説明

現像剤供給装置

【課題】 現像剤の良好な回収性と、回収された現像剤の良好な再利用性とを、ともに達成することができる構成を提供する。
【解決手段】 現像剤回収部材は、現像剤担持面の移動方向における現像剤供給位置よりも下流側の現像剤回収位置にて現像剤担持面から現像剤を回収するように設けられている。本発明の特徴は、現像剤回収部材が、外周に多数の繊維状部材が植毛された回転体であるブラシローラであって、現像剤回収位置にて繊維状部材が現像剤担持面と接触するように配置されたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、供給対象としての感光体と対向配置された現像剤担持体(現像スリーブ、現像ローラ)と、この現像剤担持体上から現像剤(トナー)を回収するために当該現像剤担持体と当接する回収ローラと、を備えたものが知られている(例えば、特開平9−54496号公報、特開2004−280068号公報、等参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来の装置においては、現像剤の回収の際に、当該現像剤に大きな機械的ストレスが加えられる。このため、かかる装置においては、回収された現像剤のうちの、再利用可能なものの割合が低下する。一方、かかる装置において、回収される現像剤に対する機械的ストレスを軽減するために、現像剤担持体と回収ローラとを非接触とすると、現像剤の回収が不充分となる。特に、静電的な非接触式回収を行おうとした場合、逆極性に帯電した現像剤(逆帯電トナー)の回収が困難となる。
【0004】
本発明は、かかる課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、現像剤の良好な回収性と、回収された現像剤の良好な再利用性とを、ともに達成することができる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の現像剤供給装置は、粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成されている。この現像剤供給装置は、現像剤担持部材と、電界搬送部と、現像剤回収部材と、を備えている。
【0006】
前記現像剤担持部材は、円柱面状の周面である現像剤担持面が当該現像剤担持面の軸線(あるいは母線:ともに典型的には当該現像剤供給装置の幅方向すなわち主走査方向と平行)と直交する方向に移動するように設けられた回転体である。この現像剤担持部材は、前記現像剤担持面上に担持した前記現像剤を現像剤供給位置にて前記供給対象に供給するために、当該供給対象と前記現像剤供給位置にて対向配置されている。前記電界搬送部は、前記現像剤担持面の移動方向における前記現像剤供給位置よりも上流側の現像剤担持位置にて前記現像剤を前記現像剤担持面上に担持させるために、前記現像剤を進行波状の電界により前記現像剤担持位置に向けて搬送するように設けられている。
【0007】
前記現像剤回収部材は、前記現像剤担持面の前記移動方向における前記現像剤供給位置よりも下流側の現像剤回収位置にて前記現像剤担持面から前記現像剤を回収するように設けられている。本発明の特徴は、前記現像剤回収部材が、外周に多数の繊維状部材が植毛された回転体であるブラシローラであって、前記現像剤回収位置にて前記繊維状部材が前記現像剤担持面と接触するように配置されたことにある。
【0008】
前記現像剤回収部材は、前記現像剤回収位置にて前記繊維状部材が当該現像剤回収位置における前記現像剤担持面の前記移動方向とは反対方向に移動するように設けられていてもよい。
【0009】
前記現像剤回収部材は、前記現像剤回収位置にて前記繊維状部材が当該現像剤回収位置における前記現像剤担持面の前記移動方向に沿って立設するように構成されていてもよい。
【0010】
