説明

物品搬送用垂直多関節アーム機構

【課題】駆動源の出力トルクを拡大して重量物の搬送に対応可能垂直多関節アーム機構を提供する。
【解決手段】所定部材3に第1関節部10を介して連結され、該第1関節部10周りに鉛直面内を旋回可能な第1アーム11と、該第1アーム11に第2関節部20を介して連結され、該第2関節部20周りに前記鉛直面と平行な鉛直面内を旋回可能な第2アーム21と、前記第1関節部10に設けられ、前記第1アーム11を前記第1関節部10周りに旋回させる第1駆動機構51と、前記第2関節部20に設けられ、前記第2アーム21を前記第2関節部20周りに旋回させる第2駆動機構52と、を有した物品搬送用垂直多関節アーム機構1である。前記第1駆動機構51及び前記第2駆動機構52の少なくとも一方の駆動機構は、駆動源61と、該駆動源61から入力される回転動作に基づいて前記アーム11,21の旋回動作を作り出すカム機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品搬送用の垂直多関節アーム機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品の搬送や組み立て等に、垂直多関節ロボットが使用される。この垂直多関節ロボットは、関節部によって鉛直面内を旋回可能に連結された複数のアームを有する(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2003−205374号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、例えば、各関節部に直結されたサーボモータを駆動源として、各アームを重力に抗して旋回駆動する。
【0004】
しかしながら、サーボモータ単独では出力トルクが小さいため、大型ワーク等の重量物を高速搬送することは困難である。また、ワークを持った状態でアームを一定姿勢に維持する際には、モータの保持トルク(ローターとステータとの間の電磁的引力による回転を抑制する力)に頼ることになるが、一般に大型のモータであってもその保持トルクは小さい。そのため、重量物のワークを扱う場合には、別途、クランプユニット等の上記一定姿勢で固定するための機械的機構を追設せねばならず、全体として装置が大がかりになってしまう。
【0005】
これらの点につき、上述のサーボモータに減速機を組み合わせて関節部に設ければ、出力トルクの拡大を図れるとともに、減速機の大きな抵抗力を、アームを一定姿勢に維持するためのモーメントに利用できて、上述の問題を解決できる。
【0006】
但し、減速機には通常ギア機構が用いられ、当該ギア機構には、ギア同士の噛み合いに係りバックラッシ(ギアの歯面間の遊び)の問題を有する。そのため、この構成では、アームの旋回動作の安定性に欠く。特に、旋回動作の反転時にアームがばたつく虞がある。
【0007】
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、駆動源の出力トルクを拡大して重量物の搬送に対応可能であり、また、アームを一定姿勢に維持する際の安定性に優れ、更には、アームの鉛直面内の旋回動作の安定性に優れた物品搬送用垂直多関節アーム機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための主たる発明は、
所定部材に第1関節部を介して連結され、該第1関節部周りに鉛直面内を旋回可能な第1アームと、
該第1アームに第2関節部を介して連結され、該第2関節部周りに前記鉛直面と平行な鉛直面内を旋回可能な第2アームと、
前記第1関節部に設けられ、前記第1アームを前記第1関節部周りに旋回させる第1駆動機構と、
前記第2関節部に設けられ、前記第2アームを前記第2関節部周りに旋回させる第2駆動機構と、を有した物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構の少なくとも一方の駆動機構は、
駆動源と、該駆動源から入力される回転動作に基づいて前記アームの旋回動作を作り出すカム機構と、を備え、
前記カム機構は、
前記駆動源からの回転動作が入力される入力軸と、
該入力軸に設けられ、該入力軸と一体的に回転するローラーギアカムと、
該ローラーギアカムの外周面に形成されたカム面としてのテーパー状リブと係合する複数のカムフォロワを外周面に有して、前記入力軸の回転によって、該入力軸よりも低い回転数で回転する出力軸と、を有し、
前記テーパー状リブの一方側の側壁面と他方側の側壁面との両者には、それぞれ、常に前記複数のカムフォロワのうちの何れかのカムフォロワが当接していることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構である。
【0009】
本発明の他の特徴は、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動源の出力トルクを拡大して重量物の搬送に対応可能であり、また、アームを一定姿勢に維持する際の安定性に優れ、更には、アームの鉛直面内の旋回動作の安定性に優れた物品搬送用垂直多関節アーム機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
所定部材に第1関節部を介して連結され、該第1関節部周りに鉛直面内を旋回可能な第1アームと、
該第1アームに第2関節部を介して連結され、該第2関節部周りに前記鉛直面と平行な鉛直面内を旋回可能な第2アームと、
前記第1関節部に設けられ、前記第1アームを前記第1関節部周りに旋回させる第1駆動機構と、
前記第2関節部に設けられ、前記第2アームを前記第2関節部周りに旋回させる第2駆動機構と、を有した物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構の少なくとも一方の駆動機構は、
駆動源と、該駆動源から入力される回転動作に基づいて前記アームの旋回動作を作り出すカム機構と、を備え、
前記カム機構は、
前記駆動源からの回転動作が入力される入力軸と、
該入力軸に設けられ、該入力軸と一体的に回転するローラーギアカムと、
該ローラーギアカムの外周面に形成されたカム面としてのテーパー状リブと係合する複数のカムフォロワを外周面に有して、前記入力軸の回転によって、該入力軸よりも低い回転数で回転する出力軸と、を有し、
