説明

特殊信号発光機用カバー

【課題】特殊信号発光機(2形)の全体を、簡単な作業で覆えるカバーを提供する。
【解決手段】本体部11を構成する半筒体状の正面カバー部及び背面カバー部は、一方の側縁部に設けた蝶番12で開閉可能に接合され、他方の側縁部に設けた永久磁石によって閉止状態を保持するようになされる。少なくとも正面カバー部に開閉可能な窓部13が形成され、正面カバー部及び背面カバー部における他方の側縁部の近傍に、操作バー20の接続部16,18が設けられる。操作バー20により、カバー部を開いた状態に保持して特殊信号発光機の高さ位置まで持ち上げたのち、側方から特殊信号発光機を正面カバー部及び背面カバー部との間に挟み、次いで閉止することにより、特殊信号発光機の全体を覆い隠せる。作業は地上から行えるので、脚立や梯子が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
踏切や落石頻発個所など、鉄道線路において列車の進行に支障をきたす緊急事態が発生しやすい個所には、運転士に列車停止を命じるための特殊信号発光機があらかじめ設置されている。
特殊信号発光機には、五角形の板に5個の赤色灯を配置し、それらの2個ずつを反時計回りに点滅させることにより回転発光させて停止現示を行なう比較的大型の1形と、円筒状のケース内に配設した多数の赤色LED(発光ダイオード)を高速で点滅させることにより停止現示を行なう2形とがある。
本発明は、後者の特殊信号発光機2形の全体を覆うカバーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊信号発光機2形(以下、単に「特殊信号発光機」と言う)の構造については、特許文献1及び2などに開示されている。図7(A)に示す如く、特殊信号発光機Lは、正面側半分を透明とした筒体2の内部に、多数の赤色LEDからなる発光素子3を整列配置した基板4を収納し、筒体2の上端部にキャップ1が装着され、筒体2の下端部には、当該特殊信号発光機Lを支持柱やブラケットへ設置するためのホルダー5及び発光制御用のケーブル6が設けられている。
【0003】
また図7(B)に示すように、特殊信号発光機Lの筒体2の背面側はほぼ全体が不透明であるが、一部分だけ透明にした透光窓8が形成され、少数の発光素子7が、この透光窓8に臨むよう配置されている。
【0004】
特殊信号発光機Lは、停止現示を行なう際、正面側の多数の発光素子3を点滅させると同時に、背面側の少数の発光素子7も点滅させる。これにより、線路上に列車進行の支障となるような緊急事態が発生したときに、上り・下りの両方の列車に対し、停止信号(特殊信号)を発することができる。
【0005】
ところで、特殊信号発光機Lの新設工事・取替工事・移設工事・撤去工事などを行なうに際し、次のような懸念があった。列車接近時に踏切道内における自動車等の障害物の存在を検知する障害物検知装置、列車接近時に踏切の遮断杆が降りているかどうかを検知する遮断不良検知装置、踏切内で異常が発生したときに停止信号を発するための非常ボタン等は、特殊信号発光機Lと電気回路的に接続している。そして、特殊信号発光機Lについて前記工事を行なう際には電気回路に変更を加えるため、障害物検知装置・遮断不良検知装置・非常ボタン等が誤動作を起こして停止信号を出力し、その結果、特殊信号発光機Lが予期せずに発光する可能性がある。特殊信号発光機の発光動作は、列車に対する停止現示となるため、列車を不必要に停止させて、運行ダイヤの乱れをもたらすという問題を引き起こす。
【0006】
そこで従来は、特殊信号発光機を発光させるおそれのある工事を行なうときには、特殊信号発光機に布製の袋を被せて全体を覆うことにより、特殊信号発光機が誤発光しても、外部に光が漏れないようにするという対策を講じていた。
【0007】
また、特殊信号発光機の新設工事又は取替工事のあと、発光状態や現示機能の確認試験を現車走行により行なっている。このとき、特殊信号発光機の正面に対向するように走行する列車運転士により確認がなされるので、反対方向を走行する列車運転士に対しては停止現示とならないよう、特殊信号発光機Lの背面側の透光窓8を、例えば黒色のビニルテープを貼って覆い隠すという手段を講じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−102426号公報
