生体活性材料
本発明は、インプラントとしての使用または骨を修復するための代替骨としての使用に適した生体活性材料及び生体活性材料の製造方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントとしての使用または骨を修復するための代用骨としての使用に適した材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格異常、または大腿骨頸部骨折、脊椎固定及び歯の損失などの負傷の修復は、一般的な治療である。例えば米国内のみで一年間に500,000を超える人口股関節移植、250,000を超える脊椎固定手術、及び500,000を超える歯科インプラント手術が実施されている。
【0003】
チタン及びその合金は、それらの高い硬度及び優れた生体適合性のため、人工関節、骨折固定器具及び歯科インプラントなどの医療インプラントにおいて広く使用されている。医療及び歯科インプラントにおいて一般的に使用されているその他の材料は、コバルト・クロム、研磨ジルコニウム、オキシニウム(酸化ジルコニウム)及びステンレス鋼を含む。しかしながら、チタン及びこれらのその他材料は、骨と化学的に結合する能力に乏しく、その結果、骨溶解、続いてこれらの材料を含むインプラントの緩みがしばしば起こる。
【0004】
整形外科用インプラントの性能は、インプラントと骨または骨セメントとの間に形成される界面の品質に影響され得る。インプラントと骨(またはセメント)との界面の発達は、インプラントの表面積、電荷、トポグラフィー、化学的性質及び汚染を含む多くの因子に依存する。インプラントと骨との界面とは、移植されたときに骨に接触または隣接して配置されるインプラントの表面である。
【0005】
インプラントと骨との一体化を強化するためにインプラントと骨との界面トポグラフィーを修正するためのさまざまな方法が知られている。これらの方法は、インプラントと骨との界面表面のプラズマ溶射及び電気化学陽極酸化処理を含む。プラズマ溶射及び電気化学陽極酸化処理に付随する問題は、インプラントに対する乏しい付着力を示し、長期間の移植の間に分解、剥離または亀裂が生じる疲労強度の低いインプラントと骨との界面の形成を含む。
【0006】
整形外科用インプラントへの組織内部成長を向上させるために一般的に使用される方法は、グリットブラストまたはサンドブラストとも称されるインプラント表面の研磨粒子ブラストである。この方法は、インプラント表面上に研磨粒子をブラストすることによってミクロン規模の表面構造を与える。このような粗面化された表面は、細胞接着を促進し、その結果インプラントと骨との物理的結合を向上させることが示されている。さらに、粗面化された表面の領域の拡大は、インプラントと骨との物理的結合を向上させるインプラントと骨との界面により多くの細胞が接着することができることを意味する。このような修飾されたインプラントと骨との界面を有するインプラントは、低品質の骨においても優れた骨統合特性を示す。
【0007】
しかしながら、研磨粒子ブラスト方法は、インプラントの表面上の金属成分を損傷することによって表面トポグラフィーに著しい変化を発生させ得る。研磨粒子ブラスト方法はまた、インプラントの表面に組み込まれた研磨粒子の存在のために、表面化学の不均一性を引き起こし得る。研磨粒子の存在は、インプランとの表面を汚染し、インプランと骨との界面の品質に悪影響を及ぼす。さらに、研磨粒子はインプランとの表面から脱離する可能性があり、骨、インプラント及び移植箇所の磨耗の増加につながる。
【0008】
さらに、一定の割合のインプラントの表面から脱離する組み込まれた研磨粒子は、局所的微動、移植箇所に対するインプラントの移動、及びインプランとの表面における組織内部成長の中断を引き起こす。グリットブラストを施されたインプラントの最大40%の表面積が、インプラントと骨との界面の問題、インプラントの生体適合性の低下、及びインプラント近くの領域の炎症を引き起こし得る研磨粒子で汚染され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、研磨粒子が組み込まれた表面によって引き起こされる汚染が減少したかまたは存在しない拡大されたインプラントと骨との界面層を有するインプラントを提供することである。インプラントと骨との界面は、移植されたときに骨と接するまたは隣接して配置されるインプラントの表面である。本発明の目的はさらに、骨伝導性及び骨誘導性が向上した生体活性、多孔質及びナノ構造の表面層を有するインプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の第1側面によると、金属または金属合金基板と、基板の表面上に形成された一次層と、を備えたインプラントに適した材料を提供する。驚くべきことに、本発明による基板の表面積より大きな表面積を有する一次層は、骨が表面上に形成されることを(非常に)促進することがわかった。その結果、骨形成が増加してインプラント上に確実に固定され、移植手術からの回復速度及びインプラントが固定される全体的な成功率の両方に関して移植の成功率が上昇する。
【0011】
使用する際には、インプラントの一次層の表面は骨または骨セメントに接する。その結果、一次層、またはより厳密には一次層の表面は、インプラントと骨との界面を提供する。一次層の表面積の増加は、より大きな表面積が周囲の細胞/セメントに提示されるため、材料つまりインプラントとの一体化が向上することを意味する。
【0012】
本発明の第2側面は、第1側面の材料を形成する方法を提供し、当該方法は、金属または金属合金基板を提供する段階と、一次層によって被覆される基板の表面積より大きな表面積を有する一次層を基板の表面上に形成する段階と、を含む。
【0013】
好ましくは、基板は遷移金属、遷移金属合金または遷移金属酸化物、例えばチタン、TiAlNbまたは酸化チタンを含む。チタン及びその合金は、その高い硬度および優れた生体適合性のために、整形外科用インプラントに理想的に適している。基板は、任意でコバルト・クロム、研磨ジルコニウム、オキシニウム(酸化ジルコニウム)、ステンレス鋼、タンタルまたはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。本発明による基板は、いかなる金属または金属合金、または金属酸化物、またはこれらの組み合わせも含んでよいが、チタンを含むと適切である。
【0014】
好ましくは、金属基板上に一次層を形成する段階は基板の表面を物理的に変化させる段階を含む。基板の表面を物理的に変化させる段階は、基板の表面を粗面化し、その結果表面積が増加する。一次層または粗い層は、細胞接着、ひいてはインプラントの骨または移植箇所へ物理的結合を促進する。一次層が提示する粗面化された表面は、一次層によって被覆される基板の表面積より著しく大きな表面積を提供する。
【0015】
一次層を形成するために基板の表面を物理的に変化させる段階は、例えば機械加工、サンドブラストまたはグリットブラスト、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。好ましくは、物理的に変化させる段階は、基板の表面にアルミナなどの研磨粒子でグリットブラストを施す段階を含む。その結果形成される一次層は、細胞接着が可能な表面積を増加させる粗い不均一な突起、凹部、くぼみ及び溝表面性状を提示する。
【0016】
また、基板を物理的に変化させる段階は、例えば金属ビーズの被膜を基板の表面に接着するようなマクロまたはミクロ物理的表面処理を含んでよい。ビーズは、基板の表面上に3D多孔質形状を形成して、被膜によって被覆される基板の表面よりも大きな表面積を有する一次層を提供する。好ましくは、一次層は、基板の表面上に焼結された2層または2層のビーズ層を含む。好ましくは、ビーズはチタンビーズであり、平均直径328μmを有する。
【0017】
変形または追加として、被膜はスポンジまたはフォーム状の金属繊維及び/またはワイヤのネットワークを含んでよい。また、基板自体が、基板の表面を物理的処理する必要のない多孔質またはスポンジ状であることができる。好ましくは、フォームまたはスポンジ状構造は、直径15から50μm、細孔径数百ミクロンから約1mmを有する焼結ビーズからなる。
【0018】
さらに、一次層の物理的形成に続いて、一次層を形成または完成する方法は理想的に、物理的に形成された一次層の化学的処理を含む。物理的に形成された一次層を化学的に処理する段階は、基板を約30から90℃のアルカリ性溶液中に浸漬する段階を含む。チタンまたはチタン合金は、アルカリ性溶液と反応してチタン酸アルカリを形成する。従って、完成した一次層の表面は、チタン酸アルカリを含む。典型的に、完成した一次層の表面はまた、酸化チタンを含む。
