説明

物質の検査のための方法及び装置

物体の放射線相互作用データ、及び特に物体の画像を取得する方法及び装置であって、例えば、X線またはガンマ線源のような放射線源、及びX線またはガンマ線検出システムのような放射線検出システムであって、それらの間にスキャニング領域を定義するようにお互いに離間して配置され、放射線検出システムは、入射放射線に関する分光学的に分解可能な情報を検出及び採取でき、前記検出システムに入射する放射線に関する1つ以上の強度情報のデータセット、及び少なくとも1つ、好ましくは複数のスキャニング位置における前記スキャニング領域の物体の入射放射線との相互作用を採取し、好ましくは、前記検出システムにおいて受信された、前記物体との相互作用の後の放射線、及び例えば前記物体を透過した放射線から前記スキャニング領域の物体の画像を生成し、それぞれの前記強度データセットを、前記放射線源の前記スペクトルの範囲内の少なくとも3つの周波数帯域に亘って、それぞれの周波数帯に対する強度データアイテムを生成するために分解し、既定の強度データセットにおける、少なくとも2対の前記周波数帯域の前記強度データアイテムの間の数値的関係を、放射線相互作用に関連する特有の物理的物質特性と関数関係にある1つの数値的指標を得るために算出し、その数値的指標を、強度データセットを生成する物質に近似する成分の指標を得るために、潜在的な成分の物質の特有の物理的物質特性を示すデータのライブラリと比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の検査及び特性評価のための方法及び装置に関する。本発明は、特に、内部の内容及び/または組成に関する情報を取得することが好ましい物体をスキャンするための、X線またはガンマ線のような高エネルギー放射線を活用した装置及び方法に関する。本発明は、更に物質の画像生成により、またはその画像生成と連動して作動する方法及び装置に関するが、そのような画像化に限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
X線またはガンマ線のような高エネルギー放射線を用いた物体のスキャニングの原理は、例えばセキュリティ業界などで広く採用されている。本発明は、後述の通り、ある状況を例として説明しているが、他の分野にも採用され得る。例えば、医療用画像、品質管理目的の画像、または構造の完全性を確認する目的、又は、同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0003】
セキュリティ分野でのスキャニングは、とりわけ航空の荷物における望ましくない物質または物体、特に爆発物または武器の識別を目的に行われる。空港のセキュリティは、特に、何れの飛行機にも爆発物質が搭載されないことを保証しなければならない。この目的を達成するために種々の手法が採用されているが、最も重要なことの一つは、爆発物の自動検出機能を有するX線機器を用いた、預かり荷物の検査である。
【0004】
禁制物質の自動検出可能な装置の形成に対し、多くの手法や技術が提案されてきた。その手法、技術としては、例えば、X線回折、X線散乱、メスバウアー分光法、及びNQR(核四重極共鳴)などが含まれる。
【0005】
いずれにしても、TSA(合衆国連邦交通安全保障局)により現在容認されている技術は、物質の識別に対してコンピュータ断層診断(CT)を利用するもののみである。
【0006】
これらの既知の装置や方法は、所望の役割を果たすが、特に誤検出率に関して改善されるべき多くの点がある。例えば、その率は、検査された物品のうち15%から30%の間である。あらゆる疑がわしいと見なされた物品は、更なる検査を続けて行う必要があり、このような高い誤警報率はこれらの機器の生産性を大きく制限している。
【0007】
先行技術の機器は、荷物を異なる角度でスキャンし、X線透過画像を観察することにより、その荷物の中の物質によって生成されるビーム強度を分析する。十分なスループットを維持するために、スキャニング工程は、通常、ボリュームレンダリングされた画像が望ましい医療分野への応用に比較して、より大幅に低減される。その方法は、疑わしい物質に関する経験的なデータベースの構築、及び低減されたCTスキャンによって荷物の中の物質から得られたスライスの数値解析によって得られた情報の強度の、データベースとの比較に依存し、これによって、危険物質を潜在的に識別することを可能にしている。しかしながら、そのようなデータが、物質をそのものとしてどれだけ特性を示すかには限界がある。
【0008】
物質を通過したX線の透過は、以下のように、指数関数的な減衰則によって与えられる。
【数1】

ここで、μ/pは、質量減衰係数であり、物質の加重元素組成の特性である物質定数である。Iは、最終強度、Ioは、初期強度、pは、物質密度、tは、物質の厚み
【0009】
CTの手法を取り入れたアプローチは、荷物を通過するX線が辿る経路を変化させるものである。このアプローチは、その物質の厚みである式中のt項を、効果的に変化させる。そして、X線透過の変化を観察することにより、質量減衰係数及び物質密度に関する推論が可能である。これらの2つのパラメータは、種々の物質に特有のものであるので、物質の識別が可能となる。
【0010】
問題の1つは、システム経路中に1種類を超える物質が頻繁に存在するため、物質の組み合わせの結果を判断する必要があることである。これは、大規模な情報データベース、及び精緻なアルゴリズムを要求する。
【0011】
加えて、ビームの方向が変化すると、X線経路にあるそれぞれの物質の相対量もまた変化する。これは、より不確実性を増加させる。
【0012】
そして、密度の項、及び質量係数の項が複雑になり、更なる困難性を招く。
【0013】
CT及び同様の方法により高い誤警報率を招くのは、多くの理由があると考えられる。
【0014】
米国特許5367552号は、爆発物を検出するためにCTタイプのスキャニングを利用したシステムの例を示す。この文献は、爆発物検出の分野の技術において使用された通常のスキャンにおける低減を開示している。
【0015】
幾つかの出典が、物質識別の補助として、質量減衰項を数値的に導く上記関係式を使用することを示唆している。
【0016】
米国特許5319547号は、2つの単色X線源を利用して、それらの透過値の相違から物質を識別するために、相対的比率を観察することを記載している。
【0017】
米国特許5768334号は、単一のX線源を使用しているが、ビームの中を通る異なる物質のフィルタホイールを回転させることにより、出力エネルギーを変更している。また、その文献は、検査の対象のサンプルが、フィルタホイールの何れかの成分物質を含有しているかを判断するため比較技術を使用することを示している。この技術は、フィルタホイールに配置することができる物質の数により制限を受けるとともに、信号がフィルタホイールの各々の部分を横断して取得される必要があるため、検査が遅い。
【0018】
米国特許6018562号は、異なる出力で作動する、適切な複数の検出器を伴った複数のX線管を用いている。それぞれの管におけるビームのエネルギーの幅は、質量減衰係数の決定における正確さが制限されていることを意味し、これは、また、類似の物質を区別する能力の妥協をもたらす。
【0019】
WO2005/009206号は、X線源に投入する電力を変化させることにより、異なるエネルギーをもつX線光子を取得する課題に取り組んでいる。これは、多くの異なる出力レベルをもつX線を生成できる、即ち、異なるエネルギーのスペクトルを生成できるという利点を有する。しかしながら、エネルギー帯域の幅に関する問題は、残っている。また、それは、定義された出力源の帯域の全域にわたるスペクトルは、サンプルのそれぞれのポイントで採取される必要があるため、時間のかかるアプローチである。
【0020】
これらすべての手法は、共通して、検出器上流でエネルギーの選択を行っており、例えば、放射線源においては、複数の放射線源、及び/または付加されたフィルタ、異なるエネルギーに対して同調される複数の検出器等を設けることにより行っている。
【0021】
X線吸収は、3次元空間内でお互いに関連し合って内容またはその構成要素のいくつかの形式の表示画像を生成するために物体を検査するための基礎としてしばらく使用されてきた。物体の厚みがより大きく、またはその密度がより大きいほど、X線ビームをより大きく減衰させる。適切な検出器及び適切な放射線源の使用により、検査されている物品のX線写真が、物体又は物体のセットの吸収に基づいて画像という形で生成可能となる。航空会社のセキュリティへの適用において、その原理は、特に手荷物のスキャナに関して用いられている。X線による画像化は、原則的に、預け荷物のための補足的なシステム(検出適用の低減CTスキャンであって、画像化能力に関しては制限がある)として使用されることもあるが、あまり一般的ではない。
【0022】
この装置は、物質の内容に関して限られた情報しか提供しない傾向があるという点で、制限され得る。最も簡易なものであれば、計測できるものは透過率のみとなる。その検出器は、強度に関する情報を採取するにすぎない。最も実用的なシステムにおいては、これが間接的に計測されることすらある。典型的な直線配列のX線検出器は、透過X線に反応し低周波数の放射線、及び例えば可視領域やその近傍の光の放射を引き起こすシンチレータ物質と、この低い周波数の放射線に応答するケイ素またはガリウムヒ素をベースとした検出器のような半導体検出器との組み合わせを備える。
【0023】
