説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】 二成分現像剤を用いた現像装置で、現像剤の長寿命化を図ることが出来る現像装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 現像剤担持体である現像ローラ131表面について、現像剤量規制部材としてのドクタブレード135と対向する規制部材対向位置Sbの現像ローラ131の表面移動方向上流側の中心角である規制部材上流側中心角αの角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、現像ローラ131表面における法線方向の磁束密度の最大値が、30[mT]以下となる低磁束密度領域γとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等に用いられる現像装置に係り、詳しくは、トナーとキャリアとからなる二成分の現像剤を用いる現像装置、並びにこれを用いた複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の現像装置では、現像剤担持体により現像剤を搬送し、静電潜像を担持した像担持体と現像剤担持体との間に電圧を印加し、静電潜像にトナーを移動させることで顕像化する現像方法が用いられているものがある。
この現像方法として、例えば二成分現像剤を用いた磁気ブラシ現像法がある。この現像法は、非磁性のトナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を用いて、内部に磁石を配置した現像剤担持体としての現像スリーブの表面に磁性キャリアにより磁気ブラシを形成させる。そして、現像スリーブに対して微小な現像間隙を保持して対向させた潜像担持体である感光体にこの磁気ブラシを摺擦または近接させる。ここで、現像スリーブと感光体との間に現像電圧を印加することによって、現像スリーブ上の磁気ブラシを形成する磁性キャリアに担持されたトナー粒子を感光体の潜像に付着させて現像を行う。
【0003】
また、磁気ブラシ現像法を用いた現像装置では、現像スリーブ表面に対向して配置された現像剤量規制部材と現像スリーブとの間隙(ドクタギャップ)によって、現像スリーブ上の現像剤担持量を現像に適した量に規制する。現像スリーブ上で現像に適した量に規制した現像剤からなる磁気ブラシを、現像に適した状態で感光体に摺擦または近接させ、現像電圧によって画像を形成する。
このような現像装置としては、例えば特許文献1に記載の現像装置がある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−194617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の現像装置では、現像剤量規制部材に対向するドクタギャップに対して現像剤担持体表面移動方向上流側のドクタギャップ近傍の領域の現像剤担持体表面上での法線方向の磁束密度が高い値となっている。特許文献1の現像装置では、ドクタギャップに対して現像剤担持体表面移動方向上流側のドクタギャップに近接した領域の現像剤担持体表面上での表面に対して法線方向の磁束密度の最大値が60[mT]と高い値となっている。これにより、次のような不具合が生じた。
すなわち、現像剤担持体表面に対して法線方向の磁束密度を高い状態であると、現像剤担持体の表面上ではキャリア間の結びつきが強い磁気ブラシが形成される。また、現像ドクタ近傍の現像剤担持体表面移動方向上流側の領域においては、現像剤量規制部材と現像剤担持体との間隙であるドクタギャップを現像剤が通過する際は、ドクタギャップよりも高い位置の磁気ブラシは現像剤量規制部材に衝突する。そして、キャリア間の結びつきが強い磁気ブラシは現像剤量規制部材に衝突する際に、キャリア同士がバラバラになりにくく、現像剤の粒子と現像剤量規制部材とを、及び現像剤内の粒子同士を強いストレスによって摺擦することになる。現像剤を強いストレスによって摺擦すると現像剤の劣化が進行し、現像剤の寿命が低下する。
よって、現像剤寿命を考慮した場合には、現像剤量規制部材と現像剤担持体との対向部で現像剤が受けるストレスを低減させる必要がある。
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、二成分現像剤を用いた現像装置で、現像剤の長寿命化を図ることが出来る現像装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面上に磁性キャリアとトナーとからなる二成分の現像剤を担持して表面が移動し、潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像に該トナーを供給して現像する現像剤担持体と、該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、該現像剤量規制部材と対向する該現像剤担持体の表面上の規制部材対向位置と、該規制部材対向位置に対して現像剤担持体表面移動方向上流側の任意の位置との該現像剤担持体の回転中心での中心角を規制部材上流側中心角としたときに、該規制部材上流側中心角の角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、該現像剤担持体の表面における法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、30[mT]以下の範囲となる低磁束密度領域とすることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記規制部材上流側中心角の角度が、0[°]以上、20[°]以下となる範囲を、上記低磁束密度領域とすることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、表面上に磁性キャリアとトナーとからなる二成分の現像剤を担持して表面が移動し、潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像に該トナーを供給して現像する現像剤担持体と、該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、該現像剤供給部が該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向下流側、且つ、該現像剤担持体表面の該現像剤量規制部材と対向する規制部材対向位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側の範囲を、該現像剤担持体の表面における法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、30[mT]以下の範囲となる低磁束密度領域とすることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の現像装置において、上記低磁束密度領域の法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、5[mT]以下の範囲であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の現像装置において、上記低磁束密度領域の法線方向の磁束密度は、0[mT]であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の現像装置において、上記現像剤担持体は、内部に固定された複数の磁界発生手段と、その表面に上記現像剤を担持し回転可能な非磁性現像スリーブとからなることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、内部に固定された複数の磁界発生手段と、表面上に現像剤を担持して回転し潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像を現像する非磁性現像スリーブとからなる現像剤担持体と、該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、該現像剤量規制部材と対向する該現像剤担持体の表面上の規制部材対向位置と、該規制部材対向位置に対して現像剤担持体表面移動方向上流側の任意の位置との該現像剤担持体の回転中心での中心角を規制部材上流側中心角としたときに、該規制部材上流側中心角の角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、該非磁性現像スリーブの内側に該磁界発生手段を配置しない低磁束密度領域とすることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の現像装置において、上記規制部材上流側中心角が、0[°]以上、20[°]以下の範囲を上記低磁束密度領域とすることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、内部に固定された複数の磁界発生手段と、表面上に現像剤を担持して回転し潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像を現像する非磁性現像スリーブとからなる現像剤担持体と、該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、該現像剤供給部が該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向下流側で、該現像剤担持体表面の該現像剤量規制部材と対向する規制部材対向位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側となる範囲を、該非磁性現像スリーブの内側に該磁界発生手段を配置しない低磁束密度領域とすることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の現像装置において、上記現像剤量規制部材は鉛直方向について該現像剤担持体の回転中心よりも上方の該現像剤担持体表面と対向することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項10の現像装置において、上記現像剤供給部が上記現像剤担持体の表面に上記現像剤を供給する現像剤供給位置は、鉛直方向について上記現像剤担持体の回転中心よりも上方であることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11の現像装置において、上記現像剤供給位置は上記低磁束密度領域内であることを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の現像装置において、上記現像部は上記現像剤担持体に供給され上記現像領域を通過した上記現像剤を回収する現像剤回収部を備えることを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13の現像装置において、上記現像剤に上記トナーを補給するトナー補給手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の現像装置において、上記現像部との間で上記現像剤を受渡し可能で、該現像剤を攪拌する攪拌手段を備える攪拌部を有することを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項15の現像装置において、上記現像部と上記攪拌部とは別体で構成し、該現像部と該攪拌部とは現像剤移送経路形成部材によって接続されていることを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、請求項16の現像装置において、上記攪拌部は、上記現像剤を下方から上方に向けて搬送し、攪拌することを特徴とするものである。
また、請求項18の発明は、請求項17の現像装置において、上記攪拌部は、上記現像剤を内部に収容する円筒状部材と、回転することにより該円筒状部材内の該現像剤を下方から上方に向けて搬送するスクリュ部材とを備えることを特徴とするものである。
また、請求項19の発明は、請求項17または18の現像装置において、上記現像剤に上記トナーを補給するトナー補給手段を備え、該トナー補給手段からのトナーを補給するトナー補給部を上記攪拌部の下方に備えることを特徴とするものである。
また、請求項20の発明は、請求項15の現像装置において、上記現像部と上記攪拌部とは一体で構成することを特徴とするものである。
また、請求項21の発明は、請求項15、16、17、18、19または20の現像装置において、該現像装置内の上記現像剤の半分以上が上記攪拌部内に存在するように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項22の発明は、請求項15、16、17、18、19、20または21の現像装置において、上記現像剤に上記トナーを補給するトナー補給手段を備え、該トナー補給手段によって該トナーの補給がなされた該現像剤を、上記攪拌部で攪拌した後に該現像部に移送するように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項23の発明は、請求項15、16、17、18、19、20、21または22の現像装置において、上記現像部は上記現像剤担持体に供給され上記現像領域を通過した上記現像剤を回収する現像剤回収部を備え、該現像剤回収部で回収した回収現像剤を上記攪拌部に移送し、該攪拌部で攪拌した後に該現像部に移送するように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項24の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23の現像装置において、上記現像剤量規制部材はその先端部が上現像剤担持体の表面と対向するブレード形状であることを特徴とするものである。
また、請求項25の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24の現像装置において、上記現像剤量規制部材は、上記現像剤担持体の表面移動に対して、連れ回り可能なローラ形状であることを特徴とするものである。
