説明

狭域通信用車載器

【課題】狭域通信用車載器の各種機能操作をボタンなしに可能にする。
【解決手段】 車両に搭載され、路側機との無線通信を行う無線通信部3と、車載器からユーザへの情報伝達手段としてのヒューマンインタフェース部7と、ICカード8の挿抜に従って動作するカードスイッチ9及びICカード8とのデータ通信を行う通信処理部10から構成されるICカード読み取り部11と、上記ICカード読み取り部11における上記ICカード8へのアクセス情報をもとに上記ICカードのアクセスパターンを判定するICカードアクセスパターン判定手段13と、上記ICカードアクセスパターンの判定結果に基づいて、予め割り当てられた機能を実行する手段15を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、狭域通信(Dedicated Short-Range Communication:DSRCと略す)システ
ムを用いた課金決済等の機能を備えた狭域通信用車載器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、狭域通信システムを用いたアプリケーションの代表例として高速道路などの有料道路の料金をノンストップで自動収受する自動料金収受システム(Electric Toll Collection:ETCと略す)が普及している。ETCでは、料金所通過時の通行可否情報が無線通信を介して路側機から車載器へ通知される。車載器はこの通行可否情報を音声案内でユーザに通知することが多い。また、車載器にはICカードの利用履歴を音声で案内する車載器もみられる。音声案内は、使用環境によって適切な音量が変わってくるために音量設定機能が必要となる。この音量設定機能やICカードの利用履歴読み出し機能に対しては、通常、音量設定用ボタンスイッチ、履歴読み出しボタンスイッチなど各機能に応じて設定された複数のボタンスイッチが用意されている。ユーザはこのボタンスイッチを操作して音量設定や利用履歴の確認を行っている。
【0003】
このような車載器に対しては、小型化の要求が強く、また低価格化の要求も強い。一方、人が操作するボタンスイッチに対しては、操作しやすい適度な大きさが要求されている。よって、ボタンスイッチの搭載は小型化への障害となっている。また、ボタンスイッチは複数の構成部品で成り立っているため、低価格化への障害ともなっている。併せて、ボタンスイッチは操作しやすいように機構的にボタンの配置を考慮する必要がある。しかし、これは車載器の意匠デザインの自由度に対して大きな制限を加える要素となっている。さらに、開発の側面においは、ボタンスイッチを搭載する場合、ボタンスイッチを実装するための設計及び評価に多くの時間と費用を必要とするという問題もあった。
【0004】
このような要求と問題に応えるために、ボタンスイッチをなくし、車載器指示情報や履歴の案内等に用いられる音声案内に関する機能を一切搭載しない廉価版も存在している。しかし、市場での音声案内の要求は大きい。これを受けて、特許文献1では、ボタンスイッチのON/OFFパターンに異なる機能を割り振ることで、複数の機能を一つのボタンスイッチで実現でき、音量設定機能を含む音声案内、履歴読み出し等の機能を有しながらもボタンスイッチを一つにまで減らすことを可能としている。
【特許文献1】特開2005−309969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に説明した通り、ボタンスイッチ一つで音量設定機能を含む音声案内、履歴読み出し等の機能を実現することは可能となったが、依然、小型化、低価格化、デザインの自由度、及び開発工数に対して大きな障害となるボタンスイッチなしにこれらの機能を実現することはできないという問題があった。
【0006】
また、特許文献1では、ボタンスイッチのON/OFFパターンを補うことを目的に、ICカードの挿入状態を併用している。このICカードの挿入状態を検出するためにカードスイッチを使用している。よって、ユーザのICカードの挿抜操作から得られるイベント情報量としては、カードスイッチから得られるON/OFFのみとなる。従って、ユーザによるICカードの挿抜操作からこれ以上のイベント情報量を得ることはできないという制約があった。
【0007】
