説明

環状ホスファゼン化合物及び有機発光ダイオード中でのその使用

少なくとも1種の環状ホスファゼン化合物を含有している有機発光ダイオード、少なくとも1種のマトリックス物質及び少なくとも1種の発光物質から構成されている発光層(この際、少なくとも1種のマトリックス物質は、少なくとも1種の環状ホスファゼン化合物を含有している)、有機発光ダイオード中での環状ホスファゼン化合物の使用並びに本発明による有機発光ダイオード少なくとも1個を有している固定型ディスプレイ、移動型ディスプレイ及び照明ユニットから成る群から選択される装置及び選択される環状ホスファゼン化合物及びその製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の環状ホスファゼン化合物を含有している有機発光ダイオード、少なくとも1種のマトリックス物質及び少なくとも1種の発光物質から構成されている発光層(この際、少なくとも1種のマトリックス物質は、少なくとも1種のホスファゼン化合物を含有している)、有機発光ダイオード中での環状ホスファゼン化合物の使用並びに本発明による有機発光ダイオード少なくとも1個を有している固定型ディスプレイ、移動型ディスプレイ及び照明ユニットからなる群から選択される装置及び選択される環状ホスファゼン化合物及びそれを製造する方法に関する。
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)中では、それが電流により励起される場合に光を放出することのできる物質の性質が利用される。OLEDsは、フラットスクリーンを製造するための陰極線管及び液晶ディスプレイに対する選択肢として殊に重要である。非常にコンパクトな構造及び内在的に低い電流消費量に基づき、OLEDsを有している装置は、殊に動的用途、例えば携帯電話、ラップトップ等中での適用のため、並びに照明のために好適である。
【0003】
OLEDsの機能の基本原理並びにOLEDの好適な構造(層)は、例えばWO2005/113704及びその引用文献中に記載されている。
【0004】
発光物質(発光体)としては、蛍光物質(蛍光発光体)と並んで燐光物質(燐光−発光体)を含有することができる。燐光発光体は、通常は、一重項−発光を示す蛍光−発光体とは対照的に、三重項−発光を示す有機金属錯体である(M.A.Baldo et al., Appl.Phys. Lett.1999,75,4-6)。量子力学的理由から、燐光発光体の使用時には、4倍までの量子−、エネルギー及び出力効率が可能である。
【0005】
殊に電磁スペクトルの青色領域の光を放出する、長い動作寿命、良好な効率、熱負荷に対する高い安定性及び低い使用電圧及び動作電圧を有する有機発光ダイオードは特別重要である。
【0006】
前記の特性を実際に利用するためには、好適な発光物質を提供することが必要であるばかりではなく、OLEDの他の成分(相補的物質)も適切な装置構成中で相互に適合されているべきである。このような装置構成は、例えばその中に好適な発光体が分割された形で存在する特別なマトリックス材料を有することができる。更に、これらの構成は、ブロッカー物質を含有することができ、この場合には、この装置構成中に正孔−、励起子−及び/又は電子ブロッカーが存在することができる。付加的に又は選択的に、この装置構成は、更に正孔注入物質及び/又は電子注入物質及び/又は電荷輸送物質、例えば正孔伝導体物質及び/又は電子伝導体物質を有することができる。この場合に、実際の発光体と組み合わせて使用される前記物質の選択は、特にOLEDsの効率並びに寿命に重大な影響を有する。
【0007】
技術水準では、OLEDsの種々の層中での使用のために多くの種々の物質が提案されている。
【0008】
DE10330761A1は、発光可能な有機半導体及びマトリックス物質からの混合物、その使用及びこれを含有している電気構成成分に関している。DE10330761による混合物は、少なくとも2種の物質から構成されており、この1方はマトリックス物質として作用し、他方は放出可能な発光物質(Emissionsmaterial)である。このマトリックス物質は、式L=X及び/又はM=Xの構造単位少なくとも1つを有している化合物であり、ここで、基Xは少なくとも1つの非結合電子対(nicht-bindendes Elektoronen-paar)を有し、基Lは、P、As、Sb又はBiを表し、基MはS、Se、Teを表し、場合によってはガラス状層を形成することもできる。DE10330761A1中には、前記の式に該当する好適な多くの種々のマトリックス物質が挙げられている。特に、このマトリックス物質は、環状ホスファゼン化合物であることができ、ここで、この環状ホスファゼンは、4〜14個の環原子を有することができ、燐上に多数の種々の置換基を有していることもできる。マトリックス物質として好適なホスファゼンの具体的な例は、DE10330761A1中には挙げられていない。即ち、DE10330761A1には、マトリックス物質として、好ましい特別なスピロ化合物(ホスファゼンではない)が挙げられている。
【0009】
JP08−283416中には、環状ホスファゼン化合物並びにこれを含有している有機の薄膜素子が記載されている。ここで、これは、環員数6又は8を有する特定の環状ホスファゼンであり、式中の燐原子は、フェノキシ−基又はN,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミノ]−3−フェニルオキシ−基で置換されており、この際、燐に付いている基の少なくとも2つは、フェノキシ−基である。JP08−283416によれば、この特定のホスファゼンは、それが高い耐熱性及び高い非晶質安定性を有し、塩素基及び他の不純物を含有していないことで優れている。JP08−283416によれば、この特定の環状ホスファゼンは、正孔輸送−及び正孔注入層中で使用されている。
【0010】
JP2006−278549Aは、(シクロ)ホスファゼン−化合物を含有している層を有している有機発光ダイオードに関している。JP2006−278549A中には、好適な(シクロ)ホスファゼン−化合物として、環員数4〜8を有する(シクロ)ホスファゼン−化合物が挙げられている。燐に付いている好適な置換基は、酸素を介して結合している基−OR又は−ORであり、ここでは、明確に、置換基−O−C−CF及び/又は−O−C−Fを有する6員のホスファゼンが挙げられている。
【0011】
V.Vicente et al.,(New.J.Chem.,2004,28,418-424)中には、炭素原子を介して結合されたヘテロ環式置換基を有するシクロトリホスファゼンの合成及び構造が開示されている。使用されているヘテロ環式置換基は、2−チエニル−、3−チエニル−及び3,3’−ビチエニル−2,2’−イレン−基である。記載のシクロトリホスファゼンの形態学的特性に基づき、これは、遊離のヘテロ原子と遷移金属との配位によって、できるだけ重要な電気特性を有する積層された構造を形成することができると想定されている。V.Vincente et al.,中には、シクロトリホスファゼンの具体的な使用可能性は記載されていない。
【0012】
V.Vicente et al.,Mang.Res.Chem.2003,41:183-192中には、シクロトリホスファゼンのNMR−検査が開示されている。特に、炭素原子を介して結合されたヘテロ環式置換基を有するシクロトリホスファゼンの構造がNMR−分光分析検査されている。前記文献中に開示されている2−チエニル−、3−チエニル−及び3,3’−ビチエニル−2,2’−イレン−基で置換されているシクロトリホスファゼンと並んで、2−ピリジル基を有するシクロトリホスファゼン並びにスピロ基を有するシクロトリホスファゼンが開示されている。そのNMR−検査は、検査シクロトリホスファゼンの電気特性の解明を目的としている。V.Vicente et al.中には、シクロトリホスファゼンの具体的な使用可能性は記載されていない。
【0013】
C.Combes-Chamalet et al.,J.Chem.Soc.,Perkin Trans. 2,1997,15-18は、スピロ−シクロトリホスファゼンの合成及び構造に関している。これは、−シクロホスファゼンと同様に−水又は有機溶剤との包接付加体(Einschluss-Addukten)の形成のために重要でありうる。C.Combes-Chamalet et al.中には、このスピロシクロトリホスファゼンの具体的な使用可能性は記載されていない。
【0014】
前記の技術水準に対抗する本発明の課題は、OLED中sでの使用のために好適な物質、殊に発光層中のマトリックス物質としての使用及び/又は正孔ブロッカー物質としての使用のために好適な物質を提供することであり、この際、記載の発光層は好ましくは少なくとも1つの青色発光体を含有する。従って、殊に、高い三重項−エネルギーを有し、これによってOLEDs中で使用される青色発光体の発光を確保する、OLEDsの相補的物質(好ましくはマトリックス物質、電荷輸送物質、ブロッカー物質、電荷注入物質)が提供されるべきである。更に、これらの物質は、良好な効率、良好な動作寿命並びに熱負荷に対する高い安定性及びOLEDsの低い使用−及び動作電圧を確保するOLEDsを提供するために好適であるべきである。
【0015】
この課題は、一般式(I):
【化1】

[式中、nは3〜8、好ましくは3又は4、特別好ましくは3であり:
、Rは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、非置換の又は置換されたシクロアルキル、非置換の又は置換されたヘテロシクロアルキル、非置換の又は置換されたアルケニル、非置換の又は置換されたアルキニル、非置換の又は置換されたアラルキル又はハロゲン、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、特別好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール又は置換又は非置換のアリールオキシ、全く特別好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリールを表し、この際、n個の基中のR及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよい;又は
前記の基R及びRは、一般式(I)のn個の基中で相互に無関係に、単結合、C〜C−アルキレン橋、好ましくはC〜C−アルキレン橋、アリーレン橋、好ましくは1,2−フェニレン橋又はC〜C−アルケニレン橋、好ましくはC〜C−アルケニレン橋を介して相互に結合して、基R及びRがそれらと結合しているP−原子と一緒になって環を形成しており;好ましくはR及びR−それらが相互に結合している場合に−は、一般式(I)のn個の基中で相互に無関係に、一緒になって、次の基の1つを形成している:
【化2】

