説明

状態量分布測定装置、及び試料の状態量分布を測定する方法

【課題】凹凸を有する吸収性物品の状態量分布を簡易に測定することができる状態量分布測定装置を提供すること。
【解決手段】試料の状態量を測定する、水分センサ、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、及び風速センサから成る群から選択されるセンサと、吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、上記試料をその上に置くための凸面を有する試料台と、上記センサの、上記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構と、上記センサが上記試料に対して相対的に移動するように上記センサ及び上記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構と、上記移動機構を制御することにより、上記センサを上記試料に対して相対的に移動させながら、上記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、上記試料の状態量分布を測定する測定機構とを具備する状態量分布測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態量分布測定装置、及び試料の状態量分布を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の開発において、液体を吸収した際の、吸収性物品の特定領域、例えば、吸収面における状態量の分布、例えば、水分の分布、湿度の分布、温度の分布等を適切に評価することは、製品の改良のために重要である。
また、例えば、吸収性物品の濡れ感に関して、着用者は、吸収性物品が吸収した液体の総量に従って濡れ感を感じるのではなく、吸収性物品の吸収面の極々表面に残る水分に従って濡れ感を感じやすいことが経験的に知られている。吸収性物品の内部、特に吸収体に吸収された液体は、体圧等の圧力が加えられた場合であっても、吸収性物品の外に滲みにくいからである。従って、吸収性物品の特定領域の状態量分布を適切に評価できることが重要である。
【0003】
しかし、例えば、吸収性物品の吸収面の水分量を評価するために、当技術分野において現在用いられている評価方法は、図8に示すように、吸収性物品24に、人工排泄液等の液体を滴下し、平面上に設置した吸収性物品の上に、ろ紙、ティッシュ等の吸収紙25を置き、そして上記吸収紙に、おもり26を載せて一定の荷重をかけ、一定時間後、吸収紙に移行した液体の量を測定するものである(特許文献1〜3)。
【0004】
しかし、上述の評価方法では、(1)吸収性物品の吸収面の凹凸によっては、吸収紙に接触する部分と、接触しない部分とが生じ、さらに吸収面の部位によって、加えられる圧力が異なる。従って、肌が触れる可能性のある範囲を網羅的に且つ一定条件下で測定することができない問題点がある。さらに、上述の評価方法では、(2)液体の移行は、吸収紙の吸液能に左右されるが、吸収紙により、吸収能のバラツキが大きいため、測定誤差が大きくなる、そして(3)吸収紙への液体の移行量が小さいため、測定誤差が大きい等の問題点をさらに有する。さらに、上記評価方法は、吸収性物品の特定領域の状態量分布を測定できていない。
【0005】
また、吸収性物品の特定領域の状態量を測定するために、水分センサ、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、風速センサ等のセンサを用いることも考えられうる。
しかし、そもそも、吸収性物品の吸収面は、一般的に凹凸を有するので、吸収性物品の吸収面における状態量の分布を、一定の条件、例えば、一定の圧力下で測定することは難しい。
【0006】
さらに、例えば、吸収性物品の吸収面の水分量を測定するために、水分センサを用いることも考えられ、そして上記水分センサとしては、静電容量式、赤外線吸収式、マイクロ波式、電気抵抗式等の水分センサが知られている。それらの中で、吸収性物品の特定領域の水分量を測定するためには、静電容量式の水分センサが好適であると思われる。
【0007】
しかし、例えば、特許文献4に記載されるように、上記静電容量式のセンサが対象とする水分率は、低水分率、例えば、特許文献4に記載のセンサでは、請求項8に記載されるように、0〜50質量%の範囲の水分率を測定することを想定しており、一般的に、水分センサで、高水分率領域を測定することは難しいことが知られている。静電容量式のセンサで、高水分率領域を測定することが難しい理由の一つは、センサに水が付着し、測定誤差が大きくなることが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−290000号
【特許文献2】特開2002−165830号
【特許文献3】特開2006−512159号
【特許文献4】特開平11−174015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来の測定方法及び測定装置には種々の問題点があった。
従って、本発明は、凹凸を有する吸収性物品の状態量分布を簡易に測定することができる状態量分布測定装置を提供することを目的とする。
本発明はまた、静電容量式の水分センサを用いて、凹凸を有する吸収性物品の高水分率領域の水分率を簡易に測定することができる状態量分布測定装置を提供することをさらなる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、試料の状態量を測定する、水分センサ、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、及び風速センサから成る群から選択されるセンサと、吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、上記試料をその上に置くための凸面を有する試料台と、上記センサの、上記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構と、上記センサが上記試料に対して相対的に移動するように上記センサ及び上記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構と、上記移動機構を制御することにより、上記センサを上記試料に対して相対的に移動させながら、上記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、上記試料の状態量分布を測定する測定機構とを具備する状態量分布測定装置により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
