説明

生体用粘着ゲルシートおよびそれを用いたシート状化粧料

【課題】カロテノイドを効率的に皮膚に浸透させることが可能な生体用粘着ゲルシートおよびそれを用いたシート状化粧料を提供する。
【解決手段】カロテノイド含有O/W型エマルジョンと、ゼラチンまたはその誘導体と、親水性高分子とを含むハイドロゲルを含有し、かつ、多価無機塩の含有率が前記ハイドロゲル全質量の0.1質量%以下である生体用粘着ゲルシートである。前記親水性高分子は、熱可逆性ゲルを形成する多糖類であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨等の分野に用いられる生体用粘着ゲルシート及びそれを用いたシート状の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
生体用粘着ゲルシートは、美容、美顔および皮膚の治療等に用いられるパック料や貼付剤、皮膚浸透成分や、消炎鎮痛成分等の有効成分の担持体、傷保護や薬剤固定化などを目的とする生体用粘着テープ、創傷被覆剤などに使用されている。これらのゲルシートは皮膚に貼着して皮膚の温度と含水量(保水性)とを上げることによって皮膚の生理作用を増大させるものであり、この増大した皮膚の温度と湿分はシート中の活性成分の皮膚への浸透により移動を高めることができる。
【0003】
このような作用を有するゲルシートは、コラーゲンやキチン、キトサン、アルギン酸、セルロース等の多糖類を構成成分としていることが知られている(例えば特許文献1)。しかしながら、これらのゲルシートでは脂溶性の活性成分を皮膚中へ浸透させることは困難である。
【0004】
一方、脂溶性成分の皮膚浸透性を高めるため、例えば、特許文献2等には、微細なカロテノイド含有O/W型エマルジョンの使用が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示される例えばクリームでは、カロテノイドの皮膚浸透性が充分ではなく、効果の実感が不十分である。
【0005】
【特許文献1】特開平3−81213号公報
【特許文献2】特開2005−75817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、カロテノイドを効率的に皮膚に浸透させることが可能な生体用粘着ゲルシートおよびそれを用いたシート状化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生体用粘着ゲルシートは、カロテノイド含有O/W型エマルジョンと、ゼラチンまたはその誘導体と、親水性高分子とを含むハイドロゲルを含有し、かつ、多価無機塩の含有率が0.1質量%以下である。
前記親水性高分子は、熱可逆性ゲルを形成する多糖類であることが好ましく、さらに、前記多糖類は、寒天、グルコマンナン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、およびキサンタンガムからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0008】
本発明の生体用粘着ゲルシートは、さらに多価アルコール化合物を含有することが好ましく、前記O/W型エマルジョンの体積平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。また、前記カロテノイドは、アスタキサンチン及び/またはそのエステルであることが好ましい。
本発明のシート状化粧料は、生体用粘着ゲルシートを用いたものである。
【0009】
本発明において「生体用粘着ゲルシート」とは、美容、美顔および皮膚の治療等に用いられるパック料や貼付剤、皮膚浸透成分や消炎鎮痛成分等の有効成分の担持体、傷保護や薬剤固定化などを目的とする生体用粘着テープ、創傷被覆剤などを包含するものであり、有効成分や水分の保持及び皮膚への浸透などを目的として、皮膚に直接貼り付けて使用される粘着シートをいう。この生体用粘着ゲルシートは、肌に貼付して水分や有効成分を皮膚に与えるためのパック剤などの化粧料として有用である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カロテノイドを効率的に皮膚に浸透させることが可能な生体用粘着ゲルシートおよびそれを用いたシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
(生体用粘着ゲルシート)
本発明の生体用粘着ゲルシートは、カロテノイド含有O/W型エマルジョンと、ゼラチンまたはその誘導体と、親水性高分子とを含むハイドロゲルを含有し、多価無機塩の含有率がハイドロゲル全質量の0.1質量%以下である。
本発明ではゼラチンの架橋剤となりうる多価無機塩の含有率をハイドロゲル全質量の0.1質量%以下とすることでハイドロゲルの硬化を抑制すると共に、貼付時にはハイドロゲルを軟化して、ハイドロゲル中からのカロテノイド含有O/W型エマルジョンを滲み出し易くするものである。
【0012】
<ハイドロゲル>
〔ゼラチン〕
本発明の生体用粘着ゲルシートは、ゼラチンまたはその誘導体をハイドロゲル中に含む。ゼラチンの保護コロイド作用により、カロテノイド含有O/Wエマルジョンが安定化するだけでなく、生体用粘着ゲルシートを皮膚に貼付した時には、ゼラチンの融解とハイドロゲルの閉塞効果により皮膚浸透性を向上させることができる。
