説明

環状ペンタデプシペプチドおよびそれを生産するフザリウム属微生物

【課題】新規の環状ペンタデプシペプチドを生産するフザリウム属微生物などを提供すること。
【解決手段】本発明のフザリウム属微生物が生産する環状ペンタデプシペプチドは、薬剤耐性抑制活性および癌細胞増殖抑制活性に優れるので、抗生剤耐性菌の治療および癌治療用医薬として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬およびそれを生産する微生物に関する。本発明の医薬は、薬剤耐性抑制活性および癌細胞増殖抑制活性に優れた環状ペンタデプシペプチドであり、これは土壌由来のフザリウム属微生物から生産される。
【背景技術】
【0002】
海洋植物に関連したフザリウム属カビは、サンサルバミド(Sansalvamide)など、細胞毒性を有する新規の環状ペンタデプシペプチドを生産する源泉であることが明らかにされている。
【0003】
サンサルバミドAは、海洋微生物の一種であるHalodule wrightiiから生産されることが最初に報告された[Belofsky GN, Jensen PR, Fenical W.(1999) Sansalvamide: A new cytotoxic cyclic depsipeptide produced by a marine fungus of the genus Fusarium. Tetrahedron Lett. 40, 2913−2916]。サンサルバミドAは、4つの疎水性アミノ酸(フェニルアラニン、2つのロイシンおよびバリン)と1つのヒドロキシ酸((S)−2−hydroxy−4−methylpentanoic acid;OLeu)からなり、5つの立体中心(stereogenic center)が全てS型である。サンサルバミドAは、米国国立癌センターの60個の細胞株に対して顕著な増殖阻害効果を示し、トポイソメラーゼIの阻害剤であることが解明された。サンサルバミドAの抗癌活性は、少なくとも部分的にはトポイソメラーゼIの阻害に関連したメカニズムによるものである。また、図1に示したサンサルバミドAにN−メチル化またはp−臭化による同族体もサンサルバミドAと同様にヒト膵臓癌細胞に対して顕著な細胞毒性を示すという事実は、これらの化合物が非常に優れた抗癌剤として活用できることを示唆する[Ujiki MB, Milam B, Ding XZ, Roginsky AB, Salabat MR, Talamonti MS, Bell RH, Gu W, Silverman RB, Adrian TE.(2006) A novel peptide sansalvamide analogue inhibits pancreatic cancer cell growththrough G0/G1 cell−cycle arrest. Biochem. Bioph. Res. Co. 340, 1224−1228]。
【0004】
最近では、緑藻類から分離されたフザリウム種からサンサルバミドのN−メチル同族体としてのN−メチルサンサルバミドが生産された。N−メチルサンサルバミドは、4つのアミノ酸(フェニルアラニン、ロイシン、N−メチルロイシンおよびバリン)と1つのヒドロキシ酸(OLeu)からなり、米国国立癌センターのヒト癌細胞株スクリーニングにおける試験管内細胞毒性が報告された[Cueto M, Jensen PR, Fenical W.(2000) N−Methylsansalvamide, a cytotoxic cyclic depsipeptide from a marine fungus of the genus FusariumPhytochemistry.55, 223−226]。
【0005】
多薬剤耐性(Multidrug resistance;MDR)は化学療法剤による成功的な癌治療の主要障害物の一つであり、最近、これを克服するための多様な生化学的、医薬学的および臨床学的試みが考案されている[Teodori E, Dei S, Scapecchi S, Gualtieri F.(2002) The medicinal chemistry of multidrug resistance(MDR) reversing drugs.II Farmaco 57, 385−415]。多薬剤耐性には様々なメカニズムが関連しているが、P−糖タンパク質および多薬剤耐性関連タンパク質の過剰発現が癌細胞の多薬剤耐性の原因として示されている[Thomas H, Coley HM.(2003) Overcoming multidrug resistance in cancer: an update on the clinical strategy of inhibiting P−glycoprotein. Cancer Control 10, 159−165; Perez−Tomas R.(2006) Multidrug resistance: retrospect and prospects in anti−cancer drug treatment. Curr. Med. Chem. 13, 1859−1876]。
サンサルバミドAは、プロテアーゼ耐性および細胞膜透過性を有する親脂性の環状デプシペプチドであって、他の薬剤に比べて経口投与が容易であり且つ4つのアミノ酸および1つのヒドロキシ酸が結合しているコア構造は、結合の回転が制限されてさらに硬い配列を形成するので、生体内における親和性に優れるうえ、半減期が長いという利点がある。
【0006】
このような構造的な利点とサンサルバビドAまたはN−メチル酸サンサルバミドが有する癌細胞に対する細胞毒性を癌治療に用いるために、これまでこれらを変形させた数多くの同族体が有機合成されたが、本発明で分離された環状ペンタデプシペプチドに対しては報告されたことがなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規の環状ペンタデプシペプチドを生産するフザリウム属菌株を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、フザリウム属菌株を培養して新規の環状ペンタデプシペプチドを生産する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、新規の環状ペンタデプシペプチドを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、薬剤耐性抑制用薬学組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、癌治療用薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、新規の化合物である下記化学式1の環状ペンタデプシペプチドまたは下記化学式2の環状ペンタデプシペプチドを生産するフザリウム属菌株を提供する。
【化1】

