説明

特徴抽出装置、特徴抽出方法、特徴抽出プログラム、および画像処理装置

【課題】ローカルバイナリパターンを用いつつ、少ない処理負荷で、画質のばらつきに対してロバストな物体検出が可能な画像特徴を抽出することができる特徴抽出装置を提供すること。
【解決手段】特徴抽出部430は、画像から、複数の解像度の解像度画像を生成する解像度画像生成部433と、生成された解像度画像の全部または一部の画素毎に、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示すローカルバイナリパターンを生成するバイナリパターン生成部を含む解像度ヒストグラム生成部434と、複数の解像度画像から生成されたローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部436とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データから画像特徴を抽出する特徴抽出装置、特徴抽出方法、特徴抽出プログラム、および、特徴抽出装置を用いた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データから画像特徴を抽出して、画像に含まれる物体を検出または識別すること(以下「物体検出」という)が、広く行われている。物体検出の技術の1つとして、ローカルバイナリパターン(LBP:Local Binary Pattern)を用いる技術が、例えば特許文献1および非特許文献1に記載されている。
【0003】
ローカルバイナリパターンは、画素毎に、周囲近傍の各画素との画素値の差分を二値化して並べたバイナリパターンである。ローカルバイナリパターンによれば、画像に含まれる濃淡パターンを抽出することができる。
【0004】
特許文献1および非特許文献1に記載の技術(以下「第1の従来技術」という)は、識別の対象となる画像(以下「対象画像」という)のある領域に対し、全画素または部分画素に対して、ローカルバイナリパターンを算出する。そして、第1の従来技術は、ローカルバイナリパターンの値のヒストグラムを、画像特徴として生成する。また、第1の従来技術は、予め、所定の物体を含む画像と含まない画像(以下「学習画像」と総称する)から同様に生成したヒストグラムに基づいて、識別器を生成して記憶しておく。そして、第1の従来技術は、識別器を用いて対象画像のヒストグラムを評価し、対象画像に所定の物体が含まれているか否かを判断する。
【0005】
ローカルバイナリパターンのヒストグラムは、輝度勾配方向ヒストグラム(HOG:Histograms of Oriented Gradients)等の画像特徴に比べて、テクスチャの違いや濃淡パターンをより高精度に表現でき、かつ、より少ない処理負荷で算出可能である。したがって、第1の従来技術のようなローカルバイナリパターンを用いた物体検出は、様々な分野への適用が期待されている。
【0006】
ところが、第1の従来技術には、単一の解像度から画像特徴を抽出し、照度が低い、あるいは、ノイズが多い画像(例えば夜間の画像)に対しては、画像特徴の正確な抽出が困難になるという課題がある。これは、いわゆるソルトアンドペッパーノイズ(salt and pepper)が生じたり、コントラストが低いことによって局所輝度特徴が小さくなることに起因する。画像特徴の抽出精度が低くなると、ひいては、ヒストグラムから生成される識別器の精度や、ヒストグラムを用いて行われる物体検出の精度も、低くなる。
【0007】
そこで、複数の解像度の画像を用いる技術が、例えば特許文献2に記載されている。
【0008】
特許文献2に記載の技術(以下「第2の従来技術」という)は、検出の対象となる画像から、複数の解像度の画像を生成し、解像度の異なる画像毎にローカルバイナリパターンのヒストグラムを生成し、最も高いスコアを採用する。通常、より低い解像度の画像のヒストグラムのほうがノイズの影響がより抑えられ、より高い解像度の画像のヒストグラムのほうが画像に含まれる物体の画像特徴をより良く反映する。したがって、第2の従来技術では、ノイズが多い画像では低解像度画像のヒストグラムを採用し、コントラストが明瞭な画像では高解像度画像のヒストグラムを採用することになり、画質のばらつきに対してロバストな物体検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−211179号公報
【特許文献2】特開2009−211490号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Timo Ahonen, Abdenour Hadid, and Matti Pietikainen, "Face Description with Local Binary Patterns: Application to Face Recognition," IEEE, Pattern Analysis and Machine Intelligence vol. 28 no. 12, pp. 2037-2041, December 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、第2の従来技術は、複数の解像度の画像間において、画質のばらつきが大きい場合には、必要以上に処理負荷が高くなるという課題がある。なぜなら、第2の従来技術では、様々な画質に対応して多数の解像度の画像を生成しなければならないからである。
【0012】
本発明の目的は、ローカルバイナリパターンを用いつつ、少ない処理負荷で、画質のばらつきに対してロバストな物体検出が可能な画像特徴を抽出することができる特徴抽出装置、特徴抽出方法、特徴抽出プログラム、および画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴抽出装置は、画像から、複数の解像度の解像度画像を生成する解像度画像生成部と、生成された前記解像度画像の全部または一部の画素毎に、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示すローカルバイナリパターンを生成するバイナリパターン生成部と、前記複数の解像度画像から生成された前記ローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部とを有する。
【0014】
本発明の画像処理装置は、所定の物体を識別するための識別器を用いて、上記の特徴抽出装置により生成された前記ヒストグラムから、前記画像に前記所定の物体が含まれるか否か判断する識別部を有する。
【0015】