(ここで、
は相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、非置換の又は置換されたシクロアルキル、非置換の又は置換されたヘテロシクロアルキル、非置換の又は置換されたアルケニル、非置換の又は置換されたアルキニル、非置換の又は置換されたアラルキル又はハロゲン、好ましくはF又は擬ハロゲン、好ましくはCN、好ましくは相互に無関係に置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ又はF又はCNを表し;
xは相互に無関係に、0、1、2、3又は4、好ましくは0、1、2であり;
yは相互に無関係に、0、1又は2、好ましくは0又は1である)]の環状ホスファゼン化合物少なくとも1種を含有している有機発光ダイオードによって解決される。
【0016】
従って本発明は、式中のn個の基中に存在する基R又はRの少なくとも1個が、式(I)の環状ホスファゼンのP−原子の少なくとも1個と、酸素原子を介さずに結合しており、この際、基R又はRの少なくとも1個が、好ましくは炭素原子を介して結合していることを特徴としている。
【0017】
本発明によるOLED中で使用される環状ホスファゼン化合物は、OLEDs中での使用のための卓越した能力によって優れている。殊に、本発明により使用される環状ホスファゼン化合物(ここで、基R及びRの少なくとも1つは、P−原子の少なくとも1個と、酸素原子を介して結合しておらず、好ましくは1個の炭素原子を介して結合している)は、その置換基がもっぱら酸素原子を介して燐原子と結合している相応する環状ホスファゼンと比べて、一般に高いガラス転移温度を有し、かつOLEDs中で使用されるような薄い層中で高い非晶質性を有することによって優れている。これによって、少なくとも1種の式(I)の化合物を含有しているOLEDsの最適性能が達成される。更に本発明により使用される環状ホスファゼン化合物は、好ましくは、電気的に励起された三重項状態Tと基底状態Sとの間に、相補的物質として、殊にマトリックス物質、ブロッカー物質、青色発光体用の電荷輸送物質及び/又は電荷注入物質としての使用のために有用である程度に充分大きいエネルギー差を有する。
【0018】
OLED中で使用される層のその置換パターン及び電気特性に依存して、本発明により使用される環状ホスファゼン化合物は、発光層中のマトリックス物質としての使用及び正孔−/励起子ブロッカー物質としての使用と並んで、電子伝導体、電子注入物質及び/又は電子−/励起子ブロッカー物質、正孔注入物質及び/又は正孔伝導体として使用することもできる。OLEDsの相応する層は、当業者にとっては原則的に公知であり、例えば、WO2005/113704又はWO2005/019373中に記載されている。
【0019】
本発明により使用される環状ホスファゼン化合物は、好ましくは発光層中でのマトリックス物質として、及び/又は正孔−/励起子ブロッカー物質及び/又は電子伝導体として、特別好ましくは発光層及び/又は正孔−/励起子ブロッカー中のマトリックス物質として使用される。
【0020】
本発明において、非置換の又は置換されたアリール基、非置換の又は置換されたヘテロアリール基、非置換の又は置換されたアルキル基、非置換の又は置換されたシクロアルキル基、非置換の又は置換されたヘテロシクロアリール基、非置換の又は置換されたアルケニル基、非置換の又は置換されたアルキニル基、非置換の又は置換されたアラルキル基及びドナー−及び/又はアクセプター作用を有する基の概念は、次のように定義される:
アリール基とは、1個の芳香環又は複数の縮合芳香環から構成されている、炭素原子数6〜30、好ましくは炭素原子数6〜18を有する基本骨格を有する基であると理解すべきである。好適な基本骨格は、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル又はフェナンスレニルである。この基本骨格は非置換であってよい(即ち、置換可能である全ての炭素原子は水素原子を有する)か又は基本骨格の1個、複数個又は全ての置換可能な位置が置換されていてもよい。好適な置換基は、例えば次のものである:ジウテリウム、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルバゾイル基、シリル基、アルキル基、好ましくは炭素原子数1〜8を有するアルキル基、特別好ましくはメチル、エチル又はi−プロピル、アリール基、好ましくは置換された又は非置換であってよいC−アリール基、ヘテロアリール基、好ましくは少なくとも1個の窒素原子を有しているヘテロアリール基、特別好ましくはピリジル基、アルケニル基、好ましくは1個の二重結合を有するアルケニル基、特に好ましくは1個の二重結合及び炭素原子数1〜8を有するアルケニル基又はドナー−又はアクセプター作用を有する基。ドナー−又はアクセプター作用を有する好適な基は後に挙げられている。置換されたアリール基は、メチル、エチル、イソプロピル、アルコキシ、ヘテロアリール、CN及びアリールオキシから成る群から選択される置換基を有することが全く特別好ましい。アリール基は、C〜C18−アリール基が好ましく、場合により少なくとも1個以上の前記の置換基で置換されているC−アリール基が特別好ましい。C〜C18−アリール基、特にC−アリール基は、0、1、2、3又は4個の、全く好ましくは0、1又は2個の前記の置換基を有することが特別好ましい。1実施形で、基R及びRとして特別好ましい好適なアリール基は、1又は2個の置換基を有するC−アリール基である。
【0021】
ヘテロアリール基とは、アリール基の基本骨格中で少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されていて、並びにヘテロアリール基の基本骨格が、好ましくは5〜18個の環原子数を有していることで前記のアリール基とは違っている基であると理解すべきである。好ましいヘテロ原子はN、O及びSである。基R及びRとして好適なヘテロアリール基は、窒素含有ヘテロアリール基が特別有利である。基本骨格の1又は2個の炭素原子がヘテロ原子、特に窒素で置換されていることが全く特別好ましい。この基本骨格は、例えばピリジン、ピリミジン及び5員のヘテロ芳香族化合物、例えばピロール、フラン、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール等の系から選択されることが殊に好ましい。更にこのヘテロアリール基は、縮合環系、例えばカルバゾリル基又はアザカルバゾリル基であることもできる。この基本骨格は、この基本骨格の1個、複数個又は全ての置換可能な位置で置換されていることができる。好適な置換基は、既にアリール基に関連して挙げられているものと同じである。
【0022】
アルキル基とは、炭素原子数1〜20、好ましくは炭素原子数1〜10、特別好ましくは炭素原子数1〜8、全く特別好ましくは炭素原子数1〜4を有する基であると理解すべきである。このアルキル基は分枝又は非分枝であってよく、場合によっては1個以上のヘテロ原子、好ましくはSi、N、O又はS、特別好ましくはN、O又はSで中断されていることができる。更にこのアルキル基は、アリール基に関連して挙げられている置換基1個以上で置換されていることができる。同様にこのアルキル基は、1個以上の(ヘテロ)−アリール基を有することも可能である。従って本発明において、例えばベンジル基は、置換されたアルキル基を表す。この場合に、前記の(ヘテロ)−アリール基の全てが好適である。メチル、エチル、イソ−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル及びt−ブチルから成る群から選択されるアルキル基が特別好ましく、メチル及びエチルが全く特別好ましい。
【0023】
シクロアルキル基とは、炭素原子数3〜20、好ましくは炭素原子数3〜10、特別好ましくは炭素原子数3〜8を有する基であると理解すべきである。この基本骨格は、非置換であることができる(即ち、置換可能である全ての炭素原子は水素原子を有する)か、又は基本骨格の1以上の又は全ての置換可能な位置で置換されていることができる。好適な置換基は、既にアリール基に関連して挙げられている基である。好適なシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0024】
ヘテロシクロアルキル基とは、シクロアルキル基の基本骨格中の少なくとも1個の炭素原子が1個のヘテロ原子で置換されていることで前記のシクロアルキル基とは異なっている基であると理解すべきである。好ましいヘテロ原子はN、O及びSである。シクロアルキル基の基本骨格の炭素原子1個又は2個がヘテロ原子で置換されていることが全く特別好ましい。好適なヘテロシクロアルキル基の例は、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、ジオキサンから誘導される基である。
【0025】
アルケニル基とは、少なくとも2個の炭素原子数を有する前記のアルキル基に相応し、このアルキル基の少なくとも1個のC−C−単結合が1個のC−C−二重結合で置換されていることで違っている基を表すと理解すべきである。このアルケニル基は好ましくは、1個又は2個の二重結合を有する。
【0026】
アルキニル基とは、炭素原子数少なくとも2個を有する前記のアルキル基に相応し、そのアルキル基の少なくとも1個のC−C−単結合が1個のC−C−三重結合で置換されていることで違っている基を表すと理解すべきである。このアルキニル基は、好ましくは1又は2個の三重結合を有する。
【0027】
〜C−アルキレン橋、好ましくはC〜C−アルキレン橋とは、主鎖中に炭素原子1〜6個、好ましくは1〜2個を有するアルキレン基であると理解すべきである。このアルキレン橋は、場合によってはアリール基に関連して挙げられている置換基1個以上で置換されていることができる。同様に、このアルキレン基は1個以上の(ヘテロ)−アリール基を有することが可能である。更に、このアルキレン橋の主鎖中には、1個以上のヘテロ原子、好ましくは−O−又は−NR’−(ここで、R’はアルキル−、アリール−、ヘテロアリール−、シクロアルキル−又はヘテロシクロアルキルである)が存在することができる。
【0028】
〜C−アルケニレン橋、好ましくはC〜C−アルケニレン橋とは、主鎖中に炭素原子2〜6個、好ましくは2〜4個を有するアルケニレン基であると理解すべきである。このアルケニレン橋は、場合によりアリール基に関連して挙げられている置換基1個以上で置換されていることができる。同様に、このアルケニレン基は1個以上の(ヘテロ−)−アリール基を有することが可能である。更に、このアルケニレン橋の主鎖中には、1個以上のヘテロ原子、好ましくは−O−又は−NR’−(ここで、R’はアルキル−、アリール−、ヘテロアリール−、シクロアルキル−又はヘテロシクロアルキルである)が存在することができる。
【0029】
アリーレン橋とは、基本骨格中に炭素原子数6〜18を有するアリーレン基であると理解すべきである。このアリーレン基は1個の芳香環又は複数の縮合芳香環から構成されていることができる。好適な基本骨格は、例えばフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン又はフェナンスレニレンである。このアリーレン橋は、場合によりアリール基に関連して挙げられている置換基1個以上で置換されていることができる。このアリーレン橋は、特別好ましくは非置換であるフェニレン橋である。このフェニレン橋は、1,2−フェニレン橋であることが全く特別有利である。
【0030】
ハロゲン基とは、好ましくはF、Cl及びBr、特別好ましくはF及びCl、全く特別好ましくはFであると理解すべきである。
【0031】
擬ハロゲン基とは、好ましくはCN、SCN及びOCN、特別好ましくはCNであると理解すべきである。
【0032】
本発明においては、ドナー−又はアクセプター作用を有する基又は置換基とは、次の基を表すと理解すべきである:
ドナー作用を有する基とは、+1−及び/又は+M−効果を有する基であると理解すべきであり、アクセプター作用を有する基とは、−1−及び/又は−M−効果を有する基であると理解すべきである。ドナー−又はアクセプター作用を有する好適な基は、次のものである:ハロゲン基、好ましくはF、Cl、Br、アルコキシ基又はアリールオキシ基、OR、カルボニル基、エステル基、オキシカルボニルもカルボニルオキシも、アミノ基、NR、アミド基、CHF−基、CHF−基、CF−基、CN−基、チオ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ボロン酸基(Boronsaeure gruppe)、ボロン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィド基、SR、ニトロ基、OCN、ボラン基、シリル基、スタネート基、イミノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ホスフィンオキシド基、ヒドロキシ基又はSCN−基。F、CN、アリールオキシ、アルコキシ、アミノ、CF−基、スルホニル、シリル、スルフィド及びヘテロアリールが全く特別好ましい。ヘテロアリール、シリル、アルコキシ又はアリールオキシ、アミノ及びCNが全く特別好ましい。
【0033】
ドナー−又はアクセプター作用を有する前記の基は、ドナー−及びアクセプター作用を有する基の前記リスト中に挙げられていない、本明細書中に挙げられている他の基及び置換基が、ドナー−又はアクセプター作用を有する可能性を排除するものではない。
【0034】
アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びドナー−及び/又はアクセプター作用を有する基、並びにアルキレン−及びアリーレン基は、−前記のように−置換又は非置換であることができる。本発明における非置換の基とは、その中の基の置換可能な原子が水素原子を有している基であると理解すべきである。本発明における置換された基とは、その中の1個以上の置換可能な原子の1個以上が少なくとも1位置で、水素原子の代わりに置換基を有している基であると理解すべきである。好適な置換基は、アリール基に関連して先に挙げられている置換基である。
【0035】
本発明における化合物中に同じ呼称を有する基が複数存在する場合には、これらの基はそれぞれ相互に無関係に記載のものを表すことができる。
【0036】
一般式(I)の環状ホスファゼン化合物のn個の基中に存在し、環状ホスファゼン化合物の少なくとも1個のP−原子と、酸素原子を介さず、好ましくは炭素原子を介して結合している基R又はRの少なくとも1個は、特別好ましくは非置換の又は置換されたアリール基又は非置換の又は置換されたヘテロアリール基である。好適なアリール基及びヘテロアリール基並びに好適な置換基は、先に挙げられている。C−アリール基、例えば非置換のC−アリール基又は1個又は2個のアルキル基又はアルコキシ基で置換されたC−アリール基が全く特別有利である。少なくとも1個の基R又はRは、例えばフェニル、3,5−ジメチルフェニル又は4−メトキシフェニルであることができる。特別好ましいヘテロアリールは、環原子数5〜18、全く特別好ましくは環原子数5〜13を有し、置換又は非置換であってよいヘテロアリール基である。窒素含有ヘテロアリール基が全く特別有利である。原則的に本発明で使用される一般式(I)の環状ホスファゼン化合物中の窒素含有ヘテロアリール基は、1個の窒素原子又は1個の炭素原子を介して、環状ホスファゼン化合物のP−原子少なくとも1個と結合されていることができる。窒素含有ヘテロアリール基は、炭素原子を介してP−原子と結合していることが有利である。好適なヘテロアリール基の例は、3−ピリジル、4−ピリジル、アザカルバゾリル又は3−カルバゾリルである。
【0037】
更に、一般式(I)の環状ホスファゼン化合物のn個の基の1個以上中の基R及びRは相互に無関係に、単結合、C〜C−アルキレン橋、好ましくはC〜C−アルキレン橋、アリーレン橋、好ましくは1,2−フェニレン橋又はC〜C−アルケニレン橋、好ましくはC〜C−アルケニレン橋を介して相互に結合して、基R及びRがそれらに結合しているP−原子と一緒になって環を形成していることができ;有利にR及びR−それらが相互に結合している場合に−は一緒になって、一般式(I)のn個の基中で相互に無関係に、次の基の1つを形成する:
【化3】