化学式1
【化2】

化学式2
【0013】
前記化学式1および前記化学式2の環状ペンタデプシペプチドは、従来報告されたサンサルバミドAおよびN−メチルサンサルバミドと構成アミノ酸およびヒドロキシ酸の結合順序に差異がある15員環原子の環状ペンタデプシペプチドであって、新規化合物として判明された。また、図1に例示したように、従来のサンサルバミドAのコア構造を用いて有機合成された多様な同族体は、フェニルアラニンのベンゼン環の臭化またはロイシンまたはバリンのN−メチル化による細胞毒性の増大のみを念頭に入れたばかりで、構成アミノサンおよびヒドロキシ酸の結合順序を変更した試みは報告されたことがない。ひいては、人為的な有機合成によって構成アミノサンおよびヒドロキシ酸の結合順序を変更しようとする場合には、コア構造に含まれたヒドロキシ酸((S)−2−hydroxy−4−methylpentanoic acid;OLeu)とフェニルアラニン間のエステル結合が破壊されるという問題がある。
【0014】
化学式1および化学式2の環状ペントデプシペプチドは、サンサルバミドAおよびN−メチル酸サンサルバミドと4つの構成アミノ酸および1つのヒドロキシ酸の結合順序が異なる新規の環状ペンタデプシペプチドであって、多様な癌細胞株に対してサンサルバミドAと同等水準の細胞毒性を示す。特に化学式1および化学式2の環状ペプタデプシペプチドは、サンサルバミドA、N−メチルサンサルバミドおよびこれらを基本環構造として用いて有機合成された同族体において報告されたことのない細胞の薬剤耐性の抑制活性を有する。好ましくは化学式1の環状ペンタデプシペプチドにおいて薬剤耐性抑制活性に優れる。本発明において、薬剤耐性の抑制活性とは、化学療法剤に細胞が露出される場合、構造的に関連のない多数の薬剤に対して耐性を有する細胞が発生するが、このような薬剤耐性の発生を抑制し或いは薬剤に対する敏感性を維持させる場合は勿論のこと、既に薬剤耐性を有する細胞の薬剤に対する敏感性を増加または回復させる活性の意味としても使用される。
【0015】
したがって、本発明の化学式1および化学式2の環状ペンタデプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、薬剤耐性を有する細胞を治療し、薬剤耐性の発現を抑制し、特に多薬剤耐性癌の治療に特に適切に使用できる。
【0016】
好ましくは、本発明の化学式1、化学式2の環状ペンタデプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、従来知られている薬剤耐性抑制剤、すなわちサイクロスポリンおよびその類似体、フェノチアジン、チオキサンテン誘導体(thioxanthenes)、ベラパミルなどと組み合わせて使用できる。
【0017】
また、好ましくは、本発明の化学式1、化学式2の環状ペンタデプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、抗癌剤、すなわち標準化学療法剤と組み合わせて腫瘍の治療に使用でき、特に好ましくは先天的にまたは後天的に薬剤に耐性がある腫瘍の治療に使用できる。
【0018】
本発明は、化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチドを生産するフザリウム属菌株を提供する。前記フザリウム属菌株はフザリウムソラニであることを特徴とする。前記フザリウムソラニはフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040[寄託番号:KCCM10881P]であることを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記菌株を培養して化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチドを生産する方法を提供する。前記培養は、穀類を用いた固体培養であることを特徴とする。前記穀類は、米、小麦、トウモロコシ、ライ麦、唐黍、大麦などを少なくとも1種用いることができ、好ましくは米、小麦、トウモロコシ、ライ麦、さらに好ましくは米または小麦、最も好ましくは米を用いる。
【0020】
サンサルバミドは、海水基材培地(seawater−based medium)で海洋フザリウム菌株を培養したときに0.642g/17L生産されるものと報告された[Belofsky GN, Jensen PR, Fenical W.(1999) Sansalvamide: A new cytotoxic cyclic depsipeptide produced by a marine fungus of the genus Fusarium. Tetrahedron Lett. 40, 2913−2916]。また、N−メチルサンサルバミドは、海水基材培地でフザリウムCNL−619菌株を培養したときに3.1mg/L生産されるものと報告された[Cueto M, Jensen PR, Fenical W.(2000) N−methylsansalvamide, a cytotoxic cyclic depsipeptide from a marine fungus of the genus FusariumPhytochemistry. 55, 223−226]。
【0021】
上述したようにサンサルバミドまたはN−メチルサンサルバミドは、海洋由来フザリウムから生産されるものである。サンサルバミドまたはN−メチルサンサルバミドの生産のために海水基材培地が用いられる。単位培地当たり生産量が極めて低かったが、本発明のフザリウム菌株は、土壌に由来した菌株であって、穀類を用いた固体培養によって高濃度で化学式1または化学式2の化合物を生産する。
【0022】
前記培養に用いられる穀類は、好ましくは米であり、化学式1および化学式2の化合物を生産するのに適した培養条件は、温度20〜30℃、湿度20〜50%、培養期間10〜20日であり、最適条件は25.84℃、湿度37.99%、培養期間16.03日である。
【0023】
韓国ムンキョンのジャガイモから環状デプシペプチド生産菌株を分離した。分離された菌株はフザリウムソラニと同定された。前記菌株はフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040と命名し、韓国微生物保存センターに2008年1月15日に寄託番号KCCM10881Pでブダペスト条約に基づいて国際寄託した。
【0024】
前記菌株は化学式1の環状ペンタデプシペプチドおよび化学式2の環状ペンタデプシペプチドを生産した。化学式1および2の環状ペンタデプシペプチドは、従来報告されたN−メチルサンサルバミドとは構成アミノ酸およびヒドロキシ酸の結合順序が異なる15員環原子の環状ペンタデプシペプチドであって、新規化合物と判明された。
【0025】
本発明の化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、細胞の薬剤耐性抑制用薬学組成物の有効成分として利用できる。前記細胞は腫瘍細胞または抗生剤耐性菌である。
【0026】
また、本発明の化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、腫瘍細胞増殖抑制活性を有する癌治療用薬学組成物の有効成分として利用できる。
【0027】
薬学的に許容される塩とは、塩基化合物の無毒性有機または無機酸付加塩を意味する。適切な塩を形成する無機酸の例としては塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および酸金属塩(例えば、オルトリン酸一水素ナトリウムおよび硫酸水素カリウム)がある。適切な塩を形成する有機酸の例としてはモノ−、ジ−およびトリカルボン酸がある。このような酸の例としては酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸および2−フェノキシ安息香酸がある。その他に、適切な塩を形成する有機酸としてはメタンスルホン酸および2−ヒドロキシエタンスルホン酸などのスルホン酸がある。これらの塩および塩基化合物は、水和された形態またはほぼ無水物の形態で存在しうる。酸性塩は、水溶液またはアルコール水溶液または適当な酸を含有する他の適した溶媒中に遊離塩基を溶解させ、溶液を蒸発させて単離させる方法、または有機溶媒中で遊離塩基を反応させる方法(この場合、塩は直接分離されるか、或いは溶液を濃縮させて得られる)などの通常の技術によって製造される。一般に、本発明に係る化合物の酸付加塩は水および各種親水性有機溶媒に溶解される結晶性物質であって、これはこれらの遊離塩基形態に比べて融点および溶解度がさらに高い。
【0028】
本明細書において、「患者」とは、ヒトを含む霊長類と塩素、馬、牛、豚、犬、猫、ラットおよびマウスなどの哺乳動物を意味する。
【0029】
化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩の投与量は、使用される特定の投薬単位、治療期間、患者の年齢および性別、治療する腫瘍の特性および薬剤耐性度に応じて幅広く可変する。
【0030】
化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、腫瘍の治療に有用なものと知られている他の抗癌剤、特に化学療法剤と併用して使用される。薬剤耐性を反転させるための化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩の有効量は、一般に約15mg/kg〜500mg/kgの範囲である。単位投与量は25〜500mgの化学式1の環状ペプタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩を含有することができ、毎日1回以上にわたって投与できる。化学式1の環状ペプタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、通常の投薬単位形態で製薬学的担体と共に経口または非経口投与できる。
【0031】
本発明の化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩を用いた腫瘍の治療には、腫瘍抑制に有効な容量の抗癌剤、特に化学療法剤を化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩と共に投与しなければならない。
【0032】
本発明の方法によって治療できる腫瘍としては、陽性および悪性腫瘍または新生物のみならず、黒色腫、リンパ腫、白血病および肉腫を挙げることができる。このような腫瘍の例としては皮膚腫瘍(例えば、悪性黒色腫および菌状息肉腫)、白血病などの血液腫瘍(例えば、急性リンパ球白血病、急性または慢性骨髄白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキン病または悪性リンパ腫)、婦人科腫瘍(例えば、卵巣腫瘍および子宮腫瘍)、泌尿器腫瘍(例えば、前立腺腫瘍、膀胱または睾丸腫瘍)、軟組織肉腫、骨性または非骨性肉腫、乳房腫瘍、脳下垂体腫瘍、甲状腺腫瘍、副腎皮質腫瘍、胃腸腫瘍(例えば、食道腫瘍、胃腫瘍、腸腫瘍および結腸腫瘍)、膵臓腫瘍、肝腫瘍、喉頭腫瘍、乳頭腫および肺腫瘍がある。勿論、典型的に多薬剤耐性があり或いは多薬剤耐性を持つことになる腫瘍が本発明の方法によって最も効果的に治療される。このような腫瘍には結腸腫瘍、肺腫瘍、胃腫瘍および肝腫瘍がある。
【0033】
