説明

特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャ

【課題】一台の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを容易に通常アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換え使用することで設備費用の低減を図る。
【解決手段】特殊アスファルト合材を敷き均すスクリード3を本体トラクタ部1に連結するスクリードアーム6を2分割式とし該スクリードアーム6の分割部に、液体を噴霧する液体噴霧機能及び液体が噴霧される領域を通過する特殊アスファルト合材を所定量に規制する合材仕切り機能を備えた特殊合材施工用機器5を取付けたスクリードアーム延長ブラケット7を装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャに関するものであり、特に、容易に通常アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換え使用することができて設備費用の低減を図ることが可能な特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の温暖化ガス削減方針や建設工事での工期短縮及び費用削減等の要求より、特殊なアスファルト合材を用いた道路舗装が増えている。その一方法として、特殊液体又は水等(以下、単に「液体」という。)を噴霧することで固化が始まる特殊アスファルト合材を用いた道路舗装がある。液体を噴霧することで固化が始まる特殊アスファルト合材の場合、その液体の噴霧タイミングや噴霧個所、噴霧量が舗装品質に大きく影響する。このため、液体噴霧領域に所定量の特殊アスファルト合材を通過させる必要がある。また、その後のその特殊アスファルト合材により完成した舗装体に含まれる液体量を一定とするために、液体噴霧領域を通過する特殊アスファルト合材量を調整する機構を備えている必要があり、その調整を施工中でも簡単に行えるようにすることが求められる。
【0003】
上記の液体噴霧領域を通過する特殊アスファルト合材量を調整する機構等を備えた従来の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを図5を用いて説明する。特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャは、本体トラクタ部1の前部に特殊アスファルト合材を貯蔵する図示しないホッパが備えられ、該ホッパに貯蔵された特殊アスファルト合材が、図示しないコンベヤで本体トラクタ部1の後部に搬送され、この搬送された特殊アスファルト合材がスクリュー2で本体トラクタ部1の幅方向に撒き拡げられる。該スクリュー2の後方には、撒き拡げられた特殊アスファルト合材を敷き均すためのスクリード3がスクリードアーム4の後端部に支持されて設けられている。
【0004】
スクリードアーム4は、通常アスファルト合材用アスファルトフィニッシャにおけるものよりも所要量長く形成されてスクリード3が所要量だけ後側に移設され、スクリュー2とスクリード3の間に所要間隔が設けられている。そして、この所要間隔の部位におけるスクリードアーム4の部分に、液体を噴霧する液体噴霧機能及び該液体が噴霧される領域を通過する特殊アスファルト合材を所定量に規制する合材仕切り機能を備えた特殊合材施工用機器5が取付けられている。前記液体噴霧機能は、特殊合材施工用機器5に内装された図示しない液体噴霧装置により得られ、前記合材仕切り機能は、特殊合材施工用機器5に内装された図示しない合材仕切り板により得られる。このように、図5に記載のアスファルトフィニッシャは、スクリュー2とスクリード3の間に特殊合材施工用機器5が固定して装備されて専用の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャとして構成されている。
【0005】
また、上記の特殊合材施工用機器に内装された合材仕切り板に関連する従来技術として、例えば、次のような舗装機械におけるアスファルト合材量の調整装置が知られている。この従来技術は、モールドボードを備えた舗装機械において、該モールドボードの上端部に設けたパイプ軸の下部にシャフトを回転自在に配設し、該シャフトに軸方向の動きを上下方向に変換する操作方向変換手段を設けてモールドボードの上端部を連結するとともに、前記シャフトの一端部を前記モールドボードの外側部に突出して操作部を形成してある。このモールドボード近傍の操作部にてスクリード前に溜まるアスファルト合材量を観察しながら該シャフトを回転させることにより、モールドボードが上下いずれかに動いて前記モールドボードの下端部と路面との隙間を変更することができる。このように、アスファルト合材量を観察しながらモールドボードの高さが調整可能であるため、スクリード前に溜まるアスファルト合材量が合材の種類や温度等により変化した場合であっても、現場の状況を適切に捉えて該モールドボードの高さを変更することにより、アスファルト合材量を一定量に保持することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3713247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に記載された従来の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャにおいては、スクリューとスクリードの間に特殊合材施工用機器が固定して装備されて専用の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャとして構成されている。
【0008】
また、特許文献1に記載の従来技術においては、スクリード前に溜まるアスファルト合材量が合材の種類や温度等により変化した場合であっても、モールドボードの高さを変更することにより、アスファルト合材量を一定量に保持しうることのみが記載されている。
【0009】
ところで、液体を噴霧することで固化が始まる特殊アスファルト合材を用いた道路舗装は、近時の建設工事での工期短縮及び費用削減等の要求より増えている一舗装工法である。
【0010】
そこで、一台の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを容易に通常アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換え使用することができて設備費用の低減を図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、液体を噴霧することにより固化が始まる特殊アスファルト合材を舗装施工する特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャであって、前記特殊アスファルト合材を敷き均すスクリードを本体トラクタ部に連結するスクリードアームを2分割式とし該スクリードアームの分割部に、前記液体を噴霧する液体噴霧機能及び前記液体が噴霧される領域を通過する前記特殊アスファルト合材を所定量に規制する合材仕切り機能を備えた特殊合材施工用機器を取付けたスクリードアーム延長ブラケットを装着するようにした特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを提供する。
