説明

現像装置及び現像方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにプロセスカートリッジ

【課題】低電圧駆動が可能で高い現像効率が得られ、しかもトナーの飛散を防止でき、高画質の画像を再現できる現像装置の提供。
【解決手段】潜像担持体上にトナーを付着させて潜像担持体上の潜像を現像するための現像装置において、前記潜像担持体に対向して配置され、トナーを移動させる進行波電界を発生させるための複数の電極を有する搬送部材を備え、前記搬送部材の電極には、現像領域において、前記トナーが潜像の画像部に対しては潜像担持体側に向かい、非画像部に対しては前記トナーが潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成するn相(nは2以上の整数)の電位が印加され、かつ上記トナーがノズルからトナー組成物を噴出させて製造される特定製法による現像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像装置及び現像方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
複写装置、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置として、電子写真プロセスを用いて、潜像担持体に潜像を形成し、この潜像に粉体である現像剤(以下「トナー」ともいう。)を付着させて現像してトナー像として可視像化し、このトナー像を記録媒体に転写し、或いは中間転写部材に一旦転写した後記録媒体に転写することで画像を形成するものがある。
【0003】
このような画像形成装置において、潜像を現像する現像装置としては、従来から、現像装置内で攪拌されたトナーを現像剤担持体である現像ローラ表面に担持させ、現像ローラを回転させることによって潜像担持体の表面に対向する位置まで搬送し、潜像担持体の潜像を現像し、現像終了後、潜像担持体に転写しなかったトナーは現像ローラの回転により現像装置内に回収し、新たにトナーを攪拌・帯電して再び現像ローラに担持して搬送するようにしたものが知られている。
【0004】
また、画像形成装置としては、特許文献1、特許文献2に記載されているように、潜像担持体と現像ローラとの間にDCとACの重畳電圧を印加して、非接触で現像ローラから潜像担持体にトナーを転移させる所謂ジャンピング現像と称する方式で現像するものも知られている。
さらに、画像形成装置としては、特許文献3、特許文献4に記載されているように、静電搬送基板を用いて、トナーを潜像担持体に対向する位置まで搬送し、振動、浮遊、スモーク化させて、潜像担持体との間で生じる吸引力で搬送面からトナーを分離して潜像担持体表面に付着させるようにしたものもある。
【0005】
しかしながら、上述した現像ローラを用いてトナーを潜像担持体に与える現像装置を備えた画像形成装置にあっては、現像ローラと現像装置側板との間にトナーが侵入して、トナーが擦れてトナー固着等が発生し、画像に悪影響を及ぼしたり、現像装置周りのシール材が経時劣化することで、現像装置内にて現像剤もしくはトナーを攪拌・帯電させることにより、トナーが飛散し、画像の地汚れなどを生じることがある。
【0006】
また、摩擦帯電やコロナ放電帯電によってトナーを帯電させた場合、飽和帯電したトナーと不飽和帯電のトナーとが混在し、大きな帯電分布を有することになる。このようなトナーを強制的に磁気ブラシや転写ローラなどを用いて現像ローラに転写すると、現像ローラの現像速度(線速100cm/sec程度)の速さでは、一旦現像ローラに担持させた現像剤のうちの電荷が小さなトナーは離脱して、トナーが飛散したり、形成画像の地汚れが生じ易くなる。
さらに、所謂ジャンピング現像を行う現像装置にあっては、高電圧による帯電トナーの授受を行わなければならないため、高電圧電源が必要になり、装置の大型化、コストの増加を招くという課題がある。
【0007】
また、トナーを用いる画像形成装置における現在の課題は、画質とコストと環境をいかにして満足するかということである。画質について言えば、カラー画像を形成する場合に、直径わずか約30μmの1200dpiの孤立1ドットをいかに現像するか、それも好ましくは地汚れなしに現像するかということである。また、コストについて言えば、パーソナルのレーザプリンタを考えた場合、現像器や現像剤の単体コストのみならず、メンテナンス及び最終処分費用まで含めたトータルのコストを下げることが重要になる。さらに、環境について言えば、特に、微小粉末であるトナーが装置内や装置外に飛散することを防止することが重要になる。
【0008】
本発明者らはEH(Electrostatic transport& Hopping)現象を用いて、低電圧駆動が可能で高い現像効率が得られ、しかもトナーの飛散を防止でき、高画質の画像を再現できる現像装置及び現像方法、この現像装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置、この現像方法を行う画像形成方法によってこれらの課題を解決できることを提案してきた(特許文献5参照)
【0009】
ここで、EH現象とは、粉体が移相電界のエネルギーを与えられ、そのエネルギーが機械的なエネルギーに変換されて、粉体自身が動的に変動する現象をいう。このEH現象は、静電気力による粉体の水平方向の移動(搬送)と垂直方向の移動(ホッピング)を含む現象であり、静電搬送部材の表面を、移相電界によって粉体が進行方向の成分を持って飛び跳ねる現象であり、このEH現象を用いた現像方式をEH現像という。
【0010】
また本発明者らは前記の現象を用いて、重量平均粒径5μm以下の比較的小粒径のトナーが高画質の潜像を再現することができることを提示した。このような小粒径のトナーの製造には水系媒体中から作られる、いわゆるケミカルトナーがコスト、粒子径、形状の調節性において適している。しかしこれらのトナーは界面活性剤などの親水性化合物を少なからず含んでおり、高温、高湿度環境下での帯電性が低く、また流動性も低下する性質を有している。その結果、EH現象にとって重要な移送電界への応答性が悪くなり、搬送基板上で移動できなくなり、それ以降の画像形成が出来なくなるといった課題があった。
【0011】
またその粒度分布も工程条件によって大きく変動し、安定的に狭い粒度分布のトナーを提供することは困難であった。トナーを移送する際にすべてのトナー粒子が遅れもなく同時に移動していくことが重要である。粒度分布が均一であるということはそれの必要条件の一つである。したがって先に述べた環境に対し帯電や流動性が安定なことと、均一な粒度分布のトナーが本現像システムにおいてより重要である。またトナーの形状も搬送基板との付着力を低く抑えるために、接触点はできるだけ少ない方が好ましく、球形形状のトナーでしかも上述の特性を有しているものは、今までに提供されていなかった。
【0012】
【特許文献1】特開平9−197781号公報
【特許文献2】特開平9−329947号公報
【特許文献3】特公平5−31146号公報
【特許文献4】特公平5−31147号公報
【特許文献5】特開2004−198675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、EH現像を利用して高い現像効率で高品質現像を長期にわたり安定して行うことができる現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を進めた結果、潜像担持体に対向して配置され、トナーを移動させる進行波電界を発生させるための複数の電極を有する搬送部材を備え、前記搬送部材の電極には、現像領域において、潜像の画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成するn相(nは2以上の整数)の電位が印加されるようにした、潜像担持体上の潜像を現像するための現像装置において、トナーーとして、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、貯留部へ供給し貯留する貯留工程と、前記貯留部に設けたノズルから前記トナー組成液を連続的に放出し柱状状態を形成する工程と、振動手段により、少なくとも前記ノズル又は前記貯留部を振動させる振動工程と前記ノズルから吐出した前記トナー組成液を前記振動手段により液滴化する液滴化工程と、前記液滴化された前記トナー組成液を脱溶媒させることにより固化させる粒子形成工程とを経て作られたトナーを用いることによって上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成した。
【0015】
即ち、本件発明は以下に記載するとおりの構成を有する現像装置、現像方法、画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジである。
(1) 潜像担持体上にトナーを付着させて潜像担持体上の潜像を現像するための現像装置において、前記潜像担持体に対向して配置され、トナーを移動させる進行波電界を発生させるための複数の電極を有する搬送部材を備え、前記搬送部材の電極には、現像領域において、潜像の画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成するn相(nは2以上の整数)の電位が印加され、かつ上記トナーは、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、貯留部へ供給し貯留する貯留工程と、前記貯留部に設けたノズルから前記トナー組成液を連続的に放出し柱状状態を形成する工程と、振動手段により少なくとも前記ノズル又は前記貯留部を振動させる振動工程と、前記ノズルから吐出した前記トナー組成液を前記振動手段により液滴化する液滴化工程と、前記液滴化された前記トナー組成液を脱溶媒させることにより固化させる粒子形成工程とによって作られたものであることを特徴とする現像装置。
(2)前記トナーはトナー組成液を貯留部へ定量的に供給し、貯留部の一部に接する振動手段により、前記貯留部を介して原料流体を励振しながら、貯留部に設けた複数のノズルより該原料液体を造粒空間に放出し、原料流体を柱状から括れ状態を経て液滴化し、該液滴を造粒空間において固体粒子に変化させて得られたトナーであることを特徴とする上記(1)記載の現像装置。
(3)トナーの重量平均粒径と個数平均粒径の比が、1.15以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の現像装置。
(4)トナーの重量平均粒径が、2〜5μmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の現像装置。
(5)外添されていないトナー粒子の水への濡れ性W1と該トナー粉体粒子へ外添剤を外添した後のトナー粉体粒子の水への濡れ性W2の変化率(W2−W1)/W2が0.3以下であるトナーを用いることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の現像装置。
(6)トナーの形状係数SF−1が、105〜150であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の現像装置。
(7)搬送部材の現像領域通過後の領域で、トナーを潜像担持体と反対側に向かわせる方向の電界を形成する手段を備えていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の現像装置。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の現像装置を用いて現像を行うことを特徴とする現像方法。
(9)少なくとも現像装置を含み、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、前記現像装置が上記(1)〜(8)のいずれかに記載の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
(10)潜像担持体上にトナーを付着させて潜像担持体上の潜像を現像して画像を形成する画像形成装置において、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の現像装置若しくは上記(9)に記載のプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置。
