説明

物理的システムにおいて入力信号を発生する方法及び装置

【課題】振動システムのための駆動信号を獲得する前述のシステム及び方法はほぼ成功を享受したにも拘わらず、そのようなシステムを改善するための継続した必要性が存在する。特に、物理的システムのモデル、及び駆動信号を獲得するための反復的プロセスを改善する。
【解決手段】入力に応答して選択された出力を生成するよう物理的システム(10)を制御する方法及び装置は、入力を受け取り実際の出力を与える物理的システムを含む仮想同一性システムを定義することを備える。仮想同一性システムの同一性の質は、少なくとも実際の出力の関数を用いてチェックされる。好適な実施形態において、正しい入力をより効率的かつ正確に与えるため、調整が物理的システムのモデルに対して同一性の質の関数として行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、本質的に反復的又は少なくともある程度の繰り返しが容易にできるシステム、機械又はプロセスの制御に関する。詳細には、本発明は、システムの振動に対する入力として駆動信号を発生するため用いられるべきモデルを計算することに関する。
【背景技術】
【0002】
試験標本に印加される負荷及び/又は動きをシミュレートすることができる種々の振動システムが一般的に知られている。振動システムは、性能評価、耐久性試験及び種々の他の目的は製品の開発において非常に有効であるので、性能評価、耐久性試験及び種々の他の目的のため広く用いられている。例えば、自動車、オートバイ又は類似のものの開発において、それらのものの車両又は下部構造を、道路又は試験トラックのような動作条件をシミュレートする研究所環境の下に置くことは極めて普通である。研究所における物理的シミュレーションは、動作環境を再現するため振動システムに対して印加されることができる駆動信号を生成するためデータ取得及び分析の周知の方法を包含する。この方法は、動作環境の物理的入力に対して「遠隔の」トランスジューサを車両に取り付けることを含む。通常の遠隔のトランスジューサは、次のものに制限されるものでないが、歪みゲージ、加速度計及び変位センサを含み、それらは関心の動作環境を暗黙に規定する。次いで、車両は同じ動作環境で駆動されるが、これに対し遠隔のトランスジューサの応答(内部負荷及び/又は動き)が記録される。振動システムに取り付けられた車両を用いたシミュレーション中に、振動システムのアクチュエータは、研究所における車両に関する記録された遠隔トランスジューサ応答を再現するように駆動される。
【0003】
しかしながら、シミュレートされた試験が行われることができる前に、振動システムに対する入力駆動信号と遠隔トランスジューサの応答との関係は、研究所において特性化されねばならない。通常、この「システム同一化」手順は、完全な物理的システム(例えば、振動システム、試験標本及び遠隔トランスジューサ)(以下、「物理的システム」と称する。)のそれぞれのモデル又は伝達関数を獲得し、それの逆モデル又は逆伝達関数を計算し、その逆モデル又は逆伝達関数を用いて振動システムのための適切な駆動信号を反復的に獲得して動作環境において見られたような研究所状況における試験標本に関する遠隔トランスジューサからの同じ応答を実質的に獲得する。
【0004】
当業者が認めるように、適切な駆動信号を獲得するこのプロセスは、遠隔トランスジューサが試験システム入力から物理的に遠隔でないとき(例えば、「遠隔」トランスジューサが、振動システムのコントローラの、力又は運動のような、フィードバック変数である場合)、変えられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
振動システムのための駆動信号を獲得する前述のシステム及び方法はほぼ成功を享受したにも拘わらず、そのようなシステムを改善するための継続した必要性が存在する。特に、物理的システムのモデル、及び駆動信号を獲得するための反復的プロセスを改善するための必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の一局面は、入力に応答して選択された出力を生成するよう物理的システムを制御する方法及び装置又はシステム・コントローラに関する。本方法は、入力を受け取り実際の出力を生成する物理的システムを含む仮想同一性システムを定義するステップ、及び少なくとも実際の出力の関数を用いて仮想同一性システムの同一性の質をチェックするステップを供える。システム・コントローラは、その方法を実行するためのプログラム・モジュールを含む。命令がまた、本方法を実行するためコンピュータにより読取り可能な媒体上に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明を実施する例示的環境のブロック図である。
【図2】図2は、本発明を実行するコンピュータである。
【図3A】図3Aは、従来技術の振動試験方法の同一化過程に含まれるステップを図示するフローチャートである。
【図3B】図3Bは、従来技術の振動試験方法の反復的過程に含まれるステップを図示するフローチャートである。
【図3C】図3Cは、従来技術の振動試験方法の別の反復的過程に含まれるステップを図示するフローチャートである。
【図4A】図4Aは、本発明の調整器を有する振動システムのための駆動信号を獲得する従来技術の反復的プロセスの詳細ブロック図である。
【図4B】図4Bは、本発明の調整器を有する振動システムのための駆動信号を獲得する別の従来技術の反復的プロセスの詳細ブロック図である。
【図5】図5は、本発明の一局面の一般的ブロック図である。
【図6】図6は、図5の発明の一実施形態の詳細ブロック図である。
【図7】図7は、図6の実施形態を動作させるため含まれるステップを図示するフローチャートである。
【図8】図8は、図5の発明の別の実施形態の詳細ブロック図である。
【図9】図9は、本発明の第2の局面の一般的ブロック図である。
【図10】図10は、本発明の第3の局面の一般的ブロック図である。
【図11】図11は、図9の発明の一実施形態の詳細ブロック図である。
【図12】図12は、図10の発明の一実施形態の詳細ブロック図である。
【図13】図13は、本発明の第4の局面のブロック図である。
【図14】図14は、本発明の第5の局面のブロック図である。
【図15】図15は、本発明の第6の局面のブロック図である。
【図16】図16は、本発明の第7の局面の絵画図である。
【図17】図17は、本発明の第8の局面のブロック図である。
【図18】図18は、本発明の第9の局面のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好適な実施形態の詳細な説明
図1は物理的システム10を図示する。物理的システム10は、一般的にサーボ・コントローラ14及びアクチュエータ15を備える振動システム13を含む。図1の概略図において、アクチュエータ15は、適切な機械的インタフェース16を介して試験標本18に結合される1つ以上のアクチュエータを表す。サーボ・コントローラ14は、アクチュエータ指令信号19をアクチュエータ15に与え、次いでアクチュエータ15は、試験標本18を励起する。適切なフィードバック15Aが、アクチュエータ15からサーボ・コントローラ14まで設けられている。変位センサ、歪みゲージ、加速度計又は類似のもののような、試験標本18上の1つ以上の遠隔トランスジューサ20が、測定された又は実際の応答21を与える。物理的システム・コントローラ23は、実際の応答21をフィードバックとして受け取って駆動17を物理的システム10への入力として計算する。以下に説明する反復的プロセスにおいて、物理的システム・コントローラ23は、物理的システム10のための駆動17を、22に与えられる所望の応答と試験標本18上の遠隔トランスジューサ20の実際の応答21との比較に基づいて発生する。単一のチャネルのケースのため図1に図示されているにも拘わらず、N個の応答成分を有する応答21、及びM個の駆動成分を有する駆動17を有する複数のチャネルの実施形態が、一般的であり、そして本発明の別の実施形態と考えられる。
