説明

物品装飾用のポリアミド/ポリウレタン多層構造物

【課題】有用な装飾された物品、例えばスキー板や運動靴で使用されるポリアミド/ポリウレタン多層構造物。
【解決手段】透明なポリアミド層と熱可塑性ポリウレタン(TPU)層とを含む多層構造物。この構造物をポリアミド層が外側にくるように接着して装飾された物品を得ることができる。接着はホットプレスや接着剤を用いて行うことができる。装飾は接着前に構造物を施しておくか、昇華性インクをポリアミド層に印刷して行うことができる。ポリアミド層が金型壁と接する状態で上記構造物を金型にセットし、ポリウレタン発泡体またはポリウレタン樹脂を多色成形して上記構造物をポリウレタン発泡体またはポリウレタン樹脂に接着することもできる。ポリアミド層が半結晶で、TPUが透明であるのが有利である。各層を複数の層で形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品装飾用のポリアミド/熱可塑性ポリウレタン(TPU)多層構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記文献にはポリアミド層と、ポリアミドエラストマー/グラフト化ポリオレフィンブレンド層と、木材、金属、エポキシまたはポリウレタンから成る層とをこの順番で有する構造物が開示されている。
【特許文献1】米国特許第5,616,418号明細書
【特許文献2】米国特許第5,506,310号明細書
【0003】
この構造物はスキー板にすることができ、その場合にはエポキシまたはポリウレタンの層を熱可塑性の層にしないでスキー板の芯にする。すなわち、スキー板のこの部分を熱可塑性の層にしないで、エポキシ樹脂は架橋させ、ポリウレタンの場合にはリジッドなポリウレタンにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、物品を装飾するのに用いられるポリアミド/熱可塑性ポリウレタン(TPU)多層構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の対象は、ポリアミドをベースにした透明な層(以下、単にポリアミド層という)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)をベースにした層とを有する多層構造物にある。
本発明のさらに別の対象は、ポリアミド層が外側にくる状態で上記構造物を接着した装飾された物品にある。接着操作はホットプレスや接着剤を用いて行うことができる。装飾は接着前に予め構造物に付けておくか、ポリアミド層に昇華性インクで印刷するか、これら2つの方法を組み合わせて行うことができる。
【0006】
ポリアミド/TPU構造物の別の形態ではそれをポリウレタン発泡体またはポリウレタン樹脂に接着することができる。また、ポリアミド層が金型の壁側にくるように上記ポリアミド/TPU構造物を金型にセットし、その上にポリウレタン発泡体またはポリウレタン樹脂を多色成形(オーバーモールド)することもできる。
本発明構造物はスキー板や運動靴等を作るのに有用である。本発明のさらに他の対象はこれらの物物にある。
ポリアミド層は半結晶であるのが有利である。また、TPUは透明であるのが有利である。また、各層は複数の層で構成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明構造物には多くの利点がある。
ポリアミド層は下記の特徴を有している:
(1)耐摩耗性に優れている。
(2)衝撃強度、特に低温衝撃強度に優れている。
(3)昇華性インクで装飾ができる(すなわち、TPUおよびTPU/ABSブレンドは昇華性インクで印刷できないが、ポリアミド層は融点(またはガラス遷移温度)が高いので昇華性インクで印刷ができる)。
(4)完全に透明である(脂肪族ポリアミドPA−11またはPA−12とのブレンドにした場合でも半芳香族または半脂環式PAは透明である)。
(5)耐紫外線・薬品性に優れている。
(6)外観の光沢が優れている。
(7)触感がなめらかである。
【0008】
一方、TPU層は下記の特徴を有している:
(1)スクリーン印刷用インク、特に装飾用ポリウレタン(PU)インクに対する接着性が優れている(これらのインクはラッカー上に塗布され、従って、インクおよびラッカーに対する接着性が必要)。
(2)PU発泡体への接着性に優れている。
(3)TPUは多色成形できる。
(4)TPU層のPAへの接着性が非常に優れている。
(5)前処理の必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の多層構造物はフィルムまたはシートの形にすることができる。一般に、「フィルム」という用語は厚さが約0.5mmまでのものに、「シート」はそれ以上のものに用いられる。本発明構造物はスキー板のような物品に例えばホットプレスによってポリアミド層が外側に来るように接着することができる。この場合、ポリアミド層がスキー板の表面を形成するが、ポリアミド/TPU構造物を接着する前にスキー板の表面(雪上を滑る底面とは反対側)に予め装飾を施すことができる。
【0010】
TPU層が半透明または透明な場合にはポリアミド/TPU構造物の接着後でも装飾を見ることができる。また、ポリアミド/TPU構造物の接着後に昇華性インクでポリアミド層に印刷をしてスキー板を装飾することもできる。これら2つの装飾法を組み合わせることもできる。
ポリアミド/TPU構造物の別の形状ではポリウレタン発泡体に接着することができ、この構造体は例えば運動靴で有用である。
ポリアミド/TPU構造物のさらに別の形状ではリジッドなポリウレタンに接着することができる。この構造体は種々の物品の製造で有用である。
