説明

球状半導体素子の製造方法および製造装置

【課題】多数の球状の半導体の表面に均一な拡散層を形成するための装置を提供することを目的とする。
【解決手段】処理ガスを導入する導入口およびガスを排出する排出口を有する筒状の反応容器、及び反応容器をその長手方向の軸心のまわりに回転または動させる駆動手段を具備する球状半導体素子の製造装置。反応容器は、球状の半導体を収容する反応部を備え、その横断面における反応部の内壁面が、少なくとも1つの外側に突出する角部を有するような閉ループを描いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の半導体素子、特に光電変換素子の製造方法および製造装置に関するもので、さらに詳しくは、球状の半導体の表面に拡散層を形成するための拡散方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として光電変換装置が注目されている。代表的な光電変換装置は、結晶シリコン半導体ウエハからなる素子を用いたもの、およびアモルファスシリコンからなる半導体層を用いたものである。前者は、単結晶インゴットの製造および単結晶インゴットから半導体ウエハを製造するまでの工程が繁雑であり、しかも結晶の切削屑などにより高価なシリコン原料の利用率が低いので、コスト高となる。後者は、シリコンの未結合手に水素が結合しているアモルファス構造が、光照射によって水素が放たれて構造変化を起こしやすいため、光電変換効率が光照射により徐々に低下するという問題がある。
【0003】
前記のような特性低下がなく、安価で、高出力が期待できる光電変換装置として、球状のp型半導体の表面にn型半導体層を形成した球状の光電変換素子を用いたものが検討されている。この光電変換装置は、直径1mm前後の小さな球状素子を用いることにより、光電変換部全体の平均厚みを薄くし、原料Siの使用量を軽減するものである。
この種の光電変換装置としては、多数の凹部を有する支持体の各凹部内に、直径1mm前後の球状の光電変換素子を取り付け、凹部内面を反射鏡として働かせるものが知られている(特許文献1および2など)。このような構成によれば、素子の材料、特に高価なシリコンの使用量を低減するとともに、反射鏡の作用により、素子に直接照射される光の4〜6倍の光を素子に照射できるので、光の有効利用ができるなどの利点を有する。
【0004】
上記の光電変換素子は、例えば、次のようにして作製される。
まず、極微量のホウ素を含むp型多結晶Si塊を坩堝内に供給して不活性ガス雰囲気中で溶融させる。その融液を坩堝底部の微小なノズル孔から滴下させ、その液滴を自然落下中に冷却して固化させる。これにより、多結晶または単結晶の球状のp型半導体を作製する。
次に、この球状のp型半導体の表面を研磨し、さらにエッチングなどにより表面層の約50μmを除去した後、例えば、オキシ塩化リンを拡散源として800〜950℃で10〜30分間熱処理する。これにより、p型半導体の表面にリンを拡散させた、厚さ約0.5μm程度のn型半導体層を第2半導体層として形成する。
【0005】
従来、上記のような球状の第1半導体の表面に、リンを拡散させて第2半導体層を形成するには、シリコンなどのウエハに拡散処理または製膜処理をするための処理装置が用いられていた。この種の半導体デバイスの製造に用いられる装置は、処理ガスの供給や温度制御が精度よく行われるように改良がされているが、基本的には、被処理物はボートに静置される(例えば特許文献3)。したがって、ボートを間欠的に動かすようにしても、多数の球状の素子の表面に均一な拡散層を形成するのは困難である。
【特許文献1】特開2002−164554号公報
【特許文献2】特開2004−63564号公報
【特許文献3】特開平6−246261号公報
【0006】
そこで、本発明者らは、以下のような提案をした(特願2005−264341)。その第1は、処理ガスを導入する導入口およびガスを排出する排出口を有する円筒状の反応容器内に、多数の球状の半導体を収容し、反応容器を、その軸心のまわりに回転させたり、その前後を上下方向に揺動させたりすることにより、球状の半導体を反応容器内において流動・回転させる方法である。また、反応容器内の半導体の攪拌をよくするために、反応容器内の半導体を前部から後部へおよび後部から前部へと入れ替える工程を加える方法も提案した。
【0007】
これらの方法によると、球状の半導体は、反応容器の揺動または回転により、流動・回転するから、単に静止状態において反応する場合に比べて、処理ガスとの接触度合いが良好となる。
