説明

特殊工具による工作機械加工方法と工作機械加工システム

【課題】工具マガジンの工具保持ポッドに収容できない特殊工具を用いて1つのラインで加工を行えるようにした。
【解決手段】工作機械加工システム1は、ワークを搭載するパレット4を搬送手段5に設置して搬送ライン3を搬送させてマシニングセンター7の主軸に装着する。マシニングセンター7にはワーク加工用の工具を収納する工具マガジンを設けた。工具保持ポッドに収納できない特殊工具を取り付けた特殊工具搭載パレット4Aをワークパレット4と共にパレットストッカ12に保管する。ワーク加工制御手段における加工プログラムの制御コードで特殊工具搭載パレット4Aを呼び出して搬送手段5に移送し、マシニングセンター7に搬送して回転テーブルに搭載する。マシニングセンター7に装着した特殊工具によってワークを加工し、終了後に特殊工具搭載パレット4Aをパレットストッカ12に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を用いてワークを加工する1つのラインにおいて、工具マガジンの工具保持ポッドに収納できない特殊形状の特殊工具を交換使用できるようにした工作機械加工方法と工作機械加工システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
汎用のマシニングセンター等の工作機械を複数配列して、これらをコンピューターによって総括制御する加工設備としてFMS(Flexible manufacturing System)が知られている。FMSは多品種少量生産を経済的且つ効率的に行う工場の自動化技術である。このFMSを用いた機械加工ラインとして、例えば特許文献1、2に記載されたものが提案されている。
特許文献1に記載されたFMSは、各工作機械に着脱交換可能な複数の工具を工具マガジンの工具保持ポッドに収納しており、これら工具は工具マガジンの工具保持ポッド位置に応じて標準工具と専用工具とに分類され、更に専用工具と交換使用可能な補充工具を工具補充装置に備えている。そして、必要に応じて専用工具と補充工具を交換して、工具マガジンを移動させて工作機械に自動補充するとしている。
【0003】
また、特許文献2に記載された工具交換方法では、工具マガジンを備えたパレットをワークパレットの搬送路に搬入して工作機械の主軸と工具マガジンの工具保持ポッドの工具との間で交換可能としている。そして、通常加工するワークと異なるワークを加工する際、必要な工具マガジンを備えたパレットを工具待機コンベアからワークパレットの搬送路に移動させて、所望のマシニングセンターの主軸との間で工具交換を行い、ワークを切削加工するようにしている。
【0004】
これら特許文献1,2に用いられる工作機械加工システムにおける工具は、いずれも工具マガジンの工具保持ポッドに収納されており、工具交換時に工具保持ポッドから取り出して主軸との間で工具を着脱交換するものである。
ところで、ワークの中には、アングル形状工具やロングツール工具等、汎用マシニングセンターの工具マガジンの工具保持ポッドに収納できない特殊形状の工具(以下、特殊工具という)を用いて切削加工するものがある。その場合、汎用の工作機械における工具マガジンを、特殊工具を搭載可能な特殊形状の工具保持ポッドを備えた工具マガジンに改造して使用するか、汎用の工作機械とは別に特殊工具に対応した専用加工機を準備して、ワークの一部を分割加工する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−146639号公報
【特許文献2】特開2005−169586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の場合、工作機械の改造や別個の専用加工機の製造等が必要であるためコスト高になっていた。また、汎用の工作機械とは別個の専用加工機を用意して、工程を分割して一部づつ加工する場合、FMSにおいても同様であるが、煩雑な加工制御が必要であり、生産効率を低下させる不具合があった。また、二つの工作機械システム間でワークを受け渡して搬送制御しなければならないために、ワークの加工精度が低下する欠点もあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、工具マガジンの工具保持ポッドに収容できない特殊工具を用いて1つの工作機械で加工を行えるようにしたことを特徴とする工作機械加工方法と工作機械加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による特殊工具を用いた工作機械加工方法は、加工すべきワークを搭載するパレットを搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送されたワークを加工する複数の工作機械と、これら工作機械でワークを加工するための工具を工具保持ポッドに収納する工具マガジンとを備え、パレットに搭載されたワークを搬送手段で搬送して工作機械の主軸に取り付けた工具で加工するようにした工作機械加工方法であって、工具マガジンに収納できない特殊工具を取り付けた特殊工具搭載パレットを搬送手段で工作機械に搬送して特殊工具を工作機械に装着し、特殊工具によってワークの加工を行うようにしたことを特徴とする。
