説明

環状体、環状体張架装置、画像形成装置および環状体の製造方法

【課題】表面抵抗率の変化を抑制した環状体の提供。
【解決手段】少なくとも樹脂と導電材料とを含有し、外周表面の導電点の密度が20点/μm以上である環状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状体、環状体張架装置、画像形成装置および環状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、光導電性感光体からなる像保持体上に電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。
例えば、上記トナー像を中間転写体を介して静電的に転写することにより再生画像を得る画像形成装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記の中間転写体方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写体の材料としては、ポリカーボネート樹脂(例えば特許文献2参照)、ポリフッ化ビニリデン(例えば特許文献3および4参照)、ポリアルキレンフタレート(例えば特許文献5参照)などの熱可塑性樹脂を用いた導電性の無端ベルトや、ポリイミド樹脂や全芳香族ポリアミド樹脂(例えば特許文献6参照)を用いる提案がなされている。
【0004】
また、静電的に転写するためには上記の樹脂に導電性を付与する必要があり、導電性を付与する導電材料としては、カーボンブラックやイオン導電性樹脂、導電性高分子といったものが使用されている。なかでも、カーボンブラックが一般的に用いられている(例えば特許文献7および8参照)。
【0005】
また、特許文献8においては、DBP(ジブチルフタレイト)吸油量が多いカーボンブラックを樹脂に分散する際の、径の小さなメディアを用いたサンドミルでの分散方法が例示されており、サンドミルにおける圧力を0.2MPa以上0.5MPa以下に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−206567号公報
【特許文献2】特開平06−095521号公報
【特許文献3】特開平5−200904号公報
【特許文献4】特開平6−228335号公報
【特許文献5】特開平6−149081号公報
【特許文献6】特許第2560727号公報
【特許文献7】特許第3530065号公報
【特許文献8】特許第3495317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、導電点の密度が20点/μm未満である場合に比べ、表面抵抗率の変化を抑制した環状体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
少なくとも樹脂と導電材料とを含有し、外周表面の導電点の密度が20点/μm以上である環状体である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記導電材料が一次粒子径20nm以下のカーボンブラックである請求項1に記載の環状体である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1または請求項2に記載の環状体である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の環状体と、
前記環状体を内周面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、
を備える環状体張架装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の環状体を用いてなる中間転写用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
樹脂溶液と導電材料とを混合し、150MPa以上の圧力下で分散する分散工程と、
前記導電材料が分散された前記樹脂溶液を環状に成形する成形工程と、
を有する環状体の製造方法である。
【0015】
請求項8に係る発明は、
固体状の樹脂と導電材料とを混合し、60Nm以上の回転トルクの下で溶融混練する溶融混練工程と、
前記導電材料が溶融混練された前記樹脂を環状に成形する成形工程と、
を有する環状体の製造方法である。
【0016】
請求項9に係る発明は、
前記導電材料が一次粒子径20nm以下のカーボンブラックである請求項7または請求項8に記載の環状体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、導電点の密度が20点/μm未満である場合に比べ、表面抵抗率の変化が抑制される。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、導電材料として用いるカーボンブラックの一次粒子径が20nmを超える場合に比べ、表面抵抗率の変化が抑制される。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、樹脂が熱可塑性樹脂ではない場合に比べ、変形が抑制される。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、表面抵抗率の変化が抑制される。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、得られる画像における白抜け欠陥の発生が抑制される。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、得られる画像における白抜け欠陥の発生が抑制される。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、分散の際の圧力が150MPa未満である場合に比べ、表面抵抗率の変化を抑制した環状体が得られる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、溶融混練の際の回転トルクが60Nm未満である場合に比べ、表面抵抗率の変化を抑制した環状体が得られる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、導電材料として用いるカーボンブラックの一次粒子径が20nmを超える場合に比べ、表面抵抗率の変化を抑制した環状体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る環状体の製造方法の一例を示す概略構成図である。