ゼラチンは、コラーゲンの加水分解タンパク質である。その製造方法についての限定はなく、牛骨、牛皮、豚皮、さらには魚燐等を原料として、酸処理法またはアルカリ処理法によって製造されたものが一般的であるが、酵素法で得られたものでもよい。
本発明において使用されるゼラチンとしては、JIS K6503に従って測定されたゼリー強度が50〜300gであることが好ましく、100〜280gであることが特に好ましい。この範囲のゼリー強度を有するゼラチンを用いてハイドロゲルを形成することで、カロテノイド含有エマルジョンの安定性と皮膚浸透性が向上する。
【0013】
また、ゼラチン誘導体としては公知の誘導体を使用することができる。例えば、ゼラチンの酸無水物付加体(例えばフタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリット化ゼラチンなど)、ラクトン付加体(グルコノ−δ−ラクトン付加ゼラチンなど)、アシル化ゼラチン(アセチル化ゼラチンなど)、エステル化ゼラチン(メチルエステル化ゼラチンなど)、ゼラチン有機酸塩(ゼラチン−酢酸塩、ゼラチン−ステアリン酸塩、ゼラチン−安息香酸塩)等が挙げられる。
これらのうち、本発明の生体用粘着ゲルシートに用いられるゼラチンまたはその誘導体としては、生体への親和性と有効成分の放出の観点から、ブタ皮由来ゼラチン、魚由来ゼラチン、コハク化ゼラチン、フタル化ゼラチン、トリメリット化ゼラチンが好ましい。
【0014】
上記ゼラチンまたはその誘導体は、ゼラチンを単独で、または2種以上を混合して用いてもよく、ゼラチンの誘導体を単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。あるいはゼラチンとゼラチンの誘導体とを混合して用いてもよい。また、コラーゲンを併用してもよい。
【0015】
また、本発明におけるゼラチンまたはその誘導体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定における重量平均分子量は、5,000〜100万であることが好ましく、5,000〜30万であることがより好ましく、1万〜30万であることが特に好ましい。
本発明におけるハイドロゲル中に占めるゼラチンまたはその誘導体の含有量は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。含有量が、0.05質量%以上あればハイドロゲル中の有効成分の皮膚浸透性が良く、また20質量%以下であれば取扱い性が良い。
【0016】
〔親水性高分子〕
本発明において用いられる親水性高分子としては、親水性官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基、カルバモイル基、アミノ基、アンモニオ基、エチレンオキシ基など)を有する合成高分子または天然高分子いずれも使用することができる。これらは単独でも、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
本発明に好適な、親水性基を有する合成高分子としては、例えば、ビニルアルコール(共)重合体、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共)重合体、アクリル酸(共)重合体、メタクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体、イタコン酸(共)重合体、p−ビニル安息香酸(共)重合体、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(共)重合体、スチレンスルホン酸(共)重合体、アクリルアミド(共)重合体、アクリロイルモルホリン(共)重合体、N−ビニルピロリドン(共)重合体、ビニルアミン(共)重合体、N,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(共)重合体、2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロリド(共)重合体、ポリエチレングリコールメタクリレート(共)重合体、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0018】
親水性基を有する天然高分子としては、中性多糖類(例えば、セルロース、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、プルラン、イヌリン、ガラクタン、マンナン、キシラン、アラビナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなど)、アニオン性多糖類(ペクチン酸、アルギン酸、アガロース、寒天、カラギーナン、フコイダン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースなど)、カチオン性多糖類(キチン、キトサン、カチオン化セルロースなど)、タンパク(カゼイン、エラスチン、ポリペプチド)が挙げられる。
【0019】
これらのうち本発明に用いられる親水性高分子としては、増粘・ゲル化作用の高い親水性高分子が好ましく、熱可逆性ゲルを形成する1種以上の多糖類であることが特に好ましい。
