説明

生体固定装置

【課題】マウスやラット等の生体を同一の姿勢で容易に固定する。
【解決手段】基台14には、マウス11の左側半分をかたどった凹状の収容部15を形成してある。マウス11は、収容部15に収容されて、およそ左側半分の体表面に壁面15aが密着することにより横臥状態で固定されるとともに、マウス11の胴体の形状や、それに形成された腫瘍等が常に一定の姿勢とされる。撮影対象となる部位である右側面11aを含む右側半分の体表面は、収容部15から外部に露呈される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体からの蛍光を受光して画像を生成する際に生体を固定するための生体固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筐体内に被写体を配置し、遮光された筐体内に備えられた光源で被写体を照射して被写体を撮影する装置が、様々な分野で利用されている。生化学、分子生物学の分野においては、化学発光物質や蛍光物質を標識物質として使用し、これらの発光や蛍光を読み取ることによって、遺伝子配列、遺伝子の発現レベル、蛋白質の分離、同定、あるいは分子量、特性の評価などを行う撮影装置が知られている。
【0003】
また、マウスやラット等の生体に上記の標識物質で標識された遺伝子や蛋白質、抗体、薬理物質を与え、生体の体内または体表に分布した標識物質からの光をカメラで撮影し、生体内における遺伝子の発現や薬理作用等を撮影する、いわゆるイン・ビボ・イメージング(in vivo imaging)を行う撮影装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この撮影装置では、例えば蛍光物質で標識を行っている場合には、生体に励起光を照射して蛍光物質を励起させ、生じた蛍光をカメラで受光することによって画像(以下、分布画像という)を生成(撮影)する。
【0004】
上記のような分布画像を撮影する場合、カメラで受光される蛍光等の光は、微弱であるため長時間の露出が必要となる。このため生体は姿勢を変えないように麻酔された状態で撮影ステージ上に置かれる。このときに、撮影対象の部位によっては、生体自体がかなり柔軟であるため一定の姿勢を保持し難い場合がある。このような場合には、例えば生体を透明なチューブ状の固定装置に入れて固定することにより、カメラ側に向けるようにしている。
【特許文献1】特表2000−502884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一定の期間ごとに分布画像を撮影して、薬理作用等の定量的な解析を行う場合においては、その撮影ごとに同一な姿勢となるように生体を固定する必要があるが、上述のように生体自体がかなり柔軟であるため、上記のようなチューブ状の固定装置では、生体を同じ姿勢に固定することが難しい。したがって、生体の姿勢変化が誤差要因となり精度の高い解析の妨げになっていた。
【0006】
また、薬理作用等の比較を行う場合には、例えば落射式の励起光源からの励起光を複数の生体に対して同時に照射される。しかし、このような落射式の励起光の照射手法においては、生体ごとには体表面、特に耳等の突出部においてカメラに向けて強い反射が生じ、それが余分な像として、すなわちノイズとして分布画像に写り込んでしまう。また、落射式の励起光源は、撮影方向への強い反射が生じるのを防止するために、生体の斜め上方に配される場合があるが、このような位置から励起光を照射した場合には、体表面のシワ等の凹凸による照射ムラや、1つの生体の影が他の生体の上に出ることによる照射ムラが発生するといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、マウスやラット等の生体を好ましく固定でき、また励起光の照射を最適に行うことができる生体固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために請求項1に記載の生体固定装置では、少なくとも体表面の一部を外部に露出するように、固定すべき生体の型状に応じた凹状に形成され、内部に収容された生体の体表面を壁面に密着して保持する収容部と、生体の撮影対象と反対側の体表面に対向する壁面の位置に開口され、生体に励起光を照射する光射出口とを備えたものである。
【0009】
請求項2記載では、生体固定装置を、励起光によって自家蛍光を発しない遮光材料で作製したものである。
【0010】