試料の状態量を測定する、水分センサ、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、及び風速センサから成る群から選択されるセンサと、
吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、上記試料をその上に置くための凸面を有する試料台と、
上記センサの、上記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構と、
上記センサが上記試料に対して相対的に移動するように上記センサ及び上記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
上記移動機構を制御することにより、上記センサを上記試料に対して相対的に移動させながら、上記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、上記試料の状態量分布を測定する測定機構と、
を具備する状態量分布測定装置。
【0012】
[態様2]
上記センサが、静電容量式の水分センサであり、上記センサと上記試料との間に配置され且つ上記試料を覆うための、上記センサとは別体の絶縁フィルムをさらに備える、態様1に記載の状態量分布測定装置。
[態様3]
上記センサが、あらかじめ定められた間隔を隔てて平行に配置されている一対の電極を具備する、態様2に記載の状態量分布測定装置。
【0013】
[態様4]
上記試料台の上記凸面が、円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である、態様1〜3のいずれか一つに記載の状態量分布測定装置。
[態様5]
上記移動機構が、上記試料台を、上記円柱の中心軸線回りに回転させ、それにより、上記センサを上記試料に対して相対的に移動させる、態様4に記載の状態量分布測定装置。
【0014】
[態様6]
上記移動機構が、上記試料台を、上記円柱の中心軸線と平行に移動させ、それにより、上記センサを上記試料に対して相対的に移動させる、態様4又は5に記載の状態量分布測定装置。
[態様7]
上記支持機構が、上記接触圧が鉛直方向に作用するように且つ上記センサが上下に移動できるように上記センサを保持する、態様1〜6のいずれか一つに記載の状態量分布測定装置。
【0015】
[態様8]
上記支持機構が、天秤である、態様7に記載の状態量分布測定装置。
[態様9]
測定結果を表示する表示機構をさらに具備する、態様1〜8のいずれか一つに記載の状態量分布測定装置。
【0016】
[態様10]
試料の状態量分布を測定する方法であって、
(a)下記を具備する状態量分布測定装置を準備するステップ、
(i)試料の状態量を測定する、水分センサ、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、及び風速センサから成る群から選択されるセンサ、
(ii)吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、上記試料をその上に置くための凸面を有する試料台、
(iii)上記センサの、上記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構、
(iv)上記センサが上記試料に対して相対的に移動するように上記センサ及び上記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構、及び
(v)測定機構、
(b)上記試料台の凸面に、上記試料を載せるステップ、
(c)上記試料の上に、上記センサを置くステップ、そして
(d)上記測定機構が、上記移動機構を制御することにより、上記センサを上記試料に対して相対的に移動させながら、上記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、上記試料の状態量分布を測定するステップ、
を含む、前記方法。
【0017】
[態様11]
試料の状態量分布を測定する方法であって、
(a)下記を具備する状態量分布測定装置を準備するステップ、
(i)試料の水分率を測定する、静電容量式の水分センサ、
(ii)吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、上記試料をその上に置くための凸面を有する試料台、
(iii)上記センサの、上記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構、
(iv)上記センサが上記試料に対して相対的に移動するように上記センサ及び上記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構、
(v)測定機構、及び
(vi)上記センサと上記試料との間に配置され且つ上記試料を覆うための、上記センサとは別体の絶縁フィルム、
(b)上記試料台の凸面に、上記試料を載せるステップ、
(c)上記試料の上に、上記絶縁フィルムを置くステップ、
(d)上記絶縁フィルムを間に挟んで、上記試料の上に、上記センサを置くステップ、そして
(e)上記測定機構が、上記移動機構を制御することにより、上記センサを上記試料に対して相対的に移動させながら、上記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、上記試料の状態量分布を測定するステップ、
を含む、前記方法。
【0018】
[態様12]
上記状態量分布測定装置が、測定結果を表示する表示機構をさらに含む、態様10又は11に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の状態量分布測定装置は、吸収性物品の状態量分布を簡易に測定することができる。