【0009】
物理的システムが振動システム13及び遠隔トランスジューサ20を備える場合が本明細書に記載されるにも拘わらず、以下に記載される本発明の局面は、他の物理的システムに対して適用されることができる。例えば、製造プロセスにおいて、物理的システムは、製造機械(例えば、プレス、造型装置、成形機械等)を含み、駆動17は、指令信号を前記機械に与え、そして実際の応答21は、限界寸法のような、製造された物品の手動又は自動の測定されたパラメータを有する。別の例は、物理的システムがプロセス・プラントである場合オイル精製所を含み、そして実際の応答21は、出力製品と関連した中間又は最終パラメータを有する。
【0010】
図2及び関連の説明は、本発明が実行される適切な計算環境の簡単な一般的説明を与える。必要とされないが、物理的システム・コントローラ23が、コンピュータ30により実行される、プログラム・モジュールのような、コンピュータにより実行可能な命令の一般的文脈において、少なくとも部分的に説明されるであろう。一般的に、プログラム・モジュールは、ルーチン・プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造等を含み、これらは、特定のタスクを実行し、又は特定の抽象データ型を実行する。プログラ・モジュールは、ブロック図及びフローチャートを用いて以下に説明される。当業者は、ブロック図及びフローチャートをコンピュータにより実行可能な命令に実現することができる。更に、当業者は、本発明が、マルチプロセッサ・システム、ネットワーク化されたパーソナル・コンピュータ、ミニコンピュータ、メイン・フレーム・コンピュータ及び類似のものを含む他のコンピュータ・システム構成を用いて実行され得ることを認めるであろう。本発明はまた、タスクが通信ネットワークを介してリンクされている遠隔処理装置により実行される分散計算環境において実行され得る。分散型計算環境においてプログラム・モジュールは、局所及び遠隔の記憶装置の双方に配置され得る。
【0011】
図2に図示されているコンピュータ30は、中央処理装置(CPU)32、メモリ34及びシステム・バス36を有する通常のパーソナル又はデスクトップのコンピュータを備え、システム・バス36は、メモリ34からCPU 32までを含む種々のシステム構成要素を結合する。システム・バス36は、種々のバス・アーキテクチャのいずれを用いるメモリ・バス又はメモリ・コントローラ、周辺バス、及びローカル・バスを含む幾つかのタイプのバス構造のいずれかであり得る。メモリ34は、読出し専用メモリ(ROM)及びランダム・アクセス・メモリ(RAM)を含む。スタートアップの間のような、コンピュータ30内の構成要素間の情報の転送を支援する基本ルーチンを含む基本入力/出力(BIOS)がROMに記憶されている。ハード・ディスク、フロッピー・ディスク・ドライブ、光ディスク・ドライブ等のような記憶装置38が、システム・バス36に結合され、プログラム及びデータの記憶のため用いられる。磁気カセット、フラッシュ・メモリ・カード、ディジタル・ビデオ・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ、読出し専用メモリ及び類似のもののような、コンピュータによりアクセス可能な他のタイプのコンピュータにより読取り可能な媒体がまた、記憶装置として用いられ得ることが当業者により認められるはずである。通常、プログラムは、少なくとも1つの記憶装置38からメモリ34に、付随するデータを伴い又は伴わずロードされる。
【0012】
キーボード、位置決め装置(マウス)、又は類似のもののような入力装置40は、ユーザが指令をコンピュータ30に与えるのを可能にする。モニタ42又は他のタイプの出力装置が更に、システム・バス36に適切なインタフェースを介して接続され、フィードバックをユーザに与える。所望の応答22が、コンピュータ30への入力として、モデムのような通信リンクを介して、又は記憶装置38の着脱可能な媒体を介して与えられることができる。駆動信号17が、コンピュータ30により実行されるプログラム・モジュールに基づいて、又はコンピュータ30を振動システム13に結合する適切なインタフェース44を介して、図1の物理的システム10に与えられる。
【0013】
本発明を説明する前に、物理的システム10をモデル化しかつそれに印加される駆動17を獲得する既知の方法を詳細に復習することはまた役立つかも知れない。試験車両に関して以下で説明されるにも拘わらず、この従来技術の方法、及び以下に説明される本発明は、車両のみの試験に限定されず、他のタイプの試験標本及び下部構造又はその構成要素に関して用いられることができることが理解されるべきである。更に、その記載は、動作が幾つかの他の数学的技術(例えば、適応逆制御(Adative Inverse Control)(AIC)タイプのモデル、自動回帰外因発生(Auto Regressive Exogenous)(ARX)及び状態空間(State Space)タイプのモデルのようなパラメータ回帰技術、又はそれらの組合わせ)により実行されることができるにも拘わらず推定及び実行をモデル化することに基づく特別の分析を前提にしてなされている。
【0014】
図3Aを参照すると、ステップ52において、試験車両には遠隔トランスジューサ20が取り付けられる。ステップ54において、車両は、関心の実地動作環境の下に置かれ、遠隔トランスジューサ応答が測定され記録される。例えば、車両は、道路又は試験トラック上で運転されることができる。測定された遠隔トランスジューサ応答は通常アナログ形式であるが、それらがよく知られているようにアナログ対ディジタル変換器を介してディジタル形式でコンピュータ30に記憶される。
【0015】
次に、同一化過程において、物理的システム10の入力/出力モデルが決定される。この手順は、ステップ56において駆動17を物理的システム10への入力として与えることと、遠隔トランスジューサ応答21を出力として測定することとを含む。モデル評価のため用いられる駆動17は、選択された帯域幅にわたり周波数成分を有するランダムな「白色雑音」であり得る。ステップ58において、物理的システム10のモデルの評価は、ステップ56において印加された入力駆動及び得られた遠隔トランスジューサ応答に基づいて計算される。一実施形態において、これは、「周波数応答関数」(FRF)としてよく知られている。数学的に、FRFはN×Mマトリックスであり、そこにおいて各要素は周波数に依存する複素変数(利得及び位相対周波数)である。マトリックスの列は入力に対応し、その行は出力に対応する。当業者により認められるように、FRFはまた、物理的システム10又は物理的システム10におおむね似ている他のシステムを用いて従来の試験から直接得られてもよい。
【0016】
