説明

珪酸塩ガラスの製造方法、珪酸塩ガラス熔融用混合原料及び電子材料用ガラス物品

【課題】均質なガラス物品を多成分珪酸塩ガラスで製造するに際し、高い均質度を有する熔融ガラスを容易に得、ガラス物品の均質度を向上させられるガラス物品の製造方法と珪酸塩ガラス熔融用混合原料、さらに電子部品用途のガラス物品を提供する。
【解決手段】本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、予め複数の珪酸塩ガラス用原料を混合し、ガラス熔融炉内に投入し、連続的にガラス物品を製造するもので、混合原料中の珪素酸化物に占めるフリークオーツの含有比率を所定範囲内に調整し、混合原料中のフリークオーツを加熱して均質なガラス状態を得、個別ガラス物品容積を決定する手段と、得られたガラス物品の外観品位を計測するものである。本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上記の珪酸塩ガラス熔融用混合原料で、混合原料中のフリークオーツ含有率が、6割以下である。また本発明の電子材料用ガラス物品は、本発明の珪酸塩ガラス物品の製造方法で、板形状物又は管形状物に成形されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料用途で使用される均質な珪酸塩ガラス物品と、その電子材料用のガラス物品を製造するためのガラス熔融用の珪酸塩ガラス熔融混合原料、さらにその混合原料を使用する珪酸塩ガラスの製造方法に関する。
【0002】
ガラス物品は、現在産業を担う様々な用途で大量に利用されているが、ガラス物品に求められる高い性能を十分に発揮するには、そのガラス物品が所定の均質な状態となっているという基本的な外観品位を獲得している必要がある。このため、ガラス物品をガラス熔融炉等の設備を利用することにより製造する場合に、均質なガラス物品を得るためには、高温のガラス熔融状態においてどれだけ不均質な状態にすることなく熔融することができるか、如何に最終的な成形直前の熔融ガラスを均質な状態に維持するかという点が重要なものとなる。ガラス熔融時の均質性を高い状態に維持するには、ガラス熔融に関連する数多くの要因に対して、適切な取り組みが必要である。その内ガラス原料の熔解性は、最も重要なものの一つである。例えばどんなに優れたガラス物性を示すガラス材質を見出しても熔解困難なガラス原料構成を採用すると、それを補うためにガラス熔融炉に高価な設備を設ける等の対処を要することになって工程における負荷が増大し、ガラス物品の製造に関わる労力も多大なものとなる。またこのような場合には、ガラス物品の外観品位も安定させることができない場合が多くなる。このためガラスの原料、あるいはその構成については従来から多くの発明が行われてきた。
【0003】
例えば特許文献1では、不要となったブラウン管ガラスをリサイクルするため、ファンネルやネックの内外表面に形成されたカーボンタグを除去することなくガラス原料として使用することを目的として、カーボンによりガラスが還元されるのを防止するに十分な酸化剤を含む調合原料とすることが開示されている。また特許文献2では、ブラウン管用ガラス原料、液晶用ガラス原料等の珪砂と炭酸ストロンチウムあるいはドロマイトを含有するガラス用混合原料において、炭酸ストロンチウムあるいはドロマイトの平均粒径を珪砂の8倍以内のサイズとすることによって難熔解性原料であっても低温での熔解が実現できるという発明が開示されている。さらに特許文献3では、低温の熔融環境であっても均質なガラス物品を得ることのできるガラス用混合原料として、混合された後に粉砕され、異なる組成を有する複数の原料の粒子の粒径加算曲線に於ける有効粒径であるD90を50μm以下とする内容の発明も開示されている。また特許文献4では、屈折率やアッベ数といった所定の光学特性を有するランタン含有ガラスを安定製造するためのガラス原料成分として、水分を遮断した密閉状態とした酸化ランタンからなるものとすることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−348249号公報
【特許文献2】特開2003−40641号公報
【特許文献3】特開2006−069881号公報
【特許文献4】特開2006−104001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これまで行われてきた熔融用ガラス原料についての発明だけでは充分なものとは言えない。近年の電子産業の著しい発達に伴い、数多くのガラス物品に依存する技術が新たに生み出され、それに伴ってガラス物品にも従来にも増して多様な要求が行われるようになっている。例えば大型画像表示装置や高い寸法精度の要求される光機能部品などでは、欠陥のない均質度の高い大きい寸法のガラス物品、あるいは高い表面寸法形状を有するガラス物品の供給が求められている。これらの種々の要望に的確に応えていくには、熔融により製造されるガラス物品に関わるガラス製造技術をより高いものとしなければならない。
【0005】
本発明は、係る状況に鑑み、多成分珪酸塩ガラスで均質なガラス物品を製造するに際し、高い均質度を有する熔融ガラスを得ることを容易にし、安定したガラス品位を実現することによって製造されるガラス物品の均質度を向上させることができる珪酸塩ガラスの製造方法とその製造方法で使用されるガラス熔融用混合原料、さらに本発明の製造方法により得られる電子部品用途のガラス物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とを秤量、混合して混合原料にする調合とし、その混合原料をガラス熔融炉内に投入して加熱により熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的にガラス物品を製造する珪酸塩ガラス物品の製造方法であって、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツ(Free Quartz)の含有比率を所定範囲内に調整する調合工程と、混合原料中のフリークオーツを加熱することにより均質な熔融ガラス状態を得る熔融工程と、均質な熔融ガラス状態を維持しつつ個別のガラス物品の体積を決定する成形工程と、得られたガラス物品の外観品位を計測する品位計測工程とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明で、フリークオーツとは、遊離石英とも呼ばれるもので、珪素が酸素と三次元的に結合した構造を有しており、かつ他の珪素以外の他のアルカリ金属やアルカリ土類金属のカチオンとは結合していない状態にある成分を表すものである。
【0008】
また、珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とを秤量、混合して混合原料とし、その混合原料をガラス熔融炉内に投入して加熱により熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的にガラス物品を製造する珪酸塩ガラス物品の製造方法であって、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツ(Free Quartz)の含有比率を所定範囲内に調整する調合工程と、混合原料中のフリークオーツを加熱することにより均質な熔融ガラス状態を得る熔融工程と、均質な熔融ガラス状態を維持しつつ個別のガラス物品の体積を決定する成形工程と、得られたガラス物品の外観品位を計測する品位計測工程とを有するとは、次のようなものである。すなわち天然あるいは化成の粉粒体やガラスカレットよりなる珪酸塩ガラスを製造するための複数のガラス原料を所定のガラス組成となるように秤量した後に原料混合装置を使用することにより混合し、次いで得られた混合済みのガラス原料をガラス熔融炉内に投入し、加熱熔融した後に所定形状に成形することでガラス物品とするガラス物品の製造方法において、混合されたガラス原料中のフリークオーツの含有割合を予め所定範囲内となるように調整しておく工程を有し、次いでこのような状態にある混合原料を高温状態のガラス熔融炉内に投入することによって混合原料中のフリークオーツにエントロピーが増大するように熱エネルギーを供与することによって難熔解性のフリークオーツを周囲の熔融ガラスに熔解することによって熔融ガラスについての構造的な均質度を向上させる工程を有し、さらに均質度の向上された熔融ガラスを所定容量だけ分離することによって所定の形状に成形する手段を有し、かつ得られたガラス物品成形装置によって所定形状に成形されたガラス物品の外観品位を正確に計測することで高精度のガラス物品の品位を維持することを可能とする工程であり、例えば所定形状に成形されたガラス物品の表面の形状的な設計上の表面に対する逸脱の大きさを凹凸の寸法の値として検出する品位計測工程、あるいは屈折率の変動によって生じる微細な脈理、ノットあるいは泡等の内部欠陥が存在しないかどうかを光学的な均質性を評価する計測装置を使用することで測定する品位計測工程によってガラス物品の品位を確認しつつ選別を行い、ガラス物品を所望の適正形状となるように製造することができるものであることを意味している。
