説明

物質を光学的に分析するためのシステム

物質を光学的に分析するためのマイクロ流体分析システム(100、500)は、複数の選択可能な単一波長光源(225)を含む光源と、光源(225)に光学的に結合される物質提示部材と、物質提示部材に関連付けられる光学検出システムとを備える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物学的診断及び薬物発見における最近の傾向は、高速及び高い処理能力の化学的検出、化学的スクリーニング及び化合物合成を使用することが急速に増えていることを示唆している。いくつかのシステムは、大量のサンプルを必要とし、輸送するのが難しく、さらに法外に費用がかかる機器を利用する。薬物送達及び治療を促進すること、高額の医療費を抑えること、及びポイント・オブ・ケア診断のような分散的な生物学的診断、及び他の将来の技術を提供することに努力が注ぎ込まれている。そのような努力は多くの場合に、流体分析システムの小型化、集積化及び自動化を促進することに重点を置いている。
【0002】
従来、流体分析システムは、光源、波長選択システム、サンプル提示システム、及び患者の体液を分析するための検出システムを含む、多数の構成要素を使用する。しかしながら、これらの構成要素はそれぞれ、多くの場合に流体分析システム全体の費用を大幅に増加させることになるので、従来の流体分析システムを所有するのは大きな診療所及び研究所に限られる。
【発明の開示】
【0003】
1つの例示的な実施の形態によれば、物質を光学的に分析するためのシステムは、そこに結合される複数の選択可能な単一波長光源を含む光源と、光源に光学的に結合される物質提示部材と、物質提示部材に関連付けられる光学検出システムとを備える。
【0004】
さらに、別の例示的な実施の形態によれば、複数の選択可能な単一波長光源が結合されているカルーセル型光源を用いるための方法は、複数の選択可能な単一波長光源から所望の選択可能な単一波長光源を選択すること、所望の単一波長光源で分析物含有領域を照明すること、及び照明された分析物含有領域に関連付けられる波長を検出することを含む。
【0005】
添付の図面は、本発明の装置及び方法の種々の実施形態を例示しており、本明細書の一部である。例示される実施形態は、本発明の装置及び方法の例にすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0006】
図面全体を通して、同じ参照符号は、必ずしも全く同じではないが、類似の構成要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書は、ミリメートル又はマイクロリットルスケールの流体体積上で光学的な分析を達成するための1つの例示的なシステム及び方法を開示する。より具体的には、1つの例示的な実施形態によれば、発光ダイオード(LED)又はレーザのような多数の単一波長光源を有する多波長選択器構造が説明される。多数の光源を有する多波長選択器構造、及びその多波長選択器構造を組み込むことができる1つの例示的なシステムの数多くの詳細が以下に提供される。
【0008】
本発明のシステム及び方法の特定の実施形態が開示され、説明される前に、本明細書において開示される特定の過程及び材料に限定されず、或る程度まで変更することができることは理解されたい。また、本発明のシステム及び方法の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ定められることになるので、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためだけに用いられており、限定することは意図していないことも理解されたい。本発明の例示的なシステム及び方法を説明し、特許請求する際に、以下の用語が用いられることになる。
【0009】
単数形「1つの」及び「その」は、文脈において別に明示されない限り、複数の指示物を含む。したがって、たとえば、「1つの光源」に言及することは、1つ又は複数のそのような光源に言及することを含む。
【0010】
本明細書において用いられるときに、用語「光」は、赤外線から紫外線に及ぶ波長を有する任意の電磁放射として理解されることを意図している。
【0011】
さらに、本明細書において、さらには添付の特許請求の範囲において用いられるときに、用語「分析物」は、本発明の例示的なシステム及び方法によって分析を受けるために選択される任意の化合物又は物質を指すものとして広く解釈されるべきである。さらに、本明細書において用いられるときに、用語「分析物」は、分析物反応化学物質が元々特定されている分析物を含むか否かにかかわらず、本発明のシステム及び方法による分析を促進するように構成される任意の数の分析物反応化学物質を含むものとして広く解釈されるべきである。
【0012】