また、特許文献1では、スイッチのON/OFFパターンで機能の割り振りを行っている。しかし、実現する機能とON/OFFパターンの組み合わせは、概念的なつながりがない。従って、各機能に対応するON/OFFのパターンを覚えるという行為はユーザに対する負担が大きい。また、多機能化を図るためにはON/OFFパターンを増やす必要があるが、ON/OFFパターンの増加は、ユーザ負担をさらに増加させ、利便性の低下を招くという問題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決しようとするもので、その目的は、従来ボタンスイッチ操作で行っていた音量設定機能を含む音声案内、履歴読み出しなどの機能を、ボタンスイッチを搭載せずに実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る狭域通信用車載器は、車両に搭載され、路側機との無線通信を行う無線通信部と、車載器からユーザへの情報伝達手段としてのヒューマンインタフェース部と、ICカードの挿抜に従って動作するカードスイッチ及びICカードとのデータ通信を行う通信処理部から構成されたICカード読み取り部と、上記ICカード読み取り部における上記ICカードへのアクセス情報をもとに上記ICカードのアクセスパターンを判定するICカードアクセスパターン判定手段と、上記ICカードアクセスパターンの判定結果に基づいて、予め割り当てられた機能を実行する手段を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
また、この発明に係る狭域通信用車載器は、車両に搭載され、路側機との無線通信を行う無線通信部と、車載器からユーザへの情報伝達手段としてのヒューマンインタフェース部と、ICカードの挿抜に従って動作するカードスイッチ及びICカードとのデータ通信を行う通信処理部から構成されたICカード読み取り部と、外部機器の接続状態を判定する外部機器接続判定処理部または車両からの入力信号を判定する入力信号判定処理部と、上記ICカード読み取り部における上記ICカードへのアクセス情報をもとに上記ICカードのアクセスパターンを判定するICカードアクセスパターン判定手段と、上記ICカードアクセスパターンの判定結果と上記外部機器接続判定結果または入力信号判定結果とからなる組み合わせパターンを総合的に判定する総合パターン判定手段と、上記総合パターン判定結果に基づいて、予め割り当てられた機能を実行する手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、既存のICカード読み取り部の情報をもとにICカードアクセスパターンを判定する手段を持たせることで、従来ボタンスイッチで行っていた機能の呼び出しをICカードの挿抜操作で実現することができ、これによりボタンスイッチが不要となった分、小型化、低価格化、デザインの自由性、開発の期間短縮化及び費用縮小化を図ることができる。
【0012】
また、請求項1の発明によれば、ユーザのICカードの挿抜操作から得られるイベント情報量は、定義したアクセス情報の分だけ得ることができ、挿入するICカードの状態を変えることによって、呼び出す機能を変えることができる。ICカードの挿抜操作だけで割り当てパターンを増やすことも容易であり、かつ、割り当てるパターンの選択肢を広げることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、もともと車載器に接続される外部機器の接続状態または外部入力信号の信号状態をICカードアクセスパターン判定と組み合わせることで、新規の部品を採用することなく既存の構成で機能に割り当てるパターンを増やすことができる。
【0014】
また、請求項2の発明によれば、操作方法とその操作によって呼び出される機能を概念的に捉えることができ、ユーザにとって、ボタンスイッチの単純な操作パターンとの機能の関連付けと比較すると容易に覚えやすい操作となり、ユーザビリティを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る狭域通信用車載器を示すブロック図である。この狭域通信用車載器1は、アンテナ2に接続され、路側機との通信プロトコル処理を行う無線通信処理部3を備えている。また、ICカード8が挿抜されるICカード読み取り処理部11を備えている。ICカード読み取り処理部11は、ICカード8の挿抜を検出するカードスイッチ9及びICカード通信処理部10を有する。また、スピーカ4やブザー5やLED6といったヒューマンインタフェース(以下HMIと略す)系の処理を行うHMI処理部7を備えている。さらに、無線通信処理部3及びICカード読み取り処理部11のデータを管理し、HMI処理部7を制御するアプリケーション処理部12、ICカード読み取り処理部11におけるICカード8へのアクセスパターンを判定するICカードアクセスパターン判定手段13、ICカードアクセスパターン判定手段13によって具体的に実行される機能の一例としての音量設定処理部14、ICカードアクセスパターン判定手段13によって判定されたICカードアクセスパターン判定結果をもとに、予め割り当てられたアプリケーション処理部12か音量設定処理部14を実行する手段15を備えている。