本発明の特徴抽出方法は、画像から、複数の解像度の解像度画像を生成するステップと、生成された前記解像度画像の全部または一部の画素毎に、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示すローカルバイナリパターンを生成するステップと、前記複数の解像度画像から生成された前記ローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを生成するステップとを有する。
【0016】
本発明の特徴抽出プログラムは、コンピュータに、画像から、複数の解像度の解像度画像を生成する処理と、生成された前記解像度画像の全部または一部の画素毎に、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示すローカルバイナリパターンを生成する処理と、前記複数の解像度画像から生成された前記ローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを生成する処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ローカルバイナリパターンを用いつつ、少ない処理負荷で、画質のばらつきに対してロバストな物体検出が可能なヒストグラムを、画像の画像特徴として抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る特徴抽出装置を含む物体検出システムの構成を示すシステム構成図
【図2】本実施の形態における特徴抽出部の詳細な構成を示すブロック図
【図3】本実施の形態における解像度ヒストグラム生成部の詳細な構成を示すブロック図
【図4】本実施の形態に係る物体検出装置の動作を示すフローチャート
【図5】本実施の形態における画像スキャンの様子の一例を示す模式図
【図6】本実施の形態において用いられる複数の解像度の一例を示す図
【図7】本実施の形態における近傍領域のシフトの様子の一例を示す模式図
【図8】本実施の形態における解像度ヒストグラムの生成処理の一例の概要を示す模式図
【図9】本実施の形態における複数の解像度ヒストグラムの一例を示す図
【図10】本実施の形態における複数の解像度ヒストグラム合成したヒストグラムの一例を示す図
【図11】本実施の形態におけるヒストグラムの正規化の様子の一例を示す図
【図12】本実施の形態における正規化されたヒストグラムの一例を示す図
【図13】本実施の形態における解像度の違いによるノイズの影響の違いを説明するための図
【図14】本実施の形態におけるノイズレベルの低い高解像度画像から得られる解像度ヒストグラムの一例を示す図
【図15】本実施の形態におけるノイズレベルの高い高解像度画像から得られる解像度ヒストグラムの一例を示す図
【図16】本実施の形態におけるノイズレベルが低い対象画像における解像度と物体検出精度との関係を示すグラフ
【図17】本実施の形態におけるノイズレベルが高い対象画像における解像度と物体検出精度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係る特徴抽出装置を含む物体検出システムの構成を示すシステム構成図である。図1では、各装置の構成についても併せて図示する。
【0021】
図1において、物体検出システム100は、識別器学習装置200、識別器記憶装置300、および物体検出装置400を有する。識別器学習装置200および物体検出装置400は、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して、識別器記憶装置300にそれぞれ接続可能となっている。
【0022】
本実施の形態において、識別器学習装置200に用いる機械学習方法の一つの例として、Boosting法を採用する。識別器学習装置200は、予め、正規化された学習画像から、検出の対象となる物体(以下「検出対象物体」という)を検出するための識別器を学習し、学習結果である識別器を識別器記憶装置300に記憶させる。識別器学習装置200は、学習用データ記憶部210と、本発明に係る特徴抽出装置を含む特徴抽出部220と、学習部240とを有する。
【0023】
学習用データ記憶部210は、正規化された検出対象物体を含む複数の学習画像(ポジティブサンプル)と、検出対象物体を含まない複数の学習画像(ネガティブサンプル)とを予め格納する。
【0024】
特徴抽出部220は、学習画像から、ノイズの度合いに合わせて、複数種類の解像度の画像(以下「解像度画像」という)を生成し、生成された複数の解像度画像毎に、ローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを、生成する。すなわち、特徴抽出部220は、異なる解像度についてのヒストグラム(以下「解像度ヒストグラム」という)を合成したヒストグラムを、画像特徴として生成する。
【0025】
また、特徴抽出部220は、各解像度画像から解像度ヒストグラムを生成する際に、まず、特徴抽出領域を取得する。特徴抽出領域とは、画像特徴の抽出の対象となる画像領域である。例えば、検出対象が特定の人物の顔である場合には、特徴抽出領域は、人の顔部品、例えば、眼、または鼻等の画像領域を含む、ランダムに配置された多数の画像領域とすることができる。また、検出対象が人の全身である場合には、特徴抽出領域は、例えば、頭部、腕、足等の画像領域を含む、ランダムに配置された多数の画像領域とすることができる。
【0026】
そして、特徴抽出部220は、特徴抽出領域毎に、その画像特徴を抽出し、学習部240へ出力する。より具体的には、特徴抽出部220は、まず、特徴抽出領域の全部または一部の画素毎に、ローカルバイナリパターンを生成する。ローカルバイナリパターンとは、注目画素に対し、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示す情報である。そして、生成されたローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラム(以下、単に「ヒストグラム」という)を、その特徴抽出領域の画像特徴として生成する。なお、一つの解像度画像に、複数の特徴抽出領域から対応数のヒストグラムを求めて、前記ヒストグラム群を結合し、前記解像度画像の画像特徴とする。なお、以下の説明においては、デジタル値はビット値、すなわち「1」と「0」とによって情報を示す値であるとして説明する。但し、本実施の形態にかかる発明は、「1」と「0」とによって情報を示すだけでなく多値化にも対応し、かかる場合には、ビット値をデジタル値とすればよい。
【0027】
学習部240は、ポジティブサンプルから得られたヒストグラム群と、ネガティブサンプルから得られたヒストグラム群とに基づいて、検出対象物体が含まれる画像と含まれない画像とを区分するための1つまたは複数の識別器を生成する。すなわち、学習部240は、識別器として、特徴抽出領域情報と、特徴抽出領域情報に対応する識別情報とを生成する。特徴抽出領域情報とは、特徴抽出領域の範囲を示す情報であり、例えば、特徴抽出領域の位置およびサイズを含む。識別情報とは、対象画像の特徴抽出領域のヒストグラムを評価し、対象画像に所定の物体が含まれているか否かを判定するための情報である。そして、学習部240は、識別器記憶装置300に対して、生成した識別情報を特徴抽出領域情報と共に送信し、特徴抽出領域情報と組み付けて記憶させる。
