説明

生体認証装置用距離測定装置および生体認証装置

【課題】生体の認証に関し、たえず動きのある被写体の皮膚、髪などの被写体表面による反射波のばらつきがあっても、正確かつ迅速に被写体までの距離を検出し認証作業を行うことを可能とする。
【解決手段】生体認証装置1は、被写体までの距離情報を算出する測距部40と、撮影部20で撮影して得た眼画像に含まれる光源12aと光源12bの画像から被写体までの距離情報を算出する距離算出部33と、算出された距離情報から測距部40で算出された距離情報算出の校正を行う校正部34とを備え、測距部40の校正された距離情報を使って被写体を最適な撮影位置に誘導し、誘導された被写体の眼を撮影部20で撮影する。虹彩情報処理部70は撮影して得た認証情報にもとづいて被写体の認証を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の認証、特に生体を撮影して得た画像情報にもとづいて生体を認証する装置に用いられる生体認証装置用距離測定装置、その生体認証装置用距離測定装置を搭載した生体認証装置、生体認証装置付携帯情報装置、生体認証装置用距離測定装置の校正方法、生体認証方法および生体認証用距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入退室管理装置や個人情報などの重要な情報が記憶された情報装置など、高いセキュリティ性が求められる装置におけるアクセス時の本人認証の方法として、人体の指紋、虹彩、眼底血管、顔の特徴、腕や手などの血管パターンなど、被写体固有のいわゆるバイオメトリクス情報を用いた様々な認証方法が実用化されていた。
【0003】
そのひとつとして、眼の虹彩部分の皺の模様の違いを利用した認証方法(以下、この認証方法を「虹彩認証方法」という)が提案され、実用化されていた。
【0004】
この虹彩認証方法では、近赤外線照明などで被写体の眼およびその周辺を照明し、カメラを用いて被写体の眼を含む領域を撮影していた。そして、カメラで撮影して得た眼を含む画像(以下、「眼画像」という)から虹彩領域を抽出して虹彩部分の皺の模様の違いが数値情報として表されるようにコード化した認証情報を作成し、この認証情報をあらかじめ登録された認証情報(以下、「登録認証情報」という)と比較照合していた。比較照合の結果、互いに一致すると判定された場合には、被写体があらかじめ登録されたものであるとして認証していた。
【0005】
一方、前述のような虹彩認証方法によって本人認証を行う認証装置では、認証装置が認証可能な眼画像、すなわち被写体の眼の虹彩部分を適切な大きさと位置で撮影し、撮影によって得た鮮明な眼画像を認証装置内に取り込まなければならない。通常、被写体はカメラから離れた位置でたえず動いているので、認証装置は被写体を適切な撮影位置に誘導しなければならなかった。そのためには、認証装置は、カメラと被写体との距離を迅速に精度よく測定しながら、被写体を撮影位置に誘導する必要があった。
【0006】
対象物までの距離を測定する装置として、電磁波、超音波または光源からなる照射波を対象物に照射し、対象物の表面で反射される照射波の反射波を受け取ることで対象物までの距離を測定する、いわゆる測距センサが一般に知られている。そして、この測距センサを用いた撮影装置に関する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
一方、対象物までの距離を精度よく測定する装置として、照明部により照明された被写体の眼の領域を撮影し、撮影して得た眼画像の中から照明領域の画像を検出し、その検出結果にもとづいて被写体の眼までの距離を算出する手法が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−287621号公報
【特許文献2】特開2005−140667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の測距センサを使った測距方法では、被写体の皮膚の表面が比較的照射波を強く反射するような状態であれば、測距センサによって測定される被写体までの距離は実際よりも短い結果となりやすく、あるいは、被写体の皮膚の表面が比較的照射波を弱く反射するような状態であれば、測距センサによって測定される被写体までの距離は実際よりも長い結果となりやすかった。
【0009】
このように、測距センサを使った距離測定方法では高速に距離を測定できる反面、その測定結果は、被写体ごとに変わってしまうため、異なる被写体を認証する認証装置では、精度が得られないといった課題があった。
【0010】
一方、照明部が照明した眼領域を撮影して得た眼画像を利用する距離測定方法は、測距センサと比較して、より高い精度で被写体までの距離を測定することができる。しかしながら、撮影して得た眼画像に対して画質補正、虹彩領域の切り出し、特徴抽出など様々な画像処理を行って距離を算出するため、迅速に距離を測定できないといった課題があった。そのため、認証装置は、たえず動きのある被写体を適正な撮影位置に誘導することができなかった。
【0011】
上述のように、従来、開示されているいずれの方法も、被写体と認証装置までの距離を正確かつ迅速に測定できる距離測定装置がなかった。このため、認証装置はたえず動きのある被写体に対して最適な眼画像を得ながら認証作業を行うことができなかった。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、生体の認証に関し、たえず動きのある被写体の皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射波のばらつきがあっても、正確かつ迅速に被写体までの距離を検出し認証作業を行うことができる生体認証装置用距離測定装置および生体認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明の生体認証装置用距離測定装置は、互いに異なる位置から被写体の眼を含む領域を照明する少なくとも2つの光源を有する照明部と、前記被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影する撮影部と、前記被写体に照射波を照射するとともに前記照射波の前記被写体による反射波を受け取ることで前記被写体までの距離情報を算出する測距部と、前記撮影部において撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源の画像の間隔にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出する距離算出部と、前記距離算出部において算出された前記被写体までの距離情報にもとづき前記測距部で算出する距離情報の算出を校正する校正部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、被写体ごとに撮影して得た眼画像に含まれる光源の画像の間隔にもとづいて被写体の眼までの距離情報を正確に算出し、その算出された距離情報にもとづいて測距部での距離情報算出の校正を行うことができる。よって、この校正された距離情報を使って被写体を適正な位置に誘導して被写体の眼を撮影することが可能となる。したがって、被写体ごとに皮膚、髪などの被写体表面による反射波のばらつきがあっても、迅速かつ正確に被写体までの距離を測定できる。
【0015】
また、前記眼画像に含まれる前記光源の画像の間隔と前記被写体までの距離の関係を表す対比情報をあらかじめ記憶させた対比情報記憶部を備え、前記距離算出部は、前記撮影部において撮影して得られる前記被写体の前記眼画像に含まれる前記光源の画像の間隔と前記対比情報とから前記被写体までの距離情報を算出するようにしてもよい。
【0016】
この構成によれば、さらに、認証すべき被写体ごとに、2つの方向からの光源が写り込んだ眼画像にもとづいて被写体の眼までの距離情報を正確に算出して、測距部での距離情報算出の校正を行うことが可能となる。
【0017】
また、前記測距部は、受け取った前記反射波によって得られる出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報をあらかじめ記憶させた測距対比情報記憶部と、前記測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離を算出する測距距離算出部とを有し、前記校正部は、前記距離算出部で算出された距離情報と前記測距距離算出部で算出された距離情報との差にもとづき前記測距距離算出部で算出される距離情報を前記距離算出部で算出された距離情報に補正するように前記測距対比情報を校正するようにしてもよい。
【0018】
この構成によれば、さらに、測距距離算出部はこの補正された測距対比情報で距離の算出ができるようになり、距離情報算出の精度を高めることができる。
【0019】
