説明

生ゴミ処理機

【課題】撹拌時の負荷を低減できるとともに、処理槽内のゴミを短時間で確実に排出できる生ゴミ処理機を提供する。
【解決手段】処理槽21を有する処理機本体10と、処理槽21への投入口16を閉塞する蓋体11と、処理槽21内の生ゴミを攪拌する攪拌部材41とを備え、処理槽21の外周部に開閉可能な排出口33を設け、排出口33から処理槽21内の処理済みのゴミを排出可能とした生ゴミ処理機において、排出口33を閉塞させた攪拌処理の実行時に不動状態を維持し、排出口33を開口させた排出処理の実行時に可動する攪拌部材41とは別体の排出部材58を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所などで発生した生ゴミを処理して減量化する生ゴミ処理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の生ゴミ処理機に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0003】
【特許文献1】特許第3298511号公報
【特許文献2】特開平10−99841号公報
【0004】
特許文献1には、生ゴミを収納した容器の上部に温風を供給し、収納容器内に設けた固定刃と回転刃により前記生ごみを粉砕しながら乾燥処理を実行する乾燥方式の生ゴミ処理機が記載されている。この生ゴミ処理機では、外装体に対して前記収納容器が回転刃と一緒に着脱可能に配設する構成とされ、乾燥処理後の生ゴミを取り出して廃棄可能に構成している。
【0005】
しかしながら、この生ゴミ処理機では、生ゴミの処理を行うと、その都度、収納容器を取り出して処理後の乾燥ゴミを廃棄する必要があるため、使用上の利便性が悪いという問題がある。なお、収納容器内に前回処理した乾燥ゴミが残存していても、新たな生ゴミを収容させるスペースが存在する場合には、引き続いて処理を実行することは可能であるが、この場合には、処理に要する時間が長くなる。
【0006】
また、収納容器から乾燥ゴミを廃棄する際には、内部に生ゴミを破断するための刃を備えた攪拌部材が存在しているため、生ゴミの廃棄作業性が悪いうえ、手が触れると怪我の恐れがある。なお、収納容器から攪拌部材を取外可能とすることにより、廃棄に係る作業性の問題は解消することができるが、この場合には、廃棄した生ゴミ中に存在する攪拌部材を取り出す必要が生じるため、怪我の可能性を無くすことはできない。
【0007】
特許文献2には、処理槽の内部に回転軸を水平方向に貫通させ、この回転軸に対して翼部を設けた撹拌部材を有する生ゴミ処理機が記載されている。そして、この生ゴミ処理機では、撹拌部材の回転軌跡の外周部に位置するように処理槽に排出口を設け、この排出口をキャップにより開閉可能としている。そして、この排出口を開口させた状態で撹拌部材を回転させることにより、処理済みの生ゴミを処理槽外に排出できるように構成し、使用上の利便性を向上するとともに、使用者が怪我をすることを防止している。
【0008】
しかしながら、この生ゴミ処理機は、1つの攪拌部材により生ゴミを攪拌および排出するため、生ゴミへの接触面積が大きい場合には攪拌回転時の負荷が大きく、高価な高出力の駆動モータを搭載する必要があるため、コスト高になるという問題がある。しかも、攪拌部材を構成する回転軸や翼部、処理槽の軸受部など、関連部品も高い強度が必要になるため、更にコスト高になるという問題がある。
【0009】
これらの問題は、生ゴミに対する攪拌部材の接触面積を低減し、負荷を削減すれば解消できるが、この場合には、処理槽内のゴミを排出する際の必要時間が長くなるうえ、完全に排出することが極めて困難になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、撹拌時の負荷を低減できるとともに、処理槽内のゴミを短時間で確実に排出できる生ゴミ処理機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の生ゴミ処理機は、生ゴミを収容する処理槽を有する処理機本体と、前記処理機本体に開閉可能に配設し前記処理槽への投入口を閉塞する蓋体と、前記処理槽内の生ゴミを攪拌する攪拌部材とを備え、前記処理槽の外周部に開閉可能な排出口を設け、該排出口から前記処理槽内の処理済みのゴミを排出可能とした生ゴミ処理機において、前記排出口を閉塞させた攪拌処理の実行時に不動状態を維持し、前記排出口を開口させた排出処理の実行時に可動する前記攪拌部材とは別体の排出部材を設けた構成としている。
