説明

狭域通信システムの基地局装置とその移動局装置との通信接続の可否判定方法

【課題】基地局装置が形成する通信領域に侵入する車両の目的がサービス利用なのか、その設置場所の通過なのかを区別できるようにする。
【解決手段】アンテナ1で移動局装置からの接続要求信号(ACTC)が受信される毎に、この接続要求信号(ACTC)が変復調手段2で復調され、通信制御手段5で処理されて通信接続判定手段3に供給される。通信接続判定手段3は、タイマがタイムアウトするまで、接続要求信号(ACTC)が供給される毎に、誤り検出符号を用いて、供給された接続要求信号(ACTC)が誤りのない有効なものか否かを判定し、有効な接続要求信号(ACTC)の受信回数を計測する。そして、タイマがタイムアウトすると、積算した受信回数Nrを予め設定された閾値Ntと比較し、受信回数Nrがこの閾値を超えていると、接続を要求した移動局装置との通信接続を許可する判定通知Dを通信管理手段4に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上に設置される基地局装置と車両に搭載される移動局装置との間で無線通信を行なう狭域無線通信システムに係り、特に、移動局装置からの通信接続要求の弁別を可能とした基地局装置とその移動局装置との通信接続の可否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全性の向上や輸送効率の向上,快適性の向上を目指したサービスを実現するために、道路と車両とを一体化したシステムとした高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)の開発が進められている。このシステムでは、路上に設置した基地局装置と車両に搭載した移動局装置との間で行なう路車間通信や移動局装置間で行なう車車間通信などの無線通信を利用した様々なサービスの実現が検討されており、例えば、路車間通信では、有料道路の自動料金支払いシステム(ETC)への適用とともに、駐車場やガソリンスタンドなどでの決済サービスや情報提供サービスへの展開も図られようとしている。
【0003】
このITSにおける路車間通信方式の一例として、数メートルから数十メートル程度と通信領域(基地局装置と移動局装置との間で通信可能な領域)を比較的狭い範囲に限定した狭域通信(DSRC:Dedicated Short-Range Communication)方式が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このDSRC方式では、通信フレームをスロットと呼ばれる固定長の区間に時分割した同期式時分割通信方式を採用している。
【0005】
図7はDSRC方式における通信フレームの構成例を示す図であって、同図(a)は基地局装置が全2重通信動作を行なう場合の一構成例を示し、同図(b)は基地局装置が半2重通信動作を行なう場合の一構成例を示す。
【0006】
図7(a),(b)において、通信フレームを構成するスロットは通信用スロットと制御用スロットに大別され、通信用スロットは、複数の移動局装置との交信が可能なように、路車間でのデータ交換を行なうためのメッセージデータスロット(MDS)が複数配置される。以下では、8個の通信スロットが配置されているものとし、そのうちの半数の4個が基地局装置から移動局装置への下り通信に使用され、残りの4個が移動局装置から基地局装置への上り通信に使用される。制御用スロットは、路車間通信に必要な制御情報が含まれており、基地局装置が送信する通信フレームの構成情報や通信用スロットの使用状況などを格納するフレームコントロールメッセージスロット(FCMS)と、移動局装置が基地局装置に通信接続を要求する接続要求信号を送信するためのアクチベーションスロット(ACTS)からなる。
【0007】
図7(a)に示す全2重通信のための通信フレームでは、基地局装置から移動局装置への下り通信では、制御用スロットとしての後述のフレーム制御信号(FCMC)を送信するためのフレームコントロールメッセージスロット(FCMS)を先頭に、このフレーム制御信号(FCMC)のスロット制御フィールド(SCI(1),(3),(5),(7))に夫々対応した4個の通信スロットが続く。これら4個の通信スロットは、スロット制御フィールド(SCI(1),(3),(5),(7))によって路車間でのデータ交換を行なうためのメッセージデータスロット(MDS)に割り当てられる。移動局装置から基地局装置への上り通信では、下り通信でのメッセージデータスロット(MDS)に割り当てられた各通信用スロットのタイミング毎に上記のフレーム制御信号(FCMC)のスロット制御フィールド(SCI(2),(4),(6),(8))に夫々対応した通信用スロットが配列され、これらの通信スロットは、上記のフレーム制御信号(FCMC)のスロット制御フィールド(SCI(2),(4),(6),(8))により、メッセージデータスロット(MDS)、または、制御スロットとしてのアクチベーションスロット(ACTS)が割り当てられる。
【0008】
下り通信と上り通信とでの同じタイミングの通信用スロットがメッセージデータスロット(MDS)である場合には、これらの通信用スロットで下り通信と上り通信とを同時に行なうことができ、下り通信でのメッセージデータスロット(MDS)と同じタイミングのアクチベーションスロット(ACTS)では、移動局装置から基地局装置に通信接続を要求する接続要求信号が送信される。
【0009】
また、図7(b)に示す半2重通信のための通信フレームでは、その先頭で基地局装置から移動局装置へのフレーム制御信号(FCMC)の下り通信のためのフレームコントロールメッセージスロット(FCMS)が割り当てられ、これに続いて下り通信の通信用スロットと上り用のスロットとが交互に4個ずつ割り当てられる。そこで、i番目(但し、i=1,2,3,)の下り通信の通信用スロットとこれに続く(i+1)番目の上り通信の通信用スロットとにメッセージデータスロット(MDS)が割り当てられているときには、i番目のメッセージデータスロット(MDS)で基地局装置からの下り通信が行なわれると、これに応答して(i+1)番目のメッセージデータスロット(MDS)で移動局装置からの上り通信が行なわれる。また、上り通信のための通信スロットに、フレーム制御信号(FCMC)のスロット制御フィールド(SCI(2),(4),(6),(8))により、アクチベーションスロット(ACTS)が割り当てられていると、このアクチベーションスロット(ACTS)で移動局装置から基地局装置に通信接続を要求する接続要求信号が送信される。
【0010】
フレームコントロールメッセージスロット(FCMS)には、図8に示すように、フレーム同期とフレーム情報とスロット別制御情報及び誤り検出符号(CRC)で構成されるフレーム制御信号(FCMC)が送信される。
【0011】
フレーム制御信号(FCMC)のフレーム情報は、図示するように、プロトコルバージョン符号(PVI)や物理プロファイル識別子(PPI)などの物理層の特性を格納する伝送チャネル制御フィールド(SIG),この基地局装置の識別子を格納する識別番号フィールド(FID),図示するように、通信モード識別子(CM)やスロット数情報(SLN)といったフレーム構成に関する情報を格納するフレーム構成情報フィールド(FSI),移動局装置からの再接続を一定時間抑止するためのリリースタイマ情報フィールド(RLT)及びこの基地局装置が提供するサービスを識別するための識別子を格納するサービスアプリケーション情報フィールド(SC)で構成される。