また、本発明の生体認証装置は、上記の生体認証装置用距離測定装置と、前記測距部で算出される距離情報にもとづいて被写体を所定の位置に誘導する誘導部と、誘導された前記被写体を前記撮影部で撮影して得た認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、被写体ごとに校正された距離情報で被写体を誘導して眼を撮影することが可能となる。よって、認証処理部は、皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射波のばらつきがあっても、迅速かつ正確に認証作業を行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明の生体認証装置は、上記の生体認証装置用距離測定装置と、前記測距部で算出される距離情報にもとづいて前記被写体に対して前記撮影部の焦点調整を行う焦点調整部と、焦点調整された前記撮影部で撮影して得た認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、校正された距離情報により焦点合わせを行い被写体の眼を撮影することが可能となる。したがって、認証処理部は、皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射波のばらつきがあっても、迅速かつ正確に認証作業を行うことが可能となる。
【0023】
また、前記校正部は、前記被写体ごとに前記測距部で算出される距離情報を校正するようにしてもよい。
【0024】
これによれば、さらに、被写体ごとに距離情報の校正を行うことでき、被写体ごとに皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射波のばらつきがあっても、迅速かつ正確に認証作業を行うことが可能となる。
【0025】
また、前記誘導部は、前記測距部で算出される距離情報と前記所定の位置情報とを比較し、前記被写体までの距離が適正か否かを判別する距離判別部とを備え、前記距離判別部の判別結果にもとづき前記被写体を前記所定の位置に誘導する構成としてもよい。
【0026】
この構成によれば、さらに、被写体を撮影に適した位置に迅速に誘導できる。
【0027】
また、前記撮影部は固定焦点レンズを有し、前記所定の位置情報は、前記固定焦点レンズの焦点深度領域情報であってもよい。
【0028】
これにより、固定焦点レンズを有する撮影部を備える生体認証装置で、被写体を固定焦点レンズの焦点深度の領域内に誘導することが可能となる。
【0029】
また、前記撮影部は固定焦点レンズを有し、前記誘導部は、前記被写体が前記固定焦点レンズの焦点位置を通過するように前記被写体を前方向または後方向に誘導するようにしてもよい。
【0030】
これによれば、さらに、誘導部は被写体を固定焦点レンズの焦点位置に誘導でき、焦点の合った鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0031】
また、本発明の生体認証装置付携帯情報装置は、上記の生体認証装置と、音声または情報を送受信するデータ送受信部と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、生体認証装置は距離情報にもとづいて被写体の誘導または撮影部の焦点調整を行うことができる。これにより、携帯情報装置のような離れた位置よりたえず動く被写体の認証を行う携帯機器でも、迅速、確実に認証作業を行うことができる。
【0033】
また、本発明の生体認証装置用距離測定装置の校正方法は、被写体の少なくとも眼を含む領域に少なくとも2つの光源を用いて互いに異なる方向から照明するステップと、前記少なくとも2つの光源によって照明された被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影するステップと、撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源それぞれの画像を検出するステップと、前記眼画像から検出された前記光源の画像の間隔を算出するステップと、前記光源の画像の間隔にもとづき前記被写体までの距離情報を算出するステップと、照射波を前記被写体に照射するとともに前記照射波の前記被写体における反射波を受け取って得られる出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出するステップと、前記光源の画像の間隔にもとづき算出された距離情報と前記測距対比情報にもとづいて算出された距離情報との差にもとづき前記測距対比情報を使って算出される距離情報を前記光源の画像の間隔にもとづき算出された距離情報に補正するように前記測距対比情報を校正するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0034】
この方法によれば、各被写体の皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射光のばらつきがあっても、正確に被写体までの距離情報を算出するように生体認証装置用距離測距装置の距離情報算出を校正することができる。
【0035】
また、本発明の生体認証方法は、照射波を前記被写体に照射するとともに前記照射波の被写体における反射波を受け取って得た出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出する第1の測距ステップと、前記被写体の少なくとも眼を含む領域に少なくとも2つの光源を用いて互いに異なる方向から照明し、前記光源によって照明された前記被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影し、撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源それぞれの画像を検出し、前記眼画像から検出された前記光源の画像の間隔にもとづき前記被写体までの距離情報を算出する第2の測距ステップと、前記被写体ごとに前記第1の測距ステップで得られた距離情報を前記第2の測距ステップで得られた距離情報に補正するように前記第1の測距ステップにおける距離情報算出を校正する校正ステップと、校正された距離情報にもとづいて前記被写体を所定の位置に誘導する誘導ステップと、誘導された前記被写体を撮影して得た認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証ステップと、を備えることを特徴とする。
【0036】
この方法によれば、応答速度が速いが各被写体の皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射光のばらつきによって距離情報が変動する第1の測距ステップを、応答速度は遅いが、測距精度のよい第2の測距ステップで得られた距離情報で校正して使うことで、応答性のよい、距離の測定精度の高い測距を可能にする。この校正された距離情報を用いて被写体を所定の位置に誘導しながら被写体の眼を撮影し、撮影して得た認証情報を用いて認証作業を行うことができる。よって、たえず被写体との撮影距離が変動しても、迅速かつ正確な距離を検出しながら認証作業を行うことができる。
【0037】
また、本発明の生体認証方法は、照射波を被写体に照射するとともに前記照射波の前記被写体における反射波を受け取って得た出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出する第1の測距ステップと、前記被写体の少なくとも眼を含む領域に少なくとも2つの光源を用いて互いに異なる方向から照明し、前記光源によって照明された被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影し、撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源それぞれの画像を検出し、前記眼画像から検出された前記光源の画像の間隔にもとづき前記被写体までの距離情報を算出する第2の測距ステップと、前記被写体ごとに前記第1の測距ステップで得られた距離情報を前記第2の測距ステップで得られた距離情報に補正するように前記第1の測距ステップにおける距離情報算出を校正する校正ステップと、校正された距離情報にもとづいて撮影部の焦点調整を行う焦点調整ステップと、焦点調整後に前記撮影部で撮影して得た前記被写体の認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証ステップと、を備えることを特徴とする。
【0038】
この方法によれば、応答速度が速いが各被写体の皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射光のばらつきによって距離情報が変動する第1の測距ステップを、応答速度は遅いが、測距精度のよい第2の測距ステップで得られた距離情報で校正して使うことで、応答性のよい、距離の測定精度が高い測距を可能とする。この校正された距離情報を用いて撮影部の焦点調整を行いながら、被写体を撮影して認証作業を行うことができる。よって、たえず被写体との撮影距離が変動しても、迅速かつ正確な距離を検出しながら認証作業を行うことができる。
【0039】