本発明の現像剤供給装置は、前記現像剤回収部材によって前記現像剤担持面上から回収された前記現像剤を当該現像剤回収部材から除去する、除去部をさらに備えていてもよい。この場合、前記除去部は、除去部材を備えていてもよい。この除去部材は、前記現像剤回収位置から離隔した除去位置にて、前記現像剤回収部材の回転により移動する前記繊維状部材と当接することで、当該繊維状部材によって保持された前記現像剤を掻き落とすように設けられた部材である。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を備えた本発明の現像剤供給装置においては、前記繊維状部材が前記現像剤担持面と接触した状態で前記現像剤回収部材(ブラシローラ)が回転することで、前記現像剤に対する機械的ストレスが効果的に低減されつつ、当該現像剤が(その帯電状態にかかわらず)前記現像剤担持面から良好に回収される。したがって、本発明によれば、前記現像剤の良好な回収性と、回収された前記現像剤の良好な再利用性とが、ともに良好に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像形成装置であるレーザープリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示されているトナー供給装置を拡大した側断面図である。
【図3】図2に示されている電界搬送基板を拡大した側断面図である。
【図4】図3に示されている各電源回路の出力波形の一例を示すグラフである。
【図5】図2に示されている本実施形態のトナー回収部によるトナーの回収効果の実験結果を示すグラフである。
【図6】図2に示されている本実施形態のトナー回収部によるトナーの回収効果の実験結果を示すグラフである。
【図7】図2に示されているトナー供給装置における、トナー回収位置の周辺の構成の一具体例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態に対して施され得る各種の変更(変形例:modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0014】
<レーザープリンタの構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像形成装置であるレーザープリンタ1の概略構成を示す側面図である。図1を参照すると、レーザープリンタ1は、用紙搬送機構2と、感光体ドラム3と、帯電器4と、スキャナーユニット5と、トナー供給装置6と、を備えている。レーザープリンタ1内に備えられた、図示しない給紙トレイには、シート状の用紙Pが積み重ねられた状態で収容されている。用紙搬送機構2は、用紙Pを所定の用紙搬送経路PPに沿って搬送するように構成されている。
【0015】
本発明の供給対象としての感光体ドラム3の周面には、静電潜像担持面LSが形成されている。この静電潜像担持面LSは、主走査方向(図中z軸方向:「用紙幅方向」あるいはレーザープリンタ1の「幅方向」とも称され得る。)と平行な円柱面であって、電位分布による静電潜像が形成されるとともに、当該静電潜像に対応した位置にて本発明の現像剤としてのトナーT(図2参照)を担持するようになっている。感光体ドラム3は、主走査方向と平行な軸を中心として図中矢印で示されている方向(反時計回り)に回転駆動されることで、主走査方向と直交する副走査方向(典型的には図中x軸方向)に沿って静電潜像担持面LSが移動するように構成されている。
【0016】
帯電器4は、静電潜像担持面LSと対向するように配置されている。この帯電器4は、コロトロン型あるいはスコロトロン型の帯電器であって、静電潜像担持面LSを一様に正帯電させるように構成されている。
【0017】
スキャナーユニット5は、画像データに基づいて変調された(画素の有無によって発光のON/OFFが制御された)所定の波長帯域のレーザービームLBを生成して静電潜像担持面LSにおけるスキャン位置SPにて結像させるとともに、その結像位置を主走査方向に沿って等速度にて移動させる(走査する)ように構成されている。ここで、スキャン位置SPは、感光体ドラム3の回転による静電潜像担持面LSの移動方向における、帯電器4よりも下流側且つトナー供給装置6よりも上流側の位置に設けられている。
【0018】
本発明の現像剤供給装置としてのトナー供給装置6は、静電潜像担持面LSと対向するように、感光体ドラム3の下方に配置されている。トナー供給装置6は、本発明の現像剤供給位置としての現像位置DP(トナー供給装置6が静電潜像担持面LSと最近接しつつ対向する位置)にて、正極性に帯電したトナーT(図2参照)を感光体ドラム3(静電潜像担持面LS)に供給するように構成されている。ここで、本実施形態においては、トナーTは、正帯電性、非磁性一成分、黒色の粉末状乾式現像剤である。このトナー供給装置6の詳細な構成については後述する。
