説明

物質流からCOを除去するための吸着体及びその除去方法

【課題】炭化水素流から一酸化炭素を除去する吸着体、吸着体の製造法および一酸化炭素の除去方法を提供する。
【解決手段】銅、亜鉛、及びアルミニウムオキシドから吸着体を構成し、吸着体の全量に対して、銅を、酸化銅(II)として10〜70質量%、亜鉛を酸化亜鉛として10〜70質量%、アルミニウムを酸化アルミニウムとして0.1〜50質量%含み、かつ、銅は金属銅と酸化銅の形で含まれ、金属銅の割合を銅全体に対して10〜40質量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質流からCOを除去するための吸着体(吸着組成物)及びその除去方法に関する。特に本発明は、炭化水素流から一酸化炭素を除去するための吸着体及びその除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の産業分野において、特に純粋な物質流を自由に使用できることは重要である。本文脈において、「純粋」とは、物質流の適切な使用において障害となる成分を、物質流に含まないことを意味する。一例として、有害な化合物を含んではならない呼吸用空気が挙げられる。同様に、例えば、電子部品の製造において、製造された部品の電気的特性を害する汚染物質が入り込まないように、純粋な物質流が必要になり、中でも、保護気体として特に純粋な窒素、又は特に純粋なアルゴンがしばしば必要になる。他の例としては、触媒化学反応である。触媒は、しばしば汚染に対して非常に敏感である。経済上の理由により、単位体積、又は単位質量の触媒あたりの、供給物質流を最大限にする試みが一般的になされているので、供給物質流の不純物が非常に少量であっても、この不純物が触媒に集積し、そして触媒の作用を阻害する。一般に、現代の触媒、例えば、メタロセン触媒の存在下でのオレフィン重合反応のために、オレフィン流は数ppb(10億当たりの部、すなわち所望する物質1部につき、不純物が10-9部)(「ポリマーグレード」オレフィン)しか不純物を含まないことが必要である。一般的なオレフィン発生源(水蒸気分解装置、流体触媒分解装置、脱水、MTO法(「メタノールからオレフィン」))から生ずるオレフィンは、通常、一酸化炭素又は酸素等の不純物を非常に高い割合で含有し(「化学グレード」)、これらの割合は、重合のための使用の前に、相応に低減されなければならない。
【0003】
典型的には、浄化すべき物質流は、空気、窒素又はアルゴン、又はエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン又はスチレン等の炭化水素である。通常除去すべき典型的な不純物は、酸素及び一酸化炭素、及びしばしば水、二酸化炭素、水素、あるいは、硫黄、ヒ素、アンチモンの化合物である。物質流からこのような不純物を除去する方法は公知である。
【0004】
最も知られている方法は、一酸化炭素を酸素含有気体流(例えば、呼吸用空気)から除去することである。これは通常、銅含有触媒の存在下に一酸化炭素と酸素との触媒反応によって達成される。この反応で最も使用される触媒はホプカライトであり、これはもともとは呼吸マスク中の呼吸用空気からCOを除去するために開発された、一酸化炭素と酸素との反応に非常に高い活性を示す銅とマンガンの混合酸化物であり、この触媒の存在下で非常に毒性のある一酸化炭素が酸素と反応し、二酸化炭素を形成する。
【0005】
しかしながら、ホプカライトの他の使用方法及び呼吸用空気以外の物質流を精製するための方法も公知である。例えば特許文献1は、アルキン、単不飽和又はポリ不飽和炭化水素、硫黄、アンチモン又はヒ素の化合物、酸素、水素及び一酸化炭素を、連続する2個又は3個の所定の触媒により物質流から除去するための方法、及び吸収処理工程が開示されている。特許文献2は、所定のゼオライト又は他の金属酸化物、特にホプカライトに接触させることにより、水素、一酸化炭素及び酸素を冷たい液体窒素から除去する方法を教示している。特許文献3は、金属酸化物、特にホプカライトと接触させることにより、酸素及び一酸化炭素を冷たい窒素又は冷たい希ガスから除去する同様の方法を開示している。しかしながら、採用された−40℃以下の低い温度では、触媒反応は起こらないか、又はわずかに起こるのみであり、脱着工程において冷間で酸素と一酸化炭素を除去する場合を除いて、酸素及び一酸化炭素はホプカライトに吸収され、高温度でのみ反応する。特許文献4は、ホプカライト等の金属酸化物を、特に5〜50℃で接触させることによって、酸素及び一酸化炭素を窒素又は希ガスから除去する方法について開示している。
【0006】
T.−J Huang及びD.−H Tasaiは、Catalysis Letters 87 (2003)173-178頁において、一酸化炭素の酸化における銅の酸化状態の影響について報告している。Cu2Oは全体としてCuOよりも活性であり、これは、Cu又はCuOと比較して、Cu2Oにおける酸素の高い運動性に起因する。
【0007】
特許文献5は、銅及び亜鉛を含有する、か焼後の(酸化)銅、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムを含む触媒の存在下で、70〜110℃の温度でエチレンからCOを酸化除去する方法について教示している。特許文献6はこのような触媒の存在下で無水マレイン酸の水素化方法を開示している。
【0008】
特許文献7は、水性ガスシフト反応によって一酸化炭素を除去する方法を開示し、特許文献8は、一酸化炭素、酸素及び水素を含む気体流中、特に燃料電池中のそれぞれの場合の、並びに、銅、白金族金属、及び、活性化したアルミニウム、二酸化ジルコニム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ゼオライト又はこれらの組み合わせの酸化性担体上に還元性金属酸化物を含む触媒の存在下でのそれぞれの場合における、一酸化炭素の選択的酸化方法について開示している。還元性金属酸化物は、Cr、V、Mo、Ce、Pr、Nd、Ti、Ni、Mn、Co及びこれらの組み合わせの酸化物の群から選択される。特許文献9は、酸化銅及び酸化アルミニウム、並びに酸化亜鉛、酸化クロム及び酸化マグネシウムによりなる群からの少なくとも1種の金属酸化物を含む触媒の存在下に、二酸化炭素及び水素を形成するため、蒸気と酸素を反応させることにより水素含有気体流から一酸化炭素を除去する方法について記述している。
【0009】
酸素存在下でこれらの反応により一酸化炭素を除去するこれらの方法において、二酸化炭素が形成される。その後の工程でこれが不活性であり得るか、又は障害となる不純物でさえあり得る。後者の場合、二酸化炭素は除去されるが、この除去のための種々の方法も公知である。例えば、特許文献10は、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素、水蒸気を不活性気体流から、−30〜+40℃、特に−30℃〜0℃において除去する方法を教示しているが、これは、一酸化炭素がホプカライト又は銅コバルト酸化物等の遷移金属酸化物において反応することにより二酸化炭素を生成し、後者は、酸化アルミニウム担体上の銅、又は酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素担体上のニッケルへの吸着によって除去される。
