説明

環境分解性ポリマーブレンド及び環境分解性ポリマーブレンドを得る方法

本発明は、ポリヒドロキシブチラート(PHB)又はそのコポリマーによって規定される生分解性ポリマーと、ポリカプロラクトン(PCL)と、必要に応じて、充填剤、核形成剤、熱安定剤、加工助剤によって規定される少なくとも1種類の添加剤とを含む、環境分解性ポリマーブレンドに関し、環境分解性ポリマーブレンドの調製を目的にする。本明細書に記載の製造方法によれば、生分解性ポリマーPHB及びPCLと少なくとも1種類の添加剤との混合物から得られたブレンドを、射出食品包装材、化粧品用射出包装材、管、技術的部品及び幾つかの射出成形物の製造に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシブチラート(PHB)又はそのコポリマーによって規定される生分解性ポリマーと、ポリカプロラクトン(PCL)と、必要に応じて、充填剤、核形成剤、熱安定剤、加工助剤などの少なくとも1種類の添加剤とに基づくポリマーブレンドに関し、環境分解性ポリマーブレンドの調製を目的にする。
【0002】
本明細書に記載の方法によれば、生分解性ポリマーPHB及びPCLと少なくとも1種類の添加剤との混合物から得られたブレンドを、射出食品包装材、化粧品用射出包装材、管、技術的部品及び幾つかの射出成形物の製造に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
従来技術から、分解性合成ポリマーと、その入手及び/又は諸性質を改善し、広範な用途を確保するために使用される添加剤との組合せを含む、ごみ袋及び/又は包装材の製造に使用される種々の生分解性ポリマー材料が知られている。
【0004】
ポリマーブレンドは、ポリマーについての技術文献において、2種類以上のポリマーの物理的又は機械的混合物を表すのに用いられる用語である。したがって、異なるポリマーの分子鎖間には、二次的な分子間相互作用しか存在せず、高度の化学反応が存在しない。多数のポリマーブレンドがエンジニアリングプラスチックとして使用され、自動車利用者(automobilistic)産業、電気機械産業及び無数の他の産業分野に主に応用されている。これらのポリマーブレンドを形成するポリマーの中では、従来ポリマーの使用が圧倒的である。
【0005】
最近、生分解性ポリマー、すなわち環境的に適切であるポリマーの使用に対する関心が高まりつつあることが注目されている。しかし、生分解性ポリマーに関する大部分の特許は、ポリマーの製造に関し、これらの新しいポリマー材料のポリマーブレンド及び生分解性におけるその適用に関するものは少数にすぎない。
【0006】
加工性及び/又は機械的性質の諸特性を変えようとして、添加(additivation)の他の可能性に関連した又は関連しない、他の生分解性ポリマーとのポリマーブレンドの形成など、ポリヒドロキシブチラート(PHB)の幾つかの改変が提案されている。かかる開発は、工業生産なしに、研究室プロセスで実施されることが多く及び/又は手操作による成形技術を用いる。
【0007】
したがって、PHBとポリマー、すなわち、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエピクロロヒドリン(polyepichloroidrine)(PECH)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(R,S)3−ヒドロキシブチラートコポリマー、ポリエチレングリコール(P(R,S−HB−b−EG))及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)とによって形成される、混和性及び相溶性のポリマーブレンドに関する幾つかの引用がある。PHBと、ポリ(1,4ブチレンアジパート)(PBA)、エチルプロピレンゴム(EPR);エチレン酢酸ビニル(EVA)、(無水コハク酸(EPR−g−SA)又はマレイン酸ジブチル(EPR−DBM)がグラフトした)変性EPR、−OH基含有変性EVA(EVAL)、ポリメタクリル酸(methacryilate)シクロヘキシル(PCHMA)、ポリ乳酸(PLA)及びポリカプロラクトン(PCL)との混合物に基づく非混和性及び相溶性のポリマーブレンドの引用もある。
【0008】
一方、以下の態様において、本発明の新規特質と異なる、PHB−PCLの組合せによって構成されるポリマーブレンドの製造法、組成物及び適用例についての引用があった。
【0009】
− 開発された方法においては、PHB及びPCLポリマーのレオロジー挙動に基づいて設計されたスクリュープロファイルを有するモジュラー二軸押出機が使用され、それによってポリマーの良好な分散及び最適分布が可能になり、適切で安定な形態が形成され、より高い物理機械的性能を有するPHB/PCLポリマーブレンドが得られるので、PHB−PCLに基づく相溶性ポリマーブレンドを得る技術。
【0010】
