説明

現像装置

【課題】2つの現像剤保持体を有し、一方の現像剤保持体から他方の現像剤保持体に現像剤が受け渡される現像装置において、上記一方の現像剤保持体での現像による上記他方の現像剤保持体での現像への影響を軽減する。
【解決手段】現像装置10は、現像剤を保持して第1の現像領域A1に搬送し、像保持体1上の潜像を第1の現像領域A1にて現像剤により現像する第1の現像剤保持体11と、第1の現像領域A1を通過した現像剤を第1の現像剤保持体11から受け取って第2の現像領域A2に搬送し、像保持体1上の潜像を第2の現像領域A2にて現像剤により現像する第2の現像剤保持体12と、第1の現像領域A1から第2の現像領域A2までの現像剤の搬送経路で、現像剤を機械的に攪拌する攪拌部材13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式に用いられる現像装置として、2本の現像ロールを有するものが知られている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【0003】
特許文献1には、現像剤を担持して第1現像部へ搬送する第1現像剤担持体と、当該第1現像剤担持体から受け渡された現像剤を第2現像部へ搬送する第2現像剤担持体とを有する現像装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数段の現像剤担持体に交番電界を含む現像バイアスを印加し、この現像バイアスの交番電界成分を現像剤担持体の全段で少なくとも2種類以上とする現像方法が記載されている。具体的には、特許文献2には、2つの現像剤担持体に印加される現像バイアスの交番電界成分の周波数または実効値を互いに異ならせることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3,4には、互いに逆回転する2本の現像ロールを有し、2本の現像ロールの間から現像剤が供給される現像装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−177949号公報
【特許文献2】特開平4−184375号公報
【特許文献3】特公平2−8308号公報
【特許文献4】特開2006−47840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2つの現像剤保持体を有し、一方の現像剤保持体から他方の現像剤保持体に現像剤が受け渡される現像装置では、上記一方の現像剤保持体での現像が、上記他方の現像剤保持体での現像に影響を及ぼす。
【0008】
本発明は、2つの現像剤保持体を有し、一方の現像剤保持体から他方の現像剤保持体に現像剤が受け渡される現像装置であって、上記一方の現像剤保持体での現像による上記他方の現像剤保持体での現像への影響を軽減することが可能な現像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る現像装置は、現像剤を保持して第1の現像領域に搬送し、像保持体上の潜像を前記第1の現像領域にて前記現像剤により現像する第1の現像剤保持体と、前記第1の現像領域を通過した現像剤を前記第1の現像剤保持体から受け取って第2の現像領域に搬送し、前記像保持体上の潜像を前記第2の現像領域にて前記現像剤により現像する第2の現像剤保持体と、前記第1の現像領域から前記第2の現像領域までの前記現像剤の搬送経路で、前記現像剤を機械的に攪拌する攪拌部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記攪拌部材は、導電性の電極部材であり、前記現像装置は、前記第1の現像剤保持体および前記第2の現像剤保持体の少なくとも一方と前記攪拌部材との間に交番電界を形成する交番電界形成手段をさらに有する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記攪拌部材は、回転可能なロール状の部材である。
【0012】
本発明に係る現像装置は、現像剤を保持して第1の現像領域に搬送し、像保持体上の潜像を前記第1の現像領域にて前記現像剤により現像する第1の現像剤保持体と、前記第1の現像領域を通過した現像剤を前記第1の現像剤保持体から受け取って第2の現像領域に搬送し、前記像保持体上の潜像を前記第2の現像領域にて前記現像剤により現像する第2の現像剤保持体と、前記第1の現像剤保持体および前記第2の現像剤保持体に、互いに位相が異なる交流成分を含む現像バイアスを印加するバイアス印加手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る現像装置は、現像剤を保持して第1の現像領域に搬送し、像保持体上の潜像を前記第1の現像領域にて前記現像剤により現像