【0010】
しかしながら、ある場合、例えば、精製するべき物質流に、一酸化炭素が存在するが酸素、水が存在せず、又はこれらが化学量論的に不足している場合、一酸化炭素は、酸素又は水との反応以外の方法で除去しなければならない。ある場合、特に、二酸化炭素の形成に加え、他の障害となる種々の副生成物も形成され得る場合、酸素は一酸化炭素より前に除去しなければならない。例えば、銅を含有する触媒の存在下、プロピレン、ブテン、ブタジエン又はスチレン等の液体炭化水素からの、酸素と一酸化炭素の除去においては、炭化水素の酸化生成物(「酸化炭化水素」と称する)も形成され、酸化炭化水素自身が障害となる不純物となる。このような場合、一酸化炭素を除去する前に酸素を除去しなければならず、一酸化炭素は酸化によって除去することができない。
【0011】
このような場合、通常、一酸化炭素を蒸留によって除去するが、しかし、この方法では、COを除去して、残留するCO含有量をppbの範囲にまで低減することができない。しかしながら、物質流を精製するための吸着工程及び吸着剤もまた公知である。特許文献11は、100部のZnOに20〜60部のCuOを含む触媒、及び50〜100℃でエチレン及びプロピレン流からCOを除去するためのその触媒の使用方法を教示している。特許文献12は、担持Cu触媒(Cu2+として存在している銅が20〜95%)及び、約200℃以下、例えば特に約93℃においてエチレンまたはプロピレン流からCOを除去するためのその触媒の使用について教示している。特許文献13は、広い表面積を有する担体に銅化合物を含む吸着剤を開示しているが、オレフィンもまた吸着されるので窒素、希ガス及び飽和炭化水素を精製するためにのみ適している。特許文献14は、カーボンブラック、又は酸化アルミニウム、及び/又は酸化ケイ素等の、多孔性の吸着剤にオレフィン流を通すことによって、オレフィン流を精製する方法を教示している。特許文献15(CAS 要約 113:177506)は、酸化マンガン及び酸化銅を含む吸着組成物によって、一酸化炭素及び金属カルボニルを、半導体の製造において発生した廃ガスから除去する方法を教示している。特許文献16(CAS 要約 120:274461)は、一酸化炭素を除去するための吸着剤を開示しているが、この吸着剤は、担体にパラジウム及び更なる酸化物を含み、この酸化物は、元素周期表の11族、2族、及び12族(Be、Cd、Hg及びRaを除く)、13族(Al、Tl及びアクチニドを除く)、14族(C、Si、Pb及びHfを除く)、5族及び15族(N、P、As及び「Pa列」を除く)、6族及び16族(O、S、Se及びUを除く)、7族及び8族の酸化物から選択される。
【0012】
特許文献17は、一酸化炭素、そして、存在する場合、アルシンを、吸着剤に接触させることにより、液体炭化水素流から除去する方法を教示しており、吸着剤は、実施の形態に従えば、酸化状態が0、+1又は+2に分散した銅を含み、そして一定の場合には、二酸化マンガンをも含んでいる。特許文献18は、Cu、Fe、Ni、Co、Pt及びPdから選択される少なくとも1種の酸化物、及び、元素周期表の5,6又は7族のうち一つから選択される少なくとも1種の金属の酸化物に基づく触媒系と、0〜150℃で、α−オレフィン及び飽和炭化水素を接触させることにより、α−オレフィン及び飽和炭化水素から一酸化炭素を除去する方法を開示している。特許文献19は、圧力又は温度スイング吸着による高純度の一酸化炭素を得る方法について記述している。この吸着剤は、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムの核、及び銅化合物が担持される活性化炭素の外層を有する単体を含有する。
【0013】
特許文献20は、銅、亜鉛、ジルコニウム及び任意でアルミニウムを含有する吸着組成物、及び完全に還元した状態で物質流からCOを除去するためのその吸着組成物の使用方法を教示している。
【0014】
銅含有触媒は、不活性気体または炭化水素からCOを除去するため以外の用途でも知られている。特許文献21及び特許文献22は、脱硫化及び脱ヒ素のためのCu/Zn触媒について開示している。特許文献23は、炭素酸化物の水素化(例えばメタノールへ)のための、又は一酸化炭素と水の二酸化炭素と水素へのいわゆるシフト反応のための銅触媒について教示しており、この銅触媒は、分散した銅に加えて、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛等の安定剤をも含み、また任意に酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び/又は二酸化ケイ素等の担体、及びその活性化剤及び不動態化剤を含む。特許文献24は、笑気ガスの分解のための触媒について開示しており、この触媒は一般式MXAl24を有し、MはCu又はCu及びZn及び/又はMgの混合物であり、更なるドープ剤、特にZr及び/又はLaを含有してもよい。特許文献25は、遷移金属含有酸化物及び遷移金属含有ゼオライトを含む自動車の排ガスの精製触媒について教示しているが、この遷移金属はCu、Co、Ni、Cr、Fe、Mn、Ag、Zn、Ca及びこれらの混合可能混合物から選択され、好ましくは酸化物及びゼオライトにおいて同質であり、特に好ましくはCuであり、その酸化物はLa、Ti、Si、Zrの酸化物から選択され、好ましくはZrO2である。特許文献26は、NOX分解触媒について開示しており、この触媒は、銅及びMFIゼオライトに加えて、SiO2,AlO3,SiO2/Al23,MgO,ZrO2及びこれらの同等物、さらに更なる所望の元素(遷移元素Pt、Rh、Cr、Co、Y、Zr、V、Mn、Fe及びZn等)、さらにGa、In、Sn、Pb、P、Sb、Mg及びBa、好ましくはP、を含むことができる。特許文献27は、NOxの分解のための一般式AX(1-X)24で表されるスピネルモノリス触媒を教示しており、式中AはCuであり、この半分がCo、Fe、Ni、Mn又はCrで置き換わってよく、Bは、Zn、Mg、Ca、Zr、Ce、Sn、Ti、V、Mo及びWから選択される少なくとも1種の元素であり、EはAlであり、この半分がFe、Cr、Ga、La又はこれらの混合物で置き換わってよい。特許文献28は、Cu、Zn、Al並びに希土類元素及びジルコニウムで形成された群からの少なくとも1種の元素を含む触媒の製造方法、更にメタノールの合成のためのその使用について教示している。特許文献29で開示されているメタノール触媒は、Cu、Zn、及び少なくとも1種のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、貴金属及び/又は希土類元素を、部分的にZrに置き換わってよいZnと共に、含む。特許文献30は、Cu、Zn、及びAl、Zr、Mg、希土類元素及び/又はこれらの混合物の化合物を少なくとも1種含む触媒、並びに、カルボン酸エステルの水素化のためのその触媒の使用について教示している。特許文献31は、Cu、Al、及びMg、Zn、Ti、Zr、Sn、Ni、Co及びこれらの混合物からなる群から選択される金属を含む触媒の存在下に、カルボン酸エステルを水素化するための方法を同様に教示している。特許文献32は、か焼による層状構造を有し、式(Cu+Zn)6Alxy(CO3(x+y)/2OH12+2(x+y)nH2Oの前駆体から生成されるCOシフト触媒について記述している。ここでRはLa、Ce又はZrであり、xは少なくとも1、多くて4であり、yは少なくとも0.01、多くて1.5であり、nは約4である。
