説明

理化学機器における攪拌,スピンダウン装置

【課題】本発明は小型軽量で故障の生ずるおそれのない理化学試験用の攪拌,スピンダウン装置を新規に提供するものである。
【解決手段】 本発明は可動シャフトの下面に偏心カムを設け、該可動シャフトと上部に載嵌する回転子ステージとの間に回転,非回転を制御する内外2つのワンウェイクラッチを設けて、動力シャフトの正回転に伴う偏心カムの巻き込みにより偏心量を0にしてシャフト合わせすることと、該ワンウェイクラッチの回転制御にて回転子ステージ上のヘッドゴム回転させ、該動力シャフトの逆回転に伴う偏心カムの元位置復帰によりシャフト合わせを解き、該ワンウェイクラッチの非回転制御にてヘッドゴムを振動に切替えるようにして、ヘッドゴム上の試験管内の液体を振動攪拌し、次いでヘッドゴムを回転に切替えることで試験管の内面に付着した攪拌液をスピンダウンするようにしたことを特徴とする理化学機器における攪拌,スピンダウン装置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学機器における攪拌,スピンダウン装置、詳しくは試験管内の液体を攪拌する作業と、該攪拌に伴って試験管の蓋の内面などに付着した液体を試験管内の底部に落とし集めるスピンダウン作業とを1台にて遂行することのできる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置としては、実用新案登録第3092747号公報がある。該公報は上下2段の本体と下の本体に攪拌用のモータを据付け、上の本体にスピンダウン用のモータを据付けて、上と下の2つのモータを使用して試験管内の液体を攪拌し、スピンダウンする装置を記載している。
【特許文献1】実用新案登録第3092747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って該公報の装置は縦長にして重量が嵩み、攪拌のときはスピンダウン用のモータも振動させるためにモータの負担が大きく、スピンダウン用のモータは振動によって故障するという課題がある。またスピンダウン用のモータは振動台の上にあるために振れてスピンダウンの能率が劣るという課題がある、さらに2つのモータの使用によって高価になるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、可動シャフトの下面に偏心カムを設け、該可動シャフトと上部に載嵌する回転子ステージとの間に回転,非回転を制御する内外2つのワンウェイクラッチを設けて、動力シャフトの正回転に伴う偏心カムの巻き込みにより偏心量を0にしてシャフト合わせすることと、該ワンウェイクラッチの回転制御にて回転子ステージ上のヘッドゴムを回転させ、該動力シャフトの逆回転に伴う偏心カムの元位置復帰によりシャフト合わせを解き、該ワンウェイクラッチの非回転制御にてヘッドゴムを振動に切替えるようにして、ヘッドゴム上の試験管内の液体を振動攪拌し、次いでヘッドゴムを回転に切替えることで試験管の蓋の内面などに付着した攪拌液をスピンダウンするようにして、かかる課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の装置は、1つのモータを逆回転と正回転に切替えることで、攪拌とスピンダウンの作業ができ、しかも互いに干渉が生じないので、両作業を能率よく進めることができるという効果を生ずる。さらに1つのモータによって装置を小型軽量化することができるとともに、故障の生ずるおそれをなくし、安価にて提供することができるという効果を生ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、可動シャフトの下面に偏心カムを設け、該可動シャフトと上部に載嵌する回転子ステージとの間に回転,非回転を制御する内外2つのワンウェイクラッチを設けて、動力シャフトの正回転に伴う偏心カムの巻き込みにより偏心量が0になることでシャフト合わせすることとなり、該ワンウェイクラッチの回転制御によって回転子ステージ上のヘッドゴムを回転させ、また該動力シャフトを逆回転に切替えると、偏心カムが元位置に復帰してシャフト合わせを解くことと、ワンウェイクラッチの非回転制御によってヘッドゴムは振動に切替わることになる。従って動力シャフトの逆回転にてヘッドゴムを振動させて該ヘッドゴム上の試験管内の液体を攪拌し、攪拌を終えたあとに動力シャフトを正回転に切替えて試験管の蓋の内面などに付着した攪拌液をスピンダウンするようにしたのである。このようにして1台の装置のモータを正逆に回転切替えするという単純な操作のみにて攪拌とスピンダウンを連続して能率的に行えるようにして理化学機器における攪拌,スピンダウン装置を提供しようとするものである。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明装置の実施例を示す縦断面図であって、器体ベース1上に取付枠2にてモータ3を上向きに据付け、モータ3の回転軸3aに太径の動力シャフト4を取付け、動力シャフト4上面の円形段落溝4a内に可動シャフト5の下面に設けた偏心カム5aを嵌め載せて、偏心軸6にて動力シャフト4と可動シャフト5間をシャフト合わせ位置と偏心位置とに切替わるように回動自在において連結する。可動シャフト5の上部シャフト軸5dに円筒状の内側ワンウェイクラッチ7を挟んで回転子ステージ8を被せ載せ、回転子ステージ8の外周に前記内側ワンウェイクラッチ7と逆方向に回転を制御する外側ワンウェイクラッチ9を挟んで回転子ハウジング10を嵌合する。回転子ハウジング10は取付枠2上のスプリングハウジング11間に外嵌め取付けした廻り止め用のスプリング12にて支持するのである。13は動力シャフト4と可動シャフト5間に外嵌め取付けした偏心補助スプリング、14は回転子ステージ8上に交換自在にセットする蓋付試験管15支持用のヘッドゴムである。
