説明

現像剤担持体、現像装置及び画像形成装置

【課題】耐摩耗性が高く、安定したトナークラウドを形成でき、トナー帯電性、有機絶縁層との接着性、及び、耐フィルミンク性に優れる表面層を有する現像剤担持体、該現像剤担持体を有する現像装置、及び現像装置を搭載する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】導電性支持体と、導電性支持体上に形成された有機絶縁層と、該有機絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、前記複数の電極を覆う表面層とを有するトナー担持体であって、前記複数の電極と導電性支持体間の電界が周期的に反転するように電極と導電性支持体に電圧を印加されることで、電極間の電界によりトナーをホッピングさせてトナーのクラウドを形成するものであり、前記表面層が少なくともイミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体により構成されることを特徴とする現像剤担持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤担持体、該現像剤担持体を備えた現像装置及び、該現像装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置においては、電子写真プロセスによる現像装置が用いられている。このような現像装置のうち、静電潜像の形成された感光体に対して、現像剤(トナー)を搬送する現像剤担持体を接触させずに現像を行う非接触方式の現像装置が注目されている。非接触方式の例としては、パウダーラウンド法・ジャンピング法、電界カーテンを利用した方法等が知られている。
【0003】
前記ジャンピング現像方式(感光体と現像剤担持体との間に、帯電させたトナー粒子を供給しジャンピングさせる方式)は、トナー粒子と現像剤担持体との付着力以上の印加電圧が必要となる。
また電界カーテン法は、現像剤担持体内部の一定の間隔で並べられた複数の電極に交番電界を印加して、現像剤担持体表面に生じる交番不平等電界による電界カーテンを形成し、予め帯電させたトナー粒子を供給してトナー粒子をホッピングさせ、静電潜像にトナー粒子を供給するものであり、現像剤担持体表面でトナー粒子がホッピングするため、トナー粒子と現像剤担持体表面との付着力が略零になり、現像のためにトナー粒子を現像剤担持体表面から剥離する力が不要であるため、低電圧で十分にトナーを潜像担持体側に搬送することが可能なものである。
【0004】
特許文献1に開示される前記電界カーテン方式の現像装置は、複数の電極の上に絶縁性材料などからなる表面保護層が被覆された現像剤担持搬送体を用いているので、トナーの電荷が電極にリークせず、トナーの電荷が失われてホッピング不良を引き起こすことがない。また、ホッピングにより、予め帯電された現像剤の帯電バラツキをある程度解消できるものであるが、主として帯電部材と現像剤担持体との間で現像剤を帯電させるものであり、現像剤担持体表面が摩擦帯電を考慮した材料で形成されていないため、帯電部材による帯電バラツキを十分解消できなかった。
【0005】
特許文献2、3には、トナー粒子を十分摩擦帯電させずに、現像剤担持体の表面上に供給し、帯電初期からトナー粒子を交番電界により現像剤担持搬送体表面をホッピングさせ、現像剤担持搬送体との摩擦により、現像剤を帯電させる現像剤担持搬送体が開示され、また、トナー粒子を帯電させるため、現像剤担持搬送体表面をトナーの正規帯電極性側への摩擦帯電を促す材料で形成することが開示されている。
この現像剤担持搬送体による帯電は、現像剤担持体表面との摩擦により徐々に帯電し、帯電量が飽和するまで帯電可能であるため、より均一にトナーを帯電できるものである。
【0006】
しかし、絶縁性材料や前記トナーの正規帯電極性側への摩擦帯電を促す材料で表面層を形成しても、トナー粒子と表面層との帯電が強くなりすぎると、トナー粒子と表面層とに強い静電的な付着力が生じる。
この付着力は、現像剤担持体内部の電極からの電界をうけてトナーがホッピングしようとする力をも上回るため、トナー粒子は担持体表面に張り付き続け、トナーホッピングが生じなくなってしまい、トナー粒子が十分ホッピングしなければトナー粒子を帯電させることができず、トナークラウドも形成されないため、異常画像が生じる。
【0007】
また、初期ではトナークラウドが形成され、正常な画像を出力できても、ローラの摩耗による現像剤担持体内部の電極からの電界の変化、ローラの表面状態(粗さ等)変化によるトナー粒子が現像剤担持体上を移動する量が変化することによるトナー帯電量の変化や、現像剤担持体のトナー粒子とのタック性(現像剤担持体の対トナー粒子との付着力)の変化、フィルミング等、現像剤担持体への付着力とホッピングとのバランスが崩れ易く、トナー粒子が現像剤担持体に張り付き、担持体内部の電極からの電界をうけても十分ホッピングせず、出力画像濃度が薄くなる等、通紙後は正常な画像を出力することが非常に困難である。