(11)カラー画像を形成する画像形成装置において、上記(9)に記載のプロセスカートリッジを複数備えていることを特徴とする画像形成装置。
(12) 潜像担持体上にトナーを付着させて潜像担持体上の潜像を現像して画像を形成する画像形成方法において、上記(8)に記載の現像方法で前記潜像を現像して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る現像装置によれば、現像領域で、搬送部材の電極に対してトナーが潜像の画像部に対しては潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成する電位を与えるので、低電圧駆動が可能で、特定の製法を用いたトナーによって高い現像効率で高品質現像を長期にわたり安定して行うことができる。
さらにこの製法によって得られた均一な粒度分布のトナーにより安定な搬送が実現できる。
また特定の比較的小粒子径のトナーによって高画質の画像が再現できる。
さらに比較的球形に近い形状のトナーによって搬送基板への付着の少ない、また転写性能が良好となり、その結果搬送性が良好で、高画質の画像が再現できる。
また外添剤を混合する前のトナー粒子の水への濡れ性が低いトナーによって、高湿度、高温下でも搬送が安定し、高い現像効率で高品質現像を長期にわたり安定して行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る現像装置によれば、現像領域で、トナーが潜像の画像部に対しては潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成し、現像領域通過後の領域で、トナーが潜像潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成するので、低電圧駆動が可能で、高い現像効率で高品質現像を行うことができるとともに、トナーの飛散をより一層確実に抑制することができる。
【0018】
本発明に係る現像方法によれば、本発明の現像装置を用いて現像するので、飛散トナーを可及的に低減することができ、また、現像品質が向上する。
【0019】
本発明に係るプロセスカートリッジによれば、本発明に係る現像装置を備えているので、低電圧駆動が可能で、高い現像効率で高品質現像を行って高品質画像を形成可能なプロセスカートリッジが得られる。
【0020】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る現像装置或いはプロセスカートリッジを備えているので、高画質画像を形成することができる。
【0021】
本発明に係る画像形成方法によれば、本発明に係る現像方法を用いて潜像を現像して画像を形成するので、飛散トナーが少なく、高画質画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係る現像装置の第1実施形態について図1を参照して説明する。なお、同図は同現像装置の概略構成図である。
なお、本明細書において、EH現象における搬送部材上の粉体の振る舞いを区別して表現する場合、基板水平方向への移動については、「搬送」、「搬送速度」、「搬送方向」、「搬送距離」という表現を使用し、基板垂直方向への飛翔(移動)については、「ホッピング」、「ホッピング速度」、「ホッピング方向」、「ホッピング高さ(距離)」という表現を使用し、搬送部材上での「搬送及びホッピング」は「移送」と総称する。なお、搬送装置、搬送基板という用語に含まれる「搬送」は「移送」と同義である。
【0023】
この現像装置は、粉体であるトナーTを搬送、ホッピング、回収するための電界を発生するための複数の電極102を有する搬送部材である搬送基板1を備え、この搬送基板1の各電極102に対しては駆動回路2から所要の電界を発生させるためのn相(ここでは3相とする。)の異なる駆動波形Va1〜Vc1及びVa2〜Vc2が印加される。
【0024】
ここでは、搬送基板1は、駆動波形Va1〜Vc1及びVa2〜Vc2を与える電極102の範囲及び潜像担持体である感光体ドラム10との関係において、トナーTを感光体ドラム10近傍まで移送する搬送領域11、感光体ドラム1の潜像にトナーTを付着させてトナー像を形成するための現像領域12、トナーTを搬送基板1側に回収するための現像領域通過後の領域(これを、以下「回収領域」という。)13とに分けられる。
【0025】
そして、この現像装置1は、搬送基板1の搬送領域11ではトナーTを感光体ドラム10の近傍まで移送し、現像領域12では感光体ドラム10上の潜像の画像部に対してはトナーTがドラム10側に向かい、非画像部に対してはトナーTがドラム10と反対側(搬送基板側)に向かう方向の電界を形成して、トナーTを潜像に付着させて現像を行うための電界を発生し、回収領域13ではトナーTが潜像の画像部及び非画像部のいずれに対しても感光体ドラム10と反対側(搬送基板側)に向かう方向の電界を形成する。
【0026】
これにより、現像領域では感光体ドラム10上の潜像にトナーが付着して可視像化され、現像に寄与しなかったトナーは感光体ドラム10の回転方向(移動方向)下流側の回収領域で搬送基板1側に回収されるので、飛散トナーの発生が防止される。なお、回収領域は現像領域よりも潜像担持体の移動方向下流側とすることで、確実に浮遊トナーの回収を行うことができる。
【0027】
ここで、搬送部材の電極に印加される電圧の平均値電位が、潜像の画像部電位と非画像部電位の間となる電位であることが好ましい。また、搬送部材の電極に印加される電圧の波形はパルス電圧と直流バイアス電圧とを重畳した波形であることが好ましい。この場合、直流バイアス電圧を出力する手段を有し、この手段は直流バイアス電圧の値を変化可能なことが好ましい。
また、搬送部材の電極に印加される電圧の波形はパルス状波形であることが好ましい。さらに、搬送部材に印加される電圧の波形にパルス状波形を含み、パルス状波形のうち搬送部材からトナーが反発飛翔する電位が、潜像の画像部電位と非画像部電位の間となる電位であることが好ましい。
【0028】
本発明に係る現像装置は、更に搬送部材の現像領域通過後の領域でトナーが潜像潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成する手段を備えているものが好ましい。
また、本発明に係る現像装置は、現像領域で、粉体が潜像の画像部に対しては潜像担持体側に向かい、非画像部に対しては粉体が潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成し、現像領域通過後の領域で、粉体が潜像潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成する手段を備えているものである。
【0029】
ここで、現像領域通過後に形成される電界の強さは潜像担持体に付着したトナーを潜像担持体面より引き剥がさない範囲であることが好ましい。
また、電界を発生する手段は、トナーを搬送させるための進行波電界を発生させるための複数の電極を有する搬送部材を有し、この搬送部材の各電極にn相の電位が印加されることが好ましい。
【0030】
この場合、潜像担持体側の電位に対して進行波電界を発生させるために搬送部材に印加される電位が、現像領域で、粉体が潜像の画像部に対しては潜像担持体側に向かい、非画像部に対しては粉体が潜像担持体と反対側に向かう方向の電界が形成され、現像領域通過後の領域で、粉体が潜像潜像担持体と反対側に向かう方向の電界が形成される電位であることが好ましい。
【0031】
また、負帯電トナーを用いる場合には、搬送部材に印加される電圧の平均値電位が、現像領域では潜像の画像部電位と非画像部電位の間となり、現像領域通過後の領域では潜像の画像部電位と非画像部電位の両電位よりも高い電位であることが、正帯電トナーを用いる場合には、搬送部材に印加される電圧の平均値電位が、現像領域では潜像の画像部電位と非画像部電位の間となり、現像領域通過後の領域では潜像の画像部電位と非画像部電位の両電位よりも低い電位であることが好ましい。
【0032】
さらに、潜像担持体と搬送部材との間のギャップに応じて搬送部材に異なるバイアス電圧が印加され、又は搬送部材に印加される電位が異なることが好ましい。或いは、潜像担持体と搬送部材との間のギャップが現像領域と現像領域通過後の領域で略同じであることが好ましく、この場合、搬送部材が湾曲面を形成可能な部材で形成されていることが好ましく、更に搬送部材の湾曲面を形成している部分が現像領域通過後の領域であることが、搬送部材の湾曲面を形成している部分は潜像担持体との間のギャップが潜像担持体の移動方向下流側ほど広くなっていることが好ましい。
【0033】
さらにまた、負帯電トナーを用いる場合には、搬送部材の電極に対して、現像領域では0〜−V1の電圧が、現像領域通過後の領域では0〜+V2の電圧が印加されること、正帯電トナーを用いる場合には、搬送部材の電極に対して、現像領域では0〜+V3の電圧が、現像領域通過後の領域では0〜−V4の電圧が印加されることが好ましく、これらの場合、搬送部材の電極に対して印加する駆動波形を生成する回路にはクランプ回路を含むことが好ましい。
【0034】
また、負帯電トナーを用いる場合には、搬送部材の電極に対して、現像領域では−V5〜−V6(V5>V6)の電圧が、現像領域通過後の領域では+V7〜+V8(V8>V7)電圧が印加されること、正帯電トナーを用いる場合には、搬送部材の電極に対して、現像領域では+V9〜V10(V10>V9)の電圧が、現像領域通過後の領域では−V11〜−V12(V12>V11)の電圧が印加されることがより好ましく、これらの場合、搬送部材の電極に対して印加する駆動波形を生成する回路にはクランプ回路を含み、このクランプ回路には直流バイアス電圧を発生する手段を含むことが、そして、直流バイアス電圧を発生する手段は直流バイアス電圧の値を変化可能なことがより好ましい。
【0035】
次に、この現像装置における搬送基板1の構成について図2ないし図6を参照して詳細に説明する。なお、図2は同搬送基板1の平面説明図、図3は図2のA−A線に沿う断面説明図、図4は図2のB−B線に沿う断面説明図、図5は図2のC−C線に沿う断面説明図、図6は図2のD−D線に沿う断面説明図である。
【0036】
この搬送基板1は、ベース基板(支持基板)101上に3本の電極(搬送電極)102a、102b、102c(これらを「電極102」とも総称する。)を1セットとして、所定の間隔で、トナー移送方向(トナー進行方向、トナー移動方向:図2、図3で矢示方向とする。)に沿ってトナー移送方向と略直交する方向に繰り返し形成配置し、この上に搬送面を形成する絶縁性の搬送面形成部材となり、電極102の表面を覆う保護膜となる、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層103を積層したものである。なお、ここでは、表面保護層103が搬送面を形成しているが、表面保護層103上に更に粉体(トナー)との適合性に優れた表面層を別途成膜することもできる。
【0037】
これらの電極102a、102b、102cの両側には、電極102a、102b、102cとそれぞれ両端部で相互接続した共通電極105a、105b、105c(これらを「共通電極105」とも総称する。)をトナー移送方向に沿って、すなわち、個々の電極と略直交する方向に設けている。この場合、共通電極105の幅(この幅は、トナー移送方向と直交する方向の幅)は電極102の幅(この幅は、トナー移送方向に沿う方向の幅)よりも広くしている。なお、図2では、共通電極105を、搬送領域11では共通電極105a1、105b1、105c1を、現像領域12では共通電極105a2、105b2、105c2、回収領域13では共通電極105a3、105b3、105c3と、区別して表記している。
【0038】
ここでは、支持基板101上に共通電極105a、105b、105cのパターンを形成した後層間絶縁膜107(表面保護層103と同じ材料でも異なる材料のいずれでも良い。)を形成し、この層間絶縁膜107にコンタクトホール108を形成した後、電極102a、102b、102cを形成することによって電極102a、102b、102cと共通電極105a、105b、105cとをそれぞれ相互接続している。
【0039】