【0015】
銅含有触媒を含む輸送触媒(transport catalysts)を活性化、再活性化又は不動態化する方法もまた公知である。特許公報33は、銅を含有することができるモリブデン酸鉄酸化還元触媒を活性化又は再活性化する方法に関し、この触媒は、初めに非酸化性空気中でか焼され、次に酸化気体と接触させる。特許文献34は、初めに酸化処理を行い、次に還元処理(この還元は好ましくは初めに水素化反応機で行われる)を行うことによって銅含有水素化触媒気体を再生する方法について教示している。特許文献35は、還元状態で使用され、銅の部分的酸化によって輸送のために不動態化される銅含有の水素化又は脱水素化触媒について開示している。特許文献36は、銅含有シフト触媒又はメタノール触媒について記述しており、これらは、250℃以下における還元を介し、銅に対して少なくとも70m2/gのCu表面積を有する。このような活性化、再生化、不動態化は、他の触媒で知られており、例えば特許文献37(WPI-Abstract No.WP198013664C)は、メタノールによる還元、酸素による酸化、また酢酸及び酸素による酸化、その後の水素による還元によってパラジウムを基礎とする触媒を活性化する方法を開示している。特許文献38は、炭化水素の処理によるコバルト含有触媒の活性化方法について記述している。
【0016】
ファイル番号06101648.1と06101654.9の欧州特許出願は、様々な還元状態における、銅、亜鉛及びジルコニウムを含む吸着組成物、及び物質流から一酸化炭素を除去するためのこの組成物の使用について記述している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO98/041597A1
【特許文献2】EP662595A1
【特許文献3】EP750933A1
【特許文献4】EP820960A1
【特許文献5】WO02/094435A1
【特許文献6】WO02/47818A1
【特許文献7】WO02/026619A2
【特許文献8】WO03/051493A2
【特許文献9】US6238640B1
【特許文献10】CA2045060A1
【特許文献11】DE1929977
【特許文献12】US3676516
【特許文献13】US4917711
【特許文献14】WO01/077383A1
【特許文献15】JP02144125A2
【特許文献16】JP05337363A2
【特許文献17】WO95/021146A1
【特許文献18】EP537628A1
【特許文献19】US4713090
【特許文献20】WO2004/022223A2
【特許文献21】US4593148
【特許文献22】US4871710
【特許文献23】WO95/023644A1
【特許文献24】DE19848595A1
【特許文献25】US5328672
【特許文献26】EP804959A1
【特許文献27】DE19950325A1
【特許文献28】US4552861
【特許文献29】US4780481
【特許文献30】WO96/014280A1
【特許文献31】EP434062A1
【特許文献32】US4835132
【特許文献33】DD0153761
【特許文献34】DE19963441A1
【特許文献35】WO02/068119A1
【特許文献36】EP296734A1
【特許文献37】JP55/003856A
【特許文献38】WO03/002252A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、ある用途の分野のため、物質流の純粋性の要求の増加は、新しく改善された補助剤及び不純物の除去方法を必要とする。問題は特に、炭化水素から、そして特にプロペン、1−又は2−ブテン等の液状で通常存在する炭化水素から一酸化炭素を除去することである。本発明の目的は、従って、物質流から一酸化炭素を吸着によって除去するための改良された吸着媒体及び改良された方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、銅、亜鉛及びアルミニウムの酸化物を含む吸着体(吸着組成物)は、金属銅及び酸化銅の合計に対する金属銅の質量割合(CuOとして計算される)として表される還元度が、多くても60%である銅の含有割合が見出された。加えて、方法は、吸着体として本発明の吸着体を使用することを含む物質流からの一酸化炭素の除去のために見出されたが、もう一つの方法として、一酸化炭素と酸素との反応の触媒として、又は一酸化炭素の反応相手(reaction partner)として、これらを使用することも含む。特に方法は、一酸化炭素含有物質流を吸着体と接触させることを含む吸着によって物質流から一酸化炭素を除去するために見出された。この吸着体は、銅、亜鉛及びアルミニウムの酸化物を含み、金属銅及び酸化銅(CuOとして計算される)の合計に対する金属銅の質量割合として表される還元度が多くても60%である銅含有割合を有する。
【0020】
本発明の吸着体は、物質流を精製するための過程における使用に、特にプロピレン等の液体炭化水素から一酸化炭素(CO)を除去に、非常に適している。本発明の吸着体の特に有利な点は、非常に高い吸着能力である。従って、吸着剤単位を繰り返し必要とせずに、低量の及び一定のCO含有量を有するCO物質流からの除去に特に非常に適している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
還元度は、本発明の吸着体中に存在する銅の酸化物含有量の基準である。還元度は、金属銅の質量割合、すなわち、金属銅と酸化銅(CuOとして計算される)(すなわち酸化状態+2の銅)の合計に対する酸化状態0(Cu0)の銅の質量割合として決定される(還元度[%]=Cu0の質量・100/(Cu0(Cu0の質量+CuOの質量))。純粋金属銅は100%の還元度を有する。純粋CuOは0%の還元度である。しかしながら定義した還元度は、本発明の吸着体が金属銅又はCuOを含むことを必ずしも意味するものではない。定義した還元度により、金属銅、Cu2O又はCuOの割合に一致する任意の可能な組み合わせが可能となる。すなわち、酸化状態+1における銅は、形式的には、CuとCuOの等モル混合物であり、それゆえ44.4%の還元度を有する。還元度は、様々な酸化状態における銅を定量的に決定することができる。しかしながら、特に簡易な方法は、少なくとも250℃、高くても500℃において吸着体と空気とを接触させ、少なくとも10分、多くても12時間後に通常は達するべき一定量にすることによって、吸着体の試料の中の銅を完全に酸化することである。この試料の還元度は、追加量が専ら酸素のみであるとの仮定下における試料の増加量から計算される。また、
2Cu+O2→2CuO
という酸化の化学量論を仮定する。
【0022】
