説明

生体注入型組織接着性ヒドロゲル及びその生医学的用途

【課題】生体注入型組織接着性ヒドロゲル及びその生医学的用途を提供する。
【解決手段】本発明は、ドーパまたはその誘導体を含む生体注入型組織接着性ヒドロゲルに関するものであって、生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、従来の組織接着性ヒドロゲルとは異なって、体内で起こる酵素反応によるin situ架橋形成を誘導してヒドロゲルを形成することによって、より生体適合性に優れたin situ形成組織接着性ヒドロゲルを提供し、同時に合成高分子と天然高分子とのハイブリッド化によって生体適合性及び機械的強度に優れ、ドーパ誘導体の結合を通じて優れた組織接着力を有する。このようなヒドロゲルは、組織接着及び止血用素材、組織再生及び充填用インプラント素材、生理活性物質または薬物伝達体用担体などを含んだ多様な生医学的用途として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性及び機械的強度に優れ、ドーパ誘導体の結合を通じて優れた組織接着力を有する生体注入型組織接着性ヒドロゲル及びその生医学的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
封止剤(Sealant)と止血剤(hemostats)とを含む傷の治療分野の研究開発は迅速に成長している。1998年に米FDAでフィブリン封止剤(Fibrin sealant)が許可されながら、毎年新たな組織接着剤が絶え間なく開発されている。このような組織接着剤は、既存に外科的または内科的手術で使われている縫合術、クリップ術、灸術のような技術を代替しうる素材として脚光を浴びている。
【0003】
縫合術のような既存の外科的な技術は、強い伸長力を有するが、患者の苦痛の誘発及び施術後の除去などの問題を有している。一方、組織接着剤は、早い接着時間、簡便な使用、施術後の除去不用などの多様な長所を有しているが、低接着性、悪い生体適合性及び低伸張力と水分存在下で、接着性が著しく落ちる制限点を有している。このような組織接着剤の限界点を克服するための研究が続けられている。
【0004】
組織接着剤は、組織に直接接触するので、生体適合性が要求される。また、医療用接着剤の場合には、通常生体内で用いられるために、接着が本質的に体液と血液内に流れて行くと生体が直接関与するので、より厳格な条件で毒性と危害性とがあってはならず、より厳密な生体適合性と生分解性の素材が要求される。
【0005】
一般的に、組織接着剤は、皮膚、血管、消化器、脳神経、成形外科、整形外科、一般外科などの多様な領域で用いられるために、それぞれ異なる特性が必要であるが、主に次のような特徴が要求される。すなわち、1)水分が存在する場合にも、常温、常圧で迅速に接着しなければならず、2)毒性があってはならず、滅菌が可能でなければならず、3)創傷面に密着して十分な機械的強度を保持しなければならず、4)生分解性であり、止血効果が可能でなければならず、5)生体治癒に効果がなければならない。
【0006】
現在、商品化及び/または実用化されている組織接着剤は、大きくシアノアクリレート系瞬間接着剤、フィブリングルー、ゼラチングルー、及びポリウレタン系などがある。シアノアクリレート系瞬間接着剤は、最近、高接着力及び高性能を有する瞬間接着剤の研究で脚光を浴びている。特に、生体適合性、柔軟性及び低毒性の生体組織縫合用の医療用瞬間接着剤は、止血、抗菌効果だけではなく、縫合糸の代替も可能であるために、先進国を中心に研究が活発に進められている。
【0007】
このようなシアノアクリレート系組織接着剤は、現在ダーマボンド(ジョンソン・アンド・ジョンソン社)とインダーミル(Indermil;US Surgical社)などのブランドで商品化されている。このようなシアノアクリレート系組織接着剤は、単一物質として短時間で室温で開始剤なしに水分によって硬化され、外観が透明であり、かつ接着強度が大きいという長所があるが、衝撃に弱くて耐熱性が落ちるという短所を有している。また、毒性が高いため、現在、ほとんど使われず、アメリカを除いた他の国において、臨床的に部分的に使用されているが、一部の組織毒性と脆弱性とのために、その使用は制限されている。また、フィブリングルー接着剤は、1998年に初めてアメリカFDAによって心臓外科への適用が許可された。次いで、フィブリン組織接着剤についての研究開発が活発になされ、現在、Tisseel VH(R)(バクスター社)とEvicelTM(ジョンソン・アンド・ジョンソン社)のような製品が商品化されている。
【0008】
フィブリン系組織接着剤は、シアノアクリレート系と共に組織接着剤の市場のほとんどを占めている。フィブリン組織接着剤は、フィブリンの架橋反応を用いてフィブリノーゲン、トロンビン、塩化カルシウム及び第XIII因子を組織接着剤として末梢神経の縫合、微小血管の縫合などに適用して、縫合の代用または補強のための臨床応用が実施されている。
【0009】
このようなフィブリングルー接着剤は、接着部位の水分に影響を受けずに迅速に接着し、血小板の凝固障害がなく、生体適合性に優れるという長所を有している。しかし、接着力が弱く、生分解速度が速く、感染の危険がある、という欠点を有している。
【0010】
また、ゼラチングルーとしては、生体来由の組織接着剤としてゼラチン−レゾルシノール−ホルマリン(GRF)で架橋させたものが開発された。それ以外にゼラチン−グルタルアルデヒドのような組織接着剤が開発されたが、組織接着性は高いものの、架橋剤として用いられるホルマリンやグルタルアルデヒドが生体内のタンパク質とも架橋反応を起こして、組織毒性を起こすという短所を有している。
【0011】
また、ポリウレタン系接着剤は、硬化後に接合部の柔軟性が保持される弾性接着剤の形態で開発された。この接着剤は、生体組織表面の水を吸収して組織との密着性を高め、水と反応して数分以内に硬化し、硬化物が柔軟性を有することが特徴であり、硬化された接着剤が適切に生分解される長所を有している。しかし、合成原料である芳香族ジイソシアネートが生体毒性があるという短所を有している。
【0012】
既存に開発された組織接着剤は、高分子または架橋剤の毒性と弱い接着力などの問題点を依然として有している状況である。このような問題を克服するために、最近、イガイ由来タンパク質である3,4−ジヒドロキシフェニル−L−アラニン(ドーパ)を利用した組織接着剤の開発についての研究が進められている。
【0013】
ドーパは、イガイの足糸に存在する足糸タンパク質から来由されたものであって、足糸タンパク質に存在するチロシンがポリフェノールオキシダーゼによって水和されて得られるアミノ酸である。この物質は、親水性表面と非常に強い水素結合を形成し、金属や半金属などとも強い配位結合ができる特徴を有する。また、ドーパ残基は、ドーパ−キノン形態に酸化されながら、タンパク質分子の架橋を図る。
【0014】
ドーパを利用した組織接着剤は、現在Cell−TakTM(BDBioscienceClontech社)とMAPTM(SwedishBioScienceLab.社)製品として商品化されている。しかし、このような製品は、1グラムのイガイの足糸タンパク質を得るために、10,000個のイガイが要求される。このような問題による低い抽出収率と高い生産コストとによって、細胞や組織培養の接着剤としてのみ使われるという欠点を有している。
【0015】
一方、このような問題は、韓国の浦項工科大学のチャ・ヒョンジュン教授研究チームによって解決されている。チャ・ヒョンジュン教授研究チームは、新たなイガイ足糸タンパクの質抽出方法を開発し、それを利用した組織接着剤を開発し、該開発された接着剤は、既存に多く使われるフィブリングルーに比べて、4倍程度の高接着力を有するイガイ来由タンパク質を利用した組織接着剤を開発した(チャ・ヒョンジュンet al.,Journal of Adhesion and Interfaces 2008)。しかし、このような方法も、タンパク質の精製過程で50〜60%内外の収得率を得るなどの制限点を有している。
【0016】
また、他のドーパ誘導体を利用した組織接着剤は、Phillip B.Messersmith教授研究チームによって開発された。Phillip B.Messersmith教授研究チームは、2007年にPEG−ジアミンとグルタミン基質とを利用した酵素反応性注入型/組織接着性ヒドロゲルを開発した(Phillip B.Messersmith et al.,US7208171 B2)。しかし、製造されたヒドロゲルの機械的強度が100Pa程度にしかならない、組織接着力がフィブリングルーと同等であるか、あるいは2倍程度にしかならない、いう欠点を有している。このような問題点を克服するために、Phillip B.Messersmith教授研究チームは、多分枝−PEG末端またはPMMA−PtBMA−PMMAトリブロック末端にドーパ誘導体を結合させて、in situ形成組織接着性ヒドロゲル及び表面コーティング技術を開発するのに至った(Phillip B.Messersmith et al.,US2008/0247984 A1、US2007/0208141 A1、US2008/04149566 A1、US2009/0163661 A1、US2003/0087338 A1、WO2008/049108 A1、WO2008/091386 A2)。
【0017】
このように製造されたドーパ誘導体が結合されたヒドロゲルは、高接着力を示し、既存の問題を解決したが、ゲル化時間が最小30秒以内であり、ヒドロゲル架橋時に使われる酸化剤が、NaIO、FeClなどの毒性がある物質を使って限界点を有している。
【0018】
したがって、このような限界点を克服するために、生体適合性に優れた架橋反応による速いゲル化時間、優れた機械的強度、優れた生体適合性、適切な生分解性、水分存在下での迅速で強い接着力を有するin situ形成組織接着性ヒドロゲルを開発する必要性が大きく注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記従来技術の問題点を解決するために、本発明者は、合成高分子と天然高分子とのハイブリッド化によって生体適合性及び機械的強度に優れ、ドーパ誘導体の結合を通じて優れた組織接着力を有するヒドロゲルを開発することで本発明を完成した。
【0020】
これにより、本発明の目的は、生体安定性、生体適合性及び優れた機械的強度を有し、同時に優れた組織接着力を有するin situ形成組織接着性ヒドロゲルを提供するところにある。
【0021】
また、本発明の他の目的は、生体安定性、生体適合性及び優れた機械的強度を有し、同時に優れた組織接着力を有するin situ形成ヒドロゲルを組織接着及び止血用素材として応用するところにある。
【0022】
また、本発明のまた他の目的は、生体安定性、生体適合性及び優れた機械的強度を有し、同時に優れた組織接着力を有するin situ形成組織接着性ヒドロゲルを組織再生及び充填用組織接着性インプラント素材として応用するところにある。
【0023】
また、本発明のさらに他の目的は、生体安定性、生体適合性及び優れた機械的強度を有し、同時に優れた組織接着力を有するin situ形成組織接着性ヒドロゲルを生理活性物質及び薬物伝達体用担体として応用するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を果たすために、本発明は、i)フェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物とドーパまたはその誘導体から選択された1つ以上の化合物とが結合された、下記化1で表されるスター型高分子、ii)フェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物とドーパまたはその誘導体から選択された1つ以上の化合物とが結合された、化1で表されるスター型高分子、及び高分子主鎖にフェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物が水溶性高分子をリンカーとして用いるか、あるいは用いずに結合された、化2で表される分枝状高分子の異種混合物、及びI I I)高分子主鎖にフェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物とドーパまたはその誘導体から選択された1つ以上の化合物とが水溶性高分子をリンカーとして用いるか、あるいは用いずに結合された、化3で表される分枝状高分子からなる群から同種または異種の高分子の2つ以上を含み、2つ以上の高分子間の隣接されたフェノール、アニリン、ドーパ、またはこれらの誘導体間の脱水素結合によって連結されることを特徴とする化4ないし化7で表される生体注入型組織接着性ヒドロゲルを提供する。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
上記化学式で、Rは、フェノール、アニリン、ドーパ、ドーパキノン、及びこれらの誘導体のうちから選択された何れか1つであり、Xは、ヒドロキシ基またはアミン基であり、Lは、高分子リンカーであり、(L)は、リンカーを含むか、含まない。
【0033】
前記高分子に西洋ワサビペルオキシダーゼ、及び過酸化水素を添加させて高分子が体内または体外で、in situ架橋されうる。
【0034】
前記化1ないし化3で表される高分子は、水溶性高分子をリンカーとして用いるか、用いずにアミノ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシル基を有する高分子主鎖にフェノール、アニリン、ドーパ、ドーパキノン、及びこれらの誘導体のうちから選択された何れか1つの化合物をアミド、ウレタン、ウレア、またはエステル結合させることで製造可能である。
