説明

特に潤滑剤からなる流動可能な媒体を搬送する装置

導管システムの構成要素でありモータで駆動可能なポンプを備える、特に潤滑剤からなる流動可能な媒体を搬送する装置は、エネルギを供給することによって作動可能な少なくとも1つの加熱要素(21)が、ポンプ(1)のハウジング(3)の外側の、該ハウジング(3)に熱を伝達可能な位置に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導管システムの構成要素でありモータで駆動可能なポンプを備える、特に潤滑剤からなる流動可能な媒体を搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の公知の装置では、不都合なある運転条件の時に、運転障害、例えば、搬送効率の低下、ポンプの過負荷、または完全な不作動の恐れがある。このような障害は、特に、潤滑剤循環路における潤滑油の搬送において油温度が低すぎる時に発生する場合がある。そのような運転状態は、例えば、ある設備のコールド運転期に発生し、または、風力発電所で冬期のような条件で発生し、これらの状態は、長期にわたって持続する場合がある。搬送すべき潤滑油の粘性が、相応に大幅に高くなることによって、少なくとも、搬送効率が低下し、それによって、付属する機械設備が危険に曝されることになり、または、悪い場合には、ポンプが過負荷となり、または完全に動かなくなり、さらに、それによって、付属する設備の、付随する損害が引き起こされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来技術に鑑みて、本発明は、導管システムおよびその中の、搬送すべき媒体で非常に低い温度が支配的である場合でも運転の安全性が保証される、特に潤滑剤からなる流動可能な媒体を搬送する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴を全体に有する装置によって解決される。
【0005】
請求項1の特徴部に対応して、本発明の特徴は、ポンプのハウジングに外部から熱が伝達されることにある。それによって、第一に、必要な場合に直ぐに、導管システムの、重要な、すなわち障害の生じやすい領域で、すなわちポンプの所で直接、温度を上げることができる。さらに、ポンプハウジングの加熱によって、搬送される媒体自体の温度も相応に上昇し、それによって、付属する配管系の全体の温度が相応に上昇させられ、潤滑剤循環路における場合によっては低すぎる油温度も高められる。
【0006】
特に有利な実施態様では、正の温度係数を有する自己制御電気抵抗の形態、例えば、いわゆる正温度係数加熱要素(PTC加熱要素)の形態の、少なくとも1つの加熱要素が備えられている。商業的に入手可能なPTC加熱要素は、チタン酸バリウムを基本材料とするドープ多結晶セラミックから構成されている。このようなPTC要素によって迅速な加熱が保証され、このようなPTC要素は、良好な自己制御挙動を示し、それにより、自己制御性に基づいて加熱し過ぎる恐れがないため、寿命が長い。このようなPTC要素を用いることは、そのような要素によって、制御・調節電子機器も温度センサも必要とすることなく、自動的に一定の所望の温度を保つことができることからも、特に好ましい。
【0007】
ポンプのハウジングは、PTC加熱要素がそれぞれ組み込まれた2つ以上の外壁部分を有するのが有利である。
【0008】
この場合、PTC加熱要素が、ハウジングの、ポンプの内部の押し出し要素に空間的に隣接する外壁部分に組み込まれた構成とするのが有利である。このような配置によって、温度が低すぎないようにするのに重要な所望の領域で、特に、効果的かつ迅速な加熱が行われる。
【0009】
ポンプハウジングの所に、ポンプの内部の、押し出し要素が配置された流路の最初と最後を形成する流体入口および流体出口がポンプハウジングの前面壁と背面壁に互いに一直線上に位置するように配置されている実施態様では、前面壁と背面壁を互いに連結する側壁上で、流体入口および流体出口の高さにある外壁部分にPTC加熱要素がそれぞれ配置されているのが有利である。それによって、ポンプの内部の流路の領域の特に適切な加熱が得られる。
【0010】
有利な実施態様では、PTC加熱要素の支持体として、対応する外壁部分に熱を伝達するように接触しているアルミニウム板が備えられており、このアルミニウム板の外面に接触して、扁平な構成に形成されたPTC加熱要素が配置されている。PTC加熱要素をこのように支持することによって、ポンプハウジングへの特に良好な熱伝達が保証される。
【0011】
この場合、支持体をU字形に形成し、互いに平行に延びるU字脚部で、ポンプのハウジングの、互いに反対側の2つの外壁部分をそれぞれ囲み、各U字脚部の外面にPTC加熱要素を配置することができる。
【0012】
PTC加熱要素は、U字脚部の外面に取り付けられ、良好に熱を伝達する金属材料から形成された筐体によって、U字脚部に接触するように保持することができる。