【0028】
物体検出装置400は、識別器記憶装置300に記憶された識別器を取得して、対象画像に対する物体検出を行う。物体検出装置400は、カメラ410と、画像入力部420と、本発明に係る特徴抽出装置を含む特徴抽出部430と、識別部450とを有する。
【0029】
カメラ410は、対象画像の撮影を行い、対象画像を画像入力部420へ出力する。
【0030】
画像入力部420は、対象画像を、予め定められたサイズのウィンドウでスキャンし、スキャンした個々の画像領域(以下「窓領域」という)を、特徴抽出部430へ出力する。
【0031】
特徴抽出部430は、窓領域毎に、その窓領域のうち、識別器記憶装置に記憶された特徴抽出領域情報が示す範囲を、特徴抽出領域として取得する。
【0032】
そして、特徴抽出部430は、特徴抽出領域毎に、その画像特徴を抽出し、識別部450へ出力する。より具体的には、特徴抽出部430は、特徴抽出領域の画素毎にローカルバイナリパターンを生成し、ローカルバイナリパターンのヒストグラムを、その特徴抽出領域の画像特徴として生成する。
【0033】
但し、特徴抽出部430は、窓領域から、複数の解像度について解像度画像を生成し、複数の解像度画像から生成されたローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを、生成する。すなわち、特徴抽出部430も、特徴抽出部220と同様に、複数の解像度ヒストグラムを合成したヒストグラムを生成する。
【0034】
なお、特徴抽出部430が窓領域に対して行う処理と、上述の特徴抽出部220が学習画像に対して行う処理は類似している。すなわち、特徴抽出部220は、例えば、候補領域として予め用意した多くの領域の全てを、特徴抽出領域として取得する。これに対し、特徴抽出部430は、識別器記憶装置300から、既に学習部240によって選択された特徴抽出領域情報が示す領域のみを、特徴抽出領域として取得する。よって、以下、適宜、一方の構成および動作の説明をもって他方の構成および説明の説明を省略する。
【0035】
図2は、特徴抽出部430の詳細な構成を示すブロック図である。
【0036】
図2において、特徴抽出部430は、ノイズレベル測定部431、解像度選択部432、解像度画像生成部433、解像度ヒストグラム生成部434、重み生成部435、およびヒストグラム生成部436を有する。
【0037】
ノイズレベル測定部431は、窓領域の画質に関する情報に基づいて、窓領域のノイズのレベル(以下「ノイズレベル」という)を判断し、解像度選択部432および重み生成部435へ出力する。へ出力する。窓領域のノイズレベルは、通常、対象画像のノイズレベルに対応している。
【0038】
画質に関する情報は、例えば、注目画素と近傍画素との全ての差分が正の値であるときのローカルバイナリパターンに対応するビンの値、注目画素と近傍画素との全ての差分が負の値であるときのローカルバイナリパターンに対応するビンの値、輝度ヒストグラム、カメラ410の露出、カメラ410のシャッタースピード、窓画像の動き情報、およびカメラ410の動き情報の少なくとも1つを含む。本実施の形態では、ノイズレベル測定部431は、上述のビンの値、つまり、白い点や黒い点として画素単位で発生するノイズ(ソルトアンドペッパーノイズ)に対応するビンの値に基づいて、窓領域のノイズレベルを算出する。その詳細については、後述する。なお、このようなノイズは、例えば、夜間等の画像の暗さや、カメラ410に付着した雨滴等によって発生する。
【0039】
解像度選択部432は、入力されたノイズレベルに基づいて、ノイズレベルがより高いほどより低い解像度が更に含まれるように、1つまたは複数の解像度を選択し、選択結果を、解像度画像生成部433および重み生成部435へ出力する。
【0040】
解像度画像生成部433は、入力された選択結果に従って、窓領域から、選択された各解像度の画像を生成する。そして、解像度画像生成部433は、生成した各解像度の画像(以下「解像度画像」という)を、解像度ヒストグラム生成部434へ出力する。
【0041】
解像度ヒストグラム生成部434は、入力された解像度画像毎に、ヒストグラムを生成し、ヒストグラム生成部436へ出力する。
【0042】
図3は、解像度ヒストグラム生成部434の詳細な構成を示すブロック図である。
【0043】
図3において、解像度ヒストグラム生成部434は、特徴抽出領域取得部440、画素近傍取得部441、近傍差分計算部442、バイナリパターン生成部443、および解像度ヒストグラム算出部445を有する。
【0044】
特徴抽出領域取得部440は、各解像度画像から特徴抽出領域を取得し、画素近傍取得部441へ出力する。
【0045】
画素近傍取得部441は、入力された各特徴抽出領域に対し、注目画素をシフトさせていく。画素近傍取得部441は、注目画素毎に、注目画素を中心とする3×3の領域(以下「近傍領域」という)の9個の画素値を取得する。そして、画素近傍取得部441は、近傍領域毎に、取得した9個の画素値を、近傍差分計算部442へ出力する。本実施の形態では、画素値は、輝度値であるものとする。なお、画素値としては、例えば、画像にエッジ強調などの前処理を施した輝度値の一次微分や二次微分により得られる値、あるいは、赤、青、緑の輝度を一つのベクトル値として表現したカラー値等、他の各種の値を採用しても良い。
【0046】
近傍差分計算部442は、近傍領域毎に、注目画素と周囲の各近傍画素との輝度値の差分を算出し、8個の算出結果(以下「近傍差分」という)を得る。そして、近傍差分計算部442は、各近傍領域の近傍差分を、バイナリパターン生成部443へ出力する。
【0047】
バイナリパターン生成部443は、近傍領域毎に、各近傍差分が所定の閾値以上であるか否かを示すビット値を所定の順序で並べた符号を生成する。そして、バイナリパターン生成部443は、生成した符号を、ローカルバイナリパターンとして解像度ヒストグラム算出部445へ出力する。
【0048】
解像度ヒストグラム算出部445は、特徴抽出領域毎に、ローカルバイナリパターンのヒストグラムを算出し、図2のヒストグラム生成部436へ出力する。すなわち、解像度ヒストグラム算出部445は、解像度画像毎に複数の特徴抽出領域から算出したヒストグラムの群を合成したヒストグラム(以下「解像度ヒストグラム」という)を出力する。
【0049】