【0012】
また、フレーム制御信号(FCMC)のスロット別制御情報は、複数(ここでは、8個)のスロット制御情報フィールド(SCI)で構成され、各々のスロット制御フィールド(SCI(1),(2),……,(8))は図7における夫々の通信用スロットと対応する。図7では、かかる対応をSCI(1),(2),……,(8)で示している。
【0013】
スロット制御フィールド(SCI(1),(2),……,(8))は、制御情報サブフィールド(CI)とリンクアドレスサブフィールド(LID)で構成されている。制御情報サブフィールド(CI)は、図7に示す通信用スロットがメッセージデータスロット(MDS)として割当てられているか、アクチベーションスロット(ACTS)として割当てられているかを示す属性情報(スロット識別子(SI))やメッセージデータスロット(MDS)に配置される信号の種別などを示す。例えば、図示するように、スロット識別子SI=00のときには、図7での該当する通信用スロットはメッセージデータスロット(MDS)に割り当てられており、スロット識別子SI=11のときには、アクチベーションスロット(ACTS)に割り当てられている。そして、スロット識別子SI=00で通信用スロットがメッセージデータスロット(MDS)に割り当てられているときには、信号の種別などは、図示するように、伝送速度識別子(DRI)や信号種別識別子(ST),信号方向識別子(DR)で表わされ、スロット識別子SI=11で通信用スロットがアクチベーションスロット(ACTS)に割り当てられているときには、信号の種別などは、図示するように、リンク要求状態識別子(ACPI)や輻輳情報(STA)で表わされる。
【0014】
また、スロット制御フィールド(SCI)のリンクアドレスサブフィールド(LID)は図7での通信用スロットに割当てた移動局装置のアドレスを示す。これにより、どの移動局装置にメッセージデータスロット(MDS)が割当ててられているかなどの通信用スロットの利用状況が判別できるようになっている。
【0015】
一方、アクチベーションスロット(ACTS)では、図9に示すように接続要求信号(ACTC)が6チャネル分配置可能となっており、複数の移動局装置からの接続要求を同時に受け付けられるようになっている。この接続要求信号は、チャネル同期、接続要求情報と誤り検出符号(CRC)で構成されており、接続要求情報には、接続要求を行なう相手の基地局装置の識別子(FID)と、この移動局装置のリンクアドレス(リンクアドレスサブフィールド(LID))と、接続要求の内容を示すリンク要求情報(LRI)とが格納される。
【0016】
この狭域通信(DSRC)方式を用いた応用システムを駐車場やガソリンスタンドなどに導入した場合、通信領域を限定するスポット通信である特徴を利用し、基地局装置が所定の位置(例えば、入出庫ゲートの手前や給油機に隣接する位置)に形成する通信領域に在圏中の車両(移動局装置を搭載した車両)を対象として、決済や情報提供などの応用サービスが可能になる。しかしながら、実際には、基地局装置の周辺に配置される構造物からの反射波の影響により、想定外の位置に比較的電界強度の高い領域が形成され、移動局装置がこれに反応するような場合がある。この結果、所定の位置、即ち、通信領域に存在しない移動局装置との通信が成立する可能性が発生し、サービスを提供する対象者(即ち、車両)を誤るという問題を生じる。
【0017】
このような問題に対し、移動局装置が送信する信号の強度を基地局装置で測定し、適切な(充分な信号強度が得られる)位置から送信される信号のみを取り扱うようにして、サービスを提供する対象者の誤認を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−289582号公報
【非特許文献1】社団法人 電波産業会 「狭域通信(DSRC)システム標準規格ARIB STD-T75」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術によれば、基地局装置による通信領域に進入し、適切な位置に到達した移動局装置の全てをサービスの提供を受ける対象者であると基地局装置が判別してしまうという問題があった。例えば、ガソリンスタンドで給油機に隣接して基地局装置による通信領域を配置させるような場合では、同じ敷地内に複数の給油機が存在する場合には、複数の通信領域が近接して配置されることになる。そして、このような環境下で利用者が所望の給油機に車両を移動させるような場合、当該車両に搭載された移動局装置は、所望の給油機に隣接する通信領域で車両が停車するまでの間に、いくつかの通信領域を通過することになる。また、場合によっては、サービスの利用を目的として通信領域に進入する以外に、移動の過程で単にその場所を通過する車両もある。しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、信号の強度を通信領域での移動局装置の有無の判定条件しているため、サービスを受けるための通信領域に進入したのか、移動の過程で単にこの通信領域に進入したのかを区別することができず、サービスの提供を開始しようとしても、そのときには、サービス提供の対象者が既に存在しないという問題が生じることになる。
【0019】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、通信領域に侵入する車両の目的がサービス利用なのか、単にこの通信領域を通過するだけのものであるのか判別することができるようにした狭域通信システムの基地局装置とその移動局装置との通信接続の可否判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、路上に設置され、車両に搭載された移動局装置との間で無線通信を行なう狭域通信システムの基地局装置であって、移動局装置が送信する通信接続を基地局装置に要求するための接続要求信号を基にして、移動局装置との通信接続の可否を判定する通信接続判定手段を具備し、通信接続判定手段は、予め決められた所定の時間内で、受信した接続要求信号の受信回数を計数し、計数した受信回数が予め決められた閾値以上であるとき、移動局装置からの通信接続要求を受け付けることを特徴とするものである。
【0021】
また、通信接続判定手段は、予め決められた所定の時間内で、受信した接続要求信号の受信回数を計数し、かつ、受信回数が計数される接続要求信号の信号強度を示す受信レベルを順次積算し、積算した受信レベルを受信回数で除して平均受信レベルを求め、受信回数が予め決められた第1の閾値以上で、かつ平均受信レベルが予め決められた第2の閾値以上のとき、移動局装置からの通信接続要求を受け付けることを特徴とするものである。
【0022】
