生体模倣足場材
本発明は、ナノ繊維ポリマーの繊維が整列され、分子が直接にまたはリンカーを介してナノ繊維ポリマーに共有結合的に結合された、ナノ繊維ポリマーを含む組成物を提供するものである。この分子は、細胞外マトリクス成分、成長因子およびこれらの組み合わせから選択される一つに、共有結合的にまたは非共有結合的に結合できる。本発明はまた、組成物の製造方法ならびに、ヒトなどの被検体に新たな組織を付加する上でのこの組成物の使用方法を提供するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体をあらゆる目的で本明細書に援用する、2006年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/861,780号、2006年6月9日に出願された同第60/804,350号および2006年1月27日に出願された同第60/763,111号の優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
当該技術分野においては、被検体の生物学的機能に取って代わることができるまたは生物学的機能を改善できる組成物への需要がある。また、当該技術分野においては、被検体での新たな組織の成長を促進することができる、または損傷を受けた組織に取って代わることができる組成物への需要がある。これらの需要および他の需要は、本明細書に記載の本発明によって対処される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、第1の繊維ポリマー足場材を含む組成物であって、第1の繊維ポリマー足場材の繊維が整列されている、組成物を提供するものである。例示的実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材が、約0.01cmから約20cm、約0.05cmから約5cm、約0.5cmから約5cm、約1cmから約5cm、約2cmから約5cm、約1cmから約3cm、約2cmから約10cmおよび約5cmから約15cmから選択される一つの長さを有する。例示的な別の実施形態では、組成物は、シート、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する。例示的な別の実施形態では、組成物は、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する。例示的な別の実施形態では、組成物は棒状である。例示的な別の実施形態では、前記第1の繊維ポリマー足場材が、長手方向および円周方向から選択される一つの方向に本質的に整列されている。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材には継ぎ目がある。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材がシームレスである。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材はモノリシックに形成されている。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つのポリマーまたはサブユニットを含む。例示的な別の実施形態では、脂肪族ポリエステルが、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本がポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む。
【0004】
例示的な別の実施形態では、ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリ酸化プロピレンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、細胞を含む。例示的な別の実施形態では、細胞が、第1の繊維ポリマー足場材の中に包埋されているか、その表面上にある。例示的な別の実施形態では、細胞は、幹細胞および前駆細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体血管細胞、血管前駆細胞、血管幹細胞、成体筋肉細胞、筋肉前駆細胞、筋幹細胞、成体神経細胞、神経前駆細胞、神経幹細胞、シュワン細胞、線維芽細胞、成体皮膚細胞、皮膚前駆細胞および皮膚幹細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、直接にまたはリンカーを介して、前記第1の繊維ポリマー足場材に共有結合された分子を含み、前記分子が、細胞外マトリクス成分、成長因子、分化因子およびこれらの組み合わせから選択される一つに、共有結合的または非共有結合的に結合できるものである。例示的な別の実施形態では、分子はリンカーを介して共有結合的に結合され、前記リンカーは、ジアミノポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)およびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、分子は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞外マトリクス成分は、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、ポリリシンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、成長因子は、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、血管内皮成長因子、上皮成長因子、ケラチノサイト成長因子およびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、分化因子は、ストロマ細胞由来因子、ソニックヘッジホッグ、骨形成タンパク質、ノッチリガンド、Wntおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、前記第1の繊維ポリマー足場材は、導管、充填導管または棒の形状であり、前記ポリマーがシームレスである。
【0005】
例示的な別の実施形態では、ポリマーを含むポリマー溶液を回転式のマンドレルに供給することで組成物が生成される。例示的な別の実施形態では、前記ポリマー足場材は、シート、導管または充填導管の形状であり、少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを含む電界紡糸工程で生成される。例示的な別の実施形態では、前記ポリマー足場材は棒形であり、空隙のある回転式のマンドレルを含む電界紡糸工程で生成される。
【0006】
別の例示的な実施形態では、本発明は、(a)本明細書に記載の組成物と、(b)薬学的に許容される賦形剤と、を含む薬品組成物を提供するものである。例示的な別の実施形態では、組成物は棒または導管であり、第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む。例示的な別の実施形態では、組成物の長さが約0.5cmから50cmである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、第1の繊維ポリマー足場材を囲むスリーブを含む。例示的な別の実施形態では、スリーブは、第2の繊維ポリマー足場材を含み、前記第2の繊維ポリマー足場材は、整列されているかランダム配向を有する。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、第1の繊維ポリマー足場材の第1の端を囲む第1のスリーブと、第1の繊維ポリマー足場材の第2の端を囲む第2のスリーブとを含む。
【0007】
別の態様では、本発明は、被検体の損傷を治療する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、前記損傷を治療できるだけの量および条件下で、前記被検体の該当部位に適用することを含む方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、前記損傷が、切断された神経、損傷を受けた神経、切断された筋肉、損傷を受けた筋肉、切断された血管、損傷を受けた血管、皮膚創傷および傷ついた皮膚から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、損傷が切断された神経を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する、導管、充填導管または棒の形であり、前記切断された神経が、第1の神経断端と第2の神経断端とを有し、前記適用することが、(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の神経断端に取り付け、(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の神経断端に取り付けることを含む。
【0008】
例示的な別の実施形態では、前記損傷が損傷を受けた神経を含み、前記適用することが、(ii)本明細書に記載の組成物を、前記損傷を受けた神経の周りに巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である。例示的な別の実施形態では、損傷が損傷を受けた神経を伴い、前記適用することが、(ii)組成物を、前記損傷を受けた神経に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である。例示的な別の実施形態では、本発明は、被検体での神経の成長を亢進する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、神経の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する神経部位に適用することを含む方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、損傷が切れた皮膚または傷ついた皮膚を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、前記適用することが、(i)前記組成物を前記切れた皮膚に適用することで、前記損傷を治療することを含む。別の態様では、本発明は、被検体での皮膚の成長を亢進する方法であって、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、(i)本明細書に記載の組成物を、皮膚の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する皮膚部位に適用することを含む方法を提供するものである。
【0009】
例示的な別の実施形態では、損傷が切断された血管を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する導管または充填導管の形状であり、前記切断された血管が第1の脈管断端および第2の脈管断端を含み、前記適用することが、(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の脈管断端に取り付け、(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の脈管断端に取り付けることを含む。別の態様では、本発明は、被検体での血管成長を亢進する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、血管成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する血管部位に適用することを含む方法を提供するものである。
【0010】
例示的な別の実施形態では、損傷が切断された筋肉を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材は、第1の端と第2の端とを有する導管、充填導管または棒の形状であり、前記切断された筋肉は、第1の筋肉断端および第2の筋肉断端を含み、前記適用することが、(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の筋肉断端に取り付け、(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の筋肉断端に取り付けることを含む。例示的な別の実施形態では、損傷が損傷を受けた筋肉を含み、前記適用することが、(ii)本明細書に記載の組成物を前記損傷を受けた筋肉に巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である。例示的な別の実施形態では、損傷が損傷を受けた筋肉を含み、前記適用することが、(ii)組成物を前記損傷を受けた筋肉に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である。別の態様では、本発明は、被検体での筋肉の成長を亢進する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、筋肉の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する筋肉部位に適用することを含む。別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物の製造方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、前記方法は、(i)繊維を電界紡糸工程にかけることで、前記組成物を製造することを含む。例示的な別の実施形態では、前記電界紡糸工程が空隙または少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを含む。
【0011】
第2の態様では、本発明は、第1の導電性領域と、第2の導電性領域と、第1の導電性領域と第2の導電性領域との間に延在する非導電性領域と、を含み、非導電性領域が、第1の繊維ポリマー足場材を形成するための繊維ポリマーを受け入れられる寸法および形状である、電界紡糸装置用マンドレルを提供するものである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域が、マンドレルの周囲に配置されたスリーブである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、テープ、絶縁用テープ、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、2つの電導性マンドレル領域を相互接続する。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、2つの電導性マンドレル領域間に延在する離散的な部分である。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、前記導電性領域よりも大きい直径と小さい直径とからから選択される一つである直径を有する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、第1の導電性領域と第2の導電性領域とを含み、第1の導電性領域と第2の導電性領域との間に位置する空隙が第1の導電性領域と第2の導電性領域との間の非電導性領域を形成する、電界紡糸装置用マンドレルを提供するものである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、第1の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第1の非導電性スリーブと、第2の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第2の非導電性スリーブと、を含む。例示的な別の実施形態では、非電導性領域のあるマンドレルを、電界紡糸系と組み合わせる。例示的な別の実施形態では、空隙のあるマンドレルを電界紡糸系と組み合わせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好ましい実施形態の詳細な説明
I.定義および略語
本明細書にて使用する略語は、ほとんどの場合、化学分野および生物学分野での従来の意味を持つ。
【0014】
本明細書で使用する場合、文脈から特に明確な場合を除いて、単数形「a」、「and」および「the」は複数形も含むことに注意されたい。
【0015】
本明細書で使用する場合、特に明記されないかぎり、ある成分を「本質的に含まない」組成物とは、その組成物がその成分を、約10重量%未満、約5重量%未満または約3重量%未満など、約20重量%未満の量で含むことを意味する。
【0016】
「ペプチド」とは、モノマーがアミノ酸であって、これらのモノマーがアミド結合を介して一緒に結合されるポリマーのことであり、ポリペプチドと呼ばれることもある。また、β−アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンなどの非天然のアミノ酸も含まれる。遺伝子にコードされないアミノ酸もまた、本発明に含まれることがある。さらに、反応基、グリコシル化部位、ポリマー、治療部分などを含むように改変されたアミノ酸もまた、本発明で使用できることがある。本発明において使用されるアミノ酸はいずれも、D−異性体またはL−異性体のいずれかであり得る。さらに、他のペプチド模倣物もまた、本発明において有用である。本明細書で使用する場合、「ペプチド」は、グリコシル化ペプチドと非グリコシル化ペプチドの両方を示す。また、ペプチドを発現する系によって不完全にグリコシル化されたペプチド(petide)も含まれる。一般的な総説としては、Spatola, A. F., in CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS, PEPTIDES AND PROTEINS, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983)を参照のこと。
【0017】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸ならびに、後に修飾されたアミノ酸(ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンなど)である。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造すなわち、水素に結合するα炭素、カルボキシル基、アミノ基、R基を有する化合物(ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなど)をいう。このような類似体は、修飾されたR基を有する(ノルロイシンなど)か、修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物をいう。
【0018】
本明細書で使用する場合、「核酸」とは、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖またはより高度に凝集されたハイブリダイゼーションモチーフならびに、これらの任意の化学的修飾物を意味する。修飾とは、さらなる電荷、極性、水素結合、静電相互作用、核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に対する結合点と官能性を組み込む化学基を提供する修飾が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような修飾としては、ペプチド核酸(PNA)、ホスホジエステル基改変(ホスホロチオエート、メチルホスホネートなど)、2’位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモウラシルまたは5−ヨードウラシルの置換;骨格修飾、メチル化、さらにはイソ塩基、イソシチジンおよびイソグアニジンなどといった非通常の塩基対形成の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。核酸はまた、ニトロインドールなどの非天然の塩基を含み得る。修飾はまた、フルオロフォア(量子ドットなど)または別の成分を用いるキャップのような、3’ 修飾および5’ 修飾を含み得る。
【0019】
本明細書で使用する場合の「抗体」とは一般に、抗原を特異的に結合しかつ認識する免疫グロブリンまたはそのフラグメントまたはその免疫複合体由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドをいう。認識される免疫グロブリンは、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμの定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、これらは、順にそれぞれ免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「コポリマー」という用語は、2タイプ以上のサブユニットを含有するポリマーのことを示す。この用語には、2、3、4、5または6タイプのサブユニットを含むポリマーも包含される。
【0021】
「単離された」という表現は、ある材料の生成に用いられる成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を示す。組成物の純度範囲の下限は、約60%、約70%または約80%であり、純度範囲の上限は、約70%、約80%、約90%または約90%を超える値である。
【0022】
「ヒドロゲル」は、自らの重量の少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10倍の液体を吸収できる、水不溶性および水膨潤性の架橋ポリマーを示す。「ヒドロゲル」および「温度感受性ポリマー」は、本明細書では同義に用いられる。
【0023】
本明細書で使用する場合の「結合される」という表現は、これに限定されるものではないが、共有結合、イオン結合、化学吸着、物理吸着およびこれらの組み合わせを含む相互作用を包含する。
【0024】
「生体分子」または「生物有機分子」という用語は、一般に生きた生物体によって作られる有機分子を示す。これには、たとえば、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、ステロイド、核酸、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドフラグメント、炭水化物、脂質、これらの組み合わせ(糖タンパク質、リボヌクレオタンパク質、リポタンパク質など)を含む分子がある。
【0025】
「小分子」とは、分子量が1kD未満、好ましくは600D未満の種を示す。
【0026】
本明細書で使用する場合の「本発明の組成物」は、本明細書に記載の組成物、これらの組成物の薬学的に許容される塩およびプロドラッグを示す。
【0027】
置換基の群を左から右に書く従来の化学式で示す場合、そこには、右から左に構造を書いて得られる化学的に同一の置換基も等しく包含される。たとえば、−CH2O−は−OCH2−も示すことを意図している。
【0028】
「有効」量の薬剤、処方薬または浸透剤(permeant)とは、所望の局所作用または全身作用を得られるだけの十分な量の活性剤を意味する。「局所的に有効な」「化粧的に有効な」「薬学的に有効な」または「治療的に有効な」量とは、所望の治療結果を発揮するのに必要な薬剤の量を示す。
【0029】
「薬学的に許容される塩」という表現は、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、比較的無毒の酸または塩基を用いて調製される本発明の化合物の塩を含むことを意図したものである。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、純粋な、または好適な不活性溶媒中の十分な量の望ましい塩基と接触させることで、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノまたはマグネシウム塩あるいは同様の塩があげられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、純粋な、または好適な不活性溶媒中の十分な量の望ましい酸と接触させることで、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸または亜リン酸などの無機酸に由来するものならびに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒の有機酸に由来する塩があげられる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩ならびに、グルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)などのような有機酸の塩(たとえば、Berge et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)を参照のこと)も含まれる。本発明の特定の具体的な化合物は、この化合物を塩基付加塩または酸付加塩に変換できるようにする塩基性官能基と酸性官能基の両方を含有している。
【0030】
これらの化合物の中性の形態が、好ましくは、塩と、塩基または酸とを接触させ、親化合物を従来の方法で単離することによって再生される。化合物の親の形態は、極性溶媒への溶解性などのいくつかの物性でさまざまな塩の形態とは異なる。
【0031】
塩の形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供するものである。本明細書に記載の化合物または錯体のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を起こして本発明の化合物となる。加えて、プロドラッグは、化学的または生化学的な方法で、ex vivoの環境にて本発明の化合物に変換可能なものである。
【0032】
本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する原子のうちの1種または複数種で不自然な比率の原子アイソトープを含有することもある。たとえば、この化合物を、たとえばトリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性アイソトープで放射性標識しても構わない。本発明の化合物のさまざまなアイソトープは、放射性であるか否かを問わず、本発明の主旨に包含されることを意図したものである。
【0033】
「薬学的に許容されるキャリア」または「薬学的に許容されるベヒクル」という表現は、本明細書に定義する有効量の活性剤を適切に送達し、活性剤の生物活性の有効性に干渉せず、宿主または患者にとって十分に無毒な処方薬またはキャリア媒質を示す。代表的なキャリアとしては、水、油(植物油と鉱物油の両方)、クリームベース、ローションベース、軟膏ベースなどがあげられる。ベースとしては、懸濁化剤、増粘剤、浸透エンハンサーなどがある。その配合については化粧用および局所用の製薬分野の当業者間で周知である。キャリアに関する別の情報については、本明細書に援用する、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2005)に記載がある。
【0034】
「薬学的に許容される局所用キャリア」と、これに相当する表現は、局所塗布に適した、本明細書で上述したような薬学的に許容されるキャリアを示す。活性剤を懸濁または溶解させることができ、皮膚、爪、毛、鉤爪または蹄に適用したときに無毒で非炎症性であるという特性を持つ不活性の液体またはクリームベヒクルが、薬学的に許容可能な局所用キャリアの一例である。この表現は特に、局所化粧品で使用する認可済みのキャリア材料を包含することを意図したものである。
【0035】
「薬学的に許容される添加剤」という表現は、薬剤処方分野で周知または用いられ、活性剤の生物活性の有効性に過度に干渉せず、宿主または患者にとって十分に無毒な保存料、抗酸化剤、香料、乳化剤、染料および賦形剤を示す。局所用処方薬の添加剤は、当該技術分野において周知であって、なおかつ、薬学的に許容されて上皮細胞またはその機能に悪影響を及ぼさないかぎりは、局所用組成物に添加できるものである。さらに、これらの添加剤は、組成物の安定性を損なうものであるべきではない。たとえば、不活性フィラー、抗刺激剤、粘着付与剤、賦形剤、香料、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、保存料、緩衝剤、他の浸透(permeation)エンハンサーならびに、当該技術分野において周知の局所用または経皮送達用処方薬の他の従来の成分など。
【0036】
本明細書で使用する場合、「投与(すること)」は、経口投与、坐剤、局所接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内または皮下投与としての投与、あるいは、徐放性デバイス(被検体へのミニ浸透圧ポンプなど)の移植を意味する。
【0037】
「賦形剤」という用語は、所望の用途に有効な薬剤組成物を配合するのに用いられるキャリア、希釈剤および/またはベヒクルを意味することが従来から知られている。
【0038】
本明細書で使用する場合の「自家細胞」という用語は、被検体自身の細胞であるか、またはそのクローン細胞を示す。
【0039】
本明細書で使用する場合の「同種細胞」という用語は、第1の被検体自身の細胞またはそのクローンではないが、第1の被検体と同じ種である第2の被検体由来の細胞またはそのクローンである細胞を示す。
【0040】
本明細書で使用する場合の「異種細胞」という用語は、第1の被検体自身の細胞またはそのクローン由来ではないが、第1の被検体と同じ種ではない第2の被検体由来の細胞またはそのクローンである細胞を示す。
【0041】
本明細書で使用する場合の「幹細胞」とは、特定の特殊化した機能(すなわち、赤血球、マクロファージなどの高分化型細胞)を有するものをはじめとして、他の細胞タイプに分化できる細胞を示す。幹細胞は、その由来(成体/体性幹細胞、胚幹細胞)またはその増殖能(全能性、多能性、複能性および単能性)に応じて定義可能なものである。
【0042】
本明細書で使用する場合の「単能性」という用語は、1種類の細胞型だけしか作りだせないが、非幹細胞とは違って自己更新の特性を持つ細胞を示す。
【0043】
本明細書で使用する場合の「複能性」または「前駆細胞(progenitor)」という用語は、複数種類の高分化型細胞型のどれでも作り出せる細胞を示す。これらの異なる細胞型は通常、密接に関連している(赤血球細胞、白血球細胞および血小板といった血液細胞など)。たとえば、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞としても知られる)は複能性細胞であり、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、神経細胞およびβ−膵島細胞を形成できる。別の例が骨格筋芽細胞であり、この細胞は、個々の細胞が融合して多核筋管になる分化過程で骨格筋細胞を優先的に作り出す。
【0044】
本明細書で使用する場合の「多能性」という用語は、ある生物体の持つ細胞型のうち、全部ではないがいくつかまたは多くを作り出す細胞を示す。多能性幹細胞は、成熟した生物体の体のどのような細胞型にも分化できるが、核の初期化なしでは、脱分化して元の細胞に戻ることはできない。後に明らかになるように、「複能性」/前駆細胞(神経幹細胞など)は、多能性幹細胞よりも分化能が低い。多能性幹細胞よりも原始的な(すなわち、特定の分化の宿命に関連していない)別の細胞クラスに、いわゆる「全能性」幹細胞がある。
【0045】
本明細書で使用する場合の「全能性」という用語は、受精卵母細胞ならびに、受精卵細胞の最初の数回の細胞分裂で作られる細胞(発生の2細胞期胚および4細胞期胚など)を示す。全能性細胞は、特定の種についてどのようなタイプの細胞にも分化できる。たとえば、ひとつの全能性幹細胞から、完全な動物ならびに、特定の種(ヒトなど)に見られる無数の細胞型のどれにでもなることができる。本明細書では、多能性細胞および全能性細胞ならびに、完全な臓器または組織に分化する可能性のある細胞を、「始原」幹細胞と呼ぶ。
【0046】
本明細書で使用する場合の「脱分化」という用語は、細胞がそれよりも特殊化していない状態に戻ることを示す。脱分化後、このような細胞は核の初期化前に可能であったよりも多くまたはこれとは異なる細胞型に分化する能力を持つことになる。逆分化(すなわち、脱分化)の過程は分化よりも複雑になることが多く、細胞がさらに原始的になるのに「再プログラミング」が必要になる。脱分化の一例に、早期(early)初代筋芽細胞などの筋原前駆細胞が筋幹細胞またはサテライト細胞になる変換がある。
【0047】
「正常」幹細胞は、異常な表現型を示さない、あるいは異常な遺伝子型を持たないがゆえに、このような幹細胞由来の全範囲の細胞を作ることのできる幹細胞(またはその子孫)を示す。たとえば、全能性幹細胞との関連で、この細胞は、たとえば、健康で正常な動物を完全に作り出すことができる。これとは対称的に、「異常な」幹細胞とは、たとえば、1つまたは複数の変異または遺伝的改変体または病原体がゆえに正常ではない幹細胞のことである。よって、異常な幹細胞は正常な幹細胞とは異なる。
【0048】
「成長環境」は、幹細胞がin vitroで増殖する環境である。この環境の特徴は、細胞を培養した培地と、もしある場合は支持構造体(固体表面上の基質など)が含まれることである。
【0049】
「成長因子」とは、細胞の成長を促進するのに効果的であり、培養液にサプリメントとして添加されるのでないかぎり、基礎培地の成分ではない物質のことである。言い換えれば、成長因子は、培養対象となる細胞から分泌されない分子(フィーダー細胞がある場合はこれを含む)であるか、培養液中の細胞から分泌されるのであれば、成長因子を外来的に添加した場合に得られる結果を達成できるだけの十分な量では分泌されない分子である。成長因子としては、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、インスリン様成長因子−II(IGF−II)、血小板由来成長因子−AB(PDGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、アクチビン−A、骨形態形成タンパク質(BMP)、インスリン、サイトカイン、炎症性細胞遊走因子、モルフォゲン、中和抗体、他のタンパク質および小分子があげられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本明細書で使用する場合の「分化因子」という用語は、特定の特殊化した細胞型に関連づける(commit)ための幹細胞または前駆細胞を誘導する分子を示す。
【0051】
「細胞外マトリクス」または「マトリクス」とは、フィーダー細胞によって合成される細胞外マトリクスで得られるものと実質的に同じ、細胞成長を支持するための状態を提供する1種または複数種の物質のことである。マトリクスは、基質表面で得られるものであってもよい。あるいは、マトリクスを含む成分を溶液中で提供してもよい。細胞外マトリクスの成分としては、ラミニン、コラーゲンおよびフィブロネクチンを含み得る。
【0052】
本明細書で使用する場合の「再生力」という用語は、幹細胞の分裂前駆細胞および分化組織特異的細胞への変換を示す。
【0053】
本明細書で使用する場合の「自己更新」という用語は、系列特異性のない増殖を示す。
【0054】
本明細書で使用する場合の「整列された」という表現は、繊維の少なくとも50%がある方向(general direction)を向いており、その配向がアライメントの平均軸をなす、繊維ポリマー足場材の繊維の配向を示す。特定の繊維の配向がアライメントの平均軸から外れる可能性もあり、この偏差については、アライメント軸と繊維の配向とがなす角度で表すことが可能である。偏差角0°は完全なアライメントを示し、90°(または−90°)はアライメントの平均軸に対して繊維のアライメントが直交していることを示す。例示的実施形態では、アライメントの平均軸からの繊維の標準偏差が、0°から1°、0°から3°、0°から5°、0°から10°、0°から15°、0°から20°または0°から30°から選択される角度であり得る。
【0055】
本明細書で使用する場合の「棒」という用語は、本質的に充填された円柱形をした繊維ポリマー足場材を示す。棒を構成する個々の繊維間に空間や溝が存在してもよい。
【0056】
本明細書で使用する場合の「導管」という用語は、形状が本質的に円筒形の物体を示す。導管は、内壁および外壁と、内径と、外径と、導管の内径ならびにその長さによって画定される内部空間とを有する。導管を構成する個々の繊維間に空間や溝が存在してもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合の「充填導管」という用語は、内部空間の一部がフィラー材料からなる導管を示す。このフィラー材料が繊維ポリマー足場材であっても構わない。充填導管を構成する個々の繊維間に空間や溝が存在してもよい。
【0058】
本明細書で使用する場合の「継ぎ目」または「継ぎ合わされた」という用語は、2つのセクションを、かみ合わせ、接合または重ね合わせることによって形成される結合部分を示す。これらの2つのセクションは、縫合糸などの機械的手段によって、あるいは、アニーリングまたは接着剤などの化学的手段によって一緒に保持可能なものである。たとえば、シートのひとつの領域をもうひとつの領域に接合することで、継ぎ目が形成される。
【0059】
本明細書で使用する場合の「シームレス」という用語は、継ぎ目がないことを示す。
【0060】
「細胞」という用語は、単数形(「細胞(cell)」)または複数形(「細胞(cells)」)の状態を示し得る。
【0061】
本明細書で使用する場合の「細胞外マトリクス成分」という用語は、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチンおよびエラスチンから選択される一つである。
【0062】
本明細書で使用する場合の「ステント」という用語は、特に金属および有機ポリマーで製造できるチューブである。ステントを有機ポリマーで製造する場合、このポリマーは本明細書に記載されているようなナノ繊維ポリマー足場材またはマイクロ繊維ポリマー足場材ではない。言葉を変えると、ステントを繊維ポリマー足場材で製造する場合、繊維の平均直径は100ミクロンから約50センチメートルになる。場合によっては、ステント全体が第1の直径から第2の直径に膨脹可能であり、第2の直径は第1の直径よりも大きい。
【0063】
II.組成物
これらの組成物は、ポリマー足場材を含み得る。これらのポリマー足場材は、マイクロ繊維ポリマー足場材またはナノ繊維ポリマー足場材などの繊維ポリマー足場材であってもよい。これらのポリマー足場材はまた、微小パターンが形成されたポリマー足場材であってもよい。本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、任意に、整列されていないものであってもよいし、長手方向または円周方向などに整列されたものであってもよい。本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、任意に、シート、十字シート、導管、棒または充填導管などの形状に形成可能なものである。本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、継ぎ目のあるものであってもよいし、シームレスであってもよい。本発明の組成物またはポリマーはまた、任意に、細胞、生体分子または薬学的に許容される賦形剤などの材料を含むものであってもよい。これらのアライメント、形状および別の成分は、生物学的機能を改善または再生または代用する際の一助となり得る。本発明の組成物は、ステントを含まない。生物学的機能を改善、再生または代用する目的で、この組成物を組織工学において使用することができる。
【0064】
II.a)繊維ポリマー足場材
第1の態様では、本発明は、繊維ポリマー足場材を含む組成物を提供するものである。繊維ポリマー足場材は、さまざまな直径を有しうる繊維を含む。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は、約0.1ナノメートルから約50000ナノメートルである。例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約25ナノメートルから約25,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約50ナノメートルから約20,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約100ナノメートルから約5,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約1,000ナノメートルから約20,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約10ナノメートルから約1,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約2,000ナノメートルから約10,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約0.5ナノメートルから約100ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約0.5ナノメートルから約50ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約1ナノメートルから約35ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約2ナノメートルから約25ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約90ナノメートルから約1,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約500ナノメートルから約1,000ナノメートルである。
【0065】
例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材は、ナノ繊維ポリマー足場材およびマイクロ繊維ポリマー足場材から選択される一つである。マイクロ繊維ポリマー足場材がミクロン規模の特徴(平均繊維径約1,000ナノメートルから約50,000ナノメートル、特に約1,000ナノメートルから約20,000ナノメートル)を持つのに対し、ナノ繊維ポリマー足場材はサブミクロン規模の特徴(平均繊維径約10ナノメートルから約1,000ナノメートル、特に約50ナノメートルから約1,000ナノメートル)を持つ。これらのポリマー足場材については各々、野生型のコラーゲンフィブリルまたは他の細胞外マトリクスなどの治療部分における物理的な構造に似たものとすることができる。
【0066】
合成および/または天然源由来のさまざまなポリマーを利用して、これらの繊維ポリマー足場材を構成することができる。繊維については、1種類のモノマーまたはサブユニットから作ることが可能である。たとえば、乳酸またはポリ乳酸あるいはグリコール酸またはポリグリコール酸を利用して、ポリ(ラクチド)(PLA)またはポリ(L−ラクチド)(PLLA)ナノ繊維またはポリ(グリコリド)(PGA)ナノ繊維を形成することができる。また、2種類以上のモノマーまたはサブユニットから繊維を作り、コポリマー、ターポリマーなどを形成することも可能である。たとえば、乳酸またはポリ乳酸をグリコール酸またはポリグリコール酸と組み合わせ、コポリマー・ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を形成することができる。本発明において役立つ他のコポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−ビニル)アルコール)があげられる。例示的実施形態では、繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つであるポリマーまたはサブユニットを含む。例示的な別の実施形態では、繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される2種類のポリマーまたはサブユニットを含む。例示的な別の実施形態では、繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される3種類のポリマーまたはサブユニットを含む。例示的実施形態では、脂肪族ポリエステルは直鎖状または分枝状である。例示的な別の実施形態では、直鎖脂肪族ポリエステルは、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、脂肪族ポリエステルは、分枝状であり、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトンならびに、リンカーまたは生体分子と接合されたこれらの組み合わせから選択されるものを少なくとも1種含む。例示的実施形態では、前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリ酸化プロピレン、ポリプロピレングリコールおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。
【0067】
いくつかの実施形態では、繊維ポリマー足場材は、1本の連続繊維からなる。他の実施形態では、繊維ポリマー足場材は、少なくとも2本、3本、4本または5本の繊維からなる。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、2から100,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維数は、2から50,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、50,000から100,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、10から20,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、15から1,000から選択される一つである。
【0068】
繊維ポリマー足場材は、少なくとも1種類の組成物の繊維を含み得る。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材は、多数の異なるタイプの繊維を含み、その数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択される一つである。
【0069】
例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維は生分解性である。例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維は、生分解性ポリマーを含む。例示的な別の実施形態では、生分解性ポリマーは、乳酸およびグリコール酸から選択される一つであるモノマーを含む。例示的な別の実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはこれらのコポリマーである。好ましい生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸)およびポリ(グリコール酸)などの臨床用としてFDA承認済みのポリマーである。例示的な別の実施形態では、本発明の生分解性ポリマー足場材を利用して、培養組織の形態形成をガイドし、組織構築後に徐々に分解させることが可能である。ポリマーの分解速度については、組織の生成速度に合うよう当業者が調節可能なものである。たとえば、短時間で生分解されるポリマーが望ましい場合、約50:50のPLGAの組み合わせを選択することができる。ポリマー足場材生分解性を増やすための別の方法として、さらに親水性の高いコポリマー(たとえば、ポリエチレングリコール)を選択する、分子量が高いと分解速度が遅くなることが多いため、ポリマーの分子量を落とす、多孔性が高く繊維密度が低いと吸水率が上がって分解が速まることが多いため、多孔性または繊維密度を変更するといったことがあげられる。例示的な別の実施形態では、組織は、筋肉組織、維管束組織、神経組織、脊髄組織および皮膚組織から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、生分解性繊維足場材を利用して、培養筋肉組織の形態形成をガイドし、筋芽細胞、筋管および骨格筋組織構築後に、徐々に分解することが可能である。
【0070】
繊維ポリマー足場材の製造方法
本発明のポリマー足場材は、さまざまな方法で作製可能なものである。例示的実施形態では、ポリマー足場材を電界紡糸によって作製することができる。電界紡糸とは、静電場と電導性流体との間の相互作用を利用する電導性流体の噴霧プロセスである。電導性流体(半希釈ポリマー溶液またはポリマー融液など)に外部静電場を印加すると、懸濁された円錐形の液滴が形成され、これによって液滴の表面張力が電場と平衡する。静電場が液体の表面張力を超えるだけの十分な強さになったら、静電噴霧を行う。すると、液滴が不安定になり、液滴表面から微小な噴流が飛び出してくる。この材料がアースをとったターゲットに近づくときに、比較的微細な繊維すなわち径の小さな繊維を含む、互いに絡み合った織物としてこの材料を捕集することができる。これらの径の小さな繊維からこのようにして得られるフィルム(または膜)は、体積比に対して表面積が極めて大きく、孔のサイズが小さい。電界紡糸装置の詳細な説明については、Zong, et al., Polymer, 43(16):4403-4412 (2002); Rosen et al., Ann Plast Surg., 25:375-87 (1990) Kim, K., Biomaterials 2003, 24, (27), 4977-85; Zong, X., Biomaterials 2005, 26, (26), 5330-8に掲載されている。電界紡糸(electrospinninng)後、押出および成形を利用して、ポリマーをさらに成形することが可能である。繊維の組織構造を調整して整列された繊維ポリマー足場材にする目的では、パターン形成した電極、ワイヤドラムコレクタあるいは、一軸延伸などの後処理法を用いる方法がうまくいっている。Zong, X., Biomaterials 2005, 26, (26), 5330-8; Katta, P., Nano Lett 2004, 4, (11), 2215-2218; Li, D., Nano Lett 2005, 5, (5), 913-6。
【0071】