− 構成ポリマーの含有量を大きく変え、これらの成分固有の特性から特化されたポリマー材料を製造する可能性。
【0011】
− これらのポリマーブレンドを、天然繊維、天然充填剤、リグノセルロース残基などの他の添加剤を用いて改変する可能性。
【0012】
− 商業化の可能性を有する2つの方法、すなわち、PHB/PCLポリマーブレンドを得る押出法と製品を得る射出成形の利用。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の要旨
本発明の一般的目的は、ポリヒドロキシブチラート又はこのコポリマーによって規定される生分解性ポリマー、ポリ脂肪族芳香族コポリエステル、及び少なくとも1種類の添加剤を用いて、環境分解性材料の製造を可能にすることによって、例えば、射出食品包装材、化粧品用射出包装材、管、技術的部品及び幾つかの射出成形物の製造などの異なる用途に用いられるポリマーブレンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、ポリヒドロキシブチラート又はそのコポリマーによって規定される生分解性ポリマーと、脂肪族−芳香族コポリエステルとを含み、天然繊維などの天然源の可塑剤、天然充填剤、熱安定剤、核形成剤、相溶化剤、表面処理剤及び加工助剤からなる少なくとも1種類の添加剤を含んでいてもよい、ポリマーブレンドが提供される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、
a)そのコポリマーのポリマー(PHB)と、ポリカプロラクトン(PCL)と、少なくとも1種類の添加剤とを前もって混合すること、b)前記混合物を乾燥させ、混合物を押し出して、顆粒を形成すること、並びにc)押し出され、顆粒化された材料を射出成形して、射出包装材及び他の射出成形物を製造することを含む、上記ブレンドを調製する方法が提供される。
【0016】
発明の詳細な説明
生分解性ポリマークラスでは、主にその通常の生分解性、並びに物理、化学及び生物学的諸性質の多様性のために、エステル官能基を含む構造が重要である。エネルギー及び炭素源として種々の微生物によって製造されるポリアルカノアート(カルボン酸由来のポリエステル)は、生物発酵によって、又は化学的に合成することができる。
【0017】
ポリヒドロキシブチラート(PHB)は、ポリアルカノアートクラスの主メンバーである。PHBが非常に重要であることは、3つの因子、すなわち、100%生分解性、耐水性及び熱可塑性ポリマーであることの再結合(reunion)によって正当化され、それによって従来の熱可塑性ポリマーと同じ用途に用いられる。式1はPHB構造である。
【0018】
(a)3−ヒドロキシ酪酸及び(b)ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(PHB)の構造式。
【0019】
【化1】

【0020】
PHBは、最適条件下では乾燥重量の80%超がPHBである細菌アルカリゲネス ユートロファス(Alcaligenis euterophus)などの微生物におけるエネルギー源及び炭素貯蔵源として、Lemognieによって1925年に発見された。
【0021】
今日では、細菌発酵は、ポリヒドロキシブチラートの主要な生成源であり、細菌は酪酸又はフルクトースと一緒に反応器に供給され、放置増殖され、しばらくして、細菌細胞は適切な溶媒を用いてPHBから抽出される。
【0022】
ブラジルでは、PHBは、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)を再生可能資源から生産する唯一のラテンアメリカ会社であるPHB Industrial S/Aによって工業規模で生産される。ポリヒドロキシブチラートの製造法は、基本的に2段階からなる。
【0023】
・発酵段階:微生物は、培地中の利用可能な糖を代謝し、PHBを細胞内に予備の資源として蓄積する。
【0024】
・抽出段階:微生物細胞内に蓄積されたポリマーを抽出し、固体乾燥生成物が得られるまで精製する。
【0025】
PHB Industrial S.Aによって開発されたプロジェクトによって、発酵培地の基本成分として糖及び/又はモラッセ(molasse)を使用することができ、微生物によって合成されるポリマーの抽出系としてフーゼル油(有機溶媒:アルコール製造の副生物)を使用することができ、過剰のサトウキビバガスを使用して、これらのプロセスのためのエネルギーを生成(蒸気発生)することもできる。このプロジェクトによって、糖及びアルコール製造で発生する副生物を最大限に利用して、完全な垂直統合が可能になり、いわゆるクリーンで生態学的に適切な技術を利用したプロセスがもたらされた。
【0026】