本発明の状態量分布測定装置はまた、静電容量式の水分センサを用いることにより、凹凸を有する吸収性物品の高水分率領域における水分率を簡易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の状態量分布測定装置の第1の実施形態を示す図である。
【図2】図2は、状態量としての水分量を測定する際の、センサ2と、試料4との位置関係の例を示す図である。
【図3】図3は、凸面が、正円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である例を示す図である。
【図4】図4は、凸面が、楕円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である例を示す図である。
【図5】図5は、移動機構が、センサを試料に対して相対的に移動させる移動例を示す図である。
【図6】図6は、支持機構の別の例を示す図である。
【図7】図7は、実施例1の結果を示す図である。
【図8】図8は、従来の吸収性物品の水分量を測定する方法を説明するための図である。
【図9】図9は、実施例3の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例3の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の状態量分布測定装置について、以下、詳細に説明する。
本発明の状態量分布測定器は、吸収性物品から成る、測定すべき試料の状態量分布を測定することができる。上記吸収性物品としては、特に限定されないが、例えば、衛生用品、例えば、使い捨ておむつ、尿漏れ防止用シート、失禁患者用の尿取りパッド、生理用品、例えば、生理用ナプキン及びパンティライナーが挙げられる。
本発明の状態量分布測定器は、上記吸収性物品の中で、センサを適宜選択することにより、吸収性物品の特定領域、例えば、液透過性トップシート、特に極々表面における状態量、吸収体内部における状態量、液透過性バックシートにおける状態量を測定することができる。
【0022】
図1は、本発明の状態量分布測定装置の第1の実施形態を示す図である。
図1に示される状態量分布測定装置1は、試料の状態量を測定するセンサ2と、吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、上記試料をその上に置くための凸面を有する試料台3と、上記センサの、上記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構5と、上記センサが上記試料に対して相対的に移動するようにセンサ及び試料の少なくとも一方を移動させる移動機構6と、移動機構を制御することにより、センサを試料に対して相対的に移動させながら、センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、試料の状態量分布を測定する測定機構9とを具備する。
【0023】
図1に示される状態量分布測定装置1において、センサ2は、静電容量式の水分センサである。また、図1に示される状態量分布測定装置1において、試料台3は、正円柱を、中心軸線を通る面で切断することにより形成された半正円柱型を有する。さらに、図1に示される状態量分布測定装置1において、支持機構5は、おもり8の位置により試料4に加えられる荷重を調節することができる天秤であり、図1にBで示される鉛直方向(以下、「方向B」と称する場合がある)に一定の荷重を加えることができる。
【0024】
図1に示される状態量分布測定装置1において、移動機構6は、試料台3を、正円柱の中心軸線の回りの方向Aに沿って回転させ、且つ試料台3を、正円柱の中心軸線と平行、すなわち、図1では、手前から奥の方向に往復運動させることができる。移動機構6が、試料台3を方向Aに回転させ、さらに試料台3を手前から奥の方向に往復運動させることにより、試料の状態量分布を評価することができる。
なお、本明細書において、試料の状態量分布を測定することを、試料をスキャンすると称する場合がある。
【0025】
図1に示される状態量分布測定装置1において、センサ2は、支持機構5を介して、そして移動機構6は直接、測定機構9に接続されている。
図1の状態量分布測定装置1において、試料4は、試料台3の上にセットされ、そして絶縁フィルム7が、センサ2と試料4との間に配置され、そして試料4を覆っている。
【0026】
図1に示される状態量分布測定装置1において、試料4の水分率の分布を測定する手順は、以下の通りである。まず、図1に示される状態量分布測定装置1を準備する。次に、試料台3の凸面に、試料4を載せ、試料4の上に、絶縁フィルム7を置き、そして絶縁フィルム7を間に挟んで、試料4の上に、センサ2を置く。次いで、測定機構9を操作して移動機構6を制御し、試料台3を、試料台3の正円柱の中心軸線の回りのA方向に回転させるとともに、試料台3を、手前から奥方向に移動させる。それに伴って、センサ2に、複数箇所における試料4の水分率を測定させる。それらを組み合わせることにより、試料4の水分率の分布を測定する。
なお、図1には図示されていないが、状態量分布測定装置1が、測定結果を表示する表示機構、例えば、モニタ、プリンタ等をさらに具備してもよい。上記表示機構により、測定した結果を、グラフ等の状態で表示することができる。
【0027】
図1に示される実施形態では、静電容量式の水分センサの例が示されているが、本発明においては、上記センサは、静電容量式の水分センサに限定されず、上記センサは、例えば、静電容量式以外の水分センサ、例えば、赤外線吸収式、マイクロ波式、電気抵抗式等の水分センサであってもよい。さらに、本発明において、上記センサは、水分センサに限定されず、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、風速センサ等であってもよい。静電容量式、赤外線吸収式、マイクロ波式、電気抵抗式等の水分センサ、並びに湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、及び風速センサは、市販のセンサをそのまま用いることができる。
【0028】
本発明の状態量分布測定装置に用いられるセンサが、水分センサである場合には、上述のように静電容量式の水分センサが好適である。
