説明

環状プロサポシン由来のペプチドおよびその使用

【課題】サポシンCの活性領域に由来する神経栄養性鎮痛ペプチドを提供する。
【解決手段】XNNXTX(配列番号:4)というコンセンサス配列(ここにXは疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を持つ、プロサポシンの活性領域に由来する環状神経栄養性鎮痛ペプチド。セプタムで密封されたバイアルに入った、徐放性物質と共に製剤化された、凍結乾燥形の、リポソーム形の、局部投与に適した形の、または単位剤形の、上記ペプチドを含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経栄養性鎮痛ペプチドに関する。より具体的には、本発明は、サポシンCの活性領域に由来する、神経栄養効果および鎮痛効果を有する環状ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
神経栄養因子はニューロン細胞集団の生存、標的神経支配および/または機能に影響を及ぼす能力を持つタンパク質またはペプチドである(Barde、Neuron 2:1525−1534、1989)。神経栄養因子の有効性はインビトロでもインビボでも詳細に記録されている。例えば神経成長因子(NGF)は前脳コリン作動性、末梢および感覚ニューロンの栄養因子として作用し(Heftiら、Neurobiol.Aging 10:515−533、1989)、末梢神経への自然発生的損傷および物理的外傷による損傷を逆転させることができる(Richら、J.Neurocytol.16:261−268、1987)。脳由来神経栄養因子(BDNF)は末梢感覚ニューロン、黒質のドーパミン作動性ニューロン、中枢コリン作動性ニューロンおよび網膜神経節の栄養因子である(Hendersonら、Restor.Neurol.Neurosci.5:15−28、1993)。BDNFは、インビトロとインビボの両方で自然発生的細胞死を防止することが示されている(Hoferら、Nature331:262−262、1988)。毛様体神経栄養因子(CNTF)はインビトロでヒヨコ胚毛様体神経節の生存を促進し、培養された交感感覚および脊髄運動ニューロンの生存を支える(Ipら、J.Physiol.Paris85:122−130、1991)。脱髄は多くの中枢神経系(CNS)障害に共通する欠損であり、なかでも多発性硬化症(MS)は最も一般的である。完全な能力障害につながりうる慢性障害であるMSは、軸索はほとんど無傷のままで、ミエリン鞘への損傷を特徴とする。現在のところMSの効果的な治療法はない。脱髄が関与する他の中枢神経系障害には、急性散在性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、急性出血性白質萎縮症、進行性多巣性白質脳炎、異染性白質萎縮症および副腎白質萎縮症がある。また末梢神経系(PNS)も、例えばギラン・バレー症候群で起こるように、脱髄を起こしうる(Pathologic Basis of Disease 、Robbinsら編、W.B.Saunders、フィラデルフィア、1979、1578〜1582頁)。
【0003】
糖尿病または化学療法によって起こるような末梢神経損傷および末梢神経障害は、最も一般的な末梢神経系障害を構成している。末梢神経系障害の現行の治療法は対症治療に過ぎず、病因を治療するものではない。
【0004】
神経障害性疼痛は、神経の圧迫または挫傷および脊髄への外傷性損傷などの神経損傷に起因し、しばしば持続性または慢性である。ほとんどの外傷性神経損傷は神経腫の形成も引き起こし、そこでは異所性神経再生の結果として疼痛が起こる。また、腫瘍増殖が隣接する神経、脳または脊髄を圧迫すると、癌関連神経障害性疼痛が起こる。神経障害性疼痛は糖尿病およびアルコール依存症などの疾患とも関係する。ほとんどの場合、神経障害性疼痛は現在の医薬には抵抗性である。これらの医薬には重篤な副作用もある。米国特許出願第08/611,307号には、個体にプロサポシンの活性断片の有効量を投与することによって神経障害性疼痛を軽減または防止する方法が記載されている。
【0005】
プロサポシンは、リソソーム加水分解酵素によるスフィンゴ糖脂質の加水分解に必要な一群の4種類の小さい耐熱性糖タンパク質の前駆体である(Kishimotoら、J.Lipid Res.33:1255−1267、1992)。プロサポシンはリソソームでタンパク質分解によってプロセシングされて、サポシンA、B、CおよびDを生成する(O’Brienら、FASEB J.5:301−308、1991)。O’Brienら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:9593−9596、1994)、米国特許第5,571,787号およびPCT出願公開WO95/03821は、プロサポシン、サポシンCが神経突起伸長を刺激し、髄鞘形成の増加を促進することを開示している。また、米国特許第5,571,787号、第5,696,080号、第5,714,459号およびPCT出願公開WO95/03821には、ヒトサポシンCのアミノ酸8〜29からなる22マーペプチド(CEFLVKEVTKLIDNNKTEKEIL;配列番号1)が神経突起伸長を刺激することが開示されている。またこれらの文献には、サポシンCの上記活性22マーに含まれる18マーペプチド(YKEVTKLIDNNKTEKEIL;配列番号2)(VがYで置換されている)も神経突起伸長を促進し、血液脳関門を横切る能力を持つことが開示されている。O’Brienら(FASEB J.9:681−685、1995)は、上記の22マーがコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を刺激し、ニューロン細胞死を防止することを示している。