説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】複数のトナー担持体を設けたハイブリッド現像装置において、装置の大型化やコストアップを極力抑え、高速現像時の濃度低下や、現像履歴(ゴースト)の発生のない、高速・高画質な現像装置およびそれを用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】複数のトナー担持体のうち、像担持体の回転方向最下流に配置されたトナー担持体に限って、その表面に対向し、該表面が静電潜像を現像する現像領域から、現像剤担持体からトナーを供給される供給領域まで移動する間に、該表面に担持された現像領域を通過後の現像残トナーの帯電量を調整するトナー帯電量調整手段を設けたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関する。特に、表面にトナーを担持搬送し、像担持体上に形成された潜像を現像する複数のトナー担持体と、表面に現像剤を担持搬送し、前記複数のトナー担持体に前記現像剤中のトナーを供給する現像剤担持体とを有する現像装置、及び該現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置における現像方式としては、現像剤としてトナーのみを用いる一成分現像方式及びトナーとキャリヤを用いる二成分現像方式が知られている。
【0003】
一成分現像方式では一般的にトナーをトナー担持体とトナー担持体に押圧された規制板とによって形成される規制部を通過させることでトナーを帯電し、所望のトナー薄層を得ることができるため、装置の簡略化、小型化、低コスト化の面で有利である。
【0004】
一方で、規制部の強いストレスによりトナーの劣化が促進され易く、トナーの電荷受容性が低下しやすい。さらに、トナーへの電荷付与部材である規制部材やトナー担持体表面がトナーや外添剤により汚染されることでトナーへの電荷付与性も低下するため、よりトナー帯電量の低下が生じ、かぶり等の問題を引き起こす。そのため、一般に現像装置の寿命が短い。
【0005】
比較すると、二成分現像方式ではトナーをキャリヤとの混合による摩擦帯電で帯電するためストレスが小さく、さらに、キャリヤ表面積も大きいため、トナーや外添剤による汚染に対しても相対的に強く、長寿命に有利である。
【0006】
しかしながら、二成分現像法では像担持体上の静電潜像を現像する際に、現像剤により形成される磁気ブラシによって像担持体表面を摺擦するため、現像像に磁気ブラシ痕が発生するという課題を有している。さらに、像担持体にキャリヤが付着しやすく、画像欠陥となる課題を有している。
【0007】
二成分現像剤を用いた二成分現像方式の長寿命の特長を有しながら、画像欠陥の問題を解決し、一成分現像法なみの高画質を実現する現像方式として、現像剤担持体上に二成分現像剤を担持し二成分現像剤からトナーのみをトナー担持体に供給して現像に用いる、所謂ハイブリッド現像方式が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド現像方式では、以下のような課題があった。
【0009】
(1)現像履歴(ゴースト)の問題
ハイブリッド現像方式が一般的に抱える課題として、トナー担持体上の現像に使用されなかった現像残トナーが、次の現像工程において現像履歴(ゴースト)として画像上に現れる現象がある。
【0010】
トナー担持体にトナーを供給する現像剤担持体とトナー担持体の対向部(トナー供給領域)では現像剤担持体からトナー担持体へのトナー供給と、トナー担持体上の現像残トナーの回収を行っている。その際、トナー供給領域においては、現像剤担持体からトナー担持体へとトナーを供給するためのトナー供給電界が形成されており、このトナー供給電界は現像残トナーを回収する観点では回収を阻害する因子として作用する。現像残トナーの回収不足が生じると、トナー供給領域通過後においても、現像残トナーが多かった部分と少なかった部分とではトナー担持体上のトナー量に差が生じ、その差が現像工程において濃度のコントラストとして現れてしまう現像履歴(ゴースト)の問題が生じる。
【0011】
(2)高速現像時の濃度低下の問題
高速で画像形成した場合、現像ニップ時間に対してトナーの飛翔が追いつかず、画像濃度が低下する課題があった。
【0012】
非接触一成分現像と共通の課題ではあるが、通常の一成分現像ではトナーに強いストレスを与えるため規制部での発熱やトナー融着の制約があり低速領域のみで使用されてきた。そのため、これまでそれほど問題視されてこなかった。ハイブリッド現像ではこれらの制約がないため、高速で画像形成することも可能になるが、例えばシステムスピードが500mm/sを超えるような装置においては、上記の課題が発生する恐れが出てくる。
【0013】
現像履歴(ゴースト)の問題を解消する方策として、トナー担持体の表面が現像領域からトナー供給領域まで移動する移動経路上でトナー担持体上の現像残トナーの帯電量を調整するトナー帯電量変更手段を設け、現像残トナーの帯電量を逆極性に変化させる方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0014】
特許文献2に記載のように、現像残トナーの帯電量を逆極性に変化させると、トナー供給領域におけるトナー供給電界に対して、現像剤担持体上のキャリヤに保持された正規帯電トナー(像担持体上の静電潜像を現像するための帯電極性及び帯電量に帯電したトナー)には現像剤担持体からトナー担持体へと移動する方向の静電気力が作用し、帯電量を逆極性に変化させられた現像残トナーにはトナー担持体から現像剤担持体へと移動する方向の静電気力が作用するため、トナー供給領域において、トナー担持体への正規帯電トナー供給と現像剤担持体への逆帯電現像残トナー回収が良好に行われ、現像残トナー量がトナー供給領域通過後のトナー担持体上のトナー量へ及ぼす影響が少なくなり、現像履歴(ゴースト)を抑制することが可能になる。
【0015】
一方、高速現像時の濃度低下に対しては、単純に像担持体、トナー担持体の径を大きくすることで現像ニップ時間を稼ぐことが考えられるが、装置の大型化の割りに現像ニップ拡大効果が小さく、特に500mm/sを超えるような速度領域では有効な手段とは言い難い。効率的に現像ニップ時間を長くするための方策として、トナー担持体を複数設ける方法が知られている(例えば、特許文献3)。
【0016】
特許文献3に記載のように、トナー担持体を複数設け、現像ニップを複数個所に分割することで、装置の大型化を極力抑えつつ、現像ニップ時間を確保することが可能となり、高速化に伴うトナー像の濃度低下を抑えるのに有効である。さらに、トナー担持体の複数化は各々のトナー担持体によって現像すべきトナー量を、トナー担持体が1本の場合に比べて少なく出来るため、現像後にトナー担持体表面に残留する現像残トナーの、現像した部分と現像しなかった部分でのトナー量差を小さく抑えられ、現像履歴(ゴースト)の発生を小さく出来る効果も得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭59−172662号公報