【0012】
この生ゴミ処理機によれば、生ゴミを攪拌する攪拌部材と、ゴミを排出する排出部材とを別体に設け、攪拌処理の実行時には排出部材を不動状態とし、排出処理の実行時には排出部材を可動状態とするため、攪拌回転時の負荷を小さく、排出回転時の負荷を大きくすることができる。その結果、高出力のモータを搭載することなく、攪拌効率および排出効率を向上できる。また、高出力のモータを使用しないため、関連する部品の強度も高める必要もなく、コスト高になることを防止できる。
【0013】
具体的には、この生ゴミ処理機では、前記排出部材は、前記攪拌部材の回転軸に対して回転可能に装着したアーム部と、該アーム部の先端に回転可能に配設した板状をなす翼部を備えることが好ましい。
この場合、前記攪拌部材は前記回転軸から突出する棒状の攪拌部を備え、前記攪拌部材による排出回転時には前記排出部材の翼部を前記攪拌部が押圧することにより該排出部材を回転させる一方、前記攪拌部材による逆向きの攪拌回転時には前記排出部材の翼部が回転することにより該排出部材の非回転状態を維持することが好ましい。
このようにすれば、攪拌効率および排出効率の向上を確実に実現できる。
【0014】
また、前記処理槽に、前記翼部をアーム部に軸着するシャフトを着脱可能に固定する固定部材を設けることが好ましい。
具体的には、前記固定部材は、前記攪拌部材による攪拌回転時に前記シャフトを回転可能に係止保持し、前記攪拌部材による逆向きの排出回転時に前記シャフトの係止を解除する爪部を備えることが好ましい。
この場合、前記爪部は、前記排出部材の排出回転時に該排出部材が当接することにより回転するもので、非回転位置に付勢する付勢手段を備えることが好ましい。
このようにすれば、攪拌部材の攪拌回転時に排出部材の不動状態を確実に維持し、排出回転時には攪拌部材と一緒に確実に排出部材を回転させて、処理槽の外部にゴミを短時間で排出することができる。
【0015】
さらに、前記翼部をアーム部に対して非回転状態に付勢する付勢手段を配設することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の生ゴミ処理機では、排出部材は、攪拌回転時に不動状態を維持し、排出回転時には可動するものであるため、攪拌回転時および排出回転時の負荷を調節することができる。そのため、高出力のモータを搭載することなく、攪拌効率および排出効率を向上できる。また、高出力のモータを使用しないため、関連する部品の強度も高める必要もなく、コスト高になることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る生ゴミ処理機を示す。この生ゴミ処理機は、生ゴミの水分を無くすことにより重量および容積を低減させる乾燥方式であり、大略、処理機本体10と、該処理機本体10の上部を開放可能に閉塞する蓋体11とを備え、処理後のゴミを廃棄するための廃棄容器37を更に着脱可能に配設したものである。
【0019】
図1および図2に示すように、処理機本体10は、略四角筒状をなす胴体12の下端開口を底板13により閉塞した外装体を備えている。前記胴体12の上端には蓋枠14が配設されている。この蓋枠14には、蓋体11を回動可能に装着するための配設凹部15が設けられ、その中央に生ゴミを投入する矩形状の投入口16が設けられている。そして、配設凹部15において、蓋体11のヒンジ接続部17の近傍には、該蓋体11の開閉状態を検出する投入蓋開閉検出手段としてマイクロスイッチ18が配設されている。また、胴体12において、図1中左側に位置する正面には、廃棄容器37を着脱可能に装着するための開口部19が設けられ、この開口部19がカバー20により開放可能に閉塞されている。
