説明

環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具

【課題】従来は、ロボットアーム、又は装置付設のアームに設けた冶具本体に、チャック爪、又は爪を設け、このチャック爪、又は爪を、被製版ロール又はボビンに係止し、この被製版ロール又はボビンを吊上げる構造があった。この構造では、このチャック爪、又は爪に、被製版ロール又はボビンの重量が、全て掛かる構造である。従って、比較的、軽い物の吊上げには有効であるが、他の重量のある物には不向きと考えられる。
【構成】本発明は、ステータの空間部に挿入される棒状の吊上げ本体の放射方向に向って拡縮自在とする構造で、かつ平面視して吊上げ本体の三箇所に、基端部の側面が枢着された複数枚のプレートと、複数枚のプレートの自由端部の側面に枢着された複数枚のクランプ板と、複数枚のクランプ板の放射側側面の下端に設けた爪片で構成したステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であり、ステータを、確実かつ安全に吊架できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク、モータ用のステータ等の重量がある環状部材を把持(チャック、挾持)するには、外側から複数の把持爪等の掴み手段を介して行なう構造として、例えば、特開平5−285777号の「タレット旋盤のワーク払出し治具」がある(文献1とする)。この発明は、冶具本体に枢着した複数本のワーク把持爪を介して、ワークを、外側より支持する構造であり、払出しの時間短縮を図ることを意図する。また、他の例として、内側から複数のチャック爪等を介して行なう構造として、例えば、特開2002−265009の「ロール立体倉庫における被製版ロールの収納・取り出し方法」がある(文献2とする)。この発明は、ロボットアームに垂設したチャック開閉手段であり、このチャック開閉手段は、チャック爪を備えたチャック本体と、このチャック本体に間隔をおいて設けた対の養生材押さえプレートと、また、このチャック本体及び/又は養生材押さえプレートを可動する制御部とで構成し、このチャック本体を、被製版ロールの被チャック孔(上方空間)に挿入し、このチャック爪の放射方向の可動を介して、そのチャック爪を、被製版ロールの被チャック孔の縁に引掛けた状態とした後に、ロボットアームを介して吊上げ、ロール収納ボックスから取り出す、又は逆の操作を介して、ロール収納ボックスに収納する構造であり、区画されたロール収納ボックスにおいて、被製版ロールの収納・取り出しを容易、かつ確実に行うことを意図する。さらに実開平5−16183号の「ボビンのチャック装置」がある(文献3とする)。この考案は、チャック装置を垂設した拡縮する3本の爪部材と、この爪部材の下端に設けた爪と、この爪部材を拡縮するカム及び/又は駆動部で構成し、この爪部材を、パッケージを形成するコーン状ボビンの小径側に挿入し、爪をボビンの小径側(上方空間)の返りに引掛けて、吊上げ支持する構造であり、パッケージが形成されるコーン状ボビンを安定的に支持し、かつ移動することを意図する。
【0003】
【特許文献1】特開平5−285777号
【特許文献2】特開2002−265009
【特許文献3】実開平5−16183号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した文献(1)は、ワークの外側からワーク把持爪でチャックする構造であるので、重量のあるワークの支持には対応できるが、本発明の構造と意図とは異なる。
【0005】
そして、前述した文献(2)、(3)は、チャック爪、又は爪を、被製版ロール又はボビンの上方空間に係止し、この被製版ロール又はボビンを吊上げる構造である。この構造では、このチャック爪、又は爪に、被製版ロール又はボビンの重量が、全て掛かる構造である。従って、目的とする被製版ロール又はボビンには有効と考えられる。しかし、この文献(2)、(3)の構造、即ち、被製版ロールの被チャック孔の縁(上方の開口引掛け突部)、又はボビンの返りを引掛ける構造では、重量物の吊上げ及び/又は安定的な吊上げには不向きと考えられる。従って、この文献(2)、(3)の構造では、本願発明が意図するワーク、モータ用のステータ等の重量がある環状部材を、安定的に吊上げることには不向きであると考えられる。
【0006】
また、文献(2)、(3)は、チャック爪、又は爪を、被製版ロール又はボビンに係止し、この被製版ロール又はボビンを吊上げる構造である。従って、吊上げ時に、常に、このチャック爪、または爪に、常に重量が掛り、特に重量のある物を吊上げる際には、金属疲労の原因となり、また耐久性に問題を残すことが考えられる。
【0007】