【0019】
好ましくは、アルカリ性溶液の温度は50から70℃であり、さらに好ましくは55から65℃である。
【0020】
基板またはアルカリ性溶液をより高温に加熱すると、形成される一次層の品質を低下させることが認められている。例えば、基板またはアルカリ性溶液が150℃を超えて加熱される場合、ミクロン規模の厚さのチタン酸アルカリの堆積物を有する一次層が形成され得る。チタン酸アルカリ堆積物または層が厚いほど、チタン酸アルカリ層の剥離または亀裂のリスクが高まる。その結果、インプラントを骨に結合させて実際にインプラントと骨との界面を形成するチタン酸アルカリ層は弱く、最終的に骨からインプラントが分離し得る。
【0021】
好ましくは、基板はアルカリ性溶液中に1から24時間浸漬される。典型的には、浸漬時間は1から5時間であるが、好ましくは1から3時間である。5時間を越えて、特に24時間を越えて浸漬するとまた、ミクロン規模の厚さを有する一次層が形成されることが認められている。
【0022】
チタン酸アルカリ層は、チタン酸アルカリのナノ構造を有する表面を一次層に付与する。ナノ構造またはナノ形状表面は一般的に、ナノメートル範囲内のサイズの粒子または成分を含む表面を意味する。チタン酸アルカリのナノ構造は、1から20ナノメートル(nm)の幅を有するチタン酸アルカリの繊維または線維に構造的に類似した離散要素を含む束状形態に類似している。線維は一般的に円柱形状である。
【0023】
典型的に、線維の長さは200から300nmの範囲であり、線維間の距離は5nmから80nmの範囲である。線維は一般的に次々に重なり合うかまたは積層されてチタン酸アルカリ層または表面を形成する。好ましくは、チタン酸アルカリ層の厚さは100から500ナノメートルの範囲にあり、より好ましくは、100から300ナノメートルである。
【0024】
物理的処理段階は、チタン酸アルカリナノ構造の形成に備えて、表面積が増加した一次層を形成する。ナノ構造のチタン酸アルカリ層は、一次層を完成させて一次層の表面積、つまり細胞の接着及び一体化が可能なインプラントと骨との界面の表面積を著しく増加させる。チタン酸アルカリ層はさらに、インプラントと骨との界面にある研磨粒子の存在によって生じる悪影響を覆い隠す。
【0025】
好ましくは、一次層は、一次層によって被覆される基板の表面積より1000から50000倍大きな表面積を有する。さらに好ましくは、一次層は、一次層によって被覆される基板の表面積より40000から50000倍大きな表面積を有する。
【0026】
典型的に、アルカリ性溶液は水酸化物を含む。好ましくは、水酸化物は水酸化ナトリウムである。本発明では、例えば水酸化リチウムまたは水酸化カリウムあるいは任意のその他適当な金属水酸化物など、その他の水酸化物を使用することもできる。この場合、一次層のチタン酸アルカリナノ構造は、チタン酸ナトリウムであり得る。チタン酸ナトリウムは、イオン交換化学によって容易に、チタン酸リチウムまたはチタン酸ストロンチウムなど、異なる用途に適する異なる物理化学または生体適合性特性をもたらすために、他の化合物に変更することができるイオン化合物である。水酸化物溶液の濃度は、好ましくは2から8モルであり、さらに好ましくは3から6モルであり、理想的には4モルである。水酸化物の濃度がより高ければ、ナノ構造の再分解をもたらし得る。
【0027】
形成される一次層は典型的に、本来親水性である。これは一般的に、一次層を完成させる化学処理段階に起因するものである。材料の親水性の性質は、その表面上に形成する水接触角によって測定される。接触角が小さいほど材料の親水性は高い。好ましくは、一次層の接触角は5°未満であり、さらに好ましくは3°未満である。
【0028】
好ましくは、一次層は可視光に対して低い反射率を有する。典型的に、一次層は可視光に対して1%から20%の範囲の反射率を有する。さらに好ましくは、一次層は可視光に対して5%から15%の反射率を有し、理想的には6%から10%の範囲である。この反射率の範囲で、一次層は黒色を呈する。
【0029】
好ましくは、一次層は例えばカルシウムヒドロキシアパタイトなど、ヒドロキシアパタイトを含む。典型的に、ヒドロキシアパタイトは混合された緩衝塩に材料を浸漬することによって一次層中に組み込まれる。
【0030】
材料は向上したインプラントと骨との一体化のための医療及び歯科インプラントの両方において使用され得る。さらに厳密には、材料は例えば膝関節、股関節及び肩関節プロテーゼ、大腿骨頸部置換、脊椎置換及び修復、頸部骨置換及び修復、顎骨修復、固定及び増生、移植骨固定、及びその他の義肢などを含む骨置換インプラントにおいて使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】チタン合金表面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図2】図1のチタン合金表面にアルミナ粒子でグリットブラストを施した後のSEMである。
【図3】チタン合金の多孔質ビーズ化表面のSEMである。
【図4】チタン合金の焼結ビーズフォーム表面のSEMである。
【図5a】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後のチタン合金表面のSEMである。
【図5b】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の2M(2モル)水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5c】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の3M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5d】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5e】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の6M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5f】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の8M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5g】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の10M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図6a】60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬したアルミナグリットブラストチタン合金表面のSEMである。
【図6b】60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬したチタン多孔質ビーズ化合金表面のSEMである。
【図6c】60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬したチタン焼結ビーズフォーム表面のSEMである。
【図7】図6bのチタン合金表面の拡大図である。
【図8】図6cのチタン合金表面の拡大図である。
【図9】一次層を形成する前の多孔質ビーズ化チタン表面のSEMである。
【図10】超音波水浴において60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬することによって一次層が形成された図9の多孔質ビーズ化チタン表面のSEMである。
【図11a】60℃の2M水酸化ナトリウム溶液に10分間浸漬した図9の多孔質ビーズチタン表面のSEMである。
【図11b】1から20ナノメートルの範囲のサイズを有するナノサイズ線維を含むナノ構造の一次層の初期形成をより明確に示す図11aの多孔質ビーズチタン表面を拡大したSEMである。
【図11c】ナノ構造一次層の発達を明確に示す60℃の2M水酸化ナトリウム溶液にさらに15分間浸漬した図11aの多孔質ビーズチタン表面のSEMである。
【図11d】一次層の形成の不規則な性質を明確に示す図11aの多孔質ビーズ化チタン表面の異なる部分のSEMである。