前記テーパー状リブの一方側の側壁面と他方側の側壁面との両者には、それぞれ、常に前記複数のカムフォロワのうちの何れかのカムフォロワが当接していることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【0013】
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、駆動源の回転動作を、カム機構に入力してアームの旋回動作を作り出すが、その際に、カム機構によって回転数が低くされることに伴って、出力トルクは拡大される。よって、駆動源の出力トルクを拡大してアームを旋回させることができて、重量物を搬送可能となる。
【0014】
また、上述のようにカム機構は減速機として機能するので、当該カム機構の慣性が、アームの自重等によりアームが勝手に旋回するのを抑える大きな制動力となる。よって、アームを一定姿勢に維持する際の安定性にも優れる。
【0015】
更には、このカム機構は、バックラッシを有効に防ぎ得るローラーギアカムを用いている。すなわち、ローラーギアカムの外周面にはカム面としてのテーパー状リブが形成され、このテーパー状リブの一方側の側壁面と他方側の側壁面との両者には、それぞれ、常に前記複数のカムフォロワのうちの何れかのカムフォロワが当接している。よって、概ねバックラッシの無い状態にすることができて、鉛直面内のアームの旋回動作の安定性に優れたものとなる。
【0016】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記関節部は、
前記所定部材、前記第1アーム、及び前記第2アームのうちで互いに連結されるべき部材同士のうちの一方の部材に設けられた水平な軸体と、
前記連結されるべき部材同士のうちのもう一方の部材に水平に開口形成された、前記軸体が挿入される孔部と、
前記軸体と前記孔部との間に介装されて、前記軸体を前記孔部に相対回転可能に連結する軸受け部材と、を有し、
前記カム機構の前記出力軸は、前記軸体であり、
前記カム機構の前記入力軸は、前記孔部が形成された前記部材の内部に、該孔部に隣接して配置されるとともに、前記入力軸の軸方向は、前記出力軸の軸方向と直交する方向を向いているのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、前記入力軸の軸方向は、前記出力軸の軸方向と直交する方向を向いている。よって、前記入力軸が設けられる前記部材の寸法を、当該出力軸の軸方向たる前記軸体の軸方向について小さくすることができて、物品搬送用垂直多関節アーム機構の小型化を図れる。
【0017】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記孔部は前記部材の長手方向の端部に形成され、
前記入力軸は、前記部材における前記孔部よりも前記長手方向の内側に配置され、
前記入力軸の軸方向は、前記部材の長手方向と交差する方向を向いているのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、前記入力軸は、前記部材の長手方向の内側に配置され、且つ、前記入力軸は、前記部材の長手方向と交差する方向を向いている。よって、前記入力軸が設けられる前記部材の長手方向の寸法を小さくできて、物品搬送用垂直多関節アーム機構の小型化を図れる。また、前記部材が第1アーム又は第2アームの場合には、前記入力軸が前記部材の長手方向の内側に配置されることに伴って、当該アームを旋回する際の必要トルクを小さくできるという作用効果も奏する。
【0018】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記駆動源は、前記部材における前記入力軸よりも前記長手方向の内側に配置され、
前記駆動源の駆動回転軸の回転動作を前記入力軸へ伝達するための回転伝達部材が、前記駆動回転軸と前記入力軸との間に介装されているのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、前記駆動源は、前記入力軸よりも前記部材の長手方向の内側に配置されるので、前記部材の長手方向の寸法を小さくできて、物品搬送用垂直多関節アーム機構の小型化を図れる。
【0019】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記第1アームの内部には、該第1アームの前記孔部と前記軸体の軸方向の端面とをつなぐ第1空間部が形成され、
前記第2アームの内部には、該第2アームの前記孔部と前記軸体の軸方向の端面とをつなぐ第2空間部が形成され、
前記第1空間部及び前記第2空間部には、前記駆動源に電力等の動力を供給するための電源ケーブル等の動力供給部材が通されているのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、第1アーム及び第2アームの内部に前記動力供給部材を収めることができるので、動力供給部材を外部に出さずに済み、すっきりした外観にすることができる。また、動力供給部材が外部でアーム等に絡まることも有効に防ぐことができる。更には、動力供給部材に塵や埃が溜まることも回避できて清浄性に優れたものとなり、当該物品搬送用垂直多関節アーム機構をクリーンルーム等でも使用可能となる。
【0020】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構における前記所定部材側の部分が、工場内の所定の据え付け面に据え付けられ、
前記関節部に係る前記孔部は、前記関節部によって連結されるべき部材同士のうちの前記据え付け面寄りの部材に設けられるのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、前記孔部は、前記連結されるべき部材同士のうちの前記据え付け面寄りの部材に設けられるので、必然、前記駆動源も、前記据え付け面寄りの部材に設けられることになる。よって、前記駆動源に動力供給するための電源ケーブル等の動力供給部材の長さを短くすることができる。
【0021】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構における前記所定部材側の部分が、工場内の所定の据え付け面に据え付けられ、
前記関節部の前記軸体の外径は、前記据え付け面寄りに位置する前記関節部の前記軸体ほど大きくなっているのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、前記関節部の前記軸体の外径を、前記据え付け面寄りに位置する前記関節部の前記軸体ほど大きくしているので、前記据え付け面寄りのアームほど出力トルクが大きくなるように設定できて、一般的ニーズに応えることができる。
