説明

環境調節方法及び恒温恒湿装置

【課題】空気の温度及び湿度を低温・高湿状態に安定して高精度で調節できる環境調節方法及び恒温恒湿試験装置を提供する。
【解決手段】空気の温度を当初の状態の空気の温度より低い最終目標温度に調節し、かつ空気の湿度を目標湿度に調節する環境調節方法であり、先に空気の絶対湿度を目標絶対湿度に調節し、次に空気の温度を最終目標温度に調節する。恒温恒湿装置1は、二つの恒温恒湿装置A,Bがダクト6,8によって接続された形状をしている。装置A側は、目標絶対湿度の空気を作る装置であり、中間環境調節部2が内蔵されており、空気室10と第一空気調節手段11を有する。装置B側は、最終目標環境を作ると共に被試験物を設置する空間を有する装置であり、最終環境調節部3及び試験室5によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境調節方法及び恒温恒湿装置に関し、さらに詳しくは、空気の温度を室温又は外気温度(以下、単に室温等という)より低い最終目標温度に調節し、湿度を所望の最終目標湿度に調節する環境調節方法、及び上記した環境を作ることができる恒温恒湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
氷点下の低温で、しかも相対湿度の高い環境(例えば冬の北海道の様な環境)をシミュレートして試験を行う試験装置が必要とされている。たとえば、ブレーキのような自動車部品や電気部品の耐候性試験を行う装置として上記試験装置の需要がある。

【0003】
一般に、自然現象により生じた低温環境は高湿になりやすいが、人工的に冷凍装置を用いて作った低温環境は、冷却時に水蒸気が凝縮するので低湿になりやすく、そのため、空気の温度及び湿度を低温・高湿状態に高精度に制御することは容易ではなかった。
【0004】
従来、空気を低温・高湿状態とするには、空気中の水分を凝縮させつつ冷却を行って、一旦空気を目標湿度よりも低湿とし、これを加湿して目標湿度とすることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−288382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
部品の耐候性試験は、長時間に渡って継続的に行われる場合が多い。従って試験を行う恒温恒湿装置は、長時間に渡って低温・高湿状態を維持しなければならない。
そのため従来技術の方策によると、冷却手段は、長時間に渡って空気中の水分を凝縮させつつ冷却を行い続けることとなる。また従来技術の方策によると、極寒の環境下において、加湿装置によって加湿が行われる。そのため試験の最中に、冷却手段の熱交換器に霜が付き、空気との接触状況が変化して所望の環境を維持することができなくなってしまう場合がある。
【0007】
この対策として、冷却手段を複数用意し、これを並列に配置して切り換え運転を行う方策が考えられる。
すなわち通常は、一方の冷却手段によって試験室内を冷却し、運転中の冷却手段に霜が付いたら、空気流路を切り換えて予備の冷却手段で試験室内を冷却する。そしてその間に今まで使用していた冷却手段の霜取りを行う。
【0008】
しかしながら、この方策は、冷却手段の切り換え時に空気の温度・湿度に乱れが生じ、温度・湿度を一定値に保持することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、空気の温度及び湿度を低温・高湿状態に安定して高精度に制御できる環境調節方法及び恒温恒湿装置を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための環境調節方法に係る発明は、空気の温度・湿度を最終目標環境における最終目標温度及び最終目標湿度に調節する環境調節方法であって、前記最終目標温度が常温以下である環境調節方法において、
空気の温度・湿度を一旦中間目標環境に調節し、前記中間目標環境における中間目標温度は最終目標温度よりも高い温度であり、前記中間目標環境における絶対湿度は前記最終目標環境における絶対湿度と同一の絶対湿度であり、空気の温度・湿度を中間目標環境に調節した後に空気の温度を最終目標温度に低下させることを特徴とする環境調節方法である。
【0011】
本出願の用語において、「最終目標温度(又は最終目標湿度、中間目標温度等)に調節する」とは、その温度又は湿度を目標として制御を行うという意味であり、空気の温度又は湿度を完璧に目標値に合わせるという意味ではない。本発明は、空気の温度及び湿度の高精度の制御を目的とするが、調節された空気の温度又は湿度と目標値の間に幾分の誤差が生じることは勿論あり得ることで、制御の用途上問題がなければ許容し得る。
【0012】
本発明では、先に第一過程として空気の絶対湿度を調節する。最終目標環境が室温等の温度よりも十分低温である場合、目標状態の空気は、室内等の空気と比べて相対湿度は高くても絶対湿度は低い。そのため、通常、室内等の状態よりも絶対湿度を低下させることによって目標の絶対湿度に到達できる。
【0013】
したがって、空気の絶対湿度を目標絶対湿度に調節するためには、通常は除湿を行えばよい。ただし、除湿のみによって絶対湿度を高精度に制御することは実際には難しいので、一旦目標湿度より低湿度まで除湿して、次に加湿することにより絶対湿度を目標値に合わせてもよい。また、第一過程において、冷却や加熱を適宜行ってもよい。
【0014】
本発明においては、空気の温度・湿度を一旦中間目標環境に調節する。ここで中間目標環境における中間目標温度は最終目標温度よりも高い温度である。前記した様に、空気の絶対湿度を目標絶対湿度に調節するためには、通常は除湿を行えばよいから、中間目標温度は前記した室内等の温度であってもよい。
本発明では、中間目標環境における中間目標温度は最終目標温度よりも高い温度であるから、冷却手段に霜が付きにくい。
【0015】
次に第二過程として空気の温度を最終目標温度に調節する。すなわち、空気を冷却する。絶対湿度は既に目標値に調節されているので、この過程においては、除湿も加湿も行わない。
【0016】
一般に空気を氷点下に冷却すると霜を生じやすいが、これは、冷却部と接触する空気が露点に達して空気中の水分が凝縮・凍結することによる。しかし、本発明では、先に絶対湿度を低下させているので、第二過程における冷却では、空気中の水分が露点に達しない範囲の冷却で足る。この冷却過程では、絶対湿度は実質的に変化しない。そしてこの冷却過程では、相対湿度は上昇するが、露点に達する前に冷却を終了させることができる。そのため、着霜を伴わずに空気の冷却を行うことができる。したがって、除霜のための装置の切り換えが不要となり、空気の温度・湿度の調節を安定して高精度で行うことができる。
【0017】
本発明において、目標絶対湿度は室内等の空気の絶対湿度より低いことが好ましい。
【0018】
また本発明においては、最終目標温度が氷点下であり、中間目標温度が氷点以上であることが望ましい。この構成によれば、中間目標温度に調節する段階においては、温度が摂氏0度以上であり、最終目標温度に調節する段階においては、空気が露点に達しないので、いずれも着霜しがたく、着霜が有効に防止される。
【0019】
またさらに推奨される構成は、最終目標環境における露点温度が氷点下であり、中間目標温度が氷点以上とする環境調節方法(請求項2)である。この構成においても、中間目標温度に調節する段階においては、温度が摂氏0度以上であり、最終目標温度に調節する段階においては、空気が露点に達しないので、いずれも着霜しがたく、着霜が有効に防止される。
【0020】
本発明において、最終目標湿度は試験の目的により定められるものであり、最終目標湿度が低くても本発明の実施は可能であるが、最終目標湿度が相対湿度50%(パーセント)以上の場合が特に本発明に適している。また、本発明において、中間目標温度については、当初の室内等の温度・湿度と目標状態の温度・湿度を勘案し、実験に基づいて適切な数値を定めればよい。ただし、一般的には、当該中間目標温度は、最終目標温度より10〜30℃(摂氏10〜30度)高くすることが好ましい。すなわち、最終目標温度を0℃(摂氏0度)以下とし、最終目標湿度を相対湿度50%以上とし、先の段階において空気の温度を中間目標温度に調節し、当該中間目標温度は、最終目標温度より10〜30℃高くすることが好ましい。
【0021】
一般に、中間目標温度は、最終目標温度より15〜25℃(摂氏15〜25度)高ければ、より好ましい。
【0022】
なお、本発明において、最終目標温度に明瞭な下限はない。ただし、耐候性試験であれば、通常、最終目標温度は、−30〜0℃(摂氏マイナス30〜0度)程度である。