する第1の現像剤保持体と、前記第1の現像領域を通過した現像剤を前記第1の現像剤保持体から受け取って第2の現像領域に搬送し、前記像保持体上の潜像を前記第2の現像領域にて前記現像剤により現像する第2の現像剤保持体と、導電性の電極部材と、前記第1の現像剤保持体および前記第2の現像剤保持体の少なくとも一方と前記電極部材との間に交番電界を形成する交番電界形成手段と、を有し、前記電極部材は、前記第1の現像領域から前記第2の現像領域までの前記現像剤の搬送経路において前記交番電界が形成されるように配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様では、前記電極部材は、回転可能なロール状の部材である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、一方の現像剤保持体での現像による他方の現像剤保持体での現像への影響を軽減することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、一方の現像剤保持体での現像による他方の現像剤保持体での現像への影響をより軽減することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、現像剤の受けるストレスを軽減することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、一方の現像剤保持体での現像による他方の現像剤保持体での現像への影響を軽減することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、一方の現像剤保持体での現像による他方の現像剤保持体での現像への影響を軽減することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、現像剤の受けるストレスを軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
(現像装置)
図1は、第1の実施の形態に係る現像装置10の構成の一例を示す概略図である。この現像装置10は、像保持体上の潜像を現像剤により現像する装置である。例えば、現像装置10は、電子写真方式において、感光体上の静電潜像を現像するものである。
【0023】
図1において、現像装置10は、第1の現像剤保持体11(以下、適宜「現像剤保持体11」と略称する)と、第2の現像剤保持体12(以下、適宜「現像剤保持体12」と略称する)とを有する。
【0024】
現像剤保持体11は、現像剤を保持して第1の現像領域A1に搬送し、像保持体1上の潜像を第1の現像領域A1にて現像剤により現像するものである。
【0025】
現像剤保持体12は、上記第1の現像領域A1を通過した現像剤を上記現像剤保持体11から受け取って第2の現像領域A2に搬送し、像保持体1上の潜像を第2の現像領域A2にて現像剤により現像するものである。
【0026】
上記現像剤は、一つの態様では、トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤である。ただし、例えば磁性または非磁性のトナーを含む一成分現像剤など、他の種類の現像剤が用いられてもよい。
【0027】
分かり易く言えば、本実施の形態では、第1の現像領域A1で使用された現像剤が、第2の現像領域A2でもう一度使用される。このような構成では、第1の現像領域A1での現像が、第2の現像領域A2での現像に影響を及ぼす。
【0028】
具体的には、例えば次のような影響がある。第1の現像領域A1でトナーが消費されると、図2(a)に示されるようにトナー量の分布が不均一になる。具体的には、現像剤保持体11の表面方向でのトナー量の分布が不均一になる。例えば、現像剤保持体11の表面のうち、トナーが消費された部分のトナー量は、トナーが消費されなかった部分のトナー量と比べて少なくなる。また、二成分現像剤では、現像剤層の厚さ方向でのトナー量の分布が不均一になる。例えば、現像剤層の像保持体側の部分のトナー濃度は、現像剤保持体側の部分のトナー濃度と比べて低くなる。
【0029】
そして、図2(b),(c)に示されるように、仮に上記分布が保たれたまま現像剤が現像剤保持体12に受け渡されて第2の現像領域A2に搬送された場合、第2の現像領域A2での現像性が不均一になり、現像像に濃度むらが生じる。例えば、トナー量が少ない部分では、十分にトナーを像保持体1に供給できないので、現像像の濃度が低くなる。分かり易く言えば、第2の現像領域A2での現像像に、第1の現像領域A1での現像の履歴が出てしまう。
【0030】
本実施の形態では、第1の現像領域A1での現像による第2の現像領域A2での現像への影響を軽減する観点より、現像装置10は、第1の現像領域A1から第2の現像領域A2までの現像剤の搬送経路で、現像剤を機械的に攪拌する攪拌部材13を有する。