[式中、
は相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、非置換の又は置換されたシクロアルキル、非置換の又は置換されたヘテロシクロアルキル、非置換の又は置換されたアルケニル、非置換の又は置換されたアルキニル、非置換の又は置換されたアラルキル又はハロゲン、好ましくはF又は擬ハロゲン、好ましくはCN、好ましくは相互に無関係に置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ又はF又はCNを表し;
xは相互に無関係に、0、1、2、3又は4、好ましくは0、1又は2であり;
yは相互に無関係に、0、1又は2、好ましくは0又は1である]。
【0038】
式中のR、Rが相互に無関係に置換又は非置換のアリール又は置換又は非置換のヘテロアリールを表し、ここで、n個の基中のR及びRがそれぞれ同じ又は異なるものであってよい、一般式(I)の環状ホスファゼン化合物が全く特別有利である。
【0039】
n個の基中のR及びRがそれぞれ同じであることが有利である。好適な置換又は非置換のアリール基及び好適な置換又は非置換のヘテロアリール基は、先に挙げられている。特別好適な置換又は非置換のアリール基並びに特別好適な置換又は非置換のヘテロアリール基は、酸素原子を介さず、かつ好ましくは炭素原子を介して環状ホスファゼン化合物のP−原子の少なくとも1つと結合している、n個の基中に存在する基R又はRの少なくとも1個に関連して挙げられている基と同じものである。即ち、全く特別好ましい1実施形中では、式(I)の環状ホスファゼン化合物の全ての基R及びRは、酸素原子を介さず、好ましくは窒素−又は炭素原子を介して、特別好ましくは炭素原子を介して、それぞれのP−原子と結合していることを意味している。
【0040】
もう一つの好ましい実施形で、一般式(I)の環状ホスファゼン中のnは3又は4、好ましくは3である。即ち、6又は8環員を有している式(I)の環状ホスファゼン化合物が特別好ましく、この際、6環員を有する式(I)の環状ホスファゼン化合物(シクロトリホスファゼン)が全く特別有利であることを意味している。
【0041】
更に、式中のnが3であり、n個の基中に存在し、酸素原子を介さずに、好ましくは炭素原子を介してP−原子の少なくとも1個と結合している、基R又はRの少なくとも1つが置換又は非置換のアリール基又は置換又は非置換のヘテロアリール基である、式(I)の環状ホスファゼン化合物が全く特別に有利である。
【0042】
従って本発明により使用される環状ホスファゼン化合物は、全く特別有利に、式(Ia)を有する:
【化4】

[式中、
(Het)アリールは、非置換の又は置換されたC6〜14−アリール、例えばフェニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−ジアルキルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル又はC〜C−ジアルコキシフェニル又は環原子数5〜14を有する非置換の又は置換されたヘテロアリールであり、かつ炭素原子を介してホスファゼン環のPと結合している、例えば非置換の又は置換されたカルバゾリル、非置換の又は置換されたアザカルバゾリル又は非置換の又は置換されたピリジルを表し;
、Rは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシであり、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール又は置換又は非置換のヘテロアリールであり、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく;特別好ましくは非置換の又は置換されたC6〜14−アリール、例えばフェニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−ジアルキルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル又はC〜C−ジアルコキシフェニル又は環原子数5〜14を有する非置換の又は置換されたヘテロアリール、例えば又は非置換の又は置換されたピリジル、非置換の又は置換されたカルバゾリル、非置換の又は置換されたアザカルバゾリル(この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なることができる)を表す;又は
前記の基R及びRは相互に無関係に、単結合、C〜C−アルキレン橋、好ましくはC〜C−アルキレン橋、アリーレン橋、好ましくは1,2−フェニレン橋又はC〜C−アルケニレン橋、好ましくはC〜C−アルケニレン橋を介して相互に結合して、基R及びRが、それらに結合しているP−原子と一緒になって環を形成している;好ましくはR及びRは−それらが相互に結合している場合には−一緒になって、一般式(I)のn個の基中で相互に無関係に、次の基の1つを形成している:
【化5】