【0011】
ポリアミド層は半芳香族PA、半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドの中から選択される少なくとも一種のポリアミドを含む。このポリアミド層は下記から成るのが好ましい:
半芳香族または半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドの中から選択される少なくとも一種のポリアミド: 5〜40重量%
少なくとも一種の脂肪族ポリアミド: 95〜60重量%
(必要に応じて衝撃改質剤、相溶化剤およびポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの中から選択される少なくとも一種の化合物をさらに含むことができる)。
【0012】
脂肪族ポリアミドは、PA−11、PA−12、6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと9〜12個の炭素原子を有する脂肪族二酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドおよび11単位が90%以上であるか、12単位が90%以上である11/12コポリアミドの中から選択することができる。
【0013】
6〜12の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと9〜12の炭素原子を有する脂肪族二酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドの例としては下記を挙げることができる:
PA−6,12(ヘキサメチレンジアミンと1,12−ドデカンジオン酸との縮合)
PA−9,12(C9ジアミンと1,12−ドデカンジオン酸との縮合)
PA−10,10(C10ジアミンと1,10−デカンジオン酸との縮合)
PA−10,12(C10ジアミンと1,12−ドデカンジオン酸との縮合)
【0014】
90%以上が11単位であるか、90%以上が12単位であるいずれかの11/12コポリアミドは、1−アミノウンデカン酸とラウリルラクタム(またはα、ω-C12アミノ酸)との縮合で得られる。
【0015】
ポリアミド層はポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーを含むこともできるが、ポリアミド層の透明性を損なわない比率にするのが有利である。このポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーは下記(1)〜(3)のような反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られる:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックとジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化α、ω-ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化および水素添加で得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール(この場合に得られるものを特にポリエーテルエステルアミドという)。このコポリマーを用いるのが有利である。
【0016】
ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤としてのジカルボン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤としてのジアミン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。これらのポリマーはポリエーテルとポリアミドブロック先駆体との同時反応で製造される。例えば、ポリエーテルジオールと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させることができる。基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られるが、ランダムに反応した各成分がポリマー鎖中にランダムに分散していてもよい。また、ポリエーテルジアミンと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させることもできる。基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られるが、ランダムに反応し各成分がポリマー鎖中ランダムに分散していてもよい。
【0017】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー中のポリエーテルブロックの量はコポリマーの10〜70重量%、好ましくは35〜60重量%であるのが有利である。
ポリエーテルジオールブロックをそのまま用い、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合するか、アミノ化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと縮合する。また、ポリエーテルジオールブロックをポリアミド先駆体および連鎖制限剤の二酸と混合してランダムに分散した単位を有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーにすることもできる。
