説明

生体情報取得装置

【課題】喉頭摘出者の気管孔から吐き出される呼気を検出することができるようにする。
【解決手段】センサ部21は、アーム23を介して支持部22に連結されており、支持部22は、通し部22Aにベルト13を通すようにしてベルト13に取り付けられる。アーム23は、フレキシブルな部材で構成されており、センサ部21の支持部22からの位置を、任意に変更可能となっている。支持部22が、利用者の首に装着されたベルト13に移動可能に取り付けられ、そしてセンサ部21の支持部22からの位置が任意に変更可能となっていることから、ベルト13の装着位置、支持部22の取り付け位置、及びセンサ部21の支持部22からの位置を、適宜調整することにより、利用者は、センサ部21を、利用者の気管孔Hの前方に位置するように移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
健常者は、自らの呼気が喉頭(声門)を経由する際に声帯を振動させることにより音を発生させ、その音の周波数成分を舌・顎や唇などの調音器官で変えることにより様々な発話を行っている。この声帯の振動により発生される音は、発話の基となる音であることから、「声門音源」などと呼ばれる。
【0003】
これに対し、喉頭を摘出してしまった喉頭摘出者は、通常であれば自らの意思による発声は不可能であるが、調音器官さえ残存していれば、人工的に作り出した音を声門音源の代わりに口腔内で発生させ、または、口腔内へ送り込んでやることにより、不完全ながらも発声ができるようになる。
【0004】
このような声門音源の代わりとなる音を人工的に作り出す装置の一つに電気式人工喉頭がある。電気式人工喉頭は、声門音源の代わりとなる音を、機械的、または、電気機械的に生成し、その音を顎部の振動などを通じて口腔内に導くことによって、喉頭摘出者自らによる発声を支援する。
【0005】
図4は、一般的な電気式人工喉頭101の例を示す図である。電気式人工喉頭101の筐体111は、利用者の掌に収まるサイズの略円筒形をなしている。その筐体111の一端には、声の元となる音を発生させるための振動板112が露出するように配置されている。振動板112は、押しボタン113の操作に応じて内蔵するボイスコイルモータが駆動することによって振動する。
【0006】
利用者は、電気式人工喉頭101の筐体111を自らの掌で包み込むように握って、振動板112を自らの顎部に押し当て、押しボタン113を操作する。押しボタン113の操作に応じて、ボイスコイルモータが駆動して振動板112が振動し、その振動が、利用者の顎部から口腔内に伝わって音が発生する。
【0007】
ところでこの種の電気式人工喉頭の中には、喉頭摘出者の気管孔から吐き出される呼気の圧力を検出するためのセンサを利用し、そのセンサの検出値に応じて振動板の振動の周期を変化させるものがある(特許文献1)。
【0008】
図5は、気管孔Hから吐き出される呼気の圧力を検出する呼気センサ121を利用した電気式人工喉頭122の使用例を示す図である。図6は、呼気センサ121の構成例を示す図である。
【0009】
呼気センサ121は、喉頭摘出者の気管孔Hを覆うように、例えば図示せぬベルト等により装着される。呼気センサ121は、喉頭摘出者の気管孔Hから吐き出される呼気の圧力から呼気の強弱を検知し、その検知結果を、ケーブル124を介して電気式人工喉頭122に供給する。
【0010】
呼気センサ121は、半円形の柔らかい樹脂から形成されたセンサパット131と、空気弁132と、検知体が納められたセンサボックス133とから主に構成されている。検知体は、センサパット131に設けられた案内孔134から案内された呼気から、呼気の強弱を検知する。
【0011】
電気式人工喉頭122は、基本的には図4の電気式人工喉頭101と同様の構成を有しているが、呼気センサ121により検知された呼気の強弱に応じて、振動板123の振動の周期を変化させる。
【特許文献1】再公表特許WO99/12501
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、気管孔Hは、呼吸のために設けられた穴であり、上述した場合のように呼気センサ121のセンサパット131が直接気管孔Hを覆うように装着されると、空気弁132を介して空気の流が確保されていても、利用者は息がしづらくなり、苦しいと感じることもあった。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、息苦しくないように、喉頭摘出者の気管孔から吐き出される呼気を検出することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面の生体情報取得装置は、声の元となる音を発生させるための振動板の振動を、生体情報に応じて制御する電気式人工喉頭に、生体情報を供給する生体情報取得装置であって、人体又は電気式人工喉頭に取り付けられる支持部と、人体の気管孔からの呼気の風量を計測するセンサ部と、変形可能なアームであって、センサ部と支持部とを、センサ部の支持部からの位置を変更可能に連結するアームとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、息苦しくないように、喉頭摘出者の気管孔から吐き出される呼気を検出することができ、また気管孔を覆い隠す必要がないため、装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。本実施形態にかかる電気式人工喉頭は、声の元となる音を喉頭摘出者の口腔内で人工的に発生させる、もしくは人工的に発生した音を口腔内に導くものである。その結果、舌・顎や唇などの調音器官を通じてその音の周波数成分に変化が加えられ、利用者の口から発せられる。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかる生体情報取得部11と電気式人工喉頭12の構成例を示す図である。図2は、その利用例を示す図である。