【0009】
混合原料中の珪素化合物について、珪素化合物に占めるフリークオーツ(Free Quartz)の含有比率を所定範囲内に調整する調合工程については、予め混合原料を構成する個別原料中の構成成分の化学量論比を化学分析及び機器分析の併用によって決定し、さらにX線回折を使用することでフリークオーツ量を特定し、その決定値に基づいて個別原料の混合割合を決定することでフリークオーツの含有比率を所定範囲内とするものであればよい。
【0010】
混合原料中のフリークオーツを加熱することにより均質な熔融ガラス状態を得る熔融工程については、液体燃料や気体燃料の燃焼、さらに発熱体などの電気による加熱をも加熱手段として採用することができ、このような熱エネルギーを用いて混合原料中に所定比率で含有されるフリークオーツを効率的に加熱することによって軟化、熔融させ、周囲の他の原料や熔融ガラスとの熱化学反応を起こさせて均質な熔融状態とするものであればよい。
【0011】
均質な熔融ガラス状態を維持しつつ個別のガラス物品の体積を決定する成形工程については、ガラス物品の形状と寸法とを高温状態あるいは冷却状態で決める成形装置を使用することによって、1つ1つのガラス物品の体積を決めるものであればよい。例えば、高温状態であれば、シャー切断によって高温のゴブを形成するような製造装置等の各種装置をこの手段として採用するものであってよい。また冷却状態であれば、オーバーフローダウンドローの後に粗割り成形機によってガラス板を製造する装置、あるいはロール成形後やフロートバスにより形成された板状物を切断する板ガラス成形装置、ダンナー成形装置あるいはダウンドロー成形装置によって管状に成形されたガラスを切断装置によって特定寸法の管ガラスを成形する装置等をこの手段として採用するものであってよい。以上のような成形工程によって個別のガラス物品となる熔融ガラスあるいは冷却後のガラス物品の体関が決まり、それに従う成形がなされる。成形方法は上記の製造装置がそれを兼ねる場合もあれば、熔融ガラスを分配する工程とは異なるものを使用するものであってもよい。
【0012】
ちなみに本発明に係る混合原料とは、単独で複数のカチオンを有する天然鉱物より構成される原料一種類を意味するものではなく、物理的な混合操作によって複数の異なる組成を有する粒子がランダムに分散する状態となっている天然鉱物、あるいは人工的な化成品等の原料粉末の混合物を意味している。すなわち、本件の無機ガラス熔融用の混合原料とは、ムライト、カオリナイト、モンモリロナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、ブラペイサイトあるいはコレマナイト等の複数のカチオンを含む原料も一品種の原料と見なし、さらに他の原料種と粉末状態で混合された状態になって、初めて本発明に該当する混合原料となる。
【0013】
また、本発明では、原料の混合に使用できる方法は問わず、公知となっている様々な方法を併用することができる。そして混合操作は乾式、湿式のいずれの方法を採用してもよい。すなわち、乾式で操作を行う際の雰囲気としては、空気、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、塩素、水蒸気あるいはこれらのガスの混合雰囲気を採用してもよい。また湿式で操作を行う際には、その溶媒として水、過酸化水素水、界面活性剤を添加した水溶液、原料の一部をイオンに解離させる反応性成分を有する水溶液、酸溶液、アルカリ性溶液、イオン活性水、プラズマ照射水、炭酸ガス飽和水等の各種ガス飽和水、非極性有機溶媒、極性有機溶媒などの液体を適量使用することが可能である。
【0014】
得られたガラス物品の外観品位を計測する品位計測工程については、光学的な測定装置や触針式装置を使用することによって、成形された各種形状のガラス物品の表面を走査、あるいはガラス物品の動作に対して相対的に動くことによって、その表面の凹凸を計測するものであればよい。このガラス物品表面の凹凸比を検出する部位については、最も成形性が問われる箇所であれば、どのような部位であってもよく、平面である必要もない。またこのガラス物品表面の凹凸比を検出する部位は、代表的な部位についての計測を行えばよく、全面の計測を行うものではない。またガラス物品全数の検出を行う必要はなく、任意の物品の抽出検出により物品全体の品位を代表できればよい。
【0015】
本発明者は、熔融困難ではあるが様々な高い性能を有する珪酸塩ガラス物品のガラス熔融技術に関連する研究を行う中で、種々のガラス原料の初期熔融段階の熔融性ついて注目し、ガラス原料構成中の難熔解性を有するフリークオーツの量を特定範囲の原料構成とすることによって、ガラスの高温熱化学反応時の初期熔融性を大幅に向上させることが可能となり、それによって速やかに高い均質度を有する熔融ガラス状態を生成することが容易となり、均質性の高いガラス物品が得られることを見いだし、ここに提示するものである。
【0016】
また本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、上述に加えて珪酸塩ガラス物品が、LiO2−Al23−SiO2系結晶を含有する結晶化ガラスよりなるものであるならば、従来よりも高品位な結晶化ガラスを問題となる様々な欠陥数を低減した状態で容易に製造することができるようになる。
【0017】
本発明におけるLiO2−Al23−SiO2系結晶とは、例えば主結晶としてβ−石英固溶体(Li2O・Al23・nSiO2[ただしn≧2])やβ−スポジュメン固溶体(Li2O・Al23・nSiO2[ただしn≧4])といったものを含有する結晶化ガラスのことであり、本発明ではこのような結晶が析出し、さらにガラス相も存在している珪酸塩ガラスを対象とするものである。
【0018】
また本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、上述に加えて調合工程が、混合原料内の個別原料中のフリークオーツ含有率を定量する手段によるものであるならば、ガラス熔融時に高温での熔解性挙動の変動を招く要因となりやすい混合原料中について、あるいは珪酸塩化合物中について、フリークオーツ量を特定範囲内に限定することが可能となるので、ガラス熔融炉内で混合原料が熱エネルギーを享受した後、安定したガラス融液の状態を迅速に実現しやすくなるので好ましい。
【0019】
ここで、調合工程が、混合原料内の個別原料中のフリークオーツ含有率を定量する手段によるものであるとは、前述したように混合原料中のそれぞれの原料成分の定量分析と、珪素を含む特定化合物原料、例えば長石についてのX線回折により決定されるフリークオーツ量とから混合原料中の珪素化合物の全量に対してのフリークオーツ量を一定範囲内となるように算術的に原料配分を構成することで実現することが可能となる。具体的には、調合過程中にフリークオーツ含有率の定量を行いつつ調合を行うものであっても、予めフリークオーツ含有率を特定量だけサンプリング、あるいは全量採取することによって計測しておき、その計測に基づいて調合を行うものであってもよい。