【特許文献2】特開2004−54036号公報
【特許文献3】特開2005−37523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら本発明者らが検討した結果、特許文献2の構成では、低速領域においては現像履歴(ゴースト)の問題は解消されているものの、高速領域では、濃度不足などの問題が生じることが判った。また、特許文献3に記載の構成によっても、現像履歴(ゴースト)のレベルは改善されているものの、そのレベルはいまだ不十分であり、現像履歴(ゴースト)を十分に解消するには至っていないことがわかった。
【0019】
また、特許文献2及び特許文献3に記載の構成を組み合わせて、現像履歴(ゴースト)の抑制と高速現像性の両立を検討したが、各々のトナー担持体にトナー帯電量変更手段を設けることは、部品点数が増え、コストアップを招いた。さらに、各トナー担持体にトナー帯電量変更手段を設けるため、各部材の配置の制約を増大させ、例えば、トナー担持体間の間隔を大きくする必要が生じ、装置が大型化する問題も生じた。
【0020】
本発明の目的は以上の背景を鑑み、複数のトナー担持体を設けたハイブリッド現像装置において、装置の大型化やコストアップを極力抑え、高速現像時の濃度低下や、現像履歴(ゴースト)の発生を抑制した、高速・高画質な現像装置およびそれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の課題は、以下の手段により解決することができる。
【0022】
1.像担持体上に形成された静電潜像を現像する複数のトナー担持体と、
トナーとキャリヤを含む現像剤を担持し、前記複数のトナー担持体にトナーを供給する現像剤担持体を有する現像装置であって、
前記複数のトナー担持体のうち、前記像担持体の回転方向最下流に配置されたトナー担持体に限って、その表面に対向し、
該表面が前記静電潜像を現像する現像領域から、前記現像剤担持体からトナーを供給される供給領域まで移動する間に、
該表面に担持された前記現像領域を通過後の現像残トナーの帯電量を調整するトナー帯電量調整手段を設けたことを特徴とする現像装置。
【0023】
2.前記像担持体の回転方向最下流に配置された前記トナー担持体の回転方向が、前記像担持体の回転方向に対して逆方向であることを特徴とする前記1に記載の現像装置。
【0024】
3.前記トナー帯電量調整手段は、フィルム部材であることを特徴とする前記1又は2に記載の現像装置。
【0025】
4.前記トナー帯電量調整手段は、ファーブラシ部材であることを特徴とする前記1又は2に記載の現像装置。
【0026】
5.前記トナー帯電量調整手段は、回転ブラシ部材であることを特徴とする前記4に記載の現像装置。
【0027】
6.前記トナー帯電量調整手段は、ローラ部材であることを特徴とする前記1又は2に記載の現像装置。
【0028】
7.前記トナー帯電量調整手段は、表面に磁気ブラシを担持した磁石ローラであることを特徴とする前記1又は2に記載の現像装置。
【0029】
8.前記トナー帯電量調整手段には、前記現像残トナーを前記トナー帯電量調整手段の方に引き付ける方向の電圧が印加されていることを特徴とする前記1から7の何れか1項に記載の現像装置。
【0030】
9.像担持体と該像担持体上に形成された静電潜像を現像する前記1から8の何れか1項に記載の現像装置とを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、像担持体上の静電潜像を現像する複数のトナー担持体と、表面に二成分現像剤を保持し複数のトナー担持体にトナーを供給する現像剤担持体を有するハイブリッド現像装置において、像担持体の回転方向最下流に配置されたトナー担持体に限って、その表面に対向し、現像領域通過後であってトナー供給領域前のトナー担持体表面の現像残トナーの帯電量を調整するトナー帯電量調整部材を設けている。よって、所定の値に帯電量調整された現像残トナーは、現像剤担持体によって効率的に回収されるので、新たに現像剤担持体から供給されるトナーで形成されるトナー担持体上のトナー層は、現像した画像の影響が少なく、均一な膜厚及び適正な帯電量となる。このような安定したトナー層を形成したトナー担持体で、最終段の現像を行うので、上流側の現像像に現像履歴があっても、最終的に現像履歴の抑制された画像を得ることができる。また、トナー帯電量調整部材を像担持体の回転方向最下流に配置されたトナー担持体の表面のみに対向して配置しているので、大幅な装置の大型化やコスト増を伴うことがない。このようにして、効果的に現像履歴(ゴースト)の発生を抑制し、高速現像時にも高品質な画像を提供し得る、コンパクトな現像装置、およびそれを用いた画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態による画像形成装置の主要部を示す概略図である。
【図2】トナー帯電量調整手段として、トナー担持体上の現像残トナーに接触する固定部材を用いたものを示す概略図である。
【図3】トナー帯電量調整手段として、トナー担持体上の現像残トナーに接触する回転部材を用いたものを示す概略図である。
【図4】実施例及び比較例に用いた画像チャート(a)とゴーストが発生している出力画像(b)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の一形態について図面を用いて説明する。
(画像形成装置の構成と動作)
図1に本発明の一実施形態による画像形成装置の主要部を示す。この画像形成装置は、電子写真方式により像担持体(感光体)1に形成されたトナー像を用紙等の転写媒体Pに転写して画像形成を行うプリンターである。この画像形成装置は画像を担持するための像担持体1を有しており、像担持体1の周辺には、像担持体1を帯電するための帯電手段としての帯電部材3、像担持体1上の静電潜像を現像する現像装置2、像担持体1上のトナー像を転写するための転写ローラ4、及び像担持体1上の残留トナー除去用のクリーニングブレード5が、像担持体1の回転方向Aに沿って順に配置されている。
【0034】
像担持体1は、帯電部材3で帯電された後に、図中のE点の位置でレーザ発光器などを備えた露光装置6により露光されて、その表面上に静電潜像が形成される。現像装置2は、この静電潜像をトナー像に現像する。転写ローラ4は、この像担持体1上のトナー像を転写媒体Pに転写した後、図中の矢印C方向に搬送する。転写媒体P上のトナー像は定着装置(非図示)によって定着された後に排出される。クリーニングブレード5は、転写後の像担持体1上の残留トナーを、その機械的な力で除去する。画像形成装置に用いられる像担持体1、帯電部材3、露光装置6、転写ローラ4、クリーニングブレード5等は、周知の電子写真方式の技術を任意に使用してよい。例えば、帯電手段として図中、帯電ローラが示されているが、像担持体1と非接触の帯電装置であってもよい。また例えば、クリーニングブレードはなくてもよい。