本発明の吸着体の還元度は有限である。すなわち0とは異なる。典型的には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、特に好ましい形態は少なくとも10%、さらに通常多くても60%、好ましくは多くても50%、特に好ましい形態では多くても40%である。還元度の適切な例は、15%、20%、25%、30%、又は35%であり、中間値は同様に適切である。
【0023】
本発明の吸着体は、本発明の吸着方法において、吸着によって作用する。吸着は、吸着体(吸着剤)表面への吸着質(adsorbate)の付加(蓄積)であり、この付加(蓄積)は通常、脱着によって逆反応が可能である。吸着質は、また、吸着剤の上で化学的に反応することができ、そして、この処理において、この吸着剤が実質的に化学的な変化がないままであれば、これは、触媒作用と称され(例:二酸化炭素を形成するために金属銅触媒の存在下でCOと酸素を反応させる公知の方法)、そして、吸着質が吸着剤と化学的に反応するならば、これは、吸収(absorption)と称される(例:金属銅を気体流に接触させ、酸化銅(I)及び/又は酸化銅(II)を形成させることにより、気体流から酸素を除去する公知の方法、又は、酸化銅(I)及び/又は酸化銅(I)と接触させ、二酸化炭素及び金属銅を形成させることにより、気体流から一酸化炭素を除去するための公知の方法)。純粋な吸着の場合、また触媒作用の場合、吸着質またはその反応生成物は、脱着によって表面から再度除去されるが、吸収の場合、通常、吸収剤を化学的に再生することが必要になる。触媒作用の場合も吸収の場合も、開始工程はいずれも吸着であり、そして、吸着精製工程が、最終的に(例えば、吸着体の再生において)触媒工程になるのか又は吸収工程になるのか、又は純粋な吸着する工程が存在するのかは、各場合に依存する。本発明の文脈において、「吸着性」とは、精製するべき物質流からCOを除去する間、一酸化炭素の反応生成物が物質流に放出されず、そして、使用した吸着体が実質的に化学的に変化せずに保持されるか、すなわち、その組成物が変化しないか又は僅かしか変化しないことを意味する。これに対し、本発明に従う吸着剤の再生の間、一酸化炭素、又はこの反応生成物が放出されるか否かは、すなわち、触媒反応が起こるか否かは、本発明にとって重要なことではない。
【0024】
吸着体及び吸収組成物は、特定の使用における実際の触媒的な作用をせずに、しばしば大まかに「触媒」とも称される。
【0025】
本発明の吸着体は、銅、亜鉛及びアルミニウムの酸化物を含む。銅は、部分的に金属銅としても存在し得るし、そうでなければ酸化銅(I)及び酸化銅(II)として存在する。純粋な状態では、本発明の吸着体は通常、CuOとして計算して、それぞれ吸着体の全量に対して、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、特に好ましい方法では少なくとも質量30%、さらに通常は多くても質量70%、好ましくは多くても60質量%、特に好ましい方法では多くても50質量%の酸化銅CuOに相当する量の銅を含む。本発明の吸着体は、純粋な状態で通常は、酸化亜鉛(ZnO)を、それぞれ吸着体の全量に対して、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、特に好ましい方法では少なくとも30%、さらに通常は多くても70質量%、好ましくは多くても60質量%、特に好ましい方法では多くても50質量%の量で含む。純粋な状態に加えて、通常は、酸化アルミニウム(Al23)を、吸着体の全量に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも5質量%、特に好ましい方法では少なくとも10質量%、さらに通常は多くても50質量%、好ましくは多くても40質量%、特に好ましい方法では多くても30質量%の量で含む。本発明の文脈における「純粋な状態」とは(酸化)銅、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの割合は別として、また、例えば製造から持ち込しされた重要でない成分(例えば、出発物質及び試薬の過剰量、成形助剤及びそのような物質)は別として、更なる成分が存在しないことを意味する。従って、「純粋な状態」とは吸着体が実質的に前記化合物をからなることを意味する。
【0026】
吸着体の成分の百分率量は、常に合計で100質量%である。
【0027】
非常によく適している吸着体は、純粋物で、例えば約40質量%のCuO、約40質量%のZnO及び約20質量%のZrO2を含有し、これらの割合は合計して100質量%となる。
【0028】
吸着体の成分は、可能性のある混合酸化物の状態で存在することができる。本発明の吸着体は、個々の場合に必要であれば、更なる成分を含有することができるが、これは通常好ましくない。特に本発明の吸着体及び本発明の処理で使用される吸着体は、好ましい状態では、不可避の不純物は除いて、二酸化ジルコニウムを含まない。特に好ましい状態では吸着体には二酸化ジルコニウムが存在しない。
【0029】
本発明の吸着体は純粋な状態で存在することができるが、それは必ずしも必要ではない。吸着体を助剤と混合することができ、又は不活性担体に使用することもできる。適当な不活性担体は、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニム、アルミノケイ酸塩、土、ゼオライト、珪藻土等の公知の触媒担体である。
【0030】
本発明の組成物は、ちょうど公知の酸化触媒のように製造される。本発明の吸着体の便利で好ましい製造方法は、以下の処理工程、
a)吸着体の成分の及び/又はこれらの出発化合物の溶液又は懸濁液を製造する工程、
b)塩基を添加することにより、この溶液から固体を沈澱させ、任意にこの沈澱物生成物を吸着体及び/又はその出発化合物の更なる成分と混合する工程、
c)得られた固体を分離及び乾燥する工程、
d)この固体をか焼する工程、
e)固体を成形して成形体を得る工程、
f)この成形体を更にか焼する工程、
を記載した順序で含み、及び
g)吸着体の銅含有部分の還元度(但し、該還元度は、金属銅と酸化銅との合計に対する金属銅の質量割合を、CuOとして計算して表される)を、60%以下の値に設定する工程、
を、工程f)の後又は同時に行うことを特徴とする。
【0031】
初めの処理工程、工程a)では、吸着体の成分の溶液が慣用の方法で、例えば硝酸などの酸中での溶解によって製造される。任意に、吸着体の成分の代わりに、これらの出発成分もまた使用される。例えば、水溶液中で溶解される金属の硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩であり、これらは酸性とすることもできる。例えば硝酸溶液である。この溶液中の塩の量比は、吸着体の所望の最終的な組成物に従って、化学量論的に計算され設定される。不溶性状態で成分を添加することも同様に可能である。例えば、良好に分離する粒子として酸化アルミニウムである。従って、ある成分が溶解し他の成分が懸濁する懸濁液を生成し、使用することも可能である。
【0032】
この溶液から、工程b)において、吸着体の前駆体として固体が沈殿する。これは、慣用の方法で進行し、塩基の添加、例えば、水酸化ナトリウム溶液又は炭酸ナトリウム溶液を加えることによって、溶液のpHを上げることが好ましい。