【0023】
また第一熱交換器によって空気の温度を中間目標温度に調節し、第二熱交換器によって空気の温度を中間目標温度から最終目標温度に調節するものであり、前記第一熱交換器における熱交換部の温度が、氷点近傍よりも高いことが望ましい(請求項3)。
【0024】
ここで氷点近傍とは、摂氏マイナス1度程度であり、着霜しても大きな氷塊に成長しにくい範囲の温度である。
第一熱交換器の熱交換部の温度は、低いほど熱交換効率が良いから、氷点近傍よりも高い温度であってできるだけ低温であることが望ましい。具体的には摂氏1度程度を目標とすることが推奨される。
【0025】
また第一熱交換器によって空気の温度を中間目標温度に調節し、第二熱交換器によって空気の温度を中間目標温度から最終目標温度に調節するものであり、中間目標温度が氷点以上である場合に、第一熱交換器の温度を一時的に氷点下とする構成を採用してもよい(請求項4)。
【0026】
本発明によると、第一熱交換器の運転時における温度が氷点下となるから、第一熱交換器に着霜する。しかしながら、第一熱交換器が氷点下となるのは一時的であり、第一熱交換器の温度が氷点以上となるタイミングもある。そして本発明は、中間目標温度が氷点以上である場合に採用されるから、第一熱交換器の周囲の温度は、氷点以上であり、第一熱交換器の温度が氷点以上となると、周囲の温度と相まって第一熱交換器に付着した霜が融解する。
本発明では、第一熱交換器の温度が低いので、第一熱交換器の熱交換効率が高く、短時間で空気の温度を中間目標温度に至らしめることができる。
なお第一熱交換器の温度を一時的に氷点下としたり、氷点以上となる様に切り換える方策としては、冷却装置を間欠運転したり、オンオフ運転する。あるいは後記するホットガスバイパス弁を開閉する方策が考えられる。
【0027】
また第一熱交換器によって空気の温度を中間目標温度に調節し、第二熱交換器によって空気の温度を中間目標温度から最終目標温度に調節するものであり、前記第二熱交換器における熱交換部の温度が、最終目標環境における露点の近傍よりも高いことが望ましい(請求項5)。
【0028】
ここで露点の近傍とは、露点マイナス1度程度であり、結露してもその程度が低い範囲の温度である。
本発明では、第二熱交換器における熱交換部の温度が、最終目標環境における露点の近傍よりも高いから、絶対湿度の変化が小さく、所望の最終目標湿度に一致させることができる。
【0029】
所定の空間が最終目標環境に至った後、或いは前記所定の空間が最終目標環境に近い環境に至った後には、前記中間目標環境に比べて湿度が高い高湿度補正空気又は前記中間目標環境に比べて湿度が低い低湿度補正空気を前記所定の空間に導入して所定の空間内を最終目標環境に維持する方策も有効である(請求項6)。
【0030】
本方策によると、所定の空間内の環境が、最終目標環境からずれた場合に、早期に最終目標環境に戻すことができる。
【0031】
上記の課題を解決するための恒温恒湿装置に係る発明は、内部の環境を最終目標温度及び最終目標湿度の最終目標環境に調節する恒温恒湿装置であって、中間環境調節部と、最終環境調節部を有し、中間環境調節部は、空気の温度・湿度を一旦中間目標環境に調節する第一空気調節手段を有し、前記中間目標環境における中間目標温度は最終目標温度よりも高い温度であり、前記中間目標環境における絶対湿度は前記最終目標環境における絶対湿度と同一の絶対湿度であり、前記最終環境調節部は前記中間環境調節部の後段側に配置され、空気の絶対湿度を実質的に変化させないで空気の温度を最終目標温度に調節する第二空気調節手段を有することを特徴とする恒温恒湿装置である(請求項7)。
【0032】
またより具体的な構成を示した発明は、第一空気調節手段は、第一温度調節手段と湿度調節手段とを備え、第二空気調節手段は、第二温度調節手段を備え、最終目標環境を入力する入力手段と、最終目標環境における絶対湿度又は中間目標温度における前記絶対湿度に対応する相対湿度を演算する湿度演算手段と、制御手段とを備え、前記制御手段は湿度演算手段で演算された絶対湿度または相対湿度と一致する様に湿度調節手段を制御し、中間環境調節部の温度が中間目標温度となる様に第一温度調節手段を制御し、最終環境調節部の温度が最終目標温度となる様に第二温度調節手段を制御することを特徴とする恒温恒湿装置である(請求項8)。
【0033】
これらの恒温恒湿装置は、上記の環境調節方法を実施する装置であって、その作用は、環境調節方法について述べたものと同一である。
すなわち、本発明では、先に中間環境調節部において空気の絶対湿度を目標絶対湿度に調節する。通常、室内等の状態よりも絶対湿度を低下させることによって目標の絶対湿度に到達させる。
【0034】
空気の絶対湿度を目標絶対湿度に調節するためには、通常は除湿を行えばよい。ただし、除湿のみによって絶対湿度を高精度に制御することは実際には難しいので、中間環境調節部において、一旦目標湿度より低湿度まで除湿して、次に加湿することにより絶対湿度を目標値に合わせてもよい。また、中間環境調節部において、冷却や加熱を適宜行ってもよい。
【0035】
次に中間環境調節部の空気を最終環境調節部に供給し、最終環境調節部において空気の温度を最終目標温度に調節する。すなわち、空気を冷却する。絶対湿度は既に目標値に調節されているので、この過程においては、除湿も加湿も行わない。
【0036】
本発明では、先に絶対湿度を低下させているので、冷却過程(最終環境調節部)では空気中の水分が露点に達しがたい。そのため、水分の凝縮を伴わずに空気の冷却を行うことができる。
【0037】
本発明において、除霜のための装置切り換えが不要となり、空気の温度・湿度の調節を安定して高精度で行うことができる。また、中間環境調節部において空気の絶対湿度を調節し、最終環境調節部において空気の温度を調節する構成としているので、湿度及び温度の調節が行いやすい。
【0038】
なお、本発明において、最終環境調節部側から中間環境調節部へ空気を戻す空気還流手段を設けてもよい。空気還流手段を設ければ、中間環境調節部、最終環境調節部、及び空気還流手段により循環流路が形成され、中間環境調節部から最終環境調節部への空気の流通がスムーズになる。
【0039】
この構成を採用した発明は、被試験物が設置される試験室を有し、中間環境調節部と最終環境調節部と試験室とが順に環状に流路接続されており、中間環境調節部で調節された中間目標環境の空気が最終環境調節部に送られて最終目標に調節され、最終目標環境に調節された空気が試験室に導入され、さらに試験室内の空気が中間環境調節部に導入されて前記一連の流路を循環する大循環運転をおこなうことを特徴とする請求項6または7に記載の恒温恒湿装置(請求項9)である。
【0040】
本発明によると、試験室を経由して空気が循環し、試験室内を所望の環境に保つことができる。
【0041】
また試験室と最終環境調節部の間で空気が循環されて前記試験室内が最終目標環境に調節される一方、前記中間環境調節部の内部で空気が循環されて中間環境調節部が中間目標環境に調節される個別循環運転をおこなうことが可能な構成が推奨される(請求項10)。
【0042】
本発明は、試験室内の環境が安定した場合に推奨される動作を開示するものである。本発明の動作が実行される場合、試験室内の環境は、最終環境調節部の作用だけによって調節される。また中間環境調節部内は、試験室内の環境が急変した場合に備えて、中間環境調節部の内部で空気が循環され、中間目標環境が維持される。
【0043】
さらに前記個別循環運転状態の中間環境調節部内の空気を、前記制御手段の指示に応じて前記最終環境調節部に供給する微調整運転をおこなうことができる構成とすることが望ましい(請求項11)。
【0044】
本発明についても、試験室内の環境が安定した場合の動作を開示するものであるが、特に試験室内の湿度が最終目標湿度からずれた場合に推奨される動作である。
本発明の動作が実行される場合、中間目標環境に調節された中間環境調節部内の空気を、最終環境調節部に供給しさらにこれが試験室内に供給されることとなる。ここで中間目標環境における絶対湿度は最終目標環境における絶対湿度と同一の絶対湿度であるから、個別循環運転状態の中間環境調節部内から最終環境調節部に供給される空気は、湿度が最終目標湿度と同一の絶対湿度に調節されている。この空気を最終環境調節部で冷却し、最終目標温度に温度降下させて試験室に供給する。その結果、試験室内の湿度が微調整される。
【0045】
また運転間始時に最終環境調節部の冷却機能を停止させ、中間環境調節部を運転した状態で、少なくとも試験室を含む循環経路内を中間目標環境に調節した後、前記大循環運転、前記個別循環運転、前記微調整運転のいずれかに移行する制御を採用することが望ましい(請求項12)。