なお、電極102aと共通電極105aを一体形成したパターン上に層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜上に電極102bと共通電極105bを一体形成したパターンを形成し、更に層間絶縁膜107を形成して、この層間絶縁膜上に電極102cと共通電極105cを一体形成したパターンを形成する、つまり、電極を三層構造とすることもでき、あるいは、一体形成に相互接続とコンタクトホールによる相互接続とを混在させることもできる。
【0040】
さらに、これらの共通電極105a、105b、105cには図示しないが駆動回路2からの駆動信号(駆動波形)Va、Vb、Vcを入力するための駆動信号印加用入力端子を設けている。この駆動信号入力用端子は、支持基板101に裏面側に設けてスルーホールを介して共通電極105に接続してもよいし、あるいは後述する層間絶縁膜107上に設けてもよい。
【0041】
ここで、支持基板101としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、或いは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
【0042】
電極102は、支持基板101上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成している。これらの複数の電極102の粉体進行方向における幅Lは移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極102、12の粉体進行方向の間隔Rも移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0043】
表面保護層103としては、例えばSiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta25などを厚さ0.5〜10μm、好ましくは厚さ0.5〜3μmで成膜して形成している。また、無機ナイトライド化合物、例えばSiN、Bn、Wなどを用いることができる。特に、表面水酸基が増えると帯電トナーの帯電量が搬送途中で下がる傾向にあるので、表面水酸基(SiOH、シラトール基)が少ない無機ナイトライド化合物が好ましい。
【0044】
次に、このように構成した搬送基板1におけるトナーの静電搬送の原理について説明する。
搬送基板1の複数の電極102に対してn相の駆動波形を印加することにより、複数の電極102によって移相電界(進行波電界)が発生し、搬送基板1上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて移送方向にホッピングと搬送を含んで移動する。
【0045】
例えば、搬送基板1の複数の電極102に対して図7に示すようにグランドG(0V)と正の電圧+との間で変化する3相のパルス状駆動波形(駆動信号)A(A相)、B(B相)、C(C相)をタイミングをずらして印加する。
このとき、図8に示すように、搬送基板1上に負帯電トナーTがあり、搬送基板1の連続した複数の電極102に同図に(i)で示すようにそれぞれ「G」、「G」、「+」、「G」、「G」が印加されたとすると、負帯電トナーTは「+」の電極102上に位置する。
【0046】
次のタイミングで複数の電極102には(ii)に示すようにそれぞれ「+」、「G」、「G」、「+」、「G」が印加され、負帯電トナーTには同図で左側の「G」の電極102との間で反発力が、右側の「+」の電極102との間で吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは「+」の電極102側に移動する。さらに、次のタイミングで複数の電極102には(iii)に示すようにそれぞれ「G」、「+」、「G」、「G」、「+」が印加され、負帯電トナーTには同様に反発力と吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは更に「+」の電極102側に移動する。
【0047】
このように複数の電極102に電圧の変化する複相の駆動波形を印加することで、搬送基板1上には進行波電界が発生し、この進行波電界の進行方向に負帯電トナーTは搬送及びホッピングを行いながら移動する。なお、正帯電トナーの場合には駆動波形の変化パターンを逆にすることで同様に同方向に移動する。
【0048】
これを図9を参照して具体的に説明すると、同図(a)に示すように、搬送基板1の電極A〜Fがいずれも0V(G)で搬送基板1上に負帯電トナーTが載っている状態から、同図(b)に示すように電極A、Dに「+」が印加されると、負帯電トナーTは電極A及び電極Dに吸引されて電極A、D上に移る。次のタイミングで、同図(c)に示すように、電極A、Dがいずれも「0」になり、電極B、Eに「+」が印加されると、電極A、D上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極B、Eの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極B及び電極Eに移送される。さらに、次のタイミングで、同図(d)に示すように、電極B、Eがいずれも「0」になり、電極C、Fに「+」が印加されると、電極B、E上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極C、Fの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極C及び電極Fに移送される。このように進行波電界によって負帯電トナーは順次図において右方向に移送されることになる。
【0049】
次に、駆動回路2の全体構成について図10を参照して説明する。
この駆動回路2は、パルス信号を生成出力するパスル信号発生回路21と、このパルス信号発生回路21からのパルス信号を入力して駆動波形Va1、Vb1、Vc1を生成出力する波形増幅器22a、22b、22cと、パルス信号発生回路21からのパルス信号を入力して駆動波形Va2、Vb2、Vc2を生成出力する波形増幅器23a、23b、23cとを有する。
【0050】
パルス信号発生回路21は、例えばロジックレベルの入力パルスを受けて、各120°に位相シフトした2組みパルスで、次段の波形増幅器22a〜22c、23a〜23cに含まれるスイッチング手段、例えばトランジスタを駆動して100Vのスイッチングを行うことができるレベルの出力電圧10〜15Vのパルス信号を生成して出力する。
【0051】
波形増幅器22a、22b、22cは、搬送領域11の各電極102及び回収領域13の各電極102に対して、例えば図11に示すように、各相の+100Vの印加時間taを繰り返し周期tfの1/3である約33%に設定した(これを「搬送電圧パターン」又は「回収搬送電圧パターン」という。)3相の駆動波形(駆動パルス)Va1、Vb1、Vc1を印加する。
【0052】
波形増幅器23a、23b、23cは、現像領域11の各電極102に対して、例えば図12又は図13に示すように、各相の+100V又は0Vの印加時間taを繰り返し周期tfの2/3である約67%に設定した(これを「ホッピング電圧パターン」という。)3相の駆動波形(駆動パルス)Va2、Vb2、Vc2を印加する。
【0053】
そこで、搬送基板1を用いたEH現像の原理について説明する。EH現像はトナーの静電搬送を利用するものであるが、従来の静電搬送を用いた現像装置のように、静電搬送に伴なって自然発生的に生じるトナーのスモーク化、クラウド化を利用して現像するのではなく、トナーを積極的に潜像担持体に向かって打ち上げて現像するものである。
【0054】
トナーの粒度分布は均一な方がクラウド化がすべてのトナー粒子で同じ高さで行われ、すべてのトナー粒子が同一の現像機会に恵まれることにより、実機内部でのトナー選択が行われにくくなる。特にトナーの重量平均粒径と個数平均粒径の比が、1.15以下であることにより特定の小粒子や大粒子のトナーがとり残される事がなくなる。また1.10以下の単分散性に近い粒度分布を保有することがさらに好ましい。
一般に、トナーの粒径が小さくなることにより、静電潜像に忠実な現像が行なわれることで、高い解像力の画像が得られる。トナー粒径は、本発明の目的を達成する為に、重量平均粒径が2〜5μmであることが好ましく、2μmよりも小さい場合には、搬送基板との付着力が大きくなり、搬送性が不十分になる場合があり、逆に5μmより大きい場合には、ドット再現性が不十分になり、ハーフトン部分の粒状性も悪化して、高精細な画像が得られなくなる場合がある。
【0055】
トナーの重量平均粒径は次の測定方法により測定する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールターエレクトロニクス社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして50μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(D4)を求めることができる。
【0056】
また、トナーの形状係数SF−1が、105〜150でより球形に近い形状であることが、現像性に優れる。これは、球形に近いトナーの場合は、搬送基板との付着力が小さいためと考えられる。
またトナーの帯電電荷が曲率の小さい突起部に集中せずに表面で均一に帯電しているため、基板上の移動もスムーズに行われるためと考えられる。
なお、形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) ・・・式(1)
【0057】
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。110未満の場合は現像後の感光体、や中間転写体からのクリーニングが困難になり、150を超えると前記した付着力や帯電の均一性の問題が発生する。
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算する。具体的には日立製作所製FE−SEM(S−800)を用い1000倍に拡大した2μm以上のトナー粒子像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報はインターフェースを介して、例えばニレコ社製画像解析装置(Luzex III)に導入し解析を行なった。
【0058】
このような粒度分布の狭い、小粒径のトナーはいわゆるケミカルトナーといわれる水中造粒法によって効率的に製造することができるが、界面活性剤等の親水性物質がトナーに残存することにより高湿下での流動性や帯電性が低下し、搬送性能が極端に不良となる。したがってトナーの疎水性は重要な因子であり、外添されていないトナー粒子の水への濡れ性W1と該トナー粉体粒子へ外添剤を外添した後のトナー粉体粒子の水への濡れ性W2の変化率(W2−W1)/W2が0.3以下であることが好ましいことが判明した。さらに0.2以下であることがさらに好ましい。高温高湿下でトナーが吸湿し、帯電性能が低下、流動性向上効果が得られなくなるため、搬送性、転写性が変動したり、それに起因して画像上のムラが目立つなどの課題を有しているのが現状である。
【0059】
(水への濡れ性変化率の測定方法)
W1の測定には、50μmの篩を通過させた外添前のトナー粒子を用いる。
W2の測定には、前記トナー粒子に以下で述べるHDK H2000外添剤(ヘキスト社製)をトナー粒子に対し1重量%使用し、機械的に攪拌混合し、50μmの篩を通過させたものを用いる。
【0060】
(W1、W2の測定方法)
粉体粒子0.2gとイオン交換水20gを直径5mm長さ15mmの磁石攪拌子を入れた、容量30mlのスクリューバイアルに水、粉体の順に入れる。
マグネチックスターラーにより表面に浮いている粉体を内部に巻き込まないように注意しながら300rpmの攪拌速度で4時間攪拌する。
その後、攪拌しながら浮遊している粒子を吸引しないように、バイアル中間部よりピペットにより約5ccサンプリングし、すぐに透過率測定に移る。
【0061】
(透過率の測定)
スガ試験機社製の直読ヘイズコンピューター(HGM20DP型)の専用セルにサンプリングした液を入れ、平行光線透過率により、スクリューバイアルに浮いていないトナー濃度に相当する値を測定し、この値W1、W2を各々測定することによって(母体粒子の平行光線透過率、W1、外添後の粒子の平行光線透過率、W2である)、変化率、(W2−W1)/W2が計算される。
【0062】