【図2】第2実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式断面図である。
【図3】実施例4における導電点の密度の測定の際の解析画像である。
【図4】比較例2における導電点の密度の測定の際の解析画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0028】
<第1実施形態:環状体>
第1実施形態に係る環状体は、少なくとも樹脂と導電材料とを含有し、外周表面の導電点の密度が20点/μm以上であることを特徴とする。更には該導電点の密度が25点/μm以上であることがより好ましく、導電点の密度が30点/μm以上であることが特に好ましい。
【0029】
導電材料を分散した樹脂を画像形成装置用の環状体として用いた場合、静電複写時の放電ストレスによって表面抵抗率が低下する事があった。例えば、電子写真方式の画像形成装置における中間転写体として上記の導電材料を分散した樹脂を用いた場合には、前記中間転写体から用紙等の記録媒体にトナー像を転写する部位(所謂二次転写部)での記録媒体の剥離の際に、中間転写体と記録媒体との剥離放電によって、中間転写体(環状体)の表面抵抗率のみが変化し、トナー像が転写できずに画像に白抜け欠陥が発生した。
【0030】
環状体の外周表面における導電点の密度が20点/μm未満であると表面抵抗率の変化が顕著に現れるが、これに対し、第1実施形態に係る環状体であれば、表面抵抗率の変化が抑制される。
このメカニズムは、以下のように推察される。第1実施形態に係る環状体は、微小な導電点が数多く外周表面に存在するために、剥離放電の際の放電場所が分散し、各導電点(即ち放電場所)にかかる放電エネルギーが小さくなり、放電による樹脂の電気的な破壊が起こらないためと考えられる。
【0031】
また一方で、上記導電点の密度が多くなると中間転写体として必要な表面抵抗率(1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下)が得られなくなることから、100点/μm以下であることが好ましく、75点/μm以下であることが特に好ましい。
【0032】
−導電点の密度−
尚、上記「導電点」とは、以下の方法により環状体の外周表面にて観測されるものを表す。まず、試料表面に導電性の両面テープを貼りつけた後、静電除去した試料を準備する。該試料の表面を−4.0Vの測定電圧をかけながら大気中で10×10μmの範囲を512×512の分解能でコンダクティングAFM測定(Digital Instruments製、NanoscopeIIIa+D3100を使用)をおこなう。この際のプローブと導電性の両面テープに0.7pA以上の電流が流れる点を導電点と定義する。
この導電点の画像解析を行い、導電点数(隣接する導電点はまとめて1つと数える)と面積から、上記導電点の密度が算出される。本明細書に記載の数値は当該方法によって算出されたものである。
【0033】
導電点の密度を上記範囲に制御するためには、用いる導電材料の一次粒子径を調整すること、樹脂中に導電材料を分散する際の圧力を調整すること等が行われる。
【0034】
尚、本明細書において「導電性」と称する場合には、表面抵抗率が1013Ω/□以下であることを表す。
上記表面抵抗率の測定は、JIS−K−6911(1995年)に準じて、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、サンプルを絶縁板の上に置き、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加し、印加後5sec後の外径から内径に流れる電流値をアドバンテスト製、微小電流計 R8340Aを用いることにより測定し、その電流値より得た表面抵抗値から表面抵抗率を求める。
【0035】
〔環状体の組成〕
次いで、第1実施形態に係る環状体の組成について説明する。
(1)樹脂
第1実施形態に係る環状体に用いる樹脂としては、環状体の伸びや収縮といった変形を抑制する観点から、熱可塑性樹脂が適している。該熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂の例としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等が挙げられる)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリエーテルイミド樹脂等、特に限定されることなく画像形成装置の環状体として用いられる熱可塑性樹脂であれば使用される。
これらの中でも、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリカーボネート樹脂が最も適している。
尚、上記樹脂は単独で用いても混合して用いてもよい。
【0036】
(2)導電材料
導電材料とは、第1実施形態に係る環状体に導電性を付与し得る材料を表し、即ち上記環状体の表面抵抗率を1013Ω/□以下に制御し得る材料を指す。
上記導電材料としては、例えばカーボンブラック、イオン導電性樹脂、または導電性高分子材料等が挙げられる。上記カーボンブラックとしては、例えばオイルファーネスブラック、チャンネルブラック、またはアセチレンブラック等が挙げられ、中でもチャンネルブラックが特に好ましい。また、導電性高分子材料としては、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等が挙げられる。
尚、上記導電材料は単独で用いても混合して用いてもよい。
【0037】
尚、前述の通り、導電点の密度を前述の範囲に制御するためには、用いる導電材料の一次粒子径を調整することが好ましい。特に導電材料としてカーボンブラックを用いる場合には、一次粒子径が20nm以下であることが好ましく、16nm以下であることがより好ましく、13nm以下であることが特に好ましい。
また、上記カーボンブラックの一次粒子径は小さくなると嵩密度が小さくなり取り扱いが困難になる事や表面積が大きくなるために分散物がチキソ性を示すようになる為、10nm以上であることが好ましく、12nm以上であることが特に好ましい。
【0038】