【0019】
次に、レーザープリンタ1の各部の具体的な構成について、より詳細に説明する。
【0020】
用紙搬送機構2は、一対のレジストローラ21と、転写ローラ22と、を備えている。レジストローラ21は、用紙Pを所定のタイミングにて感光体ドラム3と転写ローラ22との間の転写位置TPに向けて送り出すように構成されている。転写ローラ22は、転写位置TPにて用紙搬送経路PPを隔てて静電潜像担持面LSと対向するように配置されていて、図中矢印で示されている方向(時計回り)に回転駆動されるようになっている。この転写ローラ22は、感光体ドラム3との間に静電潜像担持面LS上に付着したトナーT(図2参照)を用紙Pに転写させるための所定の転写バイアスが印加されるように、図示しない転写バイアス電源回路と電気的に接続されている。
【0021】
<<トナー供給装置>>
図2は、図1に示されているトナー供給装置6を拡大した側断面図(主走査方向を法線とする面による断面図)である。図2を参照すると、トナー供給装置6は、現像ローラ61と、電界搬送基板62と、トナー回収部63と、オーガ64及び65と、搬送バイアス電源回路66と、現像バイアス電源回路67と、を備えている。
【0022】
本発明の現像剤担持部材としての現像ローラ61は、円柱面状の周面であるトナー担持面61a(現像剤担持面)を有するローラ状の部材(回転体)であって、トナー担持面61a上に担持したトナーTを現像位置DPにて感光体ドラム3に供給するために、当該感光体ドラム3と現像位置DPにて対向配置されている。この現像ローラ61は、主走査方向と平行(すなわちトナー担持面61aの母線と平行)な中心軸線Cと直交する方向にトナー担持面61aが移動するように、当該中心軸線Cを中心として回転駆動されるようになっている。具体的には、現像ローラ61は、トナー担持面61aが現像位置DPにて静電潜像担持面LSと同一方向に移動するように、感光体ドラム3と反対方向(図中矢印参照:時計回り)に回転駆動されるようになっている。
【0023】
本発明の電界搬送部としての電界搬送基板62は、トナー担持面61aの移動方向における現像位置DPよりも上流側のトナー担持位置TCP(本発明の現像剤担持位置に相当する)にてトナーTをトナー担持面61a上に担持させるために、トナー担持位置TCPにて現像ローラ61と対向配置されている。この電界搬送基板62は、直流電圧成分及び多相交流電圧成分を含む搬送バイアスが印加されることで、トナーTを進行波状の電界によりトナー搬送経路TTP(電界搬送基板62の表面であるトナー搬送面TTSに沿って形成されたトナーTの搬送経路)に沿って搬送可能に構成されている(この電界搬送基板62の内部構成の詳細については後述する。)。
【0024】
本実施形態においては、電界搬送基板62は、トナー貯留部TR1に貯留されているトナーTをトナー担持位置TCPに向けて搬送して当該トナー担持位置TCPにて現像ローラ61に受け渡すとともに、トナー担持位置TCPを通過した(トナー担持位置TCPにて現像ローラ61側に移行しなかった)トナーTをトナー貯留部TR1と隣接するトナー貯留部TR2まで搬送するように設けられている。すなわち、電界搬送基板62は、トナー担持位置TCPの近傍にて、トナー搬送面TTSが外側を向くように凸設(凸形状に形成)されている。
【0025】
また、本実施形態においては、電界搬送基板62は、トナー貯留部TR1からトナー担持位置TCPまでの間にトナーTを鉛直上方に搬送する略平板状の部分を有するととともに、トナー担持位置TCPからトナー貯留部TR2までの間にトナーTを鉛直下方に搬送する略平板状の部分を有している。さらに、電界搬送基板62は、トナー担持位置TCPにて、トナー搬送方向TTD(トナー搬送面TTSでトナーTが搬送される方向)が現像ローラ61の周面の移動方向と反対方向となるように設けられている。
【0026】
図3は、図2に示されている電界搬送基板62を拡大した側断面図である。図3を参照すると、電界搬送基板62は、薄板状の部材であって、フレキシブルプリント配線基板と同様の構成を有している。具体的には、電界搬送基板62は、搬送電極621と、搬送電極支持フィルム622と、搬送電極コーティング層623と、搬送電極オーバーコーティング層624と、から構成されている。