請求項3記載の生体固定装置では、光射出口の奥に設けられ、励起光を照射する光源を備えたものである。
【0011】
請求項4記載の生体固定装置では、外部の光源装置から一端に励起光が入射されるライトガイドを光射出口にまで通すライトガイド孔を備え、このライトガイド孔に通されたライトガイドの他端から射出される励起光を生体に向けて照射するようにしたものである。
【0012】
請求項5記載の生体固定装置では、収容部を加熱することによって、収容されている生体を保温するヒータを備えたものである。
【0013】
請求項6記載の生体固定装置では、収容部に、その大きさを調節するためのサイズ調節機構を有するものである。
【0014】
請求項7記載の生体固定装置では、収容部の傾斜を調節するための傾斜調節機構を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少なくとも体表面の一部を外部に露出するようにして、固定すべき生体の型状に応じた凹状に形成された収容部を設け、この収容部の壁面で内部に収容された生体の体表面を密着して保持するとともに、撮影対象と反対側の生体の体表面に対向する位置に励起光を照射する光射出口を備えたから、マウスやラット等の生体を一定の姿勢にして容易に固定することができるとともに、ノイズや照射ムラのない励起光の照射を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、本発明を実施した生体固定装置10の外観を示す。また、図2に生体固定装置10の断面を、図3に生体固定装置10に生体を固定した状態を示す。この例の生体固定装置10は、生体としてマウス11を右向きの横臥状態に固定し、マウス11の右側面11aの肩部12aや大腿部12bの体表面あるいは体内の組織、あるいはそれら部位に形成された腫瘍等の組織に分布する蛍光物質の画像(以下、分布画像という)を撮影するために用いられる。なお、分布する蛍光物質としては、マウス11に投与された蛍光物質の他、自家蛍光を発する腫瘍の組織自体である場合もある。
【0017】
生体固定装置10は、箱状の基台14の上面側に、マウス11を内部に収容して保持する収容部15を形成してある。収容部15は、断面が略半円形状であり、マウス11の頸部から尾までの左側半分をかたどった凹状になっている。なお、収容部15の形状は、固定すべき姿勢にマウス11を固定できる程度に、一般的なマウスの体型をかたどって凹状に形成されていればよい。
【0018】
上記の収容部15にマウス11を収容することにより、マウス11の姿勢が常に一定の横臥状態となりようにしている。また、マウス11の左側半分の体表面と略同一の形状とした壁面15aがマウス11の左側半分の体表面に密着して保持する。これによって、柔軟なために重力で変形しやすいマウス11の胴体の形状や、それに形成された腫瘍の姿勢等を所定の状態となるようにしながら、撮影対象となる部位である右側面11aを含む右側半分の体表面を露呈する。
【0019】
また、マウス11の腹部がその重さで大きく変形しやすく、また突出した腫瘍が重みによって姿勢が変わりやすい。そこで、この例では、右側面11a付近の壁面15aを大きくして、右側半分の背、腹の部分をも密着して保持するようにしてある。さらに、麻酔ガスを吸引するためのマスクをマウス11の鼻に装着しやすいようにするために、基台14及び壁面15aを頸部までとし、マウス11の鼻が基台14から突出するようにしてある。
【0020】
なお、上記生体固定装置10では、マウス11の頸部から尾までを保持するようにしているが、例えば全身、すなわち鼻先から尾の先端までを保持するようにしてもよく、部分的に例えば前肢と後肢との間の胴部分だけを保持するようにしてもよい。また、マウス11がかなり柔軟であって、その体表の形状が容易に変形して壁面15aと密着するので、収容部15のサイズが実際に収容するマウス11のサイズと多少異なっていてもかまわない。したがって、様々なサイズのマウス11に対応するためには、生体固定装置10としては収容部15のサイズが段階的に異なる数種を用意しておくだけでよい。
【0021】
外部に露出すべき体表面、すなわち撮影対象となる体表面と反対側の体表面、この例では右側面11aの反対側の左側の体表面に対向する壁面15aの部分に、光射出口17を設けてある。光照射口17は、図3に示されるように、複数設けてあり、各光射出口17の奥には、図2に示されるように、光源部18をそれぞれ配してある。
【0022】