【0020】
また本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、上述に加えて調合工程が、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率を、20質量%から95質量%の範囲内に調整するものであるならば、ガラス熔融炉内で高い熔解性を実現できるガラス原料構成となるので、熔解温度を低く設定することも可能となり従来よりも省エネルギーを可能とする製造環境とすることができる。
【0021】
混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率を、20質量%から95質量%の範囲内に調整するとは、混合原料として使用するガラス原料種の内で、珪砂や長石等の珪素化合物中におけるフリークオーツの含有量の割合を珪素化合物の全質量を100として質量百分率表示すると20%から95%の範囲内となるように調整することを意味している。
【0022】
混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、95質量%を超えると難熔解性となりやすく、初期熔解時にいわゆる熔解凝集、すなわちセグリゲーションを招き易くなる場合もあり、難熔解性の異物がガラス物品中に混入して欠陥となり、ガラス物品にも悪影響が及ぶため好ましくない。一方混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、20質量%に満たない場合には、熔解性は向上するが、予めそのような構成となるように原料を調整するなどの経費が高くなるため、製造原価を上昇させることに繋がる。以上のような観点から混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率は、より好ましくは20質量%から90質量%の範囲とすることであり、さらに好ましくは25質量%から85質量%の範囲、一層好ましくは25質量%から80質量%の範囲とすることであって、最も好ましくは30質量%から75質量%の範囲とすることである。
【0023】
また本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、上述に加えて熔融工程が、1000℃以上に熔融ガラスを加熱するものであるならば、1000℃以上の高温状態に加熱することによってガラス原料を熔解する必要のある多くのガラス物品について、高い均質性を実現することが可能となる。
【0024】
熔融工程が、1000℃以上に熔融ガラスを加熱するものであるとは、混合原料が投入され、加熱される環境に供与される熱エネルギーが被熱物である混合原料の高温反応により生成した熔融ガラスの温度を1000℃以上に加熱することを表しており、このような熱エネルギーの供与は燃料の燃焼によるもの、発熱体等の輻射によるものあるいは伝熱によるものを合計した総熱エネルギーが被熱物である混合原料へ移動することで達成されるものである。
【0025】
本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とが混合された混合原料をガラス熔融炉内で加熱して熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的に珪酸塩ガラス物品を製造するために使用する珪酸塩ガラス熔融用混合原料であって、前記混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、20質量%から95質量%の範囲内にあり、且つ前記混合原料中の総フリークオーツ含有率が、6割以下であることを特徴とする。
【0026】
ここで、珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とが混合された混合原料をガラス熔融炉内で加熱して熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的に珪酸塩ガラス物品を製造するために使用する珪酸塩ガラス熔融用混合原料であって、前記混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、20質量%から95質量%の範囲内にあり、且つ前記混合原料中のフリークオーツ含有率が、6割以下であるとは、次のようなものである。すなわち予め所定量秤量された複数の珪酸塩ガラス用原料を混合し、その混合原料をガラス熔融炉内に投入し、連続的にガラス物品を製造するもので、混合原料中の珪素酸化物に占めるフリークオーツの含有比率を所定範囲内となるように調整し、混合原料中のフリークオーツに不可逆的な熱エネルギーを供与することにより均質な熔融ガラス状態を得、均質な熔融ガラス状態を維持しつつ個別ガラス物品容積を決定し、得られたガラス物品の外観品位を計測する手段を有する珪酸塩ガラスの製造方法に適用されるガラス熔融用混合原料であって、ガラス熔融用混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、質量表示の珪素化合物量を100%として20質量%から95質量%の範囲内にあり、しかも混合原料の全量の質量表示を100%として、フリークオーツ総量の含有割合が60質量%以下であることを意味している。
【0027】
上記の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、混合原料中の総フリークオーツ含有率が、6割以下であることによって、フリークオーツの熔融の初期段階において、フリークオーツ粒子同士が隣接する確率が低下し、フリークオーツ周囲を他の原料が囲む状態となり易く、フリークオーツと他原料との反応が促進される。その結果フリークオーツの熔融が効率的に進行し易くなるので好ましい。
【0028】
混合原料中のフリークオーツ含有率が、6割を超える場合には、フリークオーツ粒子同士の隣接界面における粒子間界面反応の進行がフリークオーツ熔融反応の律速となって、フリークオーツの熔解が駆動され、結果として熔け残りが生じる状態となって不均質な熔融状態となる。またこのような周囲熔融ガラスや他の混合原料構成粒子とフリークオーツとの界面反応が進行しにくくなる場合も生じ、その結果フリークオーツ粒子同士の隣接界面における粒子間界面反応の進行速度がフリークオーツ熔融反応において支配的なものとなる、すなわちフリークオーツ間の非常に遅い反応が律速となって、その結果熔融ガラス中に構造的に不均質な部分が局所的に残留し易くなることもあるので好ましくない。
【0029】
また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上述に加えカレットを除外した条件下での粒径加積曲線における有効粒径であるD50が、300μm以下であるならば、混合原料の界面反応が速やかに進行するので、良好な均質性をより短時間に実現できることとなる。
【0030】
粒径加積曲線における有効粒径であるD50が、300μm以下であるとは、2種類以上の原料が混合された状態で計測された粒子径についての粒径加積曲線における有効粒径であるD50に相当する粒度が300μm以下であることを意味している。
【0031】
粒径加積曲線における有効粒径であるD50が、300μmを超えると、界面反応に関わる界面の粒子1個当たりの粒子表面積が大きくなり過ぎるため、反応速度が抑制される結果となるので好ましくない。
【0032】
また、本発明では、粒径加積曲線における有効粒径であるD50を得るために行う粒度分布の計測については、どのような原理であっても良いが、それぞれの粒子を分散した状態で測定することができる方法であって、測定結果の再現性が5%以内に収まる方法であり、ハンドリングによる個人差が出にくいものであれば好適である。例えば、縮分操作することによって採取した試料によるレーザー回折計測装置による計測を採用するのが好ましい。
【0033】