外添剤としては後に流動性向上材としての項目でも述べるが、無機酸化物が代表的なものとして選ばれるが特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、チタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモンなどが挙げられ、これらの中でも、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0063】
前記シリカ微粒子としては、市販品を用いることができ、例えば、HDK H2000、HDK H2000/4、HDK H2050EP、HVK21、HDK H1303(いずれもヘキスト社製);R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも日本アエロジル株式会社製)、などが挙げられる。
その他ゾルゲル法、乾式火炎法によって製造されたシリカ、樹脂微粒子も好適な例として挙げられる。
【0064】
また、前記外添剤としては、BET比表面積が20〜250m2/gのシリカ微粉子をシリコーンオイルで表面処理したものが好ましい。
前記比表面積は、BET法に従い、比表面積測定装置(「オートソーブ1」;湯浅アイオニクス社製)を用い、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0065】
前記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル等が使用できる。
【0066】
(外添剤平均粒子径)
外添剤の粒子径は比較的大きな50nmから200nmのものと、小粒径の50nm以下のものとを併用することが好ましい。大粒子径外添剤が小粒子径の外添剤のトナー表面での埋没を防止するからである。
本発明に使用される無機微粒子の粒子径は、動的光散乱を利用する粒径分布測定装置、例えば(株)大塚電子製のDLS−700やコールターエレクトロニクス社製のコールターN4により測定可能である、しかし、微粒子の二次凝集を解離する事は困難であるため、走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により得られる写真より直接粒径を求めることが好ましい。より好ましくはトナー表面の外添剤をFE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)により10万倍の倍率で観察することが好ましい。この場合少なくとも100個以上の微粒子を観察しその長径の平均値を求める。トナー表面で外添剤が凝集構造をとっている場合は凝集体を構成する単独の一次粒子の長径を求める。
【0067】
[トナー製造方法]
本発明において用いるトナー粒子は、少なくとも結着樹脂と着色剤を含むトナー組成物原料流体を、貫通孔(ノズル)を設けた貯留部に貯留し、該貯留部を振動手段によって振動させて前記トナー組成物原料液体を前記貫通孔より放出させて前記トナー組成物原料流体を柱状状態から括れ状態を経て液滴化し、該液滴を造粒空間において固体粒子に変化させることによって得られる。
前記トナー粒子製造装置における振動手段の数Xと、前記貫通孔の数Yは10xX≦Y≦10000xXであることが好ましく、前記振動手段は、前記貯留部を構成する一部に接し、前記貯留部を介して、前記トナー組成物原料流体を励振する。この励振によって前記トナー組成物原料流体は滴化し、その液滴が乾燥され固形トナー粒子となればよい。
本発明における液柱の液滴化現象を図21を用いて説明する。
【0068】
[液滴化現象]
図21は液中の液滴化現象を表した模式図である。液柱の均一液滴化現象は下記非特許文献1に説明されるように、液柱が最も不安定になる波長条件λは、液柱直径d(jet)を用いて下記の式(1)で表される。
λ = 4.5d(jet) (1)
ここで、発生する擾乱現象の周波数fは、液柱の速度をvとした場合下記の式(2)で表すことが出来る。
f = v/λ (2)
また、下記非特許文献2で説明されるように、実験的に安定に均一粒子を形成する条件を導いた結果、下記の式(3)の条件において安定的に均一粒子を形成することが可能であるとしている。
3.5 < λ/d(jet) < 7.0 (3)
更には、下記非特許文献3で説明されるように、エネルギー保存則を基に、貫通孔より排出される液が、液柱を形成する最小ジェット速度v(min)は下記の式(4)のように表現される。
v(min) = (8σ/ρd(jet))1/2 (4)
式(4)において、σは液の表面張力、ρは液密度、d(jet)は液柱の直径を表す。式(1)から式(4)の条件式はこのような現象を再現するための条件を推定するために有用であるが、我々は、これらの関係式は液物質の種類、混合物、分散物等によって変動し得ることを確認しているが、振動子を液室に取り付け、これを振動数fにおいて振動することにより液柱が、上記のような擾乱によって液滴化する現象は様々な液体において成立した。
【0069】
[非特許文献1] Rayleigh, Lord “On the Instability of Jets” Proc. London Math. Soc. 110:4 [1878]
[非特許文献2] Schneider J. M., C. D. Hendricks, Rev. Instrum. 35 (10), 1349−50 [1964]
[非特許文献3] Lindblad N. R. and J. M. Schneider, J. Sci. Instrum. 42, 635 [1965]
【0070】
[トナー粒子製造装置]
本発明の粒子製造方法もしくはトナー粒子製造方法に使用される装置(以下、「トナー粒子製造装置」ともいう。)としては、本製造方法により、トナーを製造可能な装置であれば、特に制限はなく、適宜選択して使用することができるが、少なくとも前記トナー組成物原料流体を貯留する、複数の貫通孔を設けた貯留部と、振動手段と、前記振動手段を保持する支持手段とを備えており、前記貫通孔より放出される前記トナー組成物原料液体が貯留部へ定量的に供給され、前記貫通孔より定量的に放出されるようになっており、1つの前記振動手段に対して、前記貫通孔が複数配置されており、前記振動手段は、前記貯留部を構成する一部に接し、前記貯留部を介して、前記トナー組成物原料流体を励振する構成となっている液滴形成手段と、該液滴中に含まれる溶媒を除去することにより前記液滴を乾燥させ、トナー粒子を形成するトナー粒子形成手段とを有するトナー製造装置によるのが好ましい。
【0071】
前記好ましいトナー製造装置としては、例えば、図22に示すように、少なくとも、前記液滴形成手段としての、少なくとも前記トナー組成物原料流体を貯留する貯留部1と、振動手段2と、前記振動手段を保持する支持手段3と、前記複数の貫通孔4を有し、前記貫通孔より放出される前記トナー組成物原料液体が貯留部へ定量的に供給され、前記貫通孔より定量的に放出するための液供給手段5と、前記トナー粒子形成手段としての、溶媒除去設備6と、トナー捕集部7とを有する装置が好適に挙げられる。
以下、前記トナー製造装置について、各部材毎にさらに詳述する。
【0072】
(貯留部)
貯留部は、少なくとも、前記トナー組成物原料流体を加圧された状態において保持される必要があるため、SUS、アルミなどの金属等の部材からなり、10MPa程度の耐圧性があることが望ましいが、これに限るものではない。また、例えば、図23に示すように、貯留部へ液を供給する配管8で接続され、貫通孔を有する板を保持する機構9を設けた構造が望ましい。また、貯留部全体を振動する振動手段2が、前記貯留部には接している。振動手段には振動発生装置10と導電線11が接続されており、制御される形態が望ましい。貯留部内の圧力調整を行ったり、内部の気泡を除去するための開放弁12を設けることが、液柱の安定形成を行う上で好ましい。
【0073】
(振動手段)
前記振動手段2は、一つの振動手段により、該貫通孔を有する貯留部全体を励振させるのが好ましい。
前記貯留部1に振動を与える振動手段2としては、確実な振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができるが、上述の観点から、例えば、前記貫通孔が、圧電体の伸縮により一定の周波数で振動されるのが好ましい。
前記圧電体は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧を印加することにより、伸縮し、この伸縮により、貫通孔を振動させることができる。
【0074】
前記圧電体としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さい為、積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO、等の単結晶、などが挙げられる。
前記一定の周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100kHz乃至10MHzが好ましく、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から、200kHz乃至2MHzがより好ましい。
【0075】
前記振動手段2は、貯留部と接しており、貯留部は貫通孔を有する板が保持されており、前記振動手段と貫通孔を有する板は、貫通孔から発生する液柱に振動を均一に与える観点から、平行に配置されていることが最も好ましく、振動の過程における変形が起こっても、その関係は傾きが10°以内に保たれることが望ましい。
前記貫通孔4は、1個のみ設けても粒子生産は可能であるが、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を効率よく発生させる観点から、複数個設け、各貫通孔から吐出される液滴を、一の溶媒除去設備、図示の例では、溶媒除去設備6で乾燥させるのが好ましい。
【0076】
更なる生産性の向上の観点から、前記振動手段を有する貯留部も複数設けることが、より好ましい。この際、トナー粒子の生産性は、単位時間あたりに発生する液滴の個数(周波数)と、振動手段の数と、1つの振動手段により作用する貫通孔の数の積で決定されるが、操作性の観点から、可能な限り1つの振動手段により作用する貫通孔の数、つまり1つの貯留部の有する貫通孔の数が多ければよいが、無制限に多いと、粒子径の均一性を保てない。従って、前記一個の振動手段により振動させる一個の貯留部に付随する貫通孔の個数としては、生産性と制御性の観点から、10乃至10,000であるのが好ましい。極めて均一な粒子径を有する微小液滴をより確実に発生させるために、より好ましくは、10乃至1,000であることが望ましい。
【0077】
(支持手段)
前記振動手段2の一部を、固定支持するための支持手段3は、装置に貯留部及び振動手段を固定するために設けられており、材質に限定は特に無いが、金属などの剛体であればよい。必要によっては余分な共振による貯留部の振動の乱れを発生させないために、振動緩和材としてのゴム材、樹脂材などが一部に設けられることもできる。
【0078】
(貫通孔)
前記貫通孔4は、先にも述べたように、前記トナー組成物原料流体を、液柱として吐出させる部材である。前記貫通孔の材質及び形状としては、特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができるが、例えば、吐出孔が、厚み5〜50μmの金属板で形成され、かつ、その開口径が1〜40μmであることが、前記トナー組成物原料流体中に含まれる1μm以下の微粒子分散物を閉塞させることなく、かつ100kHz以上の振動周波数で極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させることを両立させる観点から好ましい。これは、前記液滴化現象により安定的に液滴を得ることが可能な周波数領域は、実質上貫通孔の直径が大きくなるにつれて減少するため、生産性を考慮して、100kHz以上の振動周波数を想定している。なお、前記開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。
【0079】
(送液供給・加圧手段)
前記共通液室へ液を供給する液供給手段5としては、チューブポンプ、ギアポンプ、ロータリーポンプ、シリンジポンプなどの定量ポンプであることが望ましい。また、圧縮空気などによって加圧し送液するタイプのポンプであってもよい。これら液供給手段で前記共通液室は前記トナー組成物原料流体で満たされ、更に液滴化可能な圧力まで昇圧することが可能である。液圧力はポンプ付属の圧力ゲージまたは専用の圧力センサにて測定が可能である。
【0080】
(溶媒除去設備)