また、本発明の生体認証用距離測定方法は、第1の応答性と第1の精度で被写体までの距離情報を算出する第1の測距ステップと、第1の応答性より遅い第2の応答性と、第1の精度より高い第2の精度で前記被写体までの距離情報を算出する第2の測距ステップと、前記被写体ごとに前記第1の測距ステップで得られた距離情報を前記第2の測距ステップで得られた距離情報に補正するように前記第1の測距ステップにおける距離情報算出を校正する校正ステップと、を備えることを特徴とする。
【0040】
この方法によれば、応答速度は速いが各被写体の皮膚、髪などの被写体表面の違い反射光のばらつきによって距離情報が変動する第1の測距ステップを、応答速度は遅いが距離測定精度のよい第2の測距ステップで得られた距離情報で校正して使うことで、距離の測定精度が高い測距を可能とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、生体の認証に関し、たえず動きのある被写体の皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射波のばらつきがあっても、正確かつ迅速に被写体までの距離を検出し認証作業を行うことができる生体認証装置用距離測定装置および生体認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0043】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態における生体認証装置は、被写体を撮影し、撮影して得た被写体の認証情報と、あらかじめ登録した登録認証情報とを比較照合し、被写体があらかじめ登録されているものであるか否かを認証するものである。認証情報とは、たとえば、眼画像から虹彩領域を抽出して虹彩部分の皺の模様の違いが数値情報として表されるようにコード化した情報である。なお、被写体の顔を撮影して得た顔画像から濃淡情報、空間周波数情報などの特徴量を抽出した顔情報でもよい。
【0044】
たえず動きのある被写体から鮮明な認証画像(たとえば眼画像)を得るには、被写体までの距離を迅速にかつ正確に検出して認証作業を行う必要がある。しかし、被写体の皮膚、髪などの被写体表面の違いによる反射光のばらつきがあっても、正確かつ迅速に被写体までの距離を検出できる距離測定装置がなかった。
【0045】
そのために、本発明の生体認証装置は、第1の応答性と第1の精度で被写体までの距離情報を算出する第1の測距方法と、第1の応答性より遅い第2の応答性と、第1の精度より高い第2の精度で被写体までの距離情報を算出する第2の測距方法を使って、被写体ごとに第1の測距方法で得られた距離情報を第2の測距方法で得られた距離情報に補正するよう第1の測距方法における距離情報算出を校正するようにしている。この校正された距離情報にもとづいて被写体を誘導し、誘導された被写体を撮影して得た眼画像の虹彩部分を用いて被写体があらかじめ登録されているものであるか否かを認証している。
【0046】
本発明の実施の形態では、この第1の測距方法として、照射波を被写体に照射するとともに照射波の被写体における反射波を受け取って得られる出力と被写体までの距離の関係を表す対比情報にもとづいて被写体までの距離情報を算出する方法を実施例として説明する。なお、照射波は、電磁波、超音波または光線などである。以下、光線を例に説明する。
【0047】
また、この第2の測距方法として、2つの光源を使って互いに異なる位置から照明した照明光が映った眼を撮影し、撮影して得た眼画像に写り込んだスポットの画像(以下、「光源の画像」という)の間隔にもとづいて被写体までの距離情報を算出する方法を実施例として説明する。
【0048】
また、認証情報として、虹彩情報を実施例として説明する。
【0049】
本発明の実施の形態1である生体認証装置について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における生体認証装置1の外観を示す正面図である。
【0050】
図1に示すように、生体認証装置1は、照射波を被写体に照射する光線照射部41aと照射波の被写体における反射波を受け取る反射光受光部41bを有する測距センサ41を備え、反射光受光部41bの出力と被写体までの距離の関係を表す情報(以下、「測距対比情報」という)にもとづいて被写体までの距離情報を算出する測距部40と、被写体の少なくとも眼を含む領域に2つの光源12a、12bを使って互いに異なる方向から照明する照明部10と、光源12a、12bによって照明された被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影し、被写体の眼画像に含まれる光源の画像を得る撮影部20とを備える。
【0051】
生体認証装置1は、この被写体の眼に映り込んだ2つの光源のスポットを含めて撮影して得た光源の画像の間隔と被写体までの距離の関係を表す情報(以下、「対比情報」という)を使って被写体までの距離情報を算出する。そして、光源の画像の間隔にもとづいて算出した距離情報に近似するように測距対比情報を校正する。測距部40は、測距センサ41の出力から補正された測距対比情報を使って校正された距離情報を算出するものである。測距対比情報と対比情報の詳細については後述する。
【0052】
この校正は、被写体ごとに行われる。これにより、各被写体の皮膚、髪などの被写体表面による反射光のばらつきがあっても、正確かつ迅速に被写体までの距離を測定できる。
【0053】
つぎに、校正された距離情報にもとづいて被写体を誘導し、誘導された被写体を撮影して得た眼画像の虹彩部分を用いて被写体があらかじめ登録されているものであるか否かを認証するものである。
【0054】
なお、照明用LED12は近赤外光を発光する発光素子などであり、撮影部20の光軸に関して対称に配置された一対のLED(発光ダイオード)である。
【0055】
また、照明用LED12を2個使用したが、少なくとも1組の光源の画像の間隔が測定できる個数であればよい。さらに、照明用LED12は、3個でも4個でもよい。これにより、たとえば3個の照明用LED12を使って照明した眼を撮影して得た眼画像には、3個の光源の画像が含まれ、そこから2組の間隔の測定が可能となる。同様に、照明用LED12が4個では、4組の間隔の測定が可能となる。これにより、眼の曲率による誤差を排除するため、複数の間隔の平均を求めるなど距離の精度を向上させることができる。
【0056】
また、生体認証装置1は、認証を必要とする本人の認証情報を登録する登録機能と、登録認証情報にもとづいて本人の認証を行う認証機能の2つの機能とを備えている。すなわち、生体認証装置1は、登録時には被写体の眼を含む領域を、照明用LED12を発光させて、その眼を撮影し、撮影して得た眼画像の虹彩部分に関する情報を登録認証情報として登録する。そして、生体認証装置1は、認証時には撮影して得た眼画像の虹彩部分を用いて虹彩認証を行い、被写体があらかじめ登録されたものかどうかを判定し、その結果を電気信号として出力する。
【0057】
なお、被写体が眼の位置を確認できるように誘導鏡13を備えてもよい。校正された測距部40のみを用いて被写体を誘導するようにすれば、誘導鏡13はなくてもよい。
【0058】
つぎに、本発明の実施の形態1における生体認証装置1の基本構成と各部の機能について、図2を用いて説明する。図2は、生体認証装置1の構成を示すブロック図である。
【0059】
図2に示すように、生体認証装置1は、照射波を被写体に照射するとともに照射波の被写体における反射波を受光して得られる出力と被写体までの距離の関係を表す測距対比情報にもとづいて被写体までの距離情報を算出する測距部40と、被写体の少なくとも眼を含む領域に少なくとも2つの照明光を互いに異なる方向から照射する照明部10と、少なくとも2つの照明光によって照射された被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影する撮影部20と、撮影して得た被写体の眼画像に写り込んだ少なくとも2つの光源の画像の間隔にもとづき被写体までの距離情報を算出し、測距部40で算出される距離情報を校正する画像信号処理部30と、測距部40で校正後に算出された距離情報にもとづいて被写体を誘導する誘導部14と、誘導された被写体を撮影して得た眼画像の虹彩部分を用いて被写体の認証を行う虹彩情報処理部70とを備えている。なお、被写体が眼の位置を確認するために誘導鏡13を備えてもよい。
【0060】
照明部10は、被写体の眼を照明する照明用LED12と、照明用LED12の明るさを制御する照明制御部11とを備えている。
【0061】
照明用LED12は、レンズ21の光軸に関して対称に、それぞれレンズ21の中心から一定の距離を有する位置に配置された一対のLED12aとLED12bとを有し、2つの光源により異なる方向から被写体の眼を含む領域に照明光を照射することができる。照明制御部11は、照明用LED12からの照明光が眼画像取得に適した光量となるように発光の明るさを制御する機能を有している。
【0062】
