環状ベルトの隙間測定装置
【課題】複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間の測定精度を向上することができる装置および方法を提供すること。
【解決手段】測定対象の無段変速機用ベルトWを固定台10上で略真円状に保持し、隙間ゲージ21をベルト径中心方向から径方向外側に向けて移動させ、ブロックW1間隙間に挿入する。モータ24によりゲージ21を等速移動させ、そのときゲージ21にかかる引抜き力を測定する。予め記録されている、引抜き力と隙間との関係より、ブロックW1間の隙間を算出する。
【解決手段】測定対象の無段変速機用ベルトWを固定台10上で略真円状に保持し、隙間ゲージ21をベルト径中心方向から径方向外側に向けて移動させ、ブロックW1間隙間に挿入する。モータ24によりゲージ21を等速移動させ、そのときゲージ21にかかる引抜き力を測定する。予め記録されている、引抜き力と隙間との関係より、ブロックW1間の隙間を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブロックと環状部材とで構成された環状ベルトの隙間測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の測定対象となる環状ベルトの一例として、無段変速機用ベルトの構造を図5に示す。
【0003】
無段変速機用ベルトWは、複数のブロックW1と環状のリングW2とで構成される。ブロックW1は、図示しないプーリのV溝側壁に摩擦接触する傾斜端面W11を有する。また、リングW2は、ブロックW1の両端部に形成される肩部W12に巻きかけられてある。
【0004】
ブロックW1の一方の面には凸部W13が設けられ、もう一方の面には凹部W14が設けられている。通常は、ブロックW1の凸部W13が隣接するブロックW1の凹部W14に嵌っている状態でベルトWは使用される。ブロックW1間での捩れを防止するためである。
【0005】
ベルトWは、ドライブプーリとドリブンプーリとの間を繋ぎ、ドライブプーリの回転トルクをドリブンプーリに伝達する。両プーリの溝幅は、アクセル開度や車速等の条件によって変化され、その変化に伴ってベルトの回転半径が変更される。
【0006】
たとえば、プーリの溝幅が広まると、それに伴いベルトの回転半径は小さくなる。逆に、プーリの溝幅が狭まると、ベルトの回転半径は大きくなる。
【0007】
ブロックW1間の隙間が狭すぎると、回転半径が小さくなった場合にベルトWがスムーズに回転しなくなるおそれがある。また、隙間が大きすぎると、隣接するブロックの凹部W14に嵌っていたブロックの凸部W13が外れ、ブロック間のねじれが発生する恐れがある。また、ブロックW1同士の衝突などによりトルク伝達効率が悪化したり、騒音が大きくなったりする恐れもある。
【0008】
そのため、隣接するブロックW1間には適切な隙間W3が必要とされる。
【0009】
無段変速機用ベルトWの製造工程では、ブロック間隙間W3を測定する工程が品質上必要とされている。このとき測定される隙間について説明する。
通常の使用状態では、ブロックW1はリングW2上にほぼ均等に配置されているため、隣接するブロックW1間すべてに隙間が存在する。一方、ブロック間隙間W3を測定する場合には、図4に示すように一ヶ所の相対するブロック間の隙間に隙間ゲージを挿入して隙間を測る。各ブロックW1はリングW2に対して周方向に固定されてはいないため、測定位置以外のブロックW1は、測定位置とは反対側にその位置がずれようとする。測定位置の両側からお互いに反対方向にブロックW1がずれていくため、結局は測定位置以外のブロック間隙間W1はほぼなくなってしまう。したがって、この方式で測定されるブロック間隙間W3は、通常状態の各ブロック間隙間の合計値を表しているといえる。
隙間ゲージを用いた隙間測定方法としては、特許文献1で提案された方法がある。概略を説明する。
エンジンのバルブクリアランスを測る際に、ロッカーアームとバルブステムとの間に人が隙間ゲージを挿入する。次に、人が隙間ゲージを引抜く際に隙間ゲージにかかる引抜き力をロードセルで検出する。検出した引抜き力が予め設定された適正範囲か否かを判定することでバルブクリアランスが適正か否かを判定する。
特許文献1の技術を用いれば、それまでは人が判断していた引抜き力を測定器で測ることにより、人の官能的判断を廃し、正確な隙間を測定することができる。
【特許文献1】実公昭63−110605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
隙間ゲージを用いて隙間を測定する場合、人が隙間ゲージを操作していたので操作の仕方によって同じ隙間でも検出される引抜き力が異なる場合があった。
【0011】
上記の状況を鑑み、本発明は、環状ベルトのブロック間隙間をより正確に測定することを可能とする測定装置および隙間測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の点を特徴とする。
1)複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する装置であって、
測定対象となるブロックの相対する二面と前記隙間ゲージとが平行な状態で前記ブロック間に前記隙間ゲージが差し込まれた状態から、前記ブロックの面方向に前記隙間ゲージを移動させる隙間ゲージ移動機構と、
前記隙間ゲージ移動機構により前記隙間ゲージが移動されている際に隙間ゲージにかかる力を測定するロードセルと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係を記録した記録部と、
を有し、
前記ロードセルが測定した力と前記記録部の情報とに基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する出力手段
を有することを特徴とする。
これにより、隙間ゲージがブロック間隙間を移動する際に、ブロック間隙間による抵抗力以外の力(ゲージのひっかかり、ゲージの撓み等)が発生しにくくなるので、より正確な隙間を測定することができるようになる。
2)上記1)に加え、さらに、
測定対象となるブロック間隙間を形成する二つのブロックの相対する二面と平行に前記隙間ゲージを隙間に挿入するセット機構
を有することを特徴とする。
これにより、ブロック間隙間に隙間ゲージを挿入する際に、隙間ゲージがブロック間に引っかかることが起きなくなり、測定の正確性が増す。