前記溶媒除去設備6としては、液滴13の溶媒を除去することができれば特に制限はないが、液滴13の飛翔方向と同方向に乾燥気体14を流すことにより気流を発生させ、該気流により、液滴13を溶媒除去設備6内で搬送させると共に、該搬送中に前記液滴13中の溶媒を除去させることにより、トナー粒子15を形成するのが好ましい。なお、ここで、「乾燥気体」とは、大気圧下の露点温度が−10℃以下の状態の気体を意味する。前記乾燥気体としては、液滴13を乾燥可能な気体であれば特に制限はなく、例えば、空気、窒素ガス、などが好適に挙げられる。
前記乾燥気体を溶媒除去設備6に流す方法としては、特に制限はないが、例えば乾燥気体供給チューブを溶媒除去設備に接続して溶媒除去設備内に乾燥気体を流す方法が挙げられる。
前記乾燥気体の温度は、乾燥効率の面においてはより高温である方が好ましく、また噴霧乾燥の特性上、使用する溶媒の沸点以上の乾燥気体を使用したとしても、乾燥途中の恒率乾燥領域では液滴温度が溶媒沸点以上に上昇することはなく、得られるトナーに熱的損傷を与えることはない。しかしながら、トナーの主構成材料が熱可塑性樹脂であることから、乾燥後すなわち減率乾燥領域において、使用する樹脂の沸点以上の乾燥気体にさらされると、トナー同士が熱融着を発生しやすくなり、単分散性が損なわれる危険性がある。したがって、前記乾燥気体の温度は、具体的には、例えば、40〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましく、75〜85℃が特に好ましい。
【0081】
(トナー捕集部)
前記トナー捕集部7は、トナーを効率的に捕集し、搬送する観点から、トナー粒子製造装置の底部に設けられた部材である。
前記トナー捕集部7の構造としては、トナーを捕集できれば特に制限はなく、適宜選択することができるが、上述の観点から、図示の例のように、開口径が漸次縮小するテーパー面を有してなり、該開口径が入口部より縮小した出口部から、トナー粒子15を、乾燥気体14を用い、該乾燥気体の流れを形成し、該乾燥気体の流れにより、トナー粒子をトナー貯蔵容器に移送させるのが好ましい。
前記移送の方法としては、図示の例のように、乾燥気体により、トナー粒子15をトナー貯蔵容器に圧送してもよいし、トナー貯蔵容器側からトナー粒子15を吸い込んでもよい。
前記乾燥気体の流れとしては、特に制限はないが、遠心力を発生させて確実にトナー粒子15を移送できる観点から、渦流であることが好ましい。
さらに、該トナー粒子15の搬送をより効率的に行う観点から、トナー捕集部、及びトナー貯蔵容器が、導電性の材料で形成され、かつ、これらがアースに接続されているのがより好ましい。また、前記トナー製造装置は、防曝仕様であることが好ましい。
【0082】
[作用]
以上の詳細に説明した本発明のトナー粒子製造方法によれば、1貫通孔から発生する液滴の粒子数は、1秒当たり数万乃至数百万個と、非常に多く、貫通孔の閉塞も起こりづらい。また、このため、非常に均一な液滴径が得られ、充分な生産性を有する観点からも、トナーを生産するのに最も好適な方法といえる。
本発明のトナー粒子製造装置は、10〜10,000という多数の貫通孔における液滴化現象を、1つの振動手段で極めて均一に制御できることから、上記の生産性に加えて、極めて生産性の高いトナーの製造装置であるといえる。
従来の製造方法では、使用する材料によって粒度が大きく変化することが多いが、本製造方法では、吐出する際の液滴径と、固形分濃度とを管理することにより、設定した通りの粒径を有する粒子を連続して得ることが可能になる。
また、本発明により得られたトナーは極めて均一な粒子径を有することから、トナー母体における流動性が非常に高い。そのため、製造装置等への付着力低下を目的として外添剤を加える場合においても、極めて少量でその効果を発揮することができる。ストレスによる外添剤の劣化や微粒子の人体への安全性を考えると、このような外添剤を極力使用しないことが好ましいので、これも本発明の利点といえる。
【0083】
[トナー]
本発明のトナーは、先に述べた、本発明のトナー製造方法により製造されたトナーである。
該トナーは、前記トナー製造方法により、粒度分布が単分散に近いものが得られる。
本発明で使用できるトナー材料は、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。また、上記材料を熱溶融混練し得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液を、前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的のトナーを得ることも可能である。
【0084】
[トナー用材料]
前記トナー用材料としては、少なくとも樹脂と着色剤とを含有し、必要に応じて、ワックス等のその他の成分を含有する。
【0085】
(樹脂)
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0086】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、などが挙げられる。
【0087】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0088】
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0089】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0090】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
【0091】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部用いることが好ましく、0.03〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0092】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエ−ト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
【0093】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0094】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0095】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。 ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
前記3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0096】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などがあげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
【0097】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0098】
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0099】
本発明のトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0100】
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式(1)で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W (1)
【0101】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であるのが好ましく、40〜75℃であるのがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0102】
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
磁性体として具体的に例示すると、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0103】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0104】
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0105】
(着色剤)
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0106】
本発明で用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0107】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質
量部が好ましい。
【0108】
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0109】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
【0110】
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、50質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0111】
(その他の成分)
<ワックス>
また、本発明では、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。 本発明のワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0112】
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0113】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0114】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0115】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
【0116】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
【0117】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャートロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0118】
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0119】
<外添剤>
本発明のトナーには、外添剤といわれる流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
前記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。
【0120】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIEGMBH社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
【0121】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0122】
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0123】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m/g以上が好ましく、60〜400m/gがより好ましい。 表面処理された微粉体としては、20m/g以上が好ましく、40〜300m/gがより好ましい。
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
【0124】