【図12】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後に60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後の市販の純チタン表面のSEMである。
【図13a】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金の表面の領域を拡大したSEMである。SEMは形成された一次層の上部表面を分析するために2kVを採用した。
【図13b】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金の表面の領域を拡大したSEMである。SEMは形成された一次層の上部表面を分析するために2kVを採用した。
【図13c】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金の表面の領域を拡大したSEMである。SEMは形成された一次層の上部表面を分析するために2kVを採用した。
【図14a】図13aのTiAlNb合金の表面の同一領域を60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。SEMは完成された一次層の上部構造を分析するために2kVを採用した。
【図14b】図13bのTiAlNb合金の表面の同一領域を60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。SEMは完成された一次層の上部構造を分析するために2kVを採用した。
【図14c】図13cのTiAlNb合金の表面の同一領域を60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。SEMは完成した一次層の上部構造を分析するために2kVを採用した。
【図15a】図14bのTiAlNb合金の表面の同一領域のSEMである。SEMは完成した一次層の下部構造を分析するために15kVを採用した。
【図15b】図14cのTiAlNb合金の表面の同一領域のSEMである。SEMは完成した一次層の下部構造を分析するために15kVを採用した。
【図16】異なる基板の一次層の表面からの反射率を示すグラフである。
【図17a】本発明による材料のサンプルの水酸化ナトリウムでの処理前の一次層を示す図である。
【図17b】本発明による材料のサンプルの水酸化安トリウムでの処理後の一次層を示す図である。
【図18】グリットブラストを施されたチタン断片を標準偏差のエラーバーでDNA(PicoGreen(登録商標))に正規化したp−NPPデータである。このデータは表2からのものである。
【図19】多孔質ビーズ化チタン断片を標準偏差のエラーバーでDNA(PicoGreen)に正規化したp−NPPデータである。このデータは表3からのものである。
【図20】研磨されたチタン断片を標準偏差のエラーバーでDNA(PicoGreen)に正規化したp−NPPデータである。このデータは表4からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、添付の図面を参照して本発明の実施形態を例示の目的で説明する。
【0033】
約40mm2から100mm2の範囲の表面積を有するさまざまなサイズのチタン合金板サンプルを洗浄及び乾燥して、サンプル基板を形成した。調製されたまたはサンプル基板表面は、ほぼ平滑である。これは、超高分解能走査型電子顕微鏡で撮影した基板表面を示す図1から最も明確に見られる。
【0034】
チタン合金基板上に形成された一次層を観察するために、浸漬光学系を使用した3kVで1.8nm、15kVで1nmの規定解像度を有する超高分解能走査型電子顕微鏡FEI Nova 200 NanoSEMを使用した。一次層の図または顕微鏡写真は、ナノスケールの細部を示す。しかしながら、当然その他の適切な方法及び装置を使用して一次層の表面細部を調査してもよい。
【0035】
調製された基板サンプルの表面は、アルミナグリットブラストとも称される研磨アルミナ粒子でブラストされた。アルミナグリットブラストは、グリットブラストを施す前に、調製された基板の表面積より大きな表面積を有する一次層を形成または部分的に形成している基板の表面を粗面化する。これは、図2及び5aにおいて最も明確に見られる。一次層は、部分的に一次層が形成された基板を、60℃の4モル水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬することによって完成した。図5bは、ナノスケールのサイズを有するチタン酸ナトリウムの束状構造、繊維または線維の発達を明確に示す完成した一次層の図である。これらの線維の直径または幅は、1から20ナノメートルの範囲内にある。線維のおよそ80%が5から12ナノメートルの範囲の直径を有することが測定された。線維の長さは、200から300ナノメートルである。
【0036】
調製された基板の5サンプルにアルミナグリットブラストをさらに施し、それぞれ濃度3モル、4モル、6モル、8モル及び10モル、60℃の水酸化ナトリウム溶液中に2時間浸漬した。図5cから5gはそれぞれの条件で形成された完成された一次層の図である。図5cから5gにおいて見られるように、基板を4モルの水酸化ナトリウム溶液に浸漬した場合に、最も良好なエッチング、微細構造またはナノ構造、あるいは最も高い密度の線維構造が観察された。線維構造の密度が高いほど一次層の表面積は大きくなる。より高濃度の水酸化ナトリウムでの処理は、効果が低く、一次層のナノ構造の再溶解につながり、結果として滑らかな表面となり、表面積が低下した。
【0037】
図6aから6cは、開始基板つまり初期微細構成がそれぞれ異なるような本発明による方法で形成された一次層の図である。図6aは、研磨アルミナ粒子でブラストを施され、続いて60℃、濃度4モルの水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬することによって化学的に処理された固体チタン合金基板の表面上に形成された一次層の図である。図6b及び図6cは、それぞれ多孔質ビーズチタン基板及びチタンフォーム基板上に形成された一次層の図である。両者は固体チタン合金基板と同じ方法で化学的に処理した。
【0038】
多孔質ビーズチタン基板及びチタンフォーム基板には、固体チタン合金基板の場合のような物理的処理を施していない。開始基板の表面積が大きいほど形成される一次層の表面積が大きくなることが認められた。図6aから6cにおいて非常に明確に見られるように、最も大きな開始基板表面積を有するチタンフォーム基板の場合に形成された線維が最も微細であり、線維形成密度が最も高く、最も大きな一次層表面積を示した。図9は、一次層が完成する前の段階の多孔質ビーズチタン合金表面の一部分のSEMである。図11aから11dは、60℃の2モル水酸化ナトリウム溶液に浸漬した場合の一次層の経時発達を図示する。
【0039】
図13aから13cは、アルミナ粒子でブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金表面の領域を拡大した(それぞれ200、500及び1200倍拡大)SEMである。SEMは、完成した一次層の上部構造を解析するために2kVビームを採用した。図14aから14cは、それぞれ60℃の4モル水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後の図13aから13cのTiAlNbの表面の同一領域及び同一倍率のSEMである。SEMは、結果として形成された一次層の上部構造を解析するために2kVビームを採用した。図15a及び15bは、それぞれ図13b及び13cのTiAlNb合金の表面の同一領域及び同一倍率のSEMである。SEMは、形成された一次層の下部構造を解析するために15kVビームを採用した。
【0040】
一次層の表面トポグラフィー及びアルミナ含有量を分析するために、水酸化ナトリウム溶液中に基板を浸漬する前後の一次層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で分析した。この方法は、一次層の表面を分析することが可能な異なる電圧で実施することができ、電圧が高いほどビームは深く侵入する。チタン合金は、アルミナよりも大きな平均原子数を有する。SEMを使用して分析される物質の平均原子数が大きいほど電子の後方散乱が大きくなり、SEM画像はより明るくなる。
【0041】