【特許文献2】特開2003−182576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特殊信号発光機は、列車運転士が確実に視認できるよう、比較的高い位置に設置されるので、これに袋を被せたり、ビニルテープを貼ったりする作業は、脚立や梯子を準備し、足場を整えてから作業員が脚立・梯子を登って行なわなくてはならない。つまり、脚立や梯子が必須である。
かかる作業は、高所作業となるため、転落事故のおそれがある。また、作業位置が架線に近い場合は感電の危険性があり、状況によっては送電を一次停止させる必要が生じる。さらに、足場の悪い不安定な個所に脚立・梯子を設置しなくてはならないことも多く、作業性が悪い。
また、特殊信号発光機の直上に何らかの構造物が有り、上方に充分な隙間の無い個所では、袋を上から被せるのが大変困難になるため、非常な労力と作業時間とを要する。さらに、気象条件によって作業性が大きく左右され、特に風の強いときは、袋を被せる作業が非常に難しくなるという欠点がある。
【0010】
このような事情により、従来の特殊信号発光機に袋を被せる作業は、比較的長い時間を要するので、列車の通過間合いが短いときには、作業を継続して行えないという問題が有る。しかも、特殊信号発光機に袋を被せたあと、所要の工事が終了したならば、今度は袋を取り外す作業が必要であり、このときも、前述と同様の問題を有している。さらに、これらの作業を行なうにあたっては、一個所あたり、作業を実行する者のほか、脚立・梯子を支持する者、及び、見張りの合計3人が最低でも必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来の前記問題点を解決するために創案した本発明に係る特殊信号発光機用カバー(以下、「本発明カバー」と言う)の特徴とするところは、特殊信号発光機を内側に収納できる筒状の非透光性部材から成る本体部と、本体部に接続される2本の操作バーとから構成され、本体部は、底面を開口させた半筒体状の正面カバー部及び背面カバー部から成り、正面カバー部及び背面カバー部は、軸線に沿う一方の側縁部に設けた枢支部により開閉可能に接合されると共に、他方の側縁部に閉止状態を保持する係止手段が設けられ、少なくとも正面カバー部に開閉可能な窓部が形成され、正面カバー部及び背面カバー部における前記他方の側縁部の近傍に、操作バーの接続部が設けられていることである。
【0012】
本発明の本体部は、特殊信号発光機の形態に合わせた円筒状が好ましいが、四角柱状や六角柱状などの形態とすることも妨げない。材質は特に限定しないが、なるべく軽量で剛性の高い合成樹脂製が好ましい。大きさは、内側に特殊信号発光機を収納できることが必要であるから、適用する特殊信号発光機の寸法に応じて適宜変更される。本体部の底面側は開口させるが、上面側は閉塞することが望ましい。
【0013】
正面カバー部及び背面カバー部はそれぞれ、筒体を中心軸で分割した半筒体状の形態とすればよく、従って互いにほぼ対称な形態とするのが、製作上好ましい。正面カバー部及び背面カバー部を開閉可能に接合する枢支部は、蝶番が一般的であるが、正面カバー部及び背面カバー部に枢支部を一体成形する構造も可能である。
正面カバー部及び背面カバー部における枢支部とは反対側の側縁部に設けられる係止手段は、作業者が必要に応じて容易に開閉可能な構造であればよく、例えば永久磁石が考えられる。
少なくとも正面カバー部に形成する開閉可能な窓部は、特殊信号発光機の発光状態を確認する際に開放するためのものであり、正面カバー部に形成した開口を着脱可能な蓋体で覆う構造のほか、正面カバー部の表面又は裏面に沿って移動する板状部材で開口を開閉可能とするシャッター式構造、開口に細長い板状部材を複数並べ、これらを揺動させることで開閉するルーバー式構造など、適宜の手段を採用することが可能である。
【0014】