しかし、円筒状の反応容器内に多数の球状の半導体を収容した場合、層状に堆積された半導体は、上層部と下層部とで十分に入れ替わることができず、多数の半導体に均一に不純物の拡散処理をすることは困難であった。
【0008】
また、半導体の上層部と下層部との入れ替わりを十分に行わせるために、内壁にリブを設けた反応容器をその軸心のまわりに回転させる方法を提案した。この方法は、前記のリブによって半導体を反応容器の回転方向に押し上げ、回転途上でリブから半導体を落下させるのである。これにより、個々の半導体はその落下過程で一時的にも分離されるから、半導体の全表面で満遍なく処理ガスと接触させることができる。
しかしながら、そのように半導体を落下させると、落下した半導体が反応容器に衝突する。その際、半導体は機械的な衝撃を受けて損傷し、特性が損なわれるという不都合が生じることが分かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、球状の半導体を損傷させることなく、反応容器内において流動・回転させながら、その表面に均一な拡散層を形成することができる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の球状半導体素子の製造装置は、処理ガスを導入する導入口およびガスを排出する排出口を有する筒状の反応容器、および前記反応容器をその長手方向の軸心のまわりに回転または揺動させる駆動手段を具備し、前記反応容器が球状の半導体を収容する反応部を備え、その反応部の横断面、すなわち反応部の長手方向に直交する方向に切った断面、における反応部の内壁面が、少なくとも1つの外側に突出する角部を有するような閉ループを描いていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、処理ガスを導入する導入口およびガスを排出する排出口を有する筒状の反応容器内において、球状の半導体の表面に処理ガス中の不純物を拡散させて拡散層を形成する球状半導体素子の製造方法であって、前記反応容器はその横断面における内壁面が少なくとも1つの外側に突出する角部を有する閉ループを描いている反応部を備えており、前記反応容器を回転させることにより、前記反応部に収容した半導体を回転時下側に位置する内壁面上に複数層に堆積した状態で流動・回転させるとともに、前記角部において前記堆積状態の半導体を攪拌させる工程を有することを特徴とする球状半導体素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、球状の半導体は、反応容器の回転または揺動により、反応部において流動・回転する。したがって、球状半導体が複数層に堆積した状態で反応部に収容されていても、反応部の角部において上層部の半導体と下層部の半導体とが相互に混合されるように攪拌されるので、各半導体は処理ガスとの接触状態はほぼ均等となる。このため、多量の半導体にほぼ均一な拡散層を形成することができる。また、半導体は、反応容器の回転時に下側に位置する反応部の内壁面上において流動・回転させるので、上方へ押し上げてから落下させる場合のような衝撃を受けることがない。したがって、損傷による特性の劣化はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、球状の第1半導体の表面に不純物を拡散して第2半導体層を形成するために、第1半導体が球形であることを利用して、絶えず流動状態において反応させることにより、高品質の半導体素子を得るものである。本発明は、反応容器を回転または揺動させることにより、反応容器の反応部内に収容した多数の球状の半導体を流動・回転させて、処理ガスとの接触度合いを良好にしてほぼ均一な拡散層を形成しようとするものである。
【0014】
本発明の特徴は、反応容器の反応部の内壁面にある。反応部の横断面、すなわち反応部の長手方向に直交する方向に切った断面、における反応部の内壁面が、少なくとも1つの外側に突出する角部を有するような閉ループを描いている。この角部において、反応部の内壁面上で複数層に堆積されて流動している球状半導体は、堆積状態が崩される。これによって、複数層に堆積している球状半導体は、上層部と下層部とで相互に攪拌される。こうして、各半導体は、反応部に供給されるガスとほぼ均等に接触することとなる。
【0015】