また、請求項26の発明は、少なくとも潜像担持体と、該潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、該潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、該静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段とを有する画像形成装置において、該現像手段として、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25に記載の現像装置を用いることを特徴とするものである。
【0008】
上記請求項1の構成を有する現像装置においては、規制部材上流側中心角の角度が0[°]以上、60[°]以下の範囲を、法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、30[mT]以下の範囲となる低磁束密度領域とすることで、規制部材対向位置、及び規制部材対向位置近傍の現像剤担持体表面移動方向上流側の領域に担持される現像剤の磁性キャリア間の結びつきを弱い状態にすることができる。
また、上記請求項3の構成を有する現像装置においては、現像剤供給位置に対して現像剤担持体の表面移動方向下流側、且つ、規制部材対向位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側となる範囲を、法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、30[mT]以下の範囲となる低磁束密度領域とすることで、規制部材対向位置、及び規制部材対向位置近傍の現像剤担持体表面移動方向上流側の領域に担持される現像剤の磁性キャリア間の結びつきを弱い状態にすることができる。
また、上記請求項7の構成を有する現像装置においては、規制部材上流側中心角の角度が0[°]以上、60[°]以下の範囲を、非磁性現像スリーブの内側に磁界発生手段を配置しない低磁束密度領域とすることで、規制部材対向位置、及び規制部材対向位置近傍の現像剤担持体表面移動方向上流側の領域に担持される現像剤の磁性キャリア間の結びつきを弱い状態にすることができる。
また、上記請求項9の構成を有する現像装置においては、現像剤供給位置に対して現像剤担持体の表面移動方向下流側、且つ、規制部材対向位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側となる範囲を、非磁性現像スリーブの内側に磁界発生手段を配置しない低磁束密度領域とすることで、規制部材対向位置、及び規制部材対向位置近傍の現像剤担持体表面移動方向上流側の領域に担持される現像剤の磁性キャリア間の結びつきを弱い状態にすることができる。
【0009】
よって、上記請求項1乃至26に記載の現像装置では、規制部材対向位置のドクタギャップを現像剤が通過する際、現像剤のキャリア間の結びつきが弱い状態となり、ドクタギャップよりも高い位置にある現像剤は現像剤量規制部材に接触しても現像剤量規制部材の形状に合わせて容易に移動する。これにより、現像剤がドクタギャップで強いストレスによって摺擦されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至26の発明によれば、現像剤がドクタギャップで強いストレスによって摺擦されることを抑制できるため、現像剤の劣化を抑制し、現像剤の長寿命化を図ることができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、本発明を、画像形成装置としての電子写真方式の複写機(以下、単に複写機100という)に適用した一つ目の実施形態について説明する。
まず、実施形態1に係る複写機100の基本的な構成について説明する。図1は、複写機100の要部を示す概略構成図である。複写機100は、原稿読取部1と、原稿自動供給部2と、プリンタ部3と、給紙部4とを備えている。
【0012】
原稿自動供給部2は、その上面に載置された図示しない原稿を後述のコンタクトガラス5上に自動で供給する。
原稿読取部1は、図示しない原稿の画像を読み取るためのものである。ユーザーの手作業により、原稿読取部1の上部に固設されたコンタクトガラス5上に原稿が置かれた状態で、図示しないスタートスイッチが操作されると、原稿読取部1による原稿読取が直ちに開始される。また、原稿自動供給部2上に原稿が置かれた状態でスタートスイッチが操作されると、その原稿がコンタクトガラス5上に自動給紙された後、原稿読取部1による原稿読取が開始される。読取開始により、コンタクトガラス5上に置かれた原稿は図中右方向へ移動する光源6によって光照明される。原稿からの反射光像は、第一ミラー7、第二ミラー8で順次反射する。そして、結像レンズ9を経た後、反射光像を読み取るためのCCD等からなるイメージセンサ10に検知されて画像情報が読み取られる。
【0013】
プリンタ部3は、記録体としての転写紙P上に画像としてのトナー像を形成するためのもので、光書込ユニット11やドラム状の潜像担持体である感光体12を備えている。また、感光体12の周囲に、帯電装置13、現像部である現像器130、転写搬送ユニット14、感光体クリーニング装置15、除電器16などを備えている。更には、定着装置17、反転排紙ユニット18、レジストローラ対19なども備えている。スタートスイッチが操作されると、図示しない駆動手段による感光体12の回転駆動が開始される。
【0014】
光書込ユニット11は、原稿読取部1で読み取られた画像信号に基づいてレーザ光Lを光変調して、感光体12を露光する。具体的には、レーザダイオード等からなる露光光源20からレーザ光Lを発する。このレーザ光Lは、ポリゴンモータ21によって回転駆動される回転多面鏡22上で主走査方向(感光体12の軸線方向)に偏向せしめられながら、fθレンズなどからなる走査結像用のレンズ系23を通る。そして、ミラー24、レンズ25を経て、回転駆動されている感光体12上に到達してその表面に静電潜像を走査する。
【0015】
転写搬送ユニット14は、転写搬送ベルトを複数の張架ローラによってテンション張架しながら無端移動せしめながら、感光体12の周面に当接させて転写ニップを形成している。また、転写ニップにおける転写搬送ベルト裏面(フープ内周面)に図示しない転写バイアスローラを当接させている。この転写バイアスローラには図示しない電源によって転写バイアスが印加されており、この印加によって転写ニップに転写電界が形成される。
【0016】
光書込ユニット11による露光で感光体12上に形成された静電潜像は、現像器130によって現像されてトナー像となった後、転写ニップに進入する。一方、レジストローラ対19は、スタートスイッチの操作に基づいて後述の給紙部4から送られてくる転写紙Pをローラ間に挟み込む。そして、転写紙Pを転写ニップにて感光体12上のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで送り出す。この送り出しにより、転写ニップでは感光体12上のトナー像が転写紙Pに密着せしめられる。そして、転写電界やニップ圧の影響を受けて、感光体12の表面から転写紙表面に転写される。転写ニップを通過した転写紙Pは、転写搬送ユニット14の転写搬送ベルトによって定着装置17内に送られる。定着装置17は、送られてきた転写紙Pを加熱ローラ17aと加圧ローラ17bとの間に挟み込む。そして、熱や圧力の影響によってトナー像を転写紙P上に定着せしめながら、反転排紙ユニット18に向けて排紙する。
【0017】
反転排紙ユニット18は、送られてきた転写紙Pを排出路18aに通して機外の図示しない排紙トレイに排紙する。但し、両面コピーモードがユーザーによって選択されている場合には、転写紙Pを反転部18bに通して裏表反転させた後、レジストローラ対19に向けて搬送する。これにより、その転写紙Pはレジストローラ対19から転写ニップに向けて再び送られ、先にトナー像が転写された面とは反対側の面に、新たなトナー像が転写される。
【0018】
感光体クリーニング装置15は、転写ニップを通過した後の感光体12表面に付着している転写残トナーをクリーニングして、トナー回収部である回収タンク90に収容する。クリーニング後の感光体12表面は、除電器16によって除電された後、帯電装置13によって一様帯電せしめられて次の画像形成に備える。
【0019】
給紙部4は、多段配設された3つの給紙カセット26、27、28を備えており、それぞれに複数枚の転写紙Pを収容している。また、複数組の搬送ローラ対32を有する給紙路33も備えている。給紙カセット26、27、28は、内部に収容している転写紙Pの最上紙に給紙ローラ26a、27a、28aを押し当てており、その回転駆動によって最上紙を給紙路33に向けて送り出す。スタートスイッチが操作されると、何れか1つの給紙カセットから給紙路33に転写紙が送り出されるのである。給紙路33は、受け取った転写紙Pを複数組の搬送ローラ対32によってプリンタ部3のレジストローラ対19に向けて給紙する。
【0020】
次に、現像手段である現像装置40について説明する。
感光体12の側方に配設された現像器130と、磁性キャリアとトナーとからなる二成分の現像剤を現像器130との間で受渡し可能な攪拌部としての攪拌器140とは、現像剤移送経路形成部材である2つの現像剤移送パイプによって接続されている。現像手段である現像装置40は、主にこの現像器130と攪拌器140とから構成される。
二つの現像剤移送パイプのうち、攪拌器140から現像器130に現像剤を移送する方が第一現像剤移送パイプ120であり、現像器130から攪拌器140に現像剤を移送する方が第二現像剤移送パイプ150である。
【0021】
図2は、現像装置40の斜視説明図である。図3は、図2中の矢印A方向から見た現像器130の概略断面図である。また、図4は、図2中矢印B方向から見た現像器130の図2における手前側端部周辺の概略断面図である。
現像器130はいわゆる二成分現像器であり、現像動作時には、その内部にトナーと磁性キャリアを混合した二成分現像剤(以下、単に現像剤と呼ぶ)が収容されている。この現像剤は、粒子径が4〜10[μm](体積平均粒子径)のトナーと、粒子径が15〜60[μm](平均粒径、マイクロトラック)のキャリアとからなる二成分現像剤である。トナー濃度は各サイズの選定によって異なるが、3.5〜10[%]程度まで使用可能である。現像装置40には、トナー粒子径7[μm]、キャリア粒子径35[μm]、トナー濃度7[%]のものを使用している。
【0022】
また、現像器130は、現像剤担持体である現像ローラ131、及び現像剤を図4中矢印C方向に搬送しながら現像ローラ131に現像剤を供給する現像剤供給搬送部材である供給搬送スクリュ132を備えている。なお、現像ローラ131は、詳細は後述する磁界発生手段である磁石を複数個備えるマグネットローラ131bと、マグネットローラ131aの外側を回転可能に設けられた非磁性のスリーブ131aとから構成される。さらに、現像ローラ131に供給され、現像領域を通過した後の現像ローラ131表面上の現像剤を回収し、図4中矢印D方向に現像剤を搬送する現像剤回収搬送部材である回収搬送スクリュ133を備えている。供給搬送スクリュ132と回収搬送スクリュ133とは、現像部である現像器130内の現像剤を搬送する現像部搬送部材である。これらの現像部搬送部材は、支軸に羽根板が螺旋状に巻装されてなり、羽根板の直径がφ=18[mm]、螺旋ピッチが27[mm]に形成される。
また、攪拌器140には未使用トナーを収容するトナー収容器110が、トナー補給手段であるトナー補給経路141によって接続されている。
【0023】
現像器130内の現像剤を収容する空間は、仕切り部材である仕切り壁134によって供給搬送スクリュ132を備える供給部としての現像剤供給搬送路である供給搬送路136と、回収搬送スクリュ133を備える現像剤回収搬送路としての回収搬送路137とに仕切られている。仕切り壁134は、供給搬送スクリュ132の搬送方向下流側に不図示の開口部を備えており、供給搬送路136と回収搬送路137とを連通している。
現像ローラ131は、図3中矢印E方向に表面移動しながら、その内部にそなえるマグネットローラ131bの磁力、及びスリーブ131a表面と現像剤との摩擦力によって、供給搬送路136内の現像剤をその表面に担持する。現像ローラ131の表面に担持された現像剤は、現像剤担持量規制手段としてのドクタブレード135によってその量を規制され、現像ローラ131と感光体12との対向部である現像領域に搬送される。現像領域で感光体12の表面上の潜像を現像し、トナーを消費した現像剤は現像ローラ131と回収搬送スクリュ133との対向部で、現像ローラ131から離脱し、回収現像剤として回収搬送路137に回収される。また、供給搬送路136から現像ローラ131に供給されることなく、供給搬送スクリュ132の搬送方向下流端まで到達した余剰現像剤は、上述した仕切り壁134の開口部を通って回収搬送路137に移送され、回収現像剤とともに回収搬送スクリュ133によって搬送される。
なお、現像器130は、回収搬送路137内の回収搬送スクリュ133の搬送方向下流端近傍に回収現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ139を備えている。
【0024】
第一現像剤移送パイプ120及び第二現像剤移送パイプ150は、現像器130と攪拌器140とを接続する、金属、樹脂、ゴムなどからなるパイプ状の現像剤移送経路形成部材である。第一現像剤移送パイプ120は、攪拌器140から現像器130へ現像剤を移送する攪拌現像剤移送部材としての第一オーガ121を備えている。一方、第二現像剤移送パイプ150は、現像器130から攪拌器140へ現像剤を移送する現像済み現像剤移送部材としての第二オーガ151を備えている。第一オーガ121及び第二オーガ151は軸のないコイル形状となっている。
第一現像剤移送パイプ120は、供給搬送路136の上方で現像器130と接続されており、現像器130の上面に設けられた現像器上部開口部123によって、第一現像剤移送パイプ120の内部の空間と供給搬送路136とが連通している。一方、第二現像剤移送パイプ150は、回収搬送路137の下方で現像器130と接続されており、現像器130の下面に設けられた現像器下部開口部153によって、第二現像剤移送パイプ150の内部の空間と回収搬送路137とが連通している。
