説明

生体検出システム

【課題】車両内に人が残っていないか確認する従来の生体検出システムは、車両内に予めセンサを設けておき、そのセンサの出力信号を用いて車両内の生体を検出する構成が一般的であった。この構成では、センサが設けられている特定の車両にのみ適用が可能であり、不特定の車両に適用することはできない。
【解決手段】本発明の生体検出システムは、停車した車両の車体あるいは車輪に振動検出手段を接触させて車両の振動を検出し、その振動信号に生体信号が含まれるか検出することにより車両内に人が残っていないか検出する。車両とは独立して振動検出手段を設けるので、不特定の車両に対して車両内の生体検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内に人が残っていないか確認する生体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両内の乗員がすべて降車したこと、あるいは車両内に人が残っていないかを確認して安全を確保しなければならない場合が多くある。
【0003】
例えば、機械式駐車場においては駐車場内に収容する車両から乗員がすべて降車したことを確認することが安全確保の上で必要である。また、送迎バスなどからすべての乗客が降車したことを確認することは必須の要件である。特に乗客が幼児の場合には車両内に取り残されると重大な危険が伴う恐れがあり、車両内に乗客が残っていないか確認することをおろそかにはできない。さらに幼児などが車両のトランクに閉じ込められる事故も多く、大事に至らない前にトランク内に人が入っていないか知る必要がある。
【0004】
一方、研究施設や工場施設などに侵入あるいは正規な手続無き退場を防ぐことは最先端の研究を必須とする企業には重要な課題であり、研究施設や工場施設に許可なき入場者がいないか、あるいは密かに敷地内から退場する者がいないか確認するためにも、ゲートを通過する車両内に不審者が潜んでいないか確認する必要がある。
【0005】
車両内の乗員がすべて降車したこと、もしくは車両内に人が残っていないことを確認するシステムとしていくつかの方法が提案されているが、それらの多くは車両内の座席などに荷重の変化を検出するセンサを設けるものである。それらの方式においては荷物などを座席においた場合と区別がつかないという問題がある。
【0006】
下記特許文献1には、機械式駐車場における降車確認のために生体検出システムが採用された例が開示されている。該文献の生体検出システムでは、車両内に振動検出センサを設けておき、そのセンサが検出した振動の中に生体の呼吸に起因する信号を検出することにより、車両内の乗員が降車したことを確認している。さらに同公報には検出センサとして赤外線センサにより生体を検出する方法も開示されている。
【0007】
該文献の生体検出方法では、人体の呼吸を振動として検出する振動検出センサあるいは人体の熱を検出する赤外線センサが検出対象となる車両内に設けられる構成のため、予め車両内にセンサを設ける必要があり、適用される車両が限定されるという問題がある。
【特許文献1】特開2006−265822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の車両内の生体検出方法では、車両内に予めセンサを設けておく必要があり、センサが設けられている特定の車両にのみ適用が可能であり、不特定の車両に適用できないという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題を鑑み、車両に特別なセンサなどを搭載する必要がなく、すべての車両に対して車両内に人が残っているか検出することが可能な生体検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1の解決手段の生体検出システムは、停車した車両の車体あるいは車輪に接触させて車両の振動を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段で得られた検出信号を伝送する伝送手段と、前記振動検出手段の検出信号中に生体信号の有無を検出する生体信号検出手段とを備えることを特徴とする。なお、上記伝送手段は、有線でも無線でもどちらでも良い。
【0011】
上記の第1の解決手段によれば、停車した車両の車体あるいは車輪に振動検出手段を接触させて車両の振動を検出し、その検出信号中に生体信号成分が含まれていないか検出することにより、車両内に生体が存在するか検出する生体検出システムであり、検出手段は車両とは独立して設けられるので不特定の車両に対して適用することができる。