3)上記1)または2)の記載の隙間測定装置であって、
前記出力手段は、
前記隙間ゲージ移動機構が前記隙間ゲージを所定速度で移動させているときに前記隙間ゲージにかかる力と前記記録部の情報と、に基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する
ことを特徴とする。
【0013】
ここで、「所定速度」とは、隙間ゲージとブロックとの間に一定の動摩擦がかかっている状態で、かつ、隙間ゲージにかかる引抜き力が一定になるように移動できる速度の範囲をいう。
【0014】
つまり、隙間ゲージとブロックとの間の最大静止摩擦力を越える力がかかるような速度より速い速度であって、かつ、隙間ゲージにかかる引抜き力が一定になるまえに隙間ゲージが測定部を通り抜けてしまうほど速くはない速度である。
【0015】
これにより、隙間ゲージがブロック間でひっかかった状態や隙間ゲージを急激に移動させたとき等の力ではなく、動摩擦力を計測することとなる。したがって、ゲージのかじり等の誤差要因を含まない隙間を測定することができるため、より正確な測定結果を得ることができる。
4)また、上記1)乃至3)記載の隙間測定装置であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構
を有し、
前記隙間ゲージ移動機構は、前記ベルトが前記保持機構によって略真円状に保持されているときに前記隙間ゲージを移動させる
ことを特徴とする
ここで、「真円」とは、図4(b)に示すように、環状ベルトのリングが真円で、ブロック群が真円状に並ぶことをいう。
楕円(図4(a))や多角形にベルトを保持した場合と比べて、ベルトにかかる張力は全位相位置で一定になる。また、リングW3方向に対してブロックW1がスムーズに動くことができる。したがって、保持ベルトの保持状態の違いによる隙間測定誤差をなくすことができる。
また、本発明に係る隙間測定方法は、
複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する方法であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構にベルトを設置するステップと、
前記隙間ゲージを前記ベルトのブロック間に平行に挿入するステップと、
挿入した前記隙間ゲージを前記ベルト軸方向に所定速度で移動させ、その際に前記隙間ゲージにかかる荷重をロードセルで計測するステップと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係に基づいて、計測した力よりブロック間隙間に対応する出力を発生するステップと
を有することを特徴とする。
【0016】
なお、本件発明における隙間ゲージとは、既に厚さのわかっている薄板状の測定部を有する測定具をいう。
【0017】
また、本件発明におけるロードセルとは、荷重または加えられた力を検出するセンサのことをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の隙間測定装置および隙間測定方法を説明する。
【0019】
まず装置の構成について説明する。図1および図2は本件発明に係る隙間測定装置Mの概略図である。
【0020】
装置Mは大きく分けると5つの部分で構成されている。測定対象となる無段変速機用ベルトWを固定するベルト固定部1と、ベルトWの隙間を測定する測定部2と、測定部2の位置決めをする位置決め部3と、装置各部を支える筐体部4と、装置Mを制御する制御部5とである。
ベルト固定部1は、治具10とモータ11と回転軸12とで構成されている。治具10は、ベルトWを水平かつ略真円状に保持する。回転軸12は、治具10とモータ11とをつないでいる。したがって、モータ11を駆動することで、治具10およびベルトWを水平平面内で回転させることができる。
【0021】
治具10は、図9に示すように、ベルトWの内径とほぼ同一の直径である円筒柱部分101と、ベルトWの外径とほぼ同一の直径である円筒底部分102との一体構造となっている。円筒底部分102は円筒柱部分101の一端に構成されている。また、治具10には開口部103が90°間隔で4個設けられている。また、開口部103が設けられている位相位置には、円筒部分102の外側にガイド104が設けられている。
【0022】
治具10が、請求項4の保持機構に該当する。
【0023】
なお、図9では、図面の見易さを考慮してガイド104を一箇所しか描いていないが、実際には開口部103の6箇所すべてにガイド104が設けられている。
隙間測定部分2は、隙間ゲージ21・ゲージホルダ22・ボールネジ23・モータ24・ロードセル25とで構成されている。隙間ゲージ21は、ゲージホルダ22に対してピン211により薄板方向に揺動自在に保持されている。また、隙間ゲージ21とゲージホルダ22との間にはバネ212が掛けられており、隙間ゲージ21へ他に力がかかっていない状態ではバネ212の弾性力により隙間ゲージ21はゲージホルダ22のバネ212取付部側へ倒れこむようになっている。ロードセル25は、モータ24とボールネジ23を介して結合されている。また、ロードセル25は、後述するガイド43により垂直方向に移動自在に保持されている。したがって、モータ24を回転させるとロードセル25が垂直方向に上下移動する。そのロードセル25の動きに伴って、隙間ゲージ21も上下移動する。
ベルトWは治具10により略水平状に保持されており、隙間ゲージ21は上記により垂直方向に移動するので、隙間ゲージ21と測定位置のブロックW1の面とは平行になる。
つまり、モータ24・ボールネジ23が請求項1の隙間ゲージ移動機構に該当する。
【0024】
位置決め部3は、アクチュエータ31とローラ32とローラ支持体33とで構成されている。ローラ32は、ピン331によりローラ支持体33に回転自在に保持されている。
【0025】
アクチュエータ31は、図6に示すように、一定方向に往復運動可能なロッド311を有している。ロッド311の一端にはローラ支持体33が固定されている。
【0026】
アクチュエータ31は、治具10の径方向にローラ32を往復可能とするような位置で後述する水平台41に固定されている。
【0027】
ベルトWは治具10により略真円状に保持されており、アクチュエータ31はローラ支持体33をベルト径方向に移動させるので、ローラ支持体33に保持されたローラ32により、隙間ゲージ21は、測定位置のブロックW1の面と平行に挿入される。
