説明

生体内情報を画像化するためのツールおよびその利用

【課題】放射線情報として提示される生体内物質動態についての鮮明な画像を得る技術を実現する。
【解決手段】放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部12、および第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部13を備えている放射線情報の画像化器具11を提供する。画像化器具11において、受光部12は、放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなり、光拡大部13は、受光部12が設けられている第1面14と第1面14に対向して第2可視光情報が生成される第2面15とを有し、第2面15から第1面14に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバー16から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内情報を画像化するためのツールおよびその利用に関するものであり、より詳細には、ラジオアイソトープトレーサーを取り込ませた被験体から放出される放射線情報をより高感度で検出しかつ高解像度で画像化するためのツールおよびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内情報を得るために放射線が利用されている。用いられる放射線としては、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。α線は、ヘリウムの原子核に相当する複合粒子であり、β線は、高速で飛行する電子(β)または高速で飛行する陽電子(β)であるが、一般的には電子(β)が意図されている。γ線およびX線は、ともにエネルギーの高い電磁波であるが、原子核から放出される電磁波をγ線、軌道電子の再配列等により原子から放出される電磁波をX線として区別されている。
【0003】
このような放射線を可視光(例えば、蛍光)に変換する物質をシンチレータ(蛍光体)という。放射線をシンチレータに入射させると、入射した放射線のエネルギーによって、原子および/又は分子の電子状態が励起状態に変化し、これにより蛍光体において可視領域の電磁波、すなわち蛍光が放出される。シンチレータは、放射線の測定又はX線による医療診断の現場でしばしば利用されている。
【0004】
シンチレータは、無機シンチレータと有機シンチレータとに分けられる。無機シンチレータはγ線に対する発光効率が高く、γ線の計測には、例えば、ヨウ化ナトリウム(NaI)に少量のタリウムを添加したNaIシンチレータが、使用されている。
【0005】
一方、有機シンチレータは、放射能濃度の高い試料の測定に適している。有機シンチレータとしては、アントラセン結晶およびポリスチレン又はポリビニルトルエンなどの有機固体(プラスチックシンチレータ)が挙げられる。プラスチックシンチレータは比重が小さくかつ密度が低いため、γ線の計測には適さないが、速中性子用検出器として用いられている。また、有機シンチレータは、低エネルギーのβ線を効率よく検出できる液体シンチレータとして、H、14C等の測定に広く用いられている。
【0006】
このような放射線は、生体の内部構造を画像化するために、特に医療分野においては診断の際の判断材料として利用されている。診断に用いられる放射線画像としては、X線写真(レントゲン写真)が知られている。X線写真は、生体の外部から照射したX線が生体を透過する際に、生体内の各組織におけるX線の吸収率の差に基づいて生成される透過像をフィルム上に記録したものである。生体内の構造又は組成によりX線の吸収率が異なるため、X線写真では、その差異が影絵となって現れる。
【0007】
実験室等における放射線の利用法としては、オートラジオグラフィーが挙げられる。生体の外側から放射線を照射してその透過像を画像化するX線写真に対して、オートラジオグラフィーは、生体内に取り込ませた放射性核種から放出される放射線を、生体の外側から測定し画像化する技術である。具体的には、オートラジオグラフィーは、トレーサーとして放射性核種を投与した生体の組織もしくはスライスして作製した組織切片をフィルムに密着させ、放出される放射線を露光することにより、トレーサーの移動又は分布を画像化する。オートラジオグラフィー技術は、放射線源の像を直接画像化するため、生体内の情報を2次元的に正確に読み取ることが可能である。また、上記フィルムより高感度のイメージングプレート(Imaging Plate:IP)もまた開発されている。また、特許文献1には、生体スライス標本を撮影するためのポジトロン(β)撮影装置が開示されており、特許文献2には、反射膜を取り付けたプラスチックシンチレータを用いて、培養切片に取り込ませた放射性核種から放出されるβ線およびβ線が対消滅して生じるγ線を検出する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、非接触的/非破壊的にトレーサーの分布を二次元画像として得るための、中空のガラス管よりなるX線導管の複数個を平行に束ねたX線導管束を利用した撮影装置が開示されている。
【特許文献1】特開平9−292466号公報(平成9年11月11日公開)
【特許文献2】特開2004−212224号公報(平成16年7月29日公開)
【特許文献3】特開平7−294655号公報(平成7年11月10日公開)
【非特許文献1】http://jp.hamamatsu.com/resources/products/sys/pdf/jpn/c4880fib.pdf
【非特許文献2】http://jp.hamamatsu.com/resources/products/etd/pdf/ALS_ACS_FOS_TMCP1031E03.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、生体内における物質の輸送、シグナル伝達のメカニズム等をより詳細に解析することが試みられており、そのために、生体中で物質がどのように移動しているのかを解析する技術の開発が望まれている。生体内情報を得るために目的のタンパク質などを蛍光標識してその蛍光像を観察する技術が主に用いられているが、放射性核種を利用する場合は、特に、上述したような種々の技術が検討されている。
【0009】
