説明

生体組織厚測定具及び生体組織厚の測定方法

【課題】生体組織の厚さを安全容易に、かつ正確に測定することができる生体組織厚の測定方法及び、患者に対し低侵襲であり、製造容易な生体組織厚測定具を提供することにある。
【解決手段】第一のシャフト部21と、前記第一のシャフト部21の基端部近傍に付設された第一の体内迷入防止手段22と、前記第一のシャフト部21の先端部近傍に付設された切欠き部23と、前記切欠き部3位置より先端側に形成された当接部24とを有する第一のシャフト本体2と、第二のシャフト部31と、前記第二のシャフト部31の基端部近傍に付設された第二の体内迷入防止手段32とを有する第二のシャフト本体3とから構成され、前記第二のシャフト本体3は前記2に対向すると共に、前記当接部24の先端から前記切欠き部23の位置の間にヒンジ部4を介して取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織厚測定具及び生体組織厚の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経口的に栄養を摂取できない患者に対する栄養の投与方法として、経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下、「PEG」と略す)による経腸栄養管理が頻繁に行われるようになっている。このPEGを実施する為に、瘻孔用カテーテルを含むキット化された製品が使用されている。
この瘻孔用カテーテルはその使用期間によって様々な種類があるが、いずれも一定期間の留置後、新しいカテーテルに交換する必要がある。
一方、長期間使用されるものに瘻孔用ボタンがあるが、これは上記カテーテルタイプと異なり、一般的に長さ調節が不可能である。体表部から生体組織内(例えば、胃内)までの瘻孔の長さよりも短い瘻孔用ボタンを装着した場合、瘻孔用ボタンの栄養剤通路が生体組織内へ挿通されていないため、その後に実施される栄養剤、薬剤が胃内へ正確に注入されず、腹膜炎を引き起こす危険性がある。一方、瘻孔の長さよりも著しく長い瘻孔用ボタンを装着した場合、体表部から突出する部分が多く、患者の生活に支障を与えてしまう場合がある。
そこで、生体組織の厚さ(胃壁と腹壁との厚さの合計、即ち瘻孔の長さ)を予め測定し、適切な長さの瘻孔用ボタンを選択的に使用する必要がある。
患者の瘻孔長を測定する為の器具が様々提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0003】
【特許文献1】USP4972845
【特許文献2】USP5356382
【特許文献3】特表2005−524465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、生体組織の厚さを安全容易に、かつ正確に測定することができる生体組織厚の測定方法及び、患者に対し低侵襲であり、製造容易な生体組織厚測定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記(1)から(10)に記載の本発明により達成される。
(1)体表部より体内臓器に挿入して体表部から体内臓器内面までの生体組織厚を測定する生体組織厚測定具であって、第一のシャフト部と、前記第一のシャフト部の基端部近傍に付設された第一の体内迷入防止手段と、前記第一のシャフト部の先端部近傍に付設された切欠き部と、前記切欠き部位置より先端側に形成され、体内臓器に当接する当接部とを有する第一のシャフト本体と、第二のシャフト部と、前記第二のシャフト部の基端部近傍に付設された第二の体内迷入防止手段とを有する第二のシャフト本体と、から構成され、前記第二のシャフト本体は前記第一のシャフト本体に対向すると共に、前記当接部の先端から前記切欠き部の位置の間にヒンジ部を介して取付けられていることを特徴とする生体組織厚測定具。
(2)前記第一のシャフト部には、少なくとも一つの第一の位置決め手段を有する(1)に記載の生体組織厚測定具。
(3)前記第一の位置決め手段は、前記第一のシャフト部の基端部側に付設された第一の位置決め手段Aと、先端部側に付設された第一の位置決め手段Bと、を有するものである(1)又は(2)に記載の生体組織厚測定具。
(4)前記第二のシャフト部には、少なくとも一つの第二の位置決め手段を有する(1)に記載の生体組織厚測定具。