アルミナは、チタン合金よりも小さな平均原子数を有するため、アルミナを含むチタン合金のSEM画像はアルミナを含まないチタン合金よりも暗くなる。アルミナグリットブラストを施す前のチタン合金基板を示す図1と、例えばアルミナグリットブラスト後のチタン合金基板を示す図13aから13cとを比較すると、一次層を形成している基板の表面にかなりの量のアルミナが組み込まれたことは明確である。図14aから14cは、上記のように水酸化ナトリウムでの化学処理によって完成された図13aから13cの一次層を表す。形成されたチタン酸ナトリウム層が一次層の上部表面に存在するアルミナ粒子を覆うため、図14aから14cに示された一次層のSEM画像は図13aから13cに示された一次層のSEM画像よりも明るいことがわかる。チタン酸ナトリウムは、アルミナよりも大きな平均原子数を有するため、完成された一次層のSEM画像は、アルミナグリットブラストによって形成された一次層及び水酸化ナトリウムでの処理前の一次層よりも明るく現れる。
【0042】
高電圧のSEM画像は、明らかに暗く、上部表面領域よりもアルミナ含有量の多い一次層の表面の組成を示す。しかしながら、一次層の表面への研磨粒子の混入は骨とインプラントとの間に形成される結合にほとんど影響を与えないため、インプラントと骨との界面を形成して骨と直接接する一次層の上部表面におけるアルミナ粒子を覆うことが重要である。
【0043】
4モルの水酸化ナトリウムでの処理前後におけるいくつかの基板の反射率も分析した。以下の表1からわかるように、一次層の表面積が大きいほど可視光が反射されにくいことが明らかである。最も大きな表面積を有する一次層を形成したチタンフォーム基板は、可視光の5から10%しか反射しなかった。完成した一次層はいずれも裸眼で黒色に見える。
【0044】
【表1】
【0045】
異なる前処理段階(グリットブラスト、研磨、多孔質ビーズ化)を有するサンプルチタン材料、チタン合金断片を、それぞれ別の種類及び前処理と、並びに化学処理しないものと比較して、アルカリ性溶液での化学処理後の表面上の骨形成活性において比較した。
【0046】
アルカリ性溶液は、60℃の4モル水酸化ナトリウム溶液、2時間である(前述の通り)。
【0047】
チタン合金断片の前処理は、当技術分野で周知のように、表面研磨、グリットブラスト、及び多孔質ビーズ化である。
【0048】
化学処理後、断片上のいかなる流体もテスト表面上に維持されるように、チタン合金断片を個別のシリコーン管に挿入した。
【0049】
ヒト間葉幹細胞を適当な媒体において再生及び継代し、一晩培養した。培養後、媒体をβ‐グリセロリン酸塩を含有する骨形成媒体と置き換え、これを1週間に2回交換した。
【0050】
全ての表面の種類において全時点で、細胞上へのライブ/デッドステイニングを実施した。
【0051】
望ましい細胞の骨形成活性、ひいては骨形成に対する細胞溶解及びP‐ニトロフェノールアルカリ性リン酸塩p‐NPPアッセイ分析をサンプルに実施した。
【0052】
アルカリ性溶液処理されたグリットブラスト前処理断片をアルカリ性溶液処理されていないものと比較した結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
結果は、断片が例えばアルカリ性溶液で化学処理された場合のほうが化学処理されていな場合より骨形成活性が高いことを示している。
【0057】
当然ながら、一次層は抗菌剤を含むさまざまな生体活性物質を含んでよい。また、当然ながら、インプラントに抗生物付着、細胞発生、触媒、骨形成または電気化学特性を与えるために一次層をさらに処理してよい。
【0058】
当然ながら、基板は、チタンの代わりに例えばニチノールまたはジルコニウムなどの別の金属または合金を含んでよい。
【0059】
一次層の表面特性を向上または強化するために、形成される材料にさらなる物理的処理段階が施され得ることが想定される。例えば、一次層の完成において、アルカリを除去するために材料を水またはリン酸緩衝整理食塩水で洗浄することができる。材料を乾燥させた後、300から600℃の目標温度まで加熱することができる。目標温度には、1分間に5℃材料の温度を上昇させることによって到達することができる。目標温度に達すると、少なくとも1時間維持することができる。
【0060】
当然のことながら、本発明はここで説明された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内において構成及び詳細を変更することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントとしての使用または骨を修復するための代用骨としての使用に適した材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格異常、または大腿骨頸部骨折、脊椎固定及び歯の損失などの負傷の修復は、一般的な治療である。例えば米国内のみで一年間に500,000を超える人口股関節移植、250,000を超える脊椎固定手術、及び500,000を超える歯科インプラント手術が実施されている。
【0003】
チタン及びその合金は、それらの高い硬度及び優れた生体適合性のため、人工関節、骨折固定器具及び歯科インプラントなどの医療インプラントにおいて広く使用されている。医療及び歯科インプラントにおいて一般的に使用されているその他の材料は、コバルト・クロム、研磨ジルコニウム、オキシニウム(酸化ジルコニウム)及びステンレス鋼を含む。しかしながら、チタン及びこれらのその他材料は、骨と化学的に結合する能力に乏しく、その結果、骨溶解、続いてこれらの材料を含むインプラントの緩みがしばしば起こる。
【0004】
整形外科用インプラントの性能は、インプラントと骨または骨セメントとの間に形成される界面の品質に影響され得る。インプラントと骨(またはセメント)との界面の発達は、インプラントの表面積、電荷、トポグラフィー、化学的性質及び汚染を含む多くの因子に依存する。インプラントと骨との界面とは、移植されたときに骨に接触または隣接して配置されるインプラントの表面である。
【0005】
インプラントと骨との一体化を強化するためにインプラントと骨との界面トポグラフィーを修正するためのさまざまな方法が知られている。これらの方法は、インプラントと骨との界面表面のプラズマ溶射及び電気化学陽極酸化処理を含む。プラズマ溶射及び電気化学陽極酸化処理に付随する問題は、インプラントに対する乏しい付着力を示し、長期間の移植の間に分解、剥離または亀裂が生じる疲労強度の低いインプラントと骨との界面の形成を含む。
【0006】
整形外科用インプラントへの組織内部成長を向上させるために一般的に使用される方法は、グリットブラストまたはサンドブラストとも称されるインプラント表面の研磨粒子ブラストである。この方法は、インプラント表面上に研磨粒子をブラストすることによってミクロン規模の表面構造を与える。このような粗面化された表面は、細胞接着を促進し、その結果インプラントと骨との物理的結合を向上させることが示されている。さらに、粗面化された表面の領域の拡大は、インプラントと骨との物理的結合を向上させるインプラントと骨との界面により多くの細胞が接着することができることを意味する。このような修飾されたインプラントと骨との界面を有するインプラントは、低品質の骨においても優れた骨統合特性を示す。
【0007】
しかしながら、研磨粒子ブラスト方法は、インプラントの表面上の金属成分を損傷することによって表面トポグラフィーに著しい変化を発生させ得る。研磨粒子ブラスト方法はまた、インプラントの表面に組み込まれた研磨粒子の存在のために、表面化学の不均一性を引き起こし得る。研磨粒子の存在は、インプランとの表面を汚染し、インプランと骨との界面の品質に悪影響を及ぼす。さらに、研磨粒子はインプランとの表面から脱離する可能性があり、骨、インプラント及び移植箇所の磨耗の増加につながる。
【0008】
さらに、一定の割合のインプラントの表面から脱離する組み込まれた研磨粒子は、局所的微動、移植箇所に対するインプラントの移動、及びインプランとの表面における組織内部成長の中断を引き起こす。グリットブラストを施されたインプラントの最大40%の表面積が、インプラントと骨との界面の問題、インプラントの生体適合性の低下、及びインプラント近くの領域の炎症を引き起こし得る研磨粒子で汚染され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、研磨粒子が組み込まれた表面によって引き起こされる汚染が減少したかまたは存在しない拡大されたインプラントと骨との界面層を有するインプラントを提供することである。インプラントと骨との界面は、移植されたときに骨と接するまたは隣接して配置されるインプラントの表面である。本発明の目的はさらに、骨伝導性及び骨誘導性が向上した生体活性、多孔質及びナノ構造の表面層を有するインプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の第1側面によると、金属または金属合金基板と、基板の表面上に形成された一次層と、を備えたインプラントに適した材料を提供する。驚くべきことに、本発明による基板の表面積より大きな表面積を有する一次層は、骨が表面上に形成されることを(非常に)促進することがわかった。その結果、骨形成が増加してインプラント上に確実に固定され、移植手術からの回復速度及びインプラントが固定される全体的な成功率の両方に関して移植の成功率が上昇する。