【0008】
つまり、現像剤担持体の表面層にはトナー粒子を十分ホッピングさせるだけの電荷を与えられる帯電性を有し、且つ耐摩耗性が高い材料を選定する必要があり、この条件を満たすことで異常画像の出力を防ぐことが可能になると考えられる。
【0009】
耐摩耗性が高い材料、例えばイミド樹脂は220℃以上典型的には280℃以上の高温での焼成が必要であるが、現像剤担持体の電極及びそのためのリード電極は、電極間または導電性支持体と電極との間でのリーク防止する有機絶縁層上に形成されるため、該有機絶縁層及び電極の上に設ける表面層は、上記のような高温で焼成することができず、また、イミド樹脂プレカーサとしてのポリアミック酸単位は、他の樹脂との相溶性に難があるため、他の樹脂とのブレンド使用が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、耐摩耗性が高く、安定したトナークラウドを形成でき、トナー帯電性、有機絶縁層との接着性、及び、耐フィルミンク性に優れる表面層を有する現像剤担持体、該現像剤担持体を有する現像装置、及び現像装置を搭載する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記(1)〜(6)によって解決される。
(1)「導電性支持体と、導電性支持体上に形成された有機絶縁層と、該有機絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、前記複数の電極を覆う表面層とを有するトナー担持体であって、前記複数の電極と導電性支持体間の電界が周期的に反転するように電極と導電性支持体に電圧を印加されることで、電極間の電界によりトナーをホッピングさせてトナーのクラウドを形成するものであり、前記表面層が少なくともイミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体により構成されることを特徴とする現像剤担持体」、
(2)「前記イミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体は、交互共重合体であることを特徴とする前記(1)に記載の現像剤担持体」、
(3)「前記イミド樹脂とフェノール樹脂との交互共重合体を硬化剤により硬化した樹脂から構成されることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の現像剤担持体」、
(4)「前記絶縁層は、フルオロエチレンとビニルエーテルモノマーの交互共重合体を硬化剤により硬化した樹脂を含むことを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の現像剤担持体」、
(5)「前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の現像剤担持体を備えていることを特徴とする現像装置」、
(6)「少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する画像形成装置であって、前記現像手段は前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の現像剤担持体を有するものであり、前記現像剤担持体の複数の電極と導電性支持体間の電界が周期的に反転するように電極と導電性支持体に電圧を印加する電圧印加手段を有することを特徴とする画像形成装置」。
【発明の効果】
【0012】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、イミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体を硬化剤により硬化した樹脂を含む表面層を形成することにより、耐摩耗性が高く、安定したトナークラウドを形成でき、トナー帯電性、有機絶縁層との接着性、及び、耐フィルミンク性に優れる表面層を有する現像剤担持体、該現像剤担持体を有する現像装置、及び該現像装置を搭載する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】現像装置のトナーのクラウド状態の一例を説明する模式図である。
【図3】トナー担持体の構成の一例を示す図である。