本発明のトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。 これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0125】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。
使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
【0126】
本発明の現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【0127】
[キャリア]
本発明におけるトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。前記キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアも樹脂コートキャリアも使用することができる。
前記樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。
該被覆材に使用する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が好適に挙げられる。この他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆(コート)材として使用できる樹脂が挙げられる。
【0128】
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解若しくは懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が適用できる。
前記樹脂コートキャリアに対する樹脂被覆材の割合としては、適宜決定すればよいが、樹脂コートキャリアに対し0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
2種以上の混合物の被覆(コート)剤で磁性体を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものが挙げられる。
【0129】
前記樹脂中、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂が好適に使用され、特にシリコーン樹脂が好ましい。
含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応することにより生成された、変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0130】
キャリアコアの磁性材料としては、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金を用いることができる。
また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。これらの中でも特に、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが好適に挙げられる。
【0131】
前記キャリアの抵抗値としては、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して10〜1010Ω・cmにするのがよい。
前記キャリアの粒径としては、4〜200μmのものが使用できるが、10〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。特に、樹脂コートキャリアは、50%粒径が20〜70μmであることが好ましい。
2成分系現像剤では、キャリア100質量部に対して、本発明のトナー1〜200質量部で使用することが好ましく、キャリア100質量部に対して、トナー2〜50質量部で使用するのがより好ましい。
【0132】
次に、本発明に係る現像装置を含む本発明に係る画像形成装置の第1実施形態について図14を参照して説明する。
この画像形成装置の全体の概略及び動作を説明すると、潜像担持体である感光体ドラム301は基体302上に感光体層303を形成してなり、同図で矢示方向に回転駆動される。この感光体ドラム301は帯電装置305によって一様に帯電され、露光部306からの読み取り画像に応じたレーザー光による書き込みにより、感光体ドラム301の表面に静電潜像が形成される。
【0133】
そして、この感光体ドラム301表面の静電潜像は、本発明に係る現像装置316によってトナーが付着されて可視像化され、この可視像は、給紙カセット317から給紙された転写紙(記録媒体)319に転写電源321からの電圧が印加される転写コロ320によって転写され、この可視像が転写された転写紙319は、感光体ドラム301の表面より分離されて、定着ユニット323のローラ間を通って、可視像が定着され、機外の排紙トレイへと排紙される。
一方、転写が終了した感光体ドラム301の表面に残留しているトナーはクリーニング装置325によって除去され、感光体ドラム301の表面に残留している電荷は除電ランプ326によって消去される。
【0134】
そこで、現像装置316について説明すると、現像装置316内には粉体であるトナーの帯電を施す部材の一例として帯電ブラシ331a、331bの両ブラシが接触するように配置され回転動作し、トナータンク332から送り込まれるトナーTはブラシ331a、331bによる摩擦を受けて帯電が施される。
【0135】
帯電が施されトナーは、搬送基板341に送り込まれ、この搬送基板341上を搬送、ホッピングされて潜像担持体301に対向する現像領域に送られて、所要の現像を行った後、現像に供されなったトナーは搬送基板341の終端から落下して、逆送搬送基板342によってトナーに帯電を施す部材(帯電ブラシ331b)に逆送される。
【0136】
なお、搬送基板341及び逆送搬送基板342の構成は、前記搬送基板1と同様であり、搬送基板341及び逆送搬送基板342の各電極に駆動波形を与える駆動回路の構成も図示は省略するが、前記現像装置の各実施形態で説明したものと同様である。また、用いるトナーは前記製法で作られたものである。
このように構成することで、飛散トナーが少なく、高い現像品質で現像を行って高画質の画像を形成することができる。
【0137】
次に、本発明に画像形成装置の第2実施形態について図15を参照して説明する。なお、同図は同画像形成装置の全体概略構成図である。
この画像形成装置の全体の概略及び動作を説明すると、潜像担持体である感光体ドラム401(例えば、有機感光体:OPC)は同図で時計方向に回転駆動される。コンタクトガラス402上に原稿を載置し、図示しないプリントスタートスイッチを押すと、原稿照明光源403とミラー404とを含む走査光学系405と、ミラー406、407を含む走査光学系408とが移動して、原稿画像の読み取りが行われる。
【0138】
ここで、走査された原稿画像がレンズ409の後方に配置した画像読み取り素子410で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化され画像処理される。そして、この画像処理をした信号でレーザーダイオード(LD)を駆動し、このレーザーダイオードからのレーザー光をポリゴンミラー413で反射した後、ミラー414を介して感光体ドラム401上に照射する。この感光体ドラム401は帯電装置415によって一様に帯電されており、レーザー光による書き込みにより、感光体ドラム401の表面に静電潜像が形成される。
【0139】
そして、この感光体ドラム401表面の静電潜像は、本発明に係る現像装置416によってトナーが付着されて可視像化され、この可視像(トナー像)は、給紙部417A又は417Bから給紙コロ418A又は418Bで給紙された転写紙(記録媒体)419に転写チャージャ420のコロナ放電により転写される。この可視像が転写された転写紙419は、分離チャージャ421により感光体ドラム401の表面より分離されて、搬送ベルト422によって搬送され、定着ローラ対423の圧接部を通って、可視像が定着され、機外の排紙トレイ424へと排紙される。
一方、転写が終了した感光体ドラム401の表面に残留しているトナーはクリーニング装置425によって除去され、感光体ドラム401の表面に残留している電荷は除電ランプ426によって消去される。
【0140】
現像装置416は、図16に示すように、トナーを収納するトナーホッパ部431と、このトナーホッパ部431内のトナーを攪拌するアジテータ432と、トナーホッパ部431内のトナーを帯電させてトナーボックス部433に供給する帯電ローラ434及びこの帯電ローラ434の周面に接触させて配置したドクターブレード435とを備えている。
また、トナーボックス部433内に供給されたトナーを現像のために搬送、ホッポングするために搬送する搬送基板441と、この搬送基板441の終端から落下する現像に供されなかったトナーを帯電を施す部材(帯電ローラ434)に戻す方向に搬送する逆送搬送基板442とを備えている。
【0141】
なお、上記第1実施形態でも述べたとおり、搬送基板441及び逆送搬送基板442の構成は、前記搬送基板1と同様であり、搬送基板441及び逆送搬送基板442の各電極に駆動波形を与える駆動回路の構成も図示は省略するが、前記現像装置の各実施形態で説明したものと同様である。また、用いるトナーは前記製法で作られたものである。
このように構成することで、飛散トナーが少なく、高い現像品質で現像を行って高画質の画像を形成することができる。
【0142】
次に、本発明に係るプロセスカートリッジを備えた画像形成装置の第3実施形態について図17及び図18を参照して簡単に説明する。なお、図17は同画像形成装置の概略構成図、図18は同画像形成装置を構成するプロセスカートリッジの概略構成図である。
この画像形成装置500は、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の4色でフルカラー画像を形成するレーザプリンタの一例であり、各色用の画像信号に応じたレーザビームを出射する4つの光書き込み装置501M、501C、501Y、501Bk(以下「光書き込み装置501」とも総称する。)と、作像用の4つのプロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bkと、画像が転写される記録用紙を収納する給紙カセット503と、給紙カセット503から記録用紙を給紙する給紙ローラ504と、記録用紙を所定のタイミングで搬送するレジストローラ505と、記録用紙を各プロセスカートリッジの転写部に搬送する転写ベルト506と、記録用紙に転写された画像を定着する定着ベルト507と加圧ローラ508からなる定着装置509と、定着後の記録用紙を排紙トレイ511に排紙する排紙ローラ510等を備えた構成となっている。
【0143】
4つのプロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bkの構成は同じ(以下「プロセスカートリッジ502」とも総称する。)であり、図18に示すように、各プロセスカートリッジ502は、ケース内に像担持体であるドラム状の感光体521と、帯電ローラ522と、本発明に係る現像装置523と、クリーニングブレード524等を一体に備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成している。現像装置523を着脱自在であるプロセスカ−トリッジ502内に具備させることにより、メンテナンス性の向上、他の装置との一体交換を容易に行うことができるようになる。
また、現像装置523内には、トナー供給ローラ525、帯電ローラ526、搬送基板1、搬送基板1へのトナー送り込み基板527、回収トナーを戻すトナー戻しローラ528が設けられており、各色のトナーが収納されている。また、プロセスカートリッジ502の背面側には、光書き込み装置501からのレーザビームが入射される窓口となるスリット530が設けられている。
【0144】
各光書き込み装置501M、501C、501Y、501Bkは、半導体レーザ、コリメートレンズ、ポリゴンミラー等の光偏向器、走査結像用光学系等から構成され、装置外部のパーソナルコンピュータ等のホスト(画像処理装置)から入力される各色用の画像データに応じて変調されたレーザビームを出射し、各プロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bkの感光体521上を走査し、静電荷像(静電潜像)を書き込む。