本発明による特殊工具を用いた工作機械加工システムは、加工すべきワークを搭載するパレットを搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送されたワークを加工する複数の工作機械と、これら工作機械でワークを加工するための工具を工具保持ポッドに収納する工具マガジンと、工具マガジンに収納できない特殊工具を取り付けた特殊工具搭載パレットとを備え、特殊工具搭載パレットを搬送手段で工作機械に搬送し特殊工具でワークを加工させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明による特殊工具を用いた工作機械加工方法及び工作機械加工システムによれば、加工すべきワークを搭載したパレットを搬送手段で搬送してマシニングセンターに保持させ、マシニングセンターに装着した工具によってパレットの加工を行い、特殊工具を用いて加工する場合には特殊工具を搭載した特殊工具搭載パレットを搬送手段でマシニングセンターへ搬送し、パレット交換し更に工具交換して特殊工具をマシニングセンターへ装着して切削加工を行う。そのため、特殊工具が工具マガジンの工具保持ポッドに収納できない場合でも、別の工作機械加工システムを用いて特殊工具による切削加工を分割して行う必要がなく、1つの工作機械で工具保持ポッドに装着できる工具と装着できない特殊工具の両方を交換装着して切削加工できる。
【0010】
また、特殊工具搭載パレットは、ワーク加工プログラムのコード信号に基づき、搬送手段によって工作機械へ搬送されることが好ましい。
特殊工具搭載パレットを搬送手段へ移送し、マシニングセンターへ装着して加工し、マシニングセンターから取り外して特殊工具搭載パレットを搬出して戻す操作を、ワーク加工プログラムのコード信号に基づいて制御できる。
【0011】
また、特殊工具搭載パレットはワークを搭載するためのパレットと共にパレットストッカに保管されていることが好ましい。
パレットストッカに特殊工具搭載パレットをワークパレットと共に配列保管しておき、必要に応じてパレットストッカから特殊工具搭載パレットを搬送手段に移送して工作機械に搬送する。
【0012】
また、特殊工具によるワークの加工量に応じた特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを読み取って特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを補正して記憶するようにしてもよい。
特殊工具をマシニングセンターに装着して使用するたびに、加工量に応じてその寿命データまたは/及び補正データを記憶できる。しかも、特殊工具の工具補正データを随時記憶できるから、特殊工具搭載パレットを他の工作機械に搬入しても加工精度を維持できる。
【0013】
本発明による工作機械加工システムは、ワーク加工プログラムのコード信号により特殊工具搭載パレットを工作機械へ搬送させるワーク加工制御手段が備えられていてもよい。
また、特殊工具搭載パレットとワークを搭載するためのパレットを保管するパレットストッカを備えていてもよい。
また、特殊工具によるワークの加工量に応じた特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを特殊工具が装着された工作機械から読み取って、特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを補正して特殊工具寿命管理手段に記憶させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による特殊工具を用いた工作機械加工方法及び工作機械加工システムによれば、特殊工具搭載パレットをパレットの搬送手段で搬送して工作機械に設置し切削加工できるから、特殊工具を工具保持ポッドに収納できる特殊な工具マガジンを別に設ける必要がなく、標準工具等を工具保持ポッドに収納できる工具マガジンを用いてワークの切削加工を1つの工作機械で行える。
そのため、ワークの切削加工に際して、ワークを搭載したパレットを搬送手段で工作機械に1回搬送することで工作機械に装着した工具と特殊工具によって全ての切削加工を完了でき、ワークやワークパレットを複数の工作機械加工システム間を転送させる必要がなく、複数の工作機械加工システム間の転送によるワーク加工精度のバラツキをなくすことができる。そして、1つの加工プログラム内でワークのパレットと共に特殊工具パレットの搬入と搬送を制御できるから効率の良い加工を行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による自動工作機械加工システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示すマシニングセンターの要部構成を示す平面図である。