【0016】
ICカード読み取り処理部11では、ICカード8が挿入されると、カードスイッチ9がICカード8の挿入を検知し、ICカード通信処理部10がICカード8との通信を開始する。ICカード通信処理部10は、ICカード8との通信を開始してからアプリケーション処理部12が必要とするデータを読み出すまでにいくつかの段階を踏む。ここでは、説明を簡単にするために、ICカード8との通信を開始するための初期段階の処理であるICカード活性化処理に着目する。ICカード活性化処理では、ICカード通信処理部10からICカード8上のICチップへ特定の信号を送り、そのICチップから所望のレスポンスがあった場合にICカード8の活性化処理が成功したと判断する。しかし、例えば、通常では行わない操作であるICカード8の裏向きでの挿入(以下、裏挿しと略す)が行われた場合は、ICカード通信処理部10と、ICカード8における実質的な通信機能を持つICカード8上に実装されているICチップとが接触していない状況が発生することになって、ICチップ8からの所望のレスポンスはないため、ICカード8の活性化処理は失敗したと判断される。なお、ICカード8の裏挿しが行われた場合は、HMI処理部7を通してユーザにICカード裏挿し案内を行う。
【0017】
ICカードアクセスパターン判定手段13は、カードスイッチ9におけるICカード8の検出結果(挿入/排出)、及びICカード通信処理部10におけるICカード8の活性化処理の結果(成功/失敗)を監視する。また、ICカードアクセスパターン判定手段13は、ICカード8の検出結果(挿入/排出)、及びICカード8の活性化処理の結果(成功/失敗)というイベントに対し、各イベントの順序またはイベントとイベントとの間の時間を管理する。さらに、ICカードアクセスパターン判定手段13には、各イベントの順序またはイベントとイベントとの間の時間に対し、予め定めたある特定のパターンと一致するかを常時チェックし、該当するパターンが見つかった場合は、そのパターンに対して結び付けられた機能を呼び出す処理機能を持たせる。
【0018】
ICカードアクセスパターン判定手段13の機能について、より具体的な例を、図2のフローチャートを用いて説明する。まず、ICカード8の挿入がカードスイッチ9により確認され(S1)、ICカード通信処理部10におけるICカード活性化処理の失敗があ
った場合(S2)、既存のアプリケーション処理部12を呼び出し、そこで既存のICカード裏挿し案内を行う(S5)。この状態でICカード8の排出がカードスイッチ9で確認されたら(S6)、タイマを起動して終了する(S7)。そこから、再びICカードの挿入がカードスイッチ9で確認され(S1)、ICカード通信処理部10におけるICカード活性化処理の失敗があった場合(S2)、タイマ起動中かどうか確認し(S3)、さらにタイマが2秒以内の場合は(S4)、音量設定処理部14を呼び出すこととする(S8)。その後ICカードが排出されれば(S9)、タイマを終了して(S10)処理を終了する。
【0019】
ICカード8の挿入時にICカード活性化処理に成功すれば(S2)、通常のカード読み込み処理を行い(S11)、ICカード8が排出されれば(S12)、タイマを終了して(S13)処理を終了する。
【0020】
上述のICカードアクセスパターンは、ICカード8の操作に置き換えると、ICカード8を裏挿しで挿入し、ICカード裏挿し案内がされたらカードを一度抜き、抜いてから2秒以内に再びICカード8を裏挿しするという操作になる。つまり、ユーザがそのようなICカード操作を行うと、音量設定が行えるということを意味する。
【0021】
音量には、0番(ミュート)、1番(小)、2番(中)、3番(大)というレベル設定が可能であり、音量設定処理部14が呼び出されたときに2番が設定されていたとする。この時、音量設定処理部14は、呼び出された時点で設定されている『2番』を2番の音量で通知する。また、『2番』を通知してから2秒経過後は、『3番』を3番の音量で、『0番』を1番の音量で、『1番』を1番の音量で、というようにそれぞれ2秒間隔で音声案内していく。このように最初はそのとき設定されている音量を通知し、その後は順次設定可能な音量の案内を各音量で通知していく。音量の確定は、音声案内で通知されたタイミングでカードが抜かれた場合とする。例えば、『3番』と音声案内した後にカードが抜かれた場合は、3番に音量を変更する。この時、『3番にしました』と音声で案内してもよい。なお、音量設定処理部14が規定回数繰り返し音量を通知していても、ユーザによるカード排出操作がない場合は、ユーザは音量設定の意思はないと判断してもよい。この場合、カードは裏挿し状態で挿入されているため、既存のICカード裏挿し案内を行ってもよい。