ポリマー溶液については、いくつかの方法のうちのひとつで生成することができる。一方法として、モノマーを重合し、その結果生じたポリマーを適当な溶媒に溶解させることがあげられる。このプロセスをシリンジアセンブリで行うこともできるし、あるいはこれを後からシリンジアセンブリに注入することもできる。別の方法として、市販のポリマー溶液または市販のポリマーを購入し、これらを溶解させてポリマー溶液を生成することがある。たとえば、PLLAはDuPont(Wilmington, DE)から購入可能であり、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)は、Ethicon(Somerville, NJ)およびBirmingham Polymers(Birmingham, AL)、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)およびPolysciences(Warrington, PA)から購入可能である。他の製造業者として、Lactel Absorbable Polymers(Pelham, AL)がある。細胞および生体分子などの本発明の別のポリマー足場材成分も、Invitrogen(San Diego, CA)、Cambrex(Walkersville, MD)、Sigma-Aldrich, Peprotech(Rocky Hill, NJ)、R&D Systems(Minneapolis, MN)、ATCC(Manassas, VA)、Pierce Biotechnology(Rockford, IL)などの供給業者から商業入手可能である。
【0072】
ポリマー足場材の形成に用いられるポリマーを、まずは溶媒に溶解させる。溶媒は、ポリマーのモノマーおよび/またはサブユニットを溶解させ、電導と電界紡糸が可能なポリマー溶液を提供できるものであれば、どのような溶媒であってもよい。代表的な溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、メチレンクロリド、ジオキサン、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、クロロホルム、水およびこれらの組み合わせから選択される溶媒があげられる。
【0073】
ポリマー溶液は、任意に、電界紡糸工程を容易にするための過剰な電荷効果を生成する塩を含有するものであってもよい。好適な塩の例として、NaCl、KH2PO4、K2HPO4、KIO3、KCl、MgSO4、MgCl2、NaHCO3、CaCl2またはこれらの塩の混合物があげられる。
【0074】
電導性流体を形成するポリマー溶液は、好ましくはポリマー濃度が約1から約80wt%、より好ましくは約8から約60wt%の範囲になる。電導性流体は、好ましくは粘度が約50から約2000mPa・s、より好ましくは約200から約700mPa・sの範囲になる。
【0075】
電界紡糸工程で発生する電場は、好ましくは約5から約100キロボルト(kV)、より好ましくは約10から約50kVの範囲となる。紡糸口金(または電極)への電導性流体の供給量は、好ましくは約0.1から約1000マイクロリットル/分、より好ましくは約1から約250マイクロリットル/分の範囲となる。
【0076】
1個または複数個の紡糸口金がプラットフォーム上に配置されており、プラットフォームは調節可能であり、かつプラットフォームとコレクタ接地基板との間の距離を変えることが可能である。この距離は、ポリマーとコレクタ接地基板との接触前に、溶媒が本質的に完全に蒸発できる距離であれば、どのような距離であってもよい。例示的実施形態では、この距離は、1cmから25cmまで可変である。一般に、コレクタ接地基板とプラットフォームとの間の距離が長くなると、形成される繊維は細くなっていく。
【0077】
回転式のマンドレルが必要な電界紡糸の事例では、多くの場合ドリルチャックを介してマンドレルを機械的にモーターに取り付ける。例示的実施形態では、モーターは、1分あたり約1回転(rpm)から約500rpmの速度でマンドレルを回転させる。例示的実施形態では、モーター回転速度は約200rpmから約500rpmである。例示的な別の実施形態では、モーター回転速度は約1rpmから約100rpmである。
【0078】
別の実施形態または電界紡糸工程および装置に対する変形例が本明細書に記載される。
【0079】
電導性流体の電気的/機械的特性の変形
電界紡糸によって生成される、このようにして得られる膜の特性は、電導性流体の電気的特性および機械的特性に影響されることになる。イオン性無機/有機化合物を加えることで、ポリマー溶液の電導度を劇的に変えることが可能である。ポリマー溶液の電磁流体力学的特性は、物理的特性、機械的特性(流体の表面張力、粘度および粘弾性挙動など)、電気的特性(流体の電荷密度および分極率)の組み合わせに左右されることがある。たとえば、より広範囲にわたる条件で、静電場が噴流の形状と噴流の流れに影響を及ぼすことができるように、ポリマー溶液に界面活性剤を加えることで、流体表面張力を小さくすることができる。定圧または一定流量のいずれかで流量を制御可能なシリンジポンプを連結することで、電導性流体の粘度の影響を軽減することができる。
【0080】
電極の設計
本発明に係る膜を生成するための別の実施形態では、繊維のサイズをさらに制御しやすくするために、電界紡糸時の噴流形成工程をさらに改善する。上述したような帯電した紡糸口金と接地板とを単に用いるのではなく、正に帯電した紡糸口金で同じようにポリマー溶液の液滴を形成し、中央に小さな出口穴のある平板電極でジェット流を形成するようにする。この出口穴は、平板電極にジェット流を通すための手段となる。よって、正に帯電した紡糸口金表面のポリマー液滴が典型的に2〜3mmの寸法で、平板電極が紡糸口金から約10mmの距離にある場合、適度な静電電位を発生させることができる。2つの電極間の距離が短いと、静電電位がかなり低くなりかねない。しかしながら、得られる電場強度は電界紡糸工程には十分な強さになり得る。紡糸口金の電位を変えることで、噴流形成を制御および調節することが可能である。このような電極構成は、紡糸口金に対して必要な印加電位を、一般に約15キロボルト(kV)から一般に約1.5〜2kV(接地板電位に対して)まで大幅に減らすべきものである。安定した噴流形成のために必要とされる正確な紡糸口金電位は、特定の電導性流体の電気的特性/機械的特性に左右されることになる。
【0081】
噴流の加速と輸送の制御
本発明のポリマー足場材を生成するための別の好ましい実施形態では、ジェット流の飛行も厳密に制御する。平板電極の出口穴を通るジェット流は、正に帯電している。このジェット流は、外部電場の閉じ込めがなくても飛行時に自ら真っ直ぐになる傾向にあるが、噴流はその軌道ですぐに不安定になってしまう。言葉を変えると、帯電したジェット流の焦点がずれ、流体の微視的特性および巨視的特性の制御が不能となる。この不安定さについては、慎重に設計したプローブ電極を平板電極のすぐ後ろで使用し、(等しく)間隔をあけた一連の平板電極用いることで、取り除くことができる。電極アセンブリ(または複合電極)すなわち、プローブ電極および平板電極は、(真っ直ぐな)飛行経路に沿って静電電位を均一に分布させることができる。紡糸口金のベース電位を(接地電位での)ターゲットよりも約+20から+30kV高くすれば加速度ポテンシャルが形成されるのに対し、プローブ電極の静電電位については平板電極のベース電位よりもわずかに低く調節することができる。複合電極は、ジェット流を所望のターゲット部分まで送ることができる。また、複合電極を利用して、ジェット流を操作することも可能である。静電電位を変えることでジェット流の加速度が変わり、成形されるポリマー繊維の直径も変化することになる。この静電電位の変動によってジェット流の安定性が変化するため、複合電極の対応する変化を利用して、新たなジェット流を安定させることができる。このような手法は、電界紡糸工程の間に繊維の直径を微調整して変化させるのに利用できるものである。
【0082】
噴流の操作
さらに別の実施形態では、高エネルギー物理学の加速器技術で広く用いられている「強集束」(AG : Alternating Gradient)手法を用いてジェット流の焦点を合わせることができる。基本的な考え方は、2対の静電四重極レンズを用いることである。第2のレンズは、電気的勾配が逆(交互)であること以外は第1のレンズと幾何学的配置が同じである。正に帯電したジェット流は、たとえば、第1のレンズの後はxz面で焦点が合わされ、続いて第2のレンズの後にyz面で再び焦点が合わされる。z方向は最初の飛行経路の方向を表すことに注意されたい。四重極の対のうちの一方において電位にさらに三角形の波形を適用することで、ターゲット領域にわたって噴流を掃引することができるため、ジェット流の方向を制御できる。さらに、「掃引」電位のさまざまな波形で、ターゲットに所望のパターンを形成することができる。
【0083】
独特なマンドレルを有する電界紡糸装置
電界紡糸ポリマー繊維は、固定基板または回転基板上に堆積可能なものである。従来、電界紡糸繊維のランダム堆積には固定金属コレクタを利用していた。回転金属マンドレルは電界紡糸時に利用されていた。回転金属マンドレルを用いると、マンドレルの表面に繊維がランダムに堆積し、これによってマンドレルを取り除いた後に導管を生成できる。また、この方法を改変し、マンドレルを高速(>100rpm)で回転させる方法でも円周方向に繊維が整列された導管を生成できることもある。径の大きいおよび/または長さの長い回転ドラムをコレクタ基板として用いる場合、堆積された繊維ポリマー足場材をドラムから切り取って取り除く際に、整列されていない繊維ポリマー足場材と整列された繊維ポリマー足場材のシートが生成されることがある。固定金属コレクタ内に空隙(穴)を形成することで、ギャップの上に堆積される電界紡糸繊維が整列されることが、過去にすでに示されている(Li, D., Wang Y. L., Xia, Y. N., Electrospinning of Polymeric and Ceramic Nanofibers as Uniaxially Aligned Arrays. Nano Letters, 2003. 3(8): p. 1167-71)。しかしながら、整列された三次元の導管または棒を製造することや、長手方向に整列された繊維からなる導管または棒を直接に電界紡糸することについては、Liにも他のどこにも何ら説明されていない。
【0084】
別の態様では、本発明は、整列された繊維ポリマー足場材を回転式のマンドレル上に電界紡糸するための方法を含む。これらの繊維ポリマー足場材は、利用者が望むどのような配向にも整列可能なものである。例示的実施形態では、足場材は本質的に長手方向または本質的に円周方向に整列される。この方法で作製される繊維ポリマー足場材は、継ぎ目のあるものであってもよいし、シームレスであってもよい。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材はシームレスである。例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材は、ポリマー足場材の長手方向の軸に対して本質的に平行な軸に沿ってシームレスである。
【0085】
別の態様では、本発明は、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒の電界紡糸を可能にする独特なマンドレルを含む。例示的な別の実施形態では、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒は、未整列の繊維配向を有する。例示的な別の実施形態では、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒の繊維は、整列されている。例示的な別の実施形態では、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒は、本質的に長手方向に整列された繊維を有する。
【0086】
別の態様では、本発明は、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒の電界紡糸を可能にする独特なマンドレルを含む。例示的な別の実施形態では、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒は、未整列の繊維配向を有する。例示的な別の実施形態では、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒の繊維は整列されている。例示的な別の実施形態では、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒は、本質的に長手方向に整列された繊維を有する。
【0087】
例示的実施形態では、マンドレルは、マンドレルをその長手方向の軸を中心にして回転可能なモーターアセンブリに取り付けられている。電界紡糸装置では、回転式のマンドレルは接地され、紡糸口金の下に配置されている。紡糸口金の先端にポリマー溶液が供給され、電源によって帯電される。紡糸口金とマンドレルの間に発生する電界は、噴流を形成するための紡糸口金の先端で帯電したポリマー溶液を含む。この噴流はマンドレルに向かって噴霧される。ポリマーがマンドレルの一電導性領域と接触し、続いてマンドレルの第2の電導性領域と接触して、マンドレルの非電導性領域または空隙に繊維が堆積される。これによって、非電導性領域上または空隙内に、整列された繊維が堆積される。マンドレルを回転させることで、整列された繊維が均等に適用された層が得られる。堆積された繊維層はマンドレルの形状またはマンドレル間の空隙の形状に沿っているため、場合によってはシート、場合によっては導管、あるいは場合によっては棒が形成される。シート、導管または棒を含む繊維は、導管または棒の長さに沿って整列され、これによって長手方向に整列された繊維のシート、導管または棒が形成されることになる。例示的実施形態では、導管または棒はシームレスになる。例示的実施形態では、導管または棒は、導管または棒の長軸に対して本質的に平行な軸に沿ってシームレスになる。
【0088】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの電導性領域と、少なくとも1つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。このようなマンドレルについては、さまざまな方法で設計可能である。マンドレルの例示的な図を図3Bに示し、本発明のシートおよび/または導管を製造するための装置の一部であるマンドレルの例示的な図を、図1、図2、図2Aおよび図2Bに示す。例示的実施形態では、導電性材料が金属である。例示的な別の実施形態では、金属が、鋼およびアルミニウムから選択される一つである。ひとつの事例では、電導性マンドレルの一領域を非導電性材料で被覆することができる。このマンドレルの例示的な断面を図3Dに示す。例示的実施形態では、非導電性材料は、テープ、絶縁用テープ、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである。別の場合では、少なくとも3つのセクションすなわち、2つの電導性マンドレル領域と、これを相互接続する非導電性領域を有するマンドレルを製造することができる。別の場合では、非導電性領域は、2つの電導性マンドレル領域間に延在する別個の部分である。このマンドレルの例示的な断面を図3Cに示す。マンドレルの電導性領域の上に非電導性領域を配置するか、あるいはマンドレルの2つの電導性領域間で非電導性領域を相互接続することで、マンドレルに別の非電導性領域を加えることも可能である。これらの別の非電導性領域を別の紡糸口金と連動させて用いれば、同じマンドレルで同時に2種類以上の導管を製造しやすくすることができる。一実施形態では、本発明は、少なくとも3つの電導性領域と少なくとも2つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。一実施形態では、本発明は、少なくとも4つの電導性領域と少なくとも3つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。一実施形態では、本発明は、少なくとも5つの電導性領域と少なくとも4つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。
【0089】
一実施形態では、本発明は、第1の電導性領域と、第2の電導性領域と、第1の電導性領域と第2の電導性領域との間の空隙とを有するマンドレルを提供するものである。このようなマンドレルについては、さまざまな方法で設計可能である。マンドレルの例示的な図を図3Eに示し、本発明の棒を製造するための装置の一部であるマンドレルの例示的な図を、図6、図7および図7Aに示す。複数の紡糸口金を含む実施形態を図11に示して説明する。例示的実施形態では、導電性材料が金属である。例示的な別の実施形態では、金属は、鋼およびアルミニウムから選択される一つである。例示的実施形態では、マンドレルの各電導性領域は、他の領域と整列されている。例示的実施形態では、マンドレルの各電導性領域は、同一速度で回転できるアセンブリに取り付けられている。これは、マンドレルの各電導性領域にモーターアセンブリを取り付け、各モーターが同一速度で回転するようにすることで実現可能である。また、マンドレルの各電導性領域が同一のモーターに接続されるようにして実現することも可能である。
【0090】
電界紡糸の終了後、本発明のポリマー足場材をマンドレルから取り外す。シートとしてのポリマー足場材の場合、マンドレルからシートを剥がすことができる。導管としてのポリマー足場材の場合、モーターアセンブリからマンドレルを取り外した上で、導管を取り外すことができる。いくつかの実施形態では、マンドレルを中央部で分離するか、導管を切断して取り外しを実現することができる。棒としてのポリマー足場材の場合、電導性領域の金属端から棒を剥がすことができる。場合によっては、堆積された繊維の長さが等しくならないこともあり、この場合はポリマー足場材の片端または両端がギザギザの縁になる。任意に、長さが本質的に同じサイズのポリマー足場材とする目的で、ポリマー足場材の端を切断することも可能である。この切断は、ポリマー足場材がマンドレル上にあるうちに実施してもよいし、マンドレルから取り外した後で実施することも可能である。
【0091】
本明細書に記載のポリマー足場材の特徴は、さまざまなパラメータを変えることで変更可能なものである。たとえば、単独または組み合わせで、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径を小さくできるいくつかの方法がある。ひとつの方法として、ポリマー溶液にさらに塩を加えることがある。ポリマー溶液にさらに極性の高い溶媒を使用する方法でも、紡糸口金とマンドレルとの距離が長くなるため平均繊維径が小さくなる傾向にある。足場材の直径を小さくする別の方法として、装置の電圧を上げてポリマー濃度を高めることがあげられる。
【0092】
いくつかのマンドレルの回転を完了することで、本明細書に記載の方法で多層のポリマー足場材を形成することができる。たとえば、いくつかのマンドレルの回転を完了することで、多層の導管を形成することができる。2種類以上のタイプの層を有する別のポリマー足場材も製造可能である。例示的実施形態では、マンドレルの回転速度を変えることで、繊維の円周方向のアライメントも調節または変更できる。よって、長手方向に整列された内側の層と円周方向に整列された外側の層とを有するポリマー足場材を製造可能である。各層が特定のアライメントを有する多層の中空導管の足場材を製造する目的で、さまざまなマンドレルと回転速度を利用することができる。例示的実施形態では、長手方向に整列された繊維を有する管腔(luminal)層と円周方向に整列された繊維を有する外側の層のある中空の導管形の繊維足場材を作製する。このような足場材を製造するためのひとつの方法として、上述したような非電導性領域を有するマンドレルを用いることがある。マンドレルを低速で回転させ、長手方向に整列された繊維からなる導管形の繊維足場材を形成できるようにする。続いて、マンドレルの回転速度を上げ、これによって電界紡糸繊維を長手方向に整列された繊維導管の周りに円周方向に整列させる。例示的な別の実施形態では、内側の層は長手方向に整列されているのに対し、外側の層はランダムに整列された繊維からなる。これは、外側の層の形成時に、繊維が長手方向と円周方向のどちらにも整列されないようにする中程度の速度でマンドレルを回転させること以外は、上述したステップと同じステップを踏むことで達成可能である。
【0093】
II.b)微小パターンが形成されたポリマー足場材
第2の態様では、本発明は、微小パターンが形成されたポリマー足場材を含む組成物を提供するものである。微小パターン形成では、ソフトリソグラフィを利用して、ポリマーの空間的構造および幾何学的構造を形状的(topographically)または化学的に変化させ、ミクロン規模の特徴を基板表面に形成する。Taylor, A.M., Nat Methods 2005, 2, (8), 599-605; Dow, J.A., J Cell Sci Suppl 1987, 8, 55-79; Kane, R.S., Biomaterials 1999, 20, (23-24), 2363-76。この手法で作製されたポリマー足場材を利用して、細胞の大きさ、形状、空間的構造、増殖および生存をはじめとする細胞挙動の多くの局面を制御することができる。Chen, C.S., Science 1997, 276, (5317), 1428-8; Bhatia, S.N., Faseb J 1999, 13, (14), 1883-900; Deutsch, J., J Biomed Mater Res 2000, 53, (3), 267-76; Folch, A., Annu Rev Biomed Eng 2000, 2, 227-56; Whitesides, G.M., Annu Rev Biomed Eng 2001, 3, 335-73。高い再現性で微小パターンを形成でき、細胞接着用のフレキシブル基板が得られるエラストマーに、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)がある。Wang, N., Cell Motil Cytoskeleton 2002, 52, (2), 97-106。
【0094】
II.c)ポリマー足場材のアライメント
本発明のポリマー足場材は、整列配向のものであってもランダム配向のものであってもよい。整列配向では、ポリマー足場材となる繊維の少なくとも50%がアライメントの平均軸に沿って配向されている。
【0095】
例示的実施形態では、組成物は、本質的に長手方向、本質的に円周方向および「十字」から選択される一つであるアライメントを有する。長手方向のアライメントは、繊維が、導管、充填導管または棒状のポリマー足場材の長軸方向に整列されているときに存在する。円周方向のアライメントは、繊維が、ポリマー足場材の短軸に沿って整列されているときに存在する。十字のアライメントは、第1のポリマー足場材の平均アライメント軸が、この第1のポリマー足場材に隣接した第2のポリマー足場材の平均アライメント軸に対して角度をなすような要領で、組成物中のひとつのポリマー足場材の繊維が整列されているときに存在する。長手方向に整列または円周方向に整列されたポリマー足場材は、2種類以上の繊維層を有することが可能である。十字に整列されたポリマー足場材には、2種類以上の繊維層が必要である。
【0096】
例示的な別の実施形態では、ポリマー繊維は、繊維束の中心軸からの標準偏差を持ち得る。例示的実施形態では、繊維の標準偏差が、約0°から約1°の間、約0°から約3°の間、約0°から約5°の間、約0°から約10°の間、約0°から約15°の間、約0°から約20°の間および約0°から約30°の間から選択される一つである。
【0097】
整列されたポリマー足場材には、細胞の細胞骨格アライメント、細胞移動および細胞機能に対して大きな影響を持つ。整列されたポリマー足場材は、細胞移動を誘導および方向付けることで、組織再生を促進する。このような足場材は、筋肉、皮膚、維管束組織、神経および脊髄の再生などのさまざまな組織再生に対する将来性のある解決策のひとつである。たとえば、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材は、損傷の隙間(injury gap)での神経、皮膚、筋肉および/または維管束組織の成長を亢進し、特異的に導くことができる。
【0098】
整列されたポリマー足場材を置く方向が、整列されたポリマー足場材が取って代わるまたは改善する生物学的機能に影響を及ぼすことがある。たとえば、整列されたポリマー足場材を創傷の中に置く場合、整列されたポリマー足場材を創傷の長軸に対して平行ではなく直交させる場合のほうが、創傷の治癒が短時間でなされる。例示的実施形態では、整列されたポリマー足場材の束の中央の長軸を、整列されたポリマー足場材が改善しているまたは取って代わっている材料の方向に対して直交させておく。例示的な別の実施形態では、整列されたポリマー足場材の束の中央の長軸を、整列されたポリマー足場材が改善しているまたは取って代わっている材料の方向に対して平行にしておく。
【0099】
例示的な別の実施形態では、本発明の整列された組成物(ポリマー足場材など)に生分解性ポリマーを含むことが可能である。これらの組成物を利用して、神経、皮膚、血管、骨格筋、心筋、腱および靱帯などの異方性構造を持つ他のタイプの組織の形態形成を補助することができる。また、三次元組織の成長に、これらの整列された本発明の生分解性組成物を利用することも可能である。電界紡糸生分解性繊維ポリマー足場材を利用して、神経組織、脊髄組織、皮膚組織、維管束組織および筋肉組織の三次元構造物を創製することが可能である。
【0100】
例示的実施形態では、本明細書に記載の組成物は、2種類以上のポリマー足場材を含み得る。これらのポリマー足場材は各々、組成物中の他のポリマー足場材または複数の足場材と同一または異なるアライメントを有し得る。
【0101】
例示的実施形態では、この組成物は、2つのポリマー足場材を含む。第1のポリマー足場材は、導管の形状を有し、長手方向に整列されている。第2のポリマー足場材は、第1のポリマー足場材の外側を囲み、ランダム、円周方向、十字および長手方向から選択される一つの配向を有する。例示的実施形態では、第2のポリマー足場材の配向は、ランダムおよび円周方向から選択される一つである。
【0102】
II.d)ポリマー足場材の形状/ポリマー足場材の製造方法
本発明のポリマー足場材は、解決したい課題の性質に応じて、さまざまな形状に成形可能なものである。
【0103】
本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、さまざまな寸法を取り得るものである。例示的実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.1mmから50cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.1mmから1mmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ1mmから1cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ1cmから10cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ10cmから50cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ1cmから5cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ2.5cmから15cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ5mmから6cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ8mmから3cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ10cmから25cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.5cmから2cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.1cmから2cmである。
【0104】
本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、さまざまな繊維層から構成可能なものである。例示的実施形態では、組成物は約1から約2,000の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約1,000の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約500の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約20の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約10の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約5から約25の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約500から約1,500の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約10から約20の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約35から約80の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約10から約100の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約5から約600の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約10から約80の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約2から約12の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約60から約400の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1,200から約1,750の繊維層を有する。
【0105】
例示的実施形態では、ポリマー足場材はシートまたは膜の形状を有する。ポリマー足場材の膜は、電界紡糸で作製可能なものである。膜内の個々の繊維については、コレクタとしての回転ドラムを利用して電界紡糸時に、あるいは、電界紡糸後に機械的な一軸延伸によって整列させることが可能である。
【0106】
例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は、「十字」シートの形状を有する。十字シートを形成する目的で、整列されたポリマーシートまたは膜の層を、20度より大きいが160度未満、30度より大きいが150度未満、40度より大きいが140度未満、50度より大きいが130度未満、60度より大きいが120度未満、70度より大きいが110度未満および80度より大きいが100度未満から選択される一つの角度で互いに関連して配置することが可能である。
【0107】
「十字」シートを作製するには、さまざまな方法がある。例示的実施形態では、非電導性領域を含まない回転式の金属ドラムコレクタを利用する。整列された繊維層をドラムの表面に作製した後、これをドラムから剥がす。整列された層を90度回転させ、ドラムに戻す。次に、ドラムが高速に回転している間に電界紡糸繊維の別の層を加える。これらのステップを繰り返すことで、別の十字層を加えることが可能である。例示的な別の実施形態では、非電導性領域のあるドラムを利用する。ここで、繊維が非電導性セクションで長手方向に堆積して整列されるように、第1の時間にわたってドラムをゆっくりと回転させる。続いて、繊維が強制的に円周方向に整列されるように、ドラムを高速で回転させる。これらのステップを繰り返すことで、別の十字層を加えることが可能である。
【0108】
導管
例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は、導管の形状を有する。導管の例示的な図を図4Aに示し、導管の断面図の例示的な図を図5Aに示す。導管は、その長さならびに、その内径および外径に応じて、さまざまなサイズを取ることができる。例示的実施形態では、導管の内部空間は、繊維ポリマー足場材を本質的に含まない。これらのパラメータについては、たとえば、さまざまな組織の大きさや用途に対応するよう可変である。例示的実施形態では、導管の壁は整列された繊維で構成される。例示的な別の実施形態では、繊維は長手方向に整列されているか円周方向に整列されている。例示的な別の実施形態では、導管に継ぎ目がある。例示的な別の実施形態では、導管の継ぎ目が導管の長手方向の軸に対して本質的に平行である。例示的な別の実施形態では、導管がシームレスである。例示的な別の実施形態では、導管は、導管の長手方向の軸に対して平行に本質的にシームレスである。例示的な別の実施形態では、導管の内壁が長手方向に整列された繊維の層からなるのに対し、導管の外壁は未整列の繊維で構成される。例示的な別の実施形態では、導管は、導管の長手方向の軸に対して平行にシームレスであり、導管の内壁が長手方向に整列された繊維の層からなるのに対し、導管の外壁は未整列の繊維で構成される。この場合に画定される導管は、外側の鞘としてランダムに配向された繊維が存在することによって、構造状の保全性がさらに大きくなるように設計されている。例示的な別の実施形態では、導管の内壁が未整列のランダムに配向された繊維で構成されているのに対し、導管の外壁は長手方向に整列された繊維の層で構成される。例示的な別の実施形態では、この導管は、導管の長手方向の軸に対して平行にシームレスである。例示的な別の実施形態では、導管の内壁が長手方向に整列された繊維で構成されるのに対し、導管の外壁は円周方向に整列された繊維で構成される。例示的な別の実施形態では、この導管は、導管の長手方向の軸に対して本質的に平行な軸に沿ってシームレスである。
【0109】
例示的実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから50,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから10,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから5,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから500nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから50nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから5nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約10nmから500nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約100nmから1,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約5,000nmから15,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約20,000nmから50,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約75nmから600nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約2,000nmから7,000nmの間である。
【0110】
例示的実施形態では、導管の内径は約1nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから10,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから5,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから50nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから5nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約10nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約100nmから1,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約5,000nmから15,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約20,000nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約75nmから600nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約2,000nmから7,000nmである。
【0111】
本明細書に記載の導管は、さまざまな方法で作製可能なものである。例示的実施形態では、導管は電界紡糸されていない。例示的な別の実施形態では、導管は、未配向のランダム繊維または未配向のランダムポリマー足場材で構成される。
【0112】
例示的実施形態では、継ぎ目のある導管を作製するために、繊維ポリマー足場材シートは丸められる。まず、繊維ポリマー足場材シートを電界紡糸する。シートをなす繊維については、電界紡糸時に整列させることが可能である。整列された電界紡糸繊維を作製するいくつかの方法として、コレクタ接地基板としての回転ドラムを利用するか、あるいは本明細書に記載のマンドレルを用いることによる方法があげられる。例示的実施形態では、マンドレルがマンドレル56Aである。シートをなす繊維はまた、機械的な一軸延伸によって電界紡糸後に整列可能なものである。続いて、整列された繊維ポリマー足場材シートをマンドレルに巻き、導管を形成する。マンドレルは、導管がつながれる前に取り出すこともできるし、これをつないだ後に取り出すこともできる。例示的実施形態では、ポリマー足場材の長手方向の軸に対して平行なシートの2つの端を一緒に止め、長手方向に整列された継ぎ合わせ導管を作製する。例示的実施形態では、シートをマンドレルに2回以上巻き、シートの一端を導管の一部に止めて、長手方向に整列された継ぎ合わせ導管を作製する。止める際には、アニーリング(熱)、接着を利用するか、あるいは縫合糸によって止めることができる。接着の例として、溶媒あるいは、フィブリンシーラントおよびコラーゲンゲルなどの生物学的接着剤がある。
【0113】
ここで、いくつかの例を添付の図面に示した本発明のいくつかの実施形態について、詳細に参照する。本発明については以下の実施形態との関連で説明するが、いずれも本発明をこれらの実施形態に限定することを意図したものではない旨を理解されたい。対照的に、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定する本発明の主旨および範囲に含み得る代替例、改変例および等価物を包含することを意図している。
【0114】
例示的な別の実施形態では、本発明は、シームレスな導管を提供するものである。図1は、このような構造を作製するための電界紡糸装置30を示す。ポリマー溶液38は、溶媒に溶解されたポリマーを含有し、シリンジアセンブリ36の中に収容されている。シリンジアセンブリ36は、圧力または流量を制御することで、ポリマー溶液がシリンジを出る速度をコンピュータ34で制御する、シリンジポンプアセンブリ32の一部である。任意に、選択した紡糸口金に対して異なる流量を提供し、制御することも可能である。流量は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴、すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0115】
シリンジポンプアセンブリ32は、プラットフォーム44に載置された紡糸口金42にポリマー溶液を供給する。紡糸口金は、何ら支障なく噴流形成および輸送を可能にするような先端の幾何学的形状を有する。高電圧電源48によってワイヤ41A経由で約10から約30kVの範囲の電荷が紡糸口金に印加される。
【0116】
電荷を帯びた紡糸口金とマンドレル56Aとの間に電場が形成されるように、マンドレル56A(図3Bで説明するように、55、57Aおよび57Bを含む)を紡糸口金42の下に配置する。電場によって、ポリマー溶液の噴流が紡糸口金から射出されてマンドレル56Aに向かって噴霧され、ミクロンまたはナノメートル台の直径のフィラメントまたは繊維46が形成される。アース線41Bおよび41Cを用いてドリルチャックを接地する。
【0117】
マンドレル56Aは、モーター52に接続された第1のドリルチャック54(非電導性ベアリング60に取り付けられている)および第2のドリルチャック54A(非電導性ベアリング60Aに取り付けられている)に取り付けられる。モーター52は、モーターがマンドレル56Aを回転させる速度を制御する速度制御50にリンクしている。任意に、異なる回転速度とすることができる。回転速度は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0118】
例示的な別の実施形態では、本発明は、図2の電界紡糸装置によって作製されるシームレス導管を提供するものである。この装置は、図1の装置と同様のものであるが、プラットフォーム44を保持するタワー40を含む。
【0119】
ポリマー足場材の複数の層を有する導管を、さまざまな方法で作製することができる。例示的実施形態では、別のポリマー足場材シートを本明細書に記載の導管の外側または内側に巻くことができる。例示的実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材導管を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、未整列のマイクロ/ナノ繊維の繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された導管の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と未整列の外側の繊維層とを有する二層導管を形成する。別の層(3層、4層、5層、6層など)を有する導管は、これらの方法の考え得る延長である。ポリマーに縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。
【0120】
例示的な別の実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材導管を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、円周方向に整列された繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された導管の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と円周方向に整列された外側の繊維層とを有する二層導管を形成する。継ぎ合わせのポリマー足場材に縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。
【0121】
例示的な別の実施形態では、内壁が長手方向に整列された繊維で構成され、外壁が円周方向に整列された繊維で構成された、シームレスの繊維ポリマー足場材導管を作製する。電界紡糸時には、非電導性領域の側面にある2つの電導性領域を有する本明細書に記載のマンドレルを利用する。長手方向に整列された繊維を均一に堆積できるように、マンドレルを低速で回転させる。続いて、円周方向に整列された繊維を均一に堆積できるように、マンドレルを高速で回転させる。こうして、長手方向に整列された内側の繊維層と円周方向に整列された外側の繊維層とを有するシームレスの繊維ポリマー足場材導管が得られる。
【0122】
例示的な別の実施形態では、内壁が長手方向に整列された繊維で構成され、外壁が未整列の繊維で構成された、シームレスの繊維ポリマー足場材導管を作製する。電界紡糸時には、非電導性領域の側面にある2つの電導性領域を有する上述した特別なマンドレルを利用する。長手方向に整列された繊維を均一に堆積できるように、マンドレルを低速で回転させる。続いて、堆積された繊維が長手方向および円周方向のどちらにも整列されないようにする中程度の速度でマンドレルを回転させる。こうして、長手方向に整列された内側の繊維層とランダムに整列された外側の繊維層とを有するシームレスの繊維ポリマー足場材導管が得られる。
【0123】
棒
例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は、棒の形状を有する。棒の例示的な図を図4Bに示し、棒の断面図の例示的な図を図5Bに示す。棒は、その長さならびに、その直径に応じて、さまざまなサイズを取ることができる。棒内の繊維数についても可変であり、これが棒の密度に影響することになる。これらのパラメータについては、たとえば、さまざまな組織の大きさや用途に対応するよう可変である。例示的実施形態では、棒は、整列された繊維からなる。例示的な別の実施形態では、繊維は長手方向に整列されているか、円周方向に整列されている。例示的な別の実施形態では、棒に継ぎ目がある。例示的な別の実施形態では、棒の継ぎ目が棒の長手方向の軸に対して本質的に平行である。例示的な別の実施形態では、棒がシームレスである。例示的な別の実施形態では、棒は、導管の長手方向の軸に対して平行に本質的にシームレスである。例示的な別の実施形態では、棒は、長手方向に整列された繊維の層を含み、これが未整列の繊維からなる導管に覆われている。例示的な別の実施形態では、棒はその長手方向の軸に対して平行にシームレスであり、棒は、未整列の繊維からなる導管に覆われている長手方向に整列された繊維の層を含む。この場合に画定される材料は、外側の鞘としてランダムに配向された繊維が存在することで構造的完全性がさらに大きくなるように設計されている。例示的な別の実施形態では、棒が未整列のランダムに配向された繊維で構成されるのに対し、導管は長手方向に整列された繊維の層で構成される。例示的な別の実施形態では、棒はその長手方向の軸に対して平行にシームレスである。例示的な別の実施形態では、棒は、円周方向に整列された繊維で構成される導管に覆われた長手方向に整列された繊維で構成されている。例示的な別の実施形態では、この棒は、その長手方向の軸に対して平行にシームレスである。
【0124】
例示的実施形態では、棒の直径は約1nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから10,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから5,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから50nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから5nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約10nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約100nmから1,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約5,000nmから15,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約20,000nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約75nmから600nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約2,000nmから7,000nmである。
【0125】
本明細書に記載の棒は、さまざまな方法で作製可能なものである。例示的実施形態では、棒は電界紡糸されていない。例示的な別の実施形態では、棒は未配向のランダム繊維または未配向のランダムポリマー足場材で構成される。
【0126】
例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材シートを丸めて、継ぎ目のある棒を作製する。まず、繊維ポリマー足場材シートを電界紡糸する。シートをなす繊維については、電界紡糸時に整列させることが可能である。整列された電界紡糸繊維を作製するいくつかの方法として、コレクタ接地基板としての回転ドラムを利用するか、あるいは本明細書に記載のマンドレルを用いることによる方法があげられる。例示的実施形態では、マンドレルがマンドレル56Bである。シートをなす繊維はまた、機械的な一軸延伸によって電界紡糸後に整列可能なものである。続いて、整列された繊維ポリマー足場材シート自体を丸めて、棒を形成する。ポリマー足場材シートの端を棒の一部に止めて、長手方向に整列された継ぎ合わせ棒を作製する。シートについては、アニーリング(熱)、接着または縫合糸によって止めることができる。接着の例として、溶媒あるいは、フィブリンシーラントおよびコラーゲンゲルなどの生物学的接着剤がある。
【0127】
ここで、いくつかの例を添付の図面に示した本発明のいくつかの実施形態について、詳細に参照する。本発明については以下の実施形態との関連で説明するが、いずれも本発明をこれらの実施形態に限定することを意図したものではない旨を理解されたい。対照的に、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定する本発明の主旨および範囲に含み得る代替例、改変例および等価物を包含することを意図している。
【0128】
例示的な別の実施形態では、本発明は、シームレスな棒を提供するものである。図6は、このような構造を作製するための電界紡糸装置80を示す。ポリマー溶液38は、溶媒に溶解されたポリマーを含有し、シリンジアセンブリ36の中に収容されている。シリンジアセンブリ36は、圧力または流量を制御することによって、ポリマー溶液がシリンジを出る速度をコンピュータ34で制御するシリンジポンプアセンブリ32の一部である。任意に、選択した紡糸口金に対して異なる流量を提供し、制御することも可能である。流量は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴、すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0129】
シリンジポンプアセンブリ32は、プラットフォーム44に載置された紡糸口金42にポリマー溶液を供給する。紡糸口金は、何ら支障なく噴流形成および輸送を可能にするような先端の幾何学的形状を有する。高電圧電源48によってワイヤ41A経由で約10から約30kVの範囲の電荷を紡糸口金に印加する。
【0130】
マンドレル56B(図3Cで説明するように、57A、57Bおよび58を含む)を紡糸口金42の下に配置する。電荷を帯びた紡糸口金とマンドレル56Bとの間に電場が形成されるように、マンドレル56Bは、第1の導電性領域57Aおよび第1の導電面57Cと、第2の導電性領域57Bおよび第2の導電面57Dとを有する。電場によって、ポリマー溶液の噴流が紡糸口金から射出されてマンドレル56Bに向かって噴霧され、ミクロンまたはナノメートル台の直径で58内のフィラメントまたは繊維が形成される。アース線41Bおよび41Cを用いてドリルチャックを接地する。