熱可逆性ゲルを形成する多糖類としては、単独で熱可逆性ゲルを形成する多糖類、または複数の組合せにより熱可逆性ゲルを形成する多糖類のいずれであってもよく、具体的には、寒天、グルコマンナン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、キシログルカン、アガロース、等が挙げられる。中でも、寒天、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガムとグルコマンナンまたはローカストビーンガムとの組合せ、κ−カラギーナンとグルコマンナンまたはローカストビーンガムとの組合せ、ジェランガムとグルコマンナンの組合せ、が特に好ましい。
【0020】
上記親水性高分子は、常温でのハイドロゲルの構造を安定化させ、取扱い性を向上する観点から、重量平均分子量が、10,000〜5,000,000であるものが好ましく、50,000〜2,000,000であるものがより好ましい。
また、本発明におけるハイドロゲル中に占める親水性高分子の含有量は、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.2〜2質量%が特に好ましい。含有量が0.05質量%以上あればハイドロゲルが取扱い易く、また10質量%以下であればカロテノイド含有エマルジョンの皮膚浸透性が良い。
【0021】
〔カロテノイド含有O/W型エマルジョン〕
本発明の生体用粘着ゲルシートは、皮膚浸透により例えば美肌効果を高めるために、ハイドロゲル中にカロテノイド含有O/W型エマルジョンを含有する。
カロテノイドとしては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、β−8‘−アポ−カロテナール、β−12’−アポ‘−カロテナール、α−カロチン、β―カロチン、γ―カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、フコキサンチンおよびそれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、本発明におけるカロテノイドとしてはアスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β―クリプトキサンチンが好ましく、特に酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果が認められているアスタキサンチンが好ましい。
なお、このカロテノイド含有O/W型エマルジョンには、一般にエマルジョン組成物の各相に含有可能な乳化剤等の他の成分を、一般に用いられる量で含有していてもよい。このような他の成分としては、多価アルコール等の本明細書中に記載の他の成分も含まれる。
【0022】
本発明で用いられるO/W型エマルジョンの体積平均粒径としては、10〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
前記体積平均粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルジョンの粒径測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における体積平均粒径範囲および測定の容易さから、本発明におけるエマルジョンの体積平均粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明において、カロテノイド含有O/W型エマルジョンの体積平均粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)を用いて25℃で測定した値を採用する。
前記体積平均粒径の測定方法は、油相成分の濃度が0.1〜1質量%の範囲内になるように純水で希釈を行い、測定用ガラス管を用いて測定を行う。体積平均粒径は、分散媒屈折率として1.3313(純水)、分散媒の粘度として0.8846cp(純水)に設定して測定した時の累積(50%)値として求めることができる。
【0023】
本発明で用いられるカロテノイド含有O/W型エマルジョンの製造方法は特に限定されず、例えば特開2005−75817号公報に記載されている方法でもよい。あるいは、a)水性媒体に、水溶性乳化剤を溶解させて水相組成物を得、b)カロテノイド、トコフェロール、レシチン、及び必要に応じてその他の油脂を混合、溶解して油相組成物(油相成分)を得、c)攪拌下で水相組成物と油相組成物を混合して、乳化分散を行い、エマルジョン組成物を得るステップからなることが好ましい。
乳化分散の際、例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式せん断装置等のせん断作用を利用する通常の乳化装置を用いて乳化を行った後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用することが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物をさらに均一な微粒子の液滴に揃えることができる。
【0024】
本発明のハイドロゲルにおけるカロテノイドの含有量としては、0.0001〜0.5質量%が好ましく、0.0005〜0.1質量%がより好ましく、0.001〜0.05質量%であることが特に好ましい。カロテノイド含有量が0.0001質量%以上であれば、本発明の生体用粘着ゲルシートを皮膚に貼付した後の効果(美肌効果等)が感じられ、また0.5質量%以下であれば表皮への着色を抑えることができ不快感を生じにくい。