球状半導体が、反応部の内壁面に、一層に拡がった状態に配列されて、反応部の回転に伴って流動しているなら、各半導体はガスと均等に接触する。しかし、そのような方法であると、反応部に収容できる半導体の数は限りがある。そこで、反応容器内に半導体を複数層に堆積すると、反応容器が単なる円筒体である場合は、反応容器を回転させても、上層部の半導体と下層部の半導体とが、相互に十分に攪拌されることは期待できない。
【0016】
本発明は、反応部の内壁面に角部を設けることにより、反応容器の回転途上で、複数層の半導体がこの角部に来ると、その堆積状態が乱され、これにより上層部と下層部とで相互に混じり合うようにする。しかも、反応容器の回転速度、および角部の構造を適宜調整することにより、半導体に損傷を与えるような衝撃を加えることもない。
本発明によれば、反応容器内に球状半導体を複数層にして収容し、各半導体の処理ガスとの接触度合いをほぼ均等にできるから、品質の一定した半導体素子の大量生産に適している。
【0017】
本発明の反応容器における、球状半導体を収容する反応部は、その横断面における内壁面が、少なくとも1つの直線部とその両端に連なる曲線部とを含む閉ループを描いており、直線部と曲面部との交わるところが角部となっていることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明は、ガスの導入口および排出口を有する筒状の反応容器であって、横断面における内壁面が少なくとも1つの外側に突出する角部を有する反応部を有する反応容器、基台上に軸支された支持板、前記支持板の前部または後部に連結されて前記支持板の基台に対する傾斜角度を調整する手段、前記支持板に固定され内部に加熱手段を備える加熱ブロック、前記反応容器をその反応部を前記加熱ブロック内に位置させて回転自在に支持する支持部、前記反応容器をその軸心のまわりに回転させる回転駆動部、前記反応容器へ処理ガスを供給する処理ガスの供給装置、および前記反応容器からガスを排出するガスの排出装置を具備することを特徴とする球状半導体素子の製造装置を提供する。
【0019】
前記処理ガスの供給装置は、前記反応容器内に導入されたシャワー管を備え、前記シャワー管が処理ガスを噴射する少なくとも1つのノズル孔を有することが好ましい。特に、シャワー管が反応部内に位置するように反応容器とは無関係に固定され、前記ノズル孔がシャワー管の下側に、すなわちシャワー管に下向きに、設けられていることが好ましい。これによりノズル孔から噴射される処理ガスは反応部内において重力により下側に位置する球状半導体上に供給される。したがって、フレッシュな処理ガスを優先的に半導体と接触させることにより、均一かつ良質な拡散層を形成できる。また、処理ガスの利用率が向上する。
【0020】
以下、本発明による、光電変換素子に適用できる半導体素子の製造装置を図面を参照して説明する。
【0021】
実施の形態1
図1は本発明の一実施の形態における半導体素子の製造装置の一部を切り欠いた側面図、図2は炉心管(反応容器)の縦断面図、図3は図2のIII−III線断面図である。図4は処理ガスの流れの系統を示す略図である。
基台10は、内部に棚を有する筐体で構成され、その上部に枠体11を固定している。この枠体11は両端に一対の軸受け12を設けている。
【0022】
後述する加熱ブロックなどを支持する支持板15は、その下部中央に軸取付部材16により軸17を取り付け、この軸17は軸受け12に軸支されている。基台10の端部に設けられた軸受け部13には、支持板15の端部に取り付けた部片18を螺合した操作棒14の下端部を螺合している。操作棒14をその上端のハンドルを操作することにより、支持板15は、基台10上において、部片18側が上下し、支持板の基台10に対する傾斜角度を調節することができる。
【0023】
支持板15の上には、中央に加熱ブロック20が固定されている。加熱ブロック20は、上下に分割できるようになっており、内部には、石英製の炉心管40を収容する空間部21、および炉心管を加熱する加熱手段としてのヒータ22を有する。
【0024】
炉心管40は、図2に示すように、ガスの入口側となる細径部41、球状の半導体を収容してガスと反応させる反応部42、およびガスの出口側であり、半導体の出し入れをする開口端部43を有する。炉心管40の開口端部43には、石英製の蓋44が嵌合される。蓋44の外周には、軸方向に伸びた凹部45が複数設けられている。この凹部45により、炉心管が蓋44で閉塞された状態において、炉心管40内部のガスは外部へ放出される。炉心管40は、加熱ブロック20を上下に分割した状態でその内部にセットされる。炉心管40の細径部41および開口端部43は、加熱ブロック20の前後に設けられた開口部23および24から加熱ブロックの外部に伸びている。