なお、上述のノイズレベル測定部431が用いるノイズレベル測定手法は、多数考えられる。例えば、ノイズレベル測定部431は、まず、解像度ヒストグラム生成部434のヒストグラム生成方法を用い、窓画像のローカルバイナリパターンのヒストグラムを作成する。そして、ノイズレベル測定部431は、生成された窓画像のローカルバイナリパターンのヒストグラムの「00000000」ビンと「11111111」ビンの値とに基づいて、ノイズレベルを判定する。これら2つのビンは、白い点や黒い点として画素単位で発生するノイズ(ソルトアンドペッパーノイズ)に対応する。そして、ノイズレベル測定部431は、これら2つのビンの度数が相対的に高いとき、対象画像のノイズレベルが高いと判定するものとする。
【0050】
図2の重み生成部435は、入力された解像度の選択結果およびノイズレベルに基づいて、ノイズレベルがより高いほど低い解像度に対してより大きな重み付けがされるように、解像度毎に重みを決定する。そして、重み生成部435は、決定結果を、ヒストグラム生成部436へ出力する。
【0051】
ヒストグラム生成部436は、決定された重みを、対応する解像度ヒストグラムに適用して、対象画像の画像特徴を示すヒストグラムを生成する。より具体的には、ヒストグラム生成部436は、解像度ヒストグラムの全てのビンに対して対応する重みを乗じて得られる値を、選択された全ての解像度についてビン毎に加算して、ヒストグラムを生成する。そして、ヒストグラム生成部436は、生成したヒストグラムを、図1の識別部450へ出力する。
【0052】
識別部450は、識別器記憶装置300が記憶する識別情報を取得する。識別部450は、取得した識別情報を用いて、画像入力部420がスキャンした窓領域から生成されたヒストグラムから、対象画像に検出対象物体が含まれるか否か判断する。そして、識別部450は、判断結果を、例えば画像表示装置や音声出力装置(図示せず)を介して、ユーザに通知する。
【0053】
なお、識別器学習装置200および物体検出装置400は、例えば、それぞれ、CPU(central processing unit)およびRAM(random access memory)等の記憶媒体等を含むコンピュータの構成を取ることができる。この場合、識別器学習装置200および物体検出装置400は、記憶する制御プログラムをCPUが実行することによってそれぞれ動作する。また、物体検出装置400は、その計算のみを行う専用チップにしても良い。また、識別器記憶装置300は、例えば、半導体メモリやハードディスク等の記憶媒体である。
【0054】
上述のように、本実施の形態に係る物体検出システム100は、入力画像のノイズレベルに応じて、適切な数の解像度画像と、その解像度画像の特徴とを求める。これにより、物体検出システム100は、画像に含まれる物体の画像特徴を良く反映しつつ、ノイズの影響を低減することが可能と共に、特徴抽出の処理コストを抑えることができる。したがって、例えば、上述の第2の従来技術では10種類の解像度画像を用意しなければ達成することができないような検出精度を、物体検出システム100では3種類の解像度画像で達成するといったことが可能となる。
【0055】
次に、物体検出装置400の動作について説明する。なお、識別器学習装置200における特徴抽出部220の動作は、物体検出装置400における特徴抽出部430の動作と類似しているため、その説明を省略する。
【0056】
図4は、物体検出装置400の動作を示すフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS1100において、画像入力部420は、対象画像を、予め定められたサイズのウィンドウでスキャンする。
【0058】
図5は、画像スキャンの様子の一例を示す模式図である。
【0059】
図5に示すように、画像入力部420は、対象画像510の全体を、予め定められたサイズのウィンドウ511でスキャンし、様々な位置から窓領域512を取得する。ウィンドウ511の位置によっては、図5に示すように、その窓領域512に検出対象物体513が含まれることになる。ウィンドウ511のサイズは、例えば、64画素×128画素である。
【0060】
そして、ステップS1110において、ノイズレベル測定部431は、各窓領域512に対して、ノイズレベルを算出する。
【0061】
具体的には、ノイズレベル測定部431は、窓領域512に対して、後記ステップS1300からステップS1800までの処理により、窓領域512のローカルバイナリパターンのヒストグラムを算出する。そして、ノイズレベル測定部431は、いわゆるソルトアンドペッパーノイズに対応するビン「00000000」およびビン「11111111」の度数が相対的に高いとき、対象画像のノイズレベルが高いと判定する。ビン「11111111」は、注目画素と近傍画素との差分が全て正の値であるときのローカルバイナリパターンに対応するビン、つまり、10進数で「255」に対応するビンである。また、ビン「00000000」は、注目画素と近傍画素との差分が全て負の値であるときのローカルバイナリパターンに対応するビン、つまり、10進数で「0」に対応するビンである。
【0062】
そして、ステップS1120において、解像度選択部432は、S1110で取得されたノイズレベルに基づいて、解像度画像の数および各解像度画像の解像度を選択する。本実施の形態では、解像度選択部432は、予め定められた3段階の解像度の中から、ノイズレベルに応じて、解像度を選択するものとする。ノイズレベルを算出するためのヒストグラムの生成処理は、後述のステップS1300〜S1800の処理と同様である。
【0063】
図6は、予め定められた3段階の解像度の一例を示す図である。
【0064】
図6に示すように、解像度選択部432は、例えば、窓領域のサイズと同じ64画素×128画素に相当する第1の解像度516を、選択肢として用意している。また、解像度選択部432は、更に、窓領域の25/64の画素数に相当する40×80の第2の解像度517と、窓領域の1/4の画素数に相当する32×64の第3の解像度518とを、選択肢として用意している。なお、同じ物体であっても、画像の解像度が異なると、画像におけるサイズも異なる。例えば、第1の解像度516の画像においてサイズ16×16の物体は、第2の解像度517の画像のおいてはサイズ10×10となり、第3の解像度518の画像においてはサイズ8×8となる。
【0065】
そして、ステップS1130において、重み生成部435は、選択された解像度毎に、ノイズレベルに基づいて、重みを決定する。
【0066】
ここでは、例えば、重み生成部435は、上記ヒストグラムのビン「0」の度数が予め決めた閾値T1よりも小さく、かつ、ビン「255」の度数が予め決めた閾値T2よりも小さい場合に、ノイズのレベルが低いと判断する。そして、重み生成部435は、この場合、第1の解像度のみを選択し、その重みを「1」に決定する。また、重み生成部435は、上記ヒストグラムのビン「0」の度数が予め決めた閾値T3より大きく、かつ、ビン「255」の度数が予め決めた閾値T4よりも大きい場合に、ノイズのレベルが非常に高いと判断する。そして、重み生成部435は、この場合、第1〜第3の解像度を全て選択し、第1の解像度の重みを「0.8」に、第2の解像度の重みを「0.5」に、第3の解像度の重みを「0.5」に、それぞれ決定する。また、重み生成部435は、各解像度の重みを決定する際、ノイズレベルがより高いほど、第1の解像度に加えて、より高い解像度を更に選択し、かつ、より大きい重みを解像度の低い画像に与える。