操作バーは、作業員が、本発明カバーの本体部を地上から特殊信号発光機の高さ位置まで持ち上げて、取り付け・取り外し作業を行なうためのものである。従って、適度の長さと剛性とを備え、且つなるべく軽量であることが望ましく、例えば合成樹脂、FRP、グラスファイバー、木材、竹材等で製作される。なお金属は、感電の危険性を考慮すると、あまり適切ではない。操作バーを正面カバー部及び背面カバー部に接続する接続部の構造は、なるべく簡単な動作で接続が完了できるものが望ましく、ネジのほか、適宜の継手構造が採用可能である。
【0015】
前記本発明カバーの望ましい態様として、正面カバー部及び背面カバー部それぞれの上下2個所に操作バーの接続部を設け、下側の接続部は、正面カバー部及び背面カバー部の表面近くに配置し、上側の接続部は、正面カバー部及び背面カバー部の表面から側方へ突出するように設けたアームの先端部に設け、前記アームの長さを、特殊信号発光機の最大直径よりも大きく設定することが考えられる。
この場合、上側のアームは成るべく本体部の上端近くに設けることが望ましい。また、アームの長さは、特殊信号発光機の最大直径(直径が最大となる部分の直径)より長ければよく、操作性や本発明カバーの運搬性等を考慮して、適宜設定される。
なお、アームを、正面カバー部及び背面カバー部に対し、着脱可能に構成することも可能である。
【0016】
また本発明カバーにおける正面カバー部及び背面カバー部の両方に、開閉可能な窓部を設けることも可能である。
【0017】
操作バーについては、長さを変更可能とすることが望ましい。長さを変更する手段としては、二重筒構造又は三重以上の多重筒構造とし、内筒を突出・後退させることで長さ調節をする構造、操作バーの下端に継手部を設け、延長用の補助バーを継ぎ足す構造等が考えられる。
【0018】
さらに操作バーについては、その途中に電気的絶縁部を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明カバーは、本体部に接続した操作バーを作業者が把持し、正面カバー部と背面カバー部とを開いた状態に保持して特殊信号発光機の高さ位置まで持ち上げたのち、側方から特殊信号発光機を正面カバー部及び背面カバー部との間に挟み、次いで正面カバー部と背面カバー部とを閉止することにより、特殊信号発光機を本発明カバー内に収納する。これにより、特殊信号発光機の全体を本発明カバーで覆い隠せるから、発光動作を起こしても、外部に光が漏れるのを防止できる。
上に述べた本発明カバーの特殊信号発光機への装着作業は、作業員が地上から行えるので、脚立や梯子が不要となる。その結果、高所作業における転落の危険性、及び、架線近傍での作業における感電の危険性を排除することができる。また、足場の確保や、脚立・梯子の保持が不要になるため、作業要員を一名削減することが可能となる。
脚立・梯子の不要化と共に、本発明カバーの装着作業自体が従来よりも簡単であり、しかも風等の気象条件から受ける影響を従来よりも小さくできるから、作業時間の大幅な短縮が実現される。それ故、列車通過の間合い時間が短くても本発明カバーであれば装着が可能なので、工事の作業効率が向上する。
さらに本発明カバーは、特殊信号発光機に対し側方から装着できるため、特殊信号発光機の上方の隙間が狭い設置環境でも、容易に対応できるという利点を有する。
【0020】
特殊信号発光機の発光状態を確認する場合は、窓部を開放した状態で、本発明カバーを装着する。これにより、特殊信号発光機の背面側の透光窓が覆われるので、発光試験中に現示確認を行なう列車とは反対側を進行する列車運転士に対し、誤った停止信号を伝えるのが防止される。すなわち、本発明カバーは、従来のビニルテープによる背面カバーの機能も有しているから、上記ビニルテープの貼付・剥離作業を不要にでき、その結果、前述したところと同様に、作業時における転落・感電の危険性を排除でき、作業時間の短縮化をもたらす。
【0021】
請求項2に記載の本発明カバーによれば、特殊信号発光機の設置状況の違いに対応することが可能となる。特殊信号発光機の設置形態としては、大別して、支持柱の上端に設置される自立型と、電柱等に側方へ張り出すように設けたブラケットに設置するアングル支持型がとがある。通常、自立型の場合は、特殊信号発光機の上下に障害となる構造物が無いことが多いので、本体部の表面近くに操作バーを接続した状態で、本発明カバーを特殊信号発光機に装着することが可能である。