【0033】
結果として生じた固体の沈殿生成物は、工程c)の乾燥の前に、通常は、例えば、ろ過又はデカントにより上澄液から分離し、そして硝酸ナトリウム等の溶解性成分を水で洗い流す。この方法で吸着体のある成分のみ又はこれらの前駆体を沈澱させることができ、また固体沈澱生成物と、例えば更なる不溶性成分、例えば酸化アルミニウムとを混合することができる。原則として乾燥粉末を混合させることによってこれを行うことができるが、混合は、沈澱生成物を分離及び乾燥させる前に、懸濁液として行われるのが好ましい。
【0034】
沈澱生成物(適切な場合には更なる不溶性成分と混合して)は通常、更なる行程の前に、慣用の乾燥方法を用いて乾燥される。一般的に、わずかに高くした温度(例えば約80℃、好ましくは少なくとも100℃、特に好ましい方法では少なくとも120℃)での処理は、10〜12時間、好ましくは20分〜6時間、特に好ましい方法では30分〜2時間にわたって行われれば十分である。沈殿生成物を、直接的に(吸着体の所定のアルカリ金属成分、例えばナトリウム成分は、通常は障害とならない)、又はスプレー乾燥による洗浄後に、更なる加工に適する乾燥粉末に転化することが可能であり、そして特に便利である。
【0035】
乾燥に続いて、沈澱及び乾燥させた吸着体の中間生成物は任意にか焼工程d)を受ける。か焼温度はこの場合、通常少なくとも350℃、好ましくは少なくとも400℃、特に好ましい方法では少なくとも450℃であり、さらに通常は高くても650℃、好ましくは高くても600℃、特に好ましい方法では高くても550℃である。か焼の間の極めて適切な温度の範囲は、470〜530℃、すなわち500±30℃である。か焼時間は、通常少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、特に好ましい方法では少なくとも20分であり、さらに通常は多くても6時間、好ましくは多くても2時間、特に好ましい方法では多くても1時間である。か焼工程における滞留時間の極めて適切な範囲の例は、20〜30分である。乾燥工程c)及びか焼工程d)は互いに重複させることができる。
【0036】
乾燥工程c)又はか焼工程d)の後、吸着体又はこの前駆体は、成形工程e)において、ロッド押出、錠剤化又はペレット化等の慣用の成形処理を使用して、押出されたロッド又は押出物、錠剤、又は球状のペレットを含むペレット等の成形体に処理される。
【0037】
成形工程の後、吸着体(すなわち、より正確にはその前駆体)はか焼工程f)を受ける。か焼温度はこの場合、通常少なくとも300℃、好ましくは少なくとも350℃、特に好ましい方法では少なくとも400℃、特に少なくとも450℃であり、さらに通常高くても700℃、好ましくは高くても650℃、特に好ましい方法では高くても600℃、特に高くても580℃である。か焼工程の間の極めて適切な温度の範囲は、490〜550℃、特に500〜540℃である。か焼時間は通常少なくとも30分、好ましくは少なくとも60分であり、更に通常は多くても10時間、好ましくは多くても3時間、特に好ましい方法では多くても2時間、特に多くても90分である。特に好ましい実施の形体では、温度は、述べた範囲内でか焼時間を通してゆっくり上昇させる。
【0038】
か焼工程の間、吸着体前駆体は実際の吸着体へと転化する。とりわけ常として、吸着体のBET表面積及び細孔容積を調整するが、公知のように、か焼時間及びか焼温度が増加すると、BET表面積及び細孔容積は減少する。
【0039】
好ましくはか焼は、少なくとも吸着体の炭酸塩含有量(CO32-として計算される)が、か焼生成物の全質量に対して多くても10質量%になるまで全体的に続けられる。またそのBET表面積は少なくとも10m2/g、好ましくは30m2/g、特に好ましい状態は少なくとも40m2/g、特に少なくとも50m2/gであり、さらに通常は多くても100m2/g、好ましくは多くても90m2/g、特に好ましい状態では多くても80m2/g、特に多くても75m2/gである。吸着体の細孔容積は、水を取り込んで測定され、少なくとも0.05ml/gに、か焼において調整される。これらの値は、本発明に従う吸着体にとって好ましい。
【0040】
本発明の吸着体は、上述したように、担体に析出させることもできる。これは慣用の含浸方法又は析出沈澱によって行われる。公知のように析出沈殿は担体前駆体の担体の存在下における沈殿方法である。析出沈澱を行うために、好ましくは上述した沈殿方法で、担体又は担体前駆体が工程a)で製造された溶液に添加される。担体が既に予め成形された完成した成形体の状態で存在していれば、純粋な含浸処理が成形工程e)から省略されるが、そうでなければ担体は、沈澱、乾燥、か焼及び成形によって吸着体の中間体の処理中に形成される。
【0041】
吸着体の製造において、公知の助剤を当然に使用することができる。例えば、か焼中に分解する細孔形成剤又は錠剤化補助剤である。
【0042】
還元度は、か焼(特に大気中で不完全に酸化した銅のか焼)中に対応する処理条件を設定することによって調整することができるし、又は、か焼後に別々の処理工程で調整することもできるが、後者の場合、還元度はか焼後すぐに調整することを必ずしも必要とするものではない。還元度は、銅の酸化度の変化に適している公知の方法を使用して調整される。銅が主に還元状態で存在している場合は酸素と反応する。銅が主に酸化銅として存在している場合は水素と反応する。
【0043】
通常、か焼は空気下で行われ、それゆえ、か焼の後に得られた本発明の吸着体の前駆体において銅はCuOの状態で存在する。還元度は、銅を還元によって所望の還元度に調整される。これは還元剤と共にか焼後に存在する前駆体の処理によって行われる。任意に公知の還元剤が、銅を還元することができるものとして使用することができる。採用される正確な反応条件は、前駆体及びその組成物に依存し、また使用される還元剤に依存する。また数回の所定の実験において容易に決定することができる。好ましい方法は、前駆体を水素で処理することであり、通常は、水素含有気体、好ましくは水素/窒素混合物を、高い温度で通らせることによって行われる。
【0044】
初めに、本発明の吸着体の前駆体を完全に還元させること、その次に、所望の減少度にそれを酸化することは同様に可能である。吸着体の前駆体の完全な還元は、吸着体に存在する銅の銅金属への還元を介して行う。これは原則として、銅を酸化状態I又はIIから酸化状態0に還元することができる任意の還元剤によって行うことができる。これは、液体の又は溶解した還元剤を使用して行うことができ、この場合、乾燥は還元の後に行わなければならない。従って、気体の還元剤を使用した還元が非常に便利であり、特に、水素含有気体を前駆体に通らせることによって水素を使用する還元が便利である。この場合に採用すべき温度は通常、少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、特に好ましい方法では少なくとも120℃であり、さらに通常は高くても180℃に達し、好ましくは高くても160℃、特に好ましい方法では高くても140℃である。適切な温度は例えば約130℃である。還元は発熱である。再循環される還元剤の量は、選択される温度ウィンドウが離れないような方法で設定しなければならない。活性化の過程は、吸着媒体の床において測定される温度を基準としてたどることができる(「温度プログラム還元、TPR」)。