上述のように、吸収性物品の濡れ感に関して、着用者は、吸収性物品の吸収面の極々表面に残る水分に従って濡れ感を感じやすいが、静電容量式の水分センサは、その測定原理上、吸収性物品の吸収面の極々表面に残る水分を測定することができるからである。
【0029】
上記センサが、静電容量式の水分センサである場合には、上述のように、市販の静電容量式の水分センサを任意に採用することができるが、当該静電容量式の水分センサは、図2に示すような断面形状を有することができる。
図2に示されるセンサ2は、あらかじめ定められた間隔を隔てて平行に配置されている一対の電極10a及び10bを有する。一対の電極10a及び10bの間の静電容量は、金属線を介して測定される。図2に示されるセンサ2はまた、一対の電極10a及び10bを支持するための電極支持部11を含む。図2に示されるセンサ2は、電極支持部11の測定側の面に、一対の電極10a及び10bが取り付けられている。
【0030】
上記電極支持部としては、水分率の測定に影響を与えないために、後述の絶縁フィルムと同等の比誘電率、含水率、及び透水性を有することが好ましい。上記電極支持部の素材の例としては、例えば、ベークライト等の商品名で知られる、フェノール樹脂が挙げられる。
【0031】
なお、図2に示されるセンサ2では、一対の電極10a及び10bの間には、何も存在しないが、本発明の状態量分布測定装置の別の実施形態では、一対の電極10a及び10bの間に、上記電極支持部がさらに配置されていてもよい。一対の電極10a及び10bの間に、上記電極支持部が配置されることにより、電極と、試料との間の間隔を、より一定に保つことができる。
【0032】
図2に示されるセンサ2は、絶縁フィルム7を間に挟んで、試料4に接している。センサ2には、一定の鉛直方向の荷重が加わっているので、センサ2が、一対の電極10a及び10bと、試料4との距離を一定に保持しながら、静電容量を測定することができる。
【0033】
上記センサが、静電容量式の水分センサである場合には、本発明の状態量分布測定装置は、上記センサと上記試料との間に配置され且つ上記試料を覆うための、センサとは別体の絶縁フィルムを含むことが好ましい。その理由は、以下の通りである。
測定すべき試料である吸収性物品、例えば、使い捨ておむつの吸収面は、排尿後、水分率が100%近くに到達することがある。そのような高水分率の状況下で、水分センサを用いて水分率を測定しようとすると、水分の一部が、センサ、特に電極近くに付着したままとなり、測定結果に誤差が含まれやすくなる。従って、センサと、試料との間に、センサとは別体の絶縁フィルムを配置することにより、センサに水分が付着することを防止することができる。
【0034】
なお、本発明の状態量分布測定装置が、上記絶縁フィルムを含む場合には、センサそのものは、図2に示すように、試料と接する面に、電極のコンデンサとしての性質を保持するための絶縁部を有しなくともよい。また、公知又は市販の静電容量式の水分センサのように、センサは、試料と接する面に、電極のコンデンサとしての性質を保持するための絶縁部を有していてもよい。
【0035】
上記絶縁フィルムは、水分率を測定するという特質上、真空の誘電率との比(以下、単に「比誘電率」と称する)が、約30以下であることが好ましく、約20以下であることがより好ましく、約10以下であることがさらに好ましく、そして約5以下であることが最も好ましい。比誘電率が高いと、測定誤差の原因となり得るからである。
【0036】
また、上記絶縁フィルムは、測定誤差を少なくするために、膜厚が薄く且つ均一性を有することが好ましい。
上記膜厚としては、約300μm以下であることが好ましく、約200μm以下であることがより好ましく、約100μm以下であることがさらに好ましく、約50μm以下であることがさらに好ましく、そして約30μm以下であることが最も好ましい。
上記均一性としては、任意に30点測定した膜厚の変動係数が、約20%以下であることが好ましく、約10%以下であることがより好ましく、そして約5%以下であることがさらに好ましい。
なお、変動係数は、次の式(1):
変動係数(%)=100×標準偏差/相加平均 式(1)
により算出される値である。
【0037】
また、上記絶縁フィルムは、測定誤差を少なくするために、低い含水率を有することが好ましい。含水率が高いと、絶縁フィルムの比誘電率が高くなり、測定誤差が大きくなる場合があるからである。
上記含水率の目安としては、25℃で24時間、水中に浸漬した後の含水率が、約3質量%未満であることが好ましく、約1質量%未満であることがより好ましく、そして約0.5質量%未満であることがさらに好ましい。
さらに、上記絶縁フィルムは、低い透水性を有することが好ましい。上記透水性の低さの目安としては、測定中に、センサ、特に電極が水に濡れない程度であればよい。電極が水に濡れると、静電容量を測定することができないからである。
【0038】
上記絶縁フィルムの素材としては、上記性能を満たすものであれば、特に制限されないが、例えば、ポリアミド、メラミン、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
本発明の状態量分布測定装置は、上記絶縁フィルムを含むことにより、好ましくは約0質量%〜約100質量%、より好ましくは約1質量%〜約90質量%、さらに好ましくは約5質量%〜約80質量%の、非常に広範囲の水分率を有する試料を測定することができる。
なお、上記絶縁フィルムは、測定に悪影響がない限り、静電容量式の水分センサ以外のセンサにも適用することができる。上記絶縁フィルムを用いることにより、センサに水分が付着することに起因する測定誤差を減らすことができる。
【0039】
図1に示される状態量分布測定装置では、試料台3は、半正円柱型を有するが、本発明においては、試料台の形状は、半正円柱型に限定されず、例えば、試料をその上に置くための凸面を有するものであれば、特に制限されない。
例えば、試料が、測定すべき面が凹凸を有する吸収性物品等である場合に、当該試料を、凸面を有する試料台に乗せると、吸収性物品の測定すべき面が、試料台の凸面に沿って反るので、センサと試料との接触面積を小さくすることができるので、試料の凹凸の影響を受けることが少なく、状態量の分布をスムーズに測定することができる。なお、試料台の凸面は、センサの電極と、試料との接触面積を一定に保つような面であることが好ましい。