【0035】
例えば、化1ないし化3で表される高分子を下記の反応式1ないし13のように製造することができる。この際、反応式で、EDCは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド、NHSは、N−ヒドロキシスクシンイミド、TEAは、トリエチルアミン、DMAPは、ジメチルアンモ二ウムピリジン、NPCFは、p−ニトロフェニルクロロフォーメイトを意味する。
【0036】
より詳細には、ヒドロキシ基、アミン基またはカルボキシル基を有する天然高分子または合成高分子に水溶性高分子をリンカーとして用いないか、用いてフェノールまたはアニリン誘導体、またはドーパ/ドーパキノン誘導体を結合して化1ないし化3で表される高分子を製造することができる。
【0037】
前記水溶性高分子に無水コハク酸またはNPCFのうち何れか1つの化合物、TEA及びDMAPを添加する段階をさらに含みうる。
【0038】
前記フェノール誘導体またはアニリン誘導体の添加時にEDC及びNHSを共に添加して活性化することができる。また、天然高分子または合成高分子主鎖の添加時にも、EDC及びNHSを共に添加して活性化することができる。
【0039】
また、水溶性高分子にフェノール誘導体またはアニリン誘導体またはドーパ/ドーパキノン誘導体の結合時に、ジアミン化合物を添加する段階を追加することもできる。
【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
本発明で用いられた高分子としては、ゼラチン、キトサン、ヘパリン、セルロース、デキストラン、デキストランサルフェート、コンドロイチンサルフェート、ケラタンサルフェート、デルマタンサルフェート、アルギン酸、コラーゲン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミリン、エラスチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリノーゲン、及び多分枝−高分子からなる群から選択された1つまたは2つ以上の高分子を用いることができる。
【0054】
前記多分枝−高分子としては、3分枝(3−arm)−ポリエチレングリコール(3armPEG)、4分枝(4−arm)−ポリエチレングリコール(4armPEG)、6分枝(6−arm)−ポリエチレングリコール(6armPEG)、または8分枝(8−arm)−ポリエチレングリコール(8armPEG)から選択された何れか1つまたは2つ以上の多分枝ポリエチレングリコールと、及びテトロン酸シリーズ(4arm−PPO−PEO)からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上の高分子を用いることができる。
【0055】
本発明で用いられたフェノール誘導体としては、チラミン、ヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、及びこれらの誘導体からなる群から選択された1つまたは2つ以上の誘導体を用い、前記アニリン誘導体としては、ヒドロキシエチルアニリン、アミノエチルアニリン、アミノベンジルアルコール、及びこれらの誘導体からなる群から選択された1つまたは2つ以上の誘導体を用い、前記ドーパ誘導体としては、L−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、及びこれらの誘導体からなる群から選択された、1つまたは2つ以上の誘導体を用いることができる。
【0056】
本発明でリンカーとして用いられる水溶性高分子としては、陽イオン高分子、陰イオン高分子、両性高分子、非イオン性高分子、ポリペプチド、多価脂肪族、多環芳香族、ポリエステル、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリウレタン、及びポリアミド鎖からなる群から選択された何れか1つであり得る。前記共重合体としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(polyNIPAAM)、ポリフマレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリアクリル酸(polyAAc)、ポリアクリルスルホン酸、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(polyHEMA)、及びこれらの共重合体を含みうるが、これらに限定されるものではない。また、前記共重合体として、PEO−PPO−PEO(Pluronic(R)series)、4−分枝(arm)PEO−PPO−PEO(Tetronic(R)series)、PEG−PEI、PEG−PVA、PEG−PEI−PVA、PEI−PVA、ポリ(NIPAAM−co−AAc)、ポリ(NIPAAM−co−HEMA)、及びこれらの組み合わせを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
また、本発明で用いられたリンカーであって、水溶性高分子としては、親水性線形または多分枝(multi−arm)ブロック共重合体から選択されたものを使い、前記多分枝ブロック共重合体としては、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリ(DL−乳酸−CO−グリコール酸)(PLGA)、ポリ((プロピレン)フマレート)、ポリ((エチレン)フマレート)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
また、本発明におけるヒドロゲルは、西洋ワサビペルオキシダーゼ及び過酸化水素の濃度を調節してゲル化時間、ヒドロゲル安定性(分解時間)、機械的強度、または含水率から選択された物理化学的性質を調節することができる。また、本発明におけるヒドロゲルは、水溶性高分子の分子量を調節してゲル化時間、分解時間、機械的強度、または含水率から選択された物理化学的性質を調節することができる。
【0059】
また、本発明におけるヒドロゲルは、ドーパまたはその誘導体の含有量と、または前記異種混合物でドーパまたはその誘導体を含む高分子とフェノール、アニリン、またはこれらの誘導体を含む高分子間の混合比率によって組織接着強度を調節することができる。
【0060】
本発明におけるヒドロゲルは、二重注入式注射器キットを構成してin situ架橋形成し、前記二重注入式注射器キットに噴射ノズルを結合して噴射可能にする。また、前記二重注入式注射器キットとテフロン成形とを用いてヒドロゲルシートまたはディスクを製造することができる。
【0061】
また、本発明におけるヒドロゲルは、さらにフェノール、アニリン、アミンまたはチオールグループを有する生理活性物質を含んでin situ架橋形成され、前記生理活性物質としては、チロシンを含むペプチドが挙げられる。
【0062】
また、本発明は、前記生体注入型組織接着性ヒドロゲルを含む組織接着及び止血用素材を提供する。前記素材は、血管外科領域を含んだ脳神経外科手術と、骨の接着を含んだ整形外科手術と、裂傷患者の止血と、大腿動脈の縫合と、白内障切開縫合、軟骨及び関節軟骨治癒と、皮膚接合と、臓器/分泌腺切開面止血と、胃腸管分合と、及び筋及び靭帯治癒からなる群から選択された何れか1つに適用可能である。
【0063】
また、本発明は、前記生体注入型組織接着性ヒドロゲルを含む組織再生及び充填用インプラント素材を提供する。
【0064】
前記インプラント素材は、軟骨再生、骨再生、歯槽骨再生、皮膚再生、心筋再生、人工水晶体、脊髓神経再生、脳神経再生、声帯再生及び充填剤、癒着防止膜、尿失禁治療剤、シワ除去用充填剤、火傷治療剤、組織充填剤、及び脊椎椎間板治療剤からなる群から選択された何れか1つに適用可能である。
【0065】
また、本発明は、前記生体注入型組織接着性ヒドロゲルを含む生理活性物質または薬物伝達体用担体を提供する。前記生理活性物質または薬物は、ペプチドまたはタンパク質医薬品、抗菌剤、抗癌剤、及び抗炎症剤からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上とすることができる。
【0066】
前記ペプチドまたはタンパク質医薬品は、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、形質転換成長因子(TGF)、骨形成因子(BMP)、ヒト成長ホルモン(hGH)、ブタ成長ホルモン(pGH)、白血球成長因子(G−CSF)、赤血球成長因子(EPO)、大食細胞成長因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮細胞成長因子(EGF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、インターフェロン−α,β,γ、インターロイキン−2(IL−2)、カルシトニン、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子、アンジオテンシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬(LHRHアゴニスト)、インシュリン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、アンジオスタチン、エンドスタチン、ソマトスタチン、グルカゴン、エンドルフィン、バシトラシン、マゲイン、コリスチン、単一抗体、ワクチン類、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0067】
前記抗菌剤は、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オフロキサシン、ホスホマイシン、マゲイン、プロフロキサシン、アンピシリン、ペニシリン、ドキシサイクリン、チエナマイシン、セファロスポリン、ノルキサシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、パロモマイシン、ミクロノマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、セフォタキシン、セファクロル、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、エノキサシン、バンコマイシン、イミペネム、フシジン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0068】
前記抗癌剤は、パクリタキセル、タキソテール、アドリアマイシン、エンドスタチン、アンギオスタチン、マイトマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カボプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、アクチノマイシン−D、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0069】
前記抗炎症剤は、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、ピロキシカム、フェノプロフェン、フルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、スプロフェン、ロキソプロフェン、シノキシカム、テノキシカム、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0070】
本発明の一実施例として、4分枝−PPO−PEO(テトロン酸)を用いてフェノール誘導体とドーパ/ドーパキノン誘導体とを結合させてテトロン酸−チラミン/ドーパミン(Tet−TA/DA)を合成し、HRP及びH存在下で前記高分子から単一生体注入型組織接着性ヒドロゲルを製造することができる。
【0071】
また、高分子主鎖としてタンパク質及び酵素分解性天然高分子であるゼラチンとキトサンとを用いて、中間にリンカーとしてPEGのような水溶性高分子を用いて、フェノール誘導体を結合させたゼラチン−PEG−チラミン(GPEG−TA)とキトサン−PEG−チラミン(CPEG−TA)とを合成し、高分子主鎖としてタンパク質及び酵素分解性天然高分子であるゼラチンとキトサンとを用いて、中間にリンカーを用いずにフェノール誘導体を結合させたゼラチン−ヒドロキシフェニル酢酸(GHPA)とキトサン−ヒドロキシフェニル酢酸(CHPA)とを合成し、前記高分子は、予め用意したTet−TA/DA高分子と混合してHRP及びH存在下で生体注入型組織接着性ヒドロゲルを製造することができる。
【0072】
このように製造された組織接着性ヒドロゲルは、天然/合成高分子のハイブリッド化とドーパ/ドーパキノン誘導体の導入によって向上した機械的強度、生体適合性及び優れた組織接着力を図り、PEGリンカーを用いた場合、高分子溶液の溶解度、ゲル化時間短縮、機械的強度向上、及び体内安定性を図ることができる。
【0073】
また、高分子主鎖として生体適合性天然高分子であるヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸を用いて、中間にリンカーとしてPEGのような水溶性高分子を用いて、フェノール誘導体とドーパ/ドーパキノン誘導体とを結合させてヒアルロン酸−PEG−チラミン/ドーパミン(HA−PEG−TA/DA)、カルボキシメチルセルロース−PEG−チラミン/ドーパミン(CMC−PEG−TA/DA)、アルギン酸−PEG−チラミン/ドーパミン(ALG−PEG−TA/DA)を合成し、HRP及びH存在下で前記高分子から組織接着力に優れた生体注入型組織接着性ヒドロゲルを製造することができる。