化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩と共に使用される化学療法剤には、腫瘍の治療に通常用いられる細胞毒素剤がある。化学療法剤の例としては、シクロホスファミド、メトトレキサート、プレドニゾン、6−メルカプトプリン、プロカルバジン、ジウノルビシン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、クロラムブシル、シトシン、アラビノシド、6−チオグアニン、チオTEPA、5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2−デオキシウリジン、5−アザシチジン、ナイトロジェンマスタード、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア(BCNU)、(1−(2−クロロエチル)−3−シクロヘキシル−1−ニトロソウレア)(CCNU)、ブスルファン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンデシン、シクロロイシン、またはメチルグリオキサルビス(グアニルヒドラゾン)(すなわち、MGBG)などがある。本発明の方法に用いられる化学療法剤の有効量は、患者、腫瘍組織の形態および大きさ、並びに使用される特定化学療法剤などの要因によって左右され、幅広く可変する。その量は効果のある任意量であり、当業界における熟練者はその量を容易に決定することができる。一般に化学療法剤が単独で投与されるときに比べて、化学療法剤が化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩と共に投与されるときに少量で必要である。その主な理由は、化学療法剤を多量添加して薬剤耐性の問題を起こす必要がないためである。勿論、化学療法剤の混合物を使用することができ、手術による切除または放射線治療などの補助手段も腫瘍治療に有用である。上述では、化学式1の環状デプシペプチドまたはその塩および化学療法剤が共に投与されるものと記載したが、これらが同じ投薬形態で製剤されるか或いは同時投与されることを必ずしも意味するのではない。ここで、「共に」という表現は、化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩および化学療法剤が、混合された投薬形態で投与されるか或いは治療過程中に分けられて投与されることを意味する。
【0034】
好ましい投与経路は経口投与である。経口投与用化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、固状または液状製剤、例えばカプセル剤、丸薬、錠剤、トローチ剤、ローゼンジ、メルト剤、粉剤、液剤、懸濁液剤または乳剤に剤形化できる。固状単位投与剤形は、通常の硬質または軟質ゼラチン外皮形態で構成できるカプセルを挙げることができる。このカプセルは、例えば界面活性剤、潤滑剤、および例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウムおよびコーンスターチなどの不活性充填剤を含有する。別の実施態様において、本発明の化合物は、通常の錠剤ベース(例えば、ラクトース、スクロースおよびコーンスターチ)を結合剤(例えば、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン)、投与後の錠剤の分解および溶解を助けるための崩解剤(例えば、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、コーンスターチおよびグアーガム)、精製顆粒の流出を向上させ且つ打錠用ダイおよびパンチの表面に錠剤の薬物が接着されることを防止するための潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛)、錠剤の美的特性を向上させ且つ患者にさらに適するようにするための染料、着色剤および風味剤と共に混合させて錠剤に剤形化できる。経口用液状投与剤形に有用な適切な賦形剤には、製薬上許容される界面活性剤、懸濁剤または乳剤を添加しており或いは添加していない水およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコール)などの希釈剤が含まれる。
【0035】
また、本発明の化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩は、製薬学的担体と共に生理学的に許容される希釈剤に溶解させた注射剤として非経口経路、すなわち皮下、静脈内、筋肉内または腹膜内に投与できる。前記担体としては、製薬上許容される界面活性剤(例えば、石鹸または洗剤)、懸濁剤(例えば、ぺプチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース)または乳化剤および他の製薬学的補助剤を添加しており或いは添加していない水、塩水、デキストロースおよびその類似糖水溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールまたはヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、グリセロールケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレン−グリコール)400)、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリドまたはアセチル化脂肪酸グリセリドなどの無菌液または混合液を使用できる。本発明の非経口剤形に使用できるオイルの例には、石油、動物性油、例えば落花生油、大豆油、ゴマ油、棉花油、トウモロコシ油、オリーブ油などの植物性油または合成油、鉱油および無機油がある。適当な脂肪酸にはオレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルがある。適当な界面活性剤には脂肪酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩およびトリエタノールアミン塩があり、適当な洗剤には陽イオン性洗剤(例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、アルキルピリジニウムハライドおよびアルキルアミンアセテート)、陰イオン性洗剤(例えば、アルキル、アリールおよびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセリドスルフェートおよびスルホスクシネート)、非イオン性洗剤(例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミドおよびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー)、陽性洗剤(例えば、アルキル−β−アミノプロピオネートおよび2−アルキルイミダゾリン4級アンモニウム塩)、およびその混合物が含まれる。通常、本発明の非経口組成物は、化学式1の環状ペンタデプシペプチド、化学式2の環状デプシペプチドまたはこれらの薬学的に許容される塩を溶液の約0.5〜約25重量%で含有する。また、防腐剤および緩衝剤を使用することが有利でありうる。注射部位の刺激を減少または除去するために、前記組成物は、約12〜17の親水性−親油性バランス(HLB)値を有する非イオン性界面活性剤を含有することができる。このような組成物中の界面活性剤の量は約5〜約15重量%の範囲である。界面活性剤は、前記HLBを有する単一成分、或いは所望のHLBを有する2種以上の成分の混合物であってもよい。非経口組成物に使用された界面活性剤の例は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、例えばソルビタンモノオレートおよびプロピレンオキシドとプロピレングリコールの縮合によって形成された疎水性塩基を有する酸化エチレンの高分子量付加物である。
【0036】
本発明の化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチドを生産するためには、フザリウム属菌株、好ましくはフザリウムソラニ、さらに好ましくはフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040[寄託番号:KCCM10881P]を培養する方法、生合成または有機合成を用いた合成法のいずれも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1はサンサルバミドA同族体の化学構造を示す。
【図2】図2は本発明の菌株の小型分生子を示す写真である。
【図3】図3は本発明の菌株の分生子柄を示す写真である。
【図4】図4は本発明の菌株の斜面培養による表面と裏面の様子を示す写真である。
【図5】図5はフザリウム菌株を確認するためのフザリウム特異プライマーを用いたPCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動写真である。Mは100bp単位からなるDNAマーカーを示し、Fは本発明の菌株のPCR増幅産物を示し、S−1およびS−2はそれぞれフザリウムモニリフォルメNRRL13569およびフザリウムオキシスポラムKTCC16909の増幅産物を示す。
【図6】図6は本発明の菌株(サンプル)のフザリウムソラニのITS−5.8rDNA配列の相同性を比較したものである。
【図7】図7は本発明の菌株をフザリウム制限培地で浸漬培養した後、培養液から抽出した抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図8】図8は本発明の菌株を穀類培地で固体培養した後、培養液から抽出した抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図9】図9は本発明の菌株から生産された化合物Aのエレクトロスプレイイオン化質量分析器を用いて分子量を測定した結果である。
【図10】図10は本発明の菌株から生産された化合物Bのエレクトロスプレイイオン化質量分析器を用いて分子量を測定した結果である。
【図11】図11は化合物AのFT IR−8400S赤外線分光器で測定したIRスペクトルである。
【図12】図12は化合物AのHMBC相関関係データを分析したものである。
【図13】図13は化合物BのFT IR−8400S赤外線分光器で測定したIRスペクトルである。
【図14】図14は化合物BのHMBC相関関係データを分析したものである。
【図15】図15は化合物Aに含まれたアミノ酸の立体化学構造を確認するためのHPLCクロマトグラムである。
【図16】図16は化合物Bに含まれたアミノ酸の立体化学構造を確認するためのHPLCクロマトグラムである。
【図17】図17は多薬剤耐性のない癌細胞株に対する化学式1の化合物の細胞毒性を示すグラフである。
【図18】図18は多薬剤耐性を持つ癌細胞株に対する化学式1の化合物の細胞毒性を示すグラフである。
【図19】図19は多薬剤耐性のない癌細胞株に対する化学式2の化合物の細胞毒性を示すグラフである。
【図20】図20は多薬剤耐性を持つ癌細胞株に対する化学式2の化合物の細胞毒性を示すグラフである。
【図21】図21は化学式1および化学式2の化合物のHCT15細胞株に対する多薬剤耐性抑制活性を示すグラフである。
【図22】図22は化学式1および化学式2の化合物のHCT15/CL02に対する多薬剤耐性抑制活性を示すグラフである。
【図23】図23は化学式1および化学式2の化合物のMEA−SA細胞株に対する多薬剤耐性抑制活性を示すグラフである。
【図24】図24は化学式1および化学式2の化合物のMEA−SA/DX5細胞株に対する多薬剤耐性抑制活性を示すグラフである。
【図25】図25は化学式1および2の化合物の10mM濃度におけるムコールルキシー(Mucor rouxii)に対する抗カビ活性を示す写真である。