【0031】
当該構成では、第1の現像領域A1を通過した現像剤は、攪拌部材13により機械的に攪拌されて現像剤の分布が均一化された後に、第2の現像領域A2に搬送される。
【0032】
ここで、均一化される現像剤の分布は、例えば、現像剤保持体の表面方向における現像剤量(具体的にはトナー量)の分布や、二成分現像剤層の厚さ方向でのトナー濃度の分布である。また、「均一化」とは、現像剤(具体的にはトナー)の分布が均一な状態に近付くことを意味する。これらのことは、以降同様である。
【0033】
(現像装置の具体的な一態様)
以下、図1を参照して、現像装置10の具体的な一態様を説明する。
【0034】
現像装置10は、像保持体1に対向する開口部が設けられた、二成分現像剤を収容する現像ハウジング14を有する。この現像ハウジング14の開口部には、現像剤保持体11および12が配置されている。現像剤保持体11および12は、それぞれ、像保持体1の軸方向に沿って延びる現像ロールであり、複数の磁極を有する磁石体と、当該磁石体の外周に回転可能に配置される非磁性の現像スリーブとを含む。また、現像剤保持体11および12は、現像剤保持体11が現像剤保持体12よりも像保持体1の回転方向下流側となるように、像保持体1の回転方向に沿って互いに隣接して配置され、いずれも像保持体1の回転方向に対して逆方向に回転する。
【0035】
また、現像装置10は、現像剤保持体11上の現像剤層の厚さを規制する層規制部材15と、現像剤保持体11および12に現像バイアスを印加するバイアス印加部16と、現像ハウジング14内の攪拌領域に設けられ、現像剤を攪拌および搬送する攪拌搬送部材17,18とを有する。上記現像バイアスは、例えば、直流成分に交流成分が重畳されたものである。
【0036】
当該具体的な一態様では、次のように現像が行われる。
【0037】
攪拌領域の現像剤は、現像剤保持体11に吸着(ピックアップ)された後、層規制部材15によって層厚が規制され、これにより所定の層厚の現像剤層が形成される。その後、当該現像剤層は、像保持体1と現像剤保持体11とが対向する第1の現像領域A1に搬送され、当該第1の現像領域A1において現像に使用される。具体的には、現像剤層中のトナーは、現像剤保持体11に印加される現像バイアスにより、像保持体1上の静電潜像に転移する。その後、現像剤層は、現像剤保持体11から現像剤保持体12に受け渡され、像保持体1と現像剤保持体12とが対向する第2の現像領域A2に搬送され、当該第2の現像領域A2において現像に使用される。具体的には、現像剤層中のトナーは、現像剤保持体12に印加される現像バイアスにより、像保持体1上の静電潜像に転移する。その後、現像剤層は、現像ハウジング14内に搬送され、現像剤保持体12から剥離(ピックオフ)されて攪拌領域に戻される。
【0038】
なお、図1に示される例では、現像剤保持体11および12は、いずれも像保持体1の回転方向に対して逆方向に回転するが、いずれも像保持体1の回転方向と同じ方向に回転するように構成されてもよい。この場合、現像剤保持体11は、現像剤保持体12よりも像保持体1の回転方向上流側となるように配置される。
【0039】
(攪拌部材に関する説明)
以下、攪拌部材13について、詳しく説明する。
【0040】
攪拌部材13の形状は、例えば、現像剤保持体に沿って延びる、スクリュー状やパドル状である。攪拌部材13との摩擦により現像剤の受けるストレスを小さくする観点より、攪拌部材13は、ロール状の部材であってもよい。さらに、よりストレスを小さくする観点より、攪拌部材13は、回転可能なロール状の部材や、現像剤の搬送方向に対して従動方向に回転駆動されるロール状の部材であってもよい。
【0041】
攪拌部材13の材質は、例えば、樹脂や金属(例えば非磁性の金属)である。
【0042】
攪拌部材13の設置位置は、例えば、図3に示されるように、現像剤の受け渡しが行われる現像剤受け渡し部や、現像剤受け渡し部以外の、現像剤保持体11または12の現像層に接触する位置である。
【0043】
ただし、攪拌部材13の形状、材質、設置位置などは、上記例示されたものに限定されず、別の態様であってもよい。
【0044】
また、攪拌部材13は、駆動される部材であってもよいし、駆動されない部材であってもよい。駆動されない部材である場合、例えば、攪拌部材13は、当該攪拌部材13により現像剤が渦を巻いて攪拌されるように構成される。また例えば、攪拌部材13は、図4に示されるように、現像剤保持体11および12の少なくとも一方の現像剤層に接触するように構成される。当該構成では、現像剤層は、攪拌部材13によって一時的に厚さが圧縮されることにより攪拌される。例えば、現像剤保持体11または12の磁極に対向する位置に攪拌部材13が設置される場合、トナー濃度の低い表面側の現像剤が現像スリーブ側のトナー濃度の高い現像剤の間に押し込まれる際、および、穂立ちの再形成の際に現像剤の入れ替えが行われる。ただし、攪拌部材13は、磁極に対向する位置以外の位置、例えば磁極間に設置されてもよい。