さらに、接続要求信号は、誤りの有無の判定処理がなされ、誤りがないと判定された有効な接続要求信号であることを特徴とするものである。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、路上に設置され、車両に搭載された移動局装置との間で無線通信を行なう狭域通信システムの基地局装置の移動局装置との通信接続の可否判定方法であって、予め決められた時間内で、移動局装置が送信する通信接続を基地局装置に要求するための接続要求信号を受信する毎に、受信した接続要求信号の受信回数を計数するステップと、計数した受信回数を予め決められた閾値と比較するステップと、受信回数が該閾値以上であるとき、移動局装置からの通信接続要求を受け付けるステップとを具備したことを特徴とするものである。
【0024】
また、予め決められた時間内で、移動局装置が送信する通信接続を基地局装置に要求するための接続要求信号を受信する毎に、受信した接続要求信号の受信回数を計数するステップと、計数した受信回数を予め決められた閾値と比較するステップと、受信回数が計数される接続要求信号の信号強度を示す受信レベル値を積算し、積算した受信レベル値を受信回数で除して平均受信レベル値を求めるステップと、受信回数が予め決められた第1の閾値以上で、かつ平均受信レベル値が予め決められた第2の閾値以上のとき、移動局装置からの通信接続要求を受け付けるステップとを具備したことを特徴とするものである。
【0025】
さらに、接続要求信号は、誤りの有無の判定処理がなされ、誤りがないと判定された有効な接続要求信号であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
基地局装置によって設定される通信領域内での走行状態は、この通信領域内で提供される決済や情報提供などのサービスを利用するすることを目的とするものであるか、単にこの通信領域を通過するだけのものであるかによって異なるものであり、本発明によると、車両のかかる走行状態を、この車両に搭載される移動局装置から送信される接続要求信号の受信回数を検出することにより、判定することができ、上記のサービスを利用することを目的とする車両と単に該通信領域を通過するだけの車両とを確実に弁別することができる。
【0027】
また、本発明によると、車両のかかる走行状態を、この車両に搭載される移動局装置からの接続要求信号の受信回数を検出することにより、判定するとともに、かかる接続要求信号の受信レベルの平均値を求めて、この移動局装置が基地局装置が設定した通信領域内から接続要求信号を送信したのか、反射波などの影響で生じた想定外の領域内から接続要求信号を送信したのか判定するものであるから、かかる通信領域内から接続要求信号を送信した基地局装置を確実に弁別でき、さらに正確に上記のサービスを利用することを目的とする車両を弁別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0029】
図1は本発明による狭域通信システムの基地局装置の第1の実施形態を示すブロック構成図であって、1はアンテナ、2は変復調手段、3は通信接続判定手段、4は通信管理手段、5は通信制御手段、6は応用処理手段、7は入力端子である。
【0030】
この第1の実施形態は、基地局装置が形成する通信領域に侵入する車両の目的がサービス利用なのか、この通信領域を単に通過するものなのかの区別を、移動局装置が送信する接続要求信号(ACTC)の受信回数を計測し、その計測結果に基づいて行ない、移動局装置との通信接続の可否を判定するものである。
【0031】
図1において、この第1の実施形態の基地局装置は、アンテナ1と変復調手段2と通信接続判定手段3と通信管理手段4と通信制御手段5と応用処理手段6とで構成され、自局が形成する通信領域を移動局装置(図示せず)が検出できるようにするために、図8に示す構成のフレーム制御信号(FCMC)を図7に示す通信フレームで周期的に送信し、フレーム制御信号(FCMC)を検出した移動局装置が送信する接続要求信号(ACTC)の受け入れを起動条件として、応用サービスを提供するための無線通信を開始する。
【0032】
変復調手段2は、アンテナ1を介して移動局装置との相互通信を行なうために、アンテナ1から入力する受信信号Bを復調して通信制御手段5に出力し、また、通信制御手段5から供給される送信信号Aで搬送波を変調してアンテナ1に出力するように動作する。
【0033】
一方、通信管理手段4は、図7に示すような通信フレームを形成するための時間基準を管理しており、通信制御手段5に対して通信用スロットの属性(メッセージデータスロット(MDS)であるか、アクチベーションスロット(ACTS)であるかを)や送受信のタイミングに関する指示を行なう。また、通信管理手段4は、通信用フレームの構成情報や通信スロットの使用状況などについての管理も行ない、上記の時間基準に従ってフレーム制御信号(FCMC)を構成する図8に示すフレーム情報やスロット別制御情報に格納する制御信号Eを通信制御手段5に出力する。さらに、通信管理手段4は、移動局装置との通信接続の状態管理も行なう。この接続状態管理では、通信接続判定手段3から供給される判定通知Dを契機とし、この判定通知Dで指示される移動局装置を管理対象に加えるとともに、応用サービスを提供するための処理を行なう応用処理手段6に対して、移動局装置との通信接続を通知するための情報Fを出力する。
【0034】
通信制御手段5は、通信管理手段4から指示された通信用スロットの属性とタイミングとに応じて、図7に示すように、フレームコントロールメッセージスロット(FCMS)での管理情報の送受信処理と通信用スロットでの通信データの送受信処理を行なう。
【0035】
この管理情報の送信処理では、通信管理手段4から供給される制御情報(図8でのフレーム情報やスロット別制御情報)Eにフレーム同期(FS)や誤り検査符号(CRC)を付加してフレーム制御信号(FCMC)を生成し、これを変復調手段2へ出力する処理を行なう。また、管理情報の受信処理では、通信管理手段4がアクチベーションスロット(ACTS)を指示する期間に変復調手段2から供給される移動局装置からの接続要求信号(ACTC)を通信接続判定手段3に出力する処理を行なう。
【0036】
メッセージデータスロット(MDSでの)通信データの送受信処理では、応用処理手段6が移動局装置との間で通信データを交換するための処理を行なう。このために、通信制御手段5では、少なくとも、応用処理手段6から通信データが供給される場合には、送信先となる移動局装置側の処理手順を規定する制御情報を通信データに付加したプロトコルデータを生成する送信制御を行なうようにし、移動局装置からの通信データを受信する場合には、送信元である移動局装置で生成されたプロトコルデータから制御情報を抽出して受信制御を行なうようにする。この際、通信管理手段4が割り当てたメッセージデータスロット(MDS)で移動局装置との間でのプロトコルデータの交換をするために、通信制御手段5は、通信管理手段4が指示するタイミングで、プロトコルデータを変復調手段2との間で授受するように動作する。
【0037】
通信接続判定手段3は、入力端子7から判定要求信号Cが入力されると、これを契機として、通信制御手段5から供給される接続要求信号(ACTC)を基に、この接続要求信号(ACTC)を送信した移動局装置との通信接続の可否について判定を行なう。
【0038】
図2はかかる通信接続判定手段3で実行する本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【0039】