【図4】他のトナー担持体の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の、導電性支持体と、導電性支持体上に形成された有機絶縁層と、該有機絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、前記複数の電極を覆う表面層とを有するトナー担持体であって、前記複数の電極と導電性支持体間の電界が周期的に反転するように電極と導電性支持体に電圧を印加する電圧印加手段を備え、電極間の電界によりトナーをホッピングさせてトナーのクラウドを形成しトナーを帯電するものであり、前記表面層が少なくともイミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体を硬化剤により硬化した樹脂を含む現像剤担持体について説明する。
【0015】
(導電性支持体)
導電性支持体として、例えばAl、Ni、Fe、Cu、Auなどの金属、もしくはそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn、SnO等の導電材料の薄膜を形成したもの、樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム,銅,ニッケル等の金属粉、導電性ガラス粉などを均一に分散させ、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理をした紙等から形成された円筒状の支持体が使用できる。
【0016】
(絶縁層)
絶縁層を構成する樹脂としては、表面層塗工液に含まれる溶媒に溶解しないものであれば、どのようなものでも使用することができる。
有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂や、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
また、絶縁層は、耐摩耗性に優れる表面層の形成を可能にするため、耐熱性に優れることが好ましい。フッ素樹脂は、耐熱性に優れ高温下でも分解し難いものであるが、表面層との接着性が低く剥離が生じやすい。
フルオロエチレンとビニルエーテルモノマーとの交互共重合体を硬化させたフッ素樹脂は、ビニルエーテル等の共重合成分を含むため、有機溶媒に溶解可能であり、慣用される塗工法により容易に均一な薄膜を形成可能であり、また薄膜形成後の有機溶剤への耐性にも優れ電極および表層形成時に有機溶剤等により絶縁層が破壊されることがなく、また、後述する表面層との接着性が高い。さらに、導電性支持体と電極の間に印加する交番電圧を印加するとその消費電力は、絶縁層の誘電率に比例し、前記フルオロエチレンとビニルエーテルモノマーとの交互共重合体は誘電率が低く、少ない消費電力でトナークラウドを形成できるため特に良好に用いることができる。
前記樹脂を硬化させる硬化剤としては、前記樹脂中の活性水素基と架橋し得る、エポキシ樹脂、及びイソシアネートが好ましく、特に多価イソシアネートであることが好ましい。
絶縁層の形成は、適当な溶媒を用いて、浸漬塗工法、スプレー塗工法等の慣用される塗工法によって形成することができる。
【0017】
絶縁層の膜厚は、材料にもよるが1μm以上100μm以下であることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
1μm未満では電極と導電性支持体との間に電荷リークが生じないよう絶縁するのが困難であるため1μm以上とするのが好ましい。100μmより厚くては内部電極からの電界が弱くなり、トナー粒子を表面層から遊離させ、ホッピング可能な静電気力を生じることが困難になる。
【0018】
(表面層)
トナー粒子を安定して負帯電させるためには、トナー粒子を摺擦する現像剤担持体表面は適切な帯電性を有している必要がある。後述する比較例1のトナー帯電性評価にあるようにポリカーボネートは適度なトナー帯電が可能であり、現像剤担持体表面に使用することが可能である。しかし、ポリカーボネート樹脂は熱可塑性であるため分子結合力が弱く、耐久性の向上には限界がある。
また、表面層の摩耗の要因のひとつとして、表面層の樹脂の分子鎖が、交番電圧により切断されることが考えられ、耐摩耗性を向上させるには分子結合力が高いものまたは結合数が多いものを用いることが考えられる。
本発明者らは、現像剤担持体表面層構成材料について鋭意研究した結果、アミノ基を含まず、結合数の多い、イミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体は、加熱温度を高くしなくても硬化可能であり、前記共重合体を硬化させた表面層は、耐摩耗性に優れ、かつ長期間トナーのクラウドを安定的に形成できることを見出した。
【0019】
前記イミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体は、フェノール樹脂構造とイミド環構造が交互に共重合し、該イミド環構造が完全に閉環したイミド骨格を形成した溶剤可溶型の共重合体であると、膜形成が容易で、かつ100〜200℃の低温乾燥で表面層を形成できるため好ましく、また、フェノール樹脂構造部分に水酸基を有するものであると、水酸基と硬化剤との反応により、網目構造を増やすことができ、高強度で耐摩耗性の高い表面層を形成できるため好ましい。