【0011】
使用する際には、インプラントの一次層の表面は骨または骨セメントに接する。その結果、一次層、またはより厳密には一次層の表面は、インプラントと骨との界面を提供する。一次層の表面積の増加は、より大きな表面積が周囲の細胞/セメントに提示されるため、材料つまりインプラントとの一体化が向上することを意味する。
【0012】
本発明の第2側面は、第1側面の材料を形成する方法を提供し、当該方法は、金属または金属合金基板を提供する段階と、一次層によって被覆される基板の表面積より大きな表面積を有する一次層を基板の表面上に形成する段階と、を含む。
【0013】
好ましくは、基板は遷移金属、遷移金属合金または遷移金属酸化物、例えばチタン、TiAlNbまたは酸化チタンを含む。チタン及びその合金は、その高い硬度および優れた生体適合性のために、整形外科用インプラントに理想的に適している。基板は、任意でコバルト・クロム、研磨ジルコニウム、オキシニウム(酸化ジルコニウム)、ステンレス鋼、タンタルまたはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。本発明による基板は、いかなる金属または金属合金、または金属酸化物、またはこれらの組み合わせも含んでよいが、チタンを含むと適切である。
【0014】
好ましくは、金属基板上に一次層を形成する段階は基板の表面を物理的に変化させる段階を含む。基板の表面を物理的に変化させる段階は、基板の表面を粗面化し、その結果表面積が増加する。一次層または粗い層は、細胞接着、ひいてはインプラントの骨または移植箇所へ物理的結合を促進する。一次層が提示する粗面化された表面は、一次層によって被覆される基板の表面積より著しく大きな表面積を提供する。
【0015】
一次層を形成するために基板の表面を物理的に変化させる段階は、例えば機械加工、サンドブラストまたはグリットブラスト、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。好ましくは、物理的に変化させる段階は、基板の表面にアルミナなどの研磨粒子でグリットブラストを施す段階を含む。その結果形成される一次層は、細胞接着が可能な表面積を増加させる粗い不均一な突起、凹部、くぼみ及び溝表面性状を提示する。
【0016】
また、基板を物理的に変化させる段階は、例えば金属ビーズの被膜を基板の表面に接着するようなマクロまたはミクロ物理的表面処理を含んでよい。ビーズは、基板の表面上に3D多孔質形状を形成して、被膜によって被覆される基板の表面よりも大きな表面積を有する一次層を提供する。好ましくは、一次層は、基板の表面上に焼結された2層または2層のビーズ層を含む。好ましくは、ビーズはチタンビーズであり、平均直径328μmを有する。
【0017】
変形または追加として、被膜はスポンジまたはフォーム状の金属繊維及び/またはワイヤのネットワークを含んでよい。また、基板自体が、基板の表面を物理的処理する必要のない多孔質またはスポンジ状であることができる。好ましくは、フォームまたはスポンジ状構造は、直径15から50μm、細孔径数百ミクロンから約1mmを有する焼結ビーズからなる。
【0018】
さらに、一次層の物理的形成に続いて、一次層を形成または完成する方法は理想的に、物理的に形成された一次層の化学的処理を含む。物理的に形成された一次層を化学的に処理する段階は、基板を約30から90℃のアルカリ性溶液中に浸漬する段階を含む。チタンまたはチタン合金は、アルカリ性溶液と反応してチタン酸アルカリを形成する。従って、完成した一次層の表面は、チタン酸アルカリを含む。典型的に、完成した一次層の表面はまた、酸化チタンを含む。
【0019】
好ましくは、アルカリ性溶液の温度は50から70℃であり、さらに好ましくは55から65℃である。
【0020】
基板またはアルカリ性溶液をより高温に加熱すると、形成される一次層の品質を低下させることが認められている。例えば、基板またはアルカリ性溶液が150℃を超えて加熱される場合、ミクロン規模の厚さのチタン酸アルカリの堆積物を有する一次層が形成され得る。チタン酸アルカリ堆積物または層が厚いほど、チタン酸アルカリ層の剥離または亀裂のリスクが高まる。その結果、インプラントを骨に結合させて実際にインプラントと骨との界面を形成するチタン酸アルカリ層は弱く、最終的に骨からインプラントが分離し得る。
【0021】
好ましくは、基板はアルカリ性溶液中に1から24時間浸漬される。典型的には、浸漬時間は1から5時間であるが、好ましくは1から3時間である。5時間を越えて、特に24時間を越えて浸漬するとまた、ミクロン規模の厚さを有する一次層が形成されることが認められている。
【0022】
チタン酸アルカリ層は、チタン酸アルカリのナノ構造を有する表面を一次層に付与する。ナノ構造またはナノ形状表面は一般的に、ナノメートル範囲内のサイズの粒子または成分を含む表面を意味する。チタン酸アルカリのナノ構造は、1から20ナノメートル(nm)の幅を有するチタン酸アルカリの繊維または線維に構造的に類似した離散要素を含む束状形態に類似している。線維は一般的に円柱形状である。
【0023】
典型的に、線維の長さは200から300nmの範囲であり、線維間の距離は5nmから80nmの範囲である。線維は一般的に次々に重なり合うかまたは積層されてチタン酸アルカリ層または表面を形成する。好ましくは、チタン酸アルカリ層の厚さは100から500ナノメートルの範囲にあり、より好ましくは、100から300ナノメートルである。
【0024】
物理的処理段階は、チタン酸アルカリナノ構造の形成に備えて、表面積が増加した一次層を形成する。ナノ構造のチタン酸アルカリ層は、一次層を完成させて一次層の表面積、つまり細胞の接着及び一体化が可能なインプラントと骨との界面の表面積を著しく増加させる。チタン酸アルカリ層はさらに、インプラントと骨との界面にある研磨粒子の存在によって生じる悪影響を覆い隠す。
【0025】
好ましくは、一次層は、一次層によって被覆される基板の表面積より1000から50000倍大きな表面積を有する。さらに好ましくは、一次層は、一次層によって被覆される基板の表面積より40000から50000倍大きな表面積を有する。
【0026】
典型的に、アルカリ性溶液は水酸化物を含む。好ましくは、水酸化物は水酸化ナトリウムである。本発明では、例えば水酸化リチウムまたは水酸化カリウムあるいは任意のその他適当な金属水酸化物など、その他の水酸化物を使用することもできる。この場合、一次層のチタン酸アルカリナノ構造は、チタン酸ナトリウムであり得る。チタン酸ナトリウムは、イオン交換化学によって容易に、チタン酸リチウムまたはチタン酸ストロンチウムなど、異なる用途に適する異なる物理化学または生体適合性特性をもたらすために、他の化合物に変更することができるイオン化合物である。水酸化物溶液の濃度は、好ましくは2から8モルであり、さらに好ましくは3から6モルであり、理想的には4モルである。水酸化物の濃度がより高ければ、ナノ構造の再分解をもたらし得る。
【0027】
形成される一次層は典型的に、本来親水性である。これは一般的に、一次層を完成させる化学処理段階に起因するものである。材料の親水性の性質は、その表面上に形成する水接触角によって測定される。接触角が小さいほど材料の親水性は高い。好ましくは、一次層の接触角は5°未満であり、さらに好ましくは3°未満である。
【0028】
好ましくは、一次層は可視光に対して低い反射率を有する。典型的に、一次層は可視光に対して1%から20%の範囲の反射率を有する。さらに好ましくは、一次層は可視光に対して5%から15%の反射率を有し、理想的には6%から10%の範囲である。この反射率の範囲で、一次層は黒色を呈する。
【0029】
好ましくは、一次層は例えばカルシウムヒドロキシアパタイトなど、ヒドロキシアパタイトを含む。典型的に、ヒドロキシアパタイトは混合された緩衝塩に材料を浸漬することによって一次層中に組み込まれる。