【図26】図26は化学式1および2の化合物の10mM濃度におけるフザリウムオキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対する抗カビ活性を示す写真である。
【図27】図27は6つの相異なる固体穀類培地で培養したときの培養期間による化学式1の化合物の生産量を示すグラフである。
【図28】図28は6つの相異なる固体穀類培地で培養したときの培養期間による化学式2の化合物の生産量を示すグラフである。
【図29】図29は化学式1および2の化合物の生産のための培養条件を示すもので、培養期間による生産量の変化を示すグラフである。
【図30】図30は化学式1および2の化合物の生産のための培養条件を示すもので、温度による生産量の変化を示すグラフである。
【図31】図31は化学式1および2の化合物の生産のための培養条件を示すもので、湿度による生産量の変化を示すグラフである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例および実験例によって詳細に説明する。但し、下記実施例および実験例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0039】
実施例1:菌株の分離および同定
(1)分離および形態学的同定
韓国ムンキョウのジャガイモから、環状デプシペプチドを生産するフザリウム属菌株を分離した。分離された菌株はSamson等およびNelson等の方法で同定した[Samson RA, Hoekstra ES, Oorschot V, Connie AN.(1981) Introdution to food−borne fungi. Published and distributed by Centraalbureau voor Schimmelcultures; Nelson PE, Toussoun TA, Marasas WF.(1983) Fusarium species: An illustrated manual for identification. The Pennsylvania State University. Press]。
【0040】
分離されたフザリウム属菌株はCLA(carnation leaf agar)およびRPDA(real potato dextrose agar)で形態学的特性を調査した。
【0041】
小型分生子は、多量で存在し、一般に単細胞であって、卵型から腎臓型であった(図2)。分生子柄は図3のように枝を伸びていた。フザリウムソラニの小型分生子および分生子柄は、フザリウムオキシスポラムで発見されたものと類似である。但し、フザリウムオキシスポラムの小型分生子はソラニのものに比べてさらに大きくて厚い細胞壁を持っており、その分生子病は短いモノフィアライド(monophialide)を形成している(Nelson et al., 1983)。分離されたフザリウム属菌株の成長は速く、斜面培養の表面は白色菌糸体で大部分覆われており、その裏面は暗いクリーム形態であった(図4)。
このような形態学的特性によって分離されたフザリウム属菌株はフザリウムソラニと同定された。
【0042】
(2)分子生物学的同定
A.DNA抽出
本発明の分離されたフザリウムソラニ菌株の全体ゲノムDNAをポテトデキストロースアガ培地で育てた菌糸体からCorrell等の方法で抽出した[Correll JC, Klittich CJR, Leslie JF.(1987) Nitrate nonutilizing mutants of Fusarium oxysporum and their use in vegetative compatibility tests. Phytopathology, 77, 1640−1646]。
【0043】
本発明のフザリウムソラニ菌株を培養して、菌糸の覆われている培地に液体窒素を充填した後、常温で液体窒素を蒸発させる。液体窒素が蒸発した後、もう1回入れて前記過程を繰返し行う。液体窒素が全て蒸発した後、65℃の溶菌液[50mM Tris pH8.0、50mM EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、3% SDS(sodium dodecylsulfate)、1%2−メルカプトエタノールおよび0.1 m/mLのプロテイナーゼK]を添加し、しかる後に、65℃で1時間反応させる。反応の後、0.5mLのフェノール溶液を入れて穏やかに振とうした後、8000rpmの速度で5分間遠心分離してフェノール層と水溶液層を分離する。水溶液層を丁寧に他のチューブに移した後、水溶液層に残っているフェノール層を除去するために、クロロホルムおよびイソアミルアルコールが24:1の比率で混ざっている溶液0.4mLを入れて振とうした後、遠心分離して水溶液層を新しいチューブに移す。ここに0.05mLの7.5M酢酸アンモニウム溶液を入れてて丁寧に混ぜる。その後、−20℃の95%エタノールを0.88mL入れた後、13000rpmの速度で20分間遠心分離してDNAを沈殿させる。上澄み液を捨て、70%エタノールを入れてDNAを洗浄し、さらに遠心分離してDNAを沈殿させて70%エタノールを捨て、TE溶液(10mM Tris、1mM EDTA、pH8.0)を入れて保管する。
【0044】
B.DNA電気泳動および相同性を用いた同定
Hue等により提案されたフザリウム特異プライマーである、配列番号1のP28SL(5’−ACA AAT TAC AAC TCG GGC CCG AGA−3’)と配列番号2のP58SL(5’−AGT ATT CTG GCG GGC ATG CCT GT−3’)を用いた対照群PCR分析が利用された[Hue, F.X., M.Huerre, M.A. Rouffault, and C.D. Bievre. Specified detection of Fusarium species in blood and tissues by a PCR technique. Journal of Clinical Microbiology, 37: 2434−2438. 1999]。前記フザリウム特異プライマー対は、PCRによってフザリウム属菌株のrDNAをコードする遺伝子の断片を増幅させる。前記P28SLおよびP58SLプライマー対の結合部位はrDNAのITS2および5.8Sと28S部分であって、フザリウム菌株で保存される部分である。
【0045】
前記A.で抽出した1ngのDNA、前記P28SLおよびP58SLプライマー対、並びにプロメガより購入したPCRプリミクスチャー(pre−mixture)を使用した。初期変性は94℃で10分間反応させた。その後、94℃1分間変性(denaturation)、60℃で1分間アニーリング(annealing)、72℃で1分間伸長(extension)反応を1サイクルとして、PCRを40サイクル繰返し行い、DNA断片を増幅した。増幅の後、最終伸長を72℃で10分間反応させた。
【0046】
前記PCR反応産物は2%アガロースゲルを製造してTris−アセテート−EDTA(Tris−acetate−EDTA)緩衝液で電気泳動した。電気泳動が済んだ後、臭化エチジウム(ethidium bromide)溶液に入れて染色し、染色されたゲルを紫外線に照らすと、増幅されたバンドを確認することができた。
【0047】
本発明のフザリウム菌株のPCR増幅産物(F)は、対照群として使用されたフザリウムモニリフォルメNRRL13569(S−2)およびフザリウムオキシスポラムKTCC16909(S−1)と同様に、300〜400bpのDNA断片サイズを示した(図5)。
本発明のフザリウム菌株のPCR増幅産物を精製した後、マクロジェン(韓国)でその配列を分析し、GenBankデータベースのBLAST検索によって相同性を調査した。本発明のフザリウム菌株のITS−5.8rDNA配列は配列番号3に示した。本発明のフザリウム菌株のITS−5.8rDNA配列はフザリウムソラニのものと98%以上の相同性を示した(図6)。
【0048】
よって、本発明の菌株はフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040と命名し、韓国微生物保存センターに2008年1月15日に寄託番号KCCM10881Pでブダペスト条約に基づいて国際寄託した。
【0049】
実施例2:環状デプシペプチドの生産および分離
(1)フザリウム制限培地ブロスにおける培養
1×10spore/mLのフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040をフザリウム制限培地ブロス(FDM broth;リットル当り25gのスクロース、4.25gのNaNO、5gのNaCl、2.5gのMgSO7HO、1.36gのKHPO、0.01gのFeSO7HO、および0.0029gのZnSO7HO)100mLに接種して25℃で7日間培養した。
【0050】
(2)穀類培地における培養
1×10spore/mLのフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040を、50gの米を滅菌蒸留水で40重量%の水分含量に調整した米培地に接種して25℃で7日間培養した。
【0051】
(3)培養物からの環状デプシペプチドの抽出
前記(1)の菌糸体を含んでいる培養液に、培養液の2倍に相当するクロロホルムを入れて激烈に振とうした後、下層のクロロホルム層を取り、これを乾燥させた後、メタノールでさらに溶解させた。
前記(2)のフザリウムが培養された穀類培地は12時間常温で乾燥させる。乾燥した菌糸体は、均質にした後、アセトニトリル:メタノール:水を16:3:1の体積比で混合した溶媒75mLで一晩抽出し、しかる後に、滅菌濾過紙で濾過した。濾液は25mLのn−ヘプタンで2回脂肪を除去し、下層を乾燥させた後、さらにメタノール:水を55:45の体積比で混合した溶媒50mLに溶解させ、45mLの二塩化メタンで2回抽出した。二塩化メタン層を乾燥させた後、メタノールでさらに溶解させた。
【0052】
(4)抽出物からの環状デプシペプチドの分離
前記(1)および(2)の培養物から製造された(3)の抽出物それぞれを、シセイドパックC18カラム(0.46×25cm)[資生党、日本]を用いて、アセトニトリル:水を70:30の体積比で混合した溶液とともに分当り1mLの流速で40分間溶出させた。ピークは210nmで検出された。
【0053】
前記(1)のフザリウム制限培地ブロスから抽出した抽出液に対しては2次代謝産物を確認することができなかった(図7)。ところが、前記(2)の穀類培地から抽出した抽出液では9.7分と13.4分にそれぞれピークを確認することができた(図8)。図6において、9.7分に溶出した化合物は化合物Aと命名し、13.4分に溶出した化合物は化合物Bと命名して区分した。
【0054】
Grom−sil pack ODS preparative column(1.0×25cm)を用いて、アセトニトリル:水を65:35の体積比で混合した溶液を分当り3mLの流速にして前記化合物AおよびBを分離し、これらの化合物それぞれを、さらにシセイドパックC18カラムを用いて、アセトニトリル:水を70:30の体積比で混合した溶液とともに分当り1mLの流速で精製した。
【0055】
(5)分子量の確認
前記(4)の化合物AおよびBはエレクトロスプレイイオン化質量分析器(electrospray ionization mass spectrometry、ESI−MS)を用いて分子量を測定した結果、その分子量はそれぞれ586.36および600.36m/zであることを確認することができた(図9および図10)。
化合物AおよびBは、既存に報告された環状デプシペプチドの分子量と非常に類似であった。報告された化合物の由来、分子量および文献をまとめて表1に示した。
【0056】
【表1】

