説明

物品管理システム及び方法

【課題】様々な状況に対応可能な物品管理システムを低コストで構築する。
【解決手段】物品管理システム1は、可搬型の撮像手段11と、表示手段12と、それぞれに識別情報が付された複数の物品を含む全体画像情報に基づいて全体画像における各識別情報の位置を認識する識別情報位置認識手段13と、全体画像に含まれる複数の識別情報の中から所望の識別情報を指定可能にする識別情報指定手段14と、指定された識別情報を撮像手段11により拡大撮影した近接画像情報に基づいて指定された識別情報を解析する識別情報解析手段15と、識別情報指定手段14による指定結果と識別情報解析手段15による解析結果とに基づいて指定された識別情報に対応する物品情報を抽出する物品情報管理手段16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物品を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、倉庫、店舗、工場等において、複数の物品を管理するための物品管理システムが用いられている。このような物品管理システムにおいては、バーコード、二次元コード等の識別情報が利用されることが多い。
【0003】
特許文献1において、各物品に二次元コードを装着するシートと、複数の前記物品を上方から撮影するテレビカメラと、撮影された画像情報から前記二次元コードを検出する画像解析手段と、検出された前記二次元コードに基づいて前記物品の位置を検出する位置検出手段とを備えるシステムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2において、WEBカメラ又はディジタルカメラを用いて、それぞれにバーコードが付された複数の物品を撮影し、その撮影画像をインターネットを介してセンターシステムに送信し、前記センターシステムが前記撮影画像に基づいて前記各バーコードを画像解析し、前記バーコードに対応する情報を抽出してクライアント端末に送信するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−83984号公報
【特許文献2】特開2009−15646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるシステムにおいては、前記画像情報を上方から取得するために、前記テレビカメラを天井に設置したり、ガイドレール、クレーン等の移動機構を用いたりする必要がある。また、上方からの広範な前記画像情報から直接前記二次元コードを解析するため、解像度、情報処理能力等が高い撮像装置が必要となる。そのため、システムの構築、運用等に掛かるコストが大きいという問題がある。同様に、上記特許文献2に開示されるシステムにおいても、複数の前記物品を含む広範な画像情報から直接前記バーコードを解析するため、高い能力を有する撮像装置等が必要となる。
【0007】
また、作業形態によっては、画像範囲に存在する全ての識別情報(バーコード、二次元コード等)を解析する必要がない場合もある。例えば、棚卸し等の作業においては、或る限られた商品棚に載置された幾つかの物品の中から所望の物品を指定し、この指定された物品に関する情報のみを検索できれば足りる場合が多い。上記特許文献1又は2に開示されるようなシステムは、このような状況に対して適合するものではない。
【0008】
そこで、本発明は、小規模な環境を含む様々な状況に対応可能な物品管理システムを低コストで構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、可搬型の撮像手段と、所定の画像を表示する表示手段と、前記撮像手段により取得され、それぞれに識別情報が付された複数の物品を含む全体画像情報に基づいて、前記全体画像における前記各識別情報の位置を認識する識別情報位置認識手段と、前記表示手段に表示された前記全体画像に含まれる複数の前記識別情報の中から所望の前記識別情報を指定可能にする識別情報指定手段と、前記識別情報指定手段により指定された前記識別情報を前記撮像手段により拡大撮影した近接画像情報に基づいて、前記指定された識別情報を解析する識別情報解析手段と、前記識別情報指定手段による指定結果と、前記識別情報解析手段による解析結果とに基づいて、前記指定された識別情報に対応し前記表示手段に表示される物品情報を抽出する物品情報管理手段とを備える物品管理システムである。
【0010】