【0028】
つまり、位置決め部3が、請求項2のセット機構に該当する。
【0029】
なお、ローラ32には、図10に示すようにV字溝321が形成されている。
【0030】
筐体部4は、水平台41と柱部42、ガイド43とで構成されている。
制御部5は、センサー51と制御装置52構成されている。センサー51は柱部42に固定されており、ベルトWのブロック間が、隙間ゲージ21の挿入位置(測定位置)と合致しているかどうかを判別し、結果の信号を制御装置52に送る。
【0031】
制御装置52の機能を図8に示す。
【0032】
制御装置52は、センサー51からの信号をもとにモータ11の回転を制御する回転制御部521と、ブロック間隙間と摩擦力との関係を予め記録した記録部522と、ロードセル25からの信号と記録部522の情報とをもとにブロック間隙間を計算する計算部523と、測定部2の動きを制御する制御部524と、モータ24の回転を制御する測定部制御部525と、計算したブロック間隙間を表示する表示部526とで構成される。
【0033】
次に、上記装置Mを用いた測定方法について、図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、測定対象であるベルトWを治具10に設置する(S001)。
ベルトWを円筒部分101に嵌めるようにセットする。このとき、ベルトWの下端全域が円筒底部102と接するようにすると真円度がより一層高まる。
次に、ブロック間が測定位置にあるかどうかをセンサー51が測定し(S002)、結果を制御装置52に送信する。ブロック間が測定位置にない場合には、ブロック間が測定位置に来るように制御装置52はモータ11を駆動する(S003)。
【0034】
ベルトWのブロック間が測定位置にある場合、制御装置52は以下の動作を行う。
【0035】
まず、アクチュエータ31を作動させ、ローラ支持体33を径拡張方向に移動させる。ローラ32のV字溝321に隙間ゲージ21が嵌り、隙間ゲージ21がブロック間に挿入される。隙間ゲージ21が挿入されると、アクチュエータ31の動作を停止させる。
【0036】
このとき、隙間ゲージ21はローラ32により支持されているため、挿入方向は必ずベルトWの径方向と一致する。また、ベルトWは略真円状に保持されているため、ブロック間隙間の方向はベルトWの径方向と一致する。したがって、隙間ゲージ21はブロック間隙間に対して平行な状態で、ブロック間隙間に挿入される(S004)。
さらに、隙間ゲージ21の挿入方向にはガイド104があるため、たとい隙間ゲージ21がブロック間にひっかかったとしても、ベルトW自体が径方向に拡張されるのをガイド104が防ぐため、ブロック間隙間が狭まって隙間ゲージ21を噛み込むようなことは起きない。
【0037】
次に制御装置52は、ロードセル25が所定の等速度で移動するよう、モータ24を等速回転で駆動させる(S005)。モータ24の回転に伴いボールネジ23が回転し、ロードセル25が垂直下方向に等速移動する。一方、ロードセル25の動きに伴って隙間ゲージ21も垂直下方向に移動しようとするが、ブロックW1と隙間ゲージ21との摩擦力により、隙間ゲージ21はしばらくの間は移動しない。そして、ロードセル25から隙間ゲージ21に掛かる力が、ブロックW1と隙間ゲージ21との間の最大静止摩擦力を超えると、隙間ゲージ21も鉛直下方向に移動し始める。
【0038】
この間に隙間ゲージ21にかかる抵抗力をロードセル25は計測する(S006)。図3は、ロードセル25で計測した力と測定時間の一例である。I部では、摩擦力が強く隙間ゲージ21が移動しないため、ロードセル25が等速で下降するにつれ隙間ゲージにかかる力が時間に比例して増加していることを示している。II部では、隙間ゲージ21も等速で下降している個所である。つまり、この間は隙間ゲージ21にかかる抵抗力と、ロードセル25が隙間ゲージを引く力がつりあっているため、ロードセル25が測定する荷重は一定となる。III部では、隙間ゲージ21の上端がブロックW1の上端を越えて下降していることを示す。隙間ゲージ21とブロックW1間との接触面積が減り、摩擦力が小さくなっていくため、ロードセル25が測定する荷重は減少していく。隙間ゲージ21がブロックW1の下端を越えると、隙間ゲージには摩擦力がかからなくなるため、ロードセル25が測定する荷重は0になる。
【0039】
隙間ゲージ21がブロック間隙間を抜けきると、制御装置52はモータ24の回転を停止する(S007)。
【0040】
記憶部523には、隙間ゲージ21を等速でブロックW1間を引抜く際の、隙間ゲージにかかる抵抗力とブロック間隙間との関係がテーブルに予め保存されている。図7にその関係を示す。ロードセルが計測した動摩擦による抵抗力(図7のf)をもとに計算部523はブロック間隙間dを計算・出力しメモリに保持する(S006)。
【0041】
つまり、計算部523が、請求項1の出力手段に該当する。
【0042】
一つの個所で測定が終わると、制御装置52はアクチュエータ31のロッド311を作動させ、ローラ支持体33を径中心部へ移動させる(S008)。このとき、バネ212の働きによって隙間ゲージ21は径中心方向へピン211を中心にベルトWの径中心方向へ傾倒する。
【0043】
制御装置52は、モータ11を回転し、測定部2に対するベルトWの位相を60°変更する(S009)。
【0044】
次に、モータ24を逆回転させ測定部2を上昇させる(S010)。
【0045】
隙間ゲージ21は、治具10の開口部103を通って原点へ復帰する。
【0046】
そして、上述した測定方法と同様にブロック間隙間を計算し、メモリに保持する。
【0047】
これらの測定を予め定められた回数繰り返した後(S011)、計算部523は測定値の平均を出力し、表示部336に表示する(S012)。
【0048】
本実施例では、ベルトWは略真円に固定されている。したがって、図4(b)に示すようにベルトWにかかる張力は全周にわたりほぼ一定となり、位相位置によらずブロックW1間隙間がほぼ一定となる。
【0049】
これにより、一つのベルトWに対して複数の測定位置を同条件で測ることができるため、測定誤差がほとんど発生しない。また、たとい測定誤差が発生したとしても、複数の測定位置で簡単に測定できるため、それら測定値の平均を採用したり、最大値・最小値を除いた測定値を採用するなどの処理により、測定誤差を極力含まない測定結果を得ることができる。