【0045】
また、一つの態様では、攪拌部材13は、導電性の電極部材であり、現像装置10は、現像剤保持体11および12の少なくとも一方と攪拌部材13との間に交番電界を形成する交番電界形成手段を有する。
【0046】
当該態様では、第1の現像領域A1から第2の現像領域A2までの現像剤の搬送経路において、攪拌部材13により機械的に現像剤が攪拌されるとともに、現像剤層に上記交番電界が印加され、現像剤(具体的にはトナー)が振動することにより、現像剤の分布が均一化される。
【0047】
当該態様における一態様では、現像剤に交番電界が印加される時間を増やす観点より、攪拌部材13は、当該攪拌部材13と、現像剤保持体11および12の両方との間に交番電界が形成されるように配置される。例えば、図5に示されるように、攪拌部材13は、現像剤保持体11および12の両方の現像剤層に接触するように配置される。
【0048】
上記交番電界形成手段は、例えばバイアス印加部16により次のように実現される。バイアス印加部16は、図5に示されるように、現像剤保持体11および12に、直流電圧Vdc1に交流電圧Vacが重畳された現像バイアスを印加するとともに、攪拌部材13に直流電圧Vdc2を印加する。これにより、現像剤保持体11,12と攪拌部材13との間には、交番電界(Vdc1+Vac−Vdc2)が形成される。ここで、直流電圧Vdc2は、例えば直流電圧Vdc1と略同じである。ただし、直流電圧Vdc2は、現像剤層の表面側のトナー濃度を高くする観点より、トナーが攪拌部材13に近付く方向の電界が形成されるように設定されてもよいし、攪拌部材13へのトナーの付着を軽減する観点より、トナーが攪拌部材13から離れる方向の電界が形成されるように設定されてもよい。
【0049】
(現像装置を含む画像形成装置の一例)
図6は、第1の実施の形態に係る現像装置10を含む画像形成装置100の構成の一例を示す概略図である。この画像形成装置100は、電子写真方式を利用して紙等の記録媒体に画像を印刷するものであり、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリなどである。以下、図6を参照して、画像形成装置100の構成および作像プロセスについて説明する。なお、電子写真プロセスについては広く知られているので、ここでは簡単に説明することとする。
【0050】
図6において、画像形成装置100は、潜像を保持する像保持体1を備えている。具体的には、像保持体1は、表面に静電潜像が形成される回転可能なドラム状やベルト状の感光体である。また、画像形成装置100は、像保持体1の表面を帯電させる帯電装置2と、帯電された像保持体1表面に画像に応じた光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と、像保持体1上の静電潜像をトナーにより現像する現像装置10と、像保持体1上のトナー像を紙等の記録媒体Pに転写する転写装置5と、転写後の像保持体1表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置6と、記録媒体P上に転写されたトナー像を当該記録媒体Pに定着させる不図示の定着装置とを備えている。
【0051】
画像形成装置100における作像プロセスは次のとおりである。
【0052】
像保持体1は、不図示のモータにより矢印R方向に回転駆動される。帯電位置において、帯電装置2は、像保持体1表面を所定の電位に一様に帯電させる。このように一様に帯電された像保持体1表面は、像保持体1の回転により露光位置に搬送される。
【0053】
露光位置において、露光装置3は、一様に帯電された像保持体1表面に対し、形成されるべき画像パターンに応じた光(例えば画像データに基づくレーザ光線)を照射し、画像パターンに応じて像保持体1表面を除電して静電潜像を形成する。このように形成された静電潜像は、像保持体1の回転により現像位置に搬送される。
【0054】
現像位置において、現像装置10は、像保持体1上の静電潜像をトナーにより現像する。具体的には、静電潜像は、第1の現像領域A1および第2の現像領域A2において2回現像される。像保持体1上に形成されたトナー像は、像保持体1の回転により転写位置に搬送される。
【0055】
