説明

特に医療用途のための複合材料、及び材料の製造方法

本発明は、既知の材料と比較して改善された特性を有する複合材料に関する。既知の材料に関連する問題点は、無細胞生体材料に先ず細胞集団を形成しなければならないこと、正確に再現できない組成又は純度に起因する生体適合性の欠如、又は吸収時間に最小限しか影響を与えられないこと、である。本発明による組成物は、生理学的条件下で不溶性であり、吸収性であり、そして非ゲル化性である第1材料を有する第1の無支持層と、主に開いた孔を含む構造を有する、架橋されたゼラチン状の第2材料を基剤として製造された第2層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に人間の医療及び獣医学的な医療の分野におけるマトリックス材料として使用される、生体適合性の吸収性複合材料に関する。この種類の材料は、細胞なしで、又は細胞集団が形成されている時にも使用することができる。
さらに本発明は、この種類の複合材料を製造する方法に関する。
最後に、本発明は、インプラント、特に複合材料を使用して製造される細胞及び組織インプラント、並びに、ヒト及び動物の身体の治療のためのこれらのインプラントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
病気及び負傷の両方によって引き起こされ得る多くのヒト及び動物組織への損傷の場合、治癒過程を支援するために吸収性インプラントが使用される。これらは、組織を新たに形成する機械的保護機能を発揮し、且つ/又は、細胞成長を促進するマトリックスを提供する点で、当該組織の再生を促進する。
【0003】
この種類のインプラントのための重要な使用分野は、軟骨組織である。これは、コンドロサイト(軟骨細胞)及びこれらの細胞によって合成された細胞外マトリックスから成り、細胞外マトリックスは、主としてコラーゲンとプロテオグリカンとから形成される。血液は軟骨を貫流せず、軟骨は大部分が拡散によって栄養供給され、骨端融合が終わった時に再生細胞集団に直接的にはアクセスしないので、軟骨は限られた固有再生能力しか有さない。軟骨損傷の自立した治癒は従って、何よりも成人の場合には、極めて限られた範囲でしか可能でなく、稀にしか観察されない。軟骨欠乏は、負傷又は変性作用により発生することがあり、そして生物学的再建の干渉なしには、しばしば、破壊性変形性関節症に至るまで軟骨損傷をさらに進行させることになる。
【0004】
上記軟骨損傷のための治療の具体的な形態については、軟骨細胞は先ず第一に、栄養素溶液を使用して吸収性インプラント上でin vitroで培養される。こうして製造された細胞キャリヤ構造は、次いで、失われた又は損傷された軟骨の場所に挿入される。培養された軟骨細胞は患者自身から予め採取されるので、この方法は、自己軟骨細胞移植と呼ぶこともできる。移植後、細胞は新しい細胞外マトリックスを製造し、ひいては、欠陥の治癒に導く。キャリヤ材料は再生過程中に分解(吸収)される。自己軟骨細胞の使用とは別に、同種軟骨細胞の植え込み、又は、in vitroで軟骨形成的に予め分化されている(自己又は同種)幹細胞の使用も考えられ、また、目下のところ、ヒトにおける臨床使用可能性のための前臨床・実験的動物研究において評価されつつある。
【0005】
自己軟骨細胞移植と共に、骨髄刺激法、例えばマイクロフラクチャー又は穿孔も、軟骨損傷の事例における生物学的再建目的を有する、臨床的に立証された更なる治療を提供する。これらの方法において、軟骨下骨プレートは、予め創面切除した後、小型突き錐又はドリルで穿孔され、これにより血流が欠陥部位内に生じるとともに、血塊が形成される。更なる事象過程中に、血塊から線維軟骨(いわゆるスーパークロット)が発生し、このことは多くの場合、欠陥の補充及び問題の軽減をもたらす。この方法の結果は、好適且つ生体適合性のマトリックスを使用することにより、さらに改善することができる。使用される生体材料は、欠陥を治療するために、欠陥部位内で、発生したスーパークロットを固定し、これを剪断作用から保護し、そして、血液流路によって移動する細胞のための主要なマトリックスとして作用する。
【0006】
生体材料のための更なる使用分野は、肩腱板の断裂の治療、又は腱板の部分変性の治療にある。これらの兆候のための無細胞生体材料は既に知られているが、これらの材料は、細胞の事前の集団形成なしには、再生に積極的に貢献できないという欠点を有している。材料を活性化するために、種子組織を生検によって採取することができる。細胞は次いでin vitroで単離し、培養し、好適な生体材料上に播種し、そして生体材料とともに、欠陥部位内に植え込むことができる。
【0007】
細胞集団を有する生体材料のための更なる用途は、マトリックス上に播種された、骨膜又は間充織幹細胞から成る事前培養された自己細胞を使用する、例えば洞補強のための顎部位における骨再生である。
【0008】
これまで述べた兆候と同様に、事前の細胞集団形成の有無と関連して、慢性創傷、皮膚の負傷、又は皮膚の火傷の治療及び治癒のために、生体材料を使用することもできる。
しかしながら、上記兆候及び方法に適した生体材料が、ヒト又は動物のために使用可能であるようにするためには、一連の要件を満たさなければならない。これらのうち極めて重要なのは、先ず第一に、材料の完全な生体適合性である。すなわち、植え込み後に、炎症反応、拒絶反応、又はその他の免疫反応が生じるべきではない。加えて、生体材料は、移植された細胞又は移動する細胞の成長又は代謝に対して不都合な影響を及ぼすべきではなく、また、特定の時間後に体内に完全に吸収されるべきである。さらに、材料は、細胞集団が形成され、そしてできる限り均一に細胞が進入するような構造を有するべきである。
【0009】
同時にまた、使用される材料の機械特性に対しては、高い要求が課せられる。植え込み中に材料を、損傷することなしに安全に取り扱うことは、高い機械強度によってのみ保証することができる。具体的には、この強度は、細胞集団が既に形成されている組織インプラントのためにも提供されなければならない。
【0010】
これらの要求が、多層複合材料によっておそらく満たされることは、最近の開発が示している。例えば、国際公開第99/19005号明細書には、スポンジ様テクスチャを有するII型コラーゲンのマトリックス層と、閉じた比較的不透過性のテクスチャを有する少なくとも1つのバリヤ層とを含む多層膜が記載されている。
【0011】
欧州特許第1 263 485号明細書には、生体適合性コラーゲンのマトリックスを備えた第1層及び第2層を有する生体適合性多層材料が開示されている。
【0012】
コラーゲンは比較的高い強度を有する天然材料であり、これを基剤として、良好な機械特性と良好な取り扱い可能性とを有するインプラントを製造することができる。しかし他方において、細胞のためのマトリックスとしてコラーゲンを使用する場合、これは、コラーゲンの組成及び純度が正確に再現可能とは言えないという理由から、生体適合性に関する問題が生じるおそれがある。さらに、コラーゲンを含有する材料の吸収時間は制御可能性が余り高くないが、しかし種々の分野にとっては、吸収時間を制御することが望ましい。
【0013】
本発明の目的は、これらの欠点が可能な限り回避され、そして既知の材料と比較して改善された特性を有する複合材料を利用可能にすることである。
【発明の開示】
【0014】
この目的は、本発明によれば、冒頭で述べた種類の複合材料において、下記2つの層:
− 生理学的条件下で不溶性であり、吸収性であり、そして非ゲル化性である第1材料を含む第1自己支持型層と;
− 主に開いた孔を含む構造を有する、架橋されたゼラチン状の第2材料を基剤として製造された第2層と
を含む複合材料によって満たされる。
【0015】
本発明による複合材料の場合、第1層が所要の機械強度を確保するのに対して、第2層は、細胞の成長のためのマトリックスを形成する。
【0016】
第1材料は、生理学的条件下で不溶性且つ非ゲル化性である。本発明の意味において、これは、材料が体内に広がる条件(具体的には温度、pH値、及びイオン強度)下で水溶液中には物理的に溶解されず、また、水の取り込みによってゲル又はゲル様状態に変化させられないことを意味する。従って、この意味でのゲル形成は、第1材料がこれによりその元の強度、及び形状維持能力を大部分失うときに存在する。これは、機械強度を著しく損なわない限り、特定量の水を取り込み、そしてこれにより場合によっては膨潤もする材料を排除しない。
【0017】