しかしながら、あらゆる物質の吸収特性は、エネルギーによって変化すること、及びそれによって吸収特性が変化する量は、特に原子番号に依存する(幾分、少なくとも吸収効果の差異が支配している)ことが知られている。この結果、低エネルギー帯域と高エネルギー帯域とを、ある程度まで区別して識別できる2重帯域または2重エネルギー検出器の開発が導かれている。そのような2重エネルギーセンサは、通常、それぞれの検出器が低エネルギー及び高エネルギーX線を検出するように、低エネルギー及び高エネルギーシンチレータと連結した一対のサンドイッチ状の半導体フォトダイオードの放射状組織、またはそれと同様なものを備える。吸収差異の効果は、通常、より小さい原子番号、及びより大きい原子番号を持つ元素が多い物体を識別するために、2重エネルギー検出器に用いられる。
【0024】
セキュリティ、又は物質画像化システムの一環として用いられる場合、大変粗い概算で言えば、有機物質は前者のカテゴリーに、多くの無機物質は後者のカテゴリーに入る傾向がある。この実用的意義は、セキュリティ分野においてその利用を導くことであり、例えば、空港のX線スキャナにおいて、荷物の中における金属製物品の分離した画像を生成すること(即ち、品物が、隠された金属性の武器(銃、及びナイフ)であると明らかにすること)、またはプラスチック爆弾を特定すること、のいずれかである。
【0025】
そのようなシステムには、効果に限界がある。例えば、爆発物スキャナにおけるこの原理の使用を考慮すると、多くの爆発物は通常高い窒素含有量を有する高密度の有機物質であることは事実である。従って、2重エネルギー検出器の使用にはいくつかの限定的な利点はあるが、荷物の中の多くの他の物品、例えば石鹸、クリーム、皮製品などもまた高密度の有機物質であるため、正確な爆発物検出器となるには程遠い。
【0026】
2重エネルギーシステムは、従って、組成に関する限定的な情報のみを提供する。有機/無機の区別は、粗い概算的なものである。従来の検出器では、物質組成の真の情報を得ることができない。2つの明確に異なるスペクトル帯域の範囲内でのX線の有無に基づいて、通常、推定は物品の形状、及び他の物体との接近性に基づく放射線写真を併用して行われるが、最良でも、粗い推定ができる程度である。
【0027】
米国特許4247774号は、コンピュータを用いた地形学に関連した2重エネルギー検出器のシステムを医療分野の画像化の応用において使用することの一般参照を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、従来技術のスキャニングシステム及びスキャニング方法における前述の不利益の幾つかまたは全てを軽減することにある。
【0029】
本発明の特に好適な目的は、物体をスキャニングする方法及び装置を提供し、特に、複数の物体が入った容器、または複数の成分を含む物体をスキャニングする方法及び装置を提供することであり、これにより、それらの組成に関する情報が提供される。
【0030】
また、本発明の特に好適な目的は、データセット自体から物体組成に対応した直接的、及び数値的な情報を抽出する、物体をスキャニングする方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
従って、本発明の1つの実施形態によれば、物体の放射データ、及び好ましくは、物体の画像を取得する方法であって、例えば、X線またはガンマ線源のような放射線源、及びX線またはガンマ線検出システムのような放射線検出システムであって、該放射線検出システムは、前記放射線源との間にスキャニング領域を定義するように前記放射線源と離間するように配置され、入射放射線に関する分光学的に分解可能な情報を検出及び採取できる、放射線源、及び放射線検出システムを提供するステップと、前記検出システムに入射する放射線に関する1つ以上の強度情報のデータセット、及び少なくとも1つ、好ましくは複数のスキャニング位置における前記スキャニング領域の物体の入射放射線との相互作用を採取するステップと、好ましくは、前記検出システムにおいて受信された、前記物体との相互作用の後の放射線、及び例えば前記物体を透過した放射線から前記スキャニング領域の物体の画像を生成するステップと、それぞれの前記強度データセットを、前記放射線源の前記スペクトルの範囲内の少なくとも3つの周波数帯域に亘って、それぞれの周波数帯に対する強度データアイテムを生成するために分解するステップと、既定の強度データセットにおける、少なくとも2対の周波数帯域及び例えばそれぞれ連続する周波数帯域の前記強度データアイテムの間の数値的関係及び例えば比率を、放射エネルギーによって関数的に変化する前記放射線源放射線との物質相互作用に関連する物質係数のような、及び例えば放射相互作用及びその結果として前記強度データセットに関連する質量減衰係数のような、特有の物理的物質特性と関数関係にある少なくとも1つの数値的指標を得るために、算出するステップと、それらを、前記スキャニング領域、及び例えばそのような強度データセットを生成する透過経路にある物質に近似する物質の内容の指標を得るために、ある範囲における潜在的な成分の液体の特有の物理的物質特性を示すデータのライブラリ、特に、例えば疑わしい物質としてのターゲット物質の物理的物質特性と比較するステップと、を含む方法が提供される。
【0032】
放射線源は、電離放射線のような高エネルギー放射線、例えばX線、及び/またはガンマ線のような高エネルギー電磁放射線、または素粒子放射線を生成するための放射線源であり、検出システムは、このスペクトルにおける放射線の検出に対応するよう適合している。本発明によれば、X線、ガンマ線、等の放射線と、スキャニング領域の物体との間の相互作用からの強度データであって、例えば、透過、散乱、後方散乱、吸収などに関するものが、通常の従来方法により採取される。それぞれの「スキャニングイベント」(即ち、既定の位置の既定の物体に入射する既定の放射線経路による強度測定、及び同物体を例えば透過する強度測定)において、「強度データセット」は、少なくとも放射線源のエネルギースペクトルの一部に亘って検出器において採取された入射強度を代表して採取される。いずれにしても、本発明のキーは、放射線源のスペクトルに亘る少なくとも3つの個別のエネルギー帯域において、既定の「スキャニングイベント」に対する強度データを検出できる検出システムを用いることにある。強度データセットは、従って、既定のスキャニングイベント及び従って検査されている物体/物質を通過する既定の透過経路に関連する、少なくとも3つの強度データの測定値またはデータアイテムを生成するために、少なくとも3つの帯域に分解可能な周波数/エネルギーに関する強度情報を構築する。
【0033】
本発明の基本は、既定の「スキャニングイベント」に対する強度データを、検出器において、放射線源のスペクトルに亘る少なくとも3つの個別のエネルギー帯域において検出できる検出システムを用いることである。エネルギーは、検出器において選択される。スペクトル分解は、検出器において達成される。
【0034】
従来の技術は、放射線源の広帯域スペクトルから狭い周波数帯域、及び例えばそこからデータを採取及び解析することが可能な周波帯域及び高周波帯域を選択するために、通常、複数の放射線源及び/または複数の検出器をフィルタ及びそれと同等のものと組み合わせて用いる。エネルギーは、放射線源またはその他の、検出器の上流において選択される。これは、広帯域の放射線源の全スペクトルのより大きい部分に亘る透過レベルから得られる情報の全ての潜在力を利用していない。
【0035】
それに対して本発明では、エネルギーの選択は、本質的に検出器で生じる。いかなる適切な、分解可能な幅を有する放射線源、または放射線源の組み合わせは、使用され得る。X線スペクトルの狭い部分を選択的に観測することが可能である。これは、必要なエネルギーによる強度データの変動が、優れた物質識別能力を与えるように非常に高精度に測定されることを可能にする。加えて、連続スペクトルの部分が選択されるため、特殊な放射線源でなく、標準の広域X線源を用いることができる。また、スペクトルのどの部分が選択されてもよいので、複数の放射線源を異なる出力/エネルギーに設定する操作が不要になる。単一の放射線源が、十分となり得る。他の利点は、スペクトルのそれぞれの帯域のデータが、順番に採取されるのでなく、同時に採取され得ることであり、より高いスループットを可能にする。
【0036】
1つの実施形態では、単一の広帯域スペクトルの放射線源を用いてよい。この実施形態においては、本発明の方法は、単一の広帯域スペクトル検出器または検出器配列を、単一の広帯域スペクトル放射線源とともに用いて、狭帯域周波数のフィルタを組み合わせた複数の放射線源及び/または複数の検出器配列を使用するのでなく、検出器の本質的な特性を使用して放射線源のスペクトルに亘って情報を分解するものであり、それにより、例えば異なる周波数のフィルタを組み合わせた複数の放射線源からなる従来技術のシステムにて提供されるものに比して、より洗練された数値解析、及び放射線源のスペクトル全体に亘る情報のより完全なデータ採取及びその使用の可能性が提供される。
【0037】
本発明によれば、それぞれのスキャニングイベントに対し、少なくとも2対の分解された強度データアイテムの測定結果に関し、数値的関連性が決定される。これは、例えば、観測されたデータを後述する理論的な関係にフィッティングするのに適切な数値的オペレータを1対のデータアイテムに適用することによって得られる数値的関係であってよい。実施形態では、1対の強度データアイテムの間の比率が決定される。そして、複数の数値的関係のデータセットが生成される。
【0038】