【0040】
上記凸面としては、例えば、円柱の側面の全部又は一部を構成する凸面であることができる。
ここで、本明細書において、「円柱」には、断面が円である正円柱、断面が楕円である楕円柱、断面が略円形である略円柱、断面が略楕円形である略楕円柱等が含まれる。
【0041】
凸面が、正円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台の例を、図3に示す。図3(a)は、凸面21が、正円柱の側面23の全部を構成する曲面である例である。なお、符号22は、正円柱の中心軸線を意味する。図3(b)〜(d)は、凸面が、正円柱の側面の一部を構成する曲面である例である。図3(b)〜(d)では、元となる正円柱が、点線で示されている。図3(b)及び(c)は、断面が中心角θ(図3(b)では、θ<180°であり、そして図3(c)では、θ>180°である)の扇形である例である。
【0042】
なお、凸面が、正円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台には、図3(d)のような、中心軸線22を含まず、断面が円弧及び弦から形成される図形である試料台も含まれる。
凸面が、正円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台を用い、さらにセンサの、試料に対する接触圧を、正円柱の中心軸線と垂直に且つ正円柱の中心軸線を通るように加えることにより、接触圧を、試料の厚み方向に加えることができる。
【0043】
また、凸面が、正円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台を用い、さらに、移動機構を、試料台が上記正円柱の中心軸線回りに回転するように制御することにより、試料台の、センサと接する場所の高さを一定に保ちながら、試料の1次元の状態量の分布を測定することができる。
さらに、凸面が、正円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台を用い、さらに移動機構を、試料台が上記正円柱の中心軸線回りに回転するとともに、試料台が正円柱の中心軸線と平行に移動するように制御することにより、試料台の、センサと接する場所の高さを一定に保ちながら、試料の2次元の状態量の分布を測定することができる。
【0044】
凸面が、楕円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台の例を、図4に示す。図4(a)は、凸面21が、楕円柱の側面23の全部を構成する曲面である例である。なお、符号22は、正円柱の中心軸線を意味する。図4(b)及び(c)は、凸面が、楕円柱の側面の一部を構成する曲面である例であり、元となる楕円柱が、点線で示されている。図4(b)は、断面が中心角θの略扇形である例である。
なお、凸面が、正円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台には、図4(c)のような、中心軸線22を含まず、断面が楕円弧及び弦から形成される図形である試料台も含まれる。
【0045】
凸面が、楕円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台を用い、さらにセンサの、試料に対する接触圧を、楕円柱の中心軸線と垂直に且つ楕円柱の中心軸線を通るように加えることにより、接触圧を、試料の略厚み方向に加えることができる。
【0046】
また、凸面が、楕円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台を用い、さらに、移動機構を、試料台が上記楕円柱の中心軸線回りに回転するように制御することにより、試料台の、センサと接する場所の高さを略一定に保ちながら、試料の1次元の状態量の分布を測定することができる。
さらに、凸面が、楕円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である試料台を用い、さらに移動機構を、試料台が上記楕円柱の中心軸線回りに回転するとともに、試料台が楕円柱の中心軸線と平行に移動するように制御することにより、試料台の、センサと接する場所の高さを略一定に保ちながら、試料の2次元の状態量の分布を測定することができる。
【0047】
上記試料台は、吸収性物品のほぼ全面を載せることができる大きさを有する限り、その大きさは特に制限されないが、例えば、図3及び図4に示すような試料台の場合には、円柱の直径又は長径が約7〜約13cmであることができ、そして円柱の高さが約20〜約70cmであることができる。
【0048】
図1に示される実施形態では、移動機構6が、試料台3を、正円柱の中心軸線の回りの方向Aに沿って回転させるとともに、試料台3を、上記中心軸線と平行に移動させることにより、試料の状態量分布が測定され、移動機構6は、センサ2の動作を制御していない。
しかし、本発明において、移動機構が移動を制御する対象は、本発明の状態量分布測定装置が試料の状態量分布を測定することができる限りは、特に制限されず、例えば、本発明の別の実施形態では、移動機構がセンサの移動を制御する(すなわち、移動機構は、試料台の移動を制御しない)ことができる。また、本発明の別の実施形態では、移動機構が、センサ及び試料台の両方の移動を制御し、センサ及び試料台を、それぞれ、異なる方向、例えば、直交する方向に移動させることができる。この場合には、移動機構は、試料台を回転させるように制御してもよい。
【0049】
図3及び図4に示すような実施形態では、移動機構が、試料台を、円柱の中心軸線回りに回転させることにより、センサを、試料に対して移動させることが好ましい。状態量分布を測定する際の、試料台の、センサと接する場所の高さの変化が少なくなることができるからである。
また、上記回転の角度は、試料である吸収性物品の形状、試料台の大きさ等によって変化するものであり、特に制限されるものではないが、例えば、約180°以内であることができ、そして約90°以内であることができる。
【0050】