【0050】
以上で本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0051】
たとえば、上記実施の形態では、測定部21は回転させずベルトWを回転させることでベルトWと測定位置との相対位相を変化させているが、ベルトWを固定し測定部21を回転させる方法であってもよい。さらに、ベルトWと測定部21とを両方回転させてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、ベルトWを固定した状態で隙間ゲージ21を移動させているが、隙間ゲージ21を固定した状態でベルトWを移動させてもよい。さらにベルトWと隙間ゲージ21をともに移動させてもよい。この場合、ベルトWと隙間ゲージ21との相対速度が所定の等速度となっている場合の隙間ゲージにかかる抵抗力を測定することが望ましい。
【0053】
また、上記実施の形態では、隙間ゲージ21の移動方向はベルトWの回転軸方向としているが、ベルトWの径方向に移動させてもよい。なお、記憶部522のデータは、測定する際の条件と同じ条件で計測したデータであることが望ましい。したがって、ベルトWの径方向に隙間ゲージ21を移動させて隙間を測定する場合には、あらかじめ、隙間ゲージ21をベルトWの径方向に移動させて測定した隙間と抵抗力とを記憶部522に記憶させておくことが望ましい。
【0054】
また、予め計測した隙間と抵抗力との関係を記憶させるのではなく、抵抗力から隙間を算出する計算式を記録しておいてもよい。計算式を記録している場合は、記録のためのメモリ量が少なくて済むというメリットがある。
【0055】
また、ブロックW1の相対する二面に平行に隙間ゲージ21を挿入するセット機構も、上記の形に限られるわけではない。隙間ゲージ21の測定面をブロックW1間隙間と同一面に乗せたまま隙間に挿入できればよい。したがって、たとえば、一つの測定個所で測定が終わり下端にある隙間ゲージ21を、ベルトWの径中心方向に傾倒させることなくそのままブロックW1間隙間に挿入してもよい。
【0056】
このとき、ローラ支持体33をロードセル25に固定し、隙間ゲージ21はロードセル25に対して傾倒しないようにしておけば、アクチュエータ31を廃止することができるうえ、隙間ゲージ21をブロックW1間隙間に挿入する際に隙間ゲージが撓むことを防ぐことができる。ローラ32のV字溝331が、隙間ゲージ21が撓むのを防ぐからである。
【0057】
またこのとき、ガイド104はゲージ挿入方向、つまり治具10の隙間103の上部にあって、ブロックW1を覆うようにしておくことが望ましい。
【0058】
本実施例では、無段変速機用ベルトの隙間測定について述べたが、本発明の適用分野は無段変速機用ベルトに限られるわけではない。複数のブロックと環状のリング部材とで構成されるベルトでさえあれば、無段変速機用ベルト以外でも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の隙間測定装置を側面から見た図。
【図2】本発明の隙間測定装置を上面から見た図。
【図3】隙間ゲージの引抜き抵抗力。
【図4】ベルトの固定状態とブロック間隙間との関係の模式図。
【図5】ベルトの構造を示す説明図。
【図6】位置決め装置の概略図。
【図7】隙間と荷重との関係の模式図。
【図8】制御部の構成。
【図9】治具の構造。
【図10】ローラの構造。
【図11】本発明の隙間測定方法のフローチャート。
【符号の説明】
【0060】
M 装置
W ベルト
1 ベルト固定部
2 測定部
3 位置決め部
4 筐体部
10 固定台
11 ベルト位置決め用モータ
12 回転軸
21 隙間ゲージ
22 ゲージホルダ
23 ボールネジ
24 隙間ゲージ抜き用モータ
25 ロードセル
51 センサ
52 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブロックと環状部材とで構成された環状ベルトの隙間測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の測定対象となる環状ベルトの一例として、無段変速機用ベルトの構造を図5に示す。
【0003】
無段変速機用ベルトWは、複数のブロックW1と環状のリングW2とで構成される。ブロックW1は、図示しないプーリのV溝側壁に摩擦接触する傾斜端面W11を有する。また、リングW2は、ブロックW1の両端部に形成される肩部W12に巻きかけられてある。
【0004】
ブロックW1の一方の面には凸部W13が設けられ、もう一方の面には凹部W14が設けられている。通常は、ブロックW1の凸部W13が隣接するブロックW1の凹部W14に嵌っている状態でベルトWは使用される。ブロックW1間での捩れを防止するためである。
【0005】
ベルトWは、ドライブプーリとドリブンプーリとの間を繋ぎ、ドライブプーリの回転トルクをドリブンプーリに伝達する。両プーリの溝幅は、アクセル開度や車速等の条件によって変化され、その変化に伴ってベルトの回転半径が変更される。
【0006】
たとえば、プーリの溝幅が広まると、それに伴いベルトの回転半径は小さくなる。逆に、プーリの溝幅が狭まると、ベルトの回転半径は大きくなる。
【0007】
ブロックW1間の隙間が狭すぎると、回転半径が小さくなった場合にベルトWがスムーズに回転しなくなるおそれがある。また、隙間が大きすぎると、隣接するブロックの凹部W14に嵌っていたブロックの凸部W13が外れ、ブロック間のねじれが発生する恐れがある。また、ブロックW1同士の衝突などによりトルク伝達効率が悪化したり、騒音が大きくなったりする恐れもある。
【0008】
そのため、隣接するブロックW1間には適切な隙間W3が必要とされる。
【0009】
無段変速機用ベルトWの製造工程では、ブロック間隙間W3を測定する工程が品質上必要とされている。このとき測定される隙間について説明する。
通常の使用状態では、ブロックW1はリングW2上にほぼ均等に配置されているため、隣接するブロックW1間すべてに隙間が存在する。一方、ブロック間隙間W3を測定する場合には、図4に示すように一ヶ所の相対するブロック間の隙間に隙間ゲージを挿入して隙間を測る。各ブロックW1はリングW2に対して周方向に固定されてはいないため、測定位置以外のブロックW1は、測定位置とは反対側にその位置がずれようとする。測定位置の両側からお互いに反対方向にブロックW1がずれていくため、結局は測定位置以外のブロック間隙間W1はほぼなくなってしまう。したがって、この方式で測定されるブロック間隙間W3は、通常状態の各ブロック間隙間の合計値を表しているといえる。