ここで、上記一次粒子径は以下の方法により測定される。まず導電材料を樹脂に包埋し100nmの厚さにミクロトームにて切断したサンプルを、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察する。導電材料の粒子50個の径を測定して、その平均値を一次粒子径とした。本明細書に記載の数値は、当該方法によって測定したものである。
【0039】
(3)その他の添加剤
第1実施形態に係る環状体には、上記のほかにも、樹脂の熱劣化を防止するための酸化防止剤や、流動性を向上させるための界面活性剤等、画像形成装置の環状体として用いられるどの添加剤を用いてもよい。
【0040】
〔環状体の製造方法〕
第1実施形態に係る環状体を製造する方法としては、例えば
(a)少なくとも樹脂と導電材料とを混合分散した樹脂溶液を筒型状の円筒成形管の外周面または内周面に塗布し、乾燥して成形する方法
(b)固体状の樹脂と導電材料とを、溶融混練機を用いて固体状の樹脂の融点以上に加熱し、溶融混練(導電剤を分散)し、得られた樹脂ペレットを溶融押出し成形する方法
が挙げられる。
【0041】
・(a)の製造方法
上記(a)の製造方法においては、前述の通り、導電点の密度を前述の範囲に制御するため、樹脂と導電材料とを分散する際には150MPa以上の圧力下で分散することが好ましく、200MPa以上の圧力下で分散することが特に好ましい。
より具体的な方法としては、上記圧力下で径の小さなオリフィスを通過させ分散する湿式ジェットミルを用いる方法が挙げられる。
【0042】
上記の範囲で分散を行うことにより、凝集して2次粒子を形成していた導電材料が解砕され、且つ導電粒子の表面が樹脂で覆われ易くなるため、個々の導電材料が電気的に独立して、導電点の密度が前述の範囲に制御されるものと推察される。
【0043】
また前述の通り、用いる導電材料としては、一次粒子径20nm以下のカーボンブラックが好ましく、更に該一次粒子径は16nm以下であることがより好ましい。
【0044】
次いで、上記(a)の製造方法に関し、上記の分散工程後の各工程(即ち上記範囲の圧力下で混合分散した樹脂溶液を用いて環状体を成形する工程)について説明する。
環状体の成形は、特に限定されないが、例えば図1に示す回転塗布法により好適に行われる。この方法では、環状体の長さに対応した外径を有する円筒成形管11を用意する。円筒成形管11外周面に沿った位置に、塗布液(樹脂溶液)16を円筒成形管11外周面上に吐出するためのノズル15を配し、ノズル15は配管を通じて塗布液容器14に接続されており、さらに塗布液容器14は配管を通じて加圧装置17に接続している。また、ノズル15の下方には、吐出された塗布液16を円筒成形管11外周面上において押し付けるためのブレード18が配置されている。
【0045】
円筒成形管11を円筒成形管回転方向(矢印D)の向きに回転し、ノズル15から塗布液16を円筒成形管11外周面上に吐出し、ブレード18で円筒成形管11外周面上に均す。ノズル15とブレード18は、ノズルおよびブレード移動方向(矢印E)に移動し、塗布液16が円筒成形管11外周面上に塗布される。なお、塗布液16は加圧装置17によりノズル15から吐出するように調節されている。これにより、円筒成形管11外周面上に塗布液16塗膜が形成される。
得られた塗布液16塗膜を加熱乾燥させ、その後冷却して円筒成形管11から剥離し、定められた幅で切断することで環状体が得られる。
なお、塗布液(樹脂溶液)16の樹脂材料としてポリイミド前駆体を用いる場合には、円筒成形管11外周面上に塗布液16塗膜を形成した後、80℃以上170℃以下で乾燥することにより溶媒を除去し(乾燥工程)、さらに250℃以上350℃以下に加熱することでイミド転化(焼成工程)させてポリイミド樹脂膜を形成する。
【0046】
・(b)の製造方法
上記(b)の製造方法においては、前述の通り、導電点の密度を前述の範囲に制御するため、樹脂と導電材料とを溶融混練機を用いて固体状の樹脂の融点以上に加熱し、溶融混練する際に60Nm以上のスクリューの回転トルクの下で溶融混練することが好ましく、80Nm以上の回転トルクの下で溶融混練することが特に好ましい。
【0047】
上記の範囲で溶融混練を行うことにより、凝集して2次粒子を形成していた導電材料が分解または破砕され、且つ導電粒子の表面が溶融した樹脂で覆われ易くなるため、個々の導電材料が電気的に独立して、導電点の密度が前述の範囲に制御されるものと推察される。
【0048】
また前述の通り、用いる導電材料としては、一次粒子径20nm以下のカーボンブラックが好ましく、更に該一次粒子径は16nm以下であることがより好ましい。
【0049】
次いで、上記(b)の製造方法に関し、上記の溶融混練工程後の各工程について説明する。
上記方法によって溶融混練し、排出され冷却された樹脂ペレットを、一軸押出し成形機等の溶融押出し成形機の材料投入部に投入し、加熱し、環状の間隙を持った金型より溶融押出しし、冷却し、得られた環状物を切断して、環状体が得られる。
【0050】
こうして得られる環状体の厚みとしては、特に画像形成装置の記録媒体搬送用環状体や中間転写用環状体として用いる場合であれば、60μm以上250μm以下であることが好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0051】
また、第1実施形態に係る環状体には、内周表面側に他の層を設けてもよい。
内周表面側に設ける層としては、例えば導電層や補強層が挙げられ、材料としてはニッケル電鋳ベルトやポリイミド樹脂ベルト等を用いて形成される。該層の膜厚は、20μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0052】
<第2実施形態:画像形成装置>
上記第1実施形態に係る環状体は、電子写真方式の画像形成装置用の環状体として好適に用いられ、特に中間転写用環状体または記録媒体搬送用環状体として好適に用いられる。即ち、上記第1実施形態に係る環状体を適用した好ましい画像形成装置の態様としては、以下の2態様が挙げられる。
【0053】
像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、第1実施形態に係る環状体を用いてなる中間転写用環状体と、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体に転写する一次転写装置と、前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、を備える画像形成装置。