さらに、本明細書において、さらには添付の特許請求の範囲において用いられるときに、用語「単一波長光源」は、見掛け上、狭帯域の波長スペクトルを有する任意の数の光源を含むように広く解釈されるべきである。詳細には、本明細書において用いられるときに、単一波長光源は、技術的には多色であるが、分析物又は発色団吸収スペクトル又は発光スペクトルの点から見て、定量化可能な化学分析を提供するだけの十分に狭い帯域を有する任意の光源を含むべきである。見掛け上狭い発光ダイオード(LED)の波長スペクトルは、本明細書では、単一波長光源として解釈されることになる。
【0013】
以下の説明において、多数の光源を有する本発明の多波長選択器構造を完全に理解してもらうために、説明の目的で数多くの具体的な詳細が述べられる。しかしながら、これらの具体的な詳細を用いることなく、本発明の方法及び装置を実現できることは当業者には明らかであろう。本明細書において、「1つの実施形態」すなわち「ある実施形態」に言及することは、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の種々の箇所において「1つの実施形態において」という言い回しが現れても、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているとは限らない。
【0014】
[例示的なシステム]
1つの例示的な実施形態による、多数の単一波長光源を有する多波長選択器構造を組み込む流体分析システム100が、図1に示される。図1に示されるように、本発明の流体分析システム100は、光源及び波長選択システム110、サンプル提示システム120並びに信号検出システム130としての役割を果たすように構成される単一のユニットを含む。先に述べられたように、従来技術の流体分析システムは、キセノンストロボ又はタングステンランプのような別個の光源、フィルタ又はモノクロメータのような波長選択システム、約200マイクロリットル〜10,000マイクロリットルの分析物試験体積を収容する、ガラス製若しくはポリマー製のキュベット又はウエルプレートのような分析物サンプル提示システム、及び高額な光電子増倍管のようなサンプル検出システム等の、多数の複雑で、高額な構成要素を含む。1つの例示的な実施形態によれば、本発明の光源及び波長選択システムの組み合わせは実効的には、従来の流体分析システムに組み込まれる高額のフィルタ又はモノクロメータを不要にし、それにより、分析のための望ましい波長を効率的且つ巧みに提供しながら、本発明の流体分析システム100の総費用を削減する。本発明の流体分析システム100のさらに細かい部分は、図3から図8を参照しながら以下に提供される。
【0015】
図2aは、1つの例示的な実施形態による、流体分析システムの詳細な斜視図を示す。多数のシステム構成要素が図2aに示される。図示されるように、例示的な流体分析システム100は、複数の単一波長光源225が結合されている光発生カルーセル220を含む光及び波長選択システム110を備える。さらに、光発生カルーセル220に、サーボ機構210が動作可能に結合されることがある。さらに、1つの例示的な実施形態によれば、サーボ機構210にプロセッサ200が制御可能に結合されることがある。また、図2aの例示的な流体分析システム100には、周辺部にわたって複数のキュベットを有する生物流体クーポンのようなサンプル提示システム120により、分析物含有流体が、光及び波長選択システム110に提示されることがある。さらに、図2aに示されるように、分析物検出システム130は、増幅器240に、且つプロセッサ200に通信可能に結合される光センサ230を備えることがある。例示的な流体分析システム100のさらに細かい部分は以下に詳細に提供される。
【0016】
図2aに示されるように、光源及び波長選択システム110の組み合わせは、決して限定はしないが、プロセッサ200、サーボ機構210及び光発生カルーセル220を含む、多数の構成要素を備えることがある。図2aに示される1つの例示的な実施形態によれば、光発生カルーセル220は、その周辺部に結合される複数の単一波長光源(225)を有する、概ね円板状の支持部材を備えることができる。1つの例示的な実施形態によれば、複数の単一波長光源225を収容する円板状の支持部材は、決して限定はしないが、金属、ポリマー及び/又は複合材料を含む、任意の数の材料から形成することができる。
【0017】
例示される実施形態によれば、光発生カルーセル220は、所望の分析物を照明するように選択的に配置することができる任意の数の単一波長光源225を備えることができる。1つの例示的な実施形態によれば、単一波長光源(225)として、発光ダイオード(LED)及び/又はマイクロレーザを含む、任意の数の単一波長光源を用いることができるが、これに限定されることはない。LEDは極めて耐久性があり、数万時間の寿命を有する。選択的に配置される単一波長光源を用いることによって、サンプル提示システム120上にある所望の分析物含有領域に任意の数の所望の波長の照明を与えるように、光発生カルーセル220を設計できるようになる。
【0018】