【0067】
そして、ステップS1140において、解像度画像生成部433は、選択された解像度毎に、解像度画像を生成する。具体的には、解像度画像生成部433は、第1の解像度の解像度画像については、窓領域をそのまま採用し、第2および第3の解像度の解像度画像については、窓領域に対する縮小処理を行う。
【0068】
そして、ステップS1150において、特徴抽出部430は、生成された1つまたは複数の解像度画像の解像度を1つ選択し、解像度ヒストグラム生成部434に渡す。例えば、まず、第1の解像度(64×128)を選択する。
【0069】
そして、解像度ヒストグラム生成部434は、後述のステップS1200〜S1820の処理で選択された解像度画像のLBPヒストグラムを抽出する。
【0070】
解像度ヒストグラム生成部434において、ステップS1200で、特徴抽出領域取得部440は、識別器学習装置200の学習で得られ、識別器記憶装置300に記憶した特徴抽出領域情報(位置、サイズ等)を1つ取得する。特徴抽出領域取得部440は、例えば、図5に示すように、人の頭部を含む矩形状の領域を、特徴抽出領域520として取得する。
【0071】
そして、ステップS1300において、解像度ヒストグラム生成部434の画素近傍取得部441は、特徴抽出領域の画素を、注目画素として1つ選択し、注目画素を中心とする近傍領域を決定する。画素近傍取得部441は、後述のステップS1800の判断処理によってステップS1300へ戻る度に、未選択の画素を選択し、その結果、近傍領域をシフトさせていく。
【0072】
図7は、近傍領域のシフトの様子の一例を示す模式図である。
【0073】
図7に示したように、画素近傍取得部441は、特徴抽出領域520の全体において、注目画素521として選択する画素位置をシフトさせていく。この結果、注目画素521とこれを囲む8個の近傍画素522から成る3×3の近傍領域523が、特徴抽出領域520の全体について、順次、決定されていく。
【0074】
そして、図4のステップS1400において、解像度ヒストグラム生成部434の近傍差分計算部442は、注目画素の輝度値と8個の近傍画素の輝度値のそれぞれとの差分(近傍差分)を算出する。
【0075】
そして、ステップS1500において、解像度ヒストグラム生成部434のバイナリパターン生成部443は、近傍差分を2値化してローカルバイナリパターンを生成する。ローカルバイナリパターンLBPP,Rは、例えば、注目画素の輝度値をg、近傍画素の数(本実施の形態では8)をP、近傍画素の順序をp、p番目の近傍画素の輝度値をg、近傍領域の半径に相当する画素数(本実施の形態では1)をRと置くと、以下の式(1)で表される。なお、p番目の近傍画素の座標は、[Rcos(2πp/P),Rsin(2πp/P)]と表される。
【数1】

【0076】
そして、ステップS1700において、解像度ヒストグラム算出部445は、ヒストグラムを構成するビンのうちローカルバイナリパターンLBPP,Rの該当するビンに、所定の値(例えば1)を加算する。
【0077】
図8は、ある近傍領域のローカルバイナリパターンが解像度ヒストグラムに反映されるまでの処理の一例の概要を示す模式図である。
【0078】
図8に示すように、ある近傍領域531について、注目画素の輝度値gを「128」とし、その近傍画素の輝度値gを[244,178,48,27,253,208,238,28]とする数値群532が取得されたものとする。なお、輝度値gは、近傍画素の左上から時計回りに取得されるものとする。この場合、近傍差分(g−g)の数値群533は、[116,50,−80,−101,125,80,110,−100]となる。
【0079】
ここで、2値化の閾値を「0」とすると、近傍差分を2値化して得られる数値群534は、[1,1,0,0,1,1,1,0]となる。そして、ローカルバイナリパターン535は、「11001110」(10進数では「206」)となる。
【0080】
したがって、解像度ヒストグラム算出部445は、値「1」を、現在処理中の特徴抽出領域のヒストグラムのビン「206」に加算して、解像度ヒストグラム537を生成する。
【0081】
このような、該当ビンへの値の加算を繰り返すことにより、最終的に、特徴抽出領域画像の特徴を表すヒストグラムが生成される。第mの解像度の解像度ヒストグラムH(k)は、例えば、I×Jのサイズの特徴抽出領域から得られるローカルバイナリパターンの数の最大値をKと置くと、以下の式(2)で表される。
【数2】

【0082】
そして、ステップS1800において、画素近傍取得部441は、特徴抽出領域に、処理すべきであるにもかかわらずまだ未処理となっている画素が存在するか否かを判断する。画素近傍取得部441は、未処理の画素が存在する場合(S1800:YES)、ステップS1300へ戻って未処理の画素を選択して処理を繰り返す。また、画素近傍取得部441は、特徴抽出領域における処理すべき画素の全てについて処理を完了した場合(S1800:NO)、ステップS1820へ進む。
【0083】
ステップS1820において、特徴抽出領域取得部440は、現在選択中の解像度について、予め識別器学習装置200で機械学習で選択されて、識別器記憶装置に保存されていた特徴抽出領域のすべてが処理されたかどうかを判断する。特徴抽出領域取得部440は、未処理の特徴抽出領域が存在する場合(S1820:YES)、ステップS1200へ戻って未処理の特徴抽出領域を選択して処理を繰り返す。また、徴抽出領域取得部440は、特徴抽出領域の全てについて処理を完了した場合(S1820:NO)、ステップS1830へ進む。
【0084】
そして、ステップS1830において、特徴抽出部430は、生成された全ての解像度画像の解像度について、解像度ヒストグラムを生成する処理を完了したか否かを判断する。特徴抽出部430は、未処理の解像度が存在する場合(S1830:YES)、ステップS1150へ戻って未処理の解像度を選択して処理を繰り返す。また、特徴取得部430は、全ての解像度について処理を完了した場合(S1830:NO)、ステップS1920へ進む。
【0085】
図9は、各解像度ヒストグラムの一例を示す図である。図9(A)〜図9(C)は、順に、第1〜第3の解像度の解像度ヒストグラムの一例を示す。
【0086】