β線から画像を構成するためには、X線フィルムまたはイメージングプレート(IP)などを植物体に接触させる方法が用いられているが、これらの実験では、遮光および/またはサンプルのフィルムへの密着のために、サンプルとフィルムをカセッテなどで固定する必要がある。そのために、サンプルからの放射線情報(放射線像)の単独取得しかできず、他の情報(例えば、明視野像、蛍光像など)を同時に取得することができない。また、高感度であっても瞬間的な静止画像しか得ることができず、同じ生体で異なるステージにて連続的なリアルタイム解析を行うことができない。
【0010】
リアルタイムで連続画像を取得するためには、放射線を直接検出する半導体検出器デバイスの使用、または放射線を一旦可視光に変換してCCDカメラなどによってこの可視光を直接検出する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、β線を用いる技術では、核種の崩壊によって生じたβ線が、対消滅により、実際の検出対象となるγ線を放出するまでに数mm移動する。そのため、実際の核種の存在位置を正確に知ることは困難であり、よって高解像度な画像を得ることができない。例えば、γ線を計測することにより生きたままの植物中にて水の動きをリアルタイムで画像化することができるPETIS(Positron Emitting Tracer Imaging System)については、解像度および定量性の観点から改善の余地が残されているといわれている。なお、従来の放射線による植物機能の解明についてはhttp://mext-atm.jst.go.jp/atomica/08030105_1.htmlを参照のこと。
【0011】
このように、γ線または中性子線を用いた場合に高感度の画像を得ること、および微弱なβ線を用いた場合にリアルタイムでの検出を行うことは、これまでに達成されていない。すなわち、高感度かつ高解像度でのリアルタイムイメージングシステムは未だ存在しない。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ラジオアイソトープトレーサーを取り込ませた被験体から得られる放射線像を高感度かつ高解像度で提供するとともに、このような放射線像を、被験体から得られる明視野像や蛍光像などと同時に検出するための技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、放射性同位元素のトレーサーを用いて、このトレーサーの動態をリアルタイム画像として取得することにより、植物ホルモンおよび/または生合成産物の動態、ならびに植物体内での無機栄養塩類、重金属などの移動および/または吸収を解析することを試みた。その結果、本発明者らは、特定の構成を採用すれば、放射線情報から変換された可視光情報を高解像度にて画像化し得るとともに、従来の二重観察(明視野観察および蛍光観察)と組み合わせ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る放射線情報の画像化器具は、放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部、および第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部を備えており、
該受光部は、放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなり、
該光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されていることを特徴としている。
【0015】
後述するように、一実施形態において、本発明に係る画像化器具の光拡大部は光ファイバーから構成されている。放射線を可視光に変換するシンチレータを、光ファイバーから構成されるファイバー束の端面に設けたものを用いて、放射線情報を画像化することは、例えば、特許文献2および3、非特許文献1および2などに示されている。しかし、特許文献2や非特許文献1に示されている技術は、シンチレータによって変換された可視光情報を、光ファイバーを用いて集光する技術であり、非特許文献2および3に示されている技術は、シンチレータによって変換された可視光情報を、平行なファイバー束からなるファイバープレートを用いてリフトアップさせる技術である。本発明の特徴点は、これらの技術とは異なり、放射線情報がシンチレータによって変換されて生成された可視光情報を拡大させるものである。本発明の上記構成は、本発明者らの独自の観点に基づいて採用されたものであり、このような構成を採る画像化器具によって、従来なし得なかったβ情報の検出が容易になったことは、全く予測し得るものではなかった。すなわち、本発明において対象とされる放射線は、好ましくはβ線であり、より好ましくはβ線である。なお、本発明に係る画像化器具は、第2可視光情報の撮影を補助する撮影補助部がさらに設けられていてもよい。
【0016】
本発明に係る放射線情報の画像化器具は、H、14C、32P、33P、35S、45Ca、87Rb、115Inおよび176Luからなる群より選択される放射性核種とトレーサーとして取り込んだ被験体(例えば、植物)から放出される放射線情報を画像化するために用いられることが好ましく、より詳細には、10〜2000KeVのβ線による放射線情報を画像化するために用いられることが好ましい。また、本発明に係る放射線情報の画像化器具において、上記シンチレータは無機シンチレータであることが好ましい。また、上記シンチレータは10〜200μmの範囲の厚さを有していることが好ましい。
【0017】
本発明に係る放射線情報の画像測定装置は、放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部と第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部とを備えた可視光生成部、および第2可視光情報を撮影する撮影部を有しており、
該受光部は、放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなり、
該光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されていることを特徴としている。なお、本発明に係る画像測定装置は、第2可視光情報の撮影を補助する撮影補助部が上記光拡大部と上記撮影部との間に設けられていてもよい。
【0018】