また、カレットを除外した条件下での粒径加積曲線における有効粒径であるD50が重要なのは、カレットを含めた条件での測定では、ガラス熔融用混合原料の性能がカレットの添加量によって影響される場合もあり、またカレットだけを粗粒にする場合もあるため、ガラス熔融用混合原料の正確な評価に繋がらないため、カレットを省いた状態での評価が必要となるのである。
【0034】
また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上述に加えて酸化物換算の質量百分率表示でSiO2含有率が50%以上であるならば、多くの実用性のある化学的な耐久性を有するガラス物品の熔融の際に本発明の構成の原料を適用することができ、従来よりも均質度の向上したガラス物品を容易に製造することが可能となる。また本発明に係るLi20−Al23−SiO2系結晶化ガラスにおいては、SiO2は結晶を構成する成分でもある。
【0035】
ここで、酸化物換算の質量百分率表示でSiO2含有率が50%以上であるとは、珪酸塩ガラス熔融用混合原料を加熱することによって、高温熱化学反応させ、その際に炭酸ガスや酸素等を放出させて熔融塩状態とし、その後に急速に冷却することで得られるガラス物品の構成成分を酸化物換算の質量百分率表示で表す場合に、このガラス物品の全量に対する二酸化珪素の含有割合が5割以上となっていることを表している。
【0036】
ガラス物品中のSiO2含有率が酸化物換算の質量百分率表示で50%に満たない場合には、均質度の高いガラス物品であってもガラス表面の化学的な耐久性が低くなる場合が多く、やけ等の表面欠陥が生じやすくなるため好ましくない。
【0037】
また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上述に加えて少なくとも酸化物換算の質量百分率表示でAl23の含有率が1〜50質量%の範囲内であるガラス物品用のガラス熔融用混合原料であるならば、ガラスの初期熔解性を向上することができるので好ましい。
【0038】
珪酸塩ガラス組成中のAl23について、酸化物換算の質量百分率表示でその含有率が1%に満たない場合には、長石等の天然原料を併用することはないため、本発明を適用する必要性はない。またガラス組成中のAl23について、その含有率が50%を超えるとガラス熔融時に結晶が析出し易くなるなどの問題が生じる場合もあるため好ましくない。以上のような観点から、酸化物換算の質量百分率表示でAl23の含有率は、より好ましくは2〜40%の範囲とするのがよく、さらに好ましくは3〜35%の範囲とすることであり、一層好ましくは4〜30%の範囲とすることであって、最も好ましくは5〜25%の範囲とすることである。
【0039】
Li2O−Al23−SiO2系結晶を含有する結晶化ガラス組成中のAl23は、結晶を構成する成分である。Al23の含有率は、15%より小さくなると失透しやすくなり、化学的耐久性が低下するので好ましくない。30%を越えるとガラスの粘度が大きくなりすぎ、ガラス熔融が困難になるので好ましくない。もっとも好ましくは、19〜25%の範囲にすることである。
【0040】
また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上述に加えてNa、K又はLiの何れかのアルカリ金属元素を少なくとも1以上及びMg、Ca、Sr又はBaのいずれかのアルカリ土類金属元素を少なくとも1以上含有し、且つ酸化物換算の質量百分率値で、アルカリ土類金属元素の総和がアルカリ金属元素の総和より多いものであるならば、ガラス物品としての化学的な安定性に加えて熔融時の均質性を維持し易く、ガラス熔融時のアルカリ金属元素のガラス融液表面からの蒸発が抑制されるため高い均質性を有するガラスとすることが可能である。
【0041】
Na、K又はLiのいずれかのアルカリ金属元素を少なくとも1以上及びMg、Ca、Sr又はBaのいずれかのアルカリ土類金属元素の少なくとも1以上を含有し、且つ酸化物換算の質量百分率値で、アルカリ土類金属元素の総和がアルカリ金属元素の総和より多いものであるとは、次のようなものである。すなわち酸化物換算の質量百分率表示で表されるNa2O、K2O及びLi2Oのいずれかの1以上、及びMgO、CaO、SrO及びBaOのいずれかの1以上を含み、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量がNa2O、K2O及びLi2Oの合量より多い含有率となっていることを表している。
【0042】
また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上述に加えてLiO2−Al23−SiO2系結晶化ガラスを構成するLiを含有するものであれば、均一な結晶が生成し、結晶度についても均質性の高い状態とすることができる。
【0043】
またLiO2−Al23−SiO2系結晶を含有する結晶化ガラスの母材ガラスの熔融に用いられるガラス熔融用混合原料には、核形成剤としてTiまたはZrのいずれかの元素を含有する。これらの元素の含有量としてはTiO2とZrO2の合量として、0.3%より小さくなると結晶が均一に析出せず、熱膨張特性にバラツキが生じ易くなり、逆に5%より大きいと、原料中に含まれる微量の着色元素による不要な発色を強める場合がある。以上のような観点から好ましい範囲は、0.3%〜8%であり、さらに好ましい範囲は、0.3%から5%である。
【0044】
また、本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上記した元素に加えてP、Zn、Ca、Mg、K、Na、Li、Sb、Cl、S、Ga、Cs、Tl、Ti、Fe、Pb、Pt、Ba、As、V、Bi、F、Mn、La、Rh、Zr、Sn、N、Sr、Cu、Y、Ag、Ce、Mo及びCoといった元素を様々な化合物や塩として含有することができるものである。このような元素の含有形態としては、例えば、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭化物、酸化物、あるいは塩化物あるいはガラスカレットなどの形態を選択してよい。また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、上記したようにLi2O−Al23−SiO2系結晶を含有する結晶化ガラス溶熔融用混合原料である場合には、核形成剤としてのTi、Zrを添加することが好ましい。
【0045】
また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、2以上の異なる組成のカレットを所定量混合して使用してもよく、また所定の光学恒数を適正化するために1以上の重金属元素成分を予め混合した珪素化合物などを調整しておき、その珪素化合物を使用して異なる原料構成物を意図的に加え合わせることによって、最終的な原料混合物とするような方法を採用してもよい。また本発明のガラス熔融用混合原料は、予め粗熔融した高温化学反応の最中の熔融塩を冷却したものを原料としてもよく、原料に予め微量添加物を添加して酸化還元反応をコントロールし、ガラスの可視、紫外、あるいは赤外における特定波長の光線の吸収を制御してもよい。
【0046】
本発明の電子材料用ガラス物品は、上記の珪酸塩ガラス物品の製造方法によって、板形状物又は管形状物に成形されたものであることを特徴とする。
【0047】
ここで、上記の珪酸塩ガラス物品の製造方法によって、板形状物又は管形状物に成形されたものであるとは、予め複数の珪酸塩ガラス用原料を混合し、その混合原料をガラス熔融炉内に投入し、連続的にガラス物品を製造するものであって、混合原料中の珪素酸化物に占めるフリークオーツの含有比率を所定範囲内に調整する手段と、混合原料中のフリークオーツに不可逆的な熱エネルギーを供与することにより均質なガラス状態を得る手段と、均質なガラス状態を維持しつつ個別ガラス物品容積を決定する手段と、得られたガラス物品表面の凹凸比を検出する手段を有する珪酸塩ガラスの製造方法によって、均質なガラス状態を維持しつつ個別ガラス物品容積を決定する手段として板形状となるような成形方法か、あるいは管形状となるような成形方法の内のいずれかの成形方法によって製造された電子材料用途の部材として利用されるガラス物品であることを意味している。
