説明

生体液採取器具

【課題】生体液の採取効率の向上により、被験者の肉体的、精神的負担を軽減し得る生体液採取器具を提供すること。
【解決手段】生体液採取器具1は、貫通穴120を穿孔してなり、かつ、貫通穴120に連通すると共に他方の端部が外部に開口するスリット状の切り欠きである開口スリット121を形成してなるシート状のベースシート12と、少なくとも開口スリット121に重なるようにベースシート12の両面側に積層したシート状の2枚のカバーシート11、13と、この2枚のカバーシート11、13の間隙において開口スリット121が形成する管状の開口通路と、開口通路に配置された吸収体15とを備えている。2枚のカバーシート11、13のうちの少なくも一方は、貫通穴120と積層方向に連通する第2の貫通穴128を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲で生体液を採取するための生体液採取器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被験者の精神的、肉体的な負担の軽減を目的として、被験者の身体を傷つけることなく非侵襲で生体液を採取する生体液採取器具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、糖尿病において重要な血糖値は、唾液や歯肉溝液に含まれるグルコース濃度と高い相関を有している(例えば、特許文献2参照。)。そこで、上記の生体液採取器具では、生体液としての唾液あるいは歯肉溝液を採取することで、非侵襲による血糖値の間接的な測定を可能としている。
【0003】
上記の生体液採取器具は、外部に開口する管状のキャピラリと、試験紙を収容した収容部とを有し、キャピラリが収容部に連通するように構成されたものである。この生体液採取器具では、上記キャピラリが毛細管として機能する。そして、上記生体液採取器具は、上記キャピラリが奏する毛細管現象を利用して生体液を吸い上げ、上記試験紙に供給するように構成されている。
【0004】
しかしながら、上記従来の生体液採取器具には、次のような問題がある。すなわち、上記キャピラリを介して生体液が上記試験紙に供給されるまでに長時間を要し、被験者の負担を十分に軽減できないおそれがあるという問題がある。さらに、上記生体液採取器具では、上記キャピラリの内容積に相当する量の上記生体液が、上記試験紙に供給されずに無駄になっている。そのため、例えば、歯肉溝液など、微小量しか存在しない生体液を採取する際、採取のやり直しが起こり易く、被験者の負担を十分に軽減できないおそれがあるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−131314号公報
【特許文献2】特開2001−201437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の問題点を鑑みてなされたものであり、非侵襲の生体液採取器具において、生体液の採取効率の向上により、被験者の肉体的、精神的負担を軽減し得る生体液採取器具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生体液を採取するための生体液採取器具であって、
貫通穴を穿孔してなり、かつ、該貫通穴に連通すると共に他方の端部が外部に開口するスリット状の切り欠きである開口スリットを形成してなるシート状のベースシートと、
少なくとも上記開口スリットに重なるように上記ベースシートの両面側に積層したシート状の2枚のカバーシートと、
該2枚のカバーシートの間隙において上記開口スリットが形成する管状の開口通路と、
該開口通路に配設され、上記生体液を吸収するように構成した吸収体とを有しており、
上記2枚のカバーシートのうちの少なくも一方は、上記貫通穴と積層方向に連通する第2の貫通穴を有していることを特徴とする生体液採取器具にある(請求項1)。
【0008】
本発明の上記生体液採取器具では、上記管状の開口通路自体に上記吸収体が配置されている。そして、上記開口通路は、その一方の端部が上記生体液採取器具の外部に開口すると共に、他方の端部が上記貫通穴及び上記第2の貫通穴を経由して外部に連通している。
【0009】
上記生体液採取器具では、上記ベースシートの厚さに相当する薄い管状の上記開口通路が、いわば毛細管として作用する。そして、この開口通路が奏する毛細管現象により、上記生体液を吸い上げることができる。さらに、上記のごとく、上記生体液採取器具では、上記開口通路自体に上記吸収体を配置してある。そして、この吸収体が奏する吸収力を活用して、上記生体液を採取することができる。
【0010】
そのため、上記生体液採取器具によれば、上記開口通路の開口端を上記生体液に浸した直後に、上記のような上記毛細管現象による吸い上げ力と上記吸収体の奏する吸収力とを活用して極めて迅速に上記生体液を採取することができる。したがって、本発明の生体液採取器具を用いれば、上記生体液を採取するのに要する時間が短縮できる。それ故、上記生体液採取器具を利用すれば、採取時間を短縮して被験者の負担を軽減させることができる。
【0011】