隙間ゲージを用いた隙間測定方法としては、特許文献1で提案された方法がある。概略を説明する。
エンジンのバルブクリアランスを測る際に、ロッカーアームとバルブステムとの間に人が隙間ゲージを挿入する。次に、人が隙間ゲージを引抜く際に隙間ゲージにかかる引抜き力をロードセルで検出する。検出した引抜き力が予め設定された適正範囲か否かを判定することでバルブクリアランスが適正か否かを判定する。
特許文献1の技術を用いれば、それまでは人が判断していた引抜き力を測定器で測ることにより、人の官能的判断を廃し、正確な隙間を測定することができる。
【特許文献1】実公昭63−110605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
隙間ゲージを用いて隙間を測定する場合、人が隙間ゲージを操作していたので操作の仕方によって同じ隙間でも検出される引抜き力が異なる場合があった。
【0011】
上記の状況を鑑み、本発明は、環状ベルトのブロック間隙間をより正確に測定することを可能とする測定装置および隙間測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の点を特徴とする。
1)複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する装置であって、
測定対象となるブロックの相対する二面と前記隙間ゲージとが平行な状態で前記ブロック間に前記隙間ゲージが差し込まれた状態から、前記ブロックの面方向に前記隙間ゲージを移動させる隙間ゲージ移動機構と、
前記隙間ゲージ移動機構により前記隙間ゲージが移動されている際に隙間ゲージにかかる力を測定するロードセルと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係を記録した記録部と、
を有し、
前記ロードセルが測定した力と前記記録部の情報とに基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する出力手段
を有することを特徴とする。
これにより、隙間ゲージがブロック間隙間を移動する際に、ブロック間隙間による抵抗力以外の力(ゲージのひっかかり、ゲージの撓み等)が発生しにくくなるので、より正確な隙間を測定することができるようになる。
2)上記1)に加え、さらに、
測定対象となるブロック間隙間を形成する二つのブロックの相対する二面と平行に前記隙間ゲージを隙間に挿入するセット機構
を有することを特徴とする。
これにより、ブロック間隙間に隙間ゲージを挿入する際に、隙間ゲージがブロック間に引っかかることが起きなくなり、測定の正確性が増す。
3)上記1)または2)の記載の隙間測定装置であって、
前記出力手段は、
前記隙間ゲージ移動機構が前記隙間ゲージを所定速度で移動させているときに前記隙間ゲージにかかる力と前記記録部の情報と、に基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する
ことを特徴とする。
【0013】
ここで、「所定速度」とは、隙間ゲージとブロックとの間に一定の動摩擦がかかっている状態で、かつ、隙間ゲージにかかる引抜き力が一定になるように移動できる速度の範囲をいう。
【0014】
つまり、隙間ゲージとブロックとの間の最大静止摩擦力を越える力がかかるような速度より速い速度であって、かつ、隙間ゲージにかかる引抜き力が一定になるまえに隙間ゲージが測定部を通り抜けてしまうほど速くはない速度である。
【0015】
これにより、隙間ゲージがブロック間でひっかかった状態や隙間ゲージを急激に移動させたとき等の力ではなく、動摩擦力を計測することとなる。したがって、ゲージのかじり等の誤差要因を含まない隙間を測定することができるため、より正確な測定結果を得ることができる。
4)また、上記1)乃至3)記載の隙間測定装置であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構
を有し、
前記隙間ゲージ移動機構は、前記ベルトが前記保持機構によって略真円状に保持されているときに前記隙間ゲージを移動させる
ことを特徴とする
ここで、「真円」とは、図4(b)に示すように、環状ベルトのリングが真円で、ブロック群が真円状に並ぶことをいう。
楕円(図4(a))や多角形にベルトを保持した場合と比べて、ベルトにかかる張力は全位相位置で一定になる。また、リングW3方向に対してブロックW1がスムーズに動くことができる。したがって、保持ベルトの保持状態の違いによる隙間測定誤差をなくすことができる。
また、本発明に係る隙間測定方法は、
複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する方法であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構にベルトを設置するステップと、
前記隙間ゲージを前記ベルトのブロック間に平行に挿入するステップと、
挿入した前記隙間ゲージを前記ベルト軸方向に所定速度で移動させ、その際に前記隙間ゲージにかかる荷重をロードセルで計測するステップと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係に基づいて、計測した力よりブロック間隙間に対応する出力を発生するステップと
を有することを特徴とする。
【0016】
なお、本件発明における隙間ゲージとは、既に厚さのわかっている薄板状の測定部を有する測定具をいう。
【0017】
また、本件発明におけるロードセルとは、荷重または加えられた力を検出するセンサのことをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の隙間測定装置および隙間測定方法を説明する。
【0019】
まず装置の構成について説明する。図1および図2は本件発明に係る隙間測定装置Mの概略図である。
【0020】
装置Mは大きく分けると5つの部分で構成されている。測定対象となる無段変速機用ベルトWを固定するベルト固定部1と、ベルトWの隙間を測定する測定部2と、測定部2の位置決めをする位置決め部3と、装置各部を支える筐体部4と、装置Mを制御する制御部5とである。