【0022】
しかしながら、アングル支持型の場合、特殊信号発光機の下方にブラケット等の構造物が有るため、操作バーを本体部の表面近くに接続した状態では、本発明カバーの装着作業が困難なときがある。そこで、正面カバー部及び背面カバー部それぞれの上側に、表面から側方へ突出するようにアームを取り付け、その先端部に操作バーの接続部を設けると共に、このアームの長さを特殊信号発光機の最大直径よりも大きく設定することにより、対応可能とする。
かかる構成によれば、上側の接続部に接続した操作バーと、本体部表面との間に、特殊信号発光機の最大直径以上の間隙を形成できるから、正面カバー部と背面カバー部とを閉じた状態で特殊信号発光機の高さ位置まで持ち上げ、上記間隙の間に特殊信号発光機を位置させた後、正面カバー部と背面カバー部とを開き、これらの間に特殊信号発光機を挟んで閉じるという操作を行なうことにより、特殊信号発光機の下方に構造物が存在する場合でも、本発明カバーの装着が可能となる。
【0023】
特殊信号発光機の設置環境や、アングル支持型におけるブラケットの張出方向により、左右いずれか一方の側からでなくては、本発明カバーの装着作業ができない場合が有る。そこで、正面カバー部及び背面カバー部それぞれに開閉可能な窓部を設けることにより、特殊信号発光機の発光試験を行なうに際し、特殊信号発光機の正面に対し左右のいずれ側からでも、窓を開放した状態の本発明カバーを装着することが可能となる。
【0024】
操作バーの長さを変更可能とすることで、特殊信号発光機の高さ位置の違いに容易に対応することが可能となる。なお実用的には、操作バーの長さは、1.5〜2.5mの範囲で変更であれば、特殊信号発光機の大部分の設置個所に対応できると考えられる。
【0025】
操作バーの途中に電気的絶縁部を設けることにより、架線近傍での作業における感電事故の危険性を排除することが可能となる。従って、必要に応じ、本体部又は操作部の一部に金属を使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明カバーの一実施形態に係るものであって、本体部と操作バーとを分離して示す正面図である。
【図2】本発明カバーの一実施形態に係るものであって、窓部を覆う蓋体を分離して示す本体部の斜視図である。
【図3】本発明カバーの一実施形態に係るものであって、正面カバー部と背面カバー部とを開いた状態を示す本体部の斜視図である。
【図4】本発明カバーを、自立型の特殊信号発光機に装着する手順を示すものであって、図(A)は、装着前の状態の正面図、図(B)は装着後の状態の正面図である。
【図5】本発明カバーを、自立型の特殊信号発光機に装着する異なる手順を示す正面図である。
【図6】本発明カバーを、アングル支持型の特殊信号発光機に装着する手順を示すものであって、図(A)は装着前の状態の正面図、図(B)は装着途中の状態の正面図、図(C)は装着誤の状態の正面図である。
【図7】特殊信号発光機(2型)を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜3に、本発明カバー10の一実施形態を示す。本発明カバー10は、上面が閉塞され、底面を開口した円筒状の本体部11と、本体部11に接続される操作バー20とから構成される。本体部11は、円筒体を軸線に沿って前後に分割した如き形態の半筒体状の正面カバー部11A及び背面カバー部11Bとから成る。正面カバー部11A及び背面カバー部11Bは、軸線とほぼ平行な一方の側縁部に設けた蝶番12等より成る枢支部により、開閉可能に接合されている。また、他方側の側縁部には、正面カバー部11A及び背面カバー部11Bの閉止状態を保持するための永久磁石30(図3参照)等より成る係止手段が設けられている。
【0028】