本発明に係る画像測定装置は、H、14C、32P、33P、35S、45Ca、87Rb、115Inおよび176Luからなる群より選択される放射性核種とトレーサーとして取り込んだ被験体(例えば、植物)から放出される放射線情報を画像化するために用いられることが好ましく、より詳細には、10〜2000KeVのβ線による放射線情報を画像化するために用いられることが好ましい。また、本発明に係る画像測定装置において、上記シンチレータは無機シンチレータであることが好ましい。また、上記シンチレータは10〜200μmの範囲の厚さを有していることが好ましい。
【0019】
本発明に係る画像化システムは、被験体の生体内情報を画像化するために、放射性核種を取り込んだ被験体からの放射線情報を測定する第1測定部;第1測定部にて得られた情報を処理して第1画像情報を生成する制御部;および該制御部から出力された第1画像情報を表示する表示部を備えており、
第1測定部は、被験体から放出される放射線情報から可視光情報を生成する可視光生成部;および該可視光情報を撮影する第1撮影部を有しており、
該可視光生成部は、放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部;および第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部を備えており、
該受光部は、放射性核種を取り込んだ被験体からの放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなり、
該光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されており、
第1撮影部は、第2可視光情報を撮影することを特徴としている。
【0020】
上記構成に基づけば、被験体から放出されたβ線(放射線情報)が可視光生成部の受光部にて第1可視光情報に変換される。この受光部中の第1可視光情報が可視光生成部の光拡大部によって拡大され、第2可視光情報として撮影部に入射し得る。撮影部は、入射した第2可視光情報を処理して画像情報を生成するための制御部と連結されており、撮影部に入射した第2可視光情報が制御部へ出力される。次いで、制御部にて解析された結果は表示部に出力され、被験体におけるトレーサーの分布状態(放射線情報)が表示部に表示され得る。本システムを用いれば、実際の核種の存在位置を正確に知ることができるので、検出感度、定量性、解像度において優れた検出を行うことができる。なお、本発明に係る画像化システムは、第2可視光情報の撮影を補助する撮影補助部が上記光拡大部と撮影部との間に設けられていてもよい。また、本発明に係る画像化システムは、被験体を固定する固定部をさらに備えていてもよい。
【0021】
本発明に係る画像化システムは、H、14C、32P、33P、35S、45Ca、87Rb、115Inおよび176Luからなる群より選択される放射性核種とトレーサーとして取り込んだ被験体(例えば、植物)から放出される放射線情報を画像化する際に用いられることが好ましく、より詳細には、10〜2000KeVのβ線による放射線情報を画像化する際に用いられることが好ましい。また、本発明に係る画像化システムにおいて、上記シンチレータは無機シンチレータであることが好ましい。また、上記シンチレータは10〜200μmの範囲の厚さを有していることが好ましい。
【0022】
本発明に係る画像化システムは、被験体からの明視野情報を撮影する第2撮影部を有している第2測定部や、被験体からの蛍光情報を撮影する第3撮影部を有している第3測定部をさらに備えていてもよい。
【0023】
本発明に係る画像化システムにおいて、上記被験体は植物であってもよい。
【0024】
本発明に係る画像化システムにおいて、上記測定部は遮光されていることが好ましい。これにより、本発明に係る画像化システムにおいて、微弱な可視光が検出され易くなる。
【0025】
本発明に係る画像化システムにおいて、上記画像情報は二次元または三次元の画像情報であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る画像化システムにおいて、上記画像情報の画像解像度は0.1〜300μmが好ましいが、1〜25μmであってもよい。
【0027】
本発明に係る画像化システムにおいて、上記生体内情報は、細胞間での物質の動態を示す情報や、細胞レベルでの物質の分布像を示す情報であることが好ましい。
【0028】
本発明に係る放射線情報の画像化方法は、受光した放射線情報を、シンチレータを介して第1可視光情報に変換する第1工程、および第1可視光情報を、光拡大部を介して拡大して第2可視光情報を生成する第2工程を包含し、
該光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されていることを特徴としている。
【0029】
本発明に係る画像化方法は、第2可視光情報を撮影する第3工程、該撮影した第2可視光情報を処理して画像情報を生成する第4工程、および該画像情報を表示する第5工程をさらに包含してもよく、明視野情報を撮影する工程および蛍光情報を撮影する工程の少なくとも一方をなおさらに包含してもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明を用いれば、被験体から得られる放射線情報を高感度かつ高解像度の画像として提供し得るとともに、このような放射線情報の画像を、被験体から得られる明視野像や蛍光像などと同時に検出することができる。また、本発明を用いれば、生体内情報(例えば、生体内での物質の挙動)について、従来では得ることができなかった鮮明な画像をリアルタイムで得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
生体内で物質がどのように移動しているのかを高感度かつ高解像度の画像として提供されるようになれば、生体内での物質輸送のメカニズムをより詳細に明らかにすることができる。特に、植物が有する本来の能力を理解するためには、植物の特徴である導管および篩管によって形成されたネットワークにおける種々の物質の輸送過程を解析することが、重要である。
【0032】