【0030】
材料は向上したインプラントと骨との一体化のための医療及び歯科インプラントの両方において使用され得る。さらに厳密には、材料は例えば膝関節、股関節及び肩関節プロテーゼ、大腿骨頸部置換、脊椎置換及び修復、頸部骨置換及び修復、顎骨修復、固定及び増生、移植骨固定、及びその他の義肢などを含む骨置換インプラントにおいて使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】チタン合金表面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図2】図1のチタン合金表面にアルミナ粒子でグリットブラストを施した後のSEMである。
【図3】チタン合金の多孔質ビーズ化表面のSEMである。
【図4】チタン合金の焼結ビーズフォーム表面のSEMである。
【図5a】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後のチタン合金表面のSEMである。
【図5b】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の2M(2モル)水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5c】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の3M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5d】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5e】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の6M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5f】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の8M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図5g】図5aのチタン合金表面のサンプルを60℃の10M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。
【図6a】60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬したアルミナグリットブラストチタン合金表面のSEMである。
【図6b】60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬したチタン多孔質ビーズ化合金表面のSEMである。
【図6c】60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬したチタン焼結ビーズフォーム表面のSEMである。
【図7】図6bのチタン合金表面の拡大図である。
【図8】図6cのチタン合金表面の拡大図である。
【図9】一次層を形成する前の多孔質ビーズ化チタン表面のSEMである。
【図10】超音波水浴において60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬することによって一次層が形成された図9の多孔質ビーズ化チタン表面のSEMである。
【図11a】60℃の2M水酸化ナトリウム溶液に10分間浸漬した図9の多孔質ビーズチタン表面のSEMである。
【図11b】1から20ナノメートルの範囲のサイズを有するナノサイズ線維を含むナノ構造の一次層の初期形成をより明確に示す図11aの多孔質ビーズチタン表面を拡大したSEMである。
【図11c】ナノ構造一次層の発達を明確に示す60℃の2M水酸化ナトリウム溶液にさらに15分間浸漬した図11aの多孔質ビーズチタン表面のSEMである。
【図11d】一次層の形成の不規則な性質を明確に示す図11aの多孔質ビーズ化チタン表面の異なる部分のSEMである。
【図12】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後に60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後の市販の純チタン表面のSEMである。
【図13a】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金の表面の領域を拡大したSEMである。SEMは形成された一次層の上部表面を分析するために2kVを採用した。
【図13b】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金の表面の領域を拡大したSEMである。SEMは形成された一次層の上部表面を分析するために2kVを採用した。
【図13c】アルミナ粒子でグリットブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金の表面の領域を拡大したSEMである。SEMは形成された一次層の上部表面を分析するために2kVを採用した。
【図14a】図13aのTiAlNb合金の表面の同一領域を60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。SEMは完成された一次層の上部構造を分析するために2kVを採用した。
【図14b】図13bのTiAlNb合金の表面の同一領域を60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。SEMは完成された一次層の上部構造を分析するために2kVを採用した。
【図14c】図13cのTiAlNb合金の表面の同一領域を60℃の4M水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後のSEMである。SEMは完成した一次層の上部構造を分析するために2kVを採用した。
【図15a】図14bのTiAlNb合金の表面の同一領域のSEMである。SEMは完成した一次層の下部構造を分析するために15kVを採用した。
【図15b】図14cのTiAlNb合金の表面の同一領域のSEMである。SEMは完成した一次層の下部構造を分析するために15kVを採用した。
【図16】異なる基板の一次層の表面からの反射率を示すグラフである。
【図17a】本発明による材料のサンプルの水酸化ナトリウムでの処理前の一次層を示す図である。
【図17b】本発明による材料のサンプルの水酸化安トリウムでの処理後の一次層を示す図である。
【図18】グリットブラストを施されたチタン断片を標準偏差のエラーバーでDNA(PicoGreen(登録商標))に正規化したp−NPPデータである。このデータは表2からのものである。
【図19】多孔質ビーズ化チタン断片を標準偏差のエラーバーでDNA(PicoGreen)に正規化したp−NPPデータである。このデータは表3からのものである。
【図20】研磨されたチタン断片を標準偏差のエラーバーでDNA(PicoGreen)に正規化したp−NPPデータである。このデータは表4からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、添付の図面を参照して本発明の実施形態を例示の目的で説明する。
【0033】
約40mm2から100mm2の範囲の表面積を有するさまざまなサイズのチタン合金板サンプルを洗浄及び乾燥して、サンプル基板を形成した。調製されたまたはサンプル基板表面は、ほぼ平滑である。これは、超高分解能走査型電子顕微鏡で撮影した基板表面を示す図1から最も明確に見られる。
【0034】
チタン合金基板上に形成された一次層を観察するために、浸漬光学系を使用した3kVで1.8nm、15kVで1nmの規定解像度を有する超高分解能走査型電子顕微鏡FEI Nova 200 NanoSEMを使用した。一次層の図または顕微鏡写真は、ナノスケールの細部を示す。しかしながら、当然その他の適切な方法及び装置を使用して一次層の表面細部を調査してもよい。
【0035】
調製された基板サンプルの表面は、アルミナグリットブラストとも称される研磨アルミナ粒子でブラストされた。アルミナグリットブラストは、グリットブラストを施す前に、調製された基板の表面積より大きな表面積を有する一次層を形成または部分的に形成している基板の表面を粗面化する。これは、図2及び5aにおいて最も明確に見られる。一次層は、部分的に一次層が形成された基板を、60℃の4モル水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬することによって完成した。図5bは、ナノスケールのサイズを有するチタン酸ナトリウムの束状構造、繊維または線維の発達を明確に示す完成した一次層の図である。これらの線維の直径または幅は、1から20ナノメートルの範囲内にある。線維のおよそ80%が5から12ナノメートルの範囲の直径を有することが測定された。線維の長さは、200から300ナノメートルである。