【0048】
本発明の電子材料用ガラス物品は、上述に加えて電子材料が、フラットディスプレイ材料、画像撮影材料、光電子部材用材料の何れかであるならば、高品質の板ガラスを提供することができるので、各種用途において求められる光学的な性能を十分に発揮することができる。
【0049】
電子材料が、フラットディスプレイ材料、画像撮影材料、光電子部材用材料の何れかであるとは、PDP(Plasma Display Panel:プラズマディスプレイ)装置搭載用途、VFD(Vacuum Fluoresscent Display:蛍光表示管ディスプレイ)装置搭載用途、FED(Field Emission Display:電界放射ディスプレイ)装置搭載用途、ELD(Elctro Luminescent Display:エレクトロルミネセントディスプレイ)装置搭載用途、LED Display(Light Emitting Display:発光ダイオードディスプレイ)装置搭載用途、ECD(Elctro Chromic Display:エレクトロクロミックディスプレイ)装置搭載用途、EPD(Electrophoretic Display:電気泳動ディスプレイ)装置搭載用途、SED(Surface−Conduction electron−emitter Display)表示装置用途等のフラットディスプレイ用途、あるいはCCD搭載用窓材用途、CMOS搭載用窓材用途等の画像撮影用途、あるいは受光素子窓材用途、発光素子窓材用途、あるいは液晶バックライト用途等の光電子部品用途の何れかの用途に使用されるものであることを表している。
【発明の効果】
【0050】
(1)以上のように、本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とを混合して混合原料にする調合とし、その混合原料をガラス熔融炉内に投入して加熱により熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的にガラス物品を製造する珪酸塩ガラス物品の製造方法であって、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツ(Free Quartz)の含有比率を所定範囲内に調整する調合工程と、混合原料中のフリークオーツを加熱することにより均質な熔融ガラス状態を得る熔融工程と、均質な熔融ガラス状態を維持しつつ個別のガラス物品の体積を決定する分配工程と、得られたガラス物品の外観品位を計測する品位計測工程とを有するものであるため、高い均質度を有する熔融ガラスを得ることを容易にし、安定したガラス品位を実現することによって製造されるガラス物品の均質度を向上させること可能にするものである。
【0051】
(2)また本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、珪酸塩ガラス物品が、LiO2−Al23−SiO2系結晶を含有する結晶化ガラスよりなるものであるならば、製造ロットによって結晶度の品位のバラツキの生じることのない安定した結晶粒よりなる結晶化ガラスを得ることができ、ガラスの組成設計に従う性能を発揮するものとなる。
【0052】
(3)また本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、調合工程が、混合原料内の個別原料中のフリークオーツ含有率を定量する手段によるものであるならば、ガラス熔融炉内で混合原料が熱エネルギーを享受した後、安定した状態のガラス融液の状態を迅速に実現しやすくなるので、従前よりも熱エネルギーの大きさが小さい場合であっても、ガラス物品の成形時に均質な状態の熔融ガラスを成形することができる。
【0053】
(4)さらに本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、調合工程は、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率を、20質量%から95質量%の範囲内に調整するものであるならば、熔解温度を低く設定することも可能となり従来よりも省エネルギーを可能とする製造環境とすることができるので、対象となるガラス物品の製造費用を削減することが可能となる。
【0054】
(5)また本発明の珪酸塩ガラスの製造方法は、熔融工程が、1000℃以上に熔融ガラスを加熱するものであるならば、高い性能を有する難熔融性ガラスの製造において、本発明を適用することが可能となり、優れた品位のガラス物品を得ることを可能とするものである。
【0055】
(6)本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とが混合された混合原料をガラス熔融炉内で加熱して熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的に珪酸塩ガラス物品を製造するために使用する珪酸塩ガラス熔融用混合原料であって、前記混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、20質量%から95質量%の範囲内にあり、且つ前記混合原料中のフリークオーツ含有率が、6割以下であるため、フリークオーツ粒子同士の隣接界面に基づく粒子間界面反応の進行によってフリークオーツの熔解が駆動される状態とはなりにくい状況となり、周囲熔融ガラスや他の混合原料構成粒子とフリークオーツとの界面反応に伴ってフリークオーツの熔融が効率的に進行し易くなるので反応速度が遅くなるフリークオーツが少なくなり、ノット等として不均質部分が熔融ガラス中に残留することがなくなり、その結果均質なガラス熔融状態が得られることになる。
【0056】
(7)また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、カレットを除外した条件下での粒径加積曲線における有効粒径であるD50が、300μm以下であるならば、混合原料の界面反応が速やかに進行するので、均質性がより高速に実現できることとなり、高度な熔融設備を使用せずとも高い均質性を有するガラス物品を得ることができる。
【0057】
(8)さらに本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、酸化物換算の質量百分率表示でSiO2含有率が50%以上であるならば、従来よりも均質度の向上したガラス物品を容易に製造することが可能となるものであり、性能は高くとも熔融に労力を要していた高機能ガラス材質についても本発明の混合原料を適用することが可能となる。
【0058】
(9)また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、Na、K又はLiの何れかのアルカリ金属元素を少なくとも1以上及びMg、Ca、Sr又はBaのいずれかのアルカリ土類金属元素を少なくとも1以上含有し、且つ酸化物換算の質量百分率値で、アルカリ土類金属元素の総和がアルカリ金属元素の総和より多いものであるならば、ガラス熔融時のアルカリ金属元素のガラス融液表面からの蒸発が抑制されるため高い均質性を有するガラスとすることが可能であるので、初期熔融時ばかりでなく、成形直前の熔融ガラスについても高い均質性を確保することができるものとなる。
【0059】
(10)また本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、LiO2−Al23−SiO2系結晶化ガラスを構成するLiを含有するものであれば、所望量の均一な結晶が均質に生成し易いものとなり、結晶化過程で生じるLiO2−Al23−SiO2系結晶の結晶度についても均質性の高い状態とすることができる。
【0060】
(11)本発明の電子材料用ガラス物品は、上記の珪酸塩ガラス物品の製造方法によって、板形状物あるいは管形状物として成形されたものため、様々な光学的性能や電気的な性能、さらに機械的な性能を要求される場合にも、高い均質性を実現したガラス物品であるために、安定した性能を有し、設計に従い優れた機能を充分に発揮することができる。