(ここで、
は相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、非置換の又は置換されたシクロアルキル、非置換の又は置換されたヘテロシクロアルキル、非置換の又は置換されたアルケニル、非置換の又は置換されたアルキニル、非置換の又は置換されたアラルキル又はハロゲン、好ましくはF又は擬ハロゲン、好ましくはCN、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ又はF又はCNを表し;
xは相互に無関係に、0、1、2、3又は4、好ましくは0、1又は2であり;
yは相互に無関係に、0、1又は2、好ましくは0又は1である)]。
【0043】
(Het)アリール並びにR及びRの全く特別好ましい実施形は、前記のR及びRに関連して挙げられている基である。
【0044】
式(Ia)の環状ホスファゼン化合物中の基R及びR並びに基(Het)アリールが同じであるもの、即ち一般式(Iaa)の環状ホスファゼン化合物が全く特別好ましい:
【化6】

[式中、
(Het)アリールは、非置換の又は置換されたC6〜14−アリール、例えばフェニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−ジアルキルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル又はC〜C−ジアルコキシフェニル又は環原子数5〜14を有する非置換の又は置換されたヘテロアリールであり、炭素原子を介してホスファゼン環のPと結合している、例えば非置換の又は置換されたカルバゾリル、非置換の又は置換されたアザカルバゾリル又は非置換の又は置換されたピリジルを表す]。
【0045】
(Het)アリールは、非置換の又は置換されたC−アリール又は非置換の又は置換された窒素含有C−ヘテロアリール又は置換又は非置換のカルバゾリル又は置換又は非置換のアザカルバゾリルが有利である。好適な置換基は先に挙げられている。好ましい置換基は、C〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、CN及びC〜C−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシである。好適な(Het)アリールの例は次のものである:フェニル、C〜C−アルキルフェニル、例えばメチルフェニル、C〜C−ジアルキルフェニル、例えばジメチルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル、例えばメトキシフェニル、C〜C−ジアルコキシフェニル、例えばジメトキシフェニル、ピリジル、C〜C−アルキルピリジル、例えばメチルピリジル、カルバゾリル、C〜C−アルキルカルバゾリル、例えばメチルカルバゾリル、N−C〜C−アルキルカルバゾリル、例えばN−メチルカルバゾリル、C〜C−ジアルキルカルバゾリル、例えばジメチルカルバゾリル、アザカルバゾリル及びN−C〜C−アザカルバゾリル、例えばN−メチル−アザカルバゾリル。
【0046】
式(Iaa)の特に好適な環状ホスファゼン化合物の例は、下記の式Iaaa〜Iaarのホスファゼン化合物である:
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
殊に一般式(Ia)の前記の環状ホスファゼン化合物、殊に式中のR及びRが(Het)アリールにおけると同じものを表す、即ちホスファゼン−基本骨格に付いている全ての基が炭素原子を介してそれぞれのP−原子に結合している、芳香族又はヘテロ芳香族基である化合物が、−高いガラス転移温度及び良好な非晶質性と並んで−それ自体が電気的に励起された三重項状態Tと基底状態Sとの間のエネルギー差が最低2.8eVであることによって優れていることが判明した。従ってこの一般式(Ia)のこれら環状ホスファゼン化合物は、殊にマトリックス物質、ブロッカー物質、電荷輸送物質及び/又は電荷注入物質として、好ましくはマトリックス物質及び/又はブロッカー物質として、例えば正孔ブロッカー物質として、青色燐光−発光体を得るために重要である。従って、式(I)の環状ホスファゼン化合物は、正孔注入−、正孔伝導−、正孔ブロッカー−、電子注入−、電子伝導−、電子ブロッカー−、励起子ブロッカー−及び/又はマトリックス物質として使用可能である。式(I)のこの環状ホスファゼン化合物を、マトリックス物質及び/又は正孔ブロッカー物質として使用することが好ましい。
【0051】
前記の電気特性と並んで、更に、OLEDsの物質として使用されるこの環状ホスファゼン化合物が、OLEDs中での環状ホスファゼン化合物の使用を可能とするガラス転移温度を有することが重要である。本発明により使用されるこの環状ホスファゼン化合物は、一般に最低50℃、好ましくは最低65℃のガラス転移温度Tを有する。
【0052】
式中のnが3を表し、少なくとも1個の置換された窒素含有ヘテロアリール基、少なくとも1個の置換されたアリール基、少なくとも1個の置換又は非置換のカルバゾリル又は少なくとも1個の置換又は非置換のアザカルバゾリル基(これは、炭素原子を介してp−原子と結合している)を有している、式(I)の環状ホスファゼン化合物(シクロトリファゼン)は、技術水準では公知ではない。
【0053】
従って本発明のもう一つの目的物は、一般式(II)の環状ホスファゼン化合物である:
【化11】

[式中、
Yは、置換されたC6〜14−アリール、環原子数5〜14を有し、炭素原子を介してホスファゼン環のP−原子と結合している、置換された窒素含有ヘテロアリール、炭素原子を介してホスファゼン環のP−原子と結合している、置換又は非置換のカルバゾリル又は炭素原子を介してホスファゼン環のP−原子と結合している、置換又は非置換のアザカルバゾリルを表し、
、Rは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、Fを表し、ここで、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ又は置換又は非置換のヘテロアリール、より好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール又は置換又は非置換のヘテロアリールであり、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく;特別好ましくは、非置換の又は置換されたC6〜14−アリール又は環原子数5〜14を有する非置換の又は置換されたヘテロアリールを表し、ここで、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよい]。
【0054】
好ましい基R及びRは、式(I)の環状ホスファゼン化合物に関連して挙げられている好ましい基R及びRに相当するが、ここでは、R及びRは、橋を介して結合していない。好ましい窒素含有ヘテロアリール基及び好ましい置換されたアリール基は、同様に式(I)の環状ホスファゼン化合物に関連して挙げられている基に相当する。
【0055】
式(I)又は式(Ia)及び(Iaa)の環状ホスファゼン化合物中におけるように、式(II)の環状ホスファゼン化合物中でも、式(II)の環状ホスファゼン化合物中の全ての基R、R及びYが同じ意味を有することが有利である。全く好ましい式(II)の環状ホスファゼン化合物は、式(IIa):
【化12】

[式中、
Yは、置換されたC6〜14−アリール、環原子数5〜14を有し、炭素原子を介してP−原子と結合している、置換された窒素含有ヘテロアリール、炭素原子を介してホスファゼン環のP−原子と結合している、置換又は非置換のカルバゾリル又は炭素原子を介してホスファゼンのP−原子と結合している、置換又は非置換のアザカルバゾリルを表す]の環状ホスファゼン化合物である。
【0056】
好ましいYは、置換されたC−アリール又は環原子数6を有する、置換された窒素含有ヘテロアリール、置換又は非置換のカルバゾリル又は置換又は非置換のアザカルバゾリルを表す。好適な置換基は、先に挙げられている。好ましい置換基は、C〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、CN及びC〜C−アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシである。好適な基Yの例はC〜C−アルキルフェニル、例えばメチルフェニル、C〜C−ジアルキルフェニル、例えばジメチルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル、例えばメトキシフェニル、C〜C−ジアルコキシフェニル、例えばジメトキシフェニル、C〜C−アルキルピリジル、例えばメチルピリジル、カルバゾリル、C〜C−アルキルカルバゾリル、例えばメチルカルバゾリル、N−C〜C−アルキルカルバゾリル、例えばN−メチルカルバゾリル、C〜C−ジアルキルカルバゾリル、例えばジメチルカルバゾリル、アザカルバゾリル及びN−C〜C−アザカルバゾリル、例えばN−メチルアザカルバゾリルである。
【0057】
式(IIa)の特別好ましい例は、式(Iaab、Iaac及びIaaf〜Iaar)の環状ホスファゼン化合物である。
【0058】
式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物は、好ましくは、R.Apple. et al. Chem.Ber.106,3455-3460(1973)中に開示されているシクロトリホスファゼン及びシクロテトラホスファゼンの製造法に相応して、相応するホスフィンアミドの環化縮合によって製造される。相応するホスフィンアミドは、その都度のホスフィン酸をアミド化することによって得ることができる。下記の式中に、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物の製造が、例えばシクロトリホスファゼン(式(I)の化合物中のnが3であり、ここで、全てのP−原子に付いている基R及びRは、それぞれ同じ意味(R)を有している)を用いて例示されている:
【化13】