【0012】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段の生体検出システムであって、前記振動検出手段は、車両の車輪を載置可能に形成した検出ステージと、該検出ステージの振動を検出する振動検出センサとから形成されることを特徴としており、車両を移動して前記検出ステージに車輪を載置する状態で停車させるだけで、車両の振動を検出し、その検出信号から車両内に人間が残っているか容易に検出することができる。
【0013】
本発明の第3の解決手段は、第1の解決手段の生体検出システムであって、前記振動検出手段は、車両の車体に接触させる接触パッドと、該接触パッドの振動を検出する振動検出センサとから形成されることを特徴としており、振動検出センサを設けた接触パッドを車両に接触させることのみで車両に振動を検出し、その検出信号から車両内に人間が残っているか容易に検出することができる。
【0014】
本発明の第4の解決手段は、第2及び第3の解決手段の生体検出システムであって、前記振動検出センサは圧電セラミックスでもって形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の解決手段は、第1の解決手段の生体検出システムであって、前記生体信号検出手段は、心拍信号を検出することにより生体の有無を検出することを特徴としており、心拍信号あるいは心拍信号特有のパラーメータを検出することにより車両内生体が居るか否かを検出することができる。
【0016】
本発明の第6の解決手段は、第1の解決手段の生体検出システムであって、前記生体信号検出手段は、呼吸信号を検出することにより生体の有無を検出することを特徴としており、呼吸信号あるいは呼吸信号特有のパラーメータを検出することにより車両内生体が居るか否かを検出することができる。
【0017】
本発明の第7の解決手段は、第1の解決手段の生体検出システムであって、前記生体信号検出手段は、心拍信号や呼吸信号などの生体信号の基本波及び高調波を検出することにより生体有無を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
従来の生体検出システムは車両内に生体検出センサを設ける構成であるので、特定の車両にしか適用できず、不特定の車両には適用することができないという問題があった。
【0019】
本発明の生体検出システムは、不特定の車両に対してその車内に人が居るか否かを検出することを実現するものであり、簡単な構成の検出ステージあるいは検出パッドにより車両の振動を検出し、その検出信号から生体信号に特有の信号を検出することにより車両内に生体の存在を判定するものである。
【0020】
本発明の生体検出システムは、車両とは独立して検出ステージあるいは検出パッドを設けるので、いずれの車両でも生体検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。
【0022】
図1は本発明の第1の実施形態の生体検出システムの振動検出ステージと振動検出の流れを示す説明図であり、図2は検出ステージの詳細を示す。
【0023】
検出ステージ1は通路などの車両が停車し得る場所に設けられる。図1では道路に埋め込まれている状態で表示してあるが、車両が車輪を載せるのに支障がなければ道路上に載置する構成でもよい。機械式駐車場の場合には車両を載置するケージの床に設けられる。検出ステージ1には後述するように振動検出センサである圧電セラミックスセンサ6が設けられており、その検出信号は信号伝送手段8により監視装置9に送られる。
【0024】
本実施形態では検出ステージ1に設けた無線送信手段8aと監視装置9に設けた無線受信手段8bとにより信号伝送手段8を形成する。一般的には検出ステージ1と監視装置9との間が離れていることが普通であることを考慮し、本実施形態では無線送受信手段を用いたがこれに限るものではなく、条件が許せば有線のケーブルを用いても差し支えない。
【0025】
図2は検出ステージ1の詳細を断面図で示すものである。支持板2が支持スペーサ3によって支持されており、車両の車輪が支持板2上に乗った際に車両の重量を支持できるように構成されている。さらに支持板2には、センサ取付けスペーサ4を介して弾性を有するセンサ取付板5が固定されており、このセンサ取付板5に圧電セラミックスセンサ6が貼り付けられる。さらに圧電セラミックスセンサ6の下側にブロック7が圧電セラミックスセンサ6に接するように設けられる。支持板2、支持スペーサ3、センサ取付けスペーサ4、センサ取付板5、およびブロック7は、鋼製であるが、木材などを使用しても良い。
【0026】
圧電セラミックスセンサ6の出力は無線送信手段8aに接続されており、監視装置9に設けられている無線受信手段8bに送信される。
【0027】
監視装置9は、圧電セラミックスセンサ6の出力を増幅し整形する信号増幅整形手段10と、その信号に対してフーリエ変換処理を行うFFT演算手段11と、フーリエ変換された信号から生体信号を検出する生体信号検出手段12と、信号に生体信号が含まれることを検出した際に警報を発する警報装置13とからなる。