測距部40は、被写体に距離測定用の光線を照射する光線照射部41aと、被写体からの反射光を受光する反射光受光部41bとを有する測距センサ41と、測距センサ41で受光した検出信号の出力を距離情報に変換するための測距対比情報を記憶する測距対比情報記憶部43と、測距対比情報記憶部43からの測距対比情報をもとに被写体の眼を含む撮像領域(以下、この領域を「撮像領域」という)と撮像素子との距離情報(以下、この距離を「撮像距離」という)を算出する測距距離算出部42とを備えている。
【0063】
誘導部14は、測距部40で算出される撮影距離とあらかじめ保持している所定の距離とを比較して撮影距離が撮影に適した距離かどうかを判別する距離判別部15と、判別した結果に応じて被写体を撮影に最適な位置に移動させるように誘導指示を行う指示部16と、指示部16の指示を被写体に伝えるスピーカ17とを備えている。
【0064】
レンズ21の前面に設置された誘導鏡13は、被写体がその反射画像を見ることによって自身の眼の位置を確認するために用いる。また、誘導鏡13は一般に知られている半透光性の素材から形成されており、光の反射と透過とを同時に行い、透過された光の一部は撮影部20に入力される。
【0065】
距離判別部15は、判別結果の情報のひとつとして、被写体との撮影距離が近すぎるか、遠すぎるかを指示部16に伝える。指示部16は、距離判別部15からの情報判別結果にもとづいて被写体に対して近づくよう誘導したり、遠ざかるように誘導したりする指示、装置の操作方法、注意事項、適正な眼画像が得られたことなど、スピーカ17から音声により逐次被写体に知らせる。また、距離判別部15は、撮影部20で撮影した眼が適切な位置にあるかどうかを、後述する画像信号処理部30の距離算出部33から取得した距離情報から判定し、校正部34に撮影位置が適正であるときは校正作業を行わせる。また、距離判別部15は、撮影位置が適正でないときは、校正部34に校正作業を行わせない。
【0066】
撮影部20は、一般に用いられている固定焦点レンズで構成されたレンズ21と、CCDなどの素子で構成された撮像素子22と、前処理部23とを備えている。照明用LED12から発せられた近赤外光は、被写体の眼やその周囲で反射され、その反射光はレンズ21を通して撮像素子22に入力される。入力された入射光は、撮像素子22で光電変換され、電気信号として前処理部23に入力される。
【0067】
前処理部23は、撮像素子22より入力した電気信号から画像信号成分を取り出し、コントラストやフォーカスなどに関する画質判定を行う。また、前処理部23は、ゲイン調整など、画像信号として必要な処理を行ったうえで画像信号処理部30に最適な画像信号を出力する。なお、レンズ21または撮像素子22においては、近赤外光を透過し可視光をカットするような特性のフィルタを備えることが望ましい。
【0068】
なお、撮影部20は、測距部40から校正された距離情報を受け取り、校正された距離情報にもとづいて焦点調整部24によりレンズ21を移動させ、被写体に対して焦点調整を行うようにしてもよい。これにより、被写体を誘導することなく、認証可能な鮮明な眼画像を得ることができる。
【0069】
画像信号処理部30は、撮影部20からの眼画像を検出する反射光検出部31と、検出した眼画像に写り込んだ光源の画像の間隔と撮像距離との関係である対比情報を記憶する対比情報記憶部32と、反射光検出部31および対比情報記憶部32の情報をもとに撮像距離を算出する距離算出部33と、算出された距離により測距部40の距離情報算出の校正を行う校正部34と、撮影部20から出力された眼画像から瞳孔位置を検出する瞳孔検出部35と、瞳孔検出部35において検出された瞳孔の位置が眼画像の中心位置にあるか否かを判断する眼位置判断部36と、眼位置判断部36からの判断結果を受け、撮影部20から眼画像を取り込み、それを認証用または登録用の眼画像として虹彩情報処理部70に出力する認証画像取得部37とを備えている。
【0070】
より詳しくは、反射光検出部31は、撮影部20で撮影された眼画像から照明用LED12の反射光を検出する。対比情報記憶部32は、照明用LED12からの照明が写り込んだ眼画像に含まれる光源の画像の間隔と撮像距離との関係を表す対比情報を記憶する。距離算出部33は、反射光検出部31と対比情報記憶部32に記憶した対比情報とから撮像距離を算出し、校正部34、距離判別部15に距離情報を伝達する。校正部34は、算出された撮像距離により測距部40での距離情報算出に係る情報を校正する。ここでは、校正部34は測距対比情報を補正することで、距離情報算出の校正を行う。また、校正部34は、距離判別部15から被写体との撮影位置が適正であるとの情報を受けた後、撮影部20が撮影して得た眼画像にもとづいて測距対比情報を補正し、距離情報算出の校正を行う。なお、測距対比情報を校正するとしたが、測距センサ41の出力にオフセットを加算することで補正するようにしてもよい。いずれの方法でも、光源の画像の間隔から求めた距離情報と同じになるように校正できる。
【0071】
瞳孔検出部35は、前処理部23から出力された眼画像の信号の中から瞳孔位置を検出する。眼画像の信号の中から瞳孔位置を検出する方法としては、テンプレートマッチングを用いる方法、あるいは周回積分を用いる方法(特表平8−504979公報)などの一般に知られた技術を使用することができる。
【0072】
眼位置判断部36は、瞳孔検出部35において検出された瞳孔の位置が眼画像の中心位置にあるか否かを判断し、眼画像の中心位置で瞳孔を一定の時間(たとえば0.5秒程度)安定して検出できた場合に眼が適切な位置に配置された旨の信号を認証画像取得部37に出力する。
【0073】
認証画像取得部37は、眼位置判断部36からの信号を受け、前処理部23から出力された眼画像の信号を取り込み、それを認証用または登録用の眼画像として虹彩情報処理部70に出力する。
【0074】
虹彩情報処理部70は、眼画像撮影装置50で撮影された眼画像を用いて虹彩の認証処理を行う虹彩認証処理部71と、眼画像撮影装置50で撮影された眼画像の虹彩情報の登録を行う虹彩情報登録部72と、虹彩情報を記憶する記憶部73とを備えている。
【0075】
虹彩認証処理部71は、画像信号処理部30から出力される認証用の眼画像から虹彩領域の画像を切り出し、虹彩部分の皺の模様にもとづいた認証情報を作成した後、あらかじめ登録された認証用の虹彩情報と照合し、互いに一致するか否かを判定して被写体が登録したものであるか否かの判断を行う。
【0076】
虹彩情報登録部72は、画像信号処理部30から出力される認証用の眼画像から虹彩領域の画像を切り出し、虹彩部分の皺の模様にもとづいた認証情報を作成した後、この認証情報を登録認証情報として記憶部73に登録する。
【0077】
記憶部73は、磁気または光を利用して情報を記録する記録装置または半導体メモリーを利用した記録装置などからなり、登録認証情報およびその他の必要な情報を記憶する。
【0078】
なお、虹彩情報処理部70においては、虹彩認証処理部71および虹彩情報登録部72における共通の処理、たとえば、画像信号処理部30から出力される認証用の眼画像から虹彩領域の画像を切り出し虹彩部分の皺の模様にもとづいた認証情報を作成する処理などは共通して行う構成としてもよい。また、虹彩情報処理部70の機能に関しては、たとえば、上述した特許文献1に記載された従来の方法を用いることができる。
【0079】
なお、画像信号処理部30、前処理部23、照明制御部11、校正部34、距離判別部15、および虹彩情報処理部70の機能は、それぞれハードウェアで実現されてもよく、ソフトウェアで実現可能に記述され演算装置などで実行される構成であってもよい。ソフトウェアを使用する場合には、各機能ブロックに関するプログラムを演算装置にロードしたコンピュータを用いて眼画像撮影装置50および虹彩情報処理部70を構成することが可能となる。
【0080】
つぎに、本発明の実施の形態1における生体認証装置1の動作について説明する。
【0081】
図3は、生体認証装置1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、被写体が生体認証装置1に表示される案内(図示せず)に従い、生体認証装置1に配設されたスタートボタン(図示せず)を押すなどの操作により、認証動作または登録動作を開始する。
【0082】
つぎに、被写体はスピーカ17の指示に従い、生体認証装置1の誘導鏡13を見ながら眼の位置合わせを行う。画像信号処理部30は、測距部40での距離情報算出を校正するために照明制御部11に対して眼画像撮影の準備を指示する。照明制御部11は、撮影の準備が完了すると撮影部20に対して撮影を指示する。撮影部20は、2つのLED12a、12bを使って互いに異なる方向から被写体の眼領域に照明し、被写体の眼を撮影する(S100)。なお、生体認証装置1は、認証する被写体が変わるごとに校正作業を1回行ってもよいし、同じ被写体を認証中に複数回行ってもよい。測距センサ41は被写体ごとに異なる出力になるため、少なくとも被写体が変わったときに1回の校正作業を行えばよい。
【0083】