【0059】
式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物の製造のために好適な反応条件は、V.Vincente et al. New J.Chem,.2004,28,418-424中に挙げられている、ヘキサ−(2−チエニル)シクロトリホスファゼン又はヘキサ−(3−チエニル)シクロトリホスファゼンの製造のための反応条件に相当し、付加的に、選択された特別好ましい化合物のこの製造のために本発明の実施例部中に記載されている。更に、その中のR及びRが相互に結合している環状ホスファゼン(スピロ−シクロホスファゼン)を製造するために好適な反応条件は、例えばC.Combes-Chamalet et al.J.Chem,.Soc.,Perkin Trans.2,1997,15-18中に開示されている。
【0060】
本発明より使用される式(I)の環状ホスファゼン化合物又は式(II)の本発明による環状ホスファゼン化合物は−前記のように−本発明による有機発光ダイオードの種々の層中で使用することができ、この際、OLEDs中の好適な層順序は当業者にとっては公知であり、後に記載されている。
【0061】
1実施形において本発明は、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物が発光性層中でマトリックスとして使用されている、有機発光ダイオードに関する。
【0062】
もう一つの実施形で本発明は、本発明による有機発光ダイオードに関し、ここでは、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物が、正孔のブロック層中で、正孔/励起子ブロッカーとして及び/又は電子注入層中及び/又は電子伝導層中で使用される。同様に、式(I)又は(II)の化合物が発光層中に及び/又は前記の1以上の層中に存在することが可能である。
【0063】
もう一つの実施形で本発明は、本発明による有機発光ダイオードに関し、ここでは、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物が電子のブロック層中で、電子/励起子ブロッカーとして、及び/又は正孔−注入層中及び/又は正孔伝導層中で使用される。同様に、式(I)又は(II)の化合物は、更に発光層及び/又は1以上の後記の層中に存在することが可能である。
【0064】
どの層中で式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物が使用されるかに依存して、この化合物は種々の好ましい基R及びR及び種々の指数nを有する。更に、環状ホスファゼン化合物の特性(マットリックス物質、正孔−/励起子ブロッカー物質又は電子−/励起子ブロッカー物質、正孔−又は電子伝導体物質及び/又は正孔−又は電子注入物質としての)は、その都度の本発明によるOLED中で使用される特定の層の電子特性(HOMOs及びLUMOsの相対的位置)により左右される。従って、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物の適切な置換によって、HOMO及びLUMO−軌道位置を本発明によるOLED中で使用されている他の層に適合させ、こうしてこのOLEDの高い安定性及びそれに伴う長い動作寿命及び良好な効率を達成することが可能である。
【0065】
OLEDの個々の層中のHOMO及びLUMOの相対的位置に関連する原理は、当業者にとっては公知である。以後にこの原理を、電子のブロック層及び正孔のブロック層の特性について、発光層と比べて例示説明する。
【0066】
電子のブロック層のLUMOは、発光層中で使用される物質(発光物質も、場合により使用されるマトリックス物質も)のLUMOよりもエネルギー的に高い。電子のブロック層及び発光層中の物質のLUMOsのエネルギー差が大きい程、電子のブロック層の電子−及び/又は励起子−ブロッキング特性はより良好である。従って、電子−及び/又は励起子ブロッカー物質として好適な式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物の好適な置換基パターンは、特に発光層中で使用される物質の電子特性(殊にLUMOsの位置)によって左右される。
【0067】
正孔のブロック層のHOMOは、発光層中に存在する物質(発光物質も場合により存在するマトリックス物質も)のHOMOsよりもエネルギー的に低い。正孔のブロック層のHOMOsと発光層中に存在する物質のHOMOsとのエネルギー差が大きい程、正孔のブロック層の正孔−及び/又は励起子−ブロッキング特性は良好である。従って、正孔−及び/又は励起子ブロッカー物質として好適である式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物の好適な置換基パターンは、特に、発光層中に存在する物質の電子特性(殊にHOMOsの位置)によって左右される。
【0068】
本発明によるOLED中で使用される異なる層のHOMOs及びLUMOsの相対的位置に関する比較可能な考察は、OLED中で場合により使用される他の層にも当て嵌まり、当業者にとっては公知である。
【0069】
有機発光ダイオード(OLEDs)は、原則的に複数の層から構成されている:
1.アノード(1)
2.正孔輸送層(2)
3.発光層(3)
4.電子輸送層(4)
5.カソード(5)
【0070】
しかしながら、このOLEDは、記載の全ての層を有しないことも可能であり、例えば層(1)(アノード)、(3)(発光層)及び(5)(カソード)を有しているOLEDも同様に好適であり、この際には、層(2)(正孔輸送層)及び(4)(電子輸送層)の機能は、隣りの層によって引き受けられる。層(1)、(2)、(3)及び(5)又は層(1)、(3)、(4)及び(5)を有しているOLEDsも同様に好適である。
【0071】
式(I)の本発明による環状ホスファゼン化合物を、OLEDの1以上の異なる層中で使用することができる。従って、本発明のもう一つの課題は、OLEDs中での式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物の使用である。
【0072】
式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物は、好ましい1実施形で、発光層中でマトリックス物質として使用される。従って本発明のもう一つの課題は、少なくとも1種のマトリックス物質及び少なくとも1種の発光物質から構成されている発光層を含有している有機発光ダイオードを提供することであり、ここで、少なくとも1種のマトリックス物質は、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物少なくとも1種を含有している。本発明のもう一つの目的物は、少なくとも1種のマトリックス物質及び少なくとも1種の発光物質から構成されている発光層であり、ここで、少なくとも1種のマトリックス物質は、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物少なくとも1種を含有している。式(I)又は(II)の好ましい環状ホスファゼン化合物は先に挙げられている。
【0073】
一般に、本発明によるOLEDsの発光層中の式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物少なくとも1種の割合は、10〜99質量%、好ましくは50〜99質量%、特別好ましくは70〜97質量%である。発光層中の少なくとも1種の発光物質の割合は、一般に1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%、特別好ましくは3〜30質量%であるが、ここで、少なくとも1種の式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物及び少なくとも1種の発光物質の割合は合計100質量%になる。しかしながら、この発光層は、一般式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物少なくとも1種及び発光物質少なくとも1種と相並んで、他の物質、例えば式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物とは異なる他のマトリックス物質を含有することも可能であり、この際、好適な他のマトリックス物質は、当業者にとっては公知である。
【0074】
なおOLEDの前記の個々の層は、2又は3層から構成されていることができる。例えば正孔輸送層は、その中に電極から正孔が注入される1層及び正孔を正孔注入層から離れた発光層中に輸送する層から構成されていることができる。電子輸送層は、同様に複数の層、例えばその中で電極を通って電子が注入される層及び電子注入層から電子を受け、それを発光層中に輸送する層から成っていることができる。これら記載の層は、それぞれ、要因(Faktor)、例えば有機層又は金属電極を有する記載層のエネルギー準位、熱抵抗性及び電荷キャリア移動度並びにエネルギー差に応じて選択される。当業者はOLEDsの構造を、それが本発明により好ましく発光物質として使用される金属錯体に至適に適合しているように選択することができる。
【0075】
特別有効なOLEDsを得るためには、正孔輸送層のHOMO(最高占有分子軌道)は、アノードの仕事関数(Arbeitsfunktion)と整合されているべきであり、電子輸送層のLUMO(最低非占有分子軌道)は、カソードの仕事関数と整合されているべきである。
【0076】
前記の層の好適な物質(アノード、カソード、正孔−及び電子注入物質、正孔−及び電子輸送物質及び正孔−及び電子ブロッカー物質、マトリックス物質、蛍光−及び燐光発光体)は、当業者にとっては公知であり、例えば、H.Meng,N.Herron,Organic Small Molecule Materials for Organic Light-Emitting Devices in Organic Light-Emitting Materials and Devices,Ed.:Z.Li,H.Meng,Taylor & Francis,2007,Chapter 3, 295〜411頁中に記載されている。
【0077】
アノード(1)は、正電荷キャリアを供給する電極である。これは、例えば1金属、種々の金属の混合物、金属合金、金属酸化物又は種々の金属酸化物の混合物を含有している物質から構成されていることができる。選択的にこのアノードは導電性ポリマーであることができる。好適な金属には、元素周期律表の11、4、5及び6族の金属並びに、8〜10族の遷移金属が包含される。このアノードが光透過性であるべき場合には一般に、元素周期律表12、13及び14族の混合金属酸化物、例えばインジウム−錫−酸化物(ITO)が使用される。同様に、アノード(1)は、有機物質、例えば、Nature, Vol.357, 477〜479頁(11.Juni 1992)中に記載されているようなポリアニリンを含有していることが可能である。少なくともアノード又はカソードのどちらかは、形成された光を放出することができるように、少なくとも部分的に透明であるべきである。
【0078】
本発明によるOLEDsの層(2)の好適な正孔輸送物質は、例えばKirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technologie,4,Auflage,Vol.18,837〜860頁,1996中に開示されている。正孔輸送分子もポリマーも、正孔輸送物質として使用することができる。通常使用される正孔輸送分子は、次の群から選択される:4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[ジ−4−トリルアミノ)−フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス−(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル)(4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPR又はDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、4,4’,4''−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDTA)及びポルフィリン化合物並びにフタロシアニン、例えば銅フタロシアニン。通常使用される正孔輸送性ポリマーは、次の群から選択される:ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、好ましくは、PSS(ポリスチレンスルホネート)でドープされたPEDOT及びポリアニリン。同様に、ポリマー、例えばポリスチレン及びポリカーボネート中へ正孔輸送分子をドーピングすることによって、正孔輸送性ポリマーを得ることが可能である。好適な正孔輸送分子は、既に先に挙げられている分子である。
【0079】
更に−1実施形で−金属錯体、例えばカルベン錯体を正孔輸送物質として使用することができ、この際には、少なくとも1種の正孔輸送物質のバンドギャップ(Bandluecke)は、使用される発光物質のバンドギャップよりも大きい。ここで、本発明におけるバンドギャップとは、三重項−エネルギーであると理解すべきである。好適なカルベン−錯体は、例えばWO2005/019373A2、WO2006/056418A2、WO2005/113704、WO2007/115790及びWO2007/115981中、及び未公開の欧州特許先出願EP07118677.9及びEP08153303.6中に記載されているようなカルベン−錯体である。
【0080】
発光層(3)は、少なくとも1種の発光物質を含有している。好ましい1実施形でこの発光層は、少なくとも1種のマトリックス物質及び少なくとも1種の発光物質から構成されており、このマトリックス物質は、少なくとも1種の式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物であることが好ましい。好ましい環状ホスファゼン化合物は、先に挙げられている。特別好ましい実施形で本発明により使用される式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物は、電子的に励起された三重項状態Tと基底状態Sとの間の少なくとも2.8eVのエネルギー差によって傑出しているので、本発明により使用される式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物は、有利に、少なくとも1種の発光物質としての青色発光体と一緒に使用される。発光層の発光物質の発光最大は、特別好ましくは400〜500nm、全く特別好ましくは430〜490nmの範囲に存在する。少なくとも1種の発光物質は、原則的に蛍光−又は燐光発光体であることができ、この際、好適な発光物質は当業者には公知である。少なくとも1種の発光物質は燐光発光体であることが好ましく、青色光を放出する燐光発光体であることが全く特別好ましい。この好ましく使用される燐光発光体化合物は、金属錯体をベースとしており、この際、金属Ru、Rh、Ir、Pd及びPtの錯体、特にIrの錯体が特に重要である。本発明により使用される式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物は、そのような金属錯体と一緒に使用するために特別好適である。
【0081】
本発明によるOLEDs中で使用するための好適な金属錯体は、例えば次の文献:

及び未公開の欧州特許出願EP 07118677.9及びEP 08153303.6並びにPCT/EP2008/0540876の整理番号を有する未公開のPCT出願明細書中に記載されている。
【0082】
更なる好適な金属錯体は、市場で入手される金属錯体 トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)、イリジウム(III)トリス(2−(4−トリル)ピリジナト−N,C2’)、イリジウム(III)トリス(1−フェニルイソキノリン)、イリジウム(III)ビス(2,2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’(アセチルアセトネート)、イリジウム(III)ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C)ピコリネート、イリジウム(III)ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)、イリジウム(III)ビス(ジベンゾ[f,h]キノキサリン(アセチルアセトネート)、イリジウム(III)ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)−アセチルアセトネート及びトリス(3−メチル−1−フェニル−4−トリメチル−アセチル−5−ピラゾリン)テルビウム(III)である。
【0083】
更に、市場で入手可能な下記の物質も好適である:トリス(ジベンゾイルアセトナト)−モノ(フェナンスロリン)−ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(フェナンスロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(5−アミノフェナンスロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジ−2−ナフトイルメタン)−モノ(フェナンスロリン)−ユウロピウム(III)、トリス(4−ブロモベンゾイルメタン)−モノ(フェナンスロリン)−ユウロピウム(III)、トリス(ジ−ビフェニルメタン)−モノ(フェナンスロリン)−ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジフェニルフェナンスロリン)−ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジ−メチルフェナンスロリン)−ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジメチル−フェナンスロリン−ジスルホン酸)−ユウロピウム(III)−ジナトリウム塩、トリス[ジ(4−(2−(2−エトキシ−エトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]−モノ(フェナンスロリン)−ユウロピウム(III)及びトリス[ジ[4−(2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]モノ−(5−アミノフェナンスロリン)−ユウロピウム(III)。
【0084】
発光物質として、金属錯体、例えば前記の文献中に開示されていて、400〜500nm、好ましくは430〜490nmの範囲の発光最大を有する金属錯体を使用することが特に有利である。
【0085】
更なる有利な好適な三重項−発光体は、カルベン錯体である。本発明の有利な1実施形で、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物が発光層中でマトリックス物質としてカルベン錯体と一緒に、全く特別好ましくは三重項−発光体としての青色発光カルベン錯体と一緒に使用される。好適なカルベン錯体は当業者に公知であり、前記出願のいくつか中に及び後に挙げられている。
【0086】
もう一つの好ましい実施形で、正孔/励起子−ブロッカー物質としての式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物が、三重項−発光体としてのカルベン錯体と一緒に使用される。式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物は、更にマトリックス物質としても正孔−/励起子ブロッカー物質としても、三重項−発光体としてのカルベン錯体と一緒に使用することができる。
【0087】
OLED中のマトリックス物質及び/又は正孔−及び/又は励起子ブロッカー物質及び/又は電荷輸送物質及び/又は電荷注入物質として、好ましくはマトリックス物質及び/又は正孔ブロッカー物質としての式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物と一緒に使用するために好適な金属錯体は、例えば、WO2005/019373A2、WO2006/056418A2及びWO2005/113704、WO2007/115970及びWO2007/115981中に、並び古い未公開の欧州特許出願EP07118677.9及びEP08153303.6中に記載されているようなカルベン−錯体でもある。ここで、記載されているWO−及びEP−出願の開示内容は明確に関連があり、これら刊行物は本出願の内容中で参考として考慮されるべきである。
【0088】
本発明によるOLEDsの層(4)の好適な電子輸送物質には、オキシノイド化合物でキレート化された金属、例えばトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq)、フェナンスロリンベースの化合物、例えば2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン(DDPA=BCP)又は4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン(DPA)及びアゾール化合物、例えば2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)及び3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)が包含される。ここで、層(4)は、電子輸送の促進のために作用することも、OLEDの層の界面での励起子の失活を避けるために、緩衝層として又は障壁層(Sperrschicht)として作用することもできる。特に、この層(4)は電子の運動性を改良し、励起子の失活を低減させる。
【0089】
前記の正孔輸送物質及び電子輸送性物質として挙げられている物質の内、いくつかは複数の機能を満たすことができる。例えばいくつかの電子伝導性物質は、それらが低いHOMOを有する場合には、同時に正孔ブロッキング物質である。
【0090】
電荷輸送層は、使用物質の輸送特性を改善し、一方で層厚を大きくし(ピンホール/短絡の回避)、他方で装置の動作電圧を最小化するために、電子ドーピングされていることもできる。例えば正孔輸送物質に電子アクセプターがドープされていることができ、例えばフタロシアニン又はアリールアミン、例えばTPD又はTDTAがテトラフルオロテトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)でドープされていることができる。これらの電子輸送物質は、例えばアルカリ金属でドープされており、例えばAlqはリチウムでドープされていることができる。この電子ドーピングは、当業者にとっては公知であり、例えばW.Gao, A.Kahn,J.Appl.Phys.,Vol.94,No.1,1 July 2003(p−ドープされた有機層);A.G.Wemer, F.Li,K.Harada,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,Vol.82,No.25, 23 June 2003及びPfeiffer et al., Organic Electonics 2003,4,89-103中に開示されている。
【0091】
カソード(5)は、電子又は負電荷キャリアを導入する作用をする電極である。このカソードは、アノードよりも低い仕事関数(Arbeitfunktion)を有する金属又は非金属であることができる。このカソードに好適な物質は、元素周期律表の1族のアルカリ金属、例えばLi、Cs、2族のアルカリ土類金属、希土類元素及びランタニド及びアクチニドを包含している12族の金属から成る群から選択される。更に、アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム及びマグネシウムのような金属並びにこれらの組合せ物を使用することができる。更に、動作電圧(操業電圧)を減少させるために、有機層とカソードとの間にリチウム含有有機化合物又はLiFを適用することができる。
【0092】
本発明によるOLEDは、付加的に当業者に公知である更なる層を有することができる。例えば層(2)と発光層(3)との間に、正電荷の輸送を容易にし、かつ/又は層のバンドギャップを相互に適合させる1層を適用することができる。この更なる層は、選択的に保護層として作用することができる。同様に、発光層(3)と層(4)との間に、負電荷の輸送を容易にし、かつ/又は層の間のバンドギャップを相互に適合させるための付加的な層が存在することができる。選択的に、この層は、保護層として作用することができる。
【0093】
好ましい1実施形では、本発明によるOLEDは、層(1)〜(5)に加えて、下記の更なる層少なくとも1つを有する:
− アノード(1)と正孔輸送層(2)との間の正孔注入層;
− 正孔輸送層(2)と発光層(3)との間の電子及び/又は励起子のブロック層;
− 発光層(3)と電子輸送層(4)との間の正孔及び/又は励起子のブロック層;
− 電子輸送層(4)とカソード(5)との間の電子注入層。
【0094】
しかしながら既に記載のように、OLEDは、前記の層(1)〜(5)の全てを有しないことも可能であり、例えば層(1)(アノード)、(3)(発光層)及び(5)(カソード)を有するOLEDも同様に好適であり、この際には、層(2)(正孔輸送層)及び(4)(電子輸送層)の機能が隣りの層によって引き受けられる。層(1)、(2)、(3)及び(5)又は層(1)、(3)、(4)及び(5)を有するOLEDsも同様に好適である。
【0095】
如何にして(例えば電気化学的研究に基づき)好適な物質を選択すべきであるかは、当業者にとっては公知である。個々の層並びに好適なOLED−構造体に好適な物質は、当業者にとっては公知であり、例えばWO2005/113704中に開示されている。
【0096】
更に、本発明によるOLEDの記載層は、2以上の層から構成されていることができる。更に、電荷キャリア輸送の効率を高めるために、層(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)のいくつか又は全てが、表面処理されていることが可能である。記載の層の各々の物質の選択は、それによって高い効率を有するOLEDを得るように決定されることが有利である。
【0097】
本発明によるOLEDの製造は、当業者に公知の方法で行うことができる。一般にこのOLEDは、好適な基板上に個々の層を順次に蒸気沈着(蒸着)させることによって製造される。好適な基板は、例えばガラス又はポリマーフィルムである。蒸着のためには、熱蒸着、化学蒸着等の慣用の技術を使用することができる。1つの選択的方法では、好適な溶剤中の溶液又は分散液から有機層を塗被することができ、この際に、当業者に公知の被覆法が使用されうる。本発明による金属錯体少なくとも1種と並んで1種のポリマー物質をOLEDの1層中に、好ましくは発光層中に含有している組成物が、一般に溶液加工法を用いて層として適用される。
【0098】
一般に、種々の層は次の厚さを有する:アノード(1)500〜5000Å、好ましくは1000〜2000Å;正孔輸送層(2)50〜1000Å、好ましくは200〜800Å、発光層(3)10〜1000Å、好ましくは100〜800Å、電子輸送層(4)50〜1000Å、好ましくは200〜800Å、カソード(5)200〜10000Å、好ましくは300〜5000Å。本発明によるOLED中の正孔と電子の再結合ゾーン(Rekombinationszone)の位置及び従ってOLEDの発光スペクトルは、各々の層の相対的厚さによって影響される。即ち、電子輸送層の厚さは、好ましくは電子/正孔再結合ゾーンが発光層中に存在するように選択されるべきであることを意味する。OLED中の個々の層の層厚のこの割合は、使用される物質によって左右される。場合により使用される付加的な層の層厚は、当業者にとっては公知である。
【0099】
本発明によるOLEDの少なくとも1層中の式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物の使用、例えば本発明によるOLEDsの発光層中のマトリックス物質としての、及び/又は正孔及び/又は励起子のブロック層中の正孔−/励起子ブロッカー物質としての、又は電荷輸送物質としての及び/又は電荷注入物質としての及び/又は電子ブロッカー物質としての使用によって、良好な効率及び寿命を有するOLEDsを得ることができる。更に、本発明によるOLEDsの効率は、他の層の至適化によって改善することができる。例えば、高効率のカソード、例えばCa、Ba又はLiFを使用することができる。成形された基板及び動作電圧の減少又は量子効率の上昇に作用する新規の正孔輸送物質は、同様に本発明によるOLEDs中で使用可能である。更に、種々の層のエネルギー水準を調節し、エレクトロルミネッセンス(Elektrolumineszenz)を容易にするために、このOLEDs中に付加的な層が存在することができる。
【0100】
本発明によるOLEDsは、その中でエレクトロルミネッセンスを利用可能である全ての装置中で使用することができる。好適な装置は、好ましくは固定型ディスプレイ及び移動型ディスプレイから選択される。静止ディスプレイは、例えばコンピュータ、テレビのディスプレイ、印刷機、調理機器並びに広告板、照明及び表示板中のディスプレイである。移動型ディスプレイは、例えば携帯電話、ラップトップ、カメラ殊にデジタルカメラ、乗り物中の並びにバス及び列車の行き先表示ディスプレイのディスプレイである。
【0101】
更に、式(I)又は(II)の環状ホスファゼン化合物を、逆構造を有するOLEDs中で使用することができる。逆OLEDsの構造及び通常その中で使用される物質は、当業者にとっては公知である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、使用されるダイオード構造の層順序を示している。
【図2a】図2aは、20nm及び26nmの発光層の層厚に対する、OLEDの輝度及び効率を示すグラフである。
【図2b】図2bは、20nm及び26nmの発光層の層厚に対する、OLEDの輝度及び効率を示すグラフである。
【0103】
次の実施例につき、本発明を付加的に説明する。
【0104】