Song等(2006):Song HH, Ahn JH, Lim YH, Lee C, (2006) Analysis of beauvericin and unusual enniatins co−produced by Fusarium oxysporum FB1501 (KFCC 11363P). J. Microbiol. Biotechnol. 16, 11111119
Belofsky等(1999):Belofsky GN, Jensen PR, Fenical W. (1999) Sansalvamide: A new cytotoxic cyclic depsipeptide produced by a marine fungus of the genus Fusarium. Tetrahedron Lett. 40, 2913−2916
Cueto等(2000): Cueto M, Jensen PR, Fenical W. (2000) N−Methylsansalvamide, a cytotoxic cyclic depsipeptide from a marine fungus of the genus Fusarium. Phytochemistry. 55, 223−226
Oh等(2006):Oh DC, Jensen PR, Fenical W. (2006) Zygosporamide, a cytotoxic cyclic depsipeptide from the marine−derived fungus Zygosporium masonii. Tetrahedron Lett. 47, 8625−8628
【0057】
実施例3:環状デプシペプチドの構造分析
(A)化合物A
化合物Aの機能基確認のためにFT IR−8400S赤外線分光器(SHIMADZU、日本)を用いた。化合物AはIR分析の結果、アミド結合(1654.42cm−1)およびエステル結合(1745.52cm−1)を持っていた(図11)。最大UVスペクトルはメタノールで287nmであり、融解点測定器(Thermo fisher scientific Inc.Waltham、米国)で測定した融解点は82℃であった。
ID−NMR(H NMR、13C NMRおよびDEPT)測定は、Bruker DMX 600スペクトロメーターシステムを用い、2D−NMR(COSY、HMQCおよびHMBC)はBruker AVANCE800スペクトロメーターシステムを用いてメタノール(CDOD)で測定した。
H NMRおよび13C NMRスペクトル結果は、化合物Aが典型的な環状デプシペプチドであることを示した(表2)。
【0058】
【表2】