さらに、文献(2)、(3)は、チャック本体、又は爪部材の左右移動であり、その移動距離には、限界が感じられる。従って、大径から小径の被製版ロール又はボビンを係止し、この大小径の被製版ロール又はボビンを吊上げる構造、即ち、汎用性の吊上げ冶具(把持手段)となることは考えられない。
【0008】
また、その他として、この文献(2)、(3)は、前述した構造であり、構造が複雑となること、取扱いに経験を要すること、又はコストの上昇を招来すること、等の改良点が挙げられる。
【0009】
以上の課題を解決するために、本願発明は、次のような構造とし、また、これにより、下記の効果を発揮できる。
【0010】
「1」 その構造は、クレーン等の重機又は多種の機械に取付けて、吊上げ可能な吊上げ本体に、放射方向に拡縮するプレートと、このプレートで可動する爪片を備えたクランプ板を設けた構造の吊上げ治具であり、この吊上げ治具を、ワーク、モータ用のステータ等の重量がある環状部材(ステータで説明する)の内側に挿入するとともに、この吊上げ治具のクランプ板の爪片を、ステータの内側の下端面に係止した後に、吊上げ作業を介して、ステータの重量を、プレートの拡開方向への圧力に利用し、クランプ板を、前記ステータの内面に圧接することを特徴とする。
【0011】
「2」 ステータの重量を、プレートの拡開方向への圧力に利用し、このステータの内面に、クランプ板を圧接し、このステータを、確実かつ強固に支持できる効果がある。
【0012】
「3」 プレートの拡開方向への圧力及び/又はこのプレートの長さを利用し、このステータの内面に、クランプ板を圧接し、このステータを、支持できる構造であり、ステータの内面の径が小径、大径に拘らず、使用できる効果がある。
【0013】
「4」 吊上げ本体に、対のプレートを、軸芯を同じくして枢着する構造であり、プレートの確実かつスムースな動きと、プレートの耐久性の向上が図れる等の特徴を有する。
【0014】
「5」 吊上げ本体の切欠き凹部に、プレートを収容可能としたので、吊上げ冶具をコンパクトに収容できること、また持ち運びに利便性を有すること、等の特徴を有する。
【0015】
「6」 プレートの拡開状態を補完できる操作機構を付設することで、ステータの内面にクランプ板を圧接し、このステータを、確実かつ強固、しかも安定的に支持できる効果がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、前述の「1」、「2」、「3」の特徴を達成することを意図する。
【0017】
請求項1は、環状部材(多種の環状部材に適応可能であるが、この一例では、「ステータ」として、以下説明する。)の空間部に挿入される棒状の吊上げ本体と、この吊上げ本体の放射方向に向って拡縮自在とし、この吊上げ本体の平面視して少なくとも三箇所に、基端部の側面が枢着された複数枚のプレートと、この複数枚のプレートの自由端部の側面に枢着された複数枚のクランプ板と、この複数枚のクランプ板の放射側側面の下端に設けた爪片と、で構成したステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1と、前述の「4」の特徴を達成することを意図する。
【0019】
請求項2は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
このプレートは、吊上げ本体に枢軸を介して対で設けられており、そのプレートの自由端部の側面に枢着された枢軸が、対のプレートにおいて、同じ軸芯となる構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1と、前述の「5」の特徴を達成することを意図する。
【0021】
請求項3は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この吊上げ本体に、切欠き凹部を複数本形成し、この各切欠き凹部の壁片に、この各プレートの基端部の側面をそれぞれ添接するとともに、この各切欠き凹部に、プレートを収容可能とする構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1の特徴を達成することを意図する。
【0023】
請求項4は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この爪片は、各クランプ板の放射側側面より突出する構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0024】
請求項5・6の発明は、請求項1と、前述の「6」の特徴を達成することを意図する。
【0025】
請求項5は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この吊上げ本体に、この各プレートの拡開状態を補完する操作機構を付設する構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0026】