上に挙げた特性によって、第1材料は、水和状態においてさえも機械的に頑丈であり、しかも形状安定であり続け、これにより、第1層には、その自己支持機能が与えられる。このことは、いかなる付加的なキャリヤも用いずに、第1層を取り扱うことができるだけでなく、第1層がその役割として、第2層のためのキャリヤとして役立つことができることを意味する。
同時に、第1材料は吸収性であり、すなわち、第1材料は、体内の特定時間後の加水分解により分解される。酵素がこの加水分解において役割を果たすこともできる。体内の吸収が生じる前には、ひいては具体的にはin vitroにおける複合材料上の細胞培養中、及び複合材料の埋め込み中には、第1層のキャリヤ機能は大部分が損なわれず、これにより、複合材料全体に所要の機械強度が与えられる。
【0018】
第1層の、本発明による実施態様によって、複合材料の安全な、そして損傷無しの取り扱いが保証される。このことは特に、第2層に、埋め込み前に細胞集団が既に形成されている場合にも当てはまる。
さらに、第1層は、複合材料が埋め込まれた後、細胞のための機械的保護をも提供する。このことは、in vitroで事前培養された細胞の移植、並びに、マトリックス関連マイクロフラクチャー法の両方にとって有意義である。両方法のために、生体材料は有利には、第1層が骨から離れる方向に外側に向けられるように使用される。生体材料はこの場合、第2層内の成長中の細胞を剪断作用から、そして関節の内部からの再生妨害作用、例えば過剰の機械的負荷から保護する。
【0019】
第1層の高い強度に関する別の利点は、吸収性の固定手段による、本発明による複合材料の外科的縫合可能性、又は運動に対して安定な軟骨下骨固定である。
第1層は好ましくは、複合材料が縫合されたとき、又は吸収性小型ピンによって骨横断固定を施されたときに裂けないような、引裂強さを有している。
好ましくは、第1層の引裂強さは20N/mm2以上である。
【0020】
本発明の好ましい実施態様の場合、不溶性であり、吸収性であり、そして非ゲル化性の第1材料が、コラーゲンを基剤とする平面状材料である。このような材料の中で、実質的にコラーゲンから形成された平面状材料であり、そしてこれには、好ましくは、動物起源の天然膜が該当する。ほとんど完全にコラーゲンから成る動物性の膜を得ることができ、膜は、生体適合性に対する不都合な作用を有する外来の成分を含まないように形成される。
動物性の膜は概ね高い強度を提供し、したがって本発明による複合材料の第1層に特に適している。具体的にはコラーゲンは、生理学的条件下で不溶性であり、非ゲル化性であり、そして吸収性である程度に、所要の特性を示す。
【0021】
コラーゲンを基剤とする好ましい平面状材料として、複合材料の第1層として、心膜が使用される。心膜は心嚢の外層であり、これは、特に引裂抵抗性の動物性の膜である。例えば、ウシの心膜を使用することができる。
【0022】
心膜は、多くの動物性の膜がそうであるように、粗面側と平滑側とを有している。好ましくはこのような膜は、粗面側が第2層に向けられるように、複合材料内に使用される。2つの層の間の結合の安定性は、表面の粗さにより増大される。
本発明による、複合材料の別の好ましい実施態様の場合、第1材料は強化用材料を含む。第1層の強化は、上記有利な特性を有するような程度まで、不溶性であり、吸収性であり、非ゲル化性である強化用材料によって高めることもできる。
【0023】
強化用材料が第1材料として使用される場合、第1層は好ましくは、強化用材料が埋め込まれているマトリックスを含む。第1層はこの場合、例えば強化された膜である。マトリックスはこのために、同様に吸収性であり、そして好ましくはゼラチンを含まなければならない。
【0024】
第1層のための、ゼラチンを含むマトリックス、例えばゼラチン膜は好ましくは、架橋されたゼラチン状材料を基剤として製造される。架橋は一般に、材料を不溶性形態に変換するために必要とされる。ゼラチン状材料、特にゼラチン自体の架橋のための好ましい実施態様は、複合材料の第2層との関連においてさらに下で説明する。
【0025】
強化用材料は、第1層の質量を基準として5重量%の比率であっても、層の機械特性の顕著な改善を示す。
60重量%を上回ると、達成される更なる顕著な改善はなく、且つ/又は、第1層の所期吸収特性、又は所要可撓性を達成できるとしても、そのためには必ず困難が伴う。
強化用材料は、粒子及び/又は分子強化用材料、並びにこれらの混合物から選択することができる。
粒子強化用材料に関しては、強化用繊維の使用が特に推奨される。このためには、繊維は好ましくは多糖繊維及びタンパク質繊維、特にコラーゲン繊維、絹及び綿繊維、並びにポリアクチド繊維、及び前記のもののうちのいずれかの混合物から選択される。
他方において、機械特性を改善するために、また所望の場合には、第1層の吸収安定性をも改善するために、分子強化用材料も好適である。
【0026】
好ましい分子強化用材料は、具体的にはポリアクチドポリマー及びこれらの誘導体、セルロース誘導体、並びにキトサン及びその誘導体である。また、分子強化用材料は混合物として使用することができる。
【0027】
本発明による複合材料の第2層は、医療用途において細胞と直接的に接触する層であり、従って、細胞集団の形成のための基材として、そして細胞の成長のためのマトリックスとして機能することができるべきである。この理由から、生体適合性(すなわち細胞適合性)に関して特に高い要求が課せられる。第1層は既に、複合材料の所要の機械強度を確保しており、また第2層のための支持体機能を果たすので、第2層のための材料及び構造の選択は、完全にその生体適合性及び生物学的機能性に基づいて見極めることができる。
第2層の上記要件は、ゼラチンを本発明に従って使用することにより、広い範囲で満たされる。ゼラチンはコラーゲンとは対照的に、定義された再現可能な組成並びに高い純度で得ることができる。ゼラチンは、組織及び細胞のすぐれた適合性を有し、そして残留物を残さないように吸収可能である。
【0028】
好ましくは、第2材料は、大部分がゼラチンから形成されており、より好ましくは、実質的に完全にゼラチンから形成されている。
医療用途において本発明による複合材料の第2層の最適な生体適合性を保証するために、第2材料は好ましくは、特に低いエンドトキシン含有率を有するゼラチンを含む。エンドトキシンは代謝産物、又は動物性原材料中に存在する微生物部分である。ゼラチンのエンドトキシン含有率は、1グラム当たりの国際単位(I.U./g)で示され、そしてLAL試験、つまりEuropean Pharmacopoeiaの第4版(Ph. Eur. 4)に記載された試験を行うことにより測定される。
【0029】
エンドトキシンの含有率をできるだけ低くしておくために、ゼラチン製造過程において微生物をできるだけ早期に全滅させることが有利である。さらに、適切な衛生基準を製造プロセス中に観察するべきである。
【0030】
従って、ゼラチンのエンドトキシン含有率は、特定の方策によって製造プロセス中に大幅に低下させることができる。これらの方策の中には、主として、保存時間の回避を伴う新鮮な原材料(例えば豚皮)の使用、ゼラチン製造開始直前の製造設備全体の徹底した清浄化、及び任意には製造設備内のイオン交換体及びフィルタ系の交換が属する。
【0031】
本発明の範囲内で使用されるゼラチンのエンドトキシン含有率は、好ましくは1,200 I.U./g以下、より好ましくは200 I.U./g以下である。最適には、エンドトキシン含有率は、LAL試験に従ってそれぞれに事例において測定して50 I.U.以下である。これと比較して、商業的に入手可能な多くのゼラチンのエンドトキシン含有率は、20,000 I.U./gを上回る。
【0032】
本発明によれば、第2のゼラチン状材料は架橋されており、ゼラチンが好ましくは架橋される。ゼラチンはそれ自体水溶性であるので、第2材料の過度に高速の溶解を防止し、そしてこれにより、生理学的条件下で複合材料の第2層のために十分な寿命を保証するために、架橋が一般に必要となる。
【0033】
ゼラチンはこの場合、架橋された材料の吸収速度、又は完全吸収までの時間を、架橋度を選択することにより広い範囲にわたって設定できるという更なる利点を提供する。
第2材料は好ましくは化学的に架橋されている。原則的には、全ての化合物を、ゼラチンの化学的架橋を生じさせる架橋剤として使用することができる。好ましいのは、アルデヒド、ジアルデヒド、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、及びハロゲン化アルキルである。特に好ましいのはホルムアルデヒドである。それというのもホルムアルデヒドは滅菌効果を有するからである。