そこで、本発明者らは、放射性同位元素のトレーサーを用いて、このトレーサーの動態を高感度かつ高解像度の画像として取得することにより、植物ホルモンおよび/または生合成産物の動態、ならびに植物体内での無機栄養塩類、重金属などの移動および/または吸収を解析することを試みた。その結果、本発明者らは、特定のシンチレータおよび特定の光拡大部を用いたシステムを採用すれば、放射線から変換された微量な蛍光を高感度かつ高解像度で検出し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0033】
なお、特許文献2記載の技術は、厚さが0.2mm〜5mmの有機シンチレータを用いるとともに光ファイバーを集光部として用いる技術である。すなわち、特許文献2のような従来技術から本発明の構成を導き出すことは、当業者に容易なことではなかった。また、特許文献2記載の技術は、あくまでもβ線検出のための技術である。β線を用いる技術では、実際の核種の存在位置を正確に知ることは困難であるため、どんなに高性能の撮影部を用いても、高解像度の画像を得ることは困難である。本明細書に接した当業者は、本発明によって達成し得た鮮明な画像が、従来では得ることができなかったものであり、本発明が従来の技術より明らかに秀でていることを容易に理解する。
【0034】
〔1:画像化器具および画像化装置〕
本発明に係る画像化器具の一実施形態を、図1に基づいて説明する。
【0035】
本発明の一実施形態に係る画像化器具11の要部構成を図1(a)〜(b)に示す。本実施形態に係る画像化器具11は、受光部12および光拡大部13を備えている。受光部12は、放射線を可視光に変換するシンチレータからなり、画像化すべき放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する。光拡大部13において、第1面14と第2面15とが対向しており、第1面14には受光部12が設けられている。また、光拡大部13は、第2面15から第1面14に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバー16の束として構成されている。なお、複数の光ファイバー16の隙間はクワッドガラス16’などで埋められている。このような構成を有していることにより、本実施形態に係る画像化器具11は、画像化すべき放射線情報を第2可視光情報として光拡大部13の第2面15上に提示することができる。
【0036】
なお、第2可視光情報の撮影を補助するための撮影補助部17が画像化器具11の一部として構成されていてもよい。撮影補助部17としては、内部を完全に遮光する鏡筒やバンドパスフィルターが本発明に好適に利用され得る。また、撮影補助部17としてリレーレンズが挙げられる。好ましい実施形態において、本発明に係る画像化器具11は、シンチレータ12を蒸着したテーパー状ファイバー束13および高開口率レンズ17’を鏡筒17と一体化した態様であり得る(図2)。画像化器具がこのような構成を有していることにより、内部を完全に遮光してシンチレータからの光のみを撮影可能にする。なお、シンチレータ光以外の光をより完全に遮断するためには、撮影補助部17がバンドパスフィルターをさらに備えていることが好ましい。
【0037】
本発明に係る画像化器具は、放射線情報を画像化するために用いられ、特に、10〜2000KeVのβ線による放射線情報を画像化するために用いられることが好ましい。このようなβ線を放出する放射線核種としては、例えば、H、14C、32P、33P、35S、45Ca、87Rb、115In、176Luからなる群より選択されるものが挙げられる。また、このような放射線情報を画像化する際には、シンチレータが無機シンチレータであることが好ましい。無機シンチレータとしては、NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)、CsF、CaF(Eu)、BaF、CdWO、ZnWO、PbWOなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、シンチレータは、10〜200μmの範囲の厚さを有していることが好ましい。
【0038】
なお、本発明に係る画像化器具は、微弱なβ線を検出して画像化するために用いられるので、画像化に適した生体としては比較的薄いサンプルを提供し得る植物、培養細胞が挙げられるが、スライスにより組織切片を作製するのであればこれらに限定されず、哺乳動物(例えば、ヒト)であってもよい。
【0039】
本発明に係る画像化器具は、上述した画像化器具の構成を有する可視光生成部11と、第2可視光情報を撮影するための撮影部18を備えている画像測定装置10を構成する一部品として利用されてもよい。また、上述したような撮影補助部17が画像測定装置10の一部として構成されていてもよい。好ましい実施形態において、本発明に係る画像測定装置10は、シンチレータ12がテーパー状ファイバー束13に蒸着してなる可視光生成部11、高開口率レンズと一体化された鏡筒(撮影補助部)17、およびCCDカメラ(撮影部)18から構成される(図3)。画像測定装置がこのような構成を有していることにより、内部を完全に遮光してシンチレータからの光のみを撮影可能にする。なお、シンチレータ光以外の光をより完全に遮断するためには、撮影補助部17がバンドパスフィルターをさらに備えていることが好ましい。
【0040】
〔2:画像化システム〕
本発明に係る画像化システムを、図4〜8に基づいて以下に説明する。なお、本発明に係る画像化システムを構成する部材20〜28は、上述した画像化器具または画像化装置を構成する部材10〜18にそれぞれ対応している。
【0041】
(1)第1実施形態
本実施形態に係る画像化システム100は、放射性核種を取り込んだ被験体60からの放射線情報を測定する第1測定部20;第1測定部20にて得られた情報を処理して第1画像情報を生成する制御部30;および、制御部30から出力された第1画像情報を表示する表示部40を備えている。本実施形態に係る画像化システム100の制御の流れを示すフローチャートを図4に示す。図4に示すように、画像化システム100は、固定部50に固定された被験体60からの放射線情報を、第1測定部20によって測定し、第1測定部20にて得られた情報を、制御部30が処理して第1画像情報を生成し、制御部30から出力された第1画像情報を、表示部40が表示する。なお、制御部30は、第1測定部20から送信された画像信号に所定の加工および/または処理を施して第1画像情報(動画または静止画)を生成し、これを記録部にて記録するとともに、表示部40に表示させる。また、制御部30は、記録された画像信号に基づいてデータ解析を行う。
【0042】