また、本発明のハイドロゲルにおけるカロテノイド含有エマルジョンの含有量は、微粒子の安定性と皮膚浸透性の点から、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。
【0025】
〔多価無機塩〕
本発明では、多価無機塩の含有率がハイドロゲル全質量の0.1質量%以下である。ここで、前記多価無機塩は、ゼラチンや親水性高分子の架橋剤となりうるものである。前記多価無機塩をハイドロゲルに対して0.1質量%以下のような微量とすることで、ハイドロゲルの硬化を抑制することができる。その結果、ハイドロゲル中の各有効成分等がハイドロゲル外に滲み出し易くなり、本生体用粘着ゲルシートを皮膚等に貼用したときには、ハイドロゲル中の各有効成分等の皮膚浸透性を高めることができる。
多価無機塩の含有率がハイドロゲル全質量の0.1質量%を越えると、カロテノイド含有エマルジョンの皮膚浸透性が低下する。
前記多価無機塩の含有率は、ハイドロゲル全質量の0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。最も好ましくは0質量%、すなわち、ハイドロゲル中に多価無機塩を含まない形態である。
【0026】
前記多価無機塩としては、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、カリ明バン、アンモニウム明バン、鉄明バン、硫酸アルミニウム、硫酸第2鉄、硫酸マグネシウム、ポリ塩化アルミニウム等の水溶性塩や、水酸化カルシウム、水酸化第2鉄、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、アルミニウムアラントイネート、次硝酸ビスマス等の水難溶性若しくは水微溶性塩が挙げられる。
【0027】
〔他の成分〕
本発明の生体用粘着ゲルシートは、種々の効果を発揮するために、ハイドロゲル中に、さらに多価アルコール化合物を含有することが好ましい。また、さらに必要に応じて、賦形剤、添加剤等を含有することもできる。
【0028】
−多価アルコール−
本発明に用いられるハイドロゲルは、ハイドロゲル自体を生体用粘着ゲルシートとして用いた際の皮膚浸透性の観点から、さらに多価アルコール化合物を含むことが好ましい。
多価アルコールとしては、グリセリン類(グリセリン、ジグリセリンなど)、グリコール類(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなど)、糖類(グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、セロビオース、コージビオース、ソホロース、マルトトリオ―ス、ラフィノース、スタキオースなど)、糖アルコール(グリセロール、トレイロール、エリスリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、イノシトールなど)が挙げられる。前記多価アルコールは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
これらのうち、本発明の生体用粘着ゲルシートの皮膚浸透性を向上させる目的としては、1,2−もしくは1,3−ジオール構造を有する化合物が好ましく、例えば、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールがより好ましく、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールが特に好ましい。
本発明におけるハイドロゲル中に占める多価アルコールの含有量は、50質量%以下であるのが好ましく、1〜20質量%であることが特に好ましい。
本発明におけるハイドロゲルに占める多価アルコールの含有量を50質量%以下であれば、ゲル強度の低下を防止することができる。
【0030】
−賦形剤−
本発明の生体用粘着ゲルシートは、ハイドロゲル中にさらに生体用粘着ゲルシートの形状安定性の向上のために賦形剤を添加してもよい。賦形剤としては、有機または無機の微粒子が好適に使用することができる。有機微粒子としては、公知のポリスチレン粒子、ポリメタクリレート粒子、微結晶セルロースが好ましい。また無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、粘土鉱物等が好ましい。これらのうち、シリカあるいは粘土鉱物が好ましく、特に平均粒子径が200nm以下の気相法シリカ、合成スメクタイトが特に好ましい。
本発明におけるハイドロゲル中に占める賦形剤の含有量は、10質量%以下であるのが好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
【0031】
−添加剤等−
本発明の生体用粘着ゲルシートの使用目的に応じて、各種の有効成分や添加剤を配合することができる。そのような有効成分や添加剤としては、例えば美容、美顔および皮膚の治療等を目的とする薬効成分のほか、保湿剤、増粘剤、香料、着色料、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、pH調整剤、キレート剤、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0032】