転写位置において、転写装置5は、像保持体1上のトナー像を、像保持体1の回転に合わせて転写位置に搬送されてくる記録媒体P上に転写する。転写後の像保持体1表面は、像保持体1の回転によりクリーニング位置に搬送され、像保持体1表面上の残留トナーがクリーニング装置6によって除去される。一方、トナー像が転写された記録媒体Pは不図示の定着装置へ搬送され、定着装置によって記録媒体P上にトナー像が定着させられる。
【0056】
(効果)
以上説明した本実施の形態によれば、下記(1)〜(3)の効果が得られ得る。
【0057】
(1)本実施の形態に係る現像装置は、第1の現像領域から第2の現像領域までの現像剤の搬送経路で現像剤を機械的に攪拌する攪拌部材を有する。このため、本実施の形態によれば、第1の現像領域から第2の現像領域までの現像剤の搬送経路で現像剤の分布を均一化することが可能となり、第1の現像剤保持体での現像による第2の現像剤保持体での現像への影響(例えば現像像の濃度むら)を軽減することが可能となる。
【0058】
(2)攪拌部材が回転可能なロール状の部材である構成によれば、攪拌部材による現像剤へのストレスを小さくすることが可能となる。
【0059】
(3)第1の現像剤保持体および第2の現像剤保持体の少なくとも一方と攪拌部材との間に交番電界を形成する構成によれば、機械的な攪拌に加えて、交番電界により現像剤の分布を均一化することが可能となる。
【0060】
[第2の実施の形態]
図7は、第2の実施の形態に係る現像装置20の構成の一例を示す概略図である。以下、図7を参照して、現像装置20について説明する。なお、本実施の形態に係る現像装置20は、上記第1の実施の形態に係る現像装置10と殆ど同じであるので、以下の説明では、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を用い、説明を省略する。
【0061】
本実施の形態では、第1の現像領域A1での現像による第2の現像領域A2での現像への影響を軽減する観点より、現像装置20は、現像剤保持体11および12に、互いに交流成分の位相が異なる現像バイアスを印加するバイアス印加部21を有する。
【0062】
具体的には、バイアス印加部21は、第1の現像バイアスを現像剤保持体11に印加し、第1の現像バイアスとは交流成分の位相が異なる第2の現像バイアスを現像剤保持体12に印加する。例えば、バイアス印加部21は、直流電圧Vdcに交流電圧Vac1が重畳された第1の現像バイアスを現像剤保持体11に印加し、直流電圧Vdcに交流電圧Vac2が重畳された第2の現像バイアスを現像剤保持体12に印加する。ここで、交流電圧Vac1と交流電圧Vac2とでは、周波数やピーク間電圧などの位相を除くパラメータは略同じであり、互いに位相が異なる。すなわち、交流電圧Vac1およびVac2は、互いに位相が異なる略同一波形の電圧である。
【0063】
当該構成では、上記位相差により現像剤保持体11と現像剤保持体12との間に交番電界が形成され、当該交番電界により現像剤(具体的にはトナー)が振動することにより、現像剤の分布が均一化される。
【0064】
以上説明した本実施の形態によれば、下記(4),(5)の効果が得られ得る。
【0065】
(4)本実施の形態に係る現像装置は、第1の現像剤保持体および第2の現像剤保持体に、互いに交流成分の位相が異なる現像バイアスを印加するバイアス印加部を有する。このため、本実施の形態によれば、2つの現像剤保持体の間に生じる交番電界により現像剤の分布を均一化することが可能となり、第1の現像領域での現像による第2の現像領域での現像への影響(例えば現像像の濃度むら)を軽減することが可能となる。
【0066】
(5)2つの現像剤保持体間の交番電界を位相差により形成するので、現像用の電界への影響を抑えつつ、均一化用の交番電界を形成することが可能となる。例えば、2つの現像剤保持体に互いに略同一波形の現像バイアスを印加しつつ、均一化用の交番電界を形成することが可能となる。すなわち、現像に適した波形の現像バイアスを2つの現像剤保持体に印加しつつ、現像剤の分布の均一化を図ることが可能となる。
【0067】
[第3の実施の形態]
図8は、第3の実施の形態に係る現像装置30の構成の一例を示す概略図である。以下、図8を参照して、現像装置30について説明する。なお、本実施の形態に係る現像装置30は、上記第1の実施の形態に係る現像装置10と殆ど同じであるので、以下の説明では、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を用い、説明を省略する。
【0068】
本実施の形態では、第1の現像領域A1での現像による第2の現像領域A2での現像への影響を軽減する観点より、現像装置30は、導電性の電極部材31と、現像剤保持体11および12の少なくとも一方と電極部材31との間に交番電界を形成する交番電界形成手段とを有する。電極部材31は、第1の現像領域A1から第2の現像領域A2までの現像剤の搬送経路において上記交番電界が形成されるように配置される。