1つの例示的な実施形態によれば、光発生カルーセル220は、350nm〜960nmの波長範囲で発光する個々のLEDのアレイを備えることができる。1つの例示的な実施形態によれば、先に述べられた波長範囲は、LEDのカルーセルで果たすことができる。結果として、従来の光源よりも低い費用で、大部分の一般的な分析物、標識された、及び標識されていない発色団が吸収特性又は発光特性を示す、可視スペクトルと、近UV及び近IRとを合わせた範囲を達成することができる。
【0019】
図2aに示される例示的な実施形態によれば、光発生カルーセル220は、サンプル提示システムとして概ね平行な平面内に、サンプル提示システム120に隣接して配置されることがある。図に示されるように、サンプル提示システム120及び光発生カルーセル220の回転軸は概ね平行であり、且つ、サンプル提示システム及び光発生カルーセル220の外側縁部がわずかに重なり合うようにオフセットされる。図に示されるように、単一波長光源225は、サンプル提示システム120上に配置されるように、選択的に回転することができる。結果として、光発生カルーセル220の単一波長光源225は、所望の波長の光を生成し、その後、その光は、マイクロ流体ディスクのようなサンプル提示システム120上に収容される分析物含有流体を通って、光センサ230上に達することができる。図2aに示される例示的な実施形態によれば、光発生カルーセル220は、LEDのような適当な単一波長光源225を所定の位置まで回転させる。これにより、対象となる分析物含有溶液の吸収特性又は発光特性に概ね一致する特性を有する波長の光が、マイクロ流体ディスク120に収容される分析物のサンプルの中を通過できるようになる。光発生カルーセル220を選択的に回転させる能力は、マイクロ流体ディスクのような単一のサンプル提示システム120上でその吸収スペクトル又は発光スペクトルを一致させるために異なる照明波長を必要とする数多くの分析物含有溶液を測定する能力を提供する。
【0020】
図2aの光発生カルーセル220は、その周辺部にわたって複数の単一波長光源225を配置された円板状の部材として示されるが、光発生カルーセル220は、任意の数の形状及び/又は構成であると仮定できる。図2bは、その周辺部にわたって複数の単一波長光源225を配置されている光発生カルーセルを含む、光発生カルーセル構成を示す。図2bに示されるように、光発生カルーセル220の軸は、多数の光源を有するサンプル提示システム120の軸と同心である。図に示されるように、多数の光源225とキュベットとは一対一に対応する。結果として、光発生カルーセル220及び/又はサンプル提示システム120のいずれかを回転させることによって、種々のキュベットを、種々の光源の組み合わせに迅速に露出することができる。
【0021】
さらに、図3a及び図3bは、2つの代わりの光発生カルーセル形状を示す。図3aに示されるように、光発生カルーセル300は、円板状の部材310を備えることができ、多数の単一波長光源225が、その外側周辺部上に配置されており、このことによって、単一波長光源が円板状の部材310から径方向に発光できるようになっている。この例示的な実施形態によれば、光発生カルーセル300は、図3aの矢印によって示されるように、円板の中心330にある軸において選択的に回転することができる。1つの例示的な構成によれば、光発生カルーセル300は、所望の分析物を含むマイクロ流体ディスクのようなサンプル提示システム120に対して垂直に向けることができる。この例示的な実施形態によれば、光発生カルーセル300は、選択的に回転して、分析用の所望の分析物含有領域に隣接して、所望の単一波長光源225を設けることができる。
【0022】
別法では、光発生部材は、図3bに示されるような非円板形状をと仮定することができる。この例示的な実施形態によれば、光発生部材350は、多角形の部材360を含むことがあり、その上に、概ね直線状のアレイとして多数の単一波長光源225が配置される。この例示的な実施形態によれば、多角形の光発生部材350は図3bの矢印によって示されるように、直線状に並進して、単一波長光源225を所望の分析物含有領域に隣接して選択的に配置することができる。1つの例示的な実施形態によれば、多角形光発生部材は、円板状のサンプル提示システム120の外側周辺部に対して接線方向に向けられることができる。別法では、多角形光発生部材350は、決して限定はしないが、多角形のサンプル提示システム120を含む、種々の形状のサンプル提示システム120に関連付けられることがある。
【0023】
再び図2aに戻ると、光及び波長選択システム110は、サンプル提示システム120に隣接して、単一波長光源225を選択的に配置するように構成されるサーボ機構210も備える。1つの例示的な実施形態によれば、サーボ機構210は、任意の数又は組み合わせのステッパ/サーボモータシステム、シャフトシステム、ベルトシステム、ギアシステム等を含むことがある。より具体的には、光及び波長選択システム110に組み込まれるサーボ機構210は、サンプル提示デバイス120に対応するように回転及び/又は並進することができる。光発生カルーセルと共にサーボ機構を用いることによって、試験の速度、精度及び機能性が提供される。