活性な神経突起形成性断片の位置はサポシンCのアミノ末端内にある直鎖状12マー配列(LIDNNKTEKEIL;配列番号3)に限局された(O’Brienら、FASEB J.9:681−685、1994)。Liepinshら(Nature Struct. Biol.4:793−795)は、NK−溶解素の神経栄養活性ペプチドセグメント(残基17〜30)のループコンフォメーションを環状ペプチドによって模倣できることを示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ペプチドをインビボで治療的に使用する際の主な障害は,タンパク質分解に対するそれらの感受性である。本発明は、タンパク質分解に対して良好な耐性を有し、血液脳関門を横切ることができる環状プロサポシンペプチドミメティックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTXという配列(ここにXは疎水性アミノ酸(アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、N はアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む環状神経栄養性鎮痛ペプチドである。本ペプチドは配列番号:5または6に示すアミノ酸配列を持つことが好ましい。
【0008】
本発明は、セプタムで密封されたバイアルに入った、徐放性物質と共に製剤化された、凍結乾燥形の、リポソーム形の、局部投与に適した形の、または単位剤形の、上記ペプチドを含有する組成物も提供する。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTXという配列(ここにXは疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む環状ペプチドの薬学上有効な脱髄抑制量を、脱髄を起こしている哺乳動物に投与することからなる、哺乳動物における髄鞘形成誘導または脱髄抑制法である。この好ましい態様の一側面では、脱髄が多発性硬化症、虚血性損傷または外傷性損傷に起因する。投与は静脈内、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、脳脊髄内または局部投与であることが好ましい。ペプチドは、薬学上許容されうる担体を使って投与することが有利である。ペプチドは、配列番号:5または6に示す配列を持つことが好ましい。この好ましい態様のもう一つの側面では、哺乳動物がヒトである。
【0010】
また本発明は、変性を起こしやすい神経組織を、約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTXという配列(ここにXは疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、X7は疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む環状ペプチドの有効神経変性抑制量と接触させることからなる、神経組織における神経変性抑制または神経突起伸長促進法も提供する。ペプチドは配列番号:5または6に示すアミノ酸配列を持つことが好ましい。投与は静脈内、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、脳脊髄内または局所投与であることが好ましい。ペプチドは薬学上許容されうる担体を使って投与することが有利である。この好ましい態様のもう一つの側面では、ペプチドがラメラ構造に封入される。哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0011】
本発明のさらにもう一つの態様は、ニューロン変性を抑制するのに有効な量の環状ペプチドを神経障害性疼痛に苦しんでいる哺乳動物に投与する段階を含む、神経障害性疼痛の治療を必要とする哺乳動物における神経障害性疼痛治療法であって、前記ペプチドペプチドが約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTXという配列(ここにXは疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む方法である。上記の投与段階は静脈内、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、脳脊髄内、局所または経口投与であることが好ましい。ペプチドは配列番号:5または6に示すアミノ酸配列を持つことが有利である。ペプチドは薬学上許容されうる担体を使って投与することが有利である。この好ましい態様のもう一つの側面では、ペプチドがラメラ構造に封入される。哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0012】
また本発明は、約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTXという配列(ここにXは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む、哺乳動物における髄鞘形成誘導または脱髄抑制用の環状ペプチドも提供する。本ペプチドは、配列番号:5または6に示す配列を持つことが好ましい。
【0013】
本発明のもう一つの態様は、約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTXという配列(ここにXは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む、神経変性抑制または神経突起伸長促進用の環状ペプチドである。本ペプチドは、配列番号:5または6に示す配列を持つことが好ましい。
【0014】