【0025】
炉心管40の細径部41の開口部は、バイトンの名で販売されている耐熱性の樹脂からなる栓47で封じられている。この栓47には、ステンレス鋼製のパイプ48が取り付けられている。パイプ48の内部に挿入されたシャワー管46は、反応部42内へ伸びており、管46の下側に多数設けられた開口(ノズル孔)49からガスが噴出される。
【0026】
支持板15上には、モータ30、並びに支持部材35および36に支持されたシャフト32が設けられ、シャフト32は、ギアーやチェーンなどの動力伝達機構31によりモータ30の回転軸に連結されて回転する。
支持部材35の頂部には、ロータリジョイント37が固定されている。このロータリジョイント37には、シャワー管46の端部が固定されている。炉心管40の栓47に取り付けられたパイプ48は、シャワー管46に対して回転できるように支持されており、パイプ48の駆動部はベルト33によりシャフト32に連結されている。また、支持部材36に設けられて、炉心管の細径部41を下方から支えている一対のローラ34は、シャフト32により駆動され、炉心管の細径部41に回転力を与える。
【0027】
一方、炉心管40の開口端部43側は、支持部材38に回転自在に軸支された一対のローラ39に支持されている。炉心管40の開口端は、排気用キャップ25で覆われている。排気用キャップ25は、炉心管40から蓋44の凹部45をとおして放出されるガスを、排出パイプ27へ導くように構成されている。排気用キャップ25と炉心管の開口端部との間には隙間があるが、後述のように、パイプ27には吸引力が働くので、この隙間からガスが外部へ漏れることはない。パイプ27は、パイプ62との連結部に長さ方向に伸縮する部分を有し、これによって、支持板15の傾斜角度の変更に対応できるようになっている。
【0028】
以上の構成により、炉心管40は、開口端部43側がローラ39に回転自在に支持され、細径部41を支えるローラ34およびパイプ48に架けられたベルト33により回転される。こうして、炉心管40は、モータ30により、加熱ブロック20内で炉心管40の軸心のまわりに回転することができる。
【0029】
次に、炉心管40の反応部42について説明する。
図3に示すように、炉心管40の細径部41、および2段になった開口端部43は、炉心管の長手方向に直交する方向に切った断面が円形の管で構成されている。しかし、反応部42は、その長手方向に直交する方向に切った断面が、相対向する2つの直線部sと、2つの曲線部rからなる管で構成されている。これによって、反応部42の内壁面は、前記の断面において、外側に突出する4個の角部cを有するような閉ループを構成している。
【0030】
上記のような反応部42に球状半導体1を複数層に堆積するように収容する。図5(1)は、反応部の1つの直線部sが下方に位置している状態を示す。ここでは、例えば、半導体はほぼ5層に堆積している。反応容器を回転させて反応部の曲線部rが下方に位置している状態では、図5(2)のように、半導体はほぼ3層に堆積している。したがって、反応容器を回転させると、半導体は重力により反応部の下側に位置する部分に整列しようとするから、反応部の下側に位置する部分が直線部sから曲線部rに変わると、角部cにおいて、半導体の堆積状態は変動し、ここにおいて半導体は上層と下層とが相互に混じり合うように攪拌される。図5は、わかりやすく説明するために、球状半導体を反応容器に比べて相対的に大きく描かれており、また、半導体の配列状態も1つのモデルで表されている。
【0031】
本発明は、上記の原理を利用し、横断面における反応部の内壁面が、少なくとも1つの外側に突出する角部を有するような閉ループを描いている構成の反応容器を回転させることにより、複数層に堆積している半導体を攪拌しながら処理ガスと接触させるのである。
【0032】
本実施の形態においては、反応部42の内壁面は、2つの直線部sと2つの曲線部rとを組み合わせた閉ループを描く横断面を有している。直線部sと曲線部rとの交点が角部cである。この角部において、曲線部の角部に最も近い部分の接線Lと直線部sとのなす角度θは、90〜150°の範囲が好ましい。θが90°より小さいと、反応部の内壁面に近い側の半導体が、回転時に角部に入り込んだまま固定され易いので、攪拌され難くなる。また、反応容器の回転速度にもよるが、回転時に半導体が角部を越えるとき内壁面に強く突き当たり、損傷を受けることがある。一方、θが150°より大きいと、堆積状態の半導体を十分に攪拌する効果が得られない。また、反応容器の回転速度は、0.2〜2rpmの範囲が好ましい。あまり回転速度を速くすると、半導体が角部を越えるとき壁面に強く当たり、損傷を受けることがある。