【0034】
第2材料の生体適合性を保証するために、第2材料は好ましくは、過剰の架橋剤、すなわち反応していない架橋剤を実質的に含まない。好ましくは過剰の架橋剤の含有率は、約0.2重量%以下である。これは特にホルムアルデヒドの場合、インプラント材料としての許容可能性に対応する限界値である。
【0035】
更なる実施態様の場合、第2材料は、酵素的に架橋されている。このために、酵素トランスグルタミナーゼが、好ましくは架橋剤として使用され、これは、グルタミンと、タンパク質の、特にまたゼラチンのリシン側鎖との結合を生じさせる。
第1層が、強化用材料が埋め込まれたゼラチン状マトリックスを含む場合、指定された架橋剤は、第1層のゼラチン状材料を架橋するのにも適している。
【0036】
使用される材料の生体適合性と同様に、複合材料の第2層はまた、細胞集団形成に適した構造を有するように形成されるべきである。本発明によれば、このことは、主に開いた孔を含む構造によって保証される。この構造は、構造内への細胞の進入、並びに、第2層の全厚にわたる細胞のできる限り均一の分布を可能にする。
【0037】
主に開いた孔を含む構造は、本発明の好ましい実施態様の場合、繊維構造を有する第2層によって実現される。繊維構造は好ましくは、布地材料、編み地材料、又は不織布材料を含む。繊維構造は、例えばゼラチン溶液の押し出し又は電気紡績によってゼラチン状の第2材料から製造することができる。
【0038】
本発明による複合材料の更なる好ましい実施態様の場合、第2層はスポンジ構造を有している。スポンジ構造は、ゼラチン状の第2材料の溶液を発泡することにより、製造することができる。これについては、本発明による製造方法との関連においてより詳細に述べることにする。
【0039】
主に開いた孔を含むスポンジ構造は、細胞集団の形成に特に適している。中空スペースが互いに結合されていることにより、容積全体にわたって、細胞の極めて均一な分布を達成することができる。細胞の成長中及び細胞外マトリックスの合成中に、三次元組織構造がこうして形成される。このことは、架橋されたゼラチン状材料の連続的な加水分解によって達成されるので、スポンジ構造の容積は材料の完全崩壊後(又は材料の体内吸収後)には、新たに形成された組織によって大きな範囲が占められる。
【0040】
スポンジ構造の好ましい平均孔直径は、複合材料がin vitro又はin vivoで集団形成されることになっている細胞のサイズに先ず合致させられる。孔直径が余りにも小さい場合には、細胞な構造内に進入することはできず、これに対して、孔が大きすぎる場合には、細胞が導入され、又は中で成長させられるときに結果として支持力が余りにも小さくなってしまう。好ましくは、平均孔直径は、500μm未満、特に100〜300μmである。
【0041】
スポンジ構造の孔サイズは、広い範囲でこれらの密度に依存する。複合材料の第2層の密度は、特にスポンジ構造の場合、好ましくは10〜100g/l、より好ましくは10〜50g/l、最も好ましくは15〜30g/lである。スポンジ構造の密度はこのために、製造条件によって、特に発泡強度によって影響を与えることができる。
【0042】
好ましくは、本発明による複合材料の第2層は、特にスポンジ構造の場合、水和状態において弾性変形可能である。水和状態は、水性環境内の複合材料が、平衡状態に実質的に達するほど大量の水を取り込んでいるときに存在する。この種類の条件は、in vitroにおいて栄養素培地内で細胞が培養される場合、そして体内の両方に存在する。
【0043】
弾性変形可能性の尺度は、例えば復元挙動によって定義することができる。好ましくは、第2層は、水和状態で22N/mm2の圧力作用によって、容積を圧縮された後、10分以内に90%以上まで復元するように形成される。これは一般には、コラーゲンを基剤とする材料を用いて達成することはできない。水和状態において復元比を測定するために、被験材料は、37℃のPBS緩衝剤(pH7.2)中に入れられる。
【0044】
この種類の弾性変形可能な構造は、複合材料の第2層の可撓性をもたらし、この可撓性は、複合材料をインプラントとして使用するのに極めて有利である。複合材料は従って、例えば関節軟骨の損傷の場合のように、しばしば不規則であるか又は少なくとも湾曲している、治療されるべき組織欠陥の形状に良好に適合させることができる。
本発明による複合材料の更なる利点は、水和状態における第2層が、容積の著しい減少を示さないことである。具体的には、正確に適合した複合材料片が周囲の軟骨内に挿入される軟骨欠陥の治療において、コラーゲンを基剤とする多孔質材料の場合に観察されるようなこのような種類の収縮は、顕著な問題を引き起こす。好ましくは、第2層は、水和状態で3日経過後に、5分後に測定された容積と比較して5%未満の容積が低減する。もし第2層の容積が水和状態で僅かに増大するならば、これは最も有利である。
【0045】
既に述べたように、本発明による複合材料は、第2層の吸収速度を、個々の要件に合わせることができるという具体的な利点をもたらす。このことは、具体的には第2層の密度、及びゼラチン状の第2材料の架橋度を選択することによって実現することができる。より高い密度、及びより高い架橋度の双方は、寿命を長くする傾向がある。理想的な事例では、材料の分解は、細胞外マトリックスが細胞から合成される程度に応じて生じる。材料の分解は、細胞のタイプに応じて大きく異なることがあり、軟骨細胞は具体的には、成長が比較的遅く、ひいては、第2層の分解時間を長くする傾向を伴う。
【0046】
細胞集団が形成されたときの第2層の吸収速度又は崩壊速度の尺度は、標準的な生理学的条件(PBS緩衝剤、pH7.2、37℃)下の細胞集団化なしの状態でのその安定性から導き出すこともできる。複合材料が曝される生理学的条件は、主として温度、pH値、及びイオン強度によって区別され、そして時間依存の分解挙動に関して種々異なる材料を試験して比較するために上述の標準的条件下で複合材料をインキュベートすることによりシミュレートすることができる。
【0047】
本発明によれば、製造条件を変化させることにより、標準的な生理学的条件下で第2層が例えば1週間よりも長い時間にわたって、2週間よりも長い時間にわたって、そして4週間よりも長い時間にわたって安定であり続ける複合材料を得ることができる。
安定性という概念は、その元の形状(巨視的ジオメトリ)をそれぞれの時間中に実質的に維持し、そして次いで初めて、外側から見える程度に崩壊する第2層と理解することができる。
第2層がスポンジ構造を有する場合、この崩壊は、それぞれの時間後に比較的突然に発生し、スポンジ構造は数日以内にばらばらに分解する。
【0048】
或いは、第2層の分解挙動は、上記条件下の重量損失によって定義することもできる。従って、第2層が1週間後、2週間後、又は4週間後にまだ70重量%まで又はそれよりも多くから成る本発明による複合材料を得ることができる。
【0049】
第2層の構造の更なる利点は、吸収段階中にヒドロゲル様状態に変換できることである。標準的な生理学的条件下でヒドロゲル様状態へのこの種の変換を行うことは、軟骨細胞の表現型を安定化させるのに特に有利である。これらの特性は、他の生体材料と比較して高い質的値の組織再建を支援する。他方において、主としてゲル様である生体材料は、明らかにより不良の細胞集団化を許し、そしてこれらの比較的閉じた構造において(例えばマイクロフラクチャー後の)細胞成長をほとんど可能にしない。
【0050】
第2層の構造のヒドロゲル構造への変換可能性はこの場合、架橋度に依存する。このことは、上記安定性と矛盾しない。それというのも、安定性は、ヒドロゲル構造の存在においても最初は存在し続ける第2層の巨視的ジオメトリに関連するからである。
【0051】
本発明による複合材料の第1層の崩壊時間は、第2層の崩壊時間とは逸れていてよく、環境に応じてこれよりも長く又は短く選択されてよい。しかしながらいずれの場合にも、本発明による第1材料を基剤とする第1層は、この第1層が、第2層内に細胞を培養した後でもその自立型特性を有し、そして複合材料に、植え込みに必要とされる機械強度を与えることを保証するのに十分な寿命を提供する。
【0052】
例えば強化されたゼラチンが第1層として使用される場合、その崩壊時間は、第2層のゼラチン状材料の場合のように、ゼラチンの架橋度によって特定の範囲内で設定することができる。動物源の膜が使用されるときには、その分解時間が概ね予め決められ、そしてほとんどの場合には、第2層の分解時間よりも長い。
【0053】