図9(A)〜図9(C)に示すように、第1〜第3の解像度の解像度ヒストグラム537〜537は、画像からより多く算出されたローカルバイナリパターンのビンにおいてピークを有する。ローカルバイナリパターンの分布を表すヒストグラムの形は、画像に含まれる物体、および解像度に応じて、異なる。
【0087】
そして、図4のステップS1920において、ヒストグラム生成部436は、解像度ヒストグラム生成部434により生成された各解像度ヒストグラムに対して、対応する重みを乗じて得られる値を、選択された全ての解像度について加算する。これにより、ヒストグラム生成部436、画像入力部420で得られた窓領域512毎のヒストグラムを生成する。ヒストグラム生成部436が生成するヒストグラムH(k)は、第mの解像度の重みをwと置き、選択された解像度の数をMと置き、ヒストグラムの総ビン数はNと置くと、例えば、以下の式(3)で表される。
【数3】

【0088】
図10は、複数の解像度ヒストグラムを合成したヒストグラムの一例を示す図である。ここでは、第1〜第3の解像度に対して、第1の重みw=0.8、第2の重みw=0.5、第3の重みw=0.5が決定された場合の例を示す。
【0089】
図10に示すように、ヒストグラム538は、第1〜第3の解像度ヒストグラム537〜537の各値に、対応する第1〜第3の重みw〜wを乗じて得られる第1〜第3の値539〜539を加算した値から構成される。この場合、第1の重みw=0.8が相対的に大きいので、ヒストグラム538は、第1の解像度の解像度ヒストグラム537の影響を強く受けた画像特徴となる。
【0090】
そして、ステップS1930において、ヒストグラム生成部436は、ヒストグラムを正規化する。具体的には、ヒストグラム生成部436は、例えば、ヒストグラム全てのビンの度数の総和で、ヒストグラムを正規化する。度数の総和SumHは、ビンの数をN、i番目のビンの度数をH(i=1,2,・・・,N)と置くと、以下の式(4)により表される。
【数4】

【0091】
そして、正規化されたヒストグラムのi番目のビンの度数H'は、以下の式(5)により表される。
【数5】

【0092】
図11は、ヒストグラムの正規化の様子の一例を示す図である。
【0093】
図11(A)に示すように、正規化前のヒストグラムの各ビンの度数H、H、・・・、Hが、順に、「5,6,4,7,10,5,8,3」であったとする。この場合、度数の総和SumHは、以下の式(6)のように算出される。
【数6】

【0094】
そして、正規化されたヒストグラムの各ビンの度数H'、H'、・・・、H'は、以下の式(7)のように算出される。
【数7】

【0095】
図12は、正規化されたヒストグラムの一例を示す図である。
【0096】
図12に示すように、ヒストグラム540は、画像からより多く抽出されるローカルバイナリパターンのビンにおいてピーク(例えば、部分541で示す)を有する。ローカルバイナリパターンの分布を表すヒストグラム540の形は、画像に含まれる物体に応じて異なる。したがって、物体検出システム100は、ヒストグラム540のピークがどこに現れ、そのピークの大きさがどの程度であるかを、検出対象物体を識別するための画像特徴として用いる。ピークと他の部分の度数との差が大きいヒストグラム540ほど、画像特徴をより強く表しており、そのような画像特徴を用いた場合には、高い精度で物体検出を行うことができる。
【0097】
そして、図4のステップS2100において、識別部450は、識別器記憶装置300から識別器を取得する。そして、識別部450は、正規化後の各特徴抽出領域のヒストグラムに基づいて、その特徴抽出領域に検出対象物体が含まれているか否かを判定するための尤度を示すスコアを算出する。
【0098】
そして、ステップS2200において、識別部450は、ステップS2100で算出された各特徴抽出領域に対応するスコアを加算して、窓領域512毎に、その窓領域512に検出対象が含まれていることの尤度を示すスコアを算出する。
【0099】
そして、ステップS2500において、識別部450は、ステップS2200で算出したスコアに基づいて、スキャンされた窓領域512に検出対象物体が含まれているか否かを判定する。すなわち、識別部450は、スコアが所定の閾値以上となっている場合には、その窓領域512に検出対象物体が含まれていると判定する。なお、識別部450は、スコアに対して所定の関数を適用した結果に基づいて、この判定を行っても良い。
【0100】
そして、ステップS2600において、識別部450は、物体検出の判定結果を出力する。なお、識別部450は、検出対象物体が含まれているとする判定結果の場合、対応する窓領域の位置を出力することもできる。
【0101】
なお、識別部450は、指定された物体が対象画像に含まれるか否かを判定しても良いし、対象画像にどのような物体が含まれるかを判定しても良い。前者の場合には、識別部450は、例えば、指定された物体に対応する識別器のみを用いて、その物体が含まれるか否かのみを示す情報を出力すれば良い。また、後者の場合には、識別部450は、複数の識別器を順次適用して判定を繰り返し、物体が検出されたとき、どの物体が検出されたかを示す情報を出力すれば良い。
【0102】
そして、ステップS2700において、画像入力部420は、操作等により処理の終了を指示されたか否かを判断する。画像入力部420は、処理の終了を指示されていない場合(S2700:NO)、ステップS1100へ戻り、次のスキャンまたは次の対象画像に対する処理に移る。また、画像入力部420は、処理の終了を指示された場合(S2700:YES)、一連の処理を終了する。
【0103】
このような動作により、物体検出装置400は、複数の解像度画像から、解像度に応じた重み付けを行って、ローカルバイナリパターンのヒストグラムを生成することができる。なお、説明は省略したが、識別器学習装置200も、同様に、複数の解像度画像からローカルバイナリパターンのヒストグラムを生成し、これを画像特徴として用いて、物体検出のための識別器を生成する。
【0104】
ここで、低い解像度の画像から得られるヒストグラムにおいてノイズの影響が抑えられることについて説明する。
【0105】
図13は、解像度の違いによるノイズの影響の違いを説明するための図である。
【0106】
図13に示すように、高解像度画像550を低解像度化した低解像度画像550では、高解像度画像550に多く含まれる白い点や黒い点のノイズが軽減された状態となる。
【0107】
ここで、高解像度画像550のうち、エッジ部分ではない領域の、ソルトノイズによって、周囲よりも白いある点の画素位置551に着目する。この画素位置551の近傍領域において、例えば、注目画素の輝度値gが「98」、近傍画素の輝度値gが[70,73,76,75,76,70,71,70]であったとする。この場合、ローカルバイナリパターン552は、「00000000」(10進数では「0」)となる。また、高解像度画像550のうち、エッジ部分ではない領域の、ペッパーノイズによって、周囲よりも黒いある点の画素位置553に着目する。この画素位置553の近傍領域において、例えば、注目画素の輝度値gが「130」、近傍画素の輝度値gが[150,151,156,148,153,140,150,150]であったとする。この場合、ローカルバイナリパターン554は、「11111111」(10進数では「255」)となる。