【0022】
上記実施の形態1により、既存のICカード読み取り部11にICカードアクセスパターンを判定する手段を持たせることで、従来ボタンスイッチで行っていた機能をICカードの挿抜で実現することができる。
【0023】
なお、上記実施の形態1では、ICカード通信処理部10においては、挿入されたICカード8との通信を開始してからアプリケーション処理部12の必要とするデータを読み出すまでの過程において、ICカード8との通信を開始するための初期段階の処理であるICカード活性化処理に着目したが、例えば、さらにICカード活性化処理が成功した場合は、ICカード8のデータを読み出すまでの過程における最終段階のICカード8の認証処理に着目することでICカードアクセスパターンを増やすことができる。
【0024】
上述の実施例により、ユーザのICカード8の挿抜操作に対して得られるイベント情報は、アクセス情報を用いることで、ICカード排出/ICカード裏挿し/ICカード認証失敗/ICカード認証成功の4つのイベント情報となり、既に従来技術のカードスイッチのみを用いて得られるON/OFFの2つのイベント情報を上回るイベント情報を得ている。
【0025】
ここで、上記で着目したアクセス情報であるICカード認証失敗を用いた例を説明する
。アクセス情報を用いたことによる効果を示すために、ユーザのICカード8を挿入する操作(ICカードを挿入し、一度抜き取り、抜き取ってから2秒以内に挿入するという操作)自体は、上述の音量設定と同じ操作とする。
【0026】
まず、ICカードの認証処理は、例えば、ETCアプリケーションに対応した車載器にETC向けのICカードを正常な向きで挿入すると約1、2秒で認証処理が終了し、正常終了であった場合は認証成功となる。一方、ICカードの認証処理における認証失敗としては、該当するアプリケーションに対応していないICカード(つまり用途が異なるカード)が挿入された場合、または、認証処理の途中でICカードが抜かれた場合が挙げられる。なお、認証失敗した場合は、HMI処理部を通しユーザに対し認証失敗の案内を行う。
【0027】
一例として、ICカードアクセスパターンにICカードの認証失敗のイベントを組み込むことで、車載器に記憶されるエラーログを音声で読み上げるという機能を実現する方法を示す。これは、該当するアプリケーションに対応していないICカードを挿入し、認証失敗の案内がされたらカードを一度抜き、抜いてから2秒以内に再び該当するアプリケーションに対応していないICカードをそのまま挿入すると、車載器に記憶されるエラーログを音声で読み上げるという形で実現が可能となる。
【0028】
なお、上記の二つの例では、アクセス情報を用いたことによる効果を示すために、ユーザのICカードを挿入する操作を同一にして、音量設定と車載器に記憶されるエラーログを音声で読み上げる機能を例に挙げたが、ICカードアクセスパターンを判定する手段の使用方法はこれに限る必要はない。例えば、ETC向けのICカードを正常な向きで挿入し、認証する前にカードを抜き、つまり認証失敗を発生させ、認証失敗の案内がされたら一度カードを抜き、抜いてから2秒以内に再びそのICカードを正常な向きで挿入し、認証が成功したら、ICカードに格納される利用履歴を1件案内する、というような使い方をしてもよい。
【0029】
上記説明から明らかなように、本実施の形態1では、既存のICカード読み取り部の情報をもとにICカードアクセスパターンを判定する手段を持たせることで、従来ボタンスイッチで行っていた機能の呼び出しをICカードの挿抜操作で実現することができ、これによりボタンスイッチが不要となった分、小型化、低価格化、デザインの自由性、開発の期間短縮化及び費用縮小化を図ることができる。
【0030】