【0131】
第1の導電性領域57Aは、第1のドリルチャック54(非電導性ベアリング60に取り付けられている)に取り付けられ、第2の導電性領域57Bは、モーター52Aに接続された第2のドリルチャック54A(非電導性ベアリング60Aに取り付けられている)に取り付けられる。モーター52および52Aは、モーターがマンドレル56Bを回転させる速度を制御する速度制御50Aにリンクしている。任意に、異なる回転速度とすることができる。回転速度は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0132】
例示的な別の実施形態では、本発明は、図7の電界紡糸装置によって作製されるシームレスな棒を提供するものである。この装置は、図6の装置と同様のものであるが、プラットフォーム44を保持するタワー40を含む。
【0133】
ポリマー足場材の複数の層を有する棒を、さまざまな方法で作製することができる。例示的実施形態では、別のポリマー足場材シートを本明細書に記載の棒の外側に巻くことができる。例示的実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材棒を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、未整列のマイクロ/ナノ繊維の繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された棒の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と未整列の外側の繊維層とを有する二層ポリマー足場材を形成する。別の層(3層、4層、5層、6層など)を有する棒は、これらの方法の考え得る延長である。ポリマーに縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。これらの多層棒の実施形態のうちのいくつかを、「充填導管」とも呼ぶ。
【0134】
例示的な別の実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材棒を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、円周方向に整列された繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された棒の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と円周方向に整列された外側の繊維層とを有する二層棒を形成する。継ぎ合わせのポリマー足場材に縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。
【0135】
例示的な別の実施形態では、シームレスの繊維ポリマー足場材が、長手方向に整列された繊維で構成された内部の棒と、円周方向またはランダムに整列された繊維で構成された外側の導管またはスリーブとを有する。シームレスの長手方向に整列された繊維ポリマー棒足場材は、本明細書に記載されているようにして製造される。円周方向に整列された繊維の外側の導管またはスリーブを形成するには、マンドレルの回転を高速まで上げて、長手方向に整列された繊維ポリマー棒の周りに円周方向に整列された繊維を均一に堆積できるようにする。あるいは、ランダムに整列された繊維の外側の導管またはスリーブを形成するには、マンドレルの回転を、長手方向に整列された繊維ポリマー棒に堆積された繊維が長手方向および円周方向のどちらにも整列されないようにする中程度の速度まで上げる。足場材の棒をマンドレルから取り外すと、内部の棒が長手方向に整列された繊維で構成され、外側の導管またはスリーブが円周方向に整列された繊維または未整列の繊維で構成されたシームレスの繊維ポリマー足場材が得られる。
【0136】
充填導管
例示的実施形態では、ポリマー足場材は、充填導管の形状を有する。充填導管は、以下のようにして作製可能なものである。(1)本明細書に記載されているようにして導管を形成し、(2)充填導管用のフィラー材料を長手方向に整列された繊維で構成する。このフィラー材料には、ほぐれた状態で高度に多孔性の材料を用いることが可能である。例示的実施形態では、フィラー材料は、整列された繊維の薄膜として電界紡糸される。続いて、整列された繊維の配向が導管の長軸に平行になるようにして、この材料を本明細書に記載の導管内に直接挿入する。別の場合では、長手方向に整列された繊維の棒を本明細書に記載されているようにして作製する。この棒を、(1)完全に形成された導管内に直接に挿入するか、(2)マンドレルとして利用して、その周囲に繊維状のシートを巻き、さらに縫合糸または接着剤で貼り付けて充填導管を形成する。
【0137】
II.f)別の組成物またはポリマー足場材成分
II.f1)細胞
例示的実施形態では、本明細書に記載の組成物および/またはポリマー足場材はさらに、細胞を備える。細胞は、組成物および/またはポリマー足場材に埋め込まれるかまたはその中で交絡していてもよいし、表面にあっても構わない。例示的実施形態では、細胞は、本発明の組成物および/またはポリマー足場材と共有結合または非共有結合している。いくつかの実施形態では、細胞を利用して、新たな組織の成長を促進する。例示的実施形態では、細胞は、自家(ドナーとレシピエントが同一の個体である)、同種(ドナーとレシピエントが同一の個体ではないが、同じ種に由来する)および異種(ドナーとレシピエントが異なる種に由来する)から選択される一つである。例示的実施形態では、細胞が幹細胞ではない。例示的実施形態では、細胞が幹細胞である。例示的実施形態では、細胞は、成体幹細胞および胚幹細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、成体幹細胞は、間葉幹細胞(MSC)(骨髄由来)または脂肪由来の成体幹細胞(ADAS)であり得る。例示的な別の実施形態では、幹細胞は、単能性、複能性、多能性および全能性から選択される一つである。例示的実施形態では、細胞は前駆細胞である。例示的な別の実施形態では、前駆細胞は、線維芽細胞、筋芽細胞、神経前駆細胞、造血前駆細胞および内皮前駆細胞であり得る。例示的な別の実施形態では、細胞は、筋芽細胞および筋肉前駆細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体筋肉細胞、筋肉前駆細胞、筋幹細胞またはこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体血管細胞、血管前駆細胞、血管幹細胞またはこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体神経細胞、グリア細胞、神経前駆細胞、グリア前駆細胞、神経幹細胞、神経上皮細胞またはこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、シュワン細胞、線維芽細胞および血管細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体皮膚細胞、皮膚前駆細胞および皮膚幹細胞から選択される一つである。最近、線維芽細胞、血管細胞および間葉幹細胞に対して、細胞成長、機能および組織の一助としてのナノ繊維基質の実現可能性が示されている。Zong, X., Biomacromoleucles 2003, 4, (2), 416-23; Li, D., Adv Mater 2004, 16, (4), 1151-1170; Boland, E.D., Front Biosci 2004, 9, 1422-32; Bhattarai, S.R., Biomaterials 2004, 25, (13), 2592-602; Yoshimoto, H., Biomaterials 2003, 24, (12), 2077-82。
【0138】
別の実施形態では、三次元組織の発達に、本明細書に記載の細胞包埋組成物および/またはポリマー足場材を利用することができる。例示的な別の実施形態では、筋芽細胞包埋ポリマー足場材を利用して筋肉組織を成長させることができ、神経細胞包埋ポリマー足場材を利用して神経組織を成長させることができ、血管細胞包埋ポリマー足場材を利用して維管束組織を成長させることができ、脊髄細胞包埋ポリマー足場材を利用して脊髄組織を成長させることができ、皮膚細胞包埋ポリマー足場材を利用して皮膚組織を成長させることができる。
【0139】
この組成物および/またはポリマー足場材には、電界紡糸後または製造後に細胞を取り込むことが可能である。
【0140】
II.f2)生体分子
生体分子(核酸、アミノ酸、糖または脂質など)は、本明細書に記載の組成物および/またはポリマー足場材に共有結合で付着されるか、または非共有結合的に結合されることが可能なものである。例示的実施形態では、生体分子は、レセプター分子、細胞外マトリクス成分または生化学的因子から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、生化学的因子は、成長因子および分化因子から選択される一つである。例示的実施形態では、生体分子は、グリコサミノグリカンおよびプロテオグリカンから選択される一つである。例示的実施形態では、生体分子は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。
【0141】
例示的な別の実施形態では、第1の分子(生体分子であってもなくてもよい)を本発明の組成物および/またはポリマー足場材に共有結合させる。この第1の分子を利用して、第2の生体分子と相互作用させることができる。例示的実施形態では、第1の分子がリンカーであり、第2の生体分子は、レセプター分子、生化学的因子、成長因子および分化因子から選択される一つである。例示的実施形態では、第1の分子は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的実施形態では、第2の生体分子は、レセプター分子、生化学的因子、成長因子および分化因子から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、第1の分子がリンカーを介して共有結合され、前記リンカーが、ジアミノポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)およびこれらの組み合わせから選択される一つである。ヘパリンに結合しない生体分子の場合、ポリマー足場材への直接的な接合またはリンカー(PEG、アミノ−PEGおよびジアミノ−PEGなど)を介しての接合も実現可能である。例示的な別の実施形態では、生体分子は、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、ポリリシン、他の細胞接着促進ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つである細胞外マトリクス成分である。例示的な別の実施形態では、生体分子は、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、血管内皮成長因子、上皮成長因子、ケラチノサイト成長因子およびこれらの組み合わせから選択される一つである成長因子である。例示的な別の実施形態では、生体分子は、ストロマ細胞由来因子、ソニックヘッジホッグ、骨形成タンパク質、ノッチリガンド、Wntおよびこれらの組み合わせから選択される一つである分化因子である。
【0142】
神経突起成長をシミュレートする目的で、本発明のポリマー足場材に共有結合される第1の分子を利用して生体分子(たとえば、成長因子および/またはECM成分)と相互作用することができる。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材を創傷の治癒ならびに、細胞外マトリクス成分、成長因子および分化因子から選択される一つである生体分子に利用できる。創傷治癒亢進用の潜在因子の一例として、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および血小板由来成長因子(PDGF)があげられる。
【0143】
生体分子は、電界紡糸時または製造後に本発明の組成物内に取り入れることの可能なものである。これらの生体分子については、混合、直接またはさまざまなリンカーを介した共有結合または吸着によって取り入れることが可能である。
【0144】
II.f3)薬学的に許容される賦形剤/製剤処方薬
本発明のポリマー足場材と併用して、組成物中に薬学的に許容される賦形剤を含有させることができる。例示的実施形態では、本発明は、a)本発明のポリマー足場材と、b)薬学的に許容される賦形剤とを含む製剤処方薬である組成物を提供するものである。例示的な実施形態では、製剤処方薬は薬学的に許容される賦形剤が含まれるポリマー足場材である。例示的実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、不活性希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤、潤滑剤および時間遅延(time delay)材料から選択される一つである。
【0145】
本発明の製剤処方薬は、選択した投与経路に合うさまざまな形態を取り得る。当業者であれば、本明細書に記載の化合物を取り入れた無毒の製剤処方薬の調製に利用できるさまざまな合成方法が分かるであろう。当業者であれば、水、エタノール、プロピレングリコール、鉱物油、植物油およびジメチルスルホキシド(DMSO)など、本発明の化合物の溶媒和物の調製に利用できる広範囲にわたる無毒の薬学的に許容される溶媒が分かるであろう。
【0146】
本発明の組成物は、従来の無毒の薬学的に許容されるキャリア、アジュバントおよびベヒクルを含有する投与量単位の処方薬で、外科的切開によって、局所的または非経口的に投与できるものである。
【0147】
例示的な別の実施形態では、本明細書に記載の組成物および/またはポリマー足場材は、キットの一部である。このキットには、本発明の方法を教示および/またはキットの成分の用途を説明する取扱説明書を添付することができる。
【0148】
III.組成物用としての使用
別の態様では、生物学的機能に取って代わる、または生物学的機能を再生または改善する目的で、被検体で本発明の組成物(ポリマー足場材など)を利用することが可能である。例示的実施形態では、組成物は、被検体の神経機能または筋肉機能または皮膚機能または血管機能に取って代わる、またはそれらを再生または改善する。別の態様では、本発明は、被検体における損傷を治療する方法であって、(a)損傷を治療できるほど十分に、前記被検体を治療有効量の本発明の組成物と接触させることを含む方法を提供するものである。例示的実施形態では、組成物は、損傷の部位で被検体と接触する。例示的な別の実施形態では、損傷は、切断された神経、損傷を受けた神経、切断された筋肉、損傷を受けた筋肉、切断された血管、損傷を受けた血管、皮膚創傷および傷ついた皮膚から選択される一つである。別の態様では、本発明は、被検体における組織の増殖方法であって、(a)前記組織の成長を容易にできるほど十分に、前記被検体を治療有効量の本発明の組成物と接触させることを含む方法を提供するものである。例示的実施形態では、組織は、筋肉組織、維管束組織、神経組織および皮膚組織から選択される一つである。この組成物をin vitroまたはin vivoで使用して、その有効性を試験することができる。例示的な別の実施形態では、被検体が動物である。例示的な別の実施形態では、動物は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ラットおよびマウスから選択される一つである。
【0149】
以下は本発明の組成物の使用例である。
【0150】
III.a)神経が関与する用途
例示的実施形態では、本明細書に記載の組成物が、切断された神経または損傷を受けた神経と置き換えるために使用される。ひとつの用途に、損傷を受けた末梢神経の再生がある。末梢神経の損傷は、外傷、自己免疫疾患、糖尿病によって生じ得る。末梢神経は、脊髄からさまざまな最終ターゲットまで全身を走る神経繊維からなる。末梢神経の損傷は、神経の最終ターゲットで運動機能および感覚機能が少なくとも部分的に失われる結果となる。最も重篤な損傷形態では、神経が完全に切断され、近位と遠位の神経断端間に損傷の大きな隙間が形成される。近位端の神経繊維は、再生できるが、数ミリメートルよりも長い隙間ではそれほど効率的には再生できない。このため、近位の神経セグメントから遠位の神経セグメントまで再生している神経繊維を効率的に導く材料で損傷の隙間をつなぐことが肝要である。
【0151】
末梢神経が損傷を受け、もはや連続していない臨床症状では、本明細書に記載の長手方向に整列された繊維ポリマー足場材のうち少なくともひとつを利用できる。ポリマー足場材は、導管、充填導管または棒の形状を取り得る。神経の中断につながる損傷は一般に、四肢で発生する。整列された繊維足場材をこれらの領域に移植して、損傷の隙間での神経の再生を亢進させるとともに、四肢の運動機能および感覚機能を回復できるようにすることができる。足場材は、直接の再付着ができないほど神経断端間の隙間が大きい、不連続な損傷神経を含むあらゆる症状に用いることができる。いずれの場合も、足場材は神経の2つの端をつなぎ、神経セグメントに接合し、近位の神経セグメントから遠位の神経セグメントへの神経繊維の再生を亢進および指向する。足場材を構成する長手方向に整列された繊維は、本質的に神経繊維と同じ配向に整列される。よって、整列された足場材繊維は、損傷の隙間での神経繊維の効率的な再生を導く、特異的な誘導キューとなり得る。長手方向に整列された導管ポリマー足場材は、まず近位断端の周辺に沿って位置する神経繊維の方向付けられた成長を促進することにより、機能することもある。棒形および充填導管形の長手方向に整列されたポリマー足場材は、すべての神経繊維を近位から遠位の神経セグメントに連続的に誘導可能でありうる。また、ポリマー足場材に、細胞外マトリクスタンパク質、ポリペプチド、成長因子および/または分化因子などの生体分子を保持し、神経繊維の再生をさらに亢進および誘導するようにしてもよい。ポリマー足場材に追加できる細胞外マトリクスタンパク質としては、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンがあげられる。ポリマー足場材に追加できる成長因子としては、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子および血管内皮成長因子があげられる。ポリマー足場材に追加できるポリペプチドとしては、ポリリシン、RGDポリペプチドおよびラミニン様ポリペプチドがあげられる。ポリマー足場材に追加できる他の生体分子としては、ヘパリンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンがあげられる。これらの生体分子はまた、ラミニン、VEGFおよびBFGFを繊維ポリマー足場材に非共有結合的に封入するのにも利用可能である。
【0152】
足場材については、患者の神経損傷での具体的な要件に合うような形状および大きさにすることが可能である。たとえば、導管、充填導管の内径および棒形のポリマー足場材の全体の直径を、約1mmから約20mmとすることができる。例示的な別の実施形態では、直径を約2mmから約8mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径を約5mmから約10mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径を約2mmから約15mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径を約12mmから約18mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径は、損傷した神経の具体的なサイズに合うように、約1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mm、8.5mm、9mm、9.5mm、10mm、10.5mm、11mm、11.5mm、12mm、12.5mm、13mm、13.5mm、14mm、14.5mm、15mm、15.5mm、16mm、16.5mm、17mm、17.5mm、18mm、18.5mm、19mm、19.5mm、20mm、21mmであり得る。足場材の長さは、大きな範囲の損傷の隙間に対応するよう1cmから約50cmまで可変である。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約4cmから約15cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約14cmから約30cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約1cmから約5cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約2cmから約8cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは、約1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、3cm、3.5cm、4cm、4.5cm、5cm、5.5cm、6cm、6.5cm、7cm、7.5cm、8cm、8.5cm、9cm、9.5cm、10cm、10.5cm、11cm、11.5cm、12cm、12.5cm、13cm、13.5cm、14cm、14.5cm、15cm、15.5cm、16cm、16.5cm、17cm、17.5cm、18cm、18.5cm、19cm、19.5cm、20cm、20.5cmであり得る。長手方向に整列された繊維足場材のいずれの形態も、現在最も広く用いられているが神経損傷に対する完全な治療形態とは言い難い、神経の自家移植片に代わるものとなり得る。足場材はまた、現在の合成神経ガイダンス製品が対応している範囲を超えた長い損傷の隙間をつなげるのに使用できることもある。たとえば、つなげたい損傷の隙間が3cmを超えることがある。例示的実施形態では、被検体に長い損傷の隙間があり、棒形のポリマー足場材または充填導管ポリマー足場材が長い損傷の隙間での神経再生に最も好ましい足場材形状であることがある。
【0153】
末梢神経が損傷を受けているが切断されてはいない臨床症状では、本発明に記載の長手方向に整列された繊維足場材をシート状にして、神経を包むものとして利用するおよび/または棒状または充填導管状または導管状にして、損傷を受けた領域に直接挿入することができる。長手方向に整列された繊維足場材に、本明細書に記載されているような同様の生体分子を保持することも可能である。
【0154】
本発明に記載の足場材の別の用途として、損傷を受けた脊髄の再生がある。整列された繊維ポリマー足場材を、損傷を受けた領域に挿入し、脊髄組織をつなぐことができる。整列された繊維ポリマー足場材によって、脊髄神経繊維の再生を亢進および誘導することが可能である。また、足場材に生体分子および/または細胞を保持することも可能である。生体分子は、上に列挙したような細胞外マトリクスタンパク質、ポリペプチド、成長因子および/または分化因子を含み得るものであり、脊髄神経再生を開始させこれを亢進することができる。細胞には、神経幹細胞、グリア細胞および/または神経前駆細胞(progenitor)を含み得る。細胞は、失われた神経細胞やグリア細胞に取って代わることができるおよび/または脊髄神経の成長を補助および亢進することができる。
【0155】
例示的な別の実施形態では、長手方向に整列されたポリマー導管足場材を神経ガイダンス導管として利用して、損傷の隙間での神経再生を促進する。
【0156】
III.b)皮膚が関与する用途
ここに記載の本発明のポリマー足場材は、臨床および個人での創傷の手当ならびに軟部組織再生に有用なものとなり得る。本発明の一態様では、ポリマー足場材シートは、外側の皮膚創傷に対する創傷被覆材または移植片として有用である。臨床現場では、これらのシートを、外傷、火傷、潰瘍、擦過、裂創、外科手術または他の損傷に起因する創傷の治療に利用することができる。外科医は、これらの移植片を用いて、創傷部分を覆って保護したり、失われた皮膚組織または損傷を受けた皮膚組織と一時的に置き換え、損傷を受けた部分への新たな組織の生成と創傷の治癒を助けることができる。臨床現場では、縫合糸、接着剤または重ねて使う(overlaying)絆創膏を用いてマイクロ/ナノ繊維シートを創傷部分に固定すればよい。これらのマイクロ/ナノ繊維創傷被覆材については、創傷の大きさに合うように切って使用してもよいし、創傷の縁を覆うようにしてもよい。
【0157】
本発明の別の態様では、シートを接着剤の裏材と組み合わせてポリマー足場材の絆創膏を作製することで、ポリマー足場材シートを、個人での手当て/在宅医療に合うように変えることができる。接着剤のセクションによって、ポリマー足場材シートは創傷のある部分の上で適所に保持されることになり、繊維が分解または組織と融合した際に取り除くことができる。また、ポリマー足場材シートを、液体またはゲル接着剤で固定してもよい。
【0158】
本発明の別の態様では、大きなポリマー足場材シートをガーゼとして利用して、流体を吸収し、大きな創傷を保護することが可能である。このポリマー足場材ガーゼは、創傷のある部分に巻いたり、テープで固定したりすることが可能なものである。
【0159】
本発明の別の態様では、ポリマー足場材シートを利用して、羊膜嚢の創傷、消化管または粘膜の潰瘍、歯肉の損傷または後退、体内での外科的切開または生検などによる体内の軟部組織創傷を治療することができる。繰り返すが、ポリマー足場材移植片を適所に縫合または接着して、損傷を受けた組織部分を埋めるまたは覆うことができる。
【0160】
ポリマー足場材には、創傷治癒に有用な多くの特徴がある。第1に、ナノ繊維を含む本明細書に記載のポリマー足場材は、ナノ多孔性かつ通気性である。これらの足場材は、微生物および感染粒子が通るのを防ぐことができるが、自然な創傷治癒には不可欠な空気流と水分の浸透は可能である。
【0161】
第2に、本発明の繊維は生分解性であるため、一時的に創傷を被覆し、最終的には新たな組織の内部成長を可能にする。ポリマー足場材の創傷被覆材にどの材料を用いるかは、機械的強度および分解/組織再生の速度をはじめとする自然な組織の特徴に合うように決めることが可能である。
【0162】
第3に、ポリマー足場材を、分解時に取り除くことのできるさまざまな因子と包埋または接合してもよい。これらの因子としては、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、形質転換成長因子−β(TGF−β)およびメタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMP)があげられるが、これに限定されるものではなく、いずれも創傷治癒において有益であることが明らかになっている。Fu, X. et al., Wound Repair Regen, 13(2):122-30 (2005)。抗生剤、殺菌剤、殺真菌剤、銀含有作用剤、鎮痛剤および一酸化窒素放出化合物などの別の創傷治癒因子を、ポリマー足場材の創傷被覆材または移植片に組み込むことも可能である。
【0163】
第4に、創傷治癒用のポリマー足場材移植片に、組織再生を促進し、より一層自然な組織構造にするために、細胞を播種してもよい。これらの細胞としては、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、内皮細胞、間葉幹細胞および/または胚幹細胞があげられるが、これに限定されるものではない。
【0164】
第5に、ナノ繊維ポリマー足場材のナノスケールのアーキテクチャが、多くの一般的な軟部組織の細胞外マトリクス(ECM)のものと極めてよく似ている。たとえば、ナノスケールの繊維は、皮膚および他の組織に見られるコラーゲンフィブリルと構造的に類似している。このアーキテクチャを用いると、細胞が創傷に移動するための組織的な足場材が得られるため、痕形成を防止できることがある。本発明のこの態様では、痕組織形成時のように細胞をランダムに配置させるのではなく、細胞を整列・組織化された状態に保つ上で、(ランダム配向繊維との対比で)ポリマー足場材のアライメントが重要である。整列されたポリマー足場材を創傷の特定の軸に対して配向させ、組織の内部成長と創傷の被覆を速めるようにしてもよい。
【0165】
ポリマー足場材のアライメントを利用して、自然な組織ECMのアーキテクチャに非常によく合わせることができる。これは、単一方向での繊維アライメント、直交方向での十字アライメントまたはさらに複雑な繊維アーキテクチャを含むものであってもよい。本発明のこの事例では、ポリマー足場材は、各層が特定の繊維配向を持つ複数の繊維層を含む。同様に、個々のポリマー足場材層は各々、上で列挙したものなどの特定の因子または細胞タイプを含むものであってもよい。これによって、自然な組織アーキテクチャおよび構成と非常によく合うポリマー足場材を作製できるようになる。たとえば、単純なポリマー足場材の創傷被覆材または移植片には、整列された繊維の単層を含み得る。一方、これよりも複雑なポリマー足場材の皮膚移植片には、一番下のシートに線維芽細胞、一番上のシートにケラチノサイトならびに、一番下のシートにbFGF、一番上のシートに抗菌剤を含む十字パターンに層状化された複数の整列繊維シートを含み得る。患者の特定の需要に応じて、このような他の組み合わせも可能である。
【0166】
III.c)脈管系が関与する用途
本明細書に記載のポリマー足場材を利用して、損傷を受けた、切断されたまたは変化したさまざまな血管と置き換えるまたはそうした血管をバイパスすることが可能である。例示的実施形態では、導管または充填導管ポリマー足場材を冠動脈バイパス術に利用する。加えて、これらの移植片を用いて、血管を完全にポリマー足場材で置き換えてしまうか、あるいは鞘のような包装を作製することで、血管動脈瘤(すなわち、一般にePTFEまたはDacronなどの合成ポリマー置換移植片が必要とされる腹部大動脈瘤)を支持および安定させることが可能である。他の強化法として、ポリマー足場材シートを動脈瘤部位に巻くことがあげられる。その用途は下半身の血管の置換(lower body vessel replacement)に限定されるものではなく、内頸動脈、後交通動脈、後大脳動脈などをはじめとする局部動脈を伴う、ウィリス動脈輪などの他の一般的な動脈瘤部位を含み得る。
【0167】
例示的実施形態では、スリーブで囲まれるポリマー足場材を利用して、血管と置き換えるまたは血管を再生させる。スリーブは、ポリマー足場材を囲んで、その機械的強度、捩り剛性、コンプライアンスまたは他の任意の物理的特性または化学的特性を改善するむよう作製可能なものである。このスリーブは、たとえば、下にくるナノ繊維が特定のアライメント方向になるような要領でナノ繊維ポリマー足場材導管の周囲に配置可能であり、スリーブについてはアライメント方向が同じであっても異なっていてもよい。未整列またはランダムに整列されたマイクロ繊維またはナノ繊維を、スリーブ材料または下にくるナノ繊維構造として機能させることも可能である。複数のスリーブを利用して、物理的特性または化学的特性の異なる多層構造を作製してもよい。
【0168】
多細胞タイプの移植片
ポリマー足場材の異なる領域に、異なる細胞タイプを播種することで、管状構造を作製することができる。たとえば、図40に、細胞タイプ1が管腔の裏当てとなり、細胞タイプ2が移植片の内側部、移植片の別の領域に播種することで細胞タイプ3が移植片を包むよう構成された移植片を示す。
【0169】
ナノ繊維の管状構造の改変
例示的実施形態では、本発明は、移植前に生化学的改変または細胞改変のない脈管系で用いるポリマー足場材を提供するものである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、血小板がナノ繊維に付着するのを防ぐ非汚染性、非血栓形成性のブラシ層を作製するためのポリ(エチレングリコール)または同様の生化学的改変を含む。このブラシ層は、血栓症低減のためにナノ繊維ポリマー足場材に共有結合的にグラフト可能なものである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材はさらに、ヘパリン、ヒルジンまたはこれらの組み合わせを含む。ヘパリンは、血流中の第Xa因子およびトロンビンをブロックできるアンチトロンビンIIIと結合できる。ヒルジンは、トロンビンのインヒビターである。ジアミノポリ(エチレングリコール)リンカーを利用すれば、ヘパリンおよびヒルジンをポリマー足場材に共有結合的にグラフトすることができる。例示的実施形態では、ポリマー足場材はPLLA繊維を含有する。被検体の脈管系との関連で用いられる本発明のポリマー足場材は、血栓症を減らすとともに移植片の開通性を高める。
【0170】
例示的な別の実施形態では、脈管系との関連で用いられるポリマー足場材がさらに、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞を含む。例示的実施形態では、移植の少なくとも24時間前に間葉幹細胞を播種する。例示的な別の実施形態では、移植の2日前に移植片に細胞を播種する。
【0171】
脱細胞−ヒト骨髄由来の間葉幹細胞または任意の細胞タイプを上述したように播種する。移植の数時間前に、細胞構造と細胞表面を無傷のまま残した状態で細胞を殺す。
【0172】
例示的な別の実施形態では、脈管系との関連で用いられるポリマー足場材がさらに、内皮前駆細胞を含む。例示的実施形態では、移植の2日前に移植片に内皮前駆細胞を2日間播種する。これらの内皮細胞は、血小板の付着/活性化、血栓症ならびに、細胞自体が分泌するヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびいくつかの因子を伴う極めて活性化された細胞膜表面によるフィブリン形成を防止することができる。
【0173】
例示的な別の実施形態では、脈管系との関連で用いられるポリマー足場材はさらに、ヒト胚幹細胞由来の血管前駆細胞を含む。これらの胚幹細胞は、IV型コラーゲンインテグリンシグナリングによって、血管前駆細胞(progenitor)系列に分化することができ、成長因子の刺激時に内皮細胞および平滑筋細胞に完全に分化できるものである。
【0174】
III.d)筋肉が関与する用途
急性損傷後の有意な筋肉損失による筋肉再生を亢進させるために、本発明のポリマー足場材を伴う筋肉移植片を筋肉内に治療的に移植することができる。成長因子および他の生体分子を筋肉移植片に取り入れて、筋肉細胞の増殖と分化ならびに血管新生を刺激することが可能であるが、これらはいずれも筋肉の治癒を早めるものである。成長因子には、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、塩基性成長因子(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)および血小板由来成長因子(PDGF)を含み得る。共有結合または生理学的コーティングによって成長因子を移植片に取り込むことが可能である。関連する手法に、細胞を遺伝子組み換えして、そのようなタンパク質の遺伝子を過発現させることがある。
【0175】
この移植片の別の治療用途に、特定遺伝子の遺伝的突然変異を特徴とする筋ジストロフィーなどの筋肉疾患のある動物または人間の遺伝子組み換えがある。このタイプの遺伝子療法用途では、正常な遺伝子を有する筋芽細胞を移植片内で筋肉に送達させることができる。あるいは、遺伝子をプラスミドDNAの形で足場材に直接にコンジュゲーションしてもよい。体内での足場材の移植によって、遺伝子の組み換えが起こり、組織が正常な筋肉機能の様相を発達させる一助となる。遺伝子療法の目的で、ポリマー足場材は、移植された細胞の生存および成長のためのマトリクスを提供および/またはプラスミドDNAの放出とこれに続く取り込みのための送達ベヒクルとして機能する。
【0176】
移植片は、パッチまたは導管の形であってもよい。どちらの場合も、繊維の方向は筋肉の方向に平行である。齧歯類では、足場材の物理的な寸法は0.5〜5.0×0.5〜5.0×0.1〜0.5cmの範囲になる。ヒトの移植片では、足場材のサイズは1.0〜50.0×1.0〜50.0×0.1〜5.0cmの範囲になる。
【0177】
このタイプの治療に最も適した筋肉は、整列された幾何学的形状を持ち、移植片を育てる(nourish)脈管構造に近い筋肉である。このような筋肉には、二頭筋、四頭筋、前脛骨筋および腓腹筋がある。
【0178】
例示的実施形態では、筋芽細胞と一緒に包埋された導管を利用して、骨格筋を増殖させることができる。例示的な別の実施形態では、間葉幹細胞と一緒に包埋された導管を脈管移植片として利用することができる。例示的な別の実施形態では、神経幹細胞と一緒に包埋された導管を神経移植片として利用することができる。例示的な別の実施形態では、本発明は、(i)ポリマーに細胞を播種し、(ii)生成物をマンドレルに巻き付けることで、ポリマーを管状形にし、(iii)マンドレルを取り外すことを含む、組成物の製造方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、本発明は、(iv)ポリマーの第1の部分をポリマーの第2の部分に取り付けることを提供するものである。この取り付けは、アニーリング(熱)、接着(生物学的接着剤など)または縫合糸を用いて実現可能である。
【0179】
III.e)微小パターンが形成されたポリマー足場材を有する筋肉移植片
微小パターンが形成されたポリマー足場材を有する筋肉移植片の用途は、微小パターンが形成されたポリマー足場材をシート状にすること以外は、上述したようなナノ繊維足場材の用途と同様である。
【0180】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。実施例は本発明の範囲を定義または限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0181】
(実施例1)
(筋芽細胞の調製)
マウスC2C12筋芽細胞(ATCC, Manassas, VA)を利用して、細胞の組織化および構築について研究した。ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、10%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンからなる成長培地で筋芽細胞を培養した。筋芽細胞の分化と融合を開始させるために、試料がコンフルエントになった24時間後に、DMEM、5%ウマ血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンからなる分化培地と成長培地とを交換した。いずれの実験でも、それぞれの時点は分化培地でのインキュベーション時で示した。
【0182】
(実施例2)
(PLLAナノ繊維足場材の調製)
生分解性ポリ(L−ラクチド)(PLLA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度1.09dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材を製造した。(Zong, X., Biomacromolecules, 4(2): 416-23 (2003))。簡単に説明すると、プログラム可能なポンプを用いて、PLLA溶液(クロロホルム中10%w/v)を電極の出口穴まで流量25μL/分で供給した。高電圧電源(Glassman High Voltage Inc., High Bridge, NJ)を利用して、20kVの電圧を印加した。接地してステップモーターで制御した回転ドラム上に捕集板を配置した。ナノ繊維を整列させるために、電界紡糸した足場材を60℃で工学ひずみ200%まで一軸延伸した。ナノ繊維足場材は厚さ約150μmであった。細胞の播種前に、ナノ繊維足場材の表面に2%ゼラチンまたはフィブロネクチン(5μg/cm2)をコーティングした。ゼラチンコーティングとフィブロネクチンコーティングとで、細胞の接着および形態に有意な差は検出されなかった。ランダム配向足場材を対照として利用した。
【0183】
走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて、一軸延伸後のナノ繊維のアライメントを可視化した。SEM画像から、一軸延伸によって整列されたナノ繊維が得られたことが分かる(図24A〜図24B)。足場材のナノ繊維の平均直径は約500nm、平均ギャップは約4μmであった。
【0184】
(実施例3)
(分化培地下におけるナノ繊維足場材での筋芽細胞の増殖/キャラクタリゼーション)
コンフルエントな筋芽細胞を分化培地にてナノ繊維足場材で最大7日間増殖させた。ランダム配向ナノ繊維足場材および整列されたナノ繊維足場材での細胞の組織化と細胞骨格構造とを判断するために、F−アクチン、ミオシン重鎖(MHC)および細胞核の蛍光染色を実施した(Supporting Information)。F−アクチンについては、フルオレセイン(FITC)−コンジュゲートファロイジン(Molecular Probes, Eugene, OR)で染色した。MHCについては、マウス抗骨格速MHC抗体(Sigma, St. Louis, MO)で免疫染色した。細胞核については、ToPro染料(Molecular Probes)で染色した。Nikon TE300顕微鏡とLeica TCS SL共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡検査を実施した。
【0185】
(実施例4)
(微小パターンが形成された基板の微細加工)
Thakar, R.G., Biochem Biophys Res Commun, 307(4): 883-90 (2003)から改変したプロセスで、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリ−L−ラクチド−co−グリコリド−co−ε−カプロラクトン(PLGC)ポリマーからなる微小パターンが形成されたフィルムを、シリコンウェハインバース(inverse)テンプレートから製造した。微小パターンが形成されたテンプレートを作製するために、ウェハをアセトン中で清浄した後、硫酸と過酸化水素(ピラニア酸(Piranha acid))の4:1洗浄溶液で清浄した。ウェハを乾燥させ、5分間かけてヘキサメチルジシラザン(HMDS)をコーティングして、基板へのフォトレジスト接着性を改善した。パターン形成されたエマルジョン細縞のあるマスクをまず生成した。平行な細縞は幅10μm、間隔10μm、長さ4cmであった。パターンをシリコンウェハに転写するために、Iライン(OCG OiR 897-10i、Arch Chemicals, Norwalk, CT)フォトレジストをウェハ上に820RPMで1分間スピンし、約2.8μm厚のフォトレジスト層を形成した。続いて、ウェハを90℃で60秒間ベークして、フォトレジストを硬化させた後、KS Aligner (Karl Suss, MJB3, Germany)を用いてUV光でフォトレジストを露光した。120℃で60秒間、露光後ベークを実施し、フォトレジストの硬化を助け、光分解生成物の拡散を促した。フォトレジスト現像溶液OPD 4262を用いて、露光後のフォトレジストを60秒間現像した。未露光のフォトレジストを含むウェハを、120℃で15分間プライマーオーブンに入れ、残りのフォトレジストを硬化させた。この時点で、ウェハはPDMSフィルムの作製に利用できる状態になった。PLCGフィルム製造用のテンプレートには、深さ約2μmのマイクログルーブを形成するためにSTS社のDeep Reactive Ion Etcherで2〜3分間さらにエッチングステップが必要であった。
【0186】
製造業者(Sylgard 184, Dow Corning, MI)の指示に従って、微小パターンが形成されたPDMSフィルムとパターンなしのPDMSフィルムを作製した。真空下で脱気後、PDMSを15gほどウェハ上に注いだ。PDMSのあるウェハをフォトレジストスピナーに載置し、100rpmで30秒間回転した後、200rpmで2分間回転し、厚さが約350μmと均一なPDMSフィルムを形成した。PDMSをスピンコートしたウェハを室温で10分間保持した後、80℃のオーブンに15分間入れ、PDMSを重合させた。ベーク後、PDMSを室温まで冷却した後、ウェハから取り除いた。この製造工程後、PDMS膜を水中での超音波処理によって清浄した。滅菌と細胞接着促進の目的で、細胞播種前に膜を酸素プラズマで処理し、30分間かけて2%ゼラチンをコーティングした。
【0187】
生分解性の微小パターン形成フィルムについては、成分比70:10:20のトリブロックコポリマーPLGC(Aldrich, St. Louis, MO)(Mn約100,000)を利用した。クロロホルム中にて濃度50mg/mLでPLGC溶液を調製し、溶解するまで攪拌プレート(stirplate)で攪拌した。この溶液をケイ素金型に注ぎ、溶媒を蒸発させ、ポリマー薄膜を形成した。製造後、PLGCフィルムを70%エタノール中にて2時間滅菌し、PBS中ですすいだ。細胞播種前に、30分間かけてフィルムに2%ゼラチンをコーティングして、細胞接着性を高めた。
【0188】
(実施例5)
(走査型電子顕微鏡法(SEM)による組成物のキャラクタリゼーション)
細胞を含有する組成物または試料を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝2%グルタルアルデヒド中で固定してSEM用に処理した。エタノール脱水シリーズ後、試料を乾燥させ、イリジウムまたは金:パラジウム(40:60)粒子を厚さ10〜15nmにスパッタコートした。環境走査型電子顕微鏡(Philips XL-30)下で試料を可視化した。
【0189】
(実施例6)
(免疫蛍光染色)
試料を4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定し、0.5%トリトンX−100で10分間透過処理し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)で30分間前処理した。F−アクチンアセンブリをフルオレセイン(FITC)−コンジュゲートファロイジン(5U/mL、Molecular Probes)インキュベーションで1時間かけて染色した。ミオシン重鎖染色では、試料をマウス抗骨格速ミオシン重鎖(87μg/mL、Sigma)で培養した後、FITC−コンジュゲートロバ抗マウス(6.25μg/mL、Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)抗体と一緒にインキュベーションした。細胞核をToPro(1μM、Molecular Probes)で染色した後、Nikon TE300顕微鏡またはLeica TCS SL共焦点顕微鏡で可視化した。共焦点画像は、三次元のスタック画像を二次元で投影したものである。
【0190】
(実施例7)
(BrdU取り込み)
細胞周期の分析のために、成長培地においてブロモデオキシウリジン(BrdU、1:1000、Amersham, Piscataway, NJ)で試料を2時間パルスした後、4%パラホルムアルデヒドに固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄した。試料を50%メタノールで30分間前処理した後、0.5%トリトン−X−100で10分間透過処理し、続いて2N HClで30分間処置した。その後、試料をマウス抗BrdU(2.5μg/mL、BD Biosciences, Bedford, MA)と一緒に培養した後、FITC−コンジュゲートロバ抗マウス(6.25μg/mL)抗体と一緒に培養した。細胞核をヨウ化プロピジウム(1μg/mL、Molecular Probes)で染色した。
【0191】
(実施例8)
(細胞融合および増殖の分析)
少なくとも5つの代表的な高倍率(40×)および低倍率(10×)視野で抗骨格ミオシン染色の免疫蛍光画像を得た。SPOT 4.0.5ソフトウェア(Diagnostic Instruments, Sterling Heights, MI)を使用して、筋管幅、長さ、整列されたナノ繊維またはマイクログルーブの軸に対するアライメントを、高倍率および低倍率でそれぞれ定量化した。最小筋管アライメント値0度がナノ繊維の軸に対して平行なアライメント、最大の90度が直交アライメントを示す。ランダム配向ナノ繊維足場材および非パターン形成PDMS基板のアライメント解析のために、任意のアライメント軸を利用した。加えて、融合した核、BrdU陽性細胞および横紋(striated)筋管の比率を定量化し、高倍率で平均を取った。平均幅を定量化し、平均を取った。低倍率での連続画像を合成して筋管長を定量化した。すべてのデータを平均±標準偏差(n≧3)で表した。2つの群に対するスチューデントのt検定またはホルムの補正による多重比較での分散(ANOVA)解析によって、統計的有意性を求めた。
【0192】
(実施例9)
(導管)
整列されたナノ繊維の矩形のシートで筋芽細胞を7日間分化させた。三次元構造を作製するために、直径1〜2mmの鋼棒にナノ繊維シートを巻いた(図27)。管状構造の両端で管状構造を7-0 Ticron縫合糸によって固定した。次に、試料を組織学的解析用に低温切開した。低温切開試料を常法のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色およびF−アクチンの免疫蛍光染色で解析した。
【0193】
こうして製造した管状構造は直径約2〜3mm、長手方向の長さ10mmであった。これらの構造の断面総(gross)形態をH&E染色することで、構造の管状構造の作製に成功したことが明らかになった(図28)。足場材の層全体に際だった紫色の核が認められたが、各層の表面にはさらに多くの細胞が見られた。免疫蛍光的に染色したF−アクチンを共焦点顕微鏡検査したところ、構造の多層内への細胞透過が示された(図29)。細胞は細長い形態をとり、ナノ繊維の方向に整列されていた。これらの結果から、ナノ繊維ポリマーを用いて整列された三次元骨格筋を設計する実現可能性が分かる。
【0194】
(実施例10)
(ナノ繊維ポリマー製造)
生分解性ポリ(L−ラクチド)(PLLA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度1.09dL/g)を利用して、Rosen et al., Ann Plast Surg., 25:375-87 (1990)によってすでに説明されているような電界紡糸でナノ繊維足場材を作製した。プログラム可能なポンプを用いて、PLLA溶液(クロロホルム中10%w/v)を、高電場で接地した捕集板まで供給し、ランダムナノ繊維を得た。ナノ繊維を整列させるために、電界紡糸した足場材を60℃でひずみ200%まで一軸延伸した。ナノ繊維足場材は厚さ約150μmであった。走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて、一軸延伸後のナノ繊維アライメントを可視化した。SEM画像から、一軸延伸によって高度に整列されたナノ繊維が得られたことが分かる(図12A〜図12B)。ナノ繊維の平均直径は約500nmであった。
【0195】