【0022】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記関節部の前記軸受け部材は、クロスローラー軸受けであるのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、前記関節部の軸受け部材として、クロスローラー軸受けを使用しており、スラスト荷重とラジアル荷重とを一挙に支持可能である。よって、スラスト軸受けとラジアル軸受けとを別々に設けずに済み、つまり軸受けを2列に並設せずに済んで、前記関節部を前記軸体の軸方向に薄くすることができる。
【0023】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記駆動源は、駆動回転する駆動回転軸を有し、
前記駆動回転軸と前記入力軸とは、互いの回転中心を一致させた状態で相対回転不能に突き合わせて接続されているのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、上述の駆動源の駆動回転軸を前記入力軸に突き合わせた構成と、前記ローラーギアカムを具備したカム装置とを組み合わせることにより、完全にバックラッシの無い駆動系を構成することができて、アームの旋回動作を最大限に安定化させることができる。
【0024】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構が具備する全ての前記関節部に対して、前記ローラーギアカムを具備した前記駆動機構が設けられているのが望ましい。
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、物品搬送用垂直多関節アーム機構が具備する全てのアームの旋回動作を安定化させることができる。
【0025】
かかる物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記第2アームに第3関節部を介して連結され、該第3関節部周りに前記鉛直面と平行な鉛直面内を旋回可能な第3アームと、
前記第3関節部に設けられ、前記第3アームを前記第3関節部周りに旋回させる第3駆動機構と、を有し、
該第3アームは、前記物品を着脱可能に保持する保持面を有し、
前記第1駆動機構、前記第2駆動機構、及び前記第3駆動機構は、それぞれ、前記ローラーギアカムを具備した駆動機構であり、
前記所定部材は、工場内の所定の据え付け面に載置され、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構は、前記第1アーム、前記第2アーム、前記第3アームの旋回動作によって、前記保持面に保持された前記物品を一方の位置から他方の位置へ搬送するとともに、その搬送の過程で、前記保持面を、該保持面の法線方向に平行移動するのが望ましい。
【0026】
このような物品搬送用垂直多関節アーム機構によれば、前記物品を一方の位置から他方の位置へ搬送するとともに、その搬送の過程で、前記保持面を、該保持面の法線方向に平行移動させるという搬送動作を、高速且つ高精度で行うことができる。
この理由は、上述の搬送動作を行い得る十分条件の構成のうちで最もアーム数の少ない構成が、互いに平行な鉛直面内を旋回する3つのアームを具備する構成だからである。つまり、第1、第2、及び第3アームを具備した上記構成は、上述の搬送動作に不必要なアームを排除したものであり、もって、そのような不要なアームの付加に伴う機械的がたつきの抑制を図れるからである。
【0027】
===第1実施形態===
図1A乃至図1Cは、第1実施形態に係る垂直多関節アーム機構1の説明図である。図1Aは、上方から見た平面図であり、図1Bは図1A中のB−B矢視の側面図であり、図1Cは、図1A中のC−C矢視の正面図である。
【0028】
この垂直多関節アーム機構1は、例えば、前工程で切り出されて水平な資材置き場100に載置された物品の一例としての液晶パネル等のガラス基板Wを、上下反転しながら、次工程の水平な資材置き場110に搬送して載置するものである(図4を参照)。
【0029】
図1A乃至図1Cに示すように、この垂直多関節アーム機構1は、多関節の一例として3つの関節部10,20,30を有し、これら関節部10,20,30によって順次直列に連結された3つのアーム11,21,31を有している(以下、3軸の垂直多関節アーム機構1とも言う)。第1アーム11は、工場の据え付け面Gに据え付け固定されたベース部材3(所定部材に相当)に第1関節部10を介して連結され、当該第1関節部10周りに鉛直面内を旋回可能である。第2アーム21は、前記第1アーム11に第2関節部20を介して連結され、当該第2関節部20周りに、前記第1アーム11の旋回面と平行な鉛直面内を旋回可能である。第3アーム31は、前記第2アーム21に第3関節部30を介して連結され、当該第3関節部30周りに、前記第1アーム11の旋回面と平行な鉛直面内を旋回可能である。
【0030】
なお、第3アーム31は、ガラス基板Wを着脱自在に吸着保持するガラス基板保持部41を有している。また、各関節部10,20,30には、それぞれに担当するアーム11,21,31を駆動する駆動機構51,52,53が設けられている。よって、コンピュータ等の適宜な制御装置が、これら駆動機構51,52,53を制御することにより、ガラス基板保持部41が目標の軌跡で目標位置へ移動するように各アーム11,21,31を協調させながら各アーム11,21,31を旋回動作するようになっている。
【0031】
なお、以下の説明では、各アーム11,21,31の長手方向に関してベース部材3に近い方の端部を根元部と言い、その逆側たるベース部材3から遠い方の端部、つまりガラス基板保持部41に近い側の端部を先端部と言う。また、長手方向と直交する2方向のうちで鉛直面と平行な方向を厚み方向と言い、同水平方向を向いた方向を幅方向と言う。
【0032】
ベース部材3は、その長手方向が上下方向を向いた略直方体部材である。そして、その上端部に設けられた前記第1関節部10によって、第1アーム11の根元部を支持している。
【0033】
図2A及び図2Bに、第1関節部10の説明図を示す。なお、図2Aは縦断面図であり、図2Bは図2A中のB−B断面図である。
【0034】
