説明

状態検出装置

【課題】発光素子と受光素子を用いた雨滴検出装置において、外部光成分を効果的に低減して高精度に雨滴を検出できるとともに、安価な構成とする。
【解決手段】フォトダイオードPD11からの受光信号が電流ハイパスフィルタ回路20、電流−電圧変換回路30、電圧ハイパスフィルタ回路40、ピークホールド回路50、非反転増幅回路60を経て雨滴情報を生成する制御部70に入力される。電圧ハイパスフィルタ回路のオフセット部41はフィルタリングにより発生するアンダーシュートがピークホールド回路に入力可能な最低入力電圧以上になるように受光信号をオフセットさせるので、アンダーシュートの入力を阻止するための高価なアナログスイッチが不要である。非反転増幅回路は出力バッファの機能も兼ねるので出力バッファも不要となる。電流ハイパスフィルタ回路により電流−電圧変換回路の変換効率が高く、高精度に検出ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から出射された光を受光素子で受光して、その受光信号に基づいて発光素子と受光素子間に存する検出対象の状態を検出する状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受光信号に基づく状態検出装置として、例えば特開2004−340712号公報に開示された雨滴検出装置がある。この雨滴検出装置では、発光素子からパルス光をウインドシールドに照射し、その反射光を受光素子で受光して、信号処理することによりウインドシールドにおける雨滴の有無状態を検出するようにしている。
ところで、このような雨滴検出装置は発光素子と受光素子を組み込んだセンサ部がウインドシールドに組み付けられるので、ウインドシールドで反射した発光素子からの光だけでなく、例えば直射日光など車両外からの外部光もウインドシールドを通して受光素子に入射することが避けられず、受光素子の出力にはパルス光成分にノイズとしての外部光成分が重畳される。この外部光の周波数成分は、直流成分および木漏れ日などの太陽とセンサ間に存在する障害物の時間的変化による交流成分を含み、外部光の強度は周波数が低いほど強い。
【0003】
この結果、受光素子の受光電流を電圧に変換した出力が上昇して、飽和電圧を超えるような場合には、パルス光の信号成分がつぶれてしまい、正しい降雨状況の判断ができなくなる。
そこで、上記公報の雨滴検出装置では、電流−電圧変換回路に外光成分低減回路を付設するとともに、電流−電圧変換回路の後にバンドパスフィルタ/増幅回路を設けて外部光成分を周波数分離することにより外部光成分を低減して、飽和電圧を超えないようにし、その後ピークホールドした信号をマイクロコンピュータへ入力するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−340712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の装置では、外光成分低減回路は電圧に変換した信号から外部光成分を抽出しこれをさらに電流に変換して電流−電圧変換回路の入力側にフィードバックするので高価な構成となること、また、上記の外光成分低減回路を含む電流−電圧変換回路では、入力電流に対するフィードバック電流の比率までしか直流成分の電流を除去できないため、出力が飽和しないように電流−電圧変換回路での利得を充分に上げることができず、後段のピークホールド回路に入力するまでにはさらなる増幅回路が数段必要になること、そして、バンドパスフィルタの出力は増幅回路またはピークホールド回路を構成するオペアンプの非反転入力端子に直接接続され、バンドパスフィルタに含まれるハイパスフィルタがオペアンプの負電源であるグラウンド電位にバイアスされているので、パルス信号がハイパスフィルタを通過時に発生するアンダーシュートがオペアンプの最小入力電圧以下(グラウンド電位以下)となると、そのアンダーシュートが発生している期間オペアンプが正常動作しないかあるいはオペアンプを破壊することがあるため、そのアンダーシュート部分がオペアンプに入力されないように非常に高価となるアナログスイッチを設けていること、さらには、図示されていないがピークホールド信号はマイクロコンピュータなどに直接入力できないので、実際には出力バッファを介する必要があって高コストとなること等の問題がある。このため、直ちに採用することが困難であるのが実情である。