【0008】
偏心カム5aは図2(A)(a)に示すように、、モータ3の正回転時の遠心力による偏心軸6をもとにした巻き込みにて一側5bが円形段落溝4aの内壁4bに当接すると、動力シャフト4と可動シャフト5の中心が一致して偏心量0のシャフト合わせ状態となり、図2(B)(b)に示すようにモータ3の逆回転時の遠心力にて他側5cが内壁4bに当接するとシャフト合わせの解かれた偏心位置に規制されるようになっている。
【0009】
内外のワンウェイクラッチ7,9は図3(a)に示すように、それぞれ矢印方向への回転を許容し逆方向へは非回転とするものであって、正回転時は図3(b)に示すように可動シャフト5と回転子ステージ8は一体となって回転し、逆回転時は図3(c)に示すように可動シャフト5が回転しても回転子ステージ8は非回転となり、偏心旋回による振動だけが伝導されることとなる。
【0010】
以上により、蓋付試験管15に試料の液体を入れてヘッドゴム14に挟み取付け、スイッチ(図示してない)をONしてモータ3を逆回転始動するのである。逆回転時の遠心力によりカム5aは図2(B)(b)に示すように巻き込まれ移動して、可動シャフト5は動力シャフト4とのシャフト合わせの解かれた偏心位置となって偏心回転することとなるが、図3(c)に示すように内外のワンウェイクラッチ7,9のそれぞれの働きにより可動シャフト5の回転は回転子ステージ8に伝動しないで偏心回転による振動のみが作用し、以ってヘッドゴム14を振動させて蓋付試験管15内の試料液を攪拌振とうすることとなる。
【0011】
所定の攪拌を完了した後、スイッチの切替にてモータ3を正回転すると、図2(A)(a)に示すようにカム5aが遠心力により巻き込まれて動力シャフト4と可動シャフト5が偏心量0のシャフト合わせの位置に規制されるとともに、図3(b)に示すように内外のワンウェイクラッチ7,9の逆回転時と反対の回転/非回転制御にて可動シャフト5と回転子ステージ8とが一体となって回転するので、攪拌時の振動に伴って蓋付試験管15の蓋などの内壁に付着した攪拌試料液をゴムヘッド14を回転させる遠心力にてスピンダウンして蓋付試験管15内の底部にすべて落とし集めるのである。
【0012】
以上のようにして本発明の装置によれば、蓋付試験管15内に入れた試料液の攪拌と攪拌後のスピンダウンをモータ3の正逆回転の切替という単純な操作のみにて迅速に行うことができることとなる。
【0013】
なお回転子ハウジング10は廻り止めスプリング12にて支持することにより、攪拌時の揺動は許容するも回転することは確実に防止される。スプリングの巻き方向を回転方向に合わせることで緊締力を増して回転抑止力を強化することができる。廻り止めスプリングは1乃至数本の張りバネ(図示してない)にかえることもある。
またスイッチ機構にタイマー・回転数のボリューム調節機能などを付加して、攪拌/スピンダウンの作業を自動切替にすることもできる。
ヘッドゴム14は大小の試験管用のほか、4本用,6本用,8本用などの数種を揃えておいて、試験する試料液の量・数に合わせて交換することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は攪拌を要する試料液の攪拌およびスピンダウン装置として、理化学試験の分野において広く利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明装置の1実施例の構造を示す縦断面図
【図2】同、可動シャフト下面に設けたカムの偏心作用を示す説明図で、(A)正回転時の平面図、(b)はそのa−a線視部分断面図、(B)は逆回転時の平面図、(b)はそのb−b線視部分断面図
【図3】(a)は内外のワンウェイクラッチの各許容回転方向を示す説明図、(b)は正回転時の作用例図、(c)は逆回転時の作用例図
【符号の説明】
【0016】
1は器体ベース
2は取付枠
3はモータ
4は動力シャフト
4aは円形段落溝
4bは内壁
5は可動シャフト
5aは偏心カム
5bは一側
5cは他側
5dは上部シャフト軸
6は偏心軸
7は内側ワンウェイクラッチ
8は回転子ステージ
9は外側ワンウェイクラッチ
10は回転子ハウジング
11はスプリングハウジング
12は廻り止め用のスプリング
13は偏心補助スプリング
14はヘッドゴム
15は蓋付試験管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動シャフトの下面に偏心カムを設け、該可動シャフトと上部に載嵌する回転子ステージとの間に回転,非回転を制御する内外2つのワンウェイクラッチを設けて、動力シャフトの正回転に伴う偏心カムの巻き込みにより偏心量を0にしてシャフト合わせすることと、該ワンウェイクラッチの回転制御にて回転子ステージ上のヘッドゴムを回転させ、該動力シャフトの逆回転に伴う偏心カムの元位置復帰によりシャフト合わせを解き、該ワンウェイクラッチの非回転制御にてヘッドゴムを振動に切替えるようにして、ヘッドゴム上の試験管内の液体を振動攪拌し、次いでヘッドゴムを回転に切替えることで試験管の蓋の内面などに付着した攪拌液をスピンダウンするようにしたことを特徴とする理化学機器における攪拌,スピンダウン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−237036(P2007−237036A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60781(P2006−60781)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000208053)タイテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】