【0046】
本発明は、恒温恒湿装置の装置立ち上げ時に推奨される動作を開示するものである。すなわち運転開始時は、中間環境調節部、最終環境調節部及び試験室内の環境は、いずれも装置を設置している室内環境と同一の環境となっている。この環境下で、最終環境調節部の冷却機能を起動させると、最終環境調節部の熱交換器等の温度が低い故、最終環境調節部に着霜する。
そこで本発明では、運転間始時に最終環境調節部の冷却機能を停止させ、少なくとも試験室を含む循環経路内を中間目標環境に調節して湿度調節が完了し、最終環境調節部を起動しても最終環境調節部に着霜しない環境を作っておいてから本格的な運転に移行させることとした。
【0047】
また試験室内の環境が、最終目標環境から一定以上離れている場合に大循環運転が行われ、試験室内の環境が、最終目標環境に近い場合に個別循環運転又は微調整運転が行われることが望ましい(請求項13)。
【0048】
一般に環境試験は、恒温恒湿装置を起動し、試験室内の環境が目標とする環境になってから行われる。そのため恒温恒湿装置は、起動から最終目標環境に達するまでの立ち上げ運転と、最終目標環境に達した後の定常運転とで運転環境や要求性能が異なる。
すなわち立ち上げ運転では、立ち上げ時間の短縮が重要な要求性能であり、短時間の内に試験室内の環境を最終目標環境にすることが大事である。
一方、定常運転においては、外乱が少なく環境が安定していることが要求される。
これに対して本発明では、立ち上げ運転時の様な、試験室内の環境が最終目標環境から一定条件以上離れている場合に大循環運転を行うので、短時間の内に試験室内の環境を最終目標環境にすることができる。
一方、定常運転時の様に、試験室内の環境が最終目標環境に近い場合には個別循環運転又は微調整運転を行い、比較的温度の高い中間環境調節部の空気が多量に導入されることを防ぎ、外乱を小さくしている。
【0049】
また第二温度調節手段は冷却用の第二熱交換器を有し、前記第二熱交換器の温度を常にその周辺空気の露点温度以上に保ちながら運転することが望ましい(請求項14)。
【0050】
本発明は、第二熱交換器の温度を周囲の露点温度に応じて変化させてゆくものである。本発明の恒温恒湿装置では、第二熱交換器の温度が常にその周辺空気の露点温度以上に保たれているから、第二熱交換器に結露することはなく、着霜することもない。ここで「第二熱交換器の温度を常にその周辺空気の露点温度以上に保つ」方策としては、第二熱交換器の表面温度を可変可能な構成とし、センサーで周辺空気の露点温度を検知し、この温度以上になる様に第二熱交換器の表面温度を制御することが考えられる。
【0051】
また個別循環運転において、前記中間環境調節部内に中間目標環境の空気が満たされると、第一空気調節手段の運転が停止される構成を採用してもよい(請求項15)。
【0052】
本発明では、中間環境調節部内に中間目標環境の空気が満たされると、第一空気調節手段の運転が停止されるので、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0053】
第一空気調節手段は、相変化する熱媒体を使用する冷却装置と、吸着式乾燥装置とを備え、前記冷却装置と吸着式乾燥装置の双方によって除湿が可能であることが望ましい(請求項16)。
【0054】
本発明は、中間目標温度を氷点下にせざるを得ない場合、より厳密には第一空気調節手段の熱交換器の温度を氷点下にせざるを得ない場合に推奨される構成である。
前記した様に、空気を氷点下に冷却すると霜を生じやすいが、これは、冷却部と接触する空気が露点に達して空気中の水分が凝縮・凍結することによる。相変化する熱媒体を使用する冷却装置のみで空気を冷却し、中間目標温度を氷点下にすると、冷却部に霜が付く可能性がある。
これに対して吸着式乾燥装置は、吸着材によって湿気を吸い取るものであるから、氷点下で使用しても結氷することはない。
一方、除湿能力を比較すると、吸着式乾燥装置の能力は、冷却装置に比べて劣る。本発明の恒温恒湿装置では、冷却装置と吸着式乾燥装置の双方によって除湿が可能であり、両者の欠点を補い、長所を引き出すものである。
すなわち本発明の恒温恒湿装置では、冷却装置と吸着式乾燥装置の双方によって除湿が可能であるから、両者を同時に使用すると、吸着式乾燥装置の機能によって中間環境調節部の湿度が下がり、中間環境調節部の露点自体が下がる。そのため冷却装置側に霜が付きにくい。
そのため早期に目標の湿度に達することができる。
また中間目標温度が相当に低い場合は、恒温恒湿装置の立ち上げ運転時に冷却装置と、吸着式乾燥装置と併用し、中間環境調節部の温度が低下すると、吸着式乾燥装置側の稼働比率を高め、最終的に吸着式乾燥装置だけで除湿を行うことが推奨される。
【0055】
また中間環境調節部は空気を溜める空気室を有し、第一空気調節手段は、前記空気室内の空気を中間目標環境に調節するものであり、空気室内の中間目標環境に調節された空気が最終環境調節部に導入されることが推奨される。
【0056】
本発明では、中間環境調節部が空気を溜める空気室を有しているので、試験室内の空気が戻ってきたり、あるいは新たに外気を導入しても、中間環境調節部の環境が急変することがなく、中間環境調節部から空気を導入する最終環境調節部の変化も小さい。そのため中間環境調節部の空気室が緩衝作用を発揮し、試験室内の環境を変化させない。
【0057】
本発明の他の実施形態として、上記の空気還流手段を設けず、試験室内から空気を排気する排気ラインを設けてもよい。
【0058】
本発明において、外気を取り込んで、まず中間環境調節部でその絶対湿度を調節し、次に最終環境調節部で絶対温度を調節するために、中間環境調節部は、外気を取り込む外気取込手段と接続されていることが好ましい。
【0059】
空気の絶対湿度を目標絶対湿度に調節するためには、通常は除湿を行えばよいので、第一空気調節手段は、中間環境調節部内の空気を除湿するための除湿手段を備えていることが好ましい。
【0060】
また、上記のように、中間環境調節部において、加湿や冷却や加熱を適宜行ってもよいので、第一空気調節手段は、さらに下記のうち少なくとも一つを備えていることが好ましい。
(1)空気を冷却するための冷却手段。
(2)空気を加熱するための加熱手段。
(3)空気を加湿するための加湿手段。
【0061】
一方、本発明の恒温恒湿装置は、最終環境調節部や試験室内で空気の加湿を行わないことが望ましい。すなわち試験室内は低温状態とされるので、試験室内の空気を加湿するための加湿手段を設けたとすれば、霜を生じやすいからである。
【0062】
また第一温度調節手段は冷却用の第一熱交換器を有し、前記第一熱交換器における熱交換部の温度が、氷点近傍よりも高いことが望ましい(請求項17)。
【0063】
ここで、「熱交換部の温度」とは、熱交換器が空気と接触する部分の温度である。この構成によれば、熱交換器の表面温度が、氷点近傍よりも高く保持されているため、熱交換器の表面において着霜が生じない。
【0064】
また第一温度調節手段は冷却用の第一熱交換器を有し、中間環境調節部内の空気の温度が氷点よりも高いことを条件の一つとして、前記第一熱交換器における熱交換部の温度を一時的に氷点下に低下させてもよい(請求項18)。
【0065】
本発明によると、第一熱交換器の運転時における温度が氷点下となるから、第一熱交換器に着霜する。しかしながら、第一熱交換器が氷点下に強制降下されるのは一時的であり、第一熱交換器の温度が周囲の温度に依存する状態や、氷点以上となる場合もある。そして本発明は、中間環境調節部内の空気の温度が氷点よりも高い場合に採用されるから、第一熱交換器の温度が周囲の温度に依存する状態や、氷点以上となると、周囲の温度と相まって第一熱交換器に付着した霜が融解する。
本発明では、第一熱交換器の温度が低いので、第一熱交換器の熱交換効率が高く、短時間で空気の温度を中間目標温度に至らしめることができる。
なお第一熱交換器の温度を一時的に氷点下としたり、氷点以上となる様に切り換える方策としては、冷却装置を間欠運転したり、後記するホットガスバイパス弁を開閉する方策が考えられる。
【0066】
さらに第二温度調節手段は冷却用の第二熱交換器を有し、前記第二熱交換器における熱交換部の温度が、最終目標環境における露点の近傍よりも高いことが望ましい(請求項19)。
【0067】
この構成によれば、熱交換器の表面温度は空気の露点より高く保持されているため、熱交換器の表面において着霜が生じない。
【0068】