また、ICカードの挿抜操作に対するイベントとして、例えば、ICカードが排出された、挿入されたICカードとの通信が確立しない、用途の異なるICカードが挿入された、ICカードの認証途中で通信が途切れた、ICカードの認証が正常終了した、等のICカードとの通信の結果を含めたアクセス情報を定義している。よって、ユーザのICカードの挿抜操作から得られるイベント情報量は、定義したアクセス情報の分だけ得ることができ、従来技術のカードスイッチによるON/FFの2つのイベントを大きく上回ることができる。さらに、ICカードの挿抜操作から得られるイベント情報量が増えたことにより、ICカードの挿入と抜き取りのタイミングが同じ場合でも、ICカードの向きを変えて挿入したり、用途の異なるカードを挿入したりするなど、挿入するICカードの状態を変えることによって、呼び出す機能を変えることができる。つまり、ICカードの挿入と抜き取りのタイミングだけによる割り当てパターンで増やすこともできれば、挿入するICカードの状態を変えることでも割り当てパターンを増やすことができるなど、純粋にICカードの挿抜操作だけで割り当てパターンを増やすことも容易であり、かつ、割り当てるパターンが変化に富み、割り当てるパターンの選択肢を広げることができる。
【0031】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係る狭域通信用車載器のブロック図である。狭域通信用車載器23は、アンテナ2に接続され、路側機との通信プロトコル処理を行う無線通信処理部3を備えている。また、ICカード8が挿抜されるICカード読み取り処理部11を備えている。ICカード読み取り処理部11は、ICカード8の挿抜を検出するカードスイッチ9及びICカード通信処理部10を有する。また、スピーカ4やブザー5やLED6といったヒューマンインタフェース(以下HMIと略す)系の処理を行うHMI処理部7を備えている。さらに、無線通信処理部3及びICカード読み取り処理部11のデータを管理し、HMI処理部7を制御するアプリケーション処理部12、アンテナ2の接続状態及びACC(アクセサリー電源)16の入力状態を判定する外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17、ICカード読み取り処理部11におけるICカードへのアクセスパターンを判定するICカードアクセスパターン判定と、さらにその判定結果と外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17の判定結果を総合的に判定する総合パターン判定手段18を有する。また、上記総合パターン判定手段18によって具体的に実行される機能の一例としてのカード抜き忘れ案内ON/OFF設定処理部19及び履歴読み出し処理部20、上記総合パターン判定手段18によって判定された総合パターン判定結果をもとに予め割り当てられたアプリケーション処理部12か音量設定処理部14かカード抜き忘れ案内ON/OFF設定処理部19か履歴読み出し処理部20かカード抜き忘れ案内処理部21かを実行する手段22を備えている。
【0032】
カード抜き忘れ案内処理部21は、ICカード読み取り処理部11にICカード8が挿入された状態でACC16がOFFされた場合に、ICカード8がICカード読み取り処理部11に残っていることをHMI処理部7を通してスピーカ4あるいはブザー5あるいはLED6でユーザに通知する機能を実現するための処理部である。カード抜き忘れ案内処理部21は、カードが挿入されていない状態でACC16がOFFされた場合及びカード抜き忘れ案内中にカードが抜かれた場合は、その時点で車載器の電源をOFFにする。また、カード抜き忘れ案内ON/OFF設定処理部19は、カード抜き忘れ案内処理部21での案内動作に対して、ON設定(案内する)にするかOFF設定(案内しない)にするかをユーザに選択設定させる機能となる。また、履歴読み出し処理部20は、ETC向けのICカード8に含まれる利用履歴情報をICカード読み取り処理部11を通して読み出し、読み出した情報を音声案内するためにHMI処理部7へ受け渡すまでの制御を行う。
【0033】
外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17は、アンテナ2が接続状態か非接続状態かの判定、及びACC16がON状態かOFF状態かの判定の何れか一方もしくは両方の判定を行う。外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17の判定結果は、総合パターン判定手段18に送られる。
【0034】