【0035】
次に、本実施形態において用いられる現像装置2について説明する。現像装置2は、キャリヤとトナーを含む現像剤23とそれを収容する現像剤槽17、該現像剤槽17から供給された現像剤23を表面に担持して搬送する現像剤担持体11、現像剤担持体11からトナーのみが供給され、前記像担持体1上に形成された静電潜像を現像する第1のトナー担持体15および第2のトナー担持体16を備えてなる。
【0036】
現像装置2の詳細な構成と動作については、後述する。
(現像剤の構成)
本実施形態に係る現像装置において使用する現像剤の構成について説明する。
【0037】
本実施形態において使用する現像剤23はトナーと該トナーを帯電するためのキャリヤを含んでなるものである。
【0038】
〈トナー〉
トナーとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができ、バインダー樹脂中に着色剤や、必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものを使用できる。トナー粒径としてはこれに限定されるものではないが、3〜15μm程度が好ましい。
【0039】
このようなトナーを製造するにあたっては、一般に使用されている公知の方法で製造することができる。例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。
【0040】
トナーに使用するバインダー樹脂としては、これに限定されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)やポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂単体もしくは複合体により、軟化温度が80〜160℃の範囲のものを、またガラス転移点が50〜75℃の範囲のものを用いることが好ましい。
【0041】
また、着色剤としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等を用いることができ、一般に上記のバインダー樹脂に対して2〜20質量%の割合で用いることが好ましい。
【0042】
また、上記の荷電制御剤としても、公知のものを用いることができ、正帯電性トナー用の荷電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。負帯電性トナー用荷電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カリックスアレーン化合物などがある。荷電制御剤は一般に上記のバインダー樹脂に対して0.1〜10質量%の割合で用いることが好ましい。
【0043】
また、上記の離型剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス等を単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができ、一般に上記のバインダー樹脂に対して0.1〜10質量%の割合で用いることが好ましい。
【0044】
また、上記の外添剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、流動性改善例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粒子や、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂微粒子を使用することができ、特にシランカップリング剤やチタンカップリング剤やシリコーンオイル等で疎水化したものを用いるのが好ましい。そして、このような流動化剤を上記のトナーに対して0.1〜5質量%の割合で添加させて用いるようにする。外添剤の個数平均一次粒径は10〜100nmであることが好ましい。
【0045】
さらに上記外添剤として、トナーと逆極性の荷電性を有する逆極性粒子を使用してもよい。好適に使用される逆極性粒子はトナーの帯電極性によって適宜選択される。
【0046】
トナーとして負帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、正帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、アルミナ等の無機微粒子やアクリル樹脂、ベンゾグァナミン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に正帯電性を付与する正荷電制御剤を含有させたり、含窒素モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。
【0047】
上記の正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩等を使用することができ、また上記の含窒素モノマーとしては、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール等を使用することができる。
【0048】
一方、正帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、負帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、シリカ、酸化チタン等の無機微粒子に加え、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に負帯電性を付与する負荷電制御剤を含有させたり、含フッ素アクリル系モノマーや含フッ素メタクリル系モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。上記の負荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸系、ナフトール系のクロム錯体、アルミニウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体等を使用することができる。
【0049】
また、逆極性粒子の帯電性及び疎水性を制御するために、無機微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理するようにしてもよく、特に、無機微粒子に正帯電性を付与する場合には、アミノ基含有カップリング剤で表面処理することが好ましく、また負帯電性を付与する場合には、フッ素基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。
【0050】
逆極性粒子の個数平均粒径は、100〜1000nmであることが好ましい。トナーに対して0.1〜10質量%の割合で添加させて用いるようにする。