【0020】
そして、前記処理機本体10の内部には、生ゴミを収容する処理槽21が配設されている。この処理槽21は、その上端が前記投入口16に配設され、該投入口16から内部に生ゴミを収容する樹脂製の容器である。具体的には、この処理槽21は、投入口16に接続される角筒状上部22と、該角筒状上部22に連続した半円筒状下部23とを有する。そして、処理槽21の角筒状上部22において、図中右側に位置する背面には、乾燥処理時に処理槽21内で発生する臭気を含む水蒸気を排気するための排気口24が設けられるとともに、該排気口24の下部に温風を給気するための給気口25が設けられている。なお、これら排気口24および給気口25には、図示しないフィルタが配設されている。
【0021】
また、前記処理槽21と処理機本体10との間には、前記排気口24から給気口25にかけて流入路26aと流出路26bとに区画した略U字形状をなす循環ダクト26が配設されている。この循環ダクト26には、上流側である流入路26aにおいて、排気口24の近傍に位置するように脱臭器27が配設されている。この脱臭器27は、例えば、排気口24の側から加熱手段である触媒ヒータと、該触媒ヒータによる加熱温度を検出する温度検出手段であるサーミスタと、ハニカム構造をなす白金触媒とからなる。また、循環ダクト26には、脱臭器27の下流側に位置するように、流入路26aと流出路26bとの境界部分である下端に、処理槽21内の空気を排気口24から吸引して給気口25から循環供給するためのファン28が配設されている。このファン28はファンモータ29により回転される略円筒状をなすシロッコファンからなり、回転軸42の軸方向に沿って空気を吸引し、径方向に送出するものである。さらに、循環ダクト26には、流出路26bにおける給気口25の手前に位置するように、処理槽21内の生ゴミを乾燥させて重量および容積を低減させるための加熱手段として、処理槽21内に循環供給する空気を加熱する加熱ヒータ30が配設されている。そして、本実施形態では、給気口25には、処理槽21内の下側に向けて循環供給する空気が流動するように、下側を開口した断面扇形形状をなすフード部材31が配設されている。また、加熱ヒータ30の下流側、即ち、給気口25の側には、加熱ヒータ30による加熱温度を検出する温度検出手段としてサーミスタ32が配設されている。
【0022】
さらに、処理槽21には、図中左側に位置する角筒状上部22の下端、即ち、後述する攪拌部材41の回転軌跡の外周部に位置する面に、矩形状をなす排出口33が設けられている。この排出口33には、駆動モータ34によって連結部材35を介して開閉可能とした閉塞蓋36A,36Bが配設されている。そのうち、閉塞蓋36Aは、排出口33の外側を覆い、処理槽21の壁面に沿ってスライドすることにより開閉されるものである。閉塞蓋36Bは、閉塞蓋36Aの外側を更に覆うもので、処理槽21の壁面に位置する軸を中心として回動することにより開閉されるものである。
【0023】
前記処理槽21と処理機本体10の外装体との間には、前記排出口33の下部に位置するように廃棄容器37が配設されている。この廃棄容器37は、排出口33から処理槽外に排出されたゴミを収容するもので、上端を開口し下端を閉塞した樹脂製であり、前記開口部19から着脱可能に設置される。本実施形態では、処理機本体10の底板13には、廃棄容器37の下部に位置するように、該廃棄容器37の装着の有無を検出する廃棄容器検出手段であるマイクロスイッチ38が配設されている。
【0024】
そして、前記処理槽21の内部には、該処理槽21内の生ゴミを攪拌および粉砕する攪拌部材41と、処理済みのゴミを排出口33から廃棄容器37に排出する攪拌部材41とは別体の排出部材58とが配設されている。また、本実施形態では、排出部材58を処理槽21の所定位置に着脱可能に固定する固定部材81が配設されている。
【0025】