PHBの製造方法と類似した製造方法によって、PHBVとして知られる、3−ヒドロキシブチラートと3−ヒドロキシバレラートのランダムセグメントとの半結晶性細菌性コポリマーを製造することができる。両方の方法の主な違いは、発酵培地中のプロピオン酸(proprionic acid)の添加に基づく。細菌供給物(bacteria feeding)におけるプロピオン酸量によって、コポリマー中のヒドロキシバレラート(HV)濃度を制御して、(数週間から数年であり得る)分解時間及びある種の物性(例えば、モル質量、結晶化度、表面積)を変えることができる。コポリマーの組成は、(120から180℃の範囲であり得る)融点、並びに(HV濃度の増加につれ向上する)延性及び柔軟性にも影響を及ぼす。式2は、PHBVの基本構造である。
【0027】
PHBVの基本構造
【0028】
【化2】

【0029】
一部の研究によれば、PHBは、試料の射出直後に、ある程度の延性及び最大伸び15%、引張弾性率1.4GPa並びにノッチ付きアイゾット衝撃強さ50J/mの挙動を示す。かかる諸性質は、時間とともに変化し、約1か月で安定する。保存15日後に伸びは15%から5%に減少し、材料の脆弱化(fragilization)を示している。同じ保存期間後、引張弾性率は1.4GPaから3GPaに増加し、ノッチ付きアイゾット衝撃強さは50J/mから25J/mに減少する。表1は、平衡(isostatic)ポリプロピレン(市販ポリプロピレン)と比較した、PHBの幾つかの性質である。
【0030】
【表1】

【0031】
幾つかの環境条件下での、PHB又はそのポリ(3−ヒドロキシ酪酸−co−ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)コポリマーでできた物品の分解速度は、使用者に大いに関連する。PHB又はPHBVコポリマーを合成ポリマーの生分解性代替候補として容認されるようにする前提は、自然な生物学的無機化によって、好気性及び嫌気性環境においてそれぞれCO/HO/バイオマス及びCO/HO/CH/バイオマスを生成する完全な生分解性である。この生分解は、通常、細菌、真菌及び藻類による表面の攻撃によって起こる。生分解性ポリマー、したがって、PHB及びPHBVの実際の分解時間は、周囲環境及び物品の厚さに依存する。
【0032】
PHB又はPHBVコポリマーは、これらの生分解性ポリマーを可塑化するために特に開発された天然源の可塑剤を含んでも、含まなくてもよい。
【0033】
可塑化剤は、存在するときには、約2%から約30%、好ましくは約2%から約15%、より好ましくは約5%から約10%の質量比率のブレンド組成物として存在する、ダイズ、トウモロコシ、ヒマシ油植物、ヤシ、ココナツ、ピーナッツ、アマニ、ヒマワリ、ババスヤシ、パーム核、アブラナ、オリーブ、カルナウバロウ、アブラギリ、ホホバ、ブドウ種、アンジローバ、アーモンド、甘扁桃、ワタ、クルミ、コムギ胚芽、コメ、マカダミア、ゴマ、ヘーゼルナッツ、カカオ(バター)、カシューナッツ、クプアス、ケシ及びその可能な水素化誘導体由来の「自然のままの姿の(in natura)」(天然に存在するままの)植物油又はそのエステル若しくはエポキシ誘導体であり得る。
【0034】
前記可塑剤は、さらに、リノレアート45−63%、リノレナート2−4%、パルミタート1−4%、パルミトオレアート1−3%、オレアート12−29%、ステアラート5−12%、ミリスタート2−6%、パルミスタート20−35%、ガドレアート1−2%及びベヘナート0.5−1.6%の範囲の脂肪性組成を呈する。
【0035】
ポリカプロラクトン(PCL)
ポリカプロラクトン(PCL)は、強靭で柔軟な結晶性ポリマーである合成生分解性脂肪族ポリエステルである。
【0036】
ポリカプロラクトン(PCL)の化学構造
【0037】
【化3】

【0038】
PCLは、一般にε−カプロラクトンの開環重合によって、合成調製される。PCLは、低いガラス転移温度(−60から−70℃)及び融解温度(58−60℃)を有する。結晶化速度が遅いので、結晶化度が時間とともに変化する。最近まで、PCLは、高価であるため、生分解性ポリマーとしての用途に多量に使用されていなかった。最近、これらの価格障壁がPCLと他の生分解性ポリマー及び/又はデンプン、木粉などの他の生成物との混合によって克服された。
【0039】
ポリカプロラクトン(PCL)は、真菌によって分解され、かかる生分解は、2段階で、すなわち、高モル質量の鎖の非生物的加水分解切断の第1段階と、微生物同化作用のための後続の酵素分解とで起こる。
【0040】
純粋なPCLポリマーは、融解温度が低いので、加工が困難である。それにもかかわらず、ポリマー鎖における分子移動度を容易に増加させることができるので、可塑剤として用いることができる。その生体適合性及び(他のポリエステルよりもはるかに遅い)「生体内」分解によっても、医薬分野において長期間(1から2年)の系に使用することができる。再生可能資源の原材料から製造されていないが、ポリカプロラクトン(PCL)は、純粋でも、生分解性材料と一緒にコンポスト化しても、完全生分解性である。
【0041】
例えばPHB/PCLブレンドなどの他の生分解性ポリマーとのPCLブレンドも、医薬分野に使用される可能性がある。