受光信号による検出対象の状態検出では、上に例示した雨滴検出装置の場合に限らず外部光の混入が避けられないため、種々の状態検出装置において検出の高精度化とともにコストの低減が課題となっている。
【0006】
したがって、本発明は、外部光成分を効果的に低減して高精度に検出対象の状態を検出できるとともに、より安価に実現される状態検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発光素子から出射されたパルス光を受光素子で受光して、受光素子から出力されるパルス光成分に外部光成分が重畳されている受光信号に基づいて発光素子と受光素子間に存する検出対象の状態を検出する状態検出装置であって、
受光信号を電流から電圧に変換する電流−電圧変換回路と、
受光信号からパルス光成分を抽出するハイパスフィルタ回路と、
電流−電圧変換回路とハイパスフィルタ回路とを通過した受光信号をピークホールドするピークホールド回路と、
ピークホールド回路の出力を増幅する非反転増幅回路と、
非反転増幅回路で増幅された受光信号のピーク値を基に検出対象の状態を判定する状態判定手段と、
ハイパスフィルタ回路通過により発生するアンダーシュートがピークホールド回路に入力可能な最低入力電圧以上になるように受光信号をオフセットさせるオフセット手段とを備え、
非反転増幅回路は、オフセット校正部を備えて、上記オフセットを吸収する方向に再度オフセットさせてピークホールド回路の出力を増幅するものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受光信号のアンダーシュートがピークホールド回路に入力可能な最小入力電圧以上となるように受光信号をオフセットさせ、ピークホールド回路通過後にオフセットを吸収するようにしているので、アンダーシュートの入力を阻止する高価なアナログスイッチ等を用いた阻止回路が不要となり、また、ピークホールド回路の後に非反転増幅回路を設けることにより電圧バッファも不要として増幅した受光信号のピーク値を状態判定手段に入力できるので、ハイパスフィルタ回路による外部光成分の低減とも相俟って、安価にかつ高精度に検出対象の状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】センサ部の構造概念図である。
【図3】受光信号処理系統の具体的な回路構成例を示す図である。
【図4】主要部における信号状態の変化を示す波形図である。
【図5】主要部における信号状態の変化を示す波形図である。
【図6】主要部における信号状態の変化を示す波形図である。
【図7】電流ハイパスフィルタ回路だけで外部光成分が除去された場合の電流−電圧変換回路の出力波形を示す図である。
【図8】電流ハイパスフィルタ回路の変形例を示す図である。
【図9】電圧ハイパスフィルタ回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を雨滴検出装置に適用した実施の形態について説明する。
図1は実施の形態の構成を示すブロック図であり、図2はセンサ部の配置構成を示す概念図である。
まず、図2により雨滴検出装置1のセンサ部10の構成を説明する。
センサ部10は、互いに対向する前壁3と後壁4を有するケーシング2にユニット化されて、車両のウインドシールドWの内面に取り付けられる。
すなわち、前壁3に形成した窓にプリズム5が設けられ、後壁4には発光素子11と受光素子12が設置される。
発光素子11と受光素子12はそれぞれの光軸をウインドシールドWの所定部位(検知面)Sに向けて配置され、発光素子11から照射された光がプリズム5を通してウインドシールドWの上記所定部位Sの外面側境界面で反射して受光素子12に受光されるようになっている。そして、プリズム5は発光素子11から受光素子12への光路上にレンズ部6a、6bを備えている。
センサ部10はプリズム5を発光素子11の発光波長において透明かつプリズム5またはウインドシールドWの屈折率と同等な屈折率をもつ透明接着剤などによりウインドシールドW内面に密着させて取り付けられている。
【0011】