【0051】
〈キャリヤ〉
キャリヤとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリヤを使用することができ、バインダー型キャリヤやコート型キャリヤなどが使用できる。キャリヤ粒径としてはこれに限定されるものではないが、15〜100μmが好ましい。
【0052】
バインダー型キャリヤは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、キャリヤ表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたり、表面コーティング層を設けることもできる。バインダー型キャリヤの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類によって制御することができる。
【0053】
バインダー型キャリヤに用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂が例示される。
【0054】
バインダー型キャリヤの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を用いることができる。その形状は粒状、球状、針状の何れであってもよい。特に高磁化を要する場合には、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。また、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する磁性樹脂キャリヤを得ることができる。磁性体微粒子は磁性樹脂キャリヤ中に50〜90質量%の量で添加することが適当である。
【0055】
バインダー型キャリヤの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、これらの樹脂を表面にコートし硬化させてコート層を形成することにより、帯電付与能力を向上させることができる。
【0056】
バインダー型キャリヤの表面への帯電性微粒子あるいは導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリヤと微粒子とを均一混合し、磁性樹脂キャリヤの表面にこれら微粒子を付着させた後、機械的・熱的な衝撃力を与え、微粒子を磁性樹脂キャリヤ中に打ち込むようにして固定することにより行われる。この場合、微粒子は、磁性樹脂キャリヤ中に完全に埋設されるのではなく、その一部を磁性樹脂キャリヤ表面から突き出すようにして固定される。
【0057】
帯電性微粒子としては、有機、無機の絶縁性材料が用いられる。具体的には、有機系としては、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂及びこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子を用いることができ、帯電レベル及び極性については、素材、重合触媒、表面処理等により、希望するレベルの帯電及び極性を得ることができる。また、無機系としては、シリカ、二酸化チタン等の負帯電性の無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正帯電性の無機微粒子などが用いられる。
【0058】
一方、コート型キャリヤは磁性体からなるキャリヤコア粒子に樹脂コートがなされてなるキャリヤであり、コート型キャリヤにおいてもバインダー型キャリヤ同様、キャリヤ表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたりできる。コート型キャリヤの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子により制御することができ、バインダー型キャリヤと同様の材料を用いることができる。特にコート樹脂はバインダー型キャリヤのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用可能である。
【0059】
トナーとキャリヤの混合比は所望のトナー帯電量が得られるよう調整されれば良く、トナー混合比はトナーとキャリヤとの合計量に対して3〜50質量%、好ましくは6〜30質量%が適している。
(現像装置2の構成と動作)
図1を参照して本実施形態に係る現像装置2の詳細な構成例と動作例を説明する。
【0060】
〈装置構成〉
現像装置2において使用する現像剤23は、既述したようにトナーとキャリヤからなり、現像剤槽17に収容される。
【0061】
現像剤槽17は、ケーシング20により形成されており、通常は内部に混合撹拌部材18、19を収納している。混合撹拌部材18、19は、現像剤23を混合・撹拌し、摩擦帯電すると同時に現像剤槽17内で循環搬送し、現像剤担持体11表面のスリーブローラ12へ現像剤23を供給する。ケーシング20の混合撹拌部材19に対向する位置には、好ましくは、トナー濃度検出用のATDC(Automatic Toner Density Control)センサ21が配設されている。
【0062】
現像装置2は通常、現像領域7、9で消費される分のトナーを現像剤槽17内に補給するためのトナー補給部24を有している。トナー補給部24において、補給トナー22を収納した図示しないホッパから送られた補給トナー22が現像剤槽17内へ補給される。
【0063】
現像剤担持体11は内部に固定配置された磁石体13と、これを内包する回転自在なスリーブローラ12とから構成され、現像剤担持体11へ供給された現像剤23は、現像剤担持体内部の磁石ローラ13の磁力によってスリーブローラ12の表面に保持され、スリーブローラの回転に伴い搬送され、現像剤担持体に対向して設けられた規制部材(規制ブレード)14によって通過量が規制される。
【0064】
磁石体13は、スリーブローラ12の回転方向Bに沿ってN1、S1、N2、N3、S2、N4、S3の7つの磁極を有する(図2参照)。これらの磁極のうち、主磁極N1は、トナー担持体16と対向するトナー供給領域10の位置に配され、もう一方の主磁極N4はトナー担持体15と対向するトナー供給領域8に配されている。
【0065】
また、スリーブローラ12上の現像剤23を剥離するための反発磁界を発生させる同極部N2、N3が、現像剤槽17内部に対向して配置されている。
【0066】
トナー担持体15、16はそれぞれ現像剤担持体11及び像担持体1のそれぞれに対向するように配され、像担持体1上の静電潜像を現像するための現像バイアスVbがトナー担持体用バイアス電源により印加されている。
【0067】