【0024】
図2aに示される、サーボ機構(210)に制御可能に結合されるプロセッサ(200)は、サンプル提示システムの分析物位置に対して、光発生カルーセル(220)の選択的な位置付けを制御するように構成することができる。1つの例示的な実施形態によれば、分析物に対応する所望の波長を生成するように構成される所望の光源(225)は、プロセッサ(200)によって提供されるプログラムを用いて特定することができる。その後、その特定された光源(225)は、サーボ命令に変換されることができ、その後、その命令はプロセッサ可読媒体(図示せず)に格納される。プロセッサ(200)によりアクセスされると、プロセッサ可読媒体に格納されている命令を使用して、サーボ機構(210)を制御することにより、光発生カルーセル(220)を選択的に位置付けることができる。図2aに示されるプロセッサ(200)として、マイクロコントローラ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、又は任意の他のプロセッサ収容デバイスを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0025】
図2aで続けると、1つの例示的なサンプル提示システム120が、周辺部にわたって複数のキュベットを有する生物流体クーポンの形で示される。図2aでは、例示的なサンプル提示システム120として、円板状の生物流体クーポンが示されるが、種々の幾何学的形状を有する任意の数のサンプル提示システムが、本発明の例示的な流体分析システム100に組み込まれることがある。具体的には、サンプル提示システムは、当該技術分野において知られているように、矩形、楕円形、円形、又は任意の他の幾何学的形状にすることができる。図2aに示される例示的な実施形態によれば、円板状の生物流体クーポンは、その周辺部にわたってキュベットを配置され、サンプル提示システム120としての役割を果たすように構成されており、回転する中央スピンドル上に配置される円形のディスクを含むことがあるか、又は別法では、サンプル提示システムは、1つ又は2つの軸に沿って直線的に動くことができる矩形クーポンを含むことができる。図2aに示される例示的な実施形態によれば、サンプル提示システム120は、その動きを制御するためのプロセッサ200に制御可能に結合されることがある。
【0026】
1つの例示的な実施形態によれば、サンプル提示システム120は、所望の分析物含有流体を収容するためのキュベットを備えることができる。この例示的な実施形態によれば、キュベットとして、ガラス製又はプラスチック製のバイアルを用いることができ、そのバイアルは、バイアルの内容物に関する吸光度を測定できるようにする平坦で滑らかな面を有する。1つの例示的な実施形態によれば、ディスクは、透明なポリメチルメタクリレートから作成することができる。バイアルの容積は様々であり、数十マイクロリットルの容積から、数マイクロリットル以下の小さな容積までを含むことができる。さらに、サンプル提示システム120は、流体を動かすための毛管又は空気チャネルを有する任意の数のマイクロ流体クーポンを含むことができる。さらに、サンプル提示システム120は、所望の分析物含有溶液と試薬との混合又は希釈を支援するように構成される任意の数の機構、チャネル、能動弁、受動弁、シリンジ及び/又はピペットを含むことがある。
【0027】
1つの例示的な実施形態によれば、サンプル提示システム120は、マイクロ流体チャネルを含む回転ディスクを備えることがあり、そのチャネルにおいて、慣性混合等によって、分析物に関連する化学反応が実行されることができる。さらに、周辺部に配置されるLED又は他の特定される光源225のアレイを含む逆回転光発生カルーセル220が、マイクロ流体ディスクの直ぐ上に、わずかに重なって配置されることがある。サンプル提示システムディスク120の周辺部には「キュベット」が配置されており、そこには、単離された分析物又は発色団含有溶液が配置されることがある。特定される「キュベット」の直ぐ上には、LED又は適当な波長の他の光源225があり、その光は、キュベットを通過して、分析物検出システム130上に達する。この例示的な実施形態によれば、光発生カルーセル220は、適当な光源225を所定の位置まで回転させる。これにより、対象となる分析物含有溶液の吸収特性又は発光特性に概ね一致する特性を有する波長の光が、マイクロ流体ディスク120に収容される分析物のサンプルの中を通過できるようになる。この光発生カルーセル220は、流体分析システム100に、単一のサンプル提示システム120上で、それらの吸収スペクトル又は発光スペクトルと一致するようにそれぞれが異なる波長を必要とする分析物の区画を測定する能力を与える。
【0028】