つぎに、図1に基づいて、状態検出装置としての雨滴検出装置全体の構成を説明する。
発光素子11は例えば発光ダイオード(LED)で、発光素子駆動部15に接続され、発光素子駆動部15はマイクロコンピュータからなる制御部70に接続されている。発光素子駆動部15は制御部70からの信号を受けて発光素子11を駆動しパルス光を出力させる。
受光素子12は例えばフォトダイオード(PD)で、電流ハイパス(高域通過)フィルタ回路20に接続され、電流ハイパスフィルタ回路20の後段には順次電流−電圧変換回路30、電圧ハイパスフィルタ回路40、ピークホールド回路50および非反転増幅回路60が接続されて、非反転増幅回路60の出力側が制御部70に接続されている。
【0012】
受光素子12が出力する受光電流には、前述のように、パルス光成分と外部光成分とが含まれている。外部光成分は直流を含む低周波領域にあり、とくに直流成分が大半を占める。
電流ハイパスフィルタ回路20は受光素子12の受光電流から所定の遮断周波数以下の成分を遮断することにより、外部光成分を除去する。
電流ハイパスフィルタ回路20を通過した電流には、パルス光成分(パルス光電流)とその通過により発生するアンダーシュートとが含まれている。電流ハイパスフィルタ回路20を通過したこの電流は電流−電圧変換回路30により電圧変換されるが、その変換出力がパルス光成分とアンダーシュートとを含めて飽和しないように、電流−電圧変換回路30に付設の電圧オフセット部31により出力電圧がオフセットされて電流−電圧変換される。
【0013】
電圧ハイパスフィルタ回路40では、電流−電圧変換回路30の出力電圧に残留する外部光の交流成分をさらに除去する。
電圧ハイパスフィルタ回路40を通過する際にもアンダーシュートが発生するため、電圧ハイパスフィルタ回路40ではその出力がピークホールド回路50の最小入力電圧以上(最大入力電圧以下)となるように、付設の電圧オフセット部41により出力電圧がオフセットされて、フィルタリングされる。
【0014】
ピークホールド回路50はオフセットされた受光信号のピーク値をホールドする。
電圧ハイパスフィルタ回路40からピークホールド回路50へ入力される電圧は、パルス光成分とアンダーシュートに、電圧オフセット部31および電圧オフセット部41によるオフセット電圧を加えたものとなるが、制御部70からピークホールド回路50へのピークホールド解除信号は、発光素子11のパルス発光のタイミングに同期して、パルス発光開始のタイミングでオン(ピークホールド解除)からオフ(ピークホールド有効)し、予め決められた最低でもアンダーシュートが収まるまでの時間を経過後オフ(ピークホールド有効)からオン(ピークホールド解除)するように制御され、ピークホールド回路50ではアンダーシュートには影響されない電圧がピークホールドされる。
【0015】
非反転増幅回路60はピークホールド回路50の出力(受光信号のピーク値)を入力するが、オフセット校正部61を備えて、先の電圧オフセット部41によるオフセット電圧分を吸収するように再度オフセットさせてから、パルス光成分のピーク値のみを所定の振幅レベルまで増幅する。
制御部70は雨滴検出装置1内各部の制御を行なうとともに、増幅されたピーク値を取り込んで、当該ピーク値を基に雨滴情報を生成する。
【0016】
図3は上述の雨滴検出装置1における受光信号処理系統の具体的な回路構成を示し、図4〜図6は主要部における信号状態の変化を示す。
受光素子12としてフォトダイオードPD11がそのアノードをグラウンドGNDに接続され、カソードを電流ハイパスフィルタ回路20における例えば5Vの電源電圧VCCに一端が接続された抵抗R21の他端に接続されて逆バイアスを受けており、受光するとカソードからアノード方向へ流れる受光電流が生成されてアノードからグラウンドGNDへ流れ出る。
【0017】
電流ハイパスフィルタ回路20は、上述の抵抗R21と、抵抗R21の他端とフォトダイオードPD11のカソードとの接続点に一端を接続したコンデンサC21とを備え、コンデンサC21の他端を後段の電流−電圧変換回路30の後述するオペアンプOPAMP31の反転入力端子に接続して構成され、アクティブ電流ハイパスフィルタとして作用する。