ポリアミドブロックの数平均分子量はMnは500〜10000、好ましくは500〜4000である(第2のタイプのポリアミドブロックを除く)。ポリエーテルブロックの数平均分子量はMnは100〜6000、好ましくは200〜3000である。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するこれらのポリマーは、それらが予め製造しておいたポリアミドとポリエーテルのブロックの共重縮合から得られたものでも、1段の反応で製造されたものであっても、初期濃度0.8g/100ml、25℃のメタクレゾール中で測定したその固有粘度は例えば0.8〜2.5である。
【0018】
例としては、下記を含む組成物が挙げられる(重量%):
(a)1〜99%、好ましくは5〜40%の下記単位で特徴づけられる第1ポリアミド:
【化1】

【0019】
(ここで、
1およびy2はこれらの合計y1+y2が10〜200で、y1/y1+y2=0.5になる数であり、
m、p、m'、p'は0以上の数であり、
脂肪族単位−NH−Z−CO−および−NH−Z'−CO−中のZおよびZ'はポリメチレンセグメント:
【0020】
【化2】

【0021】
(ここで、nは6以上の整数、好ましくは7〜11)か、アミン官能基間に少なくとも4個の炭素原子を含む一種以上の脂肪族ジアミンと酸官能基間に少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個の炭素原子を含む一種以上の脂肪族ジカルボン酸とのほぼ化学量論の縮合で得られるアミド官能基を含む単位のいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、
−HN−R−NH−は脂環式および/または脂肪族および/または脂肪族アリールジアミンであり、
芳香族二酸の最大30モル%を酸官能基間に4個以上、好ましくは6個以上の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸で置換することができる。
【0022】
(b)99〜1%、好ましくは95〜60%の半結晶ポリアミド。この半結晶ポリアミドは式−NH−(CH2n'−CO−(ここで、n'は6以上、好ましくは7〜11の整数である)で定義される脂肪族単位を少なくとも35重量%、好ましくは50重量%含み、必要に応じて半芳香族単位の一部として、および/またはアミン官能基間に少なくとも4個の炭素原子を含む一種以上の脂肪族ジアミンと酸官能基間に少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個の炭素原子を含む一種以上の脂肪族ジカルボン酸とのほぼ化学量論の縮合で得られるアミド官能基を含むブロックで定義される脂肪族単位を含み、これは上記第1ポリアミドと上記半結晶ポリアミドとを300℃以上、好ましくは300〜400℃の温度でブレンドする段階を含む方法で得ることができる。この半結晶ポリアミドは上記脂肪族ポリアミドの中から選択するのが好ましく、特にPA−11またはPA−12にするのが有利である。
【0023】
また、半結晶ポリアミドと非晶質ポリアミドとを含むポリアミド組成物も挙げられる。
この非晶質ポリアミドの量は高温で透明で変形せずに印刷でき、相転移しないガラス遷移温度を有するのに十分な量にする。このポリアミド組成物は各構成成分を300℃以上の温度でブレンドし、300℃以上の温度で成形して得ることができる。透明度は700nmで測定した時の光透過係数が厚さ2mmで50%以上であるようにする。
【0024】
この組成物は下記から成るのが有利である(重量%):
95〜60%(好ましくは65〜80%)の上記半結晶ポリアミド、
5〜40%(好ましくは35〜20%)の上記非晶質ポリアミド。
この組成物は下記から成るのがさらに有利である(重量%):
68〜77%の上記半結晶ポリアミド、
32〜23%の上記非晶質ポリアミド。
半結晶ポリアミドは上記脂肪族ポリアミドの中から選択するのが好ましく、特にPA−11またはPA−12にするのが有利である。
【0025】
さらに、下記の(1)〜(4)からなる透明な組成物(合計100重量%)を挙げることもできる:
(1) 基本的に下記(a)〜(c)のいずれかの縮合で得られ非晶質ポリアミド(B) 5〜40%:
(a)脂環式ジアミンおよび脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一種のジアミンと脂環式二酸および脂肪族二酸の中から選択される少なくとも一種の二酸との縮合(ジアミン単位または二酸単位の少なくとも一つは脂環式である)、
(b)α、ω-脂環式アミノカルボン酸の縮合、または
(c)上記二つの縮合の組み合せ、
(上記縮合は任意成分としてα、ω-アミノカルボン酸または対応するラクタム、脂肪族二酸および脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一種のモノマーをさらに含むことができる)、
(2) ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーおよびコポリアミドの中から選択される可撓性ポリアミド(C) 0〜40%、
(3) (A)と(B)の相溶化剤(D) 0〜20%、
(4) 可撓性改質剤(M) 0〜40%、
ただし、(C)+(D)+(M)=0〜50%で、100%の残りは半結晶ポリアミド(A)である。
半結晶ポリアミドは上記の脂肪族ポリアミドの中から選択するのが好ましく、特にPA−11またはPA−12にするのが有利である。
【0026】
下記(1)〜(3)から成る透明な組成物(合計100重量%)も挙げることができる:
(1) 脂環式でもよい少なくとも一種のジアミンと、少なくとも一種の芳香族二酸と、任意成分としてのα、ω-脂環式アミノカルボン酸、脂肪族二酸および脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一種のモノマーとの縮合で得られ非晶質ポリアミド(B) 5〜40%、
(2) ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーおよびコポリアミドの中から選択される可撓性ポリアミド(C) 0〜40%、
(3) (A)および(B)の相溶化剤(D) 0〜20%、
(ただし、(C)+(D)=2〜50%、(B)+(C)+(D)は30%以下になることはなく、100%の残りは半結晶ポリアミド(A)である)
【0027】
半結晶ポリアミドは上記脂肪族ポリアミドの中から選択するのが好ましく、特にPA−11またはPA−12にするのが有利である。
後者の2つの組成物での「透明」「ポリアミド」「半結晶」および「非晶質」という用語は下記の定義を有する:
「透明」とは560ナノメートル波長で測定した時の光透過係数が厚さ2mmで50%以上であることをいう。これは80%以上であるのが好ましい。
「ポリアミド」はポリアミドの基本特性に影響を与えない比率で第3モノマーを含むことができ、コポリアミドも含む用語である。
「半結晶」とはガラス遷移温度Tgと融点Tmを同時に有する(コ)ポリアミドを含む。
「非晶質」とはTg以上の温度で液体または溶融状態で、従って成形可能なポリアミドを含む。このポリマーは原則としてDSCでTmを有しない。しかし、Tmを有していてもよいが、無視できる程度のもので、ポリマーの非晶質性にほとんど影響を与えないものである。
【0028】
TPU層は少なくとも一種のジイソシアメートと少なくとも一種の短鎖ジオールとの反応で得られるポリエーテルジオールの残基である軟かいポリエーテルブロックと硬い(ポリウレタン)ブロックとから成る。鎖延長剤のジオールはネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールおよび式:HO(CH2nOH(ここでnは2〜10の整数)の脂肪族グリコールから成る群の中から選択できる。ポリウレタンブロックとポリエーテルブロックはイソシアネート基とポリエーテルジオールのOH基との反応で結合される。
【0029】
さらに、ポリエステルウレタン、例えばジイソシアナート単位と、非晶形のポリエステルジオールから誘導される単位と、短鎖延長剤のジオールに由来する単位とから成るポリエステルウレタンを挙げることもできる。可塑剤を含むことができる。
TPUはポリアミドブロックポリエーテルブロック共重合体および/または芳香族ビニル樹脂との混合物にすることができる。
【0030】
芳香族ビニル樹脂の「芳香族ビニルモノマー」という用語は芳香族不飽和エチレンモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、痾メチルスチレン、痾エチルスチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、3−tert−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレンおよび1−ビニルナフタレンを意味する。好ましい芳香族ビニルモノマーはスチレンである。
【0031】
スチレンポリマーの例としてはポリスチレン、エラストマーで改質されたポリスチレン、スチレン/アクリロニトリルコポリマー(SAN)、エラストマーで改質されたSAN、例えばスチレンおよびアクリロニトリルをポリブタジエンまたはブタジエン−アクリロニトリルコポリマーの主鎖にグラフト(グラフト重合)して得られたABS、SAN/ABSブレンド、エラストマーで改質されたABS、エラストマーで改質されたSAN、および、エラストマーで改質されたSAN/ABSのブレンドを挙げることができる。上記のエラストマーは例えばEPR(エチレン−プロピレン−ゴムまたはエチレンプロピレンエラストマー)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー)、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ポリイソプレンおよびイソプレン−アクリロニトリルコポリマーにすることができる。これらのエラストマーは低温衝撃強度を向上させるのに用いられる。
【0032】
耐衝撃性ポリスチレンは(i)ポリスチレンをエラストマー、例えばポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、ポリイソプレンまたはイソプレン−アクリロニトリルコポリマーとをブレンドするか、(ii)より一般的にはスチレンをポリブタジエンまたはブタジエン−アクリロニトリルコポリマーの主鎖にグラフト(グラフト重合)して得ることができる。
【0033】
上記のスチレンポリマーでは、スチレンの一部をスチレンと共重合可能な不飽和モノマー、例えば痾メチルスチレンおよび(メタ)アクリルエステルで置換することができる。スチレンコポリマーの例としてはポリクロロスチレン、ポリ(痾メチルスチレン)、スチレン−クロロスチレンコポリマー、スチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、スチレン−塩化ビニルコポリマー、スチレン−酢酸ビニルコポリマー、スチレン−アルキルアクリレート(メチル、エチル、ブチル、オクチル、または、フェニルアクリレート)コポリマー、スチレン−アルキルメタクリレート(メチル、エチル、ブチル、オクチル、または、フェニルメタクリレート)コポリマー、スチレン−メチルクロロアクリレートコポリマーおよびスチレン−アクリロニトリル−アルキルアクリレートコポリマーを挙げることができる。これらのコポリマーのコモノマー含有率は一般に20重量%以下にする。さらに、融点の高いメタロセンポリスチレンもある。芳香族ビニル樹脂はABSおよびSAN/ABSブレンドであるのが有利である。