複数のトナー担持体15、16は上記電圧を印加可能な限りいかなる材料からなっていてもよく、例えば、アルマイト等の表面処理を施したアルミローラが挙げられる。その他アルミ等の導電性基体上に、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂コートやシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムコーティングを施したものを用いてもよい。コーティング材料としては、これに限定されるものではない。
【0068】
さらに上記コーティングのバルクもしくは表面に導電剤が添加されていてもよい。導電剤としては、電子導電剤もしくはイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤として、ケッチンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、金属粉、金属酸化物の微粒子等が挙げられるが、これに制約されない。イオン導電剤として、四級アンモニウム塩等のカチオン性化合物や、両性化合物、その他イオン性高分子材料が挙げられるが、これにこだわらない。さらに、アルミ等の金属材料からなる導電性ローラであっても構わない。
【0069】
規制部材14によって通過量を規制された現像剤は第1のトナー担持体15と対向する第1のトナー供給領域8へと搬送される。トナー担持体15と現像剤担持体11の対向部である第1のトナー供給領域8では、磁石体13の主磁極N4により現像剤の穂立ちが形成され、第1のトナー担持体15に印加された現像バイアスVb1と現像剤担持体11に印加されたトナー供給バイアスVsの電位差に基づき形成されたトナー供給電界がトナーに与える力により、現像剤中のトナーがトナー担持体15へ供給される。少なくともトナー担持体15には直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアスVb1が加えられ、現像剤担持体11には直流電圧もしくは直流電圧に交流電圧を重畳したトナー供給バイアスVsが加えられ、トナー供給領域8には直流電界に交番電界が重畳された電界が形成される。
【0070】
また、トナー供給領域8では、穂立ちした現像剤担持体11上の現像剤によって第1のトナー担持体15上の現像残トナーを機械的に掻き取り、現像残トナーが回収される。
【0071】
第1のトナー供給領域8を通過した残りの現像剤は、現像剤担持体11のスリーブローラ12と共に回転移動して、第2のトナー担持体16と対向する第2のトナー供給領域10へと搬送される。ここでも第1のトナー供給領域8と同様に、現像剤担持体11上の現像剤は磁石ローラ13の主磁極N1によって穂立ちを形成し、第2のトナー担持体16に印加された現像バイアスVb2と現像剤担持体11に印加されたトナー供給バイアスVsの電位差に基づき形成された電界がトナーに与える力により、現像剤中のトナーが第2のトナー担持体16へ供給される。ここでも第1のトナー供給領域8と同様に、トナー担持体16には直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアスVb2が加えられ、現像剤担持体11には直流電圧もしくは直流電圧に交流電圧を重畳したトナー供給バイアスVsが加えられ、トナー供給領域10には直流電界に交流電界が重畳された電界が形成される。また第1のトナー供給領域8と同様に、穂立ちした現像剤担持体11上の現像剤によって第2のトナー担持体16上の現像残トナーを機械的に掻き取り、現像残トナーが回収される。
【0072】
図1において、第2のトナー担持体16は、像担持体1の回転方向に着目すると、複数のトナー担持体のうち、像担持体の回転方向最下流側に配置され、複数段に渡る現像工程の最終段で現像を行うトナー担持体となる。本発明では、この最下流側の、最終段で現像を行うトナー担持体16に限って、その表面に残留する現像残トナーは、トナー帯電量調整手段25によって、その帯電量が調整されており、トナー供給領域10における現像残トナーの回収がより確実なものとなる。トナー帯電量調整手段の詳細については後述する。
【0073】
図1では現像剤担持体11と第1のトナー担持体15および第2のトナー担持体16の回転方向を、すべて同方向に回転するように設定しているが、特に回転方向を限定するものではない。
【0074】
図1のように同方向に回転させた場合は、現像剤担持体11とトナー担持体15、16の対向部ではそれぞれの表面が互いに逆方向に回転する。ハイブリッド現像方式では、現像領域を通過後の現像残トナーをできる限り回収し、静電潜像をトナーで現像した部分と現像しなかった部分のトナー量差を出来るだけ小さくした上で、次の供給領域でトナー供給を行うことが、現像履歴(ゴースト)の発生を抑制する上で重要である。そのため、現像剤担持体11表面とトナー担持体15、16表面の対向部での表面の移動方向を逆方向とすることで、相対速度が大きくなり、機械的回収力がより高くなるので、現像残トナーを回収する観点では有利である。よって、現像剤担持体11とトナー担持体15、16の回転方向を同方向に設定した方が、現像履歴(ゴースト)の抑制に繋がるため望ましい。
【0075】
さらに、像担持体1の回転方向の最下流で像担持体1に対向配置され、トナー帯電量調整手段25が設けられる、最終段で現像するトナー担持体16の回転方向については、像担持体1の回転方向と逆方向が望ましい。像担持体1と最終段で現像するトナー担持体16の回転方向が同方向の場合、トナー担持体16の表面が現像領域9からトナー供給領域10まで移動する間に設けられるトナー帯電量調整手段25が、像担持体1とトナー担持体15、16および現像剤担持体11で形成される空間Kに位置するため、レイアウト上の制約が生じ、例えばトナー担持体15、16間の間隔を広くしなければならないなど、現像装置の大型化に繋がり、好ましくない。図1に示すように最終段で現像するトナー担持体16と像担持体1の回転方向が逆方向であればトナー帯電量調整手段25をトナー担持体16と現像器ハウジング20の間に設ければ良く、レイアウト上の自由度が高く、装置をコンパクトにできる。
【0076】
第1のトナー供給領域8で、現像剤担持体11から供給され第1のトナー担持体15上に形成されたトナー層は、第1のトナー担持体15の回転に伴って第1の現像領域7へと搬送され、第1のトナー担持体15に印加された現像バイアスVb1と像担持体1上の潜像電位とによって形成される電界により第1の現像に使われる。第1の現像領域7では、第1のトナー担持体15と像担持体1の間に設けられた現像ギャップ中を電界によってトナーが移動することで現像が行われる。その後、第1の現像領域7でトナーを消費したトナー層(現像残トナー層)は、第1のトナー担持体15の回転に伴って第1のトナー供給領域8へと搬送される。
【0077】
また、同様に、第2のトナー供給領域10で、現像剤担持体11から供給され第2のトナー担持体16上に形成されたトナー層は、第2のトナー担持体16の回転に伴って第2の現像領域9へと搬送され、第2のトナー担持体16に印加された現像バイアスVb2と像担持体1上の潜像電位とによって形成される電界により2段目の現像に使われる。第2の現像領域9でも、第1の現像領域7と同様に、第2のトナー担持体16と像担持体1の間に設けられた現像ギャップ中を電界によってトナーが移動することで現像が行われる。