具体的には、図2に示すように、処理槽21の両側面には、半円筒状下部23の軸心に位置するように軸受孔39が設けられ、これら軸受孔39に軸受板40を介して攪拌部材41が回転可能に取り付けられている。この攪拌部材41は、一対の軸受板40を貫通する回転軸42と、一対の攪拌部49とを備えている。
【0026】
前記回転軸42は略円柱状をなし、その両端に軸受板40に貫通させる外径を小さくした軸部43A,43Bが設けられている。そのうち、一方の軸部43Aは、軸方向に沿って面状に切り欠かれ、断面D字形状をなすように構成されている。また、回転軸42には、軸部43Aと所定間隔をもって円環状に窪む第1位置決め溝44が設けられている。さらに、回転軸42には、軸方向に沿って所定間隔をもって外周部から軸心に向けて延びる一対の取付穴45,45が設けられている。また、これら取付穴45,45と直交するように固定ネジ穴46が設けられている。さらに、本実施形態の回転軸42には、中央に排出部材58を構成する装着リング59の軸方向の移動を防止するために、第2位置決め溝47と径方向に貫通した貫通孔48とが軸方向に所定間隔をもって設けられている。
【0027】
一対の攪拌部49,49は、取付穴45,45に挿入してネジ止めにより固定される棒状のもので、その挿入端にはネジの先端が係合して抜け止めされる係合溝50が設けられている。本実施形態では、一対の攪拌部49は、処理槽21に配設した一対の固定刃51,51と対応する一に設けられている。この固定刃51は、処理槽21の角筒状上部22の下端に位置するように配設された平面視凹字形状をなすものである。この固定刃51の両端の刃部52,52は、その間に攪拌部49を挿通可能な隙間を有する。そして、攪拌部49の回転時に生ゴミを刃部52,52とで挟み込むことにより破断するものである。
【0028】
前記構成の攪拌部材41は、処理槽21から外側に突出された図2中左側の軸部43Aにおいて、第1位置決め溝44に取付金具53を取り付けることにより、軸受板40を介して処理槽21に対して離脱不可能かつ回転可能に装着される。そして、軸部43Aには、処理槽21と処理機本体10との間に位置するように大径プーリ54が配設される。さらに、処理槽21外である底板13に駆動手段であるモータ55が配設され、このモータ55の出力軸に小径プーリ56が配設される。そして、これらプーリ54,56に無端状部材であるエンドレスベルト57が巻回するように配設される。なお、プーリ54、56およびエンドレスベルト57の代わりに、歯車とチェーンを適用してもよい。また、モータ55は、図1において、反時計回りの正転(攪拌)回転と、時計回りの逆転(排出)回転とが可能なものを適用している。さらに、モータ55は変速ギアを内蔵し、正転時より逆転時の単位時間当たりの回転数を遅くしてトルクを向上することが好ましい。
【0029】
前記排出部材58は、攪拌部材41の回転軸42に対して回転可能に装着され、排出口33を開口させた排出処理の実行時に、前記攪拌部材41の動作に連動して可動されるものである。この排出部材58は、大略、回転軸42に装着する装着リング59と、該装着リング59に固定したアーム部63と、該アーム部63の先端に回転可能に装着した翼部66とを備えている。
【0030】
前記装着リング59は、回転軸42より僅かに大きい内径を有する円筒状をなし、その外周部に軸心に向けて窪むアーム装着穴60を設けたものである。この装着リング59は、軸方向の幅が回転軸42の第2位置決め溝47と貫通孔48との隙間より僅かに小さく、回転軸42を貫通させて装着した状態で、第2位置決め溝47に取付金具61を装着するとともに、貫通孔48に楔部材62を挿着することにより、回転軸42に対する軸方向の移動を防止した状態で、回転可能に挿着される。
【0031】
前記アーム部63は、一端に装着リング59のアーム装着穴60に固着される装着部64を備え、装着リング59を介して回転軸42に対して回転可能に装着された径方向に突出する棒状のものである。このアーム部63には、装着部64と逆側の端部に径方向に貫通したシャフト貫通孔65が設けられている。また、このアーム部63には、シャフト貫通孔65の軸に対して直交するように、外周部からシャフト貫通孔65にかけて貫通したネジ孔(図示せず)が設けられている。