本実施形態に係る画像化システム100において、第1測定部20は、被験体60から放出される放射線情報から可視光情報を生成する可視光生成部21;および、該可視光情報を撮影する撮影部28を有している。さらに、可視光生成部21は、放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部22;および第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部23を備えている。ここで、受光部22は、放射性核種を取り込んだ被験体60からの放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなる。また、光拡大部23は、受光部22が設けられている第1面24と第1面24に対向して第2可視光情報が生成される第2面25とを有しており、第2面25から第1面24に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバー26から構成されている。
【0043】
本実施形態において、上記構成に基づいて、固定部50上に固定された被験体60から放出された放射線情報が可視光生成部21にて生成された可視光情報として撮影部28に入射し得る。すなわち、撮影部28の撮影対象は第2可視光情報である。撮影部28は、入射した可視光を処理して第1画像情報を生成するための制御部30と連結されており、撮影部28に入射した可視光の情報が制御部30へ出力される。次いで、制御部30にて解析された結果は表示部40に出力され、被験体60におけるトレーサーの分布状態が表示部40に表示される。
【0044】
本実施形態に係る画像化システム100において、固定部50上に固定された被験体60は、受光部22を構成するシンチレータによって被覆される。被験体60から拡散する放射線のうちの撮影に不要なものは吸収されることが好ましいので、固定部50は放射線吸収性材料(例えば、鉛)からなることが好ましい。高解像度を得るためには、シンチレータと被験体60とは密着していることが好ましいが、リレーレンズなどの撮影補助部17を設けることにより、密着を回避することができる。
【0045】
本発明に係る画像化システム100において使用される放射性核種は、β線を放出する放射性核種であることが好ましく、例えば、H、14C、32P、33P、35S、45Ca、87Rb、115In、176Luからなる群より選択されるものが使用され得る。
【0046】
本発明に係る画像化システム100において、受光部22を構成するシンチレータは、無機シンチレータであることが好ましい。無機シンチレータとしては、NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)、CsF、CaF(Eu)、BaF、CdWO、ZnWO、PbWOなどが挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態において、シンチレータは、ファイバープレートに蒸着させたCsIである。さらに、シンチレータは、10〜200μmの範囲の厚さを有していることが好ましい。
【0047】
β線を放出する放射性核種を放射線情報の線源として用いる場合、微弱なβ線から変換された可視光もまた微弱であるため、受光部22と撮影部28との間隔もまた離れていないことが好ましいが、撮影部28の性能に応じて適宜変更され得る。なお、撮影部28としては、公知のフォトンカウンティングCCDカメラ等を用いればよい。
【0048】
なお、第1測定部20は暗室内に設置されることが好ましいが、被験体60から放出された放射線情報を高感度で検出しかつ高解像度で画像化し得るように、少なくとも固定部50、受光部22および撮影部28が遮光部内に設置されていればよい。
【0049】
本発明に係る画像化システム100において、制御部30は、第1測定部20(撮影部28)において検出した可視光を演算しかつ収集したデータを処理し、その結果を表示部40へ出力する。本発明における制御部30は、演算部、記憶部、処理部などの複数の機能部位を併せ持つ構成を有し、制御部30の記憶部には、制御部30の処理部にて行われる演算を実行するプログラムが格納されており、記憶部には収集されたデータもまた記録され、必要に応じて処理部に入力される。制御部30において、記憶部に格納されたプログラムを演算部が実行し、図示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって、制御が実現される。これらの機能ブロックは、全て演算部の制御を受けており、これら機能ブロックは、その具体的な構成、機能等は特に限定されるものではない。一実施形態において、本発明における制御部30は、種々の言語を用いて作製されかつROMおよび/またはRAMなどの記録媒体に格納されたプログラムコードを実行するCPUなどの演算手段であり得る。
【0050】
なお、本発明に係る画像化システム100は、放射線情報として提供される生体内情報を高感度で検出しかつ高解像度で画像化することができるので、画像化に適した生体としては比較的薄いサンプルを提供し得る植物、培養細胞が挙げられるが、これらに限定されず、哺乳動物(例えば、ヒト)であってもよい。
【0051】
本発明は、顕微鏡を用いて実行されてもよく、動植物の内部の状態を定量的に観測し得る。本発明は、0.1〜300μmの解像度を有する画像や、1〜25μmの解像度を有する画像を提供し得る。
【0052】
(2)第2実施形態
本実施形態に係る画像化システム100は、第1の実施形態において示した構成以外に、被験体からの明視野情報を撮影する第2撮影部28’を有している第2測定部20’、および被験体からの蛍光情報を撮影する第3撮影部28’’を有している第3測定部20’’の少なくとも一方をさらに備えている。第2測定部20’および第3測定部20’’の両方を備えている画像化システム100の制御の流れを示すフローチャートを図5に示す。
【0053】
本実施形態において、制御部30は、第1測定部20にて得られた情報を処理して第1画像情報を生成するだけでなく、第2測定部20’にて得られた情報を処理して第2画像情報を生成するとともに、第3測定部20’’にて得られた情報を処理して第3画像情報を生成し、表示部40は、制御部30から出力された第1画像情報、第2画像情報および第3画像情報を表示する。すなわち、制御部30は、第1測定部20、第2測定部20’および第3測定部20’’から送信された画像信号に所定の加工および/または処理を施し、それぞれに対応する第1画像情報、第2画像情報および第3画像情報(いずれも動画または静止画)を生成し、これらを記録部にて記録するとともに、表示部40に表示させる。また、制御部30は、記録された画像信号に基づいてデータ解析を行う。なお、被験体からの明視野情報を撮影する手段や、被験体からの蛍光情報を撮影する手段としては、当該分野において周知の種々の技術が適用され得る。