ベルト固定部1は、治具10とモータ11と回転軸12とで構成されている。治具10は、ベルトWを水平かつ略真円状に保持する。回転軸12は、治具10とモータ11とをつないでいる。したがって、モータ11を駆動することで、治具10およびベルトWを水平平面内で回転させることができる。
【0021】
治具10は、図9に示すように、ベルトWの内径とほぼ同一の直径である円筒柱部分101と、ベルトWの外径とほぼ同一の直径である円筒底部分102との一体構造となっている。円筒底部分102は円筒柱部分101の一端に構成されている。また、治具10には開口部103が90°間隔で4個設けられている。また、開口部103が設けられている位相位置には、円筒部分102の外側にガイド104が設けられている。
【0022】
治具10が、請求項4の保持機構に該当する。
【0023】
なお、図9では、図面の見易さを考慮してガイド104を一箇所しか描いていないが、実際には開口部103の6箇所すべてにガイド104が設けられている。
隙間測定部分2は、隙間ゲージ21・ゲージホルダ22・ボールネジ23・モータ24・ロードセル25とで構成されている。隙間ゲージ21は、ゲージホルダ22に対してピン211により薄板方向に揺動自在に保持されている。また、隙間ゲージ21とゲージホルダ22との間にはバネ212が掛けられており、隙間ゲージ21へ他に力がかかっていない状態ではバネ212の弾性力により隙間ゲージ21はゲージホルダ22のバネ212取付部側へ倒れこむようになっている。ロードセル25は、モータ24とボールネジ23を介して結合されている。また、ロードセル25は、後述するガイド43により垂直方向に移動自在に保持されている。したがって、モータ24を回転させるとロードセル25が垂直方向に上下移動する。そのロードセル25の動きに伴って、隙間ゲージ21も上下移動する。
ベルトWは治具10により略水平状に保持されており、隙間ゲージ21は上記により垂直方向に移動するので、隙間ゲージ21と測定位置のブロックW1の面とは平行になる。
つまり、モータ24・ボールネジ23が請求項1の隙間ゲージ移動機構に該当する。
【0024】
位置決め部3は、アクチュエータ31とローラ32とローラ支持体33とで構成されている。ローラ32は、ピン331によりローラ支持体33に回転自在に保持されている。
【0025】
アクチュエータ31は、図6に示すように、一定方向に往復運動可能なロッド311を有している。ロッド311の一端にはローラ支持体33が固定されている。
【0026】
アクチュエータ31は、治具10の径方向にローラ32を往復可能とするような位置で後述する水平台41に固定されている。
【0027】
ベルトWは治具10により略真円状に保持されており、アクチュエータ31はローラ支持体33をベルト径方向に移動させるので、ローラ支持体33に保持されたローラ32により、隙間ゲージ21は、測定位置のブロックW1の面と平行に挿入される。
【0028】
つまり、位置決め部3が、請求項2のセット機構に該当する。
【0029】
なお、ローラ32には、図10に示すようにV字溝321が形成されている。
【0030】
筐体部4は、水平台41と柱部42、ガイド43とで構成されている。
制御部5は、センサー51と制御装置52構成されている。センサー51は柱部42に固定されており、ベルトWのブロック間が、隙間ゲージ21の挿入位置(測定位置)と合致しているかどうかを判別し、結果の信号を制御装置52に送る。
【0031】
制御装置52の機能を図8に示す。
【0032】
制御装置52は、センサー51からの信号をもとにモータ11の回転を制御する回転制御部521と、ブロック間隙間と摩擦力との関係を予め記録した記録部522と、ロードセル25からの信号と記録部522の情報とをもとにブロック間隙間を計算する計算部523と、測定部2の動きを制御する制御部524と、モータ24の回転を制御する測定部制御部525と、計算したブロック間隙間を表示する表示部526とで構成される。
【0033】
次に、上記装置Mを用いた測定方法について、図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、測定対象であるベルトWを治具10に設置する(S001)。
ベルトWを円筒部分101に嵌めるようにセットする。このとき、ベルトWの下端全域が円筒底部102と接するようにすると真円度がより一層高まる。
次に、ブロック間が測定位置にあるかどうかをセンサー51が測定し(S002)、結果を制御装置52に送信する。ブロック間が測定位置にない場合には、ブロック間が測定位置に来るように制御装置52はモータ11を駆動する(S003)。
【0034】
ベルトWのブロック間が測定位置にある場合、制御装置52は以下の動作を行う。
【0035】
まず、アクチュエータ31を作動させ、ローラ支持体33を径拡張方向に移動させる。ローラ32のV字溝321に隙間ゲージ21が嵌り、隙間ゲージ21がブロック間に挿入される。隙間ゲージ21が挿入されると、アクチュエータ31の動作を停止させる。
【0036】
このとき、隙間ゲージ21はローラ32により支持されているため、挿入方向は必ずベルトWの径方向と一致する。また、ベルトWは略真円状に保持されているため、ブロック間隙間の方向はベルトWの径方向と一致する。したがって、隙間ゲージ21はブロック間隙間に対して平行な状態で、ブロック間隙間に挿入される(S004)。
さらに、隙間ゲージ21の挿入方向にはガイド104があるため、たとい隙間ゲージ21がブロック間にひっかかったとしても、ベルトW自体が径方向に拡張されるのをガイド104が防ぐため、ブロック間隙間が狭まって隙間ゲージ21を噛み込むようなことは起きない。
【0037】
次に制御装置52は、ロードセル25が所定の等速度で移動するよう、モータ24を等速回転で駆動させる(S005)。モータ24の回転に伴いボールネジ23が回転し、ロードセル25が垂直下方向に等速移動する。一方、ロードセル25の動きに伴って隙間ゲージ21も垂直下方向に移動しようとするが、ブロックW1と隙間ゲージ21との摩擦力により、隙間ゲージ21はしばらくの間は移動しない。そして、ロードセル25から隙間ゲージ21に掛かる力が、ブロックW1と隙間ゲージ21との間の最大静止摩擦力を超えると、隙間ゲージ21も鉛直下方向に移動し始める。
【0038】