【0013】
周囲への熱の喪失を最小限に抑えるように、ポンプのハウジングが、ポンプ軸と流体入口および流体出口を開放されつつ、断熱性の覆いによって囲まれている場合に、装置の特に良好な効率が得られる。例えばハウジングの周りに成形されているこのような覆いによって、外部への熱の流出が防止されるだけでなく、PTC加熱要素が直接干渉されるのを防ぐ保護覆いが構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に記載する実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1および2は、全体として符号1で示されたポンプを示しており、ポンプ1のポンプハウジング3は、接続フランジ7が備えられた流体入口9を手前側の前面壁5に有している。反対側の、図では見えていない背面壁には、相応の流体出口が設けられており、この流体出口は流体入口9と一直線上に並んで位置している。流体入口9と流体出口の間のポンプ1の内部の流路には、押し出し要素を構成する歯車対が設けられており、すなわち、ポンプ1は、ハウジング上面に駆動軸11が設けられている外接歯車ポンプである。図1で最も良く分かるように、ポンプハウジング3は、流体入口9の領域、駆動軸11を備えるハウジング上面、および、流体出口の、不図示の領域を開放されつつ、断熱性の覆い13によって囲まれている。これは、成形された、または発泡させられた外套とすることができる。
【0016】
図2は、ポンプハウジング3の前面壁5と背面壁の間を延びる側壁15を囲む覆い13の部分を、鉛直に切断した図で示しており、側壁15と覆い13の間に、U字形状の支持体17が設けられているのが分かる。
【0017】
支持体17の詳細が図3〜5から分かる。アルミニウム板から形成された支持体17は、ポンプハウジング3の側壁15に接触するように設けられた2つのU字脚部19を有し、2つのU字脚部19は、互いに平行な平面を形成している。各U字脚部19の外側には、図3〜5に模式的にのみ示されているPTC(正温度係数)要素ユニット21が取り付けられている。図6および7は、PTC要素ユニット21の詳細を示している。各PTC要素ユニット21は、扁平な直方体の形状の本来のPTC要素29を備えている。PTC要素29は、筐体31に設けられており、筐体31は、熱を良く伝える金属から、溝が形成された円形のディスクのように形成されている。筐体31は、中央に溝33を有し、溝33は、相応のU字脚部19に接触する筐体31の下面35に設けられ、収容溝37を構成しており、収容溝37内に、PTC要素29が接着フィルム片39、この実施形態では、カプトン(登録商標)片によって取り付けられている。収容溝37の両側には、高さがより低い溝41が設けられており、溝41に、筐体31を相応のU字脚部19にねじで取り付けるための取り付け穴43または取り付け長穴45が備えられている。
【0018】
PCT要素29への電力供給のために接続導線27が設けられており、PCT要素29で通常そうであるように、PCT要素29に備えられた平坦な金属電極が接続導線27に接続されている。PTC要素29に隣接する端部領域で、接続導線27は、シリコン製の絶縁管47によって覆われている。さらに、接続導線27の、絶縁管47が備えられた端部との遷移領域でPCT要素29に隣接する領域にゴムを溶着させることができる。
【0019】
支持体17の相応のU字脚部19に取り付けられた筐体31は、PTC要素29から発生した熱を、相応のU字脚部19のアルミニウム板に伝達する伝熱板を構成しており、U字脚部19は、伝熱体としてポンプハウジング3の、相応の側壁15に隣接している。このような熱的な接続によって、加熱用のPTC要素29の自己制御性を利用して、運転状態が変化する中で、ポンプハウジング3を所望の温度に保つことが、そのために制御・調節電子機器を必要とすることなく、可能となる。
【0020】
以上、本発明を、外接歯車ポンプの例で説明した。本発明を他の構成のポンプ、例えば、内接歯車ポンプ、ねじポンプ、ベーンセルポンプ、ラジアルピストンポンプ、または、他の作動原理のポンプにも適用できることが理解される。いずれにしても、相応の加熱用のPTC要素が各ポンプハウジングの、内部の相応の押し出し要素と良好に熱的に接続される位置に取り付けられるのが有利である。加熱用の、それぞれ1つのPTC要素29を備える2つのPTC要素ユニット21を用いた例で本発明を説明したが、他の数のPTC要素29を備えることもでき、扁平な構成とは違う他の構成、例えば、容器形状が丸い、または矩形のPTC要素を用いることもできることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のためのポンプの斜視図である。
【図2】ポンプハウジングの前面壁を示す正面図であり、構成要素を囲むポンプハウジングの側壁を断面して示している。