第1関節部10は、第1アーム11の根元部の側面に設けられ水平方向に突出する円形軸体12と、前記ベース部材3の上端部の側面に水平に開口形成された円形の孔部4と、を有している。そして、この円形軸体12が孔部4に水平方向に差し込まれた状態において、これらの間にクロスローラー軸受け13(軸受け部材に相当)が介挿されており、これにより、第1アーム11はベース部材3に相対回転自在に支持されている。なお、ここで、クロスローラー軸受け13はスラスト荷重とラジアル荷重とを一挙に支持可能なので、スラスト軸受けとラジアル軸受けとを別々に並設せずに済み、その結果、第1関節部10を幅方向に薄くできる。
【0035】
第1アーム11は、略直方体部材であり、第1アーム11を旋回する駆動機構51(第1駆動機構に相当)が、第1関節部10に隣接して配置されている。
【0036】
この駆動機構51は、駆動源としてベース部材3側に設けられ電力により作動するサーボモータ61と、サーボモータ61の駆動回転軸62の回転動作を減速して前記第1アーム11の前記円形軸体12に出力するカム機構71とを有している。よって、当該カム機構71により、サーボモータ61の出力トルクを拡大して第1アーム11を旋回させることができる。
【0037】
カム機構71のカムには、ローラーギアカム72が使用されている。詳しくは、出力軸としての前記円形軸体12の外周面には、周方向に沿って所定ピッチで複数のカムフォロワ73が配置され、また、前記ベース部材3において前記円形軸体12の外周面を臨む部位には、サーボモータ61から回転動作が入力される入力軸72aが、前記円形軸体12の周方向に接する方向を向きつつ軸受け79,79により回転可能に両端支持されている。そして、この入力軸72aの外周面に、ローラーギアカム72が形成されている。つまり、ローラーギアカム72のカム面をなすテーパー状リブ74が、前記入力軸72aの周方向の位置に応じて軸方向の位置が均一且つ連続的に一方向に変位する略螺旋状に形成されている。よって、前記サーボモータ61の駆動回転軸62から回転動作がローラーギアカム72に入力されてローラーギアカム72が回転すると、そのテーパー状リブ74とカムフォロワ73との係合を介して、これらカムフォロワ73が順次ローラーギアカム72の軸方向に送られて、これにより、前記円形軸体12が回転して第1アーム11が旋回される。
【0038】
なお、ここで、前記テーパー状リブ74の一方側の側壁面74aと他方側の側壁面74bとの両者には、それぞれ、常に何れかのカムフォロワ73が当接するように前記テーパー状リブ74は形成されている。例えば、カムフォロワ73がテーパー状リブ74の側壁面74aから離れる際には、その前に、当該側壁面74aに対して別のカムフォロワ73が当接するようになっている。よって、常に、少なくとも一対のカムフォロワ73,73がテーパー状リブ74を挟み込む状態に維持され、その結果、バックラッシの無い状態にできて、第1アーム11の鉛直面内の旋回動作の安定化が図られる。
【0039】
また、上述の入力軸72aは、ベース部材3において、第1関節部10の前記孔部4よりもベース部材3の長手方向の内側(上下方向の下側)に配置されており、更には、入力軸72aの軸方向は、ベース部材3の厚み方向(出力軸たる円形軸体12の軸方向と直交し、且つ、ベース部材3の長手方向と交差(直交)する方向に相当)を向いている。よって、前記孔部4よりも前記長手方向の外側(上下方向の上側)に入力軸72aが配置されたり、入力軸72aの軸方向がベース部材3の長手方向を向いて配置される場合と比べて、ベース部材3の長手方向の寸法を小さくできて、これにより、垂直多関節アーム機構1の小型化が図られている。
【0040】
更には、サーボモータ61の駆動回転軸62と前記カム機構71の入力軸72aとは、軸継ぎ手63を介して互いの回転中心を一致させた状態で相対回転不能に突き合わせて接続されている。よって、この接続ではバックラッシを生じることは無く、もって、上述のローラーギアカム72との組み合わせにより完全にバックラッシの無い駆動系を構成することができる。
【0041】
図3Aは、垂直多関節アーム機構1の一部を破断して示す側面図であり、図3Bは、図3A中のB−B矢視図において、図3Aの破断部を破断して示す図である。
【0042】
第2アーム21は、略直方体部材である。そして、第1アーム11の先端部に設けられた第2関節部20によって、第2アーム21の根元部が支持されている。すなわち、第2関節部20は、第2アーム21の根元部の側面に設けられ水平方向に突出した円形軸体22と、前記第1アーム11の先端部の側面に水平に開口形成された孔部14と、を有している。そして、この円形軸体22が孔部14に水平方向に差し込まれた状態において、これらの間にクロスローラー軸受け23(軸受け部材に相当)が介挿されており、これにより、第2アーム21は第1アーム11に相対回転自在に支持されている。
【0043】
なお、上述の第1関節部10と同様に、この第2関節部20にも第2アーム21の駆動機構52(第2駆動機構に相当)が隣接して配置されているが、この駆動機構52は、上述の第1アーム11の駆動機構51よりもサイズが小さいだけであり、その基本構成は第1アーム11の駆動機構51と同じである。つまり、上述の第1アーム11の駆動機構51の説明における「ベース部材3」、「第1アーム11」、及び「円形軸体12」の語句を、それぞれ、「第1アーム11」、「第2アーム21」、及び「円形軸体22」の語句に置き換えて読めば、それがそのまま当該第2アーム21の駆動機構52の説明になる。よって、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0044】
但し、当該第2アーム21の駆動機構52は、旋回動作する第1アーム11に設けられていることから、上述した第1アーム11の駆動機構51の作用効果に加えて、次のような作用効果も奏する。すなわち、この第2アーム21の駆動機構52に係るカム機構71も、前記入力軸72aを有しており、当該入力軸72aの第1アーム11における配置位置は、上述の第1アーム11の駆動機構51の入力軸72aのベース部材3における配置位置と同様に、第1アーム11において第2関節部20を構成する前記孔部14よりも第1アーム11の長手方向の内側の位置になっている。よって、第1アーム11の長手方向の外側に入力軸72aを配置する場合と比べて、第1アーム11の旋回動作時の必要トルクを小さくできるという作用効果も奏する。
【0045】