【図3】図1に示すマシニングセンターの回転テーブルとワークパレット及び特殊工具搭載パレットとを示す要部模式図である。
【図4】自動工作機械加工システムに用いられた管理制御部のブロック図である。
【図5】管理制御部において、(a)はパレット情報管理手段におけるパレット情報を示すテーブルの一部であり、(b)は特殊工具搭載パレット制御手段27における特殊工具搭載パレットとその呼び出しグループのデータの一例であり、(c)は特殊工具寿命管理手段における特殊工具の寿命設定データを示す図である。
【図6】ワーク加工制御手段における加工プログラムの制御コードの要部を示す図である。
【図7】実施形態の自動工作機械加工システムによる自動工作機械加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による自動工作機械加工システムについて添付図面を参照して説明する。
図1に示す自動工作機械加工システム1は例えばFMSである。この自動工作機械加工システム1において、ワーク搬送部2にはライン状の搬送ガイド3が延びており、搬送ガイド3にはワークパレット4を搭載して搬送するための搬送手段5が移動可能に支持されている。搬送ガイド3の一方の側には工作機械としてマシニングセンター7が1または複数台(図では3台)配列されている。ワークパレット4とは加工前のワークWを装着するためのパレット4である。
また、搬送ガイド3の一方の側において、マシニングセンター7に隣接する位置にワークパレット4にワークWを搭載するための段取ステーション9、10が設けられている。
搬送ガイド3の他方の側にはパレットストッカ12が配設されており、パレットストッカ12には複数のワークパレット4が配列されてストックされており、その一部は特殊工具搭載パレット4Aに置き換えられている。
【0017】
図2及び図3に示すマシニングセンター7には、基台15に設けられたコラムに工具装着用の主軸16が水平方向に設けられている。主軸16に対向する位置には、回転テーブル17が基台15上で回転可能に設けられている。回転テーブル17は搬送手段5から移送されるパレット4が加工位置と待機位置とを選択的に取り得るように、図示しない自動パレット交換装置によって180°回転可能とされている。
また、マシニングセンター7の側部には工具マガジン19が設けられている。工具マガジン19に設けられた図示しない多数の工具保持ポッドには、各種工具を含む標準工具が収納されて保持されている。なお、ここで標準工具とは工具保持ポッドに収納可能な全ての種類の工具を含む。そして、これら工具保持ポッドに収納されたいずれかの工具が自動工具交換装置20によって主軸16に対して着脱交換されるようになっている。
本実施形態では、工具マガジン19と自動工具交換装置20は各マシニングセンター7にそれぞれ設けられている。
【0018】
ここで、図1に示すパレットストッカ12におけるワークパレット4の列の一部に設けられた特殊工具搭載パレット4Aについて説明する。図3に示す特殊工具搭載パレット4Aは、上述した工具マガジン19の工具保持ポッドに収納できない特殊形状を有する特殊工具22が、治具23によってワークパレット4と同様なパレット4に搭載されて保持されている。
この特殊工具22は1本または異種のものが複数本、治具23でパレット4に保持されている。特殊工具22として、例えば斜め削り用のアングル工具や収納許容長さ以上のロングツール等がある。そして、特殊工具搭載パレット4Aが回転テーブル17の加工位置に保持された状態で、例えば主軸16が相対的に進出することでいずれかの特殊工具22を選択的に主軸16に装着できるようになっている。
なお、特殊工具搭載パレット4Aはパレットストッカ12に配列された状態で、既に特殊工具22が搭載されているが、搭載されていない状態にして段取ステーション9,10で搭載するように設定してもよい。
【0019】
そして、搬送ガイド3に設けた搬送手段5と各マシニングセンター7は管理制御部24に電気的に接続されている。
管理制御部24には、図4に示すように、パレットストッカ12に配列された各パレットNoの位置情報と各パレットNoにおけるパレット4がワークパレット4か特殊工具搭載パレット4Aか等のパレット情報とを管理するパレット情報管理手段25と、マシニングセンター7でのワークWの加工制御等の管理とパレット4の搬送手段5の搬送制御を行うワーク加工制御手段26とを備えている。