I. 一般式Iの環状ホスファゼン化合物の製造
I.1 装置及び使用される化学薬品
I.1.1 装置
1H-、13C-、31P-NMR-分光法 BRUKER AC 250(250MHz)
質量分析法 Finnigan Mat 8500,MAT 112S Varian(EI法イオン化による)
オリゴマー−GPC Waters Modell 510(UV−Detektor(WATERS 486、254nm)、RI−Detektor(WATERS 410)、カラム:PL−ゲル(孔径100、500Å;粒径:5μm、長さ:60cm)、展開剤:THF、ポリスチレン標準で校正、流速:0.5ml/min)
蛍光分光法 SHIMADZ RF-5301 PC Spectrofluorometer
UV/VIS−分光法 HITACHI U-3000 Spectrophotometer
スピン−コーター B 0574,HAMATECH GmbH HS 485 Processcontrol,HAMATECH GmbH
熱重量分析 NETSCH Simultne Thermoanalyse, STR 409 C; Heizrate:10 K/min
DSC Diamond DSC
フラッシュ-クロマトグラフィ Kieselgel、0.04-0.063mm,Merck
薄層クロマトグラフィ Duennschichtkarten Polygram SIL G/UV254,Roth
プロフィロメータ Sloan Dektak 3030ST.Rev.5.2/5.1/F5.0
蒸着装置 PLS 500,Balzers
エレクトロルミネッセンス 検出器 MINOLTA Luminance Meter LS-100
OLED−特性表示 Grundig Electronics PN300,KEITHLEY Model 2000 Multimeter
【0105】
I.1.2 使用溶剤及び化学薬品
全ての市販化学薬品を、入手後に更に精製せずに使用する。反応及び精製のための全ての溶剤を、使用前に1回蒸留し、テトラヒドロフラン(THF)を付加的にカリウム上で蒸留させた。
【0106】
I.2 化合物の合成法及び特性表示
I.2.1 ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン酸
【化14】

【0107】
1−ブロム−3,5−ジメチルベンゼン(13.63g、71.44ミリモル、97%)を、室温で、無水THF(80ml)中のマグネシウム片(1.74g、71.44ミリモル)に滴加する。マグネシウムが完全溶解した後に、無水THF(10ml)中のN,N−ジメチルホスホリルジクロリドN(Me)P(O)Cl(4.33ml、35.72ミリモル)からの溶液を滴加する。この反応時に生じた塩を分離するために、この反応混合物を、2時間後に氷冷塩化アンモニウム溶液(水500ml中の30g)中に加える。引き続き、蒸留装置中で、THFを除去し、残分を濃HCl(75ml)と一緒に80℃で沸騰させる。生じる白色固体を、水性NaOH(5.4g、水300ml)中に溶解させ、この水相をジエチルエーテルで2回抽出する。この澄明な水相を、白色固体としてのホスフィン酸を70%の収率(6.81g)で沈殿させるために、濃HClの添加によって改めて酸性化させる。
【0108】
特性表示:

【0109】
I.2.2 ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸
【化15】

【0110】
ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン酸の前記の合成と同様に、この合成を行う。
4−ブロムアニソール、99% 9.03ml(71.44ミリモル)
マグネシウム 1.74g(71.44ミリモル)
N,N−ジメチルホスホリルジクロリド 98%
4.33ml(35.72ミリモル)
THF(無水) 80ml
【0111】
収率:白色固体 54%(5.36g)
特性表示:

【0112】
I.2.3 ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンアミド
【化16】

【0113】
蒸留された塩化チオニル(0.87ml、12ミリモル)を、無水トルエン(25ml)中のビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン酸(1g、3.65ミリモル)からの懸濁液に、55〜60℃で滴加し、生じた澄明溶液を20分間撹拌する。過剰の塩化チオニルの留去の後に、アンモニアガスをこの溶液中に−20℃で導入する。生じた塩(NHCl)を分離するために、この有機相を水で洗浄する。THFでの抽出の前に、塩化ナトリウムの添加によって、この水相の比重を高める。NaSO上での有機相の乾燥の後に、回転蒸発器で溶剤を除去する。収量は0.98g(98%)である。
【0114】
特性表示:

【0115】
I.2.4 ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンアミド
【化17】

【0116】
ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンアミドの前記の合成と同様に、この合成を行う。
ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸 1.0g(3.59ミリモル)
塩化チオニル 0.78ml(10.77ミリモル)
無水トルエン 25ml
【0117】
収率:黄色固体 90%(0.89g)
特性表示:

【0118】
I.2.5 ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン(1a)
【化18】

【0119】
無水ジクロロメタン(25ml)中のジフェニルホスフィンアミド(2.0g、9.22ミリモル)、トリフェニルホスフィン(2.9g、11.1ミリモル)、四塩化炭素(0.89ml、9.22mミリモル)及びトリエチルアミン(1.3ml、9.22ミリモル)からの懸濁液を、還流下に5時間沸騰させる。回転蒸発器で溶剤を除去する。展開剤としてのヘキサン:THF(1:1)を用いるカラムクロマトグラフィによって、ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン1.2g(65%)が白色物質として得られる。昇華を用いて更なる後処理を行う。
【0120】
特性表示:

【0121】
I.2.6 ヘキサ(3,5−ジメチルフェニル)−シクロトリホスファゼン(1b)
【化19】

【0122】
ヘキサフェニルシクロトリホスファゼンの前記合成法と同様に、この合成を行う。反応時間は22時間である。
ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンアミド 1.0g(3.66ミリモル)
トリフェニルホスフィン 1.15g(4.39ミリモル)
四塩化炭素 0.53ml(5.49ミリモル)
トリエチルアミン 0.76g(5.49ミリモル)
無水ジクロロメタン 25ml
【0123】
展開剤としてヘキサン:THF(10:1)を用いるカラムクロマトグラフィによって、ヘキサ(3,5−ジメチルフェニル)−シクロトリホスファゼン660mg(71%)を白色固体として生じる。昇華を用いて更なる後処理を行う。
【0124】
特性表示:

【0125】
I.2.7 ヘキサ(4−メトキシフェニル)−シクロトリホスファゼン(1c)
【化20】

【0126】
ヘキサフェニルシクロトリホスファゼンの前記合成法と同様に、この合成を行う。反応時間は14時間である。
ビス(4−メトキシフェニル)−ホスフィンアミド 1.11g(4ミリモル)
トリフェニルホスフィン 1.26g(4.8ミリモル)
四塩化炭素 0.58ml(6ミリモル)
トリエチルアミン 0.83ml(6ミリモル)
無水ジクロロメタン 35ml
【0127】
展開剤としてヘキサン:酢酸エチル(1:1)を用いるカラムクロマトグラフィによって、ヘキサ−(4−メトキシフェニル)−シクロトリホスファゼン516mg(50%)を白色固体として生じる。
【0128】
特性表示:

【0129】
II マトリックス物質としてヘキサフェニルシクロトリホスファゼン(1a)を含有するOLED
II.1 ダイオード構造
ダイオード構造として、図1に記載の層順序が使用される。
【0130】
図1中で次のものを表す:
BAlq(40nm) アルミニウム(III)−ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェノレート(A)からの厚さ40nmの正孔ブロック性電子伝導体層
1a:Flrpic マトリックス(後記のように20及び26nmの層厚)としての1a中のFlrpic(B)15質量%からの発光層
CBP(15nm) 4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(C)からの厚さ15nmの層
NPD(40nm) N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4''−ジアミン(D)からの厚さ40nmの正孔輸送層
ITO(80nm) インジウム−錫−酸化物からの厚さ80nmの層
【化21】

【0131】
II.2 OLEDの製造
ITO−基板上に、正孔輸送物質としてのNPD40nmを蒸着させる。ここで、その上に続いている厚さ15nmのCBP−層は、NPD及び1aのHOMO−水準の間のエネルギー準位として機能し、これにより発光層中への正孔輸送を容易にする。組み合わされた実験で、マトリックスとしての1a中のFlrpic15%から成る、異なる層厚(20nm、26nm)の発光層を蒸着させる。厚さ40nmのBAlq−層は、正孔ブロック性電子伝導体層を形成する。最後に、弗化リチウム1nm及びアルミニウム200nmを電極物質として適用する。
【0132】
図2a及び図2b中に、20nm及び26nmの発光層の層厚に対する、OLEDの輝度及び効率が示されている。
【0133】
図2a中で、
L[cd/m]は、輝度(cd/m)を表し、
U[V]は、 印加電圧(V)を表す。
【0134】
逆三角形(頂点が下向き)を有する曲線は、厚さ20nmの発光層のデータを示し、三角形(頂点が上向き)を有する曲線は、厚さ26nmの発光層のデータを示している。
【0135】
図2b中で、
E[cd/A]は、 効率(cd/A)を表し、
U[V]は、 印加電圧(V)を表す。
【0136】
四角形を有する曲線は、厚さ20nmを有する発光層のデータを示し、丸を有する曲線は、厚さ26nmの発光層のデータを示している。
【0137】
II.3 結果
厚さ20nmの発光層を有するOLEDは、厚さ26nmの発光層の場合の980cd/m(15V、12mA/cm2)と比べていくらか高い輝度1200cd/m(15V、100mA/cm)を示した。厚さ26nmの発光層では、10.5V及び500cd/mの輝度で、11.0cd/Aの最大効率が達成される。厚さ20nmの発光層の場合には、7.5V及び50cd/mのみの輝度で、3.6cd/Aの最高効率を生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、nは3〜8、好ましくは3又は4、特別好ましくは3であり:
、Rは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、非置換の又は置換されたシクロアルキル、非置換の又は置換されたヘテロシクロアルキル、非置換の又は置換されたアルケニル、非置換の又は置換されたアルキニル、非置換の又は置換されたアラルキル又はF、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシを表し、この際、n個の基中のR及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよい;又は
前記の基R及びRは、一般式(I)のn個の基中で相互に無関係に、単結合、C〜C−アルキレン橋、アリーレン橋又はC〜C−アルケニレン橋を介して相互に結合して、基R及びRはそれらが結合しているP−原子と一緒になって環を形成している]の環状ホスファゼン化合物少なくとも1種を含有している有機発光ダイオードであって、n個の基中に存在する基R又はRの少なくとも1つが、酸素原子を介さずに、式(I)の環状ホスファゼンのP−原子の少なくとも1つと結合していることを特徴とする有機発光ダイオード。
【請求項2】
n個の基中に存在する基R又はRの少なくとも1つが、炭素原子を介して、式(I)の環状ホスファゼン化合物の少なくとも1個のP−原子と結合していることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項3】
式中のnは3を表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
n個の基中に存在し、酸素原子を介さずに、式(I)の環状ホスファゼン化合物の少なくとも1個のP−原子と結合している基R又はRの少なくとも1つは、非置換の又は置換されたアリール基又は非置換の又は置換されたヘテロアリール基であることを特徴とする、請求項1又は3のいずれか1項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項5】
、Rは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール又は置換又は非置換のヘテロアリールを表し、この際、n個の基中のR及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項6】
環状ホスファゼン化合物は、式(Ia):
【化2】

[式中、
(Het)アリールは、非置換の又は置換されたC6〜14−アリール、例えばフェニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−ジアルキルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル又はC〜C−ジアルコキシフェニル又は環原子数5〜14を有し、炭素原子を介してホスファゼン環のPと結合している、非置換の又は置換されたヘテロアリール、例えば非置換の又は置換されたカルバゾリル、非置換の又は置換されたアザカルバゾリル又は非置換の又は置換されたピリジルを表し;
、Rは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシを表し、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール又は置換又は非置換のヘテロアリールを表し、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく;特別好ましくは非置換の又は置換されたC6〜14−アリール、例えばフェニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−ジアルキルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル又はC〜C−ジアルコキシフェニル又は環原子数5〜14を有する非置換の又は置換されたヘテロアリール、例えば又は非置換の又は置換されたピリジル、非置換の又は置換されたカルバゾリル、非置換の又は置換されたアザカルバゾリルを表し、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよい;又は
前記の基R及びRは相互に無関係に、単結合、C〜C−アルキレン橋、好ましくはC〜C−アルキレン橋、アリーレン橋、好ましくは1,2−フェニレン橋又はC〜C−アルケニレン橋、好ましくはC〜C−アルケニレン橋を介して相互に結合して、基R及びRが、それらに結合しているP−原子と一緒になって環を形成しており;好ましくはR及びR−それらが相互に結合している場合に−は一緒になって、一般式(I)のn個の基中で相互に無関係に、次の基の1つを形成している:
【化3】

(式中、
は相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、非置換の又は置換されたシクロアルキル、非置換の又は置換されたヘテロシクロアルキル、非置換の又は置換されたアルケニル、非置換の又は置換されたアルキニル、非置換の又は置換されたアラルキル又はハロゲン、好ましくはF又は擬ハロゲン、好ましくはCN、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ又はF又はCNを表し;
xは相互に無関係に、0、1、2、3又は4、好ましくは0、1又は2であり;
yは相互に無関係に、0、1又は2、好ましくは0又は1である)]を有することを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項7】
式(Ia)の環状ホスファゼン中の全ての基R、R及び(Het)アリールは同じものを表すことを特徴とする、請求項6に記載の有機発光ダイオード。
【請求項8】
環状ホスファゼンが、マトリックス物質として発光層中で、及び/又は正孔−/励起子ブロッカー物質及び/又は電子伝導体として、特に好ましくはマトリックス物質として発光層及び/又は正孔−/励起子ブロッカー中で使用されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項9】
有機発光ダイオードの発光最大が400と500nmとの間に存在することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項10】
少なくとも1種のマトリックス物質及び少なくとも1種の発光物質から構成されている発光層を含有している請求項1から9までのいずれか1項に記載の有機発光ダイオードにおいて、少なくとも1種のマトリックス物質は、請求項1から7までのいずれか1項に記載の環状ホスファゼン化合物少なくとも1種を含有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項11】
有機発光ダイオード中での、請求項1から7までの1ずれか1項に記載の環状ホスファゼン化合物の使用。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の有機発光ダイオード少なくとも1つを含有している、固定型ディスプレイ、例えばコンピュータ、テレビのディスプレイ、印刷機、調理用器具並びに宣伝用看板、照明、表示板中のディスプレイ及び移動型ディスプレイ、例えば携帯電話、ラップトップ、デジタルカメラ、乗り物中の並びにバス及び列車に付いている行き先表示器中のディスプレイから成る群から選択される装置。
【請求項13】
一般式(II):
【化4】

[式中、
Yは、置換されたC6〜14−アリール、環原子数5〜14を有し、炭素原子を介してホスファゼン環のP−原子と結合している、置換された窒素含有ヘテロアリール、炭素原子を介してホスファゼン環のP−原子と結合している、置換又は非置換のカルバゾリル又は炭素原子を介してホスファゼン環のP−原子と結合している、置換又は非置換のアザカルバゾリルを表し;
、Rは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ、置換又は非置換のアルキルオキシ、Fを表し、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく、好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリールオキシ又は置換又は非置換のヘテロアリール、特別好ましくは相互に無関係に、置換又は非置換のアリール又は置換又は非置換のヘテロアリールを表し、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよく;特別好ましくは、非置換の又は置換されたC6〜14−アリール又は環原子数5〜14を有する非置換の又は置換されたヘテロアリールを表し、この際、R及びRはそれぞれ同じ又は異なるものであってよい]の環状ホスファゼン化合物。
【請求項14】
式(II)の環状ホスファゼン化合物中の全ての基R、R及びYは同じものを表すことを特徴とする、請求項13に記載の環状ホスファゼン化合物。
【請求項15】
ホスフィンアミドの環化縮合によって、請求項1から7まで又は請求項13又は14のいずれか1項に記載の環状ホスファゼン化合物を製造する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2011−525047(P2011−525047A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514028(P2011−514028)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057505
【国際公開番号】WO2009/153276
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】