抵抗R21の抵抗値Raは、当該抵抗に流れる外部光などによる直流電流による電位差が電源電圧VCCを超えないように余裕をもって選択され、コンデンサC21の容量値Caは、ハイパスフィルタの遮断周波数fcを発光素子11からのパルス光による交流成分の通過を許すように設定したとして、Ca=1/(2πfcRa)となるように選択されて、抵抗値Raと容量値Caによる1次ハイパス電流フィルタが構成される。
フォトダイオードPD11の受光電流の直流成分は抵抗R21を流れ、交流成分はコンデンサC21を流れる。各成分の流れ方向はフォトダイオードPD11における流れにしたがって、それぞれ抵抗R21からフォトダイオードPD11(のカソード)へ、後段の電流−電圧変換回路30からコンデンサC21を介してフォトダイオードPD11(のカソード)へ流れる。
【0018】
電流−電圧変換回路30は、オペアンプOPAMP31を備え、その反転入力端子(−)が前述のように電流ハイパスフィルタ回路20のコンデンサC21に接続している。そしてオペアンプOPAMP31の出力端子と反転入力端子間に抵抗R33を接続し、出力端子から出力される電流が抵抗R33を通って電流ハイパスフィルタ回路20へ流れ出す。
この抵抗R33に流れる電流による電位差(振幅)ΔVpはパルス光成分ΔVp-sigとアンダーシュートΔVp-underを含む。
【0019】
電圧オフセット部31は、オペアンプOPAMP31の非反転入力端子(+)と電源電圧VCCに接続された抵抗R31と同じく非反転入力端子とグラウンドGNDの間に接続された抵抗R32により構成され、抵抗R31とR32の分圧したオフセット電圧Vos1に、上述の電位差ΔVpが加算された電圧が、電流−電圧変換回路30の出力電圧となる。オフセット電圧Vos1は、抵抗R31とR32の比が、電位差ΔVpにおけるパルス光成分ΔVp-sigとアンダーシュートΔVp-underとの比と等価となるように設定される。例えば、パルス光成分ΔVp-sigとアンダーシュートΔVp-underが同量のとき、電源電圧VCCが5Vでは、オフセット電圧Vos1は2.5Vに設定される。
【0020】
さらに、電流−電圧変換回路30の電流電圧変換率も、その出力電圧がパルス光成分ΔVp-sigとアンダーシュートΔVp-underで飽和しないように、抵抗R33の抵抗値を選択して設定される。例えば、パルス光成分ΔVp-sigとアンダーシュートΔVp-underが同量のとき、電源電圧VCCが5Vでは、電位差ΔVpは2.5Vまで広げられる。
なお、抵抗R33に並列にコンデンサを接続し、ローパスフィルタを構成してもよい。この場合ローパスフィルタの遮断周波数は、前段の電流ハイパスフィルタ回路20の遮断周波数より高く設定される。
【0021】
電流−電圧変換回路30の出力電圧は電圧ハイパスフィルタ回路40へ出力される。
電圧ハイパスフィルタ回路40は、コンデンサC41と、コンデンサC41と電源電圧VCCとの間に設けた抵抗R41とコンデンサC41とグラウンドGNDとの間に設けた抵抗R42とからなり、電流−電圧変換回路30の出力電圧(受光信号)からさらに外部光成分を除去する。
ここで、コンデンサC41の容量Caと抵抗R41とR42による合成抵抗値Raは、遮断周波数fcを発光素子11からのパルス光による交流成分の通過を許す値に設定したとして、fc=1/(2πCaRa)となるように選択され、1次ハイパス電圧フィルタが構成される。
【0022】
フォトダイオードPD11を流れる受光電流は、図4の(A)に示すように、外部光成分Fgに発光素子11によるパルス光成分Fpが重畳されており、外部光成分Fgの振幅レベルはパルス光成分Fpに比較して格段に大きいが、電流ハイパスフィルタ回路20を通過させてから電流−電圧変換回路30で変換した出力電圧は、(B)に示されるように、アンダーシュートΔVp-underを伴ってはいるがパルス光成分ΔVp-sigが増大し、外部光成分(低周波交流成分ΔVg−ac)の変化が大きく減衰されたものとなる。
電流−電圧変換後の受光信号は、オペアンプOPAMP31の非反転入力端子に入力している抵抗R31とR32の分圧比によるオフセット電圧Vos1分だけオフセットしている。
【0023】