【0033】
本実施の形態の構成によると、反応部をほぼ円筒に近い形状とすることができるので、内容積を大きくとることができる。また、反応部自体の回転中心と重心とを一致させることができるので、反応容器を駆動する駆動部も簡素にできる。
反応容器は、図1に示すように、水平方向に対して傾斜しており、反応部に収容される半導体は、図右側では多層に堆積し、左側では1〜2層に堆積する。
【0034】
次に、図4により、炉心管40に処理ガスを供給し、排出するガスの供給・排出系統について説明する。
窒素ガスボンベ51に連なる窒素ガスの供給路は51Aと51Bに分岐し、酸素ガスボンベ50に連なる酸素ガスの供給路は、窒素ガスの供給路51Aと合流して、炉心管40のシャワー管46と接続されるロータリジョイント37に連なる接続部56につながっている。酸素ガスおよび窒素ガスの各々の供給路の途中には、流量調整機能を有するバルブを備えた流量計F1、F2およびF3が設けられている。
【0035】
窒素ガスの供給路51Bは、容器52内の53で表すPOCl3中に漬かっている。容器52を通過してPOCl3を含んだ窒素ガスの供給路は、53Aと53Bに分岐し、53Aは接続部56につながっている。53Bは別途設けられた捕集装置につながるパージ路57となっている。V1〜V4は、開閉バルブを表している。
【0036】
接続部56に供給されたガスは、ロータリジョイント37においてシャワー管46に導入され、そのシャワー管の下側に設けられている開口(ノズル孔)49から炉心管40の反応部42内へ供給される。図3では、開口49はシャワー管の下側に長手方向に複数個が一列に配列されているが、反応部の内壁面の底部に向けて複数列に複数個の開口が配列されていてもよい。シャワー管46を挿入させているパイプ48の端部には、シャワー管との間にOリングを填めてある。したがって、回転している炉心管40には、ロータリジョイント37からシャワー管46を経由して、処理ガスを供給することができるとともに、ガスを外部へ漏洩することはない。一方、炉心管の開口端部43側では、ガスは、排気用キャップ25から排出パイプ27を経由してパイプ62に移動する。パイプ62にはパイプ64が連結され、このパイプ64は、捕集容器60に収容された水61に漬かっている。捕集容器60の気相部は、パイプ65によりブロア66に連らなっている。
【0037】
次に、この装置の動作を説明する。
炉心管40に、多数の球状のp型半導体を入れ、加熱ブロック20内にセットする。装置の制御部がリセットの状態において、バルブV1は開、V2、V3およびV4は閉じられている。まず、流量計F3の制御により、ボンベ51から窒素ガスを供給路51Aを経て炉心管40へ2L/分の流量で供給する。このとき、炉心管は800℃に加熱されている。第1ステップにおいては、バルブV1は開いたまま、ヒータを制御して炉心管を例えば、5℃/分の昇温速度で温度を上昇させる。炉心管が900℃に達してから、酸素ガス供給路の流量計F1を制御してボンベ50から酸素ガスを0.4L/分の流量で供給する。
【0038】
炉心管の温度が900℃に保持されるようヒータを制御し、第2ステップにおいて、バルブV2およびV3を開き、流量計F2を制御して、1L当たり120mgのオキシ塩化リン(POCl3)を含む窒素ガスを0.77L/分の流量で炉心管に供給する。こうして炉心管内でPOCl3と酸素ガスとの反応でリンガラスが生成し、さらにこのリンガラスとSiとの反応で生成したリンが球状の半導体の表面層に拡散する。この拡散工程を30分間継続した直後、第3ステップにおいて、酸素ボンベに連なる流量計F1を手動で操作して酸素ガスの供給を遮断し、さらに、バルブV2およびV3を閉じる。これにより供給路51Aを通じて窒素ガスのみを炉心管に供給する。
【0039】
この窒素ガスの供給を続けながら炉心管の温度を2℃/分の降温速度で下げる。炉心管の温度が800℃に達したなら、第4ステップにおいて、同温度を60分間維持して半導体素子のアニール処理を行う。その後、300℃まで放冷して処理済みの半導体素子を回収する。窒素ガスは、300℃まで放冷した時点で止める。
【0040】
炉心管40から排出されるガスは、ブロア66の吸引力により、パイプ27からパイプ62、およびパイプ64を経由し、捕集容器60内の水をとおしてブロア66から、図示しない固体吸着剤を経由して外部へ排出される。排ガス中のPOCl3およびその分解生成物は、大半が捕集容器60内の水に捕集され、残余は、固体吸着剤で除去される。