また、第一オーガ121の現像器130側端部には第一オーガ駆動軸122と、第二オーガ151の現像器130側端部には第二オーガ駆動軸152とが接続されている。供給搬送スクリュ132及び回収搬送スクリュ133、或いは現像ローラ131の駆動源と、第一オーガ駆動軸122及び第二オーガ駆動軸152はギヤ等によって接続されており、現像器130の各部材とともに回転する。
【0025】
図5は、図2中の矢印A方向から見た攪拌器140の概略断面図である。
攪拌器140は、現像器130から移送される現像剤が流入する現像剤流入口42、現像器130に向けて移送される現像剤が流出する現像剤流出口43を備えている。また、トナー収容器110から補給されるトナーが流入するトナー補給口44を備えている。
さらに、攪拌器140の内部には現像剤を攪拌する攪拌手段としてのアジテータ41を備え、外部に設けた攪拌モータ45によって回転する。アジテータ41は、攪拌軸41aに複数の攪拌羽41bが図のように取り付けられ、攪拌羽41bの回転により現像剤を攪拌する。
攪拌器140の下方の現像剤流出口43には、現像剤移送量制御手段としての移送経路開閉部材であるバルブ47が設置されている。バルブ47は樹脂、金属等からなり、その断面が現像剤流出口43の断面と同じ円形となっており、その回転軸であるバルブ回転軸47aが現像剤流出口43を通過する現像剤の流出方向に直角になるように設置されている。バルブ回転軸47aは、バルブモータ46が接続されており、バルブモータ46の駆動によりバルブ47が回転する。
不図示の制御手段によって、バルブモータ46の回転を制御することにより、バルブ47の回転を制御し、現像剤流出口43を開放または遮断することができ、現像剤の流出量を調節することができる。
【0026】
トナー収容器110は、金属、樹脂等からなる。トナー収容器110と攪拌器140とはトナー補給経路141によって接続されている。トナー補給経路141の内部にはコイルスクリュ等がからなる、トナー搬送オーガ142が設けられており、外部に設けたトナー補給モータ148の回転によってトナー搬送オーガ142が回転し、攪拌器140にトナーが補給される。
【0027】
次に現像装置40内の現像剤の循環について説明する。
現像器130においては、供給搬送路136内の現像剤は、現像ローラ131と対向する仕切り壁134の先端である仕切り壁端部134aから現像ローラ131表面に供給される。供給搬送路136から現像ローラ131の表面に供給され、現像領域を通過した現像剤は、回収現像剤として回収搬送スクリュ133を備える回収搬送路137に回収され、順次、図4中矢印D方向に搬送される。また、現像ローラ131に供給されることなく、供給搬送スクリュ132の搬送方向下流端に到達した現像剤は、余剰現像剤として仕切り壁134に設けられた開口部で供給搬送路136から回収搬送路137に自重で落下する。回収搬送路137に落下した余剰現像剤は、回収現像剤と同様に図4中矢印D方向に搬送される。回収搬送スクリュ133によって矢印D方向に搬送され、回収搬送スクリュ133の搬送方向下流端に到達した現像剤は、現像器下部開口部153で自重によって落下し、第二現像剤移送パイプ150内に入る。
【0028】
第二現像剤移送パイプ150内に入った現像剤は、第二オーガ151によって、攪拌器140に移送される。攪拌器140の内部には図5に示すように、あらかじめ現像剤が蓄えられており、現像剤流入口42から現像剤が流入し、アジテータ41によって攪拌される。攪拌器140の下方では、自重によって、現像剤が現像剤流出口43にから排出されるが、不図示の制御手段によってバルブモータ46の回転を制御することによって、バルブ47の回転を制御し、現像剤の排出量を制御することができる。排出された現像剤は、第一現像剤移送パイプ120内に落下し、第一オーガ121によって、現像器130の供給搬送路136の上方に移送される。供給搬送路136の上方に到達した現像剤は、現像器上部開口部123で自重によって落下し、供給搬送路136に移送される。供給搬送路136に移送された現像剤は供給搬送スクリュ132によって、図4中矢印C方向に搬送されながら、現像ローラ131に供給される。
【0029】
上述の現像剤の循環で、現像ローラ131表面に担持された現像剤が現像ローラ131と感光体12との対向部である現像領域を通過する際に、現像剤中のトナーが消費される。トナーが消費されると現像剤のトナー濃度が減少し、トナー濃度センサ139によって、トナー濃度が減少したことが検知される。減少したトナーを補充するために、トナー収容器110からトナー補給経路141を通って攪拌器140にトナーが補給され、攪拌器140内の現像剤と補給されたトナーとが混合される。なお、補充するトナー量は、形成された画像面積率を検出して、算出することも可能である。また、トナー濃度センサの設置位置としては、現像器130に限らず、攪拌器140に設けても良い。
【0030】
現像装置40が通常通り稼動しているときは、バルブ47は一定速度で回転しており、攪拌器140から排出される現像剤量は一定となる。現像装置が、画像形成を行わないときは、まずバルブ47を閉じ、現像装置をそのまま駆動させる。すると現像剤は、順次、攪拌器140に溜まっていき、やがて略すべての現像剤が攪拌器140に収容される。このとき現像器130は駆動し続けるが、現像剤は入っていないため、現像剤がストレスを受けることはない。ただし、現像器130を停止することもできる。再び画像形成を行うときはバルブ47を一定速度で回転させれば、現像剤は攪拌器140から現像器130に移送され、現像剤の循環が始まる。
【0031】
次に、実施形態1の現像部である現像器130の特徴部について図3を用いて説明する。
図3に示すように、現像器130は、潜像担持体である感光体12に近接して対向する現像剤担持体としての現像ローラ131を備え、現像ローラ131の表面から隙間を持った位置に現像剤量規制部材としてのドクタブレード135を備えている。現像剤担持体である現像ローラ131は、をその内部に固定された磁界発生手段としての複数のマグネットを備えるマグネットローラ131bと、このマグネットローラ131bの周囲を回転可能な非磁性のスリーブ131aとから構成する。スリーブ131aは不図示の駆動手段によって駆動が伝達され、図中矢印E方向に回転駆動する。そして、供給搬送路136内の現像剤が現像ローラ131のスリーブ131bの表面に供給されると、現像剤はスリーブ131bとともに矢印Eの方向に搬送され、感光体12との対向部である現像領域で感光体12上の潜像にトナーを供給することで現像を行う。
【0032】
そして、実施形態1の現像器130では、マグネットローラ131bの磁極配置により、現像ローラ131表面のドクタブレード135と対向する位置よりも現像ローラ131の表面移動方向上流側に、低磁束密度領域γを形成している。この低磁束密度領域γは、現像ローラ131の表面における法線方向の磁束密度が低い領域である。これにより、現像ローラ131表面におけるドクタブレード135に対向する位置、及びこの位置から現像ローラ131表面移動方向上流側の領域に担持される現像剤の磁性キャリア間の結びつきを弱い状態にすることができる。
これにより、ドクタブレード135と現像ローラ131表面との間隙であるドクタギャップを現像剤が通過する際、現像剤のキャリア間の結びつきが弱い状態となり、ドクタギャップよりも高い位置にある現像剤はドクタブレード135に接触してもドクタブレード135の形状に合わせて容易に移動する。これにより、現像剤がドクタギャップで強いストレスによって摺擦されることを抑制することができる。よって、現像剤の劣化を抑制し、現像剤の長寿命化を図ることができる。
なお、ドクタブレード135は図3に示すように、鉛直方向についてスリーブ131aの回転中心である現像ローラ中心点131Pよりも上方の現像ローラ131の表面と対向している。このような位置では、現像剤の自重による現像剤と現像ローラ131表面との摩擦力が、現像ローラ131表面での現像剤の担持に寄与するため、現像剤を担持して搬送するために要する磁力を低減することができる。特に、図3に示すように、現像ローラ131表面の最上部周辺でドクタブレード135が対向することにより、現像剤の自重による摩擦力が大きくなり、現像剤を担持して搬送するために要する磁力をさらに低減することができる。
また、ドクタブレード135と現像ローラ表面との間隙であるドクタギャップの幅は、0.3[mm]〜1.0[mm]であり、実施形態1の現像装置40では、ドクタギャップの幅は、0.5[mm]である。
【0033】
図3では低磁束密度領域γで示す、現像剤量規制部材に対して現像剤担持体の表面移動方向上流側の領域について、従来の現像装置では現像剤担持体表面における法線方向の磁束密度を高く設定していた。これは、以下の理由による。
磁気ブラシ現像法を用いた二成分現像では、現像剤担持体と現像剤量規制部材との間隙(ドクタギャップ)を適正な大きさにすることにより、現像剤担持体上の現像剤を現像に適した搬送量にしている。現像に適した量に規制された現像剤担持体上の現像剤中のトナーを、現像電圧を印加することによって感光体上の静電潜像に付着させて画像を形成する。
ここで、帯電量不足のトナーである帯電不良トナーが現像に用いられると現像剤担持体に担持された現像剤に含まれる帯電不良トナーが飛散する、トナー飛散が発生する。これは、十分な電荷を備えない帯電不良トナーは、磁性キャリアに対する吸着力が弱く、磁性キャリアから離脱しやすいため、トナーが容易に飛散してしまうためである。トナー飛散が生じると、装置内汚れや画像上の地肌汚れ等の問題が生じる。よって、静電潜像に対して適量のトナーを付着させるには、トナーの帯電量を調整する必要がある。
【0034】
トナーを帯電させるには、二成分現像剤を用いる場合、トナーとキャリアとの摩擦帯電を利用する方法が一般的である。具体的には、現像装置内において、現像剤を搬送する搬送経路内で、トナーとキャリアとをあらかじめ所定量混合し、攪拌しながら搬送する。
この際、従来の現像装置の現像剤担持体に供給されるまでの攪拌では、出力するチャート画像面積率(※高画像面積の連続通紙が最も不利)や使用環境といった条件次第で、トナーの帯電量を十分に上昇できない場合があった。
これは、従来の現像剤を攪拌しながら搬送する現像剤搬送部材としてのオーガやスクリュは現像剤を搬送するために適した形状となっており、攪拌に対する機能は十分とはいえず、例えば攪拌に不利な条件下においては、攪拌してトナーを帯電させる効果が不十分となることがあったためである。また、現像装置よっては、現像領域を通過し、トナーが消費された現像剤にトナーを補給し、攪拌工程を経ず、現像剤供給部に戻すものもあり、このような現像装置においても現像剤担持体に現像剤を供給するまでに、トナーの帯電量を十分に上昇させることができない場合があった。
【0035】
そして、現像ローラ上に汲み上げられた後に現像剤量規制部材により余剰な現像剤を削ぎ落とす際に受けるストレスを大きくすることで、トナーとキャリアとの間で強い摩擦を与え、このときの摩擦帯電によって、トナーの帯電量を現像に適した電荷まで上昇させていた。なお、現像剤量規制部材で現像剤が受けるストレスを大きくするために、現像剤量規制部材に対して、現像剤担持体の表面移動方向上流側の領域の現像剤担持体表面における法線方向の磁束密度を高く設定し、現像剤を強いストレスによって摺擦していた。
このように、現像剤量規制部材から受けるストレスを大きくすることによって、トナー粒子の帯電量を現像に適した状態まで上昇させることができる。そして、トナーの帯電量が常に現像に適した電荷量に調整されれば、高品質な画像形成を行うことができる。すなわち、従来の現像装置では、トナーの帯電量を現像に適した電荷まで上昇させるために、現像剤量規制部材に対して現像剤担持体の表面移動方向上流側の領域の磁束密度を高く設定していた。
【0036】
一方、実施形態1の現像装置40では、ドクタブレード135と対向する位置よりも現像ローラ131の表面移動方向上流側に、低磁束密度領域γを形成している。現像装置40では、攪拌部である攪拌器140で十分に攪拌を行った後に、現像部である現像器130に現像剤を移送しているため、現像ローラ131表面に供給される現像剤のトナーの帯電量は現像に適した状態となっている。よって、ドクタブレード135と現像ローラ131との対向部での摩擦帯電によってトナーの帯電量を上昇させる必要がなく、現像ローラ131上に低磁束密度領域γを形成していても、帯電不良トナーに起因するトナー飛散の発生を抑制することができる。
【0037】
なお、現像装置40の攪拌器140内の現像剤の搬送は自重によって行われ、現像剤の攪拌のために設けられたアジテータ41を備えているため、搬送手段でもある従来の攪拌部材に比べて、より効率の良い現像剤の攪拌を行うことができる。さらに、現像装置40内の現像剤の半分以上、具体的には現像剤全体の50[%]〜80[%]の量の現像剤が攪拌器140に収容されている。トナーを所望の帯電量までより確実に帯電させることができるように攪拌時間を確保することが望ましいが、高速機においては、現像装置内の現像剤の循環速度が速いため、トナーを十分に帯電させる攪拌時間が確保することは困難である。このような問題に対して、現像装置40は、攪拌器140の容量を大きくし、現像装置内の現像剤の半分以上を攪拌器140に収容することによって、現像剤の攪拌時間を確保することができ、より確実にトナーの帯電量を上昇させることができる。
【0038】
また、現像装置40では、現像装置40内の現像剤に、トナー収容器110内のトナーを補給する、トナー補給手段としてのトナー補給経路141を攪拌器140に備えている。これにより、トナーの補給がなされた現像剤は攪拌器140での攪拌工程を経て現像器130に移送されるため、未帯電の未使用トナーが補給されても、現像に適した帯電量に帯電させた状態で現像器130に移送することができる。さらに、現像装置40では、現像器130に現像ローラ131に供給され現像領域を通過した現像剤を回収する現像剤回収部である回収搬送路137を備え、回収搬送路137で回収した回収現像を第二現像剤移送パイプ150によって、攪拌器140に移送する。そして、攪拌器140で攪拌される際に、未使用のトナーと攪拌されることで、減少したトナー濃度が調節され、現像に適したトナー濃度の現像剤として、現像器130に移送される。これにより、現像剤のトナー濃度の変動に起因する画像不良の発生を抑制することができる。
【0039】