数値的関係のデータセットは、物質係数のような物理的物質特性と関数関係にある、少なくとも1つの数値的指標を得るために分析される。この物質特性/係数は、エネルギーにより変化する関数的方法において採取された放射線の強度を決定するのは物質特性/係数であると知られているという意味で、生成された強度データセットに結び付けられるように選択される。通常、数値的指標は、数値的に、且つ例えば反復的に観測された結果から得られた数値的関係のデータセットを、放射線の相互作用に関する強度データを適切な物質特性または物質係数と繋ぐ適切な既知の関係にフィッティングすることにより得られる。特に、特徴のある関数関係によって強度に対して変化する物質特性または物質係数は、適切であり、採取されたデータをそれがそこから得られる適切な等式にフィッティングすることにより数値的指標として決定される。従って、適切な物質特性または物質係数と関数関係を有する数値的指標が得られ、それは、都合よく、適切な物質係数または物質定数である。複数のデータアイテムに対する複数の数値的関係のデータセットの使用、及び適切な数値的指標の選択により、そのような等式中の多くの又は全ての他の変数を除去することができ、更に、検査されるサンプルのターゲット物質成分を特徴づけできる手法で、その手法で要求される数値的指標/係数を得ることができる。これは、前述の通り実験データから得られた特徴的な数値的指標に関連する液体物質の存在の識別を支援するために、その数値的指標と同等の適切なライブラリに参照され得る。
【0039】
この実施形態では、少なくとも2対の分解された強度データアイテムの測定結果、及び例えば、連続する強度データアイテムの測定結果の比率は、数値的に得られ、前述の式(1)に記載のベールーランベルト則に従う強度パターンを形成するために必要な質量減衰係数と相関関係を持ちうる代表的な情報を提供する。そして、以下の説明は、これを事例として用いる。しかしながら、検出器において分解されたエネルギーによる強度変化を、物質特性または物質係数に対してフィッティングする、いかなる類似の関係は、この方法に基づく使用のためと想定される。
【0040】
後述するように、既定のスキャニングイベントに関連する大部分の変数は、放射線源から入射する放射線の周波数/エネルギーに対して一定である。しかしながら、質量減衰係数は、特徴的な方法で、エネルギーに対して変化する。少なくとも2つの比率を生成するために、既定のスキャニングイベントに対する少なくとも3つの異なるエネルギ帯域に亘る強度データに関する比率分析を行うことによって、質量減衰係数と入射放射線エネルギーの間の関数関係の代表であるデータが得られる。従って、既定のスキャニングイベントに関して検査される物質を通過する透過経路に適用できる固有の質量減衰係数に関する推定が、可能である。何がスキャンされているのかの更に代表的な指標を与えるために、異なる物質、及び/またはターゲット物体に対する質量減衰係数を表すデータの適切なデータベースとの比較がなされる。
【0041】
1つの物体のスキャニングを便宜上説明したが、これは、本発明の適用が単一の均質物体のスキャニングに制限されると考えるべきでない。確かに、多くの想定される適用に関して、「物体」は、複数の不均一物質から構成され、及び/または容器であり、または複数の品目のかたまりであるため、いずれの透過放射線経路も、種々の特性を有する複数の異なる物質を通過するものと考えられる。本発明の特筆すべき利点の1つは、そのような種々の物質の分析を容易にし得ることである。
【0042】
本発明の手順のキーは、適切な検出器の提供により、採取された放射線を少なくとも3つの帯域に亘るエネルギー/周波数に対して分解する能力であり、それによって、少なくとも2対の強度データアイテムから相対値を計算できる。これは、透過強度に影響する他の不確実性、特に物質の密度、及び厚み(両者とも既定のスキャニングイベントにおける入射エネルギーに対して本質的に不変である)のあらゆる影響を低減することが要求される数値分析を可能にするために必要最小限と考えられる。
【0043】
3つが基本的な最小値であるが、不均一な物体、及び/または容器、または複数の品目のかたまりを含む「物体」のスキャニングに対して、より大きな複数個の、例えば少なくとも5つの、エネルギーによって分解された強度データアイテムが、前述の数値分析のために好適である。
【0044】
従って、この検出器システムは、透過された放射線に関する、少なくとも3つ、好ましくは5つのエネルギー帯域に分解する程度の分光学的情報を生成するように適用される。好ましくは、検出器は、放射線源スペクトルの少なくとも実質的な部分に亘って分光学的に変化する応答を示し、それによって詳細な分光学的情報を回収できる。
【0045】
この検出器システムは、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの固有のエネルギー帯域において検出するために使用可能である。それらが分解される限り、帯域幅は直接的には本発明に関連せず、スペクトルを全体的、または部分的に関わらず、個別の帯域に分割するいかなる適切なアプローチによっても利用できる結果が得られる。例えば、スペクトル全体、またはその実質的な部分は、そのような複数の帯域幅の間に単に分割され、それぞれのデータアイテムは、その帯域全体に亘る強度の代表測定値、及び例えば平均強度とみなされる。代替として、複数の比較的広い帯域であって、その間の個別のギャップを除く部分は、同じ根拠で考察、分析される。代替として、「帯域」は、その「帯域」が単一エネルギーにおける強度の評価に本質的に近似する点に至るまで狭くてよい。単一のエネルギーにおける強度の概念を利用すると、「帯域」は、狭い、または広い帯域に亘る単一のエネルギーにおける強度の評価と同様に、そのような個別の単一のエネルギーにおける強度の評価を含む。
【0046】
同様に、放射線源は、それに亘って複数の帯域幅、または単一のエネルギーが識別され得る単一の広帯域スペクトルの放射線源であってよい。代替として、または追加として、放射線源は、本発明の方法に関連する比較のためのいくつかのエネルギーを生成するために、狭い帯域幅を有するように、または1つ又はそれ以上の個別のエネルギーによる入射放射線を生成するように設けられる。この場合、その放射線源は、検出器による複数のエネルギー/エネルギー帯域に亘る分解を可能にするために必要な全体スペクトルの必要な広がりを提供するための、異なるエネルギーの放射線源の組み合わせを備えた複数の放射線源である。
【0047】
例えば、複数の放射線源は、比較的低いエネルギースペクトルを有する、例えば60keV以下、及び例えば10乃至50keVで作動するX線源、及び1つ以上の、より高いエネルギー、例えば100keV以上での放射を行う放射性同位体放射線源を備える。
【0048】
放射線源は、本発明の性能に必要なスペクトル分解を可能とするために、十分に広帯域の放射線スペクトルを生成可能であることが好ましい。好ましくは、放射線源は、20keV乃至1MeVの範囲の少なくとも1つ又はそれ以上の部分に亘る放射線を生成し、且つより好ましくは、20keV乃至160keVの範囲の一部、及び例えば主要な一部に亘る放射線を生成する。例えば、放射線源は、既定の範囲内において少なくとも20keVの、少なくとも1つの帯域幅に亘る放射線を生成する。例えば、スペクトルは、その範囲内で少なくとも3つの10keV帯域が分解可能である。
【0049】
物質を通過するX線の透過は、上記式(1)に規定された指数関数的な減衰則により与えられ、ここで、従来技術のCTスキャナにおいて行われるアプローチが考慮される。CT及び同様の手法による高い誤警報率に関して、多くの理由が存在すると考えられる。
【0050】
これに対し、本発明に関しては、物体を通過する多くの(3つの、またはそれ以上の、好ましくは少なくとも5つの)異なるエネルギー帯域における透過、または、他の相互作用データを採取することが、提案される。指数関数的な減衰式を透過強度に関連して再び考察すると、質量減衰係数が挙げられた項の1つとなっていることが判る。質量減衰係数それ自身は、しかしながら、検出されたX線のエネルギーに依存する。等式中のその他の項は、X線エネルギーに依存しない。従って、複数のエネルギーにおける透過を測定すると、透過の変化を、質量減衰係数と関連付けることができる。
【0051】
この項は、物質が存在する特性であるため、CTの手法において使用されるものと類似する手法によって、しかし経路の変更時に何の障害もなく、または、何の不確実性もなく、特に爆発物質などのターゲット物質など、特定の物質を識別する、または特徴付けすることが可能である。これは、複数のエネルギースキャンに基づいている技術は、従来の技術により享受されるものよりも高い成功率の可能性をもたらす、ということを意味している。
【0052】
追加の項を除去するために最も簡単な手法の1つは、異なるエネルギーにおける透過の比率、例えば、連続する異なるエネルギーにおける連続する測定値の比率を求めることである。比率は、原理上、物質の厚さ、及び密度を定数項として除去し得ることが判る。これにより、質量減衰係数を、透過比率に影響する唯一残存する項にする。
【0053】
本発明の方法は、そのモバイルスキャニング、及び/または物体の画像化への適用に限定されるものではない。既定のスキャニングイベントに対するデータセットに固有の質量減衰係数に関連する情報、及び、従って透過経路中の物体の物質組成は、単一のスキャニングイベントによって、例えば、静止した物体の適切な形状の単一ビーム、例えばペンシル・ビームまたは円錐ビームによるスキャンにより得られる。そのような状況では、本方法は、上記単一スキャンを得るために物体をスキャニング領域に配置することを含む。
【0054】