【0041】
以上に説明した処理ガスの供給部分は、基台10内に納められている。そして、炉心管40へのガス供給口となる接続部56と連なるパイプの部分は可撓性を有し、接続部56が揺動板15とともに揺動できるようになっている。
炉心管40は、例えば全長約1370mm、反応部の長さ約600mmであり、反応部の断面における直線部sの長さ70mm、2つの直線部の間隔120mm、曲線部rの曲率半径約100mmである。この炉心管40を図1のように、水平方向に対して約5°傾斜させた状態において、反応部内に、約1.0mmの球状の第1半導体を約100万個収容して、拡散層(第2半導体層)を形成することができる。
【0042】
上記のように、炉心管40の温度および炉心管への供給ガスの制御とともに、炉心管の回転を制御する。すなわち、モータ30を駆動して炉心管40を約60秒に1回転させる。こうして炉心管内に収容された球状の第1半導体は、炉心管の径方向に流動・回転するとともに、角部において下層の半導体と上層の半導体とが入れ替わるように攪拌される。これにより、球状の各第1半導体は均等に処理ガスと接触し、均一な第2半導体層を形成することができる。
【0043】
本実施の形態においては、炉心管は、モータ30により一方向に回転させるようにした。この方式によると、駆動機構も複雑とならず、かつ効率的に拡散層を形成することができる。しかし、間欠的に回転方向を変えたり、交互に半回転させるようにすることもできる。
【0044】
実施の形態2〜7
図6は本発明の好ましい実施の形態における反応部の横断面の形状を内壁面の描く閉ループで表している。図6(a)は、2つの曲線部と2つの直線部を組み合わせたものである。図6(b)は、1つの直線部とその両端に連なる1つの胸腺部とからなる。図6(c)は、3つの直線部と3つの曲線部とからなる。図6は、いずれも曲線部は、反応部の回転中心を中心とする円の一部であるが、これに限定されるわけではない。曲線部は、楕円の一部でもよく、実施の形態1のように、反応部の回転中心を中心とする円より曲率半径の大きいものでもよい。
【0045】
図7は他の実施の形態における反応部の横断面の形状を内壁面の描く閉ループで表している。図7(a)は、1つの曲線部の両端を4つの直線部でつないだ例である。図7(b)は、2つの曲線部の両端をそれぞれ2つの直線部でつないだ例である。図7(c)は、直線部のみからなる多角形の例として正6角形を示す。
【0046】
図6および図7に示すように、反応部の内壁面が描く閉ループは、少なくとも1つの外側に突出する角部を有していることにより、複数層に堆積されている球状半導体は、反応容器の回転に伴いその角部において攪拌される。この角部は、直線部と曲線部との交わり部で形成されるものが好ましい。そのような角部においては、球状半導体の上下層の攪拌がなめらかに行われる。直線部同士の交わり部で角部が形成されていると、下層の半導体が角部に残り、攪拌が十分に行われないおそれがある。したがって、図7の例より図6の例の方が好ましい。また、曲線部は、外側に膨れるようなものが好ましい。内側に膨れるような曲線部であると、反応部の内容積が小さくなり、効率が悪くなる。
【0047】
上記の実施の形態においては、反応容器をその軸心のまわりに一方向に回転させる例を示したが、反応容器を例えば半回転または1/3回転毎に回転方向を変えるように揺動させる方法をとることもできる。
また、反応容器の反応部から球状半導体がこぼれでないように反応部の径を大きく変えることにより、反応容器をその前後が上下動するように揺動させる工程を、反応容器の回転中または回転を停止した状態で実施することもできる。そのような揺動を実施するには、例えば、図1における操作棒14の代わりに、部片18を上下させる駆動装置を設ければよい。
【0048】
上記の実施の形態においては、シャワー管は反応容器とは無関係に固定されており、その下側に向けて開口されたノズル孔から処理ガスを、反応部内の下側に位置する部分で流動している球状半導体に向けて供給される。反応部内の球状半導体は、図5(1)または(2)のように、底部に拡がっているから、ノズル孔はシャワー管の真下のみでなく、図5(1)または(2)で示される球状半導体の両端部分に向けて処理ガスを供給するように、例えば図3の開口(ノズル孔)49の左右にもノズル孔を配列することもできる。また、シャワー管を例えばその軸心のまわりに1/4回転毎に回転方向を変えるように揺動させる方法をとれば、シャワー管には図3のような一列のみのノズル孔を設けるのみで、前記と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、品質の一定した球状の半導体素子を製造することができる。本発明による半導体素子のなかで、光電変換素子は、特に、太陽電池装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態における装置の要部を切り欠いた側面図である。