同図において、通信接続判定手段3は、入力端子7の状態(判定要求信号Cの入力の有無)を監視しており、判定要求信号Cが入力されて通信接続の判定要求があると(ステップS201)、受信回数Nrの値を初期化し(ステップS202)、タイムアウトを示す所定の時間(以下、タイムアウト時間という)が設定されたタイマを起動して時間経過を計測する(ステップS203)。
【0040】
タイマの計測時間がこのタイムアウト時間を超過した(これを、以下、タイマがタイムアウトするという)か否かを判定し(ステップS204)、タイマがタイムアウトしていない場合には、通信フレームの更新があったか否かの判定処理を行なう(ステップS205)。通信フレームを更新するときには、通信管理手段4から通信制御手段5にフレーム制御信号(FCMC)の制御情報(図8でのフレーム情報とスロット別制御情報)が通信制御手段5に出力され、通信制御手段5は、上記のように、この制御情報にフレーム同期信号(FS)や誤り検査符号(CRC)を付加してフレーム制御信号(FCMC)を生成し、これを変復調手段2に供給して送信させるが、このフレーム制御信号(FCMC)は、また、通信接続判定手段3にも供給され、このフレーム制御信号(FCMC)のフレーム同期信号(FS)が検出されることにより、フレーム制御信号(FCMC)が送信されたこと、即ち、通信フレームが更新されたと判定される。
【0041】
通信フレームが更新されないと、ステップS204に戻り、タイマがタイムアウトしない限り、通信フレームが更新されるまでステップS204,S205の処理を繰り返す。
【0042】
通信フレームが更新されると、有効な接続要求信号(ACTC)の受信があるか否かの判定処理を行なう(ステップS206)。これは、受信した接続要求信号(ACTC)が変復調手段2から出力されると、これが通信制御手段5を介して通信接続判定手段3に供給されるが、通信接続判定手段3は、この供給された接続要求信号(ACTC)に付加されている誤り検査符号(CRC)を用いてこの接続要求信号(ACTC)に誤りがないかどうか、即ち、接続要求信号(ACTC)が有効であるかどうかを検査するものである。誤りがある場合には、ステップS204に移行し、タイマがタイムアウトするまで新たな接続要求信号(ACTC)の入力を待つ。誤りがない場合には、受信された接続要求信号(ACTC)は有効と判定する。
【0043】
有効な接続要求信号(ACTC)を受信した場合には、受信回数Nrを値1だけ積算し(ステップS207)、ステップS204に戻る。また、接続要求信号(ACTC)を受信しない場合、あるいは受信しても、その接続要求信号(ACTC)に誤りがあった場合には、ステップS204に戻る。
【0044】
このようにして、タイマがタイムアウトするまでかかる一連の手順を繰り返し実行し、その間有効な接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrを積算する。
【0045】
タイマがタイムアウトすることが検知されると(ステップS204)、タイマがタイムアウトするまでに積算された受信回数Nrを予め設定された閾値Ntと比較し(ステップS208)、比較した結果、受信回数Nrが閾値Nt以上である場合には、通信管理手段4に対してこのときの移動局装置の接続要求を受理したことを指示する判定通知Dを出力し(ステップS209)、この移動局装置に対する通信接続の判定処理を終了する。受信回数Nrが閾値Nt未満である場合には(ステップS208)、この移動局装置の接続要求は受け付けずに処理を終了する。
【0046】
このようにして、閾値Nt以上の回数接続要求信号(ACTC)を受信できた移動局装置のみを対象に、通信接続を行なうことができるようになる。
【0047】
この第1の実施形態では、閾値Ntにより、基地局装置が設定する通過領域を通過する車両を弁別するための接続要求信号(ACTC)の受信回数の下限値が定まる。移動局装置は、基地局装置が送信するフレーム制御信号(FCMC)を受信可能な通信領域内でのみ接続要求信号(ACTC)を送信できるので、例えば、基地局装置が設定する通信領域の大きさをA(m)、通信フレーム長をTf(sec)、受信回数をNrとすると、この通信領域を通過する車両の速度Vtは、凡そA/(Tf×Nr)(m/sec)である。ここで、通信領域の大きさAや通信フレーム長Tfは駐車場やガソリンスタンドなどの利用シーンに応じて固有の値となるので、受信回数Nrから車両の走行速度Vtが判定可能となる。従って、この受信回数Nrに対して閾値Ntを設定することにより、車両の弁別速度を定めることが可能になる。
【0048】
従って、この第1の実施形態では、車両がサービスの提供が可能な低速度で走行するとき、もしくは停止したときには、この車両が基地局装置によって設定された通信領域に進入する目的を弁別するために、この車両が提供されるサービスを受けることが可能な最大の低速度に対する接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrを上記の閾値Ntと設定することにより、基地局装置によって設定された通信領域に侵入する車両の目的が提供されるサービスの利用なのか、この通信領域を単に通過するだけなのかを判別することが可能になる。
【0049】
なお、基地局装置の設置領域での環境によっては、基地局装置が複数の移動局装置から同時に接続要求信号(ACTC)を受信する場合もある。このような場合には、移動局装置毎に受信回数Nrが求められるように、接続要求信号(ACTC)のリンクアドレスサブフィールド(LID)(図9)に格納されている移動局装置を識別するリンクアドレスを用い、このリンクアドレス毎に受信回数Nrを区別するようにすればよい。また、複数の移動局装置からの接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrが全て閾値Ntを超えることもあるが、この場合には、提供するサービスの内容に応じて通信接続処理を行なうことができる。例えば、これら全ての移動局装置と通信接続を行なう処理や受信回数Nrが最大の移動局装置とのみ通信接続を行なう処理、あるいは受信回数Nrで優先順位をつけて時系列に取り扱うなどの処理が適用可能である。
【0050】
また、狭域通信(DSRC)方式の移動局装置では、127回を上限として通信接続が完了するまで接続要求信号(ACTC)を繰り返し送信することが規定されている。一方、通信領域の大きさや通信フレーム長は利用シーンに応じて制限を受けるので、場合によっては、低速走行状態を検知するために必要な計測時間を確保できない場合もある。このような場合には、フレーム制御信号(FCMC)に格納される、例えば、図8に示す時分割識別子(TDI)や輻輳情報(STA)などの制御情報で移動局装置を制御し、通信フレームにアクチベーションスロット(ACTS)を割当てる周期や接続要求信号(ACTC)の送信繰り返し周期を長くすることで対応できる。
【0051】
この第1の実施形態では、入力端子7から入力する判定要求信号Cを契機として、移動局装置との通信接続の可否について判定を行なうようにするものであるが、このような判定要求信号Cなどを用いず、接続要求信号(ACTC)を新規に受信したことを契機に、この新規に受信した接続要求信号(ACTC)を送信する移動局装置の通信接続の可否の判定動作に入るようにしてもよい。
【0052】