第3アーム31は、その根元部に、前記円形軸体12の軸方向と平行な前記幅方向に長い円形軸体32を有し(図1Cも参照)、当該円形軸体32には前記ガラス基板保持部41が固設されている。そして、前記円形軸体32の一端部が、第2アーム21の先端部の側面に水平に開口形成された孔部24に差し込まれるとともに、孔部24に設けられたクロスローラー軸受け33(軸受け部材に相当)によって旋回可能に支持されている。つまり、これら円形軸体32、孔部24、及びクロスローラー軸受け33が、前記第3関節部30を構成する。
【0046】
なお、上述の第1及び第2関節部10,20と同様に、この第3関節部30にも第3アーム31の駆動機構53(第3駆動機構に相当)が隣接して配置されているが、この駆動機構53は、第2アーム21の駆動機構52よりもサイズが小さいだけであり、その基本構成は同じである。つまり、第2アーム21の場合と同様、上述の第1アーム11の駆動機構51の説明における「ベース部材3」、「第1アーム11」、及び「円形軸体12」の語句を、それぞれ、「第2アーム21」、「第3アーム31」、及び「円形軸体32」の語句に置き換えて読めば、それがそのまま当該第3アーム31の駆動機構53の説明になる。よって、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図1A及び図1Cに示すように、第3アーム31のガラス基板保持部41は、前記円形軸体32の長手方向(幅方向)に適宜間隔に、当該長手方向と直交する方向に延出した複数(図1A及び図1Cでは7本)の棒部材43を有し、ガラス基板保持部41の外観は略櫛状を呈している。そして、各棒部材43には、搬送対象のガラス基板Wを載置保持する保持面43aが形成されており、各保持面43aには複数の吸盤(不図示)が設けられている。また、各棒部材43の内部及び前記円形軸体32の内部には、ホースや配管等の管路(不図示)が内蔵されており、当該管路の先端には前記吸盤が連結される一方、末端には不図示の真空ポンプが連結されている。よって、真空ポンプのON/OFF制御により、前記保持面43aに載置されたガラス基板Wを吸着保持したり、吸着保持を解除することができる。
【0048】
なお、ガラス基板保持部41が略櫛状になっているのは、前記前工程の資材置き場100のガラス基板Wの載置台101が同様の櫛状に形成されていて、当該載置台101上に載置されたガラス基板Wをその下方から持ち上げて支持する際に、載置台101との干渉を回避するためである(図4を参照)。すなわち、資材置き場100に載置されたガラス基板Wを持ち上げる際には、ガラス基板保持部41の櫛と資材置き場100の載置台101の櫛とが互いの隙間に入り込んだ状態になり、これにより、互いの干渉を防止しつつガラス基板Wをガラス基板保持部41の保持面43aに載せることを可能にしている。
【0049】
図4は、この垂直多関節アーム機構1によるガラス基板Wの搬送動作例の説明図である。
前述したように、この垂直多関節アーム機構1は、前工程で切り出されて資材置き場100(一方の位置に相当)に載置されたガラス基板Wを、上下反転しながら、次工程の資材置き場110(他方の位置に相当)に水平方向に搬送して載置する。
【0050】
図4に示すように、前工程の資材置き場100には、ガラス基板Wの載置台101が設置され、ガラス基板Wは載置台101の水平な上面101aに載置されている。この上面101aは、上述したように、垂直多関節アーム機構1のガラス基板保持部41の略櫛形状に対応して、略櫛型に形成されている。すなわち、ガラス基板保持部41とは、互いに櫛の位置が前記幅方向に関して互い違いになるよう形成されている。他方、当該前工程の資材置き場100の水平方向の前方には、次工程の資材置き場110の載置台111が設置されている。
【0051】
そして、上述の垂直多関節アーム機構1によれば、次のようにしてガラス基板Wを搬送する。
【0052】
先ず、図4中の状態Aで示すように、初期状態として、ガラス基板保持部41が前工程の載置台101の上面101aの直下に位置しているとともに、その保持面43aの法線方向が鉛直方向の上方を向いた状態にあるものとする。そして、この状態から、図4中の状態Bで示すように、ガラス基板保持部41が保持面43aの法線方向に平行移動して、載置台101上のガラス基板Wを下方から持ち上げるが、この持ち上げる際には、真空ポンプが作動開始して保持面43aの吸盤によりガラス基板Wを吸着保持する。
【0053】
次に、第1、第2、第3アーム11,21,31の協調した旋回動作によって、ガラス基板保持部41を前方へ移動し、これにより、図4中の状態Cに示すように、ガラス基板Wを、次工程の資材置き場110の載置台111の上方に搬送する。なお、当該旋回動作によってガラス基板Wは上下反転されて下方を向いた状態となるが、ガラス基板Wはガラス基板保持部41に吸着保持されているので、落下することはない。
【0054】
そうしたら、保持面43aが鉛直方向の下方を向いた状態を維持しつつ同下方にガラス基板保持部41を平行移動し、これにより、図4中の状態Dに示すように、ガラス基板Wを前記載置台111の上面111aに載置する。そして、真空ポンプを停止してガラス基板Wの吸着保持を解除したら、ガラス基板保持部41は、図4中の状態Cに示すように、保持面43aの法線方向が鉛直方向の下方を向いた状態に維持しつつ上方に平行移動し、これによりガラス基板Wを載置台111へ渡す。
【0055】
最後に、第1、第2、第3アーム11,21,31の協調した旋回動作により、ガラス基板保持部41を後方へ移動しつつ、ガラス基板保持部41を、前工程の載置台101の上面101aの直下に潜り込ませ、これにより、図4中の状態Aで示す初期状態に戻る。
【0056】
ちなみに、上述のように、水平方向への搬送過程において保持面43aの法線方向にガラス基板保持部41を平行移動させる場合には、2軸の垂直多関節アーム機構では動作の自由度が足りないが、3軸の垂直多関節アーム機構1であれば、上述のように、水平方向の搬送過程において保持面43aの法線方向にガラス基板保持部41を平行移動することができる。つまり、互いに平行な鉛直面内を旋回する3つのアーム11,21,31を具備する3軸の垂直多関節アーム機構1が、上記の搬送動作を行うための十分条件の構成のうちで最もアーム数の少ない構成となる。よって、この3軸の垂直多関節アーム機構1によれば、上記の搬送動作に有効に特化し得て、その結果、当該搬送動作を高速且つ高精度で行うことができる。
【0057】