逆モデルH(f)-1は、ステップ60において物理的駆動17を遠隔応答の関数として決定するのに必要である。当業者により認められるように、逆モデルは直接計算されてもよい。また、本明細書において用いられる用語「逆」モデルは、非正方形N×MシステムのためのM×N「疑似逆」モデルを含む。
【0017】
従来技術におけるこの点で、本方法は、所望の遠隔トランスジューサ応答22(以下「所望応答」)を理想的に複製する実際の応答21を生成する駆動17を獲得するための、図3B及び図4Aに図示される反復過程に入る。逆物理的システム・モデルH(f)-1は72で表され、一方物理的システム(振動システム、試験車両、遠隔トランスジューサ及び計装)は10で表される。図3Bを参照すると、ステップ78において、逆モデル72は、初期駆動17 x1(t)を決定するため、目標応答訂正値77に作用される。目標応答訂正値77は、それが大部分の場合緩和利得係数95により低減されるにも拘わらず初期駆動のための所望応答22であり得る。次いで、逆モデル72からの計算された駆動17 x1(t)は、ステップ80において物理的システム10に適用される。次いで、適用された駆動17 x1(t)に対する物理的システム10の実際の遠隔トランスジューサ応答21(以下「実際応答」)y1(t)がステップ86において得られる。完全な物理的システム10が線形(単位1の緩和利得95を与える)場合、初期駆動17 x1(t)を、要求される駆動として用いることができる。しかしながら、物理的システムは通常非線形であるので、正しい駆動17は、反復的プロセスにより達成されねばならない。(当業者により認められるように、類似の物理的システムに対する前の試験に用いられる駆動17は、初期駆動として用いられ得る。)
反復的プロセスは、ステップ88において、初期駆動x1(t)からもたらされる第1の実際応答y1(t)を記録することと、応答誤差89 Δy1を差として計算することとを含む。(第1の実際応答信号y1(t)は、図4Aにおいて87で与えられる。応答誤差89 Δy1は、ステップ90において事前選択されたスレッショルドと比較され、応答誤差89がスレッショルドを超えている場合反復が実行される。特に、応答誤差89 Δy1は、緩和利得係数95により低減されて、新しい目標応答訂正値77を与える。この実施形態において、逆伝達関数H(f)-1は、新しい目標応答訂正値77に作用され、駆動訂正値Δx2
94を生成し(ステップ91)、その駆動訂正値Δx2 94は、ステップ92において第1の駆動 x1(t) 17Aに加えられて、第2の駆動x2(t)
17を与える。反復プロセス(ステップ80−92)は、応答誤差89が応答の全チャネル上で事前選択されたスレッショルドより下に低下されるまで、反復される。次いで、応答21を生成した最後の駆動17であって所望応答22の事前選択されたスレッショルド内にあった当該最後の駆動17は、標本試験を実行するため用いられることができる。
【0018】
記載のように、応答誤差89 Δyは、緩和利得係数(又は反復利得)95により一般に低減されて、目標応答訂正値77を形成する。反復利得95は、反復プロセスを安定化させ、そして収束速度と反復オーバーシュートとを天秤に掛ける。更に、反復利得95は、試験車両が反復プロセスの間物理的システム10に存在する非線形性のために過負荷状態にされる可能性を最小にする。当業者により認められるように、反復利得は、駆動訂正値94 Δx及び/又は応答誤差89に適用されることができる。記憶装置38を用いて反復プロセスの間の所望応答22、実際応答21及び前の駆動17Aを記憶することができることが、図4Aにおいて留意されるべきである。勿論、メモリ34もまた用いることができる。また、破線93は、逆モデル72が物理的システム10の逆の推定であることを示す。前述されたように、図4Aのブロック図は、ミネソタ州イーデン・プレーリー(Eden Prairie)のMTS System CorporationからのRPCIII(登録商標)に含まれているような商業的に入手可能なソフトウエア・モジュールを用いて当業者により実行されることができる。
【0019】
この時点で、駆動を計算する従来技術の修正された方法がまた説明されることができる。修正された従来技術方法は、図3Aに図示された同一化過程のステップ、及び図3Bに図示された反復過程のステップの多くを含む。便宜上、修正された方法の反復ステップが図3Cに図示され、図4Bに図示されているようなブロック図である。図4Bに図示されているように、目標応答訂正値77の計算は全く同じである。しかしながら、実際応答21と所望応答22との間の応答誤差89が選択されたスレッショルドより大きい場合、目標応答訂正値77は、ステップ97において、現在の反復に対して新しい目標応答79を得るため前の目標応答79Aに加えられる。逆モデル72が、新しい駆動17を得るため目標応答79に適用される。図4Bに図示されるように、反復利得95を前述の理由のため用いることができる。
【0020】
一般的に、本発明の一局面は、反復プロセスの各ステップの間動作する調整器100を含みながら、物理的システムの逆モデル72を改善するため、図4A及び図4Bに関して前述した応答時間履歴誤差反復ループを含む。図4Aに図示されるように、調整器100は、目標応答訂正値77を応答誤差89の単純な関数として直接受け取る逆モデル72を訂正し、そしてそこにおいて物理的システムの駆動17は、前の駆動17Aとの組合わせで駆動訂正値94を備える。逆に、図4Bに図示されるように、逆モデル72は、目標応答79を目標応答訂正値77と前の目標応答79Aとの組合わせとして受け取り、駆動17は、逆モデル72を適用することにより直接得られる。図4Bのケースにおいて、調整器100は、逆モデル72を図4Aにおけるのと概念的に同一のやり方で訂正する。しかしながら、以下に説明されるように、図4A及び図4Bの構成は、各々が固有の状況的利点を有する仮想同一性モデル化プロセスに対して異なる信号を利用可能状態にする。更に、以下に説明されるように、調整器100はまた、反復する要領で動作することができる。
【0021】
本発明の一局面が、図5のブロック図に図示されている。一般的に、本発明のこの局面は、前述のような従来技術と整合して所望応答22と理想的に整合する実際応答21を生成するよう物理的システム10を制御する方法を含む。その方法は、物理的システム10の逆モデル98(例えば、逆伝達関数H(f)-1)を発生することを含み、そこにおいて逆モデル98は、目標応答79に適用されて、物理的システム10から所望応答22を実際応答21として発生することを意図される駆動17を得る。図6に関して以下に記載されるように、目標応答訂正値77は、逆モデル98が完全な駆動17を実現するため目標応答79に適用されるとき、前の目標応答79Aと組み合わされることができる。代替として、図8において破線で図示されるように、逆モデル98は、駆動訂正値94を実現するため目標応答訂正値77に直接適用され、次いで駆動訂正値94は、引き続いて前の駆動17Aと組み合わされて、物理的システム10のための新しい駆動17を与える。
【0022】
図5に戻って参照すると、調整器100は、物理的システム10と組み合わさった逆モデル98の同一性(identity)の質をチェックする仮想同一性システム・モデラー(virtual identity system modeler)を備え得る。逆モデル98と物理的システム10との組合わせは、仮想同一性システム96と称される。仮想同一性システム・モデラー100により測定されるような同一性の質は、物理的システム10の動作特性に関して物理的システム10のモデルの正確さを評価する。この実施形態において、同一性の質は、物理的システム10の逆システム・モデル98との直列接続を介して測定される。逆システム・モデル98が物理的システム10と全く同一に整合するとき、同一性の質の計算は、理想的な逆システム・モデル推定を示す同一性の結果を生成する。