【0028】
次に本実施形態の生体検出システムの動作について説明する。生体検出を行う車両の車輪を検出ステージ1上に載せて停車させた後にエンジンを停止し、運転者も含めてすべての乗員を降車させる。
【0029】
車両を停車させている場合であっても様々な振動が車両に生じており、車両内に人間が残っている場合には人体の発する振動、例えば体動による振動、呼吸による振動あるいは心拍による振動が車両から検出される振動に含まれる。即ち検出ステージ1に載せられた車両の車輪を介して車両の振動がセンサ取付板5を介して圧電セラミックスセンサ6に伝わるので、車両中に人間が残っている場合には、圧電セラミックスセンサ6で検出される車両の振動信号には生体に特有の信号が含まれており、この信号を解析することにより生体信号が含まれていることを検出することが可能になる。
【0030】
圧電セラミックスセンサ6で検出された車両の振動信号は、伝送手段8を介して信号増幅整形手段10に送られ、信号を後処理しやすいように増幅するとともに、ノイズをフィルター等の手段により信号を整形する。ここでは、生体信号として心拍信号を検出するものとし、10Hz以下の信号を通すフィルターを用いる。
【0031】
図3に圧電セラミックスセンサ6の出力信号であって信号増幅整形手段10を通した出力信号と、さらにその信号をFFT演算手段11によりフーリエ変換した結果の出力を並べて示す。図3(a)はFFT演算手段11によりフーリエ演算処理を行う前の振動信号と、同時に測定したパルスオキシメーターにより脈波の測定値の時間経過を示すグラフである。図3(b)は図3(a)の振動信号に対してFFT演算手段11によりフーリエ演算処理を行った結果を示している。また図3(c)は図3(a)のパルスオキシメーターによる脈波の測定値に対してFFT演算手段11によりフーリエ演算処理を行った結果を示している。
【0032】
図3(c)から明らかなように人間の脈波には、基本波とその高調波が明瞭に現れることが分かる。そこで、検出ステージ1から得られた車両の振動信号をFFT演算手段11によりフーリエ演算処理を行った出力である図3(b)を見ると、図3(c)の高調波とほぼ同じ位置に高調波が見られる。即ち人間が車両にいる場合には心拍信号の高調波に相当する波形が顕著に見られることが分かる。
【0033】
生体信号検出手段12においては、上記の原理を用いて心拍信号の基本波およびその高調波を検出することにより振動信号中に心拍信号すなわち生体信号が含まれるか否かを判定する。即ち、心拍信号の基本波およびその高調波が顕著である場合には、車両中に人間がいると判定することができる。
【0034】
上述の説明では車両の振動信号から生体信号を検出する方法として、心拍信号を検出する例で説明したがこれに限るものではなく、生体信号として呼吸信号を検出することにより生体信号を検出することも可能である。その場合には、呼吸信号の基本周波数0.3Hz近傍の基本波とその高調波を検出することにより生体検出が可能となる。
【0035】
生体信号検出手段12により生体信号があると判定された場合には、警報装置13が車両内に人間が残っていることを警告する。
【0036】
図4は本発明の第2の実施形態の生体検出システムの振動検出部と検出の流れを示す説明図である。車両の振動検出は車両の一部に接触させて車両の振動を検出する振動検出パッド21で行い、無線伝送手段8により監視装置9に伝送される。本実施例では無線伝送手段を用いているが、支障がなければ伝送手段はケーブルを用いてもよい。
【0037】
振動検出パッド21は、車両の車体に接触させて振動を検出するように構成されており、その内部に振動を検出する圧電セラミックスセンサが内蔵されている。圧電セラミックスセンサの出力は無線送信手段8aにより監視装置9に設けられている無線受信手段8bに伝送される。
【0038】
監視装置9は、圧電セラミックスセンサの出力を増幅し整形する信号増幅整形手段10と、その信号に対してフーリエ変換処理を行うFFT演算手段11と、フーリエ変換された信号から生体信号を検出する生体信号検出手段12と、信号に生体信号が含まれることを検出した際に警報を発する警報装置13とからなる。監視装置9の構成は第1の実施形態と同じであり、システムの生体信号の検出方法も第1の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0039】
上述の説明では心拍信号と呼吸信号をそれぞれ単独に生体信号を検出するための指標として用いたが、これに限るものではなく、これらの2つの信号を同時に検出するように構成してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では生体信号の有無を判定する手段として心拍信号あるいは呼吸信号の基本波と高調波を検出することにより生体信号の有無を検出する方法を用いたが、これに限るものではなく、他の判定方法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