(5)前記第一のシャフト部には、前記切欠き部近傍より前記第一のシャフト部基端部側に向かってガイドワイヤー挿通路を有するものである(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体組織厚測定具。
(6)前記当接部は、溝を有するものである(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体組織厚測定具。
(7)前記第一のシャフト部及び/又は第二のシャフト部には目盛部が付設されている(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体組織厚測定具。
(8)(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体組織厚測定用具を用いて体表部より体内臓器内に前記生体組織厚測定具を挿入して体表部から体内臓器内面までの生体組織厚を測定する方法であって、前記当接部と前記第一のシャフト部とを略直線状態とし、体表部面から体内臓器内に挿入する手順1と、前記当接部を前記第一のシャフト部に対して略垂直状態とさせる手順2と、前記第2手順の状態のまま、前記生体組織厚測定具を体表部側に引上げて前記当接部を体内臓器内面に当接させる手順3と、前記当接部を体内臓器に係止させ、体表部に出た前記第一のシャフト部及び/又は第二のシャフト部に付設された目盛を読む手順4と、によって生体組織厚を測定することを特徴とする生体組織厚の測定方法。
(9)前記手順1は、前記第二の位置決め手段を前記第一のシャフト部先端側に付設された前記第一の位置決め手段Bに合わせることによってなる(8)に記載の生体組織厚の測定方法。
(10)前記手順2は、前記第二の位置決め手段を前記第一のシャフト部基端部側に付設された前記第一の位置決め手段Aに合わせることによってなる(8)に記載の生体組織厚の測定方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生体組織の厚さを安全容易に、かつ正確に測定することができる生体組織厚の測定方法及び、患者に対し低侵襲であり、製造容易な生体組織厚測定具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の生体組織厚測定具は、体表部より体内臓器内面に挿入して体表部から体内臓器までの生体組織厚を測定する生体組織厚測定具であって、第一のシャフト部と、上記第一のシャフト部の基端部近傍に付設された第一の体内迷入防止手段と、上記第一のシャフト部の先端部近傍に付設された切欠き部と、上記切欠き部位置より先端側に形成された当接部とを有する第一のシャフト本体と、第二のシャフト部と、上記第二のシャフト部の基端部近傍に付設された第二の体内迷入防止手段とを有する第二のシャフト本体と、から構成され、上記第二のシャフト本体は上記第一のシャフト本体に対向すると共に、上記当接部の先端から上記切欠き部の位置の間にヒンジ部を介して取付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の生体組織厚の測定方法は、生体組織厚測定用具を用いて体表部より体内臓器内に上記生体組織厚測定具を挿入して体表部から体内臓器内面までの生体組織厚を測定する方法であって、上記当接部と上記第一のシャフト部とを略直線状態とし、体表部面から体内臓器内に挿入する手順1と、上記当接部を前記第一のシャフト部に対して略垂直状態とさせる手順2と、上記第2手順の状態のまま、上記生体組織厚測定具を体表部面側に引上げて上記当接部を体内臓器内面に当接させる手順3と、上記当接部を体内臓器に係止させ、体表部面に出た上記第一のシャフト部及び/又は第二のシャフト部に付設された目盛を読む手順4と、によって生体組織厚を測定することを特徴とする。
【0009】
以下、各構成要件について図面を用いて詳細に説明する。
図1(a)、図1(b)は本発明の生体組織厚測定具の一実施例を示す斜視図である。