【0023】
このアプローチの利点は、仮想同一性システムの質を改善する物理的システムの逆モデルに対する潜在的訂正のモデルが逆モデル自身より単純な形式を取ることができることである。従って、モデル訂正を得るのは、完全な逆システム・モデルの新しい推定を得るより非常に容易である。このアプローチは、そのような訂正モデル推定(例えば、目標応答と実際応答との間のFRF)の直接的なアルゴリズムの定式化に導く。このモデル化技術の単純な形式は、より雑音が多くかつより相関があるデータのより小さいセグメントを用いるのを可能にし、それにより非パラメータの(スペクトル分析等)モデル化方法かパラメータの(ARX等)モデル化方法かのいずれかのための適応環境において利点を与える。
【0024】
スイッチ101A及び101Bが位置「G」にある図5の一状態の場合、仮想同一性システム・モデラー100は、目標応答79と実際応答21とを比較する。スイッチ101A及び101Bが位置「L」にある別の状態において、仮想同一性システム・モデラー100は、目標応答訂正値77と、連続的な反復の間駆動17の物理的システム10に対する適用から得られた実際応答訂正値103(応答yiと応答yi-1との差)とを比較する。いずれの状態においても、仮想同一性システム・モデラー100は、続いて、逆モデル98を同一性の質の関数として反復から反復まで適応させる。換言すると、仮想同一性システム・モデラー100は、モデル(例えばFRF)訂正値104を出力として与え、逆モデル98に存在する少なくとも幾らかの値を調整する。これらの双方の好適な状態において、訂正値104はチャネル毎のベースで導出され、即ちそれは仮想同一性システムにより容易にされる自然の単純化である。次いで、訂正値104が適用されたとき逆モデル98の全ての項が一般的に変わるにも拘わらず、交差結合効果は訂正値104の一部を形成しない。しかしながら、これらの好適な態様は、一部又は全ての交差結合項を訂正値104の中に含める選択(オプション)を排除しない。
【0025】
スイッチ101A及び101Bは、仮想同一性システム・モデラー100に対して与えられるデータのタイプの選択を表し、通常物理的電気的スイッチでないことを理解すべきである。むしろ、スイッチ101A及び101Bは、仮想同一性システム・モデラー100に対して、選択されたデータを取得して与えるため用いられるソフトウエア・ルーチン又はモジュールを表す。
【0026】
図5において、逆モデル98は、静的逆モデル要素98A及び調整可能な要素98Bを含む。静的逆モデル要素98Aは、前述した逆モデル72に似ている。例えば、静的逆モデル要素98Aは、ステップ58(図3A)において順モデルH(f)の逆を取ることにより計算された逆モデルH(f)-1であり得る。逆モデルの静的逆モデル要素98Aは、通常、交差結合効果を含むM×Nマトリックスを有する。ここで、Mは入力(駆動17)の数であり、Nは出力(実際応答21)の数である。
【0027】
調整可能な要素98Bは、逆モデル98を現在の動作条件に繰り返し適応させるため、逆モデル訂正値104を仮想同一性システム・モデラー100から受け取る。一実施形態において、調整可能な要素98Bは、対角線上に配置された各Nチャネルに対して訂正値及びゼロに等しい全ての他の値(対角線を外れたところ)を有するN×Nマトリックスから構成される。
【0028】
図6は、図4Bにおいて詳述された反復制御プロセス全体の文脈で図5において説明された機能性の実施形態である。図4Bに関して、図6において、逆モデル98は、図5の静的逆モデル要素98A及び調整可能な要素98Bを含むよう拡張される。
【0029】
図7は、図6の実施形態の動作方法を図示する。ステップ130において、逆モデル98は初期化される。このステップは、図3Aの方法に関して前述したように静的逆モデル要素98Aの初期化、及び調整可能な要素98Bの初期化を含み、その調整可能な要素98Bは第1の反復に対して通常同一性モデルである。換言すると、調整可能な要素98Bは、第1の反復中効果を持たない。
【0030】
ステップ132において、初期駆動17は、目標応答79を逆モデル98を用いて巻き込む(convolve)ことにより得られる。逆モデル98が静的逆モデル要素98A及び調整可能な要素98Bを含むことに鑑みて、目標応答79は、最初に調整可能な要素98Bを用いて巻き込まれ、次いで調整可能な要素98Bの出力が静的逆モデル要素98Aを用いて巻き込まれる。ある一定のケースにおいて、静的逆モデル要素98A及び調整可能な要素98Bはその後組み合わされることができ、単一の畳み込みを必要とする。ステップ134において、駆動17は物理的システム10に適用され、そこにおいて実際応答21は測定されそして記録される。
【0031】
物理的システム10の実際応答21が初期駆動17から得られた場合、仮想同一性システム・モデラー100は、目標応答79と実際応答21との間のスペクトル分析を実行する。図6に図示されている実施形態において、仮想同一性システム・モデラー100は、目標応答79及び実際応答21を受け取るスペクトル・アナライザ136を含む。チャネル毎ベースの実施形態において、スペクトル・アナライザ136は、目標応答79と実際応答21との間のFRFを計算する。これは、ステップ140において表される。換言すると、このステップは、逆モデル98及び物理的システム10(即ち、仮想同一性システム96)の同一性の質を計算する。値104(図6)は、逆モデル98に対する訂正値である。ステップ142において、同一性からのFRFの偏差が決定され、そして1つ以上の偏差が対応する選択されたスレッショルドを超えた場合調整可能な要素98Bの対角線上の値はステップ144において更新される。これが図6に表され、図6において、148で記憶された調整可能な要素98Bの前の値は、スペクトル・アナライザ136により与えられた新しい値と組み合わされ、調整可能な要素98Bを繰り返し訂正する。
【0032】
この点で、図3Cのステップ88、90、97及び99は、精緻にされた駆動17を得るため依然実行されることに注目すべきである。しかしながら、新しい駆動17がステップ99において計算される前に、逆モデルはステップ144において更新される。
【0033】
反復プロセス全体において、実際応答21と目標応答79との間のモデルにおける偏差が選択されたモデル・スレッショルドより大きいとき、ステップ134、140、142及び144のみが必要に応じて反復される。図3Cのステップ88、90、97及び99は、ステップ90の誤差スレッショルドが実現されるまで、各反復に対して独立に実行される。
【0034】
仮想同一性システム・モデラー100及び対応する逆モデル98がスペクトル分析方法の点から記述されたが、他の数学的モデル(単数及び複数)回帰技術が、パラメータ的か非パラメータ的かのいずれかで、選択された組合わせ(例えば、AIC、ARX、ARMA、状態空間(State Space))の際に所望されるように採用されることができることを当業者は理解すべきである。
【0035】