また、本発明の他の態様は、それぞれに識別情報が付された複数の物品を含む全体画像情報を取得するステップと、前記全体画像情報に基づいて、前記全体画像における前記各識別情報の位置を認識するステップと、前記全体画像において、複数の前記識別情報の中から所望の前記識別情報を指定するステップと、前記指定された識別情報を拡大撮影した近接画像情報を取得するステップと、前記近接画像情報に基づいて、前記指定された識別情報を解析するステップと、前記識別情報の指定結果と、前記指定された識別情報の解析結果とに基づいて、前記指定された識別情報に対応する物品情報を抽出するステップと、前記物品情報を画面上に表示するステップとを備える物品管理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記全体画像から直接前記識別情報を解析する必要がないため、解像度、情報処理能力等が比較的低い前記撮像手段を用いてシステムを構築することが可能となる。また、前記撮像手段を自動で移動させる移動機構が不要となる。更に、或る限られた空間に載置された幾つかの物品の中から所望の物品を指定し、この指定された物品に関する情報のみを検索するといった状況に、好適に対応することができる。このように、本発明によれば、小規模な環境を含む様々な状況に対応可能な物品管理システムを低コストで構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る物品管理システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施の形態1に係る物品管理システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】前記実施の形態1において、利用者が全体画像情報を取得する状況、及び前記全体画像を例示する図である。
【図4】前記実施の形態1において、前記全体画像から所望の識別情報を指定する状況を例示する図である。
【図5】前記実施の形態1において、前記指定した識別情報の近接画像情報を取得する状況を例示する図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る物品管理システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る物品管理システム1の機能的な構成を示している。前記物品管理システム1は、複数の物品の在庫、状態等を管理することを目的とするものである。前記物品には、それぞれバーコード、二次元コード等の識別情報が付されている。本実施の形態に係る物品管理システム1は、モバイル機器2とホストコンピュータ3とを含んで構成される。
【0014】
前記モバイル機器2は、前記物品が収容、陳列された倉庫、店舗、工場等において使用され、例えば携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ等が適用される。前記モバイル機器2は、カメラ11、ディスプレイ12、識別情報位置認識部13、識別情報指定部14、及び識別情報解析部15を備える。
【0015】
前記カメラ11は、前記物品及び前記識別情報を撮影するために使用される。前記ディスプレイ12は、前記カメラ11により撮影された画像、前記物品に関する情報、その他の画像を表示する。
【0016】
前記識別情報位置認識部13は、それぞれに前記識別情報が付された複数の前記物品が含まれるように前記カメラ11により撮影された全体画像情報に基づいて、前記全体画像の範囲内における前記各識別情報の位置を認識する。前記識別情報位置認識部13は、前記モバイル機器2に備えられる中央処理装置、記憶装置、所定の制御演算プログラム等の協働により構成することができる。
【0017】
前記識別情報指定部14は、前記ディスプレイ12に表示された前記全体画像上で複数の前記識別情報の中から所望の前記識別情報を指定するものである。前記識別情報指定部14は、前記モバイル機器2に備えられる前記中央処理装置、前記記憶装置、入力装置(キーボード、タッチパネル、マウス等)、所定の制御演算プログラム等の協働により構成することができる。
【0018】
前記識別情報解析部15は、前記全体画像上で指定された前記識別情報を前記カメラにより拡大撮影した近接画像情報に基づいて、前記指定された識別情報の詳細な構成の解析、即ちバーコード、二次元コード等のデコード処理を行う。前記識別情報解析部15は、前記中央処理装置、前記記憶装置、所定の制御演算プログラム等の協働により構成することができる。
【0019】
前記ホストコンピュータ3は、前記物品の管理情報を格納するデータベース等を保有するコンピュータシステムであり、通常、前記モバイル機器2よりも優れた処理能力、記憶容量等を有するものが適用される。前記モバイル機器2と前記ホストコンピュータ3とは、所定のコンピュータネットワークを介してデータの送受信が可能な状態にある。前記コンピュータネットワークには、インターネット、イーサネット(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の各種形態が含まれるが、本発明はこれらの形態について特段の限定を要するものではない。