図1(a)に示すように本発明の生体組織厚測定具1は、第一のシャフト部21と、上記第一のシャフト部21の基端部近傍に付設された第一の体内迷入防止手段22と、第一のシャフト部21の先端部近傍に付設された切欠き部23と、上記切欠き部23の位置より先端側に形成された当接部24とを有する第一のシャフト本体2と、第二のシャフト部31と、上記第二のシャフト部31の基端部近傍に付設された第二の体内迷入防止手段32とを有する第二のシャフト本体3とから構成され、上記第二のシャフト本体3は上記第一のシャフト本体2に対向すると共に、上記当接部24の先端から上記切欠き部23の位置の間にヒンジ部4を介して取付けられている。
【0010】
第一のシャフト部21と第二のシャフト部31とは対向した状態で患者の瘻孔を介して体内臓器内へ挿入される。したがって、第一のシャフト部21と前記第二のシャフト部31を合計した最大幅は、形成されている前記瘻孔のサイズ以下であることが好ましい。
例えば、8mmの瘻孔が形成されている場合、その合計した幅は1〜7mmが好ましい。合計した幅を上記範囲とすることで、挿入時に瘻孔を損傷することなく、容易に挿入することができる。
【0011】
上記第一のシャフト部21と第二のシャフト部31の断面は、第一のシャフト部21と第二のシャフト5を合計した最大幅が患者の瘻孔のサイズ以下であれば、円形、板状、またはそれ以外の形状でも特に限定されない。好ましくは、患者の瘻孔に挿入して用いられるので、第一のシャフト部21と第二のシャフト部31がそれぞれ半円形状で構成され、対向した際に円形となることが好ましい。これにより、低浸襲(少ない負担)的に生体組織厚測定具1を患者の瘻孔に挿入することができる。円形以外の場合、角部は面取りまたはR付けされていることが好ましい。
【0012】
上記第一のシャフト部21と第二のシャフト部31の長さは特に限定されないが、30〜130mmが好ましく、特に50〜110mmが好ましい。長さが上記範囲内であれば、生体組織の厚さを測定するのに十分な長さと良好な操作性を得ることができる。
【0013】
上記第一のシャフト部21の先端部近傍には、切欠き部23の位置よりも先端部側に当接部24が付設される。
後述するように第一のシャフト部21に対向した第二のシャフト部31の摺動操作により、図1に示すように、切欠き部23と後述するヒンジ部4とが変形され、第一のシャフト部21に対する当接部24の状態を図1(a)の略直線状態と、図1(b)の略垂直状態にそれぞれ変化させることができる。切欠き部23は、第一のシャフト部21に対する当接部24の状態を変化させることができれば、その形状は特に限定されない。切欠き部23はスリットでもV字状でもその他の形状でも構わず、第一のシャフト部21のどちらの面(図1に示す面の裏面)に付設されても構わない。好ましくは、切欠き部23の最薄肉部分の厚みが、0.1〜0.5mm、特に0.1〜0.3mmで形成されることが好ましい。上記範囲内であれば、第二のシャフト部31の摺動操作性、上記切欠き部23の繰返し性強度を良好とすることができる。さらに好ましくは、切欠き部23が、第一のシャフト部21における第二のシャフト部31と対向する面に付設されることが好ましい。上記位置に付設されることで、切欠き部23による患者の瘻孔壁面への接触、挟み込みを防止することができ、安全容易に生体組織厚測定具1を患者の瘻孔に挿入することが可能となる。
【0014】
上記当接部24は、第一のシャフト部21に対して略直線状態で、患者の瘻孔に挿入することができる。患者の瘻孔の径が8mmで形成されている場合、当接部24の断面の最長部の長さは8mm以下の幅であることが好ましい。上記寸法であれば、円形、板状、またはそれ以外の形状でも特に限定されない。好ましくは、患者の瘻孔に挿入して用いられるので、円形であることが好ましい。これにより、低浸襲に生体組織厚測定具1を患者の瘻孔に挿入することができる。円形以外の場合、角部は面取りまたはR付けされていることが好ましい。
【0015】
上記当接部24は、第一のシャフト2に対して略垂直状態で、体内臓器内面(例えば胃壁内面)に当接される。これにより、体内臓器内面に生体組織厚測定具1を確実に当接して掛止することができる。当接部24の突出長さ(突片の大きさ)は、確実に当接できる長さであれば特に限定されないが、5〜25mmであることが好ましい。更に好ましくは10〜20mmである。上記範囲内であれば、操作性が良好で、安全確実に患者の体内臓器内面に当接して掛止することができる。
【0016】
