとして機能し、HI−GPS13を介してセンサ19等の周辺機器と管理サーバ8がネットワーク通信できる。
【0043】
さらに、HI−GPS補正情報配信サーバを用いたシステムを、図8を参照して説明する。本システムは、DGPS(Differential GPS)基準局からのDGPS補正情報を活用して、高精度の測位を行うものである。本例では、DGPS基準局を所定間隔で設置するとともに、そのDGPS基準局の受信機に接続し、DGPS補正情報をHI−GPSに配信できるDGPS補正情報配信サーバを設けている。
【0044】
すなわち、DGPS基準局受信機92がGPSアンテナ92aより受信して観測した各GPS衛星との距離の観測誤差成分を、補正情報としてDGPS補正情報配信サーバ91からインターネット23aを経由してトラック等の搬送手段81,82に搭載のHI−GPSに、パケットデータとして送信する。搬送手段81,82に搭載のHI−GPS側では、無線通信基地局22a,22bを通してパケットデータの補正情報を受信し、観測した各GPS衛星との距離からその受信した補正量を差し引いて自身の位置計算を行うことで、測位精度の向上を実現する。そして、これらの情報は、メモリカード16に記録され、所定のタイミングで管理サーバ8に送られる。
【0045】
このように、搬送手段81,82に搭載されたHI−GPSと無線通信基地局22a,22bの間では、位置情報、荷物(無線ICタグ)情報、センサ情報に加え、DGPS補正情報がやり取りされる。そして、管理者は端末85,86(図6参照)を操作し管理サーバ8にアクセスして、位置情報、荷物情報、センサ情報に加え、DGPS補正情報に基づくデータログ情報を確認することができる。
【0046】
次に、本例の物流物品の捕捉処理について説明する。
図9は、搬送対象製品の捕捉処理を示すフローチャートである。図9において、まずトラックなどの製品搬送手段に搭載されたHI−GPSが、GPSにより得られる自局位置に応じて適切な通信方法を選択する(ステップS1)。
【0047】
無線通信においては、地域(各国)によって電波法等により使用できる周波数帯が異なるために、適切な周波数を選択する必要がある。また、比較的遠距離通信になると、電波状態・使用料金など条件がいろいろあり、これらの条件を満たすには、通信装置・周波数・アクセスポイント(電話番号)を適切に選択する必要がある。そのため、HI−GPSに予め仕様の異なる複数の通信装置を装着しておき適宜選択する。また、必要であれば周波数あるいはアクセスポイントも適宜選択する。また、これら通信方法の切り替え処理を実現するプログラムをフラッシュメモリ63に記録しておく。
【0048】
ここで、適切な通信方法の選択処理について、図10,図11を参照し説明する。図10は、適切な通信方法への自動切り替えを行うブロック構成例を示すものである。本例のブロックは、GPSアンテナ14a、GPS測位演算部101、通信方法判定部102、データベース(DB)管理部103、各データベース104,105,106、通信装置切り替え部107、周波数切り替え部108、アクセスポイント切り替え部109、各通信装置110,111,112から構成する。
【0049】
上記通信方法判定部102は、GPS測位演算部101で測位した自局位置に基いて、その位置における適切な通信方法を検索するものである。また、DB管理部103は、通信装置地図データベース104、周波数地図データベース105、アクセスポイント地図データベース106を管理する。通信装置地図データベース104には、特定の位置とその位置での適切な通信装置を対応付けたデータ(属性情報)が蓄積されている。また周波数地図データベース105には、特定の位置とその位置での適切な通信周波数を対応付けたデータが蓄積されている。またアクセスポイント地図データベース106には、特定の位置とその位置での適切なアクセスポイントを対応付けたデータが蓄積されている。
【0050】
上記GPS測位演算部101は図5に示したGPSモジュール54に相当する。また、通信方法判定部102、DB管理部103、通信装置切り替え部107、周波数切り替え部108、アクセスポイント切り替え部109は、HI−GPS13の所定のプログラムに従って動作するCPU61により実現される機能である。また、各地図データベース104〜106は、フラッシュメモリ63又はメモリカード16に記録しておく。
【0051】
図11は、適切な通信方法への自動切り替え処理を示すフローチャートである。図11において、まず、HI−GPS13を初期化(ステップS11)した後、GPS測位演算部101でHI−GPS13の現在地を測位する(ステップS12)。次に、通信方法判定部102は、GPS測位演算部101からの位置情報を検索キーとして、DB管理部103に検索命令を行う(ステップS13)。DB管理部103は、各データベースから現在の位置における属性情報を検索する(ステップS14)。通信方法判定部102は、属性情報から現在地における適切な通信装置ID(識別情報)、適切な周波数、適切なアクセスポイントを抽出する(ステップS15)。