【0074】
このように製造された生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、PEGリンカーを用いて高分子溶液の溶解度向上、ゲル化時間短縮、機械的強度向上、及び体内安定性向上を図り、ドーパ/ドーパキノン誘導体の導入で優れた組織接着力を図ることができる。
【0075】
本発明における優れた組織接着性を有するヒドロゲルは、組織接着剤または止血剤と、組織工学用注入型骨格と、タンパク質、DNA、成長因子、細胞のような薬物の徐放型薬物伝達体と、組織充填剤と、傷治療と、または腸癒着防止などの多様な生医学的応用が可能である。
【0076】
より詳細には、本発明における生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、組織封止剤、止血剤を含む組織接着剤用素材として用いられる。組織接着剤として用いるために、i)使用の簡便さ、ii)滅菌可能であること、iiiI)適当な粘度、iv)低い発熱特性、v)短いセッティング時間、vi)強い接着力、vii)低い毒性、viii)システムの無毒性、ix)適当な分解時間が要求され、本発明における生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、このような組織接着剤としての要求条件を満足させることができる。
【0077】
すなわち、本発明における生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、西洋ワサビペルオキシダーゼと過酸化水素とによってフェノールまたはアニリン誘導体のin situ架橋を可能にし、この反応は、体内で起こる反応であって、発熱反応や毒性のない生体適合性に優れた反応であり、その反応速度は、数秒から数分と速い。また、西洋ワサビペルオキシダーゼの濃度を調節して架橋時間を数秒から数分の間に調節することができる。
【0078】
また、本発明における生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、物理的架橋ではない化学的架橋によってヒドロゲルが形成されるので、機械的強度に優れ、生体安定性に優れることを特徴とする。また、酵素またはタンパク質によって分解される高分子を高分子主鎖として用いるので、生分解性を有し、Hの濃度、すなわち、架橋濃度及び異種高分子の混合比率を調節して分解速度の調節が可能である。
【0079】
また、本発明における生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、合成された高分子溶液の粘度が低いために、既存に多く用いられる方法である200nmフィルターを通じて容易に滅菌が可能な特徴を有する。また、高分子にドーパ/ドーパキノン誘導体が導入されて、優れた組織接着力を有する。
【0080】
また、本発明における生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、組織工学用有効骨格としての人工細胞外マトリックスとして用いられる。この際、ヒドロゲルの分解速度は、ゲル内部にある細胞の分化及び成長に非常に重要な役割を行うので、適切な分解速度の調節が必須的である。
【0081】
例えば、ゼラチンは、細胞が分泌するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、特に、MMP−2、MMP−9によって特異的に分解される。ゼラチンを含有するヒドロゲルマトリックスは、このような酵素によって分解になり、再び細胞が分泌する細胞外マトリックス(ECM)に再形成されながら、ヒドロゲル内部の細胞が効果的に成長し、分化するのに効果的である。
【0082】
また、組織工学用有効骨格として用いられるヒドロゲルのマトリックス剛度も、ゲル内部にある細胞の成長と分化とに多くの影響を及ぼす。また、各細胞ごとに適切なマトリックス剛度が要求される。例えば、骨細胞は、剛度の高いマトリックスでよく成長することが示されており、軟組織細胞、例えば、繊維芽細胞、筋肉母細胞などは、柔らかいマトリックスでよく成長すると知られている。酵素反応を利用したシステムでは、過酸化水素の量を調節することで容易にヒドロゲルの架橋を調節し、したがって、ヒドロゲルの剛度を容易に調節することができる。
【0083】
また、本発明における生体注入型組織接着性ヒドロゲルは、薬物伝達用有効骨格としての人工細胞外マトリックスとして用いられる。例えば、多様な成長因子との物理的結合を向上させるヘパリンにチラミンを導入して、成長因子を効果的に担持し、徐放型放出挙動を可能にする(成長因子結合サイト)。
【0084】
フェノールが結合されている細胞接着ペプチドまたはタンパク質、例えば、RGDYまたはYIGSRを用いて、ヒドロゲルマトリックス内部の細胞接着力を向上させることができる。
【0085】
ーパキノン形態とアミン基またはチオール基の化学的結合が可能であるので、タンパク質及びペプチドを含む生理活性物質を容易にヒドロゲルマトリックス内部に固定化して、細胞接着力及び活性を向上させることができる。効果的な細胞の成長と分化とに必要なこのような成分を、酵素機序を用いて導入し、in situ形態で組織接着性人工ECMを作ることができる。
【発明の効果】
【0086】
本発明によれば、合成高分子と天然高分子とのハイブリッド化によって生体適合性及び機械的強度に優れ、ドーパ誘導体の結合を通じて優れた組織接着力を有するin situ形成組織接着性ヒドロゲルを提供することができる。特に、このようなin situ形成組織接着性ヒドロゲルを用いて組織接着または止血用素材と、組織工学用注入型骨格と、タンパク質、DNA、成長因子、細胞のような薬物の徐放型薬物伝達体と、組織充填剤と、傷治療と、または腸癒着防止などのように多様な生医学的用途として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】Tet−TA/DAの合成模式図を示す。
【図2】GHPAの合成模式図を示す。
【図3】CHPAの合成模式図を示す。
【図4】GPEG−TA共重合体の合成模式図を示す。
【図5】CPEG−TA共重合体の合成模式図を示す。
【図6】HA−PEG−TA/DA共重合体の合成模式図を示す。
【図7】CMC−PEG−TA/DA共重合体の合成模式図を示す。
【図8】ALG−PEG−TA/DA共重合体の合成模式図を示す。
【図9】酵素反応を利用した生体注入型組織接着性ヒドロゲルの製造の模式図を示す。
【図10】酵素反応を利用した生体注入型組織接着性ヒドロゲルの製造の模式図を示す。
【図11】酵素反応を利用した生体注入型組織接着性ヒドロゲルの製造の模式図を示す。
【図12】酵素反応を利用した生体注入型組織接着性ヒドロゲルの製造の模式図を示す。
【図13】二重注入式注射器キットまたはノズル搭載二重注入式注射器キットを利用したin situ形成組織接着性ヒドロゲルの製造方法を示す図である。
【図14】HRPの濃度に生体注入型組織接着性ヒドロゲルのゲル化時間の比較評価を示す図である。
【図15】Tet−TA/DA IとTet−TA/DA IIヒドロゲルの機械的強度の比較及びTet−TA/DA II高分子濃度によるTet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルの機械的強度の変化を示す図である。
【図16】製造された生体組織接着性ヒドロゲルのin vitro安全性を示す図である。
【図17】Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+GPEG−TA、Tet−TA/DA II+CPEG−TA、HA−PEG−TA/TA、CMC−PEG−TA/DA、AGL−PEG−TA/DAヒドロゲルの2D細胞適合性の評価を示す図である。
【図18】フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す図である。
【図19】フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す図である。
【図20】フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す図である。
【図21】フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す図である。
【図22】フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す図である。
【図23】フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す図である。
【図24】フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す図である。
【図25】Tet−TA、Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルのin vivo接着力の評価結果を示す図である。
【図26】Tet−TA、Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルのin vivo止血作用の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明の一実施例として製造されたin situ形成組織接着性ヒドロゲルの組織接着性及び止血作用をin vitro/in vivo試験を通じて評価し、組織接着性及び止血作用の評価は、単一または異種混合高分子によって差異を設けて比較評価し、物理化学的特性、例えば、ゲル化時間、ゲル安定性、分解時間、膨潤程度、及び機械的強度は、異種高分子の混合比率及び過酸化水素の濃度に応じて変化させることにより評価した。
【0089】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、このような実施例によって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0090】
<製造例1>テトロン酸−チラミン/ドーパミン(Tet−TA/DA)の合成
図1は、Tet−TA/DAの合成模式図を示す。
【0091】
1.テトロン酸−(p−ニトロフェニルクロロフォーメイト)[Tetronic−(p−nitrophenyl chloroformate;Tet−PNC]の合成
テトロン酸30g(1.67mmol)をジオキサン300mlに溶解させた後、この溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)1.018g(8.33mmol)とトリエチルアミン(TEA)0.843g(8.33mmol)とをジオキサン40mlに溶解させた溶液と、p−ニトロフェニルクロロフォーメイト(PNC)1.679g(8.33mmol)をジオキサン50mlに溶解させた溶液とを順次混合した。この際、テトロン酸:PNC:DMAP:TEAのmol比率は1:5:5:5とし、反応温度は30℃とし、窒素雰囲気下で24時間反応を進行させた。
【0092】
反応終了後、濾過器を用いて残存する試薬を除去した後、回転式蒸発濃縮器を用いて反応溶液を濃縮させた。濃縮溶液を冷たいエーテル1600mlに一滴ずつ落として沈殿物を生成させ、この沈殿物を濾過器を用いて回収して生成物を得た。
【0093】
該得られた生成物を、残余有機溶媒を除去するために、真空オーブンに24時間放置し、白色の粉末形態の生産物(Tet−PNC)を得た。
【0094】
2.テトロン酸−チラミン/ドーパミン(Tet−TA/DA)の合成
予め用意したTet−PNCをジメチルスルホキシド(DMSO)100mlに溶解させた溶液にチラミン(TA)とドーパミン(DA)とをDMSO 50mlにそれぞれ溶解させた溶液を添加して反応を進行させた。Tet−PNC:TA:DAのmol比率は、次の表1の通りである。この際、反応温度は30℃とし、窒素雰囲気下で24時間反応を進行させた。
【0095】
反応終了後、反応溶液を、メタノールで、1次メンブレン透析(3500Da分子量遮断)を通じて、反応していないTAとDAとを除去し、アセトンで、二次メンブレン透析(3500da分子量遮断)を通じて、反応していないTAとDAとを完全に除去した。
【0096】
透析が完了した後の溶液を、濾過器を通じて濾過し、回転蒸発濃縮器を用いて濃縮させた後、冷たいエーテル1600mlに滴下して沈殿物を生成させた。該生成された沈殿物を、濾過器を通じて濾過し、該濾過された沈殿物を真空オーブンに24時間放置し、白色の粉末生成物(Tet−TA/DA)を得た。
【0097】
一方、下記の表1のように、テトロン酸高分子4個の分枝(arm)にTAグループがいずれも導入された高分子は、Tet−TAと、DAグループがいずれも導入された高分子は、Tet−DAと名付け、テトロン酸高分子4個の分枝にTAグループ3個とDAグループ1個とが導入された高分子は、Tet−TA/DA I、TAグループ2個とDAグループ2個とが導入された高分子は、Tet−TA/DA II、TAグループ1個とDAグループ3個とが導入された高分子は、Tet−TA/DA IIIと名付けた。テトロン酸高分子末端に、TAグループまたはDAグループが単一/混合導入された高分子を通称する場合、Tet−TA/DAと名付けた。
【0098】
【表1】