【0108】
一方、低解像度画像550のうち、上述の白い点と同じ画素位置551では、例えば、注目画素の輝度値gが「76」となり、ローカルバイナリパターン552は、「00101000」(10進数では「40」)となる。また、低解像度画像550のうち、上述の黒い点と同じ画素位置553では、例えば、注目画素の輝度値gが「150」となり、ローカルバイナリパターン554は、「11101011」(10進数では「235」)となる。
【0109】
このように、白い点や黒い点のノイズが少ない低解像度画像550から得られるヒストグラムのほうが、「0」および「255」のビンの値が少なくなり、ノイズの影響が抑えられた状態となる。
【0110】
また、通常の画像では、画素単位で白い点や黒い点が発生することは少ない。したがって、上述のように、対象画像の「0」および「255」のビンの値が高いか否かによって、対象画像のノイズレベルを判定することができる。
【0111】
図14は、ノイズレベルの低い高解像度画像から得られる解像度ヒストグラムの一例を示す図である。また、図15は、ノイズレベルの高い高解像度画像から得られる解像度ヒストグラムの一例を示す図である。
【0112】
図14に示すヒストグラム560と図15に示すヒストグラム560とにおいて、部分561、562の比較から分かるように、ノイズレベルが高いと、10進数「0」または「255」のビンの値が高くなる。したがって、レベルノイズが高い対象画像から高解像度のままでヒストグラムを生成すると、判定精度が低下してしまう。一方で、対象画像の低解像度画像のみからヒストグラムを生成すると、元の画像情報の欠落が多くなり、やはり判定精度が低下してしまう。
【0113】
そこで、上述の通り、物体検出システム100は、ノイズレベルに基づき、複数の解像度の中から適切な1つまたは複数の解像度を選択し、1つまたは複数の解像度画像からヒストグラムを生成する。
【0114】
次に、ヒストグラム生成に用いられる解像度の選択結果と物体検出精度との関係について説明する。
【0115】
図16は、実験結果に基づく、ノイズレベルが低い対象画像における解像度と物体検出精度との関係を示すグラフである。また、図17は、実験結果に基づく、ノイズレベルが高い対象画像における解像度と物体検出精度との関係を示すグラフである。
【0116】
図16および図17において、横軸はFPPW(false positive rate per window)を示し、縦軸はHit Rateを示す。また、黒い四角印(■)は第1の解像度のみの選択を示し、罰印(×)は第2の解像度のみの選択を示し、白い菱形印(◇)は第3の解像度のみの選択を示す。横棒印(―)は第1の解像度および第2の解像度の選択を示し、黒い菱形印(◆)は第1の解像度および第3の解像度の選択を示し、黒い三角印(▲)は第2の解像度および第3の解像度の選択を示す。白い三角印(△)は第1の解像度、第2の解像度、および第3の解像度の選択を示す。
【0117】
ノイズレベルが低い対象画像においては、図16に示すように、第1の解像度のみが選択された場合、つまり、高解像度の解像度画像のみからヒストグラムを生成した場合に、最も高い精度が得られた。これは、上述の通り、より高い解像度の画像のほうが画像に含まれる物体の画像特徴をより良く反映するからである。
【0118】
一方、ノイズレベルが高い対象画像においては、図17に示すように、第1〜第3の解像度が選択された場合、つまり、高解像度から低解像度までの3つの解像度画像からヒストグラムを生成した場合に、最も高い精度が得られた。これは、上述の通り、ノイズの影響を抑えつつ、画像特徴を良く抽出することができるからである。
【0119】
したがって、特徴抽出部430の解像度選択部432は、例えば、ノイズレベルが予め定めた閾値以上であるときは、第1〜第3の解像度を選択する。そして、解像度選択部432は、ノイズレベルが予め定めた閾値未満であるときは、第1の解像度のみを選択する。これにより、物体検出システム100は、ノイズレベルがより高いほどより低い解像度が更に含まれるように解像度を選択し、検出精度を向上させることができる。
【0120】
図16から分かるように、ノイズレベルが低い対象画像においても、第1〜第3の解像度が選択された場合の精度は、比較的高い。したがって、常に第1〜第3の解像度の画像からヒストグラムを生成するようにしても良い。この場合、ノイズレベル測定部431、解像度選択部432、および重み生成部435は、不要とすることができる。
【0121】
また、物体検出装置400は、常に第1〜第3の解像度の画像からヒストグラムを生成し、ノイズレベルが低いとき、重み生成部435で第2および第3の解像度の重みを「0」としても良い。この場合、解像度選択部432は、不要とすることができる。
【0122】
以上のように、本実施の形態に係る物体検出システム100は、複数の解像度画像からヒストグラムを生成するので、画像に含まれる物体の画像特徴を良く反映しつつノイズの影響が少ないヒストグラムを生成することができる。すなわち、物体検出システム100は、様々な画質の対象画像に対して、生成する解像度画像の数を変動させ、総合的に処理コストを抑えて、高精度の物体検出を行うことができる。したがって、物体検出システム100は、ローカルバイナリパターンを用いつつ、少ない処理負荷で、画質のばらつきに対してロバストな物体検出が可能な画像特徴を抽出することができる。
【0123】
なお、解像度ヒストグラム算出部は、各解像度画像からローカルバイナリパターンが生成される毎に、対応するビンの値に、これに対応する重みを加算することにより、特徴抽出領域毎のヒストグラムを生成しても良い。この場合、重み生成部の結果は解像度ヒストグラム算出部へ出力され、ヒストグラム生成部436は、不要とすることができる。
【0124】
また、本実施の形態では、着目する画質はノイズレベルとしたが、画像の照度、ボケの度合い等としても良い。画像の照度の場合には、ノイズレベル測定部431は、例えば、輝度ヒストグラム、カメラ410の露出、およびカメラ410のシャッタースピード等から、照度を判断すれば良い。そして、解像度選択部432は、例えば、照度がより低いほどより低い解像度が更に含まれるように、解像度を選択すれば良い。また、ボケの場合には、ノイズレベル測定部431は、例えば、シャッタースピード、窓画像の動き情報、およびカメラ410の動き情報等から、ボケのレベルを判断すれば良い。そして、解像度選択部432は、例えば、ボケのレベルがより高いほどより低い解像度が更に含まれるように、解像度を選択すれば良い。