【0018】
生体情報取得部11は、人体に取り付けられ、生体情報を取得する。生体情報取得部11は、センサ部21、支持部22、及びアーム23から構成されている。
【0019】
センサ部21は、アーム23を介して支持部22に連結されており、支持部22は、通し部22Aにベルト13を通すようにしてベルト13に取り付けられる。アーム23は、フレキシブル(即ち変形可能)な部材で構成されており、センサ部21の支持部22からの位置は、アーム23を変形させることにより任意に変更可能となっている。
【0020】
即ち支持部22が、利用者の首に装着されたベルト13に移動可能に取り付けられ、そしてセンサ部21の支持部22からの位置が任意に変更可能となっていることから、ベルト13の装着位置、支持部22の取り付け位置、及びセンサ部21の支持部22からの位置を、適宜調整することにより、利用者は、センサ部21を、利用者の気管孔Hの前方に位置するように移動させることができる。
【0021】
センサ部21の格納部31には、風量計41が格納されている。格納部31には、気管孔Hからの呼気を受ける風受部32と、風受部32に当たった呼気を風量計41に案内する案内孔33が設けられている。図3は、利用者の気管孔Hの前方に位置するセンサ部21において、気管孔Hからの呼気が風受部32及び案内孔33を介して風量計41に案内される様子を示す図である。図中矢印は呼気の流れを示している。
【0022】
風量計41は、案内孔33から入った呼気の風量を計測し、計測した風量を示す信号を、ケーブル14を介して電気式人工喉頭12に供給する。
【0023】
電気式人工喉頭12は、利用者の掌に収まるサイズの略円筒形をなしている。電気式人工喉頭12の一端には、声の元となる音を発生させるための振動板51が露出するように配置されている。振動板51は、押しボタン52の操作に応じて内蔵するボイスコイルモータが駆動することによって振動するが、生体情報取得部11により検出された呼気の風量に応じて、振動の周波数が変化するようになされている。
【0024】
以上のように、生体情報取得部11と電気式人工喉頭12は構成され、利用される。
【0025】
即ち以上のように、生体情報取得部11により取得された呼気の風量に応じて、振動板51の振動の周期を変更させるようにしたので、例えば電気式人工喉頭12により発生する声に抑揚を持たせることができ、利用者の発声をより自然なものとすることができる。
【0026】
また以上のように、センサ部21を、気管孔Hに密閉させることなくその前方に配置できる構成としたので、利用者に息苦しさを感じさせることなく、呼気を検出することができる。また気管孔を覆い隠す必要がないため、装置の小型化を図ることができる。
【0027】
なお以上においては、支持部22は、ベルト13によって人体に取り付けられる場合を例として説明したが、例えば支持部22を電気式人工喉頭12に取り付ける(例えば、ベルト等で電気式人工喉頭12の側面に取り付ける)ことができるようにし、センサ部21が、気管孔Hの前方に位置するように、利用者が電気式人工喉頭12を把持するようにして利用することも可能である。なおこの場合、アーム23は、例えば図2の例に比べ短いものとすることができ、またアーム23の支持22部及びセンサ部21への接続場所や方法も、図2の例の場合と異なるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用した生体情報取得部と電気式人工喉頭の構成例を示す図である。
【図2】本発明を適用した生体情報取得部と電気式人工喉頭の使用例を示す図である。
【図3】気管孔からの呼気が風受部及び案内孔を介して風量計に案内される様子を示す図である。
【図4】一般的な電気式人工喉頭の例を示す図である。
【図5】気管孔から吐き出される呼気の圧力を検出する呼気センサを利用した電気式人工喉頭の使用例を示す図である。
【図6】図5の呼気センサの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
11 生体情報取得部, 12 電気式人工喉頭, 13 ベルト, 21 センサ部, 22 支持部, 23 アーム, 31 格納部, 32 風受部, 33 案内孔, 41 風量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
声の元となる音を発生させるための振動板の振動を、生体情報に応じて制御する電気式人工喉頭に、上記生体情報を供給する生体情報取得装置において、
人体又は上記電気式人工喉頭に取り付けられる支持部と、
人体の気管孔からの呼気の風量を計測するセンサ部と、
変形可能なアームであって、上記センサ部と上記支持部とを、上記センサ部の上記支持部からの位置を変更可能に連結するアームと
を有することを特徴とする生体情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−110541(P2010−110541A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287305(P2008−287305)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(599008654)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【出願人】(391026106)株式会社電制 (12)
【Fターム(参考)】