図2aで説明を続けると、信号検出システム130も本発明の流体分析システム100に関連付けられる。1つの例示的な実施形態によれば、信号検出システム130は、信号増幅器240に通信可能に結合される光センサ230を備えることができる。信号検出システム130は、サンプル提示システム120内の分析物又は分析物化学反応生成物の特性を検知するように構成される。
【0029】
1つの例示的な実施形態によれば、光センサ230として、分析物又は分析物化学反応生成物上に入射するか、又はその中を通過するか、又はそれによって反射されるか、又はそれから蛍光を発する光の特性を検知するように構成される任意の光センサを用いることができる。1つの例示的な実施形態では、光センサ230は、フォトダイオード、光電セル、又は電荷結合デバイス(CCD)を含むことがあるがこれらに限定されることはない。本明細書において用いられるときに、用語「電荷結合デバイス」又は「CCD」は、画像内の各ピクセル(画素)が電荷に変換され、その輝度がデバイスに入る光の量に関連付けられるようにして、画像のためのデータを格納し、表示する任意の感光集積回路を指すものと理解されることを意図している。CCD及びフォトダイオードのような入手可能な光センサ230の感度によって、容積がマイクロリットル程度の分析物、すなわち1ミリメートル範囲の経路長及び面積の分析物を分析できるようになる。
【0030】
さらに、1つの例示的な実施形態によれば、本発明の例示的な流体分析システム100にCCDデバイスを光センサ230として組み込むことによって、多数の分析物を同時に分析できるようになる。より具体的には、CCDは、受光した光を格納して表示するように構成され、このことによって、受光した光の各ピクセルが電荷に変換され、その輝度がデバイスに入る光の量に関連付けられる。結果として、比較的大きなCCDを複数のキュベットの下に配置して、多数の分析物に関連付けられる光を同時に受光することができる。CCD又は他の光センサ230は、キュベットと、レンズ、光ファイバ、ライトパイプ又は他の機構を用いてCCDに伝達される多数の分析物からの光とから離れて配置されることができる。
【0031】
述べられたように、光センサ230に達する光は、光源225から、サンプル提示システム120上に配置される分析物を通って、光センサ230に達する。任意の数のシステム構成を用いて、光源225からの光を光センサ230まで選択的に誘導することができる。1つの例示的な実施形態によれば、多数の単一波長光源225を含む光発生器カルーセル220が、単一波長光源を選択的に位置決めし、このことによって、付加的な光学構成要素を用いることなく、光が所望の分析物を通過して光センサ上に達することができる。
【0032】
別法では、図4に示されるように、光学構成(400)が、キュベット(430)内に含まれる分析物又は分析物誘発発色団(440)のような測定ゾーンにわたって直線的に配列される、LEDのような多数の単一波長光源(225)を含むことがある。各単一波長光源(225)がキュベット上に合焦し、信号が分析物を試験するための光検出器によって収集されるので、単一波長光源(225)は、特定の経路内に向けられることがある。図4に示されるように、単一波長光源(225)によって生成される単一波長光(450)は、ライトパイプ(410)を用いて、単一の放射ゾーンに向けることができる。1つの例示的な実施形態によれば、ライトパイプ(410)は、概ね反射性の内側表面を有する任意の数の中空の筒状体、又は高い度合いの全内部反射を有する光ファイバを含むことがある。さらに、図4に示されるように、例示的な光学構成(400)は、生成された単一波長光(450)を合焦するように構成される任意の数の合焦光学系(420)を含むことがある。単一波長光(450)が分析物に向けられると、その光は分析物の中を進行し、分析物、又は蛍光色素分子のような発色団を励起し、その結果として生成される光放射は、入射光及び迷光に対して所望の信号を最大にするために、到来する光に対して垂直方向で検出される。
【0033】
別法では、図6に示される1つの例示的な流体分析システム(500)は、単一波長光源(225)が、所望の分析物又は分析物誘発発色団(440)を含む複数のキュベット(430)上に配列されることがある。この例示的な実施形態によれば、種々のキュベット(430)の分析物又は発色団(440)の中を通過する信号は、その後、個々の光ファイバ(610)によって光検出器に誘導される。この例示的な実施形態によれば、個々の光源(225)は、所望の単一波長光源(225)と光センサ(230)との間で光が伝達されるように選択されることができる。
【0034】
光センサ(230)に単一波長光を誘導する方法に関係なく、光センサは、吸収又は発光、蛍光、化学発光及びそれらの組み合わせを含む、分析物又は分析物誘発発色団の任意の数の波長特性を検出するように構成することができるが、これらに限定されることはない。多くの場合に、繊細な蛍光及び化学発光を測定するために、到来する光に対して垂直に検出器を配置することが好ましい。この形態において用いられる検出器は、図4に示されるように、最適な信号品質のためにフィルタリングを必要とすることがある。例示的な流体分析システム(400)に組み込まれる光センサに関係なく、光センサ(230)による光の検出は、電荷に変換される。その後、光センサ(230)によって生成される弱い電荷は、図2a及び図2bに示されるように、プロセッサ(200)に伝送される前に、信号増幅器(130)に通されることがある。