図3は図1における通信接続判定手段3で実行する本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【0053】
先に図2に示した通信接続の可否判定方法の第1の実施形態では、タイマがタイマアウトして後、受信回数Nrと閾値Ntとの比較(ステップS208)を行ない、その比較結果に応じて通信管理手段4への判定通知Dの出力(ステップS209)を行なうものであったが、図3に示す通信接続の可否判定方法の第2の実施形態では、タイマがタイムアウトする前に、かかる比較を行なって通信接続の可否判定を判定し、その判定結果に応じて通信管理手段4への判定通知Dの出力を行なうようにしたものである。
【0054】
この通信接続の可否判定方法の第2の実施形態においても、通信接続判定手段3は、入力端子7から入力する判定要求信号を契機とし、通信制御手段5から供給される接続要求信号(ACTC)を基に、接続要求信号(ACTC)を送信した移動局装置との通信接続の可否について判定を行なう。
【0055】
図1及び図3において、図2に示す通信接続の可否判定方法の第1の実施形態と同様、入力端子7の状態を監視しており(ステップS201)、入力端子7から判定要求信号が入力されて通信接続の判定要求があると、受信回数Nrを初期化し(ステップS202)、タイムアウト時間として所定の計測時間が設定されたタイマを起動して時間経過を計測する(ステップ203)。
【0056】
そして、タイマがタイムアウトしたか否かを判定し(ステップS204)、後述する判定通知Dを出力するような状態になる前にタイマがタイムアウトした場合には、この移動局装置の接続要求は受け付けずに処理を終了する。
【0057】
タイマがタイムアウトしない場合には、通信フレームの更新があったか否かの判定処理を行なう(ステップS205)。この判定処理は、図2に示すステップS205の場合と同様、通信制御手段5から供給されるフレーム制御信号(FCMC)のフレーム同期信号(FS)が検出されることにより、通信フレームの更新があったと判定する。
【0058】
通信フレームが更新されないと、ステップS204に戻り、タイマがタイムアウトしない限り、通信フレームが更新されるまでステップS204,ステップS205の処理を繰り返す。
【0059】
通信フレームが更新されると、有効な接続要求信号(ACTC)の受信の有無を判定する処理を行なう(ステップS206)。この判定処理は、図2に示すステップ206の場合と同様、通信制御手段5から受信した接続要求信号(ACTC)が供給されると、その誤り検査符号(CRC)を用いてこの接続要求信号(ACTC)に誤りがあるか否かを検出し、この接続要求信号(ACTC)が有効かどうかを判定するものである。誤りがあった場合には、ステップS204に移行し、タイマがタイムアウトするまで新たな接続要求信号(ACTC)の入力を待ち受つ。
【0060】
受信した接続要求信号(ACTC)に誤りがない(即ち、有効な)場合には、受信回数Nrを値1だけ積算し(ステップS207)、得られた受信回数Nrを閾値Ntと比較する(ステップS301)。この比較の結果、受信回数Nrが閾値Nt未満である場合には、ステップS204に戻る。
【0061】
このようにして、有効な接続要求信号(ACTC)が受信される毎にステップS204〜301の一連の動作が繰り返されて受信回数Nrを積算され、タイマがタイムアウトするまでに受信回数Nrが閾値Nt以上になると(ステップS301)、通信管理手段4に対してこのときの移動局装置の接続要求を受理したことを指示する判定通知を出力し(ステップS302)、通信接続判定の処理を終了するが、受信回数Nrが閾値Nt以上になる前にタイマがタイムアウトすると(ステップS204)、判定通知を出力することなく、通信接続判定の処理を終了する。
【0062】
以上のように、この図3に示すこの第2の実施形態では、図2に示す第1の実施形態と同様、閾値Nt以上の接続要求信号(ATCT)を受信できた移動局装置のみを対象に通信接続を行なうことができるようになり、閾値Ntによって通過領域の通過車両を弁別するための走行速度の下限値を定めることが可能となるので、サービスの提供が可能な低速走行もしくは停止と判定できる接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrを閾値Ntとして設定することにより、基地局装置が形成する通信領域に侵入する車両の目的がサービス利用なのか、その場所の単なる通過なのかの区別ができるようになる。なお、複数の移動局装置が同時に接続要求信号(ACTC)を送信する場合には、図2に示す第1の実施形態と同様、移動局装置毎に受信回数Nrを区別するようにし、この区別には、接続要求信号(ACTC)に格納される移動局装置を識別するリンクアドレス(リンクアドレスサブフィールド(LID))を用いればよい。
【0063】
また、図3に示すこの第2の実施形態では、受信回数Nrの積算とともに、この受信回数Nrと閾値Ntとの比較も行なうので、タイマがタイムアウトしなくとも、閾値Ntを越えた時点で通信接続判定が完了でき、判定時間を短縮する効果が得られるとともに、次のような効果を得ることも可能になる。
【0064】
即ち、駐車場の入出庫口のように、複数の車両が時系列に順に進入してくる場合には、先行する車両から順番にサービスを提供することが望まれる。このためには、後続の車両が反応しないように、通信領域を狭く設計することや反射波の影響を軽減することが必要になる。図3に示すこの第2の実施形態の場合、順次の車両に搭載された移動局装置が通信領域を捕捉するタイミング(通信領域に進入するタイミング)に差が生じること、反射波の影響で形成された通信領域からの接続要求信号(ACTC)は安定して受信できないことから、先行車両からの接続要求信号(ACTC)の方が先に回数積算されることになり、後続車両から接続要求信号(ACTC)があっても、先行車両を優先して弁別することが可能になる。また、通信領域を比較的広くすることも許容できるので、アンテナ設計の自由度も高くなるという利点も得られる。例えば、パッチアンテナの場合では、通信領域を狭くしようとすると、素子数が増加して形状も大きくなるが、図3に示す具体例では、通信領域を比較的広くできるので、素子数の少ない小型アンテナが利用可能になる。
【0065】
なお、図3に示すこの第2の実施形態も、図2に示した第1の実施形態と同様、低速走行状態を検知するために必要な計測時間を確保できない場合には、フレーム制御信号(FCMC)に格納する制御情報(図8)で移動局装置を制御し、通信フレームにアクチベーションスロット(ACTS)を割り当てる周期や接続要求信号(ACTC)の送信繰り返しの周期を長くすることで対応できる。また、通信接続の可否について判定を行なう契機についても、図2に示した第1の実施形態と同様、判定要求信号Cの入力端子7を設けずとも、接続要求信号(ACTC)を新規に受信したことを契機に通信接続の可否判定動作に入ることも可能である。
【0066】
図4は本発明による狭域通信システムの基地局装置の第2の実施形態を示すブロック構成図であって、2’は変復調手段、3’は通信接続判定手段であり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0067】