【0020】
このようなイミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体としては、一般式(1)または(2)で表されるものを挙げることができる。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

(一般式(1)、(2)において、Rは水素原子、炭素数1〜9のアルキル基または−O(CHOHを示し相互に異なっていても同一でもよい。前記lは1〜6の整数を表す。Xは−C(CH−、−CH−、−C(CH)(C)−、−O(CH)O−、−または−C(CF−を示し、Yは炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよいフェニレン基を示す。該置換基は前記Rと同じである。Zは芳香族テトラカルボン酸二無水物である4価の芳香族基を示し、m、nは1以上の整数を示し、前記mは1〜50、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である。
【0023】
前記イミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体の分子量は5000〜180000であることが溶媒への溶解時の扱いやすさ等の点から好ましい。さらに5000〜60000であることが好ましい。
【0024】
前記フェノール樹脂構造と閉環したイミド構造が交互に共重合した溶剤可溶型のイミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体としては、群栄化学工業などから上市されている。具体的には群栄化学工業製のGPI-LT、GPI-HT、GPI-NT、GPI-LMなどを挙げることができ、これらの1種もしくは2種以上を混合して用いることが好ましい。
【0025】
前記硬化剤としては、イソシアネート、エポキシ樹脂等を挙げることができるが、イソシアネート硬化剤は、帯電付与性を有するため特に有効である。
イソシアネート硬化剤の添加量は、硬化剤にもよるが、当量から当量の1.5倍量であり、帯電付与性と硬化性のバランスの観点から当量から当量の1.1倍量であることが好ましい。
【0026】
表面層にはイミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体に添加剤としてレベリング剤が含有されていても良い。
レベリング剤としては、公知の材料を用いることができるが、微量で高い平滑性を付与することができるシリコーンオイル系のレベリング剤がとくに好ましい。シリコーンオイルの例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル等が挙げられる。
表面層にはそのほか、可塑剤、酸化防止剤、などの添加剤を適量添加することもできる。
【0027】
表面層の形成は、イミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体を溶解できる1種類以上の溶媒を用いて、浸漬塗工法、スプレー塗工法等の慣用される塗工法によって形成することができる。
前記共重合体を溶解できる溶媒としては、NMP、DMAC、DMF、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、MIBK、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ(登録商法)等が挙げられる
【0028】
表面層の膜厚は現像剤担持体の表面にトナー粒子をホッピングさせ、帯電させることができ、かつ、電極(91b)の現像剤担持体表面への露出を防ぐことができればいずれでもかまわないが、0.5μm以上、50μm以下であることが好ましい。
0.5μm以下では電極とトナー間に電荷リークが生じないよう絶縁するのが困難であるため0.5μm以上とするのが好ましい。
50μm以上では内部電極からの電界が弱くなる為、トナーが表面層から遊離してホッピング可能である静電気力を生じることが困難であるため50μm以下とするのが好ましい。
さらに、5〜50μmであるとトナーホッピングはより安定的に行われる。
【0029】
本発明の現像剤担持体について、図面を参照し本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図である。図1において、(1)は矢印(A)方向に回転するドラム状の感光体、(2)は感光体(1)の表面を一様に帯電する帯電ローラ、(3)は画像情報に対応するレーザー光等を感光体(1)の表面に照射する露光装置、(4)は感光体(1)の表面に形成された静電潜像にトナーを供給する現像装置である。