尚、環状体を中間転写用環状体として用いる場合には、該環状体は1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下の表面抵抗率を持つことが好ましい。
【0054】
像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、第1実施形態に係る環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、を備える画像形成装置。
尚、環状体を記録媒体搬送用環状体として用いる場合には、該環状体は1×10Ω/□以上1×1013Ω/□以下の表面抵抗率を持つことが好ましい。
【0055】
以下においては、第1実施形態に係る環状体を中間転写用環状体(中間転写ベルト)として用いた実施形態について、図面を参照して説明する。
【0056】
図2は、第2実施形態に係る画像形成装置の構成の一例(一実施形態)を示す概略図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式であり、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a乃至101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a乃至102d、露光装置114a乃至114d、現像装置103a乃至103d、一次転写装置(一次転写ロール)105a乃至105d、像保持体クリーニング装置104a乃至104dが配置されている。尚、転写後の像保持体101a乃至101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
【0057】
また、中間転写ベルト107が、テンションロール106a乃至106d、ドライブロール111およびバックアップロール108に張架され、環状体張架装置(ベルト張架装置)107bを形成している。これらのテンションロール106a乃至106d、ドライブロール111およびバックアップロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a乃至101dの表面に接触しながら各像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとの間を矢印Aの方向に移動し得る。一次転写ロール105a乃至105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a乃至101dに接触する部位が一次転写部となり、像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとの接触部には一次転写電圧が印加される。
【0058】
また、二次転写装置として、中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介してバックアップロール108と二次転写ロール109が対向配置されている。紙等の記録媒体115が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109とで挟まれる領域を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介してバックアップロール108に接触する部位が二次転写部となり、二次転写ロール109とバックアップロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112および113が配置されている。
【0059】
この構成のフルカラー画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a乃至103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
【0060】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写ロール105b乃至105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が得られる。
【0061】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱および/または加圧により定着処理された後、機外に排出される。
【0062】
一次転写後の像保持体101a乃至101dは、像保持体クリーニング装置104a乃至104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112および113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0063】
〔像保持体〕
像保持体101a乃至101dとしては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
【0064】
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状またはプレート状等、公知の形状が採用される。
【0065】
〔帯電装置〕
帯電装置102a乃至102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、帯電装置における「導電性」とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。)または半導電性(ここで、帯電装置における「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10乃至1013Ωcmを意味する。)のローラ、ブラシ、フィルム、またはゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器が広く適用される。これらの中でも接触型帯電器が好ましい。
【0066】
帯電装置102a乃至102dは、像保持体101a乃至101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0067】
〔露光装置〕