【0027】
搬送電極621は、主走査方向と平行な長手方向を有する線状の配線パターンであって、例えば、銅箔によって形成されている。複数の搬送電極621は、トナー搬送経路TTPに沿って配列されていて、互いに平行に配置されている。トナー搬送経路TTPに沿って多数配列された各搬送電極621は、3本置きに同一の電源回路(VA〜VD)に接続されている。本実施形態においては、図4に示されているように、各電源回路VA〜VDは、ほぼ同一波形で互いに位相が90°ずつ異なる交流電圧である駆動電圧を出力するように構成されている。
【0028】
複数の搬送電極621は、搬送電極支持フィルム622の表面上に形成されている。搬送電極支持フィルム622は、可撓性のフィルムであって、本実施形態においては、ポリイミド樹脂から構成されている。搬送電極コーティング層623は、搬送電極支持フィルム622における搬送電極621が設けられている表面、及び搬送電極621を覆うように設けられていて、本実施形態においては、ポリイミド樹脂から構成されている。搬送電極コーティング層623の上には、搬送電極オーバーコーティング層624が設けられている。搬送電極オーバーコーティング層624の表面(トナー搬送面TTS)は、トナーTがスムーズに搬送され得るように、凹凸の極めて少ない平滑な面として形成されている。
【0029】
再び図2を参照すると、トナー回収部63は、現像位置DPを経て現像ローラ61に残留したトナーTをトナー回収位置TRP(トナー担持面61aの移動方向における現像位置DPよりも下流側且つトナー担持位置TCPよりも上流側の位置)にてブラシローラ631によってトナー担持面61aから回収するとともに、回収したトナーTをトナー貯留部TR2に向けて輸送するように構成されている。
【0030】
本発明の現像剤回収部材としてのブラシローラ631は、トナー回収位置TRPにてトナーTをトナー担持面61aから回収するために設けられた回転体であって、トナー回収位置TRPにて現像ローラ61と対向配置されている。ブラシローラ631の外周には、多数の繊維631aが植毛(立設)されている。具体的には、ブラシローラ631は、アルミニウム等の金属製のローラの周面にナイロン製の繊維(太さ:3デニール、密度:12万本/平方インチ、長さ:5mm、抵抗値:10〜10Ω・cm)を立設させることによって構成されている。
【0031】
ブラシローラ631は、トナー回収位置TRPにて繊維631aがトナー担持面61aと接触することで繊維631aが若干撓むように配置されている。また、本実施形態においては、ブラシローラ631は、現像ローラ61と同一方向(図中矢印参照:時計回り)に回転駆動されることで、トナー回収位置TRPにて繊維631aの移動方向がトナー担持面61aの移動方向と反対方向になるように設けられている。
【0032】
トナー回収部63は、上述のブラシローラ631に加えて、フリッカ632と、トナー受容器633と、回収トナー輸送管634と、を備えている。ブラシローラ631によってトナー担持面61a上から回収されたトナーTを当該ブラシローラ631から除去するための、本発明の除去部材としてのフリッカ632は、トナー回収位置TRPから離隔した除去位置RPにて、ブラシローラ631の回転により移動する繊維631aと当接することで、当該繊維631aによって保持されたトナーTを掻き落とすように設けられている。
【0033】
トナー受容器633は、除去位置RPにてブラシローラ631から掻き落とされたトナーTを収容するように、ブラシローラ631及びフリッカ632の下方(すなわち除去位置RPの下方)に設けられている。回収トナー輸送管634は、トナー受容器633によって受容された(収容された)トナーTを下方のトナー貯留部TR2に向けて送出するように設けられた管状部材であって、トナー受容器633の底部にてトナー受容器633と一体に形成されている。
【0034】
トナー貯留部TR1内には、オーガ64が収容されている。また、トナー貯留部TR2内には、オーガ65が収容されている。オーガ64及び65は、回転駆動されることで、トナー貯留部TR1及びTR2内のトナーTを撹拌しつつ循環させるように構成されている。
【0035】