電圧ハイパスフィルタ回路40に付設のオフセット部41は、電源電圧VCCに接続された抵抗R41とグラウンドGNDに接続された抵抗R42とを直列接続することにより構成され、すなわち、抵抗R41とR42を電圧ハイパスフィルタ回路40と共用している。
抵抗R41とR42との接続点に、図5の(A)に示すような、GND電位から高電圧側へオフセットした出力電圧(受光信号)を得る。
出力電圧のオフセット電圧Vos2は、アンダーシュートΔVp-underの下端(最低値)がピークホールド回路50におけるオペアンプOPAMP51の最小入力電圧(例えば0V)以上になるように抵抗R41とR42の分圧比を調整して余裕をもた
せて設定される。
【0024】
ピークホールド回路50は、オペアンプOPAMP51を備え、その非反転入力端子に電圧ハイパスフィルタ回路40の出力電圧を受光信号として入力している。
オペアンプOPAMP51の出力端子からグラウンドGNDの間には順次直列にダイオードD51とコンデンサC51が設けられ、またダイオードD51とコンデンサC51との接続点はオペアンプOPAMP51の反転入力端子に接続している。
さらに、ダイオードD51とコンデンサC51との接続点とグラウンドGNDとの間には、抵抗R51とスイッチ素子S51が直列に設けてある。スイッチ素子S51は制御部70のピークホールド解除信号制御端子p1からのピークホールド解除信号を受けたときにオン(ON)してコンデンサC51を放電させ、ピークホールド解除信号がオフ(OFF)を受けたときにオフしてピークホールド回路50の入力電圧にコンデンサC51が充電されるようになっている。
【0025】
電圧ハイパスフィルタ回路40からピークホールド回路50へ入力される電圧は、パルス光成分ΔVp-sigとアンダーシュートΔVp-underに、電圧オフセット部41によるオフセット電圧Vos2を加えたものとなるが、制御部70からのピークホールド解除信号は、制御部70が制御する発光素子11のパルス発光に同期し、パルス発光開始のタイミングでオン(ピークホールド解除)からオフ(ピークホールド有効)し、予め決められた最低でもアンダーシュートΔVp-underが収まるまでの時間を経過後オフ(ピークホールド有効)からオン(ピークホールド解除)するように制御される。これにより、アンダーシュートΔVp-underには影響されず、電圧オフセット部41のオフセット電圧Vos2にパルス光成分ΔVp-sigの電圧が加算された電圧がピークホールドされる。
この結果、ピークホールド回路50でピークホールドされた受光信号は、図5の(B)に示されるように、パルス光成分のみが歪みなく抽出されたものとなる。
なお、制御部70は発光素子駆動部15への制御信号を送出する端子など他の制御端子も備えているが、図示省略する。
【0026】
非反転増幅回路60は、オペアンプOPAMP61を備え、その非反転入力端子をダイオードD51とコンデンサC51との接続点に接続してピークホールド回路50の出力を入力している。また、電源電圧VCCとグラウンドGNDとの間に直列の抵抗R61、R62を設けて、両抵抗の接続点をオペアンプOPAMP61の反転入力端子に接続するとともに、反転入力端子と出力端子間に抵抗R63を接続している。
ここでは、非反転増幅回路60はピークホールド回路50のコンデンサC51をオペアンプOPAMP61の非反転入力端子に入力接続しており、非反転入力端子の入力インピーダンスが高いので、コンデンサC51から非反転増幅回路60へ電流を流出させることなく、したがってピークホールド回路50に負担をかけることなくピークホールドさせることができる。
【0027】
さらに、オフセット校正部61は抵抗R61、R62による分圧比を調整することにより実現され、前のオフセット部41の抵抗R41とR42によるオフセット電圧Vos2を吸収して、図6に示すように、GND電位からの振幅値とした増幅ピーク値ΔVsigをオペアンプOPAMP61の出力端子から出力させることができる。また、抵抗63の抵抗値と抵抗R61とR62の並列合成抵抗値との比の設定により、振幅レベルもオペアンプOPAMP61の出力電圧範囲内にひずみなく収まる所望のレベルとすることができる。
【0028】
オペアンプOPAMP61の出力端子は制御部70のA/D入力端子p2に接続されている。