また被試験物が設置される試験室を有する構成であって、中間環境調節部は、前記中間目標環境に比べて湿度が高い高湿度補正空気又は前記中間目標環境に比べて湿度が低い低湿度補正空気を調製することが可能であり、前記試験室内が最終目標環境に至った後、或いは前記試験室内が最終目標環境に近い環境に至った後には、前記高湿度補正空気又は前記低湿度補正空気を前記試験室内に導入して前記試験室内を最終目標環境に維持する構成も推奨される(請求項20)。
【0069】
本構成によると、試験室内の環境が、最終目標環境からずれた場合に、早期に最終目標環境に戻すことができる。
【0070】
第一温度調節手段及び第二温度調節手段は相変化によって冷却する冷却装置を採用することができる。すなわち熱交換器内で冷媒を蒸発させることによって熱交換器の表面温度を低下させる。
ここで第一温度調節手段においては、冷媒の蒸発温度を氷点近傍よりも高くすることが推奨される。
熱交換器の表面温度は冷媒の蒸発温度以上であるので、この構成によれば、熱交換器の表面温度を直接測定しなくても、当該表面温度は氷点より高く保持される。そのため、熱交換器の表面において着霜が生じない。
【0071】
また第二温度調節手段においては、冷媒の蒸発温度を最終目標環境における露点の近傍より高く保持されていることが好ましい。
熱交換器の表面温度は冷媒の蒸発温度以上であるので、この構成によれば、熱交換器の表面温度を直接測定しなくても、当該表面温度は最終目標環境における露点より高く保持される。そのため、熱交換器の表面において結露せず、着霜が生じない。
【0072】
本発明において、第一温度調節手段及び第二温度調節手段は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を有する冷凍回路からなり、さらに、圧縮機の吐出側と膨張弁の下流側の間をバイパスするホットガスバイパス及び当該ホットガスバイパスに備えられたホットガスバイパス弁を有することが好ましい。
【0073】
冷凍回路において、膨張弁を絞るほど冷却能力は小さくなり、一方で蒸発器における蒸発温度は低くなる。空気調節が定常状態に近づくと、冷却能力は小さくて済むようになるが、冷却能力を下げようとして膨張弁を絞ると蒸発温度が低くなりすぎて熱交換器(蒸発器)で着霜が起こるおそれがある。ホットガスバイパスラインを用いて熱交換器(蒸発器)の温度を上げれば、これを防止することができる。またホットガスバイパス弁を調節することによって熱交換器(蒸発器)の表面温度を調節することができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、空気の温度及び湿度を低温・高湿状態に高精度で安定して調節できる環境調節方法、恒温恒湿装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態を示す恒温恒湿装置の系統図であり、矢印は立ち上げ時における空気の流れを示す。
【図2】図1の恒温恒湿装置で採用する冷却装置の構成図である。
【図3】図1の恒温恒湿装置における各部位の温度・湿度を説明するグラフである。
【図4】図1の恒温恒湿装置の空気室内の環境変化を示すグラフである。
【図5】図1の恒温恒湿装置の系統図であり、矢印は定常運転時(個別循環運転)における空気の流れを示す。
【図6】図1の恒温恒湿装置の系統図であり、矢印は定常運転時(微調整運転)における空気の流れを示す。
【図7】本発明の第1実施形態を示す恒温恒湿装置の系統図であり、矢印は立ち上げ時の動作の変形例を示す。
【図8】本発明の第2実施形態を示す恒温恒湿装置の系統図であり、矢印は立ち上げ時における空気の流れを示す。
【図9】本発明の第3実施形態を示す恒温恒湿装置の系統図であり、矢印は立ち上げ時における空気の流れを示す。
【図10】図1の恒温恒湿装置の配管レイアウトを説明する構成図である。
【図11】第4実施形態の恒温恒湿装置の配管レイアウトを説明する構成図である。
【図12】第5実施形態の恒温恒湿装置の配管レイアウトを説明する構成図である。
【図13】第6実施形態の恒温恒湿装置の配管レイアウトを説明する構成図である。
【図14】第7実施形態の恒温恒湿装置の系統図であり、矢印は空気の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、具体的には環境試験装置であり、冬季の北海道の屋外環境の様な、低温、且つ高湿の環境を人工的に作りだす装置である。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、外観上、二つの恒温恒湿装置A,Bがダクト6,8によって接続された形状をしている。
すなわち装置A側は、中間目標環境を作る装置であり、中間環境調節部2が内蔵されており、空気室10と第一空気調節手段11を有している。
一方、装置B側は、最終目標環境を作ると共に被試験物を設置する空間を有する装置であり、最終環境調節部3及び試験室5によって構成されている。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、全体として中間環境調節部2と、最終環境調節部3及び試験室5によって構成されており、これらが流路接続されたものである。
恒温恒湿装置1を構成する中間環境調節部2、最終環境調節部3及び試験室5は、いずれも断熱材によって覆われていることが望ましい。なお本実施形態のレイアウトの様に、最終環境調節部3と試験室5とが一体的に構成された構造を採用する場合には、最終環境調節部3と試験室5との間の仕切りには、断熱材はいらない。
【0077】
装置A側の中間環境調節部2は、前記した様に空気室10を有し、第一空気調節手段11によって空気室10内の環境を中間目標環境に調節するものである。
すなわち第一空気調節手段11は、空気室10内の空気を循環させて空気室10内を中間目標環境の温度・湿度に調節する。
第一空気調節手段11は、一連の環境調整流路7を有し、その中に冷却用第一熱交換器12、加湿器13、第一ヒータ15及び送風機16が順に内蔵されている。前記した環境調整流路7は、空気導入口4及び空気排出口9を持ち、両者はいずれも空気室10内に開口している。また空気導入口4及び空気排出口9にはそれぞれ吸い込み口73、及び吹き出しレジスタ75が設けられている。空気導入口4及び空気排出口9には風量を調節するダンパーは無いが、当該部位にダンパーを設けてもよい。
本実施形態では、環境調整流路7、空気排出口9、空気室10及び空気導入口4によって中間環境調節部内循環流路が構成されている。
【0078】
冷却用第一熱交換器12は、冷却装置17の蒸発器である。冷却装置17は、公知の相変化する熱媒体を使用する冷却装置であり、図2の様に圧縮機18、凝縮器20、膨張弁21、蒸発器22が環状に配管接続されたものである。ただし本実施形態で採用する冷却装置17は、蒸発器22の表面に温度センサー23が設けられており、蒸発器22の表面が所定の温度となる様に調節される。
すなわち本実施形態で採用する冷却装置17では、温度センサー23の温度が膨張弁21にフィードバックされ、膨張弁21の開度を調節することによって蒸発器22の表面温度が調節される。
【0079】
加えて本実施形態で採用する冷却装置17では、公知のホットガスバイパス回路25が設けられており、ホットガスバイパス回路25を流れる冷媒ガスの量を調節することによっても蒸発器22の表面温度が調節される。
すなわち圧縮機18の吐出側と、蒸発器22の導入側との間にホットガスバイパス回路25が設けられており、高温状態の冷媒ガスの一部が蒸発器22に混入されている。そしてホットガスバイパス回路25には、ホットガスバイパス弁26が設けられており、ホットガスバイパス弁26の開度を調節することによって蒸発器22の表面温度が調節される。
【0080】
加湿器13は、第一空気調節手段11の一連の環境調整流路7内に水蒸気を供給するものである。
【0081】
第一ヒータ15は、例えば公知の電気ヒータである。また送風機16は例えば公知のシロッコファン又はターボファンである。
【0082】
また第一空気調節手段11は、前記した環境調整流路7以外に、除湿流路30を有している。除湿流路30は、空気導入口31が空気室10に開き、空気排出口32が、前記した環境調整流路7の最前段部に接続されている。また空気導入口31及び空気排出口32にはそれぞれダンパー35,36が設けられている。
【0083】
除湿流路30の中途には除湿装置37が設けられている。除湿装置37は、例えば公知のデシカント系ロータリー型の除湿装置であり、吸着式乾燥装置である。
除湿流路30の中途であって、除湿装置37の空気導入部までの間に、外気導入口40が設けられている。外気導入口40には開閉弁41が設けられており、必要に応じて除湿流路30に外気が導入される。