【0032】
前記翼部66は、図2および図3に示すように、アーム部63の先端にブラケット部材71およびシャフト74を介して回転可能に軸着されるものである。この翼部66は、装着状態で径方向に延びる幅広の翼部本体67と、該翼部本体67において回転軸42の側縁に位置するリブ部68とを備えた断面L字形状をなす。翼部本体67には、ブラケット部材71を固定するための固定孔69,69が一対設けられている。また、翼部本体67には、リブ部68と反対側に位置する先端縁に、固定刃51の刃部52,52を挿通する挿通溝70が設けられている。
【0033】
前記ブラケット部材71は略凹字形状をなし、その中間部には翼部66の固定孔69に対応する固定孔72が設けられるとともに、両側部には貫通孔73が設けられている。前記シャフト74には、その端部に貫通孔73より大径のフランジ部75が設けられている。このシャフト74は、ブラケット部材71を翼部66に固定した状態で、後述する固定部材81の逆側に位置する貫通孔73から、アーム部63のシャフト貫通孔65を通して、逆側の貫通孔73を貫通させる。そして、貫通孔73を貫通した部分に係止部材76を嵌合させることにより、アーム部63に対して翼部66を回転可能に装着している。
【0034】
そして、本実施形態では、前記翼部66は、翼部本体67がアーム部63の軸心に沿って延びる状態(図5参照)が非回転位置であり、この状態に保持するための付勢手段として、翼部付勢スプリング77が配設されている。この翼部付勢スプリング77は、シャフト74の外径より内径が大きいコイル状のバネ部78と、該バネ部78の端部に設けたアーム係止部79および翼部係止部80とを備えたものである。アーム係止部79は、該バネ部78の一端から下向きに突出し、アーム部63の外周を迂回するようにU字形状に湾曲させたものである。翼部係止部80は、バネ部78の他端から上向きに突出し、翼部本体67の先端縁に係止するようにL字形状に屈曲させたものである。
【0035】
このように構成した排出部材58は、攪拌部材41による排出回転時には、攪拌部49が翼部本体67をアーム部63に向けて押圧することにより、該排出部材58を一緒に連動させて回転させる。一方、攪拌部材41による逆向きの攪拌回転時には、攪拌部49が翼部本体67をアーム部63の側から離間する方向に向けて押圧することにより、該排出部材58が回転し、該排出部材58の非回転状態を維持する。
【0036】
前記固定部材81は、回転軸42に対して回転可能に装着した前記排出部材58のシャフト74を着脱可能に固定するもので、処理槽21に配設されるベース板部82と、該ベース板部82に回転可能に取り付けた爪部88とを備えている。
【0037】
前記ベース板部82は、処理槽21においてモータ55を装着した側面に配設するもので、その一側には、処理槽21の係合孔83に引っ掛けるように係合される平面視略L字形状の係合段部84が設けられている。また、ベース板部82には、係合段部84の逆側部に位置するようにネジ止め孔85が設けられている。さらに、ベース板部82には、略円筒状をなすように爪部88を回動可能に装着するための装着軸部86が設けられている。そして、この装着軸部86の側部には、爪部88の回転を抑止するストッパ部87が突設されている。
【0038】
前記爪部88は、攪拌部材41による攪拌回転時に排出部材58のシャフト74を回転可能に係止保持し、攪拌部材41による排出回転時にはシャフト74の係止を解除するものである。具体的には、この爪部88は、装着状態で略水平方向に延びる上枠部89と、該上枠部89の一端から屈曲した当接部90とを備えた略L字形状のものである。この爪部88には、上枠部89と当接部90との交差部分にベース板部82の装着軸部86を差し込んで回転可能に装着する装着軸孔91が設けられている。また、上枠部89と当接部90との交差部分内側には、シャフト74を着脱可能、かつ、回転可能に支持する円弧状の支持穴部92が設けられている。上枠部89において、支持穴部92の横には、自重による排出部材58の離脱を防止するための突出部93が設けられている。また、当接部90には、上枠部89の自由端の側に向けて屈曲する屈曲部94が設けられている。これにより、上枠部89が水平方向に延びる非回転状態で支持穴部92の下側を覆い、シャフト74を確実に支持できるように構成している。