保湿剤としては例えば、アミノ酸類、α−ヒドロキシ酸塩(例えば乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、グルコン酸カリウムなど)、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
保湿剤のハイドロゲル中における含有量は0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0033】
薬効成分は、前記のカロテノイド以外の他の薬効成分を好適に用いることができ、他の薬効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨等で使用されているものであれば特に限定されるものではない。例えば、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、
【0034】
シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等、植物由来成分、海藻由来成分などの天然成分を挙げることができる。
【0035】
また、スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質等の油性成分;ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β−グリチルリチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等の抗炎症剤;ビタミンA,B2,B6,C,D,E、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド、ビタミンCエステル等のビタミン類;アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分;CoQ10、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤;α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸等の細胞賦活剤;γ−オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤;レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤;アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキス、イオウ、エラグ酸、リノール酸、トラネキサム酸、グルタチオン等の美白剤;
【0036】
セファランチン、カンゾウ抽出物、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、1−メントール、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ−アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウミ、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ハッカ油などが挙げられる。
また、皮膚浸透により生体内へ投与することが可能であれば、鎮痛剤、精神安定剤、抗高血圧剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗菌性物質、等の薬効成分を添加することも可能である。
【0037】
これらの薬効成分等の有効成分は、エマルジョンとしてハイドロゲルに添加することができ、また、ハイドロゲルに直接添加してもよい。
【0038】
前記有効成分の含有量は、その素材により有効量が異なるため一概には規定できないが、一般にハイドロゲルの総量に対して0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.05〜5質量%であるのがより好ましい。
【0039】
〔生体用粘着ゲルシートの構成〕
本発明の生体用粘着ゲルシートは、上述したようなハイドロゲルを単層で構成したものとしてもよく、さらに他の層を有する多層構造のものとしてもよい。また、ハイドロゲルの層を複数設けてもよい。また、ハイドロゲル層が複数の層からなる場合には、上記各成分を同一のハイドロゲル層に含有してもよく、複数の層に分けて含有してもよい。このように、生体用粘着ゲルシートが多層構造を構成するときは、生体用粘着ゲルシートの上記各成分は、生体用粘着ゲルシート全体として上述した各範囲の量を含有することができる
【0040】
ハイドロゲル層以外の他の層としては、たとえば、支持体層や、保護シートを挙げることができる。
支持体層は、本発明の生体用粘着ゲルシートの形状安定性と取扱い性の向上の観点で設けることが好ましく、保護シートは、使用時までハイドロゲル層表面を保護する観点で設けることが好ましい。
【0041】
支持体層としては、不織布、織布、プラスチックフィルム等のシート状の公知の支持基材、また架橋ゲル(ゼラチン/グルタルアルデヒド架橋ゲル、ポリアクリル酸/多価金属イオン架橋ゲルなど)、物理ゲル(アガロースゲル、κ―カラギーナンゲルなど)、さらには親水性高分子から形成される水不溶性フィルム(キトサンフィルム、セロファン、κ−カラギーナンキャストフィルムなど)等を使用することが好ましい。