【0054】
本実施形態に係る画像化システム100の要部構成を、図8に示す。図8においては、制御部30および表示部40が省略されており、第2撮影部28’以外の第2測定部20’の構成および第3撮影部28’’以外の第3測定部20’’の構成も省略されている。
【0055】
本実施形態に係る画像化システム100において、第1測定部20は、シンチレータ(受光部)22がテーパー状ファイバー束(光拡大部)23に蒸着してなる可視光生成部21、高開口率レンズと一体化された鏡筒(撮影補助部)27、GaAsPイメージングインテンシファイアおよびCCDカメラ(撮影部)28から構成されたRI撮影ユニットである。画像化システム100を構成する顕微鏡の上部に、上記構成を有するRI撮影ユニット20を搭載し、これと連動する、上下動が可能な電動ユニット(操作部)29を用いてサンプルの厚さに応じてRI撮影ユニットを下降させてサンプルに密着させ、イメージングインテンシファイアで2〜10分間の積算画像を取得する。これにより、植物組織におけるRI標識化合物の分布を細胞レベルで観察することができる。なお、電動ユニット29を用いることにより、撮影時にはRI撮影ユニットのシンチレータ面22をサンプルにぎりぎりまで密着させることが容易になる。
【0056】
画像化システム100を構成する顕微鏡には、第2測定部20’および第3測定部20’’が、通常の蛍光顕微鏡と同様に設けられている。具体的には、第2撮影部28’としてフロントポートのCCDを設置した。これにより、ステージ上からの落斜光源からの光を用いて植物組織の顕微鏡像(明視野像)を撮影し得る。また、第3撮影部28’’としてサイドポートのモノクロCCDを設置した。これにより、倒立顕微鏡の蛍光光源(HBO100)からの特定の励起波長を用いて蛍光像の撮影し得る。サンプル(または含有される物質)を予め蛍光標識しておくことにより、蛍光色素による細胞内でのCaシグナル検出および細胞内pH変化、あるいはGFP等蛍光タンパクによる遺伝子発現解析を観察することができる。
【0057】
(3)第3実施形態
本実施形態に係る画像化システム100は、第2の実施形態において示した構成以外に、第2測定部20’にて得られた情報を処理して第2画像情報を生成する第2制御部30’、および第3測定部20’’にて得られた情報を処理して第3画像情報を生成する第3制御部30’’が、制御部30以外に別途設けられている。第2制御部30’および第3制御部30’’の両方を備えている画像化システム100の制御の流れを示すフローチャートを図6〜7に示す。
【0058】
第2制御部30’および第3測定部30’’は、制御部30について上述したものと同様の機能を有しており、それぞれ第2測定部20’および第3測定部20’’において検出した可視光を演算しかつ収集したデータを処理し、その結果を表示部40へ出力する。すなわち、本実施形態では、異なる複数の画像信号に対する加工、処理、記録などが、それぞれ独立した制御部によって行われる。なお、生成された第1画像情報、第2画像情報および第3画像情報を表示する表示部は図6に示すように単一であってもよく、あるいは図7に示すように第2画像情報を表示する第2表示部40’、および第3画像情報を表示する第3表示部40’’が、第1画像情報を表示する表示部40以外に別途設けられていてもよい。なお、被験体からの明視野情報を撮影する手段や、被験体からの蛍光情報を撮影する手段としては、当該分野において周知の種々の技術が適用され得る。
【0059】
なお、図8には、本実施形態と第2の実施形態との間で共通する部分を図示している。すなわち、図8に示された画像化システム100の要部構成は、本実施形態の例示としてもまた認識されるべきである。
【0060】
〔3:画像化方法〕
別の局面において、本発明は、生体内情報を画像化するための方法を提供する。本発明に係る画像化方法は、上述した実施形態を実行するための方法である。
【0061】
一実施形態において、本発明に係る生体内情報を画像化するための方法は、放射性核種を取り込んだ被験体から放出される放射線情報を受光し、これを、シンチレータを介して第1可視光情報に変換する工程;および、第1可視光情報を、光拡大部を介して拡大して第2可視光情報を生成する第2工程、を包含することを特徴としている。なお、上記光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されている。
【0062】
本実施形態に係る方法は、第2可視光情報を撮影する第3工程;撮影した第2可視光情報を処理して画像情報を生成する第4工程;および該画像情報を表示する第5工程をさらに包含してもよい。また、本実施形態に係る方法は、明視野情報を撮影する工程および蛍光情報を撮影する工程の少なくとも一方をさらに包含してもよい。
【0063】
本実施形態に係る方法において使用される放射性核種は、β線を放出する放射性核種であれば何でもよく、例えば、H、14C、32P、33P、35S、45Ca、87Rb、115In、176Luからなる群より選択されるものが使用され得る。また、本実施形態に係る方法において使用されるシンチレータは、10〜200μmの範囲の厚さを有していることが好ましい。さらに、シンチレータは、無機シンチレータであることが好ましい。無機シンチレータとしては、NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)、CsF、CaF(Eu)、BaF、CdWO、ZnWO、PbWOなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、本実施形態に係る方法において使用される放射性核種は、10〜2000KeVのβ線を放出する核種であることが好ましい。
【0064】