TPU層中のTPUの比率は1重量%以上、好ましくは少なくとも20重量%である限り、任意である。
【0034】
一つの実施例ではポリアミド層は2つの層から形成される。その外層は半芳香族または半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドから選択されるポリアミドから成る。例えば、必要に応じて紫外線安定剤を含んでいてもよいTPU層にするか、必要に応じて紫外線安定剤を含んでいてもよいポリアミドブロックポリエーテルブロックコポリマー層にするか、必要に応じて紫外線安定剤を含んでいてもよい半芳香族または半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドの中から選択されるポリアミド層にすることができる。すなわち、本発明構造物を以下の順番を有する多層構造物にすることができる。すなわち、外層は半芳香族または半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドの中から選択されるポリアミドとし、中間層は必要に応じて紫外線安定剤を含んでいてもよいTPU層か、必要に応じて紫外線安定剤を含んでいてもよいポリアミドブロックポリエーテルブロックコポリマー層か、必要に応じて紫外線安定剤を含んでいてもよい半芳香族または半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドの中から選択されるポリアミド層とし、ベース層を熱可塑性ポリウレタン(TPU)にする。外層は上記のものにすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例および比較例を表にまとめて示す。
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドをベースにした透明な層と、熱可塑性ポリウレタン(TPU)をベースにした層とを有する多層構造物。
【請求項2】
ポリアミドをベースにした透明な層が半芳香族PAまたは半脂環式PAまたは脂肪族ポリアミドの中から選択される少なくとも一種のポリアミドからなる請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
脂肪族ポリアミドをPA−11、PA−12、6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと9〜12個の炭素原子を有する脂肪族二酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドおよび11単位が90%以上であるか、12単位が90%以上である11/12コポリアミドの中から選択する請求項2に記載の構造物。
【請求項4】
ポリアミドをベースにした層がポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーからなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項5】
TPUがポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーおよび/または芳香族ビニル樹脂とのブレンドである請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項6】
芳香族ビニル樹脂がエラストマーを含んでいてもよいABSまたはSAN/ABSブレンドである請求項5に記載の構造物。
【請求項7】
ポリアミドをベースにした層が2つの層から成り、その外層が半芳香族または半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドから選択されるポリアミドから成り、紫外線安定剤を含んでいてもよいポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの層か、紫外線安定剤を含んでいてもよい半芳香族または半脂環式PAおよび脂肪族ポリアミドの中から選択されるポリアミドの層である請求項1〜6のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項8】
ポリアミドをベースにした層が外側にくるように請求項1〜7のいずれか一項に記載の構造物を接着した物品から成る装飾された物品。
【請求項9】
ポリアミドをベースにした層を昇華性インクで装飾した請求項8に記載の装飾された物品。
【請求項10】
ポリウレタン発泡体またはポリウレタン樹脂に上記のポリアミド/TPU構造物を接着するか、上記のポリアミド/TPU構造物をポリアミドをベースにした層が金型の壁側にくるように金型上にセットしてポリウレタン発泡体またはポリウレタン樹脂を多色成形して得られる構造物。

【公開番号】特開2009−29142(P2009−29142A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242437(P2008−242437)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【分割の表示】特願2004−304004(P2004−304004)の分割
【原出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】