【0045】
吸着体の前駆体を還元するための好ましい方法は、次に、窒素流の下に乾燥を行うこと、所望の還元温度に設定すること、そして少量の水素を窒素流に混合することである。適当な気体混合物は、初めは、例えば、窒素中の水素が少なくとも0.1体積%、好ましくは少なくとも0.5体積%、特に好ましい方法では少なくとも1体積%であり、さらに多くても10体積%、好ましくは多くても8体積%、特に好ましい方法では多くても5体積%である。適切な値は例えば2体積%である。所望の温度ウィンドウを達成し、維持するために、初期の濃度は維持されるか又は上げられる。還元剤のレベルが一定であるか上昇するかにかかわらず、組成物の床における温度が低下するときに還元は完結する。典型的な還元時間は通常、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも10時間、特に好ましい方法では少なくとも15時間であり、通常は多くても100時間、好ましくは多くても50時間、特に好ましい方法では多くても30時間である。
【0046】
吸着体の前駆体を乾燥させ、必要な場合には前駆体を、通常は少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃、特に好ましい方法では少なくとも180℃、さらに通常は高くても300℃、好ましくは高くても250℃、特に好ましい方法では高くても220℃で、加熱させることによって乾燥させる。適切な乾燥温度は、例えば約200℃である。障害となる残りの付着水分がもはや存在しなくなるまで前駆体は乾燥温度で維持される。乾燥時間は通常、少なくとも10分、好ましくは少なくとも30分、特に好ましい方法では少なくとも1時間、しかし通常は100時間以下、好ましくは10時間以下、特に好ましい方法では多くて4時間である。好ましくは、乾燥は、床から水分が運び出さるために気体流内で行われる。このため、例えば、乾燥空気を使用することができるが、不活性気体を床に通らせること特に好ましく、ここでの適当な気体は特に窒素又はアルゴンである。
【0047】
完全に還元が終わった後、還元度は、吸着体の前駆体の酸化によって所望の値に設定される。これは銅を酸化することができる公知の酸化剤によって行うことができる。比較的便利に、酸素はこのために使用される。特に空気又は酸素/窒素又は空気/窒素混合物である(希薄空気(lean air))。吸着体の前駆体の酸化のための好ましい方法は、還元の後、水素の供給を停止すること、窒素を使用して反応器から存在する残りの水素をなくすこと、次に所望の酸化温度に設定すること、及び、窒素流に少量の酸素を混合することである。温度、気体の全量、酸素含有量及び処理時間は、還元度を決定することによって繰り返された実験によって個々の場合に最適化しなければならない。典型的な適切な気体混合物は、例えば、窒素中に酸素を少なくとも0.2体積%、好ましくは0.3体積%、特に好ましい方法では少なくとも0.4体積%、さらに多くても1.0体積%、好ましくは多くても0.9体積%、特に好ましい方法では多くても0.8体積%含む。適切な値は例えば0.6体積%である。典型的な酸化時間は通常、少なくとも15分、好ましくは少なくとも30分、特に好ましい方法では少なくとも45分、さらに通常多くても2時間、好ましくは多くても90分、特に好ましい方法では多くても75分である。例えば酸化は1時間を通して行われる。採用される気体の量は、典型的には通常は、吸着体の前駆体のリットル及び時間当たり、少なくとも1500Nlの気体(Nl=基準リットル、すなわち0℃及び大気圧に基づく)、好ましくは少なくとも2000Nl/l・h、特に好ましい方法では少なくとも2300Nl/l・h、さらに通常は多くても4000Nl/l・h、好ましい状態では多くても3500Nl/l・h、特に好ましい状態では多くても3200Nl/l・hである。温度の設定は、通常は少なくとも0℃、好ましくは少なくとも10℃、特に好ましい状態では少なくとも20℃とし、さらに通常は高くても60℃、好ましくは高くても50℃、特に好ましい状態では多くても40℃とする。例えば室温が極めて適当である。
【0048】
形成された吸着体は、使用するために、通常「吸着器(adsorber)」と称され、時には「反応器」とも称される容器に充填され、吸着体は精製するべき物質流と接触する。
【0049】
完成した吸着体は、付着した水分の痕跡(trace)を除去するために、また、吸着能力を増加させるために、COの吸着のための使用の前に乾燥させることが好ましい(適切な場合には重ねて)。完成した吸着体は、上述したその前駆体の乾燥方法によって乾燥される。
【0050】
好都合なことに、吸着体が吸着器の中に詰められた場合に、いつでも使用可能な活性化した吸着体を、空気及び水分から保護するために、高い費用が必要となるので、還元度の設定及び乾燥は吸着器の中で行われる。
【0051】
還元度の設定の後、及び還元度の設定の前又は後に行われる乾燥の後に、本発明の吸着体を使用する準備ができる。
【0052】
本発明の吸着処理は、物質流から吸着によって一酸化炭素を除去する処理であり、この処理は、一酸化炭素含有物質流と吸着体とを接着させることを含み、この吸着体は酸化銅、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムを含み、吸着体は多くて60%の還元度(金属銅と酸化銅(CuOとして計算される)の合計に対する金属銅の質量割合として表される)の銅の含有割合を有する。本発明の吸着処理はまた、本発明の吸着体を使用することを含む。本発明の吸着処理の1つの有利な点は、酸素が存在せず、一酸化炭素と酸素の慣用の触媒反応により二酸化炭素を生成するのに十分でない温度において存在する物質流に対する適用性、又は一酸化炭素又は酸化炭化水素が干渉する更なる使用である。
【0053】
原則として、本発明の吸着処理を使用して、任意の物質流に一酸化炭素の汚染がなくなるようにすることができ、その物質流は、例えば、不活性気体流(窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン及び/又はアルゴン)又は炭化水素流、例えばアルカン(メタン、エタン、プロパン、ブタン、これらの混合物、異性体及び異性体混合物)又はエテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン及び/又はスチレン等のアルケン(オレフィンとも称される)である。
【0054】