そして、距離判別部15は、撮影部20で撮影して得た眼画像が適切な撮影距離で撮影されたものであるか否かを距離算出部33から取得した距離情報から判断し、適正な撮影位置での撮影に成功したときに測距部40の校正用眼画像の撮影を終了する(S101)。生体認証装置1は、不適正な撮影位置で撮影された場合、S100に戻り、再度校正用眼画像の撮影を行う。
【0084】
生体認証装置1は、測距部40の校正用眼画像の撮影が終了すると、前処理部23から眼画像に関する情報を画像信号処理部30に伝達し、画像信号処理部30はこの眼画像に関する情報を用いて測距部40の距離情報算出の校正を行う(S102)。
【0085】
測距部40は、測距センサ41の出力と被写体までの距離の関係を表す測距対比情報を使って距離情報を算出する。具体的には、測距距離算出部42は、測距対比情報記憶部43に記憶されている測距対比情報を使って測距センサ41の出力から被写体までの撮影距離の情報を算出する。ここで、測距距離算出部42は、測距対比情報記憶部43にあらかじめ記憶されている測距対比情報(以下、この測距対比情報を「基本対比情報」という)を用いて測距センサ41の出力にもとづいて被写体までの距離情報を算出する。測距部40の校正方法の詳細については後述する。
【0086】
画像信号処理部30は、前処理部23からの情報をもとに、反射光検出部31、対比情報記憶部32に記憶した対比情報および距離算出部33により被写体との撮像距離を算出する。そして、校正部34は、距離算出部33で算出した距離情報と測距距離算出部42で算出した距離情報との差を検出し、測距対比情報記憶部43に記憶されている基本対比情報を補正する。これにより、校正部34は、測距距離算出部42で算出する距離情報が距離算出部33で算出された距離情報と実質的に同じになるように校正する。ここで、反射光検出部31は撮影部20で撮影して得た眼画像に含まれる照明用LED12のスポットの光源の画像を検出し、距離算出部33は検出された2つの光源の画像の間隔を検出し、対比情報記憶部32に記憶した対比情報を使って撮影距離を算出する。
【0087】
つぎに、測距距離算出部42は、測距センサ41の出力を取得し、測距対比情報記憶部43に記憶されている補正後の基本対比情報を用いて距離情報への変換作業を行い、校正された距離情報を算出する。
【0088】
誘導部14は、測距部40を用いて算出された距離情報を判別し、判別結果にもとづき被写体に対して位置の移動に関する誘導指示を行う(S103)。誘導部14は、撮影部が備える固定焦点レンズの焦点距離を含む焦点深度内の領域に被写体を誘導するため、あらかじめ被写体を誘導する位置までの撮影距離(以下、この撮影距離を「基準距離」という)を保持する。誘導部14は、この基準距離を判断の基準とし、測距部40で算出される距離情報にもとづいて被写体を誘導する。また、誘導部14は、撮影部20がレンズ21の焦点位置で被写体を撮影できるように、被写体を焦点深度の領域内にある焦点位置を通過させるよう、前方向または後方向に移動するように被写体に指示を出す。ここで、被写体が撮影部20に近づく方向を前方向、遠ざかる方向を後方向とする。これにより、誘導部14は、被写体がかならずレンズ21の焦点位置を通過するように誘導できる。
【0089】
これにより、誘導部14は、固定焦点レンズの焦点位置に被写体を誘導できる。また、撮影部20は、焦点の合った鮮明な眼画像を得ることができる。
【0090】
距離判別部15は、測距部40からの距離情報により撮像距離が基準距離を含む許容範囲内にあるか否かを判断し(S104)、許容範囲内になったとき、撮影部20に指示して被写体の眼を撮影する(S105)。
【0091】
前処理部23は、撮影して得た眼画像のフォーカス、輝度、コントラストなどの画質が適切であるかを判定し、適切でない場合には被写体に対する誘導指示などを含め必要な処理を行い、S103に戻り、再度眼を撮影する(S106)。
【0092】
瞳孔検出部35は、前処理部23において画質が適切であると判定されると、前処理部23から出力された眼画像の信号から瞳孔位置を検出する。眼位置判断部36は、瞳孔の位置が眼画像の中心位置にあるか否かを判断する。認証画像取得部37は、前処理部23と眼位置判断部36で画質および瞳孔の位置が適切であると判断された眼画像を認証用または登録用の眼画像として虹彩情報処理部70に出力する(S107)。
【0093】
生体認証装置1は、判断された眼画像が不適切な場合は、S103に戻り、再度眼画像を撮影する。また、眼画像の撮影が完了すると、距離判別部15は指示部16を経由してスピーカ17により、被写体に対して適正な眼画像が得られたことを知らせる。
【0094】
虹彩情報処理部70は、瞳孔の中心座標にもとづき眼画像データの中から虹彩画像を切り出し(S108)、虹彩画像を虹彩の模様を数値で示す固有の認証情報に変換する(S109)。
【0095】
さらに、生体認証装置1は被写体の要求が認証情報の登録なのか登録認証情報にもとづく認証なのかの判定を行う(S110)。被写体の要求が認証の場合は、生体認証装置1は撮影して得た認証情報を登録済みの登録認証情報と比較照合し、認証動作を実行する(S111)。また、被写体の要求が登録の場合は、生体認証装置1は眼画像に含まれる虹彩画像から得られた固有の認証情報を登録認証情報として記憶部73に登録する(S112)。これにより、生体認証装置1は処理を完了する。
【0096】
つぎに、S102における測距部40による撮像距離情報の算出および測距部40の距離情報算出の校正方法について、図4〜図8を用いて詳細に説明する。
【0097】
測距部40の校正方法は、撮像距離に関し測距センサ41により第1の距離測定と、被写体の眼から測距センサ41に至る距離(撮像距離)に関する第2の距離測定を行い、第1の距離測定により得られた測定結果を第2の距離測定により得られた測定結果になるように校正するものである。
【0098】
まず、第2の距離測定において、生体認証装置1は被写体までの撮像距離の算出をするのに先立ち、測距部40を校正する目的で、2つのLED12a、12bを使って被写体を照明し、照明された被写体の眼を撮影する。つぎに、生体認証装置1は、被写体の眼から測距センサ41に至る距離(撮像距離)に関する距離の測定を行う。図4に示すように、生体認証装置1は、LED12a、12bを使って被写体61の撮像領域に照明光62、63を照明し、撮影部20を使って図5(a)に示す眼画像を撮影して得る。この結果、生体認証装置1は、LED12a、12bによる2つの光源のスポットが写り込んだ眼画像80aを得ることができる。この眼画像80aでは、光源の写り込み画像56aの間隔がL1となっている。被写体61と測距センサ41との距離が変化したときは、図5(b)、図5(c)に示すように、撮影して得られた眼画像80b、80cでは光源の写り込み画像56b、56cの間隔はL2、L3に変化する。
【0099】
この光源の画像の間隔Lと撮像距離との関係を示す情報(以下、この情報を「校正用対比情報」という)を、事前に実験などにより求めておいて生体認証装置1に保存しておけば、生体認証装置1は光源の画像の間隔Lを検出することにより、撮像距離を算出することができる。
【0100】
図6に実験により求めた校正用対比情報の例を示す。図6において、反射光検出部31で検出された眼画像に含まれるおける光源の画像の間隔がSD1、SD2、SD3のとき、測距センサ41から被写体の眼までの距離がそれぞれSC1、SC2、SC3であったことを示している。同様に、光源の画像の間隔SDに対応する測距センサ41から被写体の眼までの距離SCを多数測定することで、距離SDと距離SCとの対応関係を示す近似曲線Dが得られる。この近似曲線Dを校正用対比情報として対比情報記憶部32に記憶する。
【0101】
この第2の距離測定方法は、被写体61の表面の状態に影響されることがなく、精度よく撮像距離を測定することができる。しかし、生体認証装置1では、被写体の眼を撮影し、撮影して得た眼画像に含まれる光源の写り込みを検出し、光源の画像の間隔と対比情報とを照らし合わせ、距離情報を算出する処理を行う。そのため、撮像距離を算出するまでの時間が長い。
【0102】
つぎに、第1の距離測定では、測距部40により撮像距離に関する距離測定を行う。図7に測距センサ41から対象物までの距離と対象物からの反射光を受光した測距センサ41の検出電圧との測距対比情報の実験例を示す。
【0103】
図7は、被写体A、被写体B、被写体Cに対する測距センサ41の対比特性と、その出力ばらつきの範囲を示している。すなわち、対象物の表面の状態(たとえば、皮膚の色、化粧の有無など)によって測距センサ41の検出電圧がばらつき、測距用光線が強く反射した場合には実際よりも短い方向に誤差が発生し、弱く反射すると長い方向に誤差が発生することを表している。この実験結果から、図7に示すように、検出電圧V1に対応する対象物までの距離30cmに対して、測定誤差Xとして±8cm程度のばらつきが被写体により発生することがわかる。通常、生体認証装置1に焦点距離30cmの固定焦点レンズを使用した場合、撮像距離の許容範囲については30cm±3cm程度が要求され、測距部40の距離情報をそのまま使用して被写体を許容範囲内に誘導しても、ピントが合った状態で被写体の眼を撮影することは難しい。ただし、測距センサ41は検出速度が速いという特徴を有しており、撮像距離と検出電圧との関係を示すベースとなる情報(以下、この情報を「基本対比情報」という)を設定したうえ、測距センサ41を用いて短い時間間隔で被写体までの距離を測定することにより、生体認証装置1は、被写体に対して迅速に誘導の指示を与えることができる。ここで、撮像距離の許容範囲を固定焦点レンズの焦点深度内とする。よって、誘導部14の基準距離を許容範囲の中心、たとえば30cmとすることが好ましい。