【0020】
前記ホストコンピュータ3は、物品情報管理システム16を備える。前記物品情報管理システム16は、前記識別情報指定部14による指定結果と、前記識別情報解析部15による解析結果とに基づいて、前記指定された識別情報に対応する物品情報を抽出して前記モバイル機器2に送信する。前記抽出された物品情報は、前記ディスプレイ12に表示される。
【0021】
図2は、上記構成の物品管理システム1を利用した処理の流れを示している。先ず、図3に示すように、利用者21が前記モバイル機器2の前記カメラ11を用いて、それぞれに前記識別情報22が付された複数の前記物品23を含む全体画像25を撮影する(S101)。尚、前記識別情報22は、前記物品23を収容する棚24等に付されていてもよい。上記のように取得された前記全体画像25の情報に基づいて、その画像範囲における前記各識別情報22の位置が認識される(S102)。ここで行われる位置認識処理は、例えば前記識別情報22として使用されるバーコード、二次元コード等の形状的特徴をキーとするパターン認識等により実現することができる。
【0022】
次いで、図4に示すように、前記利用者21は、前記モバイル機器2の前記ディスプレイ12上で前記全体画像25を確認し、前記全体画像25上で所望の識別情報22Aを指定する(S103)。前記指定された識別情報22Aは、前記利用者21がその在庫、状態等の管理情報を知りたいと望む前記物品23Aに付されたものである。前記識別情報22Aの指定作業は、前記モバイル機器2に備えられたキーボード、その他のポインティングデバイス(タッチパネル、マウス、マウスパッド等)を利用して行われる。
【0023】
前記識別情報22Aの指定作業が完了した後、前記利用者21は、図5に示すように、前記所望の物品23Aに接近し、前記識別情報22Aの近接画像27を撮影する(S104)。上記のようにして取得された前記近接画像27の情報に基づいて、前記指定された識別情報22Aの詳細な構成が解析、即ち前記バーコード、二次元コード等がデコードされる(S105)。
【0024】
その後、前記ホストコンピュータ3は、前記全体画像25上での前記識別情報22Aの指定結果と、前記近接画像27による前記識別情報22Aの解析結果とに基づいて、前記識別情報22A(前記物品23A)に対応する前記物品情報を抽出する(S106)。そして、前記抽出された物品情報は、前記モバイル機器2の前記ディスプレイ12上に表示される(S107)。
【0025】
以上のように、前記物品管理システム1においては、先ず前記利用者21が前記モバイル機器2に搭載される前記カメラ11を用いて複数の前記識別情報22及び複数の前記物品23を含む前記全体画像25を撮影し、次いで前記モバイル機器2の前記ディスプレイ12上で前記全体画像25に含まれる複数の前記識別情報22の中から所望の前記識別情報22Aを指定する。その後、前記利用者21は前記カメラ11を用いて、前記指定された識別情報22Aの近接画像27を撮影する。前記全体画像25に基づいて前記各識別情報22の位置が認識され、前記近接画像27に基づいて前記指定された識別情報22Aの解析(デコード)が行われる。そして、前記識別情報22Aの指定結果と前記識別情報22Aの解析結果とに基づいて、対応する前記物品情報が抽出され、前記モバイル機器2の前記ディスプレイ12上に表示される。
【0026】
このような構成によれば、前記全体画像25から直接前記識別情報22を解析する必要がないため、解像度、情報処理能力等が比較的低い撮像装置を用いてシステムを構築することが可能となる。また、前記撮像装置を自動で移動させるアクチュエータ等の移動機構が不要となる。更に、前記物品情報のデータベース等を備える前記物品情報管理システム16を、前記ホストコンピュータ3側に設けることにより、前記モバイル機器2の処理負担を軽減させることができる。更にまた、例えば棚卸し作業のように、或る限られた前記棚24に載置された幾つかの物品23の中から所望の物品23Aを指定し、この指定された物品23Aの識別情報22Aのみを解析できれば足りる状況にも、好適に対応することができる。このように、本実施の形態に係る物品管理システム1によれば、小規模な環境を含む様々な状況に対応可能な物品管理システム1を低コストで構築することが可能となる。
【0027】
実施の形態2
図6は、本発明の実施の形態2に係る物品管理システム51の機能的な構成を示している。本実施の形態に係る物品管理システム51は、前記識別情報位置認識部13及び前記識別情報解析部15が、ホストコンピュータ53側に備えられている。本実施の形態に係るモバイル機器52は、前記カメラ11、ディスプレイ12、及び前記識別情報指定部14だけを備える。そして、前記モバイル機器52と前記ホストコンピュータ53とが、インターネット等のコンピュータネットワークを介して接続されている。