この第2の実施形態は、移動局装置の通信接続の判定処理に、移動局装置からの接続要求信号(ACTC)ばかりでなく、変復調手段からの受信信号の信号強度の利用するようにしたものである。
【0068】
図4において、変復調手段2’は、移動局装置(図示せず)からの受信信号を復調するとともに、その受信信号の信号強度(受信レベル)も検出し、その値を受信レベル値Saとして通信接続判定手段3’に供給する。通信接続判定手段3’は、入力端子7からの判定要求信号Cの入力を契機とし、通信制御手段5から供給される受信接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrと変復調手段2’で検出される接続要求信号(ACTC)の受信レベル値Saの積算値(以下、積算受信レベル値という)Raを受信回数Nrで除した平均受信レベル値Maとを基に、この接続要求信号(ACTC)を送信した移動局装置との通信接続の可否について判定を行なう。
【0069】
図5はこの通信接続判定手段3’で実行する本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第3の実施形態を示すフローチャートである。
【0070】
同図において、通信接続判定手段3’は、入力端子7の状態(判定要求信号Cの入力の有無)を監視しており、判定要求信号Cが入力されて通信接続の判定要求があると(ステップS201)、有効な接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrと積算受信レベル値Raとを初期化し(ステップS501)、タイムアウト時間として所定の計測時間を設定したタイマを起動して時間経過を計測する(ステップS203)。
【0071】
タイマがタイムアウトしたか否かを判定し(ステップS204)、タイマがタイムアウトしていない場合には、通信フレームの更新があったか否かの判定処理を行なう(ステップS205)。この判定処理は、先の図2に示す第1の実施形態のステップS205の場合と同様、通信制御手段5から供給されるフレーム制御信号(FCMC)のフレーム同期信号(FS)が検出されることにより、通信フレームの更新があったと判定する。
【0072】
通信フレームが更新されないと、ステップS204に戻り、タイマがタイムアウトしない限り、ステップS204,S205の処理を繰り返して通信フレームの更新を待つ。
【0073】
通信管理手段4が、フレーム制御信号(FCMC)を送信するために、制御情報を通信制御手段5に出力して通信フレームが更新されると、通信制御手段5から供給される接続要求信号(ACTC)が有効か否かの判定処理を行なう(ステップS206)。この判定処理は、先の図2に示す第1の実施形態のステップ206の場合と同様、通信制御手段5から接続要求信号(ACTC)が供給されると、誤り検出符号(CRC)を用いてこの接続要求信号(ACTC)が有効か否かを判定するものである。
【0074】
受信した接続要求信号(ACTC)に誤りがない(即ち、有効である)場合には、受信回数Nrに値1だけ積算するとともに、変復調手段2’からこの接続要求信号(ACTC)の信号強度を示す信号レベル値Saを取得して積算受信レベル値Raに積算する(ステップS502)。受信した接続要求信号(ACTC)に誤りがある場合(ステップS206)、もしくはこのステップS502の積算処理が終了すると、ステップS204に移行し、タイマがタイムアウトするまで以上の一連の手順を繰り返し実行し、この間誤りのない有効な接続要求信号(ACTC)が受信される毎に、その受信回数Nrに順次値1を積算し、また、積算受信レベル値Raに順次受信レベル値Saを積算する。
【0075】
タイマがタイムアウトしたことが検知されると(ステップS204)、タイマがタイムアウトするまでに積算された受信回数Nrを予め設定された閾値Ntと比較し(ステップS208)、比較した結果、受信回数Nrが閾値Nt以上である場合には、積算受信レベル値Raを積算した受信回数Nrで除して当該移動局装置から受信した接続要求信号(ACTC)の受信1回当りの平均受信レベル値Maを算出する(ステップS503)。算出したこの平均受信レベル値Maは予め設定された閾値Mtと比較され(ステップS504)、この平均受信レベル値Maが閾値Mt以上である場合には、通信管理手段4に対してこの移動局装置の接続要求を受理したことを指示する判定通知を出力し(ステップS209)、通信接続判定の処理を終了する。
【0076】
受信回数Nrが閾値Nt未満である場合(ステップS208)や有効な接続要求信号(ACTC)の平均受信レベル値Maが閾値Mt未満である場合(ステップ504)には、この移動局装置の接続要求は受け付けずに処理を終了する。
【0077】
このように、図5に示すこの通信接続判定方法の第3の実施形態では、当該移動局装置からの接続要求信号(ACTC)の受信回数が閾値Nt以上で、かつその平均受信レベル値Maが閾値Mt以上となる移動局装置のみを対象に通信接続を行なうことができるようになる。このため、先の図2に示す第1の実施形態と同様、閾値Ntによって通過車両を弁別するための走行速度の下限値を定めることができるが、さらに、そのときの当該移動局装置からの接続要求信号(ACTC)の平均受信レベル値Maを求めることで通信領域の評価も行なっている。基地局装置が所定の位置に形成する通信領域は、その信号レベルが高く、比較的安定しているが、反射波の影響によって形成された通信領域では、接続要求信号(ACTC)の受信レベル値Saが低く、変動が大きいので、平均受信レベル値Maは前者の通信領域と後者の通信領域とで弁別可能な差が生ずることになる。また、平均受信レベル値Maの閾値Mtを基地局装置が通信領域と定める接続要求信号(ACTC)の受信強度の下限値とすると、平均受信レベル値Maをこの閾値Mtと比較することにより、基地局装置が定めた通信領域内から移動局装置が接続要求信号(ACTC)の送信を行なっているかどうかを判定することができる。
【0078】
従って、図5に示す接続要求可否判定方法の第3の実施形態では、サービスの提供が可能な低速走行もしくは停止と判定できる接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrを閾値Ntとして設定することにより、基地局装置が形成する通信領域に侵入する車両の目的がサービス利用なのか、その場所の単なる通過なのかを区別することが可能になり、さらに、継続して安定した信号レベルで受信される位置から接続要求信号(ACTC)を送信する移動局装置を識別できるようになるので、想定外の位置(即ち、反射波の影響によって形成された通信領域内の位置)から応答してくる移動局装置との弁別も可能になる。
【0079】
なお、この図5に示す通信要求可否判定方法の第3の実施形態においても、先の図2に示す第1の実施形態と同様に、基地局装置の設置環境によっては、基地局装置が複数の移動局装置から同時に接続要求信号(ACTC)を受信する場合もある。このような場合には、移動局装置毎に受信回数Nrが得られるように、接続要求信号(ACTC)の図8に示すリンクアドレスサブフィールド(LID)に格納されている移動局装置を識別するリンクアドレスを用い、このリングアドレス毎に受信回数Nrを区別するようにすればよい。また、複数の移動局装置からの接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrが全て閾値Ntを超え、かつその平均受信レベル値Maが閾値Mtを超える場合もある。このような場合には、提供するサービスの内容に応じて通信接続処理を行なうようにすることができる。例えば、これら全ての移動局装置と通信接続を行なう処理や受信回数Nrもしくは平均受信レベル値Maが最大の移動局装置とのみ通信接続を行なう処理、または受信回数Nrや平均受信レベル値Maで優先順位をつけて時系列に取り扱うなどの処理が適用可能である。