【0059】
DEPTおよび2D−NMRスペクトル結果(COSY、HMQCおよびHMBC)は、化合物Aがロイシン酸(OLeu)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)およびロイシン(Leu)の5個単位からなっていることを確認可能にした。化合物Aにおいて、前記5個単位の順序はHMBC相関関係データ分析によって決定した(図12)。
【0060】
これにより、化合物Aは化学式2の環状ペンタデプシペプチドであることを確認することができた。
【化3】

化学式2
【0061】
前記化学式2の化合物は、サンサルバミドとは4つのアミノ酸および1つのヒドロキシ酸の結合順序において差異を示す新規の環状ペンタデプシペプチドであって、ネオ−サンサルバミドと命名した。
【0062】
(2)化合物B
化合物Bは、IR分析の結果、アミド結合(1653.24cm−1)およびエステル結合(1742.65cm−1)を持っていた(図13)。最大UVスペクトルはメタノールで213nmであり、融解点は82℃であった。
1D−NMR(H NMR、13C NMR、およびDEPT)測定は、Bruker DMX 600スペクトロメーターシステムを用い、2D−NMR(COSY、HMQCおよびHMBC)はBruker DMX 600 スペクトロメーターシステムを用いてCDClで測定した。
H NMRおよび13C NMRスペクトル結果は、化合物Bが典型的な環状デプシペプチドであることを示した(表3)。
【0063】
【表3】

【0064】
DEPTおよび2D−NMRスペクトル結果(COSY、HMQCおよびHMBC)は、化合物Bがロイシン酸(OLeu)、N−メチルロイシン(N−MeLeu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)およびロイシン(Leu)の5個単位からなっていることを確認可能にした。化合物Bにおいて、前記5個単位の順序はHMBC相関関係データ分析によって決定した(図14)。
【0065】
これにより、化合物Bは化学式1の環状ペンタデプシペプチドであることを確認することができた。
【化4】