【0035】
プロセッサによって受信されると、その後、その電気信号は、分析物反応化学物質の波長特性に関して分析することができる。図6に示される1つの例示的な実施形態によれば、所望の分析物反応化学物質の吸光度を、以下の式によって示されるようなベールの法則に従って求めることができる;
A=□bc (式1)
ただし、吸光度(A)は、モル減衰係数(□)に、吸収又は発光経路長(b)及び発色団濃度(c)を掛けた値に等しい。図6に示されるように、分析物又は分析物誘発発色団(440)の吸収又は発光経路長(600)は、キュベット(430)のサイズに基づいて知ることができる。さらに、1つの例示的な実施形態によれば、分析物又は分析物誘発発色団の減衰係数(□)は、ルックアップテーブルからプロセッサ(200;図2a)によって求めることができる。上記の特性が求められ、且つ/又は測定されると、分析物の濃度(c)を計算することができる。ここで、上記の例示的な流体分析システム(100)を動作させるための1つの例示的な方法が、以下にさらに詳細に説明される。
[例示的な動作]
図7は、1つの例示的な実施形態による、上記の流体分析システム(100)を使用するための例示的な方法を示す。図7に示されるように、本発明の例示的な方法は、最初に、光源及び波長選択システムに隣接して分析物サンプルを配設することによって開始される(ステップ700)。分析物サンプルは、任意の数の形態において、且つ任意の数の分析物提示デバイスを用いて、光源及び波長選択システム(110;図1)に隣接して配設されることができる。1つの例示的な実施形態によれば、分析物サンプルは、周辺部にわたってキュベットを形成されている生物流体クーポンを用いて、光源及び波長選択システムに隣接して配設されることができる。
【0036】
所望の分析物が、光源及び波長選択システムに隣接して配置されると(ステップ700)、所望の波長を選択することができる(ステップ710)。本発明の例示的な実施形態によれば、単一波長光源のための所望の波長は、少なくとも部分的には、試験されている分析物の分析物反応化学物質の予想される吸収スペクトル又は発光スペクトルに基づいて選択することができる。図8には、分析物(810)及び単一波長光源(820)の両方の特性を示す吸収スペクトル又は発光スペクトルが示される(800)。図8に示されるように、分析物の吸収スペクトル又は発光スペクトルは、少なくとも1つのピークを含む。同様に、LED発光スペクトル(820)は、その発光波長に関連付けられる1つのピークを示す。図8に示されるように、1つの特定の光源が、分析物の吸収スペクトル又は発光スペクトル内のピークに対応する発光ピークを示すことがある。
【0037】
図7の例示的な方法と共に続けると、所望の波長が特定された場合に(ステップ710)、その後、サンプル分析物又は分析物反応化学物質を、特定された波長を放射する単一波長光源によって照明することができる(ステップ720)。より詳細には、1つの例示的な実施形態によれば、プロセッサ(200;図2a)又はオペレータによって、所望の波長が特定されると、光発生カルーセル(220)が、サーボ機構(210)を介して、制御可能に操作され、配設された分析物に隣接して所望の単一波長光源(225)を配置することができる。その後、単一波長光源(225)が制御可能に照明されて、所望の光の波長を、配設された分析物の中に通すことができる。
【0038】
分析物又は分析物反応化学物質が照明されると、次に、その溶液の中を通る光を光検出器(230;図2a)によって光学的に検出することができ、それを用いて、照明データを生成することができる(ステップ730)。照明データが生成されると、そのデータは増幅され、分析のためにプロセッサに送信される(ステップ740)。先に述べられたように、生成された照明データは、先に詳細に説明されたように、ベールの法則による吸収又は発光を含む、任意の数の特性に関して分析することができるが、これに限定されることはない。
【0039】
要するに、本発明の例示的なシステム及び方法は、有用性及び速度を維持しながら、費用を削減する簡単で、頑強な光学分析システムを提供する。より具体的には、1つの例示的な実施形態によれば、本発明の多波長選択器構造は、発光ダイオード(LED)又はレーザのような単一波長光源を含み、その構造は、任意の数の構造的な構成を有し、小さなエリアに光を合焦又は誘導することができる。さらに、先に述べられたように、多数の単一波長光源を、CCD又はフォトダイオードのような光検出器と共に組み込むことによって、多数の分析物を同時に測定できるようになる。