【0039】
このように構成した固定部材81は、爪部88に対して時計回りに負荷が加わると、当接部90がストッパ部87に当接することにより非回転状態を維持する一方、爪部88に対して反時計回りに負荷が加わると、当接部90がストッパ部87から離間するため回転可能である。そして、本実施形態では、この爪部88をベース板部82に対して非回転位置に付勢する付勢手段として、爪部88の上枠部89と当接部90との交差部分のスプリング配設部95に爪部付勢スプリング96が配設されている。この爪部付勢スプリング96は、装着軸部86の外径より内径が大きいコイル状のバネ部97と、該バネ部97の端部から突設した爪部係止部98およびストッパ係止部99とを備えたものである。
【0040】
このように構成した生ゴミ処理機は、図1に示すように、処理槽21内に生ゴミの含水分を検出する手段として、一対の電極100a,100bが更に配設されている。電極100a,100bは、図示しない電圧印加回路から所定の電圧が印加されると、生ゴミを導体として電流が流れ、その電流の大きさは抵抗値の大きさに比例し、この抵抗値は生ゴミの含有水分の多少に略比例するため、含水分を検出できる。また、これら電極100a,100bは、その通電状態により生ゴミの有無を検出する生ゴミ検出手段の役割をなす。
【0041】
そして、図4に示すように、ユーザによる操作パネル101のスイッチ操作により、図示しない制御基板に配設された制御手段であるマイコン102が、予め設定されたプログラムに従って動作される。具体的には、ユーザが処理槽21内に生ゴミを投入してゴミ処理動作を開始するように操作すると、マイクロスイッチ18により投入口16の蓋体11が閉塞されている状態を検出した場合に、駆動モータ34により各閉塞蓋36A,36Bを確実に閉塞状態として、生ゴミ処理を実行する。
【0042】
この生ゴミ処理では、攪拌部材41を反時計回りに攪拌回転させながら、処理槽21内の空気をファン28によって吸引し、加熱ヒータ30によって加熱して処理槽21内に循環供給する。また、所定時間毎に電極100a,100bによって生ゴミが乾燥状態であるか未乾燥状態であるかを検出し、未乾燥状態である場合には生ゴミ処理を継続し、乾燥状態になると停止する。
【0043】
そして、生ゴミ処理が終了すると、マイクロスイッチ38により廃棄容器37の装着の有無を確認し、装着されている場合のみ、自動的に処理済みの生ゴミの排出処理を実行する。さらに、操作パネル101により強制排出操作されると、生ゴミ処理の非実行状態で廃棄容器37が装着されている状態を検出し、かつ、投入口16の蓋体11が閉塞されている場合に、排出処理を実行する。
【0044】
この排出処理では、ファン28および加熱ヒータ30の動作を停止した状態で、駆動モータ34を動作させて閉塞蓋36A,36Bによって排出口33を開口状態とし、攪拌部材41を時計回りに回転させることにより、該攪拌部材41の回転に連動させて排出部材58を回転させる。これにより、排出部材58の翼部66で処理槽21内の生ゴミを排出口33から廃棄容器37に排出する。そして、排出処理は、予め設定した動作時間、または、攪拌部材41の回転数だけ回転されると停止し、続いて閉塞蓋36A,36Bが閉塞されて終了する。
【0045】
次に、攪拌部材41および排出部材58の動作について具体的に説明する。
【0046】