また、上記生体液採取器具では、上記開口通路自体に上記吸収体を配設してある。そのため、上位生体液を採取する開口である採取口から上記吸収体に至るまでの経路長がをゼロに近い。そのため、この生体液採取器具では、採取した上記生体液のうち、検査等に利用されない上記生体液の割合を低減させることができる。したがって、本発明の生体液採取器具を用いれば、例えば、歯肉溝液など、存在量が少ない生体液を効率良く採取することができる。それ故、採取のやり直しの発生を低減して、被験者の負担を軽減させることができる。
【0012】
以上ように、本発明の生体液採取器具は、生体液の採取効率を向上することにより、被験者の精神的、肉体的な負担を軽減し得る優れた特性を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においては、上記吸収体としては、濾紙、界面活性処理したニトロセルロースやナイロン6,6等のメンブレン等を用いることができる。さらに、例えば、水や界面活性剤を含有する溶媒中にセルロース、ニトロセルロース、ナイロン6,6、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール等の高分子体を分散させた液体を上記開口通路に充填し、その後、その溶媒を乾燥除去することにより上記吸収体を形成することもできる。この場合には、上記ベースシートと上記カバーシートとを積層した後に、上記吸収体を形成できる。
【0014】
また、上記ベースシート及び上記カバーシートの材質としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン等を用いることができる。そして、上記ベースシートと上記カバーシートとの間の接合方法としては、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など、生体に対して刺激が少なく無害な接着剤を用いた接着接合や、超音波接合等による溶着接合などの方法を適用することができる。
【0015】
また、上記吸収体は、上記生体液を吸収したときに光透過率が変化するように構成してあり、上記2枚のカバーシートのうちの少なくとも一方は、透明又は半透明であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記吸収体の光透過率の変化を視認することで、上記生体液の採取が完了したことを確認できる。それ故、上記生体液の採取が完了した後、直ちに採取作業を終了できる。したがって、採取に要する時間を抑制して、被験者の負担を一層、低減させることができる。
【0016】
なお、上記生体液の吸収により光透過率が変化する上記吸収体としては、濾紙、セルロース不織布、ニトロセルロース不織布、ナイロン6,6不織布、ポリエステル不織布、ポリカーボネート不織布等がある。濾紙や、不織布等は、上記生体液を吸収することにより光透過率が大きくなり、半透明状態に近づく特性を有している。逆に、上記生体液を吸収することで光透過率が小さくなり、半透明状態から離れていく特性を備えた素材を、上記吸収体として採用することもできる。
【0017】
また、上記2枚のカバーシートのうち、一方のカバーシートが透明又は半透明であり、かつ、他方のカバーシートは、上記吸収体に当接する積層面側から視認可能な模様を有していることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記他方のカバーシートの上記模様の見え方の変化に基づいて、上記吸収体が上記生体液を採取したか否かを確認することができる。上記他方のカバーシートの上記模様としては、○印等の記号を表すものや、色の塗り分けや、上記吸収体とは異なる色彩による単色の塗り潰しによるもの等がある。そして、吸収体の光透過率が変化すれば、それに伴って上記のような模様が見えるように変化、あるいは、見えないように変化する。
【0018】
また、上記吸収体は、上記生体液中の特定成分に対して呈色反応を呈するように構成した呈色試験紙よりなり、上記2枚のカバーシートのうちの少なくとも一方は、透明又は半透明であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記吸収体の色の変化に基づいて、上記生体液を利用した検査を行うことができる。
【0019】
ここで、上記呈色試験紙としては、例えば、歯肉溝液中の特性成分に対する触媒作用により呈色反応するN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン及び酸化還元酵素を含浸させた酵素試験紙を用いることができる。このとき、呈色試薬としては、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、3,3'-ジアミノベンジジン四塩酸塩、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、N,N'-ビス(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)トルイジン,二ナトリウム塩、N,N'-ビス(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)トリジン,二ナトリウム塩、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン二塩酸塩、N-(3-スルフォプロピル)-3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン, ナトリウム塩、N,N,N',N',N",N"-ヘキサ(3-スルホプロピル)-4,4',4"-トリアミノトリフェニルメタン, 六ナトリウム塩等を用いることができる。さらに、上記呈色試験紙としては、例えば、抗HIV−1免疫グロブリン抗体、ガン随伴遺伝子産物、抗ALZAS免疫グロブリン抗体、肝炎s抗原、ピロリ菌抗体、好中球エラスターゼなどの抗原抗体反応試薬を有する試験紙等を用いることも良い。