図8は代替実施形態を図示し、そこにおいて実際応答訂正値103は、目標応答訂正値77と比較され、調整可能な要素98Bの値を更新するための基礎として用いられる。図8において、加算器160を用いて、実際応答21と直前の実際応答87(即ち、実際応答訂正値103)との差を得る。反復プロセス中、スペクトル・アナライザ136は、調整可能な要素98Bを更新するため目標応答訂正値77と実際応答訂正値103との間のFRFを計算する。
【0036】
図8において、目標応答訂正値77は、前の目標応答79Aに加えられて、各反復に対する新しい目標応答79を形成する。当業者により認められるように、目標応答訂正値77のみが、逆モデル98を用いて巻き込まれて、対応する駆動訂正値94を形成することができ、その駆動訂正値94は、前の駆動17Aと組み合わされて、新しい駆動17を形成する。新しい駆動17のこのようにした形成は、スペクトル・アナライザ136による上記比較を変えることはない。
【0037】
本発明の他の一般的局面は、図9及び図10に図示されている。目標応答79(又は目標応答訂正値77)が順方向反復制御ループに存在しないケースに対して、それは、図9において実証されたように数学的等価を用いて明示的に計算されることができる。図9において、駆動17は、物理的システム10及び物理的システム10の順モデル172に適用され、そこにおいて仮想同一性システムは、点線175により示されている。仮想同一性システム175が、図5の仮想同一性システムと数学的に等価であることを示すことができる。
【0038】
物理的システム10からの実際応答21、及び順モデル172からのモデル化された目標応答176が、仮想同一性システム・モデラー100に対して与えられる。一実施形態において、仮想同一性システム・モデラー100は、実際応答21とモデル化された目標応答176との間でスペクトル分析を実行して、仮想同一性システム175の同一性の質をチェックする。それは、信号176が、スイッチ177Aの位置に応じて、図5の信号79か信号77のいずれかに等しいからである。従って、仮想同一性システム・モデラー100は、続いてモデル172を同一性の質の関数として調整する。
【0039】
図示の実施形態において、順モデル172は、静的要素172A及び調整可能な要素172Bを含む。静的要素172Aは、図3のステップ58により得ることができる。静的要素172Aは、通常、交差結合項を含むN×Mモデルから構成される。
【0040】
仮想同一性システム・モデラー100は、訂正値104を調整可能な要素172Bに対して与える。一実施形態において、調整可能な要素172Bは、N×N対角モデルから構成される。
【0041】
図5と類似の要領で、スイッチ177A及び177Bは、仮想同一性システム・モデラー100に対する入力がモデル化された目標応答及び実際応答か、又はモデル化された目標訂正値及び実際応答訂正値かのいずれかであるようにさせる。当業者は、スイッチ177A及びその関連の加算器及び記憶装置がまた説明されたように駆動17について動作するよりむしろ静的モデル172Aと調整可能な要素172Bとの間のデータ経路に適用されることができることを認めるであろう。同様に、スイッチ177A及び関連の加算器及び記憶装置はまた、ある状況においてモデル化された目標応答176に適用されることができる。
【0042】
代替として、入力又は駆動の数Mより大きい出力又は応答の数Nという状態でNとMが等しくない場合のように潜在的に好適な特性を有することができる類似の実行が、図10に図示されている。図10において、仮想同一性システムは、点線185により示され、物理的システム10及び逆モデル98を備える。しかしながら、同一性の質は、物理的システム10に印加される駆動17を、逆モデル98から得られる対応するモデル化された駆動信号182と比較することにより確かめられる。このケースにおいては、仮想同一性システム185は、他の実施形態におけるように応答信号の使用とは対照的に駆動信号に関して形成される。いつものように、実際の応答21は、駆動17が物理的システム10に印加されるとき物理的システム10から得られる。次いで、実際の応答21は、逆モデル98への入力として与えられる。一実施形態において、仮想同一性システム・モデラー100は、連続的反復のため駆動17とモデル化された駆動182との間でスペクトル分析を実行する。仮想同一性システム・モデラー100は、続いて逆モデル98を、そして特に調整可能な要素98Bを調整する。
【0043】
図5及び図9と類似の要領で、スイッチ183A及び183Bは、仮想同一性システム・モデラー100への入力が駆動17及びモデル化された駆動182(「G」位置におけるスイッチ183A及び183Bを用いて図示されているようにである)か、又は駆動訂正値94及びモデル化された駆動訂正値(「L」位置におけるスイッチ183A及び183Bを用いて図示されているようにである)かのいずれかであることを可能にする。当業者は、図示のように、スイッチ183B及び関連の加算器及び記憶装置がまた実際の応答21に関して動作するよりむしろ静的逆モデル要素98Aと調整可能な要素98Bとの間のデータ経路に適用されることができることを認めることができるであろう。同様に、スイッチ183B及び関連の加算器及び記憶装置は、ある環境においてはモデル化された駆動信号182に対して適用されることができる。
【0044】
図11は、図8の反復適応プロセスの文脈において図9において説明された機能性の実施形態であり、そこにおいて同じ参照番号は、同一の構成要素を識別するため用いられている。図11は更に、緩和利得179及び周波数重み付け関数181を含む。緩和利得179は、緩和利得95に似ているが、しかし応答誤差89よりむしろ駆動訂正値94に対して利得を与える。周波数重み付け関数181は手動で定義されることができ、並びにコヒーレンス・タイプの量(181において「C」により示される)、又はモデルの質の他の尺度、即ち限定されるものではないが一般的に周波数の関数から計算されることができる。181における駆動訂正値94の周波数重み付けに対するコヒーレンス・タイプの量の例は、[H2]-1*[H1]として公式化されることができる。ここで、H1は入力上での雑音を仮定した物理的システム10に対する順システム・モデルであり、H2は出力上での雑音を仮定した順システム・モデルである。同様に、応答上の周波数重み付け(例えば、[H1]*[H2]-1)が、所望ならば、189で与えられることができる。
【0045】
逆モデル98と物理的システム10との間の、緩和利得179又は周波数重み付け181又は他のそのような関数のうちのいずれかの存在は、図5に図示された順方向反復ループの仮想同一性システム96を解体する。従って、図11の実施形態において、仮想同一性システム175は、図9に従って明示的に構成される。
【0046】
図11を参照すると、順モデル172は、物理的システム10の静的順モデル172A及び調整可能な要素172Bを含む。図3Aのステップ58に従って、静的順モデル172Aは決定され、物理的システム10とのその関連性は、図11において破線190により表される。次いで、決定された静的順モデル172Aを用いて、物理的システム10の静的逆モデル要素98Aが計算され、その関連性は破線93により表される。次いで、調整可能な順要素172B及び調整可能な逆要素98Bの双方は、対角線要素が1に設定され、対角線から外れた要素がゼロに設定されるよう初期化される。
【0047】