そして、画像形成が開始されると、各プロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bkの感光体521が帯電ローラ522で均一に帯電され、各光書き込み装置501M、501C、501Y、501Bkから画像データに応じたレーザビームが照射されて各感光体上に各色の静電潜像が形成される。
【0145】
この感光体521上に形成された静電潜像は、現像装置523の搬送基板1によるEH現像により、各色のトナーによって現像され顕像化される。また、現像に供されなかったトナーは搬送基板1で搬送されてトナー戻しローラ528によってトナー送り込み基板527の入口側に戻される。このように、本発明に係る現像装置によって現像を行うことで、前述したように高品質の画像を形成することができる。
【0146】
一方、各プロセスカートリッジ502Bk、502Y、502C、502Mの各色の画像形成に同期して、供給カセット503内の記録用紙が供給ローラ504で給紙され、レジストローラ505により所定のタイミングで転写ベルト506に向けて搬送される。そして、記録用紙は転写ベルト506に担持されて4つのプロセスカートリッジ502Bk、502Y、502C、502Mの感光体521に向けて順次搬送され、各感光体上のBk、Y、C、Mの各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。4色のトナー像が転写された記録用紙は、定着装置509に搬送され、4色のトナー像からなるカラー画像が定着されて排紙トレイ511に排紙される。
【0147】
次に、本発明に係るプロセスカートリッジを含む本発明に係る画像形成装置の第4実施形態について図19及び図20を参照して簡単に説明する。なお、図19は同画像形成装置の概略構成図、図20は同画像形成装置を構成するプロセスカートリッジの概略構成図である。
【0148】
この画像形成装置は、水平に延在する転写ベルト(像担持体)551に沿って、各色のプロセスカ−トリッジ560Y、560M、560C、560Bk(以下「プロセスカートリッジ560」とも総称する。)を並置したタンデム方式のカラー画像形成装置である。なお、プロセスカ−トリッジ560は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で説明したが、この順番に特定されるものではなく、どの順番で並置してもよい。
【0149】
プロセスカ−トリッジ560は、像担持体561、帯電手段562、本発明に係る静電搬送装置の搬送基板1を含む現像手段563、クリーニング装置564等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカ−トリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカ−トリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成している。
【0150】
通常、カラーの画像形成装置は複数の画像形成部を有するため装置が大きくなってしまう。また、現像装置、クリーニングや帯電などの各ユニットが個別で故障したり、寿命による交換時期がきた場合は、装置が複雑でユニットの交換に非常に手間がかかっていた。
そこで、少なくとも像担持体と現像手段の構成要素をプロセスカ−トリッジ560として一体に結合して構成することによって、ユーザーによる交換も可能な小型で高耐久のカラー画像形成装置を提供することができる。
【0151】
ここで、各色のプロセスカ−トリッジ560Y、560M、560C、560Bkで現像された像担持体562上の現像トナーは水平に延在する転写電圧が印加された転写ベルト551に順次転写される。
このようにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと画像の形成が行なわれ、転写ベルト551上に多重に転写され、転写手段552で転写材553にまとめて転写される。そして、転写材553上の多重トナー像は図示しない定着装置によって定着される。
【0152】
上記各実施形態で説明した画像形成装置は、いずれも本発明に係る搬送部材を含む現像装置(手段)を備えているので、装置の小型化、低コスト化を図れ、トナ−飛散などもなく、画像品質を向上することができる。
なお、上記実施形態においては、粉体としてトナーを例に説明しているが、トナー以外の粉体を搬送するための装置などにも同様に適用することができる。また、搬送電極に印加する駆動信号は3相を例に説明しているが、4相、6相などでもよい。
【実施例】
【0153】
次に実施例をあげて本発明をより具体的に説明する。本発明の実施例においては以下の現像装置およびトナーを使用した。
【0154】
[実施例トナー1〜4の作製]
本発明で用いるトナーの作製(粒度分布の効果の確認)
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(Regal400;Cabot社製)15質量部、顔料分散剤3質量部を、酢酸エチル82質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、凝集体を完全に除去した分散液を調製した。更に、0.45μmの細孔を有するフィルター(PTFE製)を通過させ、サブミクロン領域まで分散させた液を調製した。
【0155】
−樹脂及びワックスを添加した分散液の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、及びワックスを添加した下記組成からなる分散液を調製した。攪拌機付きフラスコにカルナバワックス5質量部と酢酸エチル100質量部を加えウォーターバス上で内温70℃で1時間加熱し、完全に溶解させた。その後バスを氷冷、急冷し、ワックス粒子を析出させた。さらに結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、極性結着樹脂としてポリエチレングリコール10重量部(重量平均分子量20000)、前記カーボンブラック分散液30質量部、酢酸エチル900質量部に、着色剤分散液調製時と同じく、攪拌羽を有するミキサーを使用して、10分間攪拌を行い、分散溶解させた。得られた分散液を0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ダイノーミルMULTI LAB型(シンマルエンタープライゼス社製)により5時間分散処理を行った。この工程後の分散液を、着色剤分散液調製時と同様に、0.45μmのフィルター(PTFE製)で濾過したが、目詰まりの発生はなく、全て通過することを確認した。
【0156】
−トナーの作製−
得られた分散液を更に固形分が以下の条件になるよう酢酸エチルを用いて希釈し、液を図22に示したトナー製造装置の、貯留部1に供給した。使用した貫通孔を有する板は、厚み20μmのニッケルプレートに、真円形状の出口直径8.0μmの貫通孔を、フェムト秒レーザによるマスク縮小投影法による除去加工(レーザアブレーション)により図25のように10個作製した。貫通孔の存在する部分は、一辺0.5mmの正方形の範囲であった。
分散液調製後、以下のようなトナー作製条件で、液滴を形成させた後、該液滴を乾燥固化することにより、トナーを作製した。 これらの乾燥固化したトナー粒子は、サイクロンで捕集した。
図24に、実施例1の液柱の液滴化現象を撮影した様子を示す。
【0157】
【表1】

【0158】
比較例トナー1、2の作製
水中造粒法、粉砕法によるトナーの作製(本発明製法の有利性の検証)
[比較例トナー1の作製]
(トナーバインダー樹脂の合成)
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物724部、イソフタル酸276部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応させ、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応させた後、160℃まで冷却して、これに32部の無水フタル酸を加えて2時間反応させた。次いで、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート188部と2時間反応を行いイソシアネート含有プレポリマー(1)を得た。次いでプレポリマー(1)267部とイソホロンジアミン14部を40℃で2時間反応させ、重量平均分子量66000のウレア変性ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0159】
上記と同様にビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、テレフタル酸276部を常圧下、230℃で8時間重縮合し、次いで10〜15mmHgの減圧で8時間反応させて、ピーク分子量4500の変性されていないポリエステル樹脂(a)を得た。ウレア変性ポリエステル樹脂(1)200部と変性されていないポリエステル樹脂(a)800部を酢酸エチル溶剤2000部に溶解、混合し、トナーバインダー樹脂(1)の酢酸エチル溶液を得た。一部減圧乾燥し、トナーバインダー樹脂(1)を単離した。Tgは65℃、酸価は15であった。
【0160】
(トナーの作製)
ビーカー内に前記のトナーバインダー樹脂(1)の酢酸エチル溶液240部、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(融点81℃、溶融粘度25cps)20部、銅フタロシアニンブルー顔料4部を入れ、60℃にてTK式ホモミキサー(特殊機化社製)で10000rpmで攪拌し、均一に溶解、分散させた。ビーカー内にイオン交換水706部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を入れ均一に溶解した。次いで60℃に昇温し、TK式ホモミキサーで10000rpmに攪拌しながら、上記トナー材料溶液を投入し10分間攪拌し、乳化分散体を得た。ついでこの混合液を攪拌棒および温度計付のフラスコに移し、70℃まで減圧下昇温して一部溶剤を除去し、室温に戻してから攪拌を続行し、更に溶剤を完全に除去した。その後、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、母体トナー粒子を得た。
さらに、得られた母体着色粒子100重量部に対して、一次粒径10nmの疎水性シリカ1.5重量部と一次粒子径20nmの酸化チタン1.0重量部と平均粒径100nmのHMDS(ヘキサメチルジシラザン)疎水化処理のシリカ微粒子1.0重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて混合し比較例トナー1を得た。
【0161】
[比較例トナー2の作製]
下記処方のトナー構成材料をブレンダーで十分混合した後、100〜110℃に加熱した2軸押し出し機で溶融混練した。混練物を放冷後カッターミルで粗粉砕し、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕後、風力分級装置を用いて母体着色粒子を得た。
着色剤 カーボンブラック 6重量部
帯電制御剤 サリチル酸誘導体亜鉛塩 2重量部
結着樹脂 トナーバインダー樹脂(1)作製のもの(固体) 97重量部
離型剤 カルナバワックス 3重量部
得られたトナー母体をサーフュージョンシステム装置(ホソカワミクロン工業社製)気流設定温度270℃、フィード量を1.5kg/hrで処理し、概略球形の母体着色粒子を得た。
さらに、この母体着色粒子100重量部に対して、一次粒径10nmの疎水性シリカ1.5重量部と一次粒子径20nmの酸化チタン1.0重量部をヘンシェルミキサーにて混合しトナーを得た。
また得られたトナーに平均粒径40nm、60nm、100nm、200nmのHMDS(ヘキサメチルジシラザン)による疎水化処理のシリカ微粒子1.0重量部をさらにヘンシェルミキサーにて混合し比較例トナー2を得た。
【0162】
[実施例トナー5〜8の作製] (粒子径の効果確認)
実施例トナー1〜4のトナーと同一の分散液を用いた。但し以下の条件にトナー作製条件を変更した。これらの乾燥固化したトナー粒子は、サイクロンで捕集した。
【0163】
【表2】

【0164】
[実施例トナー9,10の作製](トナー母体の疎水化の検証)