制御部70では上記受光信号のピーク値を所定間隔でサンプリングしてA/D変換した上、雨滴情報を生成し、降雨状況を判断してワイパーのオン、オフあるいはワイパー速度を制御するワイパー制御信号をワイパー制御信号出力端子p3から不図示のワイパ制御装置等へ送出する。
【0029】
本実施の形態においては、電流ハイパスフィルタ回路20および電圧ハイパスフィルタ回路40の少なくともいずれかが請求項1の発明におけるハイパスフィルタ回路に該当するとともに、電圧ハイパスフィルタ回路40は請求項3の発明におけるハイパスフィルタ回路および請求項5の発明における後段ハイパスフィルタ回路に該当し、電流ハイパスフィルタ回路20は請求項4の発明におけるハイパスフィルタ回路および請求項5の発明における前段ハイパスフィルタ回路に該当している。
制御部70が状態判定手段に該当する。
電圧オフセット部41が請求項2の発明におけるオフセット手段に該当し、とくにその抵抗R41が第1の抵抗に、R42が第2の抵抗に該当する。そして、オペアンプOPAMP51の非反転入力端子がピークホールド回路の受光信号入力端子に該当する。
また、電圧オフセット部31が請求項4の発明におけるオフセット手段に該当し、とくにその抵抗R31が第1の抵抗に、R32が第2の抵抗に該当する。そして、オペアンプOPAMP31の非反転入力端子が電流−電圧変換回路の基準信号入力端子に該当する。
また抵抗R61が請求項6の発明における第3の抵抗に、抵抗R62が第4の抵抗に該当する。
【0030】
実施の形態は以上のように構成され、車両のウインドシールドW表面の検知面Sに向けてパルス光を照射する発光素子11と、検知面で反射された光を受光する受光素子としてのフォトダイオードPD11とを有して、フォトダイオードPD11の出力に基づいて雨滴を検出する雨滴検出装置1において、フォトダイオードPD11から出力されるパルス光成分に外部光成分が重畳されている受光信号を電流から電圧に変換する電流−電圧変換回路30と、受光信号からパルス光成分を抽出する電流ハイパスフィルタ回路20および電圧ハイパスフィルタ回路40と、電流−電圧変換回路30と各ハイパスフィルタ回路20、40とを通過した受光信号をピークホールドしてピーク値ΔVp/h−sigを出力するピークホールド回路50と、ピークホールド回路50の出力を増幅する非反転増幅回路60と、非反転増幅回路60で増幅された受光信号の増幅ピーク値ΔVsigを基に雨滴の付着状態を判定し、雨滴情報を生成する制御部70と、ハイパスフィルタ回路40通過により発生するアンダーシュートがピークホールド回路50に入力可能な最低入力電圧以上になるように受光信号をオフセットさせるオフセット部41とを備え、非反転増幅回路60は、オフセット校正部61を備えて上記オフセットを吸収する方向に再度オフセットさせてピークホールド回路50の出力を増幅するものとした。
電流−電圧変換回路30の前段に電流ハイパスフィルタ回路20を設けることにより、外部光により飽和させることなく電流−電圧変換回路30の電流電圧変換率を上げることができ、ピークホールド回路50の前段に必要であった高い増幅率の増幅回路が不要となるので、その高い増幅率の増幅回路で発生し得る回路ノイズの影響がなくなる。
また電流−電圧変換回路30の後段にも電圧ハイパスフィルタ回路40を設けて、外部光成分の低減が一層確実になる。
【0031】
また、電圧ハイパスフィルタ回路40の電圧オフセット部41と非反転増幅回路60のオフセット校正部61を設け、ピークホール回路50へ入力される受信信号(パルス光成分ΔVp-sig)が電圧オフセットされてもオフセット電圧を吸収できるため、ピークホールド回路50の入力の前段に従来必要とされた、ピークホールド回路の負電源であるグラウンド電位にバイアスされたハイパスフィルタと、パルス信号が該ハイパスフィルタを通過時に発生するアンダーシュートをピークホール回路の最小入力電圧以下(グラウンド電位以下)としないためのアナログスイッチなどの阻止回路と、これらのハイパスフィルタと阻止回路が直接ピークホールド回路に接続しない場合のバッファ回路または増幅回路とが不要となる。
また、非反転増幅回路60をピークホールド回路50の後段におくことにより、ピークホールド回路50の後段に従来必要とされた電圧バッファが不要となる。