この間に隙間ゲージ21にかかる抵抗力をロードセル25は計測する(S006)。図3は、ロードセル25で計測した力と測定時間の一例である。I部では、摩擦力が強く隙間ゲージ21が移動しないため、ロードセル25が等速で下降するにつれ隙間ゲージにかかる力が時間に比例して増加していることを示している。II部では、隙間ゲージ21も等速で下降している個所である。つまり、この間は隙間ゲージ21にかかる抵抗力と、ロードセル25が隙間ゲージを引く力がつりあっているため、ロードセル25が測定する荷重は一定となる。III部では、隙間ゲージ21の上端がブロックW1の上端を越えて下降していることを示す。隙間ゲージ21とブロックW1間との接触面積が減り、摩擦力が小さくなっていくため、ロードセル25が測定する荷重は減少していく。隙間ゲージ21がブロックW1の下端を越えると、隙間ゲージには摩擦力がかからなくなるため、ロードセル25が測定する荷重は0になる。
【0039】
隙間ゲージ21がブロック間隙間を抜けきると、制御装置52はモータ24の回転を停止する(S007)。
【0040】
記憶部523には、隙間ゲージ21を等速でブロックW1間を引抜く際の、隙間ゲージにかかる抵抗力とブロック間隙間との関係がテーブルに予め保存されている。図7にその関係を示す。ロードセルが計測した動摩擦による抵抗力(図7のf)をもとに計算部523はブロック間隙間dを計算・出力しメモリに保持する(S006)。
【0041】
つまり、計算部523が、請求項1の出力手段に該当する。
【0042】
一つの個所で測定が終わると、制御装置52はアクチュエータ31のロッド311を作動させ、ローラ支持体33を径中心部へ移動させる(S008)。このとき、バネ212の働きによって隙間ゲージ21は径中心方向へピン211を中心にベルトWの径中心方向へ傾倒する。
【0043】
制御装置52は、モータ11を回転し、測定部2に対するベルトWの位相を60°変更する(S009)。
【0044】
次に、モータ24を逆回転させ測定部2を上昇させる(S010)。
【0045】
隙間ゲージ21は、治具10の開口部103を通って原点へ復帰する。
【0046】
そして、上述した測定方法と同様にブロック間隙間を計算し、メモリに保持する。
【0047】
これらの測定を予め定められた回数繰り返した後(S011)、計算部523は測定値の平均を出力し、表示部336に表示する(S012)。
【0048】
本実施例では、ベルトWは略真円に固定されている。したがって、図4(b)に示すようにベルトWにかかる張力は全周にわたりほぼ一定となり、位相位置によらずブロックW1間隙間がほぼ一定となる。
【0049】
これにより、一つのベルトWに対して複数の測定位置を同条件で測ることができるため、測定誤差がほとんど発生しない。また、たとい測定誤差が発生したとしても、複数の測定位置で簡単に測定できるため、それら測定値の平均を採用したり、最大値・最小値を除いた測定値を採用するなどの処理により、測定誤差を極力含まない測定結果を得ることができる。
【0050】
以上で本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0051】
たとえば、上記実施の形態では、測定部21は回転させずベルトWを回転させることでベルトWと測定位置との相対位相を変化させているが、ベルトWを固定し測定部21を回転させる方法であってもよい。さらに、ベルトWと測定部21とを両方回転させてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、ベルトWを固定した状態で隙間ゲージ21を移動させているが、隙間ゲージ21を固定した状態でベルトWを移動させてもよい。さらにベルトWと隙間ゲージ21をともに移動させてもよい。この場合、ベルトWと隙間ゲージ21との相対速度が所定の等速度となっている場合の隙間ゲージにかかる抵抗力を測定することが望ましい。
【0053】
また、上記実施の形態では、隙間ゲージ21の移動方向はベルトWの回転軸方向としているが、ベルトWの径方向に移動させてもよい。なお、記憶部522のデータは、測定する際の条件と同じ条件で計測したデータであることが望ましい。したがって、ベルトWの径方向に隙間ゲージ21を移動させて隙間を測定する場合には、あらかじめ、隙間ゲージ21をベルトWの径方向に移動させて測定した隙間と抵抗力とを記憶部522に記憶させておくことが望ましい。
【0054】
また、予め計測した隙間と抵抗力との関係を記憶させるのではなく、抵抗力から隙間を算出する計算式を記録しておいてもよい。計算式を記録している場合は、記録のためのメモリ量が少なくて済むというメリットがある。
【0055】
また、ブロックW1の相対する二面に平行に隙間ゲージ21を挿入するセット機構も、上記の形に限られるわけではない。隙間ゲージ21の測定面をブロックW1間隙間と同一面に乗せたまま隙間に挿入できればよい。したがって、たとえば、一つの測定個所で測定が終わり下端にある隙間ゲージ21を、ベルトWの径中心方向に傾倒させることなくそのままブロックW1間隙間に挿入してもよい。
【0056】
このとき、ローラ支持体33をロードセル25に固定し、隙間ゲージ21はロードセル25に対して傾倒しないようにしておけば、アクチュエータ31を廃止することができるうえ、隙間ゲージ21をブロックW1間隙間に挿入する際に隙間ゲージが撓むことを防ぐことができる。ローラ32のV字溝331が、隙間ゲージ21が撓むのを防ぐからである。
【0057】
またこのとき、ガイド104はゲージ挿入方向、つまり治具10の隙間103の上部にあって、ブロックW1を覆うようにしておくことが望ましい。
【0058】
本実施例では、無段変速機用ベルトの隙間測定について述べたが、本発明の適用分野は無段変速機用ベルトに限られるわけではない。複数のブロックと環状のリング部材とで構成されるベルトでさえあれば、無段変速機用ベルト以外でも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の隙間測定装置を側面から見た図。
【図2】本発明の隙間測定装置を上面から見た図。
【図3】隙間ゲージの引抜き抵抗力。
【図4】ベルトの固定状態とブロック間隙間との関係の模式図。
【図5】ベルトの構造を示す説明図。
【図6】位置決め装置の概略図。
【図7】隙間と荷重との関係の模式図。
【図8】制御部の構成。
【図9】治具の構造。
【図10】ローラの構造。
【図11】本発明の隙間測定方法のフローチャート。
【符号の説明】