【0069】
当該構成では、第1の現像領域A1から第2の現像領域A2までの現像剤の搬送経路において、上記交番電界により現像剤(具体的にはトナー)が振動することにより、現像剤の分布が均一化される。
【0070】
電極部材31は、現像剤保持体に沿って延びる部材であり、例えば、現像剤の受けるストレスを小さくする観点より、ロール状の部材である。また、よりストレスを小さくする観点より、電極部材31は、回転可能なロール状の部材や、現像剤の搬送方向に対して従動方向に回転駆動されるロール状の部材であってもよい。
【0071】
電極部材31の材質は、例えば、金属(例えば非磁性の金属)である。
【0072】
電極部材31は、例えば、現像剤保持体11および12の少なくとも一方の現像剤層に、近接または接触して配置される。交番電界が印加される時間を増やす観点より、一つの態様では、電極部材31は、現像剤保持体11および12の両方と電極部材31との間に交番電界が形成されるように配置される。例えば、図8に示されるように、電極部材31は、現像剤保持体11および12の両方の現像剤層に近接または接触するように配置される。
【0073】
ただし、電極部材31の形状、材質、設置位置などは、上記例示されたものに限定されず、別の態様であってもよい。
【0074】
上記交番電界形成手段は、例えばバイアス印加部32により次のように実現される。バイアス印加部32は、図8に示されるように、現像剤保持体11および12に、直流電圧Vdc1に交流電圧Vacが重畳された現像バイアスを印加するとともに、電極部材31に直流電圧Vdc2を印加する。これにより、現像剤保持体11,12と電極部材31との間には、交番電界(Vdc1+Vac−Vdc2)が形成される。ここで、直流電圧Vdc2は、例えば直流電圧Vdc1と略同じである。ただし、直流電圧Vdc2は、現像剤層の表面側のトナー濃度を高くする観点より、トナーが電極部材31に近付く方向の電界が形成されるように設定されてもよいし、電極部材31へのトナーの付着を軽減する観点より、トナーが電極部材31から離れる方向の電界が形成されるように設定されてもよい。
【0075】
以上説明した本実施の形態によれば、下記(6)〜(8)の効果が得られ得る。
【0076】
(6)本実施の形態では、現像装置は、導電性の電極部材と、第1の現像剤保持体および第2の現像剤保持体の少なくとも一方と電極部材との間に交番電界を形成する交番電界形成手段とを有し、電極部材は、第1の現像領域から第2の現像領域までの現像剤の搬送経路において上記交番電界が形成されるように配置される。このため、本実施の形態によれば、上記交番電界により現像剤を振動させて、現像剤の分布を均一化することが可能となり、第1の現像領域での現像による第2の現像領域での現像への影響(例えば現像像の濃度むら)を軽減することが可能となる。
【0077】
(7)電極部材と現像剤保持体との間に交番電界を形成するので、2つの現像剤保持体に印加する現像バイアスを異ならせて2つの現像剤保持体間に交番電界を発生させる構成と比較して、交番電界の設定の自由度が広い。
【0078】
(8)単一の電源装置から2つの現像剤保持体に共通の現像バイアスを印加しつつ、均一化用の交番電界を発生させることが可能であるので、コスト的に有利である。さらに、単一の電源装置から2つの現像剤保持体に共通の現像バイアスを印加し、上記電源装置の直流電圧を電極部材に印加して、均一化用の交番電界を発生させることが可能であるので、コスト的に有利である。
【0079】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更することができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明に係る現像装置の実施例を説明する。
【0081】
図7に示される構成を有する現像装置を電子写真プリンタに組み込み、当該電子写真プリンタにより下記印刷条件で、べた黒画像を印刷し、濃度むらに関する測定を行った。
【0082】
(印刷条件)
現像バイアス:交流ピーク間電圧Vpp=1.2kV、周波数f=6kHz、直流電圧Vdc=−500V、位相差=180°(比較例では0°)
現像ロール:直径φ=18mm、対感光体周速比=1.3
プロセススピード=450mm/s
【0083】
図9は、本実施例の測定結果を示すグラフである。
【0084】
図9において、横軸はトナー濃度であり、縦軸は濃度差である。トナー濃度は、二成分現像剤におけるトナーの濃度である。濃度差は、べた黒画像の先端部分の反射濃度と後端部分の反射濃度との差である。黒四角印は位相差180°の測定結果を示し、白ダイヤ印は位相差0°(比較例)を示す。
【0085】