露光装置114a乃至114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a乃至101dの表面に、半導体レーザー光、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)光、または液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して定められた像様に露光し得る光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0068】
〔現像装置〕
現像装置103a乃至103dとしては、目的に応じて選択され。例えば、一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、またはローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0069】
本実施形態の画像形成装置100に用いるトナー(現像剤)は特に限定されず、例えば、結着樹脂と着色剤を含んで構成される。
【0070】
結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、またはビニルケトン類等の単独重合体および共重合体が例示され、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、またはポリプロピレン等が挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、またはパラフィンワックス等も挙げられる。
【0071】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、またはC.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして挙げられる。
【0072】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
【0073】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、またはキャンデリラワックス等を代表的なものとして挙げられる。
【0074】
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、または極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤が用いられる。
【0075】
他の無機粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の小径無機粒子を用い、更に、付着力低減の為、それより大径の無機或いは有機粒子を併用してもよい。これらの他の無機粒子は公知のものが使用される。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性をあげる効果が大きくなるため有効である。
【0076】
トナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等などの重合法が好ましく用いられる。また、これらの方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
【0077】
なお、外添剤を添加する場合、トナーおよび外添剤をヘンシェルミキサー或いはVブレンダー等で混合することによって製造し得る。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0078】
〔一次転写ロール〕
一次転写ロール105a乃至105dは単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡または無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0079】
〔像保持体クリーニング装置〕
像保持体クリーニング装置104a乃至104dは、一次転写工程後の像保持体101a乃至101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0080】
〔二次転写ロール〕
二次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはパーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール109の体積抵抗率は10Ωcm以下であることが好ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0081】
〔バックアップロール〕
バックアップロール108は、二次転写ロール109の対向電極を形成する。バックアップロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。
【0082】
また、バックアップロール108と二次転写ロール109のシャフトには、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。バックアップロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、バックアップロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール109とに電圧を印加してもよい。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、または導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0083】
〔定着装置〕
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器、加圧ローラ定着器、またはフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0084】
〔中間転写ベルトクリーニング装置〕
中間転写ベルトクリーニング装置112および113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等を用いることができ、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0085】