電界搬送基板62は、搬送バイアス電源回路66と電気的に接続されている。搬送バイアス電源回路66は、トナーTをトナー搬送経路TTPに沿ってトナー貯留部TR1からトナー貯留部TR2までトナー搬送方向TTDに搬送するための搬送バイアス(図4参照)を出力するようになっている。
【0036】
現像ローラ61は、現像バイアス電源回路67と電気的に接続されている。現像バイアス電源回路67は、現像ローラ61と感光体ドラム3との間に現像バイアスを印加するために、必要な電圧を出力するようになっている。
【0037】
<作用・効果>
次に、上述の本実施形態の構成による動作の概要を、その作用・効果とともに説明する。
【0038】
正極性に帯電したトナーTは、電界搬送基板62により、トナー貯留部TR1からトナー担持位置TCPに向かって、トナー搬送経路TTPに沿ってトナー搬送方向TTDに搬送される。そして、このトナー担持位置TCPにて、トナーTは、現像ローラ61の外周面であるトナー担持面61a上に担持される。
【0039】
トナー担持位置TCPにてトナー担持面61a上に担持されたトナーTは、現像ローラ61の回転駆動により現像位置DPに達し、かかる現像位置DPにて、感光体ドラム3に供給される(すなわち静電潜像担持面LSに形成された静電潜像の現像に供される)。現像位置DPを経てトナー担持面61a上に残留したトナーTは、トナー回収位置TRPにてブラシローラ631によってトナー担持面61a上から回収される。これにより、現像位置DPにてトナーTが残留していた現像ローラ61の周面から、現像位置DPにおける現像履歴(感光体ドラム3への供給履歴)が良好にクリアされる。
【0040】
トナー回収位置TRPにてブラシローラ631によってトナー担持面61a上から回収されたトナーTは、フリッカ632によってブラシローラ631(繊維631a)から掻き落とされ、トナー受容器633に収容される。トナー受容器633に収容されたトナーTは、トナー貯留部TR2まで落下することで、トナー貯留部TR2に回収される。トナー貯留部TR2に回収されたトナーTは、オーガ65によって、それまでトナー貯留部TR2に貯留されていたトナーTと撹拌され、トナー貯留部TR1に再度送られる。
【0041】
ここで、本実施形態の構成においては、トナー回収位置TRPにて、繊維631aがトナー担持面61aと接触した状態で、繊維631aの移動方向とトナー担持面61aの移動方向とが反対方向となるようにブラシローラ631が回転することで、トナーTに対する機械的ストレスが効果的に低減されつつ、当該トナーTが(その帯電状態にかかわらず)トナー担持面61aから良好に回収される。したがって、かかる構成によれば、トナーTの良好な回収性と、回収されたトナーTの良好な再利用性とが、ともに良好に達成される。
【0042】
図5及び図6は、図2に示されている本実施形態のトナー回収部63によるトナーTの回収効果の実験結果を示すグラフである。ここで、図5は、自社製の各種実験用トナー(黒色)を用いることで、トナー担持面61a上の負帯電(逆帯電)のトナーTの割合を変化させたときの、回収性を評価した結果を示す。また、図6は、回収されたトナーTの帯電量分布を示す。
【0043】
図5における縦軸の「回収性 ΔE」は、以下のようにして得られた値である:(1)現像ローラ61を1周させた後の、トナー回収位置TRPを経たトナー担持面61aに、3M社製の「メンディングテープ」を貼り付け、その後剥離する。(2)剥離したテープを、普通紙(Stora Enso社製 商品名「Berga Focus」)に貼り付ける。(3)テープと紙の白地との反射濃度(グレタグマクベス社製:分光光度計Spectrolinoによる測定値)の差ΔEを算出する。
【0044】
図5における「回収ローラ」として示されているプロットは、図2におけるブラシローラ631に代えて、繊維631aが設けられていない「剛体」状の回収ローラを用いた静電的回収による実験結果に対応する。実験条件は、以下の通りである。
・搬送バイアス:+300V〜+900V(直流成分:+600V、交流成分:振幅300V・周波数300Hzの4相交流)
・現像バイアス:+300V
・回収バイアス(ブラシローラ631や回収ローラに対する印加電圧):0V
【0045】