ナノ繊維を化学的に修飾するために、1種のECMタンパク質(ラミニン)と1種の神経栄養因子(塩基性線維芽細胞因子またはbFGF)とを代表例として選択した。ラミニンおよびbFGFはいずれも、in vitroで神経突起の伸長を促進することが明らかになっている。Manthorpe et al., J Cell Biol., 97:1882-90 (1983); Rydel et al., J Neurosci., 7:3639-53 (1987)。さらに、どちらのタンパク質もそのヘパリン結合ドメインを介してヘパリンと関連している。ヘパリンはまた、bFGFが分解されないよう保護し、bFGF細胞シグナリング経路で重要な役割を果たすことが明らかになっている。Gospodarowicz et al., J Cell Physiol., 128:475-84 (1986); Saksela et al., J Cell Biol., 107:743-51 (1988); Yayon et al., Cell, 64:841-8 (1994)。
【0196】
ジアミノポリ(エチレングリコール)(di−NH2−PEG)をリンカー分子として用いて、ヘパリン官能化ナノ繊維(図12C)を作製した。まず、足場材を0.01N NaOH(Sigma, St. Louis, MO)で処理することで、PLLAナノ繊維での反応性カルボキシル基の密度を増した。次に、ゼロ長架橋剤1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo−NHS)(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を用いて、Di−NH2−PEG(分子量3400、Sigma)分子をPLLAナノ繊維のカルボキシル基と共有結合的に結合した。さらに、ヘパリン(Sigma)分子を、EDCおよびスルホ−NHSを介してdi−NH2−PEG分子の遊離アミンと共有結合的に結合した。ナノ繊維足場材の残りの反応部位については、10%w/vグリシンに入れた試料をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中でインキュベートしてブロックした。続いて、PBS溶液中のbFGF(50ng/cm2、Peprotech, Rocky Hill, NJ))およびラミニン(10μg/cm2、Sigma)をナノ繊維足場材と一緒に連続培養し、ヘパリンに結合してナノ繊維表面に固定化できるようにした。
【0197】
改変ELISA法を用いて、bFGF分子のヘパリン官能化PLLAナノ繊維への結合を確認した。bFGFを固定化する異なる方法の効率を比較するために、同じサイズで、未処理、di−NH2−PEG修飾、ヘパリン官能化ナノ繊維膜の3つのナノ繊維足場材をbFGFと一緒にPBS中で培養した。さらに、すべての膜を1%ウシ血清アルブミン(BSA)と一緒にPBS溶液中で培養し、抗体の受動吸着を最小限にした。続いて、試料をHRP−コンジュゲート抗bFGFマウスモノクローナルIgG抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)と一緒に培養した。膜をしっかりと洗浄し、エッペンドルフチューブに移し、HRP基質溶液(過酸化水素およびクロマゲン、テトラメチルベンジジン)と一緒に培養した。次に、2N硫酸を用いて反応を停止させた。さらに、分光光度計(波長450nm)を用いて溶液の吸光度を読み取った。bFGF抗体の非特異的吸着を陰性対照試料で試験したところ、無視できるものであることが明らかになった(データ図示せず)。結果(図12D)から、bFGFコーティングはヘパリンで官能化したナノ繊維上で有意に一層効率的であることが分かる。PLLAナノ繊維(図12E)で用いたものと同じ要領で、ポリ(アクリル酸)でコーティングし、di−NH2−PEGおよびヘパリンと接合した組織培養ポリスチレン基質で、これらの結果をさらに確認した。
【0198】
P4−P5ラットから採取したDRG組織を利用して、ナノ繊維足場材での神経突起伸長について検討した。以下の整列および未整列のPLLAナノ繊維足場材すなわち未処理、ラミニン(LAM)で官能化したヘパリン、ラミニンおよびbFGF(LAM+bFGF)で官能化したヘパリンにて、B27および0.5mMのL−グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を加えた神経基礎培地で、DRG組織を6日間培養した。ex vivoでの6日間の培養後、免疫蛍光染色を用いて神経突起伸長を解析した。いずれの試料もまず、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、PBS溶液中、0.5%トリトン−X100で細胞膜を透過処理した。試料をヤギポリクローナル抗神経細線維−M(NFM)IgG抗体(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)と一緒に培養した後、FITC−コンジュゲートロバ抗ヤギIgG抗体(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)と一緒に培養した。試料をスライドガラスに載せ、Zeiss社の蛍光顕微鏡およびLeica社の共焦点蛍光顕微鏡を用いて可視化した。
【0199】
未整列の未処理ナノ繊維足場材ではDRG組織からの神経突起伸長は観察されなかった(図13未処理)。未整列のLAMナノ繊維で培養したDRG組織からの神経突起伸長が最小限(図13LAM)であった。未整列のLAM+bFGFナノ繊維で培養したDRG組織からはさまざまな神経突起が伸長しているのが観察された(図13LAM+bFGF)。神経突起はDRG組織から半径方向に外に向かって伸長しアライメントの均一性を欠いていた。DRG組織からの神経突起の成長は約1mmであった。
【0200】
未整列の未処理ナノ繊維とは対照的に、未処理の整列されたナノ繊維では神経突起伸長が観察された。神経突起はDRG組織の2つの異なる領域から伸長し、ナノ繊維の方向に整列された。組織のこれら2つの領域のうちの一方からの神経突起の伸長を図14に示す。未処理のナノ繊維での神経突起の成長は約0.7mmであった。これらの結果から、整列されたナノ繊維が、DRG組織での感覚ニューロンからの神経突起伸長を誘導するガイダンスとなることが分かる。これと同様に整列されているがこれよりも長い神経突起が、整列されたLAMナノ繊維で観察された(図14LAM)ことから、ECMタンパク質は整列されたナノ繊維のガイダンスをさらに亢進できると思われる。LAMナノ繊維での神経突起の成長は約1.3mmであった。最も長く最も密な神経突起伸長が、整列されたLAM+bFGFナノ繊維で観察された(図14LAM+bFGF)。LAM+bFGF成長での神経突起の成長は約4.8mmであった。これらの結果から、ラミニンおよびbFGFからの化学的なきっかけ(cue)ならびに整列されたナノ繊維基質からの物理的なきっかけは個々にまたは組み合わせで、感覚ニューロンからの神経突起伸長を大きく亢進および指令するということが明確に分かる。高倍率共焦点顕微鏡検査を行ったところ、伸長している神経突起が生物活性ナノ繊維のガイダンスに沿っており、ランダムなナノ繊維および整列されたナノ繊維に目立ったパターンを形成する(図15)ことが明らかになった。
【0201】
(実施例11)
(長手方向に整列されたポリマー足場材導管)
生分解性ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度0.82dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材を作製した。プログラム可能なシリンジポンプを用いて、PLGA溶液(HFIP中20%w/v)を電極の出口穴まで流量1mL/時で供給した。高電圧電源を利用して、11kVの電圧を印加した。コレクタ基板は、マンドレルをその長軸を中心として回転(rotated)できるモーターに取り付けられた、接地した鋼製マンドレルとした。マンドレルの一部にテフロン(登録商標)テープを巻いて非電導性領域を作った。PLGA繊維の電界紡糸時には、マンドレルを低速(<15rpm)で回転させた。マンドレルの2つのセクション間で交互に射出される噴流は、マンドレルの長軸に平行に整列されたPLGA繊維の堆積につながる非電導性テフロン(登録商標)テープ領域によって分離した。マンドレルを回転させることで、PLGA繊維をマンドレルの周りに均等に被覆するようにした。電界紡糸終了後、外科用メスで電界紡糸PLGA繊維導管の縁を鈍くした上で、テフロン(登録商標)テープおよびマンドレルから導管を取り外した。
【0202】
繊維のアライメントを確認するために、チューブをその長軸に沿って切断し、繊維形態を光学顕微鏡で可視化した。大多数の繊維が長手方向(すなわち導管の長軸に沿って)整列されていた。
【0203】
(実施例12)
(長手方向に整列されたポリマー足場材の棒)
生分解性ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度0.82dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材を作製することができる。プログラム可能なシリンジポンプを用いて、PLGA溶液(HFIP中20%w/v)を電極の出口穴まで流量1mL/時で供給することができる。高電圧電源を利用して、11kVの電圧を印加することができる。電界紡糸工程で長手方向に整列された繊維を棒状に形成できるようにするために、特別なコレクタ基板を利用することができる。コレクタ基板は、接地された2つの金属マンドレルを、間に空隙(すなわち2cm)をあけて端と端を並べて配置したものからなるものであればよく、電極の出口穴の下(すなわち15cm)に配置できる。各マンドレルは、マンドレルをその長軸を中心として同期的に回転できる電子制御されたモーターに取り付けることが可能なものである。電界紡糸工程では、マンドレルを低速(<10rpm)で回転させ、電界紡糸ポリマー繊維を均等に堆積させることができる。電界紡糸工程では、ポリマー溶液は、捕集基板に向かって移動する噴流を形成することになる。この場合、噴流は、隙間の長さに沿って整列された(マンドレルの長軸と同じ配向を有する)繊維を形成しながら2つのマンドレルの端間の空隙を横切る。電界紡糸の完了時、外科用メスを使ってマンドレルの縁に沿って切り取ることで、電界紡糸ポリマー材料を2つの金属マンドレルの端から分離することができる。結果は、繊維がその長軸に沿って整列された、棒形の電界紡糸繊維ポリマー足場材である。
【0204】
(実施例13)
(長手方向に整列された充填導管繊維ポリマー足場材)
長手方向に整列された繊維からなり、長手方向に整列されたポリマー繊維で充填された導管を形成するには、以下の方法を利用することができる。まず、長手方向に整列された繊維を有する中空の導管を電界紡糸する。長さ2cmの長手方向に整列された充填導管を内径0.5cmで作製するには、以下の条件を利用すればよい。まず、長さ少なくとも2cm、直径0.5cmの非電導性領域を有するマンドレルを利用して、長手方向に整列された中空の導管を本明細書に記載されているように電界紡糸することができる。長手方向に整列された中空の導管をマンドレルから取り外し、適当な大きさに切断する。フィラー材料を、本明細書に記載されているような整列されたポリマー繊維の多孔性の高いシートとして電界紡糸する。整列されたナノ繊維のシートを適切な管腔寸法の中空導管に形成することができる。次に、整列された繊維のシートを導管に挿入し、その長軸に沿って整列されたポリマー繊維が詰まった導管足場材を作製する。
【0205】
フィラー材料を、整列された繊維からなる丸まったシートまたは長手方向に整列された繊維からなる棒のいずれかとして、作製することができる。整列された繊維からなる丸まったシートを用いてフィラー材料を生成するには、本明細書に記載の方法を利用すればよい。厚さ50ミクロンの整列された繊維ポリマー膜を電界紡糸することができ、2cm×2cmの正方形のセクションを切り取ることができる。続いて、整列された繊維が丸まったシートの長さに沿って走るような要領で、シートを丸めることができる。このシートについては、形成される棒の直径が0.5cmになるまで丸めることができる。そして、余分な材料については切り取ることができる。次に、丸められた棒形のフィラー材料を長手方向に整列された中空の導管に鉗子で挿入し、長手方向に整列された充填導管を形成することができる。フィラー材料を生成するには、本明細書に記載の方法で長手方向に整列された繊維からなる棒形の繊維ポリマー足場材を利用すればよい。適切なサイズの棒を作製するために、2つのコレクタマンドレルを直径0.5cmにすることができ、また、間隔少なくとも2cmとして、少なくとも2cmの空隙を得ることができる。実施例12で棒を電界紡糸した後、これを外科用メスで取り外し、マンドレルの縁に沿って切断することができる。次に、棒形の足場材を鉗子で中空の導管内に挿入することができる。
【0206】
(実施例14)
(PLGAナノ繊維足場材の作製)
生分解性ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度1.09dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材膜を作製した。プログラム可能なシリンジポンプを用いて、PLGA溶液(HFIP中20%w/v)を電極の出口穴まで流量1mL/時で供給した。高電圧電源を利用して、11kVの電圧を印加した。接地してステップモーターで制御したアルミニウム箔で覆われた(直径:10cm、長さ:10cm)回転式の鋼ドラムに繊維を堆積させた(図41参照)。整列されたナノ繊維の場合、コレクタドラムを400rpmで回転させた。未整列の繊維の場合、捕集ドラムを<30rpmで回転させた。繊維足場材が、直径500nmの繊維で構成された厚さ約130μmのものになるまで、電界紡糸を実施した。繊維ポリマーシートをドラムから取り外すために、ポリマー層および箔をドラムの長さ方向に沿って切断し、ドラムから引き出した。次に、アルミニウム泊から繊維ポリマー層を剥がし、長さ約30cm、幅10cmの繊維ポリマーシートを作製した。
【0207】
位相差顕微鏡(Carl Zeiss)を用いて繊維のアライメントを調べ、繊維ポリマーシートを特定の用途に合う所望の寸法に切断した。創傷治癒の場合、ナノ繊維足場材片を、創傷の寸法に合うようにまたは創傷の縁を越えるように切断することができる。繊維の配向については、創傷の特定の軸に対して特定の角度で整列されるように選択可能である。
【0208】
(実施例15)
(十字ナノ繊維足場材の作製)
繊維の十字パターンを有する繊維ポリマー足場材を、いくつかの方法で形成することができる。一例では、電界紡糸を利用して、繊維を回転ドラム上に捕集するか未整列の繊維を延伸することで、整列された繊維ポリマーシートを本特許で上述したようにして形成することができる。これらの整列されたポリマーシートをコレクタドラムから取り外し、各シートの繊維が上下のシートの繊維とは直交して整列されるような状態で互いに重ねて層状化することが可能である(図38)。さらに、シートを縫い合わせて機械的強度および安定性を得るようにしてもよい。
【0209】
2つ目の例では、長手方向の繊維をドラムに沿って電界紡糸するために中央に非電導性セクションを有する電導性ドラムを利用して、十字パターンを形成することができる。直径10cm、長さ10cmの鋼ドラムをモーターに固定することができる。テフロン(登録商標)テープをドラムに巻き付け、幅の4cm分を覆うことができる。十字パターンを作製するには、ドラムをまずゆっくりと(<30rpm)回転させて長手方向の軸に沿って非電導性テフロン(登録商標)テープ領域を横切って整列された繊維を作製する。続いて、ドラムを高速(>100rpm)で回転させ、第1の層とは直交方向に整列された繊維を作製する。ドラムの低速回転と高速回転とを切り換えることで、一連の整列された繊維層がテフロン(登録商標)テープ領域に堆積され、十字パターンとなる。あるいは、本発明において上述したマンドレルの設計に近い、2つの電導性金属領域に非電導性領域が挟まる場所にドラムを構成してもよい。
【0210】
3つ目の例では、回転ドラムをコレクタ基板として利用して、十字アライメントの繊維を有する繊維ポリマー足場材シートを電界紡糸することができる。整列された繊維ポリマーシートの電界紡糸用に、電界紡糸のセットアップを本明細書に記載されているようにして組み立てることができる。整列された繊維の層を回転ドラムに堆積させることができる。続いて、繊維の層をドラムから剥がし、90°回転させ、ドラムコレクタに戻すことができる。このドラムを、整列された繊維の堆積が可能なように高速(<100rpm)で回転させることができる。この工程を何度も繰り返すことで、特定の繊維の層がこれと隣接する繊維層に対して直交して整列されている、十字整列された繊維ポリマー足場材シートを作製することができる。
【0211】
(実施例16)
(マイクロ/ナノ繊維創傷治癒)
実施例10で説明したようにして、整列された繊維または未整列の繊維を有するPLLAマイクロ/ナノ繊維シートを作製した。これらの繊維シート上で、以下のようにして正常なヒト真皮の線維芽細胞(NHDF)の単層膜に人工創傷またはギャップ欠陥を作製した。まず、手万力を使って18ゲージのシリンジニードルを平らにした。次に、ナノ繊維PLLAメッシュを1×1cmの寸法に切った。平らにしたニードルとメッシュとを70%イソプロピルアルコールおよびUV光で30分間滅菌し、ニードルを繊維のアライメントに対して所望の配向でナノ繊維にしっかりと固定した−繊維は、創傷軸に対して平行、直交または未整列とした(図35)。細胞密集度を全面としてNHDFを播種したが、ニードルがあるため細胞が下で結合することはなかった(図35)。細胞接着後にニードルを取り除き、「創傷」を適所に残した。加湿したインキュベータ内で、5%CO2で37℃にて、1〜2日間培養物を維持し、細胞移動および創傷被覆のための時間を与えた。播種前に、NHDFをDiI細胞トラッカー(1:2000希釈、10分)で簡単に染色し、最初の創傷サイズを観察するとともに、創傷への細胞浸潤の進行具合を観察した。
【0212】
マイクロ/ナノ繊維上のNHDFを4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%トリトンX−100で透過処理し、1%BSAでブロックした。細胞骨格染色のために、抗全(whole)アクチン一次抗体と一緒に試料を60分間培養した後、FITC−コンジュゲート抗ヤギIgG二次抗体(Jackson ImmunoResearch)と一緒に60分間インキュベーションした。細胞骨格の特徴を利用して、細胞の配向と形態を判定し、NHDF単層膜の全体としての組織化および創傷被覆も判定した。NHDF核をヘキストで5分間染色し、細胞を計数できるようにした。未整列の繊維では、細胞移動および創傷被覆は24時間後もほどほどであったが、繊維を創傷の長い方の縁に直交する向きにしたところ大幅に亢進された(図36)。また、残ったNHDFは未整列の繊維でランダムに配向されたが、整列された繊維では繊維方向に合わせて配向された。
【0213】
(実施例17)
(創傷治癒)
実施例16で説明したようにして、整列された繊維だけを用いて創傷治癒用のPLLA繊維ポリマー足場材シートを作製した。細胞播種の前に、実施例10で説明したようにして繊維ポリマー足場材シートをラミニンおよび/またはbFGFで官能化した。bFGFについては、上述したようにポリマー足場材シートに固定化するか、培地に可溶な形で提供した。繰り返すが、実施例16で説明したようにして、これらの繊維シート上で正常なヒト真皮線維芽細胞(NHDF)の単層膜に人工創傷またはギャップ欠陥を作製した。いずれの試料でも、繊維アライメントを創傷の長軸に対して直交させた。免疫染色および顕微鏡検査を利用して、実施例16で説明したようにして細胞移動および創傷被覆を分析した。未処理繊維上のNHDFは、24時間後に創傷部分を完全に被覆することはなかったが、処理済み繊維(ラミニンまたはbFGF)上のNHDFは未処理の場合よりも短時間で創傷に移動し、創傷被覆の亢進が認められた(図37)。
【0214】
(実施例18)
(動物でのナノ繊維創傷治癒)
回転ドラムコレクタを利用して、実施例14で説明したようにして整列された生分解性ポリマーナノ繊維シートを作製する。これらのシートを創傷被覆材として利用し、動物での皮膚組織の修復を助ける。外科医が、ラットの背中に全厚ギャップ欠陥(full thickness gap defect)を切開する。マイクロ/ナノ繊維シートを創傷の寸法に切り、皮膚層に縫合してギャップへの線維芽細胞の移動を助ける。デジタル写真、組織像および免疫組織化学的検査を利用して、創傷治癒および組織再生をモニタする。
【0215】
本明細書に記載の実施例および実施形態は例示目的のものにすぎず、これらを踏まえたさまざまな改変または変更が当業者らに提案されることになり、いずれも本出願の主旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に包含される旨を理解されたい。本明細書に引用した刊行物、特許および特許出願はいずれも、あらゆる目的で本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】マンドレル56Aを有する電界紡糸装置の概略を示す。
【図2】マンドレル56Aを有する電界紡糸装置の斜視図を示す。
【図2A】ポリマー足場材90を形成しているマンドレル56Aを有する電界紡糸装置の一部を示す。
【図2B】ポリマー足場材90を形成しているマンドレル56Aを有する電界紡糸装置の一部を示す。
【図3】繊維ポリマー足場材の製造に用いられるさまざまなマンドレルのデザインを示す。(A)全面が電導性のマンドレル56;(B)第1の電導性領域57A、第2の電導性領域57B、非電導性領域55、第1のインタフェース55Aおよび第2のインタフェース55Bを有するマンドレル56A;(C)非電導性領域55が2つの電導性マンドレル領域を相互接続するマンドレル56Aの断面;(D)非電導性領域55Aが電導性部分57の表面の一部を覆うスリーブであるマンドレル56Aの断面;(E)第1の電導性領域57A、第2の電導性領域57B、第1の電導性領域面57C、第2の電導性領域面57Dを有するマンドレル56B。電導領域は空隙58によって隔てられている。
【図4A】長手方向に整列されたマイクロ/ナノ繊維で構成される導管ポリマー足場材の図である。注:繊維寸法は一定の縮尺で描かれたものではない。
【図4B】長手方向に整列されたマイクロ/ナノ繊維で構成される棒状ポリマー足場材の図である。注:繊維寸法は一定の縮尺で描かれたものではない。
【図5A】図4Aの導管の断面を示す図である。
【図5B】図4Bの棒の断面を示す図である。
【図6】マンドレル56Bを有する電界紡糸装置の概略を示す。
【図7】マンドレル56Bを有する電界紡糸装置の斜視図を示す。
【図7A】ポリマー足場材92を形成しているマンドレル56Bを有する電界紡糸装置の一部を示す。
【図8】長手方向に整列されたポリマー足場材シート96の図である。
【図9】整列されたポリマー足場材シートから、継ぎ目のある繊維ポリマーの導管状の足場材を作製するための、回転過程を示す概略図である。ここでは、長手方向に整列されたポリマー足場材シート96を棒97に巻いた後、縫合または接着する。
【図10】整列されたシート96および100を含む「十字」シート102の図である。
【図11】マンドレル56Bを有する複数の紡糸口金の電界紡糸装置110の概略を示す。ポリマー溶液38、38Aおよび38Bは、溶媒に溶解されたポリマーを含有し、それぞれシリンジアセンブリ36、36Aおよび36Bに収容されている。シリンジアセンブリは、圧力または流量を制御することで、ポリマー溶液がシリンジを出る速度をコンピュータ34で制御するシリンジポンプアセンブリ32の一部である。任意に、選択した紡糸口金に対して異なる流量を提供し、制御することも可能である。流量は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴、すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。 シリンジポンプアセンブリ32は、プラットフォーム44に載置された紡糸口金42、42Aおよび42Bにポリマー溶液を供給する。紡糸口金は、何ら支障なく噴流形成および輸送を可能にするような先端の幾何学的形状を有する。高電圧電源48によってワイヤ41A経由で約10から約30kVの範囲の電荷を紡糸口金に印加する。 電荷を帯びた紡糸口金とマンドレル56Aとの間に電場が形成されるように、マンドレル56B(図3Bで説明するように、57A、57Bおよび58を含む)を紡糸口金42、42Aおよび42Bの下に配置する。電場によって、ポリマー溶液の噴流が紡糸口金から射出されてマンドレル56Bに向かって噴霧され、ミクロンまたはナノメートル台の直径のフィラメントまたは繊維46、46Aおよび46Bが形成される。アース線41Bおよび41Cを用いてドリルチャックを接地する。 マンドレル56Bは、モーター52に接続された第1のドリルチャック54(非電導性ベアリング60に取り付けられている)および第2のドリルチャック54A(非電導性ベアリング60Aに取り付けられている)に取り付けられる。モーター52は、モーターがマンドレル56Bを回転させる速度を制御する速度制御50Aにリンクしている。任意に、異なる回転速度とすることができる。回転速度は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【図12】未整列(A)および整列された(B)PLLAナノ繊維のSEM画像である。(C)PLLAナノ繊維のヘパリンによる化学的修飾とbFGFおよびラミニンの非共有結合を示す図である。改変ELISA法を利用して、未処理、di−NH2−PEG修飾、ヘパリン官能化PLLAナノ繊維(D)、ポリ(アクリル酸)被覆ポリスチレン表面(E)でのbFGF結合の相対レベルを示した。
【図13】未整列のナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長である。神経細線維の免疫蛍光染色を利用して、ex vivo培養の6日後に、未処理、LAMおよびLAM+bFGF未整列のナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長を可視化した。スケールバー=200μm。
【図14】整列されたナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長である。神経細線維の免疫蛍光染色を利用して、ex vivo培養の6日後に、未処理、LAMおよびLAM+bFGF整列されたナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長を可視化した。ナノ繊維は垂直方向に整列されていた。スケールバー=200μm。
【図15】未整列および整列されたLAM+bFGF PLLAナノ繊維上での神経突起形態の高倍率共焦点顕微鏡画像である。整列されたナノ繊維は垂直方向であった。
【図16】PLLAマイクロ/ナノ繊維膜上のペレットとして、1日間、3日間または6日間ヒト間葉幹細胞を培養した。未整列のマイクロ/ナノ繊維上の細胞は、時間の経過に伴ってゆっくりと移動し、ランダムなアライメントを示す。整列されたマイクロ/ナノ繊維上の細胞では、3日目および6日目に繊維の方向に移動が促進され、全体として繊維方向にアライメントしている。スケールバーは200μmである。
【図17】さまざまな細胞タイプを用いた場合のマイクロ/ナノ繊維足場材上での創傷治癒モデルである。MSC:2日後の間葉幹細胞。FF:5日後の包皮線維芽細胞。EC:1日後の内皮細胞。未整列のマイクロ/ナノ繊維足場材上では、創傷被覆は最小限(MSC試料)から中程度(EC試料)の範囲である。マイクロ/ナノ繊維が創傷の長軸に対して平行に整列されると(A-Para)、創傷への細胞移動が大幅に改善される。マイクロ/ナノ繊維が創傷の長軸に直交して整列されると、細胞移動および創傷の被覆が最大になる。
【図18】A)ネイティブなin vivo総頸動脈の平滑筋細胞配向と、B)ヒト平滑筋細胞を播種した整列されたナノ繊維ポリマーシートとの間で、同様の細胞骨格構造を示しているアクチン(ファロイジン)および核(ヨウ化プロピジウム)の蛍光染色画像である。
【図19】ナノ繊維、幹細胞包埋血管移植片の構成。A)生分解性ナノ繊維の整列されたシートに幹細胞を播種。B)シートを棒に巻いて管状構造を作製。C)棒を取り除き、縫合糸を使って移植片の形状を維持。
【図20】血管移植片およびラット動脈断面のVerhoeff染色。コラーゲン(赤)およびエラスチン(黒)繊維生成物が1週間から3週間で有意に改善される。3週間が経過するまでに、再生医療血管移植片はラットの本来の動脈と非常によく似てくる。
【図21】移植3週間後の血管移植片でのCD31(内皮細胞マーカー)の場合の断面免疫組織化学染色(茶色)。A)ラット動脈。B)3週間後の血管移植片。
【図22】移植3週間後の血管移植片でのα−アクチン(平滑筋マーカー)の場合の断面免疫組織化学染色(茶色)。A)ラット動脈。B)3週間後の血管移植片。
【図23】未整列の表面上またはパターンが形成されていない表面上で筋芽細胞を増殖させると、筋管はランダムに形成される。整列されたナノ繊維上または微小パターンが形成された表面上で筋芽細胞を増殖させると、筋管が整列されて形成される。
【図24】整列されたPLLAナノ繊維足場材上での筋芽細胞アライメントおよび筋管構築。SEM画像は、(A)ランダム配向および(B)整列されたナノ繊維足場材の構造、これに続く分化培地での3日後の(C)ランダム配向および(D)整列されたナノ繊維足場材上での筋芽細胞のF−アクチン免疫蛍光染色の構造を示している。骨格MHCの免疫蛍光染色を実施し、3日(E、F)および7日(G、H)目のランダム(E、G)および整列された(F、H)ナノ繊維足場材上での筋管を示した。筋管の長さと全体としてのアライメントを示す7日後の(I)ランダム配向および(J)整列された基板上での骨格MHC染色の低倍率合成画像。矢印はナノ繊維の方向を示す。EおよびFの矢印の頭は核を示す。スケールバーはそれぞれ、50μm(A〜H)および100μm(I、J)である。
【図25】整列されたナノ繊維基板上での筋管組織化および形態の定量化。(A)ナノ繊維の方向に対する筋管アライメントの角度。(B)7日後の筋管の長さ。(C)7日後の筋管の幅。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図26】整列されたナノ繊維足場材上での筋芽細胞増殖および筋管横紋の定量化。(A)細胞増殖のBrdU取り込み(Rはランダム;Aは整列)。(B)整列されたナノ繊維足場材上での横紋筋管を示す抗MHCの免疫蛍光染色(スケールバー:20μm)。(C)7日後の横紋細胞の比率の定量化。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図27】微小パターンが形成されたPDMS基板上での筋芽細胞アライメントおよび筋管組織化。微小パターンが形成されたPDMS基板を、(A)SEM(側面)および(B)位相差顕微鏡画像で示す。分化培地での2日後のF−アクチン分布を(C)パターン形成なしの基板上と(D)微小パターンが形成された基板上で示す。骨格MHCの免疫蛍光染色を実施して、パターン形成なしの膜上(E、G)と微小パターンが形成された(F、H)膜上での2日後(E〜F)および7日後(G〜H)の細胞融合を示した。矢印はマイクログルーブの方向を示す。スケールバーはそれぞれ、5μm(A)、20μm(B)、50μm(C〜H)である。
【図28】微小パターンが形成された膜上での筋管組織化および形態の定量化。(A)パターン形成なし(Con)と微小パターンが形成された(Pat)膜上でのマイクログルーブの方向に対する筋管アライメントの角度。(B)7日後の筋管の長さ。(C)7日後の筋管の幅。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図29】微小パターンが形成されたPDMS膜での筋芽細胞増殖および横紋の定量化。(A)パターン形成なしの膜上(Con)と微小パターンが形成された(Pat)膜上での融合初期における細胞増殖でのBrdU取り込み。(B)7日後の横紋細胞の比率の定量化。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図30】ナノ繊維足場材上での筋管形成のSEM画像。(A)ランダム配向および(B)整列されたPLLAナノ繊維足場材上での分化培地での7日後の筋管アライメント(スケールバー:50μm)。
【図31】微小パターンが形成された生分解性PLGC基板上での筋芽細胞のアライメント。(A)PLGC基板上での形態的に微小パターンが形成されたグルーブのSEM画像。(B〜C)パターン形成なし(B)と微小パターンが形成された(C)PLGC基板上での分化培地における5日後の筋芽細胞のF−アクチン染色。微小パターンが形成されたPLGC基板上の整列され十分に組織化されたアクチンストレス(stress)繊維に注意されたい。スケールバーはそれぞれ、10μm(A)および50μm(B〜C)である。
【図32】三次元の筋繊維播種管状足場材を作製するための回転工程を示す概略図である。筋芽細胞は、整列されたナノ繊維の膜上で整列された筋管に分化した。分化7日後、棒の柄でシートを巻いて管状の足場材にし、縫合糸で固定した。
【図33】低倍率(左)および高倍率(右)での三次元の管状ナノ繊維足場材の組織化を示すヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色。
【図34】断面(A)および長軸(B)態様での三次元の管状ナノ繊維足場材における筋芽細胞および筋管の細胞形態を示すレーザ共焦点顕微鏡画像。F−アクチン(緑)および核(赤)について試料を免疫蛍光的に染色した。
【図35】整列された繊維上または未整列の繊維上でのin vitro創傷治癒モデルの概略。(A)創傷の長縁に対して平行または直交して配向できる整列された繊維または未整列の繊維を用いて、メッシュとしてマイクロ/ナノ繊維を作製する。(B)平らにした18ゲージのシリンジニードルをナノ繊維メッシュの上に置き、細胞接着をブロックする。(C)ナノ繊維メッシュに細胞を播種する。(D)細胞がナノ繊維に付着した後、ニードルを取り外して創傷への細胞移動ができるようにする。
【図36】整列されたナノ繊維上と、未整列のナノ繊維上でのNHDFを用いたin vitro創傷治癒モデル。48時間後、未整列のマイクロ/ナノ繊維上のNHDF(A)は中程度の移動および創傷被覆を示し、ランダムな細胞アライメントである。繊維を創傷の縁に直交させて整列させると(B)、移動および創傷被覆が大幅に促進され、細胞が繊維と整列される。繊維を創傷の縁と平行に整列させると(C)、創傷被覆は大幅に低下する。染色は、全アクチン(緑)およびヘキスト核染色(青)である。白い点線は0時間の時点での初期創傷縁を示す。スケールバーは300μmである。
【図37】化学修飾を施した場合と施さない場合の整列されたマイクロ/ナノ繊維でのNHDFを用いたin vitro創傷治癒モデル。すべての群で、マイクロ/ナノ繊維が創傷の長縁に直交して配向された。24時間後、NHDFは、化学修飾を加えた繊維上で、移動および創傷被覆が亢進された。未処理の繊維上では、細胞は創傷部分を完全に覆うことがなかった。繊維にラミニンを加えると、細胞が一層短時間で移動した。bFGFを加えると、可溶の形またはマイクロ/ナノ繊維に固定化した状態で移動がさらに促進された。染色は、全アクチン(緑)および核(青)である。白い点線は0時間の時点での初期創傷縁を示す。スケールバーは300μmである。
【図38】多層マイクロ/ナノ繊維組織移植片の構築。個々のマイクロ/ナノ繊維シートを互いに重ねて層状化し、複雑なアーキテクチャの構造物を作製することができる。この図は、十字繊維構造を有する移植片の構築を示す。個々のシート各々の繊維配向に応じて、別のアーキテクチャを作製することが可能である。
【図39】微小パターンが形成されたポリマーフィルムの製造。(A)シリコーンウェハにネガティブフォトレジストをスピンコートし、フォトマスクを介してUV光に露光した。(B)UV重合なしのフォトレジストを現像し、パターン表面を残した。(C) ポリマー溶液をウェハにキャストし、スピンコートし、重合させた。(D)シリコンウェハからフィルムを剥がした。
【図40】多細胞タイプ移植片。A)整列されたまたはランダムに配向されたナノ繊維シート。B)シートの異なる部分に複数の細胞タイプを播種。C)移植片の異なる場所に複数の細胞タイプを含む管状構造物を作製。
【図41】回転ドラムコレクタを有する本発明の電界紡糸装置を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体をあらゆる目的で本明細書に援用する、2006年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/861,780号、2006年6月9日に出願された同第60/804,350号および2006年1月27日に出願された同第60/763,111号の優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
当該技術分野においては、被検体の生物学的機能に取って代わることができるまたは生物学的機能を改善できる組成物への需要がある。また、当該技術分野においては、被検体での新たな組織の成長を促進することができる、または損傷を受けた組織に取って代わることができる組成物への需要がある。これらの需要および他の需要は、本明細書に記載の本発明によって対処される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、第1の繊維ポリマー足場材を含む組成物であって、第1の繊維ポリマー足場材の繊維が整列されている、組成物を提供するものである。例示的実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材が、約0.01cmから約20cm、約0.05cmから約5cm、約0.5cmから約5cm、約1cmから約5cm、約2cmから約5cm、約1cmから約3cm、約2cmから約10cmおよび約5cmから約15cmから選択される一つの長さを有する。例示的な別の実施形態では、組成物は、シート、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する。例示的な別の実施形態では、組成物は、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する。例示的な別の実施形態では、組成物は棒状である。例示的な別の実施形態では、前記第1の繊維ポリマー足場材が、長手方向および円周方向から選択される一つの方向に本質的に整列されている。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材には継ぎ目がある。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材がシームレスである。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材はモノリシックに形成されている。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つのポリマーまたはサブユニットを含む。例示的な別の実施形態では、脂肪族ポリエステルが、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本がポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む。
【0004】
例示的な別の実施形態では、ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリ酸化プロピレンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、細胞を含む。例示的な別の実施形態では、細胞が、第1の繊維ポリマー足場材の中に包埋されているか、その表面上にある。例示的な別の実施形態では、細胞は、幹細胞および前駆細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体血管細胞、血管前駆細胞、血管幹細胞、成体筋肉細胞、筋肉前駆細胞、筋幹細胞、成体神経細胞、神経前駆細胞、神経幹細胞、シュワン細胞、線維芽細胞、成体皮膚細胞、皮膚前駆細胞および皮膚幹細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、直接にまたはリンカーを介して、前記第1の繊維ポリマー足場材に共有結合された分子を含み、前記分子が、細胞外マトリクス成分、成長因子、分化因子およびこれらの組み合わせから選択される一つに、共有結合的または非共有結合的に結合できるものである。例示的な別の実施形態では、分子はリンカーを介して共有結合的に結合され、前記リンカーは、ジアミノポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)およびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、分子は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞外マトリクス成分は、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、ポリリシンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、成長因子は、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、血管内皮成長因子、上皮成長因子、ケラチノサイト成長因子およびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、分化因子は、ストロマ細胞由来因子、ソニックヘッジホッグ、骨形成タンパク質、ノッチリガンド、Wntおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、前記第1の繊維ポリマー足場材は、導管、充填導管または棒の形状であり、前記ポリマーがシームレスである。
【0005】
例示的な別の実施形態では、ポリマーを含むポリマー溶液を回転式のマンドレルに供給することで組成物が生成される。例示的な別の実施形態では、前記ポリマー足場材は、シート、導管または充填導管の形状であり、少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを含む電界紡糸工程で生成される。例示的な別の実施形態では、前記ポリマー足場材は棒形であり、空隙のある回転式のマンドレルを含む電界紡糸工程で生成される。
【0006】
別の例示的な実施形態では、本発明は、(a)本明細書に記載の組成物と、(b)薬学的に許容される賦形剤と、を含む薬品組成物を提供するものである。例示的な別の実施形態では、組成物は棒または導管であり、第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む。例示的な別の実施形態では、組成物の長さが約0.5cmから50cmである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、第1の繊維ポリマー足場材を囲むスリーブを含む。例示的な別の実施形態では、スリーブは、第2の繊維ポリマー足場材を含み、前記第2の繊維ポリマー足場材は、整列されているかランダム配向を有する。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、第1の繊維ポリマー足場材の第1の端を囲む第1のスリーブと、第1の繊維ポリマー足場材の第2の端を囲む第2のスリーブとを含む。
【0007】
別の態様では、本発明は、被検体の損傷を治療する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、前記損傷を治療できるだけの量および条件下で、前記被検体の該当部位に適用することを含む方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、前記損傷が、切断された神経、損傷を受けた神経、切断された筋肉、損傷を受けた筋肉、切断された血管、損傷を受けた血管、皮膚創傷および傷ついた皮膚から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、損傷が切断された神経を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する、導管、充填導管または棒の形であり、前記切断された神経が、第1の神経断端と第2の神経断端とを有し、前記適用することが、(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の神経断端に取り付け、(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の神経断端に取り付けることを含む。
【0008】
例示的な別の実施形態では、前記損傷が損傷を受けた神経を含み、前記適用することが、(ii)本明細書に記載の組成物を、前記損傷を受けた神経の周りに巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である。例示的な別の実施形態では、損傷が損傷を受けた神経を伴い、前記適用することが、(ii)組成物を、前記損傷を受けた神経に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である。例示的な別の実施形態では、本発明は、被検体での神経の成長を亢進する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、神経の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する神経部位に適用することを含む方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、損傷が切れた皮膚または傷ついた皮膚を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、前記適用することが、(i)前記組成物を前記切れた皮膚に適用することで、前記損傷を治療することを含む。別の態様では、本発明は、被検体での皮膚の成長を亢進する方法であって、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、(i)本明細書に記載の組成物を、皮膚の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する皮膚部位に適用することを含む方法を提供するものである。
【0009】
例示的な別の実施形態では、損傷が切断された血管を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する導管または充填導管の形状であり、前記切断された血管が第1の脈管断端および第2の脈管断端を含み、前記適用することが、(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の脈管断端に取り付け、(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の脈管断端に取り付けることを含む。別の態様では、本発明は、被検体での血管成長を亢進する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、血管成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する血管部位に適用することを含む方法を提供するものである。
【0010】
例示的な別の実施形態では、損傷が切断された筋肉を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材は、第1の端と第2の端とを有する導管、充填導管または棒の形状であり、前記切断された筋肉は、第1の筋肉断端および第2の筋肉断端を含み、前記適用することが、(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の筋肉断端に取り付け、(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の筋肉断端に取り付けることを含む。例示的な別の実施形態では、損傷が損傷を受けた筋肉を含み、前記適用することが、(ii)本明細書に記載の組成物を前記損傷を受けた筋肉に巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である。例示的な別の実施形態では、損傷が損傷を受けた筋肉を含み、前記適用することが、(ii)組成物を前記損傷を受けた筋肉に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である。別の態様では、本発明は、被検体での筋肉の成長を亢進する方法であって、(i)本明細書に記載の組成物を、筋肉の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する筋肉部位に適用することを含む。別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物の製造方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、前記方法は、(i)繊維を電界紡糸工程にかけることで、前記組成物を製造することを含む。例示的な別の実施形態では、前記電界紡糸工程が空隙または少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを含む。
【0011】
第2の態様では、本発明は、第1の導電性領域と、第2の導電性領域と、第1の導電性領域と第2の導電性領域との間に延在する非導電性領域と、を含み、非導電性領域が、第1の繊維ポリマー足場材を形成するための繊維ポリマーを受け入れられる寸法および形状である、電界紡糸装置用マンドレルを提供するものである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域が、マンドレルの周囲に配置されたスリーブである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、テープ、絶縁用テープ、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、2つの電導性マンドレル領域を相互接続する。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、2つの電導性マンドレル領域間に延在する離散的な部分である。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、前記非導電性領域は、前記導電性領域よりも大きい直径と小さい直径とからから選択される一つである直径を有する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、第1の導電性領域と第2の導電性領域とを含み、第1の導電性領域と第2の導電性領域との間に位置する空隙が第1の導電性領域と第2の導電性領域との間の非電導性領域を形成する、電界紡糸装置用マンドレルを提供するものである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、第1の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第1の非導電性スリーブと、第2の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第2の非導電性スリーブと、を含む。例示的な別の実施形態では、非電導性領域のあるマンドレルを、電界紡糸系と組み合わせる。例示的な別の実施形態では、空隙のあるマンドレルを電界紡糸系と組み合わせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好ましい実施形態の詳細な説明