化学式1
【0066】
前記化学式1の化合物は、N−メチルサンサルバミドとは4つのアミノ酸および1つのヒドロキシ酸の結合順序において差異を示す新規の環状ペンタデプシペプチドであって、ネオ−N−メチルサンサルバミドと命名した。
【0067】
(3)立体化学構造の決定
化合物AおよびBに含まれたアミノ酸の立体化学構造を確認するために酸加水分解した後、Marfey試薬によって各アミノ酸を誘導体化させた後、対照群と共にHPLCで分析し、その分析結果を図15(化合物A)および図16(化合物B)にそれぞれ示した。化合物AびBに含まれた全てのアミノ酸はL型であることを確認することができた。
【0068】
実施例4:細胞毒性の測定
公知の環状ヘキサデプシペプチド(ビューベリシン、エンニアチンH、IおよびMK1688)と化学式1および2の化合物の多薬剤耐性がない癌細胞株および多薬剤耐性を持つ癌細胞株を対象としてSRB方法で細胞毒性を測定した。
【0069】
肺癌細胞株(A549)、卵巣癌細胞株(SK−OV−3)および皮膚癌細胞株(SK−MEL−2)、子宮肉腫細胞株(MEA−SA)およびその多薬剤耐性癌細胞株(MES−SA/DX5)はAmerican Type Culture Collection(米国)より購入し、大腸癌細胞株(HCT15)は米国国立癌センターから供給を受け、HCT15の多薬剤耐性癌細胞株(HCT15/CL02)はHCT15をドキソルビシンに連続的および階段式で露出させて製造された細胞株の供給を韓国化学研究院から受けた。EC50は分析条件で50%の細胞成長が阻害される濃度に決定した。対照群としてドキソルビシンが共に使用された。
【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
サンサルバミドの粗抽出物が大部分の癌細胞に対して試験管内細胞毒性を示し、大腸癌細胞株HCT116に対してIC50値が9.8μg/mLであるとBelofsky等によって報告された[Belofsky et al., 1999]。また、N−メチルサンサルバミドの米国国立癌センターの癌細胞株に対する試験管内細胞毒性試験結果においてもGI508.3μMであることがCeuto等によって報告された[Ceuto et al., 2000]。表4および表5の結果によれば、化学式1および化学式2の環状ペンタデプシペプチドは、多薬剤耐性の保有有無を問わずに大部分の癌細胞株に対してサンサルバミドAまたはN−メチルサンサルバミドと同等水準の細胞毒性を示した。また、化学式1の環状ペンタデプシペプチドは、化学式2の環状ペンタデプシペプチドに比べて多薬剤耐性癌細胞株に対する増殖抑制活性が優れた(図17および図20)。
【0073】
実施例5:多薬剤耐性抑制活性の測定
化学式1および2の環状ペンタデプシペプチドの多薬剤耐性抑制活性を多薬剤耐性のない癌細胞株(MES−SAおよびHCT15)と比較して多薬剤耐性を持つ癌細胞、すなわちMES−SA/DX5およびHCT15/CL02で確認した。多薬剤耐性癌細胞株に対するパクリタキセル(TAX)の細胞毒性に対する化学式1および2の環状ペンタデプシペプチドの多薬剤耐性の逆転効果を測定した(表6)。対照群としてP−糖タンパク質阻害活性を有し、多薬剤耐性抑制剤として用いられているベラパミル(VER)を用いた。
【0074】
【表6】

【0075】
化学式2の環状ペンタデプシペプチドは、多薬剤耐性を有する癌細胞株に対するパクリタキセルの細胞毒性に対して若干増進させたが、その幅は大きくなかった。これとは異なり、化学式1の環状ペンタデプシペプチドはパクリタキセルの細胞毒性を顕著に増進させた(図21〜図24)。よって、化学式1の環状ペンタデプシペプチドにおいて、N−メチル基は多薬剤耐性抑制活性の発現に重要な因子であると推定される。化学式1の環状ペンタデプシペプチドは陽性対照群として使用されたベラパミルと類似の多薬剤耐性抑制活性を示した。
【0076】
実施例6:抗バクテリア活性および抗カビ活性の測定
(1)抗バクテリア活性
3種のグラム陽性菌(L. monocytogenes ATCC 14028;S. aureus ATCC 35556;B. cereus ATCC 13061 )、3種のグラム陰性菌(E. coli ATCC8739;P. aeruginosa ATCC9026;S. typhimurium ATCC14028)に対する抗バクテリア活性を測定した。化学式1および化学式2の化合物をそれぞれ0.1、0.5、1および2mMの濃度でDMSOに溶解させた後、滅菌ペーパーディスク(直径5mm)に滴下し、DMSOは蒸発させた。TSA(Tryptic Soy Agar)に1×10CFU/mL濃度のバクテリアを接種し、前記ペーパーディスクをのせて37℃で24時間培養した後、クリアゾーンおよびその直径を観察した。
【0077】
化学式1および2の化合物を試験したバクテリア全体に対して抗バクテリア活性は示していない。
【0078】
(2)抗カビ活性
4種のカビ菌株(Mucor rouxii、Penicillium citrinum、Fusarium oxysporum、およびAspergillus oryzae)に対する抗カビ活性を測定した。
【0079】
化学式1および2の化合物をそれぞれ1および10mMの濃度でメタノールに溶解させた後、滅菌ペーパーディスク(直径8mm)に滴下し、メタノールは蒸発させた。ポテトデキストロースアガで培養されたカビ菌糸体上に前記ペーパーディスクをのせて25℃で48時間培養した後、クリアゾーンとその直径を観察した。対照群として、メタノールのみを滴下したペーパーディスクが使用された。
【0080】
化学式1および2の化合物は、4種のカビ菌株に対して1mMの濃度では阻害活性を示さなかった。ところが、化学式1および2の化合物は、ムコールルキシー(Mucor rouxii)に対して、10mMの濃度ではクリアゾーンが観察されていないが、菌糸成長の阻害は確認することができた(図25)。化学式2の化合物はフザリウムオキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対してクリアゾーンが現れてていないが、化学式1の化合物は弱い阻害活性を示した(図26)。
【0081】
実施例7:培地の選定
1×10spore/mLのフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040を、50gの穀類を滅菌させた後で蒸留水で40重量%の水分含量に調整した穀類培地に接種し、25℃で培養しながら一日に一回攪拌して培養した。6種の異なる固体穀類培地で培養したとき、培養期間によって生産される化学式1および2の化合物の生産量をそれぞれ図27および図28に示した。
【0082】
化学式2の化合物は、米培地を用いて2週培養したときに最大生産量(平均0.375g/kg)を示した。米をトウモロコシ、小麦および唐黍に変更すると、生産量は米における生産量に比べて約80%に減少した。大麦培地では特に0.112g/kgと生産量が低かった。
【0083】
化学式1の化合物も、米培地を用いて2週培養したときに最大生産量(平均0.689g/kg)を示し、小麦培地を用いて3週培養したときに0.672g/kgを示した。米をトウモロコシおよびライ麦で代替したとき、化学式1の化合物の生産は約25%減少した。化学式1の化合物の最終生産量はライ麦または大麦に比べて2倍程度であった。
【0084】
実施例8:培養条件の選定
本発明のフザリウムソラニKCCM90040菌株において、化学式1および2の化合物を生産するための培養条件の実験結果は表7に示した。
【表7】