【0020】
また、上記ベースシートは、上記貫通穴に連通すると共に他方の端部が上記ベースシートの内周側に位置するスリット状の切り欠きである閉塞スリットを有し、該閉塞スリットが上記2枚のカバーシートの間隙において閉塞通路を形成しており、該閉塞通路には、上記吸収体と略同一の特性を備えた第2の吸収体を配設してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記生体液の吸収しない上記第2の吸収体の状態を参照して、上記開口通路の吸収体の状態を精度良く確認することができる。
【0021】
また、上記貫通穴を穿孔する前の上記ベースシートについて、スリット状の切り欠きであるスリット溝を形成するスリット形成工程と、
上記スリット溝に上記吸収体を配置した状態で、上記ベースシートの両面に上記2枚のカバーシートを積層して、中間加工品としての積層シート体を得る積層工程と、
上記スリット溝を分断するように上記貫通穴及び上記第2の貫通穴を形成することにより、上記開口通路及び上記閉塞通路を形成する穿孔工程とを実施して作製したものであることが好ましい(請求項6)。
【0022】
この場合には、上記積層シート体に対して、上記穿孔工程を実施することにより、上記吸収体と上記第2の吸収体とが独立して配設された上記生体液採取器具を、極めて生産効率良く作製することができる。
【0023】
また、上記開口通路の内容積は、50nl以上1μl以下であることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記開口通路の内容積に相当する微小体積の上記生体液を精度良く採取することができる。対象とする上記生体液の存在量に対して、上記開口通路の内容積を適合させておけば、上記生体液を一層確実性高く採取することができる。例えば、歯肉溝液の場合、歯一本当たりの存在量はおよそ50nl(ナノリットル)から1μl(マイクロリットル)である。そこで、上記開口通路の内容積を上記の範囲に設定することで、例えば、歯肉溝液の採取を効率良く実施し得る。
【0024】
なお、上記開口通路の内容積が50nl未満であると、成分分析に必要な量の上記生体液を採取できず、分析作業の難易度が高くなるおそれがある。一方、上記開口通路の内容積が1μlを超えると、例えば、歯肉溝液など、存在量が微小な生体液を短時間に採取できなくなるおそれがある。
【0025】
さらになお、例えば、生体液としての唾液を採取する場合には、上記開口通路の内容積を0.5μl以上100μl以下とするのが良い。この場合には、唾液を短時間に採取でき、かつ、採取した唾液を利用して精度良く成分分析を実施することができる。なお、上記開口通路の内容積を0.5μl未満とすると、唾液など、成分濃度が低い生体液では、分析精度が低下するおそれがある。一方、上記内容積が100μlを超えると、例えば、短時間に唾液を採取することができず、被検者の負担が増大するおそれがある。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
本例は、生体液としての歯肉溝液を採取するための生体液採取器具1に関する例である。この内容について、図1〜図5を用いて説明する。
本例の生体液採取器具1は、図1及び図2に示すごとく、歯肉溝液を採取するためのものである。
この生体液採取器具1は、貫通穴120を穿孔してなり、かつ、この貫通穴120に連通すると共に他方の端部が外部に開口するスリット状の切り欠きである開口スリット121を形成してなるシート状のベースシート12と、少なくとも開口スリット121に重なるようにベースシート12の両面側に積層したシート状の2枚のカバーシート11、13と、この2枚のカバーシート11、13の間隙において開口スリット121が形成する管状の開口通路14と、この開口通路14に配置され、歯肉溝液を吸収するように構成した吸収体15とを備えている。
ここで、上記の2枚のカバーシート11、13のうちの少なくも一方は、貫通穴120と積層方向に連通する第2の貫通穴128を設けてなる。
以下、この内容について詳しく説明する。
【0027】
本例の生体液採取器具1は、図1及び図2に示すごとく、全体として、5mm×31mmの略矩形シート状を呈している。この生体液採取器具1においては、その長手方向における一方の端部が、湾曲凸状の先窄まり形状を呈している。そして、その先端には、開口通路14が開口する採取口140が形成されている。本例では、略同一形状を呈する3枚のシート部材を積層して上記生体液採取器具1を構成してある。具体的には、透明ポリエステルよりなる透明のカバーシート11と、材質ポリエステルよりなる透明のベースシート12と、ポリエステルよりなる黒色のカバーシート13とを積層して上記の生体液採取器具1を形成した。
【0028】