請求項6は、請求項5に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この操作機構は、吊上げ本体に摺動自在に設けた環体と、この環体の複数の鍔片に、基端部をそれぞれ枢着し、かつこの複数のクランプ板に、その自由端部をそれぞれ枢着した複数枚の操作用プレートと、前記環体の鍔片の少なくとも1つに枢着した操作杆で形成する構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明は、ステータの空間部に挿入される棒状の吊上げ本体と、吊上げ本体の放射方向に向って拡縮自在とし、吊上げ本体の平面視して少なくとも三箇所に、基端部の側面が枢着された複数枚のプレートと、複数枚のプレートの自由端部の側面に枢着された複数枚のクランプ板と、複数枚のクランプ板の放射側側面の下端に設けた爪片と、で構成したステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0028】
従って、請求項1は、前述の「1」、「2」、「3」の特徴を達成できる。
【0029】
請求項2の発明は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
プレートは、吊上げ本体に枢軸を介して対で設けられており、プレートの自由端部の側面に枢着された枢軸が、対のプレートにおいて、同じ軸芯となる構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0030】
従って、請求項2は、請求項1と、前述の「4」の特徴を達成できる。
【0031】
請求項3の発明は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
吊上げ本体に、切欠き凹部を複数本形成し、各切欠き凹部の壁片に、各プレートの基端部の側面をそれぞれ添接するとともに、各切欠き凹部に、プレートを収容可能とする構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0032】
従って、請求項3は、請求項1と、前述の「5」の特徴を達成できる。
【0033】
請求項4の発明は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
爪片は、各クランプ板の放射側側面より突出する構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0034】
従って、請求項4は、請求項1の特徴を達成できる。
【0035】
請求項5の発明は、請求項1に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
吊上げ本体に、各プレートの拡開状態を補完する操作機構を付設する構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0036】
請求項6の発明は、請求項5に記載のステータの内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
操作機構は、吊上げ本体に摺動自在に設けた環体と、環体の複数の鍔片に、基端部をそれぞれ枢着し、かつ複数のクランプ板に、自由端部をそれぞれ枢着した複数枚の操作用プレートと、環体の鍔片の少なくとも1つに枢着した操作杆で形成する構成としたステータの内周面に圧着される吊上げ冶具である。
【0037】
従って、請求項5・6は、請求項1と、前述の「6」の特徴を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の一例を説明する。
【0039】
図1は代表的な第一例を示したプレートの拡開状態の全体斜視図、図2は図1の縮小状態の全体斜視図、図3は図1の使用状態で、ステータと爪片との関係を示した一部省略の拡大俯瞰図、図4は図1の正面図、図5は図1の底面図である。また、図6は第二例を示した一部省略の正面図、図7は図6の底面図、図8は図6の使用状態で、プレートの最小の拡開状態の一部省略の正面図、図9は図8の一部省略の底面図である。そして、図10は第三例の使用状態で、プレートの中間の拡開状態の一部省略の正面図、図11は図10の一部省略の底面図である。さらに、図12は第四例の使用状態で、プレートが大きく拡開した状態の一部省略の正面図、図13は図12の一部省略の底面図である。尚、図14は第五例の使用状態で、プレートの最大の拡開状態の一部省略の正面図、図15は図14の一部省略の底面図である。
【0040】