本発明による複合材料の第1層と第2層とは好ましくは互いに直接的に結合されている。これは例えば、第1層の表面上に、具体的には動物性の膜の粗面側に直接的に第2層を調製することにより達成することができる。
【0054】
本発明による複合材料の別の実施態様の場合、2つの層は、接着剤によって互いに結合されている。接着剤は好ましくはゼラチンを含む。
本発明による複合材料の好ましい厚さは、2〜5mmであり、最大3mmの厚さがさらに好ましい。第1層の厚さは好ましくは約1mm以下である。
上述の複合材料の厚さは従って、第1層及び第2層の総厚に関連する。しかしながら、本発明による複合材料はさらに多くの層を含む。
【0055】
具体的な実施態様の場合、第2層に結合された第3層が提供され、この第3層は、ゼラチン状材料を基剤として製造されている。この種類の第3層は、例えばin vitroで事前培養された細胞の移植の場合に、機械的負荷から、又は外来細胞の成長から第2層内に配置された細胞を保護し、或いは、植え込み中の隣接組織に対する複合材料の結合を改善するのに役立つ。
【0056】
体内の決められた位置に、特に軟骨細胞移植の場合には骨にインプラントを固定するために、ゼラチン溶液を例えば第3層として使用することができ、このゼラチン溶液は、第2層に対する接着剤として被着される。
第3層のゼラチン状材料、特にゼラチン自体は好ましくは架橋されている。このための好ましい架橋剤は、第2層の第2材料との関連において記載された組成物及び酵素である。
【0057】
第3層は有利には、外来細胞、例えば軟骨移植の場合には骨細胞の侵入を防止又は妨害する構造を有している。従って、第3層は好ましくは実質的に閉じた構造を有している。これは、孔又は通路なしの構造、特に膜、例えばゼラチン膜を意味する。
【0058】
或いは、第3層は多孔質構造を有していてもよく、その平均孔直径は、第2層の構造の平均孔直径よりも小さい。従って、第2層との関連において記載したようなスポンジ構造が該当する。第3層の平均構造は好ましくは、平均孔直径が300μm以下、特に100μm以下である。第3層はまた好ましくは第2層よりも高い密度、好ましくは50g/l以上の密度を有する。
【0059】
閉じた又は多孔質の構造を有する第3層によって、複合材料と隣接組織、特に骨との結合を改善することもできる。従って第3層の材料の架橋度は、比較的低いように選択されるので、材料は部分的にゲル化し、ひいては接着剤として機能する。
事前培養された細胞、例えば軟骨細胞又は間充織幹細胞の移植において、複合材料を使用するために、第3層は、骨との良好な適合性に関して最適化することができる。好ましくは、第3層はこの場合、1種又は2種以上のリン酸カルシウム、アパタイト、又はこれらの混合物を含む。
【0060】
複合材料の第3層は好ましくは、細胞が第2層内に導入され、そして第2層内で培養された後、第2層に被着される。或いは、第3層が被着された後、側方から第2層内に細胞を導入することもできる。このことは、より小さなインプラントを製造する上で容易に可能である。
【0061】
本発明はさらに、上記複合材料を製造する方法を提供するという目的を有している。
この目的は、本発明によれば、冒頭で述べた方法において:
− 生理学的条件下で不溶性であり、吸収性であり、そして非ゲル化性である第1材料を含む第1自己支持型層を準備し;
− 架橋されたゼラチン状の第2材料を基剤として第2層を、第2層が主に開いた孔を含む構造を有するように製造し;そして
− 第1層と第2層とを結合し、複合材料を形成する
ことを含む方法によって満たされる。
【0062】
2つの層の結合は、本発明によれば、最終方法工程として、又は第2層の製造過程中に達成することができる。
第1の事例において、結合は好ましくは、接着剤によって達成される。このために、接着剤は好ましくはゼラチンを含み、ゼラチンは例えば、一方又は両方の層に溶液の形態で被着することができ、その後、層を1つに合わせ、そして乾燥させる。
第1層がゼラチン状マトリックスを含む場合、調製済第2層が、部分的に第1層内に部分的に圧入されることがさらに好ましい。これは、ゼラチン状マトリックス、例えばゼラチン膜が、第2層の圧入中に塑性変形可能な状態にあること、例えばマトリックス調製後に湿潤状態にあることによって達成することができる。
【0063】
本発明による方法による方法の好ましい実施態様は、第2層がスポンジ構造を有する複合材料に関する。2つの層の結合は、第2層を製造する過程中に達成され、この方法は下記工程:
a) 第1層を準備し;
b) ゼラチン状の第2材料の水溶液を調製し;
c) 溶解された第2材料を部分的に架橋し;
d) 溶液を発泡し;
e) 発泡済溶液を第1層に被着し;そして
f) 発泡済溶液を乾かしておき、主に開いた孔を含む構造を有するように第2層を形成する
工程を含む。
【0064】
この方法において、基本的には、種々の起源及び品質を有するゼラチンを出発材料として使用することができるが、複合材料の医療用途に関しては、上記のようにエンドトキシンが低いゼラチンが好ましい。工程b)の溶液は好ましくはゼラチン濃度が5〜25重量%、具体的には10〜20重量%である。
ゼラチンは別として、本発明による方法における第2材料は、更なる成分、例えば他のバイオポリマーを含有してよい。
【0065】
工程c)における架橋反応のために、溶解された第2材料の1種、数種、又は全ての成分は、この場合部分的に架橋されてよい。好ましくはこの中で、ゼラチンが特に架橋される。架橋は化学的又は酵素的に行うことができ、好ましい架橋剤は、本発明による複合材料との関連において既に記載されている。
この方法の別の好ましい実施態様は、第2層内に含まれる第2材料がさらに架橋される更なる工程g)を含む。
【0066】
この種類の2段階架橋の利点は、第2材料のより高い架橋度を達成でき、これにより、第2層の有利なより長い吸収時間を結果として達成できることである。このことを、架橋剤の濃度を高めることにより、単一工程法を用いて同じ程度まで実現することはできない。なぜならば、溶解された材料の架橋が過度に強い場合、これはもはや発泡して成形することができないからである。
【0067】
他方において、専ら複合材料の調製後に材料、特にゼラチンを架橋することは適当ではない。なぜならば、材料はこれにより、内側領域におけるよりも外側からアクセス可能な境界面において、より強く架橋されるからである。このことは、不均一な分解挙動に反映される。
【0068】
第2の架橋(工程g)は、架橋剤の水溶液の作用によって実施することができ、架橋剤としては、上記化学的又は酵素的な架橋剤を使用することができる。しかしながら好ましいのは、気体状架橋剤、特に同時に滅菌作用を有するホルムアルデヒドの作用である。ホルムアルデヒドの作用は、このために、蒸気圧によって促進されて複合材料に与えることができる。
工程c)の架橋剤は、ゼラチンを基準として600〜5,000ppmの量、好ましくは1,000〜2,000ppmの量で溶液に添加される。
【0069】
溶液中の架橋剤の濃度を変化させることによって、しかしまた第2の段階における種々異なる高い架橋度によっても、複合材料の第2層の寿命を容易に設定することができる。驚くべきことに、本発明による複合材料との関連において詳細に説明したように、生理学的条件下で例えば1週間よりも長い時間、2週間よりも長い時間、又は4週間よりも長い時間にわたって安定であり続けるスポンジ構造を得ることができる。
【0070】
発泡(工程d)は、好ましくは気体、特に空気を溶液中に導入することにより達成される。製造されるべきスポンジ構造の密度及び平均孔直径は、これにより、好ましくは発泡強度によって、広範囲にわたって調節することができる。第2層に集団形成されるべき細胞に、平均孔直径を調和させることを別として、第2層の可撓性及び弾性変形可能性(ひいては、複合材料の全体としての可撓性及び弾性変形可能性)に、これらのパラメータによって影響を与えることもできる。治療されるべき組織欠陥の形状にインプラントを最適に調和可能にするために、高い可撓性が例えば望ましい。
【0071】
この方法により製造された複合材料の特性は、複合材料が第2の架橋後に、減圧における熱後処理に曝されると、第2層の安定性に関してさらに改善することができる。この熱後処理は好ましくは80〜160℃の温度で行われる。それというのも80℃を下回ると、効果は比較的弱い程度にしか観察されないのに対して、160℃を上回ると、ゼラチンの望まれない着色が発生するおそれがある。大抵は90〜120℃の値が好まれる。