なお除湿装置37自身にも、外気導入口42があるが、この外気導入口42から導入される外気は、デシカント系ロータリー型除湿装置の中に内蔵された湿気吸着材を乾燥させる用途にのみ使用され、外気導入口42から導入された空気が除湿流路30に混入することはない。
【0084】
次に装置B側の構成について説明する。装置B側は、前記した様に最終環境調節部3及び試験室5によって構成されている。
最終環境調節部3は、前記した中間環境調節部2と同様に、一連の環境調整流路45を有した第二空気調節手段44を備え、環境調整流路45の中に送風機46と、第二ヒータ47と、冷却用第二熱交換器48とが順に内蔵されている。送風機46は、例えばシロッコファン又はターボファンであり、第二ヒータ47は例えば電気ヒータである。
また冷却用第二熱交換器48は、冷却装置50の蒸発器である。冷却装置50は、前記した中間環境調節部2で採用したものと同様、図2の様に圧縮機18、凝縮器20、膨張弁21、蒸発器22が環状に配管接続されたものであり、蒸発器22の表面温度を調節可能である。
【0085】
試験室5は、最終環境調節部3に面した部位を除いて断熱材で覆われた空間である。最終環境調節部3は試験室5の側方に配置されており、環境調整流路45の両端が試験室5に開口している。また最終環境調節部3の上流側と試験室5との間には、吸い込み口60が設けられている。最終環境調節部3の下流側と試験室5との間には、吹き出し口61が設けられている。
吸い込み口60及び吹き出し口61には風量を調節するダンパーは無いが、当該部位にダンパーを設けてもよい。
【0086】
次に、装置A,Bの接続関係について説明する。
装置Aと装置Bとは、二つのダクト6,8によって接続されている。また各ダクト6,8には、それぞれダンパー52,53が設けられている。
より詳細に説明すると、装置A(中間環境調節部2側)の空気室10と、装置B側の試験室5がダクト8で接続されている。
また装置A(中間環境調節部2側)の空気室10と、装置B側の最終環境調節部3の環境調整流路45の上流側がダクト6で接続されている。
【0087】
また装置A(中間環境調節部2側)の空気室10と、装置B側の試験室5には、それぞれ温度センサー62,63と、湿度センサー65,66が設けられており、これらの信号は、いずれも制御装置70に入力されている。
制御装置70は、CPUを内蔵するものであり、演算部と、制御部の機能を果たす。すなわち演算部は、入力装置71から入力された情報に基づいて、最終目標環境における絶対湿度を演算する絶対湿度演算機能、最終目標環境における露点を演算する露点演算機能を有している。
また制御部は、各冷却装置やヒータ等に所定の信号を送り、空気室10内の環境を中間目標環境に維持し、試験室5内の環境を最終目標環境に維持する。
【0088】
つぎに本実施形態の恒温恒湿装置1の機能について説明する。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、冬季の北海道の屋外環境の様な、低温、且つ高湿の環境を人工的に作り出して部品等の性能を試験することを目的として開発されたものであり、入力装置71に所望の低温、且つ高湿の環境を数値入力する。例えば、温度が摂氏マイナス10度であり、相対湿度が80パーセントというような環境を数値で入力する。この環境が、最終目標環境である。
【0089】
制御装置70は、入力装置71からの入力を受けて、最終目標環境における絶対湿度及び露点を演算する。また制御装置70は、中間目標環境を決定する。
中間目標環境は、温度が氷点以上の温度であり、その絶対湿度が、最終目標環境における絶対湿度と同一の環境である。
中間目標環境における温度(中間目標温度)は、最終目標環境における温度(最終目標温度)に応じて変化してもよいが、例えば摂氏10度という様な一定の温度であってもよい。もちろん、なるべく装置全体の電力消費が、小さくなるように考慮することが望ましい。
前記した様に最終目標環境が、摂氏マイナス10度であり、相対湿度が80パーセントであって、中間目標温度を摂氏10度とする場合、中間目標湿度(相対湿度)は、18.7パーセントである。また最終目標環境における露点は、摂氏マイナス12.8度である。
【0090】
本実施形態では、空気室10内の環境が、上記した中間目標環境となる様に第一空気調節手段11を制御する。すなわち空気室10内の環境が、上記した中間目標環境となる様に冷却装置17、加湿器13、第一ヒータ15、除湿装置37、ダンパー35,36,開閉弁41を制御する。また必要に応じて外気が導入される。
湿度は除湿装置37だけでなく、冷却装置17によっても低下される。ただし、冷却装置17の蒸発器たる冷却用第一熱交換器12の表面温度は、氷点以上に維持される。
また本実施形態では、除湿装置37と冷却装置17を併用して湿度を低下させるので、冷却用第一熱交換器12に霜が付きにくい。
すなわち両者を同時に使用すると、除湿装置37の機能によって空気室10内の湿度が下がり、空気室10内の空気の露点自体が下がる。そのため冷却装置側に霜が付きにくい。そのため除湿能力に優れた冷却装置17の稼働率を上げることができ、早期に目標の湿度に達することができる。
【0091】
また試験室5内の環境が、上記した最終目標環境となる様に第二空気調節手段44を制御する。すなわち試験室5内の環境が、上記した最終目標環境となる様に第二ヒータ47と、冷却装置50を制御する。ただし冷却装置50の蒸発器たる冷却用第二熱交換器48の表面温度は、最終目標環境における露点以上に維持される。
より望ましい方策としては、試験室5内の現実の環境から現実の露点を演算し、この露点以上となる様に冷却用第二熱交換器48の表面温度を可変制御する方策も採用可能である。より具体的には、試験室5に設けられた温度センサー63と、湿度センサー66によって試験室5内の現実の環境から現実の露点を演算し、冷却用第二熱交換器48の表面温度を演算された露点よりも僅かに高い温度に調節する。冷却用第二熱交換器48の表面温度は、常に現実の露点温度よりも高い温度であるから、冷却用第二熱交換器48の表面は結露せず、霜が生じない。
【0092】
本実施形態の恒温恒湿装置1では、立ち上げ時においては、図1に矢印で示す様に装置A,B間を空気が循環する。
すなわち装置A側においては、環境調整流路7と空気室10との間で空気が循環し、空気室10内の環境が中間目標環境に調節される。また立ち上げ時においては、装置A,B間のダンパー52,53が開かれる。また装置B側においては、最終環境調節部3の上流側と試験室5との間の吸い込み口60にダンパーを備えた構成を採用する場合には、当該ダンパーを閉じる(本実施形態では、吸い込み口60はダンパーを持たないから吸い込み口60は開放されたままの状態である。)。
その結果、空気室10の空気が、装置B側に入り、最終環境調節部3の環境調整流路45を経由して試験室5に流れる。すなわち装置B側に入った空気は、最終環境調節部3の環境調整流路45に入り、温度が低下されて試験室5に流れる。さらに試験室5内の空気が装置A側の空気室10に戻る。
すなわち立ち上げ時においては、装置Aと、第二空気調節手段44と、試験室5の間に空気を循環させる大循環運転が実施される。
【0093】
また定常状態になると、図5に矢印で示す様に空気は、装置A、装置B内で個別に循環する。
すなわち装置A内においては、立ち上げ時と同様に、環境調整流路7と空気室10との間で空気が循環し、空気室10内の環境が中間目標環境に調節される。
一方、定常状態になると、装置A,B間の流路が遮断され、装置B内では単独で空気が循環する。具体的には、定常状態になると、装置A,B間のダンパー52,53が閉じられ、最終環境調節部3の上流側と試験室5との間の吸い込み口60は常時開放されている。
そのため、送風機46によって試験室5内の空気が吸引され、最終環境調節部3の環境調整流路45に強制送風される。その結果、装置B内で、空気が循環する。
この様に定常状態になると、中間環境調節部内循環流路内の空気が独立して循環し、最終環境調節部3と試験室5との間の空気も独立して循環する個別循環運転が実行される。
【0094】
そして所定の試験中に、被試験物からの発熱等によって試験室5内の温度が上昇すると、最終環境調節部3内の第二空気調節手段44の冷却用第二熱交換器48によって試験室5内の空気を冷却する。
【0095】
前記した大循環運転と、個別循環運転の切替えは、試験室5内の現実の環境と、最終目標環境との差によって行うことが望ましく、試験室5内の現実の環境と、最終目標環境とが一定条件以上離れている場合に大循環運転が行われ、試験室5内の環境が、最終目標環境に近い場合に個別循環運転を行う。
【0096】