また本発明は、約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTXという配列(ここにXは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む、神経障害性疼痛治療用の環状ペプチドも提供する。本ペプチドは配列番号:5または6に示す配列を持つことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(好ましい態様の詳細な説明)
本発明は、約11〜25個のアミノ酸を有し、XNNXTX(配列番号:4)というコンセンサス配列(ここにXは疎水性アミノ酸(アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)、Xは疎水性アミノ酸、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン、Nはアスパラギン、Xは任意のアミノ酸、Tはスレオニン、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸、Xは任意のアミノ酸、Xは疎水性アミノ酸、Xは疎水性アミノ酸である)を含む環状サポシンC由来ペプチドを提供する。好ましい一態様として本ペプチドはシクロ−[LLDNNKTEKLY](配列番号:5)またはシクロ−[LIDNNATEEIL](配列番号:6)という配列を持つ。これらの環状プロサポシンペプチドミメティックは束縛された構造を持つので、対応する直鎖状ペプチドと比較して、酵素分解に対する耐性がかなり高く、血液脳関門を横切る能力も高い。本発明の環状ペプチドは、TXLIDNNATEEILY(ここにXはD−アラニンである)(配列番号:7)の配列を持つ既知の高活性直鎖状プロサポシンペプチドミメティック(「プロサプチド(prosaptide)」)と比較して、神経突起伸長を刺激するのに同じ程度に有効またはより有効である(実施例1)。さらに本発明の環状ペプチドはインビトロで神経細胞死を防止するのにプロサプチドより有効である(実施例2)。これらの環状ペプチドは遊離のアミノ末端およびカルボキシ末端を持たない。したがってそれらは、アミノ末端およびカルボキシ末端からペプチドを分解するアミノペプチダーゼ類およびカルボキシペプチダーゼ類によるインビボでの分解に対して、より耐性である。
【0016】
活性な11マー領域(配列番号:4)を含有する環状サポシンC由来ペプチドおよびその神経栄養性類似体は、末梢および中枢神経系への毒物、外傷、虚血、変性および遺伝による損傷が起こった後の機能回復を促進するのに役立つ。また、これらのペプチドは髄鞘形成を刺激し、脱髄疾患の影響を打ち消す。これらのペプチドは哺乳動物(好ましくはヒト)のニューロン組織でニューロンの成長を刺激し、髄鞘形成を促進し、神経保護を促進し、プログラム細胞死を防止する。本発明のペプチドは、運動、感覚、末梢、タキソール誘導性および糖尿病性神経障害を含む(ただしこれらに限らない)様々な神経障害の治療にも使用できる。本明細書において神経障害とは末梢神経系の機能障害または病的変化をいい、臨床的には感覚または運動ニューロン異常を特徴とする。本ペプチドは鎮痛薬として、特に哺乳動物(好ましくはヒト)における神経障害性疼痛(これは外傷性損傷の何日もまたは何ヶ月も後になって発症することがあり、しばしば持続性または慢性である)の治療にも有用である。
【0017】
天然プロサポシン配列内の第2アスパラギン残基(配列番号:4の2番目の「N」に相当)は、N−アセチルグルコサミンでグリコシル化されることが知られており、これはタンパク質分解に対して多少の耐性を与えうる。標準的方法(すなわちメリフィールド合成)により本願非天然サポシンC由来ペプチド内のこのアスパラギン残基を様々な炭水化物(好ましくはグルコース)で合成的に修飾することも本発明の範囲に包含される。
【0018】
本発明の一態様は、配列番号:4に示す活性環状11マー領域を包含するサポシンC由来ペプチドの有効神経突起伸長または髄鞘形成促進量を分化または未分化神経細胞に投与することにより、それら分化または未分化神経細胞における神経突起伸長または髄鞘形成の増加を促進する方法である。
【0019】
本発明のサポシンC由来環状ペプチドは、例えば当該ペプチド内の1または複数のリジンおよび/またはアルギニン残基の置換、1または複数のチロシンおよび/またはフェニルアラニン残基の置換、1または複数のフェニルアラニン残基の欠失および/または1または複数のアミノ酸の保存的置換によって、サポシンC配列または配列番号:4〜6とは異なっていてもよい。リジン/アルギニンおよびチロシン/フェニルアラニン残基の置換または欠失は、それぞれトリプシンおよびキモトリプシンによるペプチド分解の感受性を低下させるだろう。本発明の環状神経栄養および髄鞘栄養性ペプチド配列は、好ましくは約50個までアミノ酸、より好ましくは約30個までのアミノ酸、最も好ましくは約11〜25個のアミノ酸を有し、その中に配列番号:4に示す配列を含む。
【0020】
本発明での使用が考えられるこれらペプチド配列の他の変異体は、わずかな挿入、欠失および置換を含む。例えば保存的アミノ酸置換が考えられる。そのような置換の例は、側鎖の化学的性質が同類であるアミノ酸のファミリー内で行なわれる置換である。アミノ酸のファミリーには、塩基性荷電アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性荷電アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)および芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)がある。特に、保存的アミノ酸置換が、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの単独置換、またはグルタミン酸によるアスパラギン酸の単独置換、またはセリンによるスレオニンの単独置換からなる保存的アミノ酸置換、または構造的に関連するアミノ酸によるアミノ酸の同様の保存的置換がペプチドの性質に有意な影響を与えないことは、一般に認められている。配列番号:4を含有する環状サポシンC由来配列は、活性および安定性の増加などの様々な目的を達成するために修飾することができる。結合性、疎水性、親水性を増加させるなどの目的を達成するために、このコンセンサス配列の外側に、天然サポシンC配列、それら天然配列の保存的置換物または無関係なペプチド配列などといった他のアミノ酸が存在してもよい。活性な神経栄養領域の外側の配列は、通例、活性には必要でない。したがってほとんどの場合、本ペプチドはこれらの配列の同一性とは無関係に活性だろう。また、上記のペプチドを、本明細書に記載するプロトコルを使って、上記の活性に関してスクリーニングすることができる。