しかしながら、好ましい実施形態では、スキャニング領域において検査される物体の、その物体が平行移動、及び/または回動した複数のスキャン位置における透過率に関して、情報が採取される。本方法のこの実施形態に関して、方法は、強度データの複数のデータセットを採取する間に、スキャニング領域に対して、及び例えばスキャニング領域を通じて物体を移動させる追加ステップを含む。
【0055】
最も基本的には、本発明は、採取され、及び分解された透過データから、既定の適用において直面しそうな物質、及び/または物体の範囲に相当する適切なデータライブラリ、または比較可能なデータを参照することにより、数値解析に基づき物質の内容の指標を提供することにより物質の識別を可能にする。そのデータライブラリは、本発明に基づき分解されたエネルギー帯域に亘って採取されたデータに数値的分析方法において関連し得る、あらゆる適切な形式の情報を含んでよい。そのデータライブラリは、標準の事前にセットされた参照物質、及び/またはユーザがインプットした参照物質、及び/または前述の手法に基づき既知の物質から生成された参照データを含んでよい。データのライブラリは、システムによって構築されることができ、これは時間を掛けることにより、実質的に物質特性を「学習」することができる。データライブラリは、電子的に保存されたデータ、及び/またはプリントされたリソースのようなハード媒体に保存されたデータを含んでよく、更にデータライブラリは、局所的及び/または遠隔的に保存されアクセスされてよく、本発明の方法の実施と直接的に関連するものでない。
【0056】
従って、その最も簡単なものにおいては、第1の実施形態における本発明は、エネルギーに関連して採取された強度データから、適切な及び例えば同様にエネルギーに関連した物質係数の指標、及び従って透過経路における液体組成の指標を抽出する方法を含んでよい。この場合、画像の生成は不要である。特徴的なビーム形状は、要求されない。スキャニング領域における相互作用の後に簡単な単一の検出器に入射する放射を形成する、簡単な効果的な一次元ビーム形状は、十分となり得る。
【0057】
しかしながら、実用的な目的において、本発明がスキャニング画像システムの一部を形成することは十分に利点がある。この好適な実施形態において、検出器、または更に付加された検出器において採取された放射線入射に関する情報のデータセットは、スキャニング領域の物体の画像を生成するために使用される。この方法は、高いスループット率において意味のある画像情報を生成できるところに特に利点があり、それにより、従来技術の荷物スキャナにおいて使用されていた低減されたCTスキャンシステムは必要でない。
【0058】
好ましくは、方法は、スキャニング領域の物体またはサンプルとの相互作用の後の透過放射線の強度に関するデータを採取するステップを含み、透過放射線の強度に関するデータは、検出器において、前述のように数値的に、及び1つ以上の画像を生成するために分解される。しかしながら、スキャニング領域の物体またはサンプルと入射放射線との間の他の相互作用を利用することもできる。
【0059】
特に好ましい実施形態において、前述の通り、複数のデータセットを採取するために物体がスキャニング領域に対して、及びスキャニング領域を通じて移動させられる間に、液体サンプルを含んでいる、または液体サンプルを含んでいる疑われる物体との相互作用の後の透過放射線の強度に関する情報が採取され、これは、物体がスキャニング領域を通じて移動する間に画像の連続を生成するために都合よく使用される。
【0060】
明確化のため、ここで使用される場合画像の生成のための参照は、例えば、適切な保存、及び操作可能なデータファイルなどの形式の情報のデータセットの作成のための参照であり、そこから検査中の物体の基礎構造の視覚表示を生成でき、且つこの画像の参照は、そのようなデータセットから生成される画像を視覚的にアクセス可能な形態で、例えば適切なディスプレイ手段に表示することの参照であると理解するべきである。
【0061】
本発明の方法は、好都合に、生成された1つまたは複数の画像を表示するステップを含み、複数画像の場合、それらの画像を同時に、または連続的に表示することを含む。
【0062】
本発明の実施に関して本質的に必要とされるものは、透過放射線に関する分光学的情報を生成することができる検出器システムである。すなわち、検出器は、分光学的情報を回収できる放射線源の放射スペクトルの少なくとも実質的な部分に亘り分光学的に変化できる応答を示す。これは、少なくとも3つのエネルギー帯域に亘って分解され、前述の数値分析が、透過経路の物質の内容を示す情報を得るために実行される。従って、本発明においては、ターゲット物質、または物質の狭い分野における真の識別、及びより明確な識別が可能である。
【0063】
好ましい実施形態では、画像の生成において、分光学的情報の適切な分解能は、更なる利点を与える。一連の帯域に亘って画像化することにより、物質によって異なる応答をある程度反映できる幾つかの画像を生成する可能性を提供でき、従って、結果として組み合わされた画像において、それぞれの画像帯域に亘るそれぞれの画像を区別することで、例えば、異なるように(例えば異なる色を用いて)表示することによって、画像の異なる物体、成分、または部分の解決を支援する。
【0064】
従って、本発明の好ましい実施形態において、それぞれの採取された画像は、それぞれがスペクトル全体の部分に亘って画像を生成するように設定された、複数の好適に比較的広い「画像」帯域に亘って分光学的に分解され、それら画像帯域は、それらでエネルギー分化された合成画像または同様の手法の画像の連続を可能にする。画像化周波数帯域の数は、好適には2乃至10の間であり、例えば、4乃至8の間である。
【0065】
分光学的検出器は、標準的な従来技術の2重エネルギ検出器から利用できる2つに比較して、著しく増大した「画像」のエネルギー帯域の数に分解された画像を表示する可能性を向上させるため、エネルギー選択方法によって操作されてよい。この情報は、異なる組成の物体の分解能を向上させるために使用される。
【0066】
これは、この好ましい実施形態によって、それぞれの比較的広い帯域における透過放射線の分光学的分解能は、生成された画像において示されることにより達成される。例えば、採取されたデータの分光学的な区別は、区別された色、陰影、または模様として画像に表示される。帯域化されたマッピングは、放射線源スペクトルが複数の帯域、例えば、4乃至8の数の帯域に分割され、表示画像においてそれぞれの帯域を表示するために異なる色が使用される。この装置は、好都合に、このマッピングを達成するために適切な画像処理手段を含んでいる。
【0067】
そのように生成される画像、合成画像、または画像の連続は、好ましくは視覚的な表示スクリーンなどの適切な表示手段により表示される。
【0068】
本発明の更なる実施形態によれば、検査されるサンプルをスキャンし、そのサンプルの相互作用に関するデータ、例えば、物体、及び好ましくは物体の画像からの放射線透過データを取得する装置であって、それぞれの間にスキャニング領域を定義するようにそれぞれ離されて配置された放射線源及び放射線検出システムであって、使用時に前記スキャニング領域の少なくとも1つ、好ましくは複数のスキャニング位置における物体との相互作用の後の前記検出器システムに対する入射放射線に関する情報のデータセットを採取する放射線源及び放射線検出システムと、それぞれのデータセットまたは画像を、放射線源のスペクトル内の少なくとも3つの周波数帯域に亘って、分光学的に処理、及び分解し、それぞれの帯域に対する強度データアイテムを生成するデータ処理装置と、それぞれのデータセットに対する分解されたデータアイテムを保存する強度データアイテムレジスタと、既定の強度データセットにおける、少なくとも2対の周波数帯域及び例えばそれぞれの連続する周波数帯域に関する強度データアイテムの間の数値的関係及び例えば比率を計算し、放射線エネルギーによって関数的に変化する物質係数、及び例えば放射線相互作用及びその結果として前記強度データセットに関連する質量減衰係数のような、物理的物質特性と関数関係にある少なくとも1つの数値的指標を得る計算手段と、その数値的指標を保存する、更なるデータレジスタと、質量減衰係数のような、類似の特徴をもつ物質係数、特に例えば、疑わしい物質のようなターゲット物質の特性を示すデータのデータライブラリと、前記数値的指標を、前記ライブラリのデータと比較して、そこから前記強度データセットを生成する透過経路の物質である可能性の高い物質内容の指標を得る比較器と、を備えた装置。
【0069】
使用において、疑わしい物体は、スキャニング領域でスキャンされ、放射線源と相互作用する。放射線源は、電離放射線のような高エネルギー放射線、例えば、X線及び/またはガンマ線などの高エネルギー電磁放射線、又は、素粒子放射線を生成する放射線源を備え、検出システムは、このスペクトルの放射線を検出するようにそれに対応して適応される。本発明によれば、放射線とスキャニング領域の物体の間の相互作用であって、例えば、透過、散乱、後方散乱、吸収等に関する強度データは、検出器により採取される。透過放射線強度は、特に多くの適用に関して有用である。しかしながら、本方法に関しては前述の通り、検出器は、それ自身がエネルギーに対して選択的であり、複数のエネルギ帯域に亘るデータの選択は、検出器で行われ、エネルギーを選択する放射線源またはフィルタを利用しない。
【0070】
この放射線源は、特徴的な散乱に対する適切なスペクトル範囲に亘るエネルギーの分配を生成する必要があり、それは、典型的には、X線源である。タングステンが最も適したターゲットであるが、他のものも使用できる。
【0071】