総合パターン判定手段18は、外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17における判定結果を監視する。また、総合パターン判定手段18は、実施の形態1で示したICカードアクセスパターン判定手段13の機能を併せ持ち、ICカードアクセスパターン判定機能によって判定された結果と、外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17における判定結果を総合的に管理する。また、総合パターン判定手段18は、アンテナ2の接続判定結果(接続/非接続)、及びACC16の信号判定結果(ON/OFF)、及び実施の形態1で示したICカードの活性化処理の結果(成功/失敗)、またはICカード認証の結果(成功/失敗)というイベントに対し、各イベントの順序またはイベントとイベントとの間の時間を管理する。さらに、総合パターン判定手段18は、各イベントの順序またはイベントとイベントとの間の時間に対し、予め定めたある特定のパターンと一致するかを常時チェックし、該当するパターンが見つかった場合は、そのパターンに対して割り当てられた機能を呼び出す処理を持たせる。
【0035】
総合パターン判定手段18について、具体的な例を用いて説明する。まず、アンテナ2の接続状態を用いた例を説明する。アンテナ2が接続状態であると外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17が判定している状態で、ETCを動作させるための、つまりETC向けのICカード8が挿入され、かつICカード認証の結果が成功を示した場合は、特に機能を呼び出すことはないと総合パターン判定手段18が判定する。一方、アンテナ2が非接続状態であると外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17が判定している状態で、ETC向けのICカード8が挿入され、かつICカード認証の結果が成功を示している場合は、総合パターン判定手段18は履歴読み出し処理部20を呼び出すと判定する。
【0036】
これはユーザ操作に置き換えると、アンテナ2を接続した状態で通常通りETC向けのICカード8を入れるか、アンテナ2を外した状態で通常通りETC向けのICカード8を入れるかの違いになり、またその操作によって、ユーザはアンテナ2を接続した状態で通常通りETC向けのICカード8を入れた場合は、通常通りにICカード認証が行われて料金所をいつでも通れる状態が得られ、アンテナ2を外した状態で通常通りETC向けのICカード8を入れた場合は、ICカード8に含まれる利用履歴を聞くことができるようになる。この時、ICカード8に含まれる利用履歴を全件案内してもよいし件数を定めて案内してもよい。なお、このようにすることで、利用履歴の案内をアンテナ2が接続されていないことの注意喚起として併用することも可能となる。
【0037】
次に、ACC16の判定を用いた例を説明する。総合パターン判定手段18は、ICカード8の活性化処理の結果が成功の状態で、外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17は、ACC16がON状態からOFF状態となった場合は、カード抜き忘れ案内処理部21を呼び出し、ICカード8の活性化処理の結果が失敗の状態で、外部機器接続判定処理部または入力信号判定処理部17が、ACC16がON状態からOFF状態となった場合は、カード抜き忘れ案内ON/OFF設定処理19を呼び出すとする。なお、カード抜き忘れ案内ON/OFF設定処理19は、呼び出されると、例えば、そのとき設定されている状態を『カード抜き忘れ案内 ON設定です』と音声案内し、それ以降は順次2秒間隔で『OFF設定』『ON設定』と繰り返し音声案内していく。カード抜き忘れ案内ON/OFF設定処理19は、音声案内の途中でICカード8が抜かれた場合に、その案内した設定を登録して、例えば『OFF設定にしました』と音声案内をしてから車載器の電源を落とす。
【0038】
これをユーザ操作に置き換えると、ICカード8を通常の向きで車載器に挿入している状態(つまり通常の使用形態)でACC16をONからOFFにするか、ICカード8を裏向きで車載器に挿入している状態(つまり通常とは異なる使用形態)でACC16をONからOFFにするかの違いになり、またその操作によって、ICカード8を通常の向きで車載器に挿入している状態でACC16をONからOFFした場合は、カード抜き忘れの案内が通知され(ON設定の場合)、ICカード8を裏向きで車載器に挿入している状態でACC16をONからOFFにした場合は、カード抜き忘れ案内のON/OFF設定ができるということになる。
【0039】