【0021】
当業者は、神経突起伸長を刺激し、神経細胞死を防止し、髄鞘形成を促進し、脱髄を抑制し、神経障害性疼痛を軽減し、感覚神経障害を治療する上記環状ペプチドの能力を、実施例1〜9に記載の方法を使って容易に決定できる。これらのペプチドの髄鞘形成促進能力および脱髄抑制能力の測定方法は、下記実施例3および4に記載されている。
【0022】
細胞成長培地で神経栄養活性を得るための本発明ペプチドの典型的最小量は、通常少なくとも約5ng/mlである。インビトロではこの量またはこれより多い量の本発明環状合成ペプチドの使用が考えられる。通例、これらペプチドは0.1μg/ml〜約10μg/mlの範囲の濃度で使用されるだろう。特定の組織に有効な量は、実施例1に従って決定できる。
【0023】
神経細胞は、本発明のペプチドをそれらの細胞に直接投与することにより、インビトロまたはエクスビボで処置できる。これは、例えば細胞をその細胞型に適した成長培地で培養した後、その培地に本ペプチドを添加することによって行なうことができる。処置すべき細胞が典型的には脊椎動物、好ましくは哺乳動物の生体内にある場合は、いくつかの技法の一つで本組成物を投与することができる。最も好ましくは、所望の局所ペプチド濃度を得るのに十分な量で、本組成物を血液または組織に直接注入する。リジンおよびアルギニン残基を欠くペプチドでは、タンパク質分解が減少する。CNS障害の治療の場合、小さいペプチド(すなわち20マー以下)なら、まず間違いなく、血液脳関門を横切って中枢神経系に入るだろう(Banksら、Peptides 13:1289−1294、1992を参照されたい)。
【0024】
本発明のペプチドを脂肪酸でエステル化して、従来の酸触媒エステル化によりペプチド脂肪酸エステルを形成させてもよい。もう一つの選択肢として、合成操作で付加される最後のアミノ酸自体を市販のエステル化アミノ酸にすると、エステル化反応の必要がなくなる。ペプチドエステル形成用として考えられる脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノール酸が含まれる。
【0025】
また本発明ペプチドは、合成操作中に市販のアセチル化リジン、アルギニンまたはアスパラギン残基を組み込むことによってアセチル化してもよい。これらの修飾ペプチドは親化合物の活性を保っている。このような修飾は、疎水性が増加するので、血液脳関門を横切るペプチドの能力を助長するだろう。
【0026】
神経障害の治療には、所望の局所ニューロトロフィン濃度を得るのに十分な量での直接頭蓋内注入または脳脊髄液への注入も使用できる。どちらの場合も、薬学上許容されうる注射用の担体を使用する。そのような担体には、例えばリン酸緩衝食塩水やリンゲル液がある。もう一つの選択肢として、直接局所注射または全身投与によって末梢神経組織に本組成物を投与することもできる。静脈内、脳脊髄内、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、鼻腔内、硬膜外、局所および経口投与など、様々な従来の投与法が考えられる。鎮痛薬として使用する場合は、直接筋肉内または静脈内注射による投与が好ましい。
【0027】
本発明のペプチド組成物は、患者に投与される一日投与量に等しい投与量の注射用組成物または局所製剤などの単位剤形で、または徐放性組成物として、包装し、投与することができる。PBS中にまたは凍結乾燥状態で一日投与量の活性成分を含有するセプタム付きバイアルは単位投与量の一例である。神経疾患、脱髄の治療に関して、また一般に鎮痛薬として、または神経障害性疼痛の治療に関して、脊椎動物の体重に基づく本発明ペプチドの適切な一日全身投与量は、約0.01〜約10,000μg/kgの範囲にある。一日全身投与量は約0.1〜1,000μg/kgであることがより好ましい。一日全身投与量は約10〜100μg/kgであることが最も好ましい。したがって典型的な体重70kgのヒトの場合、投与量は一日に約0.7〜700,000μgより好ましくは一日に約7〜70,000μg、もっとも好ましくは約700〜7,000μg/kgになりうる。局所投与される物質の一日投与量はおよそ1桁少ないだろう。経口投与も考えられる。
【0028】
本発明の好ましい一態様では、本神経栄養ペプチドを、その植込みにより、インビボの神経細胞に局所的に投与する。本発明では、例えばポリ乳酸、ポリガラクト酸(polygalactic acid)、再生コラーゲン、多重膜リポソームおよび他の数多くの従来のデポー剤が特に考えられる。注入ポンプ、マトリックス捕捉システムおよび経皮送達装置との併用も考えられる。ペプチドは植込みに先立って、米国特許第5,529,914号に記載されているようなポリエチレングリコール相似被膜内に封入することもできる。
【0029】
本発明の神経栄養ペプチドはミセルまたはリポソームに封入してもよい。リポソーム封入技術はよく知られている。リポソームは、標的組織を結合できるレセプター、リガンドまたは抗体を使用することにより、神経組織などの特定の組織に誘導することができる。これらの製剤の製造は当技術分野ではよく知られている(Radinら、Meth.Enzymol.98:613−618、1983)。