この生体液採取器具1は、図2に示すごとく、上記の採取口140からd1=1.5mm奥まった中心軸線CL上の位置に、積層方向に貫通する貫通窓10を有している。本例では、この貫通窓10の形状を、□1.0mmの穴とした。そして、貫通窓10の両側には、中心軸線CLに沿って延設された管状の開口通路14と、管状の閉塞通路141とが形成されている。開口通路14は、上記のごとく、上記湾曲凸状の先端に形成された採取口140に開口している。また、閉塞通路141は、貫通窓10に対して反対側の端部が封止されている。そして、本例の生体液採取器具1においては、上記開口通路14に吸収体15としての濾紙(以下、濾紙15と記載する。)が配設され、上記閉塞通路141には上記第2の吸収体151としての濾紙(以下、濾紙151と記載する。)が配設されている。
【0029】
上記ベースシート12は、図1及び図2に示すごとく、厚さt2=0.120mmのシート部材であって、その両面に接着剤層を設けた両面粘着性のものである。なお、この接着剤層をなす接着剤としては、発がん性が低く、かつ、低刺激であって人体に無害のアクリル系粘着剤を用いた。これに代えて、合成ゴム系粘着剤等の接着剤を採用することもできる。
【0030】
このベースシート12の外形状は、図1に示すごとく、上記生体液採取器具1の外形状と略一致したものである。ベースシート12は、図3に示すごとく、湾曲凸状の先端から中心軸線CLに沿って延設された幅w1=1mm、長さl2=4mmのスリット状の切り欠きであるスリット溝123と、湾曲凸状の先端からd1=1.5mm奥まった中心軸線CL上の位置に穿孔された□1.0mmの貫通穴120とを有している。ここで、上記スリット溝123は、この貫通穴120により、先端側の開口スリット121と、内周側の閉塞スリット122とに分断されている。
【0031】
次に、一方のカバーシート13は、図1に示すごとく、ポリエステルよりなる厚さt3=0.038mmの黒色のシート部材である。そして、他方のカバーシート11は、ポリエステルよりなる厚さt1=0.038mmの透明のシート部材である。これらのカバーシート11、13は、上記スリット溝123を除いて、上記ベースシート12とほぼ同一の形状を有している。これらのカバーシート11、13は、上記ベースシート12の貫通穴120と積層方向に連通する第2の貫通穴128を有している。そして、上記生体液採取器具1においては、図2に示すごとく、貫通穴120と第2の貫通穴128とが積層方向に連通して、上記の貫通窓10が形成されている。
【0032】
吸収体としての濾紙15、151は、図1に示すごとく、セルロースよりなる、厚さ120μm、幅w2=1mmのものである。この濾紙15、151は、あたかも、濡れたTシャツのごとく、生体液を吸収して湿ったときに光透過率が大きくなり、透けて見えるような特性を有している。なお、上記吸収体としては、本例の濾紙15、151に代えて、セルロース不織布など、生体に対して無害であって、かつ、親水性を備えたものを適用することができる。なお、吸収体の材質として、親水性が十分でない材質を採用する場合には、例えば、ショ糖脂肪酸エステルなど、生体に無害の界面活性剤による前処理を施し、その親水性を向上させることができる。
【0033】
次に、本例の生体液採取器具1の構造をさらに明確に説明するため、図4及び図5を用いて生体液採取器具1を作製する手順について説明する。生体液採取器具1を作製するに当たっては、最終製品よりもひと回り大きいサイズのベースシートであるベースシート部材12m及び、同様のサイズのカバーシートである2枚のカバーシート部材11m、13mと、テープ状の濾紙テープ(図示略)を準備する。
【0034】
まず、図4に示すごとく、上記のベースシート部材12mについて、その中心軸線CLに沿うスリット状の切り欠きであるスリット溝123を形成するスリット形成工程を実施した。本例では、図示しないプレス型による打ち抜き加工により、上記のスリット溝123を形成した。
【0035】
次に、図4に示すごとく、上記のベースシート部材12mの両面にカバーシート部材11m、13mを接合する積層工程を実施した。この工程では、まず、スリット溝123を形成したベースシート部材12mに対して、黒色に着色したカバーシート部材13mを積層して接合した。このとき、スリット溝123に沿って、巻き出した上記濾紙テープを配置すると共に、ベースシート部材12mの端部に合わせて濾紙テープをカットした。これにより、スリット溝123に濾紙15mを配置した。
【0036】
その後、さらに、ベースシート部材12mの表面に、透明のカバーシート部材11mを積層して接合した。なお、本例では、両面に接着剤層を配設してなるベースシート部材12mと、カバーシート部材11m及び13mとを、図示しないプレス装置を用いて積層方向に加圧することで確実性高く接合した。これにより、3層構造をなす積層シート体1mを得た。ここで、上記の濾紙15mの厚さ及び、ベースシート部材12mの厚さt2は、120μmである。本例では、ベースシート部材12mの厚さに対して、濾紙15mの厚さをわずかに厚くしてある。それ故、濾紙15mは、2枚のカバーシート部材11m、13mの間において確実性高く保持される。
なお、ベースシート部材12mの接着剤層に代えて、カバーシート部材11m、13mの表面に接着剤層を設けることも良い。この場合には、カバーシート部材11m、13mの接着剤層が奏する接着力により、濾紙15mをさらに確実性高く保持できる。
【0037】