【0085】
サンサルバミドは海水基材培地で海洋フザリウム菌株を培養したときに0.642g/17L生産されると報告された[Belofsky GN, Jensen PR, Fenical W.(1999) Sansalvamide: A new cytotoxic cyclic depsipeptide produced by a marine fungus of the genus Fusarium.Tetrahedron Lett. 40, 2913−2916]。また、N−メチルサンサルバミドは海水基材培地でフザリウムCNL−619菌株を培養したときに3.1mg/L生産されると報告された[Ceuto M, Jensen PR, Fenical W.(2000) N−Methylsansalvamide, a cytotoxic cyclic depsipeptide from a marine fungus of the genus Fusarium Phytochemistry. 55, 223−226]。
【0086】
本発明のフザリウム菌株を米培地で培養したとき、化学式1と2の化合物を生産するのに適した培養条件は温度20〜30℃、湿度20〜50%、培養期間10〜20日であり、さらに好ましい培養条件は温度23〜28℃、湿度35〜45%、培養期間13〜18日であり、最適条件は、化学式1の環状ペンタデプシペプチドの場合、温度25.84℃、湿度37.99%、培養期間16.03日である(図29〜図31)。化学式2の環状ペンタデプシペプチドの場合は、温度25.87℃、湿度33.87%、培養期間15.58日が最適条件であった。前記最適条件で培養したとき、化学式1の環状ペンタデプシペプチドは0.7g/kg生産され、化学式2の環状ペンタデプシペプチドは0.4g/kg生産された。
【0087】
製剤例1:錠剤の製造
成分含量
化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチド 100mg
コーンスターチ 68mg
ラクトース 90mg
微細結晶質セルロース 40mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
【0088】
通常の錠剤の製造方法によって、前記成分を提示された含量で添加して均一に混合し、攪拌した後、顆粒化した。次いで、乾燥の後、打錠器を用いて、1錠当り有効成分として化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチドが100mg含有された錠剤を製造した。
【0089】
製剤例2:注射剤の製造
成分含量
化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチド 50mg
メタ重亜硫酸ナトリウム 1.5mg
メチルパラベン 1.0mg
プロピルパラベン 0.1mg
注射用精製水 適量
【0090】
通常の注射剤の製造方法によって、前記成分を提示された含量で沸騰水に攪拌しながら溶解させた後、冷却させて2mL容量の滅菌バイアルに充填し、適量の注射用精製水を2mLとなるように補充してバイアル1個当り50mgの化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチドを含む注射剤を製造した。
【0091】
製剤例3:シロップ剤の製造
成分含量
化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチド 200mg
濃縮果汁 2g
スクロース 5g
クエン酸ナトリウム 100mg
香料 70mg
水 適量
【0092】
通常のシロップの製造方法によって、前記成分を提示された含量で適量の水に混合し、加熱して溶解させた後、冷却させ、容器に充填して200mL容量の飲料1瓶当り200mgの化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチドを含むシロップ剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の環状ペンタデプシペプチドは、多様な癌細胞に対して細胞毒性を示すので、腫瘍治療剤として使用でき、ひいては細胞の薬剤耐性抑制剤として使用できる。また、本発明のフザリウム菌株は、癌細胞に対する細胞毒性および薬剤耐性抑制活性を示す環状ペンタデプシペプチドを生産する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1または下記化学式2の環状ペンタデプシペプチドを生産するフザリウム属菌株。
【化1】

化学式1
【化2】

化学式2
【請求項2】
フザリウムソラニであることを特徴とする、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記フザリウムソラニがフザリウムソラニ(Fusarium solani)KCCM90040[寄託番号KCCM10881P]であることを特徴とする、請求項2に記載の菌株。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の菌株を培養して請求項1の化学式1または化学式2の環状ペンタデプシペプチドを生産する方法。
【請求項5】
前記培養は穀類を用いた固体培養であることを特徴とする、請求項4に記載の環状ペンタデプシペプチドを生産する方法。
【請求項6】
前記穀類が米であることを特徴とする、請求項5に記載の環状ペンタデプシペプチドを生産する方法。
【請求項7】
前記培養条件は温度20〜30℃、湿度20〜50%、培養期間10〜20日であることを特徴とする、請求項5に記載の環状ペンタデプシペプチドを生産する方法。
【請求項8】
下記化学式1の環状ペンタデプシペプチド。
【化3】

化学式1
【請求項9】
下記化学式2の環状ペンタデプシペプチド。
【化4】

化学式2
【請求項10】
下記化学式1の環状ペンタデプシペプチド、下記化学式2の環状ペンタデプシペプチドおよびこれらの薬学的に許容される塩よりなる群から選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有する、薬剤耐性抑制用薬学組成物。
【化5】

化学式1
【化6】

化学式2
【請求項11】
腫瘍細胞の薬剤耐性抑制用であることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤耐性抑制用薬学組成物。
【請求項12】
下記化学式1の環状ペンタデプシペプチド、下記化学式2の環状ペンタデプシペプチドおよびこれらの薬学的に許容される塩よりなる群から選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有する、腫瘍細胞増殖抑制活性を有する癌治療用薬学組成物。
【化7】

化学式1
【化8】

化学式2

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2011−505877(P2011−505877A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544880(P2010−544880)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000005
【国際公開番号】WO2010/076905
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(507415303)チュン−アン ユニバーシティー インダストリー−アカデミー コーポレーション ファンデーション (4)
【Fターム(参考)】