正面カバー部11A及び背面カバー部11Bには、内部に収納した特殊信号発光機の発光状態を確認するための窓部13が形成されており、この窓部13は、蓋体14によって開閉可能に閉止される。本例では、窓部13の周辺に設けた面ファスナー19により蓋体14を着脱可能となしたが、窓部13を開閉可能とする手段は、この構造に限定されるものではない。また、窓部13は、正面カバー部11Aだけに設けることも妨げないが、この場合は、右用・左用として、左右対称に製作した本発明カバー10を用意する必要がある。
【0029】
本体部11には、操作バー20を接続するための接続部が設けられる。本例では、正面カバー部11A及び背面カバー部11Bそれぞれにおける回動側(蝶番12とは反対側)の側縁部近傍に、補強用のステー17を取着し、このステー17の上端近くに側方へ突出するようにアーム15を取り付け、このアーム15の先端部に、上側の接続部16を設けた。また前記ステー17の下端部に、下側の接続部18を設けた。アーム15の長さは、特殊信号発光機の最大直径より若干大きくなるように設定する。
【0030】
操作バー20は、比較的軽量で且つ適度の剛性を有すること、及び、長さ調節が可能であることが望ましい。本例では、二重筒構造を有する伸縮可能な合成樹脂製パイプを用いた。伸縮寸法は、1.6〜3.0mの範囲である。
【0031】
操作バー20を接続部16,18に接続する手段は、本例ではネジ構造としたが、他の継手構造を採用することを妨げない。操作バー20を、下側の接続部18に接続した場合は、力を伝達しやすいため、正面カバー部11A及び背面カバー部11Bの開閉操作が容易である。操作バー20を上側の接続部16に接続すると、アングル支持型の特殊信号発光機への装着が容易となる。
【0032】
次に、本発明カバー10を特殊信号発光機へ装着する手順について説明する。図4に示すように、特殊信号発光機Lを支持柱Pの上端に設置した自立型の場合、特殊信号発光機Lの上下に支障となる構造物が特に存在しないことが多い。この場合、図4(A)に示す如く、作業員Sは、特殊信号発光機Lの近傍にて、本発明カバー10の操作バー20を把持することにより、正面カバー部11Aと背面カバー部11Bとを開いた状態に保持しつつ、本体部11を特殊信号発光機Lの高さ位置まで持ち上げる。
【0033】
次いで、図4(B)に示す如く、特殊信号発光機Lを、側方から、正面カバー部11Aとで背面カバー部11Bとで挟み込んだのち、操作バー20の操作により、正面カバー部11Aと背面カバー部11Bとを閉じて、特殊信号発光機Lの全体を本体部11で覆い隠す。正面カバー部11A及び背面カバー部11Bは、永久磁石30等の係止手段により、容易には開かないように保持されるので、作業者Sは操作バー20から手を離して、所要の工事が終了するまで、本発明カバー10をそのまま放置することが可能である。
所要の工事が終了して、特殊信号発光機Lから本発明カバー10を取り外す場合は、前記と逆の手順を行なうことにより、容易に取り去ることができる。
【0034】
なお、特殊信号発光機Lの設置環境により、図4とは反対側の位置にしか足場の確保ができない場合は、図5に例示するように、支持柱Pを2本の操作バー20の間に挟むようにすることで、本発明カバー10の装着作業が可能となる。
【0035】
特殊信号発光機Lの新設工事や取替工事を行なって、発光状態の確認を行なう場合は、正面カバー部11A(又は背面カバー部11B)の蓋体14を取り外して窓部13を開口させた状態とした本発明カバー10を、前記と同様の手順により、特殊信号発光機Lに装着すればよい。これにより、特殊信号発光機Lの背面側の透光窓8(図7参照)は覆われるから、発光試験を行なうに際し、現示確認を行なう列車とは反対方向に進行する列車の運転士に対し、誤って停止信号を伝えるおそれがなくなる。
【0036】
前述した本発明カバー10の特殊信号発光機Lへの取り付け・取り外し作業は、作業員Sが地面上から行なうことができ、脚立や梯子が不要となる。従って、作業時の転落・感電の危険性が排除される。また、本発明カバー10着脱作業は短時間で行えるから、作業効率が非常に良い。
【0037】