管理制御部24は、更にワークWの加工段階における特殊工具搭載パレット4Aのパレットストッカ12からの取り出しと特殊工具22によるワーク加工と特殊工具22及び特殊工具搭載パレット4Aの返却とを制御する特殊工具搭載パレット制御手段27と、加工に用いた特殊工具22の工具寿命を管理する特殊工具寿命管理手段28とが備えられている。
【0020】
パレット情報管理手段25の内容は図5(a)にその一例の一部が開示されており、パレットNoに応じたパレット4が特殊工具搭載パレット4Aかワークパレット4かを登録している。ワーク加工制御手段26では、標準工具の工具マガジン19からの着脱交換と標準工具によるワークの加工を制御すると共に、特殊工具搭載パレット22のストッカ12から搬送手段5への呼び出し制御と呼び出された特殊工具22の加工制御とパレットストッカ12への返却制御とが行われ、これらの制御は図7に示す加工プログラムの制御コードによって設定されている。
また、特殊工具搭載パレット制御手段27の内容はその一例の一部が図5(b)に開示されており、パレットNoとワーク切削加工のために呼び出す1または複数の特殊工具22のグループとの関係が予め設定されている。
更に、特殊工具寿命管理手段28では、図5(c)にその一例の一部が開示されている。即ち、パレットNoに応じた特殊工具22の使用前の寿命とマシニングセンター7で切削加工に用いられた切削時間(加工量)による刃先の摩耗・損耗を推定した補正データと残寿命との関係データが開示されている。
【0021】
本実施形態による特殊工具22を用いた自動工作機械加工システム1は上述の構成を備えており、次に図7に示すフローチャートに沿って特殊工具22を用いたワークWの工作機械加工方法について説明する。
自動工作機械加工システム1のパレットストッカ12のパレット4の列に、特殊工具22を搭載したパレット4を特殊工具搭載パレット4Aとして適宜位置に配置する。そして、管理制御部24におけるパレット情報管理手段25に、パレットストッカ12における特定のパレットNoに対応するパレットがワークパレット4または特殊工具搭載パレット4Aであることを設定したパレット情報を予め登録する(ステップ101)。
【0022】
そして、図1において、ワーク加工制御手段26の指示により、パレットストッカ12から任意のワークパレット4を取り出して搬送ライン3上を搬送手段5によって段取ステーション9、10に移送させ、段取ステーション9、10でワークWを搭載する。次いで、ワークWを搭載したワークパレット4を搬送手段5で搬送ライン3に沿って各マシニングセンター7に搬送し、回転テーブル17の待機位置に移送する(図2,3参照)。ワークパレット4を回転テーブル17の回転によって待機位置から加工位置に回動し、主軸16に予め取り付けられた標準工具によって切削加工する(ステップ102)。
これらの工程において、ワークパレット4を搬送手段5によって複数のマシニングセンター7に順次搬送して切削加工を行う。
【0023】
加工プログラムによるワークWの切削加工が所定段階まで進んで特殊工具22による加工段階になると、加工プログラムの制御コードによる特殊工具22の呼び出しが指示される。ワーク加工制御手段26の指示により標準工具による切削加工を中止する。そして、ワーク加工制御手段26によるスケジュールによって、特殊工具搭載パレット制御手段27により特殊工具搭載パレット4Aをパレットストッカ12から取り出し、搬送手段5によって目的のマシニングセンター7に搬送する(ステップ103)。
パレットストッカ12に保持された特殊工具搭載パレット4Aの取り出し搬送は、ワーク加工制御手段26における加工プログラム中の制御コード(「AP(アタッチメントパレット)呼び出し」)を実行することで行う(図6参照)。これにより特殊サイクルモードがスタートする。
【0024】
図2及び図3に示すように、所定のマシニングセンター7へ搬送された特殊工具搭載パレット4Aは回転テーブル17の待機位置に移送される。次に、回転テーブル17を180°回転させて加工途中のワークWを待機位置に移動させ、特殊工具搭載パレット4Aを加工位置に移動させて停止させるパレット交換を行う。この状態で、主軸16と特殊工具搭載パレット4A中の加工に用いる特殊工具22とが対向するように主軸16を高さ方向と水平方向に相対移動させる。そして、主軸16を進出させることで、特殊工具搭載パレット4Aに治具23で保持された所要の特殊工具22を主軸16に装着する(ステップ104)。次に主軸16をワークWの加工位置に戻す。
次いで、回転テーブル17を反転させることでワークWを搭載したワークパレット4を加工位置に位置させると共に特殊工具搭載パレット4Aのパレット4を待機位置に回動させる。そして、主軸16に装着された特殊工具22によってワークWの加工を継続する(ステップ105)。
なお、取り外した標準工具は自動工具交換装置20によって工具マガジン19に戻してもよいし、或いは特殊工具搭載パレット4Aに仮保持していてもよい。
【0025】