ところで、第1、第2、第3関節部10,20,30の円形軸体12,22,32の外径は、図3Aを参照してわかるように、前記据え付け面G寄りに位置する関節部ほど大きくなっている。すなわち、第3関節部30の円形軸体32の外径よりも第2関節部20の円形軸体22の方が大きく、第2関節部20の円形軸体22の外径よりも第1関節部10の円形軸体12の方が大きくなっている。これは、据え付け面Gに近いアームほど他のアームの自重が作用する等の要因で必要トルクが大きくなるからである。
【0058】
===第2実施形態===
図5は、第2実施形態に係る垂直多関節アーム機構1aの説明図であり、図3Aと同じ図示様式で示している。
【0059】
第1実施形態では、第1、第2、第3アーム11,21,31の各サーボモータ61の駆動回転軸62を、対応する入力軸72aに軸継ぎ手63で接続した関係上、各サーボモータ61は、ベース部材3、第1アーム11、及び第2アーム21の外側に突出していたが、この第2実施形態では、各サーボモータ61を、ベース部材3、第1アーム11、及び第2アーム21の内部に収容している点で相違する。
【0060】
すなわち、第1実施形態と同様に、図5の第2実施形態に係るベース部材3、第1アーム11、及び第2アーム21の何れの部材も、対応する関節部10,20,30の孔部4,14,24よりも前記部材3,11,21の長手方向の内側の位置に、前記入力軸72aを収容する収容孔72bを有しているが、当該収容孔72bよりも更に前記長手方向の内側に、サーボモータ61を収容するための収容孔61bが形成されている。そして、入力軸72a及びサーボモータ61が、それぞれに対応する収容孔72b,61bに収容された状態において、入力軸72aの端部とサーボモータ61の駆動回転軸62の端部とには、それぞれ、回転伝達部材としての歯車72c,61cが固定され、これら歯車72c,61cにより駆動回転軸62の回転動作が入力軸72aへと伝達されるようになっている。
【0061】
そして、このような構成によれば、各アーム11,21,31の駆動機構51,52,53は、それぞれに、対応する部材3,11,21の内部に収容されるので、すっきりした外観になる。
【0062】
また、各サーボモータ61は、それぞれに、対応する前記部材3,11,21の長手方向に関して前記入力軸72aよりも内側に配置されているので、第1アーム11及び第2アーム21におけるサーボモータ61の取り付け位置は、前述の第1実施形態の場合よりも前記長手方向の内側に移動している。よって、少なくとも当該移動分だけ、第1アーム11及び第2アーム21を旋回するための必要トルクを小さくすることができる。
【0063】
===第3実施形態===
図6は、第3実施形態に係る垂直多関節アーム機構1bの説明図であり、図3Bと略同じ図示様式で示している。
【0064】
上述の第1及び第2実施形態では、各サーボモータ61の電力供給用の電源ケーブル(動力供給部材に相当)の配線ルートについて述べていなかったが、その一例としては、電源ケーブルを第1アーム11及び第2アーム21の外側に沿わせて引き回すことが挙げられる。但し、その場合には、これらアーム11,21の旋回動作により電源ケーブルがアーム11,21に絡まる虞があるし、また、外部に置かれた電源ケーブルには塵や埃が溜まり易く清浄性の点でも問題がある。
【0065】
そこで、第3実施形態では、図6に示すように、最も先端側のサーボモータ61が設けられる第2アーム21から第1アーム11までに亘り、これらアーム21,11の内部に電源ケーブル65を通すことにより、上記問題を解決している。なお、これ以外の構成は第2実施形態と同じである。
【0066】
詳しく説明すると、第1アーム11は略中空構造の箱体であり、つまり、第1アーム11の前記孔部14と連通する空洞16を内部に有している。また、第1アーム11の前記円形軸体12には、その軸方向に沿って貫通孔12aが形成され、この貫通孔12aは、前記空洞16に連通している。よって、第1アーム11の内部には、前記孔部14から前記円形軸体12の端面12bをつなぐ空間部17(第1空間部に相当)が形成されている。
【0067】
同様に、第2アーム21も略中空構造の箱体であり、つまり、第2アーム21の前記孔部24と連通する空洞26を内部に有している。また、第2アーム21の前記円形軸体22にも、同様の貫通孔22aが形成されている。よって、第2アーム21の内部にも、前記孔部24から前記円形軸体22の端面22bをつなぐ空間部27(第2空間部に相当)が形成されている。
【0068】
更に、ベース部材3の前記孔部4は、ベース部材3を幅方向に貫通して形成されている。
そして、このような第2アーム21、第1アーム11、及びベース部材3を順次連結すると、図6に示すように、第2アーム21の先端部の孔部24から第1アーム11の根元部の円形軸体12の貫通孔12aまでが連通するようになり、また、ベース部材3の孔部4は前記幅方向に貫通しているので、前記第1アーム11の円形軸体12の貫通孔12aは、ベース部材3の上端部の側面に露出することになる。
【0069】
よって、第2アーム21の内部に配置される第3アーム駆動用のサーボモータ61の電源ケーブル65の電源プラグ、及び、第1アーム11の内部に配置される第2アーム駆動用のサーボモータ61の電源ケーブル65の電源プラグを、ベース部材3の上端部の孔部4から外部に取り出すことができて、これをもって、サーボモータ61の電源ケーブル65を第1アーム11及び第2アーム21の内部に完全に収めることができる。
【0070】
ちなみに、第3アーム31が具備するガラス基板保持部41の棒部材43及び円形軸体32には、ガラス基板保持部41の吸盤に吸着動作をさせるべくホースや配管等の空気の管路が設けられている旨を前述したが、その場合、前記円形軸体32としては、例えば、図6に示すような中空パイプ等の中空構造体が使用される。そして、前記管路47は、第2アーム21の孔部24から第2アーム21の空洞26に収容され、そこから先は、上述の電源ケーブル65と同じルートを経て、ベース部材3の上端部の孔部4から前記管路47の末端が取り出される。そして、当該末端に前述の真空ポンプが連結されることになる。
【0071】
===その他の実施形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0072】
(a)前述の実施形態では、垂直多関節アーム機構1の一例として3つの関節部10,20,30と3つのアーム11,21,31とを有する構成を示したが、これら関節部10,20,30及びアーム11,21,31の数は何等これに限るものではなく、関節部及びアームの数を、各々、2つ又は4つ以上にしても良い。