【0078】
その後、第2の現像領域9でトナーを消費したトナー層(現像残トナー層)は、第2のトナー担持体16の回転に伴い、トナー帯電量調整手段25との対向領域を通過することで、帯電量を調整された後に第2のトナー供給領域10へと搬送される。
【0079】
第2のトナー回収領域10を通過した現像剤は、スリーブ12の回転とともにさらに現像剤槽17に向けて搬送され、磁石ローラ13の磁極N2、N3によって形成される反発磁界によって現像剤担持体11上から剥離され、現像剤槽17内へと回収される。
【0080】
図示しない補給制御部が、ATDCセンサ21の出力値から、現像剤23中のトナー濃度が画像濃度確保のための最低トナー濃度以下になったことを検出すると、図示しないトナー補給手段によってホッパ内に貯蔵された補給トナー22がトナー補給部24を介して現像剤槽17内へ供給される。
(トナー帯電量調整手段の説明)
次にトナー帯電量調整手段25について詳細に説明する。
【0081】
トナー帯電量調整手段25は、複数のトナー担持体のうち、像担持体の回転方向最下流に配置された、最終段で現像するトナー担持体16に限って、その表面の現像残トナーのトナー供給領域での回収性を向上させることを目的として設置している。現像残トナーの帯電量を下げる(除電する)もしくは所定のトナー帯電極性とは逆極性に帯電することで、その目的が達成され、その作用機構はトナー帯電量調整手段25によって調整されたトナーの帯電量によって異なり、次の通りである。
【0082】
〈トナーが除電された場合〉
現像残トナーが除電され、トナー帯電量の絶対値が小さくなると、トナーとトナー担持体16との間に作用する静電気力(鏡像力)が小さくなる。そのため、トナーのトナー担持体16に対する付着力が小さくなり、トナー供給領域10での磁気ブラシの摺擦によって容易にトナーを回収することが可能になる。さらに、トナー供給領域10では正規極性に帯電したトナーをトナー担持体16へと供給する方向にトナー供給電界が形成されているが、現像残トナーを除電することで、トナー供給電界によって現像残トナーが受ける静電気力も小さくなるので、よりトナー供給領域10でのトナー回収性が向上する。
【0083】
〈トナーが逆極性に帯電された場合〉
一方、現像残トナーが正規極性とは逆極性に帯電された場合、現像残トナーのトナー担持体16に対する付着力変化の効果はトナーの帯電量に依存するため一概には言えないが、正規帯電トナーを供給するためのトナー供給電界が、逆極性に帯電したトナーにとってはトナー担持体16から現像残トナーを回収する方向に作用し、静電的に現像残トナーを回収することが可能となる。
【0084】
以上の理由から、トナー帯電量調整手段25によって、現像残トナーのトナー供給領域10での回収性が向上する。ここで、トナー帯電量が調整された現像残トナーは現像剤担持体11に回収された後、キャリヤとの混合による摩擦帯電によって正規帯電トナーに戻され、再び現像に使用される。そのため、トナー帯電量調整手段25による現像残トナーの帯電は、逆極性にしすぎると、キャリヤとの摩擦帯電により正規帯電トナーにするまでの混合時間が長くなり、正規帯電していないトナーによるカブリが画像上に発生する恐れがある。よって、トナー帯電量調整手段では現像残トナーを逆極性にまで帯電するよりも、必要最低限の除電がなされることが望ましい。
【0085】
トナー帯電量調整手段25では、トナーの正規帯電極性とは逆極性の電荷をトナーに付与できればよく、電荷付与方法としては、摩擦帯電、注入帯電、放電帯電やそれらの複合による公知の電荷付与手段を用いることができる。摩擦帯電や注入帯電を用いる場合、図1および図2に示したようなトナー担持体16上の現像残トナーに接触させた固定部材をトナー帯電量調整手段25として用いても良いし、図3に示すような回転体をトナー帯電量調整手段26として用いてもよい。放電帯電を用いる場合はコロナ帯電などの一般的な非接触帯電手段を用いても良いし、図1〜図3に示した接触手段を用いても良い。
【0086】
固定部材を用いたトナー帯電量調整手段25としては、現像残トナーを掻き取る(堰き止める)ことなくトナーの帯電量を調整するために、現像残トナー層に対して弾性的に当接可能なフィルム部材やファーブラシなどを例示することができる。
【0087】
フィルム部材の材料としては、特に制限はなくリン青銅、ニッケルやSUSなどの金属薄膜、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂からなるフィルムや、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等からなるゴムフィルムが挙げられるが、これらに制約されない。また、フィルム部材は単層構造であってもよいし、必要に応じて2層以上の構造であってもよい。
【0088】
摩擦帯電によって現像残トナーの帯電量を調整するためには、トナーと異なる摩擦帯電極性を備える材料(例えば負帯電性トナーに対してフッ素樹脂など)を用いることが好ましい。さらに、フィルム部材表面にトナー固着が生じると摩擦帯電性が低下するため、表面エネルギーが低い材料(例えばフッ素樹脂やシリコーン樹脂などを用いる)を用いることが好ましい。低表面エネルギーや帯電性は、フィルム部材自身の材料によって得ても良いし、フィルムに、例えばシリコーン化合物、フッ素化合物等の低表面エネルギー材料をバルク中に添加、もしくは表面処理によって制御しても良い。また、フィルム表面粗さによってもトナーの付着力を低減することが可能であり、フィルム部材がトナー担持体16と接する当接面の算術平均表面粗さRaは0.01μm〜2μmが好ましい。表面粗さが小さすぎるとフィルム部材とトナー担持体16上のトナーとの付着力が大きくなりトナー固着が発生しやすくなり、大きすぎるとフィルム部材とトナー担持体16上のトナー層との接触不良の要因となり、トナーへの電荷付与が不十分になる可能性がある。所望のフィルム部材の表面粗さを得るには、フィルム部材のバルク又は表面に粗さ調整剤を必要に応じて添加すればよい。粗さ調整剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機微粒子やPMMA等の樹脂微粒子が挙げられるが、これに限定されない。また、後述するカーボンブラック等の導電剤を荒さ調整剤として用いても構わない。フィルム部材の撓みを用いてフィルム部材を現像剤へ当接するためには、用いる材料の弾性率に応じて適切な形状(厚み、長さ)を選択することで適度な当接圧を得ることが可能となる。
【0089】
フィルム部材の電気抵抗は摩擦帯電電荷や注入電荷が移動可能なように、適度な導電性を有する必要がある。フィルム部材抵抗としては10〜10Ω/□程度が好ましい。
【0090】