これらのうち、本発明の生体用粘着ゲルシートにおいては、生体用粘着ゲルシートの形状安定性と取扱い性の観点から一般に100μm以下の透明フィルムを使用することが好ましく、特に親水性高分子から形成される水不溶性フィルム例えば、キトサンフィルム、セロファン、κ−カラギーナンキャストフィルム等が好ましい。
【0042】
また、保護シートとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルム等を使用することが好ましい。中でも、厚さ500μm以下のポリエチレンフィルムを使用することが好ましい。
【0043】
生体用粘着ゲルシートを、ハイドロゲル層のみで構成した場合の生体用粘着ゲルシートの厚みは、カロテノイド含有エマルジョンの皮膚浸透性の効果を発揮させるために0.2〜3mmであることが好ましい。さらに付着安定性の向上を加味すると0.3〜2mmであることがより好ましく、0.5〜1.5mmであることが特に好ましい。生体用粘着ゲルシートの厚さが0.2mm以上あれば、生体用粘着ゲルシートを皮膚に貼付した時にハイドロゲルの乾燥を防止し、また皮膚浸透性を損なうことがない。生体用粘着ゲルシートの厚さが3mm以下であれば、ハイドロゲルからエマルジョンが滲み出し易い。
【0044】
また、支持体層と保護シートの厚みは、上述のとおりだが、生体用粘着ゲルシートを、ハイドロゲル層と、支持体層および/または保護シートとで構成した多層構造の生体用粘着ゲルシートの場合には、支持体層の厚みは、5〜80μmであることが更に好ましく、保護シートは 50〜500 μmであることが更に好ましい。このような多層構造の場合には、上記ハイドロゲルの厚みは、上述したハイドロゲル層の厚みと同様としてもよく、生体用粘着ゲルシート全体の厚みが0.4〜3mmの範囲となるように適宜調整してもよい。
【0045】
〔生体用粘着ゲルシートの製造方法〕
本発明の生体用粘着ゲルシートの製造方法は、一般に行なわれる方法に従って製造することができる。
例えば、生体用粘着ゲルシートがハイドロゲルのみで構成される場合には、ハイドロゲルを製造する通常の方法に従って製造することができる。具体的には、前記各成分を含むハイドロゲルの組成物(ハイドロゲル組成物)を加熱混合して水溶液とした後に、ドクターブレード等の塗布機を用いてシート状に塗布する。続いて、シート状のハイドロゲル組成物を冷却することによりゲル化を完了させて、生体用粘着ゲルシートを得る。
なお、カロテノイド含有エマルジョンのハイドロゲル組成物への添加は、ハイドロゲル組成物がゲル化する前(ゾル状態)でも、ゲル化した後でもよい。
【0046】
支持体層を有する生体用粘着ゲルシートの場合には、例えば、シート状の支持基材上に、上記のようにハイドロゲル各成分の混合水溶液を塗布等してハイドロゲル層を積層することによって容易に得ることができる。
また、さらに保護シートを設ける場合には、ハイドロゲル層の、支持体層が設けられていない面に保護シートを積層すればよい。
【0047】
〔生体用粘着ゲルシートの物性〕
また、本発明の生体用粘着ゲルシートは、透明性が高いことが、皮膚へ添付した際の外観的な違和感を軽減する観点から好ましい。
本発明における透明性は、分光光度計を用いた600nmの波長における透過度により評価した値を目安に評価することができる。上記透明性は、上記評価法により測定した蒸留水に対する透過度が、60質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。
透過度が60質量%以上あれば、貼付時に皮膚の状態を確認し易くなる。しかしながら、外観が考慮されない使用部位に適用する場合などは、必ずしも透明である必要はない。
【0048】
本発明の生体用粘着ゲルシートの形状としては特に制限はないが、テープ状でロール状に巻いた形状で提供されてもよく、一枚一枚独立した個別のシートであってもよい。個別のシートの場合、その形状は任意であり、楕円形、円形、ハート形、半円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、三角形、あるいはこれらが組み合わされた形状等が挙げられ、また、適用部位に沿った形状、使用部位により最も適切に貼り付けることができる形状を適宜設計してもよい。また、生体用粘着ゲルシートの中心部や周辺部に位置合わせ等の目的で凸部や凹部を設けたり、使用部位の形状に応じて切り込みやくり抜き部分等を設けて粘着ゲルシートの取り扱い性を向上させてもよい。
これらの生体用粘着ゲルシートは、水分や有効成分が経時的に減少することを防止するため、非通気性のシートからなる包装材料内に1つずつ密閉されていてもよい。
【0049】
本発明の生体用粘着ゲルシートの適用部位としては、顔(唇、頬部、目元部、目の上下部、鼻部、額部、顔全体)、腕部、脚部、胸部、腹部、背部、首部等が挙げられる。
生体用粘着ゲルシートは前記した形状のみならず、面積、厚み、ハイドロゲル層最表面の粘着特性等を、適用部位に応じて適宜調整すればよい。
例えば、適用部位が顔全体である生体用粘着用シートを形成する場合には目、口の位置に相当する部分をくり抜き、鼻の位置に相当する部分に切り込みを入れた形状とし、さらに貼付け面積が大きいことから、粘着層の粘着力を上昇させるか、厚さを薄めにする等の調整を行うのが好ましい。また、顔用の形状を2分割し、額や目、鼻の周りに適用する上部と、口の周りからあご部に適用する下部とに分けてもよい。
【0050】
(シート状化粧料)
本発明のシート状化粧料は、本発明の生体用粘着ゲルシートにより構成することができる。