減圧におけるとは、この場合、大気圧未満の圧力と理解されるべきである。可能な限り最低の圧力値、理想的な事例では真空が好ましい。
【0072】
熱後処理は有利には2つの段階で作用する。一方では、上記温度及び圧力の条件は、異なるアミノ酸鎖が互いに反応するとともに水を排除するという点で、ゼラチンの更なる脱水熱架橋を生じさせる。このことは、排除される水が低い圧力によって平衡状態でなくなることにより好ましい。従って熱後処理によって、同量の架橋剤では、より高い架橋度を達成することができ、或いは、同等の架橋度では、架橋剤の量を低減することができる。
熱後処理の更なる利点は、第2層内に残る未使用の架橋剤の残留物が著しく低減されることになる。
【0073】
複合材料の良好な生体適合性を保証するために、本発明による方法において、反応していない過剰架橋剤が好ましくは第2層から除去される。これは例えば、数日間にわたって通常の圧力で複合材料を脱ガスすることによって、且つ/又は流体媒質で洗浄することによって達成することができ、この後者の洗浄も、架橋剤の濃度、複合材料のサイズなどに応じて1日から1週間までの時間を必要とする。
【0074】
上記熱後処理によって、一方では架橋剤の使用量を低減することができ、さらに、高温及び減圧によって複合材料から過剰の架橋剤を除去することもできるので、この付加的な方法工程によって、架橋の残留物を約4〜10時間以内でも顕著に低減することができる。
【0075】
本発明による方法の具体的な実施態様の場合、これは、複合材料の第2層に第3層をさらに被着することを含む。これは、第2層内への細胞の導入前又は導入後の両方で行うことができる。第3層の利点及び実施態様は、本発明による複合材料との関連において既に説明されている。
【0076】
本発明はさらに、人間の医療及び獣医学的な医療の分野における使用に関して説明した、特にインプラントの製造に関して説明した複合材料の使用に関する。
本発明による複合材料は、ヒト又は動物の細胞集団の形成に、又はこのような細胞の成長に極めて好適である。in vitroで単離及び/又は事前培養された細胞を移植するために、複合材料には、例えば軟骨細胞、間充織幹細胞、骨膜細胞、又は線維芽細胞の集団が形成される。これらの細胞は、好適な栄養素培地内で第2層上に播種され、そして好ましくは、この層の主に開いた孔を含む構造内に埋め込まれる。材料の安定性が高いので、細胞は数週間にわたってin vitroで成長して増殖することができる。
本発明はさらに、複合材料と、ヒト又は動物の細胞とを含むインプラント、特に組織インプラントに関する。
【0077】
本発明によるインプラントの1実施態様の場合、インプラントは、第2層内に埋め込まれた成長中の細胞だけを含む。この場合、in vitroでの細胞のローディングは行われず、複合材料は、例えば事前のマイクロフラクチャー後に直接的に埋め込まれる。血塊内の細胞は次いで、in vivoで生体材料を集団形成する。
【0078】
本発明によるインプラントの更なる実施態様の場合、細胞は第2層内で培養され、すなわち、上述のように植え込み前に集団化及び培養がin vitroで行われる。
in vivoで成長し、且つ/又はin vitroで播種される細胞は、好ましくは複合材料の第2層内に実質的に均一に分布される。こうして、三次元組織構造の形成が可能になる。
本発明によるインプラントは、幾度かすでに論じたように、組織欠陥の治療のために使用される。好ましい用途は、具体的には自己軟骨細胞移植又はマトリックス関連マイクロフラクチャー法との関連におけるヒト又は動物の軟骨の損傷及び/又は負傷の治療、肩腱板の欠陥の治療、骨欠陥の治療(例えば顎の洞補強)、並びに、ヒト又は動物の皮膚の損傷、負傷、及び/又は火傷の治療に関する。
【0079】
ここでも、本発明による複合材料は、その構造により、案内型の組織再生という意味で、保護付きのそして直接的な欠陥修復を容易にする。
最後に、本発明は、既に述べたように、in vitroで培養された細胞で、細胞に基づく軟骨再生を行う方法に関する。本発明は、自己又は同種起源の軟骨細胞又は幹細胞を採取し、本発明による複合体の第2層上へ、潜在的に軟骨形成性の細胞を播種し、そして患者における軟骨欠陥部位に細胞を有する複合材料を挿入することを含む。
複合材料の形状は、このためには好ましくは、軟骨欠陥の形状に調和される。さらに、複合材料の第1層は、これが軟骨内に挿入されたときには、外方に向けられることが好ましい。
【0080】
本発明の好ましい実施態様の場合、播種された細胞は、複合材料の植え込み前に、好ましくは4〜14日間にわたってin vitroで培養される。
【実施例】
【0081】
例1:本発明による複合材料の製造及び特性
この例は、ウシの心膜を第1層として使用する、本発明による複合材料の製造に関する。
可能な限り最高の生体適合性を保証するために、最大限可能な範囲で脂肪、酵素、及びその他のタンパク質なしで形成された心膜を使用した。膜の凍結乾燥によって、コラーゲンのためのルーズな繊維構造が得られた。実質的にI型コラーゲンから成るこの種の心膜はまた、神経外科において結合組織構造の代わりとして使用される。
【0082】
それぞれ約10 x 10cm2のサイズの、この心膜の3つの小片を、高さ約3cmの下敷きブロック上に粗面側を上方に向けて固定した。これらの3つのブロックを、次いで、長さ及び幅40x 20cm2、高さ6cmのボックス・モールドの床面に分配した。
複合材料の第2層を製造するために、先ず第一にブルーム強度300gの豚皮ゼラチンの12重量%溶液を調製した。ゼラチンは、60℃の水中に溶解した。溶液を超音波によって脱ガスし、そしてゼラチンに対して2000ppmのホルムアルデヒドが存在するように、適量のホルムアルデヒド水溶液(1.0重量%、室温)を添加した。
【0083】
均質化された混合物を45℃まで加熱し、そして5分間の反応時間後に、約30分間にわたってこれらを空気で機械的に発泡し、湿潤密度130g/lのゼラチン発泡体が得られた。
心膜が張られたボックス・モールドに、温度27℃のこの発泡済ゼラチン溶液を充填し、そしてゼラチン発泡体を、約6〜8日間にわたって温度26℃及び相対湿度10%で乾燥させた。
【0084】
乾燥後、ゼラチン発泡体は、主に開いた孔を含むスポンジ構造を有する頑丈な材料を形成した(以下の文ではゼラチン・スポンジと呼ぶ)。心膜と直接的に接触したゼラチン発泡体を乾燥させることにより、これらの領域の大部分にわたる2種の材料間の安定な結合が生じた。このことはさらに、心膜上に使用される表面の粗さによっても促進される。
付着しているゼラチン・スポンジと一緒に、サイズ1.5 x 1.5cm2の心膜片を切り取り、膜の上方のゼラチン・スポンジを、これらの小片の厚さが約3mmとなる程度に切除した。
【0085】
複合材料の第2層を形成するゼラチン・スポンジは、前記例において乾燥後、密度22g/l及び平均孔直径約250μmを有する。製造環境を変化させることにより、これらのパラメータは、複合材料に集団形成されるべき細胞のサイズに、平均孔直径を合致させるために、広範囲にわたって制御することができる。
【0086】
このように、例えば発泡強度を変化させることにより、ゼラチン・スポンジの湿潤密度が175g/l、乾燥密度が27g/l、そして平均孔直径が約200μmであるか、或いは湿潤密度が300g/l、乾燥密度が50g/l、そして平均孔直径が約125μmである複合材料を、上記手順に従って製造することもできる。
【0087】
複合材料の第2層のための十分に長い直径を保証するために、ゼラチンに第2の架橋工程を施した。このために、サイズがそれぞれ1.5 x 1.5cm2のキャリヤ材料片を、17時間にわたって乾燥器内で、室温で17重量%のホルムアルデヒド水溶液の平衡蒸気圧に曝した。乾燥器は予め2〜3回排気し、そしてこれに空気を再充填しておいた。
【0088】
図1には、こうして製造された本発明による複合材料の断面を光学顕微鏡で撮影した画像が示されている。これにおいて、この画像では、第1層は、心膜11によって形成されており、そして第2層12は、平均孔直径が約250μmのゼラチン・スポンジによって形成されている。大部分が開いている孔を含む第2層構造を、明確に見ることができる。
【0089】
第2の架橋工程の効果を実証するために、2回架橋されている複合材料の分解挙動を、1回架橋されている複合材料の分解挙動と比較した。このために、サイズがそれぞれ約1.5 x 1.5cm2の上記複合材料の試験片、並びに、気相におけるいかなる後続の架橋にも曝されていない基準試料を、75mlのPBS緩衝剤(pH7.2)中に入れ、そして37℃で保存した。
【0090】