上述した実施形態においては、像保持体が複数個で構成される所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、像保持体が1個で、色数分だけ中間転写ベルトが回転・作像プロセスを行う所謂複数サイクル方式(例えば4サイクル方式等)の画像形成装置であっても良い。
【実施例】
【0086】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
〔実施例1〕
(環状体の作製)
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(東洋紡製バイロマックスHR16NN、固形分率18質量%、溶剤はn−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(Special Black 5、Degussa社製、一次粒子径20nm)を32phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用いて「200Mpa」にてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。
尚、「phr」とは樹脂の質量を100としたときのカーボンブラックの質量を表す。
【0088】
分散後の樹脂溶液をディップコート法にてφ278mmのアルミ製パイプの外周面に塗布し、150℃で30分回転乾燥後、250℃のオーブンに1時間入れて取り出し、フィルムを抜き取ることでφ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
【0089】
この環状体の膜厚は82μmで、表面抵抗率は1.8×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、後述の白抜け画像評価を実施した結果を表1に示す。
【0090】
〔実施例2〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Monarch880、Cabot社製、一次粒子径16nm)14phrに変更した以外は、実施例1に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は81μmで、表面抵抗率は0.95×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0091】
〔実施例3〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Monarch1000、Cabot社製、一次粒子径16nm)30phrに変更した以外は、実施例1に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は81μmで、表面抵抗率は2.1×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0092】
〔実施例4〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Color Black FW1、Degussa社製、一次粒子径13nm)20phrに変更した以外は、実施例1に記載の方法によりφ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は80μmで、表面抵抗率は0.87×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0093】
〔実施例5〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Color Black FW200、Degussa社製、一次粒子径13nm)24phrに変更した以外は、実施例1に記載の方法によりφ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は81μmで、表面抵抗率は1.1×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0094】
〔実施例6〕
ポリイミド樹脂前駆体(宇部興産製ユーワニスA、固形分率18質量%、溶剤はn−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(Special Black 5、Degussa社製、一次粒子径20nm)を28phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用いて「200Mpa」にてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。
【0095】
分散後の樹脂溶液をディップコート法にてφ278mmのアルミ製パイプの外周面に塗布し、170℃で30分回転乾燥後、320℃のオーブンに1時間入れて取り出し、フィルムを抜き取ることでφ277.8mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は83μmで、表面抵抗率は9.7×1010Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0096】
〔実施例7〕
高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用いて「150Mpa」にてφ0.1mmのオリフィスを通過させるように変更し、且つカーボンブラックの添加量を18phrに変更した以外は、実施例4に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は82μmで、表面抵抗率は6.7×1010Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0097】
〔比較例1〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Regal400R、Cabot社製、一次粒子径25nm)36phrに変更した以外は、実施例1に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は82μmで、表面抵抗率は1.7×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0098】