図6は、アングル支持型の特殊信号発光機Lに、本発明カバー10を装着する手順を説明するものである。図示する如く、特殊信号発光機Lが、電柱Q等から側方へ張り出すように設けたブラケットM上に設置され、且つ、下方にグレーチング等から成る足場Nが設けられており、そのため、操作バー20を本体部11の表面近くの接続部18に接続した形態では、本発明カバー10を装着するのが困難な場合がある。このような場合は、図6(A)に示す如く、操作バー20を、本体部11の上部に取り付けたアーム15の先端に接続し、正面カバー部11A及び背面カバー部11Bを閉じた状態のまま、特殊信号発光機Lの高さ位置まで持ち上げる。このとき、特殊信号発光機Lの高さ位置に応じて、操作バー20の長さを適当に調節する。
【0038】
次いで、図6(B)に示す如く、本発明カバー10を移動させて、特殊信号発光機Lを本体部11と操作バー20との間の間隙に位置させる。引き続き、操作バー20を操作して、正面カバー部11A及び背面カバー部11Bを開く。そして、正面カバー部11A及び背面カバー部11Bの間に特殊信号発光機Lを挟み込んだ後、同図(C)に示す如く、正面カバー部11Aと背面カバー部11Bとを閉じれば、本発明カバー10により、特殊信号発光機Lの全体を覆い隠すことが可能である。
【0039】
なお本発明カバー10は、特殊信号発光機Lの下方に構造物が有る場合だけでなく、上方に構造物が存在する場合でも、正面カバー部11A及び背面カバー部11Bで側方から挟む作業を行なえばよいから、装着が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…本発明カバー 11…本体部 12…蝶番(枢支部) 13…窓部 14…蓋体 15…アーム 16…接続部(上側) 17…ステー 18…接続部(下側) 19…面ファスナー 20…操作バー 30…永久磁石(係止手段) L…特殊信号発光機 M…ブラケット P…支持柱 Q…電柱 S…作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊信号発光機を内側に収納できる筒状の非透光性部材から成る本体部と、本体部に接続される2本の操作バーとから構成され、
本体部は、底面を開口させた半筒体状の正面カバー部及び背面カバー部から成り、
正面カバー部及び背面カバー部は、軸線に沿う一方の側縁部に設けた枢支部により開閉可能に接合されると共に、他方の側縁部に閉止状態を保持する係止手段が設けられ、
少なくとも正面カバー部に開閉可能な窓部が形成され、
正面カバー部及び背面カバー部における前記他方の側縁部の近傍に、操作バーの接続部が設けられていることを特徴とする特殊信号発光機用カバー。
【請求項2】
正面カバー部及び背面カバー部それぞれの上下2個所に操作バーの接続部が設けられ、
下側の接続部は、正面カバー部及び背面カバー部の表面近くに配置され、
上側の接続部は、正面カバー部及び背面カバー部の表面から側方へ突出するように設けたアームの先端部に設けられ、
前記アームの長さは、特殊信号発光機の最大直径よりも大きく設定されている請求項1に記載の特殊信号発光機用カバー。
【請求項3】
正面カバー部及び背面カバー部それぞれに開閉可能な窓部を設けた請求項1又は2に記載の特殊信号発光機用カバー。
【請求項4】
操作バーは長さを変更可能である請求項1〜3のいずれかに記載の特殊信号発光機用カバー。
【請求項5】
操作バーの途中に電気的絶縁部を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の特殊信号発光機用カバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−207292(P2011−207292A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75587(P2010−75587)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 第23回鉄道電気テクニカルフォーラム 主催者 社団法人 日本鉄道電気技術協会 開催日 2010年(平成22年)2月5日
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【Fターム(参考)】