吸着ではない方法で一酸化炭素を除去するために本発明の吸着体を使用することも同様に可能である。これは、特に、一酸化炭素が除去される物質流が、一酸化炭素に加えて、酸素と一酸化炭素との触媒反応にとって十分に高い温度で、酸素も含む場合に有利であり、また、二酸化炭素又は酸化炭化水素が干渉しない更なる使用において有利である。例えば、一酸化炭素及び酸素を含む物質流からの一酸化炭素は、触媒として使用されて物質流から除去される本発明の吸着体の存在下に、一酸化炭素と酸素を触媒反応させることによって二酸化炭素を形成するために反応することができる。同様に、一酸化炭素含有物質流からの一酸化炭素は、二酸化炭素を形成するために金属銅の形成と共に、一酸化炭素と本発明の酸化銅(I)含有及び/又は酸化銅(II)含有吸着体との反応によって物質流から除去することができる。吸着によって、酸化銅(I)及び酸化銅(II)の形成と共に本発明の金属銅含有吸着体へ物質流から酸素を除去すること、又は銅によって触媒された水の形成による水素の存在下に物質流から酸素を除去することは同様に可能である。本発明の吸着体を使用する他の銅含有組成物と同様に、一酸化炭素、酸素及び後の水素だけでなく、銅又は酸化銅と反応する不純物(例えば、水銀元素及び/又は水銀、硫黄、アンチモン、及び/又はヒ素含有化合物)も物質流から除去することができる。言い換えれば、本発明の吸着体は、銅含有固体が触媒的に、吸収的方法で、又は反応の相手として使用される公知の全ての方法で使用することができる。
【0055】
好ましくは、本発明の吸着処理はアルケン流から一酸化炭素を除去するために、特に、液体状態で通常存在しているアルケン流から一酸化炭素を除去するために、使用される。異常な高圧での使用とは別として、典型的には液体状態で存在するアルケンは、酸素との反応による一酸化炭素の触媒除去のために必要とされる温度は有しておらず、加えて、酸化した炭化水素の形成は、次の重合のための使用において妨げとなる。
【0056】
「重合グレード」オレフィンのための許容可能な値にまで一酸化炭素含有量を減少させるために、本発明の吸着処理は、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン、ブテン混合物、ブテン/ブタジエン混合物又はスチレンから一酸化炭素を除去するために特に適切に使用される。極めて特に好ましい実施の形態では、一酸化炭素は、本発明の処理を使用した吸着によって液体プロペンから除去される。
【0057】
本発明の吸着処理によって物質流から一酸化炭素を除去することが可能となる。少なくとも0.001ppm(気体の場合は体積ppm、液体の場合は質量ppm)、好ましくは少なくとも0.01ppm、更に通常は多くても1000ppm、好ましくは多くても100ppm、特に好ましい方法では多くても10ppmの一酸化炭素を通常含む物質流から一酸化炭素を除去するために、特に適当である。一酸化炭素の比較的高い初期の濃度のため、蒸留、二酸化炭素を形成するための一酸化炭素と酸素との触媒酸化、又は金属銅及び二酸化炭素の形成を伴い、任意にその後の二酸化炭素及び酸化炭化水素の除去を伴う一酸化炭素と酸化銅との酸化反応、等の進歩した別の公知の精製方法で行われるのが通常はより経済的であり、そうでなければ吸着体の吸着能力は非常に急速に達し得る。
【0058】
本発明の吸着処理を実行するため、一酸化炭素が除去される物質流は、吸着装置の中で、本発明の吸着体の成形体の床の上に通される。
【0059】
本発明の吸着処理のための温度は、技術的な面からすれば、重大なものではないか、又はただわずかに重大なものすぎない。典型的な温度は少なくとも−270℃、好ましくは少なくとも−100℃、特に好ましい方法では−40℃、さらに高くても300℃、好ましくは高くても200℃、特に好ましい方法では高くても100℃である。好都合なことに、温度は別々に影響を受けるのではなく、処理される物質流が有する温度が採用される。
【0060】
消耗の程度を決定する実質的なパラメータは、記載ように特に都合よく影響を及ぼすものではない温度の他に、物質流と吸着体との接触時間がある。この接触時間は、物質流の速度と、吸着体の床の容積によって決定される。通常、精製するべき物質流の容積流速度は、上流又は下流の装置の能力によって、予め決定されている。これに加えて、吸着体の吸着能力は限界があるため、所定量の吸着体は、それを再生しなければならなくなる前に、本発明の方法のため、所定の期間でのみ使用可能である。可能な限りの大量の吸着体を使用することが、第一に望ましいが、吸着器の大きさと共に増加する費用がこれに逆行する。このため、吸着器内の吸着体の量は、第一に所望の消耗の程度を、第二に吸着体の2つの再生の間の吸着器の許容可能な短い稼動時間を達成するように、個々の場合において選択される。有利なことに、少なくとも2個の吸着器を備え、その内の少なくとも1個は、精製するべき物質流を受けることができ、一方、少なくとも1個の他の吸着器内では、吸着体は再生する。このことは、この技術の当業者にとって、ありふれた最適化の課題である。
【0061】
選択した吸着器の大きさに依存して、その中に含まれている吸着体の、一酸化炭素の最大限の取り込み容量は、遅かれ早かれ達せられ、このためそれは再生しなければならない。
【0062】
本発明の吸着体を再生するために、まず第一に、精製される物質流を止めるが、その物質流は、新しい又は再生した吸着体を詰めた並列の吸着器に通すのが好ましい。
【0063】
再生されるべき吸着体は次に再生される。これは脱着により達成される。脱着の前に、吸着した一酸化炭素が、場合によっては吸着した酸素と完全に触媒反応するか、又は吸着体内に存在する酸化銅との反応により純粋に化学的に反応して二酸化炭素を形成するか、あるいは、他の方法で、例えば、メタノール又はメタンを形成するために存在する水素を除去するための別の方法によるかどうかは重要なことではなく、これらの反応生成物はその後脱着するが、重要なことは吸着体の吸着能力が回復することである。
【0064】
脱着は流動体、好ましくは気体を、吸着体上に通らせることによって、温度を上げることによって、又はこれらの手段の組み合わせによって行われる。好ましい方法では、気体は再生のための吸着体を有する吸着器を通り抜け、この処理の間に加熱される。気体は不活性とすることができる。例えば、窒素、メタンまたはアルゴンであるが、COがメタノール又はメタンを形成するために反応する場合における水素の使用もまた可能である。所望の温度は通常、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃、特に好ましい方法では少なくとも150℃、通常高くても500℃、好ましくは高くても450℃、特に好ましい方法では高くても400℃である。例えば脱着温度は約300℃が適当である。再生時間は典型的には通常、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも10時間、特に好ましい方法では少なくとも15時間、また通常多くても100時間、好ましくは多くても50時間、特に好ましい法補では多くても30時間である。
【0065】
銅から失われた酸素を置き換えるために、微量に酸素を含む不活性気体(窒素又はアルゴンが好ましい)を使用して脱着を行うことがしばしば有利である。好都合なことに、脱着のため、少なくとも1ppm、好ましくは少なくとも5ppm、特に好ましい方法では少なくとも10ppm、通常多くても300ppm、好ましくは多くても250ppm、特に好ましい方法では多くても200ppmの量で酸素を通常含む窒素が使用される。
【0066】
実際の脱着は、便宜上、標準温度での脱着のために使用される気体流と共に、吸着器を洗い流すことによって吸着器から精製された残りの物質流の除去から始めることができる。
【0067】