【0104】
本発明の実施の形態1では、上記第1および第2の距離測定結果をもとに、校正部34は、第2の距離測定により得られた校正用対比情報を用いて測距部40の基本対比情報の補正を行い、測距部40での距離情報算出の校正を行う。なお、基本対比情報の補正により測距部40での距離情報算出の校正を行うようにしたが、測距センサ41の出力にオフセット値を加算することで補正するようにしてもよい。いずれの方法でも測距部40での距離情報算出の校正を行うことができる。
【0105】
まず、距離算出部33は、図8(a)に示す校正用対比情報Icから眼画像に含まれる光源の画像の間隔(検出値)SDから撮像距離SCを算出する。
【0106】
つぎに、校正部34は、図8(b)に示すように、算出した撮像距離SCと測距センサ41で検出した検出電圧V2に対して基本対比情報Iaから算出される撮像距離SEとの比較を行う。このSEとSCとで誤差Cが発生している場合は、校正部34は、測距センサ41の出力と被写体までの距離の関係を表す基本対比情報Iaに対し、対比情報の校正値を「C」として、基本対比情報を補正し、補正した対比情報Ibを作成する。つぎに、校正部34は、校正後の対比情報Ibを測距対比情報記憶部43に記憶する。
【0107】
以後、測距距離算出部42は、測距センサ41による検出電圧Vに対して、測距対比情報記憶部43に記憶した補正後の対比情報Ibにもとづいて撮像距離の算出を行う。
【0108】
以上述べたように、本発明の実施の形態1によれば、生体認証装置1は、認証用の眼画像の取得に先立ち、2つのLED12a、12bと撮影部20を使用して光源が写り込んだ眼画像を取得し、光源の画像の間隔から撮像距離を正確に算出することができる。そして、この光源の画像の間隔にもとづいて算出された距離情報を使って測距部40の距離情報算出の校正を行う。これにより、生体認証装置1は、測距部40において被写体ごとにばらつく距離の測定結果の誤差を補正することが可能となる。したがって、生体認証装置1は、皮膚、髪などの表面状態が異なる認証対象者に対して、測距部40の高速な応答性能を活用して正確な撮像距離を検出し、被写体を適正な位置に誘導することで認証情報を速やかに取得することができる。
【0109】
また、生体認証装置1は、校正された測距部40の距離情報を使って被写体を適正な撮影位置に迅速に誘導できるので、撮影部20に固定焦点のレンズを用いても精度の高い認証情報を速やかに得ることができる。
【0110】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、実施の形態1の生体認証装置1を携帯情報装置に搭載した実施例について説明する。実施の形態1と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0111】
生体認証装置1は、高速な応答で高精度な測距装置を搭載し、被写体と装置との撮影距離を検出し認証作業ができるので、携帯情報装置、情報処理装置、ゲーム機器のような離れた位置よりたえず動く被写体を撮影して認証を行う機器に好適である。
【0112】
たとえば、携帯電話に適用した実施例として、図9(a)の正面図に示すように、回動連結部で連結された一方の筺体部101に液晶表示パネルなどを使った表示部95を搭載し、連結部側には、撮影部20と、被写体を照明する2つの光源12a、12bを有する照明部10(図示せず)と、被写体との距離を測定する測距部40とを筐体幅方向に併設した生体認証装置1を搭載する。なお、生体認証装置1を他の表示部95の配置の都合で、筺体の長手方向に併設してもよい。携帯電話に搭載された生体認証装置1は、照明部10が有する2つの光源12a、12bを使って被写体の眼を照明し、照明された被写体の眼を含む領域を撮影部20で撮影して得た眼画像に含まれる光源の画像の間隔を検出し、その光源の画像の間隔より被写体までの距離を算出し、測距部40で測定された距離情報の算出を校正する。そして、測距部40からの校正された距離情報を使って被写体を撮影に適した撮影位置まで誘導し、その被写体の眼を撮影する。この撮影して得た被写体の眼画像から虹彩部分を切り出して認証情報を生成し、あらかじめ携帯電話の記憶部に保存してある登録認証情報と比較照合することで、本人であるか否かの認証を行う。
【0113】
そして、表示部95の筺体部101には、アンテナ98、スピーカ96を搭載し、またそれ回動可能に連結された他方の筺体部102にはマイクロフォン97、およびテンキーやその他の操作ボタンを有するキー入力部90や、情報処理、制御のための構成要素を搭載する。
【0114】
図9(b)にその構成の一例を示したように、この携帯電話は、アンテナ98と接続され、音声信号や映像信号、その他各種信号の無線通信を可能にするために、これらの信号を変調または復調するための無線送受信部91、生体認証装置1やキー入力部90からの情報、無線送受信部91との間で授受する情報にもとづいて各種制御をする制御部92と、授受した情報、認証情報などを記憶する記憶部93と、各種制御に必要な情報やメッセージ情報などを格納したROM、RAM(図示せず)などを有する。また、制御部92からの音声情報を音声信号にしてスピーカ96に伝える音声信号入出力部94を有する。なお、音声信号入出力部94はマイクロフォン97から得た音声情報を制御部92に供給する機能もある。さらに、制御部92は、ダイヤルパルス発生部など無線電話機として、また情報処理機器として必要な各種の回線装置(図示せず)も備えている。
【0115】
制御部92は、生体認証装置1が被写体を登録した本人ではないと判断した場合、キー入力部90でのキーの受付を拒否するなどし、携帯電話を使用できないようにする。
【0116】
なお、生体認証装置1のスピーカ17は、スピーカ96と共通にしてもよい。生体認証装置1は誘導情報を制御部92に伝えることで、音声信号入出力部94を経由してスピーカ96から被写体に指示ができる。
【0117】
また、測距部40からの校正された距離情報を使って、撮影部20の焦点調整を行い、その後、被写体の眼を撮影してもよい。
【0118】
携帯電話使用者は、送信しようとするとき、まず、生体認証装置1を用いて、実施の形態1で説明した本人認証の作業を行う。制御部92は、その照合結果にもとづいて、通話可否の動作をし、使用者が本人であると判断された場合のみ、通話可能とし、キー入力部90からの入力信号に応じて制御動作を行う。これにより、音声、その他のキー操作に応じて、送受信が行われる。
【0119】
さらには、その携帯電話に搭載した生体認証装置1による認証結果にもとづいて、各種データベース、たとえば、個人情報へのアクセスの可否、自動販売機、店舗などで使用するときの決済時の本人認証、商取引における本人照合などに利用でき、容易にかつ迅速、確実に認証作業を行うことができる。
【0120】
以上のように、実施の形態2によれば、生体認証装置1は、実施の形態1で説明した高速で高精度な距離の測定を可能とする距離測定装置を搭載しているので、たえず被写体と装置との撮影距離を検出し認証作業ができる。これにより、携帯情報装置、情報処理装置、ゲーム機器のような離れた位置よりたえず動く被写体に対して認証を行う機器でも、迅速、確実に認証作業を行うことができる。
【0121】
なお、実施の形態1において、校正部34は以下のようにしてもよい。
【0122】
校正部34は、被写体ごとに対比情報(近似曲線)の候補を複数用意しておき、補正点hに最も近い近似曲線を選択するようにしてもよい。たとえば、図7に示すように、生体認証装置1は、被写体A、B、Cに対応する対比情報を近似曲線A、近似曲線B、近似曲線Cとしてあらかじめ求めておき、それぞれを基本対比情報として測距対比情報記憶部43に記憶しておく。そして、校正部34は測距対比情報記憶部43に記憶した近似曲線群の中から補正点hを通過する一番近い近似曲線を選択して補正後の対比情報Ibとするようにしてもよい。また、校正部34は、補正点h上を通過させるように基本対比情報の近似曲線を平行移動させ、校正後の対比情報Ibとしてもよい。いずれの方法でも、校正部34は、測距部40を用いて算出した距離情報を眼画像に写り込んだ反射光の光源の画像の間隔から算出した距離情報と近似させることができる。
【0123】
また、校正部34は、近似曲線の更新を両眼の眼画像を検出して算出した距離情報の平均値にもとづいて測距部40を校正してもよい。これにより、眼画像に含まれる光源の画像の間隔から算出した距離に誤差があっても抑えることができる。