次に、中間加工品としての上記積層シート体1mについて、図5に示すごとく、上記貫通穴120及び上記貫通穴128よりなる貫通窓10を打ち抜く穿孔工程を実施した。本例では、図示しないプレス装置を用いて、所定の位置に□1.0mmの貫通窓10を穿孔した。さらに、本例では、図示しないプレス装置を用いて上記積層シートの外縁部を適宜、切断除去することで上記の生体液採取器具1を得た。特に、外縁部を切断除去することにより、先端の採取口140(図2参照。)を形成すれば、採取口140周辺の端面と、開口通路14に配設した濾紙15の端面とを精度良く面一にできる。
【0038】
次に、本例の生体液採取器具1を用いて歯肉溝液を採取する方法について説明する。この生体液採取器具1を用いて歯肉溝液を採取するに当たっては、上記採取口140が歯肉溝液に浸されるよう、湾曲凸状の先端を歯と歯茎の隙間である歯肉溝に挿入する。そうすると、微小な断面積の管状の開口通路14が奏する毛細管現象と、この開口通路14に収容された濾紙15自体の奏する吸収力とにより、歯肉溝液を速やかに吸い上げることができる。
【0039】
歯肉溝液を吸収した濾紙15は、あたかも濡れたTシャツのような状態となる。透明なカバーシート11の側から目視すると、透けた状態の濾紙15を介して、その裏面に積層されたカバーシート13の黒色が透けて見えるようになる。これにより、濾紙15は、その色が黒変したように視認される。このとき、閉塞通路141に収容した濾紙151は、歯肉溝液を吸収していない。そのため、閉塞通路141の濾紙151の状態を参照すれば、開口通路14の濾紙15の状態に基づいて歯肉溝液の採取の完了を容易、かつ、確実性高く判定することができる。
【0040】
なお、黒色に着色したカバーシート13に代えて、赤色や青色や緑色に着色したものを用いることもできる。乾燥状態の濾紙15の色に対して識別可能な色であれば、カバーシート13は何色に着色されていても良い。さらに、カバーシート13を白色に着色すると共に、開口通路14の濾紙15に対面する表面に黒線よりなる○印を印刷しておくのも良い。この場合には、黒線の○印が現れたことによって、生体液の採取を確認することができる。ここで、黒線の○印の模様に代えて、青色と赤色の塗り分け等の模様を採用することもできる。またさらに、透明のカバーシートを採用することもできる。この場合には、例えば、黒色や赤色の検査台紙上で、生体液採取器具を目視することで、生体液の採取が完了したか否かを容易に確認できる。
【0041】
ここで、参考として、本例の生体液採取器具1を用いて歯肉溝液を採取するのに要した時間を表1に示す。同表から知られるように、本例の生体液採取器具1では、上記特許文献1の採取器具を利用して歯肉溝液を採取した比較例と比べて、歯肉溝液の採取に要する時間が大幅に短縮されている(比較例に対して約1/5〜1/22の短時間での採取が可能である。)。
【0042】
【表1】

【0043】
(実施例2)
本例は、実施例1の生体液採取器具で採取した歯肉溝液を分析する方法に関する例である。この内容について、図6を用いて説明する。本例は、採取した歯肉溝液について、グルコースを分析した例である。
【0044】
採取した歯肉溝液を分析するに当たっては、生体液採取器具から取り出した濾紙から歯肉溝液を抽出して試験液とした。具体的には、200μL、4℃の蒸留水を加えた状態で濾紙を30分間保持することにより、歯肉溝液が抽出された試験液を得た。そして、この試験液にグルコース脱水素酵素(EC 1.1.1.118)、ジアホラーゼ (EC 1.8.1.4)、レザズリン (CAS No.53−84−9)、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(CAS No.53−84−9)等を適量加えた。
【0045】
このとき、図6に示すごとく、グルコース脱水素酵素の作用により、グルコースがδ−グルコラクトンになると共に、水素受容体としてのNAD+が水素を受容してNADHとなる。そして、このNADHは、ジアホラーゼの作用により、レザズリンに水素を供給する。その結果、レザズリンが水素を得て、蛍光物質であるレゾルフィンが生成される。そして、本例では、生成されたレゾルフィンの濃度を、マイクロプレート蛍光光度計(538nmの励振波長、584nmの蛍光波長)を用いて測定した。
【0046】
本例の生体液採取器具は、微小量の生体液を精度高く採取することができ、微小量の歯肉溝液の採取に適したものである。そして、微小量の生体液を分析するに当たっては、本例のごとく、分析対象の物質に基づいて蛍光物質を生成させ、その蛍光物質の量を蛍光分析によって計測する蛍光分析が適している。また、この蛍光分析に代えて、分析対象の物質に基づいて発光物質を生成させ、発生する光量を計測することで発光物質の量を計測する化学分析を採用することもできる。
【0047】
なお、本例では、分析対象をグルコースとしているが、基質、酵素、補酵素の組み合わせにより様々な生化学物質の測定が可能である。例えば、アルコール類を測定する場合には、アルコール脱水素酵素を用いることで、本例と同様、アルコール類の濃度測定が可能となる。
さらに、本例では、蛍光分析方法を用いたが、これに代えて、例えば、NADHにより還元されて色素(ホルマザン)を生じるテトラゾリウム塩等を利用した吸光分析方法を採用することもできる。
【0048】
(実施例3)
本例は、実施例1の生体液採取器具を基にして、吸収体として呈色試験紙を適用した例である。この内容について、図7及び図8を用いて説明する。