上記実施の形態2により、既存のICカード読み取り部にICカードアクセスパターンを判定する手段を持たせ、さらに既存のアンテナの接続状態の判定結果あるいはACCの信号判定結果を組み合わせることで、新たにスイッチ等の部品点数を増やすことなく、より多くの機能を呼び出す手段を得ている。また、ACC-OFF時に働く機能の設定をA
CC-OFF時に設定できるなど、呼び出すための操作と呼び出される操作の間に概念的
なつながりを持たせて実現することができる。
【0040】
上述のように、本実施の形態2によれば、もともと車載器に接続される外部機器の接続
状態または外部入力信号の信号状態をICカードアクセスパターン判定と組み合わせることで、新規の部品を採用することなく既存の構成で機能に割り当てるパターンを増やすことができる。
【0041】
また、例えば、カード挿入状態でACC-OFFした場合にカードが残っていることを
ユーザに通知するカード抜き忘れ案内のON/OFF設定(有効/無効設定)を、ACC-OFF時のカード操作で行う、と設定した場合、ユーザは「カード抜き忘れ案内はAC
C-OFFした場合に働く機能により、ACC-OFFの状態でON/OFF設定が行えるようになっている」と、操作方法とその操作によって呼び出される機能を概念的に捉えることができ、ユーザにとって、ボタンスイッチの単純な操作パターンとの機能の関連付けと比較すると容易に覚えやすい操作となり利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施の形態1に係る狭域通信用車載器を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1のICカードアクセスパターン判定手段のフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係る狭域通信用車載器を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1 車載器、
2 アンテナ、
3 無線通信処理部、
4 スピーカ、
5 ブザー、
6 LED、
7 HMI処理部、
8 ICカード、
9 カードスイッチ、
10 ICカード通信処理部、
11 ICカード読み取り処理部、
12 アプリケーション処理部、
13 ICカードアクセスパターン判定手段、
14 音量設定処理部、
15 実行部、
16 ACC、
17 外部機器接続判定手段または入力信号判定手段、
18 総合パターン判定手段、
19 カード抜き忘れ案内ON/OFF設定処理部、
20 履歴読み出し処理部、
21 カード抜き忘れ案内処理部、
22 実行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、路側機との無線通信を行う無線通信部と、車載器からユーザへの情報伝達手段としてのヒューマンインタフェース部と、ICカードの挿抜に従って動作するカードスイッチ及びICカードとのデータ通信を行う通信処理部から構成されたICカード読み取り部と、上記ICカード読み取り部における上記ICカードへのアクセス情報をもとに上記ICカードのアクセスパターンを判定するICカードアクセスパターン判定手段と、上記ICカードアクセスパターンの判定結果に基づいて、予め割り当てられた機能を実行する手段を備えたことを特徴とする狭域通信用車載器。
【請求項2】
車両に搭載され、路側機との無線通信を行う無線通信部と、車載器からユーザへの情報伝達手段としてのヒューマンインタフェース部と、ICカードの挿抜に従って動作するカードスイッチ及びICカードとのデータ通信を行う通信処理部から構成されたICカード読み取り部と、外部機器の接続状態を判定する外部機器接続判定処理部または車両からの入力信号を判定する入力信号判定処理部と、上記ICカード読み取り部における上記ICカードへのアクセス情報をもとに上記ICカードのアクセスパターンを判定するICカードアクセスパターン判定手段と、上記ICカードアクセスパターンの判定結果と上記外部機器接続判定結果または入力信号判定結果とからなる組み合わせパターンを総合的に判定する総合パターン判定手段と、上記総合パターン判定結果に基づいて、予め割り当てられた機能を実行する手段を備えたことを特徴とする狭域通信用車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−276844(P2009−276844A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124949(P2008−124949)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】