【0030】
現在のところ神経系の完全な機能的再生と構造的完全性の修復を促進できる市販の医薬はない。CNSの場合は特にそうである。神経栄養因子を使った末梢神経の再生は本発明の範囲に包含される。さらに神経栄養因子は、神経集団または脳の特定の領域の変性を伴なう神経変性疾患の治療にも、治療上役立ちうる。パーキンソン病の主因は、黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性である。プロサポシンに対する抗体はヒト脳切片中の黒質のドーパミン作動性ニューロンを免疫組織化学的に染色するので、本発明の神経栄養ペプチドは、パーキンソン病の治療に治療上役立ちうる。中高年の視力喪失につながる眼の神経変性障害である網膜神経障害も、本発明のペプチドを使って治療できる。
【0031】
脳内のニューロン集団に到達させるには、神経栄養因子を頭蓋内に投与する必要があるだろうと長い間考えられてきた。というのは、これらのタンパク質は血液脳関門を横切らないからである。米国特許第5,571,787号は、サポシンCに由来するヨウ素化神経栄養性18マー断片が血液脳関門を横切ることを開示している。約22個までのアミノ酸を有する本発明のペプチドもこの関門を横切るだろうから静脈内投与することができ、短いペプチドほどより多くの輸送が起こる。運動ニューロンなどの他の神経ニューロン集団も、静脈内注射によって治療することができる。ただし、脳脊髄液への直接注入も代替経路として考えられる。
【0032】
細胞は、髄鞘形成を促進するためまたは脱髄を防止するために、インビボ、エクスビボまたはインビトロで上述したように処置することができる。MS、急性散在性白質脳炎、進行性多巣性白質脳炎、異染性白質萎縮症および副腎白質萎縮症などの神経線維の脱髄が起こる疾患は、その疾患に冒された細胞に本発明の神経栄養ペプチドを投与することにより、減速または停止させることができる。脱髄疾患または他の神経損傷の逆転も考えられる。
【0033】
本発明の組成物は、神経栄養因子および髄鞘形成促進物質の効果を研究するための研究手段として、インビトロで使用できる。しかしより実用的には、本発明の組成物は、実験用試薬および細胞成長培地の成分として、インビトロで成長を促進し神経細胞を維持するために使用できる。
【0034】
本発明のペプチドは、Protein Technologies製Symphonyペプチド合成装置で当技術分野周知の自動固相プロトコル(Traeciakら、Tetrahedron Lett.33:4557−4561、1992)により、確立された方法とFmoc化学とを用いて、固体支持体上で合成される。環化されたペプチドはTFA/水/トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)を使って固体支持体から切り離した。そのペプチドを、0.3%トリフルオロ酢酸(TFA)/アセトニトリル溶液を溶離液とするC−18カラムでの逆相HPLCを使って精製した。配列番号:5(ペプチドA)および6(ペプチドB)に示すペプチドの質量スペクトル分析により、環状ペプチドが合成されたことを確認した[配列番号:5:MH+ 1333(理論値)、1333(実測値);配列番号:6:MH+ 1127(理論値)、1127(実測値)]。
【0035】
以下の実施例は例証であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1
インビトロでの神経突起伸長の刺激
NS20Y神経芽腫細胞を10%ウシ胎仔血清(FCS)を含有するDMEM中で生育させた。細胞をトリプシンで取り出し、30mmペトリ皿中のカバーガラス上に播いた。20〜24時間後に、0.5%FCSと様々な濃度のペプチドA、ペプチドBまたはTX14(A)とを含有する2mlのDMEMで培地を置換した。細胞をさらに24時間培養し、PBSで洗浄し、ブアン溶液(飽和ピクリン酸水溶液/ホルマリン/酢酸 15:5:1)で30分間固定した。固定液をPBSで除去し、神経突起伸長を位相差顕微鏡で採点した。1細胞径に等しいかそれより長い1または複数のはっきりした神経突起を示す細胞を陽性と採点した。神経突起保有細胞のパーセンテージを決定するために各ペトリ皿の異なる部分で少なくとも200細胞を採点し、測定を二連に行なった。
【0037】
3つのペプチド全てがNS20Y細胞における神経突起伸長を誘導した。神経突起伸長を50%増加させるペプチド濃度であるT1/2(ED50)は、TX14(A)とペプチドBの場合、1.0ng/mlだった。ペプチドAのT1/2は0.6ng/mlだった。このように、ペプチドBの有効性はTX14(A)と同じ程度であり、ペプチドAはTX14(A)より有効だった。これは、本発明の環化されたペプチドが、確立された基準「プロサプチド」と比較して優れた活性を持つことを示している。
【0038】
実施例2
インビトロでの細胞死の防止
NS20Y細胞を実施例1と同様に培養皿に播き、カバーガラス上、0.5%ウシ胎仔血清中で、TX14(A)、ペプチドAまたはペプチドBの存在下または不在下に2日間生育させた。培地を除去し、0.2%トリパンブルー/PBS溶液を各ウェルに加えた。各ウェルの4領域で400細胞を数えて青く染色された死細胞を倒立顕微鏡で総数に対するパーセンテージとして採点した。二連の平均誤差は5%だった。TX14(A)、ペプチドAおよびペプチドBによりトリパンブルー陽性(死)細胞の数が減少した。TX14(A)の場合、神経細胞死の防止に関するT1/2(ED50)は1.0ng/mlだった。ペプチドAおよびBはより強力で、T1/2値はそれぞれ0.6ng/mlと0.8ng/mlだった。これは本環状ペプチドが、基準となる直鎖状「プロサポチド」と比較して、プログラム細胞死からの神経細胞の救出に並外れた活性を持つことを示している。
【0039】
実施例3
エクスビボ髄鞘形成測定法