このことは、1回しか架橋されていないゼラチンを有する複合材料の試料の場合、3日後経過しただけで、第2層は完全に分解された。対照的に、上記の気相における後続の架橋に曝された試料の場合、第2層は、14日後にも、80重量%よりも多くの範囲までまだ残された。全ての試料に関して、14日後には、第1層の心膜には崩壊をまだ見ることはできなかった。
【0091】
これと関連して、複合材料に細胞集団が形成される場合、又は複合材料が体内にある場合、分解のための実際の時間はこの試験で見いだされた時間とは異なり得ることに、当然留意しなければならない。とはいえ、この結果は、生理学的条件下の第2層の寿命を、ゼラチンの2段階架橋によって長くできることを示し、このことは、複合材料の医療用途にとって、具体的には軟骨移植分野において極めて重要である。
【0092】
さらに、製造条件を変化させることにより、目標を定めて寿命に影響を与えることが可能である。具体的には、ゼラチン溶液中の架橋剤の比率が高ければ高いほど、ゼラチン・スポンジの密度は高くなり、且つ/又は、気相における架橋剤に対する曝露時間が長くなればなるほど、このことは、分解時間を長くする。
【0093】
加えて、寿命は熱後処理によってさらに長くすることもできる。これは、この例において、第2の架橋工程後に試料片を真空によって脱ガスし、次いで6秒間にわたって105℃で回転蒸発器によって約14mbarの真空下で保持することによって、行うことができる。
【0094】
この種類の熱後処理が行われる場合には、1〜4週間の第2層の寿命を有する複合材料を得るための、第2の架橋工程におけるホルムアルデヒドのための17時間の反応時間を、例えば2時間又は5時間に短縮することができる。この手順によって、第2層が有する過剰のホルムアルデヒドの残留物も、最大40%だけ低減される。本発明による複合材料が、植え込まれるか又は細胞集団を形成される前に洗浄されるのを必要とする時間は、これにより短縮される。
【0095】
例2:本発明による別の複合材料の製造
この例は、綿繊維で強化されたゼラチン膜を第1層として使用する、本発明による複合材料の製造に関する。
第1層を製造するために、豚皮ゼラチン(ブルーム強度300g)20gを、71gの水と9gのグリセリンとの混合物中に60℃で溶解し、そして溶液を超音波によって脱ガスした。グリセリンはこの場合、製造されるゼラチン膜の或る程度の可撓性及び延伸可能性を保証するために、可塑剤として役立った。
【0096】
1gの短綿繊維(リンター)を、強化用材料として、25gの水中のスラリーの形態にし、そしてこの懸濁液を、ゼラチンとグリセリンとの溶液に連続撹拌しながら添加した。この溶液にホルムアルデヒドの水溶液2g(2.0重量%、室温)を添加した後、これを均質化し、そしてポリエチレン下敷き上に厚さ1mmまで、約60℃で絞り出した。
25℃及び相対湿度30%で約3日間にわたって乾燥させた後、製造された膜をPE下敷きから剥離した。
【0097】
繊維強化されたゼラチン膜の厚さは約200〜250μmであり、また引裂強さは、約45%の極限伸びに対して約22N/mm2であった。対応して製造された強化されていないゼラチン膜は対照的に、引裂強さが約15N/mm2であった。
第2層は、例1において説明したように製造し、ボックス・モールド(心膜なし)に、発泡済ゼラチン溶液を充填した。乾燥済ゼラチン・スポンジから約2〜3mm厚の層をカットした。
【0098】
繊維強化されたゼラチン膜(第1層)とゼラチン・スポンジ(第2層)とを、骨ゼラチン(ブルーム強度160g)の溶液によって、全表面領域にわたって互いに付着させ、次いで、製造された複合材料を、例1において記載されているように、ホルムアルデヒドを用いた、気相における第2の架橋に曝した。
【0099】
或いは、ゼラチン溶液を接着剤として使用する代わりに、2つの層間の結合は、既に乾燥させたスポンジによって形成することもでき、スポンジは、絞り出された膜内に、この膜がまだ乾いていない状態で部分的に圧入される。このようにして、全表面積全体にわたる安定した結合を達成することができる。
【0100】
この例の変更形において、綿繊維の代わりにコラーゲン繊維を使用した。60gの水中5gのコラーゲン、又は90gの水中10gのコラーゲン繊維を、ゼラチン及びグリセリンの溶液に添加した。
【0101】
乾燥済膜の引裂強さは、約40%(5gの繊維)の極限伸びに対して約25N/mm2であり、そして約27%(10gの繊維)の極限伸びに対して約30N/mm2であるのに対して、対応する強化されていない膜の引裂強さは、約17N/mm2であった。
コラーゲン繊維で強化された膜の引裂強さは、気相における第2の架橋によって、さらに約28N/mm2(5gの繊維)及び約33N/mm2(10gの繊維)に上昇した。
【0102】
例3:本発明による複合材料における軟骨細胞集団の形成
この例では、例1に従って製造され、そして2段階で架橋された複合材料における、豚のコンドロサイト(軟骨細胞)の集団形成について説明する。これは、ヒトの細胞、例えば関節軟骨細胞がキャリヤ材料上でin vitroで培養される、軟骨細胞移植の試験と見なすことができる。
【0103】
DMEM/10%FCS/グルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンを、培地として使用した。これは哺乳動物細胞の培養のための標準培地である。複合材料を、細胞集団の形成前に培地で洗浄した。次いで複合材料の第2層上に、1cm2当たり、150μmの培地中に懸濁された100万の軟骨細胞を播種した。次いでキャリヤ材料を、37℃で4週間にわたって培地中でインキュベートした。
【0104】
図2は、2週間にわたるインキュベーション後の複合材料の第2層を、光学顕微鏡を使用して撮影した画像を示している。軟骨細胞の細胞核13は、容積全体にわたって極めて均一に分布されている。第2層のスポンジ構造は、2週間経過中に大部分が分解し、そして、軟骨細胞によって合成された細胞外マトリックス14に取って代わられた。スポンジ構造15の残りは、例えば図面の右縁部にまだ見ることができる。
【0105】
ここでもう一度述べておくと、第2層の材料の分解はこれらの条件下では、例1で説明した試験の場合のように、特にゼラチンの酵素的分解に起因し得るPBS緩衝剤中の分解よりも素早く行われる。
【0106】
図3は、4週間の集団形成時間後の、本発明による複合材料を示す写真である。複合材料は、鉗子16によって保持され、第2層は上向きにされている。心膜11が極めて頑丈なため、複合材料は前述のように、高い形状安定性を有しており、従って容易に取り扱うことができる。加えて、4週間後に、心膜11とゼラチン・スポンジ12又はスポンジ内に形成された細胞外マトリックスとの間に安定な結合も形成される。
【0107】
この試験の結果は、ヒトの軟骨細胞を利用することにより製造することができる対応する組織インプラントが、細胞に基づく軟骨再生の分野における使用に非常に適していることを示す。
【0108】
本発明のこれらの及び更なる利点を、図面に関連する添付の例に基づいてより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明による複合材料の断面を、光学顕微鏡を使用して撮影した画像である。
【図2】図2は、2週間の軟骨細胞集団形成の後に、本発明による複合材料の第2層を、光学顕微鏡を使用して撮影した画像である。
【図3】図3は、4週間の軟骨細胞集団形成の後に、本発明による複合材料を、光学顕微鏡を使用して撮影した画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって:
− 生理学的条件下で不溶性であり、吸収性であり、そして非ゲル化性である第1材料を含む第1自己支持型層と;
− 主に開いた孔を含む構造を有する、架橋されたゼラチン状の第2材料を基剤として製造された第2層と
を含む複合材料。
【請求項2】
該不溶性であり、吸収性であり、そして非ゲル化性の第1材料が、コラーゲンを基剤とする平面状材料である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
コラーゲンを基剤とする該平面状材料が、動物起源の天然膜である、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
該動物性の膜が心膜である、請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