【0124】
また、校正部34は、基本対比情報を補正する最大値をあらかじめ設定しておいてもよい。これにより、適正な範囲で校正でき、誤差による異常な補正を排除できる。
【0125】
また、校正部34は、複数回に渡って段階的に校正を行うようにしてもよい。これにより、基本対比情報を補正する校正値を分割して徐々に校正するようにすれば、眼画像に写り込んだ光源の画像の間隔から算出した距離に大きな誤差を生じてもすぐに波及するのを抑えるので、その誤差の影響を抑えることができる。
【0126】
なお、以下のようにして距離情報の信頼性を高めてもよい。
【0127】
すなわち、2つの光源の画像が写り込んだ眼画像において、その画像の位置を検出し、光源の画像が眼球のほぼ真ん中に写り込んだ眼画像より距離情報を算出するようにしてもよい。また、同様の方法で両眼に照明し、それぞれを撮影して得た眼画像に写り込んだ光源の画像の間隔から距離情報を算出し、その算出された距離情報の平均値を距離情報として出力してもよい。これにより、眼球の曲率による算出誤差を抑え、算出した距離情報の精度を高くすることができる。
【0128】
また、被写体の眼鏡の有無を検出する眼鏡検出部をさらに備えてもよい。この眼鏡検出部で眼鏡がありと検出したときには眼画像に含まれる光源の画像の間隔から算出した距離情報を補正する。これにより、眼鏡による眼画像の大きさの縮率の影響を考慮して算出誤差を抑え、算出した距離情報の精度を高くすることができる。
【0129】
また、撮影部20は、被写体の顔を撮影し、測距センサ41の光線照射部41aからの照射光が顔のどの位置に照射されているかを検出する照射位置検出部と、検出された照射位置より適正な照射位置か否かを判断する異常検出部と、をさらに備えてもよい。また、異常検出部が異常を検出したときは、生体認証装置1は測距部40により得られる距離情報を無効にし、眼画像に含まれる光源の画像の間隔から算出された距離情報にもとづいて距離情報を取得するように切り替えてもよい。これにより、測距部40で算出される距離情報に異常が認められたときは無効にすることができる。また、別な距離情報に切り替えることで認証作業への影響を抑えることができる。
【0130】
また、撮影部20は、眼画像に写り込んだ照明用LED12の光源の画像の合焦レベルを検出する合焦レベル検出部をさらに備えてもよい。校正部34は、この検出された合焦レベルに応じて眼画像に含まれる光源の画像の間隔から算出した距離情報と測距部40で測定した距離情報とのそれぞれの重みを変え、どちらかの重みを高めるように校正するようにしてもよい。たとえば、合焦レベルが小さいときは、測距部40で測定した距離情報の重みを高めるように基本対比情報を補正し、距離情報算出の校正を行う。これにより、より信頼度の高い測定結果を利用できる。
【0131】
なお、照明用LED12を以下のようにしてもよい。
【0132】
すなわち、本発明の実施の形態1では、照明用LED12を一対のLEDで構成しているが、この構成に限定するものではない。たとえば、一対のLEDそれぞれを複数で構成してもよい。この場合は、発光輝度の比較的小さいLEDを使用でき、発光させるLEDの数を変えることにより被写体の眼を照射する際の光量を制御することができる。さらには、一対の照明用LED12を複数対で構成してもよい。これにより、被写体の眼に対する照明光の照射角度の組み合わせを多くすることが可能となる。
【0133】
また、照明用LED12は、撮影部の両側に配置した一対のLEDで眼に照明するようにしたが、撮影部の片側に配置した一対のLEDで眼を照明してもよい。
【0134】
また、片側の眼に照明するようにしていたが、図10に示すように、両眼のそれぞれの眼に対して照明光62、63、66、67を照明できるようにLED12cとLED12dを増やしてもよい。さらに、両眼を撮影する2つの撮影部20を備え、この2つの撮影部20で撮影した眼画像に含まれる光源の画像の間隔より距離を算出し、その算出した距離を平均してもよい。これにより、測定誤差を抑えることができる。
【0135】
また、照明用LED12を被写体に対して移動させるようにしてもよい。照明用LED12を可動部によってレンズ21に近い位置と遠い位置とに移動させることにより、照明光の照明角度が異なる被写体の眼を撮影することができる。
【0136】
また、レンズやプリズム、鏡などの反射や屈折、分光などを用い、照明光の光路を変えて被写体の眼に対して照明光の照明角度を変える方法も可能である。
【0137】
また、本発明の実施の形態においては、照明用LED12からの照明光を近赤外光としてもよい。虹彩は赤外光を反射しやすい特性を持っているため、この近赤外光を使うことで、撮影して得た眼画像のコントラストが大きくなり、判別の精度が向上する。また、可視光を遮光し、近赤外光を透光するフィルタなどで照明用LED12を覆う方法によっても、同様の効果を発揮することができる。
【0138】
また、本発明の実施の形態1においては、照明用LED12を誘導鏡13の左右両脇に配置する構成としたが、たとえば、照明用LED12を誘導鏡13の上下に配置する構成などであってもよい。眼鏡やコンタクトの反射が抑えられるように、照明用LED12から被写体に適切な照明角度で照明できる配置とすることが好ましい。
【0139】
なお、被写体の誘導、被写体の確認を以下のようにしてもよい。
【0140】
すなわち、本発明の実施の形態における生体認証装置1に、取得した眼画像を表示する液晶やELなどを用いた表示部を備えてもよい。表示部を認証装置の管理者などの確認用として使用する場合は、生体認証装置から離れたところに設置することが望ましい。
【0141】
また、本発明の実施の形態1ではレンズの前面に誘導鏡13を配置した構成としたが、レンズ21と誘導鏡13とを一体とする構成や、レンズ21の近傍に誘導鏡13を配置する構成などであっても同様の効果を発揮することができる。
【0142】
また、本発明の実施の形態において、映像や音声などで被写体を誘導し、被写体の眼を適切な位置に誘導するようにすれば、誘導鏡13を用いなくてもよい。
【0143】
また、本発明の実施の形態1においては、眼画像撮影装置50と虹彩認証処理部71とが一体になった構成としているが、眼画像撮影装置50、虹彩認証処理部71などの各構成要素を別々の機器として構成してもよい。眼画像撮影装置50は眼画像を撮影するためだけの目的で使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の生体認証装置およびこれに搭載する生体認証装置用距離測定装置によれば、たえず動きのある被写体の皮膚、髪などの被写体表面による反射波のばらつきがあっても、正確かつ迅速に被写体までの距離を検出し認証作業を行うことができ、生体認証装置、生体認証装置を備えた携帯電話機器、PDAなどの携帯情報装置、生体認証装置を備えたゲーム機器、コンピュータなどの情報処理装置などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施の形態1における生体認証装置の外観を示す正面図
【図2】同生体認証装置の構成を示すブロック図
【図3】同生体認証装置の動作を示すフローチャート
【図4】同生体認証装置の測距部の動作を説明する説明図
【図5】(a)眼画像での光源の写り込み画像の説明図(b)眼画像での光源の写り込み画像の説明図(c)眼画像での光源の写り込み画像の説明図
【図6】同生体認証装置の校正用対比情報の説明図
【図7】同生体認証装置の測距対比情報を説明する説明図
【図8】(a)校正用対比情報から距離の算出を説明する説明図(b)測距対比情報の校正を説明する説明図
【図9】(a)本発明の実施の形態2における携帯電話の正面図(b)同携帯電話の機能を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態における別の生体認証装置が両眼に光源を照明した状態を説明する説明図
【符号の説明】
【0146】
1 生体認証装置
10 照明部
11 照明制御部
12 照明用LED
12a,12b,12c,12d 光源(LED)
13 誘導鏡
14 誘導部
15 距離判別部
16 指示部
17 スピーカ
20 撮影部
21 レンズ
22 撮像素子
23 前処理部
24 焦点調整部
30 画像信号処理部
31 反射光検出部
32 対比情報記憶部
33 距離算出部
34 校正部
35 瞳孔検出部
36 眼位置判断部
37 認証画像取得部
40 測距部
41 測距センサ
41a 光線照射部
41b 反射光受光部
42 測距距離算出部
43 測距対比情報記憶部
50 眼画像撮影装置
56a,56b,56c 光源の写り込み画像
61 被写体
62,63,66,67 照明光
70 虹彩情報処理部
71 虹彩認証処理部
72 虹彩情報登録部
73,93 記憶部
80a,80b,80c 眼画像
90 キー入力部
91 無線送受信部
92 制御部
94 音声信号入出力部
95 表示部
96 スピーカ
97 マイクロフォン
98 アンテナ