【0028】
前記物品管理システム51においては、前記モバイル機器52の前記カメラ11により取得された前記全体画像情報及び前記近接画像情報が、それぞれ前記ホストコンピュータ53の前記識別情報位置認識部13及び前記識別情報解析部15に送られる。前記識別情報位置認識部13による前記位置認識結果は、前記モバイル機器52に送信され、前記ディスプレイ12により表示される。この位置認識結果に基づいて、前記モバイル機器52において、前記識別情報22Aの指定が行われる。この指定結果は、前記モバイル機器52から前記ホストコンピュータ53の前記物品情報管理システム16に送信される。そして、前記物品情報管理システム16は、前記指定結果と、前記識別情報解析部15による解析結果とに基づいて、対応する前記物品情報を抽出し、前記モバイル機器2に送信する。
【0029】
上記のように、前記識別情報位置認識部13及び前記識別情報解析部15を前記ホストコンピュータ53側に備えることにより、前記モバイル機器52側での情報処理を、上記実施の形態1よりも少なくすることができる。これにより、前記モバイル機器52として、より簡易な機器を用いることが可能となる。このような構成は、複数の前記利用者21により多くの前記モバイル機器52を使用するシステムに好適である。
【0030】
尚、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。
【符号の説明】
【0031】
1,51 物品管理システム
2,52 モバイル機器
3,53 ホストコンピュータ
11 カメラ
12 ディスプレイ
13 識別情報位置認識部
14 識別情報指定部
15 識別情報解析部
16 物品情報管理システム
21 利用者
22,22A 識別情報
23,23A 物品
24 棚
25 全体画像
27 近接画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型の撮像手段と、
所定の画像を表示する表示手段と、
前記撮像手段により取得され、それぞれに識別情報が付された複数の物品を含む全体画像情報に基づいて、前記全体画像における前記各識別情報の位置を認識する識別情報位置認識手段と、
前記表示手段に表示された前記全体画像に含まれる複数の前記識別情報の中から所望の前記識別情報を指定可能にする識別情報指定手段と、
前記識別情報指定手段により指定された前記識別情報を前記撮像手段により拡大撮影した近接画像情報に基づいて、前記指定された識別情報を解析する識別情報解析手段と、
前記識別情報指定手段による指定結果と、前記識別情報解析手段による解析結果とに基づいて、前記指定された識別情報に対応し前記表示手段に表示される物品情報を抽出する物品情報管理手段と、
を備える物品管理システム。
【請求項2】
前記識別情報は、バーコード又は二次元コードのどちらか又は両方である、
請求項1に記載の物品管理システム。
【請求項3】
タッチパネル型のポインティングデバイスを利用して構成される、
請求項1又は2に記載の物品管理システム。
【請求項4】
前記識別情報指定手段は、前記表示手段に表示される前記全体画像上において、複数の前記識別情報の中から所望の前記識別情報を前記ポインティングデバイスにより指し示すことにより、前記識別情報の指定を行う、
請求項3に記載の物品管理システム。
【請求項5】
前記識別情報位置認識手段は、前記表示手段に表示される前記全体画像上において、所望の位置を前記ポインティングデバイスにより指し示すことにより、前記識別情報の位置を追加する、
請求項3に記載の物品管理システム。
【請求項6】
それぞれに識別情報が付された複数の物品を含む全体画像情報を取得するステップと、
前記全体画像情報に基づいて、前記全体画像における前記各識別情報の位置を認識するステップと、
前記全体画像において、複数の前記識別情報の中から所望の前記識別情報を指定するステップと、
前記指定された識別情報を拡大撮影した近接画像情報を取得するステップと、
前記近接画像情報に基づいて、前記指定された識別情報を解析するステップと、
前記識別情報の指定結果と、前記指定された識別情報の解析結果とに基づいて、前記指定された識別情報に対応する物品情報を抽出するステップと、
前記物品情報を画面上に表示するステップと、
を備える物品管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84384(P2011−84384A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240224(P2009−240224)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】