図6は、回収されたトナーTの帯電量分布を、ホソカワミクロン株式会社製の帯電量分布測定装置「イースパートアナライザ(登録商標)」を用いて測定したものである。ここで、図6中、実線の「起動前」はトナー貯留部TR1内の電界搬送前のもの、一点鎖線の「ブラシ回収」はブラシローラ631からフリッカで掻き落とした後のもの、破線の「ローラ回収」は上述の回収ローラ上からブレードで掻き落とした後のもの、をそれぞれ示す。
【0046】
図5に示されているように、実施例のブラシ回収の場合は、負帯電率によらず、良好な回収性が得られた。これに対し、比較例のローラ回収の場合は、ブラシ回収よりも回収性が悪く、特に負帯電率が上昇するにつれて回収性が悪化した。
【0047】
また、図6に示されているように、比較例のローラ回収によって回収されたトナーTの帯電量分布は、起動前のトナーTの帯電量分布と大きく異なるものとなった。これは、ローラ回収の場合、トナーTに比較的大きな機械的ストレスが加えられ、回収されたトナーTが劣化したことを示しているものと考えられる。これに対し、実施例のブラシ回収によって回収されたトナーTの帯電量分布は、起動前のトナーTの帯電量分布とほとんど同様であった。これは、実施例のブラシ回収によれば、回収の際のトナーTの劣化が可及的に抑制されることを示しているものと考えられる。
【0048】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0049】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0050】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0051】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0052】
本発明の適用対象は、単色のレーザープリンタに限定されない。例えば、本発明は、カラーのレーザープリンタや、単色及びカラーの複写機等の、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に対して、好適に適用され得る。このとき、感光体の形状は、上述の実施形態のようなドラム状でなくてもよい。例えば、平板状や無端ベルト状等であってもよい。
【0053】
露光光源としては、レーザースキャナ以外のもの(LED、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、蛍光体、等)が好適に用いられ得る。この場合、「主走査方向」は、発光素子(LED等)の配列方向と平行な方向となる。あるいは、本発明は、上述の電子写真方式以外の方式(例えば、感光体を用いないトナージェット方式、イオンフロー方式、マルチスタイラス電極方式、等)の画像形成装置に対しても、好適に適用され得る。
【0054】
感光体ドラム3と現像ローラ61とは、離間していてもよいし、接触していてもよい。同様に、現像ローラ61とトナー搬送面TTSとは、離間していてもよいし、接触していてもよい。
【0055】
各電源回路VA〜VDが発生する電圧の波形は、矩形波状以外にも、正弦波状や三角波状等の任意のものが用いられ得る。また、4相交流に代えて、3相交流が用いられ得る。すなわち、搬送バイアス電源回路66及び搬送バイアス電源回路66には、3つの電源回路が備えられるとともに、各電源回路が発生する電圧の位相が120°ずつ異なるようになっていてもよい。
【0056】
電界搬送基板62の構成や配置も、上述の実施形態にて開示されたものに限定されない。例えば、電界搬送基板62における、トナー担持位置TCPの近傍の部分は、平板状あるいは現像ローラ61の周面であるトナー担持面61aに沿った凹形状に形成されていてもよい。
【0057】
図7は、図2に示されているトナー供給装置6における、トナー回収位置TRPの周辺の構成の一具体例を示す概略図である。図7に示されているように、ブラシローラ631は、トナー回収位置TRPにて繊維631aが当該トナー回収位置TRPにおけるトナー担持面61aの移動方向に沿って立設するように構成されていてもよい。これにより、トナー回収位置TRPにおける接触抵抗が小さくなる。また、除去位置RPにおけるフリッカ632との当接によるトナーTの飛散が、可及的に抑制される。
【0058】
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