以上のように、ノイズの少ない受光信号を制御部70に入力できるので、高精度に雨滴の付着状態を検出できるとともに、安価な構成となる。
【0032】
非反転増幅回路60のオフセット校正部61は、電圧ハイパスフィルタ回路40の電圧オフセット部41によるオフセットを吸収する方向に再度オフセットさせてピークホールド回路50の出力を増幅するので、グラウンドからの増幅振幅値としたピーク値信号を出力することができる。
【0033】
電圧ハイパスフィルタ回路40の電圧オフセット部41は、電源電圧に接続された抵抗R41とグラウンドに接続された抵抗R42を直列に配置し、抵抗R41との接続点をピークホールド回路50のオペアンプOPAMP51の非反転入力端子に接続して構成されているので、高価なアナログスイッチを用いてアンダーシュートのピークホールド回路への入力を阻止するものに比較して簡単構成であるとともに、電圧ハイパスフィルタ回路40のフィルタ定数形成用としても共用され、従来のグラウンド電位にバイアスされるフィルタに比較しても抵抗1個の追加で安価に構成できる。
【0034】
なお、実施の形態では、電流ハイパスフィルタ回路20に加えて、電流−電圧変換回路30の後に電圧ハイパスフィルタ回路40を設けたが、図4の(B)に現れている低周波交流成分ΔVg−acが消滅して、図7に示すように、電流ハイパスフィルタ回路20だけで外部光成分が十分除去されるときには、電圧ハイパスフィルタ回路40およびオフセット部41を省いてもよい。
この場合には、オフセット部41に代わってオフセット部31によるオフセット電圧Vos1をとくに、電流−電圧変換回路30の出力電圧におけるアンダーシュートの下端(最低値)がピークホールド回路50におけるオペアンプOPAMP51の最小入力電圧以上になるように設定すればよい。
【0035】
また、実施の形態における電流ハイパスフィルタ回路20は1次のハイパスフィルタとして示したが、図8に示すように、コンデンサC21の後(電流−電圧変換回路30側)にコンデンサC22を設け、コンデンサC21とコンデンサC22の接続点とグラウンドGNDの間に抵抗R22を設けた電流ハイパスフィルタ回路20Aとすれば、簡易かつ低価で2次のハイパスフィルタを構成でき、次数が上がる分だけノイズである外部光成分を減衰させる性能が向上する。
【0036】
電圧ハイパスフィルタ回路40についても1次のハイパスフィルタとして示したが、図9に示すように、抵抗R41と抵抗R42の接続点とコンデンサC41との間にコンデンサC42を設け、コンデンサC41とコンデンサC42の接続点とグラウンドGNDの間に抵抗R43を設けた電圧ハイパスフィルタ回路40Aとすれば、同様に、簡易かつ低価で2次のハイパスフィルタを構成でき、次数が上がる分だけノイズである外部光成分を減衰させる性能が一層向上する。
なお、電圧ハイパスフィルタ回路40(40A)におけるフィルタは、1次以上のハイパスフィルタが構成されていれば、ハイパスフィルタの遮断周波数より大きい遮断周波数のローパスフィルタを持つバンドパスフィルタであってもよい。
【0037】
なお、実施の形態は雨滴検出装置に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されず、外部光が存在する環境下で受光信号に基づいて検出対象の状態を検出する種々の状態検出装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 雨滴検出装置
2 ケーシング
3 前壁
4 後壁
5 プリズム
6a、6b レンズ部
10 センサ部
11 発光素子
12 受光素子
15 発光素子駆動部
20、20A 電流ハイパスフィルタ回路
30 電流−電圧変換回路
31 電圧オフセット部
40、40A 電圧ハイパスフィルタ回路
41 電圧オフセット部
50 ピークホールド回路
60 非反転増幅回路
61 オフセット校正部
70 制御部
C21、C22、C41、C42、C51、 コンデンサ
D51 ダイオード
Fp パルス光成分
Fg 外部光成分
GND グラウンド
OPAMP31、OPAMP51、OPAMP61 オペアンプ
PD11 フォトダイオード
R21、R22、R31、R32、R33、R34 抵抗
R41、R42、R43、R51、R61、R62、R63 抵抗
S51 スイッチ素子