【0052】
ここで、通信方法判定部102は、適切な通信装置IDが現在選択されている通信装置のIDと異なるかどうかを判定する(ステップS16)。HI−GPSには、無線LANの基地局、PHS、DoPa、GPRS等の異なる通信方式の基地局と通信するための通信装置がスロット部に装着してある(図3参照)。本例では、通信方式を区別するための上記通信装置のIDは、スロット又はコネクタのIDとする。
【0053】
上記ステップS16の判断処理において、上記適切な通信装置IDと現在選択されている通信装置IDが異なる場合、通信装置切り替え部107は適切な通信装置IDを基に、通信装置110〜112を切り替える(ステップS17)。そして、通信方法判定部102は、切り替え後の通信装置IDをメモリカード16等に保存する(ステップS18)。一方、上記適切な通信装置IDと現在選択されている通信装置IDが同じ場合、ステップS19に移行する。
【0054】
例えば、HI−GPS13のPCカード用スロットに、PHS方式及びDoPa方式の2種類の通信カードが装着されており、PHS方式を利用して通信していた場合に、通信装置切り替え部107(CPU61)により、DoPa方式の通信カードを選択して通信を行う、というように切り替えが行われる。
【0055】
次に、現在選択している通信装置が周波数切り替えに対応しているかどうかを判定する(ステップS19)。当該通信装置が周波数切り替えに対応している場合、現在地における適切な周波数と現在選択している通信装置の周波数が異なるかどうかを判定する(ステップS20)。適切な周波数と現在選択している通信装置の周波数が異なる場合、周波数切り替え部108は、現在選択されている通信装置の周波数を適切な周波数に切り替える(ステップS21)。そして、通信方法判定部102は、現在選択している通信装置の切り替え後の周波数をメモリカード16等に保存する(ステップS22)。現在選択されているのが通信装置111であるとした場合、通信装置111が周波数切り替えに対応していれば、その周波数を適切な周波数へと切り替える。以上がHI−GPSと無線通信基地局との通信周波数切り替え処理である。
【0056】
次に、HI−GPSと無線ICタグとの通信周波数切り替え処理について説明する。トランシーバ11a〜11c(リーダ/ライタ11)が無線ICタグ2から情報を収集する際に使用する無線通信の周波数は、トランシーバが切り替えを行う。具体的には、HI−GPS内で自局位置を元に周波数地図データベース105から適切な周波数を検索し、LANを介しトランシーバに対して適切な周波数への切り替え命令を行う。
【0057】
この場合、無線ICタグにも周波数切り替え機能を持たせ、トランシーバから受信した周波数に応じて、タグ内部で受信周波数を切り替えて受信時と同じ周波数のデータをトランシーバに返信するようにする。無線ICタグに周波数切り替え機能を持たせた場合、大きさや価格が問題になってくる。この場合には、対象地域毎に利用可能な周波数を設定した無線ICタグをつける運用としてもよい。
【0058】
なお、広域通信網や通信衛星など国や地域による格差がない通信手段を用いる場合には、適切な周波数に切り替える処理のみで対応することが可能である。
【0059】
上記判断ステップS19にて、現在選択されている通信装置が周波数切り替えに対応していない場合はステップS23に移行する。また、判断ステップS20にて、適切な周波数と現在選択している通信装置の周波数が同じである場合にもステップS23に移行する。
【0060】
次に、現在選択している通信装置がアクセスポイントの切り替えに対応しているかどうかを判定する(ステップS23)。例として、PHS方式等の無線電話網を利用して通信する場合を考える。HI−GPSから基地局を介して無線電話網に接続する。その無線電話網からプロバイダの所有するアクセスポイントに接続し、インターネットへ接続する。このとき、地域やその地域の通信設備整備状況等によっては、アクセスポイントの切り替えが必要となる場合があり、このような場合に、本例のアクセスポイント切り替え処理、すなわちアクセスポイントの電話番号の変更が要求される。
【0061】
当該通信装置がアクセスポイント切り替えに対応している場合、現在地における適切なアクセスポイントと現在選択している通信装置のアクセスポイントが異なるかどうかを判定する(ステップS24)。適切なアクセスポイントと現在選択している通信装置のアクセスポイントが異なる場合、アクセスポイント切り替え部109は、現在選択されている通信装置のアクセスポイントの電話番号を適切なアクセスポイントの電話番号に切り替える(ステップS25)。そして、通信方法判定部102は、現在選択している通信装置の切り替え後のアクセスポイントをメモリカード16等に保存する(ステップS26)。