【0059】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0060】
1…レーザープリンタ
2…用紙搬送機構
3…感光体ドラム(供給対象)
4…帯電器
5…スキャナーユニット
6…トナー供給装置(現像剤供給装置)
21…レジストローラ
22…転写ローラ
61…現像ローラ(現像剤担持部材)
61a…トナー担持面(現像剤担持面)
62…電界搬送基板
621…搬送電極
622…搬送電極支持フィルム
623…搬送電極コーティング層
624…搬送電極オーバーコーティング層
63…トナー回収部
631…ブラシローラ
631a…繊維
632…フリッカ
633…トナー受容器
634…回収トナー輸送管
64…オーガ
65…オーガ
66…搬送バイアス電源回路
67…現像バイアス電源回路
DP…現像位置(現像剤供給位置)
LB…レーザービーム
LS…静電潜像担持面
P…用紙
PP…用紙搬送経路
RP…除去位置
SP…スキャン位置
T…トナー(現像剤)
TCP…トナー担持位置
TP…転写位置
TR1…トナー貯留部
TR2…トナー貯留部
TRP…トナー回収位置
TTD…トナー搬送方向
TTP…トナー搬送経路
TTS…トナー搬送面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開平9−54496号公報
【特許文献2】特開2004−280068号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置において、
円柱面状の周面である現像剤担持面が当該現像剤担持面の軸線と直交する方向に移動するように設けられた回転体であって、前記現像剤担持面上に担持した前記現像剤を現像剤供給位置にて前記供給対象に供給するために当該供給対象と前記現像剤供給位置にて対向配置された、現像剤担持部材と、
前記現像剤担持面の移動方向における前記現像剤供給位置よりも上流側の現像剤担持位置にて前記現像剤を前記現像剤担持面上に担持させるために、前記現像剤を進行波状の電界により前記現像剤担持位置に向けて搬送するように設けられた、電界搬送部と、
外周に多数の繊維状部材が植毛された回転体であるブラシローラであって、前記現像剤担持面の前記移動方向における前記現像剤供給位置よりも下流側の現像剤回収位置にて前記現像剤担持面から前記現像剤を回収するために、前記現像剤回収位置にて前記繊維状部材が前記現像剤担持面と接触するように配置された、現像剤回収部材と、
を備えたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、現像剤供給装置であって、
前記現像剤回収部材は、前記現像剤回収位置にて前記繊維状部材が当該現像剤回収位置における前記現像剤担持面の前記移動方向とは反対方向に移動するように設けられたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の、現像剤供給装置であって、
前記現像剤回収部材は、前記現像剤回収位置にて前記繊維状部材が当該現像剤回収位置における前記現像剤担持面の前記移動方向に沿って立設するように構成されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の、現像剤供給装置において、
前記現像剤回収部材によって前記現像剤担持面上から回収された前記現像剤を当該現像剤回収部材から除去する、除去部をさらに備えたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の、現像剤供給装置であって、
前記除去部は、前記現像剤回収位置から離隔した除去位置にて、前記現像剤回収部材の回転により移動する前記繊維状部材と当接することで、当該繊維状部材によって保持された前記現像剤を掻き落とすように設けられた部材である、除去部材を備えたことを特徴とする、現像剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−47707(P2013−47707A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185488(P2011−185488)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】