【0061】
(12)本発明の電子材料用ガラス物品は、電子材料が、フラットディスプレイ材料、画像撮影材料、光電子部材用材料の何れかであるならば、ガラス物品の均質性に基づく安定した透過率、屈折率等の光学的な性能を有するガラス物品であり、信頼性の高い部材として要求される仕様を満足するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下に本発明の珪酸塩ガラスの製造方法と珪酸塩ガラス熔融用の混合原料、そして珪酸塩ガラスの製造方法によって得られる電子材料用ガラス物品について、実施例に基づいて説明する。表1と表2は、いずれも本発明の実施例を説明するためのもので、表1には、実施例に係る各ガラス原料について、その含有成分を酸化物換算の質量百分率表示で表した。そして表2には、本発明の実施例、及び比較例について、ガラス組成についての酸化物換算の質量百分率表示値、及びガラス100gを生成するに必要となる各ガラス原料の質量、フリークオーツに関する計測結果を示している。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【実施例1】
【0065】
本発明の珪酸塩ガラス熔融用混合原料として、電子部品用途で使用される光半導体素子のカバーガラス等に利用されるガラス材用の混合原料について説明する。このガラス材は、屈折率や透過率等の光学的な性能を重視されるガラス物品であるため、そのガラス物品としての均質性の要求水準は極めて高いものとなっている。このようなガラス材質は、従来は一度ガラスを熔融してカレットを作製し、そのカレットを使用して再熔融する、すなわち冷却を挟んで2回熔融することによって光学的な均質度を向上させて、均質なガラス材とすることが行われてきたが、経費の削減と製造効率の向上のため、本発明の製造方法を適用することが試みられた。
【0066】
このガラス組成は、酸化物換算の質量百分率表示でSiO2を50%以上、Al23を1〜50%、Na2O、K2O及びLi2Oのいずれかを1以上、及びMgO、CaO、SrO及びBaOのいずれかを1以上含み、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量がNa2O、K2O及びLi2Oの合量より多いものであり、具体的に例示すると表2の試料No.1の組成を有する材質である。このガラス組成とするための原料を選定する段階から本発明の適用を考慮し、原料の一部に化成品に加えて、珪砂や風化花崗岩起源の長石原料であるソーダ長石を使用する。その際には、予め風化花崗岩起源の長石原料であるソーダ長石や珪砂中のフリークオーツの含有比率を蛍光X線分析装置を使用することによって計量し、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率を所望の割合となるように、使用原料、すなわち珪砂と風化花崗岩起源の長石原料のソーダ長石の配合比を調整した。なお、使用した各個別のガラス原料の構成酸化物得率および測定したフリークオーツ含有率は上述したように表1に示す。表2の試料No.1に示した組成のガラス100gを得るために用いたガラス熔融用混合原料を構成する各個別のガラス原料の調合量も表2に示す。得られるガラス熔融用混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率は、質量百分率表示で41.3%となり、30から75%の範囲内となった。また得られた混合原料中のフリークオーツの含有率は、質量百分率表示で25.3%となり6割以下となった。次いでこれらの原料とホウ酸や炭酸ソーダ等の化成原料とを転動式のガラス原料混合機を使用して6時間混合した後に、得られた混合原料の粒度を縮分サンプリングしてレーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD−2000J)を使用して計測したところ、粒径加積曲線における有効粒径である平均粒径のD50は262μmであった。
【0067】
以上のようにして調合工程によりガラス熔融用混合原料の調整が完了し、均質な状態に混合されたガラス熔融用混合原料は、原料投入機を使用して連続的にガラス熔融炉内へと投入されガス燃焼によって、1000℃以上となるように炉内にて加熱されることになる。こうして加熱されたガラス熔融用混合原料は、フリークオーツ周囲の他の原料あるいは周囲のガラス融液と高温状態での共融反応を起こし、熔けた状態となっていく。さらにこの混合原料は、本発明の要件を満足するものであるため、高温状態での反応が迅速で、フリークオーツに起因する未融解部分が速やかに消失し、均質な熔融状態となっていく。このような速やかな高温化学反応を経て均質な熔融状態となった後に、熔融ガラスはオーバーフローダウンドロー成形装置に流入し、薄板形状に成形されていき、成形時にガラス板の表面の凹凸状態やその曲がりについては、レーザー計測装置で計測が行われる。このようにして得られたガラスは、その後、レーザー等によって切断されて、均質度の高い光半導体用の0.5mm厚の薄板ガラスとなる。
【0068】
こうして得られた板ガラスの透過率や屈折率を評価し、さらに得られたガラスの均質度についても、本法で製造された夫々の板ガラス間での差異を調査することによって、高い均質度を実現したものとなっていることが判明する。透過率や屈折率の計測は、例えば分光高度計やアッベ屈折率計等を使用でき、均質度については、偏光顕微鏡、表面応力計等の光学機器や、クリスチャンセンセル法等の方法を採用することで評価した結果によるものである。
【0069】
次いで比較例として、試料No.1と同じガラス組成を得るために、試料No.1とは使用する個別のガラス原料を変更し、ソーダ長石を全く使用せずに、珪砂及びアルミナ原料を用いて、生産を行った場合を説明する。表1中の個別原料を用い、表2の試料No.101に比較例として記載した原料構成でガラス熔融用混合原料を構成する。得られるガラス熔融用混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率は、質量百分率表示で99.8%となり、得られた混合原料中のフリークオーツの含有率は、質量百分率表示で46.2%となり実施例よりも20%以上多くなる。次いで実施例の試料No.1と同様の条件で、これらの原料とホウ酸や炭酸ソーダ等の化成原料とをガラス原料混合機を使用して6時間混合した。以上のようにして調整された珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、試料No.1と同様に原料投入機を使用してガラス熔融炉内へと投入しガス燃焼によって、1000℃以上となるように炉内にて加熱されることになる。こうして加熱された混合原料は、フリークオーツ周囲の他の原料あるいは周囲のガラス融液と高温状態での共融反応を起こし、熔けた状態となっていく。さらにこの混合原料は、実施例の試料No.1に比べ、フリークオーツが多いため、高温状態での反応が遅く、フリークオーツに起因する未融解部分の消失は遅くなり、均質な熔融状態となりにくくなっている。実施例1同様にして得られた板ガラスは均質度が劣るため、板ガラス内部の不均質な部分に影響を受けてガラス表面の平滑度の評価において劣るものとなり、良品率も5%低くなる。
【実施例2】
【0070】
次いで本発明の他の実施例として、大型フラットパネル用途のディスプレイに適した板ガラス用のガラス材質について、本発明の珪酸塩ガラスの製造方法を適用する場合について説明を行う。
【0071】
このガラスは、その材質が酸化物換算の質量百分率表示でSiO2を50%以上、Al23を1〜50%、Na2O、K2O及びLi2Oのいずれかの1以上、及びMgO、CaO、SrO及びBaOのいずれかの1以上を含み、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量がNa2O、K2O及びLi2Oの合量のより多い組成であって、具体的には表2に示される試料No.2の実施例のガラス組成で表される材質のガラスである。