光源部18は、マウス11に分布する蛍光物質を励起させて発光させるための励起光をマウス11に照射する励起光源となっている。光源部18としては、近赤外LED18aとフィルタ18bとから構成されている。フィルタ18bは、近赤外LED18aから出力される光(近赤外光)のうち、蛍光物質を励起させて蛍光を発生させるための励起光の波長域を透過し、蛍光物質からの蛍光の波長域の光をカットするハイパスフィルタで構成してある。周知のように、励起光によって蛍光が発せられる場合には、いわゆるストークスシフトが生じるため、蛍光物質からの蛍光の波長は、励起光の波長に対して長波長側にシフトしている。なお、光源部18の構成は一例であり、蛍光物質を励起する励起光を出力するものであれば、各種構成を採用することができる。
【0023】
光源部18は、駆動制御部20によってオンとされると励起光を出力し、この励起光を光射出口17を介して、マウス11に照射する。マウス11に照射される励起光は、そのマウス11の体内で拡散し、肩部12や大腿部12bないしその部分に形成されている腫瘍、または体内に形成されている腫瘍に多方向から照射され、蛍光物質を効率よく励起して蛍光を発生させる。
【0024】
この例においては、幅が2cm程度のマウスの体側面に対して、千鳥状に11個の光射出口17を配し、各光射出口17に光源部18を設けているが、光射出口17の配列、個数、サイズ等は、必要とする励起光の強さ、各光射出口17から照射される励起光の強さ、励起光を照射すべきマウス11の部位等に応じて適宜決定することができる。もちろん、光射出口17を1個としたり、1個の光射出口17に複数の光源部18を配してもよい。
【0025】
ところで、分布画像を撮影するカメラ側に設けたフィルタが励起光をカットするように構成されるが、実際には励起光を完全にカットできない。このため強い励起光が生体固定装置10から漏れ出した光、あるいはその漏れ出した光が耳等の突出部で強く反射されてカメラ側に入射すると分布画像のノイズとなってしまう。そこで、光射出口17は、マウス11と密着性が低くなりやすい箇所を避け、また密着性が低くい部分が生じてもその部分から励起光が漏れ出す可能性が低くなる箇所に設けることが好ましく、上記のように撮影対象となる体表面と反対側の体表面に対向した位置に設けることがもっとも好ましい。
【0026】
図3に示されるように、基台14の内部には、ヒータ22と、温度センサ23とを設けてある。ヒータ22は、壁面15aを加熱することにより、この壁面15aを通して収容部15に収容されているマウス11を加熱する。温度センサ23は、基台14の温度を検出する。駆動制御部20は、温度センサ23の検出結果に基づきヒータ22をオン・オフすることによって、壁面15aの温度をマウス11の体温と同じに維持する。これにより、麻酔状態となって体温が低下してしまうマウス11を保温する。
【0027】
上記のように構成される基台14は、それ自体が蛍光を発して分布画像の撮影に影響を与えないようにするため、自家蛍光を発しない材料で、またヒータ22によるマウス11の保温の点からは熱伝導性の高い材料で作製されている。自家蛍光を発しない材料としては、各種金属が好適であるが、自家蛍光が防止されるようにしたプラスチック樹脂等であってもよい。この例においては、基台14は、自家蛍光がなく熱伝導性の高いアルミ製となっている。
【0028】
分布画像を撮影する撮影装置30の概略を図4に示す。撮影装置30は、蓋(図示省略)で開閉される撮影室32を設けてあり、また撮影装置30の上部にはカメラ部33を設けてある。撮影室32は、蓋を開くことによって、生体固定装置10の収容や取り出しを行うことができる。また、撮影室32内は、蓋を閉じることによって遮光され、撮影の際にマウス11から発せれる蛍光以外の光がカメラ部33に入射することが防止される。
【0029】
撮影室32の上部に設けたカメラ部33は、イメージセンサ35,撮影レンズ36,カメラ側フィルタ37,冷却部38等から構成され、撮影レンズ36とカメラ側フィルタ37が撮影室32内に配されている。イメージセンサ35は、デジタルカメラ等に用いられているものと同様であり、その受光面に多数の受光素子をマトリクス状に配してある。分布画像の撮影は、イメージセンサ35でマウス11に分布する蛍光物質から蛍光を受光することにより行う。この撮影では、例えば10秒程度の長時間露出が行われ、冷却部38は、その露出中にイメージセンサ35を冷却することにより暗電流を低減して分布画像のノイズを抑制する。