I.定義および略語
本明細書にて使用する略語は、ほとんどの場合、化学分野および生物学分野での従来の意味を持つ。
【0014】
本明細書で使用する場合、文脈から特に明確な場合を除いて、単数形「a」、「and」および「the」は複数形も含むことに注意されたい。
【0015】
本明細書で使用する場合、特に明記されないかぎり、ある成分を「本質的に含まない」組成物とは、その組成物がその成分を、約10重量%未満、約5重量%未満または約3重量%未満など、約20重量%未満の量で含むことを意味する。
【0016】
「ペプチド」とは、モノマーがアミノ酸であって、これらのモノマーがアミド結合を介して一緒に結合されるポリマーのことであり、ポリペプチドと呼ばれることもある。また、β−アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンなどの非天然のアミノ酸も含まれる。遺伝子にコードされないアミノ酸もまた、本発明に含まれることがある。さらに、反応基、グリコシル化部位、ポリマー、治療部分などを含むように改変されたアミノ酸もまた、本発明で使用できることがある。本発明において使用されるアミノ酸はいずれも、D−異性体またはL−異性体のいずれかであり得る。さらに、他のペプチド模倣物もまた、本発明において有用である。本明細書で使用する場合、「ペプチド」は、グリコシル化ペプチドと非グリコシル化ペプチドの両方を示す。また、ペプチドを発現する系によって不完全にグリコシル化されたペプチド(petide)も含まれる。一般的な総説としては、Spatola, A. F., in CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS, PEPTIDES AND PROTEINS, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983)を参照のこと。
【0017】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸ならびに、後に修飾されたアミノ酸(ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンなど)である。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造すなわち、水素に結合するα炭素、カルボキシル基、アミノ基、R基を有する化合物(ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなど)をいう。このような類似体は、修飾されたR基を有する(ノルロイシンなど)か、修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物をいう。
【0018】
本明細書で使用する場合、「核酸」とは、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖またはより高度に凝集されたハイブリダイゼーションモチーフならびに、これらの任意の化学的修飾物を意味する。修飾とは、さらなる電荷、極性、水素結合、静電相互作用、核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に対する結合点と官能性を組み込む化学基を提供する修飾が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような修飾としては、ペプチド核酸(PNA)、ホスホジエステル基改変(ホスホロチオエート、メチルホスホネートなど)、2’位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモウラシルまたは5−ヨードウラシルの置換;骨格修飾、メチル化、さらにはイソ塩基、イソシチジンおよびイソグアニジンなどといった非通常の塩基対形成の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。核酸はまた、ニトロインドールなどの非天然の塩基を含み得る。修飾はまた、フルオロフォア(量子ドットなど)または別の成分を用いるキャップのような、3’ 修飾および5’ 修飾を含み得る。
【0019】
本明細書で使用する場合の「抗体」とは一般に、抗原を特異的に結合しかつ認識する免疫グロブリンまたはそのフラグメントまたはその免疫複合体由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドをいう。認識される免疫グロブリンは、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμの定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、これらは、順にそれぞれ免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「コポリマー」という用語は、2タイプ以上のサブユニットを含有するポリマーのことを示す。この用語には、2、3、4、5または6タイプのサブユニットを含むポリマーも包含される。
【0021】
「単離された」という表現は、ある材料の生成に用いられる成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を示す。組成物の純度範囲の下限は、約60%、約70%または約80%であり、純度範囲の上限は、約70%、約80%、約90%または約90%を超える値である。
【0022】
「ヒドロゲル」は、自らの重量の少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10倍の液体を吸収できる、水不溶性および水膨潤性の架橋ポリマーを示す。「ヒドロゲル」および「温度感受性ポリマー」は、本明細書では同義に用いられる。
【0023】
本明細書で使用する場合の「結合される」という表現は、これに限定されるものではないが、共有結合、イオン結合、化学吸着、物理吸着およびこれらの組み合わせを含む相互作用を包含する。
【0024】
「生体分子」または「生物有機分子」という用語は、一般に生きた生物体によって作られる有機分子を示す。これには、たとえば、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、ステロイド、核酸、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドフラグメント、炭水化物、脂質、これらの組み合わせ(糖タンパク質、リボヌクレオタンパク質、リポタンパク質など)を含む分子がある。
【0025】
「小分子」とは、分子量が1kD未満、好ましくは600D未満の種を示す。
【0026】
本明細書で使用する場合の「本発明の組成物」は、本明細書に記載の組成物、これらの組成物の薬学的に許容される塩およびプロドラッグを示す。
【0027】
置換基の群を左から右に書く従来の化学式で示す場合、そこには、右から左に構造を書いて得られる化学的に同一の置換基も等しく包含される。たとえば、−CH2O−は−OCH2−も示すことを意図している。
【0028】
「有効」量の薬剤、処方薬または浸透剤(permeant)とは、所望の局所作用または全身作用を得られるだけの十分な量の活性剤を意味する。「局所的に有効な」「化粧的に有効な」「薬学的に有効な」または「治療的に有効な」量とは、所望の治療結果を発揮するのに必要な薬剤の量を示す。
【0029】
「薬学的に許容される塩」という表現は、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、比較的無毒の酸または塩基を用いて調製される本発明の化合物の塩を含むことを意図したものである。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、純粋な、または好適な不活性溶媒中の十分な量の望ましい塩基と接触させることで、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノまたはマグネシウム塩あるいは同様の塩があげられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、純粋な、または好適な不活性溶媒中の十分な量の望ましい酸と接触させることで、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸または亜リン酸などの無機酸に由来するものならびに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒の有機酸に由来する塩があげられる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩ならびに、グルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)などのような有機酸の塩(たとえば、Berge et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)を参照のこと)も含まれる。本発明の特定の具体的な化合物は、この化合物を塩基付加塩または酸付加塩に変換できるようにする塩基性官能基と酸性官能基の両方を含有している。
【0030】
これらの化合物の中性の形態が、好ましくは、塩と、塩基または酸とを接触させ、親化合物を従来の方法で単離することによって再生される。化合物の親の形態は、極性溶媒への溶解性などのいくつかの物性でさまざまな塩の形態とは異なる。
【0031】
塩の形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供するものである。本明細書に記載の化合物または錯体のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を起こして本発明の化合物となる。加えて、プロドラッグは、化学的または生化学的な方法で、ex vivoの環境にて本発明の化合物に変換可能なものである。
【0032】
本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する原子のうちの1種または複数種で不自然な比率の原子アイソトープを含有することもある。たとえば、この化合物を、たとえばトリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性アイソトープで放射性標識しても構わない。本発明の化合物のさまざまなアイソトープは、放射性であるか否かを問わず、本発明の主旨に包含されることを意図したものである。
【0033】
「薬学的に許容されるキャリア」または「薬学的に許容されるベヒクル」という表現は、本明細書に定義する有効量の活性剤を適切に送達し、活性剤の生物活性の有効性に干渉せず、宿主または患者にとって十分に無毒な処方薬またはキャリア媒質を示す。代表的なキャリアとしては、水、油(植物油と鉱物油の両方)、クリームベース、ローションベース、軟膏ベースなどがあげられる。ベースとしては、懸濁化剤、増粘剤、浸透エンハンサーなどがある。その配合については化粧用および局所用の製薬分野の当業者間で周知である。キャリアに関する別の情報については、本明細書に援用する、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2005)に記載がある。
【0034】
「薬学的に許容される局所用キャリア」と、これに相当する表現は、局所塗布に適した、本明細書で上述したような薬学的に許容されるキャリアを示す。活性剤を懸濁または溶解させることができ、皮膚、爪、毛、鉤爪または蹄に適用したときに無毒で非炎症性であるという特性を持つ不活性の液体またはクリームベヒクルが、薬学的に許容可能な局所用キャリアの一例である。この表現は特に、局所化粧品で使用する認可済みのキャリア材料を包含することを意図したものである。
【0035】
「薬学的に許容される添加剤」という表現は、薬剤処方分野で周知または用いられ、活性剤の生物活性の有効性に過度に干渉せず、宿主または患者にとって十分に無毒な保存料、抗酸化剤、香料、乳化剤、染料および賦形剤を示す。局所用処方薬の添加剤は、当該技術分野において周知であって、なおかつ、薬学的に許容されて上皮細胞またはその機能に悪影響を及ぼさないかぎりは、局所用組成物に添加できるものである。さらに、これらの添加剤は、組成物の安定性を損なうものであるべきではない。たとえば、不活性フィラー、抗刺激剤、粘着付与剤、賦形剤、香料、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、保存料、緩衝剤、他の浸透(permeation)エンハンサーならびに、当該技術分野において周知の局所用または経皮送達用処方薬の他の従来の成分など。
【0036】
本明細書で使用する場合、「投与(すること)」は、経口投与、坐剤、局所接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内または皮下投与としての投与、あるいは、徐放性デバイス(被検体へのミニ浸透圧ポンプなど)の移植を意味する。
【0037】
「賦形剤」という用語は、所望の用途に有効な薬剤組成物を配合するのに用いられるキャリア、希釈剤および/またはベヒクルを意味することが従来から知られている。
【0038】
本明細書で使用する場合の「自家細胞」という用語は、被検体自身の細胞であるか、またはそのクローン細胞を示す。
【0039】
本明細書で使用する場合の「同種細胞」という用語は、第1の被検体自身の細胞またはそのクローンではないが、第1の被検体と同じ種である第2の被検体由来の細胞またはそのクローンである細胞を示す。
【0040】
本明細書で使用する場合の「異種細胞」という用語は、第1の被検体自身の細胞またはそのクローン由来ではないが、第1の被検体と同じ種ではない第2の被検体由来の細胞またはそのクローンである細胞を示す。
【0041】
本明細書で使用する場合の「幹細胞」とは、特定の特殊化した機能(すなわち、赤血球、マクロファージなどの高分化型細胞)を有するものをはじめとして、他の細胞タイプに分化できる細胞を示す。幹細胞は、その由来(成体/体性幹細胞、胚幹細胞)またはその増殖能(全能性、多能性、複能性および単能性)に応じて定義可能なものである。
【0042】
本明細書で使用する場合の「単能性」という用語は、1種類の細胞型だけしか作りだせないが、非幹細胞とは違って自己更新の特性を持つ細胞を示す。
【0043】
本明細書で使用する場合の「複能性」または「前駆細胞(progenitor)」という用語は、複数種類の高分化型細胞型のどれでも作り出せる細胞を示す。これらの異なる細胞型は通常、密接に関連している(赤血球細胞、白血球細胞および血小板といった血液細胞など)。たとえば、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞としても知られる)は複能性細胞であり、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、神経細胞およびβ−膵島細胞を形成できる。別の例が骨格筋芽細胞であり、この細胞は、個々の細胞が融合して多核筋管になる分化過程で骨格筋細胞を優先的に作り出す。
【0044】
本明細書で使用する場合の「多能性」という用語は、ある生物体の持つ細胞型のうち、全部ではないがいくつかまたは多くを作り出す細胞を示す。多能性幹細胞は、成熟した生物体の体のどのような細胞型にも分化できるが、核の初期化なしでは、脱分化して元の細胞に戻ることはできない。後に明らかになるように、「複能性」/前駆細胞(神経幹細胞など)は、多能性幹細胞よりも分化能が低い。多能性幹細胞よりも原始的な(すなわち、特定の分化の宿命に関連していない)別の細胞クラスに、いわゆる「全能性」幹細胞がある。
【0045】
本明細書で使用する場合の「全能性」という用語は、受精卵母細胞ならびに、受精卵細胞の最初の数回の細胞分裂で作られる細胞(発生の2細胞期胚および4細胞期胚など)を示す。全能性細胞は、特定の種についてどのようなタイプの細胞にも分化できる。たとえば、ひとつの全能性幹細胞から、完全な動物ならびに、特定の種(ヒトなど)に見られる無数の細胞型のどれにでもなることができる。本明細書では、多能性細胞および全能性細胞ならびに、完全な臓器または組織に分化する可能性のある細胞を、「始原」幹細胞と呼ぶ。
【0046】
本明細書で使用する場合の「脱分化」という用語は、細胞がそれよりも特殊化していない状態に戻ることを示す。脱分化後、このような細胞は核の初期化前に可能であったよりも多くまたはこれとは異なる細胞型に分化する能力を持つことになる。逆分化(すなわち、脱分化)の過程は分化よりも複雑になることが多く、細胞がさらに原始的になるのに「再プログラミング」が必要になる。脱分化の一例に、早期(early)初代筋芽細胞などの筋原前駆細胞が筋幹細胞またはサテライト細胞になる変換がある。
【0047】
「正常」幹細胞は、異常な表現型を示さない、あるいは異常な遺伝子型を持たないがゆえに、このような幹細胞由来の全範囲の細胞を作ることのできる幹細胞(またはその子孫)を示す。たとえば、全能性幹細胞との関連で、この細胞は、たとえば、健康で正常な動物を完全に作り出すことができる。これとは対称的に、「異常な」幹細胞とは、たとえば、1つまたは複数の変異または遺伝的改変体または病原体がゆえに正常ではない幹細胞のことである。よって、異常な幹細胞は正常な幹細胞とは異なる。
【0048】
「成長環境」は、幹細胞がin vitroで増殖する環境である。この環境の特徴は、細胞を培養した培地と、もしある場合は支持構造体(固体表面上の基質など)が含まれることである。
【0049】
「成長因子」とは、細胞の成長を促進するのに効果的であり、培養液にサプリメントとして添加されるのでないかぎり、基礎培地の成分ではない物質のことである。言い換えれば、成長因子は、培養対象となる細胞から分泌されない分子(フィーダー細胞がある場合はこれを含む)であるか、培養液中の細胞から分泌されるのであれば、成長因子を外来的に添加した場合に得られる結果を達成できるだけの十分な量では分泌されない分子である。成長因子としては、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、インスリン様成長因子−II(IGF−II)、血小板由来成長因子−AB(PDGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、アクチビン−A、骨形態形成タンパク質(BMP)、インスリン、サイトカイン、炎症性細胞遊走因子、モルフォゲン、中和抗体、他のタンパク質および小分子があげられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本明細書で使用する場合の「分化因子」という用語は、特定の特殊化した細胞型に関連づける(commit)ための幹細胞または前駆細胞を誘導する分子を示す。
【0051】
「細胞外マトリクス」または「マトリクス」とは、フィーダー細胞によって合成される細胞外マトリクスで得られるものと実質的に同じ、細胞成長を支持するための状態を提供する1種または複数種の物質のことである。マトリクスは、基質表面で得られるものであってもよい。あるいは、マトリクスを含む成分を溶液中で提供してもよい。細胞外マトリクスの成分としては、ラミニン、コラーゲンおよびフィブロネクチンを含み得る。
【0052】
本明細書で使用する場合の「再生力」という用語は、幹細胞の分裂前駆細胞および分化組織特異的細胞への変換を示す。
【0053】
本明細書で使用する場合の「自己更新」という用語は、系列特異性のない増殖を示す。
【0054】
本明細書で使用する場合の「整列された」という表現は、繊維の少なくとも50%がある方向(general direction)を向いており、その配向がアライメントの平均軸をなす、繊維ポリマー足場材の繊維の配向を示す。特定の繊維の配向がアライメントの平均軸から外れる可能性もあり、この偏差については、アライメント軸と繊維の配向とがなす角度で表すことが可能である。偏差角0°は完全なアライメントを示し、90°(または−90°)はアライメントの平均軸に対して繊維のアライメントが直交していることを示す。例示的実施形態では、アライメントの平均軸からの繊維の標準偏差が、0°から1°、0°から3°、0°から5°、0°から10°、0°から15°、0°から20°または0°から30°から選択される角度であり得る。
【0055】
本明細書で使用する場合の「棒」という用語は、本質的に充填された円柱形をした繊維ポリマー足場材を示す。棒を構成する個々の繊維間に空間や溝が存在してもよい。
【0056】
本明細書で使用する場合の「導管」という用語は、形状が本質的に円筒形の物体を示す。導管は、内壁および外壁と、内径と、外径と、導管の内径ならびにその長さによって画定される内部空間とを有する。導管を構成する個々の繊維間に空間や溝が存在してもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合の「充填導管」という用語は、内部空間の一部がフィラー材料からなる導管を示す。このフィラー材料が繊維ポリマー足場材であっても構わない。充填導管を構成する個々の繊維間に空間や溝が存在してもよい。
【0058】
本明細書で使用する場合の「継ぎ目」または「継ぎ合わされた」という用語は、2つのセクションを、かみ合わせ、接合または重ね合わせることによって形成される結合部分を示す。これらの2つのセクションは、縫合糸などの機械的手段によって、あるいは、アニーリングまたは接着剤などの化学的手段によって一緒に保持可能なものである。たとえば、シートのひとつの領域をもうひとつの領域に接合することで、継ぎ目が形成される。
【0059】
本明細書で使用する場合の「シームレス」という用語は、継ぎ目がないことを示す。
【0060】
「細胞」という用語は、単数形(「細胞(cell)」)または複数形(「細胞(cells)」)の状態を示し得る。
【0061】
本明細書で使用する場合の「細胞外マトリクス成分」という用語は、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチンおよびエラスチンから選択される一つである。
【0062】
本明細書で使用する場合の「ステント」という用語は、特に金属および有機ポリマーで製造できるチューブである。ステントを有機ポリマーで製造する場合、このポリマーは本明細書に記載されているようなナノ繊維ポリマー足場材またはマイクロ繊維ポリマー足場材ではない。言葉を変えると、ステントを繊維ポリマー足場材で製造する場合、繊維の平均直径は100ミクロンから約50センチメートルになる。場合によっては、ステント全体が第1の直径から第2の直径に膨脹可能であり、第2の直径は第1の直径よりも大きい。
【0063】
II.組成物
これらの組成物は、ポリマー足場材を含み得る。これらのポリマー足場材は、マイクロ繊維ポリマー足場材またはナノ繊維ポリマー足場材などの繊維ポリマー足場材であってもよい。これらのポリマー足場材はまた、微小パターンが形成されたポリマー足場材であってもよい。本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、任意に、整列されていないものであってもよいし、長手方向または円周方向などに整列されたものであってもよい。本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、任意に、シート、十字シート、導管、棒または充填導管などの形状に形成可能なものである。本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、継ぎ目のあるものであってもよいし、シームレスであってもよい。本発明の組成物またはポリマーはまた、任意に、細胞、生体分子または薬学的に許容される賦形剤などの材料を含むものであってもよい。これらのアライメント、形状および別の成分は、生物学的機能を改善または再生または代用する際の一助となり得る。本発明の組成物は、ステントを含まない。生物学的機能を改善、再生または代用する目的で、この組成物を組織工学において使用することができる。
【0064】
II.a)繊維ポリマー足場材
第1の態様では、本発明は、繊維ポリマー足場材を含む組成物を提供するものである。繊維ポリマー足場材は、さまざまな直径を有しうる繊維を含む。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は、約0.1ナノメートルから約50000ナノメートルである。例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約25ナノメートルから約25,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約50ナノメートルから約20,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約100ナノメートルから約5,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約1,000ナノメートルから約20,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約10ナノメートルから約1,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約2,000ナノメートルから約10,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約0.5ナノメートルから約100ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約0.5ナノメートルから約50ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約1ナノメートルから約35ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約2ナノメートルから約25ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約90ナノメートルから約1,000ナノメートルである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径は約500ナノメートルから約1,000ナノメートルである。
【0065】
例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材は、ナノ繊維ポリマー足場材およびマイクロ繊維ポリマー足場材から選択される一つである。マイクロ繊維ポリマー足場材がミクロン規模の特徴(平均繊維径約1,000ナノメートルから約50,000ナノメートル、特に約1,000ナノメートルから約20,000ナノメートル)を持つのに対し、ナノ繊維ポリマー足場材はサブミクロン規模の特徴(平均繊維径約10ナノメートルから約1,000ナノメートル、特に約50ナノメートルから約1,000ナノメートル)を持つ。これらのポリマー足場材については各々、野生型のコラーゲンフィブリルまたは他の細胞外マトリクスなどの治療部分における物理的な構造に似たものとすることができる。
【0066】
合成および/または天然源由来のさまざまなポリマーを利用して、これらの繊維ポリマー足場材を構成することができる。繊維については、1種類のモノマーまたはサブユニットから作ることが可能である。たとえば、乳酸またはポリ乳酸あるいはグリコール酸またはポリグリコール酸を利用して、ポリ(ラクチド)(PLA)またはポリ(L−ラクチド)(PLLA)ナノ繊維またはポリ(グリコリド)(PGA)ナノ繊維を形成することができる。また、2種類以上のモノマーまたはサブユニットから繊維を作り、コポリマー、ターポリマーなどを形成することも可能である。たとえば、乳酸またはポリ乳酸をグリコール酸またはポリグリコール酸と組み合わせ、コポリマー・ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を形成することができる。本発明において役立つ他のコポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−ビニル)アルコール)があげられる。例示的実施形態では、繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つであるポリマーまたはサブユニットを含む。例示的な別の実施形態では、繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される2種類のポリマーまたはサブユニットを含む。例示的な別の実施形態では、繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される3種類のポリマーまたはサブユニットを含む。例示的実施形態では、脂肪族ポリエステルは直鎖状または分枝状である。例示的な別の実施形態では、直鎖脂肪族ポリエステルは、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、脂肪族ポリエステルは、分枝状であり、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトンならびに、リンカーまたは生体分子と接合されたこれらの組み合わせから選択されるものを少なくとも1種含む。例示的実施形態では、前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリ酸化プロピレン、ポリプロピレングリコールおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。
【0067】
いくつかの実施形態では、繊維ポリマー足場材は、1本の連続繊維からなる。他の実施形態では、繊維ポリマー足場材は、少なくとも2本、3本、4本または5本の繊維からなる。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、2から100,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維数は、2から50,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、50,000から100,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、10から20,000から選択される一つである。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維の数は、15から1,000から選択される一つである。
【0068】
繊維ポリマー足場材は、少なくとも1種類の組成物の繊維を含み得る。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材は、多数の異なるタイプの繊維を含み、その数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択される一つである。
【0069】
例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維は生分解性である。例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材の繊維は、生分解性ポリマーを含む。例示的な別の実施形態では、生分解性ポリマーは、乳酸およびグリコール酸から選択される一つであるモノマーを含む。例示的な別の実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはこれらのコポリマーである。好ましい生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸)およびポリ(グリコール酸)などの臨床用としてFDA承認済みのポリマーである。例示的な別の実施形態では、本発明の生分解性ポリマー足場材を利用して、培養組織の形態形成をガイドし、組織構築後に徐々に分解させることが可能である。ポリマーの分解速度については、組織の生成速度に合うよう当業者が調節可能なものである。たとえば、短時間で生分解されるポリマーが望ましい場合、約50:50のPLGAの組み合わせを選択することができる。ポリマー足場材生分解性を増やすための別の方法として、さらに親水性の高いコポリマー(たとえば、ポリエチレングリコール)を選択する、分子量が高いと分解速度が遅くなることが多いため、ポリマーの分子量を落とす、多孔性が高く繊維密度が低いと吸水率が上がって分解が速まることが多いため、多孔性または繊維密度を変更するといったことがあげられる。例示的な別の実施形態では、組織は、筋肉組織、維管束組織、神経組織、脊髄組織および皮膚組織から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、生分解性繊維足場材を利用して、培養筋肉組織の形態形成をガイドし、筋芽細胞、筋管および骨格筋組織構築後に、徐々に分解することが可能である。
【0070】
繊維ポリマー足場材の製造方法
本発明のポリマー足場材は、さまざまな方法で作製可能なものである。例示的実施形態では、ポリマー足場材を電界紡糸によって作製することができる。電界紡糸とは、静電場と電導性流体との間の相互作用を利用する電導性流体の噴霧プロセスである。電導性流体(半希釈ポリマー溶液またはポリマー融液など)に外部静電場を印加すると、懸濁された円錐形の液滴が形成され、これによって液滴の表面張力が電場と平衡する。静電場が液体の表面張力を超えるだけの十分な強さになったら、静電噴霧を行う。すると、液滴が不安定になり、液滴表面から微小な噴流が飛び出してくる。この材料がアースをとったターゲットに近づくときに、比較的微細な繊維すなわち径の小さな繊維を含む、互いに絡み合った織物としてこの材料を捕集することができる。これらの径の小さな繊維からこのようにして得られるフィルム(または膜)は、体積比に対して表面積が極めて大きく、孔のサイズが小さい。電界紡糸装置の詳細な説明については、Zong, et al., Polymer, 43(16):4403-4412 (2002); Rosen et al., Ann Plast Surg., 25:375-87 (1990) Kim, K., Biomaterials 2003, 24, (27), 4977-85; Zong, X., Biomaterials 2005, 26, (26), 5330-8に掲載されている。電界紡糸(electrospinninng)後、押出および成形を利用して、ポリマーをさらに成形することが可能である。繊維の組織構造を調整して整列された繊維ポリマー足場材にする目的では、パターン形成した電極、ワイヤドラムコレクタあるいは、一軸延伸などの後処理法を用いる方法がうまくいっている。Zong, X., Biomaterials 2005, 26, (26), 5330-8; Katta, P., Nano Lett 2004, 4, (11), 2215-2218; Li, D., Nano Lett 2005, 5, (5), 913-6。
【0071】
ポリマー溶液については、いくつかの方法のうちのひとつで生成することができる。一方法として、モノマーを重合し、その結果生じたポリマーを適当な溶媒に溶解させることがあげられる。このプロセスをシリンジアセンブリで行うこともできるし、あるいはこれを後からシリンジアセンブリに注入することもできる。別の方法として、市販のポリマー溶液または市販のポリマーを購入し、これらを溶解させてポリマー溶液を生成することがある。たとえば、PLLAはDuPont(Wilmington, DE)から購入可能であり、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)は、Ethicon(Somerville, NJ)およびBirmingham Polymers(Birmingham, AL)、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)およびPolysciences(Warrington, PA)から購入可能である。他の製造業者として、Lactel Absorbable Polymers(Pelham, AL)がある。細胞および生体分子などの本発明の別のポリマー足場材成分も、Invitrogen(San Diego, CA)、Cambrex(Walkersville, MD)、Sigma-Aldrich, Peprotech(Rocky Hill, NJ)、R&D Systems(Minneapolis, MN)、ATCC(Manassas, VA)、Pierce Biotechnology(Rockford, IL)などの供給業者から商業入手可能である。
【0072】
ポリマー足場材の形成に用いられるポリマーを、まずは溶媒に溶解させる。溶媒は、ポリマーのモノマーおよび/またはサブユニットを溶解させ、電導と電界紡糸が可能なポリマー溶液を提供できるものであれば、どのような溶媒であってもよい。代表的な溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、メチレンクロリド、ジオキサン、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、クロロホルム、水およびこれらの組み合わせから選択される溶媒があげられる。
【0073】
ポリマー溶液は、任意に、電界紡糸工程を容易にするための過剰な電荷効果を生成する塩を含有するものであってもよい。好適な塩の例として、NaCl、KH2PO4、K2HPO4、KIO3、KCl、MgSO4、MgCl2、NaHCO3、CaCl2またはこれらの塩の混合物があげられる。
【0074】
電導性流体を形成するポリマー溶液は、好ましくはポリマー濃度が約1から約80wt%、より好ましくは約8から約60wt%の範囲になる。電導性流体は、好ましくは粘度が約50から約2000mPa・s、より好ましくは約200から約700mPa・sの範囲になる。
【0075】
電界紡糸工程で発生する電場は、好ましくは約5から約100キロボルト(kV)、より好ましくは約10から約50kVの範囲となる。紡糸口金(または電極)への電導性流体の供給量は、好ましくは約0.1から約1000マイクロリットル/分、より好ましくは約1から約250マイクロリットル/分の範囲となる。
【0076】
1個または複数個の紡糸口金がプラットフォーム上に配置されており、プラットフォームは調節可能であり、かつプラットフォームとコレクタ接地基板との間の距離を変えることが可能である。この距離は、ポリマーとコレクタ接地基板との接触前に、溶媒が本質的に完全に蒸発できる距離であれば、どのような距離であってもよい。例示的実施形態では、この距離は、1cmから25cmまで可変である。一般に、コレクタ接地基板とプラットフォームとの間の距離が長くなると、形成される繊維は細くなっていく。
【0077】
回転式のマンドレルが必要な電界紡糸の事例では、多くの場合ドリルチャックを介してマンドレルを機械的にモーターに取り付ける。例示的実施形態では、モーターは、1分あたり約1回転(rpm)から約500rpmの速度でマンドレルを回転させる。例示的実施形態では、モーター回転速度は約200rpmから約500rpmである。例示的な別の実施形態では、モーター回転速度は約1rpmから約100rpmである。
【0078】
別の実施形態または電界紡糸工程および装置に対する変形例が本明細書に記載される。
【0079】
電導性流体の電気的/機械的特性の変形
電界紡糸によって生成される、このようにして得られる膜の特性は、電導性流体の電気的特性および機械的特性に影響されることになる。イオン性無機/有機化合物を加えることで、ポリマー溶液の電導度を劇的に変えることが可能である。ポリマー溶液の電磁流体力学的特性は、物理的特性、機械的特性(流体の表面張力、粘度および粘弾性挙動など)、電気的特性(流体の電荷密度および分極率)の組み合わせに左右されることがある。たとえば、より広範囲にわたる条件で、静電場が噴流の形状と噴流の流れに影響を及ぼすことができるように、ポリマー溶液に界面活性剤を加えることで、流体表面張力を小さくすることができる。定圧または一定流量のいずれかで流量を制御可能なシリンジポンプを連結することで、電導性流体の粘度の影響を軽減することができる。
【0080】
電極の設計
本発明に係る膜を生成するための別の実施形態では、繊維のサイズをさらに制御しやすくするために、電界紡糸時の噴流形成工程をさらに改善する。上述したような帯電した紡糸口金と接地板とを単に用いるのではなく、正に帯電した紡糸口金で同じようにポリマー溶液の液滴を形成し、中央に小さな出口穴のある平板電極でジェット流を形成するようにする。この出口穴は、平板電極にジェット流を通すための手段となる。よって、正に帯電した紡糸口金表面のポリマー液滴が典型的に2〜3mmの寸法で、平板電極が紡糸口金から約10mmの距離にある場合、適度な静電電位を発生させることができる。2つの電極間の距離が短いと、静電電位がかなり低くなりかねない。しかしながら、得られる電場強度は電界紡糸工程には十分な強さになり得る。紡糸口金の電位を変えることで、噴流形成を制御および調節することが可能である。このような電極構成は、紡糸口金に対して必要な印加電位を、一般に約15キロボルト(kV)から一般に約1.5〜2kV(接地板電位に対して)まで大幅に減らすべきものである。安定した噴流形成のために必要とされる正確な紡糸口金電位は、特定の電導性流体の電気的特性/機械的特性に左右されることになる。
【0081】
噴流の加速と輸送の制御
本発明のポリマー足場材を生成するための別の好ましい実施形態では、ジェット流の飛行も厳密に制御する。平板電極の出口穴を通るジェット流は、正に帯電している。このジェット流は、外部電場の閉じ込めがなくても飛行時に自ら真っ直ぐになる傾向にあるが、噴流はその軌道ですぐに不安定になってしまう。言葉を変えると、帯電したジェット流の焦点がずれ、流体の微視的特性および巨視的特性の制御が不能となる。この不安定さについては、慎重に設計したプローブ電極を平板電極のすぐ後ろで使用し、(等しく)間隔をあけた一連の平板電極用いることで、取り除くことができる。電極アセンブリ(または複合電極)すなわち、プローブ電極および平板電極は、(真っ直ぐな)飛行経路に沿って静電電位を均一に分布させることができる。紡糸口金のベース電位を(接地電位での)ターゲットよりも約+20から+30kV高くすれば加速度ポテンシャルが形成されるのに対し、プローブ電極の静電電位については平板電極のベース電位よりもわずかに低く調節することができる。複合電極は、ジェット流を所望のターゲット部分まで送ることができる。また、複合電極を利用して、ジェット流を操作することも可能である。静電電位を変えることでジェット流の加速度が変わり、成形されるポリマー繊維の直径も変化することになる。この静電電位の変動によってジェット流の安定性が変化するため、複合電極の対応する変化を利用して、新たなジェット流を安定させることができる。このような手法は、電界紡糸工程の間に繊維の直径を微調整して変化させるのに利用できるものである。
【0082】
噴流の操作
さらに別の実施形態では、高エネルギー物理学の加速器技術で広く用いられている「強集束」(AG : Alternating Gradient)手法を用いてジェット流の焦点を合わせることができる。基本的な考え方は、2対の静電四重極レンズを用いることである。第2のレンズは、電気的勾配が逆(交互)であること以外は第1のレンズと幾何学的配置が同じである。正に帯電したジェット流は、たとえば、第1のレンズの後はxz面で焦点が合わされ、続いて第2のレンズの後にyz面で再び焦点が合わされる。z方向は最初の飛行経路の方向を表すことに注意されたい。四重極の対のうちの一方において電位にさらに三角形の波形を適用することで、ターゲット領域にわたって噴流を掃引することができるため、ジェット流の方向を制御できる。さらに、「掃引」電位のさまざまな波形で、ターゲットに所望のパターンを形成することができる。
【0083】
独特なマンドレルを有する電界紡糸装置
電界紡糸ポリマー繊維は、固定基板または回転基板上に堆積可能なものである。従来、電界紡糸繊維のランダム堆積には固定金属コレクタを利用していた。回転金属マンドレルは電界紡糸時に利用されていた。回転金属マンドレルを用いると、マンドレルの表面に繊維がランダムに堆積し、これによってマンドレルを取り除いた後に導管を生成できる。また、この方法を改変し、マンドレルを高速(>100rpm)で回転させる方法でも円周方向に繊維が整列された導管を生成できることもある。径の大きいおよび/または長さの長い回転ドラムをコレクタ基板として用いる場合、堆積された繊維ポリマー足場材をドラムから切り取って取り除く際に、整列されていない繊維ポリマー足場材と整列された繊維ポリマー足場材のシートが生成されることがある。固定金属コレクタ内に空隙(穴)を形成することで、ギャップの上に堆積される電界紡糸繊維が整列されることが、過去にすでに示されている(Li, D., Wang Y. L., Xia, Y. N., Electrospinning of Polymeric and Ceramic Nanofibers as Uniaxially Aligned Arrays. Nano Letters, 2003. 3(8): p. 1167-71)。しかしながら、整列された三次元の導管または棒を製造することや、長手方向に整列された繊維からなる導管または棒を直接に電界紡糸することについては、Liにも他のどこにも何ら説明されていない。
【0084】
別の態様では、本発明は、整列された繊維ポリマー足場材を回転式のマンドレル上に電界紡糸するための方法を含む。これらの繊維ポリマー足場材は、利用者が望むどのような配向にも整列可能なものである。例示的実施形態では、足場材は本質的に長手方向または本質的に円周方向に整列される。この方法で作製される繊維ポリマー足場材は、継ぎ目のあるものであってもよいし、シームレスであってもよい。例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材はシームレスである。例示的な別の実施形態では、繊維ポリマー足場材は、ポリマー足場材の長手方向の軸に対して本質的に平行な軸に沿ってシームレスである。
【0085】
別の態様では、本発明は、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒の電界紡糸を可能にする独特なマンドレルを含む。例示的な別の実施形態では、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒は、未整列の繊維配向を有する。例示的な別の実施形態では、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒の繊維は、整列されている。例示的な別の実施形態では、シームレス導管、シームレス充填導管およびシームレスな棒は、本質的に長手方向に整列された繊維を有する。
【0086】
別の態様では、本発明は、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒の電界紡糸を可能にする独特なマンドレルを含む。例示的な別の実施形態では、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒は、未整列の繊維配向を有する。例示的な別の実施形態では、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒の繊維は整列されている。例示的な別の実施形態では、モノリシックに形成された導管、充填導管および棒は、本質的に長手方向に整列された繊維を有する。
【0087】
例示的実施形態では、マンドレルは、マンドレルをその長手方向の軸を中心にして回転可能なモーターアセンブリに取り付けられている。電界紡糸装置では、回転式のマンドレルは接地され、紡糸口金の下に配置されている。紡糸口金の先端にポリマー溶液が供給され、電源によって帯電される。紡糸口金とマンドレルの間に発生する電界は、噴流を形成するための紡糸口金の先端で帯電したポリマー溶液を含む。この噴流はマンドレルに向かって噴霧される。ポリマーがマンドレルの一電導性領域と接触し、続いてマンドレルの第2の電導性領域と接触して、マンドレルの非電導性領域または空隙に繊維が堆積される。これによって、非電導性領域上または空隙内に、整列された繊維が堆積される。マンドレルを回転させることで、整列された繊維が均等に適用された層が得られる。堆積された繊維層はマンドレルの形状またはマンドレル間の空隙の形状に沿っているため、場合によってはシート、場合によっては導管、あるいは場合によっては棒が形成される。シート、導管または棒を含む繊維は、導管または棒の長さに沿って整列され、これによって長手方向に整列された繊維のシート、導管または棒が形成されることになる。例示的実施形態では、導管または棒はシームレスになる。例示的実施形態では、導管または棒は、導管または棒の長軸に対して本質的に平行な軸に沿ってシームレスになる。
【0088】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの電導性領域と、少なくとも1つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。このようなマンドレルについては、さまざまな方法で設計可能である。マンドレルの例示的な図を図3Bに示し、本発明のシートおよび/または導管を製造するための装置の一部であるマンドレルの例示的な図を、図1、図2、図2Aおよび図2Bに示す。例示的実施形態では、導電性材料が金属である。例示的な別の実施形態では、金属が、鋼およびアルミニウムから選択される一つである。ひとつの事例では、電導性マンドレルの一領域を非導電性材料で被覆することができる。このマンドレルの例示的な断面を図3Dに示す。例示的実施形態では、非導電性材料は、テープ、絶縁用テープ、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである。別の場合では、少なくとも3つのセクションすなわち、2つの電導性マンドレル領域と、これを相互接続する非導電性領域を有するマンドレルを製造することができる。別の場合では、非導電性領域は、2つの電導性マンドレル領域間に延在する別個の部分である。このマンドレルの例示的な断面を図3Cに示す。マンドレルの電導性領域の上に非電導性領域を配置するか、あるいはマンドレルの2つの電導性領域間で非電導性領域を相互接続することで、マンドレルに別の非電導性領域を加えることも可能である。これらの別の非電導性領域を別の紡糸口金と連動させて用いれば、同じマンドレルで同時に2種類以上の導管を製造しやすくすることができる。一実施形態では、本発明は、少なくとも3つの電導性領域と少なくとも2つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。一実施形態では、本発明は、少なくとも4つの電導性領域と少なくとも3つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。一実施形態では、本発明は、少なくとも5つの電導性領域と少なくとも4つの非電導性領域とを有するマンドレルを提供するものである。
【0089】