(5)は感光体(1)の表面に現像装置(3)で形成されたトナー像を転写用紙等の転写材(P)上に転写する転写ローラ、(6)は転写材(P)にトナー像を転写した後に感光体(1)の表面に残存するトナーを感光体(1)の表面から除去するクリーニング装置である。(7)は、転写材(P)上に転写された未定着トナー像を加熱、加圧して転写材(P)上に定着させる定着装置である。
【0030】
この画像形成装置によって転写材(P)上にトナー画像を形成する方法について説明する。矢印(A)方向に回転する感光体(1)の表面を、帯電ローラ(2)によって所定の電圧を印加して一様に帯電させる。このように一様に帯電された感光体(1)の表面に所望の画像情報に対応するレーザー光を露光装置(3)から照射して感光体(1)の表面に静電潜像を形成する。続いてこのようにして形成された静電潜像に対して、現像装置(4)からトナーを供給して静電的に付着させて静電潜像をトナー像化させる。このようにして形成されたトナー像は、転写ローラ(5)によって感光体(1)の表面と転写材(P)を圧接させて矢印(B)方向に転写材(P)を搬送させながらバイアス電圧を印加して感光体(1)の表面から転写材(P)の表面に転写される。その後転写材(P)上に転写されたトナー像は、定着装置(7)の加熱ローラ(7a)及び加圧ローラ(7b)によって加熱加圧されて転写材(P)上に定着される。このようにして転写材P上にトナー像を転写した感光体(1)は、感光体(1)の表面に残存するトナーをクリーニング装置(6)で除去して感光体(1)の表面をクリーニングし、再び、帯電ローラ(2)によって一様に帯電される。以後、前述のように、露光装置(3)によって静電潜像が形成され、現像装置(4)で静電潜像がトナー像化され、転写ローラ(5)で転写材(P)上にトナー像が転写され、クリーニング装置(6)で感光体(1)の表面がクリーニングされる動作が繰り返される。
【0031】
本発明においては、感光体(1)の表面に形成された静電潜像をトナーでトナー像化する現像装置(4)に特徴を有する。本実施形態における現像装置(4)は、図1に示すように、トナー(T)を収納する容器(8)内に、トナーを感光体(1)に開口部(8a)から供給する現像剤担持体(9)が回転可能に取り付けられ、図示しない駆動手段によって矢印(C)方向に回転されるようになっている。そして、循環パドル(10)によってトナー(T)を攪拌しながら循環させてトナー(T)を若干帯電させると共にトナー(T)を現像剤担持体(9)の表面に供給する。このようにしてトナー(T)が供給された現像剤担持体(9)は、その表面にトナー(T)を静電力によって保持しながら汲み上げ、現像剤担持体(9)と所定間隔を有して容器(8)に取り付けられたブレード状のトナー規制部材(11)によって汲み上げるトナー量が規制されている。現像剤担持体(9)は、後述するように、開口部(8a)で交番電界が印加されてトナー(T)のクラウドが形成される。その結果、このクラウドからトナー(T)が静電気的に感光体(1)の表面の静電潜像に供給されてトナー像が形成されるようになっている。なお、図1の符号(12)は、補給トナーを供給するトナー供給口である。
【0032】
現像剤担持体(9)について説明する。
図2に示すように、現像剤担持体(9)は、下層から導電性支持体、絶縁層、電極パターン、表面層の順に積層構造となっており、電極パターンと表面層との間に接着層を設けてもよい。
【0033】
図3は上下電極方式の現像剤担持体(9)を説明する図である。
現像剤担持体(9)は、図3(a)、(b)(なお、図3(a)は図3(b)の上面図におけるA−A’における断面図である。)に示すように、第1の電極と第2の電極とを有し、一方の電極の機能を導電性支持体(91A)に担わせ、導電性支持体(91A)をA相、絶縁層(95)上に形成された複数の線状の電極(91Bb)を有する電極パターン(91B)をB相とし、導電性支持体(91A)と電極(91Bb)との間の電位差によりトナー粒子をホッピングさせトナークラウドを形成するものである。
なお、電極パターン(91B)の形成は、円筒状に成形された支持体(91A)の周面に蒸着での銅薄膜が形成されたものからフォトレジスト法によって所望の形状に加工することにより可能である。形成方法について特に限定はなく、フォトレジスト法を用いたパターニング以外に、例えばインクジェット装置等を用いた描画により形成しても構わない。導電性支持体(91A)としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性の優れた材料からなる支持体を用いることができる。また、導電性支持体(91A)の大きさについて特に限定はなく、発明の実施者が適宜選択したものを用いればよい。また、電極(91Bb)の幅(d)、及び電極(91Bb)間の間隔(D)についても特に限定はなく、発明の実施者が適宜定めればよいが、後述する櫛歯電極型に比し間隔(D)を広くすることができるため、短絡することを防止でき好ましい。