第一例〜第五例は、基本的な構造は、共通しており、この基本的な構造を説明すると、1は環状部材(この例では、以下「ステータW」として説明する。尚、他の環状部材に使用することも可能である。)の空間部W1に挿入される棒状の吊上げ本体で、この吊上げ本体1には、複数本の断面視して略三角形状の切欠き凹部2を形成し、平面視してY形の取付け壁3を形成する。尚、Y形は一例であり、限定されない。そして、このY形の取付け壁3の両壁面300、301(場合により、片面の壁面300側のみに設ける場合も可能である)で、その上側300a、301aと、下側300b、301bには、吊上げ本体1の放射方向Aに向って、拡縮自在とする上下二組であって、取付け壁3を挟んで対で設けられるプレート5、5aの基端部500、500aを、枢軸6を介して枢着し、この基端部500、500aの平坦内側側面を、壁面300、301の平坦面に添接する。従って、この対のプレート5、5aが別々に盲動することなく、かつ騒音を発することなく、しかも、正確に拡縮する構造となっている。尚、この一例では、平面視して吊上げ本体1の三箇所に形成された各取付け壁3の両壁面300、301に、それぞれプレート5、5aの基端部500、500aの平坦内側側面500−1、500a−1が枢着されることから、合計で、十二本のプレート5、5aが、吊上げ本体1の取付け壁3にそれぞれ枢着される構造である。そして、このそれぞれのプレート5、5aの自由端部501、501aの平坦内側側面500−1、500a−1を、クランプ板7の平坦面701に添接することを介して、この自由端部501、501aの平坦内側側面500−1、500a−1で、クランプ板7を挾持するようにして、枢軸8を介して枢着する。従って、このクランプ板7が盲動することなく、かつ騒音を発することなく、しかも、正確に拡縮する構造となっている。このクランプ板7は、各プレート5、5aの自由端部501、501aにそれぞれ枢着されることから、この一例では、三枚である。図中700は、クランプ板7の放射側側面700を示している。
【0041】
前述した如く、各クランプ板7の平坦面701には、各取付け壁3の両壁面300、301に枢着した対のプレート5、5aの自由端部501、501aが、枢着されるとともに、この対のプレート5、5aで、挾持される構造である。従って、このプレート5、5aの放射方向Aへの拡縮に相応して、同時に、三枚のクランプ板7が、正確かつ確実に放射方向Aに拡縮(移動)する構造である。
【0042】
そして、この各クランプ板7の放射側側面700の下端には、爪片10がそれぞれ形成されており、この各爪片10は、放射側側面700よりそれぞれ突出する構造となっている。
【0043】
尚、前述した対のプレート5、5aの基端部500、500aは、枢軸6を介して、吊上げ本体1の取付け壁3に枢着されており、この基端部500、500aは、同じ軸芯となる。また同様に、対のプレート5、5aの自由端部501、501aは、枢軸8を介して、クランプ板7に枢着されており、この基端部501、501aは、同じ軸芯となる。これにより、クランプ板7が盲動することがなく、正確にステータWの内面W11に圧接(後述)される。
【0044】
続いて、縮径方向(矢印Y)に移動し、かつ吊上げ本体1の切欠き凹部2に収容するように規制したプレート5、5a(対の場合は、一方の符号、この例では、5とする。他の構造も同じ)と、これに伴って、縮径方向(矢印Y)に移動し、かつ吊上げ本体1の取付け壁3の放射方向側面302に、添接するように規制したクランプ板7を、ステータWの空間部W1に、この吊上げ本体1とともに挿入する。そして、ステータWの下端面W2より、クランプ板7の爪片10を下側に設置した状態で、前記それぞれの規制を解除することで、プレート5が自重で、その自由端部501が放射方向A(拡開方向(矢印X))に可動し、この可動に伴って、クランク板7の放射側側面700が、空間部W1の周面W11に面接触する。
【0045】
そこで、吊上げ本体1(プレート5とクランプ板7を含む。以下、同じ)を引上げるとともに、爪片10を下端面W2に係止し、ステータWを仮止めする。その後、さらに吊上げ作業を行う。この吊上げ作業において、ステータWの重量が、プレート5の自由端部501の拡開方向(矢印X)への圧力に利用され、クランプ板7は、ステータWの内面W11に強く圧接(強圧)される。また、この強圧を介して、爪片10に対するステータWの重量が緩和されることから、この爪片10が破損することはない。また、この爪片10を、クランク板7の放射側側面700の略全幅に設け、かつ下端側に向って、長い寸法を取ることで、荷重に対して、有効に対応できる。この状態で、ステータWを所定の箇所に搬送した後は、プレート板7を、下端面W2より下げ、かつ爪片10と下端面W2との係止を解除し、このプレート5の自由端部501を、縮径方向(矢印Y)に移動させ、クランプ板7の放射側側面700が、ステータWの内面W11より離間する。この状態で、吊上げ本体1を緩やかに、上方に移動し、この吊上げ本体1を、空間部W1より引抜くことで、作業を終了する。