【図2】同装置の炉心管の縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】炉心管への処理ガスの供給・排出系統を示す図である。
【図5】本発明の実施例における光電変換素子の製造過程を示す断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施の形態における反応部の横断面の形状を内壁面の描く閉ループで表している。
【図7】本発明の他の実施の形態における反応部の横断面の形状を内壁面の描く閉ループで表している。
【符号の説明】
【0051】
1 球状半導体
10 基台
15 支持板
20 加熱ブロック
22 ヒータ
40 炉心管(反応容器)
41 細径部
42 反応部
46 シャワー管
49 開口(ノズル孔)
50 酸素ガスボンベ
51 窒素ガスボンベ
53 オキシ塩化リン
56 管継ぎ手を有する接続部
61 水
66 ブロア
c 角部
r 曲線部
s 直線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスを導入する導入口およびガスを排出する排出口を有する筒状の反応容器、および前記反応容器をその長手方向の軸心のまわりに回転または揺動させる駆動手段を具備し、前記反応容器が球状の半導体を収容する反応部を備え、その反応部の横断面における反応部の内壁面が、少なくとも1つの外側に突出する角部を有するような閉ループを描いていることを特徴とする球状半導体素子の製造装置。
【請求項2】
前記反応容器は、その横断面における内壁面が、少なくとも1つの直線部とその両端に連なる曲線部とを含む閉ループを描いている請求項1記載の球状半導体素子の製造装置。
【請求項3】
ガスの導入口および排出口を有する筒状の反応容器であって、横断面における内壁面が少なくとも1つの外側に突出する角部を有する反応部を有する反応容器、基台上に軸支された支持板、前記支持板の前部または後部に連結されて前記支持板の基台に対する傾斜角度を調整する手段、前記支持板に固定され内部に加熱手段を備える加熱ブロック、前記反応容器をその反応部を前記加熱ブロック内に位置させて回転自在に支持する支持部、前記反応容器をその軸心のまわりに回転させる回転駆動部、前記反応容器へ処理ガスを供給する処理ガスの供給装置、および前記反応容器からガスを排出するガスの排出装置を具備することを特徴とする球状半導体素子の製造装置。
【請求項4】
前記処理ガスの供給装置が、前記反応容器内に導入されたシャワー管を備え、前記シャワー管が処理ガスを噴射する少なくとも1つのノズル孔を有する請求項3記載の球状半導体素子の製造装置。
【請求項5】
前記シャワー管が反応容器とは無関係に固定され、前記ノズル孔がシャワー管の下側に設けられている請求項4記載の球状半導体素子の製造装置。
【請求項6】
処理ガスを導入する導入口およびガスを排出する排出口を有する筒状の反応容器内において、球状の半導体の表面に処理ガス中の不純物を拡散させて拡散層を形成する球状半導体素子の製造方法であって、前記反応容器はその横断面における内壁面が少なくとも1つの外側に突出する角部を有する閉ループを描いている反応部を備えており、前記反応容器を回転させることにより、前記反応部に収容した半導体を、回転時に下側に位置する内壁面上に複数層に堆積した状態で、流動・回転させるとともに、前記角部において前記堆積状態の半導体を攪拌させる工程を有することを特徴とする球状半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−205069(P2008−205069A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37525(P2007−37525)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(502139910)株式会社クリーンベンチャー二十一 (33)
【Fターム(参考)】