【0042】
ポリカプロラクトン(PCL)は、生分解用基質としても、また、制御された薬物送達システムにおけるマトリックスとしても、広範に研究されている。
【0043】
PHB/PCLポリマーブレンドに組み入れることができるモディファイヤー及び他の添加剤。
【0044】
− 天然繊維:開発された本明細書の方法に使用することができる天然繊維は、約5%から約70%、より好ましくは約10%から約60%の範囲の質量比率で組成物中に存在する、サイザル、サトウキビバガス、ココナツ、ピアサバ、ダイズ、ジュート、カラムシ及びクラワ(アナナス・ルシダス)である。
【0045】
− 天然充填剤:開発された方法に使用することができるリグノセルロース充填剤は、約5%から約70%、より好ましくは約10%から約60%の範囲の質量比率で組成物中に存在する、木粉又は木材粉塵、デンプン及びもみ殻である。
【0046】
− 加工助剤/分散剤:モディファイヤーの総量に対して1%の量の熱可塑性組成物用加工助剤/分散剤の任意選択による利用。本明細書において使用される加工助剤は、約0.01%から約2%、好ましくは約0.05%から約1%、より好ましくは約0.1%から約0.5%の質量比率で組成物中に存在する、Struktolによって市販されている製品Struktolである。
【0047】
− 相溶化剤は、約0.01%から約2%、好ましくは約0.05%から約1%の質量比率で組成物中に存在する、無水マレイン酸で官能性を持たせた、又はグラフトされた、ポリオレフィン;ナトリウムで中和された、エチレンアクリル酸又はエチレンメタクリル酸コポリマーに基づくイオノマー(DuPontの商標Surlin)のタイプであり得る。
【0048】
− 核形成剤(Nucleant):窒化ホウ素、又はMilliken製HPN(登録商標)。
【0049】
− 場合により使用される他の添加剤:約0.01%から約2%、好ましくは約0.05%から約1%、より好ましくは約0.1%から約0.5%の質量比率で組成物中に存在する、熱安定剤(一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤)、顔料、オリゴマーHALS型(立体障害アミン)紫外線安定剤。
【0050】
− 表面処理剤は、約0.01%から約2%の質量比率で存在する、シラン、チタナート、ジルコナート、エポキシ樹脂、ステアリン酸及びステアリン酸カルシウムのタイプであり得る。
【0051】
ポリマーブレンドの製造法
開発されたポリマーブレンド方法及び配合
PHB/ポリカプロラクトン(PCL)ポリマーブレンドの調製用に開発された一般化された方法は、特定の生分解性混合物に望まれる具体的目的に応じて、必須であり得る、又は必須でない、5段階に基づく。
【0052】
PHB/PCLポリマーブレンドを調製する段階は、
a.配合を規定すること
b.生分解性ポリマー及び他の場合による成分を乾燥させること
c.成分を前もって混合すること
d.押し出し及び顆粒化
e.幾つかの製品を製造するための射出成形
である。
【0053】
各段階の説明
a.配合を規定すること
表2は、PHB/PCLポリマーブレンドの主要な配合である。
【0054】
【表2】

【0055】
b.生分解性ポリマー及び他の任意選択の成分を乾燥させること
生分解性ポリマーPHB及びPCL並びに他の可能なモディファイヤーは、ポリマーブレンドを製造する加工操作の前に、十分に乾燥させるべきである。残留含水量を熱重量測定又は他の等価な分析技術によって定量すべきである。
【0056】
c.成分を前もって混合すること
生分解性ポリマーと繊維以外の他の任意選択の添加剤とを、天然繊維の長さを均一化し、天然繊維及び/又は天然充填剤を表面処理するために、低回転の混合機中で室温で前もって物理的に混合し、均質化することができる。
【0057】
d.押し出し及び顆粒化
押出工程によって、PHB/PCLポリマーブレンドの構造が形成される。すなわち、生分解性ポリマーの分布、分散及び相互作用を含めて、ポリマー系の形態の獲得は、プロセスのこの段階で規定される。押出段階においては、開発された材料の顆粒化も起こる。
【0058】
押出段階においては、高精度の重力式(gravimetric)供給装置/計量(dosage)システムを含む、Werner&Pfleiderer製などの噛み合いスクリューを備えたモジュラー同方向回転二軸押出機を使用する必要がある。
【0059】
ポリマーブレンド中の生分解性ポリマーの分布、分散及び相互作用の主な戦略的側面は、PHBとPCLのレオロジー挙動を考慮した、モジュラースクリューのプロファイルの開発、場合による天然モディファイヤーの供給場所、温度プロファイル、押出機流量である。
【0060】
モジュラースクリューのプロファイル、すなわち、エレメント(輸送及び混合エレメント)のタイプ、数、分布配列及び適切な位置決めによって、構成ポリマーの分解を引き起こし得る過酷な加工(processing severity)を起こさない、ポリマーブレンドの混合効率、したがって品質が決まる。