上記第二のシャフト部31は、当接部24の先端から切欠き部23の位置の間にヒンジ部4を介して当接部24に取付けられる。これにより、第一のシャフト部21に対向した第二のシャフト部31の摺動操作(図1中の上下方向)により、切欠き部23とヒンジ部4が変形され、第一のシャフト部21に対する当接部24の状態を略直線状態と略垂直状態とにそれぞれ変化させることができる。
【0017】
上記第一のシャフト部21に対する当接部24の状態変化について簡単に説明する。
第一のシャフト部21に対向した第二のシャフト部31を、第一のシャフト部21の先端部側(図1(a)中の下方向)に摺動させることで、ヒンジ部4を介して取付けられた当接部24に対し先端部方向に力を加えることとなる。この力により切欠き部23が変形し、当接部24を第一のシャフト部21に対して略直線状態とすることができる。この状態にて、患者の瘻孔に安全容易に生体組織厚測定具1を患者の瘻孔に挿入することとなる。
【0018】
上記第一のシャフト部21に対向した上記第二のシャフト部31を、第一のシャフト部21の基端部側(図1(b)中の上方向)に摺動させることで、ヒンジ部4を介して取付けられた当接部24に対し、基端部方向に引き上げる力を加えることとなる。この力により切欠き部23が変形し、当接部24を第一のシャフト部21に対して略垂直状態とすることができる。この状態にて、当接部24が体内臓器内面(例えば胃壁内面)に当接し掛止されることとなる。
【0019】
上述のとおり、ヒンジ部4は、第一のシャフト部21に対する当接部24の状態を変化させるための力を第二のシャフト部31から当接部24に伝えることが目的であり、この目的が達成されればその形状は特に限定されない。好ましくは、ヒンジ部4の厚みが0.1〜0.5mm、特に0.1〜0.3mmで形成されることが好ましい。ヒンジ部4の厚みが上記範囲内であれば、第二のシャフト部31の摺動操作性、ヒンジ部4自体の強度、繰返し性強度を良好とすることができ、さらに成形時における流動性樹脂の選択の幅が広がり、金型製作コストを低くできる可能性がある。
【0020】
上記第一のシャフト部21と第二のシャフト部31とは、上述した当接部24の第一のシャフト部21に対する略直線状態と略垂直状態とをそれぞれ規定するための位置決め手段を少なくとも一つ有していることが好ましい。これにより、患者の体内臓器内(例えば胃内)に存在する当接部24の第一のシャフト部21に対する状態を、術者が患者の体外から知ることができる。
【0021】
位置決め手段の一例を図2(a)、図2(b)に示す。
対向する第一のシャフト部21と第二のシャフト部31が向かい合う面で、第一のシャフト部21に第一の位置決め手段A211と第一の位置決め手段B212とが付設され、第二のシャフト部31に第二の位置決め手段311が付設されることで上述の機能が達成される。
第一の位置決め手段A211と第一の位置決め手段B212との間に位置する第二の位置決め手段311が、第一の位置決め手段B212側に当接した場合は、図2(a)に示すように、患者の体内臓器内(例えば胃内)で当接部24が第一のシャフト部21に対して略直線状態であることを示し、前記第一の位置決め手段A211側に当接した場合は、図2(b)に示すように、患者の体内臓器内(例えば胃内)で当接部24が第一のシャフト部21に対して略垂直状態であることを示している。
【0022】
上述の位置決め手段は一例であり、当接部24の第一のシャフト部21に対する略直線状態と略垂直状態をそれぞれ規定することができれば、手段は特に限定されない。単に第一のシャフト部21及び/又は第二のシャフト部31に印を付けるだけでも達成されるし、また上述の構成とは逆の、第一のシャフト部21に第二の位置決め手段に相当するもの、第二のシャフト部31に第一の位置決め手段Aと第一の位置決め手段Bに相当するものが付設されていても達成される。また、後述する第一のシャフト部21の基端部近傍に設けられる第一の体内迷入防止手段22と第二のシャフト部31の基端部近傍に設けられる第二の体内迷入防止手段32の当接をそのまま位置決め手段として利用することも可能である。
【0023】
上述のように、第一のシャフト部21と第二のシャフト部31の基端部近傍(図1(a)中の上側)には第一の体内迷入防止手段22と第二の体内迷入防止手段32がそれぞれ設けられ、生体組織厚測定具1が誤って患者の瘻孔に入り込んでしまうのを防止することができる。