【0036】
調製された基板の5サンプルにアルミナグリットブラストをさらに施し、それぞれ濃度3モル、4モル、6モル、8モル及び10モル、60℃の水酸化ナトリウム溶液中に2時間浸漬した。図5cから5gはそれぞれの条件で形成された完成された一次層の図である。図5cから5gにおいて見られるように、基板を4モルの水酸化ナトリウム溶液に浸漬した場合に、最も良好なエッチング、微細構造またはナノ構造、あるいは最も高い密度の線維構造が観察された。線維構造の密度が高いほど一次層の表面積は大きくなる。より高濃度の水酸化ナトリウムでの処理は、効果が低く、一次層のナノ構造の再溶解につながり、結果として滑らかな表面となり、表面積が低下した。
【0037】
図6aから6cは、開始基板つまり初期微細構成がそれぞれ異なるような本発明による方法で形成された一次層の図である。図6aは、研磨アルミナ粒子でブラストを施され、続いて60℃、濃度4モルの水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬することによって化学的に処理された固体チタン合金基板の表面上に形成された一次層の図である。図6b及び図6cは、それぞれ多孔質ビーズチタン基板及びチタンフォーム基板上に形成された一次層の図である。両者は固体チタン合金基板と同じ方法で化学的に処理した。
【0038】
多孔質ビーズチタン基板及びチタンフォーム基板には、固体チタン合金基板の場合のような物理的処理を施していない。開始基板の表面積が大きいほど形成される一次層の表面積が大きくなることが認められた。図6aから6cにおいて非常に明確に見られるように、最も大きな開始基板表面積を有するチタンフォーム基板の場合に形成された線維が最も微細であり、線維形成密度が最も高く、最も大きな一次層表面積を示した。図9は、一次層が完成する前の段階の多孔質ビーズチタン合金表面の一部分のSEMである。図11aから11dは、60℃の2モル水酸化ナトリウム溶液に浸漬した場合の一次層の経時発達を図示する。
【0039】
図13aから13cは、アルミナ粒子でブラストを施した後で、水酸化ナトリウムに浸漬する前のTiAlNb合金表面の領域を拡大した(それぞれ200、500及び1200倍拡大)SEMである。SEMは、完成した一次層の上部構造を解析するために2kVビームを採用した。図14aから14cは、それぞれ60℃の4モル水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬した後の図13aから13cのTiAlNbの表面の同一領域及び同一倍率のSEMである。SEMは、結果として形成された一次層の上部構造を解析するために2kVビームを採用した。図15a及び15bは、それぞれ図13b及び13cのTiAlNb合金の表面の同一領域及び同一倍率のSEMである。SEMは、形成された一次層の下部構造を解析するために15kVビームを採用した。
【0040】
一次層の表面トポグラフィー及びアルミナ含有量を分析するために、水酸化ナトリウム溶液中に基板を浸漬する前後の一次層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で分析した。この方法は、一次層の表面を分析することが可能な異なる電圧で実施することができ、電圧が高いほどビームは深く侵入する。チタン合金は、アルミナよりも大きな平均原子数を有する。SEMを使用して分析される物質の平均原子数が大きいほど電子の後方散乱が大きくなり、SEM画像はより明るくなる。
【0041】
アルミナは、チタン合金よりも小さな平均原子数を有するため、アルミナを含むチタン合金のSEM画像はアルミナを含まないチタン合金よりも暗くなる。アルミナグリットブラストを施す前のチタン合金基板を示す図1と、例えばアルミナグリットブラスト後のチタン合金基板を示す図13aから13cとを比較すると、一次層を形成している基板の表面にかなりの量のアルミナが組み込まれたことは明確である。図14aから14cは、上記のように水酸化ナトリウムでの化学処理によって完成された図13aから13cの一次層を表す。形成されたチタン酸ナトリウム層が一次層の上部表面に存在するアルミナ粒子を覆うため、図14aから14cに示された一次層のSEM画像は図13aから13cに示された一次層のSEM画像よりも明るいことがわかる。チタン酸ナトリウムは、アルミナよりも大きな平均原子数を有するため、完成された一次層のSEM画像は、アルミナグリットブラストによって形成された一次層及び水酸化ナトリウムでの処理前の一次層よりも明るく現れる。
【0042】
高電圧のSEM画像は、明らかに暗く、上部表面領域よりもアルミナ含有量の多い一次層の表面の組成を示す。しかしながら、一次層の表面への研磨粒子の混入は骨とインプラントとの間に形成される結合にほとんど影響を与えないため、インプラントと骨との界面を形成して骨と直接接する一次層の上部表面におけるアルミナ粒子を覆うことが重要である。
【0043】
4モルの水酸化ナトリウムでの処理前後におけるいくつかの基板の反射率も分析した。以下の表1からわかるように、一次層の表面積が大きいほど可視光が反射されにくいことが明らかである。最も大きな表面積を有する一次層を形成したチタンフォーム基板は、可視光の5から10%しか反射しなかった。完成した一次層はいずれも裸眼で黒色に見える。
【0044】
【表1】
【0045】
異なる前処理段階(グリットブラスト、研磨、多孔質ビーズ化)を有するサンプルチタン材料、チタン合金断片を、それぞれ別の種類及び前処理と、並びに化学処理しないものと比較して、アルカリ性溶液での化学処理後の表面上の骨形成活性において比較した。
【0046】
アルカリ性溶液は、60℃の4モル水酸化ナトリウム溶液、2時間である(前述の通り)。
【0047】
チタン合金断片の前処理は、当技術分野で周知のように、表面研磨、グリットブラスト、及び多孔質ビーズ化である。
【0048】
化学処理後、断片上のいかなる流体もテスト表面上に維持されるように、チタン合金断片を個別のシリコーン管に挿入した。
【0049】
ヒト間葉幹細胞を適当な媒体において再生及び継代し、一晩培養した。培養後、媒体をβ‐グリセロリン酸塩を含有する骨形成媒体と置き換え、これを1週間に2回交換した。
【0050】
全ての表面の種類において全時点で、細胞上へのライブ/デッドステイニングを実施した。
【0051】
望ましい細胞の骨形成活性、ひいては骨形成に対する細胞溶解及びP‐ニトロフェノールアルカリ性リン酸塩p‐NPPアッセイ分析をサンプルに実施した。
【0052】
アルカリ性溶液処理されたグリットブラスト前処理断片をアルカリ性溶液処理されていないものと比較した結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
結果は、断片が例えばアルカリ性溶液で化学処理された場合のほうが化学処理されていな場合より骨形成活性が高いことを示している。
【0057】
当然ながら、一次層は抗菌剤を含むさまざまな生体活性物質を含んでよい。また、当然ながら、インプラントに抗生物付着、細胞発生、触媒、骨形成または電気化学特性を与えるために一次層をさらに処理してよい。
【0058】
当然ながら、基板は、チタンの代わりに例えばニチノールまたはジルコニウムなどの別の金属または合金を含んでよい。
【0059】
一次層の表面特性を向上または強化するために、形成される材料にさらなる物理的処理段階が施され得ることが想定される。例えば、一次層の完成において、アルカリを除去するために材料を水またはリン酸緩衝整理食塩水で洗浄することができる。材料を乾燥させた後、300から600℃の目標温度まで加熱することができる。目標温度には、1分間に5℃材料の温度を上昇させることによって到達することができる。目標温度に達すると、少なくとも1時間維持することができる。
【0060】
当然のことながら、本発明はここで説明された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内において構成及び詳細を変更することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または金属合金基板と、前記基板の表面上に形成された一次層と、を備えたインプラントに適した材料であって、前記一次層が前記基板の表面積より大きな表面積を有することを特徴とする材料。