尚、前記ステータWの下端面W2より、クランプ板7の爪片10を下側に設置する際に、ステータWの空間部W1の下端面W2の爪片10の係止箇所を、フリー状態(ステータWを載置するのに、下端面W2の外側等に接する形態の床面や台座等を採用し、下端面W2の内面W11側及び空間部W1が、床面や台座等に接しない状態)にすることが望ましい。従来の技術では、ワークの外側や、ワークの中心に設けた孔の上方(上方空間)に開口引掛け部を設けて、そこに爪を係止するため、ワークの全重量が爪にかかり、耐久性に問題があり、また、持上げるには、重量に対して何倍もの力が必要であった。加えて、ワークに対しても、開口引掛け部にワーク全体の荷重がかかり、欠損や落下、歪み等の問題も懸念される。しかし、本発明では、クランプ板7のワーク(ステータW)の内面W11への圧接が行われるため、ステータWの重量がこの圧力に利用され、ステータWが離脱することなく吊上げることができ、さらに、この圧接と、爪片10のステータWの下端面W2への係止によって、爪片10への荷重が少なくなるため、爪片10及びステータWの一部のみに荷重の負担がかからず、爪片10及びステータWの欠損や落下、歪み等の問題も回避でき、安全に支持することが可能である。
【0046】
第二例〜第五例に示した、操作機構20を説明すると、この操作機構20は、吊上げ本体1に摺動自在に設けた環体21と、この環体21の複数の鍔片(以下、一方・他方鍔片21a、21bとして説明するが、図示しない背面側にも設けることは可能である。)に、枢軸を介して基端部22aを枢着した複数枚の操作用プレート22と、前記環体の他方鍔片21bに枢着した操作杆23とで構成されている。この実施例では、他方鍔片21bのみに操作杆23を設けたが、複数の鍔片に設けることも可能である。尚、前記複数枚の操作用プレート22の自由端側22bは、枢軸を介して、前記複数のクランプ板7に枢着されている。従って、この例では、操作杆23を介して、環体21を、吊上げ本体1の軸部100に沿って引上げ(操作機構20を上昇させて)、操作用プレート22の自由端側22bが縮径方向(矢印Y)に移動した状態で、ステータWの空間部W1に、プレート5、クランプ板7並びに吊上げ本体1を挿入し、爪片10を、ステータWの下端面W2に仮止めした後に、操作杆23を押下げ、又は操作杆23の引張る力を弱めて、環体21を、吊上げ本体1の軸部100に沿って引下げる(操作機構20を降下させる)。この環体21の引下げにより、操作用プレート22の自由端側22bが放射方向(矢印X)に拡開し、ステータWの内面W11にクランプ板7の放射側側面700が圧接し、ステータWの下端面W2に爪片10が係止される(図8、図10、図12等参照)。この操作杆23の引下げ位置と、操作用プレート22の拡開位置を確保する限り、前記係止(係止状態)は保持されるので、安全性が確保できる。そして、また、この係止状態では、前述の例の吊上げ作業と同様であって、ステータWの重量が、プレート5の拡開方向(矢印X)への圧力に利用され、クランプ板7は、ステータWの内面W11に強く圧接(強圧)される。そして、吊上げ本体1及び/又は操作機構20の移動を介して、ステータWを所定の箇所に移動する。この移動後に、吊上げ本体1よりステータWを取外すには、操作杆23を引上げて、環体21を軸部100に沿って上方に移動させることで、操作用プレート22の自由端部22bが縮径方向(矢印Y)に移動し、前述の例の取外し作業と同様であって、吊上げ本体1全体を、下端面W2より下げ、かつ爪片10と下端面W2との係止を解除し、このプレート5の自由端部501を、縮径方向(矢印Y)に移動させ、クランプ板7の放射側側面700を、ステータWの内面W11より離間させる。この状態で、吊上げ本体1及び/又は操作杆23(操作機構20)を緩やかに、上方に移動し、この吊上げ本体1を、空間部W1より引抜くことで、作業を終了する。その他は、前述の例に準ずる。そして、この実施例では、この操作機構20によって、吊上げ冶具の自動操作及び/又は遠隔操作が可能となり、作業の迅速化・簡略化、スピード化、安全性等に寄与できる。
【0047】
尚、切欠き凹部2の上方に傾斜面200を形成し、プレート5の収容位置の決定を図り、取扱の容易化、収容の確実性と、衝突の回避(故障・折損の回避)、美感の向上等に役立てることも可能であり、また吊上げ本体1及び/又はプレート5等の強度の向上と、収容時のプレート5の衝突を回避し、故障・折損を無くし得ること等の実益がある。さらには、このプレート5の収容の容易化、安全性の向上によって、操作機構20の取扱の容易化、収容の確実性と、衝突の回避、又は故障・折損を無くし得ること等の特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は代表的な第一例を示したプレートの拡開状態の全体斜視図
【図2】図2は図1の縮小状態の全体斜視図
【図3】図3は図1の使用状態で、ステータと爪片との関係を示した一部省略の拡大俯瞰図