また、従来の現像装置では、オーガやスクリュを用いて現像剤を略水平方向に搬送する搬送路の上方からトナーを補給するものがある。このようにトナーを補給すると補給されたトナーが現像剤の上部境界面を上滑りして、補給された未帯電のトナーがキャリアと攪拌されないことで帯電不良トナーとなり、トナー飛散となるおそれがある。一方、攪拌器140のように現像剤が自重による鉛直方向の移動があることで、現像剤の移動が水平方向のみのものに比べて、補給されたトナーの上滑りを防止し、上滑りに起因する帯電不良を防止することができる。
【0040】
ドクタブレード135と現像ローラ131表面との間隙であるドクタギャップで帯電を行う場合、急激に帯電するため、現像剤に対して高いストレスを与える必要があり、現像剤の劣化に繋がる。一方、攪拌器140による帯電は長時間かけて帯電するため、低いストレスで帯電量を上昇させることが可能となり、現像剤の劣化を抑制することができる。
【0041】
なお、攪拌器140のように、トナーの攪拌を十分に行うために現像装置における攪拌部の容量を大きくすると、帯電時間を確保できるが、従来の現像部と攪拌部とが一体型の現像装置では、現像装置が大きくなり、機械本体が大型化してしまう。
一方、現像装置40では、現像部である現像器130と攪拌部である攪拌器140とを別体で形成し、現像剤移送経路形成部材である現像剤移送パイプで、現像器130と攪拌器140とを接続することで、このような問題を解決することができる。
現像部以外に攪拌部を設けて、現像剤を攪拌することにより、より確実にトナーを帯電した状態で現像ローラに現像剤を供給することができるようになる。また、現像部と攪拌部とが一体型の現像装置よりも現像剤の循環経路が長くなるため、トナーとキャリアの接触機会も増え、トナーの帯電不良が発生しにくくなる。さらに、現像部と攪拌部とを別体で設けることにより、現像部とは離れた位置に攪拌部を設けることができ、現像部を設けるスペースを現像部と攪拌部とが一体のものである現像装置よりも小さくすることができる。これにより、画像形成装置全体のレイアウトの自由度が広がり、複写機100装置本体の小型化を図ることが出来る。さらに、攪拌器140が大型化したとしても、複写機100内のデットスペースに攪拌器140を設ける等により、複写機100装置本体の小型化を図ることが出来る。
【0042】
上述のような攪拌器140での攪拌により、あらかじめ充分な帯電性能を付与したうえで、現像器130への現像剤の移送を行うことができる。これにより、現像剤量規制部材に対して現像剤担持体の表面移動方向上流側の領域に、現像剤担持体表面の法線方向の磁束密度を低くした低磁束密度領域γを設け、現像剤がドクタギャップを通過する際のストレスを低減させても、トナー帯電性を確保することができ、長期に渡り高画像を維持することができる。
なお、攪拌器140が備える現像剤攪拌手段及び攪拌器140の形状としては、上述した構成に限らず、現像剤を十分に攪拌し、現像に適した状態までトナーを帯電することができればどのような構成であってもかまわない。
【0043】
さらに、現像器130と攪拌器140とを別体で設けることにより、攪拌器140の配置が自由になる。これにより、現像器130を設置した位置が、温度や外気の影響を受けやすい位置であったとしても、攪拌器140は温度や外気の影響を受けにくい位置に配置することができる。これにより、外気や温度に起因する、現像剤の劣化、変質を抑制することができる。
【0044】
また、従来の現像装置では、現像剤供給部を現像剤担持体よりも下方に設け、現像剤担持体の内部の磁石の磁力により現像剤を汲み上げるものがある。現像剤を磁力より汲み上げる構成で、現像剤量規制部材に対して現像剤担持体の表面移動方向上流側の領域で現像剤担持体の表面の法線方向の磁束密度を低くすると、汲み上げ不良が生じるおそれがある。現像剤の汲み上げ不良が生じると画像品質不良(例えばむら状の画像)が発生する。
【0045】
一方、実施形態1の現像装置40では、現像剤供給部である供給搬送路136が現像ローラ131の表面に現像剤を供給する、仕切り壁端部134aと対向する現像剤供給位置Saが、鉛直方向についての現像ローラ中心点よりも上方である。これにより、現像剤の自重による現像剤と現像ローラ131表面との摩擦力が、現像ローラ131表面での現像剤の担持に寄与するため、供給搬送路136から供給される現像剤を担持して搬送するために要する磁力を低減することができる。これにより、現像剤量規制部材に対して現像剤担持体の表面移動方向上流側の領域で現像剤担持体表面の法線方向の磁束密度を低くしたとしても、汲み上げ不良となることを抑制することができる。なお、図3に示す現像器130では、現像剤供給位置Saの規制部材上流側中心角αの角度を小さくすることで、現像剤の自重による摩擦力が大きくなり、現像剤を担持して搬送するために要する磁力をさらに低減することができる。
【0046】
次に、低磁束密度領域を形成するマグネットローラ131bの磁極配置の具体的な実施例について説明する。なお、各実施例では、図3に示すように現像ローラ131表面のドクタブレード135と対向する位置を規制部材対向位置Sb、仕切り壁端部134aと対向する位置を現像剤供給位置Saとする。また、規制部材対向位置Sbよりも現像ローラ131の表面移動方向上流側の位置と、規制部材対向位置Sbとのスリーブ131aの回転中心である現像ローラ中心点131Pでの中心角を、規制部材上流側中心角αで表す。さらに、規制部材対向位置Sbよりも現像ローラ131の表面移動方向下流側の位置と、規制部材対向位置Sbとの現像ローラ中心点131Pでの中心角を、規制部材下流側中心角βで表す。
【0047】
[実施例1]
図6は、実施形態1の現像装置40に適用可能な現像ローラ131の、マグネットローラ131bの磁極配置の一つ目の実施例の概略説明図である。
図6に示すように、実施例1のマグネットローラ131bは、S1極、N1極、S2極、N2極及びN3極を有して固定され、スリーブは回転自在に設けられている。それぞれの磁極の現像ローラ131表面における法線方向の磁束密度の最大値は、S1極が60[mT]、N1極が120[mT]、S2極が120[mT]、N2極が80[mT]そして、N3極が80[mT]となっている。図6中の各磁極と対向する位置の曲線について、各曲線からスリーブ131a表面までの距離がスリーブ131a表面上の法線方向の磁束密度の大きさを示している。
また、現像剤量規制部材4は、例えば、現像スリーブ表面から隙間をもって配置されるドクタブレードなどである。図1のように、S1極とN3極との間に配置される。また、N3極は、現像剤供給位置Saに対して表面移動方向下流側の現像ローラ131表面の領域には、その磁力の影響が及ばないように配置する。
現像剤は仕切り壁端部134aからその自重により現像ローラ131の表面の現像剤供給位置Saに供給され、その自重による現像ローラ131表面との摩擦力により現像ローラ131に担持される。ここで、本実施例における現像剤供給位置Saは現像ローラ131の表面上で、現像ローラ131の中心と、仕切り壁端部134aとを結んだ直線上にある。そして、スリーブ131aの回転によって現像ローラ131上をドクタブレード135との対向部である規制部材対向位置Sbまで搬送される。規制部材対向位置Sbにおけるドクタブレード135との間隙であるドクタギャップを通過することにより現像ローラ131表面上の現像剤が薄層化される。そして、ドクタギャップ通過後にS1極が現像剤を現像ニップ領域まで搬送して、N1極において、感光体12への現像が行われる。現像終了後、S2極の磁力により搬送され、現像ローラ131から現像剤を剥離する極が、N2極とN3極の反発磁力になる。
【0048】
実施例1では、規制部材上流側中心角αの角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、スリーブ131aの内側に磁極を配置しない低磁束密度領域γとしている。また、実施例1では、現像剤供給位置Saの規制部材上流側中心角αの角度が60[°]となる位置に仕切り壁端部134aが配置するように、現像ローラ131と仕切り壁134とを配置している。すなわち、現像剤供給位置Saに対して現像ローラ131の表面移動方向下流側で、規制部材対向位置Sbに対して現像ローラ131の表面移動方向上流側となる範囲では、スリーブ131aの内部に磁界発生手段である磁極を配置しない構成となっている。
そして、実施例1では、低磁束密度領域γでは、その表面の法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、30[mT]以下となるようにしている。具体的には、規制部材対向位置SbにおいてのS1極の磁界による低磁束密度領域γ内での法線方向の磁束密度の最大値Gが30[mT]以下となるように、規制部材の下流側で最も規制部材に近いS1極の規制部材下流側中心角βや、S1極の磁力を調整する。
【0049】
現像ローラ131に供給された現像剤は、低磁束密度領域γでは、マグネットローラ131bからの法線方向の磁力の影響が少なく、キャリア間の結びつきが弱いため、過度なストレスを受けることなく、現像剤がドクタギャップを通過して薄層化される。従って、現像剤劣化が抑制され、長期的に高画像品質を維持することができる。
【0050】
低磁束密度領域γにおける法線方向の磁束密度の値は小さいほど好ましい。S1極の磁力を変更しない場合は、S1極の規制部材下流側中心角βの値を大きくし、図7に示すように、低磁束密度領域γにS1極の磁力の影響が及ばないようにS1を配置する。このとき、規制部材対向位置SbにおいてのS1極の磁界による法線方向の磁束密度の最大値Gが5[mT]以下となるように、配置することにより、ドクタギャップを通過する際の現像剤が受けるストレスをさらに軽減することができる。
なお、図9を用いて後述するように規制部材上流側中心角αの角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲のスリーブ131aの内側にN3極を配置し、N3極として磁力の弱い磁石を用いることで、低磁束密度領域γを形成する構成がある。しかし、N3極を配置して、低磁束密度領域γ内の法線方向の磁束密度の最大値Gを5[mT]以下とすることは困難である。よって、法線方向の磁束密度の最大値Gを5[mT]以下とするためには、スリーブ131aの内側に磁極を配置しないことで低磁束密度領域γを形成することが好ましい。
より好ましくは、低磁束密度領域γでの法線方向の磁束密度の最大値が略0に近い程に小さく、現像剤が現像ローラ131の表面上に磁力でもって保持される状態が無いほど良い。このとき、供給された現像剤は、スリーブ131aの回転搬送力とS1極から引きよせられる弱い磁力とで、ドクタギャップを通過して、次にS1極で発生する磁力によって搬送され、現像領域に到るこのである。
また、ドクタギャップ通過後の現像剤の搬送性を考慮すると、S1極の規制部材下流側中心角βは、15[°]以内であることが望ましく、この範囲で、規制部材対向位置Sbでの法線方向の磁束密度が5[mT]以下となるように調節する。
これは、以下の理由による。
すなわち、S1の規制部材下流側中心角βを15[°]を越えて現像剤を弱い磁力で搬送するためには、必然的にS1極の半値幅を広くしなければならない。この場合、現像領域での磁気ブラシの動き(現像ローラ131の表面上の位置による法線方向の磁束密度の変化により磁気ブラシが寝たり立ったりする動き)が大きくなるため、電界中でのトナー飛翔を制御しずらく、トナーを像担時体に均一に付着させるに不利である。15[°]以内であれば、その必要がなく、トナーを像担時体に均一に付着させるに有利であり、トナーが潜像に忠実な高画質化を実現できる。
【0051】
実施例1では、現像剤供給位置Saの規制部材上流側中心角αの角度が60[°]となる位置に仕切り壁端部134aが配置するように、現像ローラ131と仕切り壁134とを配置している。ここで、現像剤供給位置Saの規制部材上流側中心角αをより小さい角度とすることで、例えば、現像剤供給位置Saの規制部材上流側中心角αの角度を45[°]以下とすることで現像剤の搬送を安定させることができる。これは、現像剤供給位置Saの規制部材上流側中心角αが小さいほど、現像剤供給位置Saにおける現像ローラ131表面の接線の傾きが小さくなり、現像ローラ131表面に供給された直後の現像剤の自重による現像ローラ131との摩擦力が大きくなるためである。
【0052】
なお、法線方向の磁束密度が30[mT]となる範囲、または、スリーブ131aの内部に磁界発生手段である磁極を配置しない範囲である低磁束密度領域γは、規制部材上流側中心角αの角度が、0[°]以上、20[°]以下の範囲であることがより好ましい。ドクタギャップに対して搬送方向上流側の法線方向の磁束密度が十分に小さければ、低磁束密度領域γの角度が小さくても現像剤は滞留せずに、もしくは滞留しても大きなストレスをかけることなく、搬送することができる。そして、0[°]以上、20[°]以下として低磁束密度領域γを狭く設定することにより、S1極から派生した弱い磁力の吸引力を受けて現像剤の搬送が円滑になり、また自重の加速度がつくので供給搬送路136から落下した現像剤がスリーブ131aの回転方向の搬送力によって搬送されやすくなる。
【0053】
[比較例1]
図8は、マグネットローラ131bの磁極配置の一つ目の比較例の概略説明図である。実施例1と同様の磁極配置で、S1極の規制部材下流側中心角βを0[°]として比較例1とした。
図8に示すように、S1の配置以外は図6に示す実施例1と同じである。S1極の規制部材下流側中心角βを0[°]としているため、規制部材対向位置SbにおいてのS1極の磁界による法線方向の磁束密度の最大値Gが、S1極の法線方向の磁束密度の最大値である60[mT]と略同じ値となっている。このように法線方向の磁束密度の最大値Gが大きくなるとキャリア間の結びつきが強くなるため、ドクタギャップを現像剤が通過する際に過度なストレスを受けることになり、現像剤の劣化が促進する。
【0054】
[実施例2]
図9は、実施形態1の現像装置40に適用可能な現像ローラ131の、マグネットローラ131bの磁極配置の二つ目の実施例の概略説明図である。
実施例1と同様に、実施例2のマグネットローラ131bは、S1極、N1極、S2極、N2極、N3極を有して固定され、スリーブ131aは回転自在に設けられている。また、現像剤量規制部材4は、例えば、現像スリーブ表面から隙間をもって配置されるドクタブレードなどである。図1のように、S1極とN3極との間に配置される。