【0099】
<製造例2>ゼラチン−ヒドロキシフェニル酢酸(GHPA)の合成
図2は、GHPAの合成模式図を示す。
すなわち、10gのゼラチンを0.1M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)200mlに溶解させて溶液Aを製造した。4−ヒドロキシフェニル酢酸(HPA)0.609g(4mmol)を0.1M MES 50mlに溶解させて溶液Bを製造した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)0.92g(4.8mmol)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)0.276g(2.4mmol)とをそれぞれ5mlの0.1M MESに溶解させた。次いで、EDC溶液とNHS溶液とを溶液Bに15分間隔で順次加えた。15分後、EDC/NHSが含まれた溶液Bを溶液Aに混合して反応を始めた。
【0100】
この際、反応温度は40℃とし、反応時間は24時間とし、反応終了後、反応溶液を注射器フィルター(450nm)を用いて濾過した。次いで、蒸留水で3〜4日間メンブレン透析(3500Da分子量遮断)を施行した。透析が完了した溶液を凍結乾燥することにより、白色粉末形態のGHPAを得た。
【0101】
<製造例3>キトサン−ヒドロキシフェニル酢酸(CHPA)の合成
図3は、CHPAの合成模式図を示す。
すなわち、ジアセチル化75〜85%の低分子量キトサン0.644gに蒸留水80mlを添加し、1N HClを用いて溶液をpH3まで低下させ、溶解させた。HPA 0.404g(2.6mmol)を添加した後、0.1M NaOHを用いて溶液をpH5とした。EDC 0.768g(4mmol)を添加し、反応温度30℃で24時間反応させた。
【0102】
反応終了後、蒸留水によるメンブレン透析(3500Da分子量遮断)を行うことで、反応溶液から反応していないHPAを除去した。透析後の溶液を凍結乾燥することにより、半透明の不織布形態のCHPAを収得した。
【0103】
<製造例4>ゼラチン−ポリ(エチレングリコール)−チラミン(GPEG−TA)の合成
図4は、GPEG−TA共重合体の合成模式図を示す。
【0104】
1.ポリ(エチレングリコール)−(p−ニトロフェニルクロロフォーメイト)(PEG−PNC)の合成
PEG 10g(2.9mmol)をメチレンクロライド(MC)100mlに溶解させた後、この溶液に、DMAP 0.779g(6.38mmol)とTEA 0.645g(6.38mmol)とをMC 10mlに溶解させた溶液とPNC 1.286g(6.38mmol)をMC 50mlに溶解させた溶液とを順次混合した。この際、PEG:DMAP:TEA:PNCのmol比率は1:2.2:2.2:2.2とし、反応温度は30℃とし、窒素雰囲気下で24時間反応を進行させた。
【0105】
反応終了後、濾過器を用いて残存する試薬を除去した後、回転式蒸発濃縮器を用いて溶液を濃縮させた。濃縮した溶液を冷たいエーテル1600mlに滴下して沈澱を生成させ、この沈殿物を濾過器を用いて回収して生成物を得た。該収得された生成物を、残余有機溶媒を除去するために、真空オーブンに24時間放置し、白色の粉末形態の生産物(PEG−PNC)を得た。
【0106】
2.GPEG−TAの合成
PEG−PNC 5g(1.471mmol)をDMSO 100mlに溶解させた溶液にTA 0.202g(1.471mmol)をDMSO 50mlに溶解させた溶液を添加して反応を進行させた。PEG−PNC:TAのmol比率は1:1とし、反応温度は30℃とし、窒素雰囲気下で6時間反応を進行させた。6時間後、ゼラチン溶液(1g/200ml in DMSO)を混合して、30℃窒素雰囲気下で24時間反応を進行させた。
【0107】
反応終了後、反応溶液を水でメンブレン透析(6000〜8000Da分子量遮断)して反応していないPEG−TAを除去した。透析が完了した後、溶液を凍結乾燥して白色の粉末生成物(GPEG−TA)を得た。合成されたGPEG−TAの化学構造は、H NMRを通じてTA置換物の特性ピーク(6.91〜7.23ppm)であることを確認し、合成がよく行われたということを確認した。
【0108】
<製造例5>キトサン−ポリ(エチレングリコール)−チラミン(CPEG−TA)の合成
図5は、CPEG−TA共重合体の合成模式図を示す。
PEG−PNC 5g(1.25mmol)をDMSO 100mlに溶解させた溶液にTA 0.174g(1.25mmol)をDMSO 50mlに溶解させた溶液を添加して反応を進行させた。PEG−PNC:TAのmol比率は1:1とし、反応温度は30℃とし、窒素雰囲気下で6時間反応を進行させた。6時間後、酢酸(70重量%)を含むDMSO 50mlにキトサン0.5gが溶解された溶液を反応フラスコに混合して反応温度30℃の窒素雰囲気下で24時間反応を進行させた。
【0109】
反応が終了した溶液を水でメンブレン透析(6000〜8000Da分子量遮断)して反応していないPEG−TAを除去した。透析が完了した溶液を凍結乾燥して白色粉末形態の生成物(CPEG−TA)を得た。
【0110】
<製造例6>ヒアルロン酸−ポリ(エチレングリコール)−チラミン/ドーパミン(HA−PEG−TA/DA)の合成
図6は、HA−PEG−TA/DA共重合体の合成模式図を示す。
1.アミノ化ポリ(エチレングリコール)−チラミン/ドーパミン(PTA/DA)の合成
PEG−PNC 5g(1.25mmol)をMC 100mlに溶解させた溶液に、TA 0.174g(1.25mmol)またはDA 0.237gをMC 50mlに溶解させた溶液を添加して反応を進行させた。PEG−PNC:TA(または、DA)のmol比率は1:1とし、反応温度は30℃とし、窒素雰囲気下で6時間反応を進行させた。6時間後、エチレンジアミン2.254g(37.5mmol)をMC 50mlに溶解させた溶液を混合して、30℃窒素雰囲気下で24時間反応を進行させた。この際、PEG−PNC:エチレンジアミンのmol比率は、1:30とした。
【0111】
反応が終了した溶液は、濾過器を用いて残存する試薬を除去した後、回転式蒸発濃縮器を用いて濃縮させた。濃縮溶液を冷たいエーテル1600mlに滴下して沈澱を生成させ、この沈殿物を濾過器を用いて回収して生成物を得た。該収得された生成物を、残余有機溶媒を除去するために、真空オーブンに24時間放置し、白色の粉末形態の生産物(PTA/DA)を得た。
【0112】
2.HA−PEG−TA/DAの合成
ヒアルロン酸1gを蒸留水300mlに溶解させた溶液にEDC 1.307g(6.82mmol)とNHS 0.392g(3.41mmol)とをそれぞれ15分間隔で順次に加えた。引き続き反応フラスコにPTA 2.5g(0.625mmol)とPDA 2.5g(0.625mmol)とを蒸留水100mlに溶解させた溶液を混合して30℃で24時間反応を進行させた。
【0113】
反応が終了した溶液は、濾過器を用いて残存する試薬を除去した後、蒸留水で3〜4日間メンブレン透析(6000〜8000Da分子量遮断)を施行した。透析が完了した溶液を凍結乾燥して、白色粉末形態の生成物(HA−PEG−TA/DA)を得た。
【0114】
<製造例7>カルボキシメチルセルロース−ポリ(エチレングリコール)−チラミン/ドーパミン(CMC−PEG−TA/DA)の合成
図7は、CMC−PEG−TA/DA共重合体の合成模式図を示す。
カルボキシメチルセルロース1gを蒸留水300mlに溶解させた溶液にEDC 1.307g(6.82mmol)とNHS 0.392g(3.41mmol)とをそれぞれ15分間隔で順次加えた。引き続き反応フラスコにPTA 2.5g(0.625mmol)とPDA 2.5g(0.625mmol)とを蒸留水100mlに溶解させた溶液を混合して30℃で24時間反応を進行させた。
【0115】
反応が終了した溶液は、濾過器を用いて残存する試薬を除去した後、蒸留水で3〜4日間メンブレン透析(6000〜8000Da分子量遮断)を施行した。透析が完了した溶液を凍結乾燥して、白色粉末形態の生成物(CMC−PEG−TA/DA)を得た。
【0116】
<製造例8>アルギン酸−ポリ(エチレングリコール)−チラミン/ドーパミン(ALG−PEG−TA/DA)の合成
図8は、ALG−PEG−TA/DA共重合体の合成模式図を示す。
アルギン酸1gを蒸留水300mlに溶解させた溶液にEDC 1.307g(6.82mmol)とNHS 0.392g(3.41mmol)とをそれぞれ15分間隔で順次加えた。引き続き反応フラスコにPTA 2.5g(0.625mmol)とPDA2.5g(0.625mmol)とを蒸留水100mlに溶解させた溶液を混合して30℃で24時間反応を進行させた。
【0117】
反応が終了した溶液は、濾過器を用いて残存する試薬を除去した後、蒸留水で3〜4日間メンブレン透析(6000〜8000Da分子量遮断)を施行した。透析が完了した溶液を凍結乾燥して白色粉末形態の生成物(ALG−PEG−TA/DA)を得た。
【0118】
本実施例で用いられるヒドロゲルの高分子構成及びヒドロゲルの名称は、次の表2のようである。
【0119】
【表2】