初期駆動17は、前述した方法と矛盾なく得られる。次いで、初期駆動17は、物理的システム10に適用され、そこにおいて実際の応答21は測定されそして記録される。図示のように、初期駆動17はまた、順モデル172に適用され、モデル化された応答176(「G」位置におけるスイッチ177A及び177Bを用いた図6及び図8の目標応答79に対する等価応答)を発生する。
【0048】
仮想同一性システム・モデラー100は、実際の応答21をモデル化された応答176と比較する。図示の実施形態において、仮想同一性システム・モデラー100は、スペクトル・アナライザ136を備え、実際の応答21とモデル化された応答176との間でチャネル毎のベースでスペクトル分析を実行する。先の実施形態と矛盾なく、同一性からのFRFの変位が、次いで、スペクトル・アナライザ136により決定され、そして1つ以上の変位が対応する選択されたスレッショルドを越えた場合、調整可能な要素172Bの対角線上の値は、更新される。調整可能な要素172Bの逆(inverse)を単純に取ることにより、調整可能な要素98Bに対する値は、次の反復に対して容易に計算されることができ、その次の反復は、応答誤差89の計算でもって始まる。
【0049】
緩和利得187は、モデル更新反復ループの安定化を与えることができる。緩和利得187は、訂正値104に対して「パワー」KMとして適用されることができ、それによりモデル訂正172Bに適用される軽減された訂正値178を生成する。また、緩和利得187の利得は、本出願において説明されたいずれの実施形態にも組み込まれることができることに注目されたい。
【0050】
図12は、図10に関して前述した仮想同一性システム・モデラー100を用いて、駆動信号を発生する例示的実施形態であり、そこにおいて同じ参照番号は、先の実施形態の同一の構成要素を識別するため用いられた。図10におけるように、仮想同一性システム185は、駆動信号を用いることで特徴付けられる。仮想同一性システム・モデラー100は、物理的システム10に適用された駆動17を、逆モデル198から得られた対応するモデル化された駆動182と比較することにより同一性の質をチェックする。逆モデル198は、逆モデル98と同一であり、静的逆モデル要素98A及び調整可能な要素98Bを備える。図12の実施形態は、図6及び図8の実施形態と類似の要領で動作し、そこにおいて仮想同一性システム・モデラー100(スペクトル・アナライザ136を含む)は、更新値(本明細書においては緩和された訂正値178)をその調整可能な要素98Bに与えることにより調整する。しかしながら、この実施形態において、逆モデル98の調整可能な要素98Bはまた、逆モデル198の調整可能な要素98Bに対してなされた変化に従って更新される。
【0051】
図13は、スペクトル密度制御の実施形態における仮想同一性システム・モデラー100の使用を図示する。時間に関して遠隔トランスジューサ20の応答を再生することを求める時間履歴制御とは似てなく、スペクトル密度制御は、チャネル間の相互電力(cross−power)を、選択された帯域幅にわたる周波数の関数として発生することを含む応答における信号電力を再生することを求める。電力スペクトル密度(PSD)は、対角線上の各チャネルの自動電力(auto power)とそれぞれの対角線外れ上のチャネル間の相互電力とを有する正方行列を備える。
【0052】
図13において、同じ参照番号は、前述の実施形態において説明したように類似の構成要素を識別するため用いられている。一般的に、加算器200は、所望のPSD応答と物理的システム10からの実際の前のPSD応答203Aとの間のPSD誤差202を計算する。計算されたPSD誤差202は、前述の時間履歴制御の実施形態において計算された時間履歴応答誤差89に機能的に類似している。一般に、緩和利得204は、緩和利得係数95と実質的に同じ理由のため与えられ、PSD応答訂正値206を発生する。図示の実施形態において、PSD応答訂正値206は、前のPSD目標応答207Aと組み合わされて、新しいPSD目標応答207を発生する。PSD/時間変換器208は、PSD目標応答を逆モデル98に与えられる時間等価の目標応答210(目標応答79に類似している)に変換する。次いで、逆モデル98を用いて、物理的システム10に適用される駆動212(駆動17に類似している)を発生する。物理的システム10からの実際の応答214(実際の応答21に類似している)は、仮想同一性システム・モデラー100(本明細書においてはスペクトル・アナライザ136)及びPSD/時間変換器216に供給される。仮想同一性システム・モデラー100は、図6の実施形態と類似の要領で同一性の質をチェックし、そしてそれに応じて逆モデル98、特に調整可能な要素98Bを更新する。時間/PSD変換器216は、実際のPSD応答203を発生する。当業者により認められるように、図8から図12の先の実施形態のいずれの教示も、サブ構造219を先の実施形態の対応する構造と置換することにより適用されることができる。
【0053】
スペクトル密度制御の別の実施形態が図14に図示され、そこにおいて、駆動スペクトルが、(当業者によく知られているように)ブロック189において示されるようにフォワード・ループにおける応答スペクトルから直接計算され、そこにおいて逆システム・モデルが172から得られる。図11の仮想同一性システム・モデル化概念が、スペクトル密度反復フォワード・ループに加えられて、説明した理由のためシステム・モデル172に反復的に適応させる。
【0054】
図15は、波形制御の実施形態の使用を図示する。時間履歴制御と同様に、波形制御は、時間に関して遠隔トランスジューサ20の応答を再生することを求める。しかしながら、波形制御は、応答誤差89を与えるため実際の応答を加算器の中へフィードバックすることなくそのように行う。かえって、波形制御における各反復は、目標応答79を作るため減衰係数220を介して適用される場合所望の応答22を直接用いる。
【0055】
波形制御における従来技術は、収束を達成しようとしてその反復のため駆動17及び実際の応答21を用いることにより各反復において逆モデルを再計算した。しかしながら、本発明のこの局面において、仮想同一性システム96は、図15に図示されるように、逆モデル98(静的逆モデル要素98A及び調整可能な要素98B)及び物理的システム10を含む。仮想同一性システム・モデラー100は、目標応答79及び実際の応答21を受け取って、同一性の質を測定する。前の実施形態におけるように、調整可能な要素98Bは、同一性の質の関数として更新される。仮想同一性システム96の組み込みは、単一のチャネル・システム動作を改善し、そして先に実現可能でなかったマルチチャネル・システムへの拡張を容易にする。
【0056】
図16は、統計的に非静止的道路表面からの遠隔トランスジューサ応答データの例示的時間履歴記録の絵画的表示230であり、そこにおいて第1のセクション232は一連のポットホール(pothole)を示し、第2のセクション234は丸石を示す。本発明の別の局面は、各セクション232及び234に対する仮想同一性システムを構成すること、及びセクション232及び234の各々に対して調整可能な要素98Bを共通の静的要素98Aとは独立に得ることを含む。各調整可能な要素98Bは、共通の静的要素98Aと組み合わせて適用され、セクション232及び234の各々に対して複数の適切な駆動を得て、そしてそれら複数の適切な駆動は更に、全体の記録230に対して駆動17を得るため組み合わされる。仮想同一性システム・モデラーが記録230の連続的セクションに対して適用することを要求されないことに注目されたい。