【図3】ポンプハウジングの側壁を囲む支持体の部分の斜視図であり、その外側に、加熱用のPTC要素および電気的な接続装置が設けられている。
【図4】図3の支持体の側面図である。
【図5】図3の支持体の正面図である。
【図6】筐体に支持される扁平な構成の加熱用のPTC要素の、金属製の筐体の、ほぼ原寸で示す底面図である
【図7】図6の線VII−VIIに対応する断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管システムの構成要素でありモータで駆動可能なポンプを備える、特に潤滑剤からなる流動可能な媒体を搬送する装置において、
エネルギを供給することによって作動可能な少なくとも1つの加熱要素(29)が、前記ポンプ(1)のハウジング(3)の外側の、該ハウジング(3)に熱を伝達可能な位置に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの加熱要素は、正の温度係数を有する自己制御電気抵抗要素、特に正温度係数加熱要素(29)であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポンプ(1)の前記ハウジング(3)は、前記正温度係数加熱要素(29)がそれぞれ組み込まれた2つ以上の平坦な外壁部分(15)を有することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記正温度係数加熱要素(29)は、前記ハウジング(3)の、前記ポンプ(1)の内部の押し出し要素に空間的に隣接する前記外壁部分(15)に組み込まれていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ポンプ(1)の内部の、前記押し出し要素が配置された流路の最初と最後を形成し、互いに一直線上に位置する流体入口(9)および流体出口が、前記ポンプの前記ハウジング(3)の前面壁(5)と背面壁に配置されており、前記前面壁(5)と前記背面壁を互いに連結する側壁(15)で、前記流体入口(9)および前記流体出口の高さにある前記外壁部分に前記正温度係数加熱要素(29)がそれぞれ配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記正温度係数加熱要素(29)の支持体(17)として、対応する前記外壁部分(15)に熱を伝達するように接触しているアルミニウム板が備えられており、該アルミニウム板の外面に接触して、扁平な構成に形成された前記正温度係数加熱要素(29)が配置されていることを特徴とする、請求項3から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記支持体(17)はU字形に形成され、互いに平行に延びるU字脚部(19)で、前記ポンプ(1)の前記ハウジング(3)の、互いに反対側の2つの前記外壁部分(15)を囲んでおり、前記各U字脚部(19)の外面に前記正温度係数加熱要素(29)が配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記支持体(17)の前記U字脚部(19)は、前記ポンプ(1)の前記ハウジング(3)の底部を囲む連結片(23)によって連結されており、該連結片(23)の外側に、前記正温度係数加熱要素(29)に電流を供給するための電気的な接続装置(25)が配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記正温度係数加熱要素(29)は、前記U字脚部(19)の外側に取り付けられ、良好に熱を伝達する金属材料から形成された筐体(31)によって、前記U字脚部(19)に接触するように保持されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記正温度係数加熱要素(29)の前記筐体(31)は、前記U字脚部(19)に大きな面で接触していることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ポンプ(1)の前記ハウジング(3)は、ポンプ軸(11)と流体入口(9)および流体出口を開放されつつ、断熱性の覆い(13)によって囲まれていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−532635(P2009−532635A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503422(P2009−503422)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012270
【国際公開番号】WO2007/118508
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505468200)ハイダック システム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】