本例では、呈色試験紙として、歯肉溝液中のグルコースに呈色反応する酵素試験紙を用いた。この酵素試験紙は、クロモゲンとして、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩((C252NC64NH2・H2SO4)を利用したものである。ここで、この酵素試験紙の特性を明確にするため、その作製方法を説明する。
【0049】
図7を参照して、上記酵素試験紙を作製する手順について説明する。本例では、まず、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05グラムと、安定化剤としてのアルギン酸ナトリウム0.5グラムとを30ミリリットルの蒸留水に溶解させた溶液Aを得た。また、グルコースオキシダーゼ(GOD)とペルオキシダーゼ(POD)を10ミリリットルの蒸留水に加えて溶液Bを得た。
【0050】
さらに、40℃〜50℃の蒸留水30ミリリットルにゼラチン1.44グラムを加え、温度を保ったまま中性リン酸塩緩衝液(pH6.86)30ミリリットルを加えた溶液C−1と、40℃前後のホウ酸塩緩衝液(pH9.18)60ミリリットルにゼラチン1.44グラムを加えた溶液C−2とを作成し、溶液C−1、溶液C−2に、それぞれ、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩を添加した。
【0051】
次に、上記の溶液Aと溶液Bとを混合した混合溶液を、溶液C−1、溶液C−2に加えて、それぞれ、溶液D−1、溶液D−2を得た。そして最後に、溶液D−1、溶液D−2に、濾紙を60秒ディップさせたあと、35℃に保温した乾燥機の中で約2時間、温風乾燥した。本例の酵素試験紙は、以上の手順により作製したものである。
【0052】
ここで、この酵素試験紙がグルコース濃度に対応して呈色する原理について説明する。酵素試験紙においては、式1に示すように、グルコースオキシダーゼの触媒作用により、グルコースが酸素と化合し、グルコノラクトンと過酸化水素とが生成される。
6126(グルコース)+O2→C6106(グルコノラクトン)+H22
・・・式1
【0053】
そして、式2に示されるように、上記のごとく生成された過酸化水素が、ペルオキシダーゼの触媒作用によりクロモゲンを酸化し、赤紫色を呈する。
22+クロモゲン→Coloring(白→赤紫)
・・・式2
【0054】
次に、上記のように呈色した酵素試験紙に基づいてグルコース濃度を測定する方法について説明する。図8は、酵素試験紙を利用してグルコース濃度を光学的に測定するように構成した光学式測定装置3を示している。
光学式測定装置3は、ビーム状のレーザ光線を照射する半導体レーザ32と、反射したレーザ光線を集光するレンズ33と、レンズ33で集光されたレーザ光線を電気信号に変換するフォトダイオード34と、フォトダイオード34から出力された電気信号に基づいてグルコース濃度を計算する濃度測定部35とを備えている。
【0055】
この光学式測定装置3では、生体液採取器具1を所定の位置にセットし、歯肉溝液を吸収した酵素試験紙にレーザ光線を照射する。これにより、酵素試験紙に吸収された歯肉溝液中のグルコース濃度を計測するように構成してある。なお、ここで、酵素試験紙に照射する光としては、発光ダイオード(LED)が発する光を用いることもできる。なお、レーザー光を照射するに当たっては、透明なカバーシートを介しても良く、透明なカバーシートを剥離させた状態で直接的に照射することもできる。
【0056】
本例では、酵素試験紙の反射率(吸光度)が530nmの波長近傍で最も感度が良好であるという知見に基づいて、照射するレーザ光線の波長532nmに設定した。この設定においては、グルコース濃度に対して発色濃度が略比例している。本例では、この比例関係を利用して、フォトダイオード34から出力された電気信号に基づいて精度高くグルコース濃度を計算した。
【0057】
なお、光学式測定装置3を利用してグルコース濃度を測定する本例の構成に代えて、化学式C6126(グルコース)+O2→C6106(グルコノラクトン)+H22 における過酸化水素の濃度(グルコース濃度に比例。)を定量する公知の電極反応を用いた測定方法を適用することもできる。あるいは、酵素試験紙の発色濃度を目視することにより、採取した歯肉溝液中のグルコース濃度を半定量的に判定することもできる。特に、本例の生体液採取器具では、閉塞通路の酵素試験紙が歯肉溝液を吸収しないように構成してある。それ故、この閉塞通路の酵素試験紙の状態を参照すれば、比較的精度良くグルコース濃度を目視判定することができる。
【0058】
本例の酵素試験紙は、歯肉溝液あるいは唾液中の低濃度特定物質を測定するに十分な感度を有するとともに、毒性、発ガン性の指摘されていない物質を用いている。それ故、この酵素試験紙は、特定物質濃度を正確・安全に測定し得るものである。このように、生体に対して安全性が高い物質を用いて作製した酵素試験紙によれば、歯肉溝液中のグルコース濃度を測定する以外にも、例えば唾液中に含まれる特定成分の濃度を測定することができる。
【0059】