【0030】
撮影レンズ36は、マウス11からの蛍光をイメージセンサ35に結像する。カメラ側フィルタ37は、励起光を遮断し、マウス11に分布する蛍光物質からの蛍光を透過するフィルタであって、励起光をカットするように、例えば蛍光物質からの蛍光よりも短波長側の光をカットするローパスフィルタが用いられる。
【0031】
撮影レンズ36の直下に、撮影ステージ39を設けてあり、マウス11を収容した生体固定装置10が置かれる。複数のマウス11を同時に撮影する場合には、それぞれにマウス11を収容した複数(図4では2個)の生体固定装置10を配することで、同一フレームにそれぞれの分布画像を撮影することができる。
【0032】
次に、上記構成の作用について説明する。予め蛍光物質が投与されたマウス11にプレ麻酔がかけられ、その麻酔状態のマウス11を生体固定装置10の収容部15に収容する。このとき、マウス11が収容部15内にその形状に合致するように収容されるので、マウス11を所定の姿勢にして固定することができるとともに、およそ左側半分の体表面が壁面15aで支えられるためマウス11が一定の形状となる。そして、マウス11の右側面11a、あるいはそれに形成された腫瘍の組織の姿勢等も、一定の状態にすることができる。
【0033】
したがって、撮影ごとにマウス11を生体固定装置10に固定する際に、マウス11や、撮影対象の部位、組織の姿勢等を同一の状態にすることができる。また、複数のマウス11を固定する場合にも、同じ姿勢に固定することができる。
【0034】
続いてマウス11を収容した生体固定装置10を撮影装置30の撮影ステージ39上に配する。撮影室32内には、麻酔ガスが供給されるマスク(図示省略)が設けられており、これをマウス11の鼻に装着し、麻酔ガスを吸引させて麻酔状態を維持する。複数のマウス11を同時に撮影する場合には、同様にしてそれぞれのマウス11を固定した生体固定装置10を撮影室32内に配置する。
【0035】
上記のようにして生体固定装置10を撮影室32内に配した後、駆動制御部20を操作して光源部18をオン、ヒータ22による保温を開始させてから撮影装置30の蓋を閉じる。そして、蓋を閉じた後、撮影装置30を操作して、カメラ部33を動作させて分布画像の露出を開始する。なお、ヒータ22の保温動作は、マウス11を収容部15に収容する前から開始させてもよい。また、駆動制御部20を撮影装置30側に設けて撮影装置30の操作で光源部18のオン・オフや、ヒータ22による保温動作を開始させるようにしてもよい。
【0036】
各光源部18がオンとされることにより、光射出口17から励起光がマウス11に照射される。照射された励起光は、マウス11の体内で拡散して、マウス11の体内または体表に分布している蛍光物質に照射される。これにより、蛍光物質が励起して蛍光を発し、その蛍光がカメラ側フィルタ37、撮影レンズ36を通してイメージセンサ35に受光される。イメージセンサ35が受光すると、それを受光した受光素子で光が電荷に変換されて蓄積される。このようにして、イメージセンサ35には時間の経過とともに電荷が徐々に蓄積され、分布画像が生成される。
【0037】
以上のようにして分布画像を撮影している間では、光射出口17がマウス11の体表面に密着しているから、励起光が効率よくマウス11に照射されるとともに、励起光が漏れ出すことがなく、またマウス11の体表面のシワや耳等の突出部で励起光の強い反射が生じないので、ノイズの少ない分布画像を得ることができる。また、複数の生体固定装置10を隣接して配しても、1台の生体固定装置10の光源部18からの励起光が他の生体固定装置10に固定されているマウス11に照射されることがない。したがって、励起光の照射ムラがない分布画像を得ることができる。さらには、マウス11や、そのマウス11の撮影対象の部位、あるいはそれに形成された腫瘍の組織の姿勢等を所定の状態にした分布画像を常に得ることができる。
【0038】
上記実施形態では、生体固定装置に励起光の光源を内蔵しているが、生体固定装置とは別に光源装置を設けてもよい。図5は、外部に設けた光源装置からの励起光を光射出口からマウスに照射するようにしたものである。なお、以下に説明する他は、最初の実施形態と同様である。
【0039】