【請求項2】
前記金属が、遷移金属であり、特にチタンであることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記一次層が、チタン酸アルカリ及び/または酸化チタンの堆積物を含むことを特徴とする請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記堆積物の厚さが、100から500ナノメートルであることを特徴とする請求項3に記載の材料。
【請求項5】
前記一次層が、2から20ナノメートルの範囲の幅を有するチタン酸アルカリの離散要素または線維を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の材料。
【請求項6】
前記一次層が、可視光に対して1%から20%の範囲の反射率を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
前記一次層が、黒色であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記一次層が、前記基板の表面積より1000から50000倍大きな表面積を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記一次層が、5°未満の水接触角を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
添付の図面を参照して以上に記載され、添付の図面に示された材料。
【請求項11】
金属または金属合金基板を提供する段階と、
前記基板の表面より大きな表面積を有する一次層を前記基板の表面上に形成する段階と、
を含むことを特徴とする材料の形成方法。
【請求項12】
前記基板上に前記一次層を形成する段階が、前記基板の表面を物理的に変化させる段階を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の表面を物理的に変化させる段階が、研磨粒子で前記表面をブラストする段階を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板上に一次層を形成する段階が、前記基板の表面を化学的に処理する段階を含むことを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板の表面を化学的に処理する段階が、前記基板を約30〜90℃のアルカリ性溶液に浸漬する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ性溶液が、水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ性溶液が、1から6モルの濃度を有することを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項11から17のいずれか一項に記載の方法で形成された材料。
【請求項19】
請求項1から10または請求項18のいずれか一項に記載の材料を含む骨の修復または代替骨としての使用に適したインプラント。
【請求項20】
前記アルカリ性溶液が、2から4モルの濃度を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記アルカリ性溶液が、水酸化ナトリウムを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項1】
金属または金属合金基板と、前記基板の表面上に形成された一次層と、を備えたインプラントに適した材料であって、前記一次層が前記基板の表面積より大きな表面積を有することを特徴とする材料。
【請求項2】
前記金属が、遷移金属であり、特にチタンであることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記一次層が、チタン酸アルカリ及び/または酸化チタンの堆積物を含むことを特徴とする請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記堆積物の厚さが、100から500ナノメートルであることを特徴とする請求項3に記載の材料。
【請求項5】
前記一次層が、2から20ナノメートルの範囲の幅を有するチタン酸アルカリの離散要素または線維を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の材料。
【請求項6】
前記一次層が、可視光に対して1%から20%の範囲の反射率を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
前記一次層が、黒色であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記一次層が、前記基板の表面積より1000から50000倍大きな表面積を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記一次層が、5°未満の水接触角を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
添付の図面を参照して以上に記載され、添付の図面に示された材料。
【請求項11】
金属または金属合金基板を提供する段階と、
前記基板の表面より大きな表面積を有する一次層を前記基板の表面上に形成する段階と、
を含むことを特徴とする材料の形成方法。
【請求項12】
前記基板上に前記一次層を形成する段階が、前記基板の表面を物理的に変化させる段階を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の表面を物理的に変化させる段階が、研磨粒子で前記表面をブラストする段階を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板上に一次層を形成する段階が、前記基板の表面を化学的に処理する段階を含むことを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板の表面を化学的に処理する段階が、前記基板を約30〜90℃のアルカリ性溶液に浸漬する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ性溶液が、水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ性溶液が、1から6モルの濃度を有することを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項11から17のいずれか一項に記載の方法で形成された材料。
【請求項19】
請求項1から10または請求項18のいずれか一項に記載の材料を含む骨の修復または代替骨としての使用に適したインプラント。
【請求項20】
前記アルカリ性溶液が、2から4モルの濃度を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記アルカリ性溶液が、水酸化ナトリウムを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15a】
【図15b】
【図17a】
【図17b】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15a】
【図15b】
【図17a】
【図17b】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−536451(P2010−536451A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521471(P2010−521471)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002814
【国際公開番号】WO2009/024778
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002814
【国際公開番号】WO2009/024778
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
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