【0034】
トナークラウドの形成は、電極パターン(91Bb)の幅(d)、間隔(D)及び交番電圧等によって影響される。良好なクラウドを形成するには、電極パターン(91Bb)の電極の幅(d)、間隔(D)をそれぞれ40μm〜250μmの幅、85μm〜500μmの間隔とすれば良い。また、交番電圧としては、周波数100Hz〜5KHz、100V〜3KVが好適である。
電極(91Bb)を構成する材料は、高い導電性を有する材料であれば使用することができるが、ペースト状であると電極パターンを描画することによりこれを達成でき好ましい。
【0035】
図4に示す櫛歯電極方式の現像剤担持体櫛歯電極方式について説明する。
現像剤担持体(9)は、図4(a)、(b)(なお、図4(a)は図4(b)の上面図におけるA−A’における断面図である。)に示すように、線状の複数の電極(90Aa)を有する第1の電極パターン(90A)と線状の複数電極(90Bb)を有する第2の電極パターン(90B)とが、電極(90Aa)と電極(90Bb)とが交互に現像剤担持体の軸方向に平行に形成され、この電極パターン(90A)、(90B)上にこれらの電極(90Aa)、(90Bb)を上に電極(90Aa)、(98Bb)を保護するための表面層(98)が形成されている。
支持体(93)としては、上記導電性支持体の他、ポリイミド、ポリカーボネート、ナイロン、フッ素系樹脂、ポリアセタール、フェノール、ポリスチレン等の合成樹脂から形成された円筒状の絶縁性支持体、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタン、ステンレスなどを切削、研磨などの金属加工をした円筒状の金属の導電性支持体に前記合成樹脂を被覆したものを使用することができる。
【0036】
なお、本実施形態における現像剤担持体(9)においては、交番電圧電源として単相の交番電圧を使用するようにしているが、周期の異なる複数相の交番電圧電源も使用することが可能である。担持体に設けられた2つの電極に周期的に正負の方向が入れ替わるように電圧を印加することにより、担持体表面の電界が周期的に逆方向へと入れ替わる、時間的に変化する電界により、トナー粒子が、感光体(1)の表面と現像剤担持体(9)の表面層(98)との間でホッピングしてトナーのクラウドを形成し、このクラウドのトナー(T)が感光体(1)の表面に形成された静電潜像に向かって静電気的に吸引、付着してトナー像を形成できる。
【0037】
本発明の現像装置に用いられるトナーとしては、粉砕法、もしくは重合法にて形成された既知のトナーを用いることができる。

【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
<絶縁層用塗工液1>
フルオロエチレンとビニルエーテルモノマーとの交互共重合体(ルミフロン LF200MEK (旭硝子製))190重量部、イソシアネート硬化剤(TPA-B80E(旭化成ケミカルズ製))35重量部をメチルエチルケトン75重量部と混合し、絶縁層用塗工液を作製した。
【0040】
<表面層用塗工液1>
フェノール樹脂構造とイミド環構造が交互に共重合した溶剤可溶型のイミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体(レヂトップ GPI-LT(群栄化学製))53重量部、イソシアネート硬化剤(TPA-B80E(旭化成ケミカルズ製))22重量部をメチルエチルケトン161重量部、シクロヘキサノン64重量部の混合液に溶解し、表面層用塗工液1を作製した。
【0041】
<現像剤担持体>
直径16mm、長さ230mmの円柱状のAl製導電性支持体上に前記の絶縁層用塗工液にて浸漬塗工を行い、膜厚18μmの絶縁層を形成した。これを絶縁層形成済みの支持体(91A)とした。絶縁層形成済みの支持体(91A)上にそれぞれ蒸着によって導電性金属箔膜である0.8μm厚みの銅箔膜を形成した。さらに、これらの銅箔膜上に5μm厚みのレジスト膜を塗布した。銅膜及びレジスト膜に覆われた絶縁層形成済みの支持体(91A)に幅d=100μm、長さL=200mm、間隔D=150μmで離間させた格子状のパターンをレーザー描画機で露光して、NaCO水溶液中で現像した後、FeCl水溶液に浸漬させてエッチングを行い、前記電極パターンと同一形状の電極パターン(91B)を有する電極(91Bb)を形成した。
次に、このようにして所定の電極パターン(91B)を有する電極を形成した絶縁層形成済みの支持体(91A)の電極パターン(91B)の片側端部をマスキングし、電極を覆うように、表面層形成塗工液をスプレー塗工し、180℃で60分間硬化させ、最大膜厚28μmの表面層(98)を形成した。