Satomi(Zool.Sci.9:127−137、1992)に従って新生仔マウス小脳外植片を調製する。新生仔マウス小脳が正常にニューロン分化を起こし、髄鞘形成が始まる期間中、培養しながら22日間にわたって、神経突起伸長と髄鞘形成を観察する。外植片の調製後2日目に、11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する環状サポシンC由来ペプチド(10μg/ml)を加え(対照外植片3、処理外植片3)、神経突起の伸長と髄鞘形成を明視野顕微鏡でビデオカメラを使って評価する。8日目に、ペプチドを含有する培養物は対照培養より薄く、より広く拡がっている。15日目に、ペプチド処理した培養物は長い突起を持つ数多くの細胞を外植片の周辺部に含有し、無処理対照培養物ではこれがそれほどには目立たない。ペプチド処理した培養物は、22日の時点で対照外植片と比較して皮質下白質に有意に多い有髄軸索を含有する。このように本発明のペプチドは、エクスビボで、分化中の小脳における髄鞘形成の増加を誘導する。
【0040】
実施例4
脱髄の防止
シュワン細胞死の防止は、脱髄の防止と関連している。シュワン細胞は、多くのミエリン鞘を含有する。11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する環状サポシンC由来ペプチドを培養シュワン細胞に添加すると、シュワン細胞死が用量依存的に減少し、ミエリン特異的な脂質であるスルファチドのシュワン細胞への組み込みが刺激される。これは、本発明の環状ペプチドがシュワン細胞死による脱髄を防止できることを示している。
【0041】
実施例5
外傷性虚血性CNS損傷の治療におけるペプチドの使用
脊髄に外傷性損傷を持つヒトに、11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する約100μg/mlの環状サポシンC由来ペプチドを、滅菌食塩溶液としてまたは損傷部位で当該ペプチドの遅い連続的放出が起こりうるようにデポー剤として、脳脊髄内注射または直接注射する。改善は運動神経機能の増加(すなわち四肢運動の増加)によって評価する。さらなる改善が起こらなくなるまで治療を続ける。
【0042】
実施例6
脱髄障害の治療におけるペプチドの使用
初期MSと診断された患者に、11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する環状サポシンC由来ペプチドを、直接静脈内注射により、脳脊髄液に実施例3と同じ用量範囲を使って与える。投薬を2〜5日毎にまたは毎週1回繰り返し、筋力、筋骨格協調および髄鞘形成の改善(MRIで決定されるもの)を観察する。
【0043】
実施例7
Chungモデルラットにおける神経障害性疼痛の軽減
この実施例では、末梢神経障害疼痛のChung実験モデルにおける、11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する環状サポシンC由来ペプチドのボーラス髄腔内注射の効果を説明する。各ペプチドを化学合成し、精製し、滅菌PBSに溶解し、中性pHに緩衝化する。Kimら(Pain 50:355、1992)が以前に記述した外科的処置を雄ラットに施して異痛症状態を誘発する。手術の2週間後に脊椎カテーテルを導入する。5日後に、ペプチドを0.007、0.07および0.7μg/ラットの量で投与する。次に、較正されたフォン・フライ毛を使って圧力閾値を決定する。加えた圧力に反応して足を引っ込めるのに動物が要する時間が長いほど、神経障害性疼痛は重症度が低い。本ペプチドは、閾値圧力を有意に増加させ、神経障害性疼痛の有意な軽減が示される。
【0044】
実施例8
感覚神経障害の治療
感覚神経障害を誘発するためにマウスにタキソールを投与する。タキソール処置マウスに、50μg/kg、100μg/kgまたは250μg/kgの、11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する環状サポシンC由来ペプチドを投与する。感覚神経障害の指標として、温度感覚の喪失をHargreaves感覚試験装置を使って測定する。3種類のペプチド用量は、タキソール処置マウスにおける温度感覚の喪失を防止または遅延するのに、それぞれ有効である。したがって、本発明の合成サポシンC由来ペプチドは、感覚神経障害を有効に抑制する。
【0045】
実施例9
糖尿病ラットにおける神経障害性疼痛の軽減
この実施例では、糖尿病性神経障害のラットモデルにおける、腹腔内投与による、11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する環状サポシンC由来ペプチドのkgの効果を説明する。
【0046】
Calcuttら(Pain 68:293−299、1996)によって記述されているようにストレプトゾトシン(50mg/kg 体重、0.9%滅菌食塩水に新たに溶解したもの)の単回腹腔内注射で膵臓β細胞を除去しインスリン欠乏症を誘発することにより、ラットを糖尿病にする。2 日後に、血中グルコースレベルを測定することにより、ストレプトゾトシン注射ラットでの糖尿病を確認する。ラットでの糖尿病の研究における非空腹時高血糖症の一般に受け入れられている定義に従い、15mmol/l未満の血中グルコース濃度を持つストレプトゾトシン注射動物をそれ以降の研究から排除した。
【0047】