101,102 筺体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる位置から被写体の眼を含む領域を照明する少なくとも2つの光源を有する照明部と、
前記被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影する撮影部と、
前記被写体に照射波を照射するとともに前記照射波の前記被写体による反射波を受け取ることで前記被写体までの距離情報を算出する測距部と、
前記撮影部において撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源の画像の間隔にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出する距離算出部と、
前記距離算出部において算出された前記被写体までの距離情報にもとづき前記測距部で算出する距離情報の算出を校正する校正部と、
を備えたことを特徴とする生体認証装置用距離測定装置。
【請求項2】
前記眼画像に含まれる前記光源の画像の間隔と前記被写体までの距離の関係を表す対比情報をあらかじめ記憶させた対比情報記憶部を備え、
前記距離算出部は、前記撮影部において撮影して得られる前記被写体の前記眼画像に含まれる前記光源の画像の間隔と前記対比情報とから前記被写体までの距離情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置用距離測定装置。
【請求項3】
前記測距部は、受け取った前記反射波によって得られる出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報をあらかじめ記憶させた測距対比情報記憶部と、前記測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離を算出する測距距離算出部とを有し、
前記校正部は、前記距離算出部で算出された距離情報と前記測距距離算出部で算出された距離情報との差にもとづき前記測距距離算出部で算出される距離情報を前記距離算出部で算出された距離情報に補正するように前記測距対比情報を校正することを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置用距離測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体認証装置用距離測定装置と、
前記測距部で算出される距離情報にもとづいて前記被写体を所定の位置に誘導する誘導部と、
誘導された前記被写体を前記撮影部で撮影して得た認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証処理部と、
を備えたことを特徴とする生体認証装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体認証装置用距離測定装置と、
前記測距部で算出される距離情報にもとづいて前記被写体に対して前記撮影部の焦点調整を行う焦点調整部と、
焦点調整された前記撮影部で撮影して得た認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証処理部と、
を備えたことを特徴とする生体認証装置。
【請求項6】
前記校正部は、前記被写体ごとに前記測距部で算出される距離情報を校正することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記誘導部は、前記測距部で算出される距離情報と前記所定の位置情報とを比較し、前記被写体までの距離が適正か否かを判別する距離判別部とを備え、
前記距離判別部の判別結果にもとづき前記被写体を前記所定の位置に誘導することを特徴とする請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項8】
前記撮影部は固定焦点レンズを有し、
前記所定の位置情報は、前記固定焦点レンズの焦点深度領域情報であることを特徴とする請求項7に記載の生体認証装置。
【請求項9】
前記撮影部は固定焦点レンズを有し、
前記誘導部は、前記被写体が前記固定焦点レンズの焦点位置を通過するように前記被写体を前方向または後方向に誘導することを特徴とする請求項7に記載の生体認証装置。
【請求項10】
請求項4または請求項5に記載の生体認証装置と、
音声または情報を送受信するデータ送受信部と、
を備えたことを特徴とする生体認証装置付携帯情報装置。
【請求項11】
被写体の少なくとも眼を含む領域に少なくとも2つの光源を用いて互いに異なる方向から照明するステップと、
前記少なくとも2つの光源によって照明された被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影するステップと、
撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源それぞれの画像を検出するステップと、
前記眼画像から検出された前記光源の画像の間隔を算出するステップと、
前記光源の画像の間隔にもとづき前記被写体までの距離情報を算出するステップと、
照射波を前記被写体に照射するとともに前記照射波の前記被写体における反射波を受け取って得られる出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出するステップと、
前記光源の画像の間隔にもとづき算出された距離情報と前記測距対比情報にもとづいて算出された距離情報との差にもとづき前記測距対比情報を使って算出される距離情報を前記光源の画像の間隔にもとづき算出された距離情報に補正するように前記測距対比情報を校正するステップと、
を備えたことを特徴とする生体認証装置用距離測定装置の校正方法。
【請求項12】
照射波を被写体に照射するとともに前記照射波の前記被写体における反射波を受け取って得た出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出する第1の測距ステップと、
前記被写体の少なくとも眼を含む領域に少なくとも2つの光源を用いて互いに異なる方向から照明し、前記光源によって照明された前記被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影し、撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源それぞれの画像を検出し、前記眼画像から検出された前記光源の画像の間隔にもとづき前記被写体までの距離情報を算出する第2の測距ステップと、
前記被写体ごとに前記第1の測距ステップで得られた距離情報を前記第2の測距ステップで得られた距離情報に補正するように前記第1の測距ステップにおける距離情報算出を校正する校正ステップと、
校正された距離情報にもとづいて前記被写体を所定の位置に誘導する誘導ステップと、
誘導された前記被写体を撮影して得た認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証ステップと、
を備えたことを特徴とする生体認証方法。
【請求項13】
照射波を被写体に照射するとともに前記照射波の前記被写体における反射波を受け取って得た出力と前記被写体までの距離の関係を表す測距対比情報にもとづいて前記被写体までの距離情報を算出する第1の測距ステップと、
前記被写体の少なくとも眼を含む領域に少なくとも2つの光源を用いて互いに異なる方向から照明し、前記光源によって照明された前記被写体の少なくとも眼を含む領域を撮影し、撮影して得た前記被写体の眼画像に含まれる前記光源それぞれの画像を検出し、前記眼画像から検出された前記光源の画像の間隔にもとづき前記被写体までの距離情報を算出する第2の測距ステップと、
前記被写体ごとに前記第1の測距ステップで得られた距離情報を前記第2の測距ステップで得られた距離情報に補正するように前記第1の測距ステップにおける距離情報算出を校正する校正ステップと、
校正された距離情報にもとづいて撮影部の焦点調整を行う焦点調整ステップと、
焦点調整後に前記撮影部で撮影して得た前記被写体の認証情報にもとづいて前記被写体の認証を行う認証ステップと、
を備えたことを特徴とする生体認証方法。
【請求項14】
第1の応答性と第1の精度で被写体までの距離情報を算出する第1の測距ステップと、
第1の応答性より遅い第2の応答性と、第1の精度より高い第2の精度で前記被写体までの距離情報を算出する第2の測距ステップと、
前記被写体ごとに前記第1の測距ステップで得られた距離情報を前記第2の測距ステップで得られた距離情報に補正するように前記第1の測距ステップにおける距離情報算出を校正する校正ステップと、
を備えたことを特徴とする生体認証用距離測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−159762(P2007−159762A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358747(P2005−358747)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】