【0080】
また、先の図2に示す第1の実施形態と同様、低速走行状態を検知するために必要な計測時間を確保できない場合には、フレーム制御信号(FCMC)に格納されている、例えば、図8に示す時分割識別子(TID)や輻輳情報(STA)などの制御情報で移動局装置を制御し、通信フレームにアクチベーションスロット(ACTS)を割り当てる周期や接続要求信号(ACTC)の送信繰り返しの周期を長くすることで対応できる。また、移動局装置との通信接続の可否の判定についても、先の第1の実施形態と同様に、判定要求信号Cを用いず、接続要求信号(ACTC)を新規に受信したことを契機に判定動作に入るようにすることも可能である。
【0081】
図6は図4における通信接続判定手段3’で実行する本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第4の実施形態を示すフローチャート図である。
【0082】
先に図5に示した第3の実施形態では、タイマがタイムアウトして後、有効な接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrと閾値Ntとの比較(ステップS208)と受信レベル値Saの平均値、即ち、平均受信レベル値Maと閾値Mtとの比較(ステップS504)とを行なって通信接続の可否を判定し、その判定結果に応じて判定通知Dを通信管理手段4に出力する(ステップS209)ものであったが、この図6に示す第4の実施形態では、タイマがタイムアウトするまでの期間中に、有効な接続要求信号(ACTC)の受信毎にかかる判定を行ない、その判定結果に応じて判定通知Dを通信管理手段4に出力することができるようにしたものである。
【0083】
この図6に示す第4の実施形態を実行する基地局装置も、図4に示す構成をなし、その通信接続判定手段3’は、入力端子7から入力される判定要求信号Cを契機とし、通信制御手段5から供給される有効な接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrと変復調手段2’からのこの有効な接続要求信号(ACTC)の受信レベル値Saとを基に、この接続要求信号(ACTC)を送信した移動局装置との通信接続の可否について判定を行なう。
【0084】
図4及び図6において、図5に示す第3の実施形態と同様、入力端子7の状態を監視しており(ステップS201)、入力端子7から通信接続の判定要求信号Cが入力されて通信接続の判定要求があると、受信回数Nrと積算受信レベル値Raとを初期化し(ステップ502)、タイムアウト時間として所定の計測時間が設定されたタイマを起動して時間経過を計測する(ステップ203)。
【0085】
タイマの計測時間がこのタイムアウト時間を超過したか否かを判定し(ステップS204)、後述する判定通知Dを出力するような状態になる前にタイマがタイムアウトした場合には、この移動局装置の接続要求は受け付けずに処理を終了する。
【0086】
タイマがタイムアウトしていない場合には、通信フレームの更新があったか否かを判定する(ステップS205)。この判定処理は、図2でのステップS205と同様、通信制御手段5から供給されるフレーム制御信号(FCMC)のフレーム同期信号(FS)が検出されることにより、通信フレームの更新があったと判定する。
【0087】
通信フレームが更新されないと、ステップS204に戻り、タイマがタイムアウトしない限り、ステップS204,S205を繰り返し通信フレームの更新を待つ。
【0088】
通信管理手段4が、フレーム制御信号(FCMC)を送信するために、制御情報を通信制御手段5に出力して通信フレームが更新されると、接続要求信号(ACTC)が有効か否かの判定処理を行なう(ステップS206)。この判定処理は、図2でのステップS206と同様、通信制御手段5から接続要求信号(ACTC)が供給されると、上記の誤り検出符号(CRC)を用いて受信した接続要求信号(ACTC)が有効か否かを判定する。
【0089】
受信した接続要求信号(ACTC)に誤りがない場合(即ち、有効である場合)には、受信回数Nrに値1だけ積算するとともに、変復調手段2’からこの接続要求信号(ACTC)の信号強度を示す受信レベル値Saを取得して積算受信レベル値Raに積算する(ステップS502)。そして、得られた受信回数Nrを閾値Ntと比較し(ステップS208)、その比較の結果、受信回数Nrが閾値Nt以上である場合には、ステップS502で得られた積算受信レベル値Raを受信回数Nrで除して当該移動局装置からの接続要求信号(ACTC)の受信1回当りの平均受信レベル値Maを算出し(ステップS503)、この平均受信レベル値Maを予め設定された閾値Mtと比較する(ステップS504)。そして、この平均受信レベル値Maが閾値Mt以上の場合には、通信管理手段4に対してこの移動局装置の接続要求を受理したことを指示する判定通知を出力し(ステップS209)、通信接続判定の処理を終了する。
【0090】
受信した接続要求信号(ACTC)に誤りがある場合(ステップS206)、若しくは受信回数Nrが閾値Nt未満である場合(ステップS208)、または、平均受信レベル値Maが閾値Mt未満である場合(ステップS504)には、ステップS204に移行し、判定通知Dを出力できるようになるまで、もしくはタイマがタイムアウトするまで以上の一連の手順を繰り返し実行する。
【0091】
以上のように、図6に示す通信接続要求判定方法を用いた図4に示す第2の実施形態の基地局装置においても、図5に示す通信接続要求判定方法を用いた場合と同様、接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrが閾値Nt以上であり、かつその平均受信レベル値Maが閾値Mt以上となる移動局装置のみを対象に通信接続を行なうことができるようになり、閾値Ntによって提供されるサービスを受けることを目的に通信領域に進入する車両を弁別するための車両の走行速度の上限値を定めることが可能となるので、サービスの提供が可能な低速走行もしくは停止と判定できる接続要求信号(ACTC)の受信回数Nrを閾値Ntとして設定することにより、基地局装置が形成する通信領域に進入する車両の目的がサービス利用なのか、その場所の単なる通過なのかの区別ができるようになる。さらに、継続して安定した受信レベルが得られる位置から接続要求信号(ACTC)を送信する移動局装置を識別できるようになるので、想定外の位置(即ち、反射波の影響によって形成される通信領域内の位置)から応答してくる移動局装置との弁別も可能になる。
【0092】