8週間の時点で、異痛症の指標として有害化学物質ホルマリンに対する行動反応を分析することにより、糖尿病ラットと対照ラットの両方を調べる(Calcuttら、前掲、1996)。簡単に述べると、ラットの右後足の背面に、新たに調製したホルマリン(滅菌食塩水中の0.5%溶液50μl)を皮下注射する。この濃度のホルマリンは、対照ラットでは最大下行動反応を誘発し、糖尿病ラットではQ相と第2相での痛感過敏の検出を可能にする(Calcuttら、Eur.J.Pharmacol.285:189−197、1995)。動物を、足の継続的可視化が可能なように作られた観察箱に移す。各動物の処置群について知らされていない観察者により、1分間の畏縮(flinch)の回数を5 分間隔で次の60分間にわたって数える。糖尿病ラットの研究について以前に定義されたように、第1相は畏縮の初期測定(注射後1〜2分および5〜6分)と定義され、Q(静止)相は10〜11、15〜16および20〜21分に行なわれる測定と定義され、第2相はその後の全注射後測定と定義される(例えばMalmbergら、Neurosci.Lett.,161:45−48、1993を参照されたい)。各相での活性の比較は、その相内の測定点での畏縮を合計することによって行なわれる。糖尿病ラット5異常な畏縮反応。
【0048】
糖尿病ラットを4匹ずつの2群に分け、それらに食塩水、または11〜25個のアミノ酸を有し配列番号:4に示す配列を含有する環状サポシンC由来ペプチドを、それぞれ投与する。0.5%ホルマリンによる処置の2時間前に、腹腔内投与により食塩水または200μg/kgペプチドで糖尿病ラットを処置する。ペプチドの投与により、第1相での異常な畏縮反応は完全に防止され、第2相での反応は70%改善される。このようにペプチドの非経口投与は、疼痛を伴なう糖尿病神経障害のラットモデルにおいてホルマリン注射による疼痛を軽減し、運動ニューロン機能を改善する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約11〜25個のアミノ酸を有し、配列XNNXTXを含む環状ペプチドであって、Xは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンであり、Nはアスパラギンであり、Xは任意のアミノ酸であり、Tはスレオニンであり、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、Xは任意のアミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であるペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが配列番号:5または6で示されるアミノ酸配列を有する請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドを含有してなるセプタムで密封されたバイアル中の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチドを含有してなる徐放性物質で製剤化された組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチドを含有してなる凍結乾燥形の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のペプチドを含有してなるリポソーム形の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のペプチドを含有してなる局所投与に適した形の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のペプチドを含有してなる単位剤形の組成物。
【請求項9】
約11〜25個のアミノ酸を有し、配列XNNXTX(ここで、Xは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンであり、Nはアスパラギンであり、Xは任意のアミノ酸であり、Tはスレオニンであり、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、Xは任意のアミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸である)を含む環状ペプチドの薬学上有効な脱髄抑制量を脱髄を起こしている動物に投与することを含む、動物において髄鞘形成を誘導するまたは脱髄を抑制する方法。
【請求項10】
前記脱髄が多発性硬化症、虚血性損傷または外傷性損傷によるものである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与が静脈内、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、脳脊髄内および局所投与からなる群より選ばれたものである請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ペプチドが薬学的に許容されうる担体中で投与される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチドがラメラ構造に封入されている請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチドが配列番号:5または6で示される配列を有する請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記動物がヒトである請求項9に記載の方法。
【請求項16】
約11〜25個のアミノ酸を有し、配列XNNXTX(ここで、Xは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンであり、Nはアスパラギンであり、Xは任意のアミノ酸であり、Tはスレオニンであり、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、Xは任意のアミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸である)を含む環状ペプチドを、神経変性を抑制する有効量で前記変性に感受性の神経組織と接触させることを含む、神経組織において神経変性を抑制するまたは神経突起伸張を促進する方法。
【請求項17】