また、図3及び図4に示すような実施形態では、移動機構が、試料台を、円柱の中心軸線と平行に移動させることにより、センサを、試料に対して移動させることが好ましい。移動機構が、試料台を円柱の中心軸線と平行に移動させる距離は、試料である吸収性物品の形状によって変化するものであり、特に制限されるものではないが、例えば、約0〜約40cmであることができる。
【0051】
図5に、移動機構が、センサを試料に対して相対的に移動させる移動例を示す。図5は、試料台3を上から見た図であり、試料台3の上には、試料4として、生理用ナプキンが、点線で示されている。図5において、矢印は、移動機構が、センサを試料に対して相対的に移動させる際のセンサの相対的な動きを意味し、そして実線の矢印は、スキャン時を、点線の矢印は、非スキャン時を意味する。
図5において、便宜上、吸収体の長手方向及びその直交方向を、それぞれ、x軸方向及びy軸方向とし、そして図5に示される試料台3の左下の点を原点とする。
【0052】
図5(a)は、吸収性物品24の、長手方向と直交する方向の断面を、長手方向の位置を変えて繰返しスキャンする例である。図5(a)のようにスキャンするためには、(i)移動機構が、センサのみを、図5(a)に実線及び点線の矢印で示される順に移動させること(移動機構は、試料台を移動させない)、(ii)移動機構が、試料台のみを、図5(a)に実線及び点線の矢印で示される順と逆順で移動させること(移動機構は、センサを移動させない)、(iii)移動機構が、試料台を回転させることにより、センサをy軸の正方向に相対的に移動させ、試料台をx軸の負方向に移動させることにより、センサを相対的にx軸の正方向に移動させ、試料台を回転させることにより、センサをy軸の負方向に相対的に移動させ、試料台をx軸の負方向に移動させることにより、センサを相対的にx軸の正方向に移動させること、次いで、これらの手順を繰り返すこと(移動機構は、センサを移動させない)等が考えられる。
また、y軸方向の動きを、試料台が担い、x軸方向の動きをセンサが担ってもよい。
【0053】
図5(b)は、吸収性物品24の、長手方向の断面を、長手方向と直交する方向の位置を変えて繰返しスキャンする例である。図5(b)のようにスキャンするためには、(i)移動機構が、センサのみを、図5(b)に実線及び点線の矢印で示されるように移動させること(移動機構は、試料台を移動させない)、(ii)移動機構が、試料台のみを、図5(b)に実線及び点線の矢印で示される順と逆順で移動させること(移動機構は、センサを移動させない)、(iii)移行機構が、試料台をx軸の負方向に移動させることにより、センサをx軸の正方向に相対的に移動させ、試料台を回転させることにより、センサをy軸の正方向に相対的に移動させ、センサをx軸の負方向に相対的に移動させ、次いで試料台を回転させることにより、センサをy軸の正方向に相対的に移動させ、これらの手順を繰り返すこと(センサは移動しない)等が考えられる。
また、y軸方向の動きを、試料台が担い、x軸方向の動きをセンサが担ってもよい。
【0054】
図5(c)は、吸収性物品24の、斜め方向の断面を、位置を変えて繰返しスキャンする例である。図5(c)のようにスキャンするためには、(i)移動機構が、センサのみを、図5(c)に実線及び点線の矢印で示されるように移動させること(移動機構は、試料台を移動させない)、(ii)移動機構が、試料台のみを、図5(c)に実線及び点線の矢印で示される順と逆順で移動させること(移動機構は、センサを移動させない)、(iii)移動機構が、試料台をx軸の負方向に一定の速度で動きながら、試料台を一定の範囲内で往復回転運動させること(移動機構は、センサを移動させない)等が考えられる。
また、y軸方向の動きを、試料台が担い、x軸方向の動きをセンサが担い、それらを組み合わせることにより図5(c)に示される動きを達成してもよい。
【0055】
図5(d)は、吸収性物品24を、外縁から内部に向かってスキャンする例である。図5(d)に示されるようにスキャンするためには、(i)移動機構が、センサのみを、図5(d)に実線及び点線の矢印で示されるように移動させること(移動機構は、試料台を移動させない)、(ii)移動機構が、試料台のみを、図5(d)に実線及び点線の矢印で示される順と逆順で移動させること(移動機構は、センサを移動させない)、(iii)移動機構が、試料台のy軸方向の回転と、x軸方向の移動とを組み合わせることにより、図5(d)に示されるように、センサを相対的に動かすこと(移動機構は、センサを移動させない)等が考えられる。
また、y軸方向の動きを、試料台が担い、x軸方向の動きをセンサが担ってもよい。
図5(a)〜(d)に示されるような実施形態において、移動機構が試料台のみを動かすことが好ましい。センサの、試料に対する接触圧を、重力等を利用して簡易に制御することができるからである。
【0056】
上記移動機構としては、例えば、モーターが挙げられる。
なお、図5に示される試料台3の凸面が、図3及び図4に示されるような、円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である場合には、x軸は、円柱の中心軸線と平行な方向となり、そしてy軸は、円柱の中心軸線周りの回転により生ずる方向となることができる。
【0057】
図1に示される状態量分布測定装置では、支持機構は天秤である。支持機構として天秤を用いることにより、測定すべき試料に凹凸があっても、一定の接触圧を保つことができる。
本発明において、試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持することができるものであれば、支持機構は、図5に示されるような天秤に限定されない。例えば、支持機構は、接触圧が鉛直方向に作用するように且つセンサが上下に移動できるようにセンサを保持するものであることができる。
例えば、センサがそれほど重くなく、センサの、試料に対する接触圧を小さくする必要がない場合には、図6に示されるような、センサの反対側におもりを有しない支持機構6を用いることができる。
【0058】
センサの、試料に対する接触圧は、測定すべき試料、センサの種類等によっても変わるが、例えば、約1〜約100g/cm2であることができ、約2〜約50g/cm2であることが好ましく、そして約3〜約20g/cm2であることがより好ましい。例えば、着用時に吸収性物品に加わる体圧を再現しながら、状態量分布を測定する場合には、上記接触圧は、約5〜約15g/cm2であることができる。