【0057】
図17を参照すると、本発明の別の局面は、以下に説明されるように、モデルがセクション(例えば、セクション234)内で又は全体の記録230にわたり変化するのを可能にする。この時間を変える手法を用いて、スペクトル・アナライザ136は、目標及び実際の応答の各々からの連続的なそして好ましくは一部重複する分析窓240に関して動作する。目標及び実際の応答の各々は、選択された時間ステップ242により進められ、それにより(先の実施形態において含まれている1つの正味のスペクトル平均とは対照的に)一連のスペクトル値244を生成する。このケースにおいて、目標及び実際のスペクトル平均の各々は、それぞれ個々のスペクトル値の両側の移動平均として形成され、従って対応する時間変化スペクトル平均246を結果として生じる。ステップ242は、通常、分析窓又はフレーム240の10%から90%との間である。そのステップは、分析窓の10−50%であるのが好ましい。
【0058】
時間変化スペクトル平均246の個々の要素が処理されて、時間変化モデル104(例えば、FRF)、及び先の実施形態において説明した技術により172Bに類似した時間変化モデル訂正要素を形成する。一連の訂正要素の各訂正要素部172A及び対応する逆訂正要素部98Bが時間履歴に関して進み、それにより処理は時間ステップ242に等しい時間ステップで生じる。駆動17を発生することは、一連の訂正要素の各訂正要素172B及び対応する逆訂正要素98Bを目標応答230Bの入力記録のそれぞれの時間ステップ242に適用すること、及びその結果を組み合わせて、連続的な駆動17を生成することを含む。
【0059】
この実施形態を要約すると、記録230の連続的なそして好ましくは一部重複する分析窓240は、段階的に形成される。スペクトル・アナライザ136の文脈において、個々のスペクトル値244は、各分析窓240に対して得られる。個々のスペクトル値244が組み合わされて、両側の移動スペクトル平均及び対応のFRFを形成し、それらを段階的に用いて、駆動17又は駆動訂正値94を発生する。他の統計的関数が平均化の代わりに、又はそれに加えて実行されることができることに注目されたい。
【0060】
スペクトル移動平均環境は、モデル更新を処理しそしてモデル訂正を適用するため固有の段階的特性を有する。代替実施形態において、訂正モデルは、AIC、ARXのような関連したモデル回帰方法タイプを用いてパラメータ形式で(即ち、窓ベースでなく)実行されることができ、モデルが記録230のサンプル点からサンプル点まで変わるのを可能にする。静的順モデルは、物理的に実現可能であるが、一方順モデル訂正は、一般的に物理的に実現可能でない。更に、適応プロセスは反復的に生じつつあるので、各サンプル点で、過去と未来の両方のデータが、一般的に、モデル回帰プロセスを最適化するため利用可能である。
【0061】
図18は、逆モデル98に対する時間履歴入力に関する利得をサンプル点毎のベースで調整することを容易にする本発明の一実施形態である。図示のように、サンプル点利得調整ブロック250は、入力として、スイッチ177A及び177Bの位置に基づく目標応答176及び実際の応答177B又はその訂正値を受け取る。これらは、仮想同一性システム・モデラー100により受け取られる同じ基本的入力である。
【0062】
サンプル点利得調整ブロック250の基本的動作は、257において目標応答を実際の応答(又はその訂正値)と関連させることであり、それにより比又は利得は、(K)として示され、サンプル点毎のベースで実現され、こうして訂正利得をモデル化する。次いで、サンプル点当たりの出力利得は、254に与えられ、逆システム・モデル98への時間履歴入力を調整する。
【0063】
図18において示されるように、一実施形態において、入力信号に対してフィルタリング及びスレッショルド動作256及び258を適用することは望ましい場合があり、それがサンプル点利得調整ブロック250の一部を形成するように図示されている。同様に、フィルタ260を設けてサンプル点利得調整ブロック250の出力をフィルタリングすることが望ましい場合がある。当業者により認められるように、サンプル点利得調整ブロック250及びブロック254は、前述のいずれの時間履歴制御の実施形態に組み込まれることができる。
【0064】
本発明が好適な実施形態を参照して説明されたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から離れることなく変更が形式及び細部においてなされることができることを認めるであろう。例えば、図11(全ての実施形態において同様である)において、ある一定のモデル・タイプに対して、逆モデル訂正98Bを直接(即ち、非反復的に)に更新することは有利である場合がある。このシナリオにおいて、仮想同一性システム・モデラー100は、入力モデル応答として全ての反復のため静的要素172Aから受け取るであろう。更に、仮想同一性システム・モデラー100からの緩和された訂正値178は、逆モデル訂正98Bとして直接適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力に応答して、選択された出力を生成するように、物理的システム(10)を制御する方法であって、
(a)前記物理的システム(10)に印加された駆動信号、及び、当該駆動信号への前記物理的システム(10)の応答から、物理的システム(10)の周波数応答関数を計算し、
(b)前記物理的システム(10)の周波数応答関数から、周波数領域において逆モデル(98)を計算し、
(c)前記物理的システム(10)の前記逆モデル(98)に目標応答(79)を適用して、駆動信号(17)を獲得し、
(d)駆動信号(17)を前記物理的システム(10)に提供して、当該駆動信号(17)に基づいた、前記物理的システム(10)からの実際の応答(21)を獲得し、
(e)スペクトラム・アナライザ(136)を用いて、スペクトラム分析を実行して、前記目標応答(79)と前記実際の応答(21)を比較することによって、逆モデル(98)の正確性をチェックして、前記逆モデル(98)に対する訂正値(correction values)を獲得し、
(f)前記訂正値を用いて、前記逆モデル(98)を調整し、
及び、
(g)ステップ(c)〜(f)を反復して、前記逆モデル(98)を更に調整する、
ステップを含む方法。
【請求項2】
入力に応答して、選択された出力を生成するように、物理的システム(10)を制御する方法であって、
(a)前記物理的システム(10)の順モデル(172)を計算するステップであって、
当該順モデル(172)が、前記物理的システム(10)に印加された駆動信号、及び、当該駆動信号への前記物理的システム(10)の応答から計算された、前記物理的システム(10)の周波数応答関数を含むものと、
(b)前記順モデル(172)から、周波数領域における逆モデル(98)を計算するステップと、
(c)目標応答(79)を、前記物理的システム(10)の前記逆モデル(98)に適用して、駆動信号(17)を獲得するステップと、
(d)前記駆動信号(17)を、前記物理的システム(10)に適用して、前記駆動信号(17)に基づく、前記物理的システム(10)からの実際の応答(21)を獲得するステップと、
(e)前記駆動信号(17)を、前記順モデル(172)に適用して、モデル化された応答(176)を生成するステップと、