まず、図5に示すように、排出部材58のシャフト74が固定部材81に回転可能に固定された状態で生ゴミ処理が実行され、回転軸42が反時計回りに回転されると、固定部材81に固定された排出部材58は回転することなく固定状態を維持し、攪拌部49のみが回転される。そして、図6に示すように、攪拌部49が回転して排出部材58の翼部66のリブ部68の先端に当接すると、該翼部66の下部が攪拌部49によって押圧されることにより、図7に示すように、翼部66がシャフト74を中心として回転する。その後、攪拌部49が翼部66を通過すると、該翼部66は翼部付勢スプリング77の付勢力によって非回転状態に復元する。これらの動作を繰り返すことにより、処理槽21内の生ゴミは、攪拌部49のみによって攪拌および破砕される。
【0047】
次に、排出処理が実行され、回転軸42が時計回りに回転されると、まず、固定部材81に固定された排出部材58は回転することなく固定状態を維持し、攪拌部49のみが回転される。そして、図8に示すように、攪拌部49が翼部66の翼部本体67に当接すると、該翼部66はアーム部63に当接することにより回転することはできない。そのため、攪拌部49の時計回りの押圧をそのまま受けることにより、図9に示すように、爪部88とシャフト74との係止が解除され、攪拌部49の回転に連動して排出部材58が回転される。その後、図10に示すように、排出部材58が攪拌部49の回転により固定部材81に位置すると、シャフト74が爪部88に対してストッパ部87の側から当接する。そして、攪拌部49の回転によりシャフト74によって爪部88の下部である当接部90が押圧されると、爪部88が回転する。これにより、シャフト74が爪部88の下方を通過すると、爪部88の押圧が解除されることにより、該爪部88が爪部付勢スプリング96の付勢力によって非回転状態に復元する。これらの動作を繰り返すことにより、処理槽21内のゴミは、翼部66によって開口された排出口33から処理槽21の外部に排出され、廃棄容器37に収容される。
【0048】
なお、排出部材58が固定部材81に固定されていない自由回転可能な状態で、次に回転軸42が反時計回りに攪拌回転されると、攪拌部49が翼部66のリブ部68に当接した図6に示す状態で、排出部材58を一緒に反時計回りに回転させる。そして、固定部材81の爪部88に至ると、シャフト74が爪部88の支持穴部92に進入することにより該爪部88に対して係止保持され、その後は図7に示すように翼部66が回転することにより、攪拌部49のみが回転することになる。
【0049】
このように、本発明の生ゴミ処理機では、ゴミを排出する排出部材58を、生ゴミを攪拌する攪拌部材41(攪拌部49)とは別体に設け、攪拌処理の実行時には排出部材58を不動状態とし、排出処理の実行時には排出部材58を可動状態とするため、攪拌回転時および排出回転時の負荷を調節することができる。具体的には、攪拌回転時の負荷を小さく、排出回転時の負荷を大きくすることができる。
【0050】
その結果、高出力のモータ55を搭載することなく、水分が多いため抵抗が大きい生ゴミの攪拌回転時には棒状の攪拌部49のみで抵抗を小さくし、攪拌および破砕効率を向上することができる一方、水分が少なく抵抗が小さくなった処理済みのゴミの排出時には板状の翼部66によって抵抗を大きくし、排出効率を向上することができる。また、高出力のモータ55を使用しないため、関連する部品の強度も高める必要がなく、コスト高になることを防止できる。
【0051】
そして、排出部材58は、攪拌部材41による攪拌回転時にシャフト74を回転可能に係止保持し、攪拌部材41による排出回転時にはシャフト74の係止を解除する爪部88を備えた固定部材81により着脱可能に固定されるため、攪拌回転時に排出部材58の不動状態を確実に維持し、排出回転時には攪拌部材41と一緒に確実に排出部材58を回転させる構成を実現できる。
【0052】
なお、本発明の生ゴミ処理機は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、前記実施形態では、攪拌部材41の回転軸42を利用して排出部材58を回転可能に配設したため、不動状態および可動状態を実現するために固定部材81を配設したが、固定部材81を設けることなく、専用の回転軸を設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の生ゴミ処理機を示す断面図である。