外部光源装置40は、近赤外LED等の光源41と、一対のレンズ42,43と、フィルタ44とから構成される。光源41から出力された光は、レンズ42によって平行光束とされ、一対のレンズ42,43の間に配されたフィルタ44に入射する。フィルタ44は、蛍光物質を励起させて蛍光を発生させるための励起光の波長域を透過し、蛍光物質からの蛍光の波長域の光をカットする。フィルタ44を透過した励起光は、レンズ43によって、ライトガイドとしての各光ファイバ45の一端に集光されて入射される。
【0040】
基台14には、各光射出口17につながったライトガイド孔46が形成されている。各光ファイバ45は、それぞれ基台14に形成したライトガイド孔46を通して、その他端が光射出口17に達している。これにより、外部光源装置40からの光が各光射出口17からマウス11に照射される。なお、光ファイバ45の他端がマウス11に密着するようにしてもよい。
【0041】
図6は、生体固定装置にサイズの調節機構を付加した例を示すものである。なお、以下に説明する他は、最初の実施形態と同様であり、実質的に同じ部材には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
第1スライドユニット51と第2スライドユニット52とから基台14を構成してある。第1スライドユニット51には、マウス11の腹部側の体表面と密着される壁面51aを形成してあり、第2スライドユニット52には、マウス11の背部側の体表面と密着される壁面52aを形成してあり、壁面51a,52aが収容部15を構成する壁面となっている。
【0043】
第2スライドユニット52は、第1スライドユニット51に対してスライド自在としてあり、図6に実線で示す最小サイズ位置と、二点鎖線で示す最大サイズ位置との間でスライドする。最小サイズ位置は、各スライドユニット51,52bの対向する壁面、例えば、腹部に密着する壁面部分と背部に密着する壁面部分の間隔を最小にし、最大サイズ位置は、各スライドユニット51,52bの対向する壁面の間隔を最大にする。
【0044】
例えば第1スライドユニット51の下側に潜り込むようにしてスライド自在な板状部材(図示省略)が配されており、この板状部材が第2スライドユニット52のスライドによって、第1スライドユニット51の下側から引き出される。これにより、第2スライドユニット52が最小サイズ位置から最大サイズ位置に向けてスライドされた状態にあるときに、各スライドユニット51,52の間に隙間が生じないようにしてあり、各スライドユニット51,52の間にマウス11が挟まることを防止する。
【0045】
第1スライドユニット51と第2スライドユニット52には、スライド機構53を組み付けてあり、このスライド機構53によって、第2スライドユニット52の最小サイズ位置と最大サイズ位置との間でのスライドをガイドする。スライド機構53は、例えば第1スライドユニット51に固定された筒状の固定部53aと、この固定部53aにスライド自在に嵌合し第2スライドユニット52に固定された可動部53bとから構成される。このように、この例においては第1スライドユニット51に対してスライド移動される第2スライドユニット52と、スライド機構53とから収容部15の大きさを調節する調節機構が構成されている。
【0046】
上記構成によれば、マウス11のサイズに応じて第2スライドユニット52をスライドさせて、壁面51a,壁面52aがそれぞれマウス11に密着するように収容部15のサイズを調節でき、マウス11の姿勢が常に所定の姿勢となるように適切に保持することができる。
【0047】
上記実施形態では、体高方向へのサイズ調節であるが、体長方向へのサイズ調節や収容部の深さの調節等をできるようにしてもよく、それらの組み合わせであってもよい。また、収容部のサイズを部分的に、例えばマウスの胴部を収容する部分だけのサイズを調節できるようにしてもよい。さらには、収容部のサイズの調節手法も種々のものを採用することができ、例えば収容部の一部に壁面にバルーンを設けておき、そのバルーンをマウスの収容後に適当な圧力で膨張させて密着するようにしてもよい。なお、このような場合に、バルーン等は、励起光を遮断し、自家蛍光を発しないものとするが、励起光を遮断するためにバルーン内にそのような液体等を注入するようにしてもよい。
【0048】
図7は、収容部の傾きの調節機構を付加した例を示すものである。なお、以下に説明する他は、最初の実施形態と同様であり、実質的に同じ部材には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