このような適度なフィルム部材抵抗を得るために、樹脂フィルムやゴムフィルムのバルク又は表面に導電剤を必要に応じて添加してもよい。かかる導電剤としては電子導電剤又はイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、ケッチンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、金属粉、金属酸化物の微粒子等が挙げられるが、これらに制約されない。
【0091】
イオン導電剤の例としては、四級アンモニウム塩等のカチオン性化合物や、両性化合物、イオン性高分子材料が挙げられるが、これに限定されない。
【0092】
フィルム部材の厚さとしては、5μm以上1mm以下、好ましくは10μm以上200μm以下を例示できる。薄すぎると強度不足となり、厚すぎるとフィルム部材の弾性率やフィルムの支点から当接部までの長さにもよるがフィルム部材のトナー層への当接圧が大きくなりすぎ、当接部に現像残トナーがせき止められてトナーこぼれが生じる恐れがある。さらに、トナー層との接触ニップ幅が十分確保しにくく、摩擦帯電や注入帯電による帯電量調整不足が生じる恐れがある。
【0093】
フィルム部材は摩擦帯電電荷によるチャージアップの防止や注入帯電のための電荷供給源として、保持電極に固定される。保持方法は片端を自由端とする片持ち支持でも良いし、両端を固定する両端支持であってもよい。さらに、フィルム部材を円筒形状のスリーブ構成として保持電極に保持しても良い。注入帯電によって現像残トナーの帯電量調整を行うためにはフィルム部材への電圧印加や接地によって電位差を設ければよく、トナー担持体16への印加電圧に対してフィルムの電位がトナー担持体16からフィルム側(トナー帯電量調整手段25側)へトナーを引き付ける電位となればよい。摩擦帯電によってトナー帯電量を調整する場合、フィルムの電位はトナー担持体16と同電位でも構わないが、フィルムの静電吸着による接触性向上や静電的にトナーとフィルム部材との接触頻度改善のために、注入帯電の場合と同様にフィルム側へトナーを引き付ける電圧を印加することができる。トナー担持体16とフィルム部材間の平均電位差は0V〜300Vが望ましく、フィルムとトナー間の電界は直流電界であっても交流電界であっても構わない。
【0094】
保持電極に固定されたフィルム部材のトナー担持体16側への当接はフィルム部材の弾性による復元力を用いても良いし、フィルム部材とトナー担持体16との間に設けられた電位差による静電吸着力を用いても良い。当接方法に応じて、適宜、材料(弾性率)や形状(長さ、厚み)を選択することができる。
【0095】
トナー帯電量調整手段25(固定部材)として用いるファーブラシとしては、例えば、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂繊維を用いることができる。フィルム部材同様にカーボン、金属などの導電性微粒子の添加による導電性調整やフッ素化合物やシリコーン化合物の添加や表面処理によって、摩擦帯電性や表面エネルギー調整をしても良い。
【0096】
図3に示した、トナー帯電量調整手段26として用いる回転体としてはローラ部材、回転ブラシ部材、磁気ブラシ部材などを例示することができる。
【0097】
ローラ部材としては、アルミニウムなどの金属基体表面や金属基体表面に弾性層を形成した上に、先述のフィルム部材と同等の材料をコーティングしたものを用いることができる。ローラ部材の回転方向はトナー担持体との接触位置において、互いの表面が同方向に移動する方向(トナー担持体とローラ部材の回転方向は逆方向)が望ましい。表面移動方向が逆方向の場合、現像残トナー層を掻き取る恐れが生じるため好ましくない。トナー担持体とローラ部材は従動でも構わないが、現像残トナー層をローラ部材によって積極的に摺擦し、摩擦帯電を促進するために速度差を設けても良い。
【0098】
回転ブラシ部材としては、先述のファーブラシ部材と同様の材料をアルミニウムなどの金属基体に巻きつけて用いることができる。また、磁石ローラ表面に磁性粒子を担持させ、表面に磁気ブラシを形成させた磁石ローラを用いることもできる。磁性粒子としては、現像剤に使用されるキャリヤと同じものを用いても良いし、トナーとの摩擦帯電性を変える目的で、異なる表面処理を施した磁性粒子を用いることも可能である。
【0099】
回転ファーブラシや磁気ブラシでは電圧印加により、現像残トナーをブラシ内に一旦取り込み、ブラシとトナー間で摩擦帯電を行い、トナーの帯電量を除電または逆極性に調整することも可能となる。現像残トナーを回転ブラシに取り込む構成においては、回転ブラシの回転方向は、トナー担持体と同方向であっても、逆方向であっても良い。ブラシ内で除電または逆極性に帯電されたトナーは、ある程度の量がブラシ内に溜まると、トナー担持体16およびブラシ部材に印加された電圧によって形成される電界に抗して、トナー担持体に吐き出され、トナー供給領域10で現像剤担持体11により、回収される。
【0100】
このように本発明のハイブリッド現像装置においては、複数のトナー担持体のうち、像担持体の回転方向最下流に位置する、最終段で現像するトナー担持体に限って、その表面の現像残トナーを現像剤担持体で十分に回収することができる。よって、現像残トナーによる現像履歴を無くした状態で、最下流のトナー担持体上に現像剤担持体11から正規の帯電極性と帯電量をもつ正規帯電トナーが供給されて、均一な膜厚のトナー層を形成することができる。よって、静電潜像を最終段で現像し現像像を仕上げるトナー担持体上のトナー層の安定性を向上させることができ、大幅な装置の大型化やコスト増を伴うことなしに、効果的に現像履歴(ゴースト)の発生を抑制でき、高速現像時にも高品質な画像を提供しうる現像装置、およびそれを用いた画像形成装置を提供できる。
【実施例】
【0101】
上述した実施形態に係る現像装置を用いて、効果を確認するために実施した結果を述べる。
【0102】
現像装置には、図1に示す現像装置に相当する構成の現像装置を用いた。
【0103】
画像形成装置には、高速機であるコニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製のbizhub PRO1050を改造し(システム速度500mm/s設定)、図1の現像装置を装着可能にして用いた。現像剤にはマイナス帯電トナーの現像剤を用い、現像剤のトナー濃度を8質量%に調整した。
【0104】
実施例、比較例の現像装置において、像担持体とトナー担持体との現像ギャップは0.15mmとした。トナー担持体と現像剤担持体とのトナー供給ギャップは0.35mmとした。
【0105】
トナー担持体に印加する電圧は、振幅がpeak to peakで1.4kV、DC成分が−350V、周波数が4kHz、Duty比が50%の矩形波電圧とした。
【0106】
現像剤担持体に印加する電圧は各実施例、比較例においてトナー担持体に適正量のトナーが供給されるように調整した。
【0107】