【図4】図4は図1の正面図
【図5】図5は図1の底面図
【図6】図6は第二例を示した一部省略の正面図
【図7】図7は図6の底面図
【図8】図8は図6の使用状態で、プレートの最小の拡開状態の一部省略の正面図
【図9】図9は図8の一部省略の底面図
【図10】図10は第三例の使用状態で、プレートの中間の拡開状態の一部省略の正面図
【図11】図11は図10の一部省略の底面図
【図12】図12は第四例の使用状態で、プレートが大きく拡開した状態の一部省略の正面図
【図13】図13は図12の一部省略の底面図
【図14】図14は第五例の使用状態で、プレートの最大の拡開状態の一部省略の正面図
【図15】図15は図14の一部省略の底面図
【符号の説明】
【0049】
1 吊上げ本体
100 軸部
2 切欠き凹部
200 傾斜面
3 取付け壁
300 壁面
300a 上側
300b 下側
301 壁面
301a 上側
301b 下側
302 放射側側面
5 プレート
5a プレート
500 基端部
500−1 平坦内側側面
500a 基端部
500a−1 平坦内側側面
501 自由端部
501a 自由端部
6 枢軸
7 クランプ板
700 放射側側面
701 平坦面
8 枢軸
10 爪片
20 操作機構
21 環体
21a 一方鍔片
21b 他方鍔片
22 操作用プレート
22a 基端部
22b 自由端部
23 操作杆
A 放射方向
X 矢印
Y 矢印
W ステータ
W1 空間部
W11 内面
W2 下端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部材の空間部に挿入される棒状の吊上げ本体と、この吊上げ本体の放射方向に向って拡縮自在とし、この吊上げ本体の平面視して少なくとも三箇所に、基端部の側面が枢着された複数枚のプレートと、この複数枚のプレートの自由端部の側面に枢着された複数枚のクランプ板と、この複数枚のクランプ板の放射側側面の下端に設けた爪片と、で構成した環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具。
【請求項2】
請求項1に記載の環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
このプレートは、吊上げ本体に枢軸を介して対で設けられており、そのプレートの自由端部の側面に枢着された枢軸が、対のプレートにおいて、同じ軸芯となる構成とした環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具。
【請求項3】
請求項1に記載の環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この吊上げ本体に、切欠き凹部を複数本形成し、この各切欠き凹部の壁片に、この各プレートの基端部の側面をそれぞれ添接するとともに、この各切欠き凹部に、プレートを収容可能とする構成とした環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具。
【請求項4】
請求項1に記載の環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この爪片は、各クランプ板の放射側側面より突出する構成とした環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具。
【請求項5】
請求項1に記載の環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この吊上げ本体に、この各プレートの拡開状態を補完する操作機構を付設する構成とした環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具。
【請求項6】
請求項5に記載の環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具であって、
この操作機構は、吊上げ本体に摺動自在に設けた環体と、この環体の複数の鍔片に、基端部をそれぞれ枢着し、かつこの複数のクランプ板に、その自由端部をそれぞれ枢着した複数枚の操作用プレートと、前記環体の鍔片の少なくとも1つに枢着した操作杆で形成する構成とした環状部材の内周面に圧着される吊上げ冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−215014(P2009−215014A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61737(P2008−61737)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(594148667)株式会社石亀工業 (27)
【Fターム(参考)】