【0120】
<実験例1>酵素反応を利用したヒドロゲルの製造
まず、Tet−TA/DA高分子をHRP溶液に溶かした溶液(溶液A)とH溶液に溶かした溶液(溶液B)とを混合して、ヒドロゲルを製造した。また、CPEG−TA、GPEG−TA、HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DA高分子をそれぞれHRP溶液(溶液A)とH溶液(溶液B)に溶かした溶液とを混合することによって、ヒドロゲルを製造した。
【0121】
この際、高分子溶液の最終濃度は、1〜20重量%まで調節が可能であり、二重注入式注射器キット、及び噴射キットなどを用いて多様な形態への応用が可能であった。
【0122】
また、H溶液に、GHPA及びCHPA、GPEG−TA、CPEG−TA高分子を溶かしたそれぞれの溶液(溶液B)とTet−TA/DA高分子をHRP溶液に溶かした溶液(溶液A)とを混合することによって、ヒドロゲルを製造した。
【0123】
この際、GHPAとCHPAは、最終濃度を5〜10重量%、0.05〜1.5重量%まで調節が可能であり、それ以上の濃度では、粘度が高くなるため、実際の高分子溶液が取り扱いにくいという問題を生じる。
【0124】
相対的にPEGが導入されたGPEG−TA、CPEG−TA、HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAの場合、水に対する優れた溶解度を有し、粘度が低いため、高分子溶液の取り扱いが容易であった。
【0125】
実施例で言及されるヒドロゲルの濃度は、ヒドロゲルが含む高分子の最終濃度である。
【0126】
図9ないし図12は、酵素反応を利用した生体注入型組織接着性ヒドロゲルの製造の模式図を示す。
【0127】
<実施例2>二重注入式注射器キットを利用したin situ形成組織接着性ヒドロゲルの製造
Tet−TA/DA高分子をHRP溶液に溶かした溶液(溶液A)とGHPA、CHPA、GPEG−TA、CPEG−TA高分子をH溶液に溶かした溶液(溶液B)とを二重注入式注射器キットを用いてin situ形成ヒドロゲルを製造した。この際、溶液Aと溶液Bは、それぞれの注射器に入る。また、二重注入式注射器キットに噴射ノズルを用いて生体注入型組織接着性ヒドロゲルの噴射することもできる。
【0128】
また、CPEG−TA、GPEG−TA、HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DA高分子をそれぞれHRP溶液(溶液A)とH溶液(溶液B)とに溶かした溶液を二重注入式注射器キットを用いてin situ形成ヒドロゲルを先と同様に製造した。
【0129】
図13は、二重注入式注射器キットを利用したin situ形成組織接着性ヒドロゲルの製造の模式図を示す。
【0130】
<実施例3>HRP濃度による生体注入型組織接着性ヒドロゲルのゲル化時間の比較評価
HRP濃度による生体注入型組織接着性ヒドロゲルのゲル化時間の変化を評価した。実験のために、各高分子をH溶液に溶かした溶液(溶液A)と濃度別HRP溶液(溶液B)とを準備し、2つの溶液を同量で混合してヒドロゲルを製造した。
【0131】
ヒドロゲルの形成時間は、バイアル傾斜法(vial tilting method)を用いて、流れなくなる時間を測定して分析した。実験結果、HRPの濃度を調節してゲル化時間を3〜300秒まで調節が可能であり、高分子濃度によって1〜8秒までゲル化時間を調節した。Hの濃度変化は、ゲル化時間に大きな影響を及ぼさなかった。
【0132】
HRPの濃度が増加するにつれてゲル形成時間が短くなるが、その理由は、HRPの濃度が増加するにつれて、Hの分解が促進されてラジカルの生成速度が速くなり、生成されたラジカルによってゲルが形成されるためである。また、高分子濃度が増加するにつれて、単位時間当たりにTA−TA 複合体を形成することができる高分子鎖の数が増加し、ヒドロゲル形態を保持させる最小ネットワーク数の生成速度に影響を与えてゲル形成時間を短くする。
【0133】
図14は、HRPの濃度による生体注入型組織接着性ヒドロゲルのゲル化時間の比較評価を示す図である。
【0134】
<実施例4>生体注入型組織接着性ヒドロゲルの機械的強度の比較評価
粘弾性測定装置(レオメーター)を用いてTet−TA/DA IヒドロゲルとTet−TA/DA IIヒドロゲルの濃度変化による機械的強度を比較測定し、Tet−TA/DA II+GHPA、Tet−TA/DA II+CHPAヒドロゲルとTet−TA/DA II+GPEG−TA、Tet−TA/DA II+CPEG−TAヒドロゲルでTet−TA/DA II高分子濃度を調節して機械的強度の変化評価を行った。
【0135】
また、GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA/GPEG−TA、Tet−TA/CPEG−TAヒドロゲル及びHA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルの機械的強度も評価した。
【0136】
Tet−TA/DA IヒドロゲルとTet−TA/DA IIヒドロゲルは、高分子濃度が5重量%から10重量%に増加するにつれて、機械的強度が450Paから1900Pa、190Paから2500Paにそれぞれ増加し、5重量%のヒドロゲルでは、Tet−TA/DA Iがさらに高い機械的強度を示した一方、10重量%のヒドロゲルでは、Tet−TA/DA IIがさらに優れた機械的強度を表した。
【0137】
これは、TA−TA複合体によるヒドロゲル架橋度と、DAグループとレオメーターメタル表面とのリガンド結合という、2つのヒドロゲルの機械的物性に寄与する要素によって説明可能である。低濃度のヒドロゲルでは、架橋度に影響を受けてTAグループが相対的に多くのTet−TA/DA Iヒドロゲルで強い機械的強度を示した一方で、高い濃度のヒドロゲルでは、DAグループとレオメーターメタル表面とのリガンド結合の増加が影響を与えて、DAグループが相対的に多くのTet−TA/DA IIヒドロゲルで優れた機械的強度を有すると予想される。
【0138】
Tet−TA/DA II+GHPAとTet−TA/DA II+CHPAヒドロゲル、Tet−TA/DA II+GPEG−TAとTet−TA/DA II+CPEG−TAヒドロゲルで、高分子濃度が1、3、5重量%と増加するほど、機械的強度も次第に増加した。ヒドロゲルを構成する高分子の種類及び濃度によって、1300〜28500Paの機械的強度の変化を示した。ヒドロゲルの全体高分子濃度の上昇と天然高分子のTAグループによる架橋度の増加、天然高分子のアミン基と合成高分子のDAグループの共有結合の形成などをその理由として挙げられる。
【0139】
GPEG−TA 5重量%ヒドロゲルとCPEG−TA 5重量%ヒドロゲルは、それぞれ2700Paと6500Paの機械的強度を示し、Tet−TA 7重量%高分子溶液と共に混合した時、Tet−TA7+GPEG−TA5ヒドロゲルは、15500Pa、Tet−TA7+CPEG−TA5ヒドロゲルは、18900Paに機械的強度が増加した。より詳細な生体注入型組織接着性ヒドロゲルの機械的強度を表3に示す。
【0140】
実験結果、高分子の種類と濃度、組み合わせによって多様な機械的強度を有するin situ形成組織接着性ヒドロゲルを製造できるということを確認した。
【0141】
【表3】