【図2】処理槽、攪拌部材および排出部材の構成を示す分解斜視図である。
【図3】排出部材の構成を示す背面斜視図である。
【図4】生ゴミ処理機の構成を示すブロック図である。
【図5】攪拌回転時の動作状態を示す斜視図である。
【図6】攪拌回転時の他の動作状態を示す斜視図である。
【図7】攪拌回転時の他の動作状態を示す斜視図である。
【図8】排出回転時の動作状態を示す斜視図である。
【図9】排出回転時の他の動作状態を示す斜視図である。
【図10】排出回転時の他の動作状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
10…処理機本体
11…蓋体
16…投入口
21…処理槽
33…排出口
36A,36B…閉塞蓋
37…廃棄容器
41…攪拌部材
42…回転軸
49…攪拌部
51…固定刃
55…モータ
58…排出部材
59…装着リング
63…アーム部
66…翼部
71…ブラケット部材
74…シャフト
77…翼部付勢スプリング(付勢手段)
81…固定部材
82…ベース板部
87…ストッパ部
88…爪部
90…当接部
92…支持穴部
96…爪部付勢スプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミを収容する処理槽を有する処理機本体と、前記処理機本体に開閉可能に配設し前記処理槽への投入口を閉塞する蓋体と、前記処理槽内の生ゴミを攪拌する攪拌部材とを備え、前記処理槽の外周部に開閉可能な排出口を設け、該排出口から前記処理槽内の処理済みのゴミを排出可能とした生ゴミ処理機において、
前記排出口を閉塞させた攪拌処理の実行時に不動状態を維持し、前記排出口を開口させた排出処理の実行時に可動する前記攪拌部材とは別体の排出部材を設けたことを特徴とする生ゴミ処理機。
【請求項2】
前記排出部材は、前記攪拌部材の回転軸に対して回転可能に装着したアーム部と、該アーム部の先端に回転可能に配設した板状をなす翼部を備えることを特徴とする請求項1に記載の生ゴミ処理機。
【請求項3】
前記攪拌部材は前記回転軸から突出する棒状の攪拌部を備え、前記攪拌部材による排出回転時には前記排出部材の翼部を前記攪拌部が押圧することにより該排出部材を回転させる一方、前記攪拌部材による逆向きの攪拌回転時には前記排出部材の翼部が回転することにより該排出部材の非回転状態を維持することを特徴とする請求項2に記載の生ゴミ処理機。
【請求項4】
前記処理槽に、前記翼部をアーム部に軸着するシャフトを着脱可能に固定する固定部材を設けたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の生ゴミ処理機。
【請求項5】
前記固定部材は、前記攪拌部材による攪拌回転時に前記シャフトを回転可能に係止保持し、前記攪拌部材による逆向きの排出回転時に前記シャフトの係止を解除する爪部を備えることを特徴とする請求項4に記載の生ゴミ処理機。
【請求項6】
前記爪部は、前記排出部材の排出回転時に該排出部材が当接することにより回転するもので、非回転位置に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の生ゴミ処理機。
【請求項7】
前記翼部をアーム部に対して非回転状態に付勢する付勢手段を配設したことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の生ゴミ処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−28680(P2009−28680A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197329(P2007−197329)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】