該動物性の膜が、該第2層に向けられた粗面側を有している、請求項2から4までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
該第1材料が強化用材料を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
該第1層内の該強化用材料の比率が、5重量%以上である、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
該第1層内の該強化用材料の比率が、最大60重量%である、請求項6又は7に記載の複合材料。
【請求項9】
該強化用材料が、粒子及び/又は分子強化用材料から選択されている、請求項6から8までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
該粒子強化用材料が強化用繊維を含む、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
該強化用繊維が、多糖繊維及びタンパク質繊維、特にコラーゲン繊維、絹及び綿繊維、並びにポリアクチド繊維、及び前記のもののうちのいずれかの混合物から選択されている、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
該分子強化用材料が、ポリアクチドポリマー及びこれらの誘導体、セルロース誘導体、並びにキトサン及びその誘導体から選択されている、請求項9に記載の複合材料。
【請求項13】
該第1層が、該第1材料の該強化用材料が埋め込まれたマトリックスを含む、請求項6から12までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項14】
該マトリックスがゼラチンを含む、請求項13に記載の複合材料。
【請求項15】
該マトリックスが、架橋された材料を含有するゼラチンを基剤として製造されている、請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
該第1層の引裂強さが、20N/mm2以上である、請求項1から15までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項17】
該架橋されたゼラチン状の第2材料が、大部分がゼラチンから形成されている、請求項1から16までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項18】
該第2材料が、実質的に完全にゼラチンから形成されている、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
該ゼラチンのエンドトキシン含有率が、LAL試験によって測定して、1,200 I.U./g以下、特に200 I.U./g以下である、請求項1から18までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項20】
該第2材料中の該ゼラチンが架橋されている、請求項1から19までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項21】
該第2材料が、アルデヒド、ジアルデヒド、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、及びハロゲン化アルキルから選択された架橋剤を使用して架橋されている、請求項1から20までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項22】
該架橋剤がホルムアルデヒドを含む、請求項21に記載の複合材料。
【請求項23】
該第2材料が実質的には、過剰の架橋剤を含まない、請求項1から22までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項24】
該第2材料の過剰の架橋剤の含有率が、約0.2重量%以下である、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
該第2材料が、酵素的に架橋されている、請求項1から20までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項26】
該第2材料が、トランスグルタミナーゼを使用して架橋されている、請求項25に記載の複合材料。
【請求項27】
該第2層が、繊維構造を有している、請求項1から26までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項28】
該繊維構造が、布地材料、編み地材料、又は不織布材料である、請求項27に記載の複合材料。
【請求項29】
該第2層がスポンジ構造を有している、請求項1から26までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項30】
該スポンジ構造の平均孔直径は、500μm以下である、請求項29に記載の複合材料。
【請求項31】
該スポンジ構造の平均孔直径は、100〜300μmである、請求項30に記載の複合材料。
【請求項32】
該第2層の密度が、10〜100g/lである、請求項1から31までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項33】
該第2層の密度が、10〜50g/lである、請求項32に記載の複合材料。
【請求項34】
該第2層の密度が、15〜30g/lである、請求項33に記載の複合材料。
【請求項35】
該第2層が、水和状態にあるときに弾性変形可能である、請求項1から34までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項36】
該第2層が、水和状態で22N/mm2の圧力作用によって容積を圧縮された後、10分以内に90%以上まで復元する、請求項35に記載の複合材料。
【請求項37】
水和状態の第2層は、3日後に、5%未満の容積が低減するか、又は容積が増大する、請求項1から36までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項38】
該第2層が、標準的な生理学的条件下で少なくとも1週間にわたって安定である、請求項1から37までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項39】
該第2層が、標準的な生理学的条件下で少なくとも2週間にわたって安定である、請求項38に記載の複合材料。
【請求項40】
該第2層が、標準的な生理学的条件下で少なくとも4週間にわたって安定である、請求項38に記載の複合材料。
【請求項41】
該第1層と該第2層とが互いに直接に結合されている、請求項1から40までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項42】
該第1層と該第2層とが、接着剤によって互いに結合されている、請求項1から40までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項43】
該接着剤がゼラチンを含む、請求項42に記載の複合材料。
【請求項44】
該複合材料の厚さが2〜5mmである、請求項1から43までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項45】
該複合材料の厚さが最大3mmである、請求項44に記載の複合材料。
【請求項46】
さらに、該第2層に結合された第3層を含む、請求項1から45までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項47】
該第3層が、ゼラチン状材料を基剤として製造されている、請求項46に記載の複合材料。
【請求項48】
該第3層のゼラチン材料が架橋されている、請求項47に記載の複合材料。
【請求項49】
該第3層が実質的に閉じた構造を有している、請求項46から48までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項50】
該第3層が多孔質構造を有しており、該第3層の平均孔直径が、該第2層の構造の平均孔直径よりも小さい、請求項46から48までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項51】
該第3層が、1種又は2種以上のリン酸カルシウム、アパタイト、又はこれらの混合物を含む、請求項46から50までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項52】