このように、本発明は、動植物の体内の状態を観測するシステムおよび方法に関し、本発明を用いれば、動植物の体内の状態を2次元または3次元の画像として可視化することができる。なお、本発明に係る方法は、上述した画像化システムを用いて行われることが好ましいが、必ずしも上述した構成の全てを有するシステムが用いられる必要はないということを、当業者は容易に理解する。また、本発明に係る方法を用いれば、生体内情報を高感度で検出しかつ高解像度で画像化することができる。画像化に適した生体としては比較的薄いサンプルを提供し得る植物、培養細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
なお、後述する実施例において、植物を被験体として用いて本発明を実証しているが、本発明の適用対象は植物に限定されないことを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0066】
光透過度が高いコアガラス(浜松ホトニクス)を細い棒状に加工し、その数百本を束にした。束上にしたコアガラスを加熱して一体化し、次いで、これを延伸して、ファイバー構造を有する棒状のインゴットを作製した。インゴットを作製する際に、光を反射するクワッドガラス(浜松ホトニクス)をコアガラスの束の隙間に挿入して、コアガラスのファイバー間をクワッドガラスで埋めた。これにより、各コアガラスのファイバー同士がクワッドガラスにより独立したファイバー構造を維持することができる。また、ファイバー軸に対して垂直に入射しなかった光もクワッドガラスによる光反射により、反射しながら軸方向へ透過させることができる。
【0067】
このようなインゴットを複数重ね、加熱延伸の過程を繰り返してより大きなインゴットを作製した。この大きなインゴットを切断し、切断面を光学研磨することにより円柱状のファイバープレートを作製した。
【0068】
円柱状のインゴットであるファイバープレートの一部分のみを加熱し、次いで、円柱の中心軸方向の両側に延伸した。部分的に細くなった円柱の部分を切断して、テーパー型のファイバープレートを作製した(テーパー形状の底面積比が1:5)。テーパー型のファイバープレートを構成しているコアガラスの各々もファイバー構造を維持したまま細くなっていた(径がφ3μm〜φ15μm)。
【0069】
従来のプレート状のファイバープレート(直線状の光ファイバ束)にCsIからなるシンチレータ(浜松ホトニクス)を蒸着したものと、テーパー形状のファイバープレートにシンチレータを蒸着したものとを用いて、放射性核種を取り込んだ生物サンプルを観察した。5cm×5cmの視野において、後者を使用して取得したラジオアイソトープ像(5cm×5cmの視野)では前者のものに対して感度が約10倍向上した。
【0070】
次いで、明視野観察および蛍光観察を行い得る顕微鏡システム(カールツァイス株式会社)に、シンチレータを蒸着したテーパー形状のファイバープレートを組み込んで、放射性核種を取り込んだサンプルについての、3種類の異なる観察を行った(図8)。サンプルとしての植物切片を以下に従って調製した。ホークランド水耕液で4週間生育させた大豆(エンレイ)の第3本葉を茎の分岐部から切り取り、45Ca(CaCl) 500KBqで標識した0.1mMのCaCl溶液1mlを、切り口から3時間吸収させた。その後、切り口から2cm上の茎部分をビブラトームに固定し、70μm厚の茎のスライス切片を作製し、その切片をFluo−3 AM(Molecular Probes)により10分間染色した。染色後の切片について、450〜490nm励起 FT510nmフィルターを用いて蛍光像を取得した。また、先細側の端面にCsIからなるシンチレータを蒸着したテーパー型ファイバープレートを介して、切片上の45Caのラジオアイソトープ分布像を取得した。このラジオアイソトープ分布像は、GaAsPイメージングインテンシファイアの蛍光像検出にAxioCam HRmを用いたシステムにて、5分間の積算により検出した。
【0071】
本システムを用いて観察したところ、蛍光像、明視野像と同様にRI標識化合物分布についても鮮明な画像を取得し得た(図9)。本発明の技術を用いれば、生体内情報(例えば、生体内での物質の挙動)を高感度で検出しかつ高解像度で画像化することができる。さらに、RI(β線)観察、明視野観察および蛍光観察の3種類の異なる観察を一台の顕微鏡で行うことを可能にする。このように、本発明は、生体内での現象を解明するための新たなアプローチを提供し得る。
【0072】
本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
放射線情報として提示される生体内物質動態についての鮮明な画像を得ることはこれまで困難であったが、本発明を用いることにより、明視野像および蛍光像との三重撮影が実現した。さらなるシンチレータの開発により、本発明の応用範囲が拡大され得る。また、本発明の改良および/または発展に必要とされる高性能カメラの開発もまた期待され得る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、(a)は画像化器具の要部構成を示す側面図であり、(b)は画像化器具の要部構成を示す上面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであり、画像化器具の要部構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであり、画像測定装置の要部構成を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであり、画像化システムの制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態を示すものであり、画像化システムの制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態を示すものであり、画像化システムの制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態を示すものであり、画像化システムの制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る画像化システムの一実施形態の構成を示す側面図である。
【図9】図8に示した本発明に係る画像化システムを用いてダイズ葉からの生体内情報を観察した結果を示す図である(画像の上下方向で3mmのスケールである)。(a)は、[45Ca]−塩化カルシウムを吸収させたダイズ葉から放出されるβ線を検出した結果を示す図である。(b)は、(a)と同一のダイズ葉における明視野観察の結果を示す図である。(c)は、(a)と同一のダイズ葉における蛍光観察の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10・20 画像測定装置(第1測定部、RI撮影ユニット)