【0040】
これまでの説明は、本発明の方法及び装置を例示し、説明するためだけに与えられてきた。排他的であること、又は本開示を開示される任意の厳密な形態に限定することは意図していない。上記の教示に鑑みて、数多くの変更及び変形が可能である。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】1つの例示的な実施形態による、流体分析システムの構成要素を例示する簡単なブロック図である。
【図2a】1つの例示的な実施形態による、流体分析システムの斜視図である。
【図2b】1つの例示的な実施形態による、流体分析システムの斜視図である。
【図3a】種々の例示的な実施形態による、光源及び波長選択システムの種々の構成の斜視図である。
【図3b】種々の例示的な実施形態による、光源及び波長選択システムの種々の構成の斜視図である。
【図4】1つの例示的な実施形態による、分析されているマイクロ流体クーポンの側面図である。
【図5】1つの例示的な実施形態による、光送達システム構成の側面図である。
【図6】1つの例示的な実施形態による、光送達システム構成の側面図である。
【図7】1つの例示的な実施形態による、流体分析システムで流体を分析するための方法を例示するフローチャートである。
【図8】1つの例示的な実施形態による、分析物の吸収スペクトル又は発光スペクトル、及び単一波長光源の対応する発光スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の選択可能な単一波長光源(225)を含む光源(225)と、
前記光源(225)に光学的に結合される物質提示部材と、
前記物質提示部材に関連付けられる光学検出システム(230)とを備えることを特徴とする物質を光学的に分析するためのシステム。
【請求項2】
前記複数の選択可能な単一波長光源(225)を含む前記光源(225)は円板状の部材(310)を有し、前記複数の選択可能な単一波長光源(225)は前記円板状の部材(310)の外側縁部に結合されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光学検出システム(230)は、前記物質提示部材の中を通過する光(450)を検出するように配置されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記光源(225)と前記物質提示部材との間に配置されるライトパイプ(410)をさらに備え、
前記ライトパイプ(410)は、前記単一波長光源(225)によって生成される前記光(450)を、前記物質提示部材上に誘導するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記単一波長光源(225)のアレイを含む前記光源(225)は多角形部材(360)を有し、前記単一波長光源(225)のアレイは前記多角形部材(360)上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
構造的な支持部材と、
前記構造的な支持部材に結合される複数の選択可能な単一波長光源(225)とを備えることを特徴とする物質を光学的に分析するための光源(225)。
【請求項7】
前記構造的な支持部材は、選択的に回転するように構成されることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
構造的な支持部材を形成することと、
前記構造的な支持部材に複数の選択可能な単一波長光源(225)を結合することと、
前記複数の選択可能な単一波長光源(225)をコントローラに電気的に結合することとを含むことを特徴とする物質を光学的に分析するための光源(225)を作成する方法。
【請求項9】
複数の選択可能な単一波長光源(225)から所望の単一波長光源(225)を選択することと、
前記所望の単一波長光源(225)で分析物(440)を照明することと、
前記照明された分析物に関連付けられる波長を検出することとを含むことを特徴とする複数の選択可能な単一波長光源(225)を含むカルーセル型光源(250、300、350)を使用する方法。
【請求項10】
前記複数の選択可能な単一波長光源(225)から所望の単一波長光源(225)を前記選択することは、少なくとも部分的には、前記分析物(440)の吸収特性又は発光特性に基づくことを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−505066(P2009−505066A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526032(P2008−526032)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/028671
【国際公開番号】WO2007/021461
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】