一実施形態では、本発明は、第1の電導性領域と、第2の電導性領域と、第1の電導性領域と第2の電導性領域との間の空隙とを有するマンドレルを提供するものである。このようなマンドレルについては、さまざまな方法で設計可能である。マンドレルの例示的な図を図3Eに示し、本発明の棒を製造するための装置の一部であるマンドレルの例示的な図を、図6、図7および図7Aに示す。複数の紡糸口金を含む実施形態を図11に示して説明する。例示的実施形態では、導電性材料が金属である。例示的な別の実施形態では、金属は、鋼およびアルミニウムから選択される一つである。例示的実施形態では、マンドレルの各電導性領域は、他の領域と整列されている。例示的実施形態では、マンドレルの各電導性領域は、同一速度で回転できるアセンブリに取り付けられている。これは、マンドレルの各電導性領域にモーターアセンブリを取り付け、各モーターが同一速度で回転するようにすることで実現可能である。また、マンドレルの各電導性領域が同一のモーターに接続されるようにして実現することも可能である。
【0090】
電界紡糸の終了後、本発明のポリマー足場材をマンドレルから取り外す。シートとしてのポリマー足場材の場合、マンドレルからシートを剥がすことができる。導管としてのポリマー足場材の場合、モーターアセンブリからマンドレルを取り外した上で、導管を取り外すことができる。いくつかの実施形態では、マンドレルを中央部で分離するか、導管を切断して取り外しを実現することができる。棒としてのポリマー足場材の場合、電導性領域の金属端から棒を剥がすことができる。場合によっては、堆積された繊維の長さが等しくならないこともあり、この場合はポリマー足場材の片端または両端がギザギザの縁になる。任意に、長さが本質的に同じサイズのポリマー足場材とする目的で、ポリマー足場材の端を切断することも可能である。この切断は、ポリマー足場材がマンドレル上にあるうちに実施してもよいし、マンドレルから取り外した後で実施することも可能である。
【0091】
本明細書に記載のポリマー足場材の特徴は、さまざまなパラメータを変えることで変更可能なものである。たとえば、単独または組み合わせで、繊維ポリマー足場材の繊維の平均直径を小さくできるいくつかの方法がある。ひとつの方法として、ポリマー溶液にさらに塩を加えることがある。ポリマー溶液にさらに極性の高い溶媒を使用する方法でも、紡糸口金とマンドレルとの距離が長くなるため平均繊維径が小さくなる傾向にある。足場材の直径を小さくする別の方法として、装置の電圧を上げてポリマー濃度を高めることがあげられる。
【0092】
いくつかのマンドレルの回転を完了することで、本明細書に記載の方法で多層のポリマー足場材を形成することができる。たとえば、いくつかのマンドレルの回転を完了することで、多層の導管を形成することができる。2種類以上のタイプの層を有する別のポリマー足場材も製造可能である。例示的実施形態では、マンドレルの回転速度を変えることで、繊維の円周方向のアライメントも調節または変更できる。よって、長手方向に整列された内側の層と円周方向に整列された外側の層とを有するポリマー足場材を製造可能である。各層が特定のアライメントを有する多層の中空導管の足場材を製造する目的で、さまざまなマンドレルと回転速度を利用することができる。例示的実施形態では、長手方向に整列された繊維を有する管腔(luminal)層と円周方向に整列された繊維を有する外側の層のある中空の導管形の繊維足場材を作製する。このような足場材を製造するためのひとつの方法として、上述したような非電導性領域を有するマンドレルを用いることがある。マンドレルを低速で回転させ、長手方向に整列された繊維からなる導管形の繊維足場材を形成できるようにする。続いて、マンドレルの回転速度を上げ、これによって電界紡糸繊維を長手方向に整列された繊維導管の周りに円周方向に整列させる。例示的な別の実施形態では、内側の層は長手方向に整列されているのに対し、外側の層はランダムに整列された繊維からなる。これは、外側の層の形成時に、繊維が長手方向と円周方向のどちらにも整列されないようにする中程度の速度でマンドレルを回転させること以外は、上述したステップと同じステップを踏むことで達成可能である。
【0093】
II.b)微小パターンが形成されたポリマー足場材
第2の態様では、本発明は、微小パターンが形成されたポリマー足場材を含む組成物を提供するものである。微小パターン形成では、ソフトリソグラフィを利用して、ポリマーの空間的構造および幾何学的構造を形状的(topographically)または化学的に変化させ、ミクロン規模の特徴を基板表面に形成する。Taylor, A.M., Nat Methods 2005, 2, (8), 599-605; Dow, J.A., J Cell Sci Suppl 1987, 8, 55-79; Kane, R.S., Biomaterials 1999, 20, (23-24), 2363-76。この手法で作製されたポリマー足場材を利用して、細胞の大きさ、形状、空間的構造、増殖および生存をはじめとする細胞挙動の多くの局面を制御することができる。Chen, C.S., Science 1997, 276, (5317), 1428-8; Bhatia, S.N., Faseb J 1999, 13, (14), 1883-900; Deutsch, J., J Biomed Mater Res 2000, 53, (3), 267-76; Folch, A., Annu Rev Biomed Eng 2000, 2, 227-56; Whitesides, G.M., Annu Rev Biomed Eng 2001, 3, 335-73。高い再現性で微小パターンを形成でき、細胞接着用のフレキシブル基板が得られるエラストマーに、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)がある。Wang, N., Cell Motil Cytoskeleton 2002, 52, (2), 97-106。
【0094】
II.c)ポリマー足場材のアライメント
本発明のポリマー足場材は、整列配向のものであってもランダム配向のものであってもよい。整列配向では、ポリマー足場材となる繊維の少なくとも50%がアライメントの平均軸に沿って配向されている。
【0095】
例示的実施形態では、組成物は、本質的に長手方向、本質的に円周方向および「十字」から選択される一つであるアライメントを有する。長手方向のアライメントは、繊維が、導管、充填導管または棒状のポリマー足場材の長軸方向に整列されているときに存在する。円周方向のアライメントは、繊維が、ポリマー足場材の短軸に沿って整列されているときに存在する。十字のアライメントは、第1のポリマー足場材の平均アライメント軸が、この第1のポリマー足場材に隣接した第2のポリマー足場材の平均アライメント軸に対して角度をなすような要領で、組成物中のひとつのポリマー足場材の繊維が整列されているときに存在する。長手方向に整列または円周方向に整列されたポリマー足場材は、2種類以上の繊維層を有することが可能である。十字に整列されたポリマー足場材には、2種類以上の繊維層が必要である。
【0096】
例示的な別の実施形態では、ポリマー繊維は、繊維束の中心軸からの標準偏差を持ち得る。例示的実施形態では、繊維の標準偏差が、約0°から約1°の間、約0°から約3°の間、約0°から約5°の間、約0°から約10°の間、約0°から約15°の間、約0°から約20°の間および約0°から約30°の間から選択される一つである。
【0097】
整列されたポリマー足場材には、細胞の細胞骨格アライメント、細胞移動および細胞機能に対して大きな影響を持つ。整列されたポリマー足場材は、細胞移動を誘導および方向付けることで、組織再生を促進する。このような足場材は、筋肉、皮膚、維管束組織、神経および脊髄の再生などのさまざまな組織再生に対する将来性のある解決策のひとつである。たとえば、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材は、損傷の隙間(injury gap)での神経、皮膚、筋肉および/または維管束組織の成長を亢進し、特異的に導くことができる。
【0098】
整列されたポリマー足場材を置く方向が、整列されたポリマー足場材が取って代わるまたは改善する生物学的機能に影響を及ぼすことがある。たとえば、整列されたポリマー足場材を創傷の中に置く場合、整列されたポリマー足場材を創傷の長軸に対して平行ではなく直交させる場合のほうが、創傷の治癒が短時間でなされる。例示的実施形態では、整列されたポリマー足場材の束の中央の長軸を、整列されたポリマー足場材が改善しているまたは取って代わっている材料の方向に対して直交させておく。例示的な別の実施形態では、整列されたポリマー足場材の束の中央の長軸を、整列されたポリマー足場材が改善しているまたは取って代わっている材料の方向に対して平行にしておく。
【0099】
例示的な別の実施形態では、本発明の整列された組成物(ポリマー足場材など)に生分解性ポリマーを含むことが可能である。これらの組成物を利用して、神経、皮膚、血管、骨格筋、心筋、腱および靱帯などの異方性構造を持つ他のタイプの組織の形態形成を補助することができる。また、三次元組織の成長に、これらの整列された本発明の生分解性組成物を利用することも可能である。電界紡糸生分解性繊維ポリマー足場材を利用して、神経組織、脊髄組織、皮膚組織、維管束組織および筋肉組織の三次元構造物を創製することが可能である。
【0100】
例示的実施形態では、本明細書に記載の組成物は、2種類以上のポリマー足場材を含み得る。これらのポリマー足場材は各々、組成物中の他のポリマー足場材または複数の足場材と同一または異なるアライメントを有し得る。
【0101】
例示的実施形態では、この組成物は、2つのポリマー足場材を含む。第1のポリマー足場材は、導管の形状を有し、長手方向に整列されている。第2のポリマー足場材は、第1のポリマー足場材の外側を囲み、ランダム、円周方向、十字および長手方向から選択される一つの配向を有する。例示的実施形態では、第2のポリマー足場材の配向は、ランダムおよび円周方向から選択される一つである。
【0102】
II.d)ポリマー足場材の形状/ポリマー足場材の製造方法
本発明のポリマー足場材は、解決したい課題の性質に応じて、さまざまな形状に成形可能なものである。
【0103】
本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、さまざまな寸法を取り得るものである。例示的実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.1mmから50cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.1mmから1mmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ1mmから1cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ1cmから10cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ10cmから50cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ1cmから5cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ2.5cmから15cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ5mmから6cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ8mmから3cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ10cmから25cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.5cmから2cmである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は長さ0.1cmから2cmである。
【0104】
本発明の組成物および/またはポリマー足場材は、さまざまな繊維層から構成可能なものである。例示的実施形態では、組成物は約1から約2,000の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約1,000の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約500の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約20の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1から約10の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約5から約25の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約500から約1,500の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約10から約20の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約35から約80の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約10から約100の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約5から約600の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約10から約80の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約2から約12の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約60から約400の繊維層を有する。例示的実施形態では、組成物は約1,200から約1,750の繊維層を有する。
【0105】
例示的実施形態では、ポリマー足場材はシートまたは膜の形状を有する。ポリマー足場材の膜は、電界紡糸で作製可能なものである。膜内の個々の繊維については、コレクタとしての回転ドラムを利用して電界紡糸時に、あるいは、電界紡糸後に機械的な一軸延伸によって整列させることが可能である。
【0106】
例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は、「十字」シートの形状を有する。十字シートを形成する目的で、整列されたポリマーシートまたは膜の層を、20度より大きいが160度未満、30度より大きいが150度未満、40度より大きいが140度未満、50度より大きいが130度未満、60度より大きいが120度未満、70度より大きいが110度未満および80度より大きいが100度未満から選択される一つの角度で互いに関連して配置することが可能である。
【0107】
「十字」シートを作製するには、さまざまな方法がある。例示的実施形態では、非電導性領域を含まない回転式の金属ドラムコレクタを利用する。整列された繊維層をドラムの表面に作製した後、これをドラムから剥がす。整列された層を90度回転させ、ドラムに戻す。次に、ドラムが高速に回転している間に電界紡糸繊維の別の層を加える。これらのステップを繰り返すことで、別の十字層を加えることが可能である。例示的な別の実施形態では、非電導性領域のあるドラムを利用する。ここで、繊維が非電導性セクションで長手方向に堆積して整列されるように、第1の時間にわたってドラムをゆっくりと回転させる。続いて、繊維が強制的に円周方向に整列されるように、ドラムを高速で回転させる。これらのステップを繰り返すことで、別の十字層を加えることが可能である。
【0108】
導管
例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は、導管の形状を有する。導管の例示的な図を図4Aに示し、導管の断面図の例示的な図を図5Aに示す。導管は、その長さならびに、その内径および外径に応じて、さまざまなサイズを取ることができる。例示的実施形態では、導管の内部空間は、繊維ポリマー足場材を本質的に含まない。これらのパラメータについては、たとえば、さまざまな組織の大きさや用途に対応するよう可変である。例示的実施形態では、導管の壁は整列された繊維で構成される。例示的な別の実施形態では、繊維は長手方向に整列されているか円周方向に整列されている。例示的な別の実施形態では、導管に継ぎ目がある。例示的な別の実施形態では、導管の継ぎ目が導管の長手方向の軸に対して本質的に平行である。例示的な別の実施形態では、導管がシームレスである。例示的な別の実施形態では、導管は、導管の長手方向の軸に対して平行に本質的にシームレスである。例示的な別の実施形態では、導管の内壁が長手方向に整列された繊維の層からなるのに対し、導管の外壁は未整列の繊維で構成される。例示的な別の実施形態では、導管は、導管の長手方向の軸に対して平行にシームレスであり、導管の内壁が長手方向に整列された繊維の層からなるのに対し、導管の外壁は未整列の繊維で構成される。この場合に画定される導管は、外側の鞘としてランダムに配向された繊維が存在することによって、構造状の保全性がさらに大きくなるように設計されている。例示的な別の実施形態では、導管の内壁が未整列のランダムに配向された繊維で構成されているのに対し、導管の外壁は長手方向に整列された繊維の層で構成される。例示的な別の実施形態では、この導管は、導管の長手方向の軸に対して平行にシームレスである。例示的な別の実施形態では、導管の内壁が長手方向に整列された繊維で構成されるのに対し、導管の外壁は円周方向に整列された繊維で構成される。例示的な別の実施形態では、この導管は、導管の長手方向の軸に対して本質的に平行な軸に沿ってシームレスである。
【0109】
例示的実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから50,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから10,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから5,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから500nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから50nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約1nmから5nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約10nmから500nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約100nmから1,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約5,000nmから15,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約20,000nmから50,000nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約75nmから600nmの間である。例示的な別の実施形態では、導管の内壁と外壁との間の距離は約2,000nmから7,000nmの間である。
【0110】
例示的実施形態では、導管の内径は約1nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから10,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから5,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから50nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約1nmから5nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約10nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約100nmから1,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約5,000nmから15,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約20,000nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約75nmから600nmである。例示的な別の実施形態では、導管の内径は約2,000nmから7,000nmである。
【0111】
本明細書に記載の導管は、さまざまな方法で作製可能なものである。例示的実施形態では、導管は電界紡糸されていない。例示的な別の実施形態では、導管は、未配向のランダム繊維または未配向のランダムポリマー足場材で構成される。
【0112】
例示的実施形態では、継ぎ目のある導管を作製するために、繊維ポリマー足場材シートは丸められる。まず、繊維ポリマー足場材シートを電界紡糸する。シートをなす繊維については、電界紡糸時に整列させることが可能である。整列された電界紡糸繊維を作製するいくつかの方法として、コレクタ接地基板としての回転ドラムを利用するか、あるいは本明細書に記載のマンドレルを用いることによる方法があげられる。例示的実施形態では、マンドレルがマンドレル56Aである。シートをなす繊維はまた、機械的な一軸延伸によって電界紡糸後に整列可能なものである。続いて、整列された繊維ポリマー足場材シートをマンドレルに巻き、導管を形成する。マンドレルは、導管がつながれる前に取り出すこともできるし、これをつないだ後に取り出すこともできる。例示的実施形態では、ポリマー足場材の長手方向の軸に対して平行なシートの2つの端を一緒に止め、長手方向に整列された継ぎ合わせ導管を作製する。例示的実施形態では、シートをマンドレルに2回以上巻き、シートの一端を導管の一部に止めて、長手方向に整列された継ぎ合わせ導管を作製する。止める際には、アニーリング(熱)、接着を利用するか、あるいは縫合糸によって止めることができる。接着の例として、溶媒あるいは、フィブリンシーラントおよびコラーゲンゲルなどの生物学的接着剤がある。
【0113】
ここで、いくつかの例を添付の図面に示した本発明のいくつかの実施形態について、詳細に参照する。本発明については以下の実施形態との関連で説明するが、いずれも本発明をこれらの実施形態に限定することを意図したものではない旨を理解されたい。対照的に、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定する本発明の主旨および範囲に含み得る代替例、改変例および等価物を包含することを意図している。
【0114】
例示的な別の実施形態では、本発明は、シームレスな導管を提供するものである。図1は、このような構造を作製するための電界紡糸装置30を示す。ポリマー溶液38は、溶媒に溶解されたポリマーを含有し、シリンジアセンブリ36の中に収容されている。シリンジアセンブリ36は、圧力または流量を制御することで、ポリマー溶液がシリンジを出る速度をコンピュータ34で制御する、シリンジポンプアセンブリ32の一部である。任意に、選択した紡糸口金に対して異なる流量を提供し、制御することも可能である。流量は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴、すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0115】
シリンジポンプアセンブリ32は、プラットフォーム44に載置された紡糸口金42にポリマー溶液を供給する。紡糸口金は、何ら支障なく噴流形成および輸送を可能にするような先端の幾何学的形状を有する。高電圧電源48によってワイヤ41A経由で約10から約30kVの範囲の電荷が紡糸口金に印加される。
【0116】
電荷を帯びた紡糸口金とマンドレル56Aとの間に電場が形成されるように、マンドレル56A(図3Bで説明するように、55、57Aおよび57Bを含む)を紡糸口金42の下に配置する。電場によって、ポリマー溶液の噴流が紡糸口金から射出されてマンドレル56Aに向かって噴霧され、ミクロンまたはナノメートル台の直径のフィラメントまたは繊維46が形成される。アース線41Bおよび41Cを用いてドリルチャックを接地する。
【0117】
マンドレル56Aは、モーター52に接続された第1のドリルチャック54(非電導性ベアリング60に取り付けられている)および第2のドリルチャック54A(非電導性ベアリング60Aに取り付けられている)に取り付けられる。モーター52は、モーターがマンドレル56Aを回転させる速度を制御する速度制御50にリンクしている。任意に、異なる回転速度とすることができる。回転速度は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0118】
例示的な別の実施形態では、本発明は、図2の電界紡糸装置によって作製されるシームレス導管を提供するものである。この装置は、図1の装置と同様のものであるが、プラットフォーム44を保持するタワー40を含む。
【0119】
ポリマー足場材の複数の層を有する導管を、さまざまな方法で作製することができる。例示的実施形態では、別のポリマー足場材シートを本明細書に記載の導管の外側または内側に巻くことができる。例示的実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材導管を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、未整列のマイクロ/ナノ繊維の繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された導管の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と未整列の外側の繊維層とを有する二層導管を形成する。別の層(3層、4層、5層、6層など)を有する導管は、これらの方法の考え得る延長である。ポリマーに縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。
【0120】
例示的な別の実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材導管を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、円周方向に整列された繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された導管の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と円周方向に整列された外側の繊維層とを有する二層導管を形成する。継ぎ合わせのポリマー足場材に縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。
【0121】
例示的な別の実施形態では、内壁が長手方向に整列された繊維で構成され、外壁が円周方向に整列された繊維で構成された、シームレスの繊維ポリマー足場材導管を作製する。電界紡糸時には、非電導性領域の側面にある2つの電導性領域を有する本明細書に記載のマンドレルを利用する。長手方向に整列された繊維を均一に堆積できるように、マンドレルを低速で回転させる。続いて、円周方向に整列された繊維を均一に堆積できるように、マンドレルを高速で回転させる。こうして、長手方向に整列された内側の繊維層と円周方向に整列された外側の繊維層とを有するシームレスの繊維ポリマー足場材導管が得られる。
【0122】
例示的な別の実施形態では、内壁が長手方向に整列された繊維で構成され、外壁が未整列の繊維で構成された、シームレスの繊維ポリマー足場材導管を作製する。電界紡糸時には、非電導性領域の側面にある2つの電導性領域を有する上述した特別なマンドレルを利用する。長手方向に整列された繊維を均一に堆積できるように、マンドレルを低速で回転させる。続いて、堆積された繊維が長手方向および円周方向のどちらにも整列されないようにする中程度の速度でマンドレルを回転させる。こうして、長手方向に整列された内側の繊維層とランダムに整列された外側の繊維層とを有するシームレスの繊維ポリマー足場材導管が得られる。
【0123】
棒
例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材は、棒の形状を有する。棒の例示的な図を図4Bに示し、棒の断面図の例示的な図を図5Bに示す。棒は、その長さならびに、その直径に応じて、さまざまなサイズを取ることができる。棒内の繊維数についても可変であり、これが棒の密度に影響することになる。これらのパラメータについては、たとえば、さまざまな組織の大きさや用途に対応するよう可変である。例示的実施形態では、棒は、整列された繊維からなる。例示的な別の実施形態では、繊維は長手方向に整列されているか、円周方向に整列されている。例示的な別の実施形態では、棒に継ぎ目がある。例示的な別の実施形態では、棒の継ぎ目が棒の長手方向の軸に対して本質的に平行である。例示的な別の実施形態では、棒がシームレスである。例示的な別の実施形態では、棒は、導管の長手方向の軸に対して平行に本質的にシームレスである。例示的な別の実施形態では、棒は、長手方向に整列された繊維の層を含み、これが未整列の繊維からなる導管に覆われている。例示的な別の実施形態では、棒はその長手方向の軸に対して平行にシームレスであり、棒は、未整列の繊維からなる導管に覆われている長手方向に整列された繊維の層を含む。この場合に画定される材料は、外側の鞘としてランダムに配向された繊維が存在することで構造的完全性がさらに大きくなるように設計されている。例示的な別の実施形態では、棒が未整列のランダムに配向された繊維で構成されるのに対し、導管は長手方向に整列された繊維の層で構成される。例示的な別の実施形態では、棒はその長手方向の軸に対して平行にシームレスである。例示的な別の実施形態では、棒は、円周方向に整列された繊維で構成される導管に覆われた長手方向に整列された繊維で構成されている。例示的な別の実施形態では、この棒は、その長手方向の軸に対して平行にシームレスである。
【0124】
例示的実施形態では、棒の直径は約1nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから10,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから5,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから50nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約1nmから5nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約10nmから500nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約100nmから1,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約5,000nmから15,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約20,000nmから50,000nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約75nmから600nmである。例示的な別の実施形態では、棒の直径は約2,000nmから7,000nmである。
【0125】
本明細書に記載の棒は、さまざまな方法で作製可能なものである。例示的実施形態では、棒は電界紡糸されていない。例示的な別の実施形態では、棒は未配向のランダム繊維または未配向のランダムポリマー足場材で構成される。
【0126】
例示的実施形態では、繊維ポリマー足場材シートを丸めて、継ぎ目のある棒を作製する。まず、繊維ポリマー足場材シートを電界紡糸する。シートをなす繊維については、電界紡糸時に整列させることが可能である。整列された電界紡糸繊維を作製するいくつかの方法として、コレクタ接地基板としての回転ドラムを利用するか、あるいは本明細書に記載のマンドレルを用いることによる方法があげられる。例示的実施形態では、マンドレルがマンドレル56Bである。シートをなす繊維はまた、機械的な一軸延伸によって電界紡糸後に整列可能なものである。続いて、整列された繊維ポリマー足場材シート自体を丸めて、棒を形成する。ポリマー足場材シートの端を棒の一部に止めて、長手方向に整列された継ぎ合わせ棒を作製する。シートについては、アニーリング(熱)、接着または縫合糸によって止めることができる。接着の例として、溶媒あるいは、フィブリンシーラントおよびコラーゲンゲルなどの生物学的接着剤がある。
【0127】
ここで、いくつかの例を添付の図面に示した本発明のいくつかの実施形態について、詳細に参照する。本発明については以下の実施形態との関連で説明するが、いずれも本発明をこれらの実施形態に限定することを意図したものではない旨を理解されたい。対照的に、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定する本発明の主旨および範囲に含み得る代替例、改変例および等価物を包含することを意図している。
【0128】
例示的な別の実施形態では、本発明は、シームレスな棒を提供するものである。図6は、このような構造を作製するための電界紡糸装置80を示す。ポリマー溶液38は、溶媒に溶解されたポリマーを含有し、シリンジアセンブリ36の中に収容されている。シリンジアセンブリ36は、圧力または流量を制御することによって、ポリマー溶液がシリンジを出る速度をコンピュータ34で制御するシリンジポンプアセンブリ32の一部である。任意に、選択した紡糸口金に対して異なる流量を提供し、制御することも可能である。流量は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴、すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0129】
シリンジポンプアセンブリ32は、プラットフォーム44に載置された紡糸口金42にポリマー溶液を供給する。紡糸口金は、何ら支障なく噴流形成および輸送を可能にするような先端の幾何学的形状を有する。高電圧電源48によってワイヤ41A経由で約10から約30kVの範囲の電荷を紡糸口金に印加する。
【0130】
マンドレル56B(図3Cで説明するように、57A、57Bおよび58を含む)を紡糸口金42の下に配置する。電荷を帯びた紡糸口金とマンドレル56Bとの間に電場が形成されるように、マンドレル56Bは、第1の導電性領域57Aおよび第1の導電面57Cと、第2の導電性領域57Bおよび第2の導電面57Dとを有する。電場によって、ポリマー溶液の噴流が紡糸口金から射出されてマンドレル56Bに向かって噴霧され、ミクロンまたはナノメートル台の直径で58内のフィラメントまたは繊維が形成される。アース線41Bおよび41Cを用いてドリルチャックを接地する。
【0131】
第1の導電性領域57Aは、第1のドリルチャック54(非電導性ベアリング60に取り付けられている)に取り付けられ、第2の導電性領域57Bは、モーター52Aに接続された第2のドリルチャック54A(非電導性ベアリング60Aに取り付けられている)に取り付けられる。モーター52および52Aは、モーターがマンドレル56Bを回転させる速度を制御する速度制御50Aにリンクしている。任意に、異なる回転速度とすることができる。回転速度は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【0132】
例示的な別の実施形態では、本発明は、図7の電界紡糸装置によって作製されるシームレスな棒を提供するものである。この装置は、図6の装置と同様のものであるが、プラットフォーム44を保持するタワー40を含む。
【0133】
ポリマー足場材の複数の層を有する棒を、さまざまな方法で作製することができる。例示的実施形態では、別のポリマー足場材シートを本明細書に記載の棒の外側に巻くことができる。例示的実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材棒を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、未整列のマイクロ/ナノ繊維の繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された棒の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と未整列の外側の繊維層とを有する二層ポリマー足場材を形成する。別の層(3層、4層、5層、6層など)を有する棒は、これらの方法の考え得る延長である。ポリマーに縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。これらの多層棒の実施形態のうちのいくつかを、「充填導管」とも呼ぶ。
【0134】
例示的な別の実施形態では、長手方向に整列された繊維ポリマー足場材棒を、シームレスまたは継ぎ目のある状態で作製する。続いて、円周方向に整列された繊維ポリマー足場材シートを、長手方向に整列された棒の周囲に配置して、長手方向に整列された内側の繊維層と円周方向に整列された外側の繊維層とを有する二層棒を形成する。継ぎ合わせのポリマー足場材に縫合糸または接着剤を任意に追加し、この構造を維持することも可能である。
【0135】
例示的な別の実施形態では、シームレスの繊維ポリマー足場材が、長手方向に整列された繊維で構成された内部の棒と、円周方向またはランダムに整列された繊維で構成された外側の導管またはスリーブとを有する。シームレスの長手方向に整列された繊維ポリマー棒足場材は、本明細書に記載されているようにして製造される。円周方向に整列された繊維の外側の導管またはスリーブを形成するには、マンドレルの回転を高速まで上げて、長手方向に整列された繊維ポリマー棒の周りに円周方向に整列された繊維を均一に堆積できるようにする。あるいは、ランダムに整列された繊維の外側の導管またはスリーブを形成するには、マンドレルの回転を、長手方向に整列された繊維ポリマー棒に堆積された繊維が長手方向および円周方向のどちらにも整列されないようにする中程度の速度まで上げる。足場材の棒をマンドレルから取り外すと、内部の棒が長手方向に整列された繊維で構成され、外側の導管またはスリーブが円周方向に整列された繊維または未整列の繊維で構成されたシームレスの繊維ポリマー足場材が得られる。
【0136】
充填導管
例示的実施形態では、ポリマー足場材は、充填導管の形状を有する。充填導管は、以下のようにして作製可能なものである。(1)本明細書に記載されているようにして導管を形成し、(2)充填導管用のフィラー材料を長手方向に整列された繊維で構成する。このフィラー材料には、ほぐれた状態で高度に多孔性の材料を用いることが可能である。例示的実施形態では、フィラー材料は、整列された繊維の薄膜として電界紡糸される。続いて、整列された繊維の配向が導管の長軸に平行になるようにして、この材料を本明細書に記載の導管内に直接挿入する。別の場合では、長手方向に整列された繊維の棒を本明細書に記載されているようにして作製する。この棒を、(1)完全に形成された導管内に直接に挿入するか、(2)マンドレルとして利用して、その周囲に繊維状のシートを巻き、さらに縫合糸または接着剤で貼り付けて充填導管を形成する。
【0137】
II.f)別の組成物またはポリマー足場材成分
II.f1)細胞
例示的実施形態では、本明細書に記載の組成物および/またはポリマー足場材はさらに、細胞を備える。細胞は、組成物および/またはポリマー足場材に埋め込まれるかまたはその中で交絡していてもよいし、表面にあっても構わない。例示的実施形態では、細胞は、本発明の組成物および/またはポリマー足場材と共有結合または非共有結合している。いくつかの実施形態では、細胞を利用して、新たな組織の成長を促進する。例示的実施形態では、細胞は、自家(ドナーとレシピエントが同一の個体である)、同種(ドナーとレシピエントが同一の個体ではないが、同じ種に由来する)および異種(ドナーとレシピエントが異なる種に由来する)から選択される一つである。例示的実施形態では、細胞が幹細胞ではない。例示的実施形態では、細胞が幹細胞である。例示的実施形態では、細胞は、成体幹細胞および胚幹細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、成体幹細胞は、間葉幹細胞(MSC)(骨髄由来)または脂肪由来の成体幹細胞(ADAS)であり得る。例示的な別の実施形態では、幹細胞は、単能性、複能性、多能性および全能性から選択される一つである。例示的実施形態では、細胞は前駆細胞である。例示的な別の実施形態では、前駆細胞は、線維芽細胞、筋芽細胞、神経前駆細胞、造血前駆細胞および内皮前駆細胞であり得る。例示的な別の実施形態では、細胞は、筋芽細胞および筋肉前駆細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体筋肉細胞、筋肉前駆細胞、筋幹細胞またはこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体血管細胞、血管前駆細胞、血管幹細胞またはこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体神経細胞、グリア細胞、神経前駆細胞、グリア前駆細胞、神経幹細胞、神経上皮細胞またはこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、シュワン細胞、線維芽細胞および血管細胞から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、細胞は、成体皮膚細胞、皮膚前駆細胞および皮膚幹細胞から選択される一つである。最近、線維芽細胞、血管細胞および間葉幹細胞に対して、細胞成長、機能および組織の一助としてのナノ繊維基質の実現可能性が示されている。Zong, X., Biomacromoleucles 2003, 4, (2), 416-23; Li, D., Adv Mater 2004, 16, (4), 1151-1170; Boland, E.D., Front Biosci 2004, 9, 1422-32; Bhattarai, S.R., Biomaterials 2004, 25, (13), 2592-602; Yoshimoto, H., Biomaterials 2003, 24, (12), 2077-82。
【0138】
別の実施形態では、三次元組織の発達に、本明細書に記載の細胞包埋組成物および/またはポリマー足場材を利用することができる。例示的な別の実施形態では、筋芽細胞包埋ポリマー足場材を利用して筋肉組織を成長させることができ、神経細胞包埋ポリマー足場材を利用して神経組織を成長させることができ、血管細胞包埋ポリマー足場材を利用して維管束組織を成長させることができ、脊髄細胞包埋ポリマー足場材を利用して脊髄組織を成長させることができ、皮膚細胞包埋ポリマー足場材を利用して皮膚組織を成長させることができる。
【0139】
この組成物および/またはポリマー足場材には、電界紡糸後または製造後に細胞を取り込むことが可能である。
【0140】
II.f2)生体分子
生体分子(核酸、アミノ酸、糖または脂質など)は、本明細書に記載の組成物および/またはポリマー足場材に共有結合で付着されるか、または非共有結合的に結合されることが可能なものである。例示的実施形態では、生体分子は、レセプター分子、細胞外マトリクス成分または生化学的因子から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、生化学的因子は、成長因子および分化因子から選択される一つである。例示的実施形態では、生体分子は、グリコサミノグリカンおよびプロテオグリカンから選択される一つである。例示的実施形態では、生体分子は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。
【0141】
例示的な別の実施形態では、第1の分子(生体分子であってもなくてもよい)を本発明の組成物および/またはポリマー足場材に共有結合させる。この第1の分子を利用して、第2の生体分子と相互作用させることができる。例示的実施形態では、第1の分子がリンカーであり、第2の生体分子は、レセプター分子、生化学的因子、成長因子および分化因子から選択される一つである。例示的実施形態では、第1の分子は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである。例示的実施形態では、第2の生体分子は、レセプター分子、生化学的因子、成長因子および分化因子から選択される一つである。例示的な別の実施形態では、第1の分子がリンカーを介して共有結合され、前記リンカーが、ジアミノポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)およびこれらの組み合わせから選択される一つである。ヘパリンに結合しない生体分子の場合、ポリマー足場材への直接的な接合またはリンカー(PEG、アミノ−PEGおよびジアミノ−PEGなど)を介しての接合も実現可能である。例示的な別の実施形態では、生体分子は、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、ポリリシン、他の細胞接着促進ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つである細胞外マトリクス成分である。例示的な別の実施形態では、生体分子は、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、血管内皮成長因子、上皮成長因子、ケラチノサイト成長因子およびこれらの組み合わせから選択される一つである成長因子である。例示的な別の実施形態では、生体分子は、ストロマ細胞由来因子、ソニックヘッジホッグ、骨形成タンパク質、ノッチリガンド、Wntおよびこれらの組み合わせから選択される一つである分化因子である。
【0142】
神経突起成長をシミュレートする目的で、本発明のポリマー足場材に共有結合される第1の分子を利用して生体分子(たとえば、成長因子および/またはECM成分)と相互作用することができる。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材を創傷の治癒ならびに、細胞外マトリクス成分、成長因子および分化因子から選択される一つである生体分子に利用できる。創傷治癒亢進用の潜在因子の一例として、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および血小板由来成長因子(PDGF)があげられる。
【0143】
生体分子は、電界紡糸時または製造後に本発明の組成物内に取り入れることの可能なものである。これらの生体分子については、混合、直接またはさまざまなリンカーを介した共有結合または吸着によって取り入れることが可能である。
【0144】
II.f3)薬学的に許容される賦形剤/製剤処方薬
本発明のポリマー足場材と併用して、組成物中に薬学的に許容される賦形剤を含有させることができる。例示的実施形態では、本発明は、a)本発明のポリマー足場材と、b)薬学的に許容される賦形剤とを含む製剤処方薬である組成物を提供するものである。例示的な実施形態では、製剤処方薬は薬学的に許容される賦形剤が含まれるポリマー足場材である。例示的実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、不活性希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤、潤滑剤および時間遅延(time delay)材料から選択される一つである。
【0145】
本発明の製剤処方薬は、選択した投与経路に合うさまざまな形態を取り得る。当業者であれば、本明細書に記載の化合物を取り入れた無毒の製剤処方薬の調製に利用できるさまざまな合成方法が分かるであろう。当業者であれば、水、エタノール、プロピレングリコール、鉱物油、植物油およびジメチルスルホキシド(DMSO)など、本発明の化合物の溶媒和物の調製に利用できる広範囲にわたる無毒の薬学的に許容される溶媒が分かるであろう。
【0146】
本発明の組成物は、従来の無毒の薬学的に許容されるキャリア、アジュバントおよびベヒクルを含有する投与量単位の処方薬で、外科的切開によって、局所的または非経口的に投与できるものである。
【0147】
例示的な別の実施形態では、本明細書に記載の組成物および/またはポリマー足場材は、キットの一部である。このキットには、本発明の方法を教示および/またはキットの成分の用途を説明する取扱説明書を添付することができる。
【0148】
III.組成物用としての使用
別の態様では、生物学的機能に取って代わる、または生物学的機能を再生または改善する目的で、被検体で本発明の組成物(ポリマー足場材など)を利用することが可能である。例示的実施形態では、組成物は、被検体の神経機能または筋肉機能または皮膚機能または血管機能に取って代わる、またはそれらを再生または改善する。別の態様では、本発明は、被検体における損傷を治療する方法であって、(a)損傷を治療できるほど十分に、前記被検体を治療有効量の本発明の組成物と接触させることを含む方法を提供するものである。例示的実施形態では、組成物は、損傷の部位で被検体と接触する。例示的な別の実施形態では、損傷は、切断された神経、損傷を受けた神経、切断された筋肉、損傷を受けた筋肉、切断された血管、損傷を受けた血管、皮膚創傷および傷ついた皮膚から選択される一つである。別の態様では、本発明は、被検体における組織の増殖方法であって、(a)前記組織の成長を容易にできるほど十分に、前記被検体を治療有効量の本発明の組成物と接触させることを含む方法を提供するものである。例示的実施形態では、組織は、筋肉組織、維管束組織、神経組織および皮膚組織から選択される一つである。この組成物をin vitroまたはin vivoで使用して、その有効性を試験することができる。例示的な別の実施形態では、被検体が動物である。例示的な別の実施形態では、動物は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ラットおよびマウスから選択される一つである。
【0149】
以下は本発明の組成物の使用例である。
【0150】
III.a)神経が関与する用途
例示的実施形態では、本明細書に記載の組成物が、切断された神経または損傷を受けた神経と置き換えるために使用される。ひとつの用途に、損傷を受けた末梢神経の再生がある。末梢神経の損傷は、外傷、自己免疫疾患、糖尿病によって生じ得る。末梢神経は、脊髄からさまざまな最終ターゲットまで全身を走る神経繊維からなる。末梢神経の損傷は、神経の最終ターゲットで運動機能および感覚機能が少なくとも部分的に失われる結果となる。最も重篤な損傷形態では、神経が完全に切断され、近位と遠位の神経断端間に損傷の大きな隙間が形成される。近位端の神経繊維は、再生できるが、数ミリメートルよりも長い隙間ではそれほど効率的には再生できない。このため、近位の神経セグメントから遠位の神経セグメントまで再生している神経繊維を効率的に導く材料で損傷の隙間をつなぐことが肝要である。
【0151】