実施例トナー1の極性結着樹脂としてポリエチレングリコール10重量部(重量平均分子量20000)を用いる代わりに5重量部に減じたもの(実施例9)、用いなかったもの(実施例10)で同様に樹脂及びワックスを添加した分散液の調製を行いトナーを作製した。但し以下の条件でトナーを作製した。
これらの乾燥固化したトナー粒子は、サイクロンで捕集した。
【0165】
【表3】

【0166】
[実施例トナー11〜14の作製] (表面形状の効果確認)
噴射装置内温度を以下の条件で操作した以外は実施例1と同様に行いトナーを作製した。
実施例トナー11 装置内温度:30〜32℃
実施例トナー12 装置内温度:35〜37℃
実施例トナー13 装置内温度:40〜42℃
実施例トナー14 装置内温度:45〜47℃
[実施例トナー15の作製] (最良の組み合わせ)
以下の条件に変更した以外は実施例1と同様にトナーを作製した。
ただしトナー分散液作製時にポリエチレングリコールを用いなかった。(実施例トナー10と同等のトナー組成物)
また、作製条件は分散液固形分が6%、液流量は30ml/hrで行った。(実施例トナー6と同等の噴射条件)また装置内温度は35〜37℃に設定した(実施例トナー12の製造条件)
それぞれのトナー特性を以下の表に示す。
【0167】
【表4】

【0168】
[実施例1〜15、比較例1,2]
上記のそれぞれのトナーを、図14で示した画像形成装置のトナーTに充填し、以下の画像評価を行った。
【0169】
[ドット均一性]
600dpiの1by1画像(1ドット間隔画像)を出力し、マイクロスコープで観察したときのドット再現性をランク見本を用いて5段階評価した。数値が大きいほど良好で、3以上は合格である。
【0170】
[細線再現性]
写真画像の出力を行い、粒状性、鮮鋭性の度合を目視にて下記基準で評価した。
〔評価基準〕
5:オフセット印刷並みである。
4:オフセット印刷よりわずかに悪い程度である。
3:オフセット印刷よりかなり悪い程度である。
2:従来の電子写真画像程度で悪い。
1:従来の電子写真画像よりも非常に悪い。
【0171】
[地汚れ]
気温30℃、湿度90%の環境が制御された室で、専用チャート(5%画像面積)のA4紙を1万枚ランニングした後に、白紙画像を現像中に停止させ、現像後の感光体上のトナーをテープ転写し、未転写のテープの画像濃度との差を938スペクトロデンシトメーター(X−Rite社製)により測定した。(5段階評価、5が地汚れ不良全くなし、1が最低、3以上が合格)
【0172】
[搬送性]
気温30℃、湿度90%の環境が制御された室で、専用チャート(5%画像面積)のA4紙を1万枚ランニングした後に、白紙画像を10枚通紙し、搬送基板を取り出して、基板上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
5:ブランク(白紙にテープを貼ったもの)との差が0.005未満である。
4:ブランクとの差が0.005〜0.010である。
3:ブランクとの差が0.011〜0.02である。
2:ブランクとの差が0.02を超える。
1:ブランクとの差が0.05を超える。
【0173】
[転写性]
気温30℃、湿度90%の環境が制御された室で、専用チャート(5%画像面積)のA4紙を1万枚ランニングした後に、画像面積率20%チャートを感光体から紙に転写後、クリーニングの直前における感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
5:ブランク(白紙にテープを貼ったもの)との差が0.005未満である。
4:ブランクとの差が0.005〜0.010である。
3:ブランクとの差が0.011〜0.02である。
2:ブランクとの差が0.02を超える。
1:ブランクとの差が0.05を超える。
【0174】
[クリーニング性]
専用チャート(5%画像面積)のA4紙を1万枚ランニングした後に、全面黒ベタ画像を10枚連続出力させ、10枚目に現像中に停止させ、感光体上のクリーニングブレード以降のトナーをテープ転写し、テープの汚れ度合いを5段階の段階見本と比較して評価した。(5がクリーニング不良全くなし、1が最低、3以上が合格)
評価結果を下記表5に示す。
【0175】
【表5】

【0176】
以上の結果を見てわかるように本発明の製法によらないトナーは高温高湿下での特性に劣り、不合格レベルである。また粒度分布幅(D4/D1)が本願の範囲内であると画像品質(ドット均一性)は良好である。さらに重量平均粒子径が本願の範囲内であると画像品質(細線再現性)は良好である。中でも粒子径が小さいほうが良い傾向にあるがクリーニング性が落ちてくる。トナー母体の疎水性:(W1-W2)/W2が低い値であると高温高湿下での現像特性に優れたものとなる。トナーの形状が本願の範囲内であると上記の良好な特性に加え、さらに転写性が優れたトナーが得られている。
さらにすべての項目が本願の範囲内であるとすべての評価特性にわたって最良に近いトナーが得られている。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明に係る現像装置の第1実施形態を説明する概略構成図である。
【図2】同装置の搬送基板の平面説明図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面説明図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面説明図である。
【図5】図2のC−C線に沿う断面説明図である。
【図6】図2のD−D線に沿う断面説明図である。
【図7】搬送基板に与える駆動波形の一例を説明する説明図である。
【図8】粉体の搬送、ホッピングの説明に供する説明図である。
【図9】粉体の搬送、ホッピングの具体例の説明に供する説明図である。
【図10】同装置の駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図11】搬送電圧パターン及び回収搬送電圧パターンの駆動波形の一例を示す説明図である。
【図12】ホッピング電圧パターンの駆動波形の一例を示す説明図である。
【図13】ホッピング電圧パターンの駆動波形の他の例を示す説明図である。
【図14】本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を説明する概略構成図である。
【図15】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態を説明する概略構成図である。
【図16】同画像形成装置の現像装置部分の拡大説明図である。
【図17】本発明に係る画像形成装置の第3実施形態を説明する概略構成図である。
【図18】同画像形成装置のプロセスカートリッジの概略構成図である。
【図19】本発明に係る画像形成装置の第4実施形態を説明する概略構成図である。
【図20】同画像形成装置のプロセスカートリッジの概略構成図である。
【図21】液柱の液滴化現象を説明する図である。
【図22】本発明を実施するためのトナー粒子製造装置の一例の説明図である。
【図23】本発明における貯留部の一例の説明図である。
【図24】貫通孔から噴出する液滴の高速度撮影画像である。
【図25】作製した貫通孔を示す写真画像である。
【符号の説明】
【0178】
(図1〜20について)
1、41、61…搬送基板
2…駆動回路
10…感光体ドラム
11…搬送領域
12…現像領域
13…回収領域
101…支持基板
102…電極
22a〜22c、23a〜23c…波形増幅器
301…感光体ドラム
341…搬送基板
342…逆送搬送基板
401…感光体ドラム(潜像担持体)
405、408…走査光学系
413…ポリゴンミラー
415…帯電装置
416…現像装置
434…帯電ローラ
441…搬送基板
442…逆送搬送基板
502M、502C、502Y、502B…プロセスカートリッジ
523…現像装置
560M、560C、560Y、560B…プロセスカートリッジ
563…現像装置
(図22、23について)
1 貯留部
2 振動手段
3 支持手段
4 貫通孔
5 液供給手段
6 溶媒除去設備
7 トナー捕集部
8 配管
9 貫通孔保持機構
10 振動発生装置
11 導電線
12 開放弁
13 液滴
14 乾燥手段
15 トナー粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体上にトナーを付着させて潜像担持体上の潜像を現像するための現像装置において、前記潜像担持体に対向して配置され、トナーを移動させる進行波電界を発生させるための複数の電極を有する搬送部材を備え、前記搬送部材の電極には、現像領域において、潜像の画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成するn相(nは2以上の整数)の電位が印加され、かつ上記トナーは、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、貯留部へ供給し貯留する貯留工程と、前記貯留部に設けたノズルから前記トナー組成液を連続的に放出し柱状状態を形成する工程と、振動手段により少なくとも前記ノズル又は前記貯留部を振動させる振動工程と、前記ノズルから吐出した前記トナー組成液を前記振動手段により液滴化する液滴化工程と、前記液滴化された前記トナー組成液を脱溶媒させることにより固化させる粒子形成工程とによって作られたものであることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナーはトナー組成液を貯留部へ定量的に供給し、貯留部の一部に接する振動手段により、前記貯留部を介して原料流体を励振しながら、貯留部に設けた複数のノズルより該原料液体を造粒空間に放出し、原料流体を柱状から括れ状態を経て液滴化し、該液滴を造粒空間において固体粒子に変化させて得られたトナーであることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
トナーの重量平均粒径と個数平均粒径の比が、1.15以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
トナーの重量平均粒径が、2〜5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
外添されていないトナー粒子の水への濡れ性W1と該トナー粉体粒子へ外添剤を外添した後のトナー粉体粒子の水への濡れ性W2の変化率(W2−W1)/W2が0.3以下であるトナーを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
トナーの形状係数SF−1が、105〜150であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
搬送部材の現像領域通過後の領域で、トナーを潜像担持体と反対側に向かわせる方向の電界を形成する手段を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項8】
請求項1〜67のいずれかに記載の現像装置を用いて現像を行うことを特徴とする現像方法。
【請求項9】
少なくとも現像装置を含み、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、前記現像装置が請求項1〜8のいずれかに記載の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
潜像担持体上にトナーを付着させて潜像担持体上の潜像を現像して画像を形成する画像形成装置において、請求項1〜7のいずれかに記載の現像装置若しくは請求項9に記載のプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
カラー画像を形成する画像形成装置において、請求項9に記載のプロセスカートリッジを複数備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
潜像担持体上にトナーを付着させて潜像担持体上の潜像を現像して画像を形成する画像形成方法において、請求項8に記載の現像方法で前記潜像を現像して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−70674(P2008−70674A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250203(P2006−250203)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】