この例における生体固定装置10では、その基台14の底部の四隅に収容部15の傾きの調節機構を構成する可動脚部61をそれぞれ設けてある。可動脚部61は、図8に示すように、基台14の底部に形成されたネジ穴62と脚部63とからなり、脚部63は、撮影ステージ39等の載置面と接触する脚本体64と、この脚本体に一体に設けられたダイヤル65及びネジ穴62に螺合するネジ66とからなる。
【0050】
上記の構成により、ダイヤル65を回動することによって、脚部63の基台14からの突出長を変えることができる。そして、各脚部63の突出長を変えることにより、基台14の傾斜、すなわち収容部15の傾斜を任意に調節することができる。これにより、生体11を収容部15に収容した後に、ダイヤル65の操作によって傾斜を変えて、例えば生体の撮影対象の部位をカメラ部33に正対するように容易に調節することができる。
【0051】
なお、上記の傾きの調節機構の構成は、一例であり、それに限られるものではない。また、傾きの調節機構と図6のサイズの調節機構とを同時に設けてもよい。
【0052】
上記各実施形態では、固定すべき生体としてマウスを例に説明したが、本発明は、それに限るものではなく、種々の生体に利用できる。収容部の形状は、生体の種類、撮影対象とする部位に応じて適宜に決めることができる。また、光射出口を省略した構成では、外部から励起光を照射したり、励起光の照射が不要な撮影を行う場合に生体を固定する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を実施した生体固定装置の外観を示す斜視図である。
【図2】生体固定装置の断面を示す断面図である
【図3】生体固定装置にマウスを固定した状態を示す説明図である。
【図4】撮影装置の構成を示す概略図である。
【図5】外部の光源装置からの光でマウスに励起光を照射する例を示す断面図である。
【図6】サイズ調節を行うように基台を2分割してスライド自在とした例を示す説明図である。
【図7】基台の傾斜調節を行うように可動脚部を設けた生体固定装置の外観を示す斜視図である。
【図8】可動脚部の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 生体固定装置
11 マウス
14 基台
15 収容部
17 光射出口
18 光源部
22 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に励起光を照射することにより、その生体から発せられる蛍光をカメラで受光して画像を生成する際に生体を固定する生体固定装置において、
少なくとも体表面の一部を外部に露出するように、固定すべき生体の型状に応じた凹状に形成され、内部に収容された生体の体表面を壁面に密着して保持する収容部と、
前記生体の撮影対象と反対側の体表面に対向する壁面の位置に開口され、前記生体に励起光を照射する光射出口とを備えたことを特徴とする生体固定装置。
【請求項2】
前記励起光によって自家蛍光を発しない遮光材料で作製されていることを特徴とする請求項1記載の生体固定装置。
【請求項3】
前記光射出口の奥に設けられ、励起光を照射する光源を備えることを特徴とする請求項1または2記載の生体固定装置。
【請求項4】
外部の光源装置から一端に励起光が入射されるライトガイドを前記光射出口にまで通すライトガイド孔を備え、このライトガイド孔に通された前記ライトガイドの他端から射出される励起光を生体に向けて照射することを特徴とする請求項1または2記載の生体固定装置。
【請求項5】
前記収容部を加熱することによって、収容されている生体を保温するヒータを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の生体固定装置。
【請求項6】
前記収容部は、その大きさを調節するためのサイズ調節機構を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生体固定装置。
【請求項7】
前記収容部の傾斜を調節するための傾斜調節機構を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の生体固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−236847(P2009−236847A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86130(P2008−86130)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】