【0061】
モジュラースクリュープロファイルは、圧力場を制御する輸送エレメント、並びに融解及び混合(生分解性ポリマーの分散及び分布)を制御する混練エレメントの前もって確立された構成で用いられた。これらのエレメント群は、PHBとPCLの適切な形態学的構造制御、最適分散、及び良好な分布を実現する極めて重要な因子である。
【0062】
場合による天然モディファイヤーは、押出機の供給ホッパーに直接導入することができ、及び/又はPHB及びPCLが溶融状態にある中間位置(第5バレル)に直接導入することができる。
【0063】
異なる加熱帯、特に供給領域及び押出機出口の頭部領域の温度プロファイル、並びにスクリュー回転速度によって制御される流量も、極めて重要な変数である。
【0064】
表3は、PHB/PCLポリマーブレンドの組成物の押出加工条件である。
【0065】
PHB/PCLポリマーブレンドの顆粒を得るための顆粒化は、通常の造粒機、ただし、射出成形において高い生産性が得られる寸法を顆粒が呈するようにブレードの速度及び数を適切に制御することができる造粒機で実施される。
【0066】
【表3】

【0067】
e.幾つかの製品を製造するための射出成形
射出成形では、この加工方法の重要な変数を厳密に制御するために、コンピュータシステムによって操作される射出機を利用する必要がある。
【0068】
表4は、PHB/PCLポリマーブレンドの組成物の射出加工条件である。
【0069】
射出成形は、重要な変数、すなわち、溶融温度、計量中のスクリュー速度及び逆圧を制御することによって、開発された方法に申し分なく組み込まれる。前記変数(表4の条件)を厳密に制御しないと、射出口(gun)内の高せん断によってガスが発生し、計量の均一化を妨げ、型空間の充填操作を危うくする。
【0070】
ホットチャンバを備えた型を用いるときには、ポリマーブレンドを理想的な温度に維持するために、また、サブマリンチャネル(submarine channel)を用いるときには、型空間への通路が狭いことに起因する高せん断の関係で、主に寸法の側面に関連して、型の突出(project)にも特別な注意を払うべきである。
【0071】
【表4】

【実施例】
【0072】
ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)/ポリカプロラクトン(PCL)ポリマーブレンドの幾つかの組成物に対して得られる諸性質の例
ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)/ポリカプロラクトン(PCL)CAPAからなるポリマーブレンドの例を以下に示す。表5−8は、これらのポリマーブレンドのキャラクタリゼーション結果である。
【0073】
例1:ポリマーブレンド ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)75%/ポリカプロラクトン(PCL)CAPA 25%(表5)。
【0074】
例2:ポリマーブレンド ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)50%/ポリカプロラクトン(PCL)CAPA 50%(表6)。
【0075】
例3:木材粉塵又は木粉40%で改変された、ポリマーブレンド ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)45%/ポリカプロラクトン(PCL)CAPA 15%(表7)。
【0076】
例4:木材粉塵又は木粉40%で改変された、ポリマーブレンド ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)30%/ポリカプロラクトン(PCL)CAPA 30%(表8)。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)又はそのコポリマーによって規定される生分解性ポリマーと及びポリカプロラクトン(PCL)とを含み、天然繊維などの天然源の可塑剤、天然充填剤、熱安定剤、核形成剤、相溶化剤、表面処理剤及び加工助剤によって規定される添加剤の少なくとも1種類を含んでいてもよいことを特徴とする、環境分解性ポリマーブレンド。
【請求項2】
可塑剤が、約2%から約30%、好ましくは約2%から約15%、より好ましくは約5%から約10%の質量比率の組成を呈する、ダイズ、トウモロコシ、ヒマシ油植物、ヤシ、ココナツ、ピーナッツ、アマニ、ヒマワリ、ババスヤシ、パーム核、アブラナ、オリーブ、カルナウバロウ、アブラギリ、ホホバ、ブドウ種、アンジローバ、アーモンド、甘扁桃、ワタ、クルミ、コムギ胚芽、コメ、マカダミア、ゴマ、ヘーゼルナッツ、カカオ(バター)、カシューナッツ、クプアス、ケシ及びその可能な水素化誘導体由来の「自然のままの姿の(in natura)」(天然に存在するままの)植物油又はそのエステル若しくはエポキシ誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド。