現像剤は自重とN3極の磁力により現像ローラ131上にひきつけられ、スリーブ131aの回転で現像ローラ131表面上をドクタブレード135との対向位置である規制部材対向位置Sbまで搬送される。規制部材対向位置Sbにおけるドクタブレード135との間隙であるドクタギャップを通過することにより現像ローラ131表面上の現像剤が薄層化される。そして、ドクタギャップ通過後にS1極が現像剤を現像ニップ領域まで搬送して、N1極において、感光体12への現像が行われる。現像終了後、S2極の磁力により搬送され、現像スリーブから現像剤を剥離する極が、N2極とN3極の反発磁力になる。
【0055】
実施例2では、規制部材上流側中心角αの角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、現像ローラ131表面における法線方向の磁束密度の値が小さい低磁束密度領域γとしている。具体的には、規制部材上流側中心角αの角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲内のスリーブ131a内に設けられた磁界発生手段であるN3極の法線方向の磁束密度の最大値Gが、30[mT]以下としている。また、実施例2は、実施例1と同様に現像剤供給位置Saの規制部材上流側中心角αの角度が60[°]となる位置に仕切り壁端部134aが配置するように、現像ローラ131と仕切り壁134とを配置している。すなわち、現像剤供給位置Saに対して現像ローラ131の表面移動方向下流側で、規制部材対向位置Sbに対して現像ローラ131の表面移動方向上流側となる範囲の法線方向の磁束密度の最大値Gは、30[mT]以下となる。
【0056】
現像ローラ131表面に供給された現像剤はN3極で発生する磁力のみによって現像スリーブに強く保持されて搬送されるのではない。すなわち、現像剤は、N3極で発生する低めに設定された磁力と、その自重によるスリーブ131aに対する摩擦力とにより現像ローラ131に担持され、スリーブ131aの回転にともない生じる搬送力によって、ドクタギャップ通過後のS1極の磁力領域に受け渡される。
実施例2では、現像剤がドクタブレードを通過する際、N3極の磁力による影響が少なく、ドクタギャップを通過時の圧縮によるストレスが低減するため、長期的には現像剤の劣化を抑制できる。
【0057】
[比較例2]
図10は、マグネットローラ131bの磁極配置の2つ目の比較例の概略説明図である。実施例2と同様の磁極配置で、N3極の法線方向の磁束密度の最大値Gを60[mT]として比較例2とした。
図10では、規制部材上流側中心角αの角度が0[°]以上、60[°]以下となる範囲での、法線方向の磁束密度の最大値Gが60[mT]である。さらに、規制部材上流側中心角αの角度が0[°]以上、20[°]以下となる範囲であっても、法線方向の磁束密度の最大値が30[mT]を下回らない。
よって、N3極の磁力で保持される現像剤がドクタギャップ通過前の上流側に滞留し、これがドクタギャップを通過する時に、圧縮されることで大きなストレスを受けるため、長期的には現像剤にストレスがかかり劣化する。従って、初期では高画像を維持できるものの、経時では帯電不良となり画像品質低下を生じることになる。
【0058】
図11は、実施例2及び比較例2と同様の磁極配置で、N3極の法線方向の磁束密度の最大値G[mT]をと、現像剤にかかるトルクの関係を示すグラフである。
N3極での法線方向の磁束密度の最大値G[mT]は、N3極の位置のスリーブ131a上に保持される現像剤にかかる力である。また、現像剤にかかるトルク[N・m]とは、現像剤の入った現像ユニット全体のトルクから現像剤が無い場合の空ユニットのトルクを引いた値である。図11より、N3極の法線方向の磁束密度の最大値G[mT]が大きくなると、現像剤にかかるトルクが大きくなり現像剤に高ストレスが付与される事がわかる。よって、法線方向の磁束密度の最大値G[mT]が大きいほど、現像剤劣化が進行する。
【0059】
[実施例3]
図12は、実施形態1の現像装置40に適用可能な現像ローラ131の、マグネットローラ131bの磁極配置の三つ目の実施例の概略説明図である。
実施例3では、実施例2よりもドクタブレード135の位置が下方に設けられ、規制部材対向位置Sb及び現像剤供給位置Saも、実施例2よりも下方に設けられた現像器130の構成図である。
実施例3の現像装置40では、現像剤を上方へ汲み上げる必要があるので、N3極の法線方向の磁束密度の最大値を40[mT]とし、実施例2にくらべて大きく設定している。そして、N3極の磁力により現像ローラ131表面上に現像剤を保持させて、スリーブ131aが回転しながら搬送を行う。なお、N3極は、規制部材上流側中心角αの角度が0[°]以上、20[°]以下となる範囲で、法線方向の磁束密度の最大値が30[mT]となるように、その配置と発生する磁力とを設定する。
【0060】
実施例3の構成の場合、磁力を高めた分汲み上げ量も増え、実施例2の構成よりは現像剤にかかるストレスが増加するが、それでも比較例1及び比較例2のような、現像剤に強い磁気の保持力が加わる現像装置に比べて、現像剤へとかかるストレスを軽減することができる。
【0061】
[比較例3]
比較例2で説明した磁極配置のN2極をS3極に変更したマグネットローラ131bを、2軸のスクリュを備え、現像剤供給部を現像ローラよりも下方に配置した現像装置に適用し、比較例3とした。
図13は、比較例3の現像装置40の概略説明図である。比較例3の現像装置40では、2軸のスクリュとして、供給回収搬送スクリュ232と攪拌スクリュ233とを備えている。そして、供給回収搬送スクリュ232を備える供給回収搬送路236と、攪拌搬送スクリュ233を備える攪拌搬送路237とが、仕切り壁134によって仕切られている。
図13に示す現像装置40では、供給回収搬送路236内の現像剤を現像ローラ131表面に供給しつつ、現像領域を通過した現像剤を供給回収搬送路236内に回収する。供給回収搬送路236の搬送方向下流側まで到達した現像剤は、攪拌搬送路237に移送され、図中矢印Fで示すトナーの補給を受け、攪拌搬送路237で攪拌されながら搬送される。攪拌搬送路237の搬送方向下流側まで到達した現像剤は、図中矢印Hで示すように、再び供給回収搬送路236に移送される。
【0062】
現像ローラ131について、その内部に備えるマグネットローラ131bは、S3極が汲み上げ磁極であり、現像終了後、S2極の磁力により搬送され、現像ローラ131から現像剤を剥離する極が、S2極とS3極の反発磁力になる。
図13で示す現像装置40は、従来公知の一般的な2軸スクリュ汲み上げ方式で、現像剤を汲み上げるためS3極及びN3極の磁力が大きく設定されている。そして、N3極の大きい磁力によってキャリア間の結びつきが強い磁気ブラシを形成する現像剤がドクタギャップを通過する際の高いストレスによって現像剤が劣化し、長期の繰り返し印刷時の画像劣化が生じやすい。また、この方式でN3極の磁力を小さくして現像剤にかかるストレスを弱くすると、現像剤の汲み上げ不良による現像ローラ131の長手方向での濃度むら、および適正な帯電量を維持できなくなることが分かっている。
【0063】
次に、実施例1の図7に示す構成と比較例3の構成とについて、現像スリーブであるスリーブ131a上でのトナーの帯電量と、攪拌部でのトナーの帯電量とを比較した。
図14は、現像装置の各部におけるトナーの帯電量の推移を示すグラフであり、図14(a)は、実施例1の現像装置におけるトナーの帯電量の推移を示し、図14(b)は、比較例3の現像装置におけるトナーの帯電量の推移を示している。
図14において、縦軸のQ/Mは、現像剤1[g]を計測し、ブローオフ法により測定した時の帯電量である。また、攪拌部の測定値は、それぞれの攪拌部における現像剤移動方向の最下流側、すなわち攪拌部から出てきた現像剤の帯電量の測定値である。また、現像スリーブ上の測定値は、ドクタギャップを通過し、現像領域に到達した現像剤の帯電量の測定値である。
図14に示す帯電量は初期現像剤での評価であり、温度23[℃]、湿度50[℃]のときの測定値である。
図14(a)に示す実施例1の現像装置では、攪拌部のQ/Mの値は30[−μC/g]であり、現像スリーブ上のQ/Mの値は35[−μC/g]であった。一方、図14(b)に示す比較例3の現像装置では、攪拌部のQ/Mの値は18[−μC/g]であり、現像スリーブ上のQ/Mの値は35[−μC/g]であった。
なお、ブローオフ法による測定は現像剤1[g]を目開き22[μm]のメッシュをつけたブローオフ用ゲージ上に計量し、エアーを吹き付けて現像剤中のキャリアからトナーだけを分離させ(キャリアはメッシュ上に残る)、分離させたトナーの電荷を測定する。
【0064】
実施例1では、現像剤は攪拌部である攪拌器140から供給搬送路136へわたり現像ローラ131へと供給される際に、攪拌器140での充分な攪拌により帯電付与されるので、現像剤の帯電量Q/Mが比較的高い。そして、この現像剤と供給搬送路136内の現像剤、及び、現像ローラ131表面上の現像剤との帯電量Q/Mは略同じレベルである。具体的には、攪拌器140から供給搬送路136に供給された後のトナーの帯電量の変化量が5[−μC/g]以内となるレベルである。
なお、攪拌部でもアジテータ、スクリュなどの攪拌手段による攪拌で帯電量を立ち上げる際にある程度ストレスがかかるが、現像部のドクタギャップ通過時の強いストレスと比較すると、大幅に低いストレスで高効率に帯電付与することができる。
【0065】
一方、比較例3では、供給回収搬送スクリュ232および攪拌搬送スクリュ233とが攪拌と搬送をかねて機能しており、これらは装置小型化の都合上、充分な攪拌搬送距離をかせげないので、条件によっては現像剤に充分な帯電を付与できない。従って、通常はドクタギャップ通過時に強いストレスをかけて帯電付与を行う。よって、攪拌部でもある供給回収搬送路236内の現像剤の帯電量Q/Mは低めだが、現像スリーブ上の現像領域では急激に上昇する推移となる。具体的にはドクタギャップ通過での現像剤の帯電量の増加量が5[μC/g]以上である。

比較例3の構成では、急激な帯電量Q/Mの立ち上げ時にかかるストレスによって現像剤が劣化し、帯電能力が経時で低下してしまうため、実施例1の構成の方が好ましい。
【0066】
[実験1]
次に、実施例1乃至3、及び比較例3の構成の現像装置を用いて、ランニング試験を行った際の、経時での現像剤の帯電量の推移と、画像形成の品質の評価を行った。具体的には、ランニング試験前後の現像剤の帯電量Q/Mを確認すると同時に、ランニング試験後の画像上の地肌汚れ、トナー飛散について評価した。
実験条件は次のように設定した。
・実験装置:RICOH製のプリンターIPSIO8000
・感光体ドラム径: φ30[mm]
・感光体線速: 160[mm/sec]
・現像スリーブ: φ18[mm]
・現像スリーブ線速: 240[mm/sec]
・現像ギャップ(現像スリーブと感光体ドラムの隙間):0.3[mm]
・画像形成速度:毎分A4サイズ用紙を45[枚]
・現像剤:トナー(6.8[μm])とキャリア(35[μm])を調合。
・ランニニング前(初期): 立ち上げ後10[枚]通紙
・ランニング後(経時): 50000[枚]通紙
・ランニングモード: 画像面積20[%]、連続100[枚/1Job]
トナーの帯電量Q/M[−μC/g]の測定は、所定通紙枚数後の現像ユニットをひきだし、ドクタブレード通過後の現像スリーブ表面から現像剤をサンプリングし、Vブローオフ装置(リコー創造開発製)によって測定した。
【0067】
図15に、実験1でのトナーの帯電量Q/Mの推移を示す。図15において、実施例1の図7に示す構成を、構成(イ)、実施例2を構成(ロ)、実施例3を構成(ハ)、そして、比較例3を構成(ニ)とする。
画像上の地肌汚れ、及びトナー飛散といった画像品質の課題から帯電劣化の閾値が設定され、これを図中に引くと、(イ)〜(ハ)の構成は長期的に現像剤の帯電性が維持されるが、(ニ)の構成では品質劣化に至るほどに帯電劣化することが分かる。
その画像品質をOKとする基準は、表1を用いて後述する○または△となる画像を許容範囲とした。従って目視評価△以上になる地肌汚れ、トナー飛散レベルを達成する現像剤の帯電量の下限に近い値を閾値とした。
なお、図15中の帯電劣化・閾値は、Q/M=25[−μC/g]とした。
【0068】
本実験の実験結果を表1に示す。
【表1】

【0069】
表1について、画像上の地肌汚れは、温度10[℃]、湿度15[%]の環境において、連続50000[枚]出力耐久試験を実施後の転写紙上地肌部のトナー汚れ度合を目視(ルーペ)にて評価した。良好なものから○、△、×で評価した。○はトナー汚れがまったく観察されず良好状態、△は少し汚れが観察されるが問題とはならない程度であり、許容範囲内である。×は汚れが目立ち許容範囲外である。
トナー飛散は、温度40[℃]、湿度90[%]の環境において、連続50000[枚]出力耐久試験を実施後の複写機内のトナー汚染状態を目視にて評価した。○はトナー汚れがまったく観察されず良好状態、△はわずかに汚れが観察される程度で問題とはならず、許容範囲内である。×は許容範囲外で非常に汚れがあり許容範囲外である。
表1に示す結果のように、実施例1〜3の構成では、初期から50000[枚]後での帯電量の低下が少なく、トナー飛散、画像上の地肌汚れとも許容範囲内であった。一方、比較例3の構成では、初期から50000[枚]後での帯電量の低下が大きく、トナー飛散、画像上の地肌汚れとも許容範囲外であった。
【0070】
[変形例1]
実施形態1の現像装置40では、現像器130から攪拌器140へ現像剤を移送する第二現像剤搬送パイプ150を攪拌器140の上方に接続し、攪拌器140から現像器130へ現像剤を移送する第一現像剤搬送パイプ120を攪拌器140の下方に接続している。以下、第二現像剤搬送パイプ150を攪拌器140の下方に接続し、第一現像剤搬送パイプ120を攪拌器140の上方に接続し、攪拌器140内の現像剤を下方から上方に搬送しながら攪拌する変形例1について説明する。
図16は、変形例1の現像装置40の斜視説明図である。変形例1の現像装置40の現像器130は、図3及び図4を用いて説明した実施形態1の現像装置40の現像器130と同様のものを用いることができるため現像器130の詳細の説明は省略する。変形例1の現像装置40では、図16に示すように攪拌器140から現像器130に現像剤を移送する第一現像剤移送パイプ120が攪拌器140の上方に接続されている。一方、現像器130から攪拌器140に現像剤を移送する第二現像剤移送パイプ150が攪拌器140の下方に接続されている。
【0071】