第一の体内迷入防止手段22と第二の体内迷入防止手段32の形状は、患者の瘻孔の径よりも大きければその目的は達成され、それぞれのシャフト部の基端部近傍の面に略垂直方向に形成されてもよいし、ぞれぞれのシャフトよりも幅広にしてもよく、その形状は特に限定されない。
【0024】
また、第一の体内迷入防止手段22と第二の体内迷入防止手段32は、上述した第一のシャフト部21に対向した第二のシャフト部31を摺動操作する為の把持箇所としても利用できる。この操作の際の滑り止めとして、突起がそれぞれ付設されても良く、これにより生体組織厚測定具1を確実に把持して操作を実施できる。滑り止めの形状は特に限定されず、突起だけでなく凹状で形成されていても滑り止めとして機能することができる。
【0025】
上記第一のシャフト部21には、図3(a)に示すように、ガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤー挿通路5と、当接部24にガイドワイヤーを挿通可能な溝6を形成することができる。これにより、生体組織厚測定具1を既に留置されているガイドワイヤーに沿わせて操作することが可能となり、生体組織厚測定具1を患者の瘻孔へ正確にかつ安全容易に挿入することができる。
【0026】
また、ガイドワイヤー挿通路5と溝6を介して生体組織厚測定具1にガイドワイヤーを挿通させた状態で、上述した当接部24を第一のシャフト2に対して略直線状態と略垂直状態に変化させても、当接部24のガイドワイヤー経路は溝6で形成されている為、ガイドワイヤーの折れ曲がり等は発生せず、その後のボタン交換操作に全く影響を与えない。
【0027】
さらに、生体組織厚測定具1を瘻孔内へ挿入した後、誤ってガイドワイヤーが患者の瘻孔から体外に抜き去られてしまった場合でも、ガイドワイヤー挿通路5に沿って、ガイドワイヤーを患者の瘻孔を通して体内臓器内の目的部位に再挿入することができる。
【0028】
上記ガイドワイヤー挿通路5は、溝、孔等、その形状は特に限定されない。好ましくは、幅、深さ、若しくは直径等が0.9〜1.5mmであることが好ましく、特に0.9〜1.2mmが好ましい。上記寸法範囲内にすることで、特に0.035‘inch(インチ)のガイドワイヤーの挿入性に優れる。さらに、ガイドワイヤー挿通路5の経路上には、部分的であっても孔51を含むことがより好ましい。これにより、生体組織厚測定具1によるガイドワイヤーの補足機能が向上し、より安全確実に生体組織厚測定具1を患者の瘻孔に挿入することが可能となる。
【0029】
また別の実施形態として、図3(b)に示すようにガイドワイヤー挿通路5が溝のみで形成された場合、当接部24に形成される溝6の開口が、ガイドワイヤー挿通路5の開口と対向するように形成されていれば、前述したガイドワイヤー挿通路5に部分的でも孔51を含む形態と同様のガイドワイヤー補足機能を発揮することが可能である。
【0030】
上記溝6の寸法は特に限定されないが、直径が0.9〜1.5mmであることが好ましく、特に0.9〜1.2mmが好ましい。上記寸法範囲内であると、特に0.035‘inch(インチ)のガイドワイヤーの挿入性に優れる。
【0031】
上記第一のシャフト部21及び/又は第二のシャフト部31には目盛7を付設することができる(図1(a))。目盛7は、当接部24が第一のシャフト部21に対して略垂直状態となった場合の当接部24の上面から基端側(図1(a)中の上側)に向かって付設される。すなわち、目盛7は、当接部24の上面からの長さを示している。
【0032】
上記目盛7は、特に限定されないが、5〜100mmまで形成されるのが好ましく、更に10〜50mmまで形成されるのが好ましい。形成されている瘻孔の長さが、一般的に10〜50mmの範囲であるため、上記範囲内で目盛を形成することが実用的である。目盛7の間隔は、当接部24の上面からの長さが判断できれば、どのような間隔で形成されても良いが特に5mm間隔が好ましい。一般的に市販されている胃瘻用ボタンが5mm間隔の製品ラインナップであり、上記間隔で目盛7を付設することが実用的である。また、目盛7の形状は一目で判断できることが好ましく、数値の記載、突起、凹み、貫通によるものでも特に限定されない。
【0033】
さて、このような生体組織厚測定具1を構成する材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の樹脂材料等が挙げられる。特に限定はされないが、ヒンジ性能の高いポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0034】