【請求項3】
可塑剤が、リノレアート45−63%、リノレナート(linoleinate)2−4%、パルミタート1−4%、パルミトオレアート1−3%、オレアート12−29%、ステアラート5−12%、ミリスタート2−6%、パルミスタート(palmistate)20−35%、ガドレアート1−2%及びベヘナート0.5−1.6%の範囲の脂肪性組成を有することを特徴とする、請求項2に記載のブレンド。
【請求項4】
有用な天然繊維が、約5%から約70%、より好ましくは約10%から約60%の質量比率で組成物中に存在する、サイザル、サトウキビバガス、ココナツ、ピアサバ(piasaba)、ダイズ、ジュート、カラムシ及びクラワ(アナナス・ルシダス(Ananas lucidus))から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド。
【請求項5】
有用な天然充填剤又はリグノセルロース(lignocellulosic)が、約5%から約70%、好ましくは約10%から約60%の質量比率で組成物中に存在する、木粉又は木材粉塵、デンプン及びもみ殻から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド。
【請求項6】
相溶化剤(compatilibilizer)が、約0.01%から約2%、好ましくは約0.05%から約1%の質量比率で組成物中に存在する、無水マレイン酸(maleic anhidride)で官能性を持たせた又はグラフトされたポリオレフィン、ナトリウムで中和されたエチレンアクリル酸又はエチレンメタクリル酸コポリマーに基づくイオノマー(DuPontの商標Surlin)のタイプであり得ることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド。
【請求項7】
表面処理剤が、約0.01%から約2%の質量比率で組成物中に存在する、シラン、チタナート、ジルコナート、エポキシ樹脂、ステアリン酸及びステアリン酸カルシウムのタイプであり得ることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド。
【請求項8】
加工助剤が、約0.01%から約2%、好ましくは約0.05%から約1%の質量比率で組成物中に存在する、Struktol Company of Americaによって市販されている製品Struktolであることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド。
【請求項9】
安定剤が、約0.01%から約2%、好ましくは約0.05%から約1%、より好ましくは約0.1%から約0.5%の質量比率で組成物中に存在する、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、又はオリゴマーHALS型(立体障害アミン)紫外線安定剤であり得ることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド。
【請求項10】
a)天然繊維の長さを均一化する、天然繊維及び/又は天然充填剤を表面処理するために、目的組成物を構成する材料を前もって混合すること
b)前記材料を乾燥させ、押し出し、その顆粒を形成すること、並びに
c)押し出され、顆粒化された材料を、幾つかの製品を製造するために射出成形すること
を含むことを特徴とする、ポリ(ヒドロキシブチラート)又はそのコポリマーと、PHB又はそのコポリマー(PHBV)とおよびポリカプロラクトン(PCL)とによって形成され、さらに天然繊維などの天然源の可塑剤、天然充填剤、熱安定剤、核形成剤、相溶化剤、表面処理剤及び加工助剤によって規定される少なくとも1種類の添加剤によって形成されていてもよい、環境分解性ポリマーブレンドを得る方法。
【請求項11】
射出食品包装材、化粧品用射出包装材、管、技術的部品(technical piece)及び幾つかの射出成形物の製造における、ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)/ポリカプロラクトン(PCL)によって形成される、環境分解性ポリマーブレンドの適用。

【公表番号】特表2009−527593(P2009−527593A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555571(P2008−555571)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/BR2007/000044
【国際公開番号】WO2007/095708
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(506179239)
【Fターム(参考)】