図17は、図16中の矢印A方向から見た変形例1の攪拌器140の概略断面図である。
攪拌器140は、現像剤を内部に収容する円筒状部材である攪拌ケーシング49と、スクリュ部材としての攪拌スクリュ48とを備えている。攪拌スクリュ48は、攪拌フィン48bと攪拌回転軸48bとからなり、外部に設けた攪拌モータ45によって回転し、この回転により攪拌ケーシング49内の現像剤を下方から上方に向けて搬送し、攪拌する。
また、攪拌器140は、図16に示すように現像器130から移送される現像剤が流入する現像剤流入口42を攪拌ケーシング49の下方に備え、現像器130に向けて移送される現像剤が流出する現像剤流出口43を攪拌ケーシング49の上方に備えている。さらに、トナー収容器110から補給されるトナーが流入するトナー補給口44を攪拌ケーシング49の下方に備えている。
【0072】
第二現像剤移送パイプ150によって現像器130から攪拌器140の下方の現像剤流入口42まで搬送され、攪拌ケーシング49内に流入した現像剤は、攪拌スクリュ48によって上方向(図中矢印J方向)に搬送される。攪拌ケーシング49の上方へと到った現像剤は現像剤流出口43から第一現像剤移送パイプ120の方へと押し出され、第一現像剤移送パイプ120によって再び現像器130へと搬送される。
なお、攪拌スクリュ48は攪拌モータ45によって回転駆動しているので、現像剤の状態(トナー濃度、劣化状態)や外部条件(環境、使用モード)によって任意にモータの回転速度を制御することにより攪拌スクリュ48の回転速度を調整することができる。
一方、攪拌ケーシング49内の現像剤に補給されるトナーはトナー収納容器110からトナー補給経路141を通って攪拌器140の下方のトナー補給口44より攪拌ケーシング49内に供給される。下方にトナーが供給されることで、その後の補給されたトナーと現像剤とが上方向へ搬送されながら混合されることにより充分な攪拌がなされ、補給されたトナーを含む現像剤中のトナーの帯電量を十分に上昇させて現像器130へと搬送することができる。なお、現像器130の現像剤排出口である現像器下部開口部153の付近には図3に示すトナー濃度センサ139を備えている。このトナー濃度センサ139よって現像領域を通過した回収現像剤と余剰現像剤とが混合した現像剤のトナー濃度を検出し、検出結果のフィードバック情報に従ってトナー収容器110からのトナー補給量を制御する補給制御方式になっている。
【0073】
次に、変形例1の現像装置40内の現像剤の循環について説明する。現像器130内での現像剤の流れは実施形態1と共通するため、相違点についてのみ説明する。現像器130から第二現像剤搬送パイプ150に到達した現像剤は第二現像剤搬送パイプ150内を搬送され、攪拌器140の下方から攪拌器140内に流入する。攪拌器140内に流入した現像剤はトナーの補給及び調整が行われ、詳細は後述するが、攪拌器140内部の攪拌スクリュ48によって下方から上方へと持ち上げられる際に攪拌される。トナーの補給および調節が行われ、攪拌によってトナーの帯電量が上昇した現像剤は、第一現像剤移送パイプ120を通って、現像器130へと供給される。
【0074】
次に、変形例1の攪拌器140における現像剤の流れを詳細に説明する。
攪拌器140内の現像剤は、攪拌スクリュ48が回転することで下方から上方に搬送される搬送力が現像剤に付与されることによって現像剤が上方向に持ち上げられ、攪拌ケーシング49の上部の現像剤流出口43より第一現像剤移送パイプ120ニ排出され、現像器130へと搬送される動きをする。このとき、攪拌ケーシング49の内部での現像剤の流れには、図中矢印Jで示すように攪拌スクリュ48によって上方向に現像剤を移送する流れと、図中矢印Kで示すように、攪拌スクリュ48と円筒形状の攪拌ケーシング49の内壁との間隙δを自重により落下する流れとが存在する。そして、攪拌ケーシング49に流入した現像剤は、矢印Jで示す流れと矢印Kで示す流れとが混在することにより、上方向の移動や下方向の移動で、攪拌される機会が増加し、より確実な混合が出来る。また、このような攪拌ケーシング49内での現像剤の移動によって、現像剤は円筒形状の攪拌ケーシング49の内壁や攪拌スクリュ48の攪拌フィン48bと摺擦することにより帯電し、現像器130に供給される現像剤の帯電量の安定化に寄与することが考えられる。
【0075】
図17中矢印Kで示す現像剤が下方に向かう流れについて、下方に向かう現像剤の量は間隙δの大きさに影響を受ける。間隙δが小さければ、攪拌スクリュ48の回転によって上方に向かう現像剤の量に対して、下方に向かう現像剤の量が少なくなり、攪拌器140に流入した現像剤が短時間で排出され攪拌不足となる、あるいは攪拌フィンと攪拌ケーシングの小さい領域に現像剤が詰まり下方から上方への移送が出来なくなるおそれがある。一方、間隙δ大きすぎると、隙間から現像剤がこぼれて上方への搬送が出来なかったりするおそれがある。このため、間隙δを適切な値に設定することが重要となる。
そこで、本発明者らは図17に示す攪拌器140で、円筒形状の内径が14[mm]、内部底面から現像剤流出口43までの高さ100[mm]の攪拌ケーシング49を用いて、攪拌スクリュ48の条件を変更することで間隙δの値を調節する実験を行った。このとき、攪拌回転軸48aの外径を12[mm]、攪拌フィン48bのピッチ幅を15[mm]の攪拌スクリュ48を1400[rpm]の回転数で回転させたところ、攪拌フィン48bの外径が11〜13[mm]の範囲内とすると現像剤流出口43からの流出量と現像器130に供給されるトナーの帯電量とを、ともに適切な状態とすることができた。すなわち、この攪拌器140の間隔δとしては、0.5〜1.5[mm]の範囲が適正であることが分かった。
なお、上記実験に用いた攪拌器140を備えた現像装置40では、実施形態1と同様に、トナー粒子径7[μm]、キャリア粒子径35[μm]、トナー濃度7[%]の現像剤を使用し、攪拌器140と現像器130との間を現像剤が安定的に循環している状態で、攪拌ケーシング49内の現像剤の上面から現像剤流出口43までの高さは約10[mm]であった。
【0076】
また、図17中εで示す角度は、攪拌スクリュ48の攪拌回転軸48aの水平面に対する角度を示しており、図17で示す攪拌器140ではεの角度は最大値の90[°]となっている。この角度εについては、攪拌性を保つためには60[°]以上の角度をつけることが好ましい。角度εによって攪拌の効率は変化し、その値が小さくなるほど攪拌スクリュ48による攪拌の効率は低下する。上記の実験で用いた攪拌器140では、角度εが60[°]以下となると現像剤の上方への流れJと下方への流れKとの接触が減るので帯電性能が低下するため攪拌の効率が悪化し、所望の帯電量が上下の摺擦による混合効果が不十分となり、さらに低角度になる(すなわち水平に近づく方向になる)ほど、帯電性能が得られないことが確認された。
【0077】
実施形態1の現像装置40では、現像剤がドクタギャップで強いストレスにより摺擦されることを抑制できるため、現像剤の劣化を抑制して現像剤の長寿命化を図ることができるものである。そして、変形例1の現像装置40のように、その内部で現像剤を下方から上方に搬送しながら攪拌する攪拌器を用いる現像装置であっても、同様に現像剤の劣化を抑制して、現像剤の超寿命化を図ることができる。
なお、現像器130と攪拌部140とを接続する第一現像剤移送パイプ120及び第二現像剤移送パイプ150の内部に設けられた現像剤移送部材として第一オーガ121、第二オーガ151が設けられている。この現像剤移送部材としては、オーガに限らず、スクリュやエアーによる吸引方式などを用いることができる。ここで、現像剤移送部材としてオーガやスクリュを用いる場合は、攪拌器140内の攪拌スクリュ48も含めると、現像装置40全体の搬送過程で機械的な接触が多いので、現像剤にストレスがかかり、現像剤が劣化することが考えられる。しかし実際は、第一オーガ121、第二オーガ151及び攪拌スクリュ48等によってストレスを受けた現像剤の方が、従来のドクタギャップでの摺擦によりストレスを受けた現像剤に対して、劣化を低減した状態に保つことができることが分かった。
【0078】
図18は、変形例1の現像装置40の現像器130として図7に示す実施例1の構成を適用して、実験1と同様の実験条件でランニングを行い、現像剤劣化特性Q/Mを測定した結果を示すグラフである。現像器130として実施例1の構成を適用した変形例1の現像装置40の構成を構成(ホ)する。なお、構成(ニ)は、比較例3を示す。
実験1と図18で結果を示す実験との相違点は、実験1では、ランニング後の現像剤をそのまま用いて測定しているのに対して、図18で結果を示す実験はランニング後のキャリアとNEWトナーとで新しく作った現像剤の現像剤帯電量を測定している。これは、実験1の帯電量の測定はトナーとキャリアとの帯電劣化を含んだ測定であり、図18の実験の帯電量の測定はキャリアの帯電能力に注目した測定である。なお、図18の実験では、現像剤中のトナーとキャリアとを分離して、マグロールミル(小さな攪拌装置)を用いて測定を行った。
図18に示すように、変形例1の構成では比較例3の構成に比べて現像剤劣化特性が良好な状態を長期にわたり維持している。これは、変形例1の構成の方が攪拌器140内での現像剤の時間当たりの流動が大きいため分散してストレスを受ける(ストレスが緩和される)ことに起因している。さらに、攪拌器140で十分に攪拌を行うことができるため、現像器130として図7に示す実施例1の構成を適用することができ、現像器130内の現像スリーブ表面における法線方向の磁束密度が低磁束密度領域に設定されるために現像剤にかかるストレスが極めて低減することに起因している。一方ドクタ極の磁力が高くドクタギャップでの摺擦を行う比較例3の構成では、ドクタギャップ通過時の摺擦で現像剤に局所的な高ストレスが集中し現像剤劣化してしまう。
【0079】
なお、図18における現像剤劣化特性とは、現像剤中のキャリア帯電能力(CA)のことである。その測定法は、各経時の現像剤からトナーを吹き飛ばしたキャリアに対して新しいトナーを加えて、マグロールミル(リコー創造開発製)によって280[rpm]で300[sec]回転させ、この現像剤を上記したブローオフ法によりQ/M値を測定したものである。このQ/M値のことをキャリア帯電能力(CA)と称している。なお、ストレスが大きくなるとキャリア帯電能力(CA)が低下する関係になることは自明のことである。
以上のように、比較例1〜3のように従来型のドクタギャップで高いストレスが与えられる構成に比べて、変形例1のように下方から上方へと現像剤を混合して搬送する攪拌器140を設け、実施例1〜3のような構成の現像器130との間で現像剤を循環させる構成の方が、現像装置40全体としてのストレスを低減することができる。
【0080】
変形例1の現像装置40のように、攪拌器140が下方から上方に向けて搬送されることで、上に向けて搬送される動きと、重力により現像剤が下降する動きが混在し、現像剤と補給されたトナーとの混合・攪拌が良好に行われるため、高効率な帯電効果が得られ、安定した画像品質を得ることができる。
また、攪拌器140での帯電効率が上昇されることで、従来の現像器のドクタギャップ通過での帯電付与の役割が大幅に軽減されるので、この帯電付与時の摺擦において課題であった高ストレスによる現像剤劣化を抑えることができる。従って、下方から上方へスクリュを用いて現像剤を搬送して攪拌を行う攪拌器140を備えた現像装置40では、現像装置40全体としては従来の構成よりも低ストレスにすることが可能であり、現像剤の長寿命化を実現することができる。
【0081】
[変形例2]
実施形態1の現像装置40では、現像器130と攪拌器140との現像剤の受渡しを、それぞれ現像剤移送部材としての2つのオーガ(第一オーガ121、第二オーガ151)を用いて行っている。以下、現像器130と攪拌器140との現像剤の受渡しの一方のみに現像剤移送部材を設ける変形例2について説明する。
図19は、変形例2の現像装置40の概略構成図である。変形例2の現像装置40は、攪拌器140を、現像器130の上方に備えている。そして、回収搬送路137で回収された回収現像剤は第二現像剤移送パイプ150を通って、その内部に設けられたオーガ等からなる現像剤移送部材によって、攪拌器140まで持ち上げられる。攪拌器140で、トナー濃度の調節及び攪拌が行われた現像剤は、その自重により第一現像剤移送パイプ120を通って、現像器130の供給搬送路136に移送される。このように、攪拌器140を上方に設け、現像剤の自重により攪拌器140から現像器130に移送することにより、現像剤移送部材を少なくすることができる。また、自重により落下させるだけのため、オーガやスクリュを用いた現像剤の移送に比べて現像剤に加わるストレスを低減でき現像剤の長寿命化を図ることが出来る。なお、攪拌器140の配置としては、図19に示すように、現像器130に近接して配置するものに限らず、自重によって現像剤を移送できる位置であれば、複写機100本対中のどこに配置してもよい。
なお、回収現像剤は第二現像剤移送パイプ150内部に設けられた現像剤移送部材がとしてオーガやスクリュを用いる場合は、現像器130よりも上方にある攪拌器140まで現像剤を搬送する際に、現像剤にストレスがかかり、劣化することが考えられる。しかし、強い磁力によって現像ローラ131上に現像剤を汲み上げ、担持して、ドクタギャップで摺擦することによるストレスよりも、現像剤を上方に搬送することによるストレスのほうが低く抑えることができる。よって、従来のドクタギャップで高いストレスを与える構成に比べて、変形例2のように現像器130よりも高い位置に設置した攪拌器140まで現像剤持ち上げ、自重により供給搬送路136に移送し、現像ローラ131表面に供給する構成のほうが現像装置40全体での現像剤のストレスを軽減することができる。
【0082】
[実施形態2]
尚、実施形態1では、現像部と攪拌部とを別体で設けた現像装置40について説明したが、帯電不良トナーに起因するトナー飛散を防止する現像装置としては、現像部と攪拌部とが一体の現像装置であってもよい。以下、実施形態2として現像部と攪拌部とを一体で構成した現像装置について説明する。
図20は、実施形態2にかかる現像装置40の概略構成図である。実施形態1の現像装置40では、攪拌器140を現像器130とは別体に設けていたが、実施形態2の現像装置40は、攪拌器140を現像器130と一体で備えている点で実施形態1の現像装置40とは異なる。他の構成については実施形態1と共通であるので、相違点についてのみ説明する。