【0059】
本発明に用いられる測定機構としては、例えば、コンピュータが挙げられる。
別の実施形態では、本発明の状態量分布測定装置が、センサにより測定された状態量と、移動機構からの位置情報とを記録する記録機構をさらに具備していてもよい。上記測定機構と、上記記録機構とは、同一のコンピュータであってもよい。
【0060】
本発明の状態量分布測定装置では、試料としての吸収性物品に、人工尿、人工経血等を滴下した後、吸収性物品を試料台に乗せ、一定の条件、例えば、一定時間後に状態量分布を測定してもよいが、別の実施形態では、本発明の状態量分布測定装置が、人工尿、人工経血等の試験溶液を滴下する滴下機構をさらに具備していてもよい。
本発明のさらに別の実施形態では、上記滴下機構は、実際の排尿、排便等をシミュレーションするために、試験溶液の滴下速度、滴下量、滴下回数、滴下温度等を制御することができるものであってもよい。
【0061】
本発明のさらに別の実施形態では、上記滴下機構は、コンピュータにより、試験溶液の滴下速度、滴下量、滴下回数、滴下温度等を制御されるものであってもよい。その場合には、当該コンピュータは、上記測定機構及び/又は記録機構のコンピュータと同一又は異なるコンピュータであることができる。
本発明のさらに別の実施形態では、センサ、支持機構、移動機構、記録機構、滴下機構等を同一又は異なるコンピュータで制御することにより、状態量の分布を全自動で行うことができる。
【0062】
本発明の状態量分布測定装置は、モニタ、プリンタ等の、測定結果を表示する表示機構をさらに具備していてもよい。上記表示機構は、上記測定機構に接続されるのが一般的である。
【0063】
本発明の状態量分布測定装置が、表示機構を具備することにより、試料の状態量分布を、例えば、グラフ化することができる。
上記表示機構により表示されるグラフとしては、例えば、(i)吸収性物品の長手方向をx軸とし、そして吸収性物品の長手方向に直行する方向をy軸とし、吸収性物品の状態量、例えば、水分、湿度、温度、熱流速、風速等をz軸とする、吸収性物品の全面の状態量の分布を示す、3次元等高線グラフ、3次元縦棒グラフ等の3次元グラフ、(ii)吸収性物品の長手方向のある位置において、吸収性物品の長手方向に直行する方向をx軸とし、吸収性物品の状態量をy軸とする、吸収性物品の断面の状態量の分布を示す、折れ線グラフ、棒グラフ、散布図等の2次元グラフ等が挙げられる。
上記グラフ化により、試料である吸収性物品の状態量の分布、例えば、吸収体の中央付近は、水分率が低いが、長手方向に前方にずれた位置では、水分率が高く、当該位置における水分率の高さが、着用時の不快感に繋がっている等の分析が可能となる。
【0064】
本発明の状態量分布測定装置はまた、センサが静電容量式の水分センサである場合に、試料、センサ等の静電気を除去するための静電気除去機構をさらに具備することができる。試料の状態量分布を測定するに前に、試料にアースを接触させることにより、静電気を除去し、測定精度を高めることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
シルコット(商標)(ユニ・チャーム(株)製)に、一定量の水分を含ませて、異なる水分率を有する、指標1〜6の標準試料を作成した。次いで、上記標準試料を、20℃で1日間、密封状態で静置した。
【0066】
次いで、図1に示される状態量分布測定装置を準備した。
次いで、指標1〜6の標準試料を試料台に載せ、上記状態量分布測定装置を用いて、それらの水分率を測定した。センサの、試料に対する接触圧は、8g/cmであった。
結果を、表1及び図7に示す。なお、表1及び図7では、水分率(質量%)と、一対の電極間にかかる電圧(V)との関係が示されている。
【0067】
【表1】

【0068】
表1及び図7から明らかなように、本発明の状態量分布測定装置は、広範囲の水分率を、定量的に評価することができることが分かる。
【0069】
[実施例2]
指標1〜6の標準試料の標準試料を、複数の被験者に指で触れてもらい、その状態を、(i)乾燥している、(ii)湿っている、(iii)濡れている、及び(iv)びしょ濡れであるの4段階で評価してもらった。
結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
以上より、おおむね、水分率が約0〜約50%の場合に「乾燥している」と、水分率が約50〜約70%の場合に「湿っている」と、水分率が約70〜約80%の場合に「濡れている」と、そして水分率が約80〜約100%の場合に「びしょ濡れである」と区分けすることができる。
これらのデータを元に、測定結果を、水分率ではなく、乾燥している状態を白とし、そしてびしょ濡れである状態を青として、吸収性物品の濡れ具合を視覚化するようなグラフを作成することも可能である。
【0072】
[実施例3]
試料として、ソフィ ボディフィット(商標)ふつうの日用 羽つき(ユニ・チャーム株式会社製)を準備した。上記試料の中央(長手方向の中央且つ長手方向に直交する方向の中央)に、人工経血6mLを滴下した。
次いで、図1に示される状態量分布測定装置の試料台の上に、上記試料を載せ、上記試料の上に、ポリ塩化ビニリデンから成る絶縁フィルムを置き、そして上記絶縁フィルムを間に挟んで、上記試料の上にセンサを置いた。センサの接触圧は、8g/cm2であった。
【0073】
人工経血を滴下後1分経過してから、上記試料の水分率の分布を、図5(a)に示されるように測定した。測定は、上記試料の長手方向と直交する方向をx軸(試料の右側が正)とし、上記試料の長手方向をy軸(試料の前側が正)とし、上記中心を原点とした場合に、y=+6(mm)のところで、x=−15〜+15(mm)まで、5mm間隔で計7点の静電容量を測定し、そしてy=+3(mm)のところで、同様に測定した。次いで、y=0,−3及び−6(mm)のところで、同様に測定した。
図9に、y=0における、上記試料の長手方向と直交する方向の静電容量の分布を、棒グラフとして示す。なお、静電容量は、測定された電圧として示してある。
図10に、上記試料内の静電容量の分布を、3次元等高線グラフとして示す。
【符号の説明】
【0074】
1 状態量分布測定装置
2 センサ
3 試料台
4 試料
5 支持機構
6 移動機構
7 絶縁フィルム