【0062】
例えば、現在選択されているのが通信装置112であるとした場合、通信装置112がアクセスポイント切り替えに対応していれば、そのアクセスポイントを適切なアクセスポイントへと切り替え、保存する。保存終了後、ステップS12に移行し、一連の処理を繰り返す。
【0063】
上記判断ステップS23にて、現在選択されている通信装置がアクセスポイント切り替えに対応していない場合はステップS12に移行する。また、判断ステップS24にて、適切なアクセスポイントと現在選択している通信装置のアクセスポイントが同じである場合もステップS12に移行する。
【0064】
以上で適切な通信方法への自動切り替え処理の説明を終了し、図9の搬送対象製品捕捉処理の説明に戻る。ステップS1の適切な通信方法の選択処理が終了後、製品に貼付されたICタグがトランシーバ11a〜11cの通信可能エリアに入った場合、無線ICタグ2からその位置情報(ローカル)とタグ情報を収集する(ステップS2)。エリアに入ったことの判断は、例えばトランシーバ側からICタグに対して所定の時間間隔でポーリングし、通信が確立できた時点でエリア内に入ったものと判断する。収集した情報は、LAN12を通してHI−GPS13に送信される。HI−GPS13は、収集したこれらのデータのパッキング、暗号化処理を行う(ステップS3)。
【0065】
そして、インターネット23a等の広域通信網を介して、物流管理センター内の管理サーバ8と常時通信を行う設定となっているかどうかを判断し(ステップS4)、常時通信する設定の場合には、上記処理がなされたデータとGPSによって得られた位置(グローバル)をともに暗号化して、ステップS1により選択した適切な通信方法によって一括送信(ステップS5)するとともに、メモリカード16に保存する。常時通信する設定では、例えば1秒間隔でデータの更新・通信を行う。
【0066】
通信設定が所定のプログラムにより規定されている場合には、そのプログラムに従ってデータを送信する(ステップS6)。例えば、GPSによって得られたHI−GPS13が所定の地域にあるかどうかという自局位置に基づいたデータ送信、あるいは5分間隔など所定の時間間隔、指定時刻によるデータ送信などである。または、図2の説明で述べたように手動イベントをトリガとして送信する。あるいは、管理サーバ8からの呼び出しに応じて、収集したデータを送信するようにしてもよい。
【0067】
上記ステップS5及びステップS6にてHI−GPS13からデータが送信されると、これらのデータが広域通信網経由で管理サーバ8に送られて、蓄積される(ステップS7)。
【0068】
斯かる構成によれば、GPSにより得られた自局位置に応じて適切な通信方法を選択するようにしたので、広い地域や複数の国にまたがって、製品とともに搬送される無線ICタグ2と管理サーバ8の通信の連続性を確保できるとともに、通信コストを抑えることができる。
【0069】
次に、上述のように構成されたシステムを応用して、管理サーバに照会することなく商品の経路履歴を把握する方法について、図12、図13、図14を参照し説明する。これを実現する手段として、以下の説明においては、位置情報に基づいた無線ICタグへの自動書き込み処理と、時刻をキーとした無線ICタグへの自動書き込み処理の2つの例について説明する。
【0070】
図12は、無線ICタグへの自動書き込みを行うためのブロック構成を示すものである。この例では、GPSアンテナ14a、GPS測位演算部121、書き込み制御部122、DB管理部123、チェックポイント地図データベース124、計時部125、リーダ/ライタ11、無線ICタグ2a,2bから構成される。
【0071】
上記書き込み制御部122は、無線ICタグへの、GPS測位演算部121で測位された自局位置、その位置に基づくチェックポイント、時刻についてのデータの書き込みを制御する。ここでチェックポイントとは、そこを通過した時刻を記録すべく予め設定された地点または領域であり、フラグ処理等を用いて同一チェックポイントでは一度のみ通過時刻を記録する。また、DB管理部123は、チェックポイント地図データベース124に蓄積されているチェックポイント地図データの管理と、書き込み制御部122の指令によるチェックポイントの検索を行う。チェックポイント地図データベース124は、チェックポイントIDとその位置情報が対応付けられたデータが蓄積されている。
【0072】