11・21 画像化器具(可視光生成部)
12・22 受光部
13・23 光拡大部
14・24 第1面
15・25 第2面
16・26 光ファイバー
17・27 撮影補助部(鏡筒)
18・28 撮影部
30 制御部
40 表示部
50 固定部
60 被験体
100 画像化システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線情報の画像化器具であって、
放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部、および
第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部
を備えており、
該受光部は、放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなり、
該光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されている
ことを特徴とする画像化器具。
【請求項2】
第2可視光情報の撮影を補助する撮影補助部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像化器具。
【請求項3】
10〜2000KeVのβ線による放射線情報を画像化するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の画像化器具。
【請求項4】
前記シンチレータが無機シンチレータであることを特徴とする請求項1に記載の画像化器具。
【請求項5】
放射線情報の画像測定装置であって、
放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部と、第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部とを備えた可視光生成部、および
第2可視光情報を撮影する撮影部を有しており、
該受光部は、放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなり、
該光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されている
ことを特徴とする画像測定装置。
【請求項6】
第2可視光情報の撮影を補助する撮影補助部が前記光拡大部と前記撮影部との間に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の画像測定装置。
【請求項7】
10〜2000KeVのβ線による放射線情報を画像化するために用いられることを特徴とする請求項5に記載の画像測定装置。
【請求項8】
前記シンチレータが無機シンチレータであることを特徴とする請求項5に記載の画像測定装置。
【請求項9】
生体内情報を画像化する画像化システムであって、
該画像化システムは、
放射性核種を取り込んだ被験体からの放射線情報を測定する第1測定部;
第1測定部にて得られた情報を処理して第1画像情報を生成する制御部;および
該制御部から出力された第1画像情報を表示する表示部
を備えており、
第1測定部は、
被験体から放出される放射線情報から可視光情報を生成する可視光生成部;および
該可視光情報を撮影する第1撮影部
を有しており、
該可視光生成部は、
放射線情報を受光しかつ第1可視光情報を生成する受光部;および
第1可視光情報を拡大して第2可視光情報を生成する光拡大部
を備えており、
該受光部は、放射性核種を取り込んだ被験体からの放射線情報を第1可視光情報に変換するシンチレータからなり、
該光拡大部は、
該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、
第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されており、
第1撮影部は、第2可視光情報を撮影する
ことを特徴とする画像化システム。
【請求項10】
第2可視光情報の撮影を補助する撮影補助部が前記光拡大部と第1撮影部との間に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の画像化システム。
【請求項11】
被験体を固定する固定部をさらに備えていることを特徴とする請求項9に記載の画像化システム。
【請求項12】
被験体からの明視野情報を撮影する第2撮影部を有している第2測定部をさらに備えていることを特徴とする請求項9に記載の画像化システム。
【請求項13】
被験体からの蛍光情報を撮影する第3撮影部を有している第3測定部をさらに備えていることを特徴とする請求項9に記載の画像化システム。
【請求項14】
前記生体内情報が、細胞間での物質の動態を示す情報、または細胞レベルでの物質の分布像を示す情報であることを特徴とする請求項9に記載の画像化システム。
【請求項15】
放射線情報の画像化方法であって、
受光した放射線情報を、シンチレータを介して第1可視光情報に変換する第1工程、および
第1可視光情報を、光拡大部を介して拡大して第2可視光情報を生成する第2工程
を包含し、
該光拡大部は、該受光部が設けられている第1面と第1面に対向して第2可視光情報が生成される第2面とを有し、第2面から第1面に向けてテーパー形状を成している複数の光ファイバーから構成されている
ことを特徴とする画像化方法。
【請求項16】
請求項15に記載の画像化方法であって、
第2可視光情報を撮影する第3工程
該撮影した第2可視光情報を処理して画像情報を生成する第4工程;および
該画像情報を表示する第5工程
をさらに包含することを特徴とする画像化方法。
【請求項17】
明視野情報を撮影する工程および蛍光情報を撮影する工程の少なくとも一方をさらに包含することを特徴とする請求項16に記載の画像化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−85776(P2009−85776A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256033(P2007−256033)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】