8 おもり
9 測定機構
10a,10b 電極
11 電極支持部
21 凸面
22 中心軸線
23 側面
24 吸収性物品
25 吸収紙
26 おもり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の状態量を測定する、水分センサ、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、及び風速センサから成る群から選択されるセンサと、
吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、前記試料をその上に置くための凸面を有する試料台と、
前記センサの、前記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構と、
前記センサが前記試料に対して相対的に移動するように前記センサ及び前記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御することにより、前記センサを前記試料に対して相対的に移動させながら、前記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、前記試料の状態量分布を測定する測定機構と、
を具備する状態量分布測定装置。
【請求項2】
前記センサが、静電容量式の水分センサであり、前記センサと前記試料との間に配置され且つ前記試料を覆うための、前記センサとは別体の絶縁フィルムをさらに備える、請求項1に記載の状態量分布測定装置。
【請求項3】
前記センサが、あらかじめ定められた間隔を隔てて平行に配置されている一対の電極を具備する、請求項2に記載の状態量分布測定装置。
【請求項4】
前記試料台の前記凸面が、円柱の側面の全部又は一部を構成する曲面である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の状態量分布測定装置。
【請求項5】
前記移動機構が、前記試料台を、前記円柱の中心軸線回りに回転させ、それにより、前記センサを前記試料に対して相対的に移動させる、請求項4に記載の状態量分布測定装置。
【請求項6】
前記移動機構が、前記試料台を、前記円柱の中心軸線と平行に移動させ、それにより、前記センサを前記試料に対して相対的に移動させる、請求項4又は5に記載の状態量分布測定装置。
【請求項7】
前記支持機構が、前記接触圧が鉛直方向に作用するように且つ前記センサが上下に移動できるように前記センサを保持する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の状態量分布測定装置。
【請求項8】
前記支持機構が、天秤である、請求項7に記載の状態量分布測定装置。
【請求項9】
測定結果を表示する表示機構をさらに具備する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の状態量分布測定装置。
【請求項10】
試料の状態量分布を測定する方法であって、
(a)下記を具備する状態量分布測定装置を準備するステップ、
(i)試料の状態量を測定する、水分センサ、湿度センサ、温度センサ、熱流速センサ、及び風速センサから成る群から選択されるセンサ、
(ii)吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、前記試料をその上に置くための凸面を有する試料台、
(iii)前記センサの、前記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構、
(iv)前記センサが前記試料に対して相対的に移動するように前記センサ及び前記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構、及び
(v)測定機構、
(b)前記試料台の凸面に、前記試料を載せるステップ、
(c)前記試料の上に、前記センサを置くステップ、そして
(d)前記測定機構が、前記移動機構を制御することにより、前記センサを前記試料に対して相対的に移動させながら、前記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、前記試料の状態量分布を測定するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項11】
試料の状態量分布を測定する方法であって、
(a)下記を具備する状態量分布測定装置を準備するステップ、
(i)試料の水分率を測定する、静電容量式の水分センサ、
(ii)吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、前記試料をその上に置くための凸面を有する試料台、
(iii)前記センサの、前記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構、
(iv)前記センサが前記試料に対して相対的に移動するように前記センサ及び前記試料の少なくとも一方を移動させる移動機構、
(v)測定機構、及び
(vi)前記センサと前記試料との間に配置され且つ前記試料を覆うための、前記センサとは別体の絶縁フィルム、
(b)前記試料台の凸面に、前記試料を載せるステップ、
(c)前記試料の上に、前記絶縁フィルムを置くステップ、
(d)前記絶縁フィルムを間に挟んで、前記試料の上に、前記センサを置くステップ、そして
(e)前記測定機構が、前記移動機構を制御することにより、前記センサを前記試料に対して相対的に移動させながら、前記センサにより、複数箇所において試料の状態量を測定し、そしてそれにより、前記試料の状態量分布を測定するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記状態量分布測定装置が、測定結果を表示する表示機構をさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−93346(P2012−93346A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198499(P2011−198499)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】