現像剤担持体は、絶縁層形成済みの支持体(91A)の端部の電極が表面層(98)から露出しており、端子と接続が可能である。このようにして作製した現像剤担持体(9)を現像装置(4)に組み込んだ。
【実施例2】
【0042】
<表面層用塗工液2>
フェノール樹脂構造とイミド環構造が交互に共重合した溶剤可溶型のイミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体(レヂトップ GPI-NT(群栄化学製))54重量部、イソシアネート硬化剤(TPA-B80E(旭化成ケミカルズ製))96重量部をメチルエチルケトン102重量部、シクロヘキサノン48重量部の混合液に溶解し、表面層用塗工液2を得た。
実施例1の表面層用塗工液1を表面層用塗工液2に代える他は実施例1と同様にして現像剤担持体を得た。
【実施例3】
【0043】
<表面層用塗工液3>
イミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体(レヂトップ GPI-HT(群栄化学製))61重量部、イソシアネート硬化剤(TPA-B80E(旭化成ケミカルズ製))39重量部をメチルエチルケトン139重量部、シクロヘキサノン61重量部の混合液に溶解し、表面層用塗工液3を得た。
実施例1の表面層用塗工液1を表面層用塗工液3に代える他は実施例1と同様にして現像剤担持体を得た。
【実施例4】
【0044】
<表面層用塗工液4>
フェノール樹脂構造とイミド環構造が交互に共重合した溶剤可溶型のイミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体(レヂトップ GPI-LM(群栄化学製))40重量部、イソシアネート硬化剤(TPA-B80E(旭化成ケミカルズ製))35重量部をメチルエチルケトン163重量部、シクロヘキサノン62重量部の混合液に溶解し表面層用塗工液4を得た。
実施例1の表面層用塗工液1を表面層用塗工液4に代える他は実施例1と同様にして現像剤担持体を得た。
【実施例5】
【0045】
<絶縁層用塗工液2>
アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50(大日本インキ化学工業社製))110重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業社製))60重量部をメチルエチルケトン110重量部に溶解し絶縁層用塗工液2を得た。
実施例1の絶縁層用塗工液1を絶縁層塗工液2に代える他は実施例1と同様にして現像剤担持体を得た。
【実施例6】
【0046】
<表面層塗工液5>
フェノール樹脂構造とイミド環構造が交互に共重合した溶剤可溶型のイミド樹脂とフェノール樹脂の共重合体(レヂトップ GPI-LT(群栄化学製))75重量部をメチルエチルケトン158重量部、シクロヘキサノン68重量部の混合液に溶解し表面層塗工液5を得た。
実施例1の表面層用塗工液1を表面層用塗工液5に代える他は実施例1と同様にして現像剤担持体を得た。
【0047】
[比較例1]
<表面層用塗工液6>
ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(構造単位M−15からなる分子量50000の重合化合物:パンライト TS−2050帝人化成製)3重量部、シリコーンオイル(KF−50(信越化学工業社製))0.002重量部をテトラヒドロフラン70重量部、シクロヘキサノン30重量部の混合液に溶解し表面層塗工液6を得た。
実施例1の表面層用塗工液1に代えて、表面層塗工液6を用い、実施例1の表層形成方法と同様の形成方法にて表面層を形成した他は、実施例1と同様に現像剤担持体を得た。
【0048】
[比較例2]
<表面層用塗工液7>
アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50(大日本インキ化学工業社製))75重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業社製))25重量部を、メチルエチルケトン305重量部に溶解し表面層用塗工液7を得た。
実施例1の表面層用塗工液1に代えて、表面層用塗工液7を用い、実施例1の表層形成方法と同様の形成方法にて表面層を形成した他は、実施例1と同様に現像剤担持体を得た。
【0049】
[比較例3]
<表面層用塗工液8>
シリコーンアクリル樹脂(サイマック US-352(東亞合成製))50重量部とイソシアネート硬化剤(TPA-B80E(旭化成ケミカルズ製))20重量部を、1-ブタノール230重量部に溶解し表面層用塗工液8を得た。