像担持体上に形成された静電潜像の背景部電位は−550V、画像部電位は−60Vであった。
【0108】
後述する実施例及び比較例においては、上記の画像形成装置を用いて、図4(a)に示した画像チャートを印刷した。
【0109】
図4(a)の画像チャートはライン画像部、ベタ画像部およびハーフ画像部で構成されており、ライン画像は600dpiの1dot、2dot、4dot、8dotに相当する線幅で形成した。出力画像のライン画像の再現性から高速現像性の評価を行った。
【0110】
図4(b)は出力画像においてゴーストが発生している場合の例で、黒ベタ部のトナー担持体1周期後の位置に、周辺のハーフ画像部より薄いゴースト像が発生している。この黒ベタ部の1周期後に対応する領域のハーフ画像部と、白ベタ部の1周期後に対応する領域のハーフ画像部の濃度測定を行い、その差によりゴースト発生を評価した。
【0111】
高速現像性の評価は、ライン画像の再現性を目視評価し、画像チャートのラインを十分に再現されている場合を○、かすれが生じている場合を△、ラインに欠損が生じている場合を×とした。
【0112】
現像履歴(ゴースト)の評価は、濃度計(X−Rite社製X−Rite310)により行った。印刷されたハーフ画像部の黒ベタ部、白ベタ部のトナー担持体1周期に対応する領域の濃度を測定し、濃度差が0.05以下の場合を○(特に良好)、濃度差が0.05を超えて0.1以下の場合を△(良好)、それ以外を×(ゴースト発生)とした。
(実施例1)
図1に示す現像装置を用い、トナー帯電量調整部材25としてフィルム部材を用いた。
【0113】
フィルム部材としてはPTFE中にカーボンを分散し、フィルム抵抗10Ω/□とした、厚み80μmのフィルムを用いた。
【0114】
フィルム部材への印加電圧は、振幅がpeak to peakで1.4kV、DC成分−150V、周波数4kHz、Duty比50%の矩形波電圧とし、トナー担持体に対して、DC200Vの電位差が形成されるよう設定した。
(比較例1)
実施例1の現像装置から像担持体回転方向上流側のトナー担持体15を除いた構成とした。
(比較例2)
実施例1の現像装置からトナー帯電量調整部材であるフィルム部材25を除いた構成とした。
(比較例3)
実施例1の現像装置において、像担持体回転方向上流側のトナー担持体15の回転方向を反転し、現像領域7から供給領域8までの間で、上流側のトナー担持体15の表面の現像残トナーに接触するトナー帯電量調整部材を設けた構成とした。トナー帯電量調整部材としては、実施例1と同じものを用いた。また、像担持体の回転方向最下流のトナー担持体16には、トナー帯電量調整部材を設けなかった。
(比較例4)
比較例1の現像装置からトナー帯電量調整部材であるフィルム部材25を除いた構成とした。
(評価結果)
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1より、比較例1では高速現像性が不足しており、比較例2、3では、高速現像性はあるが、現像履歴の課題が残っている。また、比較例4では、高速現像性及び現像履歴共に問題がある。実施例1の構成であれば、高速現像性と現像履歴の課題を共に解決可能であることがわる。
【0117】
以上の結果から、本発明によって、大幅な装置の大型化やコスト増を伴うことなしに、効果的に現像履歴(ゴースト)の発生を抑制でき、高速現像時にも高品質な画像を提供しうる現像装置を提供することが可能となる。
【0118】
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 像担持体
2 現像装置
3 帯電部材
4 転写ローラ
5 クリーニングブレード
6 露光装置
7 現像領域(第1の現像領域)
8 トナー供給領域(第1のトナー供給領域)
9 現像領域(第2の現像領域)
10 トナー供給領域(第2のトナー供給領域)
11 現像剤担持体
12 スリーブローラ
13 磁石体
14 規制部材
15 トナー担持体(第1のトナー担持体)
16 トナー担持体(第2のトナー担持体)
17 現像剤槽
23 現像剤
24 トナー補給部
25 トナー帯電量調整手段(固定部材)
26 トナー帯電量調整手段(回転部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された静電潜像を現像する複数のトナー担持体と、
トナーとキャリヤを含む現像剤を担持し、前記複数のトナー担持体にトナーを供給する現像剤担持体を有する現像装置であって、
前記複数のトナー担持体のうち、前記像担持体の回転方向最下流に配置されたトナー担持体に限って、その表面に対向し、
該表面が前記静電潜像を現像する現像領域から、前記現像剤担持体からトナーを供給される供給領域まで移動する間に、
該表面に担持された前記現像領域を通過後の現像残トナーの帯電量を調整するトナー帯電量調整手段を設けたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記像担持体の回転方向最下流に配置された前記トナー担持体の回転方向が、前記像担持体の回転方向に対して逆方向であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナー帯電量調整手段は、フィルム部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナー帯電量調整手段は、ファーブラシ部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナー帯電量調整手段は、回転ブラシ部材であることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記トナー帯電量調整手段は、ローラ部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項7】
前記トナー帯電量調整手段は、表面に磁気ブラシを担持した磁石ローラであることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項8】
前記トナー帯電量調整手段には、前記現像残トナーを前記トナー帯電量調整手段の方に引き付ける方向の電圧が印加されていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の現像装置。
【請求項9】
像担持体と該像担持体上に形成された静電潜像を現像する請求項1から8の何れか1項に記載の現像装置とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−22378(P2011−22378A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167610(P2009−167610)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】