そして、特殊工具22によるワークWの切削加工が終了した段階で、加工プログラムでは制御コードによって特殊工具22の加工終了を指示する。ワーク加工制御手段26は特殊工具22の返却(「AP返却」)を指示する。これにより、上述の工具交換の手順と逆の手順で、特殊工具22は加工位置に回転し保持された特殊工具搭載パレット4Aに戻され、特殊工具搭載パレット4Aは搬送手段5に戻される(ステップ106)。そして、搬送手段5により、特殊工具搭載パレット4Aはパレットストッカ12の所定位置に搬出される(ステップ107)。こうして、特殊サイクルモードを終了する。
【0026】
なお、特殊サイクルモードにおいて、特殊工具搭載パレット4Aがパレットストッカ12からマシニングセンター7へ搬入された段階で、管理制御部24では特殊工具寿命管理手段28の特殊工具22の工具寿命データをマシニングセンター7に送信する。そして、マシニングセンター7での特殊工具22による加工が終了して、マシニングセンター7から特殊工具22を特殊工具搭載パレット4Aへ搬出する際に、特殊工具22による加工量に応じた工具寿命の補正データを読み出して管理制御部24内の特殊工具搭載パレット制御手段27に入力し、特殊工具寿命管理手段28に補正後の工具寿命データと補正データを記憶する(図5(c)参照)。
【0027】
そして、特殊サイクルモードが終了すると、ワーク加工制御手段26の指示により、マシニングセンター7の標準工具による切削加工が再開される(ステップ108)か、或いはワークWの切削加工が完了する(ステップ109)。こうして切削加工が完了したワークWは次工程に転送される。
なお、上述の切削工程における特殊サイクルモードにおいて、1つの特殊工具22によってワークWの切削加工を行ったが、これに代えて、複数の特殊工具22によってワークの切削加工を順次行っても良い。これについては、最初に選択された特殊工具搭載パレット4Aに応じて、予めパレット情報管理手段25で設定された前述の特殊工具搭載パレット4AのパレットNoに対応する呼び出しグループの特殊工具搭載パレット4Aを、特殊工具搭載パレット制御手段27により順次パレットストッカ12から呼び出す(図5(b)参照)。
切削加工に使用した特殊工具22をパレットストッカ12へ返却してから、次の特殊工具搭載パレット4Aをパレットストッカ12からマシニングセンター7へ搬入する。
【0028】
また、第二の特殊工具22を装着すべきマシニングセンター7が最初の特殊工具22を装着したマシニングセンター7と異なるマシニングセンター7であれば、第二の特殊工具搭載パレット4Aは装着すべきマシニングセンター7の位置に搬送され、回転テーブル17の加工位置で工具交換され、第二の特殊工具搭載パレット4Aから主軸16に第二の特殊工具22が装着させられる。
なお、工具マガジン19の工具保持ポッドに装着された標準工具でワークWの切削加工を行う場合には、加工処理の効率を向上させるために、次のワークWを搭載したパレット4はマシニングセンター7の回転テーブル17における待機位置に保持されることが好ましい。
しかし、特殊工具搭載パレット4Aを呼び出す制御コードが出力された場合には、回転テーブル17の待機位置に特殊工具搭載パレット4Aが搬送されるスペースを確保するために、次のワークWを搭載したワークパレット4は回転テーブル17の待機位置に搬送されず、パレットストッカ12で待機させる。
【0029】
上述のように、本実施形態による自動工作機械加工システム1によれば、特殊工具22でワークWを切削する工程が必要である場合、特殊工具22を収納できない標準工具を収納可能な工具保持ポッドを備えた工具マガジン19を設けた汎用の複数のマシニングセンター7を用いながら、1つのラインでワークWの切削加工を行うことができ、特殊工具22を搭載可能な特殊な工具マガジンを設ける必要がない。しかも、特殊工具22を自動工作機械加工システム1内のどのマシニングセンター7へも搬送可能で特殊工具22による加工を行える。
また、ワークWの切削加工に際して、ワークWを搭載したワークパレット4を搬送ライン3に1回搬送することによって各マシニングセンター7へ順次供給できて、特殊工具22と標準工具による全ての切削加工を完了できる。そのため、複数の工作機械加工システム間をワークWやワークパレット4が渡り歩く必要がないから、複数の工作機械加工システム間を転送させることによる加工精度のバラツキを防止できる。
【0030】
また、管理制御部24内に設けたワーク加工制御手段26の加工プログラム内の制御コードによって、特殊工具搭載パレット4Aの搬送手段5及びマシニングセンター7への搬入と搬出を制御できるから、最も処理効率の良い加工を行える。
また、特殊工具22の工具寿命データと補正データを、特殊工具22を装着したマシニングセンター7と特殊工具寿命管理手段28との間で送受信する機能を有するから、工具寿命を検知して特殊工具22の工具交換が可能である。そのため、特殊工具搭載パレット4Aをどのマシニングセンター7へ搬入しても、特殊工具22の寿命を考慮した精度の良い加工を維持できる。