また試験室5内の湿度に変動が生じると、装置A,B間のダンパー52,53が開かれ、装置Aの空気室10から空気が導入される(微調整運転)。ただしこの空気は、必ず最終環境調節部3の環境調整流路45を経由して温度調節されてから試験室5に流れる。そのため空気室10から空気が導入されることに起因する試験室5内の温度変化は小さい。
【0097】
例えば被試験物からの蒸気発生等によって、試験室5内の湿度が上昇した場合に、前記した微調整運転を行う。
微調整運転は、個別循環運転を実行している状態で、中間環境調節部2内の空気を、制御装置70の指示に応じて最終環境調節部3に供給する運転である。
具体的には、図5の様な個別循環運転を実行している状態で、装置Aと装置Bとを繋ぐダンパー52,53を少しだけ開く。微調整運転時において、ダンパー52,53から出入りする空気の総量は、最終環境調節部3内の第二空気調節手段44を通過する空気の総量よりも少ない。また中間環境調節部2内から空気を導入することによって、試験室5内で余剰となった空気は、ダンパー53を経て装置A側の空気室10に戻る。
【0098】
ダンパー52,53を開いた結果、図6に示すように、装置A内の循環と、装置B内の循環の他、装置A,Bを跨ぐ空気循環が生じ、中間環境調節部2側から湿度が調節された空気が、装置B側に混入される。装置B側に混入された空気は、最終環境調節部3の環境調整流路45で温度調節されて、試験室5に流れる。
そのため試験室5内の湿度が低下し、試験室5内の湿度が最終目標湿度に戻る。
なお被試験物が水蒸気を吸収する等の理由によって、試験室5内の湿度が降下した場合も同様に微調整運転が行われる。
【0099】
次に、本実施形態の恒温恒湿装置1内における環境の変化の一例について図1,3を参照しつつ説明する。なお、図3及び図4に示すグラフは、説明を容易にするために、空気の状態を単純モデル化したものであり、実際の空気の状態変化はより複雑である。従って各部位の空気が常に図の様な状態変化をする訳ではない。また温度や湿度の設定や制御方法の相違によっても、空気の状態変化は変わる。
【0100】
本実施形態の恒温恒湿装置1では、送風機16を起動することによって、環境調整流路7内が負圧傾向となり、第一空気調節手段11の環境調整流路7に空気室10の空気が導入される。すなわち空気室10の空気は、空気導入口4から直接、又は除湿流路30を経由して環境調整流路7の導入部bに入り、冷却用第一熱交換器12を経て領域cに至り、加湿器13を越えて領域dに至り、第一ヒータ15を経て領域eに至る。
【0101】
例えば恒温恒湿装置1を起動した当初における空気室10内の環境が図3の様な常温且つ中間程度の湿度であった場合、除湿流路30の両端に設けられたダンパー35,36が開かれ、空気室10(a領域)内の空気が除湿流路30を経由して環境調整流路7の導入部bに導入される。除湿流路30においては、図3の様に絶対湿度だけが低下される。
除湿流路30は、単に空気中の湿度を低下させるだけであるから、環境調整流路7の導入部bの温度は、図3の様に恒温恒湿装置1を起動した当初と変わらず、湿度だけが低い。
【0102】
この状態で、冷却用第一熱交換器12を経て領域cに至る。冷却用第一熱交換器12では空気の温度だけが低下されることとなる。なお冷却用第一熱交換器12の表面温度は、摂氏0度以上であるから、冷却用第一熱交換器12に霜が付くことはない。図3では、空気の温度だけが低下することを想定しているが、冷却用第一熱交換器12の表面温度が露点以下であれば、絶対湿度も低下することとなる。
【0103】
続いて加湿器13で湿度(温度も変化する)が微調整される(領域d)。加湿器13は、熱源を持つので、温度も幾分上昇することとなる。そして第一ヒータ15で温度だけが微調整されて領域eに至る。領域eの空気は上記した経過を経て中間目標環境に調整されている。すなわち温度が氷点以上の温度であり、その絶対湿度が、最終目標環境における絶対湿度と同一の状態に調整される。
【0104】
そして空気は、ダクト6を経て、装置B側に入り、最終環境調節部3の環境調整流路45に入る。すなわち送風機46を回転することにより、ダクト6から空気が吸引され、環境調整流路45に送られる。最終環境調節部3においては、第二ヒータ47で空気の温度が微調整され、後段の冷却用第二熱交換器48によって、空気の温度が最終目標温度に低下される。
ここで冷却用第二熱交換器48の表面温度は、最終目標環境における露点以上であるから、冷却用第二熱交換器48に結露することはなく、最終環境調節部3を流れる空気の絶対湿度は変化しない。しかしながら、空気の温度が低下して行くので、相対湿度は上昇傾向となり、最終目標環境に調節された空気が、試験室5に流れ込む。
【0105】
また送風機46の回転によって試験室5内が正圧傾向となるので、空気は前記した装置A側に吸い込まれ、装置A,B間を空気が循環する。
【0106】
試験室5内が所定の環境になったら、ダクト6,8のダンパー52,53を閉じ傾向とする。また試験室5と最終環境調節部3の間に設けられた吸い込み口60は常時開放されている。その結果、試験室5内の空気が、最終環境調節部3を経由して循環する。
【0107】
以上、説明した温度変化は、除湿装置37による除湿が、冷却装置17による除湿より先行する場合を説明したものである。これに対して冷却装置17による除湿が、除湿装置37による除湿より先行する場合の空気室10内の環境変化は、概ね図4の様になると予想される。
すなわち恒温恒湿装置1の立ち上げ時の環境Aから、第一熱交換器12で冷却され、空気は温度が露点Bに向かって低下し、遂には空気は露点を越えて温度低下され、第一熱交換器12の表面で結露することによって除湿される(B〜C)。この時の温度及び絶対湿度は、図4の様に飽和水蒸気曲線に沿って変化する。ただし、第一熱交換器12の表面温度は、0度以上であるから、第一熱交換器12に霜が付くことはない。
【0108】
そして除湿流路30の除湿装置37によってさらに除湿される(C〜D)。その後、加湿器13及び第一ヒータ15によって温度と湿度が微調整され(D〜E〜F)、空気室10内の環境が、中間目標環境となる。
すなわち前記した様に、加湿器13で湿度が微調整される(D〜E)が、加湿器13は、熱源を持つので、温度も幾分上昇することとなる。そして第一ヒータ15で温度だけが微調整される(E〜F)。
【0109】
中間目標環境に維持された空気は、前記した様に最終環境調節部3に導入されて最終目標環境に近い状態となって試験室5に吹き出される。そして試験室5内の空気の一部が、最終環境調節部3を経由して循環し、次第に試験室5内の環境が、最終目標環境に近づく。
【0110】
なお詳細な説明は省略するが、除湿装置37による除湿と、冷却装置17による除湿とが併行して行われる場合もある。
【0111】
以上説明した実施形態では、恒温恒湿装置1の立ち上げ時に図1に矢印で示す様に装置A,B間で空気を循環させ、この時に、最終環境調節部3の第二空気調節手段44の冷却用第二熱交換器48を運転した。より具体的には、冷却用第二熱交換器48が属する冷却装置50を運転し、冷却用第二熱交換器48に冷媒を通過させて冷却用第二熱交換器48の表面温度を低下させた。
【0112】
しかしながら、室内環境等の状況によっては、恒温恒湿装置1の立ち上げ時に、第二空気調節手段44の冷却用第二熱交換器48を停止するか、冷却用第二熱交換器48の表面温度を通常よりも高めにして運転することが望ましい場合もある。
図7は、恒温恒湿装置1の立ち上げ時の動作の変形例を示し、第二空気調節手段44を停止した状態で、装置Aと、第二空気調節手段44と、試験室5の間に空気を循環させる大循環運転を実施している。
【0113】
すなわち前述した図1の立ち上げ方法によると、大循環運転を実施し、この際に、第二空気調節手段44の冷却用第二熱交換器48を運転した。先の実施形態では、この時の冷却用第二熱交換器48の表面温度は、前記した様に最終目標環境における露点を基準として調節されている。より具体的には、冷却用第二熱交換器48の表面温度は、最終目標環境における露点以上に維持されているが、この温度は、一般に氷点下であり、且つ恒温恒湿装置1が設置された室内環境の露点よりも低い。
そのため装置の立ち上げ時に、中間環境調節部2側の除湿が十分に行われていなければ、空気が第二空気調節手段44に入って冷却用第二熱交換器48に触れた段階で、結露し、冷却用第二熱交換器48に着霜する。
そのため夏期の様に室内環境が高温多湿である場合に恒温恒湿装置1の運転を開始する場合には、第二空気調節手段44の冷却用第二熱交換器48を停止した状態で、大循環運転を行い、中間環境調節部2だけを運転して除湿し、少なくとも試験室5を含む循環経路内を中間目標環境に調節した後に、大循環運転やその他の運転に移行することが望ましい。