本例では、発色試薬として、N,N−ジエチル−P−フェニレンジアミン硫酸塩を用いたが、これに代えて、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、3,3'-ジアミノベンジジン四塩酸塩、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、N,N'-ビス(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)トルイジン,二ナトリウム塩、N,N'-ビス(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)トリジン,二ナトリウム塩、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン二塩酸塩、N-(3-スルフォプロピル)-3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン, ナトリウム塩、N,N,N',N',N",N"-ヘキサ(3-スルホプロピル)-4,4',4"-トリアミノトリフェニルメタン, 六ナトリウム塩等を用いることができる。そして、この場合、照射光源としては、発色試薬に対して吸光度が大きくなる波長を選択するのが良い。
【0060】
なお、表2に示すごとく、唾液中には様々な物質が含まれていると考えられている(右側の欄)。これらの各物質に対する触媒作用により呈色反応する酵素試験紙を作製して吸収体として適用すれば、唾液中の各物質の濃度を測定することが可能になる。そして、唾液中の各物質の測定濃度に基づけば、同表に示すごとく、測定対象の物質に対応して様々な疾患を診断することができる(左側の欄)。
【0061】
さらに、本例について、本例の酵素試験紙に代えて、適量のグルコース脱水素酵素(EC 1.1.1.118)、ジアホラーゼ (EC 1.8.1.4)、レザズリン (CAS No.53−84−9)、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(CAS No.53−84−9)等を含浸させた試験紙を用いることもできる。この試験紙では、実施例2で説明したように、採取した生体液中のグルコース成分に起因して、蛍光物質であるレゾルフィンが生成される。この場合には、例えば、照射光源波長を538nmとすると共に、生体液採取器具1からフォトダイオード34に至る光路中に透過波長584nmの光学フィルタを配置するのが良い。
またさらに、試験紙に代えて濾紙等の吸収体を採用すると共に、生体液を採取した後、さらに、生体液採取器具を用いて、グルコース脱水素酵素(EC 1.1.1.118)、ジアホラーゼ (EC 1.8.1.4)、レザズリン (CAS No.53−84−9)、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(CAS No.53−84−9)等を含む試験液を吸収することも良い。例えば、生体液を採取した後で吸収体を乾燥させれば、その後、効率良く上記試験液を吸収させることができる。この場合にも、吸収体のグルコース成分と、後から吸収した試験液との反応により、レゾルフィンが生成される。
【0062】
【表2】

【0063】
(実施例4)
本例は、実施例2によるグルコース濃度の計測精度を検証した例である。この内容について、図9を用いて説明する。
本例の生体液採取器具は、高さ(t2)120μm、幅(w1)1mm、長さ(l1)1mmの開口通路(図2参照。符号14。)に収容した濾紙に歯肉溝液を採取するように構成してある。この開口通路は、その一方の端部が採取口に開口すると共に、他方の端部が貫通穴に開口している。それ故、本例の生体液採取器具によれば、開口通路の内容積である0.1μl(マイクロリットル)の生体液を精度高く採取できる。
【0064】
本例では、グルコース濃度が既知であるグルコース溶液を採取し、実施例2の分析方法に基づいてグルコース濃度を計測した。その結果を図9に示す。同図では、生体液採取器具を用いて採取したグルコース水溶液の濃度(横軸)に対して、実施例2の分析方法により計測したグルコース濃度(縦軸)を○印でプロットしたものである。同図からわかるように、理想的な結果を示す斜め45度で示された理想ラインに対して、分析結果である○印プロットが精度高く一致している。
【0065】
ここで、上記の分析方法では、規定量の蒸留水を加水した試験液を利用した。それ故、採取した歯肉溝液の体積が増減すれば、計測精度が悪化するはずである。このことから、本例の生体液採取器具は、所定量の歯肉溝液を精度高く採取し得る優れた特性を備えていることがわかる。
【0066】
(実施例5)
本例は、実施例2の分析方法に基づいて調べた歯肉溝液中のグルコース濃度と血糖値との時系列的な相関を検証した例である。この内容について、図10を用いて説明する。
本例では、早朝の食事直前から食後2時間までの間で、30分ごとに歯肉溝液及び静脈血の採取を行った。そして、静脈血を利用して血糖値を計測すると共に、歯肉溝液を利用してグルコース濃度の計測を実施した。
【0067】
ここで、歯肉溝液を採取した方法について説明する。まず、予め歯磨きと2〜3回の口のすすぎを実施した被験者について、大きさ8×25mmのローラーコットンを用いて口腔内に残っている水分を除去した。さらに、被験者の歯肉溝に紙片を挿入して、歯肉溝の中に残留した水分やプラークを取り除いた。その後、直ちに、生体液採取器具を歯肉溝に挿入し、歯肉溝液を採取した。なお、本例では、唾液による汚染を回避できるよう、上顎の門歯もしくは犬歯から歯肉溝液を採取した。そして、開口通路に収容した濾紙が黒変したときに採取を終了した。その後、歯肉溝液を採取した生体液採取器具を保存容器に入れて密封し、−20℃以下の低温環境下で保存した。そして、採取した歯肉溝液を分析するに当たっては、その直前に、生体液採取器具を上記保存容器から取り出した。