〔比較例2〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Special Black4、Degussa社製、一次粒子径25nm)33phrに変更した以外は、実施例1に記載の方法によりφ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は82μmで、表面抵抗率は2.7×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0099】
〔比較例3〕
高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用いて「130Mpa」にてφ0.1mmのオリフィスを通過させるように変更し、且つカーボンブラックの添加量を13phrに変更した以外は、実施例4に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は80μmで、表面抵抗率は6.7×1010Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0100】
〔比較例4〕
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(東洋紡製バイロマックスHR16NN、固形分率18質量%、溶剤はn−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(Color Black FW200、Degussa社製、一次粒子径13nm)を12phr添加し、横型サンドミル(Dyno社製、Dynomill KDL)にφ2mmのジルコニア製球を内容積の60体積%充填し、φ90mmの攪拌羽で回転数1592rpmで回転させたところへ通すことで分散を行った。このときの出口での液圧は「0.2MPa」であった。
【0101】
分散後の樹脂溶液を用いて実施例1に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。この環状体の膜厚は79μmで、表面抵抗率は、0.87×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表1に示した。
【0102】
[評価]
−表面抵抗率−
表面抵抗率は、前述の方法により求めた。
また、表面抵抗率の変化は、下記白抜け画像の評価前後における表面抵抗率を測定し、評価前の表面抵抗率の常用対数値と評価後の表面抵抗率の常用対数値の差より求めた。尚、上記表面抵抗率の変化は、0.6以下が求められ、望ましくは0.3以下である。
【0103】
−導電点の密度、一次粒子径−
また、導電点の密度およびカーボンブラックの一次粒子径は、前述の方法により測定した。
尚、実施例4における導電点の密度の測定の際の解析画像(導電点の密度28.6点/μm)を図3に、比較例2における導電点の密度の測定の際の解析画像(導電点の密度13.7点/μm)を図4に示す。
【0104】
−白抜け画像の評価−
10℃15%RHの低温低湿環境下において、富士ゼロックス社製のDocuPrint C2250によってA4縦用紙を連続して3000枚転写した後、ハーフトーン(マゼンタ30%)の画像をA3縦用紙に転写した。このときの2次転写電圧は5.6kVとした。得られたハーフトーン画像を目視により下記評価基準で白抜け画像の判定を行った。
白抜け画像の評価基準
◎:白抜けなし
○:わずかに白抜けあり
△:白抜けあり
×:ひどい白抜けあり
【0105】
【表1】

【0106】
〔実施例8〕
(環状体の作製)
熱可塑性樹脂(宇部興産社製ポリアミド3030XA)にカーボンブラック(Special Black 5、Degussa社製、一次粒子径20nm)を32phrとなるように、二軸溶融混練機(パーカーコーポレイション社製)を用いて、加熱温度240℃、スクリューの回転トルク「100Nm」にて溶融混練し、樹脂ペレットを得た。
尚、「phr」とは樹脂の質量を100としたときのカーボンブラックの質量を表す。
【0107】
溶融混練後の上記樹脂ペレットを、一軸溶融押出し機((株)三葉製作所社製)にて235℃に加熱し、φ278mmの円筒状のサイジング金型の表面に接触させながら溶融押出しし、接触後に冷却したフィルムを引取りながら溶融押出しし、カットすることでφ277.9mm、幅350mmの環状体(フィルム)を得た。
【0108】
この環状体の膜厚は122μmで、表面抵抗率は1.7×1011Ω/□であった。この環状体よりフィルムサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、後述の白抜け画像評価を実施した結果を表2に示す。
【0109】
〔実施例9〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Monarch880、Cabot社製、一次粒子径16nm)14phrに変更し、且つ溶融混練時のスクリューの回転トルクを下記表2に示す数値に変更した以外は、実施例8に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は121μmで、表面抵抗率は0.98×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表2に示した。
【0110】
〔実施例10〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Monarch1000、Cabot社製、一次粒子径16nm)30phrに変更し、且つ溶融混練時のスクリューの回転トルクを下記表2に示す数値に変更した以外は、実施例8に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は122μmで、表面抵抗率は2.0×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表2に示した。
【0111】