【0012】
この構成によれば、特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャは、スクリードアームの分割部に、特殊合材施工用機器を取付けたスクリードアーム延長ブラケットがボルト締結等により装着されてスクリードの直ぐ前方に液体の噴霧領域が形成されている。そして合材仕切り機能により前記液体の噴霧領域を通過する特殊アスファルト合材量が所定量に規制され、該特殊アスファルト合材により完成した舗装体に含まれる液体量がほぼ一定となって所定の舗装性能が達成される。通常のアスファルト合材を舗装施工する際は、ボルト締結等を解除してスクリードアーム延長ブラケットを取外し、2分割されているスクリードアーム部をボルト締結等により直接接続することで、アスファルトフィニッシャは通常アスファルト合材用に切換えられる。
【0013】
請求項2記載の発明は、液体を噴霧することにより固化が始まる特殊アスファルト合材を舗装施工する特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャであって、前記液体を噴霧する液体噴霧機能及び前記液体が噴霧される領域を通過する前記特殊アスファルト合材を所定量に規制する合材仕切り機能を備えた特殊合材施工用機器を、本体トラクタ部にスクリードアームで連結されて前記特殊アスファルト合材を敷き均すスクリードの前端側に取付けた特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを提供する。
【0014】
この構成によれば、特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャは、スクリードの前端側に特殊合材施工用機器が取付けられてスクリードの直ぐ前方に液体の噴霧領域が形成されている。そして合材仕切り機能により前記液体の噴霧領域を通過する特殊アスファルト合材量が所定量に規制され、該特殊アスファルト合材により完成した舗装体に含まれる液体量がほぼ一定となって所定の舗装性能が達成される。通常のアスファルト合材を舗装施工する際は、スクリードの前端側から特殊合材施工用機器の取外し等を行うことで、アスファルトフィニッシャは通常アスファルト合材用に切換えられる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、スクリードアームの分割部にスクリードアーム延長ブラケットを装着しているボルト締結等を解除してスクリードアーム延長ブラケットを取外し、2分割されているスクリードアーム部をボルト締結等により直接接続することで、一台の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを容易に通常アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換え使用することができて設備費用の低減を図ることができるという利点がある。
【0016】
請求項2記載の発明は、スクリードの前端側から特殊合材施工用機器の取外し等を行うことで、一台の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを容易に通常アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換え使用することができて設備費用の低減を図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)本発明の実施例1に係る特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを一部破断して示す側面図、(b)長スクリードアーム部分の平面図、(c)長スクリードアーム部分の平面図。
【図2】図1の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャにおいて、スクリードアームの分割部に対するスクリードアーム延長ブラケットの装着部をさらに詳細に示す要部側面図。
【図3】図1の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを通常アスファルト合材用アスファルトフィニッシャに切換えた状態を一部破断して示す側面図。
【図4】本発明の実施例2に係る特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャの要部側面図。
【図5】従来の特殊アスファルト合材施工専用のアスファルトフィニッシャを一部破断して示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、一台の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを容易に通常アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換え使用することができて設備費用の低減を図るという目的を達成するために、液体を噴霧することにより固化が始まる特殊アスファルト合材を舗装施工する特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャであって、前記特殊アスファルト合材を敷き均すスクリードを本体トラクタ部に連結するスクリードアームを2分割式とし該スクリードアームの分割部に、前記液体を噴霧する液体噴霧機能及び前記液体が噴霧される領域を通過する前記特殊アスファルト合材を所定量に規制する合材仕切り機能を備えた特殊合材施工用機器を取付けたスクリードアーム延長ブラケットを装着することにより実現した。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の好適な実施例1を図1乃至図3を参照して説明する。なお、図1乃至図3及び後述する実施例2を示す図4において前記図5における構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符合を以って示し、重複した説明を省略する。まず、本実施例1に係る特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャの構成を図1及び図2を用いて説明する。
【0020】