【0060】
M 装置
W ベルト
1 ベルト固定部
2 測定部
3 位置決め部
4 筐体部
10 固定台
11 ベルト位置決め用モータ
12 回転軸
21 隙間ゲージ
22 ゲージホルダ
23 ボールネジ
24 隙間ゲージ抜き用モータ
25 ロードセル
51 センサ
52 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する装置であって、
測定対象となるブロックの相対する二面と前記隙間ゲージとが平行な状態で前記ブロック間に前記隙間ゲージが差し込まれた状態から、前記ブロックの面方向に前記隙間ゲージを移動させる隙間ゲージ移動機構と、
前記隙間ゲージ移動機構により前記隙間ゲージが移動されている際に隙間ゲージにかかる力を測定するロードセルと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係を記録した記録部と、
を有し、
前記ロードセルが測定した力と前記記録部の情報とに基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する出力手段
を有することを特徴とする隙間測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の隙間測定装置であって、さらに、
測定対象となるブロック間隙間を形成する二つのブロックの相対する二面と平行に前記隙間ゲージを隙間に挿入するセット機構
を有することを特徴とする隙間測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の隙間測定装置であって、
前記出力手段は、
前記隙間ゲージ移動機構が前記隙間ゲージを所定速度で移動させているときに前記隙間ゲージにかかる力と前記記録部の情報と、に基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する
ことを特徴とする隙間測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載の隙間測定装置であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構
を有し、
前記隙間ゲージ移動機構は、前記ベルトが前記保持機構によって略真円状に保持されているときに前記隙間ゲージを移動させる
ことを特徴とする隙間測定装置。
【請求項5】
複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する方法であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構にベルトを設置するステップと、
前記隙間ゲージを前記ベルトのブロック間に平行に挿入するステップと、
挿入した前記隙間ゲージを前記ベルト軸方向に所定速度で移動させ、その際に前記隙間ゲージにかかる荷重をロードセルで計測するステップと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係に基づいて、計測した力よりブロック間隙間に対応する出力を発生するステップと
を有する隙間測定方法。
【請求項1】
複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する装置であって、
測定対象となるブロックの相対する二面と前記隙間ゲージとが平行な状態で前記ブロック間に前記隙間ゲージが差し込まれた状態から、前記ブロックの面方向に前記隙間ゲージを移動させる隙間ゲージ移動機構と、
前記隙間ゲージ移動機構により前記隙間ゲージが移動されている際に隙間ゲージにかかる力を測定するロードセルと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係を記録した記録部と、
を有し、
前記ロードセルが測定した力と前記記録部の情報とに基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する出力手段
を有することを特徴とする隙間測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の隙間測定装置であって、さらに、
測定対象となるブロック間隙間を形成する二つのブロックの相対する二面と平行に前記隙間ゲージを隙間に挿入するセット機構
を有することを特徴とする隙間測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の隙間測定装置であって、
前記出力手段は、
前記隙間ゲージ移動機構が前記隙間ゲージを所定速度で移動させているときに前記隙間ゲージにかかる力と前記記録部の情報と、に基づきベルトのブロック間隙間に対応する出力を発生する
ことを特徴とする隙間測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載の隙間測定装置であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構
を有し、
前記隙間ゲージ移動機構は、前記ベルトが前記保持機構によって略真円状に保持されているときに前記隙間ゲージを移動させる
ことを特徴とする隙間測定装置。
【請求項5】
複数のブロックと環状部材とで構成されるベルトのブロック間隙間を隙間ゲージで測定する方法であって、
前記ベルトを略真円状に保持する保持機構にベルトを設置するステップと、
前記隙間ゲージを前記ベルトのブロック間に平行に挿入するステップと、
挿入した前記隙間ゲージを前記ベルト軸方向に所定速度で移動させ、その際に前記隙間ゲージにかかる荷重をロードセルで計測するステップと、
隙間ゲージにかかる力とブロック間隙間との関係に基づいて、計測した力よりブロック間隙間に対応する出力を発生するステップと
を有する隙間測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−145358(P2006−145358A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335200(P2004−335200)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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