【0142】
図15は、Tet−TA/DA IとIIヒドロゲルの機械的強度の比較及びTet−TA/DA II高分子濃度によるTet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DAII+GPEG−TAヒドロゲルの機械的強度の変化を示す。
【0143】
<実施例5>製造された生体組織接着性ヒドロゲルの生体外安定性の評価
製造された生体組織接着性ヒドロゲルを0.01Mのリン酸緩衝溶液に浸漬して37℃インキュベーターで体外安定性を評価した。安定性の測定は、0日から30日までヒドロゲルの重量減少を測定した。一ヶ月が経過した後にも、Tet−TA/DA IIヒドロゲルの形態と重量はほぼ100%保持され、HA−PEG−TA/DAとCMC−PEG−TA/DAヒドロゲルは、70〜80%、Tet−TA/DA II+GPEG−TA、Tet−TA/DA II+CPEG−TA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルは、40〜60%程度保持された。
【0144】
図16は、製造された生体組織接着性ヒドロゲルの生体外での(in vitro)安定性を示す。
【0145】
<実施例6>ヒドロゲルの2D細胞適合性の評価
体外生体適合性の評価のために、テフロン成形を用いて前記ヒドロゲルディスクを製造した後、該製造されたヒドロゲルディスクの表面に骨芽細胞(Osteoblast、MC3T3−E1)を培養して細胞の毒性評価を行った。実験に用いられた細胞の濃度は、1×10細胞/ウェルであり、生/死(Live/Dead)分析を通じて評価した。Live/Dead分析は、細胞毒性によって死滅した細胞は赤い色に、生きている細胞は緑色として、毒性の有無を評価する方法である。
【0146】
その結果、図17のように、前記製造された生体注入型組織接着性ヒドロゲルで死滅した細胞が観察されないことを確認することによって、ヒドロゲルの優れた体外細胞適合性の結果が得られた。
【0147】
図17は、Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+GPEG−TA、Tet−TA/DA II+CPEG−TA、HA−PEG−TA/TA、CMC−PEG−TA/DA、AGL−PEG−TA/DAヒドロゲルの2D細胞適合性の評価を示す。
【0148】
<実施例7>ヒドロゲルを利用したin vitro接着力の評価
油圧式万能材料試験機(UTM)を用いてブタの皮膚でヒドロゲルの接着強度を比較評価し、フィブリングルーとシアノアクリレートを対照群として実験した。
【0149】
Tet−TAとTet−TA/DAヒドロゲルは、0.062〜0.122MPaの接着強度を示し、対照群のフィブリングルーと比較して約6倍の接着強度を示した。Tet−TA/DA II+GHPAヒドロゲルの場合、高分子の濃度が増加するにつれて、接着強度も0.137〜0.260MPaに増加しながら、フィブリングルーの接着強度と比較して約13倍程度の高い接着強度を示した。
【0150】
Tet−TA/DA II+CHPAヒドロゲルで高分子の濃度を調節して接着強度を比較した結果、Tet−TA/DA II 7重量%とCHPA 5重量%とを混合したヒドロゲルは、0.544MPaの接着強度を示した。Tet−TA/DA II7+GPEG−TA7ヒドロゲルとTet−TA/DA II7+CPEG−TA7ヒドロゲルは、それぞれ0.325MPaと0.528MPaとの接着強度を示し、GPEG−TA 7重量%とCPEG−TA 7重量%高分子は、Tet−TA7重量%高分子と混合されてヒドロゲルを形成しながら、0.263MPaと0.310MPaとの接着強度を示し、フィブリングルーに比べて、優れた接着強度を示した。
【0151】
また、HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルの場合、それぞれ0.218、0.254、0.186MPaの接着強度を示し、この数値は、フィブリングルーに比べて、8〜11倍程度の高接着力を有することを意味する。
【0152】
実験結果、高分子の種類と濃度とによって多様な接着強度を示し、対照群として用いられたフィブリングルーに比べて、優れた組織接着性ヒドロゲルを製造できるということを確認した。
【0153】
【表4】