【0031】
なお、本発明による自動工作機械加工システム1による特殊工具による工作機械加工方法と工作機械加工システムは上述の実施の形態に限定されることなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、工具マガジン19を各マシニングセンター7に取り付けた構成を有しているが、これに代えて、工具マガジン19をパレット4に取り付けて搬送手段5で各マシニングセンター7へ搬送して主軸16に装着するようにしてもよい。
また、上述した実施形態による工作機械加工方法では、最初に標準工具による加工を行って、次に特殊工具22による加工を行うようにしたが、工作機械加工方法の手順は任意であり、少なくとも特殊工具22による加工を含んでいればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 自動工作機械加工システム
3 搬送ライン
4 ワークパレット
4A 特殊工具搭載パレット
5 搬送手段
7 マシニングセンター
9、10 段取ステーション
12 パレットストッカ
16 主軸
22 特殊工具
24 管理制御部
26 ワーク加工制御手段
27 特殊工具搭載パレット制御手段
28 特殊工具寿命管理手段
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工すべきワークを搭載するパレットを搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送されたワークを加工する複数の工作機械と、これら工作機械でワークを加工するための工具を工具保持ポッドに収納する工具マガジンとを備え、前記パレットに搭載されたワークを前記搬送手段で搬送して工作機械の主軸に取り付けた工具で加工するようにした工作機械加工方法であって、
前記工具マガジンに収納できない特殊工具を取り付けた特殊工具搭載パレットを前記搬送手段で工作機械に搬送して前記特殊工具を工作機械に装着し、前記特殊工具によってワークの加工を行うようにしたことを特徴とする工作機械加工方法。
【請求項2】
前記特殊工具搭載パレットは、ワーク加工プログラムのコード信号に基づき、前記搬送手段によって工作機械へ搬送されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載された工作機械加工方法。
【請求項3】
前記特殊工具搭載パレットはワークを搭載するためのパレットと共にパレットストッカに保管されている請求項1または2に記載された工作機械加工方法。
【請求項4】
前記特殊工具によるワークの加工量に応じた特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを読み取って特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを補正して記憶するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載された工作機械加工方法。
【請求項5】
加工すべきワークを搭載するパレットを搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送されたワークを加工する複数の工作機械と、これら工作機械でワークを加工するための工具を工具保持ポッドに収納する工具マガジンと、該工具マガジンに収納できない特殊工具を取り付けた特殊工具搭載パレットとを備え、該特殊工具搭載パレットを搬送手段で工作機械に搬送して該工作機械に装着した前記特殊工具でワークを加工させるようにしたことを特徴とする工作機械加工システム。
【請求項6】
ワーク加工プログラムのコード信号により前記特殊工具搭載パレットを工作機械へ搬送させるワーク加工制御手段が備えられたことを特徴とする請求項5に記載された工作機械加工システム。
【請求項7】
前記特殊工具搭載パレットとワークを搭載するためのパレットを保管するパレットストッカを備えた請求項5または6に記載された工作機械加工システム。
【請求項8】
前記特殊工具によるワークの加工量に応じた特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを前記特殊工具が装着された工作機械から読み取って、特殊工具の寿命データまたは/及び補正データを補正して特殊工具寿命管理手段に記憶させるようにした請求項5乃至7のいずれかに記載された工作機械加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86352(P2012−86352A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237820(P2010−237820)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】