【0072】
このガラスの原料については、原料の一部に化成品に加えて、珪砂や風化花崗岩起源の長石原料であるカリ長石を使用する。そして前述したと同様に、予め風化花崗岩起源の長石原料であるカリ長石や珪砂中のフリークオーツの含有比率を蛍光X線分析装置を使用することによって計量し、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が所望の範囲内となるように、使用原料、すなわち珪砂と風化花崗岩起源の長石原料のカリ長石の配合比を適正な状態となるよう調整した。ガラス熔融用混合原料を構成するのに使用した各個別のガラス原料の構成酸化物得率および測定したフリークオーツ含有率を、実施例1と同様に表1に示す。表2の試料No.2に示した組成のガラス100gを得るために用いたガラス熔融用混合原料を構成する各個別のガラス原料の構成および調合量を表2に示す。得られたガラス熔融用混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、質量百分率表示で32.3%となり、35から75%の範囲の中になった。また得られた混合原料中のフリークオーツの含有率は、質量百分率表示で21.9%となり6割以下となった。次いでこれらの原料と炭酸ソーダ等の化成原料とを転動式のガラス原料混合機を使用して6時間混合した後に、得られた珪酸塩ガラス熔融用混合原料の粒度をレーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD−2000J)を使用して計測したところ、粒径加積曲線における有効粒径である平均粒径のD50は235μmである。
【0073】
こうして調整を終えた、混合済みのガラス熔融用混合原料は、スクリューチャージャーを使用してガラス熔融炉内へと投入され、バッチ山を形成することになる。この後ガス燃焼等を使用することで、投入された原料は、1000℃以上となるように加熱される。そして加熱された混合原料は、フリークオーツ周囲の他の原料あるいは周囲のガラス融液と高温状態で反応し、ガラス融液となり、フリークオーツに起因する未融解部分が速やかに消失してゆき、さらに均質な状態へとなっていく。このように均質な状態となった後、熔融ガラスはフロート成形装置へと流入し、板ガラスとして成形されることになる。またこの板ガラスについても、ガラス板の凹凸状態やその曲がりおよび厚みなどの寸法については、レーザー計測装置で順次計測が行われる。このようにして得られたガラスは、その後、切断装置を使用して所定寸法に切断されて、均質度の高いディスプレイ用の薄板ガラスの寸法となる。
【0074】
得られたディスプレイ用板ガラスの透過率や屈折率を評価し、さらに得られたガラスの均質度についても、本発明の製造方法で製造された夫々の板ガラス間での差異を調査することによって、高い均質度を実現したものとなっていることが判明する。例えば屈折率のばらつきが製造ロット間で、及び1つの製品中で非常に小さいものとなり、そのため光学的な性能のばらつきが抑制されて安定した光学性能を発揮するものとなっている。
【0075】
さらに実施例の試料No2の比較として、試料No.2と同じガラス組成を得るために、試料No.2とは個別のガラス原料を変更し、カリ長石を全く使用せず、珪素及びアルミナ分を全て、珪砂及びアルミナ原料を用いて、生産を行った場合について説明する。ここでも表1中の個別のガラス原料を用い、表2の試料No.102に比較例として記載した原料構成で混合のガラス原料を構成する。得られるガラス熔融用混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率は、質量百分率表示で99.8%となる。得られた混合原料中のフリークオーツの含有率は、質量百分率表示で50%となり実施例よりも25%以上多くなる。次いでこれらの原料と炭酸ソーダ等の化成原料とをガラス原料混合機を使用して6時間混合し、混合原料を得る。
【0076】
以上のようにして珪酸塩ガラス熔融用混合原料の調整を終え、実施例2と同様にスクリューチャージャーを使用してガラス熔融炉内へと投入しガス燃焼によって、1000℃以上となるように炉内にて加熱されることになる。こうして加熱されたガラス熔融用混合原料は、フリークオーツ周囲の他の原料あるいは周囲のガラス融液と高温状態での共融反応を起こし、熔けた状態となっていく。しかしながらこのガラス熔融用混合原料では、実施例に比べ、フリークオーツの比率が多いため、高温状態での反応速度がより遅く、フリークオーツに起因する未融解部分の消失は遅くなり、均質なガラス熔融状態となりにくくなっている。そのためこのようにして得られたディスプレイ用板ガラスの透過率や屈折率を評価し、さらにガラスの均質度についても計測して実施例で製造された板ガラスと比較すると、特に均質度について実施例よりも劣っていることが判明する。具体的には。微細な脈理が板ガラス端面近傍に認められるが、その脈理が実施例よりも大きく、しかも明瞭になっていることが判明した。
【実施例3】
【0077】
さらに、本発明の珪酸塩ガラス物品の一態様であるLiO2−Al23−SiO2系結晶を含有する結晶化ガラスの実施例として、電子部品光学レンズ用途のマイクロレンズアレーに適した結晶化板ガラス用のガラス材質について、本発明の珪酸塩ガラス物品の製造方法を適用する場合について説明を行う。
【0078】
この結晶化ガラスは、その材質が酸化物換算の質量百分率表示でSiO2を50%以上、Al23を15〜30%、Li2Oを1以上、及びMgO、CaO、SrO、BaOのいずれかの1以上を含み、MgO、CaO、BaOの合量がNa2O、K2O及びLi2Oの合量より多い組成であって、具体的には表2に示される試料No.3の実施例のガラス組成で表される材質の結晶化ガラスである。
【0079】
このガラスの原料については、原料の一部に化成品に加えて、珪砂や風化花崗岩起源の長石原料であるカリ長石および、巨晶花崗岩起源のリチウム輝石原料であるスポジュ−メンや、堆積起源ジルコンを使用する。そして前述したと同様に、予め風化花崗岩起源の長石原料であるカリ長石や珪砂中のフリークオーツの含有比率を蛍光X線分析装置を使用することによって計量し、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が所望の範囲内となるように、使用原料、すなわち珪砂と風化花崗岩起源の長石原料のカリ長石、及びスポジュ−メンの配合比を適正な状態となるよう調整した。珪酸塩ガラス熔融用混合原料を構成するのに使用した各個別のガラス原料の構成酸化物得率および測定したフリークオーツ含有率は、実施例1、2と同様に表1に示す。表2の試料No.3に示した組成のガラス100gを得るために用いたガラス熔融用混合原料を構成する各個別のガラス原料の構成および調合量を表2に示す。得られた珪酸塩ガラス熔融用混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、質量百分率表示で30.3%となり、30から75%の範囲の中になった。また得られた混合原料中のフリークオーツの含有率は、質量百分率表示で26.0%となり6割以下となった。次いでこれらの原料と硝酸ソーダ等の化成原料とを転動式のガラス原料混合機を使用して6時間混合した後に、得られたガラス熔融用混合原料の粒度をレーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD−2000J)を使用して計測したところ、粒径加積曲線における有効粒径である平均粒径のD50は232μmである。
【0080】