【0083】
図20に示すように、実施形態2の現像装置40の攪拌器140は、現像器130と一体であり、現像剤攪拌手段である攪拌搬送スクリュ233を備える攪拌搬送路237によって形成される。攪拌搬送路237の攪拌搬送スクリュ233の搬送方向下流側端部は、第一移送開口部220によって、供給搬送路136の搬送方向上流側端部と連通している。一方、攪拌搬送路237の攪拌搬送スクリュ233の搬送方向上流側端部は、第二移送開口部250によって、回収搬送路137の搬送方向下流側端部と連通している。
略水平方向に現像剤を搬送する供給搬送路136及び回収搬送路137と異なり、攪拌搬送路237は、下方に設けられた回収搬送路137から上方に設けられた供給搬送路136へと斜め上方に現像剤を搬送する。
【0084】
また、ドクタブレード135と現像ローラ131との間隙であるドクタギャップでの帯電を行わない構成であるので、攪拌器140で十分に攪拌がなされ、トナーの帯電量を現像に適した状態まで上昇させる必要がある。
図20に示す現像装置で、トナーの帯電量を現像に適した状態まで上昇させるには、攪拌時間を長く確保する必要がある。
攪拌搬送路237では斜め上方に現像剤を搬送するため、攪拌搬送スクリュ233が、供給搬送スクリュ132と同様の形状で、且つ、同じ回転数で回転するものであっても、搬送速度が遅くなり、現像器130よりも攪拌器140内に現像剤が収容される時間が長くなる。攪拌器140内に現像剤を収容する時間をながくすることにより、攪拌時間をより長く確保することができる。
さらに、攪拌時間を確保するためには、搬送能力の低い形状の攪拌搬送スクリュ233を用いることが望ましい。
【0085】
図21は、搬送能力の低い形状の攪拌搬送スクリュ233の一つ目の例と、供給搬送スクリュ132との形状を比較する斜視図である。図21に示すように攪拌搬送スクリュ233は軸部に巻きついた状態の羽部のスクリュピッチ幅を、供給搬送スクリュ132の羽部のスクリュピッチ幅よりも細かくしている。搬送スクリュのスクリュピッチ幅を細かくすると、搬送スクリュが一回転する間に現像剤を搬送する距離が短くなる。よって、攪拌搬送スクリュ233と供給搬送スクリュ132とが同じ回転速度の場合、攪拌搬送スクリュ233の搬送速度は供給搬送スクリュ132の搬送速度よりも遅くなる。
これにより、長く攪拌時間をより長く確保することができるので、トナーの帯電量が安定した現像剤を供給搬送路136に移送することができ、トナー飛散や、地汚れの発生を抑制することができる。
【0086】
図22は、搬送能力の低い形状の攪拌搬送スクリュ233の二つ目の例と、供給搬送スクリュ132との形状を比較する斜視図である。図14に示すように攪拌搬送スクリュ233にはその軸部に軸方向に平行な板状部材であるリブ233aを設けた構成である。攪拌搬送スクリュ233にリブ233aを設けることにより、攪拌搬送スクリュ233の回転により羽部に押され、軸方向に移動する現像剤に対してリブにより、回転方向に移動する力が加わり、軸方向への搬送効率が落ちる状態となる。よって、攪拌搬送スクリュ233と供給搬送スクリュ132とが同じ回転速度の場合、攪拌搬送スクリュ233の搬送速度は供給搬送スクリュ132の搬送速度よりも遅くなる。さらに、リブにより回転方向に移動する力が加わるため、撹拌性が上昇する。
これにより、長く攪拌時間をより長く確保することができ、撹拌性を向上することができるので、トナーの帯電量が安定した現像剤を供給搬送路136に移送することができ、トナー飛散や、地汚れの発生を抑制することができる。
【0087】
なお、単純搬送路237での搬送速度を遅くするだけでは、高速化に対応できないため、攪拌搬送路237は、供給搬送路136や回収搬送路137に比べて容量が大きくなるように形成する。これにより、現像装置40内の現像剤のほとんどが攪拌搬送路237内に収容された状態とすることができ、現像剤の攪拌時間を長く確保することができる。
【0088】
また、不図示のトナー補給手段は、第二移送開口部250近傍の回収搬送路137の搬送方向下流側端部または攪拌搬送路237の搬送方向上流側端部に未使用のトナーを補給する。これにより、未帯電の未使用トナーを確実に攪拌させることができ、未使用トナーが帯電不良トナーとなることに起因するトナー飛散や地汚れを抑制することができる。
また、図20に示すように、一体型であれば、現像装置40を画像形成装置である複写機100本体に対して容易に取り外すことができるので、メンテナンスが容易になる。
【0089】
[変形例3]
実施形態1及び実施形態2では、現像剤量規制部材として、ブレード状のドクタブレードを用いていた。これらの実施形態の現像装置40では、攪拌器140によって十分に攪拌がなされており、ドクタギャップにおいて高いストレスを与える必要がないため、現像剤量規制部材としてはブレードに限るものではない。
図23は、変形例3に係る現像部である現像器130の概略構成図である。図23に示すように、変形例3の現像器130では、現像剤量規制部材として、現像ローラ131の図中矢印E方向の表面移動に連れ回り、図中矢印I方向に回転可能なローラ状のドクタローラ135Rを備えている。
このように、現像剤量規制部材としてローラ形状のドクタローラ135Rをもちいることで、ドクタギャップでの更なる低ストレス化を図ることができ、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。
【0090】
以上、実施形態1によれば、現像剤担持体である現像ローラ131表面の現像剤量規制部材であるドクタブレード135と対向する規制部材対向位置Sbの現像ローラ131の表面移動方向上流側の中心角である規制部材上流側中心角αの角度が、最大で、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、法線方向の磁束密度の最大値Gが、30[mT]以下となる低磁束密度領域γとしている。これにより、マグネットローラ131bからの法線方向の磁力の影響が少なく、キャリア間の結びつきが弱いため、過度なストレスを受けることなく、現像剤がドクタギャップを通過して薄層化される。従って、現像剤劣化が抑制され、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。また、現像剤の劣化を抑制することで、現像剤の劣化に起因する画像品質の低下を抑制でき、長期的に高画像品質を維持することができる。
また、法線方向の磁束密度の最大値Gが、30[mT]以下となる低磁束密度領域γが、規制部材上流側中心角αの角度が、最大で、0[°]以上、20[°]以下の範囲に狭めることにより、S1極から派生した弱い磁力の吸引力を受けて搬送が円滑になる。また、自重の加速度がつくので現像剤供給部である供給搬送路136から落下した現像剤がスリーブ131aの回転方向の搬送力によって搬送されやすい。
また、現像剤供給部である供給搬送路136が現像ローラ131の表面に現像剤を供給する現像剤供給位置Saに対して現像ローラ131の表面移動方向下流側、且つ、規制部材対向位置Sbに対して現像ローラ131の表面移動方向上流側の範囲を、法線方向の磁束密度の最大値Gが、30[mT]以下となる低磁束密度領域としている。これにより、マグネットローラ131bからの法線方向の磁力の影響が少なく、キャリア間の結びつきが弱いため、過度なストレスを受けることなく、現像剤がドクタギャップを通過して薄層化される。従って、現像剤劣化が抑制され、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。また、現像剤の劣化を抑制することで、現像剤の劣化に起因する画像品質の低下を抑制でき、長期的に高画像品質を維持することができる。
また、低磁束密度領域γの法線方向の磁束密度の最大値Gを5[mT]以下とすることで、ドクタギャップ通過時のストレスをさらに軽減することができ、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。
また、低磁束密度領域γの法線方向の磁束密度を0[mT]とし、現像剤の自重による現像ローラ131表面との摩擦力のみで現像剤を搬送することで、ドクタギャップ通過時のストレスをさらに軽減することができ、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。
また、規制部材上流側中心角αの角度が、少なくとも、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、非磁性現像スリーブであるスリーブ131aの内側に磁界発生手段である磁極を配置しない低磁束密度領域γとしている。これにより、マグネットローラ131bからの法線方向の磁力の影響が少なく、キャリア間の結びつきが弱いため、過度なストレスを受けることなく、現像剤がドクタギャップを通過して薄層化される。従って、現像剤劣化が抑制され、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。また、現像剤の劣化を抑制することで、現像剤の劣化に起因する画像品質の低下を抑制でき、長期的に高画像品質を維持することができる。
また、現像剤供給位置Saに対して現像ローラ131の表面移動方向下流側、且つ、規制部材対向位置Sbに対して現像ローラ131の表面移動方向上流側の範囲を、スリーブ131aの内側に磁極を配置しない低磁束密度領域γとしている。これにより、マグネットローラ131bからの法線方向の磁力の影響が少なく、キャリア間の結びつきが弱いため、過度なストレスを受けることなく、現像剤がドクタギャップを通過して薄層化される。従って、現像剤劣化が抑制され、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。また、現像剤の劣化を抑制することで、現像剤の劣化に起因する画像品質の低下を抑制でき、長期的に高画像品質を維持することができる。
また、ドクタブレード135は、鉛直方向についてスリーブ131aの回転中心である現像ローラ中心点131Pよりも上方の現像ローラ131の表面と対向している。このような位置では、現像剤の自重による現像剤と現像ローラ131表面との摩擦力が、現像ローラ131表面での現像剤の担持に寄与するため、現像剤を担持して搬送するために要する磁力を低減することができる。
また、現像剤供給部である供給搬送路136が現像ローラ131の表面に現像剤を供給する、仕切り壁端部134aと対向する現像剤供給位置Saが、鉛直方向についての現像ローラ中心点よりも上方である。これにより、現像剤の自重による現像剤と現像ローラ131表面との摩擦力が、現像ローラ131表面での現像剤の担持に寄与するため、供給搬送路136から供給される現像剤を担持して搬送するために要する磁力を低減することができる。よって、現像剤の汲み上げ不良に起因する画像品質不良(例えばむら状の画像)の発生を抑制することができる。
また、現像剤供給位置Saを、低磁束密度領域γ内とすることにより、現像ローラ131表面に供給された現像剤は磁力による影響をほとんど受けることなく、自重による現像ローラ131表面との摩擦力により担持され、ドクタギャップまで到達する。これにより、ドクタギャップにおけるストレスの軽減することができる。
また、現像ローラ131表面上の現像領域を通過した現像剤を回収する現像剤回収部としての回収搬送路137を備えることにより、トナー濃度が低下した現像剤が再び現像に使用されることを防止し、安定した画像品質を維持することができる。
また、現像器130との間で現像剤を受渡し可能で、従来の現像装置に比べて、より確実に帯電を行うことができる攪拌手段としてのアジテータ41を備える攪拌器140を有することにより、ドクタギャップにおける帯電が行われない構成であっても、トナー飛散、地汚れの発生を抑制することができる。
また、現像部である現像器130と攪拌部である攪拌器140とを別体で構成し、現像剤移送経路形成部材である2つの現像剤移送パイプである第一現像剤移送パイプ120と第二現像剤移送パイプ150とで現像器130と攪拌器140とを接続することにより、現像部とは離れた位置に攪拌部を設けることができ、現像部を設けるスペースを現像部と攪拌部とが一体のものである現像装置よりも小さくすることができる。これにより、画像形成装置全体のレイアウトの自由度が広がり、装置本体の小型化を図ることが出来る。さらに、攪拌器140を温度や外気の影響を受けにくい位置に配置することにより、攪拌器140内の現像剤が外気や温度の影響で、劣化や変質することを抑制することができる。
また、現像装置40内の現像剤の半分以上、具体的には現像剤全体の50[%]〜80[%]の量の現像剤が攪拌器140に収容されている。よって、現像剤の攪拌時間を確保することができ、より確実にトナーの帯電量を上昇させることができるため、トナー飛散の発生をより確実に抑制することができる。
また、現像装置40内の現像剤に、トナー収容器110内のトナーを補給する、トナー補給手段としてのトナー補給経路141を攪拌器140に備えている。これにより、トナーの補給がなされた現像剤は攪拌器140での攪拌工程を経て現像器130に移送されるため、未帯電の未使用トナーが補給されても、現像に適した帯電量に帯電させた状態で現像器130に移送することができる。これにより、未帯電の未使用トナーが帯電不良トナーとなって、現像ローラ131に供給され、トナー飛散となることを抑制することができる。
また、現像装置40では、現像器130に現像ローラ131に供給され現像領域を通過した現像剤を回収する現像剤回収部である回収搬送路137を備え、回収搬送路137で回収した回収現像を第二現像剤移送パイプ150によって、攪拌器140に移送する。そして、攪拌器140で攪拌される際に、未使用のトナーと攪拌されることで、減少したトナー濃度が調節され、現像に適したトナー濃度の現像剤として、現像器130に移送される。これにより、現像剤のトナー濃度の変動に起因する画像不良の発生を抑制することができる。
また、現像剤量規制部材としてブレード形状のドクタブレード135を用いることにより、簡易な構成で、現像ローラ131表面上の現像剤を現像に適した量に規制することができる。
また、現像剤量規制部材としてローラ形状のドクタローラ135Rを用いることにより、現像ローラ131表面上の現像剤を現像に適した量に規制しつつ、ドクタギャップでの現像剤のストレスを軽減することができる。