〔実施例11〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Color Black FW1、Degussa社製、一次粒子径13nm)20phrに変更し、且つ溶融混練時のスクリューの回転トルクを下記表2に示す数値に変更した以外は、実施例8に記載の方法によりφ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は125μmで、表面抵抗率は0.87×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表2に示した。
【0112】
〔実施例12〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Color Black FW200、Degussa社製、一次粒子径13nm)24phrに変更し、且つ溶融混練時のスクリューの回転トルクを下記表2に示す数値に変更した以外は、実施例8に記載の方法によりφ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は123μmで、表面抵抗率は1.01×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表2に示した。
【0113】
〔実施例13〕
熱可塑性樹脂(ポリブチレンテレフタレート:三菱化学社製ノバヂュラン)にカーボンブラック(Special Black 5、Degussa社製、一次粒子径20nm)を28phr添加し、実施例8に記載の溶融混練機(パーカーコーポレイション社製)を用い、加熱温度は実施例8に記載の条件、スクリューの回転トルクは「150Nm」に変更して溶融混練を行い、樹脂ペレットを得た。
【0114】
溶融混練後の上記樹脂ペレットを実施例8に記載の溶融押出し機を用い、実施例8に記載の条件によって、φ277.8mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は131μmで、表面抵抗率は9.9×1010Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表2に示した。
【0115】
〔比較例5〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Regal400R、Cabot社製、一次粒子径25nm)36phrに変更し、且つ溶融混練時のスクリューの回転トルクを下記表2に示す数値に変更した以外は、実施例8に記載の方法により、φ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は122μmで、表面抵抗率は1.7×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表2に示した。
【0116】
〔比較例6〕
用いたカーボンブラックを、カーボンブラック(Special Black4、Degussa社製、一次粒子径25nm)33phrに変更し、且つ溶融混練時のスクリューの回転トルクを下記表2に示す数値に変更した以外は、実施例8に記載の方法によりφ277.9mm、幅350mmの環状体を得た。
この環状体の膜厚は124μmで、表面抵抗率は2.7×1011Ω/□であった。この環状体よりサンプルを切り取り、導電点の密度を測定するとともに、白抜け画像評価を実施した結果を表2に示した。
【0117】
[評価]
表面抵抗率の算出、表面抵抗率の変化の算出、導電点の密度の測定、およびカーボンブラックの一次粒子径の測定を、実施例1において行った方法により行った。また、白抜け画像の評価についても、実施例1において行った方法により行った。
【0118】
【表2】

【符号の説明】
【0119】
11 円筒成形管
14 容器
15 ノズル
16 塗布液
17 加圧装置
18 ブレード
101a乃至101d 像保持体
102a乃至102d 帯電装置
103a乃至103d 現像装置
104a乃至104d 像保持体クリーニング装置
105a乃至105d 一次転写ロール
106a乃至106d テンションロール
107 中間転写ベルト
107b 環状体張架装置(ベルト張架装置)
108 バックアップロール
109 二次転写ロール
110 定着装置
111 ドライブロール
112 中間転写ベルトクリーニングブレード
113 中間転写ベルトクリーニングブラシ
114a乃至114d 露光装置
115 記録媒体
116 二次転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂と導電材料とを含有し、外周表面の導電点の密度が20点/μm以上である環状体。
【請求項2】
前記導電材料が一次粒子径20nm以下のカーボンブラックである請求項1に記載の環状体。
【請求項3】
前記樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1または請求項2に記載の環状体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の環状体と、
前記環状体を内周面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、
を備える環状体張架装置。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の環状体を用いてなる中間転写用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項7】
樹脂溶液と導電材料とを混合し、150MPa以上の圧力下で分散する分散工程と、
前記導電材料が分散された前記樹脂溶液を環状に成形する成形工程と、
を有する環状体の製造方法。
【請求項8】
固体状の樹脂と導電材料とを混合し、60Nm以上の回転トルクの下で溶融混練する溶融混練工程と、
前記導電材料が溶融混練された前記樹脂を環状に成形する成形工程と、
を有する環状体の製造方法。
【請求項9】
前記導電材料が一次粒子径20nm以下のカーボンブラックである請求項7または請求項8に記載の環状体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−250251(P2010−250251A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152537(P2009−152537)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】