【0073】
(b)前述の実施形態では、垂直多関節アーム機構1が備える全てのアーム11,21,31の駆動機構51,52,53に対してローラーギアカムを用いたが、少なくとも一つのアームの駆動機構に対してローラーギアカムを用いれば、本発明の範囲に含まれるのは言うまでもない。但し、全てのアームの駆動機構に対してローラーギアカムを用いれば、全てのアームの旋回動作の安定化を通じて、最も先端側のアームの位置決め精度を最大限に高めることができる。
【0074】
(c)前述の実施形態では、第1アーム11が連結される所定部材の一例として、工場の据え付け面Gに据え付け固定されるベース部材3を示したが、何等これに限るものではない。例えば、前記所定部材を水平方向に移動可能に構成しても良いし、更には、前記所定部材を別の産業用ロボットのアームに固定し、つまり、本実施形態に係る垂直多関節アーム機構1を産業用ロボットに搭載して複合化しても良い。
【0075】
(d)前述の実施形態では、第1アーム11、第2アーム21、及び第3アーム31の何れも互いに平行な鉛直面内を旋回するように構成したが、何等これに限るものではなく、第3アーム31が前記鉛直面以外の面を旋回するようにしても良い。
【0076】
(e)前述の実施形態では、ベース部材3、第1アーム11、第2アーム21、及び第3アーム31のうちで、関節部により互いに連結されるべき部材同士のうちの据え付け面G寄りの部材に、前記関節部の孔部を設けるようにし、もう一方の部材には、前記孔部に挿入される円形軸体を設けるようにしていた。
【0077】
例えば、第2関節部20を例に具体的に説明すると、前述の実施形態では、図3Bに示すように、第2関節部20によって第1アーム11と第2アーム21とが連結されており、そして、第2アーム21よりも第1アーム11の方が据え付け面G寄りに位置していたので、第2関節部20の孔部14を第1アーム11に設け、第2アーム21には円形軸体22を設けていたが、この設置関係を、図7に示すように逆にしても良い。すなわち、第1アーム11に円形軸体22を設け、第2アーム21に孔部14を設けても良い。
但し、孔部14が設けられた部材の方に駆動源たるサーボモータ61が設けられることを勘案すると、孔部14を、図7の例のように第2アーム21に設けるよりは、図3Bの第1実施形態のように第1アーム11に設ける方が好ましい。つまり、関節部20により互いに連結されるべき部材11,21同士のうちの据え付け面G寄りの部材11に、前記孔部14を設けるのが好ましい。そして、このようにすれば、サーボモータ61に動力供給するための電源ケーブル65の長さを短くすることができる。
【0078】
(f)前述の実施形態では、動力の一例として電力を示し、また、駆動源として電力により作動するサーボモータ61を例示したが、適宜な動力が供給されることにより作動するものであれば、何等これに限るものではなく、例えば、油圧で作動する油圧モータを、駆動源として用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1Aは、第1実施形態に係る垂直多関節アーム機構1の平面図であり、図1Bは同側面図であり、図1Cは同正面図である。
【図2】図2Aは、第1関節部10の縦断面図であり、図2Bは図2A中のB−B断面図である。
【図3】図3Aは、垂直多関節アーム機構1の一部を破断して示す側面図であり、図3Bは、図3A中のB−B矢視図において、図3Aの破断部を破断して示す図である。
【図4】垂直多関節アーム機構1によるガラス基板Wの搬送動作例の説明図である。
【図5】第2実施形態に係る垂直多関節アーム機構1aの説明図である。
【図6】第3実施形態に係る垂直多関節アーム機構1bの説明図である。
【図7】その他の実施の形態の説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1 垂直多関節アーム機構(物品搬送用垂直多関節アーム機構)、
1a 垂直多関節アーム機構(物品搬送用垂直多関節アーム機構)、
1b 垂直多関節アーム機構(物品搬送用垂直多関節アーム機構)、
3 ベース部材(所定部材)、4 孔部、10 関節部、
11 第1アーム、12 円形軸体(出力軸、軸体)、
12a 貫通孔、12b 端面、13 クロスローラー軸受け(軸受け部材)、
14 孔部、16 空洞、17 空間部(第1空間部)、20 関節部、
21 第2アーム、22 円形軸体(出力軸、軸体)、
22a 貫通孔、22b 端面、23 クロスローラー軸受け(軸受け部材)、
24 孔部、26 空洞、27 空間部(第2空間部)、30 関節部、
31 第3アーム、32 円形軸体(出力軸、軸体)、
33 クロスローラー軸受け(軸受け部材)、
41 ガラス基板保持部、43 棒部材、43a 保持面、47 管路、
51 第1アームの駆動機構(第1駆動機構)、
52 第2アームの駆動機構(第2駆動機構)、
53 第3アームの駆動機構(第3駆動機構)、
61 サーボモータ(駆動源)、61b 収容孔、61c 歯車(回転伝達部材)、
62 駆動回転軸、63 軸継ぎ手、65 電源ケーブル(動力供給部材)、
71 カム機構、72 ローラーギアカム、72a 入力軸、72b 収容孔、
72c 歯車(回転伝達部材)、73 カムフォロワ、74 テーパー状リブ、
74a 側壁面、74b 側壁面、
100 前工程の資材置き場(一方の位置)、101 載置台、101a 上面、
110 次工程の資材置き場(他方の位置)、111 載置台、111a 上面、
G 据え付け面、W ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部材に第1関節部を介して連結され、該第1関節部周りに鉛直面内を旋回可能な第1アームと、
該第1アームに第2関節部を介して連結され、該第2関節部周りに前記鉛直面と平行な鉛直面内を旋回可能な第2アームと、
前記第1関節部に設けられ、前記第1アームを前記第1関節部周りに旋回させる第1駆動機構と、
前記第2関節部に設けられ、前記第2アームを前記第2関節部周りに旋回させる第2駆動機構と、を有した物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構の少なくとも一方の駆動機構は、
駆動源と、該駆動源から入力される回転動作に基づいて前記アームの旋回動作を作り出すカム機構と、を備え、
前記カム機構は、
前記駆動源からの回転動作が入力される入力軸と、