従来の車両内の生体検出方法では、車両内に予めセンサを設けておく必要があり、センサが設けられている特定の車両にのみ適用が可能であり、不特定の車両に適用できないという問題があった。
【0042】
本発明の生体検出システムでは停車した車両の車体あるいは車輪に接触させて車両の振動を検出する振動検出手段を備えており、いかなる車両であっても車両の振動を検出し、前記振動検出手段の検出信号中に生体信号の有無を検出することができる。
【0043】
本発明を機械式駐車場に用いれば、車両から出てケージに足を乗せている場合であっても生体検出することが可能であり、より一層の安全性が得られることになる。また、送迎バスなどに乗客の残っている場合、特に幼児などの場合には、点呼や目視確認にミスがあっても、本発明の生体検出システムにより容易に検出することが可能であり、重大な危険を回避できる。さらに、幼児などの車両のトランク閉じ込め事故に対しても本発明の生体検出システムを適用することにより、重大な事態にならずに済ませることが可能である。
【0044】
一方、研究施設や工場などの敷地への不審者の入場あるいは退場は、従来の目視や人数確認などの方法では、トラックの荷台などに潜む場合には発見することが困難であったが、本発明の生体監視システムによれば容易に発見することが可能となる。このことから本発明の生体監視システムは国境の検問などにも使用できると考えられる。
【0045】
以上説明したように、本発明の生体監視システムは生体検出能力に優れるとともに、不特定の車両に対して適用することが可能であるために、産業への寄与が大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の検出ステージの詳細を示す断面図である。
【図3】検出結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 検出ステージ
2 支持板
3 支持スペーサ
4 センサ取付けスペーサ
5 センサ取付板
6 圧電セラミックスセンサ
7 ブロック
8 無線伝送手段
8a 無線送信手段
8b 無線受信手段
9 監視装置
10 信号増幅整形手段
11 FFT演算手段
12 生体信号検出手段
13 警報装置
21 振動検出パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停車した車両の車体あるいは車輪に接触させて車両の振動を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段で得られた検出信号を伝送する伝送手段と、前記振動検出手段の検出信号中に生体信号の有無を検出する生体信号検出手段とを備えることを特徴とする生体検出システム。
【請求項2】
前記振動検出手段は、車両の車輪を載置可能に形成した検出ステージと、該検出ステージの振動を検出する振動検出センサとから形成されることを特徴とする請求項1に記載の生体検出システム。
【請求項3】
前記振動検出手段は、車両の車体に接触させる接触パッドと、該接触パッドの振動を検出する振動検出センサとから形成されることを特徴とする請求項1に記載の生体検出システム。
【請求項4】
前記振動検出センサは圧電セラミックスでもって形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の生体検出システム。
【請求項5】
前記生体信号検出手段は、心拍信号を検出することにより生体の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の生体検出システム。
【請求項6】
前記生体信号検出手段は、呼吸信号を検出することにより生体の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の生体検出システム。
【請求項7】
前記生体信号検出手段は、心拍信号や呼吸信号などの生体信号の基本波及び高調波を検出することにより生体の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の生体検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−198344(P2009−198344A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40861(P2008−40861)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000233697)株式会社日鉄エレックス (51)
【出願人】(508057070)株式会社センシング・コントロール・ラボ (1)
【Fターム(参考)】