【0114】
また恒温恒湿装置1の立ち上げ時に、冷却用第二熱交換器48の表面温度を通常よりも高めにして運転しても同様の作用効果が期待できる。
【0115】
また大循環運転に先立って、空気室10内の環境を中間目標環境に調節し、その後に大循環運転に移行しても同様の作用効果が期待できる。
すなわち前記した実施形態では、いずれも恒温恒湿装置1の立ち上げ時に、装置A,B間で空気を循環させているが、先に装置A側の機器だけを運転して装置A内だけで空気を循環させて空気室10内の環境を中間目標環境に調節し、その後にダンパー52,53を開き、さらに装置B側の機器を運転開始し、装置A,Bを跨ぐ空気循環を生じさせてもよい。
【0116】
また前記した様に、試験室5内の現実の環境から現実の露点を演算し、この露点以上となる様に冷却用第二熱交換器48の表面温度を可変制御する方策を採用する場合も、同様の作用効果が期待できる。
より望ましくは、冷却用第二熱交換器48の表面温度を常にその周辺空気の露点温度以上に保ちながら運転することが推奨される。
【0117】
例えば図8の様に、最終環境調節部3内の冷却用第二熱交換器48の近傍に、温度センサー81と、湿度センサー82を設け、制御装置70で冷却用第二熱交換器48近傍の露点温度を演算する。そして冷却用第二熱交換器48の表面温度が常にこの露点温度よりも僅かに高い温度となる様に膨張弁21を制御する。
【0118】
先の実施形態では、装置Bの吸い込み口60及び吹き出し口61には風量を調節するダンパーが無く、吸い込み口60及び吹き出し口61は開きっぱなしの状態であるが、図9に示すように、吸い込み口60にダンパー80を設けてもよい。吸い込み口60にダンパー80を設けることにより、大循環運転の際に、試験室5から、第二空気調節手段44への空気の導入を阻止することができる。そのため装置の立ち上げ時に、試験室5内の常温常湿の空気が、第二空気調節手段44側に回り込むことが阻止され、冷却用第二熱交換器48への着霜が減少する。
【0119】
また上述した実施形態では、冷却用第一熱交換器12に対する着霜を阻止するために、冷却用第一熱交換器12の表面温度を常に氷点以上に維持したが、中間目標温度が高く、これが氷点よりも相当に高い場合の様に、中間環境調節部2内の空気の温度が氷点よりも相当に高く、冷却用第一熱交換器12を通過する空気の温度が高い場合には、冷却用第一熱交換器12の表面温度を一時的に氷点下に低下させてもよい。
【0120】
例えば、冷却用第一熱交換器12が属する冷却装置17の圧縮機18を間欠運転したり、オンオフ運転或いはホットガスバイパス弁26の開度を絞るか閉止することによって蒸発器22の表面温度を調節し、冷却用第一熱交換器12の表面温度を一時的に氷点下に低下させる。
その結果、冷却用第一熱交換器12の表面に着霜することとなるが、冷却装置17の圧縮機18を停止したり、ホットガスバイパス弁26を開いて冷却用第一熱交換器12の温度を上昇させ、冷却用第一熱交換器12の温度を氷点以上であって、中間目標温度よりも低い温度に戻すことにより、早期に霜が融ける。すなわち中間環境調節部2内の空気の温度が氷点よりも相当に高いから、中間環境調節部2内の空気から熱を受けて冷却用第一熱交換器12の霜が融解する。
これを繰り返すことによって、装置A内の環境を早期に中間目標環境に近づけることができる。
【0121】
上記した実施形態では、試験室5内の湿度に変動が生じた場合に装置A,B間のダンパー52,53が開いて、装置Aの空気室10から空気を導入したが、試験室5内の環境をP.I.D制御によって調節する場合には、装置A,B間のダンパー52,53を常時わずかに開くこととなる。
【0122】
また前記した実施形態では、恒温恒湿装置1が定常状態になった後に微調整運転が行われ、微調整運転の際に装置B側に導入される空気は、中間目標環境に調製された空気である。すなわち微調整運転の際に装置B側に導入される空気は、その絶対湿度が、最終目標環境における絶対湿度と同一である。
上記した実施形態は、試験室5内の空気を湿度調整された空気室10の空気で置換して試験室5内の環境を最終目標環境に維持せんとするものであるが、試験室5内の環境変化に逆行する性質をもった空気を試験室5側に導入して試験室5内の湿度のずれを修正してもよい。
【0123】
本構成を採用する場合には、試験室5内が最終目標環境に至った後、或いは試験室5内が最終目標環境に近い環境に至った後には、装置A側の設定を自動変更し、中間環境調節部2で、中間目標環境に比べて湿度が高い高湿度補正空気又は湿度が低い低湿度補正空気を調製し、空気室10に溜置く。
なお高湿度補正空気を溜めるか、低湿度補正空気を溜めるかは、試験の内容に応じて変更する。例えば、被試験物から水蒸気が発生し、試験室5内の湿度が上昇傾向となる場合には中間環境調節部2で低湿度補正空気を調製する。
一方、被試験物が吸湿性を有するものであって、試験室5内の湿度が下降傾向となる場合には中間環境調節部2で高湿度補正空気を調製する。
そして所定の試験中に、試験室5内の環境が、最終目標環境から外れると、微調整運転を実行して、装置B側に高湿度補正空気又は低湿度補正空気を導入する。こうして試験室5内の環境を、最終目標環境に維持することができる。
【0124】
上記した実施形態では、運転状況に応じて、大循環運転が行われないタイミングがあるが、常に大循環を行っていてもよい。また定常運転時にも大循環だけを行い、試験室5から第二空気調節手段44(最終環境調節部3)側への空気の流れを阻止してもよい。なお前記した微調整運転は、大循環運転が行われている最中に試験室5から第二空気調節手段44(最終環境調節部3)側への循環も行われている実施例であると言える。
また中間環境調節部2内の各機器(冷却用第一熱交換器12、加湿器13、第一ヒータ15及び送風機16)は、常時所定の運転を行っていてもよいが、空気室10を含む中間環境調節部内に中間目標環境の空気が満たされると、省エネルギーのために、各機器の運転を停止してもよい。
【0125】
以上説明した実施形態の恒温恒湿装置1の配管レイアウトを概略表示すると、図10の通りであり、第一空気調節手段11と第二空気調節手段44の間が一方通行の流路80で繋がり、試験室5と第一空気調節手段11の間も一方通行の流路81で繋がり、第二空気調節手段44と試験室5との間が双方向の流路83,84で繋がっている。
【0126】
しかしながら本発明は、この配管構成に限定されるものではなく、例えば図11に示すように、第一空気調節手段11と試験室5との間、及び試験室5と第二空気調節手段44との間を共に双方向の流路86,87,88,89で繋いでもよい。
【0127】
また図12に示すように、第一空気調節手段11と第二空気調節手段44との間を一方通行の流路90で繋ぎ、第二空気調節手段44と試験室5との間も一方通行の流路91で繋ぎ、試験室5と第一空気調節手段11も一方通行の流路92で繋いだ単純な環状構造とすることもできる。
【0128】
さらには図13に示すように、第一空気調節手段11と第二空気調節手段44との間を双方向の流路93,94で繋ぎ、第二空気調節手段44と試験室5との間も双方向の流路95,96で繋いだ構造とすることもできる。
【0129】
また上記した実施形態では、いずれも試験室5側から戻る空気を、装置A内の空気室10に戻す構成を採用しているが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、図14に示すように、試験室5側から戻る空気を、直接的に第一空気調節手段11に戻してもよい。
また上記した実施形態では、いずれも試験室5側の空気と空気室10側の空気を循環させているが、空気室10内に中間環境の空気を溜め、これを一方的に装置B側に供給するものであってもよい。
例えば空気室10内をゴム風船や蛇腹の様な変形可能な素材で構成し、第一空気調節手段11で中間環境に調節された空気を溜める。そしてこの空気を装置B側に供給する。言い換えれば、中間環境に調節された空気を装置B側で消費する。
なおこの構成を採用する場合には、空気室10内に空気が残存している間は、第一空気調節手段11の運転を停止したり、弱運転状態とすることもできる。
【0130】
以上説明した恒温恒湿装置1によれば、北海道の冬の屋外環境の様な、低温、且つ高湿の環境を人工的に作りだすことができ、且つその環境を安定して持続させることができる。そのため自然環境に近い条件で部品等の性能試験を行うことができる。
【符号の説明】
【0131】
1 恒温恒湿装置
2 中間環境調節部
3 最終環境調節部
5 試験室
6 ダクト
7 環境調整流路
8 ダクト
10 空気室
11 第一空気調節手段
12 冷却用第一熱交換器
13 加湿器