末梢神経が損傷を受け、もはや連続していない臨床症状では、本明細書に記載の長手方向に整列された繊維ポリマー足場材のうち少なくともひとつを利用できる。ポリマー足場材は、導管、充填導管または棒の形状を取り得る。神経の中断につながる損傷は一般に、四肢で発生する。整列された繊維足場材をこれらの領域に移植して、損傷の隙間での神経の再生を亢進させるとともに、四肢の運動機能および感覚機能を回復できるようにすることができる。足場材は、直接の再付着ができないほど神経断端間の隙間が大きい、不連続な損傷神経を含むあらゆる症状に用いることができる。いずれの場合も、足場材は神経の2つの端をつなぎ、神経セグメントに接合し、近位の神経セグメントから遠位の神経セグメントへの神経繊維の再生を亢進および指向する。足場材を構成する長手方向に整列された繊維は、本質的に神経繊維と同じ配向に整列される。よって、整列された足場材繊維は、損傷の隙間での神経繊維の効率的な再生を導く、特異的な誘導キューとなり得る。長手方向に整列された導管ポリマー足場材は、まず近位断端の周辺に沿って位置する神経繊維の方向付けられた成長を促進することにより、機能することもある。棒形および充填導管形の長手方向に整列されたポリマー足場材は、すべての神経繊維を近位から遠位の神経セグメントに連続的に誘導可能でありうる。また、ポリマー足場材に、細胞外マトリクスタンパク質、ポリペプチド、成長因子および/または分化因子などの生体分子を保持し、神経繊維の再生をさらに亢進および誘導するようにしてもよい。ポリマー足場材に追加できる細胞外マトリクスタンパク質としては、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンがあげられる。ポリマー足場材に追加できる成長因子としては、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子および血管内皮成長因子があげられる。ポリマー足場材に追加できるポリペプチドとしては、ポリリシン、RGDポリペプチドおよびラミニン様ポリペプチドがあげられる。ポリマー足場材に追加できる他の生体分子としては、ヘパリンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンがあげられる。これらの生体分子はまた、ラミニン、VEGFおよびBFGFを繊維ポリマー足場材に非共有結合的に封入するのにも利用可能である。
【0152】
足場材については、患者の神経損傷での具体的な要件に合うような形状および大きさにすることが可能である。たとえば、導管、充填導管の内径および棒形のポリマー足場材の全体の直径を、約1mmから約20mmとすることができる。例示的な別の実施形態では、直径を約2mmから約8mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径を約5mmから約10mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径を約2mmから約15mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径を約12mmから約18mmにすることが可能である。例示的な別の実施形態では、直径は、損傷した神経の具体的なサイズに合うように、約1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mm、8.5mm、9mm、9.5mm、10mm、10.5mm、11mm、11.5mm、12mm、12.5mm、13mm、13.5mm、14mm、14.5mm、15mm、15.5mm、16mm、16.5mm、17mm、17.5mm、18mm、18.5mm、19mm、19.5mm、20mm、21mmであり得る。足場材の長さは、大きな範囲の損傷の隙間に対応するよう1cmから約50cmまで可変である。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約4cmから約15cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約14cmから約30cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約1cmから約5cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは約2cmから約8cmであり得る。例示的な別の実施形態では、足場材の長さは、約1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、3cm、3.5cm、4cm、4.5cm、5cm、5.5cm、6cm、6.5cm、7cm、7.5cm、8cm、8.5cm、9cm、9.5cm、10cm、10.5cm、11cm、11.5cm、12cm、12.5cm、13cm、13.5cm、14cm、14.5cm、15cm、15.5cm、16cm、16.5cm、17cm、17.5cm、18cm、18.5cm、19cm、19.5cm、20cm、20.5cmであり得る。長手方向に整列された繊維足場材のいずれの形態も、現在最も広く用いられているが神経損傷に対する完全な治療形態とは言い難い、神経の自家移植片に代わるものとなり得る。足場材はまた、現在の合成神経ガイダンス製品が対応している範囲を超えた長い損傷の隙間をつなげるのに使用できることもある。たとえば、つなげたい損傷の隙間が3cmを超えることがある。例示的実施形態では、被検体に長い損傷の隙間があり、棒形のポリマー足場材または充填導管ポリマー足場材が長い損傷の隙間での神経再生に最も好ましい足場材形状であることがある。
【0153】
末梢神経が損傷を受けているが切断されてはいない臨床症状では、本発明に記載の長手方向に整列された繊維足場材をシート状にして、神経を包むものとして利用するおよび/または棒状または充填導管状または導管状にして、損傷を受けた領域に直接挿入することができる。長手方向に整列された繊維足場材に、本明細書に記載されているような同様の生体分子を保持することも可能である。
【0154】
本発明に記載の足場材の別の用途として、損傷を受けた脊髄の再生がある。整列された繊維ポリマー足場材を、損傷を受けた領域に挿入し、脊髄組織をつなぐことができる。整列された繊維ポリマー足場材によって、脊髄神経繊維の再生を亢進および誘導することが可能である。また、足場材に生体分子および/または細胞を保持することも可能である。生体分子は、上に列挙したような細胞外マトリクスタンパク質、ポリペプチド、成長因子および/または分化因子を含み得るものであり、脊髄神経再生を開始させこれを亢進することができる。細胞には、神経幹細胞、グリア細胞および/または神経前駆細胞(progenitor)を含み得る。細胞は、失われた神経細胞やグリア細胞に取って代わることができるおよび/または脊髄神経の成長を補助および亢進することができる。
【0155】
例示的な別の実施形態では、長手方向に整列されたポリマー導管足場材を神経ガイダンス導管として利用して、損傷の隙間での神経再生を促進する。
【0156】
III.b)皮膚が関与する用途
ここに記載の本発明のポリマー足場材は、臨床および個人での創傷の手当ならびに軟部組織再生に有用なものとなり得る。本発明の一態様では、ポリマー足場材シートは、外側の皮膚創傷に対する創傷被覆材または移植片として有用である。臨床現場では、これらのシートを、外傷、火傷、潰瘍、擦過、裂創、外科手術または他の損傷に起因する創傷の治療に利用することができる。外科医は、これらの移植片を用いて、創傷部分を覆って保護したり、失われた皮膚組織または損傷を受けた皮膚組織と一時的に置き換え、損傷を受けた部分への新たな組織の生成と創傷の治癒を助けることができる。臨床現場では、縫合糸、接着剤または重ねて使う(overlaying)絆創膏を用いてマイクロ/ナノ繊維シートを創傷部分に固定すればよい。これらのマイクロ/ナノ繊維創傷被覆材については、創傷の大きさに合うように切って使用してもよいし、創傷の縁を覆うようにしてもよい。
【0157】
本発明の別の態様では、シートを接着剤の裏材と組み合わせてポリマー足場材の絆創膏を作製することで、ポリマー足場材シートを、個人での手当て/在宅医療に合うように変えることができる。接着剤のセクションによって、ポリマー足場材シートは創傷のある部分の上で適所に保持されることになり、繊維が分解または組織と融合した際に取り除くことができる。また、ポリマー足場材シートを、液体またはゲル接着剤で固定してもよい。
【0158】
本発明の別の態様では、大きなポリマー足場材シートをガーゼとして利用して、流体を吸収し、大きな創傷を保護することが可能である。このポリマー足場材ガーゼは、創傷のある部分に巻いたり、テープで固定したりすることが可能なものである。
【0159】
本発明の別の態様では、ポリマー足場材シートを利用して、羊膜嚢の創傷、消化管または粘膜の潰瘍、歯肉の損傷または後退、体内での外科的切開または生検などによる体内の軟部組織創傷を治療することができる。繰り返すが、ポリマー足場材移植片を適所に縫合または接着して、損傷を受けた組織部分を埋めるまたは覆うことができる。
【0160】
ポリマー足場材には、創傷治癒に有用な多くの特徴がある。第1に、ナノ繊維を含む本明細書に記載のポリマー足場材は、ナノ多孔性かつ通気性である。これらの足場材は、微生物および感染粒子が通るのを防ぐことができるが、自然な創傷治癒には不可欠な空気流と水分の浸透は可能である。
【0161】
第2に、本発明の繊維は生分解性であるため、一時的に創傷を被覆し、最終的には新たな組織の内部成長を可能にする。ポリマー足場材の創傷被覆材にどの材料を用いるかは、機械的強度および分解/組織再生の速度をはじめとする自然な組織の特徴に合うように決めることが可能である。
【0162】
第3に、ポリマー足場材を、分解時に取り除くことのできるさまざまな因子と包埋または接合してもよい。これらの因子としては、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、形質転換成長因子−β(TGF−β)およびメタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMP)があげられるが、これに限定されるものではなく、いずれも創傷治癒において有益であることが明らかになっている。Fu, X. et al., Wound Repair Regen, 13(2):122-30 (2005)。抗生剤、殺菌剤、殺真菌剤、銀含有作用剤、鎮痛剤および一酸化窒素放出化合物などの別の創傷治癒因子を、ポリマー足場材の創傷被覆材または移植片に組み込むことも可能である。
【0163】
第4に、創傷治癒用のポリマー足場材移植片に、組織再生を促進し、より一層自然な組織構造にするために、細胞を播種してもよい。これらの細胞としては、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、内皮細胞、間葉幹細胞および/または胚幹細胞があげられるが、これに限定されるものではない。
【0164】
第5に、ナノ繊維ポリマー足場材のナノスケールのアーキテクチャが、多くの一般的な軟部組織の細胞外マトリクス(ECM)のものと極めてよく似ている。たとえば、ナノスケールの繊維は、皮膚および他の組織に見られるコラーゲンフィブリルと構造的に類似している。このアーキテクチャを用いると、細胞が創傷に移動するための組織的な足場材が得られるため、痕形成を防止できることがある。本発明のこの態様では、痕組織形成時のように細胞をランダムに配置させるのではなく、細胞を整列・組織化された状態に保つ上で、(ランダム配向繊維との対比で)ポリマー足場材のアライメントが重要である。整列されたポリマー足場材を創傷の特定の軸に対して配向させ、組織の内部成長と創傷の被覆を速めるようにしてもよい。
【0165】
ポリマー足場材のアライメントを利用して、自然な組織ECMのアーキテクチャに非常によく合わせることができる。これは、単一方向での繊維アライメント、直交方向での十字アライメントまたはさらに複雑な繊維アーキテクチャを含むものであってもよい。本発明のこの事例では、ポリマー足場材は、各層が特定の繊維配向を持つ複数の繊維層を含む。同様に、個々のポリマー足場材層は各々、上で列挙したものなどの特定の因子または細胞タイプを含むものであってもよい。これによって、自然な組織アーキテクチャおよび構成と非常によく合うポリマー足場材を作製できるようになる。たとえば、単純なポリマー足場材の創傷被覆材または移植片には、整列された繊維の単層を含み得る。一方、これよりも複雑なポリマー足場材の皮膚移植片には、一番下のシートに線維芽細胞、一番上のシートにケラチノサイトならびに、一番下のシートにbFGF、一番上のシートに抗菌剤を含む十字パターンに層状化された複数の整列繊維シートを含み得る。患者の特定の需要に応じて、このような他の組み合わせも可能である。
【0166】
III.c)脈管系が関与する用途
本明細書に記載のポリマー足場材を利用して、損傷を受けた、切断されたまたは変化したさまざまな血管と置き換えるまたはそうした血管をバイパスすることが可能である。例示的実施形態では、導管または充填導管ポリマー足場材を冠動脈バイパス術に利用する。加えて、これらの移植片を用いて、血管を完全にポリマー足場材で置き換えてしまうか、あるいは鞘のような包装を作製することで、血管動脈瘤(すなわち、一般にePTFEまたはDacronなどの合成ポリマー置換移植片が必要とされる腹部大動脈瘤)を支持および安定させることが可能である。他の強化法として、ポリマー足場材シートを動脈瘤部位に巻くことがあげられる。その用途は下半身の血管の置換(lower body vessel replacement)に限定されるものではなく、内頸動脈、後交通動脈、後大脳動脈などをはじめとする局部動脈を伴う、ウィリス動脈輪などの他の一般的な動脈瘤部位を含み得る。
【0167】
例示的実施形態では、スリーブで囲まれるポリマー足場材を利用して、血管と置き換えるまたは血管を再生させる。スリーブは、ポリマー足場材を囲んで、その機械的強度、捩り剛性、コンプライアンスまたは他の任意の物理的特性または化学的特性を改善するむよう作製可能なものである。このスリーブは、たとえば、下にくるナノ繊維が特定のアライメント方向になるような要領でナノ繊維ポリマー足場材導管の周囲に配置可能であり、スリーブについてはアライメント方向が同じであっても異なっていてもよい。未整列またはランダムに整列されたマイクロ繊維またはナノ繊維を、スリーブ材料または下にくるナノ繊維構造として機能させることも可能である。複数のスリーブを利用して、物理的特性または化学的特性の異なる多層構造を作製してもよい。
【0168】
多細胞タイプの移植片
ポリマー足場材の異なる領域に、異なる細胞タイプを播種することで、管状構造を作製することができる。たとえば、図40に、細胞タイプ1が管腔の裏当てとなり、細胞タイプ2が移植片の内側部、移植片の別の領域に播種することで細胞タイプ3が移植片を包むよう構成された移植片を示す。
【0169】
ナノ繊維の管状構造の改変
例示的実施形態では、本発明は、移植前に生化学的改変または細胞改変のない脈管系で用いるポリマー足場材を提供するものである。例示的な別の実施形態では、本発明はさらに、血小板がナノ繊維に付着するのを防ぐ非汚染性、非血栓形成性のブラシ層を作製するためのポリ(エチレングリコール)または同様の生化学的改変を含む。このブラシ層は、血栓症低減のためにナノ繊維ポリマー足場材に共有結合的にグラフト可能なものである。例示的な別の実施形態では、ポリマー足場材はさらに、ヘパリン、ヒルジンまたはこれらの組み合わせを含む。ヘパリンは、血流中の第Xa因子およびトロンビンをブロックできるアンチトロンビンIIIと結合できる。ヒルジンは、トロンビンのインヒビターである。ジアミノポリ(エチレングリコール)リンカーを利用すれば、ヘパリンおよびヒルジンをポリマー足場材に共有結合的にグラフトすることができる。例示的実施形態では、ポリマー足場材はPLLA繊維を含有する。被検体の脈管系との関連で用いられる本発明のポリマー足場材は、血栓症を減らすとともに移植片の開通性を高める。
【0170】
例示的な別の実施形態では、脈管系との関連で用いられるポリマー足場材がさらに、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞を含む。例示的実施形態では、移植の少なくとも24時間前に間葉幹細胞を播種する。例示的な別の実施形態では、移植の2日前に移植片に細胞を播種する。
【0171】
脱細胞−ヒト骨髄由来の間葉幹細胞または任意の細胞タイプを上述したように播種する。移植の数時間前に、細胞構造と細胞表面を無傷のまま残した状態で細胞を殺す。
【0172】
例示的な別の実施形態では、脈管系との関連で用いられるポリマー足場材がさらに、内皮前駆細胞を含む。例示的実施形態では、移植の2日前に移植片に内皮前駆細胞を2日間播種する。これらの内皮細胞は、血小板の付着/活性化、血栓症ならびに、細胞自体が分泌するヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびいくつかの因子を伴う極めて活性化された細胞膜表面によるフィブリン形成を防止することができる。
【0173】
例示的な別の実施形態では、脈管系との関連で用いられるポリマー足場材はさらに、ヒト胚幹細胞由来の血管前駆細胞を含む。これらの胚幹細胞は、IV型コラーゲンインテグリンシグナリングによって、血管前駆細胞(progenitor)系列に分化することができ、成長因子の刺激時に内皮細胞および平滑筋細胞に完全に分化できるものである。
【0174】
III.d)筋肉が関与する用途
急性損傷後の有意な筋肉損失による筋肉再生を亢進させるために、本発明のポリマー足場材を伴う筋肉移植片を筋肉内に治療的に移植することができる。成長因子および他の生体分子を筋肉移植片に取り入れて、筋肉細胞の増殖と分化ならびに血管新生を刺激することが可能であるが、これらはいずれも筋肉の治癒を早めるものである。成長因子には、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、塩基性成長因子(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)および血小板由来成長因子(PDGF)を含み得る。共有結合または生理学的コーティングによって成長因子を移植片に取り込むことが可能である。関連する手法に、細胞を遺伝子組み換えして、そのようなタンパク質の遺伝子を過発現させることがある。
【0175】
この移植片の別の治療用途に、特定遺伝子の遺伝的突然変異を特徴とする筋ジストロフィーなどの筋肉疾患のある動物または人間の遺伝子組み換えがある。このタイプの遺伝子療法用途では、正常な遺伝子を有する筋芽細胞を移植片内で筋肉に送達させることができる。あるいは、遺伝子をプラスミドDNAの形で足場材に直接にコンジュゲーションしてもよい。体内での足場材の移植によって、遺伝子の組み換えが起こり、組織が正常な筋肉機能の様相を発達させる一助となる。遺伝子療法の目的で、ポリマー足場材は、移植された細胞の生存および成長のためのマトリクスを提供および/またはプラスミドDNAの放出とこれに続く取り込みのための送達ベヒクルとして機能する。
【0176】
移植片は、パッチまたは導管の形であってもよい。どちらの場合も、繊維の方向は筋肉の方向に平行である。齧歯類では、足場材の物理的な寸法は0.5〜5.0×0.5〜5.0×0.1〜0.5cmの範囲になる。ヒトの移植片では、足場材のサイズは1.0〜50.0×1.0〜50.0×0.1〜5.0cmの範囲になる。
【0177】
このタイプの治療に最も適した筋肉は、整列された幾何学的形状を持ち、移植片を育てる(nourish)脈管構造に近い筋肉である。このような筋肉には、二頭筋、四頭筋、前脛骨筋および腓腹筋がある。
【0178】
例示的実施形態では、筋芽細胞と一緒に包埋された導管を利用して、骨格筋を増殖させることができる。例示的な別の実施形態では、間葉幹細胞と一緒に包埋された導管を脈管移植片として利用することができる。例示的な別の実施形態では、神経幹細胞と一緒に包埋された導管を神経移植片として利用することができる。例示的な別の実施形態では、本発明は、(i)ポリマーに細胞を播種し、(ii)生成物をマンドレルに巻き付けることで、ポリマーを管状形にし、(iii)マンドレルを取り外すことを含む、組成物の製造方法を提供するものである。例示的な別の実施形態では、本発明は、(iv)ポリマーの第1の部分をポリマーの第2の部分に取り付けることを提供するものである。この取り付けは、アニーリング(熱)、接着(生物学的接着剤など)または縫合糸を用いて実現可能である。
【0179】
III.e)微小パターンが形成されたポリマー足場材を有する筋肉移植片
微小パターンが形成されたポリマー足場材を有する筋肉移植片の用途は、微小パターンが形成されたポリマー足場材をシート状にすること以外は、上述したようなナノ繊維足場材の用途と同様である。
【0180】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。実施例は本発明の範囲を定義または限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0181】
(実施例1)
(筋芽細胞の調製)
マウスC2C12筋芽細胞(ATCC, Manassas, VA)を利用して、細胞の組織化および構築について研究した。ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、10%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンからなる成長培地で筋芽細胞を培養した。筋芽細胞の分化と融合を開始させるために、試料がコンフルエントになった24時間後に、DMEM、5%ウマ血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンからなる分化培地と成長培地とを交換した。いずれの実験でも、それぞれの時点は分化培地でのインキュベーション時で示した。
【0182】
(実施例2)
(PLLAナノ繊維足場材の調製)
生分解性ポリ(L−ラクチド)(PLLA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度1.09dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材を製造した。(Zong, X., Biomacromolecules, 4(2): 416-23 (2003))。簡単に説明すると、プログラム可能なポンプを用いて、PLLA溶液(クロロホルム中10%w/v)を電極の出口穴まで流量25μL/分で供給した。高電圧電源(Glassman High Voltage Inc., High Bridge, NJ)を利用して、20kVの電圧を印加した。接地してステップモーターで制御した回転ドラム上に捕集板を配置した。ナノ繊維を整列させるために、電界紡糸した足場材を60℃で工学ひずみ200%まで一軸延伸した。ナノ繊維足場材は厚さ約150μmであった。細胞の播種前に、ナノ繊維足場材の表面に2%ゼラチンまたはフィブロネクチン(5μg/cm2)をコーティングした。ゼラチンコーティングとフィブロネクチンコーティングとで、細胞の接着および形態に有意な差は検出されなかった。ランダム配向足場材を対照として利用した。
【0183】
走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて、一軸延伸後のナノ繊維のアライメントを可視化した。SEM画像から、一軸延伸によって整列されたナノ繊維が得られたことが分かる(図24A〜図24B)。足場材のナノ繊維の平均直径は約500nm、平均ギャップは約4μmであった。
【0184】
(実施例3)
(分化培地下におけるナノ繊維足場材での筋芽細胞の増殖/キャラクタリゼーション)
コンフルエントな筋芽細胞を分化培地にてナノ繊維足場材で最大7日間増殖させた。ランダム配向ナノ繊維足場材および整列されたナノ繊維足場材での細胞の組織化と細胞骨格構造とを判断するために、F−アクチン、ミオシン重鎖(MHC)および細胞核の蛍光染色を実施した(Supporting Information)。F−アクチンについては、フルオレセイン(FITC)−コンジュゲートファロイジン(Molecular Probes, Eugene, OR)で染色した。MHCについては、マウス抗骨格速MHC抗体(Sigma, St. Louis, MO)で免疫染色した。細胞核については、ToPro染料(Molecular Probes)で染色した。Nikon TE300顕微鏡とLeica TCS SL共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡検査を実施した。
【0185】
(実施例4)
(微小パターンが形成された基板の微細加工)
Thakar, R.G., Biochem Biophys Res Commun, 307(4): 883-90 (2003)から改変したプロセスで、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリ−L−ラクチド−co−グリコリド−co−ε−カプロラクトン(PLGC)ポリマーからなる微小パターンが形成されたフィルムを、シリコンウェハインバース(inverse)テンプレートから製造した。微小パターンが形成されたテンプレートを作製するために、ウェハをアセトン中で清浄した後、硫酸と過酸化水素(ピラニア酸(Piranha acid))の4:1洗浄溶液で清浄した。ウェハを乾燥させ、5分間かけてヘキサメチルジシラザン(HMDS)をコーティングして、基板へのフォトレジスト接着性を改善した。パターン形成されたエマルジョン細縞のあるマスクをまず生成した。平行な細縞は幅10μm、間隔10μm、長さ4cmであった。パターンをシリコンウェハに転写するために、Iライン(OCG OiR 897-10i、Arch Chemicals, Norwalk, CT)フォトレジストをウェハ上に820RPMで1分間スピンし、約2.8μm厚のフォトレジスト層を形成した。続いて、ウェハを90℃で60秒間ベークして、フォトレジストを硬化させた後、KS Aligner (Karl Suss, MJB3, Germany)を用いてUV光でフォトレジストを露光した。120℃で60秒間、露光後ベークを実施し、フォトレジストの硬化を助け、光分解生成物の拡散を促した。フォトレジスト現像溶液OPD 4262を用いて、露光後のフォトレジストを60秒間現像した。未露光のフォトレジストを含むウェハを、120℃で15分間プライマーオーブンに入れ、残りのフォトレジストを硬化させた。この時点で、ウェハはPDMSフィルムの作製に利用できる状態になった。PLCGフィルム製造用のテンプレートには、深さ約2μmのマイクログルーブを形成するためにSTS社のDeep Reactive Ion Etcherで2〜3分間さらにエッチングステップが必要であった。
【0186】
製造業者(Sylgard 184, Dow Corning, MI)の指示に従って、微小パターンが形成されたPDMSフィルムとパターンなしのPDMSフィルムを作製した。真空下で脱気後、PDMSを15gほどウェハ上に注いだ。PDMSのあるウェハをフォトレジストスピナーに載置し、100rpmで30秒間回転した後、200rpmで2分間回転し、厚さが約350μmと均一なPDMSフィルムを形成した。PDMSをスピンコートしたウェハを室温で10分間保持した後、80℃のオーブンに15分間入れ、PDMSを重合させた。ベーク後、PDMSを室温まで冷却した後、ウェハから取り除いた。この製造工程後、PDMS膜を水中での超音波処理によって清浄した。滅菌と細胞接着促進の目的で、細胞播種前に膜を酸素プラズマで処理し、30分間かけて2%ゼラチンをコーティングした。
【0187】
生分解性の微小パターン形成フィルムについては、成分比70:10:20のトリブロックコポリマーPLGC(Aldrich, St. Louis, MO)(Mn約100,000)を利用した。クロロホルム中にて濃度50mg/mLでPLGC溶液を調製し、溶解するまで攪拌プレート(stirplate)で攪拌した。この溶液をケイ素金型に注ぎ、溶媒を蒸発させ、ポリマー薄膜を形成した。製造後、PLGCフィルムを70%エタノール中にて2時間滅菌し、PBS中ですすいだ。細胞播種前に、30分間かけてフィルムに2%ゼラチンをコーティングして、細胞接着性を高めた。
【0188】
(実施例5)
(走査型電子顕微鏡法(SEM)による組成物のキャラクタリゼーション)
細胞を含有する組成物または試料を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝2%グルタルアルデヒド中で固定してSEM用に処理した。エタノール脱水シリーズ後、試料を乾燥させ、イリジウムまたは金:パラジウム(40:60)粒子を厚さ10〜15nmにスパッタコートした。環境走査型電子顕微鏡(Philips XL-30)下で試料を可視化した。
【0189】
(実施例6)
(免疫蛍光染色)
試料を4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定し、0.5%トリトンX−100で10分間透過処理し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)で30分間前処理した。F−アクチンアセンブリをフルオレセイン(FITC)−コンジュゲートファロイジン(5U/mL、Molecular Probes)インキュベーションで1時間かけて染色した。ミオシン重鎖染色では、試料をマウス抗骨格速ミオシン重鎖(87μg/mL、Sigma)で培養した後、FITC−コンジュゲートロバ抗マウス(6.25μg/mL、Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)抗体と一緒にインキュベーションした。細胞核をToPro(1μM、Molecular Probes)で染色した後、Nikon TE300顕微鏡またはLeica TCS SL共焦点顕微鏡で可視化した。共焦点画像は、三次元のスタック画像を二次元で投影したものである。
【0190】
(実施例7)
(BrdU取り込み)
細胞周期の分析のために、成長培地においてブロモデオキシウリジン(BrdU、1:1000、Amersham, Piscataway, NJ)で試料を2時間パルスした後、4%パラホルムアルデヒドに固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄した。試料を50%メタノールで30分間前処理した後、0.5%トリトン−X−100で10分間透過処理し、続いて2N HClで30分間処置した。その後、試料をマウス抗BrdU(2.5μg/mL、BD Biosciences, Bedford, MA)と一緒に培養した後、FITC−コンジュゲートロバ抗マウス(6.25μg/mL)抗体と一緒に培養した。細胞核をヨウ化プロピジウム(1μg/mL、Molecular Probes)で染色した。
【0191】
(実施例8)
(細胞融合および増殖の分析)
少なくとも5つの代表的な高倍率(40×)および低倍率(10×)視野で抗骨格ミオシン染色の免疫蛍光画像を得た。SPOT 4.0.5ソフトウェア(Diagnostic Instruments, Sterling Heights, MI)を使用して、筋管幅、長さ、整列されたナノ繊維またはマイクログルーブの軸に対するアライメントを、高倍率および低倍率でそれぞれ定量化した。最小筋管アライメント値0度がナノ繊維の軸に対して平行なアライメント、最大の90度が直交アライメントを示す。ランダム配向ナノ繊維足場材および非パターン形成PDMS基板のアライメント解析のために、任意のアライメント軸を利用した。加えて、融合した核、BrdU陽性細胞および横紋(striated)筋管の比率を定量化し、高倍率で平均を取った。平均幅を定量化し、平均を取った。低倍率での連続画像を合成して筋管長を定量化した。すべてのデータを平均±標準偏差(n≧3)で表した。2つの群に対するスチューデントのt検定またはホルムの補正による多重比較での分散(ANOVA)解析によって、統計的有意性を求めた。
【0192】
(実施例9)
(導管)
整列されたナノ繊維の矩形のシートで筋芽細胞を7日間分化させた。三次元構造を作製するために、直径1〜2mmの鋼棒にナノ繊維シートを巻いた(図27)。管状構造の両端で管状構造を7-0 Ticron縫合糸によって固定した。次に、試料を組織学的解析用に低温切開した。低温切開試料を常法のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色およびF−アクチンの免疫蛍光染色で解析した。
【0193】
こうして製造した管状構造は直径約2〜3mm、長手方向の長さ10mmであった。これらの構造の断面総(gross)形態をH&E染色することで、構造の管状構造の作製に成功したことが明らかになった(図28)。足場材の層全体に際だった紫色の核が認められたが、各層の表面にはさらに多くの細胞が見られた。免疫蛍光的に染色したF−アクチンを共焦点顕微鏡検査したところ、構造の多層内への細胞透過が示された(図29)。細胞は細長い形態をとり、ナノ繊維の方向に整列されていた。これらの結果から、ナノ繊維ポリマーを用いて整列された三次元骨格筋を設計する実現可能性が分かる。
【0194】
(実施例10)
(ナノ繊維ポリマー製造)
生分解性ポリ(L−ラクチド)(PLLA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度1.09dL/g)を利用して、Rosen et al., Ann Plast Surg., 25:375-87 (1990)によってすでに説明されているような電界紡糸でナノ繊維足場材を作製した。プログラム可能なポンプを用いて、PLLA溶液(クロロホルム中10%w/v)を、高電場で接地した捕集板まで供給し、ランダムナノ繊維を得た。ナノ繊維を整列させるために、電界紡糸した足場材を60℃でひずみ200%まで一軸延伸した。ナノ繊維足場材は厚さ約150μmであった。走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて、一軸延伸後のナノ繊維アライメントを可視化した。SEM画像から、一軸延伸によって高度に整列されたナノ繊維が得られたことが分かる(図12A〜図12B)。ナノ繊維の平均直径は約500nmであった。
【0195】
ナノ繊維を化学的に修飾するために、1種のECMタンパク質(ラミニン)と1種の神経栄養因子(塩基性線維芽細胞因子またはbFGF)とを代表例として選択した。ラミニンおよびbFGFはいずれも、in vitroで神経突起の伸長を促進することが明らかになっている。Manthorpe et al., J Cell Biol., 97:1882-90 (1983); Rydel et al., J Neurosci., 7:3639-53 (1987)。さらに、どちらのタンパク質もそのヘパリン結合ドメインを介してヘパリンと関連している。ヘパリンはまた、bFGFが分解されないよう保護し、bFGF細胞シグナリング経路で重要な役割を果たすことが明らかになっている。Gospodarowicz et al., J Cell Physiol., 128:475-84 (1986); Saksela et al., J Cell Biol., 107:743-51 (1988); Yayon et al., Cell, 64:841-8 (1994)。
【0196】
ジアミノポリ(エチレングリコール)(di−NH2−PEG)をリンカー分子として用いて、ヘパリン官能化ナノ繊維(図12C)を作製した。まず、足場材を0.01N NaOH(Sigma, St. Louis, MO)で処理することで、PLLAナノ繊維での反応性カルボキシル基の密度を増した。次に、ゼロ長架橋剤1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo−NHS)(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を用いて、Di−NH2−PEG(分子量3400、Sigma)分子をPLLAナノ繊維のカルボキシル基と共有結合的に結合した。さらに、ヘパリン(Sigma)分子を、EDCおよびスルホ−NHSを介してdi−NH2−PEG分子の遊離アミンと共有結合的に結合した。ナノ繊維足場材の残りの反応部位については、10%w/vグリシンに入れた試料をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中でインキュベートしてブロックした。続いて、PBS溶液中のbFGF(50ng/cm2、Peprotech, Rocky Hill, NJ))およびラミニン(10μg/cm2、Sigma)をナノ繊維足場材と一緒に連続培養し、ヘパリンに結合してナノ繊維表面に固定化できるようにした。
【0197】
改変ELISA法を用いて、bFGF分子のヘパリン官能化PLLAナノ繊維への結合を確認した。bFGFを固定化する異なる方法の効率を比較するために、同じサイズで、未処理、di−NH2−PEG修飾、ヘパリン官能化ナノ繊維膜の3つのナノ繊維足場材をbFGFと一緒にPBS中で培養した。さらに、すべての膜を1%ウシ血清アルブミン(BSA)と一緒にPBS溶液中で培養し、抗体の受動吸着を最小限にした。続いて、試料をHRP−コンジュゲート抗bFGFマウスモノクローナルIgG抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)と一緒に培養した。膜をしっかりと洗浄し、エッペンドルフチューブに移し、HRP基質溶液(過酸化水素およびクロマゲン、テトラメチルベンジジン)と一緒に培養した。次に、2N硫酸を用いて反応を停止させた。さらに、分光光度計(波長450nm)を用いて溶液の吸光度を読み取った。bFGF抗体の非特異的吸着を陰性対照試料で試験したところ、無視できるものであることが明らかになった(データ図示せず)。結果(図12D)から、bFGFコーティングはヘパリンで官能化したナノ繊維上で有意に一層効率的であることが分かる。PLLAナノ繊維(図12E)で用いたものと同じ要領で、ポリ(アクリル酸)でコーティングし、di−NH2−PEGおよびヘパリンと接合した組織培養ポリスチレン基質で、これらの結果をさらに確認した。
【0198】
P4−P5ラットから採取したDRG組織を利用して、ナノ繊維足場材での神経突起伸長について検討した。以下の整列および未整列のPLLAナノ繊維足場材すなわち未処理、ラミニン(LAM)で官能化したヘパリン、ラミニンおよびbFGF(LAM+bFGF)で官能化したヘパリンにて、B27および0.5mMのL−グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を加えた神経基礎培地で、DRG組織を6日間培養した。ex vivoでの6日間の培養後、免疫蛍光染色を用いて神経突起伸長を解析した。いずれの試料もまず、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、PBS溶液中、0.5%トリトン−X100で細胞膜を透過処理した。試料をヤギポリクローナル抗神経細線維−M(NFM)IgG抗体(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)と一緒に培養した後、FITC−コンジュゲートロバ抗ヤギIgG抗体(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)と一緒に培養した。試料をスライドガラスに載せ、Zeiss社の蛍光顕微鏡およびLeica社の共焦点蛍光顕微鏡を用いて可視化した。
【0199】
未整列の未処理ナノ繊維足場材ではDRG組織からの神経突起伸長は観察されなかった(図13未処理)。未整列のLAMナノ繊維で培養したDRG組織からの神経突起伸長が最小限(図13LAM)であった。未整列のLAM+bFGFナノ繊維で培養したDRG組織からはさまざまな神経突起が伸長しているのが観察された(図13LAM+bFGF)。神経突起はDRG組織から半径方向に外に向かって伸長しアライメントの均一性を欠いていた。DRG組織からの神経突起の成長は約1mmであった。
【0200】
未整列の未処理ナノ繊維とは対照的に、未処理の整列されたナノ繊維では神経突起伸長が観察された。神経突起はDRG組織の2つの異なる領域から伸長し、ナノ繊維の方向に整列された。組織のこれら2つの領域のうちの一方からの神経突起の伸長を図14に示す。未処理のナノ繊維での神経突起の成長は約0.7mmであった。これらの結果から、整列されたナノ繊維が、DRG組織での感覚ニューロンからの神経突起伸長を誘導するガイダンスとなることが分かる。これと同様に整列されているがこれよりも長い神経突起が、整列されたLAMナノ繊維で観察された(図14LAM)ことから、ECMタンパク質は整列されたナノ繊維のガイダンスをさらに亢進できると思われる。LAMナノ繊維での神経突起の成長は約1.3mmであった。最も長く最も密な神経突起伸長が、整列されたLAM+bFGFナノ繊維で観察された(図14LAM+bFGF)。LAM+bFGF成長での神経突起の成長は約4.8mmであった。これらの結果から、ラミニンおよびbFGFからの化学的なきっかけ(cue)ならびに整列されたナノ繊維基質からの物理的なきっかけは個々にまたは組み合わせで、感覚ニューロンからの神経突起伸長を大きく亢進および指令するということが明確に分かる。高倍率共焦点顕微鏡検査を行ったところ、伸長している神経突起が生物活性ナノ繊維のガイダンスに沿っており、ランダムなナノ繊維および整列されたナノ繊維に目立ったパターンを形成する(図15)ことが明らかになった。
【0201】
(実施例11)
(長手方向に整列されたポリマー足場材導管)
生分解性ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度0.82dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材を作製した。プログラム可能なシリンジポンプを用いて、PLGA溶液(HFIP中20%w/v)を電極の出口穴まで流量1mL/時で供給した。高電圧電源を利用して、11kVの電圧を印加した。コレクタ基板は、マンドレルをその長軸を中心として回転(rotated)できるモーターに取り付けられた、接地した鋼製マンドレルとした。マンドレルの一部にテフロン(登録商標)テープを巻いて非電導性領域を作った。PLGA繊維の電界紡糸時には、マンドレルを低速(<15rpm)で回転させた。マンドレルの2つのセクション間で交互に射出される噴流は、マンドレルの長軸に平行に整列されたPLGA繊維の堆積につながる非電導性テフロン(登録商標)テープ領域によって分離した。マンドレルを回転させることで、PLGA繊維をマンドレルの周りに均等に被覆するようにした。電界紡糸終了後、外科用メスで電界紡糸PLGA繊維導管の縁を鈍くした上で、テフロン(登録商標)テープおよびマンドレルから導管を取り外した。
【0202】
繊維のアライメントを確認するために、チューブをその長軸に沿って切断し、繊維形態を光学顕微鏡で可視化した。大多数の繊維が長手方向(すなわち導管の長軸に沿って)整列されていた。
【0203】
(実施例12)
(長手方向に整列されたポリマー足場材の棒)
生分解性ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度0.82dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材を作製することができる。プログラム可能なシリンジポンプを用いて、PLGA溶液(HFIP中20%w/v)を電極の出口穴まで流量1mL/時で供給することができる。高電圧電源を利用して、11kVの電圧を印加することができる。電界紡糸工程で長手方向に整列された繊維を棒状に形成できるようにするために、特別なコレクタ基板を利用することができる。コレクタ基板は、接地された2つの金属マンドレルを、間に空隙(すなわち2cm)をあけて端と端を並べて配置したものからなるものであればよく、電極の出口穴の下(すなわち15cm)に配置できる。各マンドレルは、マンドレルをその長軸を中心として同期的に回転できる電子制御されたモーターに取り付けることが可能なものである。電界紡糸工程では、マンドレルを低速(<10rpm)で回転させ、電界紡糸ポリマー繊維を均等に堆積させることができる。電界紡糸工程では、ポリマー溶液は、捕集基板に向かって移動する噴流を形成することになる。この場合、噴流は、隙間の長さに沿って整列された(マンドレルの長軸と同じ配向を有する)繊維を形成しながら2つのマンドレルの端間の空隙を横切る。電界紡糸の完了時、外科用メスを使ってマンドレルの縁に沿って切り取ることで、電界紡糸ポリマー材料を2つの金属マンドレルの端から分離することができる。結果は、繊維がその長軸に沿って整列された、棒形の電界紡糸繊維ポリマー足場材である。
【0204】
(実施例13)
(長手方向に整列された充填導管繊維ポリマー足場材)
長手方向に整列された繊維からなり、長手方向に整列されたポリマー繊維で充填された導管を形成するには、以下の方法を利用することができる。まず、長手方向に整列された繊維を有する中空の導管を電界紡糸する。長さ2cmの長手方向に整列された充填導管を内径0.5cmで作製するには、以下の条件を利用すればよい。まず、長さ少なくとも2cm、直径0.5cmの非電導性領域を有するマンドレルを利用して、長手方向に整列された中空の導管を本明細書に記載されているように電界紡糸することができる。長手方向に整列された中空の導管をマンドレルから取り外し、適当な大きさに切断する。フィラー材料を、本明細書に記載されているような整列されたポリマー繊維の多孔性の高いシートとして電界紡糸する。整列されたナノ繊維のシートを適切な管腔寸法の中空導管に形成することができる。次に、整列された繊維のシートを導管に挿入し、その長軸に沿って整列されたポリマー繊維が詰まった導管足場材を作製する。
【0205】
フィラー材料を、整列された繊維からなる丸まったシートまたは長手方向に整列された繊維からなる棒のいずれかとして、作製することができる。整列された繊維からなる丸まったシートを用いてフィラー材料を生成するには、本明細書に記載の方法を利用すればよい。厚さ50ミクロンの整列された繊維ポリマー膜を電界紡糸することができ、2cm×2cmの正方形のセクションを切り取ることができる。続いて、整列された繊維が丸まったシートの長さに沿って走るような要領で、シートを丸めることができる。このシートについては、形成される棒の直径が0.5cmになるまで丸めることができる。そして、余分な材料については切り取ることができる。次に、丸められた棒形のフィラー材料を長手方向に整列された中空の導管に鉗子で挿入し、長手方向に整列された充填導管を形成することができる。フィラー材料を生成するには、本明細書に記載の方法で長手方向に整列された繊維からなる棒形の繊維ポリマー足場材を利用すればよい。適切なサイズの棒を作製するために、2つのコレクタマンドレルを直径0.5cmにすることができ、また、間隔少なくとも2cmとして、少なくとも2cmの空隙を得ることができる。実施例12で棒を電界紡糸した後、これを外科用メスで取り外し、マンドレルの縁に沿って切断することができる。次に、棒形の足場材を鉗子で中空の導管内に挿入することができる。
【0206】
(実施例14)
(PLGAナノ繊維足場材の作製)
生分解性ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)(Lactel Absorbable Polymers, Pelham, AL、内部粘度1.09dL/g)を利用して、電界紡糸でナノ繊維足場材膜を作製した。プログラム可能なシリンジポンプを用いて、PLGA溶液(HFIP中20%w/v)を電極の出口穴まで流量1mL/時で供給した。高電圧電源を利用して、11kVの電圧を印加した。接地してステップモーターで制御したアルミニウム箔で覆われた(直径:10cm、長さ:10cm)回転式の鋼ドラムに繊維を堆積させた(図41参照)。整列されたナノ繊維の場合、コレクタドラムを400rpmで回転させた。未整列の繊維の場合、捕集ドラムを<30rpmで回転させた。繊維足場材が、直径500nmの繊維で構成された厚さ約130μmのものになるまで、電界紡糸を実施した。繊維ポリマーシートをドラムから取り外すために、ポリマー層および箔をドラムの長さ方向に沿って切断し、ドラムから引き出した。次に、アルミニウム泊から繊維ポリマー層を剥がし、長さ約30cm、幅10cmの繊維ポリマーシートを作製した。
【0207】
位相差顕微鏡(Carl Zeiss)を用いて繊維のアライメントを調べ、繊維ポリマーシートを特定の用途に合う所望の寸法に切断した。創傷治癒の場合、ナノ繊維足場材片を、創傷の寸法に合うようにまたは創傷の縁を越えるように切断することができる。繊維の配向については、創傷の特定の軸に対して特定の角度で整列されるように選択可能である。
【0208】
(実施例15)
(十字ナノ繊維足場材の作製)
繊維の十字パターンを有する繊維ポリマー足場材を、いくつかの方法で形成することができる。一例では、電界紡糸を利用して、繊維を回転ドラム上に捕集するか未整列の繊維を延伸することで、整列された繊維ポリマーシートを本特許で上述したようにして形成することができる。これらの整列されたポリマーシートをコレクタドラムから取り外し、各シートの繊維が上下のシートの繊維とは直交して整列されるような状態で互いに重ねて層状化することが可能である(図38)。さらに、シートを縫い合わせて機械的強度および安定性を得るようにしてもよい。
【0209】
2つ目の例では、長手方向の繊維をドラムに沿って電界紡糸するために中央に非電導性セクションを有する電導性ドラムを利用して、十字パターンを形成することができる。直径10cm、長さ10cmの鋼ドラムをモーターに固定することができる。テフロン(登録商標)テープをドラムに巻き付け、幅の4cm分を覆うことができる。十字パターンを作製するには、ドラムをまずゆっくりと(<30rpm)回転させて長手方向の軸に沿って非電導性テフロン(登録商標)テープ領域を横切って整列された繊維を作製する。続いて、ドラムを高速(>100rpm)で回転させ、第1の層とは直交方向に整列された繊維を作製する。ドラムの低速回転と高速回転とを切り換えることで、一連の整列された繊維層がテフロン(登録商標)テープ領域に堆積され、十字パターンとなる。あるいは、本発明において上述したマンドレルの設計に近い、2つの電導性金属領域に非電導性領域が挟まる場所にドラムを構成してもよい。
【0210】
3つ目の例では、回転ドラムをコレクタ基板として利用して、十字アライメントの繊維を有する繊維ポリマー足場材シートを電界紡糸することができる。整列された繊維ポリマーシートの電界紡糸用に、電界紡糸のセットアップを本明細書に記載されているようにして組み立てることができる。整列された繊維の層を回転ドラムに堆積させることができる。続いて、繊維の層をドラムから剥がし、90°回転させ、ドラムコレクタに戻すことができる。このドラムを、整列された繊維の堆積が可能なように高速(<100rpm)で回転させることができる。この工程を何度も繰り返すことで、特定の繊維の層がこれと隣接する繊維層に対して直交して整列されている、十字整列された繊維ポリマー足場材シートを作製することができる。
【0211】
(実施例16)
(マイクロ/ナノ繊維創傷治癒)