こうして調整を終えた、混合済みの珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、スクリューチャージャーを使用してガラス熔融炉内へと投入され、バッチ山を形成することになる。この後ガス燃焼等を使用することで、投入された原料は、1000℃以上となるように加熱される。そして加熱された混合原料は、フリークオーツ周囲の他の原料あるいは周囲のガラス融液と高温状態で反応し、ガラス融液となり、フリークオーツに起因する未融解部分が速やかに消失してゆき、さらに均質な状態へとなっていく。このように均質な状態となった後、熔融ガラスはロール成形装置へと流入し、板ガラスとして成形されることになる。またこの板ガラスについても、ガラス板の凹凸状態やその曲がりおよび厚みなどの寸法については、レーザー計測装置で順次計測が行われる。このようにして得られたガラスは、その後、切断装置を使用して所定寸法に切断されて、均質度の高いマイクロレンズアレー用の板ガラスの寸法となる。
【0081】
得られたディスプレイ用板ガラスの透過率や屈折率を評価し、さらに得られたガラスの均質度についても、本発明の製造法で製造された夫々の板ガラス間での差異を調査することによって、高い均質度を実現したものとなっていることが判明する。例えば屈折率のばらつきが製造ロット間で、及び1つの製品中で非常に小さいものとなり、そのため光学的な性能のばらつきが抑制されて安定した光学性能を発揮するものとなっている。
【0082】
さらに実施例の試料No3の比較例として、試料No.3と同じガラス組成を得るために、試料No.3とは使用する個別のガラス原料を変更し、カリ長石、スポジュ−メン、ジルコンを全く使用せず、珪素及びアルミナ分を全て、珪砂及びアルミナ原料を用いて、生産を行った場合について説明する。ここでも表1中の個別のガラス原料を用い、表2の試料No.103に比較例として記載した原料構成で混合のガラス原料を構成する。得られるガラス熔融用混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率は、質量百分率表示で99.8%となる。得られた混合原料中のフリークオーツの含有率は、質量百分率表示で60.2%となり実施例よりも30%以上多くなる。次いでこれらの原料と硝酸ソーダ等の化成原料とをガラス原料混合機を使用して6時間混合し、混合原料を得る。
【0083】
以上のようにして珪酸塩ガラス熔融用混合原料の調整を終え、実施例2と同様にスクリューチャージャーを使用してガラス熔融炉内へと投入しガス燃焼によって、1000℃以上となるように炉内にて加熱されることになる。こうして加熱されたガラス熔融用混合原料は、フリークオーツ周囲の他の原料あるいは周囲のガラス融液と高温状態での共融反応を起こし、熔けた状態となっていく。しかしながらこのガラス熔融用混合原料では、実施例に比べ、フリークオーツの比率が多いため、高温状態での反応速度がより遅く、フリークオーツに起因する未融解部分の消失は遅くなり、均質なガラス熔融状態となりにくくなっている。そのためこのようにして得られたマイクロレンズアレー用板ガラスの透過率や屈折率を評価し、さらにガラスの均質度についても計測して実施例で製造された板ガラスと比較すると、特に均質度について実施例よりも劣っていることが判明する。具体的には。珪酸塩ガラス用ガラス原料の場合の表2の比較例102同様、微細な脈理が板ガラス端面近傍に認められるが、その脈理が実施例よりも大きく、しかも明瞭になっていることが判明した。また熔融においてガラスの均質化が遅れたために原料熔解時に発生した気泡がこの脈理に沿って残留し、脈理と泡により、マイクロレンズアレー用板ガラス部材の歩留まりは、実施例の試料No3と比較しておおよそ10%低くなる
以上のように、本発明の珪酸塩ガラス物品の製造方法によれば、高い均質度を有する熔融ガラスを得ることが可能になり、この製造方法で使用される珪酸塩ガラス熔融用混合原料は、安定した熔融ガラス品位を速やかに実現することによって製造されるガラス物品の均質度を向上させることのできるガラス熔融用混合原料であることが明瞭となった。また本発明の本発明の製造方法により得られる電子部品用途のガラス物品は、高い均質度を有することも明らかになった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とを秤量、混合して混合原料とし、その混合原料をガラス熔融炉内に投入して加熱により熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的にガラス物品を製造する珪酸塩ガラス物品の製造方法であって、
混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツ(Free Quartz)の含有比率を所定範囲内に調整する調合工程と、混合原料中のフリークオーツを加熱することにより均質な熔融ガラス状態を得る熔融工程と、均質な熔融ガラス状態を維持しつつ個別のガラス物品の体積を決定する成形工程と、得られたガラス物品の外観品位を計測する品位計測工程とを有することを特徴とする珪酸塩ガラス物品の製造方法。
【請求項2】
珪酸塩ガラス物品が、LiO2−Al23−SiO2系結晶を含有する結晶化ガラスよりなるものであることを特徴とする請求項1に記載の珪酸塩ガラス物品の製造方法。
【請求項3】
調合工程が、混合原料中の珪素を含有する原料中のフリークオーツ含有率を定量する手段によるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の珪酸塩ガラス物品の製造方法。
【請求項4】
調合工程は、混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率を、20質量%から95質量%の範囲内に調整するものであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の珪酸塩ガラス物品の製造方法。
【請求項5】
熔融工程が、1000℃以上に熔融ガラスを加熱するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の珪酸塩ガラス物品の製造方法。
【請求項6】
珪素化合物を含むガラス用原料と他のガラス用原料とが混合された混合原料をガラス熔融炉内で加熱して熔融ガラスとし、その熔融ガラスから連続的に珪酸塩ガラス物品を製造するために使用する珪酸塩ガラス熔融用混合原料であって、
前記混合原料中の珪素化合物に占めるフリークオーツの含有比率が、20質量%から95質量%の範囲内にあり、且つ前記混合原料中の総フリークオーツ含有率が、6割以下であることを特徴とする珪酸塩ガラス熔融用混合原料。
【請求項7】
カレットを除外した条件下での粒径加積曲線における有効粒径であるD50が、300μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の珪酸塩ガラス熔融用混合原料。
【請求項8】
酸化物換算の質量百分率表示でSiO2含有率が50%以上であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の珪酸塩ガラス熔融用混合原料。
【請求項9】
Na、K又はLiの何れかのアルカリ金属元素を少なくとも1以上及びMg、Ca、Sr又はBaのいずれかのアルカリ土類金属元素を少なくとも1以上含有し、且つ酸化物換算の質量百分率値で、アルカリ土類金属元素の総和がアルカリ金属元素の総和より多いものであることを特徴とする請求項6から請求項8の何れかに記載の珪酸塩ガラス熔融用混合原料。
【請求項10】
LiO2−Al23−SiO2系結晶化ガラスを構成するLiを含有することを特徴とする請求項9に記載の珪酸塩ガラス熔融用混合原料。
【請求項11】
請求項1から請求項5の何れかに記載の珪酸塩ガラス物品の製造方法によって、板形状物又は管形状物として成形されたものであることを特徴とする電子材料用ガラス物品。
【請求項12】
電子材料が、フラットディスプレイ材料、画像撮影材料、光電子部材用材料の何れかであることを特徴とする請求項11に記載の電子材料用ガラス物品。

【公開番号】特開2009−40675(P2009−40675A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118434(P2008−118434)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】