上記GPS測位演算部121はGPSモジュール14に相当する。また、書き込み制御部122及びDB管理部123は、HI−GPS13の所定のプログラムに従って動作するCPU61によって実現される機能である。計時部125は、例えばNTP(Network Time Protocol)に従い時刻合わせを行うCPU61の内部時計機能(タイマ)である。また、チェックポイント地図データベース124は、フラッシュメモリ63又はメモリカード16に記録されているものとする。リーダ/ライタ11は、商品に貼付された無線ICタグのデータを読み出すとともに、無線ICタグへデータの書き込みを行う。
【0073】
図13は、位置情報に基づいた無線ICタグへの自動書き込み処理を示すフローチャートである。図13において、まず、HI−GPS13を初期化(ステップS31)した後に、GPS測位演算部121でHI−GPS13の現在地を測位する(ステップS32)。次に、GPS測位演算部121は取得した位置情報を書き込み制御部122に送り(ステップS33)、書き込み制御部122にて送られた位置情報を検索キーとしてDB管理部123に検索命令を行う(ステップS34)。DB管理部123は、チェックポイント地図データベース124から現在位置がどのチェックポイント上にあるかを検索する(ステップS35)。そして、書き込み制御部122にて、現在地がチェックポイント上にあるかどうかを判定する(ステップS36)。
【0074】
上記判断ステップS36において、現在地がチェックポイント上にあると判断した場合、書き込み制御部122は、リーダ/ライタ11に対し書き込み命令を行う。リーダ/ライタ11は、現在のチェックポイントのID、位置情報及び時刻を無線ICタグ2a,2bに書き込む。なお、HI−GPSをルータ・リピータ機能として用いている場合には、併せてセンサ等から収集した情報を記録するようにしてもよい。
【0075】
図14は、時刻情報に基づいた無線ICタグへの自動書き込み処理を示すフローチャートである。図14において、まず、HI−GPS13を初期化する(ステップS41)。この時に現在位置の測位結果を書き込む。計時部125は、予め設定された時刻になったら書き込み制御部122に命令を送る(ステップS42)。書き込み制御部122は、GPS測位演算部121に現在の位置を測位するよう命令を行う(ステップS43)。GPS測位演算部121は、GPSによってHI−GPS13を搭載した搬送手段の現在地を測位し(ステップS44)、取得した位置情報を書き込み制御部122に送る(ステップS45)。書き込み制御部122は、リーダ/ライタ11に書き込み命令を行い(ステップS46)、リーダ/ライタ11が現在の位置情報及び時刻を無線ICタグに書き込み(ステップS47)、処理を終了する。なお、HI−GPSをルータ・リピータ機能として用いている場合には、上述の位置情報に基づく場合と同様に、併せてセンサ等から収集した情報を記録するようにしてもよい。
【0076】
上述の構成によれば、トラック等(搬送手段)での輸送中において、GPSと連動した無線ICタグ用のリーダ/ライタを搬送手段に搭載しておき、予め設定された通過点を通過すると、その位置と時刻、及び通過点のID番号を積荷の商品に貼付された無線ICタグ自体に直接かつ自動的に書き込み記録することができる。また必要に応じて一定間隔(例えば5分ごと)で車両の位置と時刻を無線ICタグに直接かつ自動的に記録することができる。したがって、無線ICタグ自体に製造情報に加えて配送途中の位置と時間も記録されるので、管理サーバに照会することなく商品の経路履歴を把握することができる。
【0077】
具体的な例として、例えば、野菜の袋に安価な無線ICタグを付けておき、産地から経由地、市場、配送過程における位置情報を時刻とともに記録することで、産地と鮮度のより確実な情報を得ることが挙げられる。商品管理者は商品管理用の携帯型無線ICタグリーダを使って無線ICタグからいつでも情報を取り出し、商品の安全性を確認する際の参考にできる。このとき管理サーバ8(図1参照)との通信は発生しないので通信費を気にする必要がない。また読み込みにタイムラグが発生せず、いつでもどこでも確実に読み取りが可能である。消費者は店頭に用意された読み取り装置で商品経路の履歴情報を確認することができる。
【0078】
また、購入した商品を家庭に持ち帰った後でも、そのフォーマットに対応している無線ICタグリーダさえあればいつでも無線ICタグから情報を読み取ることが可能である。また、管理サーバとのアクセスが不要なので、管理サーバの設置やメンテナンスの費用がかからず、無線ICタグに情報が残っている限り情報を取り出すことができる。
【0079】