実施例10で説明したようにして、整列された繊維または未整列の繊維を有するPLLAマイクロ/ナノ繊維シートを作製した。これらの繊維シート上で、以下のようにして正常なヒト真皮の線維芽細胞(NHDF)の単層膜に人工創傷またはギャップ欠陥を作製した。まず、手万力を使って18ゲージのシリンジニードルを平らにした。次に、ナノ繊維PLLAメッシュを1×1cmの寸法に切った。平らにしたニードルとメッシュとを70%イソプロピルアルコールおよびUV光で30分間滅菌し、ニードルを繊維のアライメントに対して所望の配向でナノ繊維にしっかりと固定した−繊維は、創傷軸に対して平行、直交または未整列とした(図35)。細胞密集度を全面としてNHDFを播種したが、ニードルがあるため細胞が下で結合することはなかった(図35)。細胞接着後にニードルを取り除き、「創傷」を適所に残した。加湿したインキュベータ内で、5%CO2で37℃にて、1〜2日間培養物を維持し、細胞移動および創傷被覆のための時間を与えた。播種前に、NHDFをDiI細胞トラッカー(1:2000希釈、10分)で簡単に染色し、最初の創傷サイズを観察するとともに、創傷への細胞浸潤の進行具合を観察した。
【0212】
マイクロ/ナノ繊維上のNHDFを4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%トリトンX−100で透過処理し、1%BSAでブロックした。細胞骨格染色のために、抗全(whole)アクチン一次抗体と一緒に試料を60分間培養した後、FITC−コンジュゲート抗ヤギIgG二次抗体(Jackson ImmunoResearch)と一緒に60分間インキュベーションした。細胞骨格の特徴を利用して、細胞の配向と形態を判定し、NHDF単層膜の全体としての組織化および創傷被覆も判定した。NHDF核をヘキストで5分間染色し、細胞を計数できるようにした。未整列の繊維では、細胞移動および創傷被覆は24時間後もほどほどであったが、繊維を創傷の長い方の縁に直交する向きにしたところ大幅に亢進された(図36)。また、残ったNHDFは未整列の繊維でランダムに配向されたが、整列された繊維では繊維方向に合わせて配向された。
【0213】
(実施例17)
(創傷治癒)
実施例16で説明したようにして、整列された繊維だけを用いて創傷治癒用のPLLA繊維ポリマー足場材シートを作製した。細胞播種の前に、実施例10で説明したようにして繊維ポリマー足場材シートをラミニンおよび/またはbFGFで官能化した。bFGFについては、上述したようにポリマー足場材シートに固定化するか、培地に可溶な形で提供した。繰り返すが、実施例16で説明したようにして、これらの繊維シート上で正常なヒト真皮線維芽細胞(NHDF)の単層膜に人工創傷またはギャップ欠陥を作製した。いずれの試料でも、繊維アライメントを創傷の長軸に対して直交させた。免疫染色および顕微鏡検査を利用して、実施例16で説明したようにして細胞移動および創傷被覆を分析した。未処理繊維上のNHDFは、24時間後に創傷部分を完全に被覆することはなかったが、処理済み繊維(ラミニンまたはbFGF)上のNHDFは未処理の場合よりも短時間で創傷に移動し、創傷被覆の亢進が認められた(図37)。
【0214】
(実施例18)
(動物でのナノ繊維創傷治癒)
回転ドラムコレクタを利用して、実施例14で説明したようにして整列された生分解性ポリマーナノ繊維シートを作製する。これらのシートを創傷被覆材として利用し、動物での皮膚組織の修復を助ける。外科医が、ラットの背中に全厚ギャップ欠陥(full thickness gap defect)を切開する。マイクロ/ナノ繊維シートを創傷の寸法に切り、皮膚層に縫合してギャップへの線維芽細胞の移動を助ける。デジタル写真、組織像および免疫組織化学的検査を利用して、創傷治癒および組織再生をモニタする。
【0215】
本明細書に記載の実施例および実施形態は例示目的のものにすぎず、これらを踏まえたさまざまな改変または変更が当業者らに提案されることになり、いずれも本出願の主旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に包含される旨を理解されたい。本明細書に引用した刊行物、特許および特許出願はいずれも、あらゆる目的で本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】マンドレル56Aを有する電界紡糸装置の概略を示す。
【図2】マンドレル56Aを有する電界紡糸装置の斜視図を示す。
【図2A】ポリマー足場材90を形成しているマンドレル56Aを有する電界紡糸装置の一部を示す。
【図2B】ポリマー足場材90を形成しているマンドレル56Aを有する電界紡糸装置の一部を示す。
【図3】繊維ポリマー足場材の製造に用いられるさまざまなマンドレルのデザインを示す。(A)全面が電導性のマンドレル56;(B)第1の電導性領域57A、第2の電導性領域57B、非電導性領域55、第1のインタフェース55Aおよび第2のインタフェース55Bを有するマンドレル56A;(C)非電導性領域55が2つの電導性マンドレル領域を相互接続するマンドレル56Aの断面;(D)非電導性領域55Aが電導性部分57の表面の一部を覆うスリーブであるマンドレル56Aの断面;(E)第1の電導性領域57A、第2の電導性領域57B、第1の電導性領域面57C、第2の電導性領域面57Dを有するマンドレル56B。電導領域は空隙58によって隔てられている。
【図4A】長手方向に整列されたマイクロ/ナノ繊維で構成される導管ポリマー足場材の図である。注:繊維寸法は一定の縮尺で描かれたものではない。
【図4B】長手方向に整列されたマイクロ/ナノ繊維で構成される棒状ポリマー足場材の図である。注:繊維寸法は一定の縮尺で描かれたものではない。
【図5A】図4Aの導管の断面を示す図である。
【図5B】図4Bの棒の断面を示す図である。
【図6】マンドレル56Bを有する電界紡糸装置の概略を示す。
【図7】マンドレル56Bを有する電界紡糸装置の斜視図を示す。
【図7A】ポリマー足場材92を形成しているマンドレル56Bを有する電界紡糸装置の一部を示す。
【図8】長手方向に整列されたポリマー足場材シート96の図である。
【図9】整列されたポリマー足場材シートから、継ぎ目のある繊維ポリマーの導管状の足場材を作製するための、回転過程を示す概略図である。ここでは、長手方向に整列されたポリマー足場材シート96を棒97に巻いた後、縫合または接着する。
【図10】整列されたシート96および100を含む「十字」シート102の図である。
【図11】マンドレル56Bを有する複数の紡糸口金の電界紡糸装置110の概略を示す。ポリマー溶液38、38Aおよび38Bは、溶媒に溶解されたポリマーを含有し、それぞれシリンジアセンブリ36、36Aおよび36Bに収容されている。シリンジアセンブリは、圧力または流量を制御することで、ポリマー溶液がシリンジを出る速度をコンピュータ34で制御するシリンジポンプアセンブリ32の一部である。任意に、選択した紡糸口金に対して異なる流量を提供し、制御することも可能である。流量は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴、すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。 シリンジポンプアセンブリ32は、プラットフォーム44に載置された紡糸口金42、42Aおよび42Bにポリマー溶液を供給する。紡糸口金は、何ら支障なく噴流形成および輸送を可能にするような先端の幾何学的形状を有する。高電圧電源48によってワイヤ41A経由で約10から約30kVの範囲の電荷を紡糸口金に印加する。 電荷を帯びた紡糸口金とマンドレル56Aとの間に電場が形成されるように、マンドレル56B(図3Bで説明するように、57A、57Bおよび58を含む)を紡糸口金42、42Aおよび42Bの下に配置する。電場によって、ポリマー溶液の噴流が紡糸口金から射出されてマンドレル56Bに向かって噴霧され、ミクロンまたはナノメートル台の直径のフィラメントまたは繊維46、46Aおよび46Bが形成される。アース線41Bおよび41Cを用いてドリルチャックを接地する。 マンドレル56Bは、モーター52に接続された第1のドリルチャック54(非電導性ベアリング60に取り付けられている)および第2のドリルチャック54A(非電導性ベアリング60Aに取り付けられている)に取り付けられる。モーター52は、モーターがマンドレル56Bを回転させる速度を制御する速度制御50Aにリンクしている。任意に、異なる回転速度とすることができる。回転速度は、ポリマー足場材の所望の物理的特徴すなわち、膜厚、繊維径、孔のサイズ、膜密度などに応じて変化することになる。
【図12】未整列(A)および整列された(B)PLLAナノ繊維のSEM画像である。(C)PLLAナノ繊維のヘパリンによる化学的修飾とbFGFおよびラミニンの非共有結合を示す図である。改変ELISA法を利用して、未処理、di−NH2−PEG修飾、ヘパリン官能化PLLAナノ繊維(D)、ポリ(アクリル酸)被覆ポリスチレン表面(E)でのbFGF結合の相対レベルを示した。
【図13】未整列のナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長である。神経細線維の免疫蛍光染色を利用して、ex vivo培養の6日後に、未処理、LAMおよびLAM+bFGF未整列のナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長を可視化した。スケールバー=200μm。
【図14】整列されたナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長である。神経細線維の免疫蛍光染色を利用して、ex vivo培養の6日後に、未処理、LAMおよびLAM+bFGF整列されたナノ繊維上でのDRG組織からの神経突起伸長を可視化した。ナノ繊維は垂直方向に整列されていた。スケールバー=200μm。
【図15】未整列および整列されたLAM+bFGF PLLAナノ繊維上での神経突起形態の高倍率共焦点顕微鏡画像である。整列されたナノ繊維は垂直方向であった。
【図16】PLLAマイクロ/ナノ繊維膜上のペレットとして、1日間、3日間または6日間ヒト間葉幹細胞を培養した。未整列のマイクロ/ナノ繊維上の細胞は、時間の経過に伴ってゆっくりと移動し、ランダムなアライメントを示す。整列されたマイクロ/ナノ繊維上の細胞では、3日目および6日目に繊維の方向に移動が促進され、全体として繊維方向にアライメントしている。スケールバーは200μmである。
【図17】さまざまな細胞タイプを用いた場合のマイクロ/ナノ繊維足場材上での創傷治癒モデルである。MSC:2日後の間葉幹細胞。FF:5日後の包皮線維芽細胞。EC:1日後の内皮細胞。未整列のマイクロ/ナノ繊維足場材上では、創傷被覆は最小限(MSC試料)から中程度(EC試料)の範囲である。マイクロ/ナノ繊維が創傷の長軸に対して平行に整列されると(A-Para)、創傷への細胞移動が大幅に改善される。マイクロ/ナノ繊維が創傷の長軸に直交して整列されると、細胞移動および創傷の被覆が最大になる。
【図18】A)ネイティブなin vivo総頸動脈の平滑筋細胞配向と、B)ヒト平滑筋細胞を播種した整列されたナノ繊維ポリマーシートとの間で、同様の細胞骨格構造を示しているアクチン(ファロイジン)および核(ヨウ化プロピジウム)の蛍光染色画像である。
【図19】ナノ繊維、幹細胞包埋血管移植片の構成。A)生分解性ナノ繊維の整列されたシートに幹細胞を播種。B)シートを棒に巻いて管状構造を作製。C)棒を取り除き、縫合糸を使って移植片の形状を維持。
【図20】血管移植片およびラット動脈断面のVerhoeff染色。コラーゲン(赤)およびエラスチン(黒)繊維生成物が1週間から3週間で有意に改善される。3週間が経過するまでに、再生医療血管移植片はラットの本来の動脈と非常によく似てくる。
【図21】移植3週間後の血管移植片でのCD31(内皮細胞マーカー)の場合の断面免疫組織化学染色(茶色)。A)ラット動脈。B)3週間後の血管移植片。
【図22】移植3週間後の血管移植片でのα−アクチン(平滑筋マーカー)の場合の断面免疫組織化学染色(茶色)。A)ラット動脈。B)3週間後の血管移植片。
【図23】未整列の表面上またはパターンが形成されていない表面上で筋芽細胞を増殖させると、筋管はランダムに形成される。整列されたナノ繊維上または微小パターンが形成された表面上で筋芽細胞を増殖させると、筋管が整列されて形成される。
【図24】整列されたPLLAナノ繊維足場材上での筋芽細胞アライメントおよび筋管構築。SEM画像は、(A)ランダム配向および(B)整列されたナノ繊維足場材の構造、これに続く分化培地での3日後の(C)ランダム配向および(D)整列されたナノ繊維足場材上での筋芽細胞のF−アクチン免疫蛍光染色の構造を示している。骨格MHCの免疫蛍光染色を実施し、3日(E、F)および7日(G、H)目のランダム(E、G)および整列された(F、H)ナノ繊維足場材上での筋管を示した。筋管の長さと全体としてのアライメントを示す7日後の(I)ランダム配向および(J)整列された基板上での骨格MHC染色の低倍率合成画像。矢印はナノ繊維の方向を示す。EおよびFの矢印の頭は核を示す。スケールバーはそれぞれ、50μm(A〜H)および100μm(I、J)である。
【図25】整列されたナノ繊維基板上での筋管組織化および形態の定量化。(A)ナノ繊維の方向に対する筋管アライメントの角度。(B)7日後の筋管の長さ。(C)7日後の筋管の幅。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図26】整列されたナノ繊維足場材上での筋芽細胞増殖および筋管横紋の定量化。(A)細胞増殖のBrdU取り込み(Rはランダム;Aは整列)。(B)整列されたナノ繊維足場材上での横紋筋管を示す抗MHCの免疫蛍光染色(スケールバー:20μm)。(C)7日後の横紋細胞の比率の定量化。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図27】微小パターンが形成されたPDMS基板上での筋芽細胞アライメントおよび筋管組織化。微小パターンが形成されたPDMS基板を、(A)SEM(側面)および(B)位相差顕微鏡画像で示す。分化培地での2日後のF−アクチン分布を(C)パターン形成なしの基板上と(D)微小パターンが形成された基板上で示す。骨格MHCの免疫蛍光染色を実施して、パターン形成なしの膜上(E、G)と微小パターンが形成された(F、H)膜上での2日後(E〜F)および7日後(G〜H)の細胞融合を示した。矢印はマイクログルーブの方向を示す。スケールバーはそれぞれ、5μm(A)、20μm(B)、50μm(C〜H)である。
【図28】微小パターンが形成された膜上での筋管組織化および形態の定量化。(A)パターン形成なし(Con)と微小パターンが形成された(Pat)膜上でのマイクログルーブの方向に対する筋管アライメントの角度。(B)7日後の筋管の長さ。(C)7日後の筋管の幅。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図29】微小パターンが形成されたPDMS膜での筋芽細胞増殖および横紋の定量化。(A)パターン形成なしの膜上(Con)と微小パターンが形成された(Pat)膜上での融合初期における細胞増殖でのBrdU取り込み。(B)7日後の横紋細胞の比率の定量化。*は統計的に有意な差(P<0.05)を示す。
【図30】ナノ繊維足場材上での筋管形成のSEM画像。(A)ランダム配向および(B)整列されたPLLAナノ繊維足場材上での分化培地での7日後の筋管アライメント(スケールバー:50μm)。
【図31】微小パターンが形成された生分解性PLGC基板上での筋芽細胞のアライメント。(A)PLGC基板上での形態的に微小パターンが形成されたグルーブのSEM画像。(B〜C)パターン形成なし(B)と微小パターンが形成された(C)PLGC基板上での分化培地における5日後の筋芽細胞のF−アクチン染色。微小パターンが形成されたPLGC基板上の整列され十分に組織化されたアクチンストレス(stress)繊維に注意されたい。スケールバーはそれぞれ、10μm(A)および50μm(B〜C)である。
【図32】三次元の筋繊維播種管状足場材を作製するための回転工程を示す概略図である。筋芽細胞は、整列されたナノ繊維の膜上で整列された筋管に分化した。分化7日後、棒の柄でシートを巻いて管状の足場材にし、縫合糸で固定した。
【図33】低倍率(左)および高倍率(右)での三次元の管状ナノ繊維足場材の組織化を示すヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色。
【図34】断面(A)および長軸(B)態様での三次元の管状ナノ繊維足場材における筋芽細胞および筋管の細胞形態を示すレーザ共焦点顕微鏡画像。F−アクチン(緑)および核(赤)について試料を免疫蛍光的に染色した。
【図35】整列された繊維上または未整列の繊維上でのin vitro創傷治癒モデルの概略。(A)創傷の長縁に対して平行または直交して配向できる整列された繊維または未整列の繊維を用いて、メッシュとしてマイクロ/ナノ繊維を作製する。(B)平らにした18ゲージのシリンジニードルをナノ繊維メッシュの上に置き、細胞接着をブロックする。(C)ナノ繊維メッシュに細胞を播種する。(D)細胞がナノ繊維に付着した後、ニードルを取り外して創傷への細胞移動ができるようにする。
【図36】整列されたナノ繊維上と、未整列のナノ繊維上でのNHDFを用いたin vitro創傷治癒モデル。48時間後、未整列のマイクロ/ナノ繊維上のNHDF(A)は中程度の移動および創傷被覆を示し、ランダムな細胞アライメントである。繊維を創傷の縁に直交させて整列させると(B)、移動および創傷被覆が大幅に促進され、細胞が繊維と整列される。繊維を創傷の縁と平行に整列させると(C)、創傷被覆は大幅に低下する。染色は、全アクチン(緑)およびヘキスト核染色(青)である。白い点線は0時間の時点での初期創傷縁を示す。スケールバーは300μmである。
【図37】化学修飾を施した場合と施さない場合の整列されたマイクロ/ナノ繊維でのNHDFを用いたin vitro創傷治癒モデル。すべての群で、マイクロ/ナノ繊維が創傷の長縁に直交して配向された。24時間後、NHDFは、化学修飾を加えた繊維上で、移動および創傷被覆が亢進された。未処理の繊維上では、細胞は創傷部分を完全に覆うことがなかった。繊維にラミニンを加えると、細胞が一層短時間で移動した。bFGFを加えると、可溶の形またはマイクロ/ナノ繊維に固定化した状態で移動がさらに促進された。染色は、全アクチン(緑)および核(青)である。白い点線は0時間の時点での初期創傷縁を示す。スケールバーは300μmである。
【図38】多層マイクロ/ナノ繊維組織移植片の構築。個々のマイクロ/ナノ繊維シートを互いに重ねて層状化し、複雑なアーキテクチャの構造物を作製することができる。この図は、十字繊維構造を有する移植片の構築を示す。個々のシート各々の繊維配向に応じて、別のアーキテクチャを作製することが可能である。
【図39】微小パターンが形成されたポリマーフィルムの製造。(A)シリコーンウェハにネガティブフォトレジストをスピンコートし、フォトマスクを介してUV光に露光した。(B)UV重合なしのフォトレジストを現像し、パターン表面を残した。(C) ポリマー溶液をウェハにキャストし、スピンコートし、重合させた。(D)シリコンウェハからフィルムを剥がした。
【図40】多細胞タイプ移植片。A)整列されたまたはランダムに配向されたナノ繊維シート。B)シートの異なる部分に複数の細胞タイプを播種。C)移植片の異なる場所に複数の細胞タイプを含む管状構造物を作製。
【図41】回転ドラムコレクタを有する本発明の電界紡糸装置を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の繊維ポリマー足場材を含む組成物であって、前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維が整列されている、組成物。
【請求項2】
前記第1の繊維ポリマー足場材が、約0.01cmから約20cm、約0.05cmから約5cm、約0.5cmから約5cm、約1cmから約5cm、約2cmから約5cm、約1cmから約3cm、約2cmから約10cmおよび約5cmから約15cmから選択される一つの長さである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、シート、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が棒状である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の繊維ポリマー足場材が、長手方向および円周方向から選択される一つの方向に本質的に整列されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の繊維ポリマー足場材に継ぎ目がある、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の繊維ポリマー足場材がシームレスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の繊維ポリマー足場材がモノリシックに形成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つであるポリマーまたはサブユニットを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記脂肪族ポリエステルが、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリ酸化プロピレンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
細胞をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞が、前記第1の繊維ポリマー足場材の中に包埋されているか、またはその表面にある、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞が、幹細胞および前駆細胞から選択される一つである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、成体血管細胞、血管前駆細胞、血管幹細胞、成体筋肉細胞、筋肉前駆細胞、筋幹細胞、成体神経細胞、神経前駆細胞、神経幹細胞、シュワン細胞、線維芽細胞、成体皮膚細胞、皮膚前駆細胞および皮膚幹細胞から選択される一つである、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
直接にまたはリンカーを介して、前記第1の繊維ポリマー足場材に共有結合的に結合された分子をさらに含み、前記分子が、細胞外マトリクス成分、成長因子、分化因子およびこれらの組み合わせから選択される一つに、共有結合的または非共有結合的に結合できるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記分子がリンカーを介して共有結合的に結合され、前記リンカーが、ジアミノポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)およびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記分子が、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記細胞外マトリクス成分が、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、ポリリシンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記成長因子が、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、血管内皮成長因子、上皮成長因子、ケラチノサイト成長因子およびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
前記分化因子が、ストロマ細胞由来因子、ソニックヘッジホッグ、骨形成タンパク質、ノッチリガンド、Wntおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
前記第1の繊維ポリマー足場材が、導管、充填導管または棒状であり、前記ポリマーがシームレスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
ポリマーを含むポリマー溶液を回転式のマンドレルに塗布することで生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリマー足場材が、シート、導管または充填導管の形状を有し、少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを備える電界紡糸工程で生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリマー足場材が棒状であり、空隙のある回転式のマンドレルを備える電界紡糸工程で生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
(a)請求項1の前記組成物と、
(b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、薬品組成物。
【請求項29】
前記組成物が棒または導管であり、前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本がポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物の長さが約0.5cmから50cmである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1の繊維ポリマー足場材を囲むスリーブをさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記スリーブが第2の繊維ポリマー足場材を含み、前記第2の繊維ポリマー足場材が整列されているかランダム配向を有する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記第1の繊維ポリマー足場材の第1の端を囲む第1のスリーブと、前記第1の繊維ポリマー足場材の第2の端を囲む第2のスリーブとをさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
被検体での損傷を治療する方法であって、
(i)請求項1に記載の組成物を、前記損傷を治療できるだけに十分な量および条件下で前記被検体の該当部位に適用することを含む、方法。
【請求項35】
前記損傷が、切断された神経、損傷を受けた神経、切断された筋肉、損傷を受けた筋肉、切断された血管、損傷を受けた血管、皮膚創傷および傷ついた皮膚から選択される一つである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記損傷が切断された神経を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する、導管、充填導管または棒状であり、前記切断された神経が、第1の神経断端と第2の神経断端とを有し、前記適用することが、
(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の神経断端に取り付け、
(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の神経断端に取り付けることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記損傷が損傷を受けた神経を含み、前記適用することが、
(ii)請求項1に記載の前記組成物を、前記損傷を受けた神経の周りに巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記損傷が損傷を受けた神経を含み、前記適用することが、
(ii)前記組成物を、前記損傷を受けた神経に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
被検体での神経の成長を亢進する方法であって、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、神経の成長を亢進できるだけに十分な量および条件下で、前記被検体の該当する神経部位に適用することを含む、方法。
【請求項40】
前記損傷が切れた皮膚または傷ついた皮膚を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、前記適用することが、
(i)前記組成物を前記切れた皮膚に適用することで、前記損傷を治療することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
被検体での皮膚の成長を亢進する方法であって、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、皮膚の成長を亢進できるだけに十分な量および条件下で、前記被検体の該当する皮膚部位に適用することを含む、方法。
【請求項42】
前記損傷が切断された血管を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する導管または充填導管の形状であり、前記切断された血管が第1の脈管断端および第2の脈管断端を含み、前記適用することが、
(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の脈管断端に取り付け、
(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の脈管断端に取り付けることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
被検体での血管成長を亢進する方法であって、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、血管成長を亢進できるだけに十分な量および条件下で、前記被検体の該当する血管部位に適用することを含む、方法。
【請求項44】
前記損傷が切断された筋肉を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材は、第1の端と第2の端とを有する導管、充填導管または棒状であり、前記切断された筋肉は、第1の筋肉断端および第2の筋肉断端を含み、前記適用することが、
(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の筋肉断端に取り付け、
(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の筋肉断端に取り付けることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記損傷が損傷を受けた筋肉を含み、前記適用することが、
(ii)請求項1に記載の前記組成物を前記損傷を受けた筋肉に巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記損傷が損傷を受けた筋肉を伴い、前記適用することが、
(ii)組成物を前記損傷を受けた筋肉に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
被検体での筋肉の成長を亢進する方法であって、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、筋肉の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する筋肉部位に適用することを含む、方法。
【請求項48】
請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項49】
請求項1に記載の組成物の製造方法であって、
(i)繊維を電界紡糸工程にかけることで、前記組成物を製造することを含む、方法。
【請求項50】
前記電界紡糸工程が空隙または少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを備える、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第1の導電性領域と、
第2の導電性領域と、
前記第1の導電性領域と前記第2の導電性領域との間に延在する非導電性領域と、
を含み、
前記非導電性領域が、第1の繊維ポリマー足場材を形成するための繊維ポリマーを受け入れられる寸法および形状である、電界紡糸装置用マンドレル。
【請求項52】
前記非導電性領域が、前記マンドレルの周囲に配置されたスリーブである、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項53】
前記非導電性領域が、テープ、絶縁用テープ、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである、請求項52に記載のマンドレル。
【請求項54】
前記非導電性領域が、前記2つの電導性マンドレル領域を相互接続する、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項55】
前記非導電性領域が、前記2つの電導性マンドレル領域間に延在する別個の部分である、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項56】
前記非導電性領域が、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである、請求項52に記載のマンドレル。
【請求項57】
前記非導電性領域が、前記導電性領域よりも大きい直径と小さい直径とからから選択される一つである直径を有する、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項58】
第1の導電性領域と第2の導電性領域とを備え、
第1の導電性領域と第2の導電性領域との間に位置する空隙が、前記第1の導電性領域と前記第2の導電性領域との間の非電導性領域を形成する、電界紡糸装置用マンドレル。
【請求項59】
前記第1の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第1の非導電性スリーブと、
前記第2の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第2の非導電性スリーブと、
をさらに備える、請求項58に記載のマンドレル。
【請求項60】
電界紡糸システムとの組み合わせでの請求項51に記載のマンドレル。
【請求項61】
電界紡糸システムとの組み合わせでの請求項58に記載のマンドレル。
【請求項62】
非電導性領域または空隙のある回転式のマンドレルを含む電界紡糸システム。
【請求項63】
ポリマー溶液が紡糸口金を介して供給され、前記マンドレル上に堆積される、請求項62に記載の電界紡糸システム。
【請求項1】
第1の繊維ポリマー足場材を含む組成物であって、前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維が整列されている、組成物。
【請求項2】
前記第1の繊維ポリマー足場材が、約0.01cmから約20cm、約0.05cmから約5cm、約0.5cmから約5cm、約1cmから約5cm、約2cmから約5cm、約1cmから約3cm、約2cmから約10cmおよび約5cmから約15cmから選択される一つの長さである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、シート、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、導管、充填導管および棒から選択される一つの形状を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が棒状である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の繊維ポリマー足場材が、長手方向および円周方向から選択される一つの方向に本質的に整列されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の繊維ポリマー足場材に継ぎ目がある、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の繊維ポリマー足場材がシームレスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の繊維ポリマー足場材がモノリシックに形成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリリシン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ポリペプチドおよびこれらの組み合わせから選択される一つであるポリマーまたはサブユニットを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記脂肪族ポリエステルが、乳酸(D−またはL−)、ラクチド、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド)グリコール酸、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、グリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本が、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリ酸化プロピレンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
細胞をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞が、前記第1の繊維ポリマー足場材の中に包埋されているか、またはその表面にある、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞が、幹細胞および前駆細胞から選択される一つである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、成体血管細胞、血管前駆細胞、血管幹細胞、成体筋肉細胞、筋肉前駆細胞、筋幹細胞、成体神経細胞、神経前駆細胞、神経幹細胞、シュワン細胞、線維芽細胞、成体皮膚細胞、皮膚前駆細胞および皮膚幹細胞から選択される一つである、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
直接にまたはリンカーを介して、前記第1の繊維ポリマー足場材に共有結合的に結合された分子をさらに含み、前記分子が、細胞外マトリクス成分、成長因子、分化因子およびこれらの組み合わせから選択される一つに、共有結合的または非共有結合的に結合できるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記分子がリンカーを介して共有結合的に結合され、前記リンカーが、ジアミノポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)およびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記分子が、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記細胞外マトリクス成分が、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、ポリリシンおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記成長因子が、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、血管内皮成長因子、上皮成長因子、ケラチノサイト成長因子およびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
前記分化因子が、ストロマ細胞由来因子、ソニックヘッジホッグ、骨形成タンパク質、ノッチリガンド、Wntおよびこれらの組み合わせから選択される一つである、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
前記第1の繊維ポリマー足場材が、導管、充填導管または棒状であり、前記ポリマーがシームレスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
ポリマーを含むポリマー溶液を回転式のマンドレルに塗布することで生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリマー足場材が、シート、導管または充填導管の形状を有し、少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを備える電界紡糸工程で生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリマー足場材が棒状であり、空隙のある回転式のマンドレルを備える電界紡糸工程で生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
(a)請求項1の前記組成物と、
(b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、薬品組成物。
【請求項29】
前記組成物が棒または導管であり、前記第1の繊維ポリマー足場材の繊維のうちの少なくとも1本がポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物の長さが約0.5cmから50cmである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1の繊維ポリマー足場材を囲むスリーブをさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記スリーブが第2の繊維ポリマー足場材を含み、前記第2の繊維ポリマー足場材が整列されているかランダム配向を有する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記第1の繊維ポリマー足場材の第1の端を囲む第1のスリーブと、前記第1の繊維ポリマー足場材の第2の端を囲む第2のスリーブとをさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
被検体での損傷を治療する方法であって、
(i)請求項1に記載の組成物を、前記損傷を治療できるだけに十分な量および条件下で前記被検体の該当部位に適用することを含む、方法。
【請求項35】
前記損傷が、切断された神経、損傷を受けた神経、切断された筋肉、損傷を受けた筋肉、切断された血管、損傷を受けた血管、皮膚創傷および傷ついた皮膚から選択される一つである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記損傷が切断された神経を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する、導管、充填導管または棒状であり、前記切断された神経が、第1の神経断端と第2の神経断端とを有し、前記適用することが、
(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の神経断端に取り付け、
(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の神経断端に取り付けることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記損傷が損傷を受けた神経を含み、前記適用することが、
(ii)請求項1に記載の前記組成物を、前記損傷を受けた神経の周りに巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記損傷が損傷を受けた神経を含み、前記適用することが、
(ii)前記組成物を、前記損傷を受けた神経に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
被検体での神経の成長を亢進する方法であって、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、神経の成長を亢進できるだけに十分な量および条件下で、前記被検体の該当する神経部位に適用することを含む、方法。
【請求項40】
前記損傷が切れた皮膚または傷ついた皮膚を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、前記適用することが、
(i)前記組成物を前記切れた皮膚に適用することで、前記損傷を治療することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
被検体での皮膚の成長を亢進する方法であって、前記第1の繊維ポリマー足場材がシート状であり、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、皮膚の成長を亢進できるだけに十分な量および条件下で、前記被検体の該当する皮膚部位に適用することを含む、方法。
【請求項42】
前記損傷が切断された血管を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、第1の端と第2の端とを有する導管または充填導管の形状であり、前記切断された血管が第1の脈管断端および第2の脈管断端を含み、前記適用することが、
(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の脈管断端に取り付け、
(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の脈管断端に取り付けることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
被検体での血管成長を亢進する方法であって、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、血管成長を亢進できるだけに十分な量および条件下で、前記被検体の該当する血管部位に適用することを含む、方法。
【請求項44】
前記損傷が切断された筋肉を含み、前記第1の繊維ポリマー足場材は、第1の端と第2の端とを有する導管、充填導管または棒状であり、前記切断された筋肉は、第1の筋肉断端および第2の筋肉断端を含み、前記適用することが、
(ii)前記組成物の前記第1の端を前記第1の筋肉断端に取り付け、
(iii)前記組成物の前記第2の端を前記第2の筋肉断端に取り付けることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記損傷が損傷を受けた筋肉を含み、前記適用することが、
(ii)請求項1に記載の前記組成物を前記損傷を受けた筋肉に巻くことから選択される一つを含み、前記組成物がシート状である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記損傷が損傷を受けた筋肉を伴い、前記適用することが、
(ii)組成物を前記損傷を受けた筋肉に挿入することから選択される一つを含み、前記第1の繊維ポリマー足場材が、棒、導管または充填導管の形状である、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
被検体での筋肉の成長を亢進する方法であって、
(i)請求項1に記載の前記組成物を、筋肉の成長を亢進できるだけの十分な量および条件下で、前記被検体の該当する筋肉部位に適用することを含む、方法。
【請求項48】
請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項49】
請求項1に記載の組成物の製造方法であって、
(i)繊維を電界紡糸工程にかけることで、前記組成物を製造することを含む、方法。
【請求項50】
前記電界紡糸工程が空隙または少なくとも1つの非電導性領域を有する回転式のマンドレルを備える、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第1の導電性領域と、
第2の導電性領域と、
前記第1の導電性領域と前記第2の導電性領域との間に延在する非導電性領域と、
を含み、
前記非導電性領域が、第1の繊維ポリマー足場材を形成するための繊維ポリマーを受け入れられる寸法および形状である、電界紡糸装置用マンドレル。
【請求項52】
前記非導電性領域が、前記マンドレルの周囲に配置されたスリーブである、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項53】
前記非導電性領域が、テープ、絶縁用テープ、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである、請求項52に記載のマンドレル。
【請求項54】
前記非導電性領域が、前記2つの電導性マンドレル領域を相互接続する、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項55】
前記非導電性領域が、前記2つの電導性マンドレル領域間に延在する別個の部分である、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項56】
前記非導電性領域が、テフロン(登録商標)およびプラスチックから選択される一つである、請求項52に記載のマンドレル。
【請求項57】
前記非導電性領域が、前記導電性領域よりも大きい直径と小さい直径とからから選択される一つである直径を有する、請求項51に記載のマンドレル。
【請求項58】
第1の導電性領域と第2の導電性領域とを備え、
第1の導電性領域と第2の導電性領域との間に位置する空隙が、前記第1の導電性領域と前記第2の導電性領域との間の非電導性領域を形成する、電界紡糸装置用マンドレル。
【請求項59】
前記第1の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第1の非導電性スリーブと、
前記第2の導電性部分の少なくとも一部の上に配置された第2の非導電性スリーブと、
をさらに備える、請求項58に記載のマンドレル。
【請求項60】
電界紡糸システムとの組み合わせでの請求項51に記載のマンドレル。
【請求項61】
電界紡糸システムとの組み合わせでの請求項58に記載のマンドレル。
【請求項62】
非電導性領域または空隙のある回転式のマンドレルを含む電界紡糸システム。
【請求項63】
ポリマー溶液が紡糸口金を介して供給され、前記マンドレル上に堆積される、請求項62に記載の電界紡糸システム。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公表番号】特表2009−524507(P2009−524507A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552619(P2008−552619)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/061253
【国際公開番号】WO2007/090102
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508228061)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/061253
【国際公開番号】WO2007/090102
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508228061)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]