図9に示されるように、現像履歴による濃度差は、位相差のない場合よりも、位相差180°とした場合の方が小さかった。また、現像履歴による濃度差が発生し始めるトナー濃度は、位相差のない場合よりも、位相差180°とした場合の方が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施の形態に係る現像装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】攪拌部材が設けられない構成における、現像剤層が搬送される様子を示す概略図である。
【図3】攪拌部材の一例を示す概略図である。
【図4】攪拌部材の別の一例を示す概略図である。
【図5】攪拌部材の別の一例を示す概略図である。
【図6】第1の実施の形態に係る現像装置を含む画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図7】第2の実施の形態に係る現像装置の構成の一例を示す概略図である。
【図8】第3の実施の形態に係る現像装置の構成の一例を示す概略図である。
【図9】実施例の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0087】
1 像保持体、10,20,30 現像装置、11 第1の現像剤保持体、12 第2の現像剤保持体、13 攪拌部材、14 現像ハウジング、15 層規制部材、16,21,32 バイアス印加部、17,18 攪拌搬送部材、31 電極部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を保持して第1の現像領域に搬送し、像保持体上の潜像を前記第1の現像領域にて前記現像剤により現像する第1の現像剤保持体と、
前記第1の現像領域を通過した現像剤を前記第1の現像剤保持体から受け取って第2の現像領域に搬送し、前記像保持体上の潜像を前記第2の現像領域にて前記現像剤により現像する第2の現像剤保持体と、
前記第1の現像領域から前記第2の現像領域までの前記現像剤の搬送経路で、前記現像剤を機械的に攪拌する攪拌部材と、
を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置であって、
前記攪拌部材は、導電性の電極部材であり、
前記現像装置は、前記第1の現像剤保持体および前記第2の現像剤保持体の少なくとも一方と前記攪拌部材との間に交番電界を形成する交番電界形成手段をさらに有する、
ことを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像装置であって、
前記攪拌部材は、回転可能なロール状の部材である、
ことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
現像剤を保持して第1の現像領域に搬送し、像保持体上の潜像を前記第1の現像領域にて前記現像剤により現像する第1の現像剤保持体と、
前記第1の現像領域を通過した現像剤を前記第1の現像剤保持体から受け取って第2の現像領域に搬送し、前記像保持体上の潜像を前記第2の現像領域にて前記現像剤により現像する第2の現像剤保持体と、
前記第1の現像剤保持体および前記第2の現像剤保持体に、互いに位相が異なる交流成分を含む現像バイアスを印加するバイアス印加手段と、
を有することを特徴とする現像装置。
【請求項5】
現像剤を保持して第1の現像領域に搬送し、像保持体上の潜像を前記第1の現像領域にて前記現像剤により現像する第1の現像剤保持体と、
前記第1の現像領域を通過した現像剤を前記第1の現像剤保持体から受け取って第2の現像領域に搬送し、前記像保持体上の潜像を前記第2の現像領域にて前記現像剤により現像する第2の現像剤保持体と、
導電性の電極部材と、
前記第1の現像剤保持体および前記第2の現像剤保持体の少なくとも一方と前記電極部材との間に交番電界を形成する交番電界形成手段と、
を有し、
前記電極部材は、前記第1の現像領域から前記第2の現像領域までの前記現像剤の搬送経路において前記交番電界が形成されるように配置される、
ことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の現像装置であって、
前記電極部材は、回転可能なロール状の部材である、
ことを特徴とする現像装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−103752(P2009−103752A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272954(P2007−272954)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】