該入力軸に設けられ、該入力軸と一体的に回転するローラーギアカムと、
該ローラーギアカムの外周面に形成されたカム面としてのテーパー状リブと係合する複数のカムフォロワを外周面に有して、前記入力軸の回転によって、該入力軸よりも低い回転数で回転する出力軸と、を有し、
前記テーパー状リブの一方側の側壁面と他方側の側壁面との両者には、それぞれ、常に前記複数のカムフォロワのうちの何れかのカムフォロワが当接していることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項2】
請求項1に記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記関節部は、
前記所定部材、前記第1アーム、及び前記第2アームのうちで互いに連結されるべき部材同士のうちの一方の部材に設けられた水平な軸体と、
前記連結されるべき部材同士のうちのもう一方の部材に水平に開口形成された、前記軸体が挿入される孔部と、
前記軸体と前記孔部との間に介装されて、前記軸体を前記孔部に相対回転可能に連結する軸受け部材と、を有し、
前記カム機構の前記出力軸は、前記軸体であり、
前記カム機構の前記入力軸は、前記孔部が形成された前記部材の内部に、該孔部に隣接して配置されるとともに、前記入力軸の軸方向は、前記出力軸の軸方向と直交する方向を向いていることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項3】
請求項2に記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記孔部は前記部材の長手方向の端部に形成され、
前記入力軸は、前記部材における前記孔部よりも前記長手方向の内側に配置され、
前記入力軸の軸方向は、前記部材の長手方向と交差する方向を向いていることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項4】
請求項3に記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記駆動源は、前記部材における前記入力軸よりも前記長手方向の内側に配置され、
前記駆動源の駆動回転軸の回転動作を前記入力軸へ伝達するための回転伝達部材が、前記駆動回転軸と前記入力軸との間に介装されていることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかに記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記第1アームの内部には、該第1アームの前記孔部と前記軸体の軸方向の端面とをつなぐ第1空間部が形成され、
前記第2アームの内部には、該第2アームの前記孔部と前記軸体の軸方向の端面とをつなぐ第2空間部が形成され、
前記第1空間部及び前記第2空間部には、前記駆動源に電力等の動力を供給するための電源ケーブル等の動力供給部材が通されていることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れかに記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構における前記所定部材側の部分が、工場内の所定の据え付け面に据え付けられ、
前記関節部に係る前記孔部は、前記関節部によって連結されるべき部材同士のうちの前記据え付け面寄りの部材に設けられることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項7】
請求項2乃至6の何れかに記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構における前記所定部材側の部分が、工場内の所定の据え付け面に据え付けられ、
前記関節部の前記軸体の外径は、前記据え付け面寄りに位置する前記関節部の前記軸体ほど大きくなっていることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項8】
請求項2乃至7の何れかに記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記関節部の前記軸受け部材は、クロスローラー軸受けであることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れかに記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記駆動源は、駆動回転する駆動回転軸を有し、
前記駆動回転軸と前記入力軸とは、互いの回転中心を一致させた状態で相対回転不能に突き合わせて接続されていることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構が具備する全ての前記関節部に対して、前記ローラーギアカムを具備した前記駆動機構が設けられていることを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れかに記載の物品搬送用垂直多関節アーム機構であって、
前記第2アームに第3関節部を介して連結され、該第3関節部周りに前記鉛直面と平行な鉛直面内を旋回可能な第3アームと、
前記第3関節部に設けられ、前記第3アームを前記第3関節部周りに旋回させる第3駆動機構と、を有し、
該第3アームは、前記物品を着脱可能に保持する保持面を有し、
前記第1駆動機構、前記第2駆動機構、及び前記第3駆動機構は、それぞれ、前記ローラーギアカムを具備した駆動機構であり、
前記所定部材は、工場内の所定の据え付け面に載置され、
前記物品搬送用垂直多関節アーム機構は、前記第1アーム、前記第2アーム、前記第3アームの旋回動作によって、前記保持面に保持された前記物品を一方の位置から他方の位置へ搬送するとともに、その搬送の過程で、前記保持面を、該保持面の法線方向に平行移動することを特徴とする物品搬送用垂直多関節アーム機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−46773(P2010−46773A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214354(P2008−214354)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(390006585)株式会社三共製作所 (46)
【Fターム(参考)】