前記投与が静脈内、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、脳脊髄内および局所投与からなる群より選ばれたものである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドが薬学的に許容されうる担体中で投与される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドがラメラ構造に封入されている請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドが配列番号:5または6で示されるアミノ酸配列を有する請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記動物がヒトである請求項16に記載の方法。
【請求項22】
神経障害性疼痛を治療するために有効な、約11〜25個のアミノ酸を含有し、配列XNNXTX(ここで、Xは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンであり、Nはアスパラギンであり、Xは任意のアミノ酸であり、Tはスレオニンであり、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、Xは任意のアミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸である)を含む環状ペプチドの所定量を神経変性疾患に罹っている動物に投与する工程を含む、その必要のある動物において神経障害性疼痛を治療する方法。
【請求項23】
前記投与工程が静脈内、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、脳脊髄内、局所および経口からなる群より選ばれたものである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドが薬学的に許容されうる担体中で投与される請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチドがラメラ構造に封入されている請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチドが配列番号:5または6で示されるアミノ酸配列を有する請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記動物がヒトである請求項22に記載の方法。
【請求項28】
約11〜25個のアミノ酸を有する環状ペプチドであって、配列XNNXTX(ここで、Xは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンであり、Nはアスパラギンであり、Xは任意のアミノ酸であり、Tはスレオニンであり、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、Xは任意のアミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸である)を含むペプチド。
【請求項29】
前記ペプチドが配列番号:5または6で示される配列を有する請求項28に記載のペプチド。
【請求項30】
神経変性の抑制または神経突起伸張の促進における使用のための約11〜25個のアミノ酸を有する環状ペプチドであって、配列XNNXTX(ここで、Xは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンであり、Nはアスパラギンであり、Xは任意のアミノ酸であり、Tはスレオニンであり、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、Xは任意のアミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸である)を含むペプチド。
【請求項31】
前記ペプチドが配列番号:5または6で示される配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項32】
神経障害性疼痛の治療における使用のための約11〜25個のアミノ酸を有する環状ペプチドであって、配列XNNXTX(ここで、Xは疎水性アミノ酸(ロイシン、アラニン、イソロイシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニン)であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xはアスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンであり、Nはアスパラギンであり、Xは任意のアミノ酸であり、Tはスレオニンであり、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸であり、Xは任意のアミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸であり、Xは疎水性アミノ酸である)を含むペプチド。
【請求項33】
前記ペプチドが配列番号:5または6で示される配列を有する請求項32に記載のペプチド。

【公開番号】特開2010−150272(P2010−150272A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−34833(P2010−34833)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【分割の表示】特願2000−567569(P2000−567569)の分割
【原出願日】平成11年8月20日(1999.8.20)
【出願人】(500013728)ミエロスコーポレーション (2)
【Fターム(参考)】