本発明の生体粘着用ゲルシートは、カロテノイドを効率的に皮膚に浸透させることが可能なため、本発明のシート状化粧料は、上記のような顔に貼付して肌に潤いや薬効成分を与えるシート状化粧料として特に有用である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」、「質量%」は、それぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0052】
〔実施例1〕
<カロテノイド含有エマルジョンの作成>
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水相組成物を得た。
・ショ糖オレイン酸エステル ・・・15g
・モノオレイン酸デカグリセリル ・・・23g
・グリセリン ・・・500g
・純水 ・・・322g
【0053】
また、下記成分を70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) ・・・40g
・ミックストコフェロール ・・・10g
・レシチン(大豆由来) ・・・90g
【0054】
前記水相組成物を70℃に保ったままホモジナイザーで攪拌し(10000rpm)、そこへ上記油相組成物を添加してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンをアルティマイザーHJP−25005(スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。得られたエマルジョンの体積平均粒径を、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)を用いて25℃で測定したところ、90nmであった。
【0055】
<ハイドロゲルの作成>
下記の成分を80℃にて加熱・混練し、ゾル状物を得た。
・κ−カラギーナン ・・・0.20g
・グルコマンナン(コンニャク芋由来) ・・・0.20g
・ブタ皮由来酸処理ゼラチン ・・・0.50g
・1,3−ブタンジオール ・・・5.0g
・純水 ・・・44.09g
【0056】
このゾル状物を60℃まで冷却した後、前記カロテノイド含有エマルジョン0.1gを添加し、均一に攪拌した。これを1mm厚となる様にドクターブレードを用いて展延し、25℃で24時間静置することで実施例1の生体用粘着ゲルシートを得た。
【0057】
〔実施例2〕
実施例1の生体用粘着ゲルシートの製造工程において、ハイドロゲルの組成を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の生体用粘着ゲルシートを得た。
・κ−カラギーナン ・・・0.20g
・グルコマンナン(コンニャク芋由来) ・・・0.20g
・ブタ皮由来酸処理ゼラチン ・・・0.50g
・塩化マグネシウム ・・・0.05g
・1,3−ブタンジオール ・・・5.0g
・純水 ・・・44.04g
【0058】
〔実施例3〕
実施例1の生体用粘着ゲルシートの製造工程において、ハイドロゲルの組成を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の生体用粘着ゲルシートを得た。
・ジェランガム ・・・0.20g
・ネイティブジェランガム ・・・0.20g
・ブタ皮由来酸処理ゼラチン ・・・0.50g
・1,3−ブタンジオール ・・・5.0g
・純水 ・・・44.09g
【0059】
〔実施例4〕
実施例1の生体用粘着ゲルシートの製造工程において、ハイドロゲルの組成を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4の生体用粘着ゲルシートを得た。
・キサンタンガム ・・・0.30g
・ローカストビーンガム ・・・0.30g
・ブタ皮由来酸処理ゼラチン ・・・0.40g
・コハク化ゼラチン ・・・0.1g
・1,3−ブタンジオール ・・・5.0g
・純水 ・・・43.89g
【0060】
〔実施例5〕
実施例1の生体用粘着ゲルシートの製造工程において、ハイドロゲルの組成を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして実施例5の生体用粘着ゲルシートを得た。
・ポリアクリル酸ナトリウム ・・・1.00g
・ポリアクリル酸 ・・・1.00g
・ブタ皮由来酸処理ゼラチン ・・・0.40g
・塩化カルシウム ・・・0.05g
・1,3−ブタンジオール ・・・5.0g
・純水 ・・・42.54g
【0061】
〔比較例1〕
実施例1の生体用粘着ゲルシートの製造工程において、カロテノイド含有エマルジョンを添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の生体用粘着ゲルシートを得た
【0062】
〔比較例2〕
実施例1の生体用粘着ゲルシートの製造工程において、ハイドロゲルの組成を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして比較例2の生体用粘着ゲルシートを得た。
・κ−カラギーナン ・・・0.20g
・グルコマンナン(コンニャク芋由来) ・・・0.20g
・ブタ皮由来酸処理ゼラチン ・・・0.50g
・塩化マグネシウム ・・・0.2g
・1,3−ブタンジオール ・・・5.0g