【0154】
【表5】

【0155】
【表6】

【0156】
【表7】

【0157】
【表8】

【0158】
【表9】

【0159】
【表10】

【0160】
図18ないし図24は、フィブリングルーとシアノアクリレートとを対照群として、(A)Tet−TA、Tet−TA/DA II、(B)Tet−TA/DA II+GHPA、(C)Tet−TA/DA II+CHPA、(D)Tet−TA/DA II+GPEG−TA、(E)Tet−TA/DA II+CPEG−TA、(F)GPEG−TA、CPEG−TA、Tet−TA+GPEG−TA、Tet−TA+CPEG−TA、(G)HA−PEG−TA/DA、CMC−PEG−TA/DA、ALG−PEG−TA/DAヒドロゲルのそれぞれの接着力の評価結果を示す。
【0161】
<実施例8>ヒドロゲルを利用したin vivo接着力の評価
白ウサギを用いてTet−TA、Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルの接着力を評価した。実験のために、1つの注射器にTet−TAまたはTet−TA/DA II高分子をHRP溶液に溶かした溶液(溶液A)を入れ、他の一つの注射器にH溶液またはCHPA、GPEG−TA高分子をH溶液に溶かした溶液(溶液B)を入れて、二重注入式注射器キットを構成した。白ウサギの背中に5cmサイズの傷をつけ、構成されたキットを用いて傷を縫合した。縫合糸を用いて傷を縫合したモデルを対照群として比較した。
【0162】
縫合糸で傷を完全に縫合するのに10分が必要となった一方、構成された二重注入式注射器キットを傷の上に分周すると1分以内にゲル化が進行して迅速に傷を縫合した。傷の縫合後、10分が経過するとTet−TAヒドロゲルを施術した群では傷が開き始めたが、Tet−TA/DA IIとTet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルは、縫合された状態をよく保持した。
【0163】
このような結果から、Tet−TA/DA IIヒドロゲルとTet−TA/DA II高分子に天然高分子が混合されたヒドロゲルが組織接着剤として効果的に使用可能であるということを確認した。
【0164】
図25は、Tet−TA、Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルのin vivo接着力の評価結果を示す。
【0165】
<実施例9>ヒドロゲルを利用したin vivo止血作用の評価
白ウサギを用いてTet−TA、Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルの止血効果を比較評価した。実験のために、生体内接着力の評価と同様の条件で二重注入式注射器キットを構成した。白ウサギの背中に5cmサイズの傷をつけ、構成されたキットを用いて迅速に傷を縫合し、10分後にヒドロゲルで縫合された傷の上にガーゼを載せて、そっと押してガーゼに付けて出る血痕を肉眼で確認した。
【0166】
ガーゼに付けられた血痕のサイズは、Tet−TA>Tet−TA/DA II>>Tet−TA/DA II+GPEG−TA≒Tet−TA/DA II+CHPAヒドロゲル順序で小さくなった。特に、Tet−TA/DA II+CHPAヒドロゲルとTet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルとが施術された部位では、ほとんど血痕を確認することができなかった。これは、ヒドロゲルが有する接着力と関連して、優れた接着強度を有するヒドロゲルが傷をさらに完璧に縫合し、これにより、止血効果まで奏すると予想される。
【0167】
図26は、Tet−TA、Tet−TA/DA II、Tet−TA/DA II+CHPA、Tet−TA/DA II+GPEG−TAヒドロゲルのin vivo止血作用の評価結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、生体注入型組織接着性ヒドロゲル及びその生医学的用途に関連する分野に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)フェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物と、ドーパまたはその誘導体から選択された1つ以上の化合物とが結合した、化1で表されるスター型高分子;
ii)フェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物と、ドーパまたはその誘導体から選択された1つ以上の化合物とが結合した、化1で表されるスター型高分子、及び、高分子主鎖にフェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物が、水溶性高分子をリンカーとして用いるか、あるいは用いずに結合した、化2で表される分枝状高分子の異種混合物;及び
iii)高分子主鎖にフェノール、アニリン、またはこれらの誘導体のうちから選択された1つ以上の化合物と、ドーパまたはその誘導体から選択された1つ以上の化合物とが、水溶性高分子をリンカーとして用いるか、あるいは用いずに結合した、化3で表される分枝状高分子;
からなる群から選択された同種または異種の高分子の2つ以上を含み、2つ以上の高分子間の隣接するフェノール、アニリン、ドーパ、またはこれらの誘導体間の脱水素結合によって連結されることを特徴とする、化4ないし化7で表される生体注入型組織接着性ヒドロゲル:
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】