p1 ピークホールド解除信号制御端子
p2 A/D入力端子
p3 ワイパー制御信号出力端子
VCC 電源電圧
Vos1、Vos2 オフセット電圧
ΔVg−ac 低周波交流成分
ΔVp 電位差
ΔVp-sig パルス光成分
ΔVp-under アンダーシュート
ΔVp/h−sig ピーク値
ΔVsig 増幅ピーク値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出射されたパルス光を受光素子で受光して、前記受光素子から出力されるパルス光成分に外部光成分が重畳されている受光信号に基づいて発光素子と受光素子間に存する検出対象の状態を検出する状態検出装置であって、
前記受光信号を電流から電圧に変換する電流−電圧変換回路と、
受光信号から前記パルス光成分を抽出するハイパスフィルタ回路と、
前記電流−電圧変換回路と前記ハイパスフィルタ回路とを通過した受光信号をピークホールドするピークホールド回路と、
該ピークホールド回路の出力を増幅する非反転増幅回路と、
該非反転増幅回路で増幅された受光信号のピーク値を基に検出対象の状態を判定する状態判定手段と、
前記ハイパスフィルタ回路通過により発生するアンダーシュートが前記ピークホールド回路に入力可能な最低入力電圧以上になるように受光信号をオフセットさせるオフセット手段とを備え、
前記非反転増幅回路は、オフセット校正部を備えて前記オフセットを吸収する方向に再度オフセットさせて前記ピークホールド回路の出力を増幅するものであることを特徴とする状態検出装置。
【請求項2】
前記オフセット手段が、電源電圧に接続された第1の抵抗とグラウンドに接続された第2の抵抗を直列に配置し、該第1の抵抗と第2の抵抗との接続点を前記ピークホールド回路の受光信号入力端子に接続したものであることを特徴とする請求項1記載の状態検出装置。
【請求項3】
前記ハイパスフィルタ回路がコンデンサと抵抗とで構成され、前記電流−電圧変換回路と前記オフセット手段の間に設けられて、
前記抵抗を前記オフセット手段の第1及び第2の抵抗と共用していることを特徴とする請求項2に記載の状態検出装置。
【請求項4】
前記ハイパスフィルタ回路が前記電流−電圧変換回路の前のみに設けられ、
前記オフセット手段が、電源電圧に接続された第1の抵抗とグラウンドに接続された第2の抵抗を直列に配置し、該第1の抵抗と第2の抵抗との接続点を前記電流−電圧変換回路の基準信号入力端子に接続したものであることを特徴とする請求項1に記載の状態検出装置。
【請求項5】
前記ハイパスフィルタ回路が、前記電流−電圧変換回路の前に設けられた前段ハイパスフィルタ回路と、前記電流−電圧変換回路と前記オフセット手段の間に設けられた後段ハイパスフィルタ回路とを含み、
前記後段ハイパスフィルタ回路はコンデンサと抵抗とで構成され、前記抵抗を前記オフセット手段の第1及び第2の抵抗と共用していることを特徴とする請求項2に記載の状態検出装置。
【請求項6】
前記非反転増幅回路にはオペアンプが設けられ、前記ピークホールド回路の出力信号端子が前記オペアンプの非反転入力端子に接続され、前記オペアンプの反転入力端子と電源電圧間に接続される第3の抵抗とグラウンドに接続された第4の抵抗とを直列に配置し、
前記第3の抵抗と第4の抵抗が前記オフセット校正部を形成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の状態検出装置。
【請求項7】
前記発光素子が車両のウインドシールド表面の検知面に向けてパルス光を出射し、前記受光素子が前記検知面で反射された光を受光するように配置され、
前記状態判定手段が前記受光信号のピーク値を基にウインドシールドの雨滴の付着状態を判定するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1に記載の状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24618(P2013−24618A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157366(P2011−157366)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】