以上述べた構成の実施の形態によると、無線ICタグの搬送手段に搭載されたHI−GPSが、GPSにより自身の位置を把握し、適切な通信方法を選択するようにしたので、全地球的に良好な通信環境を確保できるようになり、国や地域を問わず、物品に貼り付けた無線ICタグと管理サーバ間の良好なデータの送受信が実現可能となった。これにより、屋内外を問わず、原材料・製品等、物品の物流捕捉が実現可能になるため、企業間、国際間を横断する物品の物流捕捉を、簡便かつ確実に行うことができる。
【0080】
加えて、上述の物品を捕捉するシステムは、現状の管理・監視アプリケーションをほとんど修正することなく、現状のシステムを残したまま実現することができる。したがって、ロケーションサーバ等の設備投資が最小限に抑えられ、拠点統廃合に柔軟に即応できるとともに、施設維持のためのシステム管理が集中できる。また、地球上のどの地域でも均一な物品管理が実現する。これによって、地球上のあらゆる地域での物品管理が可能なエンタープライズシステムを構築することができる。
【0081】
上述構成のシステムは、製造業ばかりでなく、小売業、その他企業間を横断する利用が可能であり、また物品の国際間移動における管理も可能であるので、システム提供者として、適用範囲の拡大が期待できる。
【0082】
なお、上述した実施の形態のHI−GPS13は、GPS機能及び通信機能を搭載したPDA(携帯情報端末)等の携帯機器に適用することもできる。携帯機器を用いる場合は、物品だけでなく人の管理を行うこともできる。この場合、携帯機器とトランシーバ間を無線通信により接続し、適切な周波数の切り替えが必要であれば適宜周波数を変更する。
【0083】
また、上述の実施の形態の適切な通信方法への切り替え処理は、携帯電話、PHS、無線LANなど、出力や周波数帯、変調方式などが異なるさまざまな無線通信方式を、ソフトウェア処理だけで対応するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステムの概念を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるHI−GPSの外観を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるHI−GPSの背面を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるHI−GPSの上面を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるHI−GPSのブロック構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるHI−GPSを用いた無線通信システムの例を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるHI−GPSのルータ・リピータ機能を説明する図である。
【図8】本発明の一実施の形態によるDGPS補正配信サーバを用いたシステムを示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態による搬送対象製品の捕捉処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施の形態による適切な通信方法への自動切り替えのブロック構成を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態による適切な通信方法への自動切り替え処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施の形態による無線ICタグ自動書き込みのブロック構成を示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態による位置情報をキーとした無線ICタグへの自動書き込み処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施の形態による時刻をキーとした無線ICタグへの自動書き込み処理を示すフローチャートである。
【図15】従来システムの説明に供する図である。
【符号の説明】
【0085】
1,84…搬送対象物(物品)、2,2a,2b…無線ICタグ、5,6…ロケーションサーバ、8…管理サーバ、10,81,82,83…搬送手段、11…リーダ/ライタ(トランシーバ)、11a,11b,11c…トランシーバ、12…LAN、13…HI−GPS、14…GPSモジュール、14a…アンテナ、15…制御部、16…メモリカード、17…通信カード、20…電子トラッキングシステム、21…GPS衛星、22,22a,22b…無線通信基地局、23…WAN(広域通信網)、23a…インターネット、24…通信衛星、50…GPS・PCカードI/Fボード、53…PCカードI/F、54…GPSモジュール、55…PCカード・データCOM、60…CPUボード、61…CPU、66…PCカードATA、101…GPS測位演算部、102…通信方法判定部、103…DB管理部、104…通信装置地図データベース、105…周波数地図データベース、106…アクセスポイント地図データベース、107…通信装置切り替え部、108…周波数切り替え部、109…アクセスポイント切り替え部、110,111,112…通信装置、121…GPS測位演算部、122…書き込み制御部、123…DB管理部、124…チェックポイント地図データベース、125…計時部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を備えたタグを搬送対象の物品に貼付し、前記タグから情報を収集し前記物品の搬送過程を管理する物品捕捉システムにおいて、
前記タグと無線通信してタグ情報を取得するタグ情報受信手段と、該タグ情報受信手段が取得したタグ情報を受信し無線通信を介して管理サーバに送信する情報処理装置を、前記物品を搬送する搬送手段に搭載し、
前記情報処理装置は、自局の位置を測位する位置測位手段と、異なる無線通信方式に対応した通信手段と、地域ごとの適切な通信方法が記録されている記録手段と、通信方法を切り替える通信方法切替手段から構成され、
前記通信方法切替手段が、前記位置測位手段により測位された現在地に基づいて、前記現在地に適した通信方法を選択し、前記情報処理装置は選択された前記通信方法に従って無線通信を行う
ことを特徴とする物品捕捉システム。
【請求項2】
前記通信方法切替手段は通信手段切替部を有し、また前記記録手段は地域ごとの適切な通信手段が蓄積されたデータを備え、
前記通信手段切替部は、前記位置測位手段により測位された現在地に基づいて、前記現在地が含まれた地域に適した通信手段に切り替える
ことを特徴とする請求項1記載の物品捕捉システム。
【請求項3】
前記通信方法切替手段は周波数切替部を有し、また前記記録手段は地域ごとの適切な周波数が蓄積されたデータを備え、
前記周波数切替部は、前記位置測位手段により測位された現在地に基づいて、前記現在地が含まれた地域に適した周波数を選択し、前記通信手段の周波数、及び前記タグと前記タグ情報受信手段間を各々前記選択された周波数に切り替えて無線通信する
ことを特徴とする請求項1記載の物品捕捉システム。
【請求項4】
前記通信方法切替手段はアクセスポイント切替部を有し、また前記記録手段は地域ごとの最適アクセスポイントが蓄積されたデータを備え、
前記アクセスポイント切替部は、前記位置測位手段により測位された現在地に基づいて、前記現在地が含まれた地域に対応する最適アクセスポイントに切り替える
ことを特徴とする請求項1記載の物品捕捉システム。
【請求項5】
前記タグ情報受信手段に前記タグへの書き込み機能を設けるとともに、前記情報処理装置は前記タグへの書き込みを制御する書き込み制御手段を有し、
前記書き込み制御手段は、予め設定された所定の規則に従って前記タグ情報受信手段に対し前記タグへの書き込み指令を出し、
前記タグ情報受信手段は、前記書き込み指令に従い少なくとも前記位置測位手段により測位された現在地の位置情報及び時刻を前記タグに書き込む
ことを特徴とする請求項1記載の物品捕捉システム。
【請求項6】
前記記録手段はチェックポイント識別情報とそのチェックポイントの位置情報が対応付けられたデータが蓄積され、
前記書き込み制御手段は、前記位置測位手段により測位された現在地が特定のチェックポイントにある場合、前記タグ情報受信手段に対し前記タグへの書き込み指令を出し、
前記タグ情報受信手段は、前記書き込み指令に従って前記タグに、前記チェックポイント識別情報、位置情報及び時刻を記録する
ことを特徴とする請求項5記載の物品捕捉システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は計時部を有し、
前記計時部は、前記書き込み制御部へ所定時刻である旨を通知し、前記書き込み制御手段は、前記計時部からの通知を受けて前記位置測位手段に対し位置を測位するよう指示し、前記位置測位手段は、前記書き込み制御手段の指示を受けて現在地を測位し、測位終了後、前記書き込み制御部は、前記タグ情報受信手段に対し前記タグへの書き込み指令を出し、前記タグ情報受信手段は、前記書き込み指令に従って前記タグに前記現在地の位置情報及び時刻を記録する
ことを特徴とする請求項5記載の物品捕捉システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−163611(P2006−163611A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351624(P2004−351624)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】