請求項1から51までのいずれか1項に記載の複合材料を製造する方法であって:
− 生理学的条件下で不溶性であり、吸収性であり、そして非ゲル化性である第1材料を含む第1自己支持型層を準備し;
− 架橋されたゼラチン状の第2材料を基剤として第2層を、該第2層が主に開いた孔を含む構造を有するように製造し;そして
− 該第1層と該第2層とを結合し、複合材料を形成する
ことを含む、複合材料を製造する方法。
【請求項53】
該第1層と該第2層との結合が、接着剤によって達成される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
該第1層と該第2層との結合は、ゼラチン状マトリックスを含む該第1層内に該第2層を部分的に圧入することにより達成される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
該第1層と該第2層との結合は、該第2層の製造過程中に達成される、請求項52から54までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
a) 該第1層を準備し;
b) 該ゼラチン状の第2材料の水溶液を調製し;
c) 該溶解された第2材料を部分的に架橋し;
d) 該溶液を発泡し;
e) 該発泡済溶液を該第1層に被着し;そして
f) 該発泡済溶液を乾かしておき、主に開いた孔を含む構造を有するように該第2層を形成する
工程を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
該ゼラチンが、工程c)で部分的に架橋される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
さらに、
g) 該第2層内に含まれる材料を架橋する
工程を含む、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
工程g)の架橋が、気相における架橋剤の作用によって行われる、請求項56から58までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
工程g)が行われる場合、工程c)及びg)の該架橋剤が、同じもの又は異なるものであり、そしてそれぞれの場合に、アルデヒド、ジアルデヒド、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、及びハロゲン化アルキルから選択される、請求項56から59までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
工程c)及び/又はg)の該架橋剤が、ホルムアルデヒドを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
工程c)の該架橋剤が該ゼラチンに対して、600〜5,500ppm、好ましくは2,000〜4,000ppmの量で該溶液に添加される、請求項56から61までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
工程c)及び/又はg)の該架橋剤が酵素を含む、請求項56から59までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
工程c)及び/又はg)の該架橋剤がトランスグルタミナーゼを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
架橋後に該第2層から過剰の架橋剤が除去される、請求項56から64までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
該複合材料に、減圧での熱後処理が施される、請求項56から65までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
該熱後処理が80〜160℃の温度で行われる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
さらに、該複合材料の該第2層に第3層を被着することを含む、請求項52から67までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
in vitroで細胞を培養するための、請求項1から51までのいずれか1項に記載の複合材料の使用。
【請求項70】
該第2層には、in vivoでの細胞の成長による集団が形成される、請求項1から51までのいずれか1項に記載の複合材料の使用。
【請求項71】
該第2層内の細胞が、in vitroでの集団形成により埋め込まれる、請求項70に記載の使用。
【請求項72】
該細胞が軟骨細胞である、請求項69から71までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項73】
該細胞が、成人間充織幹細胞である、請求項69から71までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項74】
該細胞が腱細胞である、請求項69から71までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項75】
該細胞が骨膜細胞である、請求項69から71までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項76】
該細胞が線維芽細胞である、請求項69から71までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項77】
該細胞がケラチノサイトである、請求項69から71までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項78】
該細胞が、自己又は同種起源を有する、請求項69から77までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項79】
請求項1から51までのいずれか1項に記載の複合材料と、該第2層内に埋め込まれた細胞とを含むインプラント。
【請求項80】
請求項1から51までのいずれか1項に記載の複合材料と、第2層内に培養された細胞とを含むインプラント。
【請求項81】
該細胞が、該複合材料の第2層内に実質的に均一に分布されている、請求項79又は80に記載のインプラント。
【請求項82】
ヒト又は動物の軟骨組織の損傷及び/又は負傷を治療するための、請求項79から81までのいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項83】
軟骨細胞の自己又は同種移植に使用するための、請求項82に記載のインプラント。
【請求項84】
軟骨、腱、又は骨を再生するために自己又は同種成人間充織幹細胞の移植に使用するための、請求項79から81までのいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項85】
ヒト又は動物の皮膚の損傷、負傷、又は火傷の治療のための、請求項79から81までのいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項86】
該第2層の構造が標準的な生理学的条件下でヒドロゲル型構造に変換可能である、運動系における物質欠乏の治療のための、請求項79から81までのいずれか1項に記載のインプラント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−515619(P2009−515619A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540510(P2008−540510)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010972
【国際公開番号】WO2007/057175
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(502084056)ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト (25)
【出願人】(508148138)テテック ティシュー エンジニアリング テクノロジーズ アクチェンゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】