実施例1の表面層用塗工液に代えて、表面層用塗工液8を用いて実施例1の表層形成方法と同様の形成方法にて表面層を形成した他は、実施例1と同様に現像剤担持体を得た。
【0050】
<電極への電圧印加条件>
現像装置(4)の開口部に取り付けた端子と導電性支持体に−400Vと0Vのそれぞれをピークに持つ各瞬間における平均電位が−200Vの交流バイアスを5KHzの周波数で交流電源から印加した。
トナーとしてimagio Neo C320に搭載されるBK色トナー(ワックス非含有粉砕トナー)を現像装置(4)に供給して使用した。
これらの現像装置およびトナーをimagio Neo C320の黒ステーションに組み込んで画像出力を行い、現像剤担持体上のトナー帯電性、50時間連続印刷後時の、現像剤担持体上のトナー帯電性、表面層材料の摩耗量、異常画像の発生の有無、表面層の剥がれの有無を比較した。
【0051】
各実施例及び比較例の測定結果及び観察結果を表1に示す。
実施例1〜5、比較例1、2では異常画像出力は見られないが、実施例6、比較例1では摩耗量が多い。
比較例2については、現像剤担持体表面材料のトナー帯電性が高すぎるためトナーが現像剤担持体表面上に静電気的引力で引きつけられる。そのため、現像剤担持体表面でトナーのホッピングは生じなかった。画像出力も行えなかった。
比較例3については、表面層材料表面で多数のリークが発生したため画像出力を行えなかった。アクリル樹脂は分子結合力が低く交番電界により分子鎖が切断されたためと考えられる。
【0052】
【表1】

【符号の説明】
【0053】
1 感光体
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニング装置
7 定着装置
7a 加熱ローラ
7b 加圧ローラ
8 容器
8a 開口部
9 現像剤担持体
10 循環パドル
11 トナー規制部材
12 トナー供給口
A 回転方向
B 搬送方向
C 回転方向
D 間隔
T トナー
d 幅
90A 電極パターン
90Aa 電極
90B 電極パターン
90Bb 電極
91A 導電性支持体
91B 電極
91Bb 電極
93 支持体
95 絶縁層
98 表面層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開平3−21967号公報
【特許文献2】特開2007−310355号公報
【特許文献3】特開2007−133388号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、導電性支持体上に形成された有機絶縁層と、該有機絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、前記複数の電極を覆う表面層とを有するトナー担持体であって、前記複数の電極と導電性支持体間の電界が周期的に反転するように電極と導電性支持体に電圧を印加されることで、電極間の電界によりトナーをホッピングさせてトナーのクラウドを形成するものであり、前記表面層が少なくともイミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体により構成されることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記イミド樹脂とフェノール樹脂との共重合体は、交互共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記イミド樹脂とフェノール樹脂との交互共重合体を硬化剤により硬化した樹脂から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記絶縁層は、フルオロエチレンとビニルエーテルモノマーの交互共重合体を硬化剤により硬化した樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の現像剤担持体。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の現像剤担持体を備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する画像形成装置であって、前記現像手段は前記請求項1乃至4のいずれかに記載の現像剤担持体を有するものであり、前記現像剤担持体の複数の電極と導電性支持体間の電界が周期的に反転するように電極と導電性支持体に電圧を印加する電圧印加手段を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137589(P2012−137589A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289407(P2010−289407)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】