放射線源は、複数の帯域幅(であって、前述のように単一のエネルギーを包含する帯域)に亘って識別され得る単一の広帯域スペクトルの放射線源であってよい。選択的、または追加的に、放射線源は、本発明の方法に関する比較のためにエネルギーのいくらかを供給するために、狭い域帯幅を有する、または1つ以上の個別のエネルギーの入射放射線を生成するように、設けられてよい。この場合、その放射線源は、検出器による複数のエネルギー/エネルギ帯域に亘る分解を可能にする必要なスペクトル全体の広がりを生成するために、異なるエネルギーの放射線源の組み合わせを備えた複数の放射線源である。
【0072】
例えば、複数の放射線源は、比較的低いエネルギースペクトルを有する、例えば60keV以下、及び例えば10乃至50keVで作動するX線源、及び1つ以上の、より高いエネルギー、例えば100keV以上での放射を行う放射性同位体放射線源を備える。
【0073】
本発明の装置は、前述の数値的指標を求めるために適切な比較関数を適用することにより、少なくとも2対の周波数帯域に関する強度データアイテムの間の数値的関係、及び例えば比率を計算する計算手段を有する。この装置は、更に、その数値的指標をライブラリのデータと比較する比較器を有する。あらゆる適切な形式の計算手段、及び/または比較器、及び/またはライブラリは、適切なハードウェア、及びソフトウェアと組み合わせること、及び自動的及びユーザ入力の計算ステップと組み合わせることが想定される。例えば、計算手段、及び/または比較器、及び/またはライブラリは、適切にプログラムされたデータ処理装置、例えば適切にプログラムされた汎用コンピュータまたは特殊目的のコンピュータを備える。
【0074】
本発明の方法における数値的なステップは、機器読み取り可能な指示またはコードの適切なセットにより実行される。これらの機器読み取り可能な指示は、特定の数値的ステップの実行のための手段、及び特にそれによって前述の計算手段を形成するために、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、または他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされてよい。
【0075】
また、これらの機器読み取り可能な指示は、コンピュータや他のプログラム可能なデータ処理機器に固有の方法で機能するように指示できるコンピュータ読み取り可能な媒体に保存されてよく、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存されたその指示は、本発明の方法における、いくつかの、または全ての数値的ステップを実行する指示手段を含む製造物を生成する。また、コンピュータプログラム指示は、その指示が本発明におけるいくつかの、または全ての数値的ステップの実行を提供するコンピュータ、または他のプログラム可能な装置にて実行されるようにコンピュータにより実行される処理を実行できる装置を形成するために、コンピュータ、または他のプログラム可能な装置にロードされる。ステップ、及びそのステップを行うために装置に組み込まれた手段は、いかなる適切な、特殊目的のためのハードウェア、及び/またはコンピュータ指示の組み合わせによって実行され得る。
【0076】
選択的に、その装置は、使用時に、単一のスキャニング位置の物体との相互作用の後の放射線強度データを採取するように適用され、及び例えば、物体を配置する容器として物体をスキャニング位置に保持する手段を含む。追加的に、または選択的に、物体をスキャニング位置に向けて、及びスキャニング位置から運ぶコンベヤを含んでよい。
【0077】
選択的に、その装置は、使用時に物体がスキャニング領域を通じて移動する間の複数のスキャニング位置における物体との相互作用の後の放射線強度データを採取するように、且つ好ましくは、使用時にスキャニング領域における物体の画像、及び好ましくは、物体がスキャニング領域を通じて移動する間の画像の連続を採取するように適用され、更に、使用時に物体をスキャニング領域に対して、及びスキャニング領域を通じて移動させるハンドラーを備える。
【0078】
本発明に関する検出器システムは、単一の検出器、または複数要素システムを構成する複数の個別の検出器要素を備えてよい。画像化システムが不要の場合、本発明は、空間的な分解を必要としないが、実際にはゼロ次元の強度のみの分析を行ってよい。簡単にするため、単一の検出器が好ましい。
【0079】
放射線源からの適切な形状の放射ビームを形成するために、コリメータを備えることが好ましい。好都合に、例えば、画像化能力が不要である場合、簡単な単一の透過検出器に関連して、簡単な、効率的な1次元ビームが提供されてよい。
【0080】
他の適用に関して、選択的に、この装置は、検出器システムの出力から少なくとも最初の画像を生成するための画像生成装置と、選択的に、少なくとも最初の画像を表示するために適用される画像表示装置と、を更に含む。
【0081】
この表示手段は、好都合に、簡単な2次元表示スクリーンであり、例えば、通常のビデオ表示スクリーン(この用語は、陰極線管、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、シリコン基板上に載せた反射型液晶、発光ダイオードディスプレイ等の技術を利用したあらゆる直接表示、または投影システムを包含する)である。特に有利であるのは、その方法、及び本発明のために組み込まれた装置は、例えばセキュリティ分野または医療分野における類似の既存のシステムの標準表示スクリーンを用いることが想定できる。
【0082】
この放射線源は、特徴的な散乱に対する適切なスペクトル範囲に亘るエネルギーの分配を生成する必要があり、それは、典型的には、X線源である。タングステンが最も適切なターゲットであるが、その他のものも使用できる。
【0083】
この検出器システムは、データ処理装置により分光学的に分解可能である方法で、放射線を検出できることが必要である。好ましくは、検出器システム、または複数要素システムを構成する、いくつかまたは全ての個別の検出器要素は、直接の分光学的応答を表示するための分光学的な分解を行うために適用されてよい。特に、システムまたは要素は、放射線源スペクトルの異なる部分に対する電気的、及び例えば光電的に応答する直接的な変動を、直接的な物質特性として本質的に示すように選択された材料から製造される。例えば、検出器システムまたは要素は、半導体材料、好ましくは、バルク結晶、及び例えばバルク単結晶(ここにおいて、バルク結晶は少なくとも500μmの厚み、好ましくは少なくとも1mmの厚みを有する)、として形成された材料を備える。その半導体を構成する材料は、好ましくは、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)、テルル化マンガンカドミウム(CMT)、ゲルマニウム、臭化ランタン、及び臭化トリウムの中から選択される。II−VI族半導体、及び特にここに挙げたものは、この関連で好ましい。その半導体を構成する材料は、好ましくは、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)、テルル化マンガンカドミウム(CMT)、及びそれらの合金、例えば、Cd1−(a+b)MnZnTe(ここで、a及び/またはbは、ゼロであってもよい)で示される結晶の中から選択される。
【0084】
これら、及び他のこのような材料の組み合わせは、サンプルとの相互作用の後の放射線の大きさを単に検出するだけでなく、分光学的検出を与えると考えられる。
【0085】
画像生成装置は、画像を生成するために設けられてよい。特に、それは、データ処理装置から複数の「画像化」帯域から分光学的に分解された複数の画像を受け取るために適用されてよく、前述の通り、物体の識別を支援するために、これらの画像を連続して、または同時に表示できる。例えば、採取されたデータにおける分光学的区別は、区別された色、陰影、または模様として、単一の結合された画像の中に表示される。
【0086】
コリメータは、好ましくはX線源から放射された適切な形状のビームを生成するように設けられる。放射されたビームの形状は、その検出器システムの最も利用しやすい形状に決定される。最も簡単なものでは、特に、質量減衰係数の指標を数値的に求める目的で、単にスペクトル的に分解された透過データを採取するためにその装置を使用する場合、簡単な、効率的な1次元のビームが、簡単な単一の透過検出器に関連して、提供されてよい。
【0087】
しかしながら、好適な実施形態において、その装置は、画像化情報の生成に更に適用される。本発明における数値的分析法に関連して提供される物質の識別は、単独で用いるのでなく、画像化に関連して、疑わしい物体のスキャニング、及びその中の品目または物質の識別における追加的支援として用いることは、可能な操作モードとして意図されている。本発明のアプローチにおける利点は、有用な組成に関するデータ、及び画像化データが、原理上、同一のスキャンから得られることである。より有用な画像化データは、一般的に、より複雑なビーム及び検出器の形状によって得られる。
【0088】
例えば、ビームは、1次元または2次元の広がりを有するために、特に、1つ以上の線形検出器または1つの面型検出器とそれぞれ協調するために、視準を合わせてよい。好都合に、線形検出器、及び/または面型検出器は、前述の複数の個々の検出器要素の直線状、及び/または面状の配列を含む。
【0089】
本発明は、特に、線形スキャニング原理に基づき操作され、3次元の物体がスキャニング領域を通じて移動され、画像化情報を採取する装置、及び方法に関する。
【0090】