また、画像形成装置である複写機100は、現像手段として現像装置40を有することにより、現像剤の長寿命化を図ることが出来る。さらに、現像剤の劣化を抑制することで、現像剤の劣化に起因する画像品質の低下を抑制でき、長期的に高画像品質を維持することができる。
また、実施形態2の現像装置40によれば、現像器130と攪拌器140とを一体で構成しているので、現像装置40を画像形成装置である複写機100本体に対して容易に取り外すことができ、メンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施形態1に係る複写機の概略構成図。
【図2】実施形態1に係る現像装置の斜視説明図。
【図3】図2中の矢印A方向から見た現像器の概略断面図。
【図4】図2中矢印B方向から見た現像器の図2における手前側端部周辺の概略断面図。
【図5】実施形態1に係る攪拌器の概略断面図。
【図6】実施例1に係るマグネットローラの磁極配置の概略説明図。
【図7】実施例1に係るマグネットローラのより好ましい磁極配置の概略説明図。
【図8】比較例1に係るマグネットローラの磁極配置の概略説明図。
【図9】実施例2に係るマグネットローラの磁極配置の概略説明図。
【図10】比較例2に係るマグネットローラの磁極配置の概略説明図。
【図11】N3極の法線方向の磁束密度の最大値をと、現像剤にかかるトルクの関係を示すグラフ。
【図12】実施例3に係るマグネットローラの磁極配置の概略説明図。
【図13】比較例3に係る現像装置の概略説明図。
【図14】現像装置の各部におけるトナーの帯電量の推移を示すグラフ。(a)は、実施例1の現像装置におけるトナーの帯電量の推移、(b)は、比較例3の現像装置におけるトナーの帯電量の推移。
【図15】実験1でのトナーの帯電量Q/Mの推移を示すグラフ。
【図16】変形例1に係る現像装置の斜視説明図。
【図17】図16中の矢印A方向から見た現像器の概略断面図。
【図18】変形例1の現像装置を用いた実験での現像剤劣化特性Q/Mの推移を示すグラフ。
【図19】変形例2に係る現像装置の概略断面図。
【図20】実施形態2にかかる現像装置の概略構成図。
【図21】搬送能力の低い形状の攪拌搬送スクリュの一つ目の例の斜視説明図。
【図22】搬送能力の低い形状の攪拌搬送スクリュの一つ目の例の斜視説明図。
【図23】変形例3に係る現像器の概略構成図。
【符号の説明】
【0092】
40 現像装置
41 アジテータ
41a 攪拌軸
41b 攪拌羽
42 現像剤流入口
43 現像剤流出口
44 トナー補給口
45 攪拌モータ
46 バルブモータ
47 バルブ
47a バルブ回転軸
100 複写機
110 トナー収容器
120 第一現像剤移送パイプ
121 第一オーガ
122 第一オーガ駆動軸
123 現像器上部開口部
130 現像器
131 現像ローラ
132 供給搬送スクリュ
133 回収搬送スクリュ
134 仕切り壁
135 ドクタブレード
136 供給搬送路
137 回収搬送路
139 トナー濃度センサ
140 攪拌器
141 トナー補給経路
142 トナー搬送オーガ
148 トナー補給モータ
150 第二現像剤移送パイプ
151 第二オーガ
152 第二オーガ駆動軸
153 現像器下部開口部
236 供給回収搬送路
232 供給回収搬送スクリュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に磁性キャリアとトナーとからなる二成分の現像剤を担持して表面が移動し、潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像に該トナーを供給して現像する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、
該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、
該現像剤量規制部材と対向する該現像剤担持体の表面上の規制部材対向位置と、該規制部材対向位置に対して現像剤担持体表面移動方向上流側の任意の位置との該現像剤担持体の回転中心での中心角を規制部材上流側中心角としたときに、該規制部材上流側中心角の角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、
該現像剤担持体の表面における法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、30[mT]以下の範囲となる低磁束密度領域とすることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
上記規制部材上流側中心角の角度が、0[°]以上、20[°]以下となる範囲を、上記低磁束密度領域とすることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
表面上に磁性キャリアとトナーとからなる二成分の現像剤を担持して表面が移動し、潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像に該トナーを供給して現像する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、
該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、
該現像剤供給部が該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向下流側、且つ、該現像剤担持体表面の該現像剤量規制部材と対向する規制部材対向位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側の範囲を、
該現像剤担持体の表面における法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、30[mT]以下の範囲となる低磁束密度領域とすることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1、2または3の現像装置において、
上記低磁束密度領域の法線方向の磁束密度が、0[mT]以上、5[mT]以下の範囲であることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4の現像装置において、
上記低磁束密度領域の法線方向の磁束密度は、0[mT]であることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の現像装置において、
上記現像剤担持体は、内部に固定された複数の磁界発生手段と、その表面に上記現像剤を担持し回転可能な非磁性現像スリーブとからなることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
内部に固定された複数の磁界発生手段と、表面上に現像剤を担持して回転し潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像を現像する非磁性現像スリーブとからなる現像剤担持体と、
該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、
該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、
該現像剤量規制部材と対向する該現像剤担持体の表面上の規制部材対向位置と、該規制部材対向位置に対して現像剤担持体表面移動方向上流側の任意の位置との該現像剤担持体の回転中心での中心角を規制部材上流側中心角としたときに、該規制部材上流側中心角の角度が、0[°]以上、60[°]以下となる範囲を、
該非磁性現像スリーブの内側に該磁界発生手段を配置しない低磁束密度領域とすることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項7の現像装置において、
上記規制部材上流側中心角が、0[°]以上、20[°]以下の範囲を上記低磁束密度領域とすることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
内部に固定された複数の磁界発生手段と、表面上に現像剤を担持して回転し潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面の潜像を現像する非磁性現像スリーブとからなる現像剤担持体と、
該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給部と、
該現像剤担持体表面と対向し、該現像剤供給部で該現像剤担持体表面上に供給され該現像領域搬送される該現像剤の層厚を規制する現像剤量規制部材とを備える現像部を有する現像装置において、
該現像剤供給部が該現像剤担持体の表面に該現像剤を供給する現像剤供給位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向下流側で、該現像剤担持体表面の該現像剤量規制部材と対向する規制部材対向位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側となる範囲を、
該非磁性現像スリーブの内側に該磁界発生手段を配置しない低磁束密度領域とすることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の現像装置において、
上記現像剤量規制部材は鉛直方向について該現像剤担持体の回転中心よりも上方の該現像剤担持体表面と対向することを特徴とする現像装置。
【請求項11】
請求項10の現像装置において、
上記現像剤供給部が上記現像剤担持体の表面に上記現像剤を供給する現像剤供給位置は、鉛直方向について上記現像剤担持体の回転中心よりも上方であることを特徴とする現像装置。
【請求項12】
請求項11の現像装置において、
上記現像剤供給位置は上記低磁束密度領域内であることを特徴とする現像装置。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の現像装置において、
上記現像部は上記現像剤担持体に供給され上記現像領域を通過した上記現像剤を回収する現像剤回収部を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項14】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13の現像装置において、
上記現像剤に上記トナーを補給するトナー補給手段を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項15】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の現像装置において、
上記現像部との間で上記現像剤を受渡し可能で、該現像剤を攪拌する攪拌手段を備える攪拌部を有することを特徴とする現像装置。
【請求項16】
請求項15の現像装置において、
上記現像部と上記攪拌部とは別体で構成し、該現像部と該攪拌部とは現像剤移送経路形成部材によって接続されていることを特徴とする現像装置。
【請求項17】
請求項16の現像装置において、
上記攪拌部は、上記現像剤を下方から上方に向けて搬送し、攪拌することを特徴とする現像装置。
【請求項18】
請求項17の現像装置において、
上記攪拌部は、上記現像剤を内部に収容する円筒状部材と、回転することにより該円筒状部材内の該現像剤を下方から上方に向けて搬送するスクリュ部材とを備えることを特徴とする現像装置。
【請求項19】
請求項17または18の現像装置において、
上記現像剤に上記トナーを補給するトナー補給手段を備え、
該トナー補給手段からのトナーを補給するトナー補給部を上記攪拌部の下方に備えることを特徴とする現像装置。
【請求項20】
請求項15の現像装置において、
上記現像部と上記攪拌部とは一体で構成することを特徴とする現像装置。
【請求項21】
請求項15、16、17、18、19または20の現像装置において、
該現像装置内の上記現像剤の半分以上が上記攪拌部内に存在するように構成したことを特徴とする現像装置。
【請求項22】
請求項15、16、17、18、19、20または21の現像装置において、
上記現像剤に上記トナーを補給するトナー補給手段を備え、
該トナー補給手段によって該トナーの補給がなされた該現像剤を、上記攪拌部で攪拌した後に該現像部に移送するように構成したことを特徴とする現像装置。
【請求項23】
請求項15、16、17、18、19、20、21または22の現像装置において、
上記現像部は上記現像剤担持体に供給され上記現像領域を通過した上記現像剤を回収する現像剤回収部を備え、
該現像剤回収部で回収した回収現像剤を上記攪拌部に移送し、該攪拌部で攪拌した後に該現像部に移送するように構成したことを特徴とする現像装置。
【請求項24】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23の現像装置において、
上記現像剤量規制部材はその先端部が上現像剤担持体の表面と対向するブレード形状であることを特徴とする現像装置。
【請求項25】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24の現像装置において、
上記現像剤量規制部材は、上記現像剤担持体の表面移動に対して、連れ回り可能なローラ形状であることを特徴とする現像装置。
【請求項26】
少なくとも潜像担持体と、
該潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、
該潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、
該静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段とを有する画像形成装置において、
該現像手段として、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25に記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−310340(P2007−310340A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275106(P2006−275106)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】