(f)スペクトラム・アナライザ(136)を用いて、スペクトラム分析を実行して、前記実際の応答(21)と前記モデル化された応答(176)を比較することによって、順モデル(172)の正確性をチェックして、前記順モデル(172)に対する訂正値(correction values)を獲得するステップと、
(g)前記訂正値を用いて、前記順モデル(172)を調整するステップと、
(h)前記順モデル(172)への調整に基づいて、前記逆モデル(98)を調整するステップと、
(i)ステップ(c)〜(h)を反復して、前記順モデル(172)及び逆モデル(98)を更に調整する、
ステップを含む方法。
【請求項3】
入力に応答して、選択された出力を生成するように、物理的システム(10)を制御する方法であって、
(a)前記物理的システム(10)に印加された駆動信号、及び、当該駆動信号への前記物理的システム(10)の応答から、前記物理的システム(10)の周波数応答関数を計算するステップと、
(b)前記物理的システム(10)の前記周波数応答関数から、周波数領域における逆モデル(98)を計算するステップと、
(c)目標応答(79)を、前記物理的システム(10)の前記逆モデル(98)に適用して、駆動信号を獲得するステップと、
(d)前記駆動信号(17)を、前記物理的システム(10)に適用して、前記駆動信号(17)に基づく、前記物理的システム(10)からの実際の応答(21)を獲得するステップと、
(e)前記実際の応答(21)を、前記物理的システム(10)の前記逆モデル(98)に提供して、モデル化された駆動信号(182)を獲得するステップと、
(f)スペクトラム・アナライザ(136)を用いて、スペクトラム分析を実行して、前記駆動信号(17)と前記モデル化された駆動信号(182)を比較することによって、逆モデル(98)の正確性をチェックして、前記逆モデル(98)に対する訂正値(correction values)を獲得するステップと、
(g)前記訂正値を用いて、前記逆モデル(98)を調整するステップと、
(h)ステップ(c)〜(g)を反復して、前記逆モデル(98)を更に調整するステップ、を含む方法。
【請求項4】
前記駆動信号(17)が、複数の駆動信号要素を含み、前記実際の応答(21)が、複数の応答要素を含む、請求項1、2、及び、3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記物理的モデル(10)の前記逆モデル(98)、及び/又は、前記物理的モデル(10)の前記順モデル(172)が、調整可能な要素(98B、172B)、及び、静的な要素(98A、172A)を含む、
請求項1、2、及び、3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
同一性の質を示す値の関数として、前記調整可能な要素(98B、172B)を調整するステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反復するステップが、対応する連続的な駆動信号(212)の適用を通じた反復の後に、所望の実際の応答パワー・スペクトラル密度(203)が得られるまで反復され、
前記実際の応答信号パワー・スペクトラル密度(203)の各々が、対応する駆動信号(212)の関数として獲得される、
請求項1、2、及び、3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記駆動信号(17、212)が、異なった(differing)時間領域に亘って適用されて、所望の応答を得る、複数の調整可能な要素(98B、172B)の関数として獲得される、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
同じ静的要素(98A、172A)が、前記複数の調整可能な要素(98B、172B)の各々と共に用いられる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記駆動信号(17)が、シーケンシャルな、オーバーラップする時間領域(240)に亘って適用される、オーバーラップする調整可能な要素(98B、172B)のシーケンスの関数として獲得されて、所望の応答(21、214)を得る、
請求項5に記載の方法。
【請求項11】
1つの前記静的要素(98A、172A)が用いられて、駆動信号(17、212)を生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反復するステップが、所望の実際の応答(21、214)が得られるまで反復され、
各々の、新らしい駆動信号(17、212)が、同一性の質のチェックの連続的な反復において用いられる、対応する実際の応答(21、214)を提供するものである、
請求項1、2、3、4、5、6、8、9、10、又は、11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記スペクトラム・アナライザ(136)を用いるステップが、
連続的な実際の応答(responses)(21、214)の間の差と、連続的な目標応答(77)の間の差を比較するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記スペクトラム・アナライザ(136)を用いるステップが、
連続的な実際の応答(responses) (21、214)の間の差と、連続的なモデル化された応答(176)の間の差を比較する
ステップを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記スペクトラム・アナライザ(136)を用いるステップが、
連続的な実際の応答(responses) (21、214)の間の差と、連続的なモデル化された応答(176)の間の差を比較する
ステップを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項16】
請求項2に記載の方法であって、更に、
前記逆モデル(98)への時間履歴入力(time history input)上でのゲインを、サンプル点毎の、前記モデル化された応答(176)及び前記実際の応答(21)に基づいて、サンプル点毎に調整する、
ステップを含む方法。
【請求項17】
コンピュータにより読出し可能な媒体であって、当該媒体に記録されたプログラムを有し、
当該プログラムが、コンピュータに、請求項1ないし16のいずれかに記載された、全てのステップを実行させるためのものである、コンピュータにより読出し可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−134751(P2009−134751A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30931(P2009−30931)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【分割の表示】特願2000−528900(P2000−528900)の分割
【原出願日】平成11年1月21日(1999.1.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(500342592)エムティエス・システムズ・コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】