【0068】
本例の結果を図10に示す。なお、同図では、食事直前に歯肉溝液及び静脈血を採取した時点を基準とした経過時間を横軸に示し、縦軸には、グルコース濃度及び血糖値を示している。そして、計測した血糖値を×プロットで示し、計測したグルコース濃度を△プロットで示してある。同図から知られるように、血糖値とグルコース濃度とがほぼ一致しており、さらに、血糖値が大きく変化する食後において、血糖値の変化に対してグルコース濃度が追従性高く変化している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1における、生体液採取器具の構造を示す説明図。
【図2】実施例1における、生体液採取器具を示す上面図。
【図3】実施例1における、ベースシートの先端付近を示す部分拡大図。
【図4】実施例1における、中間加工品としての積層シート体を示す説明図。
【図5】実施例1における、中間加工品としての積層シート体を示す上面図。
【図6】実施例2における、計測原理を説明するための反応図。
【図7】実施例3における、酵素試験紙を作製する工程を説明する工程図。
【図8】実施例3における、光学式測定装置の構成を示す構成図。
【図9】実施例4における、グルコース濃度の測定結果を示すグラフ。
【図10】実施例5における、血液中の血糖値及び歯肉溝液中のグルコース濃度の時間的変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0070】
1 生体液採取器具
10 貫通窓
11、13 カバーシート
12 ベースシート
121 開口スリット
122 閉塞スリット
14 開口通路
141 閉塞通路
15 濾紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液を採取するための生体液採取器具であって、
貫通穴を穿孔してなり、かつ、該貫通穴に連通すると共に他方の端部が外部に開口するスリット状の切り欠きである開口スリットを形成してなるシート状のベースシートと、
少なくとも上記開口スリットに重なるように上記ベースシートの両面側に積層したシート状の2枚のカバーシートと、
該2枚のカバーシートの間隙において上記開口スリットが形成する管状の開口通路と、
該開口通路に配設され、上記生体液を吸収するように構成した吸収体とを有しており、
上記2枚のカバーシートのうちの少なくも一方は、上記貫通穴と積層方向に連通する第2の貫通穴を有していることを特徴とする生体液採取器具。
【請求項2】
請求項1において、上記吸収体は、上記生体液を吸収したときに光透過率が変化するように構成してあり、上記2枚のカバーシートのうちの少なくとも一方は、透明又は半透明であることを特徴とする生体液採取器具。
【請求項3】
請求項2において、上記2枚のカバーシートのうち、一方のカバーシートが透明又は半透明であり、かつ、他方のカバーシートは、上記吸収体に当接する積層面側から視認可能な模様を有していることを特徴とする生体液採取器具。
【請求項4】
請求項1において、上記吸収体は、上記生体液中の特定成分に対して呈色反応を呈するように構成した呈色試験紙よりなり、上記2枚のカバーシートのうちの少なくとも一方は、透明又は半透明であることを特徴とする生体液採取器具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記ベースシートは、上記貫通穴に連通すると共に他方の端部が上記ベースシートの内周側に位置するスリット状の切り欠きである閉塞スリットを有し、該閉塞スリットが上記2枚のカバーシートの間隙において閉塞通路を形成しており、該閉塞通路には、上記吸収体と略同一の特性を備えた第2の吸収体を配設してあることを特徴とする生体液採取器具。
【請求項6】
請求項5において、上記貫通穴を穿孔する前の上記ベースシートについて、スリット状の切り欠きであるスリット溝を形成するスリット形成工程と、
上記スリット溝に上記吸収体を配置した状態で、上記ベースシートの両面に上記2枚のカバーシートを積層して、中間加工品としての積層シート体を得る積層工程と、
上記スリット溝を分断するように上記貫通穴及び上記第2の貫通穴を形成することにより、上記開口通路及び上記閉塞通路を形成する穿孔工程とを実施して作製したことを特徴とする生体液採取器具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記開口通路の内容積は、50nl以上1μl以下であることを特徴とする生体液採取器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−258773(P2006−258773A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80658(P2005−80658)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000132194)株式会社スズケン (12)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】