なお、この図6に示す通信接続要求判定を行なう第2の実施形態の基地局装置においても、先の図1に示す基地局装置と同様に、基地局装置の設置環境によっては、基地局装置が複数の移動局装置から同時に接続要求信号(ACTC)を受信する場合もある。このような場合には、移動局装置毎に受信回数Nrが得られるように、接続要求信号(ACTC)の図8に示すリンクアドレスサブフィールド(LID)に格納されている移動局装置を識別するリンクアドレスを用い、このリングアドレス毎に受信回数Nrを区別するようにすればよい。
【0093】
また、この図6に示す通信接続要求判定処理を行なう第2の実施形態においては、受信回数Nr及び受信レベル値Saを積算する手順中にこれらを閾値Nt,閾値Mtと比較しているので、タイマがタイムアウトしなくとも、受信回数Nrがこの閾値Ntを超え、かつ積算受信レベル値Raの平均受信レベル値Maが閾値Mtを越えた時点でこの通信接続要求判定処理の判定結果が得ることができ、判定時間を短縮できるという効果が得られる。
【0094】
また、図6に示す通信接続要求判定方法を用いる図4に示す基地局装置の第2の実施形態においても、先の図1に示す基地局装置の第1の実施形態と同様に、駐車場の入出庫口のように、複数の車両が時系列に順に進入してくる場合には、先行車両から優先して弁別することが可能になるし、上記想定外の位置から応答してくる移動局装置との弁別も可能になる。また、先の図1に示す基地局装置の第1の実施形態と同様に、通信領域を比較的広くすることも許容できるので、アンテナ設計の自由度も高くなるという利点も得られる。
【0095】
なお、図6に示す第4の実施形態においても、先の各実施形態と同様、低速走行状態を検知するために必要な計測時間を確保できない場合には、フレーム制御信号(FCMC)に格納する制御情報(図8)で移動局装置を制御し、通信フレームにアクチベーションスロット(ACTS)を割り当てる周期や接続要求信号(ACTC)の送信繰り返しの周期を長くすることで対応できる。また、通信接続の可否について判定を行なう契機についても、先の各実施形態と同様、判定要求信号Cの入力端子7を設けずとも、接続要求信号(ACTC)を新規に受信したことを契機に通信接続の可否判定動作に入ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明による狭域通信システムの基地局装置の第1の実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【図4】本発明による狭域通信システムの基地局装置の第2の実施形態を示すブロック構成図である。
【図5】本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第3の実施形態を示すフローチャートである。
【図6】本発明による狭域通信システムの基地局の移動局装置との接続要求の可否判定方法の第4の実施形態を示すフローチャートである。
【図7】通信フレームの具体的構成例を示す図である。
【図8】図7における制御用スロットでのフレーム制御信号の具体的構成例を示す図である。
【図9】図7におけるアクチベーションスロットの具体的構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 アンテナ
2,2’ 変復調手段
3,3’ 通信接続判定手段
4 通信管理手段
5 通信制御手段
6 応用処理手段
7 入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上に設置され、車両に搭載された移動局装置との間で無線通信を行なう狭域通信システムの基地局装置において、
少なくとも、移動局装置が送信する通信接続を基地局装置に要求するための接続要求信号を基にして、該移動局装置との通信接続の可否を判定する通信接続判定手段を具備し、
該通信接続判定手段は、予め決められた所定の時間内で、
受信した該接続要求信号の受信回数を計数し、
計数した該受信回数が予め決められた閾値以上であるとき、該移動局装置からの通信接続要求を受け付ける
ことを特徴とする狭域通信システムの基地局装置。
【請求項2】
路上に設置され、車両に搭載された移動局装置との間で無線通信を行なう狭域通信システムの基地局装置において、
少なくとも、移動局装置が送信する通信接続を基地局装置に要求するための接続要求信号を基にして、該移動局装置との通信接続の可否を判定する通信接続判定手段を具備し、
該通信接続判定手段は、予め決められた所定の時間内で、
受信した該接続要求信号の受信回数を計数し、
かつ、受信回数が計数される該接続要求信号の信号強度を示す受信レベルを順次積算し、積算した受信レベルを該受信回数で除して平均受信レベルを求め、
該受信回数が予め決められた第1の閾値以上で、かつ該平均受信レベルが予め決められた第2の閾値以上のとき、該移動局装置からの通信接続要求を受け付ける
ことを特徴とする狭域通信システムの基地局装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記接続要求信号は、誤りの有無の判定処理がなされ、誤りがないと判定された有効な接続要求信号であることを特徴とする狭域通信システムの基地局装置。
【請求項4】
路上に設置され、車両に搭載された移動局装置との間で無線通信を行なう狭域通信システムの基地局装置の移動局装置との通信接続の可否判定方法において、
予め決められた時間内で、移動局装置が送信する通信接続を基地局装置に要求するための接続要求信号を受信する毎に、受信した該接続要求信号の受信回数を計数するステップと、
計数した該受信回数を予め決められた閾値と比較するステップと、
該受信回数が該閾値以上であるとき、該移動局装置からの通信接続要求を受け付けるステップと
を具備したことを特徴とする狭域通信システムの基地局装置の移動局装置との通信接続の可否判定方法。
【請求項5】
路上に設置され、車両に搭載された移動局装置との間で無線通信を行なう狭域通信システムの基地局装置の移動局装置との通信接続の可否判定方法において、
予め決められた時間内で、移動局装置が送信する通信接続を基地局装置に要求するための接続要求信号を受信する毎に、受信した該接続要求信号の受信回数を計数するステップと、
計数した該受信回数を予め決められた閾値と比較するステップと、
該受信回数が計数される該接続要求信号の信号強度を示す受信レベル値を積算し、積算した受信レベル値を該受信回数で除して平均受信レベル値を求めるステップと、
該受信回数が予め決められた第1の閾値以上で、かつ該平均受信レベル値が予め決められた第2の閾値以上のとき、該移動局装置からの通信接続要求を受け付けるステップと
を具備したことを特徴とする狭域通信システムの基地局装置の移動局装置との通信接続の可否判定方法。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記接続要求信号は、誤りの有無の判定処理がなされ、誤りがないと判定された有効な接続要求信号であることを特徴とする狭域通信システムの基地局装置の移動局装置との通信接続の可否判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−246345(P2006−246345A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62450(P2005−62450)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】