次に、生体組織厚測定具1の使用方法の一例について図4〜図9を用いて説明する。具体的には体表部94から胃内96に留置されている瘻孔用ボタン91を交換する際に、瘻孔95の長さ(胃壁と腹壁の合計厚さ)を測定する方法について説明する。
【0035】
[1]図4に示すように、まず、患者に留置されている瘻孔用ボタン91の内腔にガイドワイヤー92を挿入して、体表部94から胃内96にガイドワイヤー92の先端部を留置する。
【0036】
[2]図5に示すように、ガイドワイヤー92を留置したまま瘻孔用ボタン91を体外93に抜去する。
【0037】
[3]次に、第一のシャフト部21に対向した第二のシャフト部31を、第一のシャフト部21の先端部側(図6中の下側)に摺動させ、当接部24を第一のシャフト部21に対して略直線状態に変化させる。この状態で、ガイドワイヤー92の体外93にある端部を生体組織厚測定具1の当接部24に設けられた溝6と、第一のシャフト部21に設けられたガイドワイヤー挿通路5に通す。このガイドワイヤー92に沿って生体組織厚測定具1を瘻孔95に挿入する。
このように、生体組織厚測定具1は、ガイドワイヤー92に沿って患者の瘻孔95に挿入されるので、生体組織厚測定具1は容易に適正な位置に案内され、さらに、生体組織厚測定具1の最大幅(第一のシャフト部21と第二のシャフト部31との合計の幅、または当接部24の幅)は、瘻孔95の大きさよりも小さいため、瘻孔95を損傷することも無い。
【0038】
[4]生体組織厚測定具1を瘻孔95から押込んでいき、当接部24を胃内96に完全に挿入した後、第一のシャフト部21に対向した第二のシャフト部31を第一のシャフト部21の基端部側(図7中の上側)に摺動させ、当接部24を第一のシャフト部21に対して略垂直状態に変化させる。この状態で生体組織厚測定具1をゆっくりと引き上げ、当接部24の上面を胃壁内面97に当接して掛止する。その後、胃壁内面97から体表部94面までの瘻孔95の長さを目盛7から読み取る。
このとき、位置決め手段により、患者の胃内96に存在する当接部24の第一のシャフト部21に対する状態を、術者は患者の体外93から簡単に知ることができる。
【0039】
[5]瘻孔95の長さを測定し終えたら、第一のシャフト部21に対向した第二のシャフト5部を、第一のシャフト部21の先端部側に再度摺動させ、当接部24を第一のシャフト部21に対して略直線状に変化させ(図8)、その後ガイドワイヤー92を留置したまま生体組織厚測定具1を体外93へ抜去する(図9)。
このとき、位置決め手段により、患者の胃内96に存在する当接部24の第一のシャフト部21に対する状態を、術者は患者の体外93から簡単に知ることができる。
【0040】
[6]最後に、測定した瘻孔95の長さに適した新しい瘻孔用ボタン91を、留置してあるガイドワイヤー92に沿って挿入する。瘻孔用ボタン91を留置した後、ガイドワイヤー92を体外93へ抜去する(図10)。
上述のように、本発明の生体組織厚測定具1及びこれを用いた測定方法により、最適な長さを有した新しい瘻孔用ボタン91に交換することができる。
【0041】
以上、本発明の生体組織厚測定具を図示の実施形態の基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、第一のシャフト部と、切欠き部と、当接部と、第二のシャフト部と、ヒンジ部と、ガイドワイヤー挿通路と溝と、目盛、さらに体内迷入防止手段、位置決め手段等の構成、形状等については同様の機能を有し得る任意の構成のものと置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の生体組織厚測定具を示す斜視図である。
【図2】本発明の生体組織厚測定具の側面図である。
【図3】本発明の生体組織厚測定具のGW挿通路を示す斜視図である。
【図4】本発明の生体組織厚測定具の使用方法を示す模式図1
【図5】本発明の生体組織厚測定具の使用方法を示す模式図2
【図6】本発明の生体組織厚測定具の使用方法を示す模式図3
【図7】本発明の生体組織厚測定具の使用方法を示す模式図4
【図8】本発明の生体組織厚測定具の使用方法を示す模式図5
【図9】本発明の生体組織厚測定具の使用方法を示す模式図6