15 第一ヒータ
16 送風機
17 冷却装置
25 ホットガスバイパス回路
30 除湿流路
35 ダンパー
36 ダンパー
37 乾燥装置(吸着式乾燥装置)
44 第二空気調節手段
45 環境調整流路
46 送風機
47 第二ヒータ
48 冷却用第二熱交換器
50 冷却装置
52 ダンパー
53 ダンパー
60 吸い込み口
61 吹き出し口
62 温度センサー
63 温度センサー
65 湿度センサー
66 湿度センサー
70 制御装置
71 入力装置
80 ダンパー
81 温度センサー
82 湿度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の温度・湿度を最終目標環境における最終目標温度及び最終目標湿度に調節する環境調節方法であって、前記最終目標温度が常温以下である環境調節方法において、
空気の温度・湿度を一旦中間目標環境に調節し、前記中間目標環境における中間目標温度は最終目標温度よりも高い温度であり、前記中間目標環境における絶対湿度は前記最終目標環境における絶対湿度と同一の絶対湿度であり、空気の温度・湿度を中間目標環境に調節した後に空気の温度を最終目標温度に低下させることを特徴とする環境調節方法。
【請求項2】
最終目標環境における露点温度が氷点下であり、中間目標温度が氷点以上であることを特徴とする請求項1に記載の環境調節方法。
【請求項3】
第一熱交換器によって空気の温度を中間目標温度に調節し、第二熱交換器によって空気の温度を中間目標温度から最終目標温度に調節するものであり、前記第一熱交換器における熱交換部の温度が、氷点近傍よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の環境調節方法。
【請求項4】
第一熱交換器によって空気の温度を中間目標温度に調節し、第二熱交換器によって空気の温度を中間目標温度から最終目標温度に調節するものであり、中間目標温度が氷点以上である場合に、第一熱交換器の温度を一時的に氷点下とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境調節方法。
【請求項5】
第一熱交換器によって空気の温度を中間目標温度に調節し、第二熱交換器によって空気の温度を中間目標温度から最終目標温度に調節するものであり、前記第二熱交換器における熱交換部の温度が、最終目標環境における露点の近傍よりも高いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境調節方法。
【請求項6】
所定の空間が最終目標環境に至った後、或いは前記所定の空間が最終目標環境に近い環境に至った後には、前記中間目標環境に比べて湿度が高い高湿度補正空気又は前記中間目標環境に比べて湿度が低い低湿度補正空気を前記所定の空間に導入して所定の空間内を最終目標環境に維持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境調節方法。
【請求項7】
内部の環境を最終目標温度及び最終目標湿度の最終目標環境に調節する恒温恒湿装置であって、中間環境調節部と、最終環境調節部を有し、
中間環境調節部は、空気の温度・湿度を一旦中間目標環境に調節する第一空気調節手段を有し、前記中間目標環境における中間目標温度は最終目標温度よりも高い温度であり、前記中間目標環境における絶対湿度は前記最終目標環境における絶対湿度と同一の絶対湿度であり、
前記最終環境調節部は前記中間環境調節部の後段側に配置され、空気の絶対湿度を実質的に変化させないで空気の温度を最終目標温度に調節する第二空気調節手段を有することを特徴とする恒温恒湿装置。
【請求項8】
第一空気調節手段は、第一温度調節手段と湿度調節手段とを備え、第二空気調節手段は、第二温度調節手段を備え、
最終目標環境を入力する入力手段と、最終目標環境における絶対湿度又は中間目標温度における前記絶対湿度に対応する相対湿度を演算する湿度演算手段と、制御手段とを備え、
前記制御手段は湿度演算手段で演算された絶対湿度または相対湿度と一致する様に湿度調節手段を制御し、中間環境調節部の温度が中間目標温度となる様に第一温度調節手段を制御し、最終環境調節部の温度が最終目標温度となる様に第二温度調節手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の恒温恒湿装置。
【請求項9】
被試験物が設置される試験室を有し、中間環境調節部と最終環境調節部と試験室とが順に環状に流路接続されており、中間環境調節部で調節された中間目標環境の空気が最終環境調節部に送られて最終目標に調節され、最終目標環境に調節された空気が試験室に導入され、さらに試験室内の空気が中間環境調節部に導入されて前記一連の流路を循環する大循環運転をおこなうことを特徴とする請求項7または8に記載の恒温恒湿装置。
【請求項10】
前記試験室と最終環境調節部の間で空気が循環されて前記試験室内が最終目標環境に調節される一方、前記中間環境調節部の内部で空気が循環されて中間環境調節部が中間目標環境に調節される個別循環運転をおこなうことが可能なことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項11】
前記個別循環運転状態の中間環境調節部内の空気を、前記制御手段の指示に応じて前記最終環境調節部に供給する微調整運転をおこなうことを特徴とする請求項10に記載の恒温恒湿装置。
【請求項12】
運転間始時に最終環境調節部の冷却機能を停止させ、中間環境調節部を運転した状態で、少なくとも試験室を含む循環経路内を中間目標環境に調節した後、前記大循環運転、前記個別循環運転、前記微調整運転のいずれかに移行することを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項13】
試験室内の環境が、最終目標環境から一定以上離れている場合に大循環運転が行われ、試験室内の環境が、最終目標環境に近い場合に個別循環運転又は微調整運転が行われることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項14】
第二温度調節手段は冷却用の第二熱交換器を有し、前記第二熱交換器の温度を常にその周辺空気の露点温度以上に保ちながら運転することを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項15】
前記個別循環運転において、前記中間環境調節部内に中間目標環境の空気が満たされると、第一空気調節手段の運転が停止されることを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項16】
第一空気調節手段は、相変化する熱媒体を使用する冷却装置と、吸着式乾燥装置とを備え、前記冷却装置と吸着式乾燥装置の双方によって除湿が可能であることを特徴とする請求項7乃至15のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項17】
第一温度調節手段は冷却用の第一熱交換器を有し、前記第一熱交換器における熱交換部の温度が、氷点近傍よりも高いことを特徴とする請求項8乃至16のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項18】
第一温度調節手段は冷却用の第一熱交換器を有し、中間環境調節部内の空気の温度が氷点よりも高いことを条件の一つとして、前記第一熱交換器における熱交換部の温度を一時的に氷点下に低下させることを特徴とする請求項8乃至17のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項19】
第二温度調節手段は冷却用の第二熱交換器を有し、前記第二熱交換器における熱交換部の温度が、最終目標環境における露点の近傍よりも高いことを特徴とする請求項8乃至18のいずれかに記載の恒温恒湿装置。
【請求項20】
被試験物が設置される試験室を有する構成であって、中間環境調節部は、前記中間目標環境に比べて湿度が高い高湿度補正空気又は前記中間目標環境に比べて湿度が低い低湿度補正空気を調製することが可能であり、前記試験室内が最終目標環境に至った後、或いは前記試験室内が最終目標環境に近い環境に至った後には、前記高湿度補正空気又は前記低湿度補正空気を前記試験室内に導入して前記試験室内を最終目標環境に維持することを特徴とする請求項7乃至19のいずれかに記載の恒温恒湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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