図1において、本体トラクタ部1とスクリード3とを連結するスクリードアーム6が長スクリードアーム6Aと短スクリードアーム6Bとに2分割され、該スクリードアーム6の分割部に、特殊合材施工用機器5を取付けたスクリードアーム延長ブラケット7が装着されている。このスクリードアーム延長ブラケット7の装着により、図1(b)に示すようにスクリード3が所要量だけ後側に移設されてスクリュー2とスクリード3の間に所要間隔が形成され、前記特殊合材施工用機器5は、この所要間隔の部位に位置するようにスクリードアーム延長ブラケット7に懸吊されている。又、スクリュー2とスクリード3の間を短くする場合は、図1(c)に示す如く、前記スクリードアーム延長ブラケット7を装着しないで、前記長スクリードアーム6Aとスクリード3との間に短スクリードアーム6Bを介装してボルト8で連結することにより実施される。
【0021】
図2にも示すように、スクリードアーム延長ブラケット7には、特殊合材施工用機器5の懸吊プレート5aが一体に固着されている。そして、スクリードアーム延長ブラケット7自身が短スクリードアーム6B側にボルト8の締結により取付けられ、懸吊プレート5aが長スクリードアーム6A側に他のボルト8の締結により取付けられて、前記スクリードアーム6の分割部に、特殊合材施工用機器5を取付けたスクリードアーム延長ブラケット7が装着されている。
【0022】
次に、上述のように構成された特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャの作用を説明する。特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャは、スクリードアーム6の分割部に、特殊合材施工用機器5を取付けたスクリードアーム延長ブラケット7がボルト8の締結により装着されている。該特殊合材施工用機器5には、内装された図示しない液体噴霧装置により液体噴霧機能が備えられ、また内装された図示しない合材仕切り板により合材仕切り機能が備えられている。
【0023】
このため、スクリード3の直ぐ前方には、特殊合材施工用機器5に備えられた液体噴霧機能により液体の噴霧領域が形成され、また合材仕切り機能により前記液体の噴霧領域を通過する特殊アスファルト合材量が所定量に規制されている。この結果、特殊アスファルト合材により完成した舗装体に含まれる液体量がほぼ一定となって所定の舗装性能が達成される。
【0024】
アスファルトフィニッシャで通常のアスファルト合材を舗装施工する際は、スクリードアーム6の分割部部分のボルト8締結を解除してスクリードアーム6の分割部からスクリードアーム延長ブラケット7を取外し、図3に示すように、2分割されている長スクリードアーム6Aと短スクリードアーム6Bとをボルト8の締結により直接接続することで、アスファルトフィニッシャは通常アスファルト合材用に切換えられる。
【0025】
上述したように、本実施例1に係る特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャにおいては、スクリードアーム6の分割部にスクリードアーム延長ブラケット7を装着しているボルト8の締結を解除してスクリードアーム延長ブラケット7を取外し、2分割されている長スクリードアーム6Aと短スクリードアーム6Bとをボルト8の締結により直接接続することで、一台の特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを容易に通常アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換え使用することができて設備費用の低減を図ることができる。
【実施例2】
【0026】
本発明の実施例2に係る特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャを図4を参照して説明する。本実施例2では、特殊合材施工用機器5が、スクリードアーム6に連結されて特殊アスファルト合材を敷き均すスクリード3の前端側に取付けられている。
【0027】
このように、特殊合材施工用機器5がスクリード3の前端側に取付けられていることで、スクリード3の直ぐ前方に該特殊合材施工用機器5の液体噴霧機能により液体の噴霧領域が形成され、合材仕切り機能により前記液体の噴霧領域を通過する特殊アスファルト合材量が所定量に規制されている。この結果、前記実施例1と同様に、特殊アスファルト合材により完成した舗装体に含まれる液体量がほぼ一定となって所定の舗装性能が達成される。
【0028】
通常のアスファルト合材を舗装施工する際は、スクリード3の前端側から特殊合材施工用機器5の取外し等を行うことで、アスファルトフィニッシャは通常アスファルト合材用に切換えられる。本実施例2では、特殊合材施工用機器5がスクリード3の前端側に取付けられていることで、その取外し等が容易になる。
【0029】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
一アスファルト合材用のアスファルトフィニッシャを容易に他のアスファルト合材用のアスファルトフィニッシャに切換えて設備費用の低減を図ることが不可欠な特殊合材施工用のアスファルトフィニッシャ以外の他の合材施工用のアスファルトフィニッシャにも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 本体トラクタ部
2 スクリュー
3 スクリード
5 特殊合材施工用機器
6 スクリードアーム
7 スクリードアーム延長ブラケット
8 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴霧することにより固化が始まる特殊アスファルト合材を舗装施工する特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャであって、
前記特殊アスファルト合材を敷き均すスクリードを本体トラクタ部に連結するスクリードアームを2分割式とし該スクリードアームの分割部に、前記液体を噴霧する液体噴霧機能及び前記液体が噴霧される領域を通過する前記特殊アスファルト合材を所定量に規制する合材仕切り機能を備えた特殊合材施工用機器を取付けたスクリードアーム延長ブラケットを装着するようにしたことを特徴とする特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャ。
【請求項2】
液体を噴霧することにより固化が始まる特殊アスファルト合材を舗装施工する特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャであって、
前記液体を噴霧する液体噴霧機能及び前記液体が噴霧される領域を通過する前記特殊アスファルト合材を所定量に規制する合材仕切り機能を備えた特殊合材施工用機器を、本体トラクタ部にスクリードアームで連結されて前記特殊アスファルト合材を敷き均すスクリードの前端側に取付けたことを特徴とする特殊アスファルト合材用アスファルトフィニッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132254(P2012−132254A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286649(P2010−286649)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【Fターム(参考)】