・純水 ・・・43.89g
【0063】
〔比較例3〕
実施例1の生体用粘着ゲルシートの製造工程において、ハイドロゲルの組成を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして比較例3の生体用粘着ゲルシートを得た。
・κ−カラギーナン ・・・0.20g
・グルコマンナン(コンニャク芋由来) ・・・0.20g
・1,3−ブタンジオール ・・・5.0g
・純水 ・・・44.59g
【0064】
(生体用粘着ゲルシートの評価)
上記実施例1〜5および比較例1〜3の生体用粘着ゲルシートを用いて、下記評価を行い、下記表1にその評価結果を示した。なお、操作性、保湿性、皮膚バリア性、および美肌効果の各官能評価は、10人のモニターに上記実施例1〜5および比較例1〜3の生体用粘着ゲルシートを各々使用(顔に貼付)させ、その評価の平均値を表1に示した。
【0065】
(1)滲出性
上記実施例1〜5および比較例1〜3の生体用粘着ゲルシートを、2cm×2cmサイズにカットし、これをアドバンテック社製濾紙No.2上に静置し、離水液による濾紙への着色度合いを目視にて評価した。
1分以内にカロテノイド由来の着色が認められた場合をA、5分以内に着色が認められた場合をB、10分後にわずかに着色がみられた場合をC、目視では判別不能な場合をDとして評価した。
【0066】
(2)操作性
上記実施例1〜5および比較例1〜3の生体用粘着ゲルシートを、洗顔後15分間目元に貼付、以下の方法及び基準で評価を行った。
各生体用粘着ゲルシートを顔に貼り付けた際に指にまとわりつかず、容易に貼付することが出来た場合をA、指にまとわりついて貼付に時間がかかった場合をB、容易に破断して貼付が困難であった場合をCとして評価した。
【0067】
(3)保湿性
上記実施例1〜5および比較例1〜3の生体用粘着ゲルシートを、顔に貼付、剥離30分後の角層水分量について角層水分量計(アサヒバイオメッド社製)にて測定を行った。5名の平均にて角層水分量が10質量%以上上昇していた場合をA、2〜10質量%の増加がみられた場合をB、2質量%未満の変化であった場合をCとして評価した。
【0068】
(4)皮膚バリア性
肌荒れ改善機能を評価するため、以下の方法で経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。
すなわち、1日15分の貼付を3日継続し、3日目の生体用粘着ゲルシート剥離直後の経表皮水分蒸散量(TEWL)を水分蒸散計(アサヒバイオメッド社製)にて測定した。テスト前に比して、TEWLが5質量%以上低下した場合をA、1〜4質量%の場合をB、変化が見られない場合をCとして評価した。
【0069】
(5)美肌効果
1日15分の貼付を3日継続した際の、3日目の生体用粘着ゲルシート剥離直後の皮膚の外観についての印象にて評価を行った。明らかにキメが整ったと感じた場合をA、わずかにキメが整ったと感じた場合をB、変化が見られなかったと感じた場合をCとした。
【0070】
【表1】

【0071】
表1の結果から、実施例1〜5の生体用粘着ゲルシートは、保湿性や皮膚のバリア性の改善効果に優れ、またキメを調える美肌効果を有することが明らかとなった。一方、カロテノイド含有エマルジョンを含まない生体用粘着ゲルシート(比較例1)では、特に美肌効果が見られず、また保湿効果も劣るものとなった。また、カロテノイド含有エマルジョンを含むものであっても、多価無機塩の含有率が0.1質量%を超えるもの(比較例2)、ゼラチンを含まないもの(比較例3)は、滲出性に劣り、美肌効果を十分に発揮することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド含有O/W型エマルジョンと、ゼラチンまたはその誘導体と、親水性高分子とを含むハイドロゲルを含有し、かつ、多価無機塩の含有率が前記ハイドロゲル全質量の0.1質量%以下である生体用粘着ゲルシート。
【請求項2】
前記親水性高分子が、熱可逆性ゲルを形成する多糖類であることを特徴とする請求項1に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項3】
前記多糖類が、寒天、グルコマンナン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、およびキサンタンガムからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項4】
さらに多価アルコール化合物を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項5】
前記O/W型エマルジョンの体積平均粒径が、10nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項6】
前記カロテノイドが、アスタキサンチン及び/またはそのエステルであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシートを用いたシート状化粧料。

【公開番号】特開2009−73764(P2009−73764A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244490(P2007−244490)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】