【化5】


【化6】


【化7】


上記化学式で、
Rは、フェノール、アニリン、ドーパ、ドーパキノン、及びこれらの誘導体のうちから選択された何れか1つであり、
Xは、ヒドロキシ基またはアミン基であり、
Lは、高分子リンカーであり、(L)は、リンカーを含むか、含まない。
【請求項2】
前記高分子に西洋ワサビペルオキシダーゼ及び過酸化水素を添加して、高分子を体内または体外でin situ架橋させたことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項3】
前記化1ないし化3で表される高分子は、水溶性高分子をリンカーとして用いるか、用いずに、アミノ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシル基を有する高分子主鎖に、フェノール、アニリン、ドーパ、ドーパキノン、及びこれらの誘導体のうちから選択された何れか1つの化合物を、アミド、ウレタン、ウレア、またはエステル結合させて製造されたことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項4】
前記高分子は、ゼラチン、キトサン、ヘパリン、セルロース、デキストラン、デキストランサルフェート、コンドロイチンサルフェート、ケラタンサルフェート、デルマタンサルフェート、アルギン酸、コラーゲン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミリン、エラスチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリノーゲン、及び多分枝−高分子からなる群から選択された1つまたは2つ以上の高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項5】
前記多分枝−高分子は、3分枝−ポリエチレングリコール(3armPEG)、4分枝−ポリエチレングリコール(4armPEG)、6分枝−ポリエチレングリコール(6armPEG)、または8分枝−ポリエチレングリコール(8armPEG)から選択された何れか1つまたは2つ以上の多分枝ポリエチレングリコールと、及びテトロン酸シリーズ(4arm−PPO−PEO)からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上の高分子であることを特徴とする、請求項4に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項6】
前記フェノール誘導体は、チラミン、ヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、及びこれらの誘導体からなる群から選択された1つまたは2つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項7】
前記アニリン誘導体は、ヒドロキシエチルアニリン、アミノエチルアニリン、アミノベンジルアルコール、及びこれらの誘導体からなる群から選択された1つまたは2つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項8】
前記ドーパ誘導体は、L−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、及びこれらの誘導体からなる群から選択された1つまたは2つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項9】
前記リンカーは、陽イオン高分子、陰イオン高分子、両性高分子、非イオン性高分子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つまたは2つ以上の水溶性高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項10】
前記リンカーは、ポリエステル、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリペプチド、多価脂肪族、多環芳香族、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項11】
前記リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリ(DL−乳酸−CO−グリコール酸)(PLGA)、ポリ((プロピレン)フマレート)、ポリ((エチレン)フマレート)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項12】
前記リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(polyNIPAAM)、ポリフマレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリアクリル酸(polyAAc)、ポリアクリルスルホン酸、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(polyHEMA)、及びこれらの共重合体からなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項13】
前記共重合体は、PEO−PPO−PEO(Pluronic(R)シリーズ)、4−分枝PEO−PPO−PEO(Tetronic(R)シリーズ)、PEG−PEI、PEG−PVA、PEG−PEI−PVA、PEI−PVA、ポリ(NIPAAM−co−AAc)、ポリ(NIPAAM−co−HEMA)、及びこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項12に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項14】
前記ヒドロゲルは、西洋ワサビペルオキシダーゼ、及び過酸化水素の濃度を調節してゲル化時間、ゲル安定性、機械的強度、または含水率から選択された物理化学的性質を調節したことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項15】
前記ヒドロゲルは、水溶性高分子の分子量を調節してゲル化時間、ゲル安定性、機械的強度、または含水率から選択された物理化学的性質を調節したことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項16】
前記ヒドロゲルは、ドーパまたはその誘導体の含有量と、または前記異種混合物でドーパまたはその誘導体を含む高分子とフェノール、アニリン、またはこれらの誘導体を含む高分子間の混合比率によって組織接着の強度調節が可能であることを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項17】
前記ヒドロゲルは、二重注入式注射器キット(dual syringe kit)を構成してin situ架橋形成したことを特徴とする請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項18】
前記二重注入式注射器キット(dual syringe kit)に噴射ノズルを結合して噴射(spray)可能にしたことを特徴とする請求項17に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項19】
前記二重注入式注射器キットとテフロン成形とを用いて、ヒドロゲルシートまたはディスクを製造したことを特徴とする、請求項17に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項20】
前記ヒドロゲルは、さらにフェノール、アニリン、アミン、またはチオールグループを有する生理活性物質を含んでin situ架橋形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項21】
前記生理活性物質は、チロシンを含むペプチドであることを特徴とする、請求項20に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲル。
【請求項22】
請求項1ないし請求項21のうち何れか一項に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲルを含む、組織接着及び止血用素材。
【請求項23】
前記素材は、血管外科領域を含んだ脳神経外科手術と、骨の接着を含んだ整形外科手術と、裂傷患者の止血と、大腿動脈の縫合と、白内障切開縫合、軟骨及び関節軟骨治癒と、皮膚接合と、臓器/分泌腺切開面止血と、胃腸管分合と、及び筋及び靭帯治癒からなる群から選択された何れか1つに適用されたことを特徴とする、請求項22に記載の組織接着剤及び止血剤用素材。
【請求項24】
請求項1ないし請求項21のうち何れか一項に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲルを含む、組織再生及び充填用インプラント素材。
【請求項25】
前記インプラント素材は、軟骨再生、骨再生、歯槽骨再生、皮膚再生、心筋再生、人工水晶体、脊髓神経再生、脳神経再生、声帯再生及び充填剤、癒着防止膜、尿失禁治療剤、シワ除去用充填剤、火傷治療剤、組織充填剤、及び脊椎椎間板治療剤からなる群から選択された何れか1つに適用されたことを特徴とする、請求項24に記載の組織再生及び充填用インプラント素材。
【請求項26】
請求項1ないし請求項21のうち何れか一項に記載の生体注入型組織接着性ヒドロゲルを含む、生理活性物質または薬物伝達体用担体。
【請求項27】
前記生理活性物質または薬物は、ペプチドまたはタンパク質医薬品、抗菌剤、抗癌剤、及び抗炎症剤からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上であることを特徴とする、請求項26に記載の生理活性物質または薬物伝達体用担体。
【請求項28】
前記ペプチドまたはタンパク質医薬品は、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、形質転換成長因子(TGF)、骨成長因子(BMP)、ヒト成長ホルモン(hGH)、ブタ成長ホルモン(pGH)、白血球成長因子(G−CSF)、赤血球成長因子(EPO)、大食細胞成長因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮細胞成長因子(EGF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、インターフェロン−α,β,γ、インターロイキン−2(IL−2)、カルシトニン、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子、アンジオテンシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬(LHRH アゴニスト)、インシュリン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、アンジオスタチン、エンドスタチン、ソマトスタチン、グルカゴン、エンドルフィン、バシトラシン、マゲイン、コリスチン、単一抗体、ワクチン類、及びこれらの混合物からなる群から選択された何れか1つであることを特徴とする、請求項27に記載の生理活性物質または薬物伝達体用担体。
【請求項29】
前記抗菌剤は、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オフロキサシン、ホスホマイシン、マゲイン、プロフロキサシン、アンピシリン、ペニシリン、ドキシサイクリン、チエナマイシン、セファロスポリン、ノルキサシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、パロモマイシン、ミクロノマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、セフォタキシン、セファクロル、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、エノキサシン、バンコマイシン、イミペネム、フシジン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された何れか1つであることを特徴とする、請求項27に記載の生理活性物質または薬物伝達体用担体。
【請求項30】
前記抗癌剤は、パクリタキセル、タキソテール、アドリアマイシン、エンドスタチン、アンギオスタチン、マイトマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カボプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、アクチノマイシン−D、及びこれらの混合物からなる群から選択された何れか1つであることを特徴とする、請求項27に記載の生理活性物質または薬物伝達体用担体。
【請求項31】
前記抗炎症剤は、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、ピロキシカム、フェノプロフェン、フルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、スプロフェン、ロキソプロフェン、シノキシカム、テノキシカム、及びこれらの混合物からなる群から選択された何れか1つであることを特徴とする、請求項27に記載の生理活性物質または薬物伝達体用担体。

【図13】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−503688(P2013−503688A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527823(P2012−527823)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005953
【国際公開番号】WO2011/028031
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509005937)アジュ ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション (6)
【Fターム(参考)】