【図10】本発明の生体組織厚測定具の使用方法を示す模式図7
【符号の説明】
【0043】
1 生体組織厚測定具
2 第一のシャフト本体
21 第一のシャフト部
211 第一の位置決め手段A
212 第一の位置決め手段B
22 第一の体内迷入防止手段
23 切欠き部
24 当接部
3 第二のシャフト本体
31 第二のシャフト部
311 第二の位置決め手段
32 第二の体内迷入防止手段
4 ヒンジ部
5 ガイドワイヤー挿通路
51 孔
6 溝
7 目盛
91 瘻孔用ボタン
92 ガイドワイヤー
93 体外
94 体表部
95 瘻孔
96 胃内
97 胃壁内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体表部より体内臓器に挿入して体表部から体内臓器内面までの生体組織厚を測定する生体組織厚測定具であって、
第一のシャフト部と、前記第一のシャフト部の基端部近傍に付設された第一の体内迷入防止手段と、前記第一のシャフト部の先端部近傍に付設された切欠き部と、前記切欠き部位置より先端側に形成され、体内臓器に当接する当接部とを有する第一のシャフト本体と、
第二のシャフト部と、前記第二のシャフト部の基端部近傍に付設された第二の体内迷入防止手段とを有する第二のシャフト本体と、
から構成され、
前記第二のシャフト本体は前記第一のシャフト本体に対向すると共に、前記当接部の先端から前記切欠き部の位置の間にヒンジ部を介して取付けられていることを特徴とする生体組織厚測定具。
【請求項2】
前記第一のシャフト部には、少なくとも一つの第一の位置決め手段を有する請求項1に記載の生体組織厚測定具。
【請求項3】
前記第一の位置決め手段は、前記第一のシャフト部の基端部側に付設された第一の位置決め手段Aと、先端部側に付設された第一の位置決め手段Bと、を有するものである請求項1又は2に記載の生体組織厚測定具。
【請求項4】
前記第二のシャフト部には、少なくとも一つの第二の位置決め手段を有する請求項1に記載の生体組織厚測定具。
【請求項5】
前記第一のシャフト部には、前記切欠き部近傍より前記第一のシャフト部基端部側に向かって、ガイドワイヤー挿通路を有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生体組織厚測定具。
【請求項6】
前記当接部は、溝を有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生体組織厚測定具。
【請求項7】
前記第一のシャフト部及び/又は第二のシャフト部には目盛部が付設されている請求項1ないし6のいずれかに記載の生体組織厚測定具。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の生体組織厚測定用具を用いて体表部より体内臓器内に前記生体組織厚測定具を挿入して体表部から体内臓器までの生体組織厚を測定する方法であって、
前記当接部と前記第一のシャフト部とを略直線状態とし、体表部から体内臓器内に挿入する手順1と、
前記当接部を前記第一のシャフト部に対して略垂直状態とさせる手順2と、
前記第2手順の状態のまま、前記生体組織厚測定具を体表部側に引上げて前記当接部を体内臓器内面に当接させる手順3と、
前記当接部を体内臓器内面に係止させ、体表部に出た前記第一のシャフト部及び/又は第二のシャフト部に付設された目盛を読む手順4と、
によって生体組織厚を測定することを特徴とする生体組織厚の測定方法。
【請求項9】
前記手順1は、前記第二の位置決め手段を前記第一のシャフト部先端側に付設された前記第一の位置決め手段Bに合わせることによってなる請求項8に記載の生体組織厚の測定方法。
【請求項10】
前記手順2は、前記第二の位置決め手段を前記第一のシャフト部基端部側に付設された前記第一の位置決め手段Aに合わせることによってなる請求項8に記載の生体組織厚の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−237283(P2008−237283A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78551(P2007−78551)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】