この再生の次に、吸着体は通常はすぐに再使用できる状態になる。個々の場合において、特に所望の還元度が非常に大きく変化した場合、吸着体が還元度の新たな設定を受けることが望ましく又は必要となり得る。
【0068】
本発明の吸着体及び本発明の吸着処理によって、物質流から一酸化炭素を除去することが簡便で経済的な方法で可能となる。このように浄化された物質流は、その後明記したように使用することができる。
【実施例】
【0069】
実施例1(比較例)還元度が0%である吸着体の製造。
【0070】
加熱することができ、攪拌機を備える沈澱容器に、8.1lの水と672gのベーマイト(Condea Chemie Hamburg GmbH社のPURAL(登録商標)SB、Al23の含有量が約72%)を入れ、50℃にまで加熱した。攪拌しながら30分の間に、2980gのCu(NO32・3H2Oと3560gのZn(NO32・6H2Oの水溶液を7.5l加えた。同時に、20質量%強の炭酸ナトリウム溶液を同様の方法で、沈澱溶液のpHを6.2に維持する方法で加えた。全部で13.8kgの炭酸ナトリウム溶液をこのために消費した。形成された懸濁液を濾過し、硝酸塩を含まなくなるように(廃液中に25ppm未満の硝酸塩)水で洗った。フィルターケーキを120℃で乾燥し、次に25分間、500℃でか焼した。
【0071】
1.7kgの残りの物質を、細孔形成剤として300gのアンモニウム硝酸塩及び錠剤化補助剤として60gの黒鉛と激しく混合し、3×3mmの錠剤を形成するために成形した。これらの錠剤を520℃で75分間か焼した。
【0072】
実施例2及び3及び比較例4及び5
実施例1で得られた錠剤の試料を、窒素中に水素が25体積%で存在する気体混合物を180℃においてチューブ状の反応器の中で試料に通らせることによって還元した。還元時間及び還元度は表に示した通りである。
【0073】
(比較)実施例1〜5において得られた錠剤の試料を、エチレン中に750ppmのCOを含む気体混合物を100℃及び周囲圧力(すなわち、床を通り抜ける気体混合物のために必要な圧力のみが反応器の上流に適用される)においてチューブ状の反応器(吸収器)に2300h-1のGHSVで詰めた。排ガス中のCO濃度は連続的に測定され、「破過点(breakthrough point)」が決定された。すなわち、吸着剤に与えられた気体混合物のCO濃度が5%において吸着体の単位体積当たりの、吸着体に与えられたCO(純水物質として計算される)の体積の比[COのl/吸着体のl]が、吸着器を通り抜けた後に測定された。この破過点は従って、吸着体の吸着能力の基準である。
【0074】
得た値を以下の表に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例は、本発明の吸着体が、以前から公知の吸着体又は本発明に従わない吸着体と比較して、極めて大幅に上昇した一酸化炭素に対する吸着能力を有することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅−、亜鉛- 及びアルミニウムオキシドを含む吸着体であって、
銅を、酸化銅(II)CuOとして計算して、吸着体の全量に対して、10〜70質量%の酸化銅(II)CuOに相当する量で含み、
亜鉛を、吸着体の全量に対して、10〜70質量%の酸化亜鉛(ZnO)に相当する量で含み、
アルミニウムを、吸着体の全量に対して、0.1〜50質量%の酸化アルミニウム(Al23)に相当する量で含み、
その銅含有部分は、金属銅と酸化銅との合計に対する金属銅の質量割合として表した還元度が、CuOとして計算して、10〜40%であることを特徴とする吸着体。
【請求項2】
それぞれ吸着体の合計量に対して、銅を30〜50質量%CuOに相当する量、亜鉛を30〜50質量%ZnOに相当する量、及びアルミニウムを10〜30質量%Alに相当する量で含み、個々の成分の割合が合計で100質量%となることを特徴とする請求項1に記載の吸着体。
【請求項3】
不活性担体上に存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸着体。
【請求項4】
亜鉛が、酸化亜鉛(ZnO)の状態で存在し、またアルミニウムが酸化アルミニウム(Al23)の状態で存在することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の吸着体。
【請求項5】
吸着体への吸着によって一酸化炭素含有物質流から一酸化炭素を除去する方法であって、一酸化炭素含有物質流は、請求項1〜4において定義された吸着体と接触することを特徴とする方法。
【請求項6】
一酸化炭素が液体プロピレン流から除去されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
一酸化炭素と酸素とを触媒反応させて二酸化炭素を形成することにより、一酸化炭素及び酸素を含有する物質流から一酸化炭素を除去する方法であって、使用される触媒は、請求項1〜4で定義された吸着体であることを特徴とする方法。
【請求項8】
一酸化炭素と、酸化銅(I)及び/又は酸化銅(II)を含有する固体とを反応させて金属銅を形成させつつ二酸化炭素を形成して一酸化炭素含有物質流から一酸化炭素を除去する方法であって、
請求項1〜4で定義された吸着体が、酸化銅(I)及び/又は酸化銅(II)を含有する固体として使用されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜4で定義された吸着体の製造方法であって、
以下の処理工程、
a)吸着体の成分の及び/又はこれらの出発化合物の溶液又は懸濁液を製造する工程、
b)塩基を添加することにより、この溶液から固体を沈澱させ、任意にこの沈澱物生成物を吸着体及び/又はその出発化合物の更なる成分と混合する工程、
c)得られた固体を分離及び乾燥する工程、
d)この固体をか焼する工程、
e)固体を成形して成形体を得る工程、
f)この成形体を更にか焼する工程、
を記載した順序で含み、及び
g)吸着体の銅含有部分の還元度(但し、該還元度は、金属銅と酸化銅との合計に対する金属銅の質量割合を、CuOとして計算して表される)を、10〜40%の値に設定する工程、
を、工程f)の後又は同時に行うことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
一酸化炭素含有物質流から一酸化炭素を吸着して除去するために請求項1〜4で定義された吸着体を使用した後に、この吸着体を再生する方法であって、吸着体を50〜500℃の範囲の温度まで加熱し、及び/又は、再生すべき吸着体の床に気体を通すことを含むことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2012−110893(P2012−110893A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3783(P2012−3783)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2009−538701(P2009−538701)の分割
【原出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】