【0125】
なお、以上説明した実施の形態では、図10に示すように、複数の解像度ヒストグラムを合成してヒストグラムを生成したが、解像度ヒストグラムをLBP・ヒストグラム・ビン軸方向(横軸方向)に結合することで、ヒストグラムを生成してもよい。
【0126】
なお、以上説明した実施の形態では、識別器学習装置200、識別器記憶装置300、および物体検出装置400が別々に構成されている例について説明したが、これらの2つまたは全ては、1つの装置として一体的に構成されていても良い。特に、識別器学習装置200と物体検出装置400とが一体的に構成される場合には、特徴抽出部220、430は、共通の機能部として構成することができる。また、以上の実施の形態では、識別器学習装置200において、Boostingを機械学習手法として採用したが、他の機械学習手法、例えば、SVM(Support Vector Machine)、決定木(Decision Tree)等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明に係る特徴抽出装置、特徴抽出方法、特徴抽出プログラム、および画像処理装置は、ローカルバイナリパターンを用いつつ、少ない処理負荷で、画質のばらつきに対してロバストな物体検出が可能な画像特徴を抽出することができる特徴抽出装置、特徴抽出方法、および特徴抽出プログラム、並びに、このような特徴抽出装置を用いた画像処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0128】
100 物体検出システム
200 識別器学習装置
210 学習用データ記憶部
220、430 特徴抽出部
240 学習部
300 識別器記憶装置
400 物体検出装置
410 カメラ
420 画像入力部
431 ノイズレベル測定部
432 解像度選択部
433 解像度画像生成部
434 解像度ヒストグラム生成部
435 重み生成部
436 ヒストグラム生成部
440 特徴抽出領域取得部
441 画素近傍取得部
442 近傍差分計算部
443 バイナリパターン生成部
445 解像度ヒストグラム算出部
450 識別部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像から、複数の解像度の解像度画像を生成する解像度画像生成部と、
生成された前記解像度画像の全部または一部の画素毎に、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示すローカルバイナリパターンを生成するバイナリパターン生成部と、
前記複数の解像度画像から生成された前記ローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、を有する、
特徴抽出装置。
【請求項2】
前記ローカルバイナリパターンは、前記画素に対して所定の相対位置にある複数の前記近傍画素との前記差分が前記所定の閾値以上であるか否かを示すデジタル値を所定の順序で並べた符号である、
請求項1記載の特徴抽出装置。
【請求項3】
前記画像の画質に関する情報に基づいて、前記画像のノイズのレベルを判断するノイズレベル測定部と、
前記ノイズレベルがより高いほどより低い解像度が更に含まれるように、1つまたは複数の解像度を選択する解像度選択部、を更に有し、
前記バイナリパターン生成部は、
選択された前記解像度毎に、前記解像度画像を生成し、
前記ヒストグラム生成部は、
生成された前記ローカルバイナリパターンの分布を示す前記ヒストグラムを生成する、
請求項2記載の特徴抽出装置。
【請求項4】
前記画像の画質に関する情報に基づいて、前記画像のノイズのレベルを判断するノイズレベル測定部と、
前記ノイズレベルがより高いほど低い解像度に対してより大きな重み付けがされるように、前記解像度毎に重みを決定する重み生成部、を更に有し、
前記ヒストグラム生成部は、
決定された前記重みを対応する前記ローカルバイナリパターンに適用して、前記ヒストグラムを生成する、
請求項2記載の特徴抽出装置。
【請求項5】
前記画質に関する情報は、前記近傍画素の全ての前記差分が正の値であるときの前記ローカルバイナリパターンに対応するビンの値、前記近傍画素の全ての前記差分が負の値であるときの前記ローカルバイナリパターンに対応するビンの値、前記画像の輝度ヒストグラム、前記画像を撮影したカメラの露出、前記カメラのシャッタースピード、前記画像の動き情報、および前記カメラの動き情報の少なくとも1つを含む、
請求項3または請求項4に記載の特徴抽出装置。
【請求項6】
前記ヒストグラム生成部は、
解像度画像毎に前記ローカルバイナリパターンの分布を示す解像度ヒストグラムを生成し、生成した解像度ヒストグラムに対応する前記重みを乗じて得られる値を加算し、もしくは、生成した解像度ヒストグラムを結合して、前記ヒストグラムを生成する、
請求項1記載の特徴抽出装置。
【請求項7】
前記ヒストグラム生成部は、
前記ローカルバイナリパターンが生成される毎に、当該ローカルバイナリパターンに対応するビンの値に当該ローカルバイナリパターンに対応する前記重みを加算して、前記ヒストグラムを生成する、
請求項1記載の特徴抽出装置。
【請求項8】
前記ヒストグラム生成部は、
前記ヒストグラムに対して正規化処理を行う、
請求項1に記載の特徴抽出装置。
【請求項9】
所定の物体を識別するための識別器を用いて、請求項1から請求項8のいずれかに記載の特徴抽出装置により生成された前記ヒストグラムから、前記画像に前記所定の物体が含まれるか否か判断する識別部を有する、
画像処理装置。
【請求項10】
画像から、複数の解像度の解像度画像を生成するステップと、
生成された前記解像度画像の全部または一部の画素毎に、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示すローカルバイナリパターンを生成するステップと、
前記複数の解像度画像から生成された前記ローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを生成するステップと、を有する、
特徴抽出方法。
【請求項11】
コンピュータに、
画像から、複数の解像度の解像度画像を生成する処理と、
生成された前記解像度画像の全部または一部の画素毎に、周囲の近傍画素との画素値の差分が所定の閾値以上であるか否かをデジタル値により示すローカルバイナリパターンを生成する処理と、
前記複数の解像度画像から生成された前記ローカルバイナリパターンの分布を示すヒストグラムを生成する処理と、を実行させる、
特徴抽出プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図13】
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