線形スキャン原理を用いる画像化装置は、よく知られている。通常、そのような装置はX線源から構成され、そのビームはカーテン状に視準を合わせられ(通例「カーテンビーム」と呼ばれる)、例えば、線形のフォトダイオード配列を備える線形検出器により検出される。画像情報は、関心のある物体を、例えばビームに対して直角に線形的に移動させ、更に完全な画像フレームが達成され得る直線配列から得られるX線透過情報の連続スキャンを保存するにより、得られる。従って、この実施形態において、その方法は、それぞれの間にスキャニング領域を定義するようにそれぞれ離されて配置されたX線源及びX線検出システムであって、前記X線検出システムは、入射X線に対して分光学的に分解可能な情報を生成できる、少なくとも1つ、好ましくは複数の線形検出器を備えたX線源及びX線検出システムを提供するステップと、物体をスキャニング領域に対して、及びスキャニング領域を通じて動かすステップと、透過データの結果を前述の方法によって分解するステップと、を含む。
【0091】
従って、この実施形態において、その装置は、それぞれの間にスキャニング領域を定義するようにそれぞれ離されて配置されたX線源及びX線検出システムであって、前記X線検出システムは、入射X線に対して分光学的に分解可能な情報を生成できる、少なくとも1つの、好ましくは複数の線形検出器を備えたX線源及びX線検出システムを含む。
【0092】
この実施形態によれば、放射線源は、好ましくはカーテン状ビームを生成するため視準を合わせられ、従って、従来の線形スキャン装置になじみのカーテン状ビームのX線源である。
【0093】
好ましくは、検出器システムは、連続した配列において、直線的または角度的に離されてほぼ平行適合した複数の線形検出器を備える。それぞれの線形検出器は、検出器要素の直線配列を備えてよい。
【0094】
X線源は、例えば適切なビーム分割装置により、適切な角度分離によって離間した連続配列に配置されたそれぞれの線形検出器に入射するように位置合わせされたカーテン状ビームのようなビームを生成するように適用された単一の主要放射線源を備えてよい。単一のビームが生成されてもよい。選択的に、単一放射線源から複数のビームが生成されてもよい。また、選択的に、この連続配列の線形検出器に入射するカーテン状ビームのようなビームをそれぞれ生成するための複数の放射線源が設けられてもよい。X線源は、前述の原理のいずれか、または全てを組み合わせた放射線源を備えてよい。
【0095】
本発明の好ましい形態による複数の線形検出器の提供は、追加的な機能を供する。データは、物体がスキャニング領域を通じて移動するとき、同等の複数の透過経路に対して採取される。放射線源と、異なる位置に配置された線形検出器または検出器配列との間における複数の透過経路の提供は、採取された情報に、従来のCTスキャニング装置により採取された情報の特徴を与え、データを従来技術の方法で追加的に処理できるようにする。
【0096】
例えば、複数の透過経路データは、複数の画像を生成するために使用されてよく、なじみの方法による操作の画像化の外観における情報内容を向上させる。追加的、または選択的に、物体の既定の部分を通過する複数の透過経路は、有効通過厚みの変化を引き起こし、それは、物質内容に関する推定を行うために用いられ、この場合もCTスキャニングにより既知の従来技術に類似の方法であり、且つ本発明の基本原理に基づく質量減衰係数を示すデータの誘導により行われる推定を、強化、または更に特徴付ける。
【0097】
特に、後者の適用において、単一の放射線源が設けられ、線形検出器の複数配列を有することにより形成される複数の放射線経路のために使用される。これは、それぞれの放射線経路に対する入射スペクトルが、本質的に同一であるということを保証し、不確実な可能性を除外する。いずれにしても、適度なスペクトル信頼性を有する複数の放射線源を使用するシステムに、同一の原理が適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態による使用に適した、光学的な画像化能力を有するスキャニング装置を示す側面図である。
【図2】図1に示すスキャナを含む、発明を実施し得る装置の模式図である。
【図3】(a)は、標準的な放射線源スペクトル、及び画像化操作に連結して本発明を実施するために、どのようにこの放射線源スペクトルを分割するかを示す。(b)は、標準的な放射線源スペクトル、及び画像化操作に連結して本発明を実施するために、どのようにこの放射線源スペクトルを分割するかを示す。
【図4】画像化操作に連結した、本発明の操作に関する概略プロトコルである。
【図5】(a)は、図1の実施形態によって提供された複数の放射線経路の手段によって生成される画像により生じ得る影響を示す。(b)は、図1の実施形態によって提供された複数の放射線経路の手段によって生成される画像により生じ得る影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1に示すように、適切なX線源1が、X線をスキャニング領域を通過し、3つの線形検出器3a乃至3cに向けて放射するように使用される。
【0100】
前述のように、本発明により想定される装置は、未知の物体、特に未知の物体が複数の品目を含む手荷物のような容器である場合、例えばセキュリティ用途や爆発物の検出の場合のスキャニングを強化するために、本発明のエネルギーによって分解されたデータ採取の物質識別能力及び操作の側面と画像生成により得られる情報をと組み合わせることができる。この適用を考慮すると、図示する実施形態において、3a乃至3cの3つの線形検出器(実施形態において、それぞれは検出器要素の直線配列を含む)に向けてカーテン状の入射ビームを生成するように視準が合わせられた1つのX線源が用いられる。従って、複数の放射線経路5a乃至5cは、スキャニング領域において、そのような線形検出器の直線的または角度的に離された配列に入射する複数のカーテンビームによって形成される。入射放射線経路5a乃至5cは、X線源1と検出器3a乃至3cのそれぞれとの間のスキャニング領域を通過している。
【0101】
本実施形態において、直線配列の検出器3a乃至3cは、入射X線を分光学的に分解できる物質を含み、具体例として、テルル化カドミウムを含む。当業者によれば他の物質の選択も適切であると理解される。このスペクトルの分解を引き出すために、X線源は広帯域エネルギースペクトルに亘ってX線を放射する。具体例としては、当業者によれば他の物質も適切であると理解されるものの、タングステン放射線源が用いられる。
【0102】
エンドレスベルトコンベヤ7は、スキャンされる物体9をスキャニング領域で放射線経路5a乃至5cを途中で受けるために、方向dに向けて移動させる。本発明のこの実施形態の想定される適用は、セキュリティスキャナであり、物体9は様々な区別できる物体を収容すると予測される容器であると通常考えられ、それ(例えば、エアラインの預け荷物)を組成として特徴付け、3次元で効果的に観測することは便利であり、且つ好適である。しかしながら、同じ原理は、例えば内部調査の目的の物体のスキャニング、医療分野のスキャニング、及びその他類似する応用に適用可能である。
【0103】
3つの検出器3a乃至3cのそれぞれからの透過情報を構築することによって、透過強度情報のデータセットが生成される。本発明の原理に基づいた数値分析と、分光学的に分解される画像化との両方の目的のために、入射エネルギー/入射波長と透過強度との間の関係を、少なくともある程度、分解することによる情報のデータセットの処理を図2乃至図4に示す。
【0104】
図2に示す模式図においては、簡略化のため、単一の放射線経路のみを示す。X線源1、及び水平方向に配置された検出器装置アセンブリ21は、それらの間にスキャニング領域Zを規定する。使用中、スキャンされる物体は、例えば前述のような適切なコンベヤベルトによって、通常の方法で、スキャニング領域へ持ち込まれ、スキャニング領域を通過させられる。
【0105】
図に示す例では、物体9はスキャニング領域Zに位置している。X線源からの入射ビーム11が図示されている。この簡単な模式図では、入射ビームは直線11によって示される。透過ビーム13は、検出器配列21に入射する。
【0106】
検出器配列21は、プロセッサ22とデータ通信を行う。検出器配列は、既知の方法で、2次元の「薄片」を生成するために使用される。配列の中の材料の固有のスペクトル分解によって、プロセッサ22は、データレジスタ23に蓄積されたエネルギー帯域の境界を参照することにより、本発明の原理に従って複数のプリセット周波数/エネルギー帯域に亘って差異的にこの画像を分解することが可能になる。
【0107】
この実施形態では、タングステンのX線源が使われる。タングステンから生成された、波長に対する初期強度の典型的なスペクトルを図3に示す。
【0108】
図3の主な目的は、本発明の原理に従ってスペクトルが分解される、2つの可能な方法を示すことである。それぞれの場合において、スペクトルは5つの周波数帯域に亘って分解される。数学的原理によれば、わずか3つの帯域から、いくつかの有用な情報が取得できるが、仮に入射エネルギー/周波数に対応する透過強度の関数的な変化、及び従って質量減衰係数に関して適切な推定を導き出す必要がある場合、複雑で不均一な物体に対しては、5つがより実用的な最小値である。
【0109】
模式図は、スペクトルを分解し得る、2つの方法を示している。図3(a)では、生成されたスペクトルの大部分は、5つの比較的広帯域のエネルギー帯域b1乃至b5に分割される。図3(b)では、個々のエネルギーに近似する、5つの比較的狭いエネルギー帯域c1乃至c5が規定されている。どちらの選択肢も本発明の原理と矛盾せず、且つ、本発明の数値分析のため、または更に好ましい実施形態として、検査の対象となっている物体に関して更なる情報を得るために分光学的分解された画像化のため、のいずれかにつき有用な結果を得るために、いずれの組み合わせを使用してもよい。
【0110】
好ましい実施形態において、このデータは、画像、最も好ましくは更なる情報を画像に追加するために、自身を複数の周波数帯域に亘りスペクトル分解したスペクトル分解画像を生成するのにも用いられる。このような実施形態において、図3で分解されたエネルギー帯域の幾つか、例えば、図3(a)に示すエネルギー帯域は、表示手段29に送信するエネルギー分化画像を形成するために使用されてよい。この点に関して、この装置は、従来のエネルギー分化画像化装置と同様の基本的原理に従う。
【0111】
この装置は、例えば図3(b)に示すような判明している一連の周波数帯域と関連して更に作動する、プロセッサ22によって得られる機能において異なる。しかし、この装置は、この機能において、それぞれの帯域における透過強度の代表的な定量値、及び例えばその平均値を生成するためにそのデータを使用する。そして、それらは、強度データアイテムレジスタ24に保存のため送信される。
【0112】
計算手段25は、連続する強度データアイテムの間の比率を計算する。例えば、データアイテムがエネルギー帯域c1乃至c5に関連して、11乃至15として収集される場合、11/12、12/13、13/14、14/15といった割合を求める。このような割合の計算は、原理上、密度及び厚みといった、入射放射エネルギーに伴って変化しない変数を検討すべき事項から取り除くことが可能であり、このため、関数的にエネルギーと関連し、従って主要エネルギー依存変数、質量減衰係数の指標となり得る数値的指標を提供することが可能である。
【0113】
比較器26は、それによって形成されたデータをデータライブラリ27と比較する。データライブラリは、ある範囲の物質、及び特に特定のターゲット物質の質量減衰係数に関連する、または依存する、類似する性質、または少なくとも数値的に比較可能な性質に関する事前に保存されたデータを含んでよい。ライブラリには、手動、または自動でアドレス可能である。データは、最初から組み込まれていて、または参照されてもよく、または既知の物質に関する装置の操作によって徐々に生成、または追加されてよい。
【0114】
この比較によって、透過経路における、可能性のある物質の内容に関する推定を行うことができる。これは、例えば、画像表示29と関連して、表示手段30に表示されることが可能である。分離したその値に加えて、これは、検査されている物体の内容、または組成をより良く特徴付けるために、表示手段29に表示された画像と連結して使用されることが可能である。
【0115】
データ採取及び操作のプロセスは、図4のフローチャートによって示され、透過強度のスペクトル分解が本発明の数値識別プロセス、及び追加的な画像化目的の両方のために使用される好ましい実施形態を示す。初めから終末まで読み進むに従って、採取されたデータセットは、一連の画像帯域、及び図3で示される方法による数値分析のための一連の帯域の両方に分解される。
【0116】
透過強度データセットの画像帯域への分解は、比較的広い帯域ではあるがスペクトル全体に亘ってエネルギーによって分化された帯域に亘って透過X線の強度を共に示す一連の画像b1、b2、b3、b4、及びb5を生成する。このように、異なる組成の物体の間におけるある程度の識別が可能である。異なる組成の、特に異なる原子数の物質は、異なる応答を示す傾向がある。仮に、異なる画像b1乃至b5が、例えば連続して表示され、またはより好ましくは区別できるように着色され、単一の合成画像に同時に表示されると、スキャンから更なる物体の分析が可能である。このプロセスは、合理的に従来から行われている。
【0117】
本発明が特に異なる点は、透過強度データセットの帯域c1乃至c5への追加的な分解にある。実施形態において、これらの帯域は比較的狭いが、これは一例に過ぎない。原理上は、同じ帯域を両方の目的に使用できない理由はない。これらの帯域に関して分解されたレジスタ25の透過データは、強度比率、及びその結果のエネルギーに応じた強度の変化の数値的表示を形成するために前述のように処理され、且つコンパレータは、物質の内容に関する推定を可能にするために、同等の保存されたデータを参照する。これは、例えば、画像化帯域の分解から生成された複雑な画像との組み合わせによって、または追加情報の表示として画像と共に、または特注ディスプレイに表示され得る。
【0118】
一例としてセキュリティまたは類似の用途において、この装置は、例えば、爆発物、または他の危険物質、または禁止物質などの禁制物質の検知のために、用いられる。これらの物質の存在を警報するために適切なデータは、ライブラリに保存されてよい。この装置は、例えば表示装置30の一部として、比較器がターゲットとなる禁制物質が存在する可能性があると示唆したときに作動する視聴的、及び/または聴覚的な警報手段を含んでよい。
【0119】
本発明は、特に画像を表示しないモードで作動する場合、単一の放射線経路のみを必要とするが、図1の実施形態は、物体を通過する複数の放射線経路を示す。図5は、図1の実施形態によって設けられた複数の放射線経路を用いて生成された、提供された情報を更に強化することができる画像によって形成され得る追加の効果を示す。
【0120】
物体9が入射放射線経路5a乃至5c(図5(a)参照)を通過するときに、物対がX線源1に対して異なる方向を向いた3つの画像が生成される。これらの画像の連続する表示によって、物体は図5(b)に示すように、回転するように見える。
【0121】
3次元内で実質的に回転可能な物体の表示を作成する能力は、いくつかの点においてCTスキャニングに類似する。従来のCTスキャナにおいて、スキャナ及びスキャンされる物体との間の相対的な回転運動(通常、スキャナの軌道運動による)により、回転可能な画像が採取可能である。この実施形態において生成される複数の画像は、これらの特徴のいくつかを、装置によってもたらされる複数の放射線経路の結果として提供するが、より複雑でない構成として、例えば、セキュリティのスキャニングシステムにおいて通常使われているような、単純な直線コンベヤでも可能である。
【0122】
これは、追加的な画像機能を提供するだけのものでない。これは、更に物質識別機能を提供する。物体の既定の部分を通過する複数の透過経路は、有効通過厚みの変化を引き起こす。更に、これはCTスキャンによって生成される効果に類似する。そして、このようなデータの類似した処理は、本発明の基本的原理に従って、質量減衰係数を示すデータの導出により行われる推定を強化するため、または更に情報を与えるために使用可能である。
【0123】
このように、本発明によれば、分解されたエネルギー検出及びデータ処理とに基づいて特定の物質を特徴付けることが可能であり、また、画像、及び特に、異なる組成の異なる物体を区別することを容易にする通常のエネルギー分化を有する画像を生成することを選択することが可能である装置、及び方法が示される。この組み合わされたモードにおいて、本発明は、単一の装置において、一般的に預け荷物のスキャニングに用いられている(及び、典型的に画像化の適用が制限され、または画像化の適用のない)CTスキャナと類似する物質(例えば、爆発物)を検知する能力を、持込荷物のスキャニングに一般的に使用されるラインスキャンの強みを有する画像化能力と組み合わせることを提案する。これらの情報全ては、少なくとも3つの個別のエネルギー帯域に亘って透過強度の分光学的分解に影響する機能を有する特定の検出器の提供によって、主要な透過ビームから得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体から放射線相互作用データを取得する方法であって、
放射線源、及び放射線検出システムであって、該放射線検出システムは、前記放射線源との間にスキャニング領域を定義するように前記放射線源と離間するように配置され、更に前記放射線検出システムは、入射放射線に関する分光学的に分解可能な情報を検出及び採取できる、放射線源、及び放射線検出システムを提供するステップと、
前記検出システムに入射する放射線に関する1つ以上の強度情報のデータセット、及び前記スキャニング領域の物体の少なくとも1つのスキャニング位置における入射放射線との相互作用を、前記検出システムにおいて前記物体との相互作用の後に受信する放射線から採取するステップと、
それぞれの前記強度データセットを、前記放射線源のスペクトルの範囲内の少なくとも3つの周波数帯域に亘って、それぞれの周波数帯に対する強度データアイテムを生成するために分解するステップと、
既定の強度データセットにおける少なくとも2対の前記周波数帯域の前記強度データアイテムの間の数値的関係を、放射線相互作用に関連する特有の物理的物質特性と関数関係にある1つの数値的指標を得るために算出する数値的関係算出ステップと、
前記数値的指標を、前記強度データセットを生成する物体に近似する成分の指標を得るために、ある範囲における潜在的な成分の物質の特有の物理的物質特性を示すデータのライブラリと比較するステップと、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、前記スキャニング領域の物体の透過率に関する情報を得るために前記物体を透過した後の放射線を採取するステップを含む方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の方法であって、前記数値的関係算出ステップは、既定の強度データセットにおける少なくとも2対の前記周波数帯域の前記強度データアイテムの間の比率を算出するステップを含む方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法であって、前記特有の物質特性は、放射エネルギーによって関数的に変化する前記放射線源放射線との物質相互作用に関連する物質係数である方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記特有の物質特性は、質量減衰係数である方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法であって、特有の物理的物質特性と関数関係にある前記数値的指標は、前記強度データアイテムを、それに従って物質特性/係数が放射線エネルギーによって変化する関数的方法によって採取された放射線の強度を決定する強度関係にフィッティングすることにより得られる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記強度関係は、
I/I=exp[−(μ/p)pt]
の等式で表され、ここから得られる特有の物質特性である前記数値的指標は、前記質量減衰係数である方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法であって、前記検出器において採取された放射線入射に関する情報の前記データセットは、前記スキャニング領域の物体の画像を生成するために使用される方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法であって、物体を前記スキャニング領域に対して、及び前記スキャニング領域を通じて動かし、及びそれによって複数の連続するデータセットを採取する追加のステップを含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記複数の連続するデータセットは、物体が前記スキャニング領域に対して、及び前記スキャニング領域を通じて動く間に、対応する複数の連続する画像を生成するために使用される方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の方法であって、生成された画像を表示する追加のステップを含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、連続する画像が生成され、それぞれの該画像は前記放射線源のスペクトル内の複数の周波数帯域に亘り分光学的に分解され、エネルギー分化された一連の画像を生成するように割り振られる方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法であって、線形スキャン原理を用いる操作ステップは、
X線源、及びX線検出システムであって、該X線検出システムは、前記X線源との間にスキャニング領域を定義するように前記X線源と離間するように配置され、入射X線に関する分光学的に分解可能な情報を生成できる、少なくとも1つの線形検出器を備えるX線源、及びX線検出システムを提供するステップと、
物体を前記スキャニング領域に対して、及び前記スキャニング領域を通じて動かすステップと、
前記透過データの結果を分解するステップと、を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記放射線源は、カーテンビームを形成するために使用される方法。
【請求項15】
請求項13または14のいずれか1項に記載の方法であって、前記検出システムは、適切な角度で分離した、水平方向に離れて配置された連続する複数の線形検知システムを備え、データは放射線源と線形検出器の配列の間の複数の放射線経路から採取される方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記複数の放射線経路からのデータは、追加画像、及び/または物質成分情報を生成するために使用される方法。
【請求項17】
物体をスキャンし、該物体から放射線相互作用データを取得する装置であって、
それぞれの間にスキャニング領域を定義するようにそれぞれ離されて配置された放射線源及び放射線検出システムであって、使用時に前記スキャニング領域の少なくとも1つのスキャニング位置における物体との相互作用の後の前記検出器システムに対する入射放射線に関する情報のデータセットを採取する放射線源及び放射線検出システムと、
それぞれの前記データセットまたは画像を、前記放射線源のスペクトル内の少なくとも3つの周波数帯域に亘って、分光学的に処理、及び分解し、それぞれの帯域に対する強度データアイテムを生成するデータ処理装置と、
それぞれのデータセットに対する分解されたデータアイテムを保存する強度データアイテムレジスタと、
既定の強度データセットにおける少なくとも2対の前記周波数帯域及び例えばそれぞれの連続する前記周波数帯域に関する強度データアイテムの間の数値的関係を計算し、放射線相互作用に関連する物理的物質特性と関数関係にある1つの数値的指標を得る計算手段と、
前記数値的指標を保存する、更なるデータレジスタと、
ある範囲における潜在的な成分の物質の特有の物理的物質特性を示すデータのデータライブラリと、
前記数値的指標を、前記ライブラリのデータと比較して、そこから前記強度データセットを生成する前記スキャニング領域の物体である可能性の高い物質内容の指標を得る比較器と、を備えた装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、前記スキャニング領域の物体の透過率に関する情報を得るために前記物体を透過した後の放射線を採取するように適用された装置。
【請求項19】
請求項17または18のいずれか1項に記載の装置であって、液体サンプルとの相互作用の後の前記検出システムにおける放射線入射に関する強度情報を採取する間、前記液体サンプルを前記スキャニング領域に保持するサンプル保持手段を備えた装置。
【請求項20】
請求項17または18のいずれか1項に記載の装置であって、物体を前記スキャニング領域に対して、及び前記スキャニング領域を通じて移動させる物体ハンドラーを更に備えた装置。
【請求項21】
請求項17乃至20のいずれか1項に記載の装置であって、使用時に前記検出器と協働して前記スキャニング領域の物体の少なくとも1つの画像に関するデータを採取し、前記検出器システムの前記出力から少なくとも1つの画像を生成するように適用された画像生成装置を更に備えた装置。
【請求項22】
請求項17乃至21のいずれか1項に記載の装置であって、少なくとも1つの画像を表示するように適用された画像表示手段を更に含む装置。
【請求項23】
請求項17乃至22のいずれか1項に記載の装置であって、検出器は、X線スペクトルの異なる部分に対して直接異なる電気的反応を直接の物質特性として本質的に示すように選択された物質から形成されることによって、分光学的な分解を行うように適用されている装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置であって、前記検出器は、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)、テルル化マンガンカドミウム(CMT)、ゲルマニウム、臭化ランタン、及び臭化トリウムの中から選択される半導体材料を含む装置。
【請求項25】
請求項23または24のいずれか1項に記載の装置であって、前記検出器は、II−VI族半導体材料を含むバルク結晶の形態の材料を含む装置。
【請求項26】
請求項23乃至25のいずれか1項に記載の装置であって、前記検出器は、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)、テルル化マンガンカドミウム(CMT)の中から選択される半導体材料を含む装置。
【請求項27】
請求項17乃至26のいずれか1項に記載の装置であって、
線形スキャン原理を用いる操作を行うために、
X線源、及びX線検出システムであって、該X線検出システムは、前記X線源との間にスキャニング領域を定義するように前記X線源と離間するように配置され、入射X線に関する分光学的に分解可能な情報を生成できる、少なくとも1つの線形検出器を備えるX線源、及びX線検出システムを備えた装置。
【請求項28】
請求項27に記載の装置であって、前記放射線源は、カーテンビームを形成するために視準が合わせられている装置。
【請求項29】
請求項27または28のいずれか1項に記載の装置であって、前記検出システムは、強度データが使用時放射線源と線形検出器の配列の間の複数の放射線経路から採取されるように、適切な角度で分離した、水平方向に離れて配置された連続する複数の線形検知システムを備えた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2010−537163(P2010−537163A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520635(P2010−520635)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050710
【国際公開番号】WO2009/024817
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(507282783)ダーハム サイエンティフィック クリスタルズ リミテッド (23)
【氏名又は名称原語表記】DURHAM SCIENTIFIC CRYSTALS LIMITED
【住所又は居所原語表記】NetPark